(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態に係る電力変換装置、モータ駆動装置及び空気調和機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置100の構成例を示す図である。電力変換装置100は、ブリッジ回路3を用いて、交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換して負荷50に印加する交流直流変換機能を有する電源装置である。
図1に示すように、電力変換装置100は、リアクタ2と、ブリッジ回路3と、平滑コンデンサ4と、電源電圧検出部5と、電源電流検出部6と、母線電圧検出部7と、制御部10とを備える。リアクタ2は、第1端部と第2端部とを備え、第1端部が交流電源1に接続される。
【0012】
ブリッジ回路3は、ダイオードが並列接続されたスイッチング素子が2つ直列接続されたアームを2つ備え、2つのアームが並列接続された回路である。具体的には、ブリッジ回路3は、第1の回路である第1のアーム31と、第2の回路である第2のアーム32とを備える。第1のアーム31は、直列接続されるスイッチング素子311及びスイッチング素子312を備える。スイッチング素子311には寄生ダイオード311aが形成される。寄生ダイオード311aは、スイッチング素子311のドレインとソースとの間に並列接続される。スイッチング素子312には寄生ダイオード312aが形成される。寄生ダイオード312aは、スイッチング素子312のドレインとソースとの間に並列接続される。寄生ダイオード311a,312aのそれぞれは、還流ダイオードとして使用されるダイオードである。
【0013】
第2のアーム32は、直列接続されたスイッチング素子321及びスイッチング素子322を備える。第2のアーム32は、第1のアーム31に並列接続される。スイッチング素子321には寄生ダイオード321aが形成される。寄生ダイオード321aは、スイッチング素子321のドレインとソースとの間に並列接続される。スイッチング素子322には寄生ダイオード322aが形成される。寄生ダイオード322aは、スイッチング素子322のドレインとソースとの間に並列接続される。寄生ダイオード321a,322aのそれぞれは、還流ダイオードとして使用されるダイオードである。
【0014】
詳細には、電力変換装置100は、それぞれが交流電源1に接続される第1の配線501及び第2の配線502と、第1の配線501に配置されるリアクタ2とを備える。また、第1のアーム31は、第1のスイッチング素子であるスイッチング素子311と、第2のスイッチング素子であるスイッチング素子312と、第1の接続点506を有する第3の配線503とを備える。スイッチング素子311及びスイッチング素子312は、第3の配線503により直列に接続される。第1の接続点506には第1の配線501が接続される。第1の接続点506は、第1の配線501及びリアクタ2を介して、交流電源1に接続される。第1の接続点506は、リアクタ2の第2端部に接続される。
【0015】
第2のアーム32は、第3のスイッチング素子であるスイッチング素子321と、第4のスイッチング素子であるスイッチング素子322と、第2の接続点508を備える第4の配線504とを備え、スイッチング素子321及びスイッチング素子322は、第4の配線504により直列に接続される。第2の接続点508には第2の配線502が接続される。第2の接続点508は、第2の配線502を介して交流電源1に接続される。なお、ブリッジ回路3は、少なくとも1つ以上のスイッチング素子を備え、交流電源1から出力される交流電圧を直流電圧に変換できればよい。
【0016】
平滑コンデンサ4は、ブリッジ回路3、詳細には第2のアーム32に並列接続されるコンデンサである。ブリッジ回路3では、スイッチング素子311の一端が平滑コンデンサ4の正側に接続され、スイッチング素子311の他端とスイッチング素子312の一端とが接続され、スイッチング素子312の他端が平滑コンデンサ4の負側に接続されている。
【0017】
スイッチング素子311,312,321,322は、MOSFETで構成される。スイッチング素子311,312,321,322には、窒化ガリウム(Gallium Nitride:GaN)、炭化珪素(Silicon Carbide:SiC)、ダイヤモンドまたは窒化アルミニウムといったワイドバンドギャップ(Wide Band Gap:WBG)半導体で構成されたMOSFETを用いることができる。スイッチング素子311,312,321,322にWBG半導体を用いることにより、耐電圧性が高く、許容電流密度も高くなるため、モジュールの小型化が可能となる。WBG半導体は、耐熱性も高いため、放熱部の放熱フィンの小型化も可能になる。
【0018】
制御部10は、電源電圧検出部5、電源電流検出部6及び母線電圧検出部7からそれぞれ出力される信号に基づいて、ブリッジ回路3のスイッチング素子311,312,321,322を動作させる駆動パルスを生成する。電源電圧検出部5は、交流電源1の出力電圧の電圧値である電源電圧Vsを検出し、検出結果を示す電気信号を制御部10へ出力する電圧検出部である。電源電流検出部6は、交流電源1から出力される電流の電流値である電源電流Isを検出し、検出結果を示す電気信号を制御部10へ出力する電流検出部である。電源電流Isは、交流電源1とブリッジ回路3との間に流れる電流の電流値である。母線電圧検出部7は、母線電圧Vdcを検出し、検出結果を示す電気信号を制御部10へ出力する電圧検出部である。母線電圧Vdcは、ブリッジ回路3の出力電圧を平滑コンデンサ4で平滑した電圧である。制御部10は、電源電圧Vs、電源電流Is、及び母線電圧Vdcに応じてスイッチング素子311,312,321,322のオンオフを制御する。なお、制御部10は、電源電圧Vs、電源電流Is、及び母線電圧Vdcのうち、少なくとも1つを用いてスイッチング素子311,312,321,322のオンオフを制御してもよい。
【0019】
次に、実施の形態1に係る電力変換装置100の基本的な動作を説明する。以下では、交流電源1の正側すなわち交流電源1の正極端子に接続されるスイッチング素子311,321を、上側スイッチング素子と称する場合がある。また、交流電源1の負側すなわち交流電源1の負極端子に接続されるスイッチング素子312,322を、下側スイッチング素子と称する場合がある。
【0020】
第1のアーム31では、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子は相補的に動作する。すなわち、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のうち、一方がオンの場合には他方はオフである。第1のアーム31を構成するスイッチング素子311,312は、後述するように、制御部10により生成される駆動信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号により駆動される。PWM信号に従ったスイッチング素子311,312のオンまたはオフの動作を、以下ではスイッチング動作とも呼ぶ。交流電源1及びリアクタ2を介した平滑コンデンサ4の短絡を防ぐため、交流電源1から出力される電源電流Isの絶対値が電流閾値以下の場合には、スイッチング素子311及びスイッチング素子312はともにオフとなる。以下では、平滑コンデンサ4の短絡をコンデンサ短絡と称する。コンデンサ短絡は、平滑コンデンサ4に蓄えられたエネルギーが放出され、交流電源1に電流が回生される状態である。
【0021】
第2のアーム32を構成するスイッチング素子321,322は、制御部10により生成される駆動信号によりオンまたはオフとなる。スイッチング素子321,322は、基本的には、交流電源1から出力される電圧の極性である電源電圧極性に応じてオンまたはオフの状態となる。具体的には、電源電圧極性が正の場合、スイッチング素子322はオンであり、かつ、スイッチング素子321はオフであり、電源電圧極性が負の場合、スイッチング素子321はオンであり、かつ、スイッチング素子322はオフである。なお、
図1では、制御部10からブリッジ回路3へ向かう矢印でスイッチング素子321,322のオンオフを制御する駆動信号、及びスイッチング素子311,312のオンオフを制御する前述のPWM信号を示している。
【0022】
次に、実施の形態1におけるスイッチング素子の状態と実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路との関係を説明する。なお、本説明の前に、MOSFETの構造について、
図2を参照して説明する。
【0023】
図2は、MOSFETの概略構造を示す模式的断面図である。
図2には、n型MOSFETが例示される。n型MOSFETの場合、
図2に示すように、p型の半導体基板600が用いられる。半導体基板600には、ソース電極S、ドレイン電極D及びゲート電極Gが形成される。ソース電極S及びドレイン電極Dと接する部位には、高濃度の不純物がイオン注入されてn型の領域601が形成される。また、半導体基板600において、n型の領域601が形成されない部位とゲート電極Gとの間には、酸化絶縁膜602が形成される。すなわち、ゲート電極Gと、半導体基板600におけるp型の領域603との間には、酸化絶縁膜602が介在している。
【0024】
ゲート電極Gに正電圧が印加されると、半導体基板600におけるp型の領域603と酸化絶縁膜602との間の境界面に電子が引き寄せられ、当該境界面が負に帯電する。電子が集まった所は、電子の密度がホール密度よりも高くなりn型化する。このn型化した部分は電流の通り道となりチャネル604と呼ばれる。チャネル604は、
図2の例では、n型チャネルである。MOSFETがオンに制御されることにより、通流する電流は、p型の領域603に形成される寄生ダイオードよりも、チャネル604に多く流れる。
【0025】
図3は、電源電流Isの絶対値が電流閾値より大きく、かつ、電源電圧極性が正のとき、実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路を示す第1の図である。
図3では、電源電圧極性が正であり、スイッチング素子311及びスイッチング素子322がオンであり、スイッチング素子312及びスイッチング素子321がオフである。この状態では、交流電源1、リアクタ2、スイッチング素子311、平滑コンデンサ4、スイッチング素子322、交流電源1の順序で電流が流れる。このように、実施の形態1では、寄生ダイオード311a及び寄生ダイオード322aに電流が流れるのではなく、スイッチング素子311及びスイッチング素子322のそれぞれのチャネルに電流が流れることで、同期整流動作が行われる。なお、
図3では、オンしているスイッチング素子を丸印で示している。以降の図においても同様とする。
【0026】
図4は、電源電流Isの絶対値が電流閾値より大きく、かつ、電源電圧極性が負のとき、実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路を示す第1の図である。
図4では、電源電圧極性が負であり、スイッチング素子312及びスイッチング素子321がオンであり、スイッチング素子311及びスイッチング素子322がオフである。この状態では、交流電源1、スイッチング素子321、平滑コンデンサ4、スイッチング素子312、リアクタ2、交流電源1の順序で電流が流れる。このように、実施の形態1では、寄生ダイオード321a及び寄生ダイオード312aに電流が流れるのではなく、スイッチング素子321及びスイッチング素子312のそれぞれのチャネルに電流が流れることで、同期整流動作が行われる。
【0027】
図5は、電源電流Isの絶対値が電流閾値より大きく、かつ、電源電圧極性が正のとき、実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路を示す第2の図である。
図5では、電源電圧極性が正であり、スイッチング素子312及びスイッチング素子322がオンであり、スイッチング素子311及びスイッチング素子321がオフである。この状態では、交流電源1、リアクタ2、スイッチング素子312、スイッチング素子322、交流電源1の順序で電流が流れ、平滑コンデンサ4を経由しない電源短絡経路が形成される。このように、実施の形態1では、寄生ダイオード312a及び寄生ダイオード322aに電流が流れるのではなく、スイッチング素子312及びスイッチング素子322のそれぞれのチャネルに電流が流れることで、電源短絡経路が形成される。
【0028】
図6は、電源電流Isの絶対値が電流閾値より大きく、かつ、電源電圧極性が負のとき、実施の形態1に係る電力変換装置100に流れる電流の経路を示す第2の図である。
図6では、電源電圧極性が負であり、スイッチング素子311及びスイッチング素子321がオンであり、スイッチング素子312及びスイッチング素子322がオフである。この状態では、交流電源1、スイッチング素子321、スイッチング素子311、リアクタ2、交流電源1の順序で電流が流れ、平滑コンデンサ4を経由しない電源短絡経路が形成される。このように、実施の形態1では、寄生ダイオード311a及び寄生ダイオード321aに電流が流れるのではなく、スイッチング素子311及びスイッチング素子321のそれぞれのチャネルに電流が流れることで、電源短絡経路が形成される。
【0029】
制御部10は、以上に述べた電流経路の切替えを制御することで、電源電流Is及び母線電圧Vdcの値を制御できる。電力変換装置100は、電源電圧極性が正のときは
図3に示す負荷電力供給モードと
図5に示す電源短絡モードとを連続的に切り替え、電源電圧極性が負のときは
図4に示す負荷電力供給モードと
図6に示す電源短絡モードとを連続的に切り替えることで、母線電圧Vdcの上昇、電源電流Isの同期整流などの動作を実現する。具体的には、制御部10は、PWMによるスイッチング動作を行うスイッチング素子311,312のスイッチング周波数を、電源電圧Vsの極性に応じたスイッチング動作を行うスイッチング素子321,322のスイッチング周波数よりも高くして、スイッチング素子311,312,321,322のオンオフを制御する。以降の説明において、スイッチング素子311,312,321,322を区別しない場合は単にスイッチング素子と称することがある。同様に、寄生ダイオード311a,312a,321a,322aを区別しない場合は単に寄生ダイオードと称することがある。
【0030】
次に、制御部10が、スイッチング素子をオンオフするタイミングについて説明する。
図7は、実施の形態1に係る電力変換装置100において制御部10がスイッチング素子をオンするタイミングを示す図である。
図7において横軸は時間である。
図7において、Vsは電源電圧検出部5で検出される電源電圧Vsであり、Isは電源電流検出部6で検出される電源電流Isである。
図7では、スイッチング素子311,312が、電源電流Isの極性に応じてオンオフが制御される電流同期のスイッチング素子であることを示し、スイッチング素子321,322が、電源電圧Vsの極性に応じてオンオフが制御される電圧同期のスイッチング素子であることを示す。また、
図7において、Ithは電流閾値を示す。なお、
図7では交流電源1から出力される交流電力の1周期を示しているが、制御部10は、他の周期においても
図7に示す制御と同様の制御を行うものとする。
【0031】
制御部10は、電源電圧極性が正の場合、スイッチング素子322をオンし、スイッチング素子321をオフする。また、制御部10は、電源電圧極性が負の場合、スイッチング素子321をオンし、スイッチング素子322をオフする。なお、
図7では、スイッチング素子322がオンからオフになるタイミングと、スイッチング素子321がオフからオンになるタイミングとが同じタイミングであるが、これに限定されない。制御部10は、スイッチング素子322がオンからオフになるタイミングと、スイッチング素子321がオフからオンになるタイミングとの間に、スイッチング素子321,322がともにオフになるデッドタイムを設けてもよい。同様に、制御部10は、スイッチング素子321がオンからオフになるタイミングと、スイッチング素子322がオフからオンになるタイミングとの間に、スイッチング素子321,322がともにオフになるデッドタイムを設けてもよい。
【0032】
制御部10は、電源電圧極性が正の場合、電源電流Isの絶対値が電流閾値Ith以上になると、スイッチング素子311をオンする。その後、制御部10は、電源電流Isの絶対値が小さくなり、電源電流Isの絶対値が電流閾値Ithより小さくなると、スイッチング素子311をオフする。また、制御部10は、電源電圧極性が負の場合、電源電流Isの絶対値が電流閾値Ith以上になると、スイッチング素子312をオンする。その後、制御部10は、電源電流Isの絶対値が小さくなり、電源電流Isの絶対値が電流閾値Ithより小さくなると、スイッチング素子312をオフする。
【0033】
制御部10は、電源電流Isの絶対値が電流閾値Ith以下の場合には、上側スイッチング素子のスイッチング素子311及びスイッチング素子321が同時にオンしないように制御し、また、下側スイッチング素子のスイッチング素子312及びスイッチング素子322が同時にオンしないように制御する。これにより、制御部10は、電力変換装置100においてコンデンサ短絡を防止できる。
【0034】
ここで、電力変換装置100は、実際には、電源電流Isを連続して検出しているのではなく、制御周期毎に電源電流Isを検出する。すなわち、電力変換装置100は、制御周期単位の電源電流Isの検出では、電源電流Isが電流閾値Ithになる瞬間を正確に検出できない場合がある。そのため、本実施の形態では、制御部10は、電源電流検出部6で前回検出された電流値である第1の電流値と電源電流検出部6で今回検出した電流値である第2の電流値とを用いて、電源電流検出部6で次に検出される電流値の予測値を算出する。前回検出された第1の電流値は、電源電流検出部6で過去に検出された電流値であり、今回検出された第2の電流値は、電源電流検出部6で新たに検出された電流値である。制御部10は、算出した予測値に応じて、スイッチング素子311,312のオンオフを制御する。このように、制御部10は、電源電流検出部6で検出された過去の電流値を用いてスイッチング素子311,312のオンオフを制御する。
【0035】
図8は、実施の形態1に係る電力変換装置100の制御部10が、電源電流検出部6で次に検出される電流値の予測値を算出する処理を示す図である。また、
図8は、
図7に示す電源電流Isに対して、電力変換装置100に流れる実際の電源電流と、電力変換装置100で検出される電源電流Isとを示している。
図8は、
図7に示す電源電流Isのうち、電源電流Isの極性が正の部分を示している。
図8において、横軸は時間を示し、縦軸は電流値を示す。
図8において、Ithは電流閾値を示す。Id(n−1)は、n−1回目の制御タイミングの際に電源電流検出部6で検出された電流値であり、前述の第1の電流値に相当する。Id(n)は、n回目の制御タイミングの際に電源電流検出部6で検出された電流値であり、前述の第2の電流値に相当する。Ie(n)は、n回目の制御タイミングの時点で制御部10が電源電流検出部6で次に検出される電流値を予測したものであり、前述の予測値に相当する。Tsは、電源電流検出部6が電流値を検出する周期であり、前述の制御周期である。このような場合、制御部10は、次の式(1)を用いて予測値Ie(n)を算出することができる。
【0036】
Ie(n)=Id(n)+((Id(n)−Id(n−1))/Ts)×Ts …(1)
【0037】
式(1)において、((Id(n)−Id(n−1))/Ts)は、n−1回目の制御タイミングからn回目の制御タイミングまでの期間における電源電流Isの変化を直線近似したときの傾きである。制御部10は、電流値Id(n−1)、電流値Id(n)、及び電源電流検出部6が電流値を検出する制御周期Tsを用いて算出した値を、電流値Id(n)に加算して予測値Ie(n)を算出する。なお、式(1)については、次の式(2)のように変形させることができる。
【0038】
Ie(n)=Id(n)+(Id(n)−Id(n−1)) …(2)
【0039】
すなわち、制御部10は、電流値Id(n)に、電流値Id(n)と電流値Id(n−1)との差分を加算することで、予測値Ie(n)を算出することができる。なお、制御部10は、式(1)または式(2)の右辺のように計算して求めた値に対して、規定された係数を乗算したものを予測値Ie(n)としてもよい。これにより、制御部10は、電源電流Isの変化が急峻な場合にも対応することができる。
【0040】
図9は、実施の形態1に係る電力変換装置100の制御部10が電源電流Isの極性に応じてオンオフを制御するスイッチング素子311,312に対する処理を示すフローチャートである。一例として、電源電流Isの極性が正の場合について説明する。制御部10は、予測値Ie(n)を算出する(ステップS1)。制御部10における予測値Ie(n)の算出方法は前述のとおりである。制御部10は、予測値Ie(n)の絶対値と電流閾値Ithとを比較する(ステップS2)。制御部10は、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ith以下の場合(ステップS3:Yes)、次に電源電流検出部6が検出する電流値の絶対値は電流閾値Ith以下であるとして、電流の極性に応じて制御しているスイッチング素子のうちオンされているスイッチング素子311をオフにする(ステップS4)。制御部10は、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ithより大きい場合(ステップS3:No)、次に電源電流検出部6が検出する電流値の絶対値は電流閾値Ithより大きいとして、電流の極性に応じて制御しているスイッチング素子のうちオンされているスイッチング素子311をオンのままとする(ステップS5)。制御部10は、電源電流Isの極性が負の場合、スイッチング素子312を対象にして、上記同様の処理を行う。なお、制御周期Tsについては、制御部10で算出される予測値Ie(n)が、−Ith≦Ie(n)≦Ithになる程度に電源電流検出部6が電流値を検出する間隔とする。
【0041】
制御部10は、次に電源電流検出部6で検出される電流値の予測値Ie(n)を算出することによって、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ith以下になる場合、実際に電力変換装置100に流れる電流の電流値の絶対値が電流閾値Ithになる前にスイッチング素子をオフすることができる。すなわち、電力変換装置100は、制御遅延によるスイッチング素子をオフするタイミングが遅れることによる、平滑コンデンサ4から交流電源1への逆流電流の発生を防止することができる。そのため、電力変換装置100を使用するユーザは、電流閾値Ithを従来よりも小さな値に設定することができる。これにより、電力変換装置100は、高精度な同期整流動作を実現することができる。また、電力変換装置100は、電流の極性に応じて制御するスイッチング素子311,312をオンする期間を長くすることができ、効率の低下を抑制し、損失を低減して高効率なシステムを得ることができる。
【0042】
なお、制御部10は、算出した予測値Ie(n)の絶対値と電流閾値Ithとを比較してスイッチング素子311,312のオンオフを制御していたが、これに限定されない。制御部10は、頻繁に電源電流検出部6が電流値を検出するような制御周期Tsであれば、算出した予測値Ie(n)がゼロになったか否かでスイッチング素子311,312のオンオフを制御してもよい。具体的には、制御部10は、算出した予測値Ie(n)がゼロになった場合、または電流値Id(n)と異なる極性になった場合、電流の極性に応じて制御しているスイッチング素子のうちオンされているスイッチング素子をオフにする。予測値Ie(n)が電流値Id(n)と異なる極性になった場合とは、電流値Id(n)が正で予測値Ie(n)が負の場合、または、電流値Id(n)が負で予測値Ie(n)が正の場合である。
【0043】
ここで、スイッチング素子の構成について説明する。電力変換装置100において、スイッチング素子のスイッチング速度を速くする方法の1つに、スイッチング素子のゲート抵抗を小さくする方法が挙げられる。ゲート抵抗が小さくなる程、ゲート入力容量への充放電時間が短くなり、ターンオン期間及びターンオフ期間が短くなるため、スイッチング速度が速くなる。
【0044】
しかしながら、ゲート抵抗を小さくすることでスイッチング損失を低減するには限界がある。そこで、スイッチング素子を、GaNまたはSiCといったWBG半導体で構成することにより、1回のスイッチング当りの損失を更に抑制することができ、より一層効率が向上し、かつ、高周波スイッチングが可能となる。また、高周波スイッチングが可能となることで、リアクタ2の小型化が可能となり、電力変換装置100の小型化及び軽量化が可能となる。また、スイッチング素子にWBG半導体を用いることにより、スイッチング速度が向上して、スイッチング損失が抑制されるため、スイッチング素子が正常な動作を継続できるような放熱対策を簡素化できる。また、スイッチング素子にWBG半導体を用いることにより、スイッチング周波数を十分に高い値、例えば16kHz以上にすることができるため、スイッチングに起因する騒音を抑制できる。
【0045】
また、GaN半導体は、GaN層と窒化アルミニウムガリウム層との界面に2次元電子ガスが生じ、この2次元電子ガスにより、キャリアの移動度が高い。このため、GaN半導体を用いたスイッチング素子は、高速スイッチングを実現可能である。ここで、交流電源1が、50Hz/60Hzの商用電源である場合、可聴域周波数は、16kHzから20kHzまでの範囲、すなわち商用電源の周波数の266倍から400倍までの範囲となる。GaN半導体は、この可聴域周波数より高い周波数でスイッチングする場合に好適である。半導体材料として主流である珪素(Si)で構成されたスイッチング素子311,312,321,322を、数十kHz以上のスイッチング周波数で駆動した場合、スイッチング損失の比率が大きくなり、放熱対策が必須となる。これに対して、GaN半導体で構成されたスイッチング素子311,312,321,322は、数十kHz以上のスイッチング周波数、具体的には20kHzより高いスイッチング周波数で駆動した場合でも、スイッチング損失が非常に小さい。そのため、放熱対策が不要になり、または放熱対策のために利用される放熱部材のサイズを小型化でき、電力変換装置100の小型化及び軽量化が可能となる。また、高周波スイッチングが可能となることで、リアクタ2の小型化が可能になる。なお、雑音端子電圧規格の測定範囲にスイッチング周波数の1次成分が入らないようにするため、スイッチング周波数は、150kHz以下とすることが好ましい。
【0046】
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて静電容量が小さいため、スイッチングに起因するリカバリ電流の発生が少なく、リカバリ電流に起因する損失及びノイズの発生を抑制できるため、高周波スイッチングに適している。
【0047】
なお、SiC半導体はGaN半導体に比べてオン抵抗が小さいため、第2のアーム32よりも、スイッチング回数が多い第1のアーム31のスイッチング素子311,312は、GaN半導体で構成し、スイッチング回数が少ない第2のアーム32のスイッチング素子321,322は、SiC半導体で構成してもよい。これにより、SiC半導体及びGaN半導体のそれぞれの特性を最大限に生かすことができる。また、SiC半導体を、第1のアーム31よりも、スイッチング回数が少ない第2のアーム32のスイッチング素子321,322に利用することで、スイッチング素子321,322の損失の内、導通損失が占める割合が多くなり、ターンオン損失及びターンオフ損失が小さくなる。従って、スイッチング素子321,322のスイッチングに伴う発熱の上昇が抑制され、第2のアーム32を構成するスイッチング素子321,322のチップ面積を相対的に小さくでき、チップ製造時の歩留まりが低いSiC半導体を有効に活用できる。
【0048】
また、スイッチング回数が少ない第2のアーム32のスイッチング素子321,322には、スーパージャンクション(Super Junction:SJ)−MOSFETを用いてもよい。SJ−MOSFETを用いることにより、SJ−MOSFETのメリットである低オン抵抗を生かしつつ、静電容量が高くリカバリが発生しやすいというデメリットを抑制できる。また、SJ−MOSFETを用いることにより、WBG半導体を用いる場合に比べて、第2のアーム32の製造コストを低減できる。
【0049】
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて耐熱性が高く、ジャンクション温度が高温でも動作が可能である。そのため、WBG半導体を用いることにより、第1のアーム31及び第2のアーム32を、熱抵抗が大きい小型のチップでも構成できる。特に、チップ製造時の歩留まりが低いSiC半導体は、小型のチップに利用した方が低コスト化を実現できる。
【0050】
また、WBG半導体は、100kHz程度の高周波で駆動した場合でも、スイッチング素子で発生する損失の増加が抑制されるため、リアクタ2の小型化による損失低減効果が大きくなり、広い出力帯域、すなわち広い負荷条件において、高効率なコンバータを実現できる。
【0051】
また、WBG半導体は、Si半導体に比べて耐熱性が高く、アーム間の損失の偏りによるスイッチングの発熱許容レベルが高いため、高周波駆動によるスイッチング損失が発生する第1のアーム31に好適である。
【0052】
つづいて、電力変換装置100が備える制御部10のハードウェア構成について説明する。
図10は、実施の形態1に係る電力変換装置100が備える制御部10を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御部10は、プロセッサ201及びメモリ202により実現される。
【0053】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。またメモリ202は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置100において、制御部10は、電源電流検出部6で前回検出された電流値Id(n−1)と電源電流検出部6で今回検出した電流値Id(n)とを用いて、電源電流検出部6で次に検出される電流値の予測値Ie(n)を算出する。制御部10は、算出した予測値Ie(n)に応じて、スイッチング素子311,312のオンオフを制御することとした。これにより、電力変換装置100は、逆流電流の発生を抑制しつつ、同期整流動作において効率を向上することができる。
【0055】
図8に示すように、制御部10は、電流値の極性が正の場合において、電流値が増加中であっても、予測値Ie(n)を算出してもよい。同様に、制御部10は、電流値の極性が負の場合において、電流値が減少中であっても、予測値Ie(n)を算出してもよい。
【0056】
なお、制御部10は、
図8の例では、一定間隔の制御周期Tsで予測値Ie(n)を算出していたが、これに限定されない。
図8の例では、電流値が増加中の状況では、電源電流検出部6で次に検出される電流値の絶対値が電流閾値Ith以下になることはないと想定される。すなわち、制御部10は、電流値が増加中の状況では、頻繁に予測値Ie(n)を算出する必要はない。そのため、制御部10は、電流値の極性が正の場合、電流値が増加中に予測値Ie(n)を算出する頻度より、電流値が減少中に予測値Ie(n)を算出する頻度を高くする。同様に、制御部10は、電流値の極性が負の場合、電流値が減少中に予測値Ie(n)を算出する頻度より、電流値が増加中に予測値Ie(n)を算出する頻度を高くする。これにより、制御部10は、処理負荷を低減することができる。
【0057】
また、制御部10は、電流値Id(n)がゼロのときは予測値Ie(n)を算出しなくてもよい。予測値Ie(n)の絶対値が既に電流閾値Ith以内のため、制御部10においてスイッチング素子をオフする処理に影響しないためである。この場合も同様に、制御部10は、処理負荷を低減することができる。
【0058】
また、電力変換装置100で使用されるスイッチング素子としてMOSFETを使用する場合について説明したが、一例であり、これに限定されない。スイッチング処理の遅延によって逆流電流が発生する可能性のあるスイッチング素子であれば、MOSFET以外のスイッチング素子にも、本実施の形態の処理を適用することが可能である。
【0059】
また、本実施の形態では、電力変換装置100の制御部10が、電源電流検出部6で検出された電流値を用いて次に電源電流検出部6で検出される電流値を予測していたが、これに限定されない。制御部10は、同様の手法を用いて、電源電圧検出部5で検出された電圧値を用いて次に電源電圧検出部5で検出される電圧値を予測することも可能である。
【0060】
なお、本実施の形態では、制御部10は、電源電圧Vsの極性に応じてスイッチング素子321,322のオンオフを制御し、電源電流Isの極性に応じてスイッチング素子311,312のオンオフを制御していたが、これに限定されない。制御部10は、電源電圧Vsの極性に応じてスイッチング素子311,312のオンオフを制御し、電源電流Isの極性に応じてスイッチング素子321,322のオンオフを制御してもよい。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態1では、電力変換装置100において、制御部10は、算出した予測値Ie(n)に応じてスイッチング素子311,312のオンオフを制御していた。そのため、制御部10は、実際に電力変換装置100に流れる電流の電流値の絶対値が電流閾値Ithより大きい場合でも、早めにスイッチング素子311,312をオフしてしまうことがあった。実施の形態2では、制御部10は、電力変換装置100に流れる電流の電流値の絶対値が電流閾値Ithになる時間を推定し、推定した時間でスイッチング素子311,312をオフする。
【0062】
実施の形態2において、電力変換装置100の構成は、
図1に示す実施の形態1のときの構成と同様である。実施の形態2では、制御部10は、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ith以上になった場合、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ithと同一の場合を除いて、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ithになる時間を推定する。実施の形態1で説明した式(1)において、予測値Ie(n)を電流閾値Ithに置き換え、経過時間を示す最後の制御周期Tsを予測値Ie(n)が電流閾値Ithになる時間を示す推定時間Tithに置き換えると、次の式(3)のようになる。
【0063】
Ith=Id(n)+((Id(n)−Id(n−1))/Ts)×Tith …(3)
【0064】
式(3)から、推定時間Tithを求める式(4)を得ることができる。
【0065】
Tith=((Id(n)−Ith)/(Id(n−1)−Id(n)))×Ts …(4)
【0066】
制御部10は、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ith以下になった場合、n回目の制御タイミングの時点から推定時間Tithが経過した後、電流の極性に応じて制御しているスイッチング素子のうちオンされているスイッチング素子をオフする制御を行う。または、制御部10は、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ith以下になった場合、n回目の制御タイミングの時点から推定時間Tithまでに、電流の極性に応じて制御しているスイッチング素子のうちオンされているスイッチング素子をオフする制御を行う。
図11は、実施の形態2に係る電力変換装置100の制御部10がスイッチング素子をオンするタイミングを示す図である。制御部10は、
図11に示すタイミング、すなわちn回目の制御タイミングの時点から推定時間Tithが経過した後にスイッチング素子をオフにできるように、例えば、制御周期Tsを生成する制御信号を用いる。制御部10は、例えば、制御周期Tsをカウントするスイッチング用のタイマを用いて制御信号を生成する。制御部10は、例えば、検出された電流値からコンペアマッチ用電源電流を生成し、コンペアマッチ用電源電流と制御信号とを用いてコンペアマッチを行う。コンペアマッチ用電源電流は、電源電流Isが増加中は電流値が制御信号と交差しないレベルに設定された信号である。制御部10は、コンペアマッチ用電源電流と制御信号とが重なるタイミングで、スイッチング素子311をオフする。制御部10は、電流値が正の極性の場合、電流値が増加する間はコンペアマッチを行わないようにしてもよい。
【0067】
なお、制御部10が、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ith以下になった場合にTithを算出する例について説明したが、これに限定されない。制御部10は、予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ith以下になる前からTithを算出してもよい。
【0068】
また、制御部10は、算出した予測値Ie(n)がゼロになったか否かでスイッチング素子311,312のオンオフを制御している場合には、予測値Ie(n)がゼロになる推定時間T0を算出する。具体的には、式(4)において「Ith」を「0」に置き換えることで、次の式(5)を得ることができる。
【0069】
T0=(Id(n)/(Id(n−1)−Id(n)))×Ts …(5)
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置100において、制御部10は、算出した予測値Ie(n)の絶対値が電流閾値Ith以下になる場合、電力変換装置100に流れる電流の電流値の絶対値が電流閾値Ithになる時間を推定し、推定した時間でスイッチング素子をオフすることとした。これにより、電力変換装置100は、逆流電流の発生を抑制しつつ、実施の形態1と比較してさらに同期整流動作において効率を向上することができる。
【0071】
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態1,2で説明した電力変換装置100を備えるモータ駆動装置について説明する。
【0072】
図12は、実施の形態3に係るモータ駆動装置101の構成例を示す図である。モータ駆動装置101は、負荷であるモータ42を駆動する。モータ駆動装置101は、実施の形態1,2の電力変換装置100と、インバータ41と、モータ電流検出部44と、インバータ制御部43とを備える。インバータ41は、電力変換装置100から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ42へ出力することにより、モータ42を駆動する。なお、モータ駆動装置101の負荷がモータ42である場合の例を説明しているが、一例であり、インバータ41に接続される機器は、交流電力が入力される機器であればよく、モータ42以外の機器でもよい。
【0073】
インバータ41は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)をはじめとするスイッチング素子を、3相ブリッジ構成または2相ブリッジ構成とした回路である。インバータ41に用いられるスイッチング素子は、IGBTに限定されず、WBG半導体で構成されたスイッチング素子、IGCT(Integrated Gate Commutated Thyristor)、FET(Field Effect Transistor)またはMOSFETでもよい。
【0074】
モータ電流検出部44は、インバータ41とモータ42との間に流れる電流を検出する。インバータ制御部43は、モータ電流検出部44で検出された電流を用いて、モータ42が所望の回転数にて回転するように、インバータ41内のスイッチング素子を駆動するためのPWM信号を生成してインバータ41へ印加する。インバータ制御部43は、制御部10と同様に、プロセッサ及びメモリにより実現される。なおモータ駆動装置101のインバータ制御部43と、電力変換装置100の制御部10は、1つの回路で実現してもよい。
【0075】
電力変換装置100がモータ駆動装置101に用いられる場合、ブリッジ回路3の制御に必要な母線電圧Vdcが、モータ42の運転状態に応じて変化する。一般に、モータ42の回転数が高回転になる程、インバータ41の出力電圧を高くする必要がある。このインバータ41の出力電圧の上限は、インバータ41への入力電圧、すなわち電力変換装置100の出力である母線電圧Vdcにより制限される。インバータ41からの出力電圧が、母線電圧Vdcにより制限される上限を超えて飽和する領域を過変調領域と呼ぶ。
【0076】
このようなモータ駆動装置101において、モータ42が低回転の範囲、すなわち過変調領域に到達しない範囲では、母線電圧Vdcを昇圧させる必要はない。一方、モータ42が高回転となった場合には、母線電圧Vdcを昇圧させることで、過変調領域をより高回転側にすることができる。これにより、モータ42の運転範囲を高回転側に拡大できる。
【0077】
また、モータ42の運転範囲を拡大する必要がなければ、その分、モータ42が備える固定子への巻線の巻数を増やすことができる。巻線の巻数を増やすことにより、低回転の領域では、巻線の両端に発生するモータ電圧が高くなり、その分、巻線に流れる電流が低下するため、インバータ41内のスイッチング素子のスイッチング動作で生じる損失を低減できる。モータ42の運転範囲の拡大と、低回転の領域の損失改善との双方の効果を得る場合には、モータ42の巻線の巻数は適切な値に設定される。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置100を用いることによりアーム間の発熱の偏りが低減され、信頼性が高く高出力のモータ駆動装置101を実現できる。
【0079】
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態3で説明したモータ駆動装置101を備える空気調和機について説明する。
【0080】
図13は、実施の形態4に係る空気調和機700の構成例を示す図である。空気調和機700は、冷凍サイクル装置の一例であり、実施の形態3のモータ駆動装置101及びモータ42を備える。空気調和機700は、圧縮機構87及びモータ42を内蔵した圧縮機81と、四方弁82と、室外熱交換器83と、膨張弁84と、室内熱交換器85と、冷媒配管86とを備える。空気調和機700は、室外機が室内機から分離されたセパレート型空気調和機に限定されず、圧縮機81、室内熱交換器85及び室外熱交換器83が1つの筐体内に設けられた一体型空気調和機でもよい。モータ42は、モータ駆動装置101により駆動される。
【0081】
圧縮機81の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構87と、圧縮機構87を動作させるモータ42とが設けられる。圧縮機81、四方弁82、室外熱交換器83、膨張弁84、室内熱交換器85及び冷媒配管86に冷媒が循環することにより、冷凍サイクルが構成される。なお、空気調和機700が備える構成要素は、冷凍サイクルを備える冷蔵庫または冷凍庫といった機器にも適用可能である。
【0082】
また、実施の形態4では、圧縮機81の駆動源にモータ42が利用され、モータ駆動装置101によりモータ42を駆動する構成例を説明した。しかしながら、空気調和機700が備える不図示の室内機送風機及び室外機送風機を駆動する駆動源にモータ42を適用し、当該モータ42をモータ駆動装置101で駆動してもよい。また、室内機送風機、室外機送風機及び圧縮機81の駆動源にモータ42を適用し、当該モータ42をモータ駆動装置101で駆動してもよい。
【0083】
また、空気調和機700では、出力が定格出力の半分以下である中間条件、すなわち低出力条件での運転が年間を通じて支配的であるため、中間条件での年間の消費電力への寄与度が高くなる。また、空気調和機700では、モータ42の回転数が低く、モータ42の駆動に必要な母線電圧Vdcは低い傾向にある。このため、空気調和機700に用いられるスイッチング素子は、パッシブな状態で動作させることがシステム効率の面から有効である。従って、パッシブな状態から高周波スイッチング状態までの幅広い運転モードで損失の低減が可能な電力変換装置100は、空気調和機700にとって有用である。上述した通り、インタリーブ方式ではリアクタ2を小型化できるが、空気調和機700では、中間条件での運転が多いため、リアクタ2を小型化する必要がなく、電力変換装置100の構成及び動作の方が、高調波の抑制、電源力率の面で有効である。
【0084】
また、電力変換装置100は、スイッチング損失を抑制できるため、電力変換装置100の温度上昇が抑制され、不図示の室外機送風機のサイズを小型化しても、電力変換装置100に搭載される基板の冷却能力を確保できる。従って、電力変換装置100は、高効率であると共に4.0kW以上の高出力の空気調和機700に好適である。
【0085】
また、本実施の形態によれば、電力変換装置100を用いることによりアーム間の発熱の偏りが低減されるため、スイッチング素子の高周波駆動によるリアクタ2の小型化を実現でき、空気調和機700の重量の増加を抑制できる。また、本実施の形態によれば、スイッチング素子の高周波駆動により、スイッチング損失が低減され、エネルギー消費率が低く、高効率の空気調和機700を実現できる。
【0086】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。