特許第6987259号(P6987259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987259
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】細菌株を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20211213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20211213BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20211213BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61K35/741
   A61P43/00 111
   A61P25/00
   A61P25/14
   A61P25/18
   A61P25/22
   A61P9/10
   A61P29/00
   A61P37/06
   A61P35/00
   A61P1/04
   C12N1/20 AZNA
   A23L33/135
【請求項の数】15
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2020-540266(P2020-540266)
(86)(22)【出願日】2019年6月25日
(65)【公表番号】特表2021-522160(P2021-522160A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(86)【国際出願番号】EP2019066905
(87)【国際公開番号】WO2020002370
(87)【国際公開日】20200102
【審査請求日】2020年12月21日
(31)【優先権主張番号】18179641.8
(32)【優先日】2018年6月25日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】1814836.1
(32)【優先日】2018年9月12日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1905000.4
(32)【優先日】2019年4月9日
(33)【優先権主張国】GB
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB43042
【微生物の受託番号】NCIMB  NCIMB43171
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514079985
【氏名又は名称】フォーディー ファーマ リサーチ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】4D PHARMA RESEARCH LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】ユイール サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】レイハート ニコール
(72)【発明者】
【氏名】リード サラ
(72)【発明者】
【氏名】アーメッド スアード
(72)【発明者】
【氏名】サヴィニャック ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ムルダー イムケ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】エトール アンナ
【審査官】 吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】 New Microbe and New Infect,2016年,Vol. 12,p. 54-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61P 1/00−43/00
C12N 1/00−1/38
A23L 33/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性によって媒介される疾患または病態の治療または予防に使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物。
【請求項2】
クラスI HDAC活性の上昇によって媒介される疾患または病態の治療または予防に使用するための、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
クラスI HDAC活性の上昇によって媒介される疾患または病態の治療においてクラスI HDAC活性を選択的に阻害する方法に使用するための、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記組成物が、HDAC1、HDAC2またはHDAC3の活性の上昇によって媒介される疾患または病態におけるHDAC1、HDAC2またはHDAC3の選択的阻害に使用するためのものである、請求項1〜のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項5】
HDAC活性が上昇している患者に使用するための、請求項1〜のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項6】
神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病もしくはパーキンソン病など;脳損傷、例えば、脳卒中など;行動障害もしくは精神障害、例えば、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、不安障害、双極性障害、もしくは心的外傷後ストレス障害など;炎症性もしくは自己免疫性の疾患、例えば、喘息、関節炎、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、もしくは炎症性腸疾患、例えば、クローン病など;またはがん、例えば、前立腺癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌もしくは胃癌などからなる一覧から選択される疾患または病態の治療または予防に使用するための、請求項1〜のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項7】
神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病またはパーキンソン病など、脳損傷、例えば、脳卒中など、炎症性または自己免疫性の疾患、例えば、喘息、関節炎、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、または炎症性腸疾患、例えば、クローン病もしくは潰瘍性大腸炎など;あるいはがん、例えば、前立腺癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌または胃癌などからなる一覧から選択される疾患または病態の治療または予防に使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物。
【請求項8】
前記細菌株がBariatricus massiliensis種の菌株である、請求項1〜のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記細菌株が、配列番号1もしくは配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%もしくは99.9%同一な16s rRNA遺伝子配列を有する、または前記細菌株が、配列番号1もしくは配列番号2で表される16s rRNA遺伝子配列を有する、請求項1〜のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記組成物が経口投与用である、請求項1〜のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記細菌株が凍結乾燥されている、請求項1〜10のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の使用のための、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を含む食品。
【請求項13】
Bariatricus属の細菌株を含む、ヒストン脱アセチル化酵素活性の上昇によって媒介される疾患または病態の治療剤または予防剤。
【請求項14】
受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株の細胞。
【請求項15】
治療において使用するための、好ましくは、請求項の1項で定義される疾患または病態の治療または予防に使用するための、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の消化管から単離される細菌株を含む組成物、及び疾患の治療におけるそのような組成物の使用の分野のものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの腸は子宮内では無菌と考えられているが、出生後はすぐに母体及び環境の多種多様な微生物に曝される。その後、微生物の定着及び連鎖の動的期間があるが、この定着及び連鎖は、分娩様式、環境、食事、及び宿主の遺伝子型などの因子により影響を受け、特に幼少期は、それらの因子の全てが腸内微生物叢の組成に影響を与える。その後、微生物叢は安定し、成体様になる[1]。ヒト腸内微生物叢は、500〜1000を超える様々な系統型を含んでおり、この系統型は基本的に細菌のBacteroidetes門及びFirmicutes門の2つに大別される門に属する[2]。細菌のヒト腸への定着から生じる共生関係が成功することにより、多種多様な代謝的、構造的、保護的、及び他の有益な機能がもたらされる。定着された腸の増強された代謝活性により、本来なら難消化性の食事成分が、副産物の放出と共に確実に分解され、重要な栄養源が宿主に与えられる。同様に、腸内微生物叢が免疫学的に重要であることも十分に認識されており、免疫不全の無菌動物において、共生細菌導入後に免疫系が機能的に回復することが例証されている[3、4、5]。
【0003】
微生物叢組成の劇的な変化が、炎症性腸疾患(IBD)などの胃腸障害において記録されてきた。例えば、ClostridiumクラスターXIVa細菌のレベルは、IBD患者において低減しているが、E.coliの数は増加しており、腸内の共生生物と病原性共生生物とのバランスがシフトしていることが示唆される[6、7、8、9]。興味深いことに、この微生物叢の乱れ(dysbiosis)はTエフェクター細胞集団のバランスの乱れにも関連している。
【0004】
ある特定の細菌株が動物の腸に与えうる潜在的な好ましい効果の認識において、様々な疾患の治療に使用するための様々な株が提案されている(例えば、[10、11、12、13]を参照のこと)。また、ほとんどのLactobacillus株及びBifidobacterium株を含め特定の菌株が、腸とは直接関係のない様々な炎症性及び自己免疫性の疾患の治療での使用に提案されている([14]及び[15]の総説を参照のこと)。しかしながら、異なる疾患と異なる細菌株との間の関係、特定の細菌株が腸及び全身レベルならびに何らかの特定の種類の疾患へ与える正確な効果は、十分に特徴付けられていない。
【0005】
疾患を治療する新しい方法が当該技術分野において必要とされている。さらに、腸内細菌を使用した新しい治療を開発できるような腸内細菌の潜在的効果を特徴付けることが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、治療に使用されうるBariatricus属の細菌株を含む新しい組成物を開発した。特に、本発明者らは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性によって媒介される疾患または病態(condition)の治療及び予防に使用するための、Bariatricus属の菌株を含む新しい組成物を開発した。本発明者らは、Bariatricus属由来の細菌株がヒストン脱アセチル化酵素活性の低下に有効であることを確認した。ヒストン脱アセチル化酵素活性は、自己免疫性または炎症性の疾患及び病態を非限定的に含む一連の疾患及び病態における病理学的症状を仲介することが示されており、そのような自己免疫性または炎症性の疾患及び病態としては、移植片対宿主病(GVHD)、クローン病などの炎症性腸疾患、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳卒中などの脳損傷、及び一連のがんが挙げられるがこれに限定されない。したがって、本発明の組成物には、少なくとも部分的にHDAC活性によって媒介される複数の疾患の治療または予防における多面的利益がありうる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、HDAC活性の増大によって媒介される疾患を予防する治療に使用するためのものである。
【0007】
実施例に記載されるように、Bariatricusを含む組成物の経口投与は、疾患モデルにおいてヒストン脱アセチル化酵素の活性を低下させうる。また、実施例に記載されるように、Bariatricusを含む組成物の経口投与は、疾患のマウスモデルにおいて多動性を軽減しうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、多動性に関連した疾患または病態の治療または予防において使用されてよい。組成物は、多動性の治療または予防において使用されてよい。組成物は、行動障害、例えば、注意欠陥多動性障害に関連した多動性の治療または予防において使用されてよい。したがって、本発明者らは、組成物が、HDAC活性によって媒介される疾患の予防または治療において有効であること、及び組成物が行動障害の治療または予防において有効であることを確認した。本発明の組成物による治療に好適な行動障害は、部分的にHDAC活性によって媒介されてもされなくてもよい。
【0008】
第1の実施形態では、本発明は、治療に使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物を提供する。
【0009】
特定の実施形態では、本発明は、HDAC活性によって媒介される疾患の治療及び予防に使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物を提供する。本発明者らが、この属由来の細菌株による治療でHDACの活性を低下させることができることを確認したことにより、HDAC活性によって媒介される疾患の治療における臨床的利益を提供することができる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、クラスI HDAC活性を低下させる上で特に有益であることが分かっている。クラスI HDACは偏在的に発現し、核内に最も多く存在する。クラスI HDACは、ヒストンのリジン残基を脱アセチル化してヒストンに正電荷を回復させ、それにより、ヒストンとDNAの間の静電結合が増加する。したがって、HDAC活性はクロマチンの凝縮を増大させ、内在するDNA配列における遺伝子発現の下方制御を生じさせる。HDACには、非ヒストン標的タンパク質を修飾することによる、さらなる調節作用もある。非ヒストン標的タンパク質のアセチル化を阻害することは、クロマチンの弛緩による遺伝子発現制御に直接には関連していない、疾患の他の側面を治療または予防する際に有益でありうる。したがって、特定の実施形態では、本発明の組成物は、標的遺伝子発現を調節するために使用することができる。
【0010】
特定の実施形態では、本発明は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病もしくはパーキンソン病など;脳損傷、例えば、脳卒中など;行動障害もしくは精神障害、例えば、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、不安障害、双極性障害、もしくは心的外傷後ストレス障害など;炎症性もしくは自己免疫性の疾患、例えば、喘息、関節炎、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、もしくは炎症性腸疾患、例えば、クローン病など;またはがん、例えば、前立腺癌、大腸癌(colorectal cancer)、乳癌、肺癌、肝癌もしくは胃癌からなる群から選択される疾患または病態を治療または予防する方法において使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物を提供する。Bariatricus属由来の細菌株で示されたHDAC活性に対する効果は、上掲のようなHDAC活性異常によって媒介される疾患及び病態に治療的利益を提供しうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC発現が増加している疾患または病態の治療における治療的利益を提供しうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC活性が増大している疾患または病態の治療における治療的利益を提供しうる。さらに、本発明者らは、Bariatricus属の細菌株による治療は、LPSによって炎症誘発性分子、例えば、IL−6などの活性化を低下させることができることを確認した。IL−6により誘導された慢性炎症は最終的に細胞死を招きうる。したがって、本発明の細菌株は、炎症性または自己免疫性の障害の治療または予防において特に有用でありうる。いくつかの実施形態では、細菌株は、IL−6の活性化増強を特徴とする炎症性または自己免疫性の障害の治療において有用である。さらに、本発明者らは、Bariatricus属の細菌株による治療は、MAP2(微小管結合タンパク質2)の活性化を増大させることができることを確認した。MAP2は、MAP2のニューロン分化に関連した遺伝子であり、神経突起生成における微小管形成にとって不可欠であると考えられているため、本発明の組成物は、神経変性疾患または脳損傷の治療に特に有用でありうる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、MAP2の活性化またはMAP2レベルの増大による神経変性疾患の治療に使用するためのものである。さらに、本発明者らは、Bariatricus属の細菌株による治療は腸でのIDO1の発現を改変させることができることを確認した。結腸でのIDO1発現は、大腸炎のマウスモデルにおいて疾患の改善に関連している。したがって、本発明の細菌株は、炎症性腸疾患の治療または予防において特に有用でありうる。さらに、本発明者らは、Bariatricus属の細菌株による治療は、脳での多数の遺伝子の発現を改変させることができること、例えば、海馬及び前頭前皮質でのBDNFの発現を増大させることができることを確認した。BDNFは、成体のシナプス可塑性及び記憶の形成にとって不可欠であり、アルツハイマー病患者及びハンチントン病患者ではBDNFレベルの低下が観察される。したがって、本発明の細菌株は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病及びハンチントン病の治療または予防において特に有用でありうる。
【0011】
いくつかの実施形態では、Bariatricus属由来の細菌株は、注意欠陥多動性障害、反抗挑戦性障害及び素行障害からなる一覧から選択される行動障害の治療において治療的利益を提供しうる。本発明者らは、Bariatricus株による治療が、ADHDのような行動障害の症状である多動性を軽減することをマウスにおいて確認した。したがって、本発明の菌株は、行動障害の治療または予防、特に、ADHDのような多動性に関連した行動障害の治療または予防に有用でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象の多動性の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、行動障害の治療または予防に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、ADHDの治療または予防に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、Bariatricus属由来の細菌株は、GVHDの治療または予防において治療的利益を提供しうる。本発明者らは、Bariatricus株による治療は、マウスにおいてGVHDの生存を延長させることを確認した。したがって、本発明の菌株は、GVHDの治療または予防に有用でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも部分的にHDAC活性によって媒介されるGVHDの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象のGVHDの治療または予防に使用するためのものである。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、HDAC活性によって媒介される神経変性疾患を治療または予防する方法において使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、HDAC活性によって媒介される神経変性疾患の症状の治療または予防に有用でありうる。本発明者らは、本発明の菌株がHDAC活性を阻害することを確認した。ヒストンのアセチル化及び脱アセチル化は遺伝子発現の重要なエピジェネティック調節因子である。アルツハイマー病、ハンチントン病及びパーキンソン病などの神経変性疾患の病因には、ヒストンアセチル化の不均衡の関与が示唆されている。いくつかの実施形態では、本発明の菌株は、加齢に伴う神経変性疾患の治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、加齢発症(age−onset)パーキンソン病または加齢発症(age−onset)アルツハイマー病などの加齢発症(age−onset)神経変性疾患の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、神経変性疾患の治療または予防に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、アルツハイマー病、ハンチントン病またはパーキンソン病の治療または予防に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、HDAC活性によって媒介される炎症性腸疾患を治療または予防する方法において使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物を提供する。HDAC活性阻害は、消化管での炎症性サイトカインの産生を抑制することが示されている。したがって、本発明の組成物は、炎症性疾患の治療に有用でありうる。特に、本発明の組成物は、結腸の炎症性サイトカイン病理の発症が高いことに関連した病態の治療または予防に有用でありうる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、炎症性腸疾患の治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、潰瘍性大腸炎の治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、クローン病の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、炎症性疾患の治療または予防に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、大腸炎の治療または予防に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、組成物は、脳損傷の治療に使用するためのものである。本発明の組成物の神経保護活性及びそれらがヒストン脱アセチル化酵素活性(HDAC)のレベルを低下させる能力により、本発明の組成物は脳損傷の治療に有用となりうる。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の治療、例えば、脳卒中に起因する脳損傷の治療に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、脳損傷、特に脳卒中の治療または予防に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、がんの治療または予防に使用するためのものである。がん細胞の生存及び腫瘍の免疫回避には、がんにおけるアセチル化経路の調節異常が関与することが示唆されている。例えば、HDACに仲介されたp53の脱アセチル化により、p53の安定性及び半減期が低減する。アセチル化されたp53は、細胞周期調節遺伝子及びアポトーシス促進性遺伝子と結合して、それらの発現を非常に有効に調節し、がん細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを促進する。したがって、p53の脱アセチル化は、がん細胞のアポトーシスを阻害し、がん細胞生存を増大させうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、がんの治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、非変異p53を有するがんの治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、がん細胞のアポトーシスを増大させる方法において使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、腫瘍の免疫回避を減少させる方法において使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、HDAC活性が増大しているがんの治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、アポトーシス促進性薬物として使用する、例えば、がんの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、がんの治療または予防に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0017】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、がん、例えば、乳癌、肺癌または肝癌などを治療または予防する方法において使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物を提供する。特定の実施形態では、組成物は、がんの治療において腫瘍サイズを縮小させるかまたは腫瘍増殖を阻止する方法において使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、がんの治療に使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。
【0018】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、ヒストン脱アセチル化酵素活性によって媒介される疾患または病態の治療または予防においてヒストン脱アセチル化酵素活性を低下させる方法において使用するためのものである。
【0019】
特定の実施形態では、組成物は、ヒストン脱アセチル化酵素活性が上昇している患者に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、クラスI HDAC活性が上昇している患者に使用するためのものである。Bariatricus株で示されたヒストン脱アセチル化酵素活性に対する効果は、そのような患者の場合に特に有益でありうる。
【0020】
本発明の特定の実施形態では、組成物中の細菌株はBariatricusの株である。本発明の特定の実施形態では、組成物中の細菌株はBariatricus massiliensisの株である。近縁株、例えば、配列番号1または配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一な16s rRNA遺伝子配列を有する細菌株を使用してもよい。好ましくは、本発明に使用するための細菌株は、配列番号1で表される16s rRNA遺伝子配列を有する。好ましくは、本発明に使用するための細菌株は、配列番号2で表される16s rRNA遺伝子配列を有する。
【0021】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、経口投与用である。本発明の菌株の経口投与は、HDAC活性によって媒介される疾患及び病態の治療に有効でありうる。特定の実施形態では、本発明の菌株の経口投与は、クラスI HDAC活性によって媒介される疾患及び病態の治療に有効でありうる。また、経口投与は、患者及び医療提供者にとって都合がよく、腸への送達及び/または部分的もしくは全体的な定着を可能にする。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、1または2以上の薬理学的に許容される添加剤または担体を含む。
【0023】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、凍結乾燥されている細菌株を含む。凍結乾燥は、細菌送達を可能にする安定な組成物の調製に有効かつ好都合な技法である。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、上記のような組成物を含む食品を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、Bariatricus属の細菌株を含む組成物を投与することを含む、HDAC活性によって媒介される疾患または病態を治療または予防する方法を提供する。
【0026】
上記発明を開発する際、本発明者らは、治療に特に有用な細菌株を同定して特徴付けた。本発明のBariatricus massiliensis株は、脳卒中、ADHD及びGVHDなど、本明細書に記載の疾患の治療に有効であることを示す。したがって、別の態様では、本発明は、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞を提供する。本発明はまた、そのような細胞、またはそのような細胞の生物学的に純粋な培養物を含む組成物を提供する。本発明はまた、治療、特に、本明細書に記載の疾患の治療に使用するための、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞を提供する。本発明は、受託番号NCIMB43171で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞を提供する。本発明はまた、そのような細胞、またはそのような細胞の生物学的に純粋な培養物を含む組成物を提供する。本発明はまた、治療、特に、本明細書に記載の疾患の治療に使用するための、受託番号NCIMB43171で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞を提供する。本発明のさらなる実施形態を番号付けして以下に記載する。
【0027】
1.治療に使用するための、Bariatricus属の細菌株を含む組成物。
【0028】
2.ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性によって媒介される疾患または病態の治療または予防に使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0029】
3.クラスI HDAC活性によって媒介される疾患または病態の治療または予防に使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0030】
4.クラスI HDAC活性によって媒介される病態におけるクラスI HDAC活性を阻害する方法において使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0031】
5.クラスI HDAC活性によって媒介される病態におけるクラスI HDAC活性の選択的阻害方法において使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0032】
6.前記組成物が、HDAC1、HDAC2またはHDAC3の活性によって媒介される疾患または病態におけるHDAC1、HDAC2またはHDAC3の選択的阻害に使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0033】
7.前記組成物が、HDAC活性を阻害することが有益である疾患または病態の治療または予防に使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0034】
8.HDAC活性が上昇している患者に使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0035】
9.神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病もしくはパーキンソン病など;脳損傷、例えば、脳卒中など;行動障害もしくは精神障害、例えば、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、不安障害、双極性障害、もしくは心的外傷後ストレス障害など;炎症性もしくは自己免疫性の疾患、例えば、喘息、関節炎、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、もしくは炎症性腸疾患、例えば、クローン病など;またはがん、例えば、前立腺癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌もしくは胃癌などからなる一覧から選択される疾患または病態の治療または予防に使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0036】
10.神経変性疾患の治療または予防において使用され、好ましくは、前記細菌株がBariatricus massiliensis種の菌株である、実施形態9に記載の組成物。
【0037】
11.パーキンソン病の治療または予防に使用するための、実施形態10に記載の組成物。
【0038】
12.ハンチントン病の治療または予防に使用するための、実施形態10に記載の組成物。
【0039】
13.アルツハイマー病の治療または予防に使用するための、実施形態10に記載の組成物。
【0040】
14.行動障害の治療または予防において使用され、好ましくは、前記細菌株がBariatricus massiliensis種の菌株である、実施形態9に記載の組成物。
【0041】
15.注意欠陥多動性障害の治療または予防に使用するための、実施形態14に記載の組成物。
【0042】
16.行動障害の治療または予防において使用され、好ましくは、前記細菌株がBariatricus massiliensis種の菌株である、実施形態10に記載の組成物。
【0043】
17.注意欠陥多動性障害の治療または予防に使用するための、実施形態14に記載の組成物。
【0044】
18.多動性の治療または予防において使用され、好ましくは、前記細菌株がBariatricus massiliensis種の菌株である、実施形態9に記載の組成物。
【0045】
19.炎症性腸疾患の治療または予防において使用され、好ましくは、前記細菌株がBariatricus massiliensis種の菌株である、実施形態9に記載の組成物。
【0046】
20.潰瘍性大腸炎の治療または予防に使用するための、実施形態19に記載の組成物。
【0047】
21.クローン病の治療または予防に使用するための、実施形態19に記載の組成物。
【0048】
22.がんの治療または予防に使用するための、実施形態9に記載の組成物。
【0049】
23.前記がんが、前立腺癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌または胃癌からなる一覧から選択される、実施形態22に記載の使用のための組成物。
【0050】
24.炎症性または自己免疫性の疾患の治療または予防に使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0051】
25.移植片対宿主病の予防または治療に使用するための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0052】
26.前記細菌株がBariatricus massiliensis種の菌株である、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0053】
27.前記細菌株が、配列番号1と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一な16s rRNA遺伝子配列を有する、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0054】
28.前記細菌株が、配列番号1で表される16s rRNA遺伝子配列を有する、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0055】
29.前記細菌株が、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一な16s rRNA遺伝子配列を有する、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0056】
30.前記細菌株が、配列番号2で表される16s rRNA遺伝子配列を有する、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0057】
31.前記組成物が経口投与用である、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0058】
32.前記組成物が、1または2以上の薬理学的に許容される添加剤または担体を含む、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0059】
33.前記細菌株が凍結乾燥されている、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0060】
34.ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬物として使用される、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0061】
35.クラスIヒストン脱アセチル化酵素阻害薬物として使用される、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0062】
36.HDAC2阻害薬物として使用される、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0063】
37.選択的HDAC2阻害薬物として使用される、先行実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0064】
38.先行実施形態のいずれかの使用のための、先行実施形態のいずれかに記載の組成物を含む食品。
【0065】
39.ヒストン脱アセチル化酵素活性によって媒介される疾患または病態を治療または予防する方法であって、Bariatricus属の細菌株を含む組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【0066】
40.受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞。
【0067】
41.治療において使用され、好ましくは、実施形態2〜25の1つで定義される疾患または病態の治療または予防に使用するための、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞。
【0068】
42.受託番号NCIMB43171で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞。
【0069】
43.治療において使用され、好ましくは、請求項2〜25の1項で定義される疾患または病態の治療または予防に使用するための、受託番号NCIMB43171で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1Aは、全細胞のヒストン脱アセチル化酵素活性、図1Bは、細胞溶解物のヒストン脱アセチル化酵素活性
図2】Bariatricus massiliensis株43042の代謝産物産生レベル
図3図3AはクラスI HDACの阻害、図3BはHDAC1の阻害、図3CはHDAC2の阻害、図3DはHDAC3の阻害
図4】菌株43042はマウスにおいて多動性を軽減する
図5】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおけるGVHD体重データ。試験期間中、動物の体重を毎日測定した。特に明記しない限り、アスタリスクは群1と比較した有意性を示し、ナンバー記号は群2と比較した有意性を示し、点は群3と比較した有意性を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。データは、平均±SEMとして提示される。1群あたりn=8〜12。
図6】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおけるGVHD体重データ。試験期間中、動物の体重を毎日測定し、−14日目に対する体重変化率(%)を示す。特に明記しない限り、アスタリスクは群1と比較した有意性を示し、ナンバー記号は群2と比較した有意性を示し、点は群3と比較した有意性を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。データは、平均±SEMとして提示される。1群あたりn=8〜12。
図7】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおけるGVHD体重データ。試験期間中、動物の体重を毎日測定し、0日目に対する体重変化率(%)を示す。特に明記しない限り、アスタリスクは群1と比較した有意性を示し、ナンバー記号は群2と比較した有意性を示し、点は群3と比較した有意性を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。データは、平均±SEMとして提示される。1群あたりn=8〜12。
図8】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおけるGVHD体重データであり、群の脱落を考慮に入れ、群2を除く全群について、死亡して発見された動物または安楽死させた動物では、動物死亡時の体重を用いて試験期間中そのまま進めた。特に明記しない限り、アスタリスクは群1と比較した有意性を示し、ナンバー記号は群2と比較した有意性を示し、点は群3と比較した有意性を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。データは、平均±SEMとして提示される。1群あたりn=8〜12。
図9】タクロリムス(FK506)を投与したマウスモデルにおけるGVHD体重データ、***:p≦0.005。
図10】Bariatricus massiliensis株43171と併用投与したマウスモデルにおける動物の生存
図11】タクロリムス(FK506)と併用投与したマウスモデルにおける動物の生存
図12】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおけるGVHDの臨床スコア。0日目から30日目まで連日、動物をGVHDの臨床スコアに割り付けた。台形変形則法(trapezoidal transformation rule)を使用して曲線下面積(AUC)を計算し、それを挿入図として示す。特に明記しない限り、アスタリスクは群1と比較した有意性を示し、ナンバー記号は群2と比較した有意性を示し、点は群3と比較した有意性を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。データは、平均±SEMとして提示される。1群あたりn=8〜12。
図13】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおけるGVHDの臨床スコア。0日目から30日目まで連日、動物をGVHDの臨床スコアに割り付けた。群の脱落を考慮に入れるため、群2を除く全群について、死亡して発見された動物または安楽死させた動物では、動物死亡時のGVHDスコアを用いて試験期間中そのまま進めた。台形変形則法(trapezoidal transformation rule)を使用して曲線下面積(AUC)を計算し、それを挿入図として示す。特に明記しない限り、アスタリスクは群1と比較した有意性を示し、ナンバー記号は群2と比較した有意性を示し、点は群3と比較した有意性を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。データは、平均±SEMとして提示される。1群あたりn=8〜12。
図14-1】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおけるGVHD複合スコアで使用された(A)姿勢、及び(B)動作。
図14-2】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおけるGVHD複合スコアで使用された(C)毛並み、(D)皮膚の健全性、及び(E)体重減少。
図15】タクロリムス(FK506)を投与したマウスモデルにおけるGVHDの臨床スコア
図16】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスモデルにおける大腸炎重症度スコア。29日目に動物にビデオ内視鏡検査を実施し、結腸炎症を評価した。特に明記しない限り、アスタリスクは群1と比較した有意性を示し、ナンバー記号は群2と比較した有意性を示し、点は群3と比較した有意性を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。データは、平均±SEMとして提示される。1群あたりn=8〜12。
図17】結腸内視鏡検査の代表的イメージ。
図18】Bariatricus massiliensis株43171を投与したマウスにおける血漿シトルリン濃度。全生存動物から安楽死前に血液を採取し、処理して血漿を得、血漿シトルリンをELISAによって2連で評価した。分析用に血漿を1:10に希釈した。特に明記しない限り、アスタリスクは群1と比較した有意性を示し、ナンバー記号は群2と比較した有意性を示し、点は群3と比較した有意性を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001。データは、平均±SEMとして提示される。1群あたりn=8〜12。
図19】IL−6分泌濃度。
図20】MAP2の活性化。
図21】Bariatricusを投与したマウスの回腸(A)及び結腸(B)でのIDO1発現。*p<0.05。
図22】Bariatricusを投与したマウスの海馬でのグルココルチコイド受容体(A)、ミネラルコルチコイド受容体(B)、BDNF(C)、Grin 2B(D)、CRH(E)、CFR1(F)、CD11b(G)及びGABA A2(H)の発現。*p<0.05。
図23】Bariatricusを投与したマウスの扁桃体でのオキシトシン受容体(A)、グルココルチコイド受容体(B)、ミネラルコルチコイド受容体(C)、Grin 2A(D)及びGrin 2B(E)の発現。*p<0.05。
図24】Bariatricusを投与したマウスの前頭前皮質でのBDNF(A)、CRFR1(B)及びミネラルコルチコイド受容体(C)の発現。*p<0.05、**p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0071】
細菌株
本発明の組成物は、Bariatricus属の細菌株を含む。実施例は、この属の細菌が、HDAC活性によって媒介される疾患及び病態の治療または予防に有用であることを示している。好ましい細菌株は、Bariatricus massiliensis種の菌株である。
【0072】
本発明に使用するためのBariatricus株の一例は、Bariatricus massiliensis種の菌株である。Bariatricusは、グラム反応陽性の桿状偏性嫌気性菌である(Bessis et al 2016 New Microbe and New Infect 12:54−55)。Bariatricus massiliensisはヒトの腸から単離されうる。実施例で使用するBariatricus massiliensis株の16S rRNA遺伝子配列は、配列番号1及び配列番号2として本明細書に開示される。さらなる例示的なBariatricus massiliensis株は、(Bessis et al 2016 New Microbe and New Infect 12:54−55)に記載されている。
【0073】
受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis細菌を各実施例で試験し、本明細書では菌株43042とする。試験した菌株43042の16S rRNA遺伝子配列を配列番号1に記載する。菌株43042は、2018年05月18日に「Bariatricus massiliensis」として4D Pharma Research Limited(Life Sciences Innovation Building,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって国際寄託当局NCIMB,Ltd.(Ferguson Building,Aberdeen,AB21 9YA,Scotland)に寄託され、受託番号NCIMB43042が割り当てられた。受託番号NCIMB43171で寄託されたBariatricus massiliensis細菌を各実施例で試験し、本明細書では菌株43171とする。試験した菌株43171の16S rRNA遺伝子配列を配列番号2に記載する。菌株43171は、2018年08月20日に「Bariatricus massiliensis」として4D Pharma Research Limited(Life Sciences Innovation Building,Cornhill Road,Aberdeen,AB25 2ZS,Scotland)によって国際寄託当局NCIMB,Ltd.(Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen,AB21 9YA Scotland)に寄託され、受託番号NCIMB43171が割り当てられた。
【0074】
実施例で試験した株に近縁な細菌株もまた、HDAC活性によって媒介される疾患及び病態の治療または予防に有効であると予測される。特定の実施形態では、本発明に使用するための細菌株は、配列番号1と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一な16s rRNA遺伝子配列を有する。好ましくは、本発明に使用するための細菌株は、配列番号1で表される16s rRNA遺伝子配列を有する。特定の実施形態では、本発明に使用するための細菌株は、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%同一な16s rRNA遺伝子配列を有する。好ましくは、本発明に使用するための細菌株は、配列番号2で表される16s rRNA遺伝子配列を有する。
【0075】
受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌の生物型である細菌株もまた、HDAC活性で媒介される疾患及び病態の治療または予防に有効であると予測される。生物型は、生理学的及び生化学的特徴が同じであるかまたは非常に類似している近縁株である。
【0076】
受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌の生物型であり、かつ、本発明での使用に好適な菌株は、受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌について他のヌクレオチド配列のシーケンシングにより同定されうる。例えば、実質的に全ゲノムのシーケンシングを行ってよく、本発明に使用するための生物型の菌株は、その全ゲノムの少なくとも80%にわたって(例えば、少なくとも85%、90%、95%もしくは99%にわたって、またはその全ゲノムにわたって)少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の配列同一性を有しうる。生物型の菌株の同定に使用される他の好適な配列として、hsp60または反復配列、例えば、BOX、ERIC、(GTG)、またはREPなどが含まれてよい[16]。生物型の菌株は、受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌の対応配列に対する配列同一性が少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%である配列を有しうる。
【0077】
あるいは、受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌の生物型であり、かつ、本発明での使用に好適な菌株は、受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171、ならびに制限断片分析及び/またはPCR分析を用いて、例えば、蛍光増幅断片長多型(FAFLP)及び反復DNAエレメント(rep)−PCRフィンガープリンティング、またはタンパク質プロファイリング、または16S rDNAもしくは23S rDNAの部分的シーケンシングを用いて同定されうる。好ましい実施形態では、そのような技術を使用して他のBariatricus株を同定してよい。
【0078】
特定の実施形態では、受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌の生物型であり、かつ、本発明での使用に好適な菌株は、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析した場合、例えば、Sau3AI制限酵素を使用した場合、受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌と同じパターンを提供する株である(例示的方法及びガイダンスについて、例えば、[17]を参照のこと)。あるいは、生物型の菌株は、受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として同定される。
【0079】
本発明の組成物及び方法に有用である他のBariatricus株、例えば、受託番号NCIMB43042またはNCIMB43171で寄託された細菌の生物型は、実施例に記載のアッセイなど、任意の適切な方法または戦略を用いて同定されうる。例えば、本発明に使用するための株は、HDAC活性アッセイに細菌を投与し、HDAC活性阻害を評価することによって同定されうる。NCIMB43042に匹敵するHDAC阻害活性のある細菌株は本発明での使用に好適である。特に、増殖パターン、代謝型及び/または表面抗原が、受託番号NCIMB43042で寄託された細菌と同様である細菌株は、本発明に有用でありうる。有用な菌株は、各実施例で使用されるアッセイにおいて、NCIMB43042株に匹敵するHDAC阻害活性及び/またはNCIMB43042株に匹敵する多動性軽減効果を有し、実施例に記載の培養法及び投与プロトコルの使用により同定されうる。他の場合には、本発明に使用するための株は、実施例に記載の細菌をGVHDモデルに投与し、GVHDの治療における有効性を評価することにより同定されうる。実施例に記載の条件下、GVHDの治療に関して活性がNCIMB43171に匹敵する細菌株は、本発明での使用に好適である。
【0080】
本発明の特に好ましい菌株は、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株である。これは、実施例で試験した例示的な43042株であり、HDAC活性の低下及び多動性の軽減に有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞、例えば、単離された細胞などを提供する。本発明はまた、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株の生物学的に純粋な培養物を提供する。本発明はまた、治療、特に、本明細書に記載の疾患の治療に使用するための、受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株またはその派生物の細胞を提供する。
【0081】
受託番号NCIMB43042で寄託された菌株の派生物は、娘株(後代)または元株から培養(サブクローニング)された株であってよい。本発明の菌株の派生物は、生物学的活性を損ねなければ、例えば、遺伝子レベルなどで改変されてよい。特に、本発明の派生株は治療的に活性である。派生株は、元株であるNCIMB43042株に匹敵するHDAC阻害活性を有する。特に、派生株は、実施例で示されるHDAC阻害活性モデルまたは多動性モデルに対して比較可能な効果を発揮し、実施例に記載の培養法及び投与プロトコルの使用により同定されうる。NCIMB43042株の派生物は一般に、NCIMB43042株の生物型である。
【0082】
受託番号NCIMB43042で寄託されたBariatricus massiliensis株の細胞への言及は、安全性及び治療有効性という特性が受託番号NCIMB43042で寄託された株と同じであるいかなる細胞をも包含し、そのような細胞は本発明に包含される。
【0083】
本発明の特に好ましい別の菌株は、受託番号NCIMB43171で寄託されたBariatricus massiliensis株である。実施例で試験した例示的菌株43171は、GVHDの治療において有効であることが示されている。したがって、本発明は、Bariatricus massiliensis株43171またはその派生物の細胞、例えば、単離された細胞などを提供する。本発明はまた、Bariatricus massiliensis株43171またはその派生物の細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、Bariatricus massiliensis株43171の生物学的に純粋な培養物を提供する。本発明はまた、治療、特に、本明細書に記載の疾患の治療に使用するための、Bariatricus massiliensis株43171またはその派生物の細胞を提供する。
【0084】
受託番号NCIMB43171で寄託された菌株の派生物は、娘株(後代)またはオリジナル株から培養(サブクローニング)された株であってよい。本発明の菌株の派生物は、生物学的活性を損ねなければ、例えば、遺伝子レベルなどで改変されてよい。特に、本発明の派生株は、治療的に活性である。派生株は、実施例に記載の条件下、GVHDの治療に関して元株であるNCIMB43171株に匹敵する活性を有する。NCIMB43171株の派生物は一般に、NCIMB43171株の生物型である。
【0085】
受託番号NCIMB43171で寄託されたBariatricus massiliensis株の細胞への言及は、安全性及び治療有効性という特性が受託番号NCIMB43171で寄託された株と同じであるいかなる細胞をも包含し、そのような細胞は本発明に包含される。
【0086】
受託番号NCIMB43171で寄託されたBariatricus massiliensis株の細胞への言及は、安全性及び治療有効性という特性が受託番号NCIMB43171で寄託された株と同じであるいかなる細胞をも包含し、そのような細胞は本発明に包含される。
【0087】
好ましい実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は生存しており、腸に部分的または全体的に定着することができる。
【0088】
治療的使用
実施例において実証されるように、本発明の細菌組成物はHDAC活性低下に有効である。特に、本発明の組成物での治療により、クラス1 HDAC活性の低下が達成される。特に、本発明の組成物での治療により、HDAC2活性の低下が達成される。本発明の組成物はまた、多動性動物モデルにおいて臨床的改善を示す。したがって、本発明の組成物は、HDAC活性によって媒介される疾患または病態の治療または予防に有用でありうる。病態は、疾患の症状でありうる。特に、本発明の組成物は、HDACの活性レベルの上昇によって媒介される疾患または病態の抑制または予防に有用でありうる。特に、本発明の組成物は、クラスI HDACの活性レベルの上昇によって媒介される疾患または病態の抑制または予防に有用でありうる。特に、本発明の組成物は、HDAC2の活性レベルの上昇によって媒介される疾患または病態の抑制または予防に有用でありうる。
【0089】
ヒストン脱アセチル化酵素は、標的タンパク質からアセチル基を除去する酵素群である。HDACの標的として最も豊富なのはヒストンであるが、HDACは、非ヒストン標的タンパク質のリジン残基を脱アセチル化してタンパク質の活性を時間的に調節する。したがって、HDACはリジン脱アセチル化酵素と呼ばれることがある。現在のところ、13種のHDACが知られており、主に4つのクラスに分類され、クラスI(HDAC1、HDAC2、HDAC3及びHDAC8)、クラスIIa(HDAC4、HDAC5、HDAC7及びHDAC9)及びクラスIIb(HDAC6及びHDAC10)、クラスIII(sirt1〜sirt7)及びクラスIV(HDAC11)がある[7]。各クラスは一般に、組織発現パターン及び細胞内局在が異なる。
【0090】
タンパク質のアセチル化/脱アセチル化には一般に、タンパク質活性の翻訳後制御機構が使用される。ヒストンのアセチル化/脱アセチル化は、十分に確立された転写調節機構である。遺伝子調節は、ヒストン脱アセチル化酵素に仲介されて、ヒストンテールのリジンアミノ酸のε−N−アセチルからアセチル基が切断されることによって生じる。アセチル基の除去によりヒストンテールに正電荷が回復し、それにより、負電荷をもつホスホジエステルDNA骨格への結合がしやすくなる。結合が改善されると染色体がよりしっかりと凝集し、ヒストン脱アセチル化部位での遺伝子発現が全体的に低下する。
【0091】
ヒストン脱アセチル化酵素活性は、多様な疾患及び病態に関与することが示唆されている。ヒストン脱アセチル化酵素活性の阻害を利用して、これらの疾患または病態を軽減または改善することができる。ヒストン脱アセチル化酵素のPan阻害剤は、HDAC媒介性疾患の治療または予防に有用でありうる。アイソフォーム特異的HDAC阻害剤は、特定のHDACアイソフォームの活性によって媒介される疾患の治療または予防に有用でありうる。
【0092】
HDAC活性阻害は確立された治療法であり、ボリノスタット(CTCL)、ロミデプシン(CTCL)、キダミド(PTCL)、パノビノスタット(多発性骨髄腫)、ベリノスタット(T細胞性リンパ腫)など、HDAC阻害剤の多くは医薬品として承認されており、多くは臨床試験中であり、それらには、パノビノスタット(CTCL)、バルプロ酸(子宮頸癌及び卵巣癌、脊髄性筋萎縮症)、モセチノスタット(濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫及び急性骨髄性白血病)、アベキシノスタット(肉腫)、エンチノスタット(ホジキンリンパ腫、肺癌及び乳癌)、SB939(再発前立腺癌または転移前立腺癌)、レスミノスタット(ホジキンリンパ腫)、ギビノスタット(難治性の白血病及び骨髄腫)、HBI−800(黒色腫、腎細胞腫(RCC)、及び非小細胞肺癌(NSCLC)などの進行固形腫瘍)、ケベトリン(卵巣癌)、CUDC−101、AR−42(再発性または治療抵抗性の多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病またはリンパ腫)、CHR−2845、CHR−3996、4SC−202(血液学的に進行した適応)、CG200745(固形腫瘍)、ACY−1215(多発性骨髄腫)、ME−344(難治性固形腫瘍)、スルホラファン、及びトリコスタチン(抗炎症)が挙げられる。
【0093】
HDAC活性によって媒介される疾患または病態の例としては、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病またはパーキンソン病など、脳損傷、例えば、脳卒中など、行動障害、例えば、注意欠陥多動性障害など、炎症性腸疾患、例えば、クローン病など、がん、例えば、前立腺癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌または胃癌などが挙げられる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、これらの疾患または病態のうちの1つの治療または予防に使用される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC活性によって媒介されるこれらの疾患または病態のうちの1つの治療または予防に使用される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クラスI HDAC活性によって媒介されるこれらの疾患または病態のうちの1つの治療または予防に使用される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC2によって媒介されるこれらの疾患または病態のうちの1つの治療または予防に使用される。
【0094】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、治療に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC活性によって媒介される疾患または病態を予防する治療に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC活性によって媒介される疾患または病態の治療または予防における、HDAC活性を低下させる方法において使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、クラスI HDAC活性によって媒介される疾患または病態の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クラスI HDAC活性を阻害する方法において使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クラスI HDAC活性によって媒介される疾患の治療または予防における、クラスI HDAC活性の選択的阻害方法において使用するためのものである。本発明者らは、本発明の特定の組成物は、クラスI HDACを選択的に阻害することを確認した。本明細書で使用する場合、「選択的」とは、クラスI HDACに対する阻害効果が、例えば、他のクラスのHDACに対する阻害効果と比較して最も大きい組成物を指す。HDAC選択的な阻害は、治療剤の長期投与を必要とする疾患の治療、例えば、患者の生涯にわたり治療する必要がある疾患または病態の場合に都合がよい。特定の実施形態では、クラスI HDAC選択的阻害剤である本発明の組成物は、クラスI HDAC活性によって媒介される疾患または病態の緩和的な治療または予防に使用するためのものである。選択的阻害剤は、望ましくない他のクラスのHDACの阻害に関連した副作用を抑えることで、当該技術分野で公知のpan阻害剤より有利である。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC2選択的阻害剤である。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC2活性を選択的に低下させる方法において使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC2活性によって媒介される疾患の治療または予防に使用するためのものである。
【0095】
脳損傷
実施例は、本発明の組成物が神経保護作用を示し、かつ、HDAC阻害活性を有することを示している。HDAC2は、脳卒中からの機能回復に極めて重要な標的であり[18]、HDAC阻害は、白質傷害を阻止することができるため[19]、本発明の組成物は、脳損傷の治療に有用でありうる。
【0096】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、脳損傷の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、脳損傷は、外傷性脳損傷である。いくつかの実施形態では、脳損傷は、後天性脳損傷である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、外傷に起因する脳損傷の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、腫瘍に起因する脳損傷の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中に起因する脳損傷の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳出血に起因する脳損傷の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳炎に起因する脳損傷の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳低酸素症に起因する脳損傷の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳無酸素症に起因する脳損傷の治療に使用するためのものである。
【0097】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の治療に使用するためのものである。実施例に示す効果は、特に脳卒中の治療に関連している。脳卒中は、脳の少なくとも一部への血流が遮断されると発生する。脳組織に酸素及び栄養を提供し、脳組織から老廃物を除去する血液の十分な供給がなければ、脳細胞は急速に死に始める。脳卒中の症状は、不十分な血流による影響を受けている脳の領域によって異なる。症状として、筋肉の麻痺、しびれ感または脱力、平衡の喪失、めまい、突然の激しい頭痛、発語障害、記憶喪失、推論能力の喪失、突然の錯乱、視力障害、昏睡さらには死がある。脳卒中は、脳発作または脳血管障害(CVA)とも呼ばれる。十分な血流が短時間で回復すれば脳卒中の症状は短い。しかしながら、不十分な血流がかなりの期間続くと症状は永久的になりうる。
【0098】
いくつかの実施形態では、脳卒中は脳虚血である。脳虚血は、脳の組織への血流が不十分で代謝要求が満たされない場合に生じる。いくつかの実施形態では、脳虚血は、限局性脳虚血、すなわち、脳の特定領域に限局している。いくつかの実施形態では、脳虚血は全脳虚血である、すなわち、脳組織の広域を包含している。局所脳虚血は、脳血管が部分的または完全に遮断され、脳の特定領域への血流が低下する場合に概して生じる。いくつかの実施形態では、局所脳虚血は虚血性脳卒中である。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は血栓性である、すなわち、血栓または血餅によって生じ、脳血管で発達して血流を制限または遮断する。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は血栓性脳卒中である。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は塞栓性、すなわち、塞栓によって生じる、つまり、付着していない塊が血流により移動し、その起点から離れた部位で血流を制限または遮断する。いくつかの実施形態では、虚血性脳卒中は塞栓性脳卒中である。全脳虚血は、脳全体への血流が遮断または減少している場合に概して生じる。いくつかの実施形態では、全脳虚血は低灌流によって生じる、すなわち、ショックによる。いくつかの実施形態では、全脳虚血は心停止の結果である。
【0099】
いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳虚血を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、局所脳虚血を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、虚血性脳卒中を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、血栓性脳卒中を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、塞栓性脳卒中を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、全脳虚血を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、低灌流を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、心停止を患っている。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳虚血の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、局所脳虚血の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、虚血性脳卒中の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、血栓性脳卒中の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、塞栓性脳卒中の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、全脳虚血の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、低灌流の治療に使用するためのものである。
【0101】
いくつかの実施形態では、脳卒中は、出血性脳卒中である。出血性脳卒中は、脳内または脳周囲への出血に起因し、脳の細胞及び組織に膨張、圧力及び損傷をもたらす。出血性脳卒中は、概して、弱くなった血管が破裂し、脳周囲に出血した結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳内出血、すなわち、脳組織自体の内部出血に起因する。いくつかの実施形態では、脳内出血は、実質内出血に起因する。いくつかの実施形態では、脳内出血は、脳室内出血に起因する。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、くも膜下出血である、すなわち、出血が脳組織の外で発生してはいるが頭蓋内に留まっている。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳アミロイドアンギオパチーの結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳動脈瘤の結果である。いくつかの実施形態では、出血性脳卒中は、脳動静脈奇形(AVM)の結果である。
【0102】
いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、出血性脳卒中を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳内出血を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、実質内出血を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳室内出血を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、くも膜下出血を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳アミロイドアンギオパチーを患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳動脈瘤を患っている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳AVMを患っている。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、出血性脳卒中の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳内出血の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、実質内出血の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳室内出血の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、くも膜下出血の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳アミロイドアンギオパチーの治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳動脈瘤の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳AVMの治療に使用するためのものである。
【0104】
血流遮断期間後の脳への十分な血流の回復は、脳卒中に関連する症状の軽減に有効ではあるが、逆説的には、脳組織へのさらなる損傷をもたらしうる。血流遮断期間中、影響を受けている組織は酸素及び栄養の不足に苦しんでおり、突然の血流回復は、酸化ストレスの誘発により炎症及び酸化的損傷をもたらしうる。これは再灌流傷害として知られ、脳卒中の後だけでなく、心臓発作の後、または他組織の損傷の後でも、虚血もしくは酸欠の期間後に組織に血液供給が戻った場合に十分に記録されている。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象は、脳卒中の結果として再灌流傷害を患っている。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の結果としての再灌流傷害の治療に使用するためのものである。
【0105】
一過性脳虚血発作(TIA)は、しばしば軽度の脳卒中と呼ばれ、より重篤な脳卒中の認識されている警告的徴候である。したがって、TIAを1または2回以上患ったことのある対象は脳卒中のリスクがより高い。いくつかの実施形態では、脳損傷と診断された対象はTIAを患っている。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、TIAの治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、TIAを患ったことのある対象の脳損傷の治療に使用するためのものである。
【0106】
高血圧、高血中コレステロール、脳卒中の家族歴、心疾患、糖尿病、脳動脈瘤、動静脈奇形、鎌状赤血球症、血管炎、出血性障害、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用、タバコの喫煙、大量のアルコール飲酒、違法薬物の使用、肥満、身体活動不足及び不健康な食事はすべて、脳卒中の危険因子であると考えられる。特に、血圧を下げることが、虚血性及び出血性の両脳卒中を予防することが明確に示されている[20]、[21]。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、脳卒中の危険因子が少なくとも1つある対象の脳損傷の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の危険因子を2つ有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の危険因子を3つ有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の危険因子を4つ有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の危険因子を5つ以上有する。いくつかの実施形態では、対象は、高血圧を有する。いくつかの実施形態では、対象は、高血中コレステロールを有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳卒中の家族歴を有する。いくつかの実施形態では、対象は、心疾患を有する。いくつかの実施形態では、対象は、糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、脳動脈瘤を有する。いくつかの実施形態では、対象は、動静脈奇形を有する。いくつかの実施形態では、対象は、血管炎を有する。いくつかの実施形態では、対象は、鎌状赤血球症を有する。いくつかの実施形態では、対象は、出血性障害を有する。いくつかの実施形態では、対象は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用歴を有する。いくつかの実施形態では、対象は、タバコを喫煙する。いくつかの実施形態では、対象は、大量のアルコールを飲酒する。いくつかの実施形態では、対象は、違法薬物を使用する。いくつかの実施形態では、対象は、肥満である。いくつかの実施形態では、対象は、体重過多である。いくつかの実施形態では、対象は、身体活動不足である。いくつかの実施形態では、対象は、不健康な食事を有する。
【0107】
実施例は、本発明の組成物が、脳損傷の治療、及び障害事象が発生する前に投与した場合に回復を助けるのに有用でありうることを示す。したがって、本発明の組成物は、脳卒中のような脳損傷のリスクがある対象に投与した場合に、脳損傷の治療に特に有用でありうる。
【0108】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、潜在的な脳損傷、好ましくは、脳卒中に起因する損傷の低減に使用するためのものである。組成物は、潜在的な脳損傷が発生する前に投与した場合、特に、脳損傷のリスクがあると同定された患者に投与した場合に、引き起こされた損傷を抑えうる。
【0109】
実施例は、本発明の組成物が、脳損傷の治療、及び障害事象が発生する前に投与した場合に回復を助けるのに有用でありうることを示す。したがって、本発明の組成物は、脳卒中のような脳損傷の後に対象に投与する場合の脳損傷の治療に特に有用でありうる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、運動面での損傷を低減させることによって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、運動機能を改善させることによって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、筋力を改善させることによって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、記憶を改善させることによって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、社会的認識を改善させることによって脳損傷を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経学的機能を改善させることによって脳損傷を治療する。
【0111】
脳損傷の治療とは、例えば、症状の重症度の軽減を指しうる。脳損傷の治療はまた、脳卒中の後の神経障害の低減も指しうる。脳卒中の治療において使用される本発明の組成物は、脳卒中の発症より前に対象、例えば、脳卒中のリスクがあると同定されている患者に提供されうる。脳卒中の治療において使用される本発明の組成物は、脳卒中が発生した後、例えば、回復中に提供されうる。脳卒中の治療において使用される本発明の組成物は、急性期の回復中(すなわち、脳卒中後1週間まで)に提供されうる。脳卒中の治療において使用される本発明の組成物は、亜急性期の回復中(すなわち、脳卒中後1週間から3か月まで)に提供されうる。脳卒中の治療において使用される本発明の組成物は、慢性期の回復中(脳卒中後3か月以降)に提供されうる。
【0112】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、二次的活性薬剤と併用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、アスピリンまたは組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)と併用するためのものである。他の二次的薬剤としては、他の抗血小板薬(クロピドグレルなど)、抗凝固薬(ヘパリン、ワルファリン、アピキサバン、ダビガトラン、エドキサバンまたはリバロキサバンなど)、降圧剤(利尿薬、ACE阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬またはアルファ遮断薬など)またはスタチンが挙げられる。本発明の組成物は、二次的活性薬剤に対する患者の応答を改善しうる。
【0113】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、組織に対する虚血の影響を減少させる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血に起因する組織への損傷量を減少させる。特定の実施形態では、虚血によって損傷した組織は、脳組織である。特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死または壊死細胞数を減少させる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、アポトーシスまたはアポトーシス細胞数を減少させる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死細胞及びアポトーシス細胞の数を減少させる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死及び/またはアポトーシスによる細胞死を予防する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血に起因する壊死及び/またはアポトーシスによる細胞死を予防する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血によって損傷した組織の回復を改善する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死細胞及び/またはアポトーシス細胞のクリアランス速度を改善する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、壊死細胞及び/またはアポトーシス細胞のクリアランスの有効性を改善する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、組織内の細胞の置換及び/または再生を改善する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、虚血によって損傷した組織内の細胞の置換及び/または再生を改善する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、組織の全体組織像を改善する(例えば、生検時)。
【0114】
実施例は、本発明の組成物が、MAP2(微小管結合タンパク質2)活性化を活性化させることを示している。MAP2は、MAP2のニューロン分化に関連した遺伝子であり、神経突起生成における微小管形成にとって不可欠であると考えられているため、本発明の組成物は、脳損傷の治療に特に有用でありうる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、MAP2の活性化またはMAP2レベルの増大による脳損傷の治療に使用するためのものである。さらに、MAP2は、損傷したニューロンのネットワーク再形成及びシナプス形成において主要な役割を果たす神経突起伸長を促進することから、MAP2発現は、ニューロン分化のマーカーであること以上に、神経病理学的疾患の治療転帰に関連する「ニューロン再構成」を示す可能性がある[22]。
【0115】
炎症性及び自己免疫性の障害
実施例は、本発明の組成物がHDAC阻害活性を有することを示している。HDAC活性は多くの炎症性及び自己免疫性の障害の病理の中心であり、HDAC阻害剤は、特定の病態に関して以下に考察されているように、多くの炎症性及び自己免疫性の障害の治療において有効性が示されている([23]も参照のこと)。したがって、本発明の組成物は、炎症性及び自己免疫性の障害、特に、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性によって媒介される炎症性及び自己免疫性の障害の治療に有用でありうる。
【0116】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症性または自己免疫性の障害を治療または予防する方法において使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症性または自己免疫性の疾患の治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症性または自己免疫性の疾患の患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。特定の実施形態では、患者は、慢性炎症性もしくは自己免疫性の疾患もしくは病態と診断されていてよく、または本発明の組成物は、慢性炎症性もしくは自己免疫性の疾患もしくは病態に発展する炎症性もしくは自己免疫性の疾患もしくは病態の予防に使用するためのものであってよい。特定の実施形態では、疾患または病態は、TNF−α阻害剤による治療に反応しない場合がある。
【0117】
HDACは、慢性炎症性及び自己免疫性の疾患に関連している場合があるため、本発明の組成物は、上掲の慢性の疾患または病態の治療または予防に特に有用でありうる。特定の実施形態では、組成物は、慢性疾患の患者に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、慢性疾患の発症予防に使用するためのものである。
【0118】
本発明の組成物は、HDACによって媒介される疾患及び病態の治療ならびにHDAC活性化への対処に有用でありうるため、本発明の組成物は、慢性疾患の治療もしくは予防、他の治療法(TNF−α阻害剤による治療など)に不応であった患者の疾患の治療もしくは予防、及び/またはHDACに関連した組織損傷及び症状の治療もしくは予防に特に有用でありうる。
【0119】
実施例は、本発明の組成物が、IL−6の産生及び分泌を低下させることを示しており、これは、炎症性及び自己免疫性の障害の治療に特に有用でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、疾患の治療における炎症軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、IL−6の産生及び分泌を減少させる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、NFκBプロモーターの活性化を減少させる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、強力な炎症を誘発するエンドトキシンであるリポ多糖(LPS)によってIL−6産生の活性化を調節することができる。
【0120】
−炎症性腸疾患
実施例は、本発明の組成物がHDAC阻害活性を有することを示しており、そのため、本発明の組成物は、炎症性腸疾患の治療に有用でありうる。大腸炎など様々な疾患病理において、異なるHDACアイソフォームの過剰発現の関与が示唆されている。さらに、バルプロ酸は、DSS−大腸炎マウスモデルにおいてクラスI HDAC阻害及び大腸炎の改善に関連している[24]。本試験から、HDACクラスI 阻害剤が大腸炎において、IFN−γ、IL−10、IL−1β及びTNF−αの抑制、HDAC阻害への機能割り当て、ならびに有効性に果たす役割が示唆された。したがって、実施例は、本発明の組成物が、炎症性腸疾患の治療に有用でありうることを示す。
【0121】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症性腸疾患の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症性腸疾患の治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症性腸疾患の患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。
【0122】
炎症性腸疾患(IBD)は、環境的及び遺伝的な複数の要因に起因しうる複雑な疾患である。IBDの発症に寄与する要因としては、食事、微生物叢、腸透過性、及び腸感染への炎症反応増大に対する遺伝的感受性が挙げられる。炎症性腸疾患の症状としては、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、骨盤部の激しい内部腹痛/筋痙攣、体重減少及び貧血が挙げられる。特定の実施形態では、組成物は、IBDに関連した1または2以上の症状の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、IBDの1または2以上の症状の予防に使用するためのものである。
【0123】
IBDは、他の疾患または病態、例えば、関節炎、壊疽性膿皮症、原発性硬化性胆管炎、非甲状腺疾患症候群、深部静脈血栓症、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎などに伴う場合がある。特定の実施形態では、本発明の組成物は、IBDに伴う1または2以上の疾患または病態の治療または予防に使用するためのものである。
【0124】
炎症性腸疾患は一般に、生検または大腸内視鏡検査により診断される。便中カルプロテクチン測定は、IBDの予備的診断に有用である。IBDを診断する他の臨床検査としては、全血球計算、赤血球沈降速度、包括的な代謝パネル、便潜血検査またはC反応性タンパク質検査が挙げられる。典型的に、臨床検査と生検/大腸内視鏡検査との組み合わせを使用してIBDの診断を確定する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、IBDと診断された対象に使用するためのものである。
【0125】
特定の実施形態では、炎症性腸疾患はクローン病である。研究により、クローン病患者の炎症性粘膜でいくつかのHDACが上方制御されることが示されている。したがって、HDAC活性阻害は、クローン病の治療に有用でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クローン病の治療または予防に使用するためのものである。
【0126】
クローン病は、遺伝的危険因子、食事、他の生活様式要因、例えば、喫煙及びアルコール摂取など、ならびに微生物叢組成を含め、一連の原因が考えられる複雑な疾患である。クローン病は、消化管のどの場所でも現われうる。
【0127】
クローン病の消化管症状は軽度から重度まであり、腹痛、下痢、便中血、回腸炎、頻便、放屁増加、腸狭窄、嘔吐、及び肛門周囲不快感が挙げられる。本発明の組成物は、クローン病の1または2以上の消化管症状を予防する治療に使用するためのであってよい。
【0128】
クローン病の全身症状としては、成長上の欠陥、例えば、思春期の成長維持不能、食欲減退、発熱及び体重減少などが挙げられる。クローン病の腸外の特徴としては、ブドウ膜炎、羞明、上強膜炎、胆石、血清反応陰性脊椎関節症、関節炎、靭帯骨接合部炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、自己免疫性溶血性貧血、ばち状指及び骨粗鬆症が挙げられる。腸外の特徴は、クローン病に伴って消化管外に現われる付加的病態である。クローン病の対象はまた、神経学的合併症、例えば、痙攣、脳卒中、ミオパシー、末梢神経障害、頭痛及びうつなどに対する高い感受性も示す。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クローン病の1または2以上の全身症状の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クローン病の1または2以上の腸外の特徴の治療または予防に使用するためのものである。
【0129】
クローン病の診断には通常、複数の検査及び外科的処置、例えば、胃内視鏡検査及び/または大腸内視鏡検査及び生検など、回腸の場合は典型的に、X線検査、全血球計算、C反応性タンパク質検査及び赤血球沈降速度検査の実施を伴う。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クローン病と診断された対象に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、クローン病と診断された対象の治療に使用するためのものである。
【0130】
クローン病は、罹患消化管領域の程度に応じて分類される[25]。回腸及び結腸両方の疾患は回腸大腸クローン病に分類される。いくつかの実施形態では、組成物は、回腸大腸クローン病の治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、回腸大腸クローン病と診断された対象に使用するためのものである(回腸のみが罹患している場合は回腸クローン病に分類される)。結腸のみが罹患している場合は大腸クローン病に分類される。特定の実施形態では、組成物は、回腸クローン病の治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、回腸クローン病と診断された対象に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、大腸クローン病の治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、大腸クローン病と診断された対象に使用するためのものである。
【0131】
クローン病は、多数の治療剤、例えば、プレドニゾンのようなコルチコステロイド、アザチオプリンのような免疫抑制剤、またはインフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブ、ベドリズマブ及びエトロリズマブのような生物製剤などで治療されうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、さらなる治療剤と併用してクローン病の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、さらなる治療剤は、クローン病の治療または予防に使用するためのものである。
【0132】
実施例は、本発明の組成物が腸でのIDO1の発現調節を低下させることを示しており、これは、炎症性腸疾患の治療に特に有用でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物はIDO1の発現を増大させる。
【0133】
−多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の自己免疫性炎症性疾患である。MSは、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の誘導によって動物にモデル化することができる。HDAC阻害剤は、養子EAEのマウスにおいて臨床症状を軽減し、疾患の進行を阻害することが示されている(Dasgupta et al.,2003,J Immunol,170(7),3874−3882)。HDAC阻害剤の注入は、慢性MSの実験的モデルのマウスにおいて神経障害及び身体障害を大幅に低減することも示されている(Camelo et al.,2005,J Neuroimmunol,164(1−2),10−21)。HDAC活性の阻害は、MSの有望な治療であると示唆されている(Gray et al.,2006,Epigenetics,1:2,67−75)。したがって、本発明の組成物は、対象の多発性硬化症の治療または予防に有用でありうる。
【0134】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、多発性硬化症の治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、多発性硬化症の患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。
【0135】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、多発性硬化症の治療または予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、HDAC阻害を達成しうるため、多発性硬化症の治療または予防に有用でありうる。多発性硬化症は、ニューロン、特に、脳及び脊柱のミエリン鞘の損傷に関連した炎症性疾患である。多発性硬化症は慢性疾患であり、徐々に能力を喪失し、エピソードに進行する。
【0136】
特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、疾患発生率または疾患重症度の低減をもたらす。特定の実施形態では、本発明の組成物は、疾患発生率または疾患重症度の低減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、運動機能の低下を予防するかまたは運動機能改善をもたらす。特定の実施形態では、本発明の組成物は、運動機能の低下予防において使用するかまたは運動機能の改善において使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、麻痺の進行を予防する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、多発性硬化症の治療において麻痺の予防に使用するためのものである。
【0137】
本発明の組成物は、患者の免疫系の調節に有用でありうるため、特定の実施形態では、本発明の組成物は、多発性硬化症のリスクがあると同定された患者、または早期多発性硬化症もしくは「再発寛解型」多発性硬化症と診断された患者の多発性硬化症の予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、硬化症の発症予防に有用でありうる。
【0138】
本発明の組成物は、多発性硬化症の管理または軽減に有用でありうる。本発明の組成物は、多発性硬化症に関連した症状の軽減に特に有用でありうる。多発性硬化症の治療または予防とは、例えば、症状重症度の軽減、または増悪頻度もしくは患者にとって問題となっている誘因の範囲の低減を指しうる。
【0139】
−関節炎
関節炎は、慢性的な関節の炎症を特徴とする疾患である。関節リウマチは、典型的に、関節の腫脹及び痛みを生じる慢性自己免疫障害である。関節リウマチを治療するためのHDAC阻害には、様々な機序が提案されており、例えば、サイトカイン産生に影響を与える機序、T細胞分化を阻害する機序、滑膜線維芽細胞の増殖を抑制する機序、ならびに破骨細胞及び骨芽細胞に影響を与えて骨量減少を低減する機序がある(Vojinov et al.,2011,Mol Med,17(5−6) 397−403)。HDAC阻害には、強い抗炎症作用があることがいくつかの関節炎動物モデルにおいて示されている(Joosten et al.,2011,Mol Med,17(5−6),391−396)。したがって、本発明の組成物は、対象の関節炎の治療または予防に有用でありうる。
【0140】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、関節リウマチ(RA)の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、関節リウマチの治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、関節リウマチの患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。
【0141】
特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、関節の腫脹の軽減をもたらす。特定の実施形態では、本発明の組成物は、関節が腫脹した患者または関節が腫脹するリスクがあると同定された患者に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、RAにおける関節の腫脹を軽減する方法において使用するためのものである。
【0142】
特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、軟骨損傷または骨損傷の軽減をもたらす。特定の実施形態では、本発明の組成物は、RA治療において軟骨または骨の損傷の軽減または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、軟骨または骨の損傷のリスクがある重度RA患者の治療に使用するためのものである。
【0143】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、RAの治療において骨びらんまたは軟骨損傷の予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、骨びらんもしくは軟骨損傷を示す患者または骨びらんもしくは軟骨損傷のリスクがあると同定された患者の治療に使用するためのものである。
【0144】
本発明の組成物は、患者の免疫系の調節に有用でありうるため、特定の実施形態では、本発明の組成物は、RAのリスクがあると同定された患者、または早期RAと診断された患者のRAの予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、RAの発症予防に有用でありうる。
【0145】
本発明の組成物は、RAの管理または軽減に有用でありうる。本発明の組成物は、関節の腫脹または骨破壊に関連した症状の軽減に特に有用でありうる。RAの治療または予防とは、例えば、症状重症度の軽減、または増悪頻度もしくは患者にとって問題となっている誘因の範囲の低減を指しうる。
【0146】
−喘息
喘息は、炎症性の慢性呼吸器疾患である。HDAC阻害剤には、気道炎症、気道リモデリング及び気道過敏性を軽減する抗炎症作用があることが、慢性喘息のマウスモデルにおいて示されている(Ren et al.,2016,Inflamm Res,65,995−1008)。したがって、本発明の組成物は、対象の喘息の治療または予防に有用でありうる。
【0147】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、喘息の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、喘息の治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、喘息患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。
【0148】
特定の実施形態では、喘息は、好酸球性喘息またはアレルギー性喘息である。好酸球性喘息及びアレルギー性喘息は、末梢血中及び気道分泌物中の好酸球数増加を特徴とし、病理学的には基底膜部の肥厚と関連し、また薬理学的にはコルチコステロイド応答性を伴う[26]。好酸球の動員または活性化を低減または阻害する組成物は、好酸球性喘息及びアレルギー性喘息の治療または予防に有用でありうる。好酸球性喘息及びアレルギー性喘息もまた、2型ヘルパーTリンパ球(Th2)プロセスに仲介される炎症性イベントのカスケードを特徴とする。2型ヘルパーTリンパ球(Th2)プロセスを低減または阻害する組成物は、好酸球性喘息及びアレルギー性喘息の治療または予防に有用でありうる。
【0149】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、好中球性喘息(または非好酸球性喘息)の治療または予防に使用するためのものである。好中球数高値は、コルチコステロイド治療に非感受性の場合がある重度の喘息に関連している。好中球の動員または活性化を低減または阻害する組成物は、好中球性喘息の治療または予防に有用でありうる。
【0150】
好酸球性喘息(Th2−high喘息とも呼ぶ)及び好中球性喘息(Th2−lowまたは非Th2喘息とも呼ぶ)は、基礎にある病態生理学的機序が異なっており、異なる臨床像を呈する。例えば、Th2−high喘息は一般に早期の発症を呈し、症状の季節的変動を示すが、Th2−low喘息は発症がはるかに遅く、典型的に40歳前後またはそれ以降である。Th2−high喘息はまた免疫グロブリンE(IgE)の血中濃度増加を特徴とするが、この特徴はTh2−low喘息では見られない。Th2 high喘息はまた、喀痰内好酸球レベルが高いことを特徴とする。一方、Th2−low喘息は、喀痰内好中球レベルの上昇を特徴とする場合がある。特定の実施形態では、本発明の組成物は、Th2−lowまたは非Th2喘息の治療に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、Th2−high喘息の治療に使用するためのものである。
【0151】
好酸球性喘息及び好中球性喘息は互いに排他的な病態ではないので、好酸球及び好中球のいずれの応答にも対処する助けとなる治療は、喘息全般の治療に有用でありうる。
【0152】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、喘息の治療もしくは予防において好酸球性炎症反応を軽減する方法に使用するか、または喘息の治療もしくは予防において好中球性炎症反応を軽減する方法において使用するためのものである。上記のように、喘息における好酸球高値は病理学的には基底膜部の肥厚と関連するため、喘息の治療または予防において好酸球性炎症反応を軽減することにより、この特徴の疾患の特異的対処が可能となりうる。また、好中球増加は、好酸球増加の併発がある場合もない場合も、重度の喘息及び慢性気道狭窄に関連している。したがって、好中球性炎症反応の軽減は、重度の喘息の対処に特に有用でありうる。
【0153】
特定の実施形態では、組成物は、アレルギー性喘息における細気管支周囲の浸潤の軽減、またはアレルギー性喘息の治療において細気管支周囲の浸潤の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、好中球性喘息における細気管支周囲及び/または血管周囲の浸潤の軽減、あるいはアレルギー性好中球性喘息の治療において細気管支周囲及び/または血管周囲の浸潤の軽減に使用するためのものである。
【0154】
特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、TNFαレベルを低下させるかまたはその上昇を予防する。
【0155】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、好酸球性及び/または好中球性の炎症反応の軽減をもたらす喘息の治療方法において使用するためのものである。特定の実施形態では、治療対象患者は、好中球もしくは好酸球のレベルが上昇している、またはそのように過去に同定されたことがあり、例えば、血液採取または喀痰分析により同定される。
【0156】
本発明の組成物は、新生児の喘息の発症予防に有用であり得、これは、新生児または妊婦に投与した場合である。組成物は、小児の喘息の発症予防に有用でありうる。本発明の組成物は、成人発症型喘息の治療または予防に有用でありうる。本発明の組成物は、喘息の管理または軽減に有用でありうる。本発明の組成物は、チリダニなどのアレルゲンにより悪化する喘息に関連した症状の軽減に特に有用でありうる。
【0157】
喘息の治療または予防とは、例えば、症状重症度の軽減、または増悪頻度もしくは患者にとって問題となっている誘因の範囲の低減を指しうる。
【0158】
−乾癬
乾癬は、慢性炎症性皮膚疾患である。乾癬患者の皮膚生検ではHDAC1の過剰発現が報告されており(Tovar−Castillo et al.,2007,Int J Dermatol,46,239−46)、HDAC阻害剤は、Foxp3+ TregのFoxp3−RORγt+ IL−17/Tregへの変換(乾癬疾患増悪に関連した変化)を遮断することが示されている(Bovenschen et al.,2011,J Invest Dermatol,131,1853−60)。したがって、本発明の組成物は、対象の乾癬の治療または予防に有用でありうる。
【0159】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、乾癬の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、乾癬の治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、乾癬患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。
【0160】
−全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデス(SLE)は自己免疫性の疾患である。HDAC阻害は、SLEの細胞培養物及びSLEマウスモデルでの研究に基づく、SLE治療の有望な治療法であると考えられている(Reilly et al.,2011,Mol Med,17(5−6),417−425)。したがって、本発明の組成物は、対象の全身性エリテマトーデスの治療または予防に有用でありうる。
【0161】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、SLEの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、SLEの治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、SLEの患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。
【0162】
−同種移植片拒絶
同種移植片拒絶は、移植した組織がレシピエントの免疫系によって拒絶される場合に発生する。マウスの心臓移植に関する研究では、HDAC阻害は、移植心臓内のヒストン3アセチル化を増大させること、ならびにFoxp3タンパク質(免疫応答制御に関与するフォークヘッド転写因子ファミリーメンバー)の移植心臓内濃度の増大、組織構造維持、及び対照群と比べた際の慢性拒絶の徴候の欠如に関連していることが示されている(Wang et al.,Immunol Cell Biol,1−8)。したがって、本発明の組成物は、対象の同種移植片拒絶の治療または予防に有用でありうる。
【0163】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、同種移植片拒絶の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、同種移植片拒絶の治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、同種移植片拒絶の患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。
【0164】
−糖尿病
真性糖尿病は、インスリン低値及び/または末梢インスリン抵抗性により高血糖を引き起こす疾患群である。糖尿病を治療するためのHDAC阻害には、様々な機序が提案されており、中でも、例えば、Pdx1の抑制を解除する機序(Park et al.,2008,J Clin Invest,118,2316−24)、転写因子Ngn3の発現を増強させて内分泌前駆細胞プールを増大させる機序(Haumaitre et al.,2008,Mol Cell Biol,28,6373−83)、及びインスリン発現を増強させる機序などがある(Molsey et al.,2003,J Biol Chem,278,19660−6)。HDAC阻害もまた、糖尿病性腎症及び網膜虚血などの後期糖尿病合併症の有望な治療である(Christensen et al.,2011,Mol Med,17(5−6),370−390)。したがって、本発明の組成物は、対象の糖尿病の治療または予防に有用でありうる。
【0165】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、糖尿病の治療または予防に使用するためのものである。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、I型糖尿病の治療または予防に使用するためのものである。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、II型糖尿病の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、糖尿病の治療または予防において使用するためのものであり、前記治療または予防は、HDAC活性化を低下させるかまたは予防することによって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、糖尿病患者の治療に使用するためのものであり、患者は、HDAC濃度または活性が上昇している。
【0166】
−移植片対宿主病(GVHD)
本発明の組成物は、移植片対宿主病(GVHD)の治療または予防において使用するものであってよい。GVHDは、対象に同種組織を移植した後の内科的合併症である。GVHDは、幹細胞もしくは骨髄の移植または固形臓器移植の後、特に、移植片(すなわち、ドナー)と宿主(すなわち、レシピエント)の遺伝的背景が異なる場合に生じる。
【0167】
GVHDの病態生理には3つの異なる段階が含まれる。第一に、移植された組織が外来物質として認識されると、宿主の抗原提示細胞(APC)、例えば、樹状細胞(DC)などが活性化される。APCが活性化されてから、通常型細胞傷害性T細胞などのエフェクター免疫細胞が動員及び活性化され、これにより、異物組織の破壊または拒絶をもたらす。
【0168】
HDAC阻害は、GVHDの治療または予防で有用である強力な多面的抗炎症作用を仲介することが示されている。HDAC阻害は、GVHDの病態生理カスケードの複数ポイントで阻害しうる。例えば、HDAC阻害は、インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ発現をSTAT−3依存的に増強させることによって、インビボにおいて同種組織に対して抗原提示細胞及び樹状細胞が活性化されるのを阻止する[27]。STAT−1活性のHDAC阻害はまた、GVHDの治療または予防に有益であることが示されている[28]。特定の実施形態では、本発明の組成物は、APCの活性化を阻害することによるGVHDの治療または予防において使用するものであってよい。
【0169】
HDAC阻害はまた、インビボでTreg細胞の細胞集団を増殖させ、活性を増大させることも示されている[29]。HDAC阻害媒介性のTreg細胞活性の上方制御は、通常型細胞傷害性T細胞の活性を抑制することが示されており、これは、GVHDの病態生理カスケードの第2段階を抑制することによるGVHDの治療または予防に有用でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、通常型細胞傷害性T細胞の活性を低下させることによるGVHDの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、通常型細胞傷害性T細胞の活性低下に使用するためのものであってよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、Treg細胞活性の上方制御によるGVHDの治療または予防において使用するものであってよい。
【0170】
ドナーNK細胞は、宿主のAPCを排除することによってGVHDを軽減することが示されている。HDAC阻害は、NK細胞の活性を増大させることが示されている。したがって、本発明の組成物は、NK細胞の活性増大に使用するためのものであってよく、これは、APC排除を増大させることによるGVHDの治療または予防に有用でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、宿主のAPCの排除を増強させることによるGVHDの治療または予防において使用するものであってよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、NK細胞の活性を増強させることによるGVHDの治療または予防において使用するものであってよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、NK細胞の活性で仲介される宿主APCの排除を増強させることによるGVHDの治療または予防において使用するものであってよい。
【0171】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、宿主が移植を受けた後に投与してよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象が移植を受ける前に宿主に投与してよい。移植を受ける前に本発明の組成物を投与することは、移植された組織に対して炎症性または自己免疫性の応答が誘発されないよう対象の免疫系をプライミングする際に有用でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、GVHDの予防またはGVHD発症予防に使用してよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、GVHDの治療または予防において予防的に使用するものであってよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、GVHDの予防に使用してよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象の移植組織拒絶を予防する方法において使用するためのものであってよい。
【0172】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、急性GVHDの治療、遅延、予防、または発症予防に有用でありうる。急性GVHDの症状は典型的に移植後100日以内に現われる。急性GVHDの遅延、治療または予防は、移植手術直後の対象の回復を助けるために特に有益でありうる。特定の実施形態では、組成物は、HDAC活性を阻害することによって急性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。特定の実施形態では、組成物は、Treg細胞活性を上方制御することによって急性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。組成物は、通常型細胞傷害性T細胞の活性を阻害することによって急性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。本発明の組成物は、NK細胞の活性を増強させることによって急性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。本発明の組成物は、APCの活性化を阻害することによって急性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。
【0173】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、移植後100日以内に対象に投与した場合、急性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象に予防的に投与した場合、例えば、組成物を移植前に対象に投与した場合、急性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、持続型、遅発型または再燃型の急性GVHD、例えば、移植後100日以降に発生または再燃する急性GVHDなどを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。
【0174】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、斑状丘疹状皮疹、悪心、拒食症、下痢、重度の腹痛、イレウス及び胆汁うっ滞性高ビリルビン血症からなる一覧から選択される急性GVHDの1または2以上の症状を治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。
【0175】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、慢性GVHDの治療、発症遅延、予防、または発症予防に有用でありうる。慢性GVHDは、どの臓器も対象となりうる複雑な多系統疾患であり、典型的には線維症を特徴とする。慢性GVHDは、急性GVHDから進展する場合もあれば、急性GVHD後の静止期の後で出現する場合、または新たに出現する場合もある。慢性GVHDの症状は、移植後いつでも出現しうる。特定の実施形態では、組成物は、HDAC活性を阻害することによる、慢性GVHDの治療、予防、発症予防、または発症遅延に有用でありうる。組成物は、Treg細胞活性の上方制御によって慢性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。組成物は、通常型細胞傷害性T細胞の活性阻害によって慢性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。本発明の組成物は、NK細胞の活性増強によって慢性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。本発明の組成物は、APCのDCの活性化阻害によって慢性GVHDを治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。
【0176】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、幹細胞、骨髄または固形臓器の移植を最近受けた患者への投与用である。特定の実施形態では、本発明の組成物は、幹細胞、骨髄または固形臓器の移植を必要とする患者への投与用である。
【0177】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、色素沈着異常、新規発症脱毛症、多形皮膚萎縮症、扁平苔癬様の丘疹または硬化性の特徴、爪の形成異常または脱落、口内乾燥症、口腔内潰瘍(アフタ性口内炎など)、口腔内苔癬型の特徴(硬化性苔癬など)、乾性結膜炎、乾燥症候群、瘢痕性結膜炎、筋膜炎、筋肉炎、関節硬直、膣硬化症、潰瘍形成、拒食症、体重減少、食道ウエブ、黄疸、高トランスアミナーゼ血症、胸水、閉塞性細気管支炎、ネフローゼ症候群、心膜炎、血小板減少症、貧血、及び好中球減少症からなる一覧から選択される慢性GVHDの1または2以上の症状を治療する、発症を遅延させる、予防する、または発症を予防することができる。
【0178】
本発明者らはまた、本発明の組成物が、GVHDに関連した大腸炎を低減できることを示した。大腸炎は、GVHD患者で観察される炎症性の副作用である。本発明の組成物は、GVHDを有する対象における結腸の炎症の治療に有用でありうる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、GVHDを有する対象における大腸炎の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、GVHDを有する対象における大腸炎の重症度低減に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、GVHDの治療において大腸炎の重症度低減に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、GVHDを有する対象における結腸の炎症の治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、GVHDを有する対象における結腸の炎症の重症度低減に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、GVHDの治療において結腸の炎症軽減に使用するためのものである。
【0179】
本発明者らはまた、本発明の組成物が、GVHDを有する対象における腸バリア機能維持に有用であることを見出した。腸バリア機能を維持することにより、GVHDの毒性を悪化させる、腸バリアを通った炎症性サイトカインの移行が低減される[30]。特定の実施形態では、本発明の組成物は、GVHDの治療において腸バリア機能の維持に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、GVHDの治療において炎症性サイトカインの腸バリアを超えた移行の低減に使用するためのものである。
【0180】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、GVHDの治療または予防のための薬理作用のある1または2以上の物質と併用するためのものであってよい。特定の実施形態では、薬理作用のある1または2以上の物質は、GVHDを薬物により予防または治療するためものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、前記の薬理作用のある物質の1または2以上の投与を現在受けている、受けたことがある、または受ける予定である対象のGVHDの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、薬理作用のある1または2以上の物質は、スベロイルアニリド、ボリノスタット、ITF2357シクロスポリン、シクロスポリン、シロリムス、ペントスタチン、リツキシマブ、イマチニブ、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、プレドニゾン、メトトレキサート、レメステムセル−L及びProchymalからなる一覧から選択され、かかる薬理作用のある物質を治療的有効量で投与してGVHDを治療または予防する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、体外循環式光化学療法を受けたことがある、現在受けている、または受ける予定である対象のGVHDの治療に使用するためのものである。
【0181】
行動障害及び精神障害
実施例は、本発明の組成物が、神経疾患のマウスモデルにおいて多動性を軽減することを示す。したがって、本発明の組成物は、対象の多動性の軽減に有用でありうる。多動性は、行動障害及び精神障害、例えば、注意欠陥多動性障害(ADHD)、心的外傷後ストレス障害、不安障害、双極性感情障害及び強迫性障害などの症状である。多動性は、ホルモン障害、例えば、甲状腺機能亢進症、運動過多及び甲状腺ホルモンに対する抵抗性などの症状でありうる。多動性は、神経障害、例えば、副腎脳白質ジストロフィーの症状でもありうる。多動性は、運動過多障害、緊張性分裂症、神経性無食欲症、脆弱X症候群(FXS)、フェニルケトン尿症(PKU)、胎児アルコール症候群(FAS)、不安、うつ病及びトゥレット症候群の症状でもありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、行動障害の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、精神障害の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、情緒障害及び行動障害の治療に使用するためのものである。
【0182】
特定の実施形態では、組成物は、甲状腺機能亢進症または甲状腺ホルモンに対する抵抗性の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、甲状腺機能亢進症または甲状腺ホルモンに対する抵抗性と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0183】
特定の実施形態では、組成物は、副腎脳白質ジストロフィーの治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、副腎脳白質ジストロフィーと診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0184】
特定の実施形態では、組成物は、緊張性分裂症の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、緊張性分裂症と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0185】
特定の実施形態では、組成物は、神経性無食欲症の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経性無食欲症と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0186】
特定の実施形態では、組成物は、脆弱X症候群の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、脆弱X症候群(FXS)と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0187】
特定の実施形態では、組成物は、フェニルケトン尿症の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、フェニルケトン尿症と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0188】
特定の実施形態では、組成物は、胎児アルコール症候群の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、胎児アルコール症候群と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0189】
特定の実施形態では、組成物は、不安の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、不安と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0190】
特定の実施形態では、組成物は、うつ病の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、うつ病と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0191】
特定の実施形態では、組成物は、トゥレット症候群の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、トゥレット症候群と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0192】
−ADHD
特定の実施形態では、本発明の組成物は、ADHDの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、行動障害を有する対象における多動性の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、ADHDを有する対象における多動性の治療または予防に使用するためのものである。ADHDは小児及び成人のいずれでも顕在化しうる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、成人のADHDの治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、小児のADHDの治療または予防に使用するためのものである。
【0193】
いくつかの実施形態では、組成物は、ADHDと診断された対象に使用するためのものである。ADHDの診断は、ADHDの症状を示す対象の身体診察と併せて心理評価を行うことが多く、可能な限り、ADHDに関連した生物学的マーカー、例えば、血小板モノアミン酸化酵素発現、尿中ノルエピネフリン、尿中MHPG、及び尿中フェネチルアミンなどのレベルの検出が行われ、方法が複雑である。
【0194】
正式な診断は典型的に、精神医学の医療専門家によって行われる。国が異なればADHDの診断及び分類に使用される方法も異なる。国によっては、American Psychiatric AssociationによりDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)で定義された基準に従って診断及び分類を行うところもある。DSMでは、対象が示す一連の症状に応じてADHDを異なるサブタイプに分類している。ADHDは、ADHDの不注意優勢型(ADHD−pi)と診断される場合がある。特定の実施形態では、本発明の組成物は、ADHD−piの治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ADHD−piと診断された対象に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ADHD−piと診断された対象を治療する方法において使用するためのものである。ADHDは、ADHDの多動性−衝動性優勢型と診断される場合もある。いくつかの実施形態では、組成物は、ADHDの多動性−衝動性優勢型の治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ADHDの多動性−衝動性優勢型と診断された対象に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ADHDの多動性−衝動性優勢型と診断された対象を治療する方法において使用するためのものである。
【0195】
ADHDの症状としては、気が散りやすい、忘れやすい、白昼夢にふける、解体、集中力低下、及び仕事を完成させることがなかなかできないということがあり、これらに、過渡の落ち着きのなさ及び情動不安、多動性、待つこと及びじっと座っていることが困難、未熟な行動が伴う。破壊的な行動が見られる場合もある。症状をADHDと関連付けるには、それらの症状が6か月を超えて現われており、2つ以上の環境(家庭及び学校または職場など)で出現していなければならない。特定の実施形態では、組成物は、ADHDの1または2以上の症状の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、ADHDの1または2以上の症状を示す対象の治療または予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、多動性を予防する治療に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、対象の多動性を軽減する方法において使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、抗多動性薬物として使用するためのものである。
【0196】
ADHDの他の治療方法としては、心理療法、行動療法、認知行動療法、対人関係療法、メチルフェニデートなどの刺激薬治療、アトモキセチン、ブプロピオン、グアンファシン及びクロニジンなどの非刺激薬治療が挙げられる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、ADHDのさらなる治療法と併用するためのものである。
【0197】
−強迫性障害(OCD)
特定の実施形態では、本発明の組成物は、OCDの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、OCDの治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、OCDと診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0198】
OCDは、不安障害に属する異種性の慢性身体障害である。DSM−IVの定義に従えば、OCDの本質的な特徴は、強迫観念及び/または強迫行為(基準A)であり、強迫観念及び/または強迫行為は、重度かつ時間を浪費させる(1日2時間以上、または強い苦痛を生じる、または対象の正常な毎日の生活習慣、職業機能、日常の社会的な活動もしくは人間関係を著しく妨げる(基準C)。かかる障害の経過のある時で点、その人は、かかる強迫観念または強迫行為が過剰である、または不合理であると認識したことがある(基準B)。
【0199】
強迫観念は、侵入的で不適切なものとして体験されている、強い不安または苦痛を引き起こす、反復的及び持続的な思考、衝動またはイメージと定義される。思考、衝動またはイメージは、単に現実生活の問題についての過剰な心配ではなく、患者はそれらを自分自身の心の産物であるとして認識する(例えば、汚染に対する恐怖、左右対称強迫観念)。その人は、その強迫観念を、他の思考または行為によって無視、抑制または中和しようと試みる。
【0200】
強迫行為は、その人が、強迫観念に反応して、または厳密に適用しなくてはならない規則に従って、それを行うよう駆り立てられていると感じている、反復行動(例えば、手を洗う、整理整頓する、溜め込む、確認する)または精神的行為(例えば、祈る、数える、静かに言葉を繰り返す)と定義される。
【0201】
OCDは、大うつ病性障害を含めた他の精神疾患、他の不安障害(全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害)、薬物乱用、及び摂食障害(拒食症及び大食症)の疾患の併存率と関連していることが多い。
【0202】
OCDは、微生物叢−腸−脳軸の機能不全により発症または持続しうる精神障害である。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象のOCDの治療または予防に使用するためのものである。
【0203】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、OCDの症状の本質的な特徴を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象の反復的な強迫観念及び/または強迫行為を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、強迫観念は、侵入的で不適切なものとして体験され、強い不安または苦痛を引き起こす、反復的または持続的な思考、衝動またはイメージである。特定の実施形態では、強迫行為は、対象が、強迫観念に反応して、または厳密に適用しなくてはならない規則に従って、それを行うよう駆り立てられていると感じている反復行動である。
【0204】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、Y−BOCS及び/またはNIMH−OCという診断及び/または症状の評価尺度に従った対象のOCDの症状を改善する。いくつかの実施形態では、Y−BOCS評価尺度を使用して主要評価項目の改善を監視する。いくつかの実施形態では、NIMH−OC評価尺度を使用して二次パラメータの改善を監視する。
【0205】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、精神障害及び神経性障害を評価する臨床全般印象−改善度(CGI−I)評価尺度を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ASDを有する対象の社会的機能全般(人間関係、仕事など)に対する好ましい効果を示す。いくつかの実施形態では、全般的評価尺度はシーハン障害評価尺度である。
【0206】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、OCDの少なくとも1つの併存疾患を予防する、軽減する、または緩和する。OCDの併存疾患としては、大うつ病性障害、他の不安障害(全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害)、薬物乱用及び摂食障害(拒食症及び大食症)、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、ADHD(注意欠陥/多動性障害)ならびに発達障害が挙げられる。
【0207】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、OCDを治療する別の治療薬と併用した場合に、OCDの予防、軽減または緩和に特に有効である。そのような治療薬としては、セロトニン及びドーパミンの再取り込み阻害薬;クロミプラミン及び抗精神病薬が挙げられる。
【0208】
−不安障害
特定の実施形態では、本発明の組成物は、不安障害の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、不安障害の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、不安障害と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0209】
不安障害は、不安感及び恐怖感を特徴とする精神障害群である。全般性不安障害(GAD);特異的恐怖症;社会不安障害;分離不安障害;広場恐怖症;パニック障害及び場面緘黙症など、多数の不安障害がある。
【0210】
GADは、DMS−5の6つの基準に従って診断される。第1の基準は、多くの活動について過剰な不安または心配が6か月を超えて続き、その不安または心配がある時間の方が多い。第2の基準は、対象が第1の基準の症状を管理することができないことである。第3の基準は、以下のうち少なくとも3つ(小児の場合は1つ)が現われる:情動不安;疲れやすい;集中困難;易刺激性;筋緊張及び睡眠障害。残りの3つの基準は、症状が、社会的、職業的、機能的に著しく支障をきたすこと;症状が、薬物治療、薬物、または他の身体的健康上の問題によるものではないこと;及び症状が、パニック障害などの別の精神医学的問題により良く適合していないことである。他のすべての不安障害は、GADの鑑別診断とみなされうる。
【0211】
GADは、高い頻度で他の幅広い精神障害、例えば、うつ;物質使用障害;ストレス;IBS;不眠;頭痛;疼痛;心イベント;対人的問題及びADHDなどに関連する。
【0212】
不安障害は、微生物叢−腸−脳軸の機能不全により発症または持続しうる精神障害である。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象の不安障害の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、不安障害は、全般性不安障害(GAD);特異的恐怖症;社会不安障害;分離不安障害;広場恐怖症;パニック障害及び場面緘黙症である。
【0213】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に挙げるDMS−5の基準によって分類される、対象のGADの症状の1または2以上を予防する、軽減する、または緩和する。DMS−5によれば、同じ症状が他の不安障害に関連している。したがって、特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象の不安障害の症状の1または2以上を予防する、軽減する、または緩和する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象の不安または心配を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、症状の発現を6か月以内に低減する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、情動不安;疲労;集中力の喪失;易刺激性;筋緊張;及び/または睡眠障害を予防する、軽減する、または緩和する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、不安障害に関連した社会的、職業的、及び機能的障害を予防する、軽減する、または緩和する。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症状または診断の評価尺度に従った不安障害の症状を改善する。特定の実施形態では、症状の改善を評価する評価尺度には、ハミルトン不安評価尺度(HAM−A)が含まれる。いくつかの実施形態では、HAM−Aの総合評価尺度を使用して主要評価項目を評価する。他の実施形態では、HAM−Aの精神的不安要因は、副次評価項目として有用でありうる。
【0215】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、精神障害及び神経性障害を評価する臨床全般印象−改善度(CGI−I)評価尺度を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、不安障害を有する対象の社会的、職業的及び機能的な障害全般に対する好ましい効果を示す。いくつかの実施形態では、全般的評価尺度はシーハン障害評価尺度である。
【0216】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、GAD及び不安障害の少なくとも1つの併存疾患を予防する、軽減する、または緩和する。GADの併存疾患としては、うつ;物質使用障害;ストレス;IBS;不眠;頭痛;疼痛;心イベント;対人的問題;及びADHDが挙げられる。
【0217】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、不安障害を治療する別の治療薬と併用した場合に、不安障害の予防、軽減または緩和に特に有効である。そのような治療薬としては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(ベンラファキシン、デュロキセチン、エスシタロプラム及びパロキセチン);ベンゾジアゼピン(アルプラゾラム、ロラゼパム及びクロナゼパム);プレガバリン(Lyrica(登録商標))及びガバペンチン(Neurontin(登録商標));セロトニン受容体部分作動薬(ブスピロン及びタンドスピロン);非定型セロトニン系抗うつ薬(イミプラミン及びクロミプラミンなど);モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)(モクロベミド及びフェネルジンなど);ヒドロキシジン;プロプラノロール;クロニジン;グアンファシン及びプラゾシンが挙げられる。
【0218】
−心的外傷後ストレス障害(PTSD)
特定の実施形態では、本発明の組成物は、PTSDの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、PTSDの治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、PTSDと診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0219】
PTSDは、日常生活に支障を来す重度の障害であり、その本質的特徴は、心的外傷的出来事を封じ込めることであり、この障害の促進因子である。
【0220】
PTSDの症状は、DSM−V基準に従って主に4群に分類され、以下のとおりである:(i)侵入:例としては、悪夢、心的外傷的出来事についての望まない思考、フラッシュバック、及び心理的苦痛または生理学的反応を伴う、心的外傷を想起させるものに対する反応;(ii)回避:例としては、心的外傷の記憶を思い出させるもの、例えば、場所、会話、または他の想起させるものなどの回避;(iii)認知及び気分の陰性の変化:例としては、心的外傷的出来事についての自分自身または他者に対するゆがんだ非難、自分自身または世界についての否定的な信念、持続的な陰性の感情(例えば、恐怖、罪悪感、恥)、疎遠になっている感覚、及び抑制された愛情(例えば、陽性の情動を体験することができない);(iv)覚醒度及び反応性の変化:例としては、怒り、無謀な、または自己破壊的な行動、睡眠障害、集中困難、過剰な驚愕反応、及び警戒心。
【0221】
症状が心的外傷的出来事後4週間以内に消失する場合は、急性ストレス障害の基準を満たす。DSMでは、急性PTSD(症状の持続期間は3か月未満)と慢性PTSD(症状の持続期間は3か月以上)は区別される。ストレス要因から6か月過ぎてから症状が始まった場合、その障害は遅延発症型PTSDと定義される。
【0222】
PTSDは大うつ病性障害及び物質使用障害との同時罹患率が高い。
【0223】
PTSDは、微生物叢−腸−脳軸の機能不全により発症または持続しうる精神障害である。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象のPTSDの治療または予防に使用するためのものである。同様の病因論に従い、特定の実施形態では、本発明の組成物は、ストレス障害の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、急性ストレス障害を治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、急性及び/または慢性のPTSDを治療する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、遅延発症型PTSDを治療する。
【0224】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に挙げるDMS−5の基準によって分類される、対象のPTSD(またはストレス障害)の症状の1または2以上を予防する、軽減する、または緩和する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、PTSDを有する対象の侵入的思考を予防する、軽減する、または緩和する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、PTSDを有する対象の回避行動を予防する、軽減する、または緩和する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、PTSDを有する対象における認知及び気分の陰性の変化を予防する、軽減する、または緩和する。好ましい実施形態では、本発明の組成物はPTSDを有する対象における覚醒度及び反応性の変化を予防する。
【0225】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症状または診断の評価尺度に従ったPTSD及びストレス障害の症状を改善する。特定の実施形態では、症状の改善を評価する評価尺度は、PTSD臨床診断面接尺度(CAPS)である。
【0226】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、精神障害及び神経性障害を評価する臨床全般印象−改善度(CGI−I)評価尺度を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、PTSD及びストレス障害を有する対象の社会的、職業的及び機能的障害全般に対する好ましい効果を示す。いくつかの実施形態では、全般的評価尺度はシーハン障害評価尺度である。
【0227】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、PTSD及びストレス障害の少なくとも1つの併存疾患を予防する、軽減する、または緩和する。PTSD及びストレス障害の併存疾患としては、MDD、物質使用障害;ストレス及び不安が挙げられる。
【0228】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、PTSD及びストレス障害を治療する別の治療薬と併用した場合に、PTSD及びストレス障害の予防、軽減または緩和に特に有効である。そのような治療薬としては、セロトニン作動薬、三環系抗うつ薬、気分安定剤、アドレナリン作動性阻害剤、統合失調症薬、ベンゾジアゼピン、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))及び/またはパロキセチン(Paxil(登録商標))が挙げられる。
【0229】
−双極性障害
特定の実施形態では、本発明の組成物は、双極性障害の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、組成物は、双極性障害の治療において多動性の軽減に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、双極性障害と診断された患者の多動性の治療に使用するためのものである。
【0230】
一般に双極性障害は慢性疾患である。躁病は、双極性障害の主症状である。双極性障害には、躁及びうつのエピソードの具体的な持続期間及びパターンに基づいたいくつかの型がある。DMS−5では、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、急速交代型双極性障害及び双極性障害NOSは区別されている。
【0231】
DSMによれば、躁病は、気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で、またはいらだたしい、いつもとは異なる期間である。エピソードが1週間持続すること、及び気分に以下の症状のうち少なくとも3つがあること、すなわち、高い自尊心;睡眠欲求の減少;発話が速くなる;観念奔逸;注意散漫;目標または活動への関心増大;精神運動性の激越;危険である可能性の高い活動に熱中することとなっている。
【0232】
双極I型障害は、1または2回以上の躁病エピソードまたは混合(躁病及びうつ病)エピソード、及び少なくとも1回の大うつ病エピソードを含む(MDDエピソードの症状については上記を参照のこと)。双極II型障害では、1または2回以上の大うつ病エピソードに少なくとも1回の軽躁病エピソードを伴う。躁病エピソードまたは混合エピソードはない。軽躁病は躁病の軽度の型である。症状は、社会的、職業的、及び機能的に著しく支障をきたす原因となる。気分循環症は、小うつ病期と軽躁病期が交互に現われることを特徴とする。診断が可能となる前に症状が、成人で少なくとも2年、または小児では少なくとも1年存在していなければならない。成人及び小児での無症状期間はそれぞれ、2か月または1か月を超えない。急速交代型双極性障害は双極性障害の重度の型である。これは、大うつ病、躁病、軽躁病、または混合状態のエピソードが1年以内に少なくとも4回ある場合に現れる。特定不能の(NOS)双極性障害に分類されるのは、他の型にあまり明確に適合しない双極性症状である。NOSは、双極性の症状が複数存在するが、他のサブタイプのいずれかの型を満たすには不十分な場合に診断される。
【0233】
双極性障害は、以下の併存疾患、すなわち、ADHD;不安障害;物質障害;肥満及びメタボリック症候群に関連している。
【0234】
双極性障害は、微生物叢−腸−脳軸の機能不全により発症または持続しうる精神障害である。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象の双極性障害の治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、双極性障害は、双極I型障害である。特定の実施形態では、双極性障害は、双極II型障害である。特定の実施形態では、双極性障害は、気分循環性障害である。特定の実施形態では、双極性障害は、急速交代型双極性障害である。特定の実施形態では、双極性障害は、双極性障害NOSである。
【0235】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象の双極性障害の症状の1または2以上を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象の躁病エピソードの出現を予防する、低減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、異常かつ持続的に高揚し、開放的で、またはいらだたしい気分の出現を予防する、低減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、以下の症状、すなわち、高い自尊心;睡眠欲求の減少;発話が速くなる;観念奔逸;注意散漫;目標または活動への関心増大;精神運動性の激越;危険である可能性の高い活動に熱中することのうちの1または2以上を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における躁病エピソードまたは混合エピソードが1または2回以上出現することを予防する、低減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における少なくとも1回の大うつ病エピソードの出現を低減する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1回の軽躁病エピソードの出現を伴う少なくとも1回の大うつ病エピソードを予防する、軽減する、または緩和する。
【0236】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、双極性障害の急性期を治療する、及び/またはさらなるエピソードの出現を予防する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、双極性障害を有する対象の躁病/うつ病エピソードを治療し、さらなる躁病/うつ病エピソードの出現を予防する。
【0237】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症状または診断の評価尺度に従った双極性障害の症状を改善する。特定の実施形態では、躁病エピソードの症状改善を評価する評価尺度は、躁状態評価尺度及びヤング躁病評価尺度である。特定の実施形態では、評価尺度は、Bech−Rafaelsen躁病評価尺度(BRMAS)である。特定の実施形態では、躁病エピソードからうつ病エピソードへの切り替わりの症状改善を評価する評価尺度としては、ハミルトン評価尺度、Montgomery−Asberg評価尺度、及びBech−Rafaelsenうつ病評価尺度が挙げられる。
【0238】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、精神障害及び神経性障害を評価する臨床全般印象−改善度(CGI−I)評価尺度を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、双極性障害を有する対象の社会的、職業的、及び機能的障害全般に対する好ましい効果を示す。
【0239】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、双極性障害の少なくとも1つの併存疾患を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、併存疾患は、ADHD、不安障害、物質障害、肥満及びメタボリック症候群から選択される。
【0240】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、リチウム及びジバルプロエクスに反応しない躁うつ病及び双極性障害の治療または予防に使用するためのものである。
【0241】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、双極性障害を治療する別の治療薬と併用した場合に、双極性障害の予防、軽減または緩和に特に有効である。特定の実施形態では、そのような治療薬としては、炭酸リチウム、抗痙攣薬(バルプロ酸、ジバルプロエクス、カルバマゼピン及びラモトリギンなど)及び抗精神病薬(アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン及びリスペリドンなど)が挙げられる。
【0242】
がん
様々ながんにおいてHDACの機能及び発現が乱れており、このために予後不良となることが多い。がんにおけるHDAC機能は、細胞増殖及び腫瘍形成表現型を促進する遺伝子の異常な発現または機能に関連している。特定のがんでは、HDACはがんの発症を主に調節し、がん遺伝子として表される。他のがんでは、がん−融合タンパク質がクラスI HDACを動員して、細胞分化または細胞周期制御を調節する遺伝子の発現を抑制し、それにより、細胞形質転換をもたらす。HDAC発現のノックダウンまたは阻害には、複数の抗がん作用、例えば、細胞周期を停止させる、ならびに増殖、アポトーシス、分化及び老化、及び血管新生破壊を阻害するという作用があることが示されている。したがって、本発明の組成物は、HDAC活性阻害を手段とする、HDAC活性によって媒介されるがんの治療に有用でありうる。
【0243】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、がんの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、HDAC活性によって媒介されるがんの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、大腸癌の治療または予防に使用するためのものである。
【0244】
特定の実施形態では、本発明の組成物による治療は、腫瘍サイズの縮小または腫瘍増殖の低下をもたらす。特定の実施形態では、本発明の組成物は、腫瘍サイズの縮小または腫瘍増殖の低下に使用するためのものである。本発明の組成物は、腫瘍サイズの縮小または増殖低下に有効でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、固形腫瘍のある患者に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、がん治療において血管新生の低減または予防に使用するためのものである。HDACにより制御される遺伝子は血管新生において中心的役割を担っている。特定の実施形態では、本発明の組成物は、転移の予防に使用するためのものである。
【0245】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、胃癌の治療または予防に使用するためのものである。HDAC2は、胃癌発生及び大腸腫瘍形成において機能的役割を果たすことが示されている[31、32]。大腸癌のマウスモデルでは、HDAC2の阻害により腫瘍発生率の低下がもたらされた。特定の実施形態では、HDAC2を選択的に阻害する本発明の組成物は、大腸癌、特に、HDAC2活性によって媒介される大腸癌の治療または予防に使用するためのものである。
【0246】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、乳癌の治療または予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、乳癌の治療に有効である可能性があり、乳癌においてHDACが上方制御されることが示されている[33]。特定の実施形態では、本発明の組成物は、乳癌の治療において腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の低下、または血管新生の低減に使用するためのものである。
【0247】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、前立腺癌の治療または予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、HDAC活性が前立腺癌の発生において主要な役割を果たすことから[34]、前立腺癌の治療に有効でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、前立腺癌の治療において腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の低下、または血管新生の低減に使用するためのものである。特定の実施形態では、がんは、ホルモン不応性前立腺癌である。
【0248】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、肺癌の治療または予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、肺癌の治療に有効である可能性があり、肺癌においてHDACが上方制御されることが示されている[35]。特定の実施形態では、本発明の組成物は、肺癌の治療において腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の低下、または血管新生の低減に使用するためのものである。好ましい実施形態では、がんは肺癌である。好ましい実施形態では、組成物は、HDAC2を高レベルで発現している肺癌の治療に使用するためのものである。特定の肺癌組織はHDAC2を豊富に発現することが示されている。HDAC2の不活化は肺癌細胞の増殖を抑制する。高レベルのHDAC2活性は、p53活性を抑制することが示されている[36]。活性p53は細胞分裂を停止させ、最終的にアポトーシスの開始をもたらす。特定の実施形態では、HDAC2を阻害する本発明の組成物は、HDAC2活性が高レベルである肺癌の治療に使用するためのものである。
【0249】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、肝癌の治療または予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、肝癌の治療に有効である可能性があり、肝癌においてHDACが上方制御されることが示されている[37]。特定の実施形態では、本発明の組成物は、肝癌の治療において腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の低下、または血管新生の低減に使用するためのものである。好ましい実施形態では、がんは、肝癌(肝細胞癌)である。特定の実施形態では、がんは、低悪性度または早期の腫瘍である。
【0250】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、癌腫の治療または予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、癌腫の治療に特に有効でありうる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、非免疫原性がんの治療または予防に使用するためのものである。本発明の組成物は、非免疫原性がんの治療に有効でありうる。
【0251】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨腫瘍、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹部神経膠腫、脳腫瘍、小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣細胞腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、乳癌、気管支腺腫/気管支カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、子宮内膜癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間葉系腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、神経膠腫、小児視覚路及び視床下部神経膠腫、ホジキンリンパ腫、黒色腫、膵島細胞癌、カポシ肉腫、腎細胞癌、喉頭癌、白血病、リンパ腫、中皮腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、副甲状腺癌、咽頭癌、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍、前立腺癌、腎細胞腫、網膜芽細胞腫、肉腫、精巣癌、甲状腺癌、または子宮癌の治療または予防に使用するためのものである。
【0252】
本発明の組成物は、さらなる治療剤と併用した場合に特に有効でありうる。本発明の組成物のHDAC阻害効果は、より直接的な抗がん剤と併用した場合に有効でありうる。したがって、特定の実施形態では、本発明は、Bariatricus属の細菌株及び抗がん剤を含む組成物を提供する。好ましい実施形態では、抗がん剤は、免疫チェックポイント阻害剤、指向型抗体免疫療法、CAR−T細胞療法、腫瘍溶解性ウイルス、または細胞静止薬である。好ましい実施形態では、組成物は、ヤーボイ(イピリムマブ、BMS);キイトルーダ(ペンブロリズマブ、Merck);オプジーボ(ニボルマブ、BMS);MEDI4736(AZ/MedImmune);MPDL3280A(Roche/Genentech);トレメリムマブ(AZ/MedImmune);CT−011(ピディリズマブ、CureTech);BMS−986015(リリルマブ、BMS);MEDI0680(AZ/MedImmune);MSB−0010718C(Merck);PF−05082566(Pfizer);MEDI6469(AZ/MedImmune);BMS−986016(BMS);BMS−663513(ウレルマブ、BMS);IMP321(Prima Biomed);LAG525(Novartis);ARGX−110(arGEN−X);PF−05082466(Pfizer);CDX−1127(バリルマブ;CellDex Therapeutics);TRX−518(GITR Inc.);MK−4166(Merck);JTX−2011(Jounce Therapeutics);ARGX−115(arGEN−X);NLG−9189(インドキシモド、NewLink Genetics);INCB024360(Incyte);IPH2201(Innate Immotherapeutics/AZ);NLG−919(NewLink Genetics);抗VISTA(JnJ);エパカドスタット(INCB24360、Incyte);F001287(Flexus/BMS);CP870893(University of Pennsylvania);MGA271(Macrogenix);エマクツズマブ(Emactuzumab)(Roche/Genentech);ガルニセルチブ(Eli Lilly);ウロクプルマブ(BMS);BKT140/BL8040(Biokine Therapeutics);バビツキシマブ(Peregrine Pharmaceuticals);CC90002(Celgene);852A(Pfizer);VTX−2337(VentiRx Pharmaceuticals);IMO−2055(Hybridon、Idera Pharmaceuticals);LY2157299(Eli Lilly);EW−7197(Ewha Women’s University,Korea);ベムラフェニブ(Plexxikon);ダブラフェニブ(Genentech/GSK);BMS−777607(BMS);BLZ945(Memorial Sloan−Kettering Cancer Centre);Unituxin(ジヌツキシマブ、United Therapeutics Corporation);Blincyto(ブリナツモマブ、Amgen);サイラムザ(ラムシルマブ、Eli Lilly);ガザイバ(オビヌツズマブ、Roche/Biogen);カドサイラ(ado−トラスツズマブエムタンシン、Roche/Genentech);パージェタ(ペルツズマブ、Roche/Genentech);アドセトリス(ブレンツキシマブベドチン、Takeda/Millennium);アーゼラ(オファツムマブ、GSK);ベクティビックス(パニツムマブ、Amgen);アバスチン(ベバシズマブ、Roche/Genentech);アービタックス(セツキシマブ、BMS/Merck);ベキサール(トシツモマブ−I131、GSK);ゼヴァリン(イブリツモマブチウキセタン、Biogen);CAMPATH(アレムツズマブ、Bayer);マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン、Pfizer);ハーセプチン(トラスツズマブ、Roche/Genentech);リツキサン(リツキシマブ、Genentech/Biogen);ボロシキシマブ(Abbvie);エナバツズマブ(Abbvie);ABT−414(Abbvie);エロツズマブ(Abbvie/BMS);ALX−0141(Ablynx);オゾラリズマブ(Ablynx);アクチマブ(Actimab)−C(アクチニウム);アクチマブ(Actimab)−P(アクチニウム);ミラツズマブ−dox(アクチニウム);Emab−SN−38(アクチニウム);ナプツモマブエスタフェナトクス(Active Biotech);AFM13(Affimed);AFM11(Affimed);AGS−16C3F(Agensys);AGS−16M8F(Agensys);AGS−22ME(Agensys);AGS−15ME(Agensys);GS−67E(Agensys);ALXN6000(サマリズマブ、Alexion);ALT−836(Altor Bioscience);ALT−801(Altor Bioscience);ALT−803(Altor Bioscience);AMG780(Amgen);AMG228(Amgen);AMG820(Amgen);AMG172(Amgen);AMG595(Amgen);AMG110(Amgen);AMG232(アデカツムマブ(Adecatumumab)、Amgen);AMG211(Amgen/MedImmune);BAY20−10112(Amgen/Bayer);リロツムマブ(Amgen);デノスマブ(Amgen);AMP−514(Amgen);MEDI575(AZ/MedImmune);MEDI3617(AZ/MedImmune);MEDI6383(AZ/MedImmune);MEDI551(AZ/MedImmune);モキセツモマブパスードトクス(AZ/MedImmune);MEDI565(AZ/MedImmune);MEDI0639(AZ/MedImmune);MEDI0680(AZ/MedImmune);MEDI562(AZ/MedImmune);AV−380(AVEO);AV203(AVEO);AV299(AVEO);BAY79−4620(Bayer);アネツマブ・ラブタンシン(Bayer);バンチクツマブ(Bayer);BAY94−9343(Bayer);シブロツズマブ(Sibrotuzumab)(Boehringer Ingleheim);BI−836845(Boehringer Ingleheim);B−701(BioClin);BIIB015(Biogen);オビヌツズマブ(Biogen/Genentech);BI−505(Bioinvent);BI−1206(Bioinvent);TB−403(Bioinvent);BT−062(Biotest)、BIL−010t(Biosceptre);MDX−1203(BMS);MDX−1204(BMS);ネシツムマブ(BMS);CAN−4(Cantargia AB);CDX−011(Celldex);CDX1401(Celldex);CDX301(Celldex);U3−1565(Daiichi Sankyo);パトリツマブ(Daiichi Sankyo);ティガツズマブ(Daiichi Sankyo);ニモツズマブ(Daiichi Sankyo);DS−8895(Daiichi Sankyo);DS−8873(Daiichi Sankyo);DS−5573(Daiichi Sankyo);MORab−004(Eisai);MORab−009(Eisai);MORab−003(Eisai);MORab−066(Eisai);LY3012207(Eli Lilly);LY2875358(Eli Lilly);LY2812176(Eli Lilly);LY3012217(Eli Lilly);LY2495655(Eli Lilly);LY3012212(Eli Lilly);LY3012211(Eli Lilly);LY3009806(Eli Lilly);シズツムマブ(Eli Lilly);フランボツマブ(Eli Lilly);IMC−TR1(Eli Lilly);ラムシルマブ(Eli Lilly);タバルマブ(Eli Lilly);ザノリムマブ(Emergent Biosolution);FG−3019(FibroGen);FPA008(Five Prime Therapeutics);FP−1039(Five Prime Therapeutics);FPA144(Five Prime Therapeutics);カツマキソマブ(Fresenius Biotech);IMAB362(Ganymed);IMAB027(Ganymed);HuMax−CD74(Genmab);HuMax−TFADC(Genmab);GS−5745(Gilead);GS−6624(Gilead);OMP−21M18(デムシズマブ、GSK);マパツムマブ(GSK);IMGN289(ImmunoGen);IMGN901(ImmunoGen);IMGN853(ImmunoGen);IMGN529(ImmunoGen);IMMU−130(Immunomedics);ミラツズマブ−dox(Immunomedics);IMMU−115(Immunomedics);IMMU−132(Immunomedics);IMMU−106(Immunomedics);IMMU−102(Immunomedics);エピラツズマブ(Immunomedics);クリバツズマブ(Immunomedics);IPH41(Innate Immunotherapeutics);ダラツムマブ(Janssen/Genmab);CNTO−95(インテツムマブ、Janssen);CNTO−328(シルツキシマブ、Janssen);KB004(KaloBios);モガムリズマブ(Kyowa Hakko Kirrin);KW−2871(エクロメキシマブ、Life Science);ソネプシズマブ(Sonepcizumab)(Lpath);マルジェツキシマブ(Macrogenics);エノブリツズマブ(Macrogenics);MGD006(Macrogenics);MGF007(Macrogenics);MK−0646(ダロツズマブ、Merck);MK−3475(Merck);Sym004(Symphogen/Merck Serono);DI17E6(Merck Serono);MOR208(Morphosys);MOR202(Morphosys);Xmab5574(Morphosys);BPC−1C(エンシツキシマブ、Precision Biologics);TAS266(Novartis);LFA102(Novartis);BHQ880(Novartis/Morphosys);QGE031(Novartis);HCD122(ルカツムマブ、Novartis);LJM716(Novartis);AT355(Novartis);OMP−21M18(デムシズマブ、OncoMed);OMP52M51(Oncomed/GSK);OMP−59R5(Oncomed/GSK);バンチクツマブ(Oncomed/Bayer);CMC−544(イノツズマブオゾガマイシン、Pfizer);PF−03446962(Pfizer);PF−04856884(Pfizer);PSMA−ADC(Progenics);REGN1400(Regeneron);REGN910(ネスバクマブ、Regeneron/Sanofi);REGN421(エノチクマブ、Regeneron/Sanofi);RG7221、RG735







6、RG7155、RG7444、RG7116、RG7458、RG7598、RG7599、RG7600、RG7636、RG7450、RG7593、RG7596、DCDS3410A、RG7414(パルサツズマブ)、RG7160(イムガツズマブ)、RG7159(オビヌツズマブ)、RG7686、RG3638(オナルツズマブ)、RG7597(Roche/Genentech);SAR307746(Sanofi);SAR566658(Sanofi);SAR650984(Sanofi);SAR153192(Sanofi);SAR3419(Sanofi);SAR256212(Sanofi)、SGN−LIV1A(リンツズマブ、Seattle Genetics);SGN−CD33A(Seattle Genetics);SGN−75(ボルセツズマブマホドチン、Seattle Genetics);SGN−19A(Seattle Genetics)SGN−CD70A(Seattle Genetics);SEA−CD40(Seattle Genetics);イブリツモマブチウキセタン(Spectrum);MLN0264(Takeda);ガニツマブ(Takeda/Amgen);CEP−37250(Teva);TB−403(Thrombogenic);VB4−845(Viventia);Xmab2512(Xencor);Xmab5574(Xencor);ニモツズマブ(YM Biosciences);カルルマブ(Janssen);NY−ESO TCR(Adaptimmune);MAGE−A−10TCR(Adaptimmune);CTL019(Novartis);JCAR015(Juno Therapeutics);KTE−C19 CAR(Kite Pharma);UCART19(Cellectis);BPX−401(Bellicum Pharmaceuticals);BPX−601(Bellicum Pharmaceuticals);ATTCK20(Unum Therapeutics);CAR−NKG2D(Celyad);Onyx−015(Onyx Pharmaceuticals);H101(Shanghai Sunwaybio);DNX−2401(DNAtrix);VCN−01(VCN Biosciences);Colo−Ad1(PsiOxus Therapeutics);ProstAtak(Advantagene);Oncos−102(Oncos Therapeutics);CG0070(Cold Genesys);Pexa−vac(JX−594、Jennerex Biotherapeutics);GL−ONC1(Genelux);T−VEC(Amgen);G207(Medigene);HF10(Takara Bio);SEPREHVIR(HSV1716、Virttu Biologics);OrienX010(OrienGene Biotechnology);レオライシン(Reolysin)(Oncolytics Biotech);SVV−001(Neotropix);Cacatak(CVA21、Viralytics);アリムタ(Eli Lilly)、シスプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、フォリン酸、メトトレキサート、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、ジカディア(Novartis)、タフィンラー(GSK)、ザーコリ(Pfizer)、イレッサ(AZ)、Gilotrif(Boehringer Ingelheim)、タルセバ(Astellas Pharma)、ハラヴェン(Eisai Pharma)、ベリパリブ(Abbvie)、AZD9291(AZ)、アレクチニブ(Chugai)、LDK378(Novartis)、ガネテスピブ(Synta Pharma)、テルジェンプマツセル−L(NewLink Genetics)、GV1001(Kael−GemVax)、チバンチニブ(ArQule);シトキサン(BMS);オンコビン(Eli Lilly);アドリアマイシン(Pfizer);ジェムザール(Eli Lilly);ゼローダ(Roche);イグゼンプラ(BMS);アブラキサン(Celgene);トレルスター(Debiopharm);タキソテール(Sanofi);ネクサバール(Bayer);IMMU−132(Immunomedics);E7449(Eisai);サーモドックス(Celsion);COMETRIQ(Exellxis);ロンサーフ(Taiho Pharmaceuticals);Camptosar(Pfizer);ユーエフティ(Taiho Pharmaceuticals);及びティーエスワン(Taiho Pharmaceuticals)からなる群から選択される抗がん剤を含む。
【0253】
神経変性疾患
−アルツハイマー病及び認知症
高リン酸化tauの異常な蓄積は、アルツハイマー病のような神経変性タウオパチーの特徴である。HDACの活性を低下させると、高リン酸化tauレベルを低下させ、tauに起因する神経性障害の症状を軽減することができる[38]。したがって、特定の実施形態では、本発明の組成物は、神経変性タウオパチーの治療または予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病の治療に使用するためのものである。
【0254】
DSM−5では、認知症(dementia)という用語は、認知症(major neurocognitive disorder)及び軽度認知障害(mild neurocognitive disorder)という用語で置き換えられた。神経認知障害は、異種クラスの精神疾患である。最も一般的な神経認知障害はアルツハイマー病であり、その後に血管性認知症またはこの2種の混合型が続く。神経変性疾患の他の型(例えば、レビー小体病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、及びウェルニッケ・コルサコフ症候群)には認知症を伴う。
【0255】
アルツハイマー病及び認知症もまたニューロン消失を特徴とするため、本発明の組成物の実施例で示される神経保護作用及びニューロン増殖作用は、これらの病態の治療または予防に有用でありうることを示す。
【0256】
DSM−5による認知症の症状の基準は、学習及び記憶;言語;遂行機能;複雑性注意;知覚−運動及び社会的認知から選択される1または2以上の認知領域において、以前の行為水準から有意な認知の低下があることの証拠である。毎日の活動において、認知欠損が自立を妨げていなければならない。さらに、認知欠損は、譫妄の状況でのみ起こるものではなく、また別の精神障害(例えばMDDまたは統合失調症)によってうまく説明されない。
【0257】
主な症状に加え、神経変性疾患の対象は、興奮、攻撃性、うつ、不安、無関心、精神病及び睡眠・覚醒周期障害など、行動症状及び精神症状を示す。
【0258】
神経変性疾患は、微生物叢−腸−脳軸の機能不全により発症または持続しうる。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象の神経変性疾患の治療または予防に使用するためのものである。好ましい実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病である。他の実施形態では、神経変性疾患は、血管性認知症;アルツハイマー病と血管性認知症の混合型;レビー小体病;前頭側頭型認知症;パーキンソン病認知症;クロイツフェルト・ヤコブ病;ハンチントン病;及びウェルニッケ・コルサコフ症候群から選択される。
【0259】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象の神経変性疾患の症状の1または2以上を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における認知低下の出現を予防する、低減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、学習及び記憶;言語;遂行機能;複雑性注意;知覚−運動及び社会的認知から選択される1または2以上の認知領域における神経変性疾患を有する対象の行為水準を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、興奮、攻撃性、うつ、不安、無関心、精神病及び睡眠・覚醒周期障害から選択される神経変性疾患に関連した1または2以上の行動症状及び精神症状の出現を予防する、低減する、または緩和する。
【0260】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、疑われる病因機序に前臨床段階で介入することにより、症候性疾患を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、疾患修飾を改善し、症状の進行を減速または停止させる。いくつかの実施形態では、症状の進行の減速または停止は、基礎にある神経病理学的プロセスを遅延させる証拠と相関する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、神経変性疾患の症状を改善し、認知及び機能の改善向上を含む。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、認知症の行動・心理症状(BPSD)を改善する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、神経変性疾患を有する対象が日常の活動を行う能力を改善する。
【0261】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病の対象における認知及び機能の両方を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病の対象における認知評価項目を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病の対象における機能評価項目を改善する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病の対象における認知及び機能の評価項目を改善する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、アルツハイマー病の対象における総合的臨床反応(全体的評価項目)を改善する。
【0262】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症状または診断の検査に従った神経変性疾患症状を改善する。特定の実施形態では、アルツハイマー病(及び他の神経変性疾患)の症状改善を評価する検査は、客観的認知、日常生活動作、変化の総合評価、健康関連の生活の質の検査、ならびに神経変性疾患の行動症状及び精神症状を評価する検査から選択される。
【0263】
特定の実施形態では、症状改善を評価する客観的認知検査では、アルツハイマー病評価尺度の認知機能下位尺度(ADAS−cog)及び古典的ADAS評価尺度を用いる。特定の実施形態では、アルツハイマー病に使用する神経心理学的検査バッテリー(NTB)を使用して認知の症状改善を評価する。
【0264】
いくつかの実施形態では、精神障害及び神経性障害を評価する臨床全般印象−改善度(CGI−I)評価尺度を変化の総合評価検査で使用する。いくつかの実施形態では、全般的評価尺度は、臨床面接による認知症変化印象尺度(CIBIC−plus)である。いくつかの実施形態では、全般的評価尺度は、アルツハイマー病協同研究ユニット臨床全般印象尺度(ADCS−CGIC)である。
【0265】
特定の実施形態では、健康関連の生活の質の尺度は、アルツハイマー病関連QOL(ADRQL)及びQOL−アルツハイマー病(QOL−AD)である。
【0266】
特定の実施形態では、神経変性疾患の行動症状及び精神症状を評価する検査は、アルツハイマー病行動病理学尺度(BEHAVE−AD);認知症行動評価尺度(BRSD);神経精神症状評価(NPI);及びコーエン・マンスフィールドagitation評価票(CMAI)から選択される。
【0267】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、神経変性疾患を治療する別の治療薬と併用した場合に、神経変性疾患の予防、軽減または緩和に特に有効である。特定の実施形態では、そのような治療薬として、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、例えば、ドネペジル(Aricept(登録商標))、ガランタミン(Razadyne(登録商標))及びリバスチグミン(Exelon(登録商標))、ならびにメマンチンなどが挙げられる。
【0268】
−パーキンソン病
パーキンソン病は、異種の神経細胞集団(ドーパミン産生細胞)の変性によって神経病理学的に特徴付けられる、よく見られる神経変性疾患である。パーキンソン病の臨床診断には、動作緩慢ならびに以下の中核症状、すなわち、安静時振戦;筋強剛及び姿勢反射障害のうち少なくとも1つを必要とする。疾患進行期に存在または進展しうる他の徴候及び症状は、自律神経障害(流涎、脂漏、便秘、排尿障害、性機能、起立性低血圧、発汗過多)、睡眠障害、及び嗅覚または温度覚の障害である。パーキンソン病は、HDAC活性により発症または持続しうる神経変性疾患である。例えば、HDAC活性は、パーキンソン病などの神経変性疾患の特徴である、毒性のある細胞内タンパク質性フィラメントの凝集及び沈着を調節することが示されている[39]。HDAC活性の阻害により、毒性のあるタンパク質ミスフォールディングイベントが低減されることがパーキンソン病モデルにおいて示されている。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象のパーキンソン病の治療または予防に使用するためのものである。
【0269】
さらに好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病を治療または予防する方法において使用するためのものである。本発明の組成物は、パーキンソン病モデルにおいて運動機能及び認知機能を改善しうる。組成物による治療は、中枢神経系、自律神経系及び腸神経系のシグナル伝達を調節すること;HPA軸経路の活性を調節すること;神経内分泌経路及び/または神経免疫経路を調節すること;ならびに対象における共生生物による代謝産物レベル、炎症マーカーレベル及び/または消化管透過性レベルを調節することができ、これらのいずれも、パーキンソン病の神経病理に関与している。好ましい実施形態では、本発明は、パーキンソン病を治療または予防する方法において使用するための、Bariatricus massiliensis種の細菌株を含む組成物を提供する。Bariatricusを使用する組成物は、パーキンソン病の治療に特に有効でありうる。組成物はさらに有機酸を含んでよい。
【0270】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象のパーキンソン病の症状の1または2以上を予防する、軽減する、または緩和する。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病の1または2以上の中核症状を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における動作緩慢を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象における安静時振戦;筋強剛及び/または姿勢反射障害を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病の進行に関連した、自律神経障害(流涎、脂漏、便秘、排尿障害、性機能、起立性低血圧、発汗過多)、睡眠障害、及び嗅覚または温度覚の障害から選択される1または2以上の症状を予防する、軽減する、または緩和する。
【0271】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病に併存するうつ症状を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、言語記憶及び/または遂行機能を改善する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、注意、作業記憶、言語流暢性及び/または不安を改善する。
【0272】
他の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病に併存する認知機能障害を予防する、軽減する、または緩和する。
【0273】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病に併存する多動性または不安様行動を予防する、軽減する、または緩和する。パーキンソン病マウスモデルは多動性を示すことが示されている。特定のモデルでは、多動性が、脳内の神経伝達物質濃度が不均衡である、または脳内部の他の構造における機能変化がドーパミン作動性ニューロンの変性に先行して起こる結果でありうることが示された。したがって、多動性などの行動障害は、運動障害の発症に先行して起こる、パーキンソン病の症状でありうる。本発明の組成物は、多動性を軽減することがパーキンソン病マウスモデルで示されている。したがって、特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病の運動障害の予防に使用するためのものであってよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病に関連した行動障害の治療または予防に使用するためのものである。
【0274】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病の進行を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、後期運動合併症を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、後期運動変動を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、ニューロン消失を予防する、低減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病認知症(PDD)の症状を改善する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、遂行機能、注意及び/または作業記憶の障害を予防する、軽減する、または緩和する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、ドーパミン作動性神経伝達を改善する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、障害されたドーパミン作動性神経伝達を予防する、軽減する、または緩和する。
【0275】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症状または診断の評価尺度に従ったパーキンソン病の症状を改善する。特定の実施形態では、パーキンソン病の運動機能の症状改善を評価する検査は統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)である。特に、UPDRS IIは日常生活活動を考慮し、UPDRS IIIは運動検査を考慮する。
【0276】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、症状または診断の検査及び/または評価尺度に従ったPDD関連の症状を改善する。特定の実施形態では、検査または評価尺度は、ホプキンス言語学習テスト−改訂版(HVLT−R);Delis−Kaplan遂行機能検査(D−KEFS)の色−単語干渉テスト(Color−Word Interference Test);ハミルトンうつ評価尺度(HAM−D 17;うつ病);ハミルトン不安評価尺度(HAM−A;不安)、及び統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS;PD症状重症度)から選択される。
【0277】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、精神障害及び神経性障害を評価する臨床全般印象−改善度(CGI−I)評価尺度を改善する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、パーキンソン病を有する対象の社会的及び職業的な障害全般に対する好ましい効果を示す。
【0278】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病などの神経性障害の治療または予防において使用するためのものであり、ここで、前記使用は、黒質のドーパミン作動性細胞の消失の低減または予防を伴う。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病などの神経性障害の治療または予防において使用するためのものであり、ここで、前記使用は、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの変性の軽減または予防を伴う。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病などの神経性障害の治療または予防において使用するためのものであり、ここで、前記使用は、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの変性、及びその結果生じる、かかるニューロンによる線条体での神経線維投射の消失の低減または予防を伴う。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病などの神経性障害の治療または予防において使用するためのものであり、ここで、前記使用は、黒質線条体のドーパミン作動性ニューロンの消失の低減または予防を伴う。
【0279】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病などの神経性障害の治療または予防において使用するためのものであり、ここで、前記使用は、ドーパミン濃度増大を伴う。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病などの神経性障害の治療または予防において使用するためのものであり、ここで、前記使用は、DOPAC濃度増大を伴う。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象におけるパーキンソン病などの神経性障害の治療または予防において使用するためのものであり、ここで、前記使用は、ドーパミン及びDOPACの濃度増大を伴う。特定の実施形態では、線条体においてドーパミン及び/またはDOPACの濃度が増大する。
【0280】
実施例は、本発明の組成物が、MAP2(微小管結合タンパク質2)活性化を活性化させることを示している。MAP2は、MAP2のニューロン分化に関連した遺伝子であり、神経突起生成における微小管形成にとって不可欠であると考えられているため、本発明の組成物は、神経変性疾患の治療に特に有用でありうる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、MAP2の活性化またはMAP2レベルの増大によるアルツハイマー病またはパーキンソン病などの神経変性疾患の治療に使用するためのものである。さらに、MAP2は、損傷したニューロンのネットワーク再形成及びシナプス形成において主要な役割を果たす神経突起伸長を促進することから、MAP2発現は、ニューロン分化のマーカーであること以上に、神経病理学的疾患の治療転帰に関連する「ニューロン再構成」を示す可能性がある[22]。
【0281】
実施例は、本発明の組成物が、脳の多数のタンパク質の発現を調節することを示している。特に、本発明の組成物は、海馬及び前頭前皮質でのBDNFの発現を増大させる。BDNFは、成体のシナプス可塑性及び記憶の形成にとって不可欠であり、アルツハイマー病患者及びハンチントン病患者ではBDNFレベルの低下が観察される。したがって、本発明の組成物は、アルツハイマー病及びハンチントン病の治療に特に有用である。特定の実施形態では、本発明の組成物は、脳でのBDNFの発現を増大させる。
【0282】
投与方法
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株の腸への送達及び/または腸での部分的もしくは全体的な定着を可能にするために消化管に投与される。一般に、本発明の組成物は経口投与されるが、直腸内投与、鼻腔内投与、または口腔経路もしくは舌下経路による投与であってよい。
【0283】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、泡として、スプレーまたはゲルとして投与してよい。
【0284】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、直腸坐剤などの坐剤、例えば、カカオ脂(theobroma oil)(カカオ脂(cocoa butter))、合成ハードファット(例えば、suppocire、ウイテプゾール)、グリセロ−ゼラチン、ポリエチレングリコール、または石けんグリセリン組成物の形態の坐剤として投与してよい。
【0285】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、経鼻胃管、経口胃管、胃管、空腸瘻チューブ(Jチューブ)などの管、経皮内視鏡下胃瘻造設(PEG)、または、胃、空腸へのアクセスを提供する胸壁ポートなどのポート及び他の好適なアクセスポートを介して消化管に投与される。
【0286】
本発明の組成物は、1回の投与、または治療レジメンの一部としての順次投与のいずれであってもよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は連日投与される。
【0287】
本発明の特定の実施形態では、本発明に従った治療は、患者の腸内微生物叢の評価を伴う。本発明の菌株の送達及び/または部分的もしくは全体的な定着が達成されず、効果が観察されない場合は治療を繰り返してよく、あるいは送達及び/または部分的もしくは全体的な定着が成功し、効果が観察された場合は治療を中止してもよい。
【0288】
特定の実施形態では、本発明の組成物を妊娠動物、例えば、ヒトなどの哺乳類に投与して、子宮内及び/または出生後の子に炎症性または自己免疫性の疾患が発症するのを予防することができる。
【0289】
本発明の組成物は、ヒストン脱アセチル化酵素活性によって媒介される疾患もしくは病態と診断された患者、またはヒストン脱アセチル化酵素活性によって媒介される疾患もしくは病態のリスクがあると同定された患者に投与してよい。予防的措置として組成物を投与して、ヒストン脱アセチル化酵素活性によって媒介される疾患または病態が健常患者に発症することを予防してもよい。
【0290】
本発明の組成物は、腸内微生物叢の異常と同定された患者に投与してよい。例えば、患者は、Bariatricus、特にBariatricus massiliensisの定着が減少または欠如していてよい。
【0291】
本発明の組成物は、栄養補助食品などの食品として投与してよい。
【0292】
一般に、本発明の組成物はヒトの治療用であるが、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマまたはウサギのような単胃哺乳類などの動物の治療に使用してよい。本発明の組成物は、動物の成長及び能力の向上に有用でありうる。動物への投与の場合、強制経口投与を使用してよい。
【0293】
組成物
一般に、本発明の組成物は細菌を含む。本発明の好ましい実施形態では、組成物はフリーズドライ形態で製剤化される。例えば、本発明の組成物は、本発明の細菌株を含む、顆粒またはゼラチンカプセル、例えば、硬ゼラチンカプセルを含みうる。
【0294】
好ましくは、本発明の組成物は、凍結乾燥した細菌を含む。細菌の凍結乾燥は十分に確立された手法であり、関連ガイダンスは、例えば、参考文献[40、41、42]で入手可能である。
【0295】
あるいは、本発明の組成物は、生きた、活性である細菌の培養物を含みうる。
【0296】
好ましい実施形態では、本発明の組成物を封入して、腸への細菌株送達を可能にする。封入により、組成物が目標位置に送達されるまで、分解、例えば、pH変化により喚起されうる、圧力、酵素活性などの化学的もしくは物理的刺激または物理的崩壊を介した破裂による分解から組成物を保護する。任意の適切な封入方法を使用してよい。例示的な封入技術としては、多孔質マトリックス内への閉じ込めるもの、固体担体表面に付着または吸着させるもの、凝集または架橋剤により自己集合させるもの、及び微多孔膜またはマイクロカプセルの裏側に機械的に封じ込めるものが挙げられる。本発明の組成物の調製に有用な封入ガイダンスは、例えば、参考文献[43]及び[44]で入手可能である。
【0297】
組成物は、経口投与してよく、錠剤、カプセルまたは粉末の形態であってよい。Bariatricusは嫌気性菌であるため、封入した製品が好ましい。送達及び/または部分的もしくは全体的な定着ならびに生体内での生存を改善するため、酸素スカベンジャー及びプレバイオティック基質として他の原料(例えば、ビタミンCなど)を含めてよい。あるいは、本発明のプロバイオティック組成物を、食品もしくは栄養製品、例えば、ミルクもしくはホエイを用いた発酵乳製品などとして、または医薬品として経口投与してよい。
【0298】
組成物をプロバイオティクスとして製剤化してよい。
【0299】
本発明の組成物には、治療的有効量の本発明の細菌株が含まれる。治療的有効量の細菌株は、患者への有益な効果を発揮するのに十分である。治療的有効量の細菌株は、患者の腸への送達及び/または腸での部分的もしくは全体的な定着をもたらすのに十分でありうる。
【0300】
細菌の、例えば、ヒト成人への好適な1日量は約1×10〜約1×1011コロニー形成単位(CFU)、例えば、約1×10〜約1×1010CFUであってよく、別の例では約1×10〜約1×1010CFU、別の例では約1×10〜約1×1011CFU、別の例では約1×10〜約1×1010CFU、別の例では約1×10〜約1×1011CFUであってよい。
【0301】
特定の実施形態では、細菌の用量は、1日あたり少なくとも10細胞、例えば、1日あたり少なくとも1010細胞、少なくとも1011細胞、または少なくとも1012細胞などであってよい。
【0302】
特定の実施形態では、組成物は、組成物の重量に対して約1×10〜約1×1011CFU/gの量の細菌株、例えば、約1×10〜約1×1010CFU/gの量の細菌株を含有する。用量は、例えば、1g、3g、5g、及び10gであってよい。
【0303】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株の量は、組成物の重量に対して1グラムあたり約1×10〜約1×1011コロニー形成単位である。
【0304】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、組成物は、500mg〜1000mg、600mg〜900mg、700mg〜800mg、500mg〜750mg、または750mg〜1000mgの用量で投与される。特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、医薬組成物中の凍結乾燥細菌は、500mg〜1000mg、600mg〜900mg、700mg〜800mg、500mg〜750mg、または750mg〜1000mgの用量で投与される。
【0305】
典型的に、本発明の組成物のようなプロバイオティクスは、任意選択で、少なくとも1つの好適なプレバイオティック化合物と組み合わされる。プレバイオティック化合物は通常、オリゴ糖もしくは多糖などの非消化性炭水化物、または糖アルコールであり、これらは上部消化管で分解または吸収されない。公知のプレバイオティクスとしては、イヌリン及びトランスガラクトオリゴ糖などの市販製品が挙げられる。
【0306】
特定の実施形態では、本発明のプロバイオティック組成物には、組成物の総重量に対して約1〜約30重量%(例えば、5〜20重量%)の量でプレバイオティック化合物が含まれる。炭水化物は、フラクトオリゴ糖(またはFOS)、短鎖フラクトオリゴ糖、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、キシロオリゴ糖(またはXOS)、キトサンオリゴ糖(またはCOS)、ベータグルカン、アラビアガム、変性難消化性デンプン、ポリデキストロース、D−タガトース、アカシア繊維、イナゴマメ、カラスムギ、及び柑橘類繊維からなる群から選択されうる。一態様では、プレバイオティクスは短鎖フラクトオリゴ糖(以後、本明細書では単にFOSs−c.cとする)であり、前記FOSs−c.c.は消化性炭水化物ではなく、一般に、テンサイ糖の転換によって得られ、グルコース分子が3つ結合したショ糖分子を含んでいる。
【0307】
本発明の組成物は、薬理学的に許容される添加剤または担体を含みうる。そのような好適な添加剤の例は参考文献[45]に見出されうる。治療法で使用する許容される担体または希釈剤は製薬の技術分野で周知であり、例えば、参考文献[46]に記載されている。好適な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。医薬担体、添加剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路及び標準的薬務に関して選択されうる。医薬組成物は、任意の好適な結合剤(複数可)、滑沢剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)を、担体、添加剤または希釈剤として、またはこれに追加で含みうる。好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、ベータ−ラクトース、コーンシロップ、天然及び合成のガム、例えば、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースならびにポリエチレングリコールが挙げられる。好適な滑沢剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。保存剤、安定化剤、色素、さらに香味剤が医薬組成物に含まれうる。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤及び懸濁剤を使用してもよい。
【0308】
本発明の組成物は、食品として製剤化されうる。例えば、食品、例えば、栄養補助食品に入れた場合など、本発明の治療効果に加えて、栄養的な利益が提供されうる。同様に、食品は、本発明の組成物の味を向上させるよう、または組成物が、医薬組成物というよりむしろ一般食品に類似していて、消費するのにより魅力的になるよう製剤化してよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、ミルクベースの製品として製剤化される。用語「ミルクベースの製品」とは、脂肪含有量が異なっている任意の液体または半固体のミルクベースまたはホエイベースの製品を意味する。ミルクベースの製品は、例えば、ウシのミルク、ヤギのミルク、ヒツジのミルク、スキムミルク、ホールミルク、粉末ミルクからの還元ミルク、及び未加工ホエイ、または加工品、例えば、ヨーグルト、凝固したミルク、カード、酸乳、酸全乳、バターミルク及び他の酸乳製品などでありうる。別の重要な群としては、ミルク飲料、例えば、ホエイ飲料、発酵乳、コンデンスミルク、乳幼児ミルク;フレーバーミルク、アイスクリーム;スイーツなどのミルク含有食品が挙げられる。
【0309】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、単一の細菌株または細菌種を含有し、他のいかなる細菌株または細菌種も含有しない。そのような組成物は、ごく僅少量または生物学的に無関係な量の他の細菌株もしくは細菌種を含みうる。そのような組成物は、他の種の生物を実質的に含まない培養物であってよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16の細菌株または細菌種からなる。特定の実施形態では、組成物は、1〜10、好ましくは1〜5の細菌株または細菌種からなる。
【0310】
本発明に従って使用するための組成物は、市販承認を必要としてもしなくてもよい。
【0311】
場合によっては、凍結乾燥された細菌株を投与前に再溶解する。場合によっては、再溶解は、本明細書に記載の希釈剤の使用による。
【0312】
本発明の組成物は、薬理学的に許容される添加剤、希釈剤または担体を含むことができる。
【0313】
特定の実施形態では、本発明は、本発明の細菌株と、薬理学的に許容される添加剤、担体または希釈剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、かかる細菌株は、それを必要とする対象に投与した場合に、障害を治療するのに十分な量であり、かかる障害は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病またはパーキンソン病など、脳損傷、例えば、脳卒中など、行動障害、例えば、注意欠陥多動性障害など、炎症性腸疾患、例えば、クローン病など、がん、例えば、前立腺癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌または胃癌などからなる群から選択される。
【0314】
特定の実施形態では、本発明は、本発明の細菌株と、薬理学的に許容される添加剤、担体または希釈剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、かかる細菌株は、HDACによって媒介される疾患または病態を治療または予防するのに十分な量である。好ましい実施形態では、前記疾患または病態は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病またはパーキンソン病など、脳損傷、例えば、脳卒中など、行動障害、例えば、注意欠陥多動性障害など、炎症性腸疾患、例えば、クローン病など、がん、例えば、前立腺癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌または胃癌などからなる群から選択される。
【0315】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、細菌株の量は、組成物の重量に対して1グラムあたり約1×10〜約1×1011コロニー形成単位である。
【0316】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、組成物は、1g、3g、5gまたは10gの用量で投与される。
【0317】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、組成物は、経口、直腸、皮下、鼻、口腔、及び舌下からなる群から選択される方法で投与される。
【0318】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む。
【0319】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む。
【0320】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、ベータ−ラクトース、コーンシロップ、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される添加剤を含む。
【0321】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、保存剤、抗酸化剤及び安定剤のうち少なくとも1つをさらに含む。
【0322】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される保存剤を含む。
【0323】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、前記細菌株が凍結乾燥されている。
【0324】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物を提供し、ここで、かかる組成物を、密封容器内で約4℃または約25℃で保存し、その容器を、相対湿度が50%の雰囲気に置いた場合、コロニー形成単位で測定した細菌株の少なくとも80%は、少なくとも約1か月、少なくとも約3か月、少なくとも約6か月、少なくとも約1年、少なくとも約1.5年、少なくとも約2年、少なくとも約2.5年、または少なくとも約3年の期間後に残存している。
【0325】
培養方法
本発明に使用するための細菌株は、標準の微生物学的技術、例えば、参考文献[47、48、49]で詳述されているような技術を使用して培養することができる。
【0326】
培養に使用する固体または液体の培地は、YCFA寒天またはYCFA培地であってよい。YCFA培地には、Casitone(1.0g)、酵母エキス(0.25g)、NaHCO(0.4g)、システイン(0.1g)、KHPO(0.045g)、KHPO(0.045g)、NaCl(0.09g)、(NHSO(0.09g)、MgSO・7HO(0.009g)、CaCl(0.009g)、レサズリン(0.1mg)、ヘミン(1mg)、ビオチン(1μg)、コバラミン(1μg)、p−アミノ安息香酸(3μg)、葉酸(5μg)、及びピリドキサミン(15μg)が含まれうる(100mlあたり、概算値)。
【0327】
ワクチン組成物に使用する細菌株
本発明者らは、本発明の細菌株が、HDACによって媒介される疾患または病態の治療または予防に有用であることを確認した。これは、本発明の細菌株が宿主免疫系に対して与える効果の結果であると考えられる。したがって、本発明の組成物は、ワクチン組成物として投与した場合、HDACによって媒介される疾患または病態の予防に有用でありうる。特定のそのような実施形態では、本発明の細菌株は、死滅、不活性化または弱毒化されうる。特定のそのような実施形態では、組成物は、ワクチンアジュバントを含みうる。特定の実施形態では、組成物は、注射、例えば、皮下注射による投与用である。
【0328】
概要
本発明の実施には、特に明記しない限り、化学、生化学、分子生物学、免疫学及び薬理学の従来方法を当業者の技量の範囲内で用いる。そのような技術は文献に十分な説明がある。例えば、参考文献[50]及び[51、52、53、54、55、56、57]などを参照のこと。
【0329】
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」及び「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなっていても、またはさらなる何かを含む、例えば、X+Yとなっていてもよい。
【0330】
数値xに関する「約」という用語は、任意選択的であり、例えば、x±10%を意味する。
【0331】
語「実質的に」は、「完全に(completely)」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く(completely)含まなくてよい。必要に応じて、語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてよい。
【0332】
2つのヌクレオチド配列間の配列同一性の割合への言及は、整列させた場合に、2配列の比較においてその割合のヌクレオチドが同一であることを意味する。このアラインメント、及び相同性パーセントまたは配列同一性パーセントは、当該技術分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、参考文献[58]の章(section)7.7.18に記載のものを使用して決定することができる。好ましいアラインメントは、アフィンギャップ検索を使用するSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定され、ギャップ開始ペナルティを12、ギャップ伸長ペナルティを2とし、BLOSUM62行列を用いる。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは参考文献[59]に開示されている。
【0333】
特に明記されない限り、多数のステップを含むプロセスまたは方法は、その方法の開始時もしく終了時にさらなるステップを含んでよく、また間にさらなる介在ステップを含んでもよい。また、ステップは、適切な場合、組み合わせ、省略、または代替的順序での実施が可能である。
【0334】
本発明の様々な実施形態を本明細書に記載する。各実施形態で特定されている特徴を、特定されている他の特徴と組み合わせて、さらなる実施形態が提供されうることは認識されよう。特に、好適であること、典型的であること、または好ましいことが強調されている実施形態は、互いに組み合わせてよい(ただし、これらが互いに排他的な場合を除く)。
【実施例】
【0335】
本発明を実施するための形態
実施例1−ヒストン脱アセチル化酵素活性に対する細菌の有効性
緒言
本発明者らは、HDAC阻害に対するBariatricus massiliensis株43042及びその代謝産物の有効性の検討を試みた。
【0336】
材料及び方法
細菌培養物及び無細胞上清の採取
43042細菌の純培養物を、それらが増殖の定常期に達するまでYCFAブロスで嫌気的に増殖させた。培養物を5,000×(g)で5分間遠心分離にかけ、0.2μMフィルター(Millipore,UK)を使用して無細胞上清(CFS)を濾過した。CFSのアリコート1mLを使用時まで−80℃にて保存した。酪酸ナトリウム、ヘキサン酸及び吉草酸をSigma Aldrich(UK)から入手し、YCFAブロスに懸濁液を調製した。
【0337】
細菌上清のSCFA及びMCFAの定量
細菌上清から得た短鎖脂肪酸(SCFA)及び中鎖脂肪酸(MCFA)を分析し、MS Omics APSにより以下のとおり定量した。試料は、塩酸を用いて酸性化させ、内部標準を加えた場合はそれを重水素標識した。全試料を無作為の順序で分析した。四重極検出器(59977B、Agilent)と連結されたGC(7890B、Agilent)に設置した高極性カラム(Zebron(商標)ZB−FFAP、GC Cap.カラム 30m×0.25mm×0.25μm)を使用して分析を実施した。系は、ChemStation(Agilent)により制御された。Chemstation(Agilent)を使用して生データをnetCDFフォーマットに変換してから、そのデータを、Johnsen,2017,J Chromatogr A,1503,57−64で記載されているPARADISeソフトウェアを使用してMatlab R2014b(Mathworks,Inc.)にインポートして処理した。
【0338】
全般HDAC活性分析
遠心分離及び0.22uMフィルター濾過によって、定常期の43042培養物の全細胞及び無細胞上清を単離した。コンフルエントな状態から3日後のHT−29細胞を使用し、実験開始の24時間前に1mLのDTSにステップダウンした。HT−29細胞を、DTSに希釈した10%無細胞上清で刺激し、これを48時間インキュベートさせた。その後、Sigma Aldrich Nuclease extractionキットを使用してヌクレアーゼタンパク質を抽出し、HDAC活性測定の前に試料を瞬間凍結した。Sigma Aldrich(UK)キットを使用してHDAC活性キットを蛍光定量的に評価した。
【0339】
特異的HDAC活性分析
HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC9の特異的HDAC阻害活性を、HDACのそれぞれの型用の蛍光発光性アッセイキット(BPS Bioscience、CA)を使用して分析した。製造者の指示書に従ってアッセイを行い、各試料につき複製試料で実施した。無細胞上清を1:10で希釈し、方法間の一貫性を維持するため、キットで提供された特定のHDACタンパク質に曝露した。
【0340】
結果
43042の全細胞及び無細胞上清は全般HDAC活性を低下させる
図1に示す結果は、43042全細胞及びCFSが、統計学的に有意な量で全般HDAC活性を低下させることを示す。
【0341】
43042はHDAC阻害代謝産物の酪酸を産生する
43042の上清は強いHDAC阻害を示し、有意な量の酪酸を産生することが見出された(図2A)。
【0342】
菌株で誘導されたHDAC阻害にどの代謝産物が関与したのかを調べるため、HT−29全細胞及びHT−29細胞溶解物で、異なる濃度のヘキサン酸、吉草酸及び酪酸ナトリウムをそれらのHDAC阻害について測定した。図2Bの結果は、酪酸ナトリウムが、細胞溶解物での場合と同様に全細胞でHDAC活性を大幅に阻害(P<0.05)したが、ヘキサン酸は大幅な阻害活性は示さなかったことを示す。吉草酸は総HDAC活性を阻害した(*(p<0.05)、**(p<0.005)、***(P<0.001)、****(p<0.0001))。
【0343】
検討した潜在的総HDAC阻害剤はクラスI HDACを標的とする。
被験細菌株の特異的HDAC阻害特性を検討した。クラスI HDACについて特異的HDAC阻害アッセイ(BPS Bioscience、CA)を行った。かかる細菌株がHDAC酵素を阻害する能力を分析した。結果(図3)は、43042がクラス1 HDAC酵素(HDAC1、HDAC2及びHDAC3)、特にHDAC2の強力な阻害剤であることを示す。
【0344】
考察
興味深いことに、特異的HDAC活性の結果は、試験した菌株がクラスI HDAC、特にHDAC2の強力な阻害剤であることを示す(図3)。クラスI HDAC(HDAC1、HDAC2、HDAC3及びHDAC8)は核内に存在し、ヒトのいくつかの細胞型に偏在的に発現する。HDAC1〜3は、50%超の相同性を共有するが、構造及び細胞機能は異なっている[60]。それらは主に細胞の生存、増殖及び分化に関与しており、したがって、それらの阻害は幅広い疾患で有用でありうる[61、62、63、64、65]。これらのデータは、本発明の組成物が、HDACによって媒介される疾患の治療に有用でありうることを示す。
【0345】
実施例2−多動性に対する細菌の有効性
緒言
本試験は、MPTPで傷害されたマウスを使用して嫌気性菌の効果を評価することを目的とした。72匹のマウスにMPTPで傷害を与え(動物12匹の群が6群)、43042、ビヒクルまたは基準化合物の強制経口投与を疾患誘導の14日前から開始し、連日、18日間処置した。n=12匹の1群は偽傷害のある対照として使用し、ビヒクルで処置した。
【0346】
材料及び方法
動物
全動物を個別換気ケージ(IVC)で飼育し、病原体フリーではあるが、SPF(特定病原体フリー)下にはなかった。さらに、ケージは層流下、開放されていた。
【0347】
異なるサプライヤー2社から3種の異なるサイズの個別換気ケージでマウスを飼育し、それらは、Ehret社製ポリカーボネートケージ、タイプ−1−ロング:426cmもしくはタイプ−2−ロング:530cm、またはTecniplast社製「greenline」:500cmであった。いずれの換気システムにもHEPAフィルターシステム(クラスHEPA14)が備えられ、現行基準を満たしている。
【0348】
動物の健康状態の評価では、おとり動物を使用する。
成体(少なくとも8週齢)、雌(雄同士の攻撃性回避のため)のCD1マウスをおとりとして使用した。おとり動物は、ケージごとに1対で飼育した。
【0349】
動物のハウジングでは以下のパラメータを維持した:
−12時間ずつの明暗周期(夏時間:午前6時から午後6時まで点灯、午後6時から午前6時まで消灯;冬時間:午前5時から午後5時まで点灯、午後5時から午前5時まで消灯)
−光強度:限界値:マウス[<400ルクス]
−音量:限界値:[<60dB]
−低音量の連続暗騒音(例えば、明期にラジオをつける)
−室温:20〜24℃
−湿度:30〜70%
−湿度及び室温をアラームシステムにより集中管理して監視した。
−床敷材には、吸引特性の高い木製チップ材を使用し、微細物質量が低いことを示した(例えば、Lignocel)
−エンリッチメント巣材には「Nestlets」を使用した
−マウス及びラット用の維持用標準飼料または動物育成用の飼育飼料を使用した(例えば、Altromin)
−水分補給は通常の水道水を使用した
【0350】
現行規制及び科学的公正性に従い、最小限の数の動物を使用した。実施される処置の数及び程度の点では動物の福祉を考慮した。
【0351】
検査施設内で操作する際の安全対策を試験に適用した。
使用動物の詳細
マウス系統:C57BL/6J(JAX(商標)マウス系統)
JAX(商標)マウスストック番号
000664
供給業者:Charles River Laboratories
開始時齢:〜10週齢
【0352】
動物の適応
動物がQPS Austriaに到着したらすぐに割り当てられた飼育室へ運び、梱包を解いて動物の健康状態を検査した。事前にCharles River Laboratories(CRL)により提供されていた輸送システムに関する情報及びデータを照合した。IRN、到着時の週齢及び性別を含めて動物リストを作成した。試験開始前に動物を少なくとも1週間慣らした。
【0353】
ハウジング
動物は2匹を1群として飼育された。室温を約20〜24℃に維持し、相対湿度を30〜70%に維持した。一定の照明周期(明/暗12時間ずつ;(夏時間:午前6時から午後6時まで点灯、午後6時から午前6時まで消灯;冬時間:午前5時から午後5時まで点灯、午後5時から午前5時まで消灯))で動物を飼育した。げっ歯類用の標準的な乾燥ペレット固形飼料(Altromin)及び通常の水道水を動物が自由に摂取できるようにした。
【0354】
識別
到着時にまだマーキングがない場合は、耳にマーキングする古典的な方法で動物に連番を付けた。
【0355】
各ケージは色カードで識別され、これには、試験番号、性別、動物の個体登録番号(IRN)、到着時の年齢、及び処置群割り付けが記載された。
【0356】
群割り付け
健康状態が明らかに良好な動物のみを試験に含めた。動物を、体重、ベースラインのIRWINテストの結果を考慮した処置群に分け、それぞれをケージの構成にあわせて割り付けた。
【0357】
本試験計画の以降の章に明記されなかった方法の詳細は、適切な標準操作手順書に記載がある。
【0358】
動物の具体的取り扱い及び無作為化
動物を取り扱う際(例:処置、行動テスト、清浄及び組織サンプリング)は必ず、処置群ごとに手袋を交換し、同一群の各ケージ間では手袋に70%エタノール溶液をスプレーして、汚染リスクを最小限に抑えることとした。
【0359】
処置は、どの日も同じ群が同じ時間に処置を受けることのないよう、無作為かつ日替わりで行うこととした。また、行動テストは、擬似ランダムな順序で日替わりにして行うこととし、同じ動物が同じ測定時点で取り扱われることのないようにした。また、組織サンプリングでもケージごとに動物を無作為化した。
【0360】
処置群の割り付け、処置
72匹の雄マウスを処置の異なる5つの群に割り付けた。群には、43042(群C)、またはビヒクル(PBS)(群A、群B及び群E)またはビヒクル(嫌気的PBS−群D)の強制経口投与による処置を連日、18日間行った。経口処置は、MPTPで傷害を与える14日前から開始した。群Eの動物にビヒクル(PBS)の経口投与処置を連日行い、0日目の初回MPTPの30分前及び90分後に対照薬剤をi.p.、すなわち、腹腔内注入した。経口投与及びビヒクル処置の適用容量はマウス1匹あたり200μlであった。43042はグリセロールストック(gly)から得た。経口処置では、投与する強制経口投与物を70%エタノール含有バイアルに保存し、使用時は毎回その前後に蒸留水でフラッシングを行う。処置群ごとに、その群専用の強制経口投与物及びエタノールバイアル及び蒸留水バイアルが用意された。処置直前、各注射器をN2でフラッシングした。
【0361】
0日目、MPTP(20mg/kg体重、4回、処置間隔2時間)を群B、群C、群D及び群Eの動物に腹腔内注入した。動物の1群(A)にはMPTPビヒクル(0.9%生理食塩水)の腹腔内投与により偽傷害を与えた。適用容量は体重1gあたり10μlであった。動物の体重測定を実施してから、実際の体重に従った用量を動物に投与するMPTP処置を行った。その後、動物に経口投与処置を連日行った。
【0362】
オープンフィールドテスト
2日目にオープンフィールドテストを実施した。
【0363】
以下のパラメータ、すなわち、多動性[複数可]、活動性[複数可]を評価することによって、自発的活動性及び不安をオープンフィールドで評価した。これには、Plexiglas Open Field(48x48cm;TSE−System(登録商標))を使用した。赤外線フォトビームを箱の周辺の1.4cmの距離に置いた。立ち上がり(後肢で立つこと)を検出するため、最初の列の4cm上にフォトビームをもう一列取り付けた。動物が探索行動を示すのはオープンフィールドテストの最初の数分が最適であるため、新しい環境でのマウスの行動を検査する1回のテスト時間は5分とした。その後、情動性の尺度として糞塊の数を数えた。マウスごとにオープンフィールを70%エタノールで清掃し、微量の臭気を取り除いた。試験は、概日周期の明期に標準室内照明条件下で実施した。
【0364】
統計
基本の統計解析を実施し、したがって、生データをコルモゴルフ・スミルノフ検定を用いて正規性について検討した。正規分布が確認された場合、2群間の相違はt検定で、また3群間以上の相違は一元配置分散分析で検討した。データが正規分布になっていない場合、2群間の相違はマンホイットニー検定で、または3群間以上の相違はクラスカル・ワリス検定で検討した。一元配置分散分析のポストホックテストとしてボンフェローニ事後検定(Bonferroni posttest)を用い、クラスカル・ワリス検定のポストホックテストとしてダンの検定を用いた。二元配置分散分析、それに続いてボンフェローニ事後検定を使用することにより経時的な群間差を検討した。適切な場合、データを平均±または+標準誤差(SEM)として提示した。
【0365】
全群を群A(陽性対照)と比較し、群B(陰性対照)、群E(参照物質)及び群Cを群D(群Cのビヒクル群)と比較することによって統計解析を実施した。
【0366】
結果
概説及び健康状態
細菌株の投与は動物で忍容性が高かった。MPTPで傷害を与えた日、及び必要に応じてその翌日、赤色光を使用して動物を温めた。動物が最適以下の状態にある場合(寒さを感じている、脱水状態、異常行動)、ウェットフードを与え、必要に応じて生理食塩水の皮下注入処置を行った。試験期間中、以下の6匹の動物が死亡したが、理由は不明であった。
【0367】
オープンフィールドテスト実施
試験過程の2日目(MPTPで傷害を与えた2日後)、動物をオープンフィールドテストで試験した。試験は、ビヒクル処置した偽傷害の群Aの動物と比較して、群C(43042)及び群D(ビヒクル(嫌気的PBS))の動物で多動性及び活動性が大幅に低下したことを示した(図84)。また、参照物質の群E(7−ニトロインダゾール)の動物と比較して、群Gはオープンフィールドテストにおいて多動性の大幅な低下を示した。
【0368】
考察
43042を投与したマウスにおいて、ビヒクルのみの対照群と比べて多動性が著しく低下したことは、43042が多動性、例えば、ADHDを含む行動障害、及びパーキンソン病などに関連した病態または疾患の治療または予防に有用でありうることを強調している。多動性は、パーキンソン病を有する対象の不安増大に関連している。
【0369】
実施例3−GVHDの生存上昇におけるBariatricus massiliensis株43171の有効性
目的
本発明者らは、Balb/Cマウスに誘導した移植片対宿主病(GVHD)に対するBariatricus massiliensis株43171が及ぼす効果の測定を試みた。
【0370】
材料及び方法
−動物
オスBalb/Cマウス(BALB/cAnNCrl;6〜8週齢;n=125)は開始時平均体重(±SEM)が20.67±0.11gであり、Charles River Laboratories(Wilmington,MA)から入手した。同ベンダーからさらに75匹の雄C57Bl/6(C57Bl/6NCrl;6〜8週齢)を入手した。試験開始前に動物を馴化させた。この期間中、状態不良を呈する動物を排除するため、動物を毎日観察した。
【0371】
−ハウジング
HEPAフィルターを通した空気が送られる飼育室で、温度70±5°F、相対湿度50%±20%にて試験を実施した。動物は、ケージあたり4〜6匹の群にして飼育した。具体的には、動物数が8匹/群となる群はn=4/ケージで飼育し、10匹/群となる群はn=5/ケージで飼育し、12匹/群となる群はn=6/ケージで飼育した。動物は、HEPAフィルター付き個別換気ケージで飼育された。飼育棚ではケージを地理的に離し、群間の交叉汚染を最小限に抑えた。飼育室は、最低でも1時間に12〜15回の換気が維持されるよう設定された。飼育室には、点灯12時間及び消灯12時間で薄明りなしの明/暗周期用の自動タイマーが付けられた。Alpha−dri(登録商標)床敷(照射処理)を使用した。床敷に加え、各ケージにはエンヴェロドライ(enviro−dri)及びシェファードシャック(shepherd shack)(エンリッチメント)が備えられた。床は毎日掃き掃除をし、最低でも週2回は市販洗剤で拭き掃除をした。壁及びケージラックは最低でも月1回、漂白剤を希釈した液を用いてスポンジで拭いた。試験、用量、動物番号、及び処置群の識別に必要とされる適切な情報が記載されたケージカードまたはラベルを使用して、全ケージにマークを付した。試験期間中、温度及び相対湿度を記録し、その記録を保持した。試験担当者は全員、実験室/動物舎に入る前、及び動物の作業をする前に個人用保護具(PPE:実験室用コート、手袋、安全ゴーグル)を着用した。
【0372】
−飼料
動物には、げっ歯類用滅菌(照射処理)固形飼料のLabDiet5053及び水(逆浸透法)を与え、自由摂取させた。飼料のエンリッチメントは与えなかった。
【0373】
−動物の無作為化及び割り付け
試験開始時、動物を5群に無作為化した。各群は8〜12匹のマウスで構成された。各群をさらに、コホートA及びコホートB(1コホートにつき1群あたりマウスn=4〜6匹)に細分し、コホート間で疾患タイムラインをずらした。
【0374】
−NCIMB43171の成長動態分析
NCIMB43171の投与に先立ち、増殖曲線/最大ODを決定し、洗浄後及び最大OD600での仮想コロニー数(VCC)を決定した。増殖曲線/最大OD分析は以下のとおり行われた。午前6時、各凍結細菌ストックにつき1本のチューブをCoyチャンバーに移した。チューブを解凍させ、ピペットの上下操作で慎重に混合し、予め成分調整(pre−reduced)して加温(37℃)しておいた9.5mLのYCFAブロスが入った2本のチューブ(2連)に500μLの細菌ストックを植菌した。これらを前培養物とした。前培養物をCoyチャンバー内で37℃にて24時間インキュベートした。翌日の午前6時(すなわち、インキュベーションの24時間後)、各培養物の少量のアリコートをCoyチャンバーから取り出し、OD600をナノドロップで決定した。OD600測定用のアリコートを取り出す前にチューブを逆さにして混合した。24時間培養物の残りの分(上記で決定したOD600が高かったチューブを使用)を2連で以下のとおり培養した:NCIMB43171の24時間培養物を250μL使用して、予め加温しておいた24.75mLのYCFAブロスの入った2本のチューブに植菌した。これらの培養物をCoyチャンバー内で37℃にて24時間インキュベートし、OD600測定用の少量のアリコートを16時間目までは2時間ごと(すなわち、午前8時、午前10時、午後12時、午後2時、午後4時、午後6時、午後8時、及び午後10時)、及び24時間目(翌日午前6時)にCoyチャンバーから取り出した。OD600測定用のアリコートを取り出す前にチューブを逆さにして混合した。
【0375】
最大OD分析でのVCCは以下のとおり行った:NCIMB43171のストックチューブの1本をCoyチャンバーに移した。チューブを解凍させ、ピペットの上下操作で慎重に混合し、予め成分調整(pre−reduced)して加温しておいた9.5mLのYCFAブロスが入った2本のチューブ(2連)に500μLの細菌ストックを植菌した。これらを前培養物とした。前培養物をCoyチャンバー内で37℃にて24時間インキュベートした。翌日(インキュベーションの24時間後)、前培養物の少量のアリコートをCoyチャンバーから取り出し、OD600をナノドロップで決定した。OD600測定用のアリコートを取り出す前にチューブを逆さにして混合した。24時間培養物の残りの分(高ODのチューブを使用)を2連で以下のとおり培養した:250μLを使用して、予め加温しておいた24.75mLのYCFAブロスの入った2本のチューブに植菌した。これらを主培養物とした。主培養物の少量のアリコートを指定の時間にCoyチャンバーから取り出し、OD600をナノドロップで決定した。OD600測定用のアリコートを取り出す前にチューブを逆さにして混合した。残りのストックのVCCを以下のとおり決定した:個々の希釈系列(未希釈、1:103、1:104、1:105、及び1:106)をPBSに調製した。その後、各培養物の残りの分を50mLコニカルチューブに移し、チューブをCoyチャンバーから取り出し、遠心分離にかけた(3500xg;15分)。遠心分離が完了したら、チューブをCoyチャンバーに戻し、上清を除去し(ペレットが崩れることがないよう注意する)、測定した。ペレットを、除去した上清の容量と同量のPBSに再懸濁させ、ピペットで慎重に混合した(ボルテックスは用いない)。個々の希釈系列(未希釈、1:103、1:104、1:105、及び1:106)をPBSに調製した。両希釈系列(ブロス及びPBS懸濁液)を、予め成分調整(pre−reduced)したYCFA寒天プレートの四分円の1つに3連でスポット播種した(20μL)。プレートをCoyチャンバー内で37℃にて48時間インキュベートし、希釈物のうち5〜20CFU/スポットというスポットが得られたもののVCCを計数した。3スポットのVCC/スポット値の平均を求め、ブロスの一夜培養物のVCC/mLを決定し、遠心分離/PBSへの再懸濁を行った。
【0376】
−NCIMB43171の用量調製
各投与時点の2日前、菌株あたり1本のチューブ(1mL/チューブ)のNCIMB43171凍結ストックをCoyチャンバーに入れた。チューブを解凍させ、予め成分調整(pre−reduced)して加温しておいた9.5mLのYCFAブロスが各々に入っている2本の15mLチューブに0.5mLの各細菌ストックを植菌した。これらを前培養物とした(チューブ1及びチューブ2)。前培養物をCoyチャンバー内で37℃にて24時間インキュベートした。
【0377】
24時間のインキュベーション後、各投与時点の1日前に、培養物を逆さにして混合し、培養物の少量のアリコート(20μL)をCoyチャンバーから取り出し、ナノドロップによるOD600測定に供した。菌株のいずれのチューブ(1または2)でもOD600値の高いほうを2連で主培養に以下のとおり使用した:OD600が高かったほうの前培養物を250μL使用して、50mLコニカルチューブに入れて予め加温しておいた24.75mLのYCFAブロスに植菌した(2連;チューブA及びチューブB)。これらの主培養物をCoyチャンバー(37℃)内で14時間インキュベートした。
【0378】
各投与日(上記の主培養物のインキュベーション後)、培養物を逆さにして混合し、培養物の少量のアリコート(20μL)をCoyチャンバーから取り出し、ナノドロップによるOD600測定に供した。その後、チューブをCoyチャンバーから取り出し、遠心分離にかけた(3500xg;15分)。遠心分離が完了したら、チューブをCoyチャンバーに戻し、ピペットで上清を除去した(ペレットが崩れることがないよう注意する)。ペレットを2.04mlのPBSに再懸濁させた。ペレットをピペット操作で慎重に混合した(ボルテックスは用いない)。各菌株のアリコート(0.5mL)をピペットでEppendorfチューブに採取し、Coyチャンバー内に保持した。各菌株の残りの分をCoyチャンバーから取り出し、投与(動物1匹あたり0.1mL)に使用し、その際、再懸濁後はできる限り迅速に動物に投与するよう注意した。
【0379】
Coyチャンバーに保持した各菌株のアリコート0.5mLを使用して、予め成分調整(pre−reduced)したMRDに個々の希釈系列を調製し、1:107、1:108、1:109、及び1:1010の希釈物を、予め成分調整(pre−reduced)したYCFA寒天プレートの四分円の1つに3連でスポット播種した(20μL)。プレートをCoyチャンバー内で37℃にて48時間インキュベートし、希釈物のうち5〜20CFU/スポットというスポットが得られたもののVCCを計数した。3スポットのVCC/スポット値の平均を求め、実験の投与材料のVCC/mLを決定した。
【0380】
−前処置段階
試験開始前に全動物の体重を測定し、重量基準で処置群に無作為化した。−1日目及び0日目のGVHD誘導に先立ち、全動物に、−14日目から開始し連日、PBS(群1〜4)、NCIMB43171(群5)、または酪酸塩対照(群6)で前処置(PO)を行った。GVHD患者の腸において酪酸の欠乏が確認されていることから、酪酸を陽性対照として使用した。治療剤を群に無作為に投与し、同じ群が毎日同じ時間に処置されないようにするため群の処置を日替わりで行った。一度被験物質の投与が始まってからは、群の交叉汚染を最小限に抑えるよう注意した、すなわち、試験担当者は処置群ごとに手袋を交換し、各ケージ間では手袋に70%イソプロピルアルコールをスプレーした。
【0381】
−GVHDのモデリング
−1日目に、8Gyの単回急性被ばく線量の全身照射(TBI)を使用してマウスにGVHDを誘導した。0日目、これらのレシピエントマウスに、ドナーのC57Bl/6マウスから得たT細胞除去骨髄細胞と脾細胞とをPBS中に組み合わせた静脈内注射を行った。標準のフラッシング操作を用いて骨髄細胞を単離し、細胞表面T細胞抗原CD3をCD3−ビオチンキット(Miltenyi Biotecカタログ130−094−973)と共に使用してT細胞を除去した。Miltenyi GentleMACS Dissociatorsを使用して脾細胞を単離した。群1の動物はナイーブ対照群として使用され、TBIも細胞移入も受けなかった。群2の動物は照射対照群として使用され、−1日目に8GyのTBIを受けたが、0日目の細胞移入は受けなかった。群3の動物は同系養子移入対照群として使用され、これらの動物は−1日目に8GyのTBI、及びドナーのBalb/Cマウスから得たT細胞除去骨髄細胞と脾細胞とを滅菌PBS中に組み合わせた静脈内注射を受けた。
【0382】
試験期間中(−14日目〜30日目)、被験物質連日投与を継続した。GVHDの重症度の指標として、動物の生存を毎日記録した。また、動物の体重測定、観察を行い、GVHD誘導後の試験期間中はGVHDの臨床スコアを毎日つけた。5つの基準(表21)、すなわち、体重変化率、姿勢(円背位)、活動性、毛並み、及び皮膚の健全性(最大スコア=10)に基づく標準スコアリングシステムによってGVHDスコアを評価した。
【0383】
【表1】
【0384】
体重が20%減少した動物に、皮下輸液(SID;生理食塩水)を投与し、軟飼料を与えた。軟飼料を必要とする試験動物が1匹でもいた場合は、その1匹の動物の体重減少が救済されるまで全試験動物に軟飼料を与えた。処置は、予定されている安楽死まで、または体重減少が30%を超えるまで継続された。自力で直立できない、触れた時に冷たい、または瀕死の動物は安楽死させた。
【0385】
29日目、全生存動物に内視鏡検査を行い、結腸の炎症を観察した。撮像し、表2に示すスコアリングスケールを使用して大腸炎の重症度及び便の硬さのスコアリングを行った。
【0386】
【表2】
【0387】
30日目、RO出血により血液を採取し、その際、血液(約150〜300μL)を2本のチューブに採取したが、血液の約3分の2はK2EDTAチューブに採取し、残り3分の1はリチウム−ヘパリンチューブに採取した。両試料を遠心分離にかけ、血漿について処理を行い、血漿チューブに、抗凝固剤使用を示すラベルをはっきりと付ける。K2EDTA試料の場合、血漿を以下のとおり分注した:25μL(後半のシトルリンアッセイで使用するため)、及び残部。すべての血漿を−80℃で凍結した。試験終了時、K2EDTAの全試料をシトルリンについてELISAで評価した。
【0388】
CO2吸入及び頚椎脱臼によって安楽死を実施し、試験のTBI段階期間中に安楽死させた動物の臓器回収は行わなかった。頚椎脱臼のみによって安楽死を実施し、試験のGVHD段階期間中に安楽死させた動物の臓器回収を行った。最終回収はベンチトップで行われた。始める前に70%イソプロピルアルコール及び市販の殺菌消毒薬でベンチトップを清掃した。器具は、動物ごとに70%イソプロピルアルコールで清浄し、群ごとに市販の殺菌消毒薬で清浄した。
【0389】
−統計解析
1元配置ANOVAに、すべての群を互いに比較するテューキーの多重比較検定を用いてパラメトリックデータを解析した。クラスカル−ウォリス検定に、すべての群を互いに比較するダンの多重比較検定を用いてノンパラメトリックデータを解析した。統計解析はいずれも、GraphPad Prism7(La Jolla,CA)を使用して実施した。
【0390】
結果及び考察
−体重
試験期間中は毎日動物の体重を測定し、試験期間を通した全群の平均体重を図5に示す。−14日目(図6)または0日目(図7)に対する体重変化を計算した。平均体重または−14日目もしくは0日目に対する体重変化の平均における群間有意差を統計学的に決定するため、台形変形則法(trapezoidal transformation rule)を使用して曲線下面積(AUC)を計算し、図5図6及び図7の挿入図に示す。群の脱落を考慮に入れるため、死亡して発見された動物または安楽死させた動物(群2を除く全群)では、動物死亡時の体重を用いて試験期間中そのまま進めたが、これと共に示した0日目に対する体重変化をAUCの挿入図と共に図8に示す。
【0391】
前処置期間中、どの群にも平均体重の大きな差(図5)は観察されなかった。TBIに曝露したいずれの群でも、0日目〜3日目に体重減少が示された。群3(PBS−TBI+同系移入)の動物の平均体重は、この時点から先は回復し、最終的にベースラインまで回復した。群2(PBS−TBIのみ)の動物の平均体重は、その群内の全動物が死亡する前に回復することはできなかった。他の全試験群では、平均体重は7日目まで減少を続け、14日目まで増加し、その後の試験期間中は減少した。群2、群5及び群6の平均体重は、群1(PBS−ナイーブ)と比較して試験期間を通じて大幅に減少した。対照的に、群3〜6の平均体重は、群2と比較して試験期間を通じて大幅に増加した。最後に、群5及び群6の平均体重は、群3と比較して試験期間を通じて大幅に減少した。処置群(群5及び群6)と群4(PBS−TBI+同種移入)を比較すると、試験期間を通じて平均体重における有意差は観察されなかった。この同じ傾向は、既知のGVHD治療薬である免疫抑制薬タクロリムスをマウスに投与した場合に観察された(図9)。
【0392】
−14日目に対する体重変化の平均(図6)は前処置期間中の全群で増加し、−14日目から0日目に関する体重変化動態は、平均体重で観察されたそれと同様の推移を見せた。群2及び群4〜6の動物は、群1及び群3の両群と比較すると試験期間を通じて大幅な体重減少の増加を示した。
【0393】
0日目に対する体重変化の平均(図7及び図8)は、TBIに曝露された全群で0日目〜3日目までは減少し、その時点で群3の動物は体重が増加し始めたが、他の全群では4日目まで体重減少が続いた。0日目に対する体重変化は7日目から14日目まで増加し、群4〜6では14日目から試験最終日の30日目まで平均体重減少が観察された。0日目に対する体重変化の全体的パターンは、死亡した動物で体重をそのままで進めたか否かを問わず、同様のパターンとなったが、群間の統計学的有意差は異なった。群1、群2、及び群3と比較して群4〜6では大幅な体重減少の増加が観察され、双方とも動物死亡時の体重をそのまま使用した場合及びそうでない場合が含まれたが、やはり、既知のGVHD治療薬タクロリムスを投与したマウスで観察された傾向と同様である(図9)。
【0394】
−生存
動物を生存または瀕死について毎日評価し、試験期間中を通じた生存を示すカプラン・マイヤー曲線を図10に示す。生存率は、群1及び群3では100%、群2では0%、及び群5では75%であった。群5で観察された生存は、群4及び群6の両群と比較して著しく改善された。酪酸がGVHDの治療薬として提案されている[66]ことから、これは有意なことである。生存率は、既知のGVHD治療薬タクロリムス(FK506−図11)を投与したマウス対照群に匹敵するものであった。
【0395】
−GVHDスコア
0日目から試験最終日の30日目まで全動物においてGVHDスコアを評価した(表2に示す多重パラメータスコアリングに従った)。全群の平均GVHDスコアを図12に示し、この同じデータを、動物死亡時のGVHDスコアでそのまま進めたスコアと共に提示したものを図13に示す。群間の全体的GVHDスコアにおける有意差を統計学的に決定するために、台形変形則法(trapezoidal transformation rule)を使用してAUCを計算し、これを図12及び図13の挿入図に示す。各動物に割り付けられたGVHDの臨床スコアは、姿勢(図14A)、活動性(図14B)、毛並み(図14C)、皮膚の健全性(図14D)及び体重減少(図14E)からなる複合スコアである。
【0396】
同種の脾細胞及び骨髄細胞の静脈内注射により、全群にGVHDが誘導されて19日目あたりから始まり、試験完了まで徐々に重症度が増していった。初期のGVHDスコアの上昇が0日目〜7日目にあったが、恐らくTBI及び生着によるものであり、この時点を過ぎてからの動物の生存は、移植細胞の生着の成功を実証している。GVHDスコア動態は、死亡した動物でGVHDスコアをそのままで進めたか否かを問わず同様であったが、群間の統計学的有意差は異なった。群3〜6の動物は、群1及び群2の両群と比較して平均GVHDスコアの大幅な増加を示し、双方とも動物死亡時のGVHDスコアをそのまま使用した場合及びそうでない場合が含まれたが、同様に、群4〜6の動物はいずれの場合においても群3と比較して平均GVHDスコアの大幅な増加を示した。この傾向は、GVHDの既知の治療薬である免疫抑制薬タクロリムスを投与したGVHDマウスモデルでも観察された(図15)。
【0397】
−内視鏡検査
29日目、結腸の炎症を評価するために動物に内視鏡検査を行った。大腸炎を目視により5段階尺度、すなわち、正常である0から重度の潰瘍形成がある4までの尺度で評価した(表3)。平均大腸炎重症度を図16に示す。
【0398】
平均大腸炎重症度スコアは、ナイーブマウス(群1)と比較して菌株43171で処置した動物及び酪酸で処置した動物で増大した。しかしながら、大腸炎は、酪酸で処置したマウスに比べて菌株43171で処置したマウスの方が大幅に少なかった。酪酸の欠乏を是正することが、大腸炎の治療として示唆されている[67]ことから、これは有意なことである。代表的内視鏡検査画像を図17に示す。
【0399】
−血漿シトルリン
全生存動物から安楽死前に血液を採取し、処理して血漿を得た。血漿シトルリンを、腸透過性に関するマーカーとしてELISAによって2連で評価した。血漿シトルリン濃度の低下は、上皮細胞量の消失と対応しており、腸バリアの透過性増大を示している。腸バリア機能の維持(すなわち、腸不透過性の維持)はGVHDの治療にとって重要である[68]。結果を図18に示す。菌株43171を投与されたマウスは酪酸塩投与マウス(群6)と比較して高い血漿シトルリン濃度を維持したが、これは、適正なバリア機能の維持において酪酸が果たす役割を考えると有意である。
【0400】
実施例3−安定性試験
本明細書に記載の少なくとも1つの細菌株を含有する本明細書に記載する組成物は、密封容器内で25℃または4℃にて保存され、容器は相対湿度が30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%の雰囲気に置かれる。1か月、2か月、3か月、6か月、1年、1.5年、2年、2.5年または3年の後、標準プロトコルにより求めるコロニー形成単位で測定した場合に細菌株の少なくとも50%、60%、70%、80%または90%が残存する。
【0401】
実施例4−IL−6の分泌を低下させる、接種細菌の有効性
緒言
炎症性サイトカインの活性化は炎症性疾患における損傷に関連している。リポ多糖(LPS)は、炎症性サイトカインIL−6の既知の刺激因子である。U373細胞を、本発明の菌株43042を含む組成物とLPSとを併用して処理し、それがIL−6濃度を調節する能力を観察した。
【0402】
方法
U373は、ヒト神経膠芽腫星状細胞腫の細胞株である。細胞(継代20代目と継代37代目の間で使用)を、10%熱非働化FBS、4mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンと5μg/mlのプラスモシン、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸ナトリウムが添加された25mlのMEME 4.5g/L D−グルコース(全体を通して完全増殖培地と呼ぶ)に維持した。
【0403】
細胞を24ウェルプレートに完全増殖培地1ml中に100,000細胞/ウェルの密度で播種し、37℃/5%CO2で72時間静置した。処理当日、各ウェルから培地を取り出して細胞を0.5mlの洗浄用培地(無血清MEME)ですすぎ、1μg/mlのLPSを含有する0.9mlの刺激培地(2%FBS含有MEME培地)を適切なウェルに加え、37℃、5%CO2でインキュベートした。1時間のプレインキュベーション後、細胞をCO2インキュベーターから取り出し、菌株43042に由来する100μlの細菌上清で処理した。対照として培地対照を使用した。その後、細胞を37℃/5%CO2でさらに24時間インキュベートし、その後、無細胞の上清を採取して10,000gにて4℃で3分間遠心にかけた。試料を1.5mlのマイクロチューブに分注し、hIL−6及びhIL−8のELISA用に−80℃で保存した。
【0404】
結果
これらの実験の結果を図19に示す。LPSと細菌株とを用いた細胞処理により、IL−6分泌量の減少がもたらされた。
【0405】
実施例5−MAP2の活性化
ニューロン分化に関連した遺伝子の発現に対する菌株43042の効果を検討した−微小管関連タンパク質2(MAP2)。qPCR解析から、SH−SY5Y神経芽腫細胞において、MAP2転写は43042によって培地対照試料より上方制御されることが明らかになった(図20を参照のこと)。
【0406】
SH−SY5Y細胞は神経芽腫細胞株である。2mMのL−グルタミン、10%熱非働化FBS、100U/mlのペニシリン、及び100μg/mlのストレプトマイシンが添加された、50%MEM及び50%栄養混合F−12ハム培地で細胞を増殖させた。SH−SY5Y細胞を、6ウェルプレートに0.5×106細胞の密度で播種した。24時間後、細胞を分化培地(1%FBS含有、RA不含増殖培地)中で10%細菌上清またはYCFA+または10uMのRAを用いて24時間処理した。細胞を採取し、RNeasy mini kitプロトコル(Qiagen)に従ってトータルRNAを単離した。High Capacity cDNA reverse transcription kit(Applied Biosystems)を使用してcDNAを作製した。qPCRで遺伝子発現を測定した。内部対照としてGAPDHを使用した。2^(−ΔΔCt)法に従って倍率変化を計算した。
【0407】
qPCRによるインビトロ遺伝子発現解析に使用されたプライマーの一覧である。
【0408】
【表3】
【0409】
実施例6−腸での機能的マーカー発現に対する効果
概要
本試験では、腸のタイトジャンクションタンパク質及び機能的マーカーの発現に対するBariatricus massiliensis株43042の効果を検討した。インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ−1(IDO1)は、生物活性キヌレニンから作られるいくつかの代謝産物を生成する経路に沿ってトリプトファン異化を開始する酵素である。トリプトファンヒドロキシラーゼ−1(TPH−1)は、5−HTの生合成の最初の段階であり律速段階であるL−トリプトファンからの5−ヒドロキシ−L−トリプトファン(5−HTP)の生成を触媒する。
【0410】
方法
オスBALB/cマウスに、1×10CFUの細菌株の強制経口投与(容量200μL)を6日連続で行った。7日目、動物を安楽死させた。腸組織(回腸及び結腸の1cm切片)を切除した。トータルRNAを、製造者の推奨事項に従ってmirVana(商標)miRNA Isolationキット(Ambion/Llife technologies,Paisley,UK)を使用して抽出し、DNase処理した(Turbo DNA−free、Ambion/life technologies)。NanoDrop(商標)分光光度計(Thermo Fisher Scientific Inc.,Wilmington,Delaware,USA)を製造者の指示に従って使用してRNAを定量した。AgilentBioanalyzer(Agilent、Stockport,UK)を製造者の手法に従って使用してRNAの品質を評価し、RNAインテグリティナンバー(RIN)を計算した。RIN値が7超のRNAを以降の実験に使用した。Applied Biosystems High Capacity cDNAキット(Applied Biosystems,Warrington,UK)を製造者の指示に従って使用し、RNAをcDNAに逆転写させた。簡単に言えば、Multiscribe逆転写酵素(50U/μL)をRTマスターミックスの一部として加え、25℃で10分間、37℃で2時間、85℃で5分間インキュベートし、4℃で保存した。Applied Biosystemsにより設計されたマウス特異的目的遺伝子に対するプローブ(6カルボキシフルオレセイン−FAM)を使用して定量PCRを行い、内因性の対照としてβ−アクチンを使用した。増幅反応物には、1μlのcDNA、5μlの2×PCR Masterミックス(Roche)、及び各プライマーを900nMずつ含有されたが、これにRNase不含水を加えて全体で10μlとした。反応はすべてLightCycler(登録商標)480 Systemで96ウェルプレートを使用して3連で実施した。サーマルサイクリング条件は、製造者(Roche)による推奨事項に従い、55サイクル実施した。アンプリコンの汚染を調べるため、各実行操作は、使用した各プローブの3連に鋳型対照群を含まなかった。サイクル閾値(Ct)値を記録した。データは、β−アクチンを使用して正規化し、2−ΔΔCT法を用いて変換し、倍率変化と対照群の対比として表した。
【0411】
結果
試験した遺伝子のうち、細菌株投与を受けたマウスでのIDO1発現はビヒクル投与を受けた動物と比べて異なっていた。回腸では大幅な増加があり(図21A)、結腸では大幅な減少があった(図21B)。大腸炎マウスモデルにおける結腸でのIDO1発現は、疾患改善に関連している[69]。したがって、Bariatricus属の細菌株は、炎症性腸疾患の治療または予防に有用でありうる。
【0412】
実施例7−脳での遺伝子発現に対する効果
概要
本試験では、関心対象の特定の遺伝子の脳での発現に対するBariatricus massiliensis株43042の効果を検討した。情動反応に関与する辺縁系の主要な脳領域である扁桃体、海馬及び前頭前皮質(PFC)における、オキシトシン作動系(oxytocinergic)(オキシトシン受容体及びバソプレシン受容体)、内分泌系(ミネラルコルチコイド(Nr3c1);グルココルチコイド受容体(Nr3c2);コルチコステロン放出因子(CRF)及び受容体;脳由来神経栄養因子(BDNF))、免疫系(Il−6、TNF−α、TLR−4);ならびに神経伝達物質系(NMDA受容体2A(Grin2A);NMDA受容体2B(Grin2B);GABAA受容体サブユニットA2;GABAB受容体サブユニットB1;セロトニン2C)に対する各マーカーのmRNAレベルを評価した。
【0413】
材料及び方法
方法
オスBALB/cマウスに、1×10CFUの細菌株の強制経口投与(容量200μL)を6日連続で行った。7日目、動物を安楽死させた。脳をすばやく切除して摘出し、脳の各領域をドライアイスで瞬間凍結し、さらなる分析用に−80℃で保存した。実施例6に記載のようにmRNA発現を定量した。
【0414】
結果
図22に示すように、試験した遺伝子からは、海馬でのグルココルチコイド受容体(A)、ミネラルコルチコイド受容体(B)、BDNF(C)、Grin 2B(D)、CRH(E)、CFR1(F)、CD11b(G)及びGABA A2(H)の発現の大幅な増加が観察された。図23に示すように、オキシトシン受容体(A)、グルココルチコイド受容体(B)、ミネラルコルチコイド受容体(C)、Grin 2A(D)及びGrin 2B(E)は、扁桃体において大幅に高い発現を示した。前頭前皮質では、細菌を用いた処置の結果としてBDNF(A)、CRFR1(B)及びミネラルコルチコイド受容体(C)が大幅に上方制御された(図24)。
【0415】
このことは、Bariatricusが、これらのタンパク質の脳での発現レベルの調節による利益を受けうる障害または病態、例えば、CNSの疾患及び障害などの治療または予防に有用でありうることを示している。特に、BDNF及びその受容体は、成体のシナプス可塑性及び記憶の形成にとって不可欠である[70]。BDNF mRNAの減少がアルツハイマー病の個体の海馬で観察された[71]。メタアナリシス研究でも、アルツハイマー病患者は血清BDNFのレベルが低下していることが示されている[72]。BDNFタンパク質の減少は、ハンチントン病を患う患者の尾状核脳領域及び被殻脳領域でも観察された[73]。したがって、本発明の細菌株は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病及びハンチントン病の治療に有用でありうる。
【0416】
配列
配列番号1−43042の16S rRNA遺伝子配列(Geneiousを使用したコンセンサス2リードのアセンブリ)
AGCTCCCTCCTTTCGGTTGGGTCACTGACTTCGGGCGTTACTGACTCCCATGGTGTGACGGGCGGTGTGTACAAGACCCGGGAACGTATTCACCGCGACATTCTGATTCGCGATTACTAGCGATTCCAGCTTCATGTAGTCGAGTTGCAGACTACAATCCGAACTGAGACGTTATTTTTGGGATTTGCTCCGCCTCGCGGCCTCGCTTCCCTTTGTTTACGCCATTGTAGCACGTGTGTAGCCCTGATCATAAGGGGCATGATGATTTGACGTCATCCCCACCTTCCTCCAGGTTATCCCTGGCAGTCTCTCTAGAGTGCCCACCTTAAATGCTGGCTACTAAAGATAAGGGTTGCGCTCGTTGCGGGACTTAACCCAACATCTCACGACACGAGCTGACGACAACCATGCACCACCTGTCTCCAGTGCCCCGAAGGGAAAGTACATTACATACTCTGTCACCGGGATGTCAAGACCAGGTAAGGTTCTTCGCGTTGCTTCGAATTAAACCACATGCTCCACCGCTTGTGCGGGTCCCCGTCAATTCCTTTGAGTTTCATTCTTGCGAACGTACTCCCCAGGTGGAATACTTACTGCGTTTGCTGCGGCACCGAATGGCTTTGCCACCCGACACCTAGTATTCATCGTTTACGGCGTGGACTACCAGGGTATCTAATCCTGTTTGCTCCCCACGCTTTCGAGCATCAACGTCAGTCATCGTCCAGTAAGCCGCCTTCGCCACTGGTGTTCCTCCCAATATCTACGCATTTCACCGCTACACTGGGAATTCCACTTACCTCTCCGACACTCTAGCTGCATAGTTTCCAAAGCAGTCCCGGGGTTGAGCCCCGGGCTTTCACTCCAGACTTACACAGCCGTCTACGCTCCCTTTACACCCAGTAAATCCGGATAACGCTTGCACCATACGTATTACCGCGGCTGCTGGCACGTATTTAGCCGGTGCTTCTTAGTCAGGTACCGTCATTTTCTTCCCTGCTGATAGAGCTTTACATACCGAAATACTTCTTCGCTCACGCGGCGTCGCTGCATCAGGGTTTCCCCCATTGTGCAATATTCCCCACTGCTGCCTCCCGTAGGAGTTTGGGCCGTGTCTCAGTCCCAATGTGGCCGGTCACCCTCTCAGGTCGGCTACTGATCGTCGCCTTGGTGGGCCGTTACCCCGCCAACCAGCTAATCAGACGCGGGTCCATCTCATACCACCGGAGTTTTTACCACCGCACCATGCGGTGCTGTGGTCTTATACGGTATTAGCAGCCATTTCTAACTGTTATCCCCTTGTATGAGGCAGGTTACCCACGCGTTACTCACCCGTCCGCCACTCAGTCACGAAAACCTTCCTTCCGAAGAAATCGAGTTCTAAGTGCTTCGTCGACTGCA
【0417】
配列番号2−43171株の16S rRNA遺伝子配列(Geneiousを使用したコンセンサス2リードのアセンブリ)
ACCCGGGAACGTATTCACCGCGACATTCTGATTCGCGATTACTAGCGATTCCAGCTTCATGTAGTCGAGTTGCAGACTACAATCCGAACTGAGACGTTATTTTTGGGATTTGCTCCGCCTCGCGGCCTCGCTTCCCTTTGTTTACGCCATTGTAGCACGTGTGTAGCCCTGATCATAAGGGGCATGATGATTTGACGTCATCCCCACCTTCCTCCAGGTTATCCCTGGCAGTCTCTCTAGAGTGCCCACCTTAAATGCTGGCTACTAAAGATAAGGGTTGCGCTCGTTGCGGGACTTAACCCAACATCTCACGACACGAGCTGACGACAACCATGCACCACCTGTCTCCAGTGCCCCGAAGGGAAAGTACATTACATACTCTGTCACCGGGATGTCAAGACCAGGTAAGGTTCTTCGCGTTGCTTCGAATTAAACCACATGCTCCACCGCTTGTGCGGGTCCCCGTCAATTCCTTTGAGTTTCATTCTTGCGAACGTACTCCCCAGGTGGAATACTTACTGCGTTTGCTGCGGCACCGAATGGCTTTGCCACCCGACACCTAGTATTCATCGTTTACGGCGTGGACTACCAGGGTATCTAATCCTGTTTGCTCCCCACGCTTTCGAGCATCAACGTCAGTCATCGTCCAGTAAGCCGCCTTCGCCACTGGTGTTCCTCCCAATATCTACGCATTTCACCGCTACACTGGGAATTCCACTTACCTCTCCGACACTCTAGCTGCATAGTTTCCAAAGCAGTCCCGGGGTTGAGCCCCGGGCTTTCACTCCAGACTTACACAGCCGTCTACGCTCCCTTTACACCCAGTAAATCCGGATAACGCTTGCACCATACGTATTACCGCGGCTGCTGGCACGTATTTAGCCGGTGCTTCTTAGTCAGGTACCGTCATTTTCTTCCCTGCTGATAGAGCTTTACATACCGAAATACTTCTTCGCTCACGCGGCGTCGCTGCATCAGGGTTTCCCCCATTGTGCAATATTCCCCACTGCTGCCTCCCGTAGGAGTTTGGGCCGTGTCTCAGTCCCAATGTGGCCGGTCACCCTCTCAGGTCGGCTACTGATCGTCGCCTTGGTGGGCCGTTACCCCGCCAACCAGCTAATCAGACGCGGGTCCATCTCATACCACCGGAGTTTTTACCACCGCACCATGCGGTGCTGTGGTCTTATACGGTATTAGCAGCCATTTCTAACTGTTATCCCCTTGTATGAGGCA
【0418】
参考文献

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]