特許第6987246号(P6987246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6987246電気機械式充填レベル監視機構の機能検査方法
<>
  • 特許6987246-電気機械式充填レベル監視機構の機能検査方法 図000002
  • 特許6987246-電気機械式充填レベル監視機構の機能検査方法 図000003
  • 特許6987246-電気機械式充填レベル監視機構の機能検査方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987246
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電気機械式充填レベル監視機構の機能検査方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20211213BHJP
   B60T 11/26 20060101ALI20211213BHJP
   B60T 8/88 20060101ALI20211213BHJP
   G01F 23/62 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B60T17/22 Z
   B60T11/26 A
   B60T8/88
   G01F23/62 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-526452(P2020-526452)
(86)(22)【出願日】2018年9月20日
(65)【公表番号】特表2021-502303(P2021-502303A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(86)【国際出願番号】EP2018075428
(87)【国際公開番号】WO2019105628
(87)【国際公開日】20190606
【審査請求日】2020年5月13日
(31)【優先権主張番号】102017221478.3
(32)【優先日】2017年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】キストナー マティアス
(72)【発明者】
【氏名】キンダー ラルフ
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−040359(JP,A)
【文献】 特開2015−182631(JP,A)
【文献】 特開2010−058709(JP,A)
【文献】 米国特許第04318078(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00−17/22
B60T 10/00−11/34
B60T 8/32−8/96
G01F 23/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御器(142;230)により圧力調整可能な圧力媒体回路(120;122;210)の、特に電子的にスリップコントロール可能な車両ブレーキ装置(110)のブレーキ回路の第1の圧力媒体チャンバー(150;214)内で電気機械式充填レベル監視機構(222)の機能検査を行う方法であって、
前記圧力媒体回路(120;122;210)が、前記第1の圧力媒体チャンバー(150;214)から仕切られている少なくとも1つの第2の圧力媒体チャンバー(146;148;216)と、前記第1の圧力媒体チャンバー(150;214)と前記第2の圧力媒体チャンバー(146;148;216)を連結する圧力媒体結合部(232)と、記圧力媒体結合部(232)内に配置されている電子的に起動可能な圧力媒体搬送機構(114;234)と、を有している前記方法において、
設定可能な時間にわたって前記圧力媒体搬送機構(114;234)を起動することにより、前記第1の圧力媒体チャンバー(150;214)内に含まれている圧力媒体を前記第2の圧力媒体チャンバー(146;148;216)内へ搬送すること、
設定した前記時間内で、前記電子制御器(142;230)により、前記充填レベル監視機構(222)の信号推移を検知して評価すること、
前記電子制御器(142;230)により、前記時間内での前記信号推移において信号跳躍または連続的な信号変化が確認できない場合に警告信号を出力すること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記電子制御器(142;230)により信号跳躍または連続的な信号変化が確認されたときに、警告信号の出力を抑止することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法を車両の駆動装置を始動する際に実施することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、前記圧力媒体回路(120,122;210)が電子的にスリップコントロール可能な車両ブレーキ装置(110)のブレーキ回路であり、前記車両ブレーキ装置が、ブレーキマスタシリンダ(118)と、車輪ブレーキ(112)と、電子的に起動可能で、前記ブレーキマスタシリンダ(118)と前記車輪ブレーキ(112)との間にある回路切り離し弁(136)と、電子的に起動可能で、前記圧力媒体搬送機構(114)と前記車輪ブレーキ(112)との間にある遮断弁(130)と、を備えている前記方法において、
前記方法を実施するため、前記遮断弁(130)と前記回路切り離し弁(136)とを、これら弁(130;136)がそれぞれ開弁位置に制御されるように、前記電子制御器(142)によって起動させること、
を特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1の圧力媒体チャンバー(150;214)と前記第2の圧力媒体チャンバー(146;148;216)が補償開口部(220)を介して互いに連通している前記方法において、
前記時間の経過後、前記電子制御器(142;230)により、前記充填レベル監視機構(222)の前記信号が前記時間の開始時における値をとるまでの時間を測定すること、求めたこの時間から、前記電子制御器(142;230)により前記圧力媒体の品質を判断すること、
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部の構成による電気機械式充填レベル監視機構の機能検査方法に基づいている。
【背景技術】
【0002】
充填レベル監視機構は、ブレーキ液貯留容器内のブレーキ液の低レベルを適時に認知して、場合によってはドライバーに通告するために、自動車において長年来採用されている。
【0003】
このために、従来の充填レベル監視機構は、ブレーキ液貯留容器内に配置されて磁石を担持するフロートを有している。このフロートは、ブレーキ液貯留容器の充填レベルに依存して、開閉接点を備えた、たとえばリード接点を備えたセンサ要素に沿って移動する。充填レベルが最低マーク以下に降下すると、ただちに、センサ要素内の磁石によって切換え過程が発動され、この切換え過程により、電子制御器によって警告信号がドライバーに伝送される。警告信号としては光学的信号、音響的信号および/または触感的信号が通常である。
【0004】
連続的に作用する充填レベル監視機構も公知である。これはフロートによって操作されるポテンショメータを有し、その抵抗はフロートの位置に依存して変化し、よってブレーキ液貯留容器の充填レベルに依存して変化する。
【0005】
通常の作動条件の下では、圧力媒体チャンバー内の液体レベルは長時間にわたって前述の最低マークよりも上にあり、フロートは比較的小さなストローク範囲内だけで移動する。その結果、開閉接点での切換え過程またはポテンショメータでの抵抗変化は起きず、充填レベル監視機構は十分に高い充填レベルを表す信号を規則に従って発する。
【0006】
しかしながら、フロートがたとえば機械的にブロックされ、そのためにフロートが充填レベルの位置的低下にもはや追従できない事例、或いは、センサ要素が固着した接点を有する事例が発生すると、最小体積以下に降下した充填レベルを認知することはもはや容易ではなく、ドライバーへの警告信号は発生しない。
【0007】
これにより、極端な場合には、大気から液圧回路内へガスが侵入することがあり、または、最終的に圧力発生器によるブレーキ圧の増圧が気づかないうちに危うくなることがある。このことはいわゆる非人力エネルギーブレーキ装置において特に危険であり、すなわちドライバーに依存せずブレーキ圧を増圧させ、さらに開放系として形成され、すなわち貯留容器の圧力媒体チャンバーからダイレクトにブレーキ圧発生器に圧力媒体を供給するブレーキシステムとして形成されている非人力エネルギーブレーキ装置において特に危険である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の基礎を成す電気機械式充填レベル監視機構の機能検査方法により、この充填レベル監視機構の機能欠陥を比較的長時間見逃したままになることが回避される。
【0009】
このため、提案される方法によれば、充填レベル監視機構を備えた第1の圧力媒体チャンバーの充填レベルを合目的的に降下させることによりブレーキ液スイッチが応答し、その際に充填レベル監視機構から出力される信号推移が観察される。観察時間内で充填レベル監視機構のセンサの機能原理に依存して信号跳躍または少なくとも1回の連続的に推移する信号変化が起これば、充填レベル監視機構の機能は正常であると推定でき、警告信号の出力は制御器内で抑止され、他方信号跳躍がなければ、或いは、信号変化が間欠的または非連続的であれば、充填レベル監視機構の機能不全であると解釈でき、そのような警告信号を発生させる。
【0010】
本方法は、液圧回路内で圧力媒体の搬送が行われなければ、すなわち圧力媒体搬送機構がブレーキ圧発生のために起動または操作されなければ、いつでも実施することができる。自動車の場合には、本方法はたとえば車両駆動装置のスタート後、または、停止段階に続く車両の始動後にいつでもルーチンにしたがって実施することができる。
【0011】
前述した、第1の圧力媒体チャンバー内での充填レベルの降下は、通常のようにもともと液圧回路内に設けられている圧力媒体搬送機構を用いて行うことができる。特に電子的にスリップコントロール可能な車両ブレーキ装置のブレーキ回路は、このために利用することができる圧力発生器または圧力媒体搬送機構を備えている。さらに、提案した方法を実施できるようにするには、この種のブレーキ回路をさらにわずかに修正するだけでよい。たとえば、圧力媒体を第1の圧力媒体チャンバーからポンプで送り込むことができる第2の圧力媒体チャンバーが設けられていればよい。
【0012】
有利な態様では、両圧力媒体チャンバーは既知の横断面積の補償開口部を介して継続的に互いに連通しているべきである。これにより、ポンプで移送された圧力媒体はひとりでに、すなわちポンプの支援なしに補償開口部を介して第1の圧力チャンバー内へ還流することができ、その際圧力媒体が還流するための検知可能な時間から、圧力媒体の温度、粘性および/または汚染度、すなわちその品質に関する補完的な指摘を得ることができ、ブレーキ回路内のブレーキ圧を調整する際に考慮することができる。これに関連して特に有利なのは、圧力媒体のための貯留容器が互いに連通している2つの圧力媒体チャンバーに分割されていることである。というのは、このような貯留容器はすでに市場で入手でき、コスト上好ましいからである。
【0013】
本発明の基礎を成す方法の更なる利点または有利な更なる構成は、従属項および/または以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の一実施形態を以下の説明で詳細に述べ、図面を用いて解説する。
図1】自動車の電子的にスリップコントロール可能な非人力エネルギーブレーキ装置の液圧配置構成図である。
図2】簡潔に図示した圧力媒体回路図である。
図3】本発明の基礎を成す方法をフローチャートを用いて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、車両ブレーキ装置110の液圧配置構成を例示している。この車両ブレーキ装置110は非人力エネルギーブレーキ装置であり、すなわち故障のない正常作動時において、車輪ブレーキ112におけるブレーキ圧をドライバーの筋力によって提供するのではなく、電気機械式に駆動可能に構成されている圧力発生器114によって提供する車両ブレーキ装置である。図示した車両ブレーキ装置110は、ブレーキペダル116によってドライバーが操作可能なブレーキマスタシリンダ118を含み、ブレーキマスタシリンダには2つのブレーキ回路120,122が接続されている。両ブレーキ回路120,122はそれぞれ付設の2つの車輪ブレーキ112に圧力媒体を供給する。ブレーキマスタシリンダ118により、標準条件の下ではドライバーの制動要望のみが検知され、機能障害がある場合のみ、ドライバーはブレーキマスタシリンダ118を介して車輪ブレーキ112にブレーキ圧を作用させることができる。したがって車両ブレーキ装置110の標準作動時には、車輪ブレーキ112は圧力発生器114によって提供されるブレーキ圧の作用を受ける。この圧力発生器114は、ブレーキマスタシリンダ118に液圧的に並列に接続されている。この圧力発生器118は、シリンダ128内での軸線方向運動のために電子的に起動可能な駆動モータ126によって駆動可能なプランジャーピストン124である。このため、駆動モータ126の回転運動はスピンドル駆動部により軸線方向へ変換されて、プランジャーピストン124へ伝動される。プランジャーピストン124によって搬送される圧力媒体はブレーキ回路120,122内へ排出され、これによってブレーキ圧の増圧を生じさせる。ブレーキ回路120,122は必要な場合には遮断弁130を介してプランジャーピストン124から切り離すことができ、その際これら遮断弁130は電子的に起動可能に形成されている。それぞれ付設の車輪に支配的なスリップ状況に対してブレーキ圧を車輪ごとに適合させるため、各車輪の上流側または下流側には、電子的に起動可能な増圧弁132と、同様に電子的に起動可能な減圧弁134とから成るモジュレーション機構が接続されている。さらに、ブレーキ回路120,122のそれぞれには回路切り離し弁136が設けられている。この回路切り離し弁136も同様に電子的に起動可能に構成されており、標準条件の下でブレーキマスタシリンダ118とブレーキ回路120,122との間の圧力媒体結合を遮断して、その中でのブレーキマスタシリンダ118を介してのブレーキ圧の増圧を回避する。
【0016】
車両ブレーキ装置110は、さらに、ペダルストロークシミュレータ138を備えている。ペダルストロークシミュレータは、シミュレータ切り離し弁156を用いて制御可能にブレーキマスタシリンダ118の複数のチャンバーのうちの1つと連結可能なピストン/シリンダユニットである。ペダルストロークシミュレータ138は、ブレーキ回路120,122に対するブレーキマスタシリンダ118の圧力媒体結合が回路切り離し弁136によって遮断されたときに、ブレーキマスタシリンダ118から排出された圧力媒体を受容し、このとき、ドライバーによって操作されてブレーキマスタシリンダ118に作用を与えるブレーキペダル116でのペダルストロークを可能にさせる。ブレーキペダル116に設けたペダルセンサ140はこのペダルストロークを検知して、ストローク信号を、当該ペダルセンサが車両ブレーキ装置110の電子制御器142に提供する電圧信号へ変換する。電子制御器142内では、この信号に基づきドライバーの制動要望が認知されて制御信号へ変換され、この制御信号を用いて電子制御器142は圧力発生器114を、またはその駆動モータ126を起動させる。その結果、圧力発生器または駆動モータは、ブレーキペダル116の操作に対応するブレーキ圧を車輪ブレーキ112に発生させる。
【0017】
ブレーキマスタシリンダの、それぞれのブレーキ回路120,122に付設されているチャンバーには、圧力媒体貯留容器144を介して圧力媒体が供給される。前記圧力媒体貯留容器144は、互いに連通し合っている複数のチャンバー146,148,150に分割されている。それぞれ1つのチャンバー146,148はブレーキ回路120,122のそれぞれ1つに付設され、第3のチャンバー150は圧力発生器114と直接結合されている。
【0018】
なお、説明した圧力媒体貯留容器144は、充填レベルが予め設定可能な最小値を下回ったときに規定に従って警告信号を発する充填レベル監視機構を備えていることから出発している。さらに、この充填レベル監視機構が、圧力媒体貯留容器144の、圧力発生器114と結合されている第3のチャンバー150内に配置されていることから出発している。
【0019】
この充填レベル監視機構の機能信頼性を検査するため、本発明にしたがって圧力発生器114が起動される。その結果圧力発生器114は、プランジャーピストン124が最終的にその外側エンドストッパーに到達するまで、自らのシリンダ128内にある圧力媒体を、対応的に開いている遮断弁130を通じてブレーキ回路120,122内へ押し出す。この場合、その際にブレーキ回路120,122内のブレーキ圧の増圧を阻止するため、回路切り離し弁136は、圧力発生器114によって搬送される圧力媒体が当該回路切り離し弁とブレーキマスタシリンダ118とを通って、貯留容器144の、ブレーキ回路120,122に付設されている2つのチャンバー146,148の少なくとも一方に排流されるように、起動されている。
【0020】
この時点で、圧力発生器114をブレーキ回路120,122から短時間切り離すために遮断弁130が電子制御器142によって閉じられ、プランジャーピストン124はその駆動方向の逆転によりその内側ストッパーの方向へ戻される。その際プランジャーピストン124は、逆止弁152によって制御される管154を介して圧力媒体を貯留容器144の付設の第3のチャンバー150からシリンダ128内へ吸い込む。その内側ストッパーに到達すると、遮断弁130が再び開き、プランジャーピストン124の駆動方向が新たに逆転され、プランジャーピストン124は管154の開口横断面を通過し、その結果圧力媒体の更なる量を、貯留容器144の、ブレーキ回路120,122に付設されているチャンバー146,148のうちの少なくとも1つの中へ移送させる。この過程は、貯留容器144の、圧力発生器114に付設されている第3のチャンバー150が、その最小充填レベルに到達して充填レベル監視機構が応答するまで反復する。そのために必要な操作サイクルの回数、または、貯留容器144のチャンバー150をその最小充填レベルへ到達させて空にさせるまでの圧力発生器114の操作期間は、たとえばプランジャー1行程ごとに排出される圧力媒体の体積、圧力発生器114に付設されているチャンバー150の容積、チャンバー150の最小充填容積、走出方向または走入方向におけるプランジャーピストン124の速度等のような既知の幾何学的設計量から求めて、電子制御器142によって予め設定することができる。この時間の間、電子制御器142内では、連続的な信号変化が行われているかどうか、または、この時間が終了するころに充填レベル監視機構が応答することによって予想される信号跳躍が行われているかどうかに関して充填レベル監視機構の信号が監視される。もしそうであれば、充填レベル監視機構が正常に機能していると推定でき、ドライバーへの警告信号は抑止される。この事例では、この方法が後の時点で繰り返され、好ましくは車両が比較的長く停止した後で、または、たとえば車両駆動装置の新たな始動が行われるたびに繰り返される。
【0021】
これに対し、連続的な、または不断の信号変化が行われない場合、或いは、観察時間内に信号跳躍が確認できない場合には、これは充填レベル監視の機能不全を示唆しており、制御器142から対応する警告信号がドライバーに出力される。適切な警告信号は、光学信号、音響信号および/または光学信号であってよい。
【0022】
移送された圧力媒体の体積は、ブレーキ回路120,122の少なくとも1つの圧力媒体チャンバー146,148と圧力発生器114の圧力媒体チャンバー150との間にある補償開口部を介して、チャンバー146−150内の圧力媒体レベルが再び補償されるまで、自動的に還流することができる。この圧力媒体結合部の横断面のサイズまたは圧力媒体結合部を通過する体積流がわかっているので、このために必要な時間から圧力媒体の品質、たとえばその粘性、その温度および/またはその不純物度を帰納的に推定することができる。場合によっては、電子制御器142からドライバーに圧力媒体交換を推奨する旨を出力させてよい。その際に検知される時間は、観察時間が終了した後に、充填レベル監視機構が観察時間前に表示していた信号を再び出力するまでに経過する時間である。
【0023】
図2は、圧力媒体貯留容器212を備えた圧力媒体回路210の概略図であり、圧力媒体貯留容器の貯留室は互いに連通し合っている2つの圧力媒体チャンバー214,216に分割されている。このため、両圧力媒体チャンバー214,216は中間壁218により互いに仕切られており、中間壁は、圧力媒体貯留容器212の底部側のその端部に、所定の開口横断面を備えた補償開口部220を有している。両圧力媒体チャンバー214,216はそのそれぞれの容積に関して異なる大きさに形成され、その際両圧力媒体チャンバーのうちより小さい圧力媒体チャンバー214が充填レベル監視機構222を備えている。この充填レベル監視機構222は、たとえば、センサ要素226に沿って案内されている、磁石を備えたフロート224である。センサ要素226には、たとえば開閉接点228が圧力媒体チャンバー214の内部の、圧力媒体貯留容器212の最小充填高さを表す個所に配置されている。圧力媒体貯留容器212の充填レベルはこの最小充填高さ以下であってはならない。それにもかかわらずそのような事例が発生した場合には、フロート224によって担持されている磁石により、開閉接点228がその構成に依存して2つの接点を閉じ、または、2つの接点が結合していればこれを遮断する。このような開閉接点228はリード接点としても知られている。開閉接点228とは択一的に、フロート224を、センサ要素226に固定されているポテンショメータを操作するために用いてもよく、このときポテンショメータには、圧力媒体チャンバー214,216の充填レベルに依存してフロート224とは異なる大きさの抵抗値が設定される。したがって、充填レベルの変化はセンサ要素226の出力信号の連続的な、または不断の変化を生じさせる。
【0024】
さらに、センサ要素226のその都度の出力信号を検知して評価する電子制御器230が設けられている。
【0025】
圧力媒体貯留容器212の外側では、両圧力媒体チャンバー214,216が圧力媒体結合部232を介して連結されている。この圧力媒体結合部232内には圧力媒体搬送機構234があり、圧力媒体搬送機構は、圧力媒体を圧力媒体貯留容器212のより小さいほうの第1の圧力媒体チャンバー214からより大きいほうの第2の圧力媒体チャンバー216へ搬送することができ、これによって第1の圧力媒体チャンバー214内での充填レベルを降下させる。
【0026】
図3は、図1および図2との関連ですでに説明した方法をもう一度フローチャートを用いて説明する図である。
【0027】
まず、この方法の第1のステップ310で、液圧回路の圧力発生器がいま電子的に起動されているか、または作動していないかどうかを確認する。圧力発生器が作動している場合には、矢印312に従って方法を終了し、後の時点で新たにスタートさせる。
【0028】
圧力発生器が作動していない場合には、電子制御器により、第2のステップ314で、圧力発生器の駆動モータに対する起動信号の出力を行い、これによって圧力発生器を始動させる。起動信号は予め設定可能な時間の間出力され、その際この時間は、貯留容器の第1の圧力媒体チャンバー内の充填レベルを最小充填高さにまで降下させるために圧力発生器が必要とする時間によって決定されている。したがってこの時間は、圧力媒体貯留容器のチャンバー内での圧力媒体体積と、最小圧力媒体体積と、単位時間当たりの圧力発生器の搬送量とに依存しており、よって最終的には圧力媒体の粘性に依存しており、圧力発生器および圧力媒体貯留容器の既知の幾何学的設計と、管横断面積または周囲温度とによって決定可能であり、または、電子制御器によって予め設定可能である。
【0029】
圧力発生器の操作の時間の間、充填レベル監視機構の信号チェック(ポジション316)を電子制御器内で実施する。その際、信号が絶えず変化しているかどうか、または、観察時間の終了付近で信号跳躍が発生しているかどうかを調べる。これらの結果のうちの1つが該当していれば、充填レベル監視機構の作動状態が正常であることから出発し、ドライバーへの警告信号の出力を電子制御器によって抑止する。これをもって本方法は終了し、後の時点で最初から新たにスタートさせる(ポジション318)。
【0030】
しかしながら、信号推移がこれらの予想に対応していなければ、充填レベル監視機構の機能不全があり、ポジション320に従って警告信号を、好ましくは音響警告信号、光学的警告信号および/または触感的警告信号をドライバーに発する。
【0031】
説明した方法は規則的に実施されるべきであり、たとえば車両の比較的長い停止時間後、または、車両の駆動装置を新たに始動するたびに実施されるべきである。
【0032】
この一連の方法ステップに対し並行な一連の方法ステップで、電子制御器により、圧力発生器の駆動モータを電子起動する前の時点で充填レベル監視機構の出力信号を検知する(ポジション322)。
【0033】
圧力媒体チャンバー内の充填レベルを最小値へ降下させるための圧力発生器の操作の時間の終了後、充填レベル監視機構が再びこの出力信号を表示するまでに経過する時間を測定する(ポジション324)。したがってこの時間は、1つの貯留容器の少なくとも2つの圧力媒体チャンバー内での圧力媒体レベルが再び互いに整合しあうまでにどの程度経過するかを表している。周囲温度または新品状態での圧力媒体の粘性および貯留容器の圧力媒体チャンバー間の仕切り壁に設けた補償開口部の流動横断面積は既知であるので、継続時間から、電子制御器により、圧力媒体の品質を帰納的に推定でき(ポジション326)、この場合の圧力媒体の品質とは、現時点でのその粘性、その含水量またはその汚染度等のことである。場合によっては、電子制御器により、圧力媒体を交換するよう推奨してよい(ポジション328)。他方では、このような推奨を抑止して、圧力媒体のこのような品質チェックを後の時点で新たにスタートさせる。圧力媒体の確定した品質は、電子制御器142によって、図1に示したブレーキ回路120,122内のブレーキ圧を圧力発生器114および弁132,134によって調整するための制御信号を算出する際に、考慮することができる。
【0034】
もちろん、本発明の基本思想を逸脱しなければ、本発明の基礎を成す方法の説明した実施形態における更なる変更または補完を行ってよい。
【符号の説明】
【0035】
110 車両ブレーキ装置
112 車輪ブレーキ
114 圧力発生器
118 ブレーキマスタシリンダ
120;122;210 圧力媒体回路
130 遮断弁
136 回路切り離し弁
142;230 電子制御器
146,148;150;214,216 圧力媒体チャンバー
220 補償開口部
222 充填レベル監視機構
232 圧力媒体結合部
234 圧力媒体搬送機構
図1
図2
図3