特許第6987266号(P6987266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987266
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電力変換装置および空気調和機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20211213BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20211213BHJP
   H02J 3/01 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H02M7/48 L
   H02M7/06 N
   H02J3/01
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-546604(P2020-546604)
(86)(22)【出願日】2018年9月12日
(86)【国際出願番号】JP2018033857
(87)【国際公開番号】WO2020053995
(87)【国際公開日】20200319
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山川 秀敏
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−136316(JP,A)
【文献】 特開2000−060147(JP,A)
【文献】 特開2017−135763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/06
H02J 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される第1の交流電力を直流電力に変換するダイオードブリッジと、
前記直流電力を平滑化する主回路コンデンサと、
前記第1の交流電力に含まれるノイズ成分を抑制するコンデンサと、
前記第1の交流電力の供給が開始されてから前記主回路コンデンサの電圧が予め定められた電圧となるまでの間は、前記交流電源から出力される電流が前記コンデンサを経由して前記主回路コンデンサに流れ込み、前記主回路コンデンサの電圧が前記予め定められた電圧となった後は、前記交流電源から出力される電流が前記コンデンサを経由せずに前記主回路コンデンサに流れ込むよう、前記主回路コンデンサの充電経路を切り替える経路切替部と、
を備え
前記コンデンサの静電容量を前記主回路コンデンサの静電容量よりも小さい値として前記主回路コンデンサへの突入電流を抑制する電力変換装置。
【請求項2】
前記主回路コンデンサの電圧が前記予め定められた電圧となった後に、前記コンデンサを使用して前記ノイズ成分の抑制を行う、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の交流電力の供給が開始されてから前記主回路コンデンサの電圧が予め定められた電圧となるまでの間に前記交流電源から出力される電流が複数の前記コンデンサを経由して前記主回路コンデンサに流れ込み、
複数の前記コンデンサの各々には、他の前記コンデンサとの間で電圧のバランスをとるための抵抗が並列に接続されている、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1の交流電力を3相交流電力とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1の交流電力を単相交流電力とする、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電力変換装置と、
前記主回路コンデンサで平滑化された後の前記直流電力を変換して生成される第2の交流電力の供給を前記電力変換装置から受けて圧縮機または送風ファンを駆動させるモータと、
を備える空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源投入時に発生する突入電流を抑制可能な電力変換装置および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室外機など、電力変換を行う回路を有する装置は、電源投入時に発生する突入電流により部品が破壊されるのを防止するため、突入電流を抑制する突入電流防止回路を備えている。突入電流防止回路は、抵抗、または、温度により抵抗値が変化するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタを交流電源と整流器との間に配置することで実現可能である。しかし、抵抗またはPTCサーミスタで突入電流を抑制する場合、抵抗で電力が消費されるために電力損失が発生する。この問題を解決するため、特許文献1に記載の発明は、交流電源と整流器との間に限流用コンデンサを設け、電源を投入してからしばらくの間は限流用コンデンサを介して整流器に電流を流して整流器の出力側に設けられた平滑コンデンサを充電することで突入電流を抑制する。また、平滑コンデンサの充電が終了した後は、限流用コンデンサを迂回して整流器に電流が流れるよう、電流供給経路を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−136316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、突入電流を抑制するためのコンデンサを別途設ける必要があり、回路規模が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回路規模の大型化を回避しつつ突入電流を抑制することが可能な電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電力変換装置は、交流電源から供給される第1の交流電力を直流電力に変換するダイオードブリッジと、直流電力を平滑化する主回路コンデンサと、第1の交流電力に含まれるノイズ成分を抑制するコンデンサと、を備える。また、電力変換装置は、第1の交流電力の供給が開始されてから主回路コンデンサの電圧が予め定められた電圧となるまでの間は、交流電源から出力される電流がコンデンサを経由して主回路コンデンサに流れ込み、主回路コンデンサの電圧が予め定められた電圧となった後は、交流電源から出力される電流がコンデンサを経由せずに主回路コンデンサに流れ込むよう、主回路コンデンサの充電経路を切り替える経路切替部を備える。電力変換装置は、コンデンサの静電容量を主回路コンデンサの静電容量よりも小さい値とし、主回路コンデンサへの突入電流を抑制する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回路規模の大型化を回避しつつ突入電流を抑制することが可能な電力変換装置を実現できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかる電力変換装置の構成例を示す図
図2】実施の形態1にかかる電力変換装置が備える主回路コンデンサの第1の充電経路を示す図
図3】実施の形態1にかかる電力変換装置が備える主回路コンデンサの第2の充電経路を示す図
図4】実施の形態1にかかる電力変換装置が備える主回路コンデンサの電源投入後の電圧変化の一例を示す図
図5】実施の形態1にかかる電力変換装置が備える各コンデンサの電圧の関係を示す図
図6】実施の形態3にかかる電力変換装置の構成例を示す図
図7】各実施の形態にかかる電力変換装置が備える制御部を実現するハードウェアの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態にかかる電力変換装置および空気調和機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる電力変換装置の構成例を示す図である。
【0011】
本実施の形態にかかる電力変換装置100は、3相4線式の交流電源である電源1に接続され、電源1から供給される第1の交流電力を、図示を省略した負荷に供給する第2の交流電力に変換する。以下の説明では、電源1が出力する3相交流電力のそれぞれの相を第1相、第2相および第3相と呼ぶ場合がある。図1では記載を省略している負荷としては、空気調和機が備える圧縮機を駆動させるモータ、空気調和機が備える送風ファンを駆動させるモータなどが該当する。
【0012】
電力変換装置100は、コンデンサ2〜4,9〜11,17A,17Bと、抵抗5〜7,18A,18Bと、コモンコイル8と、リレー13,14,20と、ダイオードブリッジ15と、直流リアクトル16と、インバータ19と、制御部21とを備える。
【0013】
コンデンサ2および抵抗5は、一端が電源1の第1相の出力点に接続され、他端が電源1の中性点に接続される。コンデンサ3および抵抗6は、一端が電源1の第2相の出力点に接続され、他端が電源1の中性点に接続される。コンデンサ4および抵抗7は、一端が電源1の第3相の出力点に接続され、他端が電源1の中性点に接続される。なお、コンデンサ2および抵抗5が接続される相を第1相と呼ぶことにしたが、説明の便宜上このようにしているだけである。
【0014】
電源1が出力する第1相〜第3相の交流電力は、各相の出力点に接続された線路を介してダイオードブリッジ15に入力される。また、電源1の第1相〜第3相の出力点のそれぞれと中性点の間には、ノイズ成分抑制用のコンデンサ9〜11が接続される。コンデンサ9の一端は、電源1の第1相の出力点とダイオードブリッジ15の第1相の入力点とを接続する線路である第1の線路に接続される。コンデンサ9の他端は、中性線に接続される。コンデンサ9は、第1の線路上のノイズ成分を抑制するためのコンデンサである。コンデンサ10の一端は、電源1の第2相の出力点とダイオードブリッジ15の第2相の入力点とを接続する線路である第2の線路に接続される。コンデンサ10の他端は、中性線に接続される。コンデンサ10は、第2の線路上のノイズ成分を抑制するためのコンデンサである。コンデンサ11の一端は、電源1の第3相の出力点とダイオードブリッジ15の第3相の入力点とを接続する線路である第3の線路に接続される。コンデンサ11の他端は、中性線に接続される。コンデンサ11は、第3の線路上のノイズ成分を抑制するためのコンデンサである。
【0015】
また、上記のコンデンサ2〜4および抵抗5〜7とコンデンサ9〜11との間には、第1の線路〜第3の線路および中性線に流れるコモンモードノイズを抑制するためのコモンコイル8が設けられる。
【0016】
図1に示したコンデンサ2〜4,9〜11、抵抗5〜7およびコモンコイル8は、電源1から出力される交流電力に含まれるノイズ成分を抑制する目的で設けられた素子であり、これらと同様の素子は一般的な電力変換装置にも設けられている。なお、抵抗5〜7は、コンデンサ2〜4に印加される電圧のバランスをとる役割も兼ねている。
【0017】
ダイオードブリッジ15は、電源1から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する。すなわち、ダイオードブリッジ15は、電源1から供給される第1の交流電力を直流電力に変換する。ダイオードブリッジ15が出力する直流電力はインバータ19に供給される。インバータ19は、入力された直流電力を第2の交流電力に変換し、図示を省略している負荷に供給する。
【0018】
ダイオードブリッジ15とインバータ19との間には、直流リアクトル16と、主回路コンデンサであるコンデンサ17A,17Bと、抵抗18A,18Bとが設けられる。直流リアクトル16およびコンデンサ17A,17Bは、ダイオードブリッジ15から出力される直流電力を平滑化するために設けられる。抵抗18A,18Bは、コンデンサ17A,17Bに充電される電圧のバランスを調整する目的、および、コンデンサ17A,17Bを放電させる目的のために設けられる。
【0019】
直流リアクトル16の一端はダイオードブリッジ15の正極側の出力点に接続され、直流リアクトル16の他端はインバータ19の正極側の入力点に接続される。また、直流リアクトル16の他端には、コンデンサ17Aの一端および抵抗18Aの一端が接続される。コンデンサ17Aの他端にはコンデンサ17Bの一端が接続され、抵抗18Aの他端には抵抗18Bの一端が接続される。コンデンサ17Bの他端および抵抗18Bの他端は、ダイオードブリッジ15の負極側の出力点およびインバータ19の負極側の入力点に接続される。また、コンデンサ17Aと17Bの接続点は抵抗18Aと18Bの接続点と短絡された状態となっている。
【0020】
第1のリレーであるリレー13は、第2の線路上に設けられ、一端がコモンコイル8に接続され、他端がダイオードブリッジ15およびコンデンサ10の一端に接続される。すなわち、リレー13は、第2の線路上のコモンコイル8とコンデンサ10の接続点との間に設けられる。リレー13は、制御部21により制御される。
【0021】
第2のリレーであるリレー14は、第3の線路上に設けられ、一端がコモンコイル8およびコンデンサ11の一端に接続され、他端がダイオードブリッジ15に接続される。すなわち、リレー14は、第3の線路上のコンデンサ11の接続点とダイオードブリッジ15との間に設けられる。リレー14は、制御部21により制御される。
【0022】
第3のリレーであるリレー20は、中性線上に設けられ、一端がコンデンサ9に接続され、他端がコンデンサ10に接続される。すなわち、リレー20は、中性線上のコンデンサ9の接続点とコンデンサ10の接続点との間に設けられる。リレー20がオフになると、コンデンサ10および11が中性線から切り離された状態となる。リレー20は、制御部21により制御される。
【0023】
制御部21は、インバータ19を構成する各スイッチング素子(図示せず)を制御するとともに、リレー13、14および20を制御する。制御部21は、図示を省略した電源回路から電源の供給を受けて動作する構成である。この電源回路は、電源1から供給される電力を制御部21が必要とする直流電圧に変換して制御部21に供給する。制御部21は、リレー13、14および20とともに、コンデンサ17Aおよび17Bの充電経路を切り替える経路切替部を構成する。
【0024】
次に、電力変換装置100に電源を投入する場合、すなわち、電源1から電力変換装置100に対して交流電力の供給が開始されるときの電力変換装置100の動作について説明する。
【0025】
電力変換装置100に電源が投入される前は、リレー13、14および20は開いた状態である。この状態で電力変換装置100に電源が投入されると、図2および図3に示した経路で交互に電力が供給されてコンデンサ17Aおよび17Bが充電される。すなわち、図2に示した第1の充電経路201では、電源1から第1の線路に出力される電流は、ダイオードブリッジ15の正極側に設けられた3個のダイオードの中の第1相に対応するダイオードと、直流リアクトル16と、コンデンサ17Aおよび17Bと、ダイオードブリッジ15の負極側に設けられた3個のダイオードの中の第2相に対応するダイオードと、を経由して第2の線路に流れ込み、さらに、コンデンサ10とコンデンサ11とを経由して第3の線路に流れ込んだ後、電源1に戻る。また、図3に示した第2の充電経路202では、電源1から第3の線路に出力される電流は、コンデンサ11とコンデンサ10とを経由して第2の線路に流れ込み、さらに、ダイオードブリッジ15の正極側に設けられた3個のダイオードの中の第2相に対応するダイオードと、直流リアクトル16と、コンデンサ17Aおよび17Bと、ダイオードブリッジ15の負極側に設けられた3個のダイオードの中の第1相に対応するダイオードと、を経由して第1の線路に流れ込んだ後、電源1に戻る。このように、コンデンサ17Aおよび17Bは、2つの経路で充電が行われる。
【0026】
上記2つの充電経路上に設けられているコンデンサ10,11の静電容量と、コンデンサ17A,17Bの静電容量とは、式(1)に示す関係を有するものとする。
(コンデンサ10,11の静電容量)<<(コンデンサ17A,17Bの静電容量)…(1)
【0027】
このような条件の元で電源を投入した場合、電力変換装置100のコンデンサ17A,17Bは、コンデンサ10および11に受電される電荷分充電される。式(1)に示したように、コンデンサ10および11の静電容量はコンデンサ17Aおよび17Bの静電容量と比較して非常に小さいため、コンデンサ17Aおよび17Bに充電される電圧は小さい。そのため、電力変換装置100においては、上述した2つの充電経路を使用した充電動作を電源周期毎に繰り返すことによって、コンデンサ17Aおよび17Bが、図4に示すように、数十秒の時間をかけて充電される。図4は、実施の形態1にかかる電力変換装置100が備える主回路コンデンサであるコンデンサ17Aおよび17Bの電源投入後の電圧変化の一例を示す図である。図4に示した電圧は、直列に接続されたコンデンサ17Aおよび17Bの両端の電圧、すなわち、コンデンサ17Aの電圧とコンデンサ17Bの電圧とを合計した電圧であり、この電圧がインバータ19に印加される。
【0028】
上記の充電動作では、電源を投入してから、コンデンサ17Aおよび17Bの両端の電圧が、予め定められた電圧である、インバータ19が必要とする電圧に達するまでに時間を要する。これは、コンデンサ17Aおよび17Bに流れ込む電流が、コンデンサ10および11の容量に応じた値に制限されるためである。このように、電力変換装置100では、電源を投入してからコンデンサ17Aおよび17Bの両端の電圧が予め定められた電圧となるまでの所要時間が長くなるが、電力変換装置100が動作を開始する際に実行する初期化処理にはさらに時間がかかるため、問題とはならない。ここでの初期化処理とは、図示していない基板との通信処理、図示していない各センサーからの出力情報の取得処理、図示していない電圧検出回路および電流検出回路の異常の有無を確認する処理などである。なお、仮に、コンデンサ17Aおよび17Bの電圧が予め定められた電圧に達するまでの充電時間が上記の初期化処理の所要時間よりも長い場合、図示を省略した表示部に待機中であることを表示するなどして、動作開始となるまでに時間を要することをユーザに知らせればよい。
【0029】
また、図2に示した第1の充電経路201および図3に示した第2の充電経路202には、コンデンサ17Aおよび17Bと比較して静電容量が小さいコンデンサ10および11が含まれ、上述したように、コンデンサ17Aおよび17Bに流れ込む電流は、コンデンサ10および11の静電容量に応じた値に制限されるため、電源1を投入した際に発生する突入電流が抑制される。
【0030】
コンデンサ17Aおよび17Bの充電が終了すると、制御部21は、突入電流を抑制するために使用したコンデンサ10および11を本来の目的で使用するために、すなわち、ノイズ成分抑制用のコンデンサとして使用するために、リレー13、14および20を制御する。具体的には、制御部21は、まず、リレー20をオンさせる。図5に示したように、主回路コンデンサであるコンデンサ17Aおよび17Bが十分に充電されているとき、コンデンサ10および11の両端にかかる電圧は小さい。この状態でリレー20をONすることで、接続切り替え時のコンデンサ10および11への突入電流を抑制するとともに、ノイズ成分抑制用のコンデンサとして、コンデンサ10および11の使用を開始する。その後、制御部21は、リレー13および14をONすることにより、電源1が出力する第1相〜第3相の各相の電力がダイオードブリッジ15に供給されるようになる。すなわち、コンデンサ17Aおよび17Bの充電経路が、コンデンサ10および11を含まない第3の充電経路に切り替わる。
【0031】
このように、本実施の形態にかかる電力変換装置100は、3相4線式の交流電源である電源1から出力される3相の交流電力のそれぞれをダイオードブリッジ15に供給するための第1の線路〜第3の線路のそれぞれと中性線との間に接続されたノイズ成分抑制用のコンデンサであるコンデンサ9〜11と、第2の線路上に設けられたリレー13と、第3の線路上に設けられたリレー14と、中性線上に設けられたリレー20と、主回路コンデンサであるコンデンサ17Aおよび17Bと、リレー13、14および20を制御する制御部21とを備える。また、電力変換装置100は、ノイズ成分を抑制する目的で設けられたコンデンサを、電源1を投入する際に発生する、主回路コンデンサへの突入電流を抑制するためのコンデンサとして使用する。具体的には、電力変換装置100は、制御部21が各リレーを制御することにより、電源1を投入してから主回路コンデンサの電圧が予め定められた電圧に達するまでの間の主回路コンデンサの充電経路にコンデンサ10および11が含まれ、主回路コンデンサの電圧が予め定められた電圧に達した後は主回路コンデンサの充電経路にコンデンサ10および11が含まれないよう、主回路コンデンサの充電経路を切り替える。これにより、電源投入時の突入電流を抑制することができる。また、特許文献1に記載の発明では、突入電流を抑制するための1つのコンデンサ(限流用コンデンサ)と、電流が流れる経路を切り替えるための3つのリレー(2つの電源スイッチと1つの限流用スイッチ)とを使用して突入電流を抑制しているのに対して、本実施の形態にかかる電力変換装置100では、突入電流を抑制するためのコンデンサを別途設けることなく、突入電流を抑制することが可能である。よって、電力変換装置100は、回路規模の大型化を回避しつつ、電源投入時の突入電流を抑制することができる。
【0032】
実施の形態2.
実施の形態1で説明した電力変換装置100は、主回路コンデンサの電圧が予め定められた電圧となる前の主回路コンデンサの充電経路(第1の充電経路201,第2の充電経路202)を形成するコンデンサ10および11に対して電圧バランス用の抵抗を挿入しない構成とした。しかし、コンデンサ10および11の静電容量比によっては、片方のコンデンサに電圧が偏り、コンデンサ10の電圧とコンデンサ11の電圧がアンバランスになる可能性がある。よって、電圧バランスが偏りコンデンサ10または11の電圧が耐圧を超えるような場合、電圧バランスをとるための抵抗をコンデンサ10および11のそれぞれに並列に実装してもよい。また、コンデンサの充電経路の形成に用いられないコンデンサ9に対しても電源バランスをとるための抵抗を並列に実装してもよい。
【0033】
このように、実施の形態2にかかる電力変換装置は、ノイズ成分を抑制する目的で設けられ、電源投入直後には主回路コンデンサの充電経路を形成する各コンデンサの電圧のバランスをとるための抵抗を備える。これにより、電源投入直後に主回路コンデンサの充電経路を形成する各コンデンサの一方の電圧が高くなり、耐圧を超えてしまうのを防止できる。
【0034】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3にかかる電力変換装置の構成例を示す図である。実施の形態1,2にかかる電力変換装置100は、3相4線式の交流電源である電源1から供給される第1の交流電力を第2の交流電力に変換して負荷に供給する構成であった。これに対して、図6に示した実施の形態3にかかる電力変換装置101は、電源31から供給される単相の交流電力を第2の交流電力に変換して負荷に供給する。本実施の形態においては、電源31から供給される単相の交流電力が第1の交流電力となる。
【0035】
電力変換装置101は、コンデンサ32,37と、リレー33,34と、ダイオードブリッジ35と、直流リアクトル36と、抵抗38と、インバータ39と、制御部41とを備える。
【0036】
コンデンサ32は、一端が電源31に接続され、他端がリレー34に接続される。コンデンサ32は、第1の交流電力に含まれるノイズ成分を抑制する目的で設けられている。
【0037】
リレー33は、一端がコンデンサ32と電源31との接続点に接続され、他端がダイオードブリッジ35に接続される。リレー34は、第1端子、第2端子および第3端子を備え、第1端子にコンデンサ32が接続される。リレー34の第2端子は電源31およびダイオードブリッジ35に接続される。リレー34の第3端子はダイオードブリッジ35に接続される。
【0038】
ダイオードブリッジ35は、電源31から供給される交流電力を整流して直流電力に変換する。すなわち、ダイオードブリッジ35は、電源31から供給される第1の交流電力を直流電力に変換する。ダイオードブリッジ35が出力する直流電力はインバータ39に供給される。インバータ39は、入力された直流電力を第2の交流電力に変換し、図示を省略している負荷に供給する。
【0039】
ダイオードブリッジ35とインバータ39との間には、直流リアクトル36と、主回路コンデンサであるコンデンサ37と、抵抗38とが設けられる。直流リアクトル36およびコンデンサ37は、ダイオードブリッジ35から出力される直流電力を平滑化するために設けられる。抵抗38は、コンデンサ37に充電された電荷を放電させるために設けられる。
【0040】
直流リアクトル36の一端はダイオードブリッジ35の正極側の出力点に接続され、直流リアクトル36の他端はインバータ39の正極側の入力点に接続される。また、直流リアクトル36の他端には、コンデンサ37および抵抗38の一端が接続される。コンデンサ37および抵抗38の他端は、ダイオードブリッジ35の負極側の出力点およびインバータ39の負極側の入力点に接続される。
【0041】
制御部41は、インバータ39を構成する各スイッチング素子(図示せず)を制御するとともに、リレー33および34を制御する。制御部41は、図示を省略した電源回路から電源の供給を受けて動作する構成である。この電源回路は、電源31から供給される電力を制御部41が必要とする直流電圧に変換して制御部41に供給する。制御部41は、リレー33および34とともに、コンデンサ37の充電経路を切り替える経路切替部を構成する。
【0042】
次に、電力変換装置101に電源を投入する場合、すなわち、電源31から電力変換装置101に対して交流電力の供給が開始されるときの電力変換装置101の動作について説明する。
【0043】
電力変換装置101に電源が投入される前は、リレー33は開いた状態であり、リレー34は、コンデンサ32が電源31とダイオードブリッジ35との間に直列に挿入された接続関係となる状態である。この状態で電力変換装置101に電源が投入されると、ノイズ成分を抑制する目的で設けられコンデンサ32を含んだ充電経路でコンデンサ37の充電が行われる。具体的には、コンデンサ37は、以下の2つの充電経路で充電が行われる。電源31の2つの出力点のうち、コンデンサ32およびリレー33が接続されている出力点を第1の出力点、残りの出力点を第2の出力点とする。1つめの充電経路での充電では、電源31の第1の出力点から電流が出力され、この電流は、コンデンサ32と、リレー34と、ダイオードブリッジ35の正極側に設けられた2個のダイオードの一方である第1の正極側ダイオードと、直流リアクトル36とを経由してコンデンサ37に流れ込み、さらに、ダイオードブリッジ35の負極側に設けられた2個のダイオードの一方である第1の負極側ダイオードを経由して電源31に戻る。また、2つめの充電経路での充電では、電源31の第2の出力点から電流が出力され、この電流は、ダイオードブリッジ35の正極側に設けられた2個のダイオードの他方である第2の正極側ダイオードと、直流リアクトル36とを経由してコンデンサ37に流れ込み、さらに、ダイオードブリッジ35の負極側に設けられた2個のダイオードの他方である第2の負極側ダイオードと、リレー34と、コンデンサ32とを経由して電源31に戻る。
【0044】
コンデンサ32の静電容量とコンデンサ37の静電容量とは、式(2)に示す関係を有するものとする。
(コンデンサ32の静電容量)<<(コンデンサ37の静電容量)…(2)
【0045】
電力変換装置101に電源が投入されてからコンデンサ37の電圧が予め定められた電圧、すなわち、インバータ39が必要とする電圧に達するまでの所要時間は、実施の形態1にかかる電力変換装置100に電源が投入される場合と同様に、数十秒となる。しかし、実施の形態1にかかる電力変換装置100と同様、問題とはならない。また、電源を投入した際に発生するコンデンサ37への突入電流が抑制される。
【0046】
コンデンサ37の充電が終了すると、制御部41は、突入電流を抑制するために使用したコンデンサ32をノイズ成分抑制用のコンデンサとして使用するために、リレー33および34を制御する。具体的には、制御部41は、まず、リレー34の接点を切り替える。制御部41は、次に、リレー33をオンさせて、コンデンサ32がダイオードブリッジ35と並列に接続された状態とする。コンデンサ37が十分に充電されているとき、コンデンサ32の両端にかかる電圧は小さいため、リレー34の接点を切り替えたときのコンデンサ32への突入電流は抑制される。
【0047】
このように、本実施の形態にかかる電力変換装置101は、単相式の交流電源である電源31から出力される交流電力に含まれるノイズ成分を抑制する目的で設けられたコンデンサ32を、電源31を投入する際に発生する、主回路コンデンサであるコンデンサ37への突入電流を抑制するためのコンデンサとして使用する。具体的には、電力変換装置101は、電源31を投入してから主回路コンデンサであるコンデンサ37の電圧が予め定められた電圧に達するまでの間の主回路コンデンサの充電経路にコンデンサ32が含まれ、主回路コンデンサの電圧が予め定められた電圧に達した後は主回路コンデンサの充電経路にコンデンサ32が含まれないよう、主回路コンデンサの充電経路を切り替える。これにより、回路規模の大型化を回避しつつ、電源投入時の突入電流を抑制することができる。
【0048】
つづいて、上述した電力変換装置100の制御部21および電力変換装置101の制御部41を実現するハードウェアについて説明する。制御部21および制御部41は、電子回路である処理回路により実現される。制御部21および制御部41を実現する処理回路は、専用のハードウェアであっても、メモリおよびメモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサを備える制御回路であってもよい。
【0049】
上記の処理回路が専用のハードウェアで実現される場合、処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた回路である。
【0050】
また、上記の処理回路が制御回路で実現される場合、制御回路は、例えば、図7に示す構成の、プロセッサ91およびメモリ92を備える処理回路とすることができる。プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。メモリ92は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable ROM)などである。
【0051】
図7に示す構成の制御回路で制御部21および41を実現する場合、制御部21および41は、これらの各部として動作するためのプログラムをプロセッサ91が実行することにより実現される。すなわち、上記のプログラムをメモリ92に予め格納しておき、プロセッサ91が、メモリ92からプログラムを読み出して実行することにより、制御部21および41が実現される。
【0052】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1,31 電源、2〜4,9〜11,17A,17B,32,37 コンデンサ、5〜7,18A,18B,38 抵抗、8 コモンコイル、13,14,20,33,34 リレー、15,35 ダイオードブリッジ、16,36 直流リアクトル、19,39 インバータ、21,41 制御部、100,101 電力変換装置、201 第1の充電経路、202 第2の充電経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7