(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987262
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】内部ダイバータを有する飛行体エンジンの吸気口、及びその構成方法
(51)【国際特許分類】
B64D 33/02 20060101AFI20211213BHJP
B64C 30/00 20060101ALI20211213BHJP
F02K 1/38 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
B64D33/02
B64C30/00
F02K1/38
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-541999(P2020-541999)
(86)(22)【出願日】2019年5月6日
(65)【公表番号】特表2021-512814(P2021-512814A)
(43)【公表日】2021年5月20日
(86)【国際出願番号】US2019030852
(87)【国際公開番号】WO2020005387
(87)【国際公開日】20200102
【審査請求日】2020年7月31日
(31)【優先権主張番号】16/019,720
(32)【優先日】2018年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】オブライアン,ティモシー,エフ.
【審査官】
立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2016/0376018(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 33/02
B64C 30/00
F02K 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体エンジン用の吸気口を構成する方法であって、当該方法は、
前記吸気口のストリームライン・トレース式吸気口壁を構成するステップと、
前記ストリームライン・トレース式吸気口壁のうちの1つの吸気口壁に沿った境界層流を除去するために、前記ストリームライン・トレース式吸気口壁のうちの前記1つの吸気口壁の内部にあるストリームライン・トレース式内部ダイバータを構成するステップと、を含み、
前記ストリームライン・トレース式吸気口壁は、前記吸気口を通過する流れ場のストリームラインに沿った吸気口を形成する形状を使用して構成され、
前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータは、前記吸気口を形成する形状に使用される前記流れ場のストリームラインに沿ったダイバータを形成する形状を使用して構成される、
方法。
【請求項2】
前記ストリームライン・トレース式吸気口壁を構成するステップ、及び前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータを構成するステップの前に、
前記流れ場から前記吸気口を形成する形状を生成するステップと、
前記流れ場から前記ダイバータを形成する形状を生成するステップと、をさらに含み、
前記流れ場は、流れ生成形状、収縮比、及びマッハ数の関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータを構成するステップは、所望のレーダ検出特性を達成するために前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータの前縁を構成するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータを構成するステップは、複数の線形セグメントを有する前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータの前縁を構成するステップを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ストリームライン・トレース式吸気口壁のうちの前記1つの吸気口壁を、前記吸気口の上壁として形成するステップをさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記上壁に隣接する側壁を含むように前記ストリームライン・トレース式吸気口壁を形成するステップと、
前記ストリームライン・トレース式内部ダイバーダを前記側壁に取り付けるステップと、をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記吸気口を形成する形状と前記ダイバータを形成する形状との間に交差部を含めるように、前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータの下流端部を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータによって捕捉される流れが前記吸気口から外に向けられるスロットを少なくとも含むように前記吸気口を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ダイバータを形成する形状とは異なるアスペクト比を有するように、前記吸気口を形成する形状を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記吸気口を形成する形状より幅広となるように、前記ダイバータを形成する形状を形成するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータの前縁を、前記吸気口を通って流れる自由流に対して非ゼロの角度で角度を付けるステップをさらに含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータの前記前縁を、前記ストリームライン・トレース式吸気口壁のうちの前記1つの吸気口壁の前縁とは異なる角度で角度を付けるステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
互いに対して角度が付けられた複数の線形セグメントを含むように、前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータの前記前縁を形成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ストリームライン・トレース式吸気口壁のうちの前記1つの吸気口壁と融合するように、前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータの下流端を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ストリームライン・トレース式内部ダイバータによって捕捉された流れが前記吸気口から外に向けられる1つ又は複数のスロットを含むように、前記吸気口壁を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記吸気口を長方形の吸気口として形成するステップをさらに含む、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記吸気口を、丸みを帯びた吸気口として形成するステップをさらに含む、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
吸気口を円形の吸気口として形成するステップをさらに含む、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体エンジンのためのエンジン吸気口の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
空気吸入エンジン吸気口は、エンジン性能に悪影響を及ぼす可能性がある境界層を除去又は他に改善するために内部ダイバータを使用することがある。しかしながら、内部フロー・ダイバータ自体は、例えば衝撃又は膨張ファン等の流れの乱れ(disruption)等、有害な流れの影響と関連付けられている。
【発明の概要】
【0003】
エンジン吸気口の内部ダイバータ(diverter)が、吸気口の壁を構成する際にも使用される流れ場(flow field)のストリームラインに従うように構成される。
【0004】
エンジン吸気口の内部ダイバータが、吸気口を通る内部ダイバータの外側の流れを妨げるのを回避するように構成される。
【0005】
エンジン吸気口の内部ダイバータが、内部ダイバータを構成するために使用される仮想的なダイバータを形成する形状内に、任意の形状の前縁を有することができる。
【0006】
エンジン吸気口を通る流れの境界層をそらすための内部ダイバータを構成する方法は、吸気口の壁を構成する際に使用される流れ場のストリームラインに沿ってダイバータを形成する形状(diverter-creating shape)を構成する(configure:形成する)ステップと、仮想的なダイバータを形成する形状内に内部ダイバータを構成するステップとを含む。
【0007】
本発明の一態様によると、飛行体エンジン用の吸気口が提供され、吸気口には、ストリームライン・トレース式(streamline-traced)吸気口壁と、吸気口壁のうちの1つに沿った境界層流を除去するために、吸気口壁のうちの1つ内にあるストリームライン・トレース式ダイバータとが含まれる。ストリームライン・トレース式吸気口壁とストリームライン・トレース式ダイバータとの両方を構成するために、同様の流れ場が使用される。
【0008】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、吸気口壁は、吸気口を形成する形状(inlet-creating shape)を使用して形成される。
【0009】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、内部ダイバータは、ダイバータを形成する形状(diverter-creating shape)を使用して形成される。
【0010】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、吸気口を形成する形状及びダイバータを形成する形状を作製するために使用される流れ場は、流れ生成形状(flow-generating shape)、収縮比、及びマッハ数の関数である。
【0011】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、吸気口を形成する形状は、ダイバータを形成する形状とは異なるアスペクト比を有する。
【0012】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、ダイバータを形成する形状は、吸気口を形成する形状よりも幅広である。
【0013】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、吸気口壁のうちの1つは、吸気口の上壁である。
【0014】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、内部ダイバータの前縁は、吸気口の上流端から下流にある。
【0015】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、内部ダイバータの前縁は、吸気口を通る自由流に対して非ゼロの角度で角度が付けられる。
【0016】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、内部ダイバータの前縁は、吸気口壁のうちの1つの吸気口壁の前縁とは異なる角度である。
【0017】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、内部ダイバータの前縁は、互いに対して角度が付けられた複数の線形セグメントを含む。
【0018】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、内部ダイバータの下流端が、吸気口壁のうちの1つと融合する。
【0019】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、吸気口壁は、1つ又は複数のスロットを有しており、このスロットを通って、内部ダイバータによって捕捉された流れが吸気口から外に向けられる。
【0020】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、吸気口は長方形の吸気口である。
【0021】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、吸気口は丸みを帯びた吸気口である。
【0022】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、吸気口は円形の吸気口である。
【0023】
本発明の別の態様によれば、飛行体エンジン用の吸気口を構成する方法は、吸気口のストリームライン・トレース式壁を構成するステップと、吸気口壁のうちの1つに沿った境界層流を除去するために、吸気口壁のうちの1つ内にあるストリームライン・トレース式ダイバータを形成するステップとを含む。吸気口壁は、流れ場のストリームラインに沿った吸気口を形成する形状を使用して構成される。内部ダイバータは、流れ場のストリームラインに沿ったダイバータを形成する形状を使用して構成される。
【0024】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、方法は、ストリームライン・トレース式壁を構成し、且つストリームライン・トレース式ダイバータを構成する前に、流れ場から吸気口を形成する形状を生成するステップと、流れ場からダイバータを形成する形状を生成するステップとをさらに含む。
【0025】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、内部ダイバータを構成するステップは、所望のレーダ検出特性を達成するために内部ダイバータの前縁を構成するステップを含む。
【0026】
この概要の任意の段落の実施形態によれば、内部ダイバータを構成するステップは、複数の線形セグメントを有する内部ダイバータの前縁を構成するステップを含む。
【0027】
前述の目的及び関連する目的を達成するために、本発明は、以下で十分に説明され、特に特許請求の範囲で指摘される特徴を含む。以下の説明及び添付の図面は、本発明の特定の例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、本発明の原理が使用され得る様々な方法のうちのいくつかを示すに過ぎない。本発明の他の目的、利点、及び新規な特徴は、図面と併せて検討すると、本発明の以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
添付の図面は、本発明の様々な態様を示すが、必ずしも縮尺通りではない。
【
図1】本発明の実施形態による、吸気口を有するエンジンを含む飛行体の概略図である。
【
図2】
図1の吸気口を含む推進システムの概略図である。
【
図4】吸気口の内部ダイバータを示す、
図1の吸気口の一部の別の斜視図である。
【
図6】吸気口を構成する際のステップを示す高レベルのフローチャートである。
【
図7】吸気口壁及び内部ダイバータを構成する際に生成される表面の図である。
【
図8】本発明の第1の代替実施形態による吸気口の図である。
【
図9】ダイバータ表面が後方に移動した、本発明の第2の代替実施形態による吸気口の図である。
【
図10】本発明の第3の代替実施形態による吸気口の図である。
【
図11】本発明の第4の代替実施形態による吸気口の図である。
【
図12】本発明の第5の代替実施形態による吸気口の下側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
超音速又は極超音速エンジン等の飛行体エンジンの吸気口は、境界層流をそらすために内部フロー・ダイバータを含む。フロー・ダイバータは、吸気口の壁を構成するためにも使用される流れ場を使用して構成することにより、分流境界の外側の流れの乱れを最小限に抑えるように構成される。吸気口を形成する形状及びダイバータを形成する形状を構成するために使用される流れ場は、例えば、同じフロージェネレータ、収縮率、圧縮率、質量捕捉率、入口と出口との間の圧力比、マッハ数等を有する。内部ダイバータは、例えば、レーダ検出を回避するのに役立つ形状を使用するために、内部ダイバータの前縁形状の選択を可能にするように構成され得る。
【0030】
図1は、機体(胴体)14に機械的に結合された推進システム12によって動力を供給される航空機10を概略的に示す。航空機10は、ミサイル、発射体、無人航空機(UAV:unmanned aerial vehicle)、有人航空機、又は宇宙へのアクセス可能輸送手段であり得る。航空機は、様々なサイズのいずれか、及び様々な動作条件のいずれかを有することができる。以下の殆どの説明では、航空機10は、マッハ数が4〜6の範囲、又はより広くはマッハ数が2〜25の高超音速から極超音速の航空機の観点から説明される。しかしながら、航空機10は、超音速(マッハ数1以上)、又は亜音速より下で動作し得る。
【0031】
推進システム12は、推進システム12の部分が機体14の部分と一体的に形成されることを含む、様々な方法のいずれかで機体14に結合され得る。機体14は、様々な適切な形状のいずれかを有してもよく、且つ航空機10の1つ又は複数の動作を行うための追加の構成要素を含んでもよい。そのような追加の構成要素は、いくつかの非限定的な例を示すために、(操縦用等の)制御システム、揚力発生及び/又は制御面(位置が固定されているか、全体又は一部が移動可能な翼、フィン、カナード等)、通信システム、冷却システム、センサ又は他のデータ収集システム、及び/又は様々なペイロードを含み得る。
【0032】
図2をさらに参照すると、推進システム12は、吸気口20、アイソレータ又はディフューザ22、及び燃焼器又はエンジン燃焼器24を含む。様々な衝撃25が推進システム12の様々な部分の上流及び内部で発生する。吸気口20は自由流から空気を取り込み、空気を圧縮し、流れが圧縮される際に恐らく1つ又は複数の衝撃が発生する。吸気口20によって捕捉された流れは、吸気口20内でも減速される。次に、圧縮空気は、吸気口20を出て、アイソレータ22に入る。吸気口20とアイソレータ22との間の境界にスロート(throat)26の最小領域位置があり得る。
【0033】
アイソレータ22は、衝撃を安定に保つように機能し、吸気口とエンジンとの間の動的流れ変動を切り離し、要求される圧力上昇を与え、及び/又は空気がアイソレータ22から燃焼器24に通過する下流端で所望の流れパターンを提供する。低速の飛行速度では衝撃波列が存在し得、これは、スロート26での超音速から燃焼器24の入口で亜音速へと流れをさらに減速させる可能性がある。
【0034】
燃焼器24では、燃料が空気流に加えられ、混合され、燃焼が起こり、燃焼した流れはノズル27を通過し、航空機10を推進するために使用される推進システム12から推力を生成する。燃焼生成物は、ノズル27を通って燃焼器24の下流端から排出される。こうして、推進システム12は、吸気口20、アイソレータ22、エンジン燃焼器24、及びノズル27を通る流路又は推進流路を規定する。
【0035】
燃焼器24は、燃料−空気又は燃料−酸化剤混合物を燃焼させ、推力を生成するための様々な適切な装置のいずれであってもよい。例えば、燃焼器24(及び/又はエンジン12)は、ラムジェット、スクラムジェット、デュアルモードラムジェット/スクラムジェット、定容量燃焼装置、又は恐らくターボジェットであり得る。
図2では、燃焼器24はタービン28を有するものとして示されているが、多くの実施形態では、燃焼器24はタービン(又は他の可動部品)を有さない。
【0036】
一般に、吸気口20は、例えば、円形、楕円形、又は長方形等、様々な適切な形状のいずれかを有することができる。アイソレータ22は、(いくつかの例を挙げると)吸気口20の正方形、長方形、台形又は楕円形から円形又は他の形状の燃焼器24に移行する一般的な形状を有し得る。吸気口20及び燃焼器24は互いに一致してもよく、又は互いにオフセットされ、異なる角度向きでもよい。アイソレータ22の構成には多くの変形が可能であり、ここに与えられた例は、本発明を限定するものと見なすべきではない。
【0037】
図3は、吸気口20の一実施形態の更なる詳細を示す。吸気口20は、壁30を含み、壁30内に内部空間32を規定する。空気は、内部空間32に入り、圧縮されて下流のアイソレータ22に向けられる(
図2)。
【0038】
ここで、
図4及び
図5をさらに参照すると、吸気口20は、吸気口20の上壁44から流れの境界層をすくい取るために使用されるフロー・ダイバータ42を含む。内部フロー・ダイバータ42は、内部ダイバータ42の前端46で上壁44から離間している。内部ダイバータ42は、(後ろが)上壁44に向けて角度が付けられており、図示の実施形態では、内部ダイバータ42は、内部ダイバータ42の下流端48に向けて上壁44と接触する。
【0039】
フロー・ダイバータ42は、側壁52及び54の上部近くの側壁52及び54に取り付けられる。内部ダイバータ42によって捕捉された境界層流は、吸気口20の側面でスロット56及び58を通って導かれ、吸気口20の外側に出る。
【0040】
内部ダイバータ42を使用して境界層流を除去することによって、例えば、燃焼器24に供給される吸気内により均一な運動量を与えることにより、エンジン燃焼器24(
図2)の性能を改善することができる。
【0041】
内部ダイバータ42が吸気口20を通る空気の流れに不必要に影響を与えないことが有利である。その目的に向けて、内部ダイバータ42は、吸気口20内の流れの質が、吸気口壁30を構成する際に使用される同じ種類の流れを維持するように構成され得る。例えば、吸気口壁30は、規定された流れ場のストリームライン・トレース(streamline trace: ストリームライン軌跡)を使用して構成され、内部ダイバータ42は同じ流れ場を使用して構成され得る。これは、元の吸気口形状の流れ質を維持するのに役立つ。内部ダイバータ42は、以下でさらに論じられるように、様々な可能な前縁形状の1つである後方に掃引された前縁62を有する。
【0042】
図示の吸気口20は、長方形の断面形状を有する。あるいはまた、吸気口20は、台形、丸みを帯びた形状、又は円形等の他の適切な形状を有することができる。より広義には、吸気口は、輸送手段の本体形状に適合するように使用される任意の形状等、様々な更なる形状のいずれかを有することができる。
【0043】
図6は、吸気口を構成する方法又はプロセス100の高レベルのフローチャートを示す。ステップ102において、吸気口壁30(
図3)は、流れ場を使用してストリームライン・トレースされる(streamlined traced)。流れ場は、ブセマン(Busemann)吸気口等の表面又は形状を通過する理論的な(理想的な)流れ場である。流れ場は、エンジンの動作条件に対応する、マッハ数、収縮比(吸気口の上流域と下流域の比)、圧縮比、入口と出口との間の圧力比、質量捕捉率、入口と出口との間の圧力比、及び空気圧等の特徴を含む超音速流れ場をモデル化することができる。流れ場内の衝撃位置は、流れ特性に基づいて決定することができる。これらの要因は、吸気口20の壁30を構成する際に考慮に入れられ得る。
【0044】
ステップ104において、内部ダイバータ42(
図4)を構成するためにある形状が使用される。ダイバータを構成する形状は、ステップ102において吸気口壁30を構成するために使用されたのと同じ流れ場を使用して形成された形状である。類似性には、(例えば)ストリームライン・トレースに同じ元の生成ボディを使用すること、幾何学的に類似した前縁形状(アスペクト比が高い)、同じマッハ数及び収縮比、及び同じスロート形状を使用することが含まれる。スロート形状の同一性は、内部ダイバータ42が吸気口壁30の形状に溶け込むのを可能にするために使用され得る。
図7に示されるように、ダイバータを形成する形状142は、吸気口壁30(
図3)を構成するために使用される吸気口を形成する形状130と同様の形状を有する。図示されるように、ダイバータを形成する形状142は、吸気口を形成する形状130よりも短くて幅広であり、ダイバータを形成する形状142に、吸気口を形成する形状130よりも大きなアスペクト比を与える。そのダイバータを形成する形状142は、吸気口を形成する形状130よりも短く、形状130及び142の前方部分で垂直方向の分離がある。この分離の量(図の実施形態では垂直方向の分離)は、関心対象の軸線方向位置で除去すべき境界層の所望の高さに対応する。形状130及び142は、それらの前縁の下流で互いに収束するように構成される。なぜなら、形状130及び142は、同じスロート形状に融合するからである。
【0045】
フロー・ダイバータ42、又はフロー・ダイバータ42の大部分(フロー・ダイバータ42の上流の大部分等)は、ダイバータを形成する形状142内の様々な位置のいずれかで選択することができる。一例は、
図7の参照符号144として示される。こうして、ダイバータを形成する形状142は、内部ダイバータ42を構成するためのテンプレートとして機能する。
【0046】
吸気口壁30と内部ダイバータ42との交差部は、表面142の横方向範囲を形成する。元の吸気口上壁44とダイバータ壁42との交差部は、内部ダイバータ表面42の後方範囲を形成する。
【0047】
フロー・ダイバータ42を形状142上にあるように構成することの1つの利点は、この構成が吸気口20を通る流れの乱れを最小限に抑えることである。これは、形状142が吸気口壁30を形成するために使用される同じ流れと同様にストリームライン上にあるので、少なくとも部分的にそうである。ダイバータの形状は元の吸気口のストリームラインに沿っているため、ダイバータ表面の前縁は、ダイバータ上の任意の位置に存在し得、且つ任意の(又は少なくともある程度任意の)形状であり得る。別の利点は、このプロセスにより、流れに著しい影響又は乱れを引き起こすことなく、内部ダイバータ42の前縁の形状を変化させることができることである。内部ダイバータ42の後縁は、内部ダイバータ42が壁30と合流する場所であり、吸気口130の下流スロートに又はその近く等、形状130及び142が収束する場所に対応することができる。
【0048】
方法100は、内部ダイバータ42が、その前縁が吸気口20の上流端から離れ方向に構成されるのを可能にし、これは、ダイバータが通常どのように構成されるか(の方法)とは対照的である。吸気口20の上流端の下流にダイバータエッジを配置することにより、ダイバータの構成をより柔軟にでき、例えば、レーダの視認性において所望の特性を達成できる。
【0049】
ストリームライン・トレース式吸気口は、長くなる傾向があり、吸気口の本体の中心に沿って集中した境界層を有する傾向がある。内部ダイバータ42等の吸気口ダイバータは、吸気口中心線に沿った境界層分離の機会を減らすのに役立つ。内部ダイバータ42は、吸気口開始プロセスを支援するのに有用でもあり得る。
【0050】
形状130及び142を構成する際に、例えばくさび、円錐、接触円錐上の、又はブセマン流入口内の流れをモデル化する多くの異なるタイプの流れ場を使用することができる。例えば、鋭いエッジのくさび上の超音速の流れでは、前縁に固定された衝撃の下流のストリームラインは、衝撃の位置に関係なく同一である。ストリームラインは、曲がりのない生成ウェッジ(wedge)にも接しており、前方ショックの下流の流れ場特性は均一である。
【0051】
形状130及び142は、例えば、任意の前縁及びスロートと混合されたストリームライン・トレース式ブセマン吸気口を生成するためのコンピュータツールを使用することによって、様々なブセマンベースの吸気口形状のいずれかに従うように成形され得る。前縁は、直線状の前縁、又は線分で構成される前縁等、製造を容易にするために選択された形状で構成できる。ブセマン吸気口の流れの代替として、任意の三次元流れ場をジェネレータ(発生器)として使用することができる。
【0052】
図8〜
図11は、内部ダイバータの様々な可能な構成を示しており、様々な前縁形状及び/又は吸気口30内の位置を示す。図示の実施形態は単なる例であり、様々な他の前縁形状が可能であることが理解されよう。一例として、前縁は曲線であってもよい。
【0053】
図8は、単一ノッチの前縁204を有する内部ダイバータ42bを示す。内部ダイバータ42bは、吸気口30の前縁(上流端)206に比較的近くにあるが、依然として吸気口上流端206から下流にある。
図9は、内部ダイバータ42bと同じ形状を有し、吸気口30内でさらに下流にある内部ダイバータ42cを示す。
図10は、W形状の前縁208を有する内部ダイバータ42dを示しており、複数の線分が互いに対して角度を付けられている。
図11は、別の例、W形状の前縁210を有する内部ダイバータ42eを示す。
【0054】
図12及び
図13は、円形の断面形状を有する吸気口320内に内部ダイバータ342を有する別の例を示す。ダイバータ342は、流れの中に延びる一対の湾曲部分364及び366を有する前縁362を有する。
【0055】
本発明を特定の好ましい1つ又は複数の実施形態に関して図示し説明したが、本明細書及び添付の図面を読んで理解すると、当業者が、同等の変更及び修正を想起することは明らかである。特に、上記の要素(構成要素、アセンブリ、装置、構成等)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を説明するために使用される(「手段」への言及を含む)用語は、特に明記しない限り、本明細書に示される本発明の例示的な1つ又は複数の実施形態において機能を実行する開示された構造と構造的に同等ではないが、説明した(すなわち、機能的に同等の)要素の特定の機能を実行する任意の要素に対応することを意図している。さらに、本発明の特定の特徴は、いくつかの例示された実施形態のうちの1つ又は複数のみに関して上で説明したが、そのような特徴は、所与の又は特定の用途に所望され有利であるように、他の実施形態の1つ又は複数の他の特徴と組み合わせることができる。