特許第6987271号(P6987271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987271新規キノカルコン化合物、及びがん又は炎症を治療するためのその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987271
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】新規キノカルコン化合物、及びがん又は炎症を治療するためのその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20211213BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 5/38 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 31/08 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61K31/122
   A61K38/21
   A61P1/04
   A61P1/16
   A61P3/00
   A61P3/10
   A61P5/14
   A61P5/38
   A61P7/00
   A61P7/04
   A61P7/06
   A61P9/00
   A61P9/10
   A61P9/12
   A61P11/00
   A61P11/04
   A61P11/06
   A61P13/12
   A61P15/02
   A61P15/08
   A61P17/00
   A61P17/06
   A61P17/14
   A61P19/00
   A61P19/02
   A61P19/08
   A61P19/10
   A61P21/00
   A61P21/02
   A61P21/04
   A61P25/00
   A61P25/06
   A61P27/02
   A61P27/04
   A61P27/16
   A61P29/00
   A61P29/00 101
   A61P31/00
   A61P31/08
   A61P31/22
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P37/02
   A61P37/06
   A61P37/08
   A61P43/00 121
【請求項の数】16
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2020-552072(P2020-552072)
(86)(22)【出願日】2018年2月2日
(65)【公表番号】特表2021-505691(P2021-505691A)
(43)【公表日】2021年2月18日
(86)【国際出願番号】CN2018075163
(87)【国際公開番号】WO2019114125
(87)【国際公開日】20190620
【審査請求日】2020年6月17日
(31)【優先権主張番号】201711309136.0
(32)【優先日】2017年12月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520420632
【氏名又は名称】チョン セラピューティクス インコーポレイテッド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHON Therapeutics INC., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン ボー
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105085219(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 38/00−38/58
A61P 1/00− 1/18
A61P 3/00− 3/14
A61P 5/00− 5/50
A61P 7/00− 7/12
A61P 9/00− 9/14
A61P 11/00−11/16
A61P 13/00−13/12
A61P 15/00−15/18
A61P 17/00−17/18
A61P 19/00−19/10
A61P 21/00−21/06
A61P 25/00−25/36
A61P 27/02−27/16
A61P 29/00−29/02
A61P 31/00−31/22
A61P 35/00−35/04
A61P 37/00−37/08
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I:
【化1】
で表される構造で示されるキノカルコン化合物又はその塩を含む組成物であって、前記組成物は、薬学的に許容される1種以上の添加剤又は賦形剤を含む、キノカルコン化合物又はその塩を含む組成物
【請求項2】
インターフェロンをさらに含み、前記インターフェロンはIFN−β又はIFN−γである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記インターフェロンはヒトインターフェロンである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物の、医薬品の製造における使用。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物の、がん、炎症または炎症性疾患のための治療用医薬品の製造における使用。
【請求項6】
前記がんは、リンパ腫、白血病、造血組織腫瘍、骨髄腫、黒色腫、固形腫瘍から選択され、
前記炎症または炎症性疾患は、多発性筋炎、血管炎症候群、巨細胞動脈炎、高安動脈炎、再発性多発性軟骨炎、後天性血友病A、スティル病、成人スティル病、アミロイドA蛋白アミロイドーシス、リウマチ性多発筋痛、脊柱関節症、肺動脈高圧、移植片対宿主病、自己免疫性心筋炎、接触性アレルギー(接触皮膚炎)、胃食道逆流症、紅皮症、ベーチェット病、筋萎縮性側索硬化症、移植、視神経脊髄炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、悪性関節リウマチ、薬剤耐性型関節リウマチ、視神経脊髄炎、川崎病、多関節若年性特発性関節炎もしくは全身性若年性特発性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、キャッスルマン病(Castleman病)、喘息、アレルギー性喘息、アレルギー性脳脊髄炎、関節炎、慢性進行性関節炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸炎性関節炎、変形性関節症、リウマチ性疾患、脊柱関節症、強直性脊椎炎、レット症候群、過敏性反応(気道過敏性反応、皮膚過敏性反応を含む)、アレルギー、全身性エリテマトーデス、皮膚限局型エリテマトーデス、らい性結節性紅斑、シェーグレン症候群、炎症性筋疾患、多発軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、スティーヴンス・ジョンソン症候群、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、熱帯性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、内分泌性眼症、強皮症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、膣炎、直腸炎、インスリン依存性糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病(1型糖尿病)、自己免疫性血液疾患、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆性貧血、特発性血小板減少症(ITP)、自己免疫性ぶどう膜炎、前部ぶどう膜炎と後部ぶどう膜炎、乾性角結膜炎、春季角結膜炎、間質性肺線維症、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群あり又はなし)、特発性ネフローゼ症候群もしくは微小変化型ネフローゼ症候群、炎症性皮膚疾患、角膜炎、筋炎、骨に埋め込まれたインプラントの弛緩、代謝異常、アテローム性動脈硬化、脂質異常症、骨量減少、変形性関節症、骨粗鬆症、閉塞性呼吸器疾患もしくは炎症性呼吸器疾患による歯周病、気管支炎、塵肺症、肺気腫、急性・超急性炎症反応、急性感染、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、成人呼吸窮迫症候群、脳脊髄膜炎、肺炎、悪性疾患による消耗症候群、脳卒中、単純ヘルペス性角膜実質炎、ドライアイ、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ギラン・バレー症候群、スティッフパーソン症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、脳脊髄炎、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群(Goodpasture’s syndrome)、全身性壊死性血管炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、鵝口瘡性潰瘍、扁平苔癬、自己免疫性脱毛症、白斑症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、感音難聴、特発性両側性進行性感音難聴、多腺性自己免疫症候群1型もしくは2型、免疫性不妊症、免疫介在性不妊症、頭痛、片頭痛、疼痛、腫脹から選択される、自己免疫疾患又は炎症誘発性疾患を含む、請求項に記載の使用。
【請求項7】
下記式I:
【化2】
で表される構造で示されるキノカルコン化合物又はその塩の、医薬品の製造における活性医薬成分としての使用。
【請求項8】
下記式I:
【化3】
で表される構造で示されるキノカルコン化合物又はその塩の、がん、炎症または炎症性疾患のための治療用医薬品の製造における、活性医薬成分としての使用。
【請求項9】
前記医薬品の対象はヒトである、請求項に記載の使用。
【請求項10】
前記がんは、リンパ腫、白血病、造血組織腫瘍、骨髄腫、黒色腫、固形腫瘍から選択され、
前記炎症または炎症性疾患は、多発性筋炎、血管炎症候群、巨細胞動脈炎、高安動脈炎、再発性多発性軟骨炎、後天性血友病A、スティル病、成人スティル病、アミロイドA蛋白アミロイドーシス、リウマチ性多発筋痛、脊柱関節症、肺動脈高圧、移植片対宿主病、自己免疫性心筋炎、接触性アレルギー(接触皮膚炎)、胃食道逆流症、紅皮症、ベーチェット病、筋萎縮性側索硬化症、移植、視神経脊髄炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、悪性関節リウマチ、薬剤耐性型関節リウマチ、視神経脊髄炎、川崎病、多関節若年性特発性関節炎もしくは全身性若年性特発性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、キャッスルマン病(Castleman病)、喘息、アレルギー性喘息、アレルギー性脳脊髄炎、関節炎、慢性進行性関節炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸炎性関節炎、変形性関節症、リウマチ性疾患、脊柱関節症、強直性脊椎炎、レット症候群、過敏性反応(気道過敏性反応、皮膚過敏性反応を含む)、アレルギー、全身性エリテマトーデス、皮膚限局型エリテマトーデス、らい性結節性紅斑、シェーグレン症候群、炎症性筋疾患、多発軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、スティーヴンス・ジョンソン症候群、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、熱帯性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、内分泌性眼症、強皮症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、膣炎、直腸炎、インスリン依存性糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病(1型糖尿病)、自己免疫性血液疾患、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆性貧血、特発性血小板減少症(ITP)、自己免疫性ぶどう膜炎、前部ぶどう膜炎と後部ぶどう膜炎、乾性角結膜炎、春季角結膜炎、間質性肺線維症、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群あり又はなし)、特発性ネフローゼ症候群もしくは微小変化型ネフローゼ症候群、炎症性皮膚疾患、角膜炎、筋炎、骨に埋め込まれたインプラントの弛緩、代謝異常、アテローム性動脈硬化、脂質異常症、骨量減少、変形性関節症、骨粗鬆症、閉塞性呼吸器疾患もしくは炎症性呼吸器疾患による歯周病、気管支炎、塵肺症、肺気腫、急性・超急性炎症反応、急性感染、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、成人呼吸窮迫症候群、脳脊髄膜炎、肺炎、悪性疾患による消耗症候群、脳卒中、単純ヘルペス性角膜実質炎、ドライアイ、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ギラン・バレー症候群、スティッフパーソン症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、脳脊髄炎、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群(Goodpasture’s syndrome)、全身性壊死性血管炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、鵝口瘡性潰瘍、扁平苔癬、自己免疫性脱毛症、白斑症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、感音難聴、特発性両側性進行性感音難聴、多腺性自己免疫症候群1型もしくは2型、免疫性不妊症、免疫介在性不妊症、頭痛、片頭痛、疼痛、腫脹から選択される自己免疫疾患又は炎症誘発性疾患を含む、請求項またはに記載の使用。
【請求項11】
がん、炎症または炎症性疾患の治療を必要とするヒト以外の対象に適用するためのがん、炎症または炎症性疾患の治療方法であって、
前記対象に、治療有効量の請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、がん、炎症または炎症性疾患の治療方法。
【請求項12】
がん、炎症または炎症性疾患の治療を必要とするヒト以外の対象に適用するためのがん、炎症または炎症性疾患の治療方法であって、
下記式I:
【化4】
で表される構造で示される治療有効量のキノカルコン化合物又はその塩を、前記対象に投与することを含む、がん、炎症または炎症性疾患の治療方法。
【請求項13】
前記対象に治療有効量のIFN−β又はIFN−γを投与することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記IFN−β又はIFN−γは、ヒトインターフェロンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記がんは、リンパ腫、白血病、造血組織腫瘍、骨髄腫、黒色腫、固形腫瘍から選択され、
前記炎症または炎症性疾患は、多発性筋炎、血管炎症候群、巨細胞動脈炎、高安動脈炎、再発性多発性軟骨炎、後天性血友病A、スティル病、成人スティル病、アミロイドA蛋白アミロイドーシス、リウマチ性多発筋痛、脊柱関節症、肺動脈高圧、移植片対宿主病、自己免疫性心筋炎、接触性アレルギー(接触皮膚炎)、胃食道逆流症、紅皮症、ベーチェット病、筋萎縮性側索硬化症、移植、視神経脊髄炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、悪性関節リウマチ、薬剤耐性型関節リウマチ、視神経脊髄炎、川崎病、多関節若年性特発性関節炎もしくは全身性若年性特発性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、キャッスルマン病(Castleman病)、喘息、アレルギー性喘息、アレルギー性脳脊髄炎、関節炎、慢性進行性関節炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸炎性関節炎、変形性関節症、リウマチ性疾患、脊柱関節症、強直性脊椎炎、レット症候群、過敏性反応(気道過敏性反応、皮膚過敏性反応を含む)、アレルギー、全身性エリテマトーデス、皮膚限局型エリテマトーデス、らい性結節性紅斑、シェーグレン症候群、炎症性筋疾患、多発軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、スティーヴンス・ジョンソン症候群、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、熱帯性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、内分泌性眼症、強皮症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、膣炎、直腸炎、インスリン依存性糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病(1型糖尿病)、自己免疫性血液疾患、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆性貧血、特発性血小板減少症(ITP)、自己免疫性ぶどう膜炎、前部ぶどう膜炎と後部ぶどう膜炎、乾性角結膜炎、春季角結膜炎、間質性肺線維症、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群あり又はなし)、特発性ネフローゼ症候群もしくは微小変化型ネフローゼ症候群、炎症性皮膚疾患、角膜炎、筋炎、骨に埋め込まれたインプラントの弛緩、代謝異常、アテローム性動脈硬化、脂質異常症、骨量減少、変形性関節症、骨粗鬆症、閉塞性呼吸器疾患もしくは炎症性呼吸器疾患による歯周病、気管支炎、塵肺症、肺気腫、急性・超急性炎症反応、急性感染、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、成人呼吸窮迫症候群、脳脊髄膜炎、肺炎、悪性疾患による消耗症候群、脳卒中、単純ヘルペス性角膜実質炎、ドライアイ、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ギラン・バレー症候群、スティッフパーソン症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、脳脊髄炎、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群(Goodpasture’s syndrome)、全身性壊死性血管炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、鵝口瘡性潰瘍、扁平苔癬、自己免疫性脱毛症、白斑症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、感音難聴、特発性両側性進行性感音難聴、多腺性自己免疫症候群1型もしくは2型、免疫性不妊症、免疫介在性不妊症、頭痛、片頭痛、疼痛、腫脹から選択される自己免疫疾患又は炎症誘発性疾患を含む、請求項1214のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記キノカルコン化合物又はその塩と、前記IFN−β又はIFN−γとを同時に又は個別に、前記対象に投与する、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「関連出願の相互参照」
本願は、2017年12月11日に提出された出願番号が第201711309136.0号、発明の名称が「抗腫瘍薬を製造するためのキノカルコン化合物の用途」、発明者が黄波である、中国特許出願の優先権を主張する。当該特許出願に記載の文章、表、図を含む全ての内容を本願に援用する。
【0002】
本願の実施形態は、新規キノカルコン(quinochalcone)化合物、その組成物、及びがん及び/又は炎症を治療するためのその用途に関する。また、いくつかの実施形態は、がんを治療するためのキノカルコン化合物の用途、がん及び/又は炎症を治療するための用途として、キノカルコン化合物の単独使用又はインターフェロン(例えば、IFNβ又はIFNγ)との併用に関する。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はインターフェロンは他の抗がん治療又は他の抗炎症剤と併用される。
【背景技術】
【0003】
悪性腫瘍は、細胞の異常増殖により生じた疾患であり、腫瘍幹細胞は腫瘍の生存、増殖、転移、再発のいずれにも重要な役割を果たす。本質的にいうと、腫瘍幹細胞は自己更新と増殖によって腫瘍細胞集団の活力を維持し、その運動と転移の能力が腫瘍細胞に転移する能力を与える。近年、関連の研究によると、臨床治療を行う過程において、腫瘍幹細胞は長期間に休眠の状態にあり、様々な薬剤耐性分子の発現を上方制御することによって、腫瘍細胞を殺傷する外部の物理・化学的因子に非感受性となることが判明した。また、腫瘍休眠(tumor dormancy)は悪性腫瘍細胞の生物学的特徴の一つであり、腫瘍の繰り返し再発と遠隔侵襲転移が生じる主な要因の一つでもある。従来の手術治療、放射線療法、化学療法等の対策は治療にある程度の効果は得ているが、臨床上比較的深刻な副作用が伴い、しかも腫瘍休眠を誘導するリスクがあるため、効果的で且つ毒性と副作用が小さい治療方法を見つけて、患者の生活の質を高めることは、医学研究の重要な課題となっている。
【0004】
インビトロで細胞傷害性T細胞を採用してがん細胞を殺傷する時は、理論的に細胞傷害性T細胞の数量が多いほど、殺傷の効果が顕著である。しかしながら、本発明者は黒色腫B16−OVA細胞を例にとって研究する過程において、T細胞の数量を増やしてもB16−OVA細胞を徹底的に除去できないことを発見した。この事実もまた、臨床治療の過程においてがん細胞のうちに特異性T細胞が殺傷できない一部の休眠細胞が存在することを示唆している。臨床治療において休眠するがん細胞を徹底的に除去できないため、これらの休眠するがん細胞は腫瘍患者の体内にリスク要因として定着し、腫瘍の再発又は転移によって患者が死亡する可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本願は、休眠する腫瘍細胞を含むがん細胞を効果的に殺傷できる化合物、組成物及び方法を提供する。これらの化合物、組成物及び方法は炎症の治療にも適用する。
【0006】
いくつかの実施形態において、本願は、がんの治療を必要とする対象のためのがんの治療方法を提供する。当該方法は、前記対象に治療有効量のキノカルコン化合物、又はその塩を投与することを含み、前記キノカルコン化合物は式Iの構造を含む。
【0007】
【化1】
【0008】
いくつかの実施形態において、当該方法は、前記対象に治療有効量のインターフェロン、又はそのバリアントを投与することをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、本願は、キノカルコン化合物又はその塩を含む組成物を提供し、前記キノカルコン化合物は式Iの構造を含む。
【0010】
【化2】
【0011】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、インターフェロン、又はそのバリアントをさらに含む。いくつかの実施形態に係る組成物は、薬学的に許容される1種以上の添加剤又は賦形剤を含む医薬組成物である。
【0012】
いくつかの実施形態において、インターフェロンは、IFN−βもしくはIFN−γ、又は生理活性を有するそのバリアントである。インターフェロンは、ヒトインターフェロンであってもよい。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、がんは、リンパ腫、白血病、造血組織腫瘍、骨髄腫、黒色腫、固形腫瘍から選択される。対象におけるがんの治療方法は、前記対象に、がんワクチン又は化学療法剤等の抗がん治療を適用することをさらに含んでもよい。また、対象にキノカルコン化合物又はその塩、及びインターフェロン(例えば、IFN−β又はIFN−γ)を同時に投与してもよいし、又は個別に投与してもよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、本願は、炎症又は炎症性疾患の治療を必要とする対象のための炎症又は炎症性疾患の治療方法を提供する。当該方法は、前記対象に治療有効量のキノカルコン化合物、又はその塩を投与することを含み、前記キノカルコン化合物は式Iの構造を含む。
【0014】
【化3】
【0015】
炎症又は炎症性疾患の前記治療方法は、対象に抗炎症剤を投与することをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記炎症又は炎症性疾患は、多発性筋炎、血管炎症候群、巨細胞動脈炎、高安動脈炎、再発性多発性軟骨炎、後天性血友病A、スティル病、成人スティル病、アミロイドA蛋白アミロイドーシス、リウマチ性多発筋痛、脊柱関節症、肺動脈高圧、移植片対宿主病、自己免疫性心筋炎、接触性アレルギー(接触皮膚炎)、胃食道逆流症、紅皮症、ベーチェット病、筋萎縮性側索硬化症、移植、視神経脊髄炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、悪性関節リウマチ、薬剤耐性型関節リウマチ、視神経脊髄炎、川崎病、多関節若年性特発性関節炎もしくは全身性若年性特発性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、キャッスルマン病(Castleman病)、喘息、アレルギー性喘息、アレルギー性脳脊髄炎、関節炎、慢性進行性関節炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸炎性関節炎、変形性関節症、リウマチ性疾患、脊柱関節症、強直性脊椎炎、レット症候群、過敏性反応(気道過敏性反応、皮膚過敏性反応を含む)、アレルギー、全身性エリテマトーデス、皮膚限局型エリテマトーデス、らい性結節性紅斑、シェーグレン症候群、炎症性筋疾患、多発軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、スティーヴンス・ジョンソン症候群、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、熱帯性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、内分泌性眼症、強皮症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、膣炎、直腸炎、インスリン依存性糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病(1型糖尿病)、自己免疫性血液疾患、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆性貧血、特発性血小板減少症(ITP)、自己免疫性ぶどう膜炎、前部ぶどう膜炎と後部ぶどう膜炎、乾性角結膜炎、春季角結膜炎、間質性肺線維症、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群あり又はなし)、特発性ネフローゼ症候群もしくは微小変化型ネフローゼ症候群、炎症性皮膚疾患、角膜炎、筋炎、骨に埋め込まれたインプラントの弛緩、代謝異常、アテローム性動脈硬化、脂質異常症、骨量減少、変形性関節症、骨粗鬆症、閉塞性呼吸器疾患もしくは炎症性呼吸器疾患による歯周病、気管支炎、塵肺症、肺気腫、急性・超急性炎症反応、急性感染、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、成人呼吸窮迫症候群、脳脊髄膜炎、肺炎、悪性疾患による消耗症候群、脳卒中、単純ヘルペス性角膜実質炎、ドライアイ、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ギラン・バレー症候群、スティッフパーソン症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、脳脊髄炎、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群(Goodpasture’s syndrome)、全身性壊死性血管炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、鵝口瘡性潰瘍、扁平苔癬、自己免疫性脱毛症、白斑症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、感音難聴、特発性両側性進行性感音難聴、多腺性自己免疫症候群1型もしくは2型、免疫性不妊症、免疫介在性不妊症、頭痛、片頭痛、疼痛、腫脹から選択された自己免疫性疾患又は炎症誘発性疾患を含む。
【0016】
図面には、本願の非限定的な実施例が示されている。説明の便宜上、これらの図面は実際の比率で描画されているわけではなく、しかもいくつかの例においては、特定の実施例に対する理解が深まるように、関連の各要素は、拡張又は拡大して記載されてい
る場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、3D培養条件における固形腫瘍及び白血病細胞のクローンのサイズに対するキノカルコン化合物HB−48の影響に関する検出を示す。図1A〜1Gには、対象濃度のHB−48(x軸)による対象腫瘍クローンの48時間又は96時間処理後のクローンの相対的サイズ(y軸)が示されている。全ての細胞は3D培養条件において成長する。図1Aには、ヒト悪性黒色腫A375クローンのサイズが示されている。図1Bには、マウス黒色腫細胞B16クローンのサイズが示されている。図1Cには、悪性黒色腫臨床患者の切除組織から得たヒト悪性黒色腫細胞株MP−1のサイズが示されている。図1Dには、MCF−7ヒト乳がん細胞クローンのサイズが示されている。図1Eには、ヒト白血病細胞HL−60クローンのサイズが示されている。図1Fには、ヒト白血病細胞K562クローンのサイズが示されている。図1Gには、ヒト白血病細胞ALL−1のサイズが示されている。
図2図2は、3D培養条件における固形腫瘍及び白血病細胞のクローン数に対するキノカルコン化合物HB−48の影響に関する検出を示す。図2A〜2Gには、対象濃度のHB−48(x軸)による処理後の対象腫瘍細胞のクローン数(y軸)が示されている。全ての細胞は3D培養条件において成長する。図2Aには、ヒト悪性黒色腫細胞A375のクローン数が示されている。図2Bには、マウス黒色腫細胞B16のクローン数が示されている。図2Cには、ヒト黒色腫細胞MP−1のクローン数が示されている。図2Dには、ヒト乳がん細胞MCF−7のクローン数が示されている。図2Eには、処理後のヒト白血病細胞HL−60のクローン数が示されている。図2Fには、ヒト白血病細胞K562のクローン数が示されている。図2Gには、ヒト白血病細胞ALL−1のクローン数が示されている。
図3図3は、固形腫瘍の成長に対するキノカルコン化合物HB−48のインビボ阻害効果に関する評価を示す。図3は、C57マウスにおけるB16腫瘍体積(y軸)の経時的変化に対するHB−48処理の影響(日、x軸)を示す。B16腫瘍担持C57マウスは、3’,4’−ジメトキシフラボン(DMF、担体対照)又はHB−48で処理されている。結論としては、図1図2図3の結果は、HB−48の単独投与は固形腫瘍及び白血病の悪性成長を効果的に阻害できることを示している。
図4図4は、3D培養条件における固形腫瘍及び白血病細胞のクローンのサイズに対するHB−48、IFNβの影響に関する検出を示す。図4A〜4Gには、図中に示す対照、IFN−β、HB−48、IFN−βとHB−48、又はIFN−βとDMFによる処理後の対象腫瘍細胞クローンのサイズ(y軸)が示されている。全ての細胞は3D培養条件において成長する。図4Aには、A375細胞(ヒト黒色腫細胞株)クローンのサイズが示されている。図4Bには、B16細胞(マウス黒色腫細胞株)クローンのサイズが示されている。図4Cには、MP−1細胞クローンの相対的サイズが示されている。図4Dには、MCF−7細胞(ヒト乳がん細胞株)クローンの相対的サイズが示されている。図4Eには、HL−60細胞(ヒト白血病細胞株)クローンの相対的サイズが示されている。図4Fには、K562細胞(ヒト白血病細胞株)クローンの相対的サイズが示されている。図4Gには、ALL−1細胞クローンの相対的サイズが示されている。
図5図5は、3D培養システムにおける固形腫瘍及び白血病細胞のクローン数に対するHB−48、IFN−βの影響を示す。図5A〜5Gには、図中に示す対照、IFN−β、HB−48、IFN−βとHB−48、又はIFN−βとDMFによる処理後の対象腫瘍細胞のクローン数(y軸)が示されている。図5Aには、A375細胞(ヒト黒色腫細胞株)の処理が示されている。図5Bには、B16細胞(マウス黒色腫細胞株)の処理が示されている。図5Cには、MP−1細胞(黒色腫臨床患者の検体から分離、マルチチャネルであってもよい)の処理が示されている。図5Dには、MCF−7細胞(ヒト乳がん細胞株)の処理が示されている。図5Eには、HL−60細胞(ヒト白血病細胞株)の処理が示されている。図5Fには、K562細胞(ヒト白血病細胞株)の処理が示されている。図5Gには、ALL−1細胞の処理が示されている。
図6図6は、3D培養システム又はフラスコ培養システムにおける固形腫瘍、白血病細胞のアポトーシスに対するHB−48、IFN−βの影響を示す。図6には、x軸に示す(1)対照、(2)IFN−β、(3)IFN−βとDMF、(4)HB−48、又は(5)IFN−βとHB−48による処理後の対象がん細胞のうち、アポトーシス細胞の量(y軸、アポトーシス率(%))が示されている。細胞は3D培養システム(左側の下部に示す)又はフラスコ(右側の下部に示す)において成長する。図6Aには、B16細胞(マウス黒色腫細胞株)のアポトーシス率が示されている。図6Bには、A375細胞(ヒト黒色腫細胞株)のアポトーシス率が示されている。図6Cには、MP−1細胞のアポトーシス率が示されている。図6Dには、MCF−7細胞(ヒト乳がん細胞株)のアポトーシス率が示されている。図6Eには、K562細胞(ヒト白血病細胞株)のアポトーシス率が示されている。図6Fには、HL−60細胞(ヒト白血病細胞株)のアポトーシス率が示されている。図6Gには、ALL−1のアポトーシス率が示されている。
図7図7は、固形腫瘍担持マウスに対するIFN−β、HB−48の影響を示す。図7A図7E図7Gには、図中に示す対照、IFN−β、IFN−βとDMF、HB−48、又はIFN−βとHB−48によるB16腫瘍細胞(図7A)、A375腫瘍細胞(図7E)、又はMCF−7腫瘍細胞(図7G)移植NOD−SCIDマウスの処理後の腫瘍サイズ(y軸)が示されている。図7B、7Hには、図中に示す対照、IFN−β、IFN−βとDMF、HB−48、又はIFN−βとHB−48によるB16腫瘍細胞移植NOD−SCIDマウスの処理後における生存(y軸)対時間(Y軸)の生存図が示されている。図7Cには、図中に示す対照、IFN−β、IFN−βとDMF、HB−48、又はIFN−βとHB−48によるB16腫瘍細胞移植C57マウスの処理後の腫瘍サイズ(y軸)が示されている。図7Dには、図中に示す対照、IFN−β、IFN−βとDMF、HB−48、又はIFN−βとHB−48によるB16腫瘍細胞移植C57マウスの処理後における生存(y軸)対時間(Y軸)の生存図が示されている。図7Fには、図中に示す対照、IFN−β、又はIFN−βとHB−48によるNOD−SCIDマウスに移植されたA375腫瘍細胞の処理後の腫瘍重量(Y軸)が示されている。
図8図8は、マウスCD8+T細胞によるインビトロPD−1発現に対するHB−48の影響を示す。図8Aには、各ヒストグラムの上方に示すPBS、キヌレニン(Kyn)、KynとDMF(Kyn/DMF)、KynとHB−48(Kyn/HB−48)による処理後のCD8+T細胞に関して蛍光活性化セルソーティング(FACS)より得たヒストグラムが示されており、PD−1の発現を表現するためにCD8+T細胞染色が適用されている。図8Bには、図8Aの結果の棒グラフが示されている。図8Cには、x軸に示すPBS、DMF、又はHB−48の存在下におけるOT−1特異的CD8+T細胞との共培養後におけるOVA−B16細胞のアポトーシス(y軸)が示されている。
図9図9は、移入された抗原特異的CD8+T細胞の存在下におけるインビボ腫瘍成長に対するHB−48の影響を示す。図9には、特異的CD8+T細胞が養子移入されたC57マウスに対するHB−48の処理効果が示されており、前記C57マウスにB16−OVA細胞が担持されている。
図10図10は、ヒトCD8+T細胞によるインビトロPD−1発現に対するHB−48の影響を示す。図10Aに、ヒト静止(resting)CD8+T細胞によるPD−1の発現に対するHB−48、DMFの影響、図10Bに、Kynの存在下における活性化されたヒトCD8+T細胞によるPD−1の発現に対するHB−48、DMFの影響、図10Cに、Kynの存在下における活性化されたヒトCD8+T細胞によるKynトランスポーターのPAT4の発現に対するHB−48、DMFの影響がそれぞれ示されている。
図11図11図11A〜G)は、3D培養条件における固形腫瘍、白血病細胞の成長におけるクローンのサイズに対するHB−48とIFNβ又はIFNγの併用の影響を示す。図11Aには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト悪性黒色腫細胞A375の処理後のクローンのサイズが示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図11Bには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるマウス悪性黒色腫細胞B16の処理後のクローンのサイズが示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図11Cには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト悪性黒色腫細胞株MP−1の処理後のクローンのサイズが示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図11Dには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト乳がん細胞株MCF−7の処理後のクローンのサイズが示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図11Eには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト白血病細胞株HL−60の処理後のクローンのサイズが示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図11Fには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト白血病細胞株K562の処理後のクローンのサイズが示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図11Gには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト白血病細胞株ALL−1の処理後のクローンのサイズが示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。
図12図12図12A〜G)は、3D培養条件における固形腫瘍及び白血病細胞のクローン数に対するHB−48とIFNβ又はIFNγの併用の影響を示す。図12Aには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト悪性黒色腫細胞A375の処理後のクローン数が示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図12Bには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるマウス悪性黒色腫細胞B16の処理後のクローン数が示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図12Cには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト悪性黒色腫細胞MP−1の処理後のクローン数が示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図12Dには、3D培養条件下におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト乳がん細胞株MCF−7の処理後のクローン数が示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図12Eには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト白血病細胞株HL−60の処理後のクローン数が示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図12Fには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト白血病細胞株K562の処理後のクローン数が示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。図12Gには、3D培養条件におけるHB−48とIFNβ又はIFNγの併用によるヒト白血病細胞ALL−1の処理後のクローン数が示されており、DMFとIFNβ又はIFNγの併用を陽性対照とする。
図13図13は、マウスマクロファージに由来する炎症性サイトカインのインビトロ発現に対するHB−48の影響を示す。前記マウスマクロファージは、マウス骨髄より分離される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願は、がん又は炎症を治療する新規キノカルコン(quinone chalcone)化合物、及びその組成物を提供する。
【0019】
本願に係るキノカルコン化合物は、分化した腫瘍細胞、がん幹細胞を死滅させることができる。いくつかの実施形態において、本願に係るキノカルコン化合物は、単独で投与される又はIFNと併用されると高い抗腫瘍活性を示す。いくつかの実施形態において、ここでいうキノカルコン化合物の活性が高くなるとは、IFNとの併用、及び/又は別の抗がん治療との併用に対していう。したがって、当該新規キノカルコン化合物は、単独で投与してもよいし、又はIFNと併用してもよいし、又はがんを治療する別の抗がん治療と併用してもよい。本願に係る組成物は、いくつかの実施形態において、分化したがん細胞及び/又は休眠する腫瘍幹細胞等のがん細胞の成長又は活性を阻害、抑制、解消、又は停止することができる。いくつかの実施形態において、本願に係る組成物は、全身免疫応答を増強させることによってがん細胞を死滅させることができ、しかも安全性が高いとともに、毒性と副作用が少ないという利点がある。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、T細胞サブセット(例えば、CD8+T細胞、CD4+T細胞、制御性T細胞)、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、樹状細胞等の免疫細胞に対して調節することによって免疫応答を誘導しIFNの抗がん効果を増強させることができる。
【0020】
本願に係るキノカルコン化合物は、マクロファージからの炎症性サイトカインの生成、発現及び/又は放出を阻害できる。したがって、本願に係るキノカルコン化合物は、単独で投与してもよいし、又は炎症、炎症性疾患を治療するか及び/又は炎症を軽減する別の抗炎症剤と併用してもよい。さらに、本願は、炎症、炎症性疾患を治療するか及び/又は炎症を軽減するための、キノカルコン化合物を含む組成物の用途を提供する。
【0021】
「キノカルコン化合物」
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、式Iの構造を含むか又は式Iの構造により構成される。
【0022】
【化4】
【0023】
したがって、いくつかの実施形態において、本願に係る式Iの構造のキノカルコン化合物は、HB−48又は2−[1−ヒドロキシ−3−(4−メトキシメトキシフェニル)−2−プロピリデン]−5−メトキシメトキシ−6,6−ジイソペンテニルシクロヘキサ−4−エン−1,3−ジオンと称する。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、2−[1−ヒドロキシ−3−(4−メトキシメトキシフェニル)−2−プロピリデン]−5−メトキシメトキシ−6,6−ジイソペンテニルシクロヘキサ−4−エン−1,3−ジオンを含むか、又は2−[1−ヒドロキシ−3−(4−メトキシメトキシフェニル)−2−プロピリデン]−5−メトキシメトキシ−6,6−ジイソペンテニルシクロヘキサ−4−エン−1,3−ジオンより構成される。
【0024】
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞のアポトーシス、壊死、オートファジー、又は死亡が誘導されるように、単独で投与されるか、又はIFNと併用される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移が阻害、抑制、解消、又は停止されるように、単独で投与されるか、又はIFNと併用される。適切な測定方法であれば、いずれもキノカルコン化合物におけるがん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞のアポトーシス、壊死、オートファジー、又は死亡を誘導する能力を決定するために利用できる。適切な測定方法であれば、いずれもキノカルコン化合物とIFNの併用におけるがん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞のアポトーシス、壊死、オートファジー、又は死亡を誘導する能力を決定するために利用できる。適切な測定方法であれば、いずれもキノカルコン化合物におけるがん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移を阻害、抑制、解消、又は停止する能力を決定するために利用できる。適切な測定方法であれば、いずれもキノカルコン化合物とIFNの併用におけるがん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移を阻害、抑制、解消、又は停止する能力を決定するために利用できる。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、抗炎症活性を有する。
【0025】
適切な方法であれば、いずれもキノカルコン化合物を製造、又は合成するために利用できる。低分子化合物、例えば、本願に係るキノカルコン化合物を製造、合成、修飾する方法に関しては、「Michael B.Smith:Organic Synthesis 2nd Edition,McGraw−Hill Education(2002)」、「Peter G.M.Wuts:Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis 5th Edition,John Wiley&Sons(2014)」、及び「Daniel Lednicer:The Organic Chemistry of Drug Synthesis,vol.7,John Wiley&Sons(2008)」が参照される。キノカルコン化合物の合成方法は、中国特許出願第CN210410220017.8号にも記載されており、その内容を本願に援用する。
【0026】
いくつかの実施形態において、式Iのキノカルコン化合物は以下のステップにより合成される。(1)2−アセチル−3,5−ジヒドロキシ−6,6−ジイソペンテニルシクロヘキサ−2,4−ジエンケトンを合成する。(2)2−アセチル−3−ヒドロキシ−5−メトキシメチル−6,6−ジイソペンテニルシクロヘキサ−2,4−ジエンケトンを合成する。(3)イソペンテニル基、メトキシメチル基(MOMO)によりキノカルコンを合成する。(4)メトキシメチル基(MOMO)を除去することによって、イソペンテニル基によりキノカルコンを合成する。
【0027】
次に、HB−48の合成スキームの一例を示す。
スキーム1:HB−48の合成
【0028】
【化5】
試薬と条件:(a)ブロモベンゼン、KOH、HO。(b)MOMCl、KCO、アセトン、室温(rt)、5時間。(c)4−MOMベンズアルデヒド、50%KOH、EtOH。
【0029】
上記の例を参照して合成する場合、最初にシクロヘキサノンを合成し、次にメトキシメトキシ化(methoxymethoxylation)、クライゼン−シュミット縮合(Claisen−Schmidt condensation)を行い、最後に目的生成物(HB−48)を得る。当該合成は、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(1)より開始し、2モル当量のプレニルブロミドを用いて水酸化カリウム水溶液に2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(1)をイソプレン化して2−アセチル−3,5−ジヒドロキシ−6,6−ジイソペンテニルシクロヘキシル−2,4−ジエンケトン(2)を生成する。次に、クロロメチルメチルエーテルを用いて前記(2)をメトキシメトキシ化して(3)を得る。最終に、前記(3)と4−メトキシメトキシベンズアルデヒドを水酸化カリウム水溶液に混合して、HB−48を生成する。
【0030】
「IFN」
いくつかの実施形態において、本願に係る組成物はインターフェロン(IFN)を含む。IFNは、任意の天然に存在するIFN又は合成IFN(例えば、組換えIFN)であってもよいし、又は生理活性を有するそのバリアントであってもよい。いくつかの実施形態において、インターフェロンはI型IFN、II型IFN、又はIII型インターフェロンである。いくつかの実施形態において、インターフェロンはIFN−α、IFN−β、IFN−ε、IFN−κ、又はIFN−ωである。いくつかの実施形態において、IFNはIFN−βである。いくつかの実施形態において、IFNはIFN−γである。いくつかの実施形態において、本願に係る組成物は、IFN、キノカルコン化合物を含む。IFN−β、IFN−γはインターフェロンシグナルタンパク質ファミリーに属するサイトカインであり、常に病原体に対する自然免疫応答の一環として放出される。IFN−γはII型インターフェロンにおける唯一のメンバーである。IFN−βはI型インターフェロンに属し、ウイルス感染に対するその防御は特に重要である。また、I型インターフェロンは、常に細胞の分化及び抗腫瘍防御に関与する。分泌された後、一般的に、当該分泌が病原体に作用すると、I型インターフェロンは相同受容体複合体と結合して遺伝子、例えば、炎症性サイトカイン及びケモカインをコードする遺伝子の転写を誘導できる。I型インターフェロン分泌の過剰な活性化は、自己免疫性疾患にも関連する。IFN−β欠損マウスには、成熟B細胞欠損、ウイルスへの易感染性の増加を含むいくつかの表現型が多い。IFN−βに関連する疾患は、再発寛解型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症を含む。
【0031】
IFN−βは、任意の適切な哺乳類IFN−βであってもよい。いくつかの実施形態において、IFN−βはヒトIFN−β、又は生理活性を有するそのバリアントである。IFN−βの非限定的な例は、ヒトIFN−β(UniProtKB登録番号P01574)、マウスIFN−β(UniProtKB登録番号P01575)、ラットIFN−β(UniProtKB登録番号P70499)、ネコIFN−β(UniProtKB登録番号Q9N2J0)、ウマIFN−β(UniProtKB登録番号P05012)、ニワトリIFN−β(UniProtKB登録番号Q90873)、ウシIFN−β(UniProtKB登録番号P01578)等、その天然のバリアントと人工のバリアント、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、IFN−βのアミノ酸配列又はIFN−βバリアントのアミノ酸配列は、本願に記載の天然の又は天然に存在する哺乳類由来のIFN−βに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、IFN−βのアミノ酸配列又はIFN−βバリアントのアミノ酸配列は、ヒトIFN−β(UniProtKB登録番号P01574)、マウスIFN−β(UniProtKB登録番号P01575)、ラットIFN−β(UniProtKB登録番号P70499)、ネコIFN−β(UniProtKB登録番号Q9N2J0)、ウマIFN−β(UniProtKB登録番号P05012)、ニワトリIFN−β(UniProtKB登録番号Q90873)、又はウシIFN−β(UniProtKB登録番号P01578)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0032】
IFN−γは、任意の適切な哺乳類IFN−γであってもよい。いくつかの実施形態において、IFN−γは、ヒトIFN−γ、又は生理活性を有するそのバリアントである。IFN−γの非限定的な例は、ヒトIFN−γ(UniProtKB登録番号P01579)、マウスIFN−γ(UniProtKB登録番号P01580)、ラットIFN−γ(UniProtKB登録番号P01581)等、その天然のバリアントと人工のバリアント、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、IFN−γのアミノ酸配列、又はIFN−γバリアントのアミノ酸配列は、本願に記載の天然の又は天然に存在する哺乳類由来のIFN−γに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、IFN−γのアミノ酸配列、又はIFN−γのバリアントのアミノ酸配列は、ヒトIFN−γ(UniProtKB登録番号P01579)、マウスIFN−γ(UniProtKB登録番号P01580)、ラットIFN−γ(UniProtKB登録番号P01581)に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、IFNのバリアントは生理活性を有するIFNバリアントである。生理活性を有するIFNのバリアントはIFNもしくはその一部、及び/又はそのバリアントであり、天然に存在するIFN又は組換えIFN(例えば、ヒトIFN−β又はヒトIFN−γ等のヒトIFN)の生理活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%を保持している。IFNの生理活性は当業者が通常の生物学的測定方法を利用して評価できる。生理活性を有するIFNのバリアントはアミノ酸置換、アミノ酸欠失又はアミノ酸挿入を含んでもよく、前記IFNバリアントは、その天然の親IFN、天然に存在する親IFN、又は修飾されていない親IFNの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の生理活性を保持している。生理活性を有するIFNのバリアントは別のタンパク質の一部を含んでもよい。いくつかの実施形態において、生理活性を有するIFNのバリアントはIFNの融合タンパク質、又は生理活性を有するその部分、及び別のタンパク質もしくはペプチドである。例えば、IFN、又は生理活性を有するその部分は、組換え技術を利用して抗体、抗体の一部(例えば、抗体のFc領域)、又は別のサイトカインの一部に融合できる。
【0034】
いくつかの実施形態において、IFN、又は生理活性を有するそのバリアントは、修飾されたアミノ酸、アミノ酸類似体又はアミノ酸バリアントを1つ以上含む。いくつかの実施形態において、修飾されたアミノ酸は、化学的に改変されたもしくは誘導された側鎖、N−末端もしくはC−末端を有するアミノ酸を1つ以上含む。修飾されたアミノ酸の非限定的な例は、アセチル化、アシル化、リン酸化(phosphorylation)、グリコシル化、ミリストイル化、アミド化、ヒドロキシル化(例えば、アスパラギン酸とアスパラギンのヒドロキシル化)、ホスホパンテテイン連結(phosphopantethane attachment)、メチル化、メチルチオール化(methylthiolation)、イソプレン化、タンパク質イントロンの添加、ADPリボシル化、臭素化、シトルリン化、脱アミノ化、ジヒドロキシル化(dihdroxylation)、ホルミル化、ゲラニル−ゲラニル化(geranyl−geranylation)、グリコシル化又はパルミトイル化を経たものを含む。アミノ酸類似体の非限定的な例は、D−アミノ酸、βアミノ酸、α−アミノ−n−酪酸、n−バリン、デヒドロアラニン、n−ロイシン、アロイソロイシン、t−ロイシン、α−アミノ−n−ヘプタン酸、2−ピペコリン酸、α,β−ジアミノプロピオン酸、α,γ−ジアミノ酪酸、オルニチン、アロトレオニン、ホモシステイン、ホモセリン、β−アラニン、β−アミノ−n−酪酸、β−アミノイソ酪酸、γ−アミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、イソバリン、サルコシン、N−エチルグリシン、N−プロピルグリシン、N−イソプロピルグリシン、N−メチルアラニン、N−エチルアラニン、N−メチルβ−アラニン、N−エチルβ−アラニン、イソセリン、及びα−ヒドロキシ−γアミノ酪酸を含む。IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、D−アミノ酸がL−アミノ酸に置換されたものを1つ以上含んでもよい。いくつかの実施形態において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、アミノ酸類似体及び/又は非天然アミノ酸を1つ以上含む。いくつかの実施形態において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、バルクアミノ酸(bulk amino acids)、又はバルク芳香族アミノ酸を1つ以上含み、その非限定的な例はDip(3,3−ジフェニルアラニン)、Bip(ビフェニルアラニン)、Ath(9−アントラセニルアラニン(anthracenyl alanine))、Nal(1−ナフチルアラニン)、Dap(2,3−ジアミノプロピオン酸)、Dab(2,4−ジアミノ酪酸)を含む。いくつかの実施形態において、1種以上の修飾されたアミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸バリアント、D−アミノ酸、バルクアミノ酸又は合成されたアミノ酸がIFN又は生理活性を有するそのバリアントに導入されており、これによって、インビボにおける前記IFN又はそのバリアントの安定性が向上する又は半減期が延長される。
【0035】
いくつかの実施形態において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、適切な生物種より誘導、生成、獲得、分離、及び/又は精製されたものである。いくつかの実施例において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、適切な哺乳類より誘導、生成、獲得、分離、及び/又は精製されたものである。前記哺乳類の非限定的な例は、例えば、霊長類、ヒト、ウサギ、ヤギ、ウマ、ウシ、ラット、マウス、ラマを含む。いくつかの実施形態において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは組換えタンパク質である。したがって、いくつかの実施形態において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは適切な発現系より発現、分離、及び/又は精製されたものである。前記発現系の非限定的な例は、適切な細菌、ファージ、昆虫、ウイルス、植物、鳥類、魚類又は哺乳類による発現系を含む。例えば、IFN又は生理活性を有するそのバリアントをコードする核酸は、適切な哺乳類の細胞株に導入されてもよく、それによって発現及び分泌されたIFN又は生理活性を有するそのバリアントが細胞培地に入る。いくつかの実施形態において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、鳥類(例えば、鶏卵又は鳥卵)より誘導、生成、獲得、分離、及び/又は精製されたものである。いくつかの実施例において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、植物(例えば、遺伝子工学的に改造された植物)より誘導、生成、獲得、分離、及び/又は精製されたものである。いくつかの実施例において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、原核又は真核細胞(例えば、遺伝子工学的に改造された細菌)より生成、獲得、分離、又は精製されたものである。いくつかの実施例において、IFN又は生理活性を有するそのバリアントは、適切なウイルス(例えば、遺伝子工学的に改造されたウイルス)より生成、獲得、分離、又は精製されたものである。
【0036】
IFN又は生理活性を有するそのバリアントをコードする核酸、又はその一部は、組換え発現用にクローニング、サブクローニング、再配列されるか又は適切なクローン方法によって修飾されて、当業者に周知の方法によって適切な発現系を利用して発現できる(例えば、「Maniatis et al.:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1982)」、「Sambrook et al.:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)」、「Sambrooket al.:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001)」、「Ausubel et al.:Current Protocols in Molecular Biology,追加1〜120と年度更新含む,John Wiley&Sons(1987)」、「Methods in molecular biology,edited by B.K.C.Lo,Springer Science&Business Media(2004)」が参照される)。
【0037】
用語「パーセント的同一」又は「パーセント同一性」とは、2つのアミノ酸配列における配列の同一性を指す。同一性は各配列の位置を比較することで決定でき、当該位置は比較のためにアライメントされる。比較対象の配列における等価位置が同じアミノ酸によって占有されている場合は、分子は当該位置において同一である。等価部位が同じ又は類似するアミノ酸残基(例えば、空間的及び/又は電子的特性的の類似するもの)によって占有されている場合は、分子は当該位置において相同(類似)であると称してもよい。相同性、類似性又は同一性を有する発現のパーセントとは、比較対象配列の共有位置における同じ又は類似するアミノ酸の数量に関する関数を指す。相同性、類似性又は同一性を有する発現のパーセントとは、比較対象配列の共有位置における同じ又は類似するアミノ酸の数量に関する関数である。FASTA、BLAST、又はENTREZを含む様々な照合アルゴリズム及び/又はプログラムを利用できる。FASTA、BLASTは、例えば、GCG配列分析ソフトウェアパッケージ(ウィスコンシン州、マディソン、ウィスコンシン大学)の一部に、デフォルトの設定として組み込み、利用することができる。ENTREZは、アメリカ国立生物工学情報センター、アメリカ国立医学図書館、米国、メリーランド州、ベセスダのアメリカ国立衛生研究所より入手することができる。一つの実施形態において、2つの配列のパーセント同一性は、GCGプログラムを利用してギャップ重み1で決定できる。例えば、2つの配列において単一のアミノ酸又はヌクレオチドのミスマッチとなるように、各アミノ酸ギャップが加重される。
【0038】
他の照合技術については、「Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysi,edited by Doolittle,Academic Press,Inc.,a department of Harcourt Brace&Co.,San Diego,California,USA(1996)」が参照されたい。いくつかの実施例において、配列にギャップを許容する照合プログラムを、配列の照合に利用する。スミス−ウォーターマンは、配列の照合にギャップを許容する1種のアルゴリズムである。詳しくは、「Meth.Mol.Biol.70:173−187(1997)」を参照されたい。他に、Needleman、Wunschの照合方法を用いるGAPプログラムも配列の照合に利用できる。
【0039】
「認識可能なマーカー」
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物、IFN、又はそのバリアントは、1つ以上の認識可能なマーカーに結合される。したがって、いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は認識可能なマーカーを1つ以上含む。適切な認識可能なマーカーであれば、いずれもキノカルコン化合物に結合できる。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、キノカルコン化合物のインビボ薬物動態特性及び/又は生物学的利用能を決定するように認識可能なマーカーに結合される。いくつかの実施形態において、認識可能なマーカーはキノカルコン化合物と直接的又は間接的に関連付けられてもよい(例えば、キノカルコン化合物に連結される)。例えば、認識可能なマーカーはキノカルコン化合物に共有結合で結合されてもよいし、又は非共有結合によって結合されてもよい。いくつかの実施例において、認識可能なマーカーはキノカルコン化合物と可逆的に関連付けられる。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物に可逆的に関連付けられた認識可能なマーカーは、適切な方法(例えば、塩濃度の増加、変性、洗浄、適切な溶媒の添加及び/又は加熱)によりキノカルコン化合物から除去できる。
【0040】
いくつかの実施形態において、認識可能なマーカーは検出可能な標識であり、その非限定的な例は、放射性標識(例えば、同位体)、金属標識、蛍光標識、発色団、化学発光標識、電気化学発光標識(例えば、Origen(商標))、燐光標識、消光剤(例えば、蛍光団消光剤)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対(例えば、ドナーとアクセプター)、色素、タンパク質(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ等の酵素)、抗体もしくはその一部(例えば、Fc領域)、抗原もしくはその一部(例えば、適切な抗体を利用して検出するために適するもの)、リンカー、結合対のメンバー(例えば、ビオチン−アビジン、抗体−抗原等)、酵素基質、低分子(例えば、ビオチン、アビジン)、質量タグ、量子ドット、ナノ粒子等、又はこれらの組み合わせを含む。適切な蛍光団であれば、いずれも検出可能な標識として利用できる。各種の適切な技術によって、検出可能な標識を検出及び/又は定量できるため、キノカルコン化合物の追跡、検出及び定量が可能である。したがって、いくつかの実施形態において、本願に係る組成物は、認識可能なマーカーを含有するキノカルコン化合物を含む。
【0041】
「対象」
用語「対象」は動物を指し、一般に哺乳類を指す。いくつかの実施形態において、対象は哺乳類である。適切な哺乳類であれば、いずれも本願に記載の方法で治療が可能である。哺乳類の非限定的な例は、ヒト、ヒト以外の霊長類(例えば、サル、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、マカクザル等)、ペット(例えば、イヌ、ネコ)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、及び実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)を含む。いくつかの実施形態において、対象は霊長類である。いくつかの実施形態において、対象は、ヒト以外の霊長類である。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。哺乳類は任意の年齢、又は任意の成長段階(例えば、成体、成長期、小児、乳児、又は胎児の哺乳類)であってもよい。哺乳類は雄性であってもよいし雌性であってもよい。いくつかの実施形態において、哺乳類は、がん又は炎症を研究するための動物モデル等の動物疾患モデルであってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、対象は、がんに罹患している又はがんの罹患が疑われる者である。いくつかの実施形態において、対象にはがんに発展する可能性がある。がんに発展する可能性がある対象は、医療従事者がハイリスク集団より特定した対象であってもよい。がんに罹患する可能性のある対象の非限定的な例は、長期喫煙者、標準重量超過者、60歳以上のヒト対象、がん家族歴のある対象、特定のがんに関連する特定の遺伝子変異を有する対象、特定のがんの進行に関連する特定のウイルスに感染している又は感染したことがある対象、既知の発がん物質に曝露された対象、過剰な放射線(例えば、紫外線放射、α、β、又はγ射線)に曝露された対象、慢性炎症のある対象等、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、対象又は哺乳類にがんが転移する「リスク」がある。一部のがんは転移性がある又は転移する可能性が高いことが知られており、これはがんの種類、ステージ、組織又は由来、及び/又は対象の年齢、性別又は健康状態にも関係する。転移性がある疾患は一般に、標準的な治療と看護を受けた患者に再発する時に生じる。かかるリスクのある対象は、医療従事者(例えば、医師、又は腫瘍学者)が容易に特定できる。
【0043】
いくつかの実施形態において、対象は、炎症又は炎症性疾患に罹患している又は罹患の可能性が疑われる対象である。
【0044】
「治療方法」
本願に係るキノカルコン化合物を炎症及び/又はがんを治療するために使用する。いくつかの実施形態において、本願に係る方法は炎症又は炎症性疾患に罹患している又は罹患が疑われる対象の治療方法を含む。いくつかの実施形態において、炎症の治療は、炎症(例えば、対象における炎症)を阻止、阻害、改善、解消、又は抑制する方法を含む。いくつかの実施形態において、炎症の治療方法は、炎症に関連する1種以上の症状を阻害し、病状を軽減し、発症を遅延し、抑制し、改善し、又は解消する方法を含む。いくつかの実施形態において、炎症の治療方法は、本願に係る炎症の治療を受けていない対象の寿命又は生活の質よりも、寿命を延長もしくは維持し、又は炎症のある対象の生活の質を改善することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、対象における炎症の治療方法は、前記対象に治療有効量のキノカルコン化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態において、対象における炎症の治療方法は、炎症の治療が適用される対象に治療有効量のキノカルコン化合物を投与することを含む。これに対応して、いくつかの実施形態において、対象における炎症の治療方法は、(a)炎症又は炎症性疾患に罹患している又は罹患が疑われる対象を特定することと、(b)前記対象に治療有効量のキノカルコン化合物を投与することとを含む。いくつかの実施形態において、対象における炎症の治療方法は、(a)炎症又は炎症性疾患に罹患している又は罹患が疑われる対象を特定することと、(b)前記対象に治療有効量のキノカルコン化合物を単独で投与する又は抗炎症剤と併用することとを含み、抗炎症剤の非限定的な例は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、鎮痛剤(例えば、非麻酔性鎮痛剤又はオピオイド麻酔剤)、コルチコステロイド、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs、例えばメトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、スルファサラジン、JAK阻害剤等)、生物学的製剤を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、本願に係る方法は、がんに罹患している又はがんの罹患が疑われる対象におけるがんの治療方法を含む。いくつかの実施形態において、がんの治療方法は、がん(例えば、腫瘍等がん細胞)の成長、転移又は活性を阻止、阻害、改善、解消、又は抑制することを含む。いくつかの実施形態において、がんの治療方法は、対象におけるがんの成長又は活性を阻害、阻止、改善、低減又は抑制することを含む。いくつかの実施形態において、がんの治療方法は、対象におけるがんの転移を阻害、阻止、改善、低減又は抑制することを含む。いくつかの実施形態において、対象におけるがんの治療方法は、対象におけるがんの成長、活性、又は転移を阻害、阻止、改善、低減又は抑制することを試み、成功に合理的な期待を抱くことを含む。いくつかの実施形態において、がんの治療方法は、対象における1種以上のがん細胞の壊死、死亡又はアポトーシスを誘導することを含む。いくつかの実施形態において、がんの治療方法は、がんに関連する1種以上の症状に対して、阻害し、病状を軽減し、発症を遅延し、抑制し、改善し、又は解消することを含む。いくつかの実施形態において、がんの治療方法は、がんの治療を受けていない対象の命の長さ又は生活の質よりも、命を延長もしくは維持し、又はがんに罹患している対象の生活の質を改善することを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、対象の治療方法は、治療が適用される対象に治療有効量のキノカルコン化合物及び/又は治療有効量のIFN、又は生理活性を有するそのバリアントを投与することを含む。場合によって、対象におけるがんは抗がん治療に耐性が生じる可能性がある。抗がん治療の非限定的な例は、IFN−βによる治療、IFN−γによる治療、がんの外科的解剖、化学療法剤治療、免疫療法治療、がんワクチンによる治療、放射線療法等、及びこれらの組み合わせを含む。したがって、いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物を投与することにより、IFN又は別の抗がん治療の活性を補足及び/又は増強させることができる。したがって、いくつかの実施形態において、対象の治療方法は、(a)抗がん治療を受ける又は受けたことがある対象を特定することと、(b)前記対象に治療有効量のキノカルコン化合物を単独で投与する又は治療有効量のIFN、もしくは生理活性を有するそのバリアントと併用することとを含む。いくつかの実施形態において、対象の治療方法は、(a)がんに罹患している又は罹患が疑われ、且つ、抗がん治療に耐性が生じている又は効果が芳しくない対象を特定することと、(b)対象に治療有効量のキノカルコン化合物を単独で投与する又は治療有効量のIFNもしくは生理活性を有するそのバリアントと併用することとを含む。いくつかの実施形態において、対象の治療方法は、前記対象に治療有効量のキノカルコン化合物、又は本願に係る組成物と治療有効量の1種以上の他の活性医薬成分(API)を投与することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物又はキノカルコン化合物を含むものは、それを唯一の活性医薬成分(API)とする組成物として、がんに罹患している又はがんの罹患が疑われる対象に投与される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物とIFN又は生理活性を有するそのバリアントは、がんに罹患している又はがんの罹患が疑われる対象に投与される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物とIFN又は生理活性を有するそのバリアントは、実質的に同時に対象に投与される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物とIFN又は生理活性を有するそのバリアントは、個別に対象に投与される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物とIFN又は生理活性を有するそのバリアントは、5分間以内、10分間以内、15分間以内、30分間以内、45分間以内、60分間以内、又は120分間以内にそれぞれ投与される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物とIFN又は生理活性を有するそのバリアントは、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間、12時間以内又は24時間以内にそれぞれ投与される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物とIFN又は生理活性を有するそのバリアントは、1〜3日以内、又は1日、2日もしくは3日以内にそれぞれ投与される。
【0049】
いくつかの実施形態において、対象におけるがんの治療方法は、がんの治療が適用される対象に治療有効量のキノカルコン化合物及び/又は治療有効量のIFNもしくは生理活性を有するそのバリアントを投与し、且つ、別の抗がん治療を行うことを含む。前記抗がん治療の非限定的な例は、T細胞活性化剤、アジュバント、がんワクチン、放射線療法、免疫療法(例えば、抗HER2又は抗CD20)、化学療法等、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、T細胞活性化剤は、CD3、OX40、GITR、CD137(41BB)、CD27、HVEM、LAG−3、TIM3、VISTA又はBTLAに結合する抗体である。
【0050】
適切な化学療法剤であれば、いずれも本願に係る方法に適用する。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、アルキル化剤、アントラサイクリン、細胞骨格破壊剤、エポチロン(例えば、エポチロン)、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、ボリノスタット、ロミデプシン)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、tafluposidean)、キナーゼ阻害剤、ペプチド系抗生物質(例えば、ブレオマイシン、アクチノマイシン)、白金系薬物(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン)、標的DNA修復酵素であるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1系化合物、PARP阻害薬、レチノイド(例えば、レチノイン酸、アリトレチノイン、ベキサロテン)、ビンカアルカロイドと関連化合物(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、代謝拮抗剤、植物エキス、植物由来アルカロイド、ニトロソ尿素、ホルモン、ヌクレオシド又はヌクレオチド類似体、及びこれらの組み合わせから選択された製剤を含み、又は当該製剤より構成される。
【0051】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、アルキル化抗腫瘍剤(例えば、アルキル化抗腫瘍剤)を含む。アルキル化抗腫瘍剤は1種の化学療法剤であり、部分的にアルキル基(例えば、C2n+1)をDNAに連結させるように作用し、これはアルキル化プロセスと称する。一部のアルキル化抗腫瘍剤はプロドラッグとして投与され、インビボにおいて活性アルキル化剤に変換される。アルキル化抗腫瘍剤は一般にDNAのグアニンをアルキル化する。アルキル化抗腫瘍剤は、通常の条件下で健常細胞よりも増殖速度が早く、修正される誤差が少ない増殖細胞(例えば、がん細胞)に対して効果的である。アルキル化抗腫瘍剤の非限定的な例は、ヘキサメチルメラミン(HEXALEN(登録商標))、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、クロラムブシル、シクロホスファミド、ダカルバジン(DTIC)、フォテムスチン、イホスファミド、ロムスチン(CCNU)、窒素マスタード、メルファラン、プロカルバジン、セムスチン(MeCCNU)、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、チオテパ(トリエチレンチオホスホルアミド)、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、単官能アルキル化剤、ニトロソ尿素、テモゾロミド等、又はこれらの組み合わせを含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、一般にDNA又はRNAに連結又は結合するように作用する試薬であるDNA挿入剤を含む。DNA挿入剤の非限定的な例は、アクロレイン、アントラサイクリン、ホスファミド、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、イダルビシン、ダウノルビシン、アドリアマイシン、エルサマイシンA、エピルビシン、エチジウムブロマイド、m−AMSA、ミトキサントロン、ドキソルビシン(アドリアマイシン、ドキソルビシンリポソーム、ルビシン、ヒドロキシダウノルビシン(hydroxydaunorubicin)、ヒドロキシダウノマイシン(hydroxydaunomycin))、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、TAS−103、MLN944(XR5944)、オバトクラックス、窒素マスタード、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、チオグアニン、5−フルオロウラシル、シタラビン、5−アザシチジン(5−AZC)と5−アザシチジン関連化合物、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ヒドロキシ尿素、カルボプラチン、オキサリプラチン、ミトタン、タキサン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ジブロモマンニトール、ゲムシタビン、ペメトレキセド等、又はこれらの組み合わせを含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、細胞骨格破壊剤を含む。細胞骨格破壊剤(例えば、タキサン系)の非限定的な例は、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセルを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、キナーゼ阻害剤を含む。キナーゼ阻害剤の非限定的な例は、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブ等、及びこれらの類似体と関連化合物を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、1種以上のヌクレオチド類似体を含む。ヌクレオチド類似体の非限定的な例は、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、デオキシフルオロウリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキサート、チオグアニン等、及びこれらの類似体と関連化合物を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、化学療法剤は、DNA修復酵素であるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP)を標的としDNAの修復を阻害する1種以上の分子を含む。PARP阻害薬の非限定的な例は、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、ベリパリブ、タラゾパリブ等、及びこれらの類似体と関連化合物が挙げられる。
【0057】
「がんと転移」
本願に係るいくつかの実施形態において、がんに罹患している又はがんの罹患が疑われる対象の治療方法又は組成物(例えば、医薬組成物)が開示されている。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、がんに罹患している又はがんの罹患が疑われる対象を治療するために、単独で投与される又はIFNと併用される。いくつかの実施形態において、がんは、新生物(neoplasm)、腫瘍(tumor)、又は腫瘍性疾患(neoplastic disorder)である。いくつかの実施形態において、がんは悪性である。がんは、転移性がある又は非転移性である。本願に係る方法で治療可能ながんの非限定的な例は、がん腫(carcinoma)、肉腫、神経腫、リンパ腫、骨髄腫、白血病、黒色腫、中皮腫、固形腫瘍又は軟部組織腫瘍、二次がん(例えば、原発部位に由来するもの)を含む。がん腫(carcinoma)の非限定的な例は、呼吸器系がん、消化器系がん、泌尿生殖器系がん、精巣がん、前立腺がん、内分泌器系がん、皮膚基底細胞がん、原発不明がん腫、胆管がん、非浸潤性乳管がん(DCIS)、メルケル細胞がん、肺がん、胸腺腫と胸腺がん、正中線がん、小細胞肺がん、甲状腺がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、頭頸部扁平上皮がん、乳がん、上皮がん、副腎皮質がん、上皮性卵巣がん等を含み、さらに、子宮がん、子宮頸がん、結腸がん、膵臓がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、及び卵巣がんを含む。肉腫の非限定的な例は、ユーイング肉腫、リンパ肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、横紋筋肉腫、子宮肉腫、軟骨肉腫、平滑筋肉腫、及び線維肉腫等を含む。神経腫の非限定的な例は、神経膠腫、膠芽腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠細胞系腫瘍等を含む。リンパ腫、骨髄腫、白血病の非限定的な例は、急性・慢性リンパ性白血病、骨髄芽球性白血病、多発性骨髄腫、低分化型急性白血病(例えば、赤芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病)、急性前骨髄球性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)(B細胞性ALL、T細胞性ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛細胞白血病(HLL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、非ホジキンリンパ腫及びそのバリアント、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキンリンパ腫及びリードシュテルンベルク病を含む。軟部組織腫瘍又は固形腫瘍の非限定的な例は、内臓腫瘍、精上皮腫、肝細胞腫、乳がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、及び子宮、卵巣、精巣、頭、頸、眼、脳、口部、咽頭、声帯、耳、鼻、食道、胃、腸、結腸、副腎、腎臓、骨、膀胱、尿道、がん腫、肺、筋肉、皮膚、足、手、軟部組織における他の腫瘍を含む。
【0058】
「炎症」
本願には、炎症もしくは炎症性疾患に罹患している又は罹患が疑われる対象の治療方法又は関連の用途が開示されている。炎症性疾患は、炎症誘発性疾患であってもよいし、又は自己免疫疾患であってもよい。自己免疫疾患又は炎症誘発性疾患の非限定的な例は、多発性筋炎、血管炎症候群、巨細胞動脈炎、高安動脈炎、再発性多発性軟骨炎、後天性血友病A、スティル病、成人スティル病、アミロイドA蛋白アミロイドーシス、リウマチ性多発筋痛、脊柱関節症、肺動脈高圧、移植片対宿主病、自己免疫性心筋炎、接触性アレルギー(接触皮膚炎)、胃食道逆流症、紅皮症、ベーチェット病、筋萎縮性側索硬化症、移植、視神経脊髄炎、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、悪性関節リウマチ、薬剤耐性型関節リウマチ、視神経脊髄炎、川崎病、多関節若年性特発性関節炎もしくは全身性若年性特発性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、キャッスルマン病(Castleman病)、喘息、アレルギー性喘息、アレルギー性脳脊髄炎、関節炎、慢性進行性関節炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、腸炎性関節炎、変形性関節症、リウマチ性疾患、脊柱関節症、強直性脊椎炎、レット症候群、過敏性反応(気道過敏性反応、皮膚過敏性反応を含む)、アレルギー、全身性エリテマトーデス、皮膚限局型エリテマトーデス、らい性結節性紅斑、シェーグレン症候群、炎症性筋疾患、多発軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫、皮膚筋炎、スティーヴンス・ジョンソン症候群、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、熱帯性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、内分泌性眼症、強皮症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、膣炎、直腸炎、インスリン依存性糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、若年性糖尿病(1型糖尿病)、自己免疫性血液疾患、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆性貧血、特発性血小板減少症(ITP)、自己免疫性ぶどう膜炎、前部ぶどう膜炎と後部ぶどう膜炎、乾性角結膜炎、春季角結膜炎、間質性肺線維症、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群あり又はなし)、特発性ネフローゼ症候群もしくは微小変化型ネフローゼ症候群、炎症性皮膚疾患、角膜炎、筋炎、骨に埋め込まれたインプラントの弛緩、代謝異常、アテローム性動脈硬化、脂質異常症、骨量減少、変形性関節症、骨粗鬆症、閉塞性呼吸器疾患もしくは炎症性呼吸器疾患による歯周病、気管支炎、塵肺症、肺気腫、急性・超急性炎症反応、急性感染、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、成人呼吸窮迫症候群、脳脊髄膜炎、肺炎、悪性疾患による消耗症候群、脳卒中、単純ヘルペス性角膜実質炎、ドライアイ、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、ギラン・バレー症候群、スティッフパーソン症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、脳脊髄炎、急性リウマチ熱、交感性眼炎、グッドパスチャー症候群(Goodpasture’s syndrome)、全身性壊死性血管炎、抗リン脂質抗体症候群、アジソン病、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、疱疹状皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹性皮膚炎、鵝口瘡性潰瘍、扁平苔癬、自己免疫性脱毛症、白斑症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、悪性貧血、感音難聴、特発性両側性進行性感音難聴、多腺性自己免疫症候群I型又はII型、免疫性不妊症、免疫介在性不妊症を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、炎症に疼痛(pain)及び/又は腫脹が関連する。したがって、キノカルコン化合物は、疼痛及び/又は腫脹の治療にも適用する。
【0060】
「組成物、適用と投与」
いくつかの実施形態に係る組成物は、キノカルコン化合物を含む。いくつかの実施形態に係る組成物は、キノカルコン化合物とIFNとを含む。いくつかの実施形態において、本願に係る組成物は、ヒトへの投与に適する医薬組成物である。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、適切な医薬品用賦形剤及び/又は担体を1種以上含む。
【0061】
医薬組成物は、特定の投与経路が適用するように製剤化される。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、皮下(s.c.)投与、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与及び/又は静脈内(i.v.)投与が適用するように製剤化される。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、当該組成物の、例えば、pH値、浸透圧(osmolarity)、粘度、清澄度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着もしくは浸透を変更、維持又は保持するための製剤材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、適切な製剤材料は、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン)、抗菌剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は硫酸水素ナトリウム、亜硫酸)、緩衝液(例えば、ホウ酸塩、炭酸水素塩、Tris−塩酸、クエン酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)又は適切な有機酸)、膨張剤(例えば、マンニトール又はグリシン)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン)、着色剤、矯味剤と希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩を形成するカウンターイオン(例えばナトリウム)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、希釈剤、賦形剤及び/又はアジュバントを含み、ただしこれらに限定されない。いくつかの実施形態に係る組成物又は医薬組成物は、適切な製剤材料、希釈剤、賦形剤又は添加剤を含み、これに関しては、「Remington:The Science And Practice Of Pharmacy,19th Edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)」(以下「レミントン’95」と称する)、又は「Remington:The Science And Practice Of Pharmacy,22th Edition,Pharmaceutical Press,Easton,PA(2013)」(以下「レミントン2013」と称する)が参照される。いくつかの実施形態において、本願に係る組成物又は医薬組成物は、レミントン’95及び/又はレミントン2013に記載の方法により製剤化される。
【0062】
いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、非限定的な例として添加剤、塩、粘着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、結合剤、充填剤、単糖類、二糖類、他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース又はデキストリン)、糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール)、コーティング(例えば、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶セルロース、合成ポリマー、シェラック、ゼラチン、ゼイン(corn protein zein)、腸溶性の多糖類、又は他の多糖類)、デンプン(例えば、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン又は小麦デンプン)、シリカ、顔料、崩壊剤、矯味剤、潤滑剤、保存剤、吸着剤、甘味料、担体、懸濁化剤、界面活性剤及び/又は湿潤剤(例えば、プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80等のポリソルベート、TRITON(登録商標)、トロメタモール、レシチン、コレステロール、チロキサポール)、安定性増強剤(例えば、ショ糖又はソルビトール)、張力増強剤(例えば、塩化ナトリウム又は塩化カリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、マンニトール、ソルビトール)、及び/又はレミントン’95及び/又はレミントン2013に開示されている任意の賦形剤を含む適切な賦形剤を含む。本願で使用される用語「結合剤」とは、医薬品混合物の結合が保持されるように作用する化合物又は成分を指す。医薬品製剤を製造するのに適切な結合剤は、一般に当業者に周知の、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、エアロゾル製剤、散剤、坐剤を製造するために使用される。
【0063】
いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、薬学的に許容される適切な添加剤及び/又は担体を含む。適切な添加剤の非限定的な例は、適切な、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、含硫黄還元剤、抗酸化剤等を含む。含硫黄還元剤の非限定的な例は、メルカプト基(例えば、チオール)を1つ有する製剤、例えば、N−アセチルシステイン、N−アセチルホモシステイン、リポ酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸とその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、C1〜C7のチオアルカン酸を含む。抗酸化剤の非限定的な例は、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸とその塩、L−パルミチン酸アスコルビル、L−ステアリン酸アスコルビル、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、トリアミル没食子酸エステルと没食子酸プロピル、及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤を含む。また、希釈剤、添加剤、賦形剤は、一般的に使用される他の成分、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム等の有機塩を含んでもよい。
【0064】
本願に係る医薬組成物は、比較的長い期間、例えば、数か月程度又は数年程度にわたって安定的である。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、適切な保存剤を1種以上含む。保存剤の非限定的な例は、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、クロルヘキシジン、ソルビン酸、過酸化水素等及び/又はこれらの組み合わせを含む。保存剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザゾニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム、塩化セチルピリジニウム、又はドミフェンブロミド(BRADOSOL(登録商標))等の第四級アンモニウム化合物を含む。保存剤は、チメロサール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、又はホウ酸フェニル水銀等のチオサリチル酸のアルキル水銀塩を含む。保存剤は、パラヒドロキシ安息香酸メチル又はパラヒドロキシ安息香酸プロピル等のパラヒドロキシ安息香酸エステルを含む。保存剤は、クロロブタノール、ベンジルアルコール、又はフェネチルアルコール等のアルコール類を含む。保存剤は、クロルヘキシジン又はポリヘキサメチレンビグアニド等のビグアニド化合物を含む。保存剤は、過ホウ酸ナトリウム、イミダゾリジニル尿素、及び/又はソルビン酸を含む。保存剤は、PURITE(登録商標)の商品名の製品として購入される安定的なオキシ塩素複合体(oxychloro complexes)を含む。保存剤は、Henkel KGaA社より購入される商品名POLYQUART(登録商標)の製品等のポリエチレングリコール−ポリアミン縮合樹脂を含む。保存剤は、安定的な過酸化水素を含む。保存剤は塩化ベンザルコニウムであってもよい。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は保存剤を含まない。
【0065】
いくつかの実施形態に係る組成物又は医薬組成物は、汚染物質(例えば、血球、血小板、ポリペプチド、ミネラル、血液由来化合物又は化学物質、ウイルス、細菌、他の病原体、毒素等)を実質的に含まない。いくつかの実施形態に係る組成物又は医薬組成物は、血清又は血清汚染物質(例えば、血清タンパク質、血清脂質、血清中炭水化物、血清抗原等)を実質的に含まない。いくつかの実施形態に係る組成物又は医薬組成物は、病原体(例えば、ウイルス、寄生虫又は細菌)を実質的に含まない。いくつかの実施形態に係る組成物又は医薬組成物はエンドトキシンを実質的に含まない。いくつかの実施形態に係る組成物又は医薬組成物は無菌である。いくつかの実施形態に係る組成物又は医薬組成物は、キノカルコン化合物と適切な希釈剤(例えば、リン酸塩緩衝液)とを含む。
【0066】
本願に係る医薬組成物は、対象が受ける治療に応じて、対象への投与に適する任意の適切な形態及び/又は量にて製剤されてもよい。例えば、非経口投与(例えば、注射又は注入)用の医薬組成物は、配合剤(formulation agents)、賦形剤、添加剤及び/又は希釈剤、例えば、含水溶媒又は非水溶媒、共溶媒、懸濁溶液、保存剤、安定剤及び/又は分散剤を含むように、油性又は水性の担体中の懸濁液、溶液又は乳濁液の形態として製造(conFig.d)されてもよい。いくつかの実施例において、非経口投与に適する医薬組成物は、1種以上の賦形剤を含んでもよい。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、乾燥粉末の形態になるよう凍結乾燥される。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、適切な医薬溶媒(例えば、水、生理食塩水、等張緩衝液(例えば、PBS)等)において復元(reconstitution)されるように、乾燥粉末の形態に凍結乾燥される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥された医薬組成物が復元された形態は、哺乳類への非経口投与(例えば、静脈内投与)に適する。
【0067】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、錠剤、ミニタブレット、タブレット、ペレット、粉末、顆粒、カプセル(例えば、ミニタブレット、ペレット、粉末又は顆粒が充填されたカプセル)、乳剤又は溶液として、経口投与用に製剤化される。経口投与用に製剤化された医薬組成物は、作用成分(例えば、接着剤)の放出が遅延又は維持されるように、適切なコーティングを含んでもよい。その非限定的な例は、腸溶性コーティング、例えば脂肪酸、ワックス、シェラック、樹脂、メタクリレート−メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(酢酸・コハク酸ヒプロメロース)、ポリ酢酸ビニルフタル酸(PVAP)、メタクリル酸メチル−メタクリル酸コポリマー、酢酸セルローストリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、植物繊維等、及びこれらの組み合わせを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、本願に係る医薬組成物は、接着剤及び/又は潤滑剤、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ココアバター、又は他の適切なワックスもしくは脂肪の1種以上を含むように、局所投与用に製剤化されてもよい。いくつかの実施形態において、本願に係る医薬組成物は、一般に局所投与に適する局所投与用担体を含み、且つ、当業者に周知の任意の適切な材料を含むように、局所投与製剤に混入される。いくつかの実施形態に係る医薬組成物の局所投与製剤は、接着剤を含むように、局所投与用パッチ剤として製剤化される。
【0069】
本願に係る医薬組成物は、いくつかの実施形態において、坐剤として製剤化される。
【0070】
いくつかの実施形態において、医薬組成物の最も適切な形態は、例えば、当業者が意図された投与経路、送達の方式、測定された所定の用量(例えば、レミントン’95又はレミントン2013が参照される)に基づいて決定されてもよい。いくつかの実施形態に係る組成物は、本発明に係る抗体−薬物複合体の物理的状態、安定性、生体内放出速度、生体内消失速度に影響を与える。当該医薬組成物は、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、製粉、乳化、封入、包埋、又は打錠等の通常の方法(例えば、レミントン’95又はレミントン2013に記載の方法が参照される)を含む任意の適切な方法によって製剤化される。
【0071】
いくつかの実施形態において、対象におけるがん又は腫瘍性疾患を治療する医薬品としての、本願に係る組成物又は医薬組成物の用途が提供される。前記組成物又は医薬組成物は、本願に係るキノカルコン化合物を含む。いくつかの実施形態において、がん又は腫瘍性疾患を治療するための、本願に係るキノカルコン化合物を含む組成物又は医薬組成物の用途が提供される。
【0072】
「投与経路」
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物とIFNは、適切な投与経路を介して対象に投与される。いくつかの実施形態において、本願に係る組成物は、適切な投与経路を介して対象に投与される。投与経路は、看護師又は医師が患者の病状に基づいて選択してもよい。いくつかの実施形態において、本願に適用される投与経路は、「Fingl et al.:The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975)」に開示又は教示されている内容が参照され、その全体内容を本願に援用する。投与経路の非限定的な例は、体表又は局所(例えば、経皮もしくは皮下(例えば、皮膚もしくは表皮上)、眼内もしくは眼上、鼻腔内、経粘膜、経耳(in the ear)、耳内(inside the ear)(例えば、鼓膜後)、腸内(胃腸管経由送達、例えば、経口(錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液体、乳化剤、錠剤、又はこれらの組み合わせ)、舌下、胃瘻管経由、直腸等)、非経口投与(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、腔内、脳内、関節内、関節腔内、心臓内(心腔内)、海綿体内注射、病変部位内(例えば、皮膚損傷内)、骨内点滴(骨髄内)、髄内(髄腔内)、子宮内、膣内、がん腫内(即ち、腫瘍内)、膀胱内灌流、硝子体内等の非経口経路)等、又はこれらの組み合わせを含む。
【0073】
いくつかの実施例において、キノカルコン化合物及び/又はIFN、又は本願に係る組成物は、対象自身が投与し、又は他人(例えば、看護師)が対象に投与するように、対象に提供される。例えば、本願に係る組成物は医師の指示(例えば、処方箋)とともに提供される。医師から許可を得た患者に本願に係る組成物又は治療が提供される。他の例として、当該組成物は、対象自身が経口、静脈内、局所投与又は吸入器の方式で投与するように対象に提供される。
【0074】
「配合」
1つ以上の組成物(例えば、医薬組成物)は、特定の投与経路又は用途に適合するように製剤化されてもよい。非経口、皮内又は皮下投与用の組成物は、水、整理食塩水(saline solution)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等の無菌希釈剤を含んでもよい。本願の医薬組成物は、微生物の成長が防止されるように、保存剤(例えば、ベンジルアルコール又はパラヒドロキシ安息香酸メチル等の抗菌剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤、EDTA等のキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝剤、塩化ナトリウム又はデキストロース等の張力調整用試薬)を1種以上含んでもよい。抗菌剤、抗真菌剤は、パラヒドロキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物、IFN又はこれらの組み合わせは、単独で又は組み合わされて凍結乾燥粉末として製剤化される。いくつかの実施形態において、本願に係る医薬組成物は、凍結乾燥粉末に製剤化される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥粉末は、哺乳類(例えば、ヒト)への注射に適する溶媒による再構成用に製剤化される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥粉末は経口投与用に製剤化され、例えば、粒状の粉末又は顆粒の形態としてカプセルに充填され又は錠剤として打錠される。
【0076】
注射用の組成物は、無菌注射溶液又は分散液の調製用の無菌水溶液(水溶性)又は分散液、無菌散剤を含む。静脈内投与の場合は、適切な担体は生理食塩水、無菌水、Cremophor EL(商標)(米国、ニュージャージー州、パーシッパニー、BASF社)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。前記担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であってもよい。例えば、レシチン等のコーティング、又は界面活性剤を用いて流動性が保持される。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、注射用組成物の吸収を延長できるモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン等、吸収を遅延する試薬を含む。いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、例えば、ポリソルベート20又はポリソルベート80を最大1%まで含む。他の非限定的な添加剤は、ヒスチジンHCl、α,α−脱水トレハロースを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、使用者は本発明に係る方法に基づいて、全身的な方式ではなく局所的な方式によって、組成物(長期作用型の製剤又は徐放製剤の使用を含む)を投与してもよい。例えば、皮膚、粘膜、又は対象領域に治療手段として直接適用する。
【0078】
いくつかの実施形態において、有効成分(例えば、1種以上のキノカルコン化合物、及び/又は1種以上のIFN)は、単独で投与されてもよいし又は組成物(例えば、医薬組成物)として製造して投与されてもよい。他の実施形態において、1種以上のキノカルコン化合物は、1種以上の別の薬剤(例えば、1種以上の化学療法剤又はT細胞活性化剤)と併用して投与されてもよいし、又は、2つの組成物として独立的に投与されてもよいし、又は単独の組成物として投与されてもよく、ただし前記別の薬剤は1種以上のキノカルコン化合物と混合され又は一体的に製剤化される。例えば、1つ以上のキノカルコン化合物は別の賦形剤、又は別の有効成分と一体的に製剤化されてもよく、ただし、これに限定されない。
【0079】
医薬組成物は、混合、溶解、造粒、打錠成形、製粉、乳化、封入、包埋、又は打錠等の通常のプロセスを含む任意の適切な方式で製剤化できる。キノカルコン化合物及び/又はIFNを含む医薬組成物は、薬学的に許容される1種以上の担体を使用して、任意の適切な方式で製剤化できる。薬学的に許容される前記担体の非限定的な例は、担体、溶媒、塩、賦形剤、添加剤、保存剤及び/又は助剤を含む。選択された投与経路よって、適切な製剤が決定される。特に、医薬組成物は、レミントン’95及び/又はレミントン2013に挙げられた任意の適切な担体、製剤又は成分等、又はこれらの組み合わせを含んでもよく、当該文献の全体内容を本願に援用する。本願に記載の各種の材料(薬剤、以下同じ)は、単独で又は組み合わさって、レミントン’95又はレミントン2013に記載の材料に混入されるか、又はレミントン’95又はレミントン2013に記載の材料と併用される。本分野に周知の技術、担体、賦形剤は、例えば、レミントン’95又はレミントン2013に記載のものは、適切であれば、いずれも使用できる。
【0080】
いくつかの実施形態において、本願に係る医薬組成物は、例えば、局所投与製剤として製剤化されてもよい。局所投与製剤は、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、軟膏剤、油剤、フォーム剤等の製剤を含む。さらに、前記製剤は例えば、エモリエント剤を含む。
【0081】
本願に係る組成物は、必要に応じて、毎日投与されるか、又は1日に2回、1日に3回、2日に1回等、規則的な間隔で投与されてもよい。また必要に応じて、組成物を所定の時間範囲内に投与してもよい。前記所定の時間範囲は、単一の時間から1日、さらに数年までの間、又は、この間の任意の範囲であってもよい(例えば、1〜90日、1〜60日、1〜30日等)。本願に記載の用量は、1日分の用量であってもよいし又は1回投与分の用量であってもよい。例えば、複数回に投与する場合がある(例えば、2回の鼻孔噴霧投与)。
【0082】
いくつかの実施形態において、本願に係る組成物は、上気道/気管支又は鼻腔内に投与されるように製剤化されてもよい。例えば、当該組成物は、噴霧器、吸入器等に使用されるように、エアロゾル剤に製剤化されてもよい。例えば、当該組成物は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素等の1種以上を含んでもよい。例えば、当該医薬組成物は、噴霧器又は吸入器に使用されるように、製剤化されてもよい。
【0083】
当該医薬組成物は、適切な担体を1種以上含んでもよい。いくつかの実施形態において、当該担体は、有効成分(例えば、1種以上のキノカルコン化合物)が細胞又は組織に入るよう促進する1種以上の化合物を含む。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、様々な化合物やペプチドが生体の細胞又は組織内に摂取されるよう促進するため、担体として一般的に使用される。いくつかの実施形態において、本願に係る組成物に使用される薬学的に許容される担体は、ひまし油、エチレングリコール、ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、コーン油、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、イソプロパノール、大豆油、グリセリン、酸化亜鉛、二酸化チタン、グリセリン、ブタンジオール、セチルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウムから選択されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態に係る医薬組成物は、疎水性の賦形剤、添加剤、又は他の疎水性の成分を含む。一部の疎水性ペプチドの場合は、薬学的に許容される担体が、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水相溶性の有機ポリマー、水相を含む共溶媒系であってもよい。本願に使用可能な一般的な共溶媒系は、3%w/vのベンジルアルコールと8%w/vの非極性界面活性剤POLYSORBATE 80(商標)と65%w/vのポリエチレングリコール300の溶液を無水エタノールで所定の体積に補足したVPD共溶媒系である。したがって、共溶媒系の割合は、対象物の溶解性と毒性学的特徴が損なわれない範囲において大幅に変更する可能性がある。また、共溶媒成分の内容(identity)も変更してもよい。例えば、他の低毒性の非極性界面活性剤をPOLYSORBATE 80(商標)に代用し、ポリエチレングリコールの質量分率の大きさを変更し、ポリビニルピロリドン等の他の生体適合性ポリマーをポリエチレングリコールに代用し、又は、他の糖又は多糖類をデキストロースに代用してもよい。
【0085】
必要に応じて、他の担体を代用し、又は追加してもよい。リポソーム、乳剤は従来、疎水性の薬物又は医薬組成物を送達するために使用されるツール又は担体の例である。また、本願に係る組成物は徐放系を使用して送達されてもよい。前記徐放系は、例えば、治療剤を含む疎水性の固体ポリマーからなる半透過性マトリックスである。本願に係る医薬組成物は、それ自体が患者に投与されるか、又は、医薬組成物に含めて患者に投与される。前記医薬組成物において他の有効成分と混合される。例えば、併用療法において、適切な担体又は賦形剤と混合される。化合物、組成物は、塩又は賦形剤、例えば、ナトリウム塩又はメグルミンを用いて製造されてもよい。製造と投与に関する技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Pub.Co.,Easton,PA(1990)」、レミントン’95及び/又はレミントン2013が参照される。
【0086】
また、本願に使用される化合物又は組成物は、比較的長い期間、例えば、数か月程度又は数年程度にわたって安定的である。いくつかの実施例において、本願に係る組成物は、保存剤を含んでもよい。前記保存剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザゾニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム、塩化セチルピリジニウム、又はドミフェンブロミド(BRADOSOL(登録商標))等の第四級アンモニウム化合物を含んでもよい。前記保存剤は、チメロサール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、又はホウ酸フェニル水銀等のチオサリチル酸アルキル水銀塩を含んでもよい。前記保存剤は、パラヒドロキシ安息香酸メチル、又はパラヒドロキシ安息香酸プロピル等のパラヒドロキシ安息香酸エステルを含んでもよい。前記保存剤は、クロロブタノール、ベンジルアルコール、又はフェネチルアルコール等のアルコール類を含んでもよい。前記保存剤は、クロロヘキシジン、又はポリヘキサメチレンビグアニド等のビグアニド化合物を含んでもよい。前記保存剤は、過ホウ酸ナトリウム、イミダゾリジニル尿素、及び/又はソルビン酸を含んでもよい。前記保存剤は、既知のようにPURITE(登録商標)の商品名の製品として購入される安定的なオキシ塩素複合体(oxychloro complexes)を含んでもよい。前記保存剤は、既知のようにHenkel KGaA社より購入される商品名POLYQUART(登録商標)の製品等のポリエチレングリコール−ポリアミン縮合樹脂を含んでもよい。前記保存剤は、有効な微量の過酸化水素を提供するように、過酸化水素源として安定的な過酸化水素を生成する過ホウ酸ナトリウム四水和物等を含んでもよい。保存剤は、塩化ベンザルコニウムであってもよい。
【0087】
前記保存剤は、組成物が様々な場面に利用できるように使用される。保存剤は、酸曝露、アルカリ曝露、空気曝露、熱、光の1種以上が有効成分に与える影響を軽減するように機能する。本願に係る化合物、医薬組成物は、クエン酸ナトリウム緩衝液等の任意の適切な緩衝剤、及び/又は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のキレート剤を含んでもよい。メグルミン等の成分は、pH値を調整するように、本願に係る組成物又は化合物に添加されてもよい。本願に係る化合物、組成物は、ナトリウム及び/又はヨウ素、例えば、有機的に結合されたヨウ素を含んでもよい。本願に使用される組成物、化合物は、空気が別の物質、例えば、窒素ガスに置換された容器に入れて提供されてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態は、意図された目的が達成できる有効量(例えば、治療有効量)の1種以上の有効成分(例えば、キノカルコン化合物、IFN−β等)を含む組成物を提供する。「治療有効量」とは、がんを予防又は治療する量を指す。いくつかの実施形態において、「治療有効量」は、がん(例えば、腫瘍、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞等のがん細胞)の成長、転移又は活性を阻止、阻害、改善、解消又は抑制するために十分な量である。いくつかの実施形態において、「治療有効量」は、対象における1種以上のがん細胞の壊死、死亡、又はアポトーシスを誘導するために十分な量である。いくつかの実施形態において、「治療有効量」は、がんに関連する1種以上の症状に対して、阻害し、病状を軽減し、発生を遅延し、抑制し、改善し又は解消するために十分な量である。いくつかの実施形態において、「治療有効量」は、がんに罹患している対象の寿命が、がんの治療を受けていない対象の寿命又は生活の質よりも、延長もしくは維持され、又は生活の質が改善されるために十分な量である。治療有効量の決定は、当業者(例えば、医師)の能力の及ぶ範囲に、特に、本願に開示されている詳細な内容を参照すればできることである。
【0089】
いくつかの実施形態において、治療有効量は、「黄継漢ら:薬理試験における動物間及び動物とヒト間の等価用量の換算,中国臨床薬理学と治療学,9(9):1069−1072(2004)」に記載の方法によって決定される。いくつかの実施形態において、治療有効量は、本願に記載のいくつかの動物実験研究に基づいて決定される。動物実験モデルの用量をヒト及び/又は他の哺乳類の用量に換算する方法は、本分野で周知の事項である。いくつかの実施形態において、マウスに適用する治療有効量は、体表面積換算係数0.0026によって、ヒトに適用する治療有効量に換算できる。いくつかの実施形態において、IFNは、5×10U〜1×10Uの量で体重20gのマウスに投与され、且つ、いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物は、約5mg/kgマウス体重の量で投与される。さらに、いくつかの実施形態において、マウスを用いる実験に基づいて、IFNは1×10U〜4×10Uの治療有効量でヒト(例えば、体重約50〜70kgのヒト)に投与される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物の治療有効量は、1回の用量換算で約30〜50mgである。
【0090】
本願に係る治療の全体的な有益効果は、本願に係る治療を受けている対象の症状又は病状を、治療を受けていない1つ以上の個体に対して比較することで決定されてもよいし、又は、本願に係る治療を受けている対象の症状又は病状を、治療を受ける前の状態に対して比較することで決定されてもよいし、又は本願に係る治療を受けている対象の症状又は病状を、治療を中断した後の状態に対して比較することで決定されてもよい。治療の有益な効果は完全的もの(検出可能な症状又はがんは存在しない)であってもよいし、又は、治療を受けない場合に生じ、観察されたがん関連の症状又は対象の量より少ないという部分的ものであってもよい。したがって、いくつかの実施形態において、本願に係る治療は、対象におけるがんを完全的又は部分的に解消するように提供される。
【0091】
「用量」
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はIFNは、適切な治療有効量及び/又は用量(例えば、適切な体積と濃度である。場合によって、完全に、又は部分的に投与経路によって決定される)で投与される。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はIFNの治療有効量は、効果的な治療結果を得るために必要な量である。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はIFN−βの治療有効量は、腫瘍疾患又はがんが本願に意図されたとおりに予防もしくは治療され、病状が軽減され、発生が遅延され、且つ/又は症状が軽減されるために十分な量である。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はIFNの治療有効量は、がん又はがん細胞の成長、活性及び/又は転移が阻止、阻害、改善、解消又は抑制されるために十分な量である。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はIFNの治療有効量は、がん又はがん細胞の死亡、壊死、又はアポトーシスが誘導されるために十分な量である。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はIFNの治療有効量は、がん細胞の有糸分裂が低減、阻害、又は軽減されるために十分な量である。
【0092】
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はIFNの治療有効量は、0.01mg/kg(例えば、対象の1kg体重あたり)〜500mg/kg、0.1mg/kg〜500mg/kg、0.1mg/kg〜400mg/kg、0.01mg/kg〜300mg/kg、0.1mg/kg〜300mg/kg、0.1mg/kg〜200mg/kg、0.1mg/kg〜150mg/kg、0.1mg/kg〜100mg/kg、0.1mg/kg〜75mg/kg、0.1mg/kg〜50mg/kg、0.1mg/kg〜25mg/kg、0.1mg/kg〜10mg/kg、0.1mg/kg〜5mg/kg、又は0.1mg/kg〜1mg/kgから独立的に選択される。いくつかの実施例において、キノカルコン化合物及び/又はIFNの治療有効量は、少なくとも0.01mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも10mg/kg、又は少なくとも50mg/kgである。いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はIFNの治療有効量は、約10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.9mg/kg、0.8mg/kg、0.7mg/kg、0.6mg/kg、0.5mg/kg、0.4mg/kg、0.3mg/kg、0.2mg/kg、又は0.1mg/kgである。各種の投与経路に適用する体積は、本分野で周知の事項である。例えば、0.1〜100mlの組成物は、安全的に成人対象に静脈内投与できる。
【0093】
いくつかの実施形態において、IFNの治療有効量は、1×10単位(U)〜10×10U、1×10U〜1×10U、又は1×10U〜4×10Uの用量範囲を含む。いくつかの実施形態において、IFNの治療有効量は、1×10U/ml〜10×10U/ml、1×10U/ml〜10×10U/ml、1×10U/ml〜10×10U/ml、1×10U/ml〜1×10U/ml、又は1×10U/ml〜1×10U/mlの用量範囲を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、キノカルコン化合物及び/又はインターフェロンを含むがんを治療する組成物又は製剤は、単位製剤である。単位製剤とは、1回の投与分に対応する製剤を指す。例えば、所定の用量に対応する1単位(シリンジ)の注射剤、又は1錠(1粒)又は1ピルである。
【0095】
いくつかの実施形態において、患者に投与される薬物の1回分の量は、1回の投与に相当する患者の体重又は患者全身(unit body)の基準で算出できる。医薬品を製造する過程では、1人の成人の体重は一般に50〜70kgと考える。いくつかの実施形態において、初期用量は、実験動物とヒトの間の体重に基づく等価用量換算によって決定される。例えば、アメリカ食品医薬品局(FDA)、中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)、他の医薬品管理機構の基準を参照してもいし、「黄継漢ら:薬理試験における動物間及び動物とヒト間の等価用量の換算,中国臨床薬理学と治療学,9(9):1069−1072(2004)」を参照してもよく、上記の文献を本願に援用する。いくつかの実施形態において、ヒトとマウスの用量は、ヒトとマウスにおける体表面積換算係数0.0026によって換算できる。
【0096】
いくつかの実施形態において、HB−48が5mg/kgマウス体重で体重20gのマウスに投与され、且つ、IFN−βが5×10U〜1×10Uの量で投与される。例えば、いくつかの実施形態において、HB−48は、水又は薬学的に許容される溶媒に含めて液体に配合された上で、設定した用量で、腫瘍内又はがん腫内よりマウスに投与され、なおIFN−βも、一般に腫瘍内より投与される。
【0097】
いくつかの実施形態において、マウスに投与される実験用量に基づいて、(例えば、体重50〜70kg基準で)ヒトへの投与用に換算され、HB−48の単位製剤は1〜5mgのHB−48、1×10U〜4×10UのIFNβ又はIFNγを含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明に係るHB−48、通常の医薬品用賦形剤又はアジュバントを含む医薬組成物は、有効成分として、例えば、HB−48を0.1〜95%(重量/体積)含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、治療有効量のキノカルコン化合物及び/又はIFNの投与は、単回又は互いに独立な複数回の投与を含む。例えば、いくつかの実施形態において、治療有効量のキノカルコン化合物及び/又はIFNの投与は、毎日、2日に1回、3日に1回、週1回、週2回、又は週3回で適切な用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、治療有効量のキノカルコン化合物及び/又はIFNの投与は、毎時間、2時間に1回、4時間に1回、6時間に1回、1日1回、1日に2回、1日に3回、1日に4回又は5回以上で適切な用量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、治療有効量のキノカルコン化合物及び/又はIFNの投与は、1時間もしくは2時間以上、1日間もしくは2日間以上、1週間もしくは2週間以上にわたって、例えば、静脈内より一定の用量を投与することを含む。キノカルコン化合物及び/又はIFNは、併用療法に最適な治療有効量になるよう、個別に異なる用量且つ異なる頻度で投与されてもよい。
【0100】
次に、特定の実施例を用いて、説明の目的で本発明を具体的に説明する。ただし、本発明の趣旨が他に別の方式によっても実現できることは当業者に自明である。したがって、本発明は、開示されている実施例の範囲に具体的に限定されるものではない。
【実施例】
【0101】
「実験に使用される腫瘍細胞、医薬品、動物」
マウス黒色腫細胞株B16、ヒト乳がん細胞株MCF−7、ヒト黒色腫細胞株A375、ヒト白血病細胞株K562、ヒト白血病細胞株HL−60は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)又は中国北京協和医学院基礎研究中心より購入される。
【0102】
MP−1細胞は、黒色腫臨床患者の腫瘍検体より分離され、マルチチャネル式の培地において成長する。
【0103】
ALL−1細胞は、白血病臨床患者の骨髄血より無菌条件に獲得され、3D培養条件において成長する。
【0104】
雌性C57BL/Cマウスは、4〜6週である。雌性NOD−SCIDマウスは、中国協和医科大学実験動物中心より購入される。
【0105】
DMF(3’,4’−ジメトキシフラボン)は、米国、シグマ社(Sigma)より購入される。
【0106】
キノカルコン誘導体HB−48は、本願に係る方法によって合成される。
【0107】
実施例1:3D培養条件において、HB−48は固形腫瘍、白血病細胞の成長を効果的に阻害できる。
【0108】
[実験手順]
3Dゲル培養技術を用いて、約3000個の細胞/ウェルで、A375、B16、MP−1、MCF−7、HL−60、K562、ALL−1細胞を培養し、2日後に細胞の状態を観察する。3Dゲル培養技術は、ゲル状のマトリクスに細胞を培養する技術である。実験室で研究したところ、3D培養技術が適用されたがん細胞は生体内に発見したがんのように成長することが判明した。これは、3D培養技術が適用されたがん細胞が、通常の方法で培養したがん細胞よりも、成長中に高い増殖能力、より高い薬剤耐性、より高い腫瘍原性、より高い遠隔侵入転移能力を示すためである。以下の処理を生細胞の3D培地に追加する。
・対照群1(培地):グルタミンを追加したRPMI−1640培地。
・実験群1(HB−48):HB−48を1μmol/ml、5μmol/ml、10μmol/ml、20μmol/ml、又は50μmol/mlの終濃度で培地中の細胞に加える。
【0109】
投与開始日は0日目と記録する。投与から48時間後、96時間後に写真を撮影してクローンのサイズを決定する。ソフトウェアImageJを用いてクローンのサイズを分析する。2日目に、各群のクローンのサイズは対照群に対して正規化される。
【0110】
[結果(図1A〜1G)]
図1に示すように、HB−48は単独で、濃度依存的に固形腫瘍、白血病細胞の成長を顕著に阻害している。
【0111】
実施例2:3D培養条件において、HB−48は単独で、固形腫瘍、白血病細胞の数量を効果的に低減できる。
【0112】
[実験手順]
3Dゲル培養技術を用いて、約3000個の細胞/ウェルでA375、B16、MP−1、MCF−7、HL−60、K562、ALL−1細胞を培養し、2日後に細胞の状態を観察する。以下の処理を生細胞の培地に追加する。
・対照群1(培地):グルタミンを追加したRPMI−1640培地。
・実験群1(HB−48):HB−48を1μmol/ml、5μmol/ml、10μmol/ml、20μmol/ml、又は50μmol/mlの終濃度で培地中の細胞に加える。
【0113】
薬物処理の開始日は0日目と記録する。48時間後、96時間後に、3Dソフトゲル中のクローンを撮影し、ソフトウェアImageJを用いてクローンのサイズを算出する。2日目の対照群のクローンのサイズが対照として使用される。
【0114】
[結果(図2A〜2G)]
HB−48は単独(free)で、用量依存的に固形腫瘍細胞、白血病細胞におけるクローン数を効果的に低減している。
【0115】
実施例3:固形腫瘍に対する治療効果について、はHB−48がDMFより顕著に優れている。
【0116】
腫瘍担持マウスモデルの作成:1×10個のマウス黒色腫B16細胞を4〜6週齢のC57BL/Cマウス(C57マウス)に移植する。各マウスの重量は約20gである。7日目に腫瘍が確認される。腫瘍サイズが5mm×5mmになったら、マウスに以下の治療を行う。
・対照群1(PBS):PBS腫瘍内注射。
・実験群2(HB−48):2日ごとに1回で合計10日間、5mg/kgでHB−48を腫瘍内に注射する。
・実験群3(DMF):2日ごとに1回で合計10日間、5mg/kgでDMFを腫瘍内に注射する。
毎日腫瘍サイズを記録する。
【0117】
[結果(図3)]
HB−48、DMFは腫瘍の成長を阻害でき、しかもHB−48は顕著な抗がん増強効果を示している。
【0118】
実施例4:HB−48とIFN−βの併用が、3D培地における固形腫瘍細胞及び白血病細胞のクローンの成長を効果的に阻害する。
【0119】
[実験手順]
3Dゲル培養技術を用いて、約3000個の細胞/ウェルでA375、B16、MP−1、MCF−7細胞を培養する。以下の処理は0日目に生細胞の培地に追加する。
・対照群1(PBS):グルタミン(培地)、PBS、薬物担体DMFを追加したRPMI−1640培地。
・対照群2(IFN−β):細胞の由来(例えば、マウス、又はヒト)、マウスIFN−βを6ng/ml、又はヒトIFN−βを10ng/ml含有する培地。
・実験群3(HB−48):HB−48をμmol/ml含有する培地。
・実験群4(IFN−β+DMF):マウスIFN−βを6ng/ml又はヒトIFN−βを10ng/ml、DMFを20μmol/ml含有する培地。
・実験群5(IFN−β+HB−48):マウスIFN−βを6ng/ml又はヒトIFN−βを10ng/ml、HB−48(10μmol/ml)を含有する培地。
【0120】
1日目、2日目、3日目、4日目、5日目に、3Dソフトゲル中のクローンに対して撮影し、ソフトウェアImageJを用いてクローンのサイズを算出する。結果を図4A〜4Dに示す。
【0121】
3Dゲル培養技術を用いて、約3000個の細胞/ウェルでHL−60、K562、ALL−1細胞を培養する。以下の処理は0日目に生細胞の培地に追加する。
・対照群1(PBS):グルタミン(培地)を追加したRPMI−1640培地。
・実験群2(IFN−β+HB−48):マウスIFN−βを6ng又はヒトIFN−βを10ng、濃度1μmol/ml、3μmol/ml、5μmol/ml、6μmol/ml、10μmol/ml、20μmol/mlのHB−48を含有する培地。
【0122】
投与開始日は0日目と記録する。投与から48時間、96時間後に写真を撮影してクローンのサイズを決定する。ソフトウェアImageJを用いてクローンのサイズを分析する。各群のクローンのサイズは対照群に対して正規化される。結果を図4E、4F、4Gに示す。
【0123】
[結果(図4)]
図4のデータより、IFN−βとHB−48との併用が、固形腫瘍細胞及び白血病細胞のクローンのサイズを効果的に低減でき、しかもHB−48は用量依存的であることが判明した。
【0124】
実施例5:IFN−βとHB−48との併用が、固形腫瘍細胞及び白血病細胞のクローン数(colony numbers)を効果的に低減する。
【0125】
[実験手順]
3Dゲル培養技術を用いて、約3000個の細胞/ウェルでA375、B16、MP−1、MCF−7、HL−60、K562、ALL−1細胞を培養し、2日後細胞の状態を観察する。以下の処理を生細胞の培地に追加する。
・対照群1(PBS):グルタミン(培地)を追加したRPMI−1640培地。
・対照群2(IFN−β):マウスIFN−βを6ng/ml又はヒトIFN−βを10ng/ml含有する培地。
・対照群3(IFN−β+DMF):マウスIFN−βを6ng/ml又はヒトIFN−βを10ng/ml、DMFを20μmol/ml含有する培地。
・実験群4(HB−48):濃度10μmol/mlのHB−48を含有する培地。
・実験群5(IFN−β+HB−48):マウスIFN−βを6ng又はヒトIFN−βを10ng/ml、濃度10μmol/mlのHB−48を含有する培地。
【0126】
[結果(図5)]
図5より、IFN−βとHB−48の併用が、固形腫瘍細胞及び白血病細胞のクローン数を効果的に低減でき、IFN−βとDMFの併用よりも増強効果が示されることが判明した。
【0127】
実施例6:IFN−βとHB−48の併用が、固形腫瘍細胞及び白血病細胞のアポトーシスを効果的に誘導でき、しかもフラスコ培養は細胞に影響を与えないことを示す。
【0128】
[実験手順]
3Dゲル培養技術を用いて、約8000個の細胞/ウェル(3D)又は約3万/ウェル(6ウェルプレート)(フラスコ)で、A375、B16、MP−1、MCF−7、HL−60、K562、ALL−1細胞を培養し、2日後に細胞の状態を観察する。以下の処理を生細胞の培地に添加する。
・対照群1(PBS):グルタミン(培地)、薬学的に許容される溶媒を追加したRPMI−1640培地。
・対照群2(IFN−β):マウスIFN−βを6ng/ml又はヒトIFN−βを10ng/ml含有する培地。
・対照群3(IFN−β+DMF):マウスIFN−βを6ng/ml又はヒトIFN−βを10ng/ml、DMFを20μmol/ml含有する培地。
・実験群4(HB−48):濃度10μmol/mlのHB−48を含有する培地。
・実験群5(IFN−β+HB−48):マウスIFN−βを6ng/ml又はヒトIFN−βを10ng/ml、濃度10μmol/mlのHB−48を含有する培地。
【0129】
前記3D培養は24ウェルプレートにおいて、フラスコ振とう培養は6ウェルプレートにおいて実施する。前記プレートに加える前に、薬物と培地が均一に混合される。48時間後にアポトーシスを計測する。細胞のアポトーシスはFACSより測定する。
【0130】
[結果(図6)]
フラスコ培養において、IFN−β単独、又はIFN−βとHB−48との併用は、固形腫瘍細胞、白血病細胞に対する明確な細胞毒性を示していない。3D培養において、IFN−βとHB−48との併用が、固形腫瘍細胞に対する細胞毒性を効果的に向上させ、しかもIFN−βとHB−48の併用は、DMFとの併用よりも増強効果を示している(図6参照)。
【0131】
実施例7:IFN−βとHB−48との併用は、固形腫瘍の成長を阻害し、生存時間を延長できる。
【0132】
IFN−βとHB−48との併用を腫瘍担持C57BL/Cマウスの治療に適用する。
【0133】
[実験手順]
腫瘍担持マウスモデルの作成:1×10の黒色腫B16細胞を4〜6週齢のC56BL/Cマウスに移植する。35匹のマウスを無作為に5群に分ける。各マウスの重量は約20gである。7日目に腫瘍が確認される。腫瘍サイズが5mm×5mmになると、マウスに以下の処理を行う。
・対照群1(PBS):PBS腫瘍内注射。
・実験群2(IFN−β):1×10単位(U)のIFN−βを2日ごとに1回で合計10日間、腫瘍内に注射する。
・実験群3(HB−48):2日ごとに1回で合計10日間、5mg/kgでHB−48を腫瘍内に注射する。
・実験群4(IFN−β/HB−48):IFN−β(1×10U、2日ごとに1回)、HB−48(5mg/kg、2日ごとに1回)を腫瘍内に注射する。処理は10日継続する。
・実験群5(IFN−β/DMF):マウスの腫瘍内にIFN−β、DMFを注射する(実験3と同じ)。
【0134】
毎日腫瘍のサイズ、死亡日を記録する。
【0135】
[結果(図7A〜7B)]
IFN−βとDMF又はHB−48との併用が、対照群よりも黒色腫の成長を顕著に阻害し(図7A)、マウスの生存時間を延長している(図7B)。
【0136】
IFN−βとHB−48との併用を腫瘍担持NOD−SCIDマウスの治療に適用する(図7C〜7D)。
【0137】
[実験手順]
腫瘍担持マウスモデルの作成:1×10の黒色腫B16細胞を4〜6週齢のNOD−SCIDマウスに移植する。35匹のマウスを無作為に5群に分ける。各マウスの重量は約20gである。7日目に腫瘍が確認される。腫瘍サイズが5mm×5mmになると、マウスに以下の処理を行う。
・対照群1(PBS):PBS腫瘍内注射。
・実験群2(IFN−β):1×10単位(U)のIFN−βを2日ごとに1回で合計10日間、腫瘍内に注射する。
・実験群3(HB−48):2日ごとに1回で合計10日間、5mg/kgでHB−48を腫瘍内に注射する。
・実験群4(IFN−β/HB−48):IFN−β(1×10U、2日ごとに1回)、HB−48(5mg/kg、2日ごとに1回)を腫瘍内に注射する。処理は10日継続する。
・実験群5(IFN−β/DMF):マウスの腫瘍内にIFN−β、DMFを注射する(実験3と同じ)。
【0138】
毎日腫瘍のサイズを計測し、マウスの死亡日を記録する。
【0139】
[結果(図7C〜7H)]
投与する過程で、IFN−βとHB−48との併用が腫瘍の成長を顕著的に阻害しており、これは統計学的に有意差があり(P<0.001)(図7)、しかもIFN−βとHB−48との併用が、IFN−βとDMFとの併用よりも顕著に優れている。関連のデータより、IFN−βとHB−48との併用が、マウスの生存を顕著に延長しており(図7B、7H)、しかもIFN−β/HB−48の併用が、IFN−β/DMFの併用よりも顕著に優れていることが判明した。また、ヒト黒色腫細胞A375、ヒト乳がん細胞MCF−7も、腫瘍担持マウスの作成にNOD−SCIDマウスに皮下注射される。10日後、腫瘍の形成が観察され、後に実験を行ってIFN−βとHB−48の併用が、腫瘍の成長に対する顕著な阻害を示すことが判明した(図7E〜7G参照)。
【0140】
実施例8:HB−48が、マウスCD8+T細胞におけるPD−1の発現を低減しT細胞の殺傷効果を増強できる。
【0141】
活性化されたマウスCD8+T細胞におけるPD−1の発現に対するHB−48の影響を測定する。
【0142】
[実験手順]
磁気ビーズ選別によってマウス脾臓CD8+T細胞を獲得してU底96ウェルプレート(10万/ウェル)に接種し、抗CD3/CD28ビーズでT細胞を活性化させる。前記培地は、RPMI−1640、マウスIL−2 10ng、50nMのβ−メルカプトエタノールからなる。以下のとおりに処理し、投与する。
・対照群1(PBS):培地とPBS。
・実験群2(Kyn):200μMのKynを培地に加える。
・実験群3(Kyn+DMF):200μMのKyn、10μMのDMFを同時に培地に加える。
・実験群4(Kyn+HB−48):200μMのKyn、10μMのHB−48を同時に培地に加える。
【0143】
フローサイトメトリーによって、各群のT細胞における48時間のPD−1の発現量を測定する。
【0144】
[結果]
HB−48はDMFよりも、CD8+T細胞におけるKyn媒介のPD−1上方制御を効果的に阻害していることから、低分子受容体に対する阻害はHB−48がDMFよりも効果的であることが判明した(図8A、8B)。
【0145】
特異的CD8+T細胞の機能に対するHB−48の影響を測定する。
【0146】
[実験手順]
磁気ビーズ選別によって獲得したOT−1マウス脾臓CD8+T細胞を、U底96ウェルプレートに接種し(10万個の細胞/ウェル)、以下の処理を行う。
・対照群1(PBS):培地にPBSを加える。
・実験群2(DMF):培地に10μMのDMFを加える。
・実験群3(HB−48):培地に10μMのHB−48を加える。
【0147】
T細胞を24時間前処理した後、3D培養したOVA−B16とOT−1 CD8+T細胞を1対10の比率で共培養した。4時間後にフローサイトメトリーによってOVA−B16細胞のアポトーシスが検出される。
【0148】
[結果]
図8Cより、OVA−B16腫瘍細胞とHB−48で前処理されたT細胞を共培養すると、アポトーシスのパーセントが顕著に上昇していた。このことから、HB−48はT細胞の低分子受容体を顕著に阻害し、PD−1の発現を下方制御し、CD8+T細胞の殺傷機能の発現を増強できることが判明した。
【0149】
実施例9:HB−48と特異的CD8+T細胞によるマウス固形腫瘍に対する効果的な養子免疫療法。
【0150】
[実験手順]
腫瘍担持マウスの作成:OVA−B16黒色腫細胞をC57BL/6マウスに接種し(接種量は1×10個の細胞)4〜6週継続する。マウスの体重は20gであり、7日目に腫瘍の形成が確認される。腫瘍サイズが5mm×5mmになると、腫瘍担持マウスに以下の処理を行う。
・対照群1(PBS):PBS腫瘍内注射のみ。
・実験群2(CD8+T細胞):腫瘍担持マウスに4×10個のOVA特異的CD8+T細胞(OT−1 T細胞)を静脈内より養子移入し、5日ごとに1回で合計3回実施する。
・実験群3(DMF):腫瘍担持マウスに、2日ごとに1回で合計10回、5mg/kgでDMFを腫瘍内に注射する。
・実験群4(HB−48):腫瘍担持マウスに、2日ごとに1回で合計10回、5mg/kgでHB−48を腫瘍内に注射する。
・実験群5(CD8+TとDMF):腫瘍担持マウスに、5日ごとに1回で合計3回、OT−1 T細胞を静脈内注射し、同時に2日ごとに1回で合計10回、DMFを腫瘍内に注射する。
・実験群6(CD8+TとHB−48):腫瘍担持マウスに、5日ごとに1回で合計3回、OT−1 T細胞を静脈内注射し、同時に2日ごとに1回で合計10回、HB−48を腫瘍内に注射する。
【0151】
毎日腫瘍の長さと幅を計測し、腫瘍体積の変化を算出する。
【0152】
[結果]
図9より、CD8+T細胞単独養子移入、HB−48単独投与は、ある程度治療効果があることが判明した。一方、CD8+T細胞とHB−48の併用が、対照よりも顕著に効果的である。HB−48は、DMFよりも効果的に、CD8+T細胞の芳香族炭化水素受容体を阻害しCD8+T細胞のインビボ殺傷効果を増強できる。
【0153】
実施例10:HB−48がヒト末梢血CD8+T細胞によるPD−1の発現を低減できる。
【0154】
乳がん患者の末梢血CD8+T細胞におけるPD−1の発現に対するHB−48の影響を測定する。
【0155】
[実験手順」
Ficollを用いて乳がん患者の末梢血から単核細胞を獲得する。磁気ビーズ選別によってCD8+T細胞を獲得して、RPMI−1640を追加したU底96ウェルプレートに接種し(10万個の細胞/ウェル)、RPMI−1640に10ng/mLのヒトIL−2が追加されている。以下のとおりに投与を行う。
・対照群1(PBS):培地にPBSを加える。
・実験群2(DMF):培地に10μMのDMFを加える。
・実験群3(HB−48):培地に10μMのHB−48を加える。
【0156】
48時間後、フローサイトメトリーによって各群のT細胞におけるPD−1の発現量を測定する。
【0157】
[結果]
図10Aに示すように、HB−48は、DMFよりも効果的に、乳がん患者の末梢血CD8+T細胞におけるPD−1の発現を下方制御している。
【0158】
アクティブな乳がん(active breast cancer)に罹患している患者の末梢血CD8+T細胞におけるPD−1の発現に対するHB−48の影響を測定する。
【0159】
[実験手順]
Ficollを用いて乳がん患者の末梢血の全血から単核細胞を獲得する。磁気ビーズ選別によってCD8+T細胞を獲得してU底96ウェルプレートに接種する(10万個の細胞/ウェル)。抗CD3/CD28ビーズによってT細胞を活性化させる。培地は10ng/mLのヒトIL−2を添加したRPMI−1640である。以下のとおりに投与を行う。
・対照群1(PBS):培地とPBS。
・実験群2(Kyn):培地に200μMのKynを加える。
・実験群3(Kyn+DMF):培地に200μMのKyn、10μMのDMFを同時に加える。
・実験群4(Kyn+HB−48):培地に200μMのKyn、10μMのHB−48を同時に加える。
【0160】
48時間後、フローサイトメトリーによって各群のT細胞におけるPD−1の発現量を測定する。
【0161】
[結果]
図10Bより、HB−48はDMFよりも乳がん患者の末梢血CD8+T細胞におけるKyn媒介のPD−1上方制御を効果的に阻害していることから、HB−48によるヒトCD8+Tの阻害が、DMFによる小細胞受容体の阻害よりも効果的であることが判明した。
【0162】
活性化されたヒト末梢血CD8+T細胞におけるKynトランスポーターPAT4の発現に対するHB−48の影響を測定する。
【0163】
[実験手順]
Ficollを用いて乳がん患者の末梢血の全血から単核細胞を獲得する。磁気ビーズ選別によってCD8+T細胞を獲得してU底96ウェルプレートに接種する(10万個の細胞/ウェル)。抗CD3/CD28ビーズによってT細胞を活性化させる。培地は10ng/mLのヒトIL−2を加えたRPMI−1640である。以下のとおりに投与を行う。
・対照群1(PBS):培地とPBS
・実験群2(Kyn):培地に200μMのKynを加える。
・実験群3(Kyn+DMF):培地に200μMのKyn、10μMのDMFを同時に加える。
・実験群4(Kyn+HB−48):培地に200μMのKyn、10μMのHB−48を同時に加える。
【0164】
48時間後、各群のT細胞からRNAを抽出し、蛍光定量PCRによってPAT4の発現を検出する。
【0165】
[結果]
図10Cに示すように、KynはトランスポーターPAT4の発現を上方制御でき、HB−48はDMFよりも効果的に乳がん患者の末梢血CD8+T細胞におけるPAT4の発現を下方制御できる。当該結果から、HB−48がCD8+T細胞によるKynの摂取を阻害しPD−1の発現を低減できることが判明した。
【0166】
まとめて、実施例に係る上記の結果から分かるように、HB−48の単独投与又はIFN−βとの併用が、固形腫瘍(例えば、A375、B16、MP−1、MCF−7)、白血病細胞(例えば、HL−60、K562、ALL−1)を効果的に死滅させることができ、殺傷効果を向上させ、腫瘍の成長を阻害している。また、当該結果から、HB−48がDMFよりも、CD8+T細胞におけるPD−1の発現を顕著に低減し、Kyn媒介のPD−1上方制御を阻害し、特異的CD8+T細胞の各種の腫瘍細胞に対する細胞毒性を増強させていることも判明した。
【0167】
実施例11:低分子阻害薬HB−48とIFNβ又はIFNγとの固形腫瘍及び白血病に対する影響について研究する。当該実験から、HB−48とIFNβ又はIFNγとの併用が、3D培養条件における固形腫瘍及び白血病細胞のクローンの成長を効果的に阻害していることが判明した。
【0168】
[実験手順]
A375、B16、MP−1、MCF−7、HL−60、K562、ALL−1を3Dソフトゲル(3000個/ウェル)に接種し、2日後に細胞の状態を観察する。培養した細胞を対照群、実験群に分けて、以下のとおりに処理を行う
・対照群1(対照):グルタミンを追加した培地(例えば、RPMI−1640培地)。
・対照群2(IFNβ又はIFNγ):グルタミンを追加した培地(例えば、RPMI−1640培地)に6ng/mlのマウスIFNβ/IFNγ又は10ng/mlのヒトIFNβ/IFNγを加える。
・対照群3(IFNβ/IFNγ+DMF):グルタミンを追加した培地(例えば、RPMI−1640培地)に6ng/mlのマウスIFNβ/IFNγ又は10ng/mgのヒトIFNβ/IFNγ、20μmol/mlのDMFを加える。
・実験群4(HB−48):グルタミンを追加した培地(例えば、RPMI−1640培地)に10μmol/mlのHB−48を加える。
・実験群5(IFNβ/IFNγ+HB−48):グルタミンを追加した培地(例えば、RPMI−1640培地)に6ng/mlのマウスIFNβ/IFNγ又は10ng/mlのヒトIFNβ/IFNγ、10μmol/mlのHB−48を加える。
・実験群6(IFNβ/IFNγ+HB−48):グルタミンを追加した培地(例えば、RPMI−1640培地)に6ng/mlのマウスIFNβ/IFNγ又は10ng/mlのヒトIFNβ/IFNγ、異なる濃度のHB−48を加える。
【0169】
培地に薬剤を均一に混合して、各実験群に添加する。薬剤処理の開始日は0日目と記録する。48時間後、96時間後に細胞を撮影する。ソフトウェアImageJを用いてクローンのサイズを分析する。2日目の対照群のクローンのサイズに基づいて、異なる時刻における各群のクローンの相対的サイズを算出し、統計学的分析を行う。
【0170】
注:培養した腫瘍細胞の特性に応じて、「マウスIFNβ/IFNγ」又は「ヒトIFNβ/IFNγ」を実験に使用する。次の実施例についても同様である。
【0171】
[結果]
各群のクローンの相対的サイズの結果、IFNβ/IFNγ+HB−48実験群細胞のクローンのサイズに対する異なる濃度のHB−48の影響を、図11A〜Dに示す。図11A〜Dは、3つの対照群、実験群4の結果であり、図11E〜Gは実験群6の結果である。
【0172】
図11に示すように、低分子阻害薬DMF及びHB−48と、IFNβ/IFNγとの併用が、より優れた腫瘍阻害効果を示している。一方、実験群IFNβ/IFNγとHB−48(IFNβ/IFNγ+HB−48)とが、固形腫瘍及び白血病細胞のクローンのサイズに対して増強した阻害効果を示している。HB−48は濃度依存的であり、これに関しては統計学的に顕著な有意差がある。
【0173】
実施例12:3D培養条件において、HB−48とIFNβ/IFNγとの併用が固形腫瘍及び白血病細胞のクローン数を効果的に低減する。
【0174】
[実験手順]
3Dゲル培養技術を用いて、約3000個の細胞/ウェルでA375、B16、MP−1、MCF−7、HL−60、K562、ALL−1細胞を培養し、2日後に細胞の状態を観察する。細胞の状態が良好であれば、以下のとおりに投与する。
・対照群1(対照):グルタミンを含有する通常培地(例えば、RPMI 1640培地)。
・実験群2(IFNβ/IFNγ):グルタミンを含有する通常培地(例えば、RPMI 1640培地)に6ng/mlのマウスIFNβ/IFNγ又は10ng/mlのヒトIFNβ/IFNγを追加する。
・実験群3(IFNβ/IFNγ+DMF):グルタミンを含有する通常培地(例えば、RPMI 1640培地)に6ng/mlのマウスIFNβ/IFNγ又は10ng/mlのヒトIFNβ/IFNγ、20μmol/mlのDMFを追加する。
・実験群4(HB−48):グルタミンを追加した通常培地(例えば、RPMI−1640培地)に低分子阻害薬HB−48を追加する。
・実験群5(IFNβ/IFNγ+HB−48):グルタミンを含有する通常培地(例えば、RPMI 1640培養液)に、6ng/mlのマウスIFNβ/IFNγ又は10ng/mlのヒトIFNβ/IFNγ、10μmol/mlのHB−48を追加する。
【0175】
培地と薬物を各群に加える前に均一に混合する必要がある。投与開始日は0日目と記録する。4日目に、顕微鏡下でクローン数を計数する。
【0176】
[結果]
各群のクローン数の観察結果を図12に示す。図12に示す集計結果では、各ヒストグラムは左側から順に、対照群、IFNβ群、IFNβ/IFNγ+DMF群、HB−48群、IFNβ/IFNγ+HB−48群と各腫瘍細胞に対応する。
【0177】
図12に示すように、HB−48とIFN−β/IFN−γとの併用処理の実験群は、固形腫瘍及び白血病細胞のクローン数を効果的に低減でき、しかもIFN−β/IFN−γとDMFとの併用よりも効果が顕著に優れている。
【0178】
実施例13:マウス骨髄に由来するマクロファージの炎症性サイトカインの発現に対する、HB−48の影響を研究する。HB−48が、マウス骨髄に由来するマクロファージが分泌する炎症性サイトカインの発現を顕著に阻害している。
【0179】
[実験手順]
マウス骨髄細胞をRPMI−1640+20ng/mLのマウスM−CSFで5日間培養して、骨髄に由来するマクロファージを獲得し、以下のとおりに処理を行う。
・対照群1(PBS):培地にPBSを加える。
・実験群2(HB−48):培地に10μMの用量でHB−48を加える。
【0180】
48時間後、マクロファージを収集し、qPCRによって、2群におけるIFN−γ、TNF−α、IL−12p35、IL−12p40、IL−2の発現を検出する。
【0181】
[結果]
図13に示すように、HB−48治療群で、IFN−γ、TNF−α、IL−12p35、IL−12p40、IL−1βの発現が顕著に低減していることから、HB−48がマクロファージによる炎症性サイトカインの分泌を顕著に阻害できることが判明した。
【0182】
以上のデータは大量研究の結果を反映している。実施例1〜実施例13の各実施例より、低分子阻害薬HB−48が固形腫瘍及び白血病の悪性成長を効果的に阻害できることが判明した。また、低分子阻害薬HB−48とIFNβ又はIFNγとが併用される場合は、一方の用量を低減するとより優れた治療効果が確認されることから、低分子阻害薬HB−48とIFNβの併用は、有効治療用量を低減できるだけでなく、治療効果を顕著に向上できることが判明した。臨床治療において、抗がん効果と腫瘍成長の阻害効果を増強できる。
【0183】
HB−48(低分子阻害薬)は、DMFよりもCD8+T細胞におけるPD−1の発現を顕著に低減し、Kyn媒介のPD−1上方制御を阻害し、特異的CD8+T細胞の腫瘍細胞に対する細胞毒性を増強することができる。
【0184】
実施例14:発明を実施するための形態
A1. 下記式Iの構造を含むキノカルコン化合物又はその塩を含む組成物。
【化6】
A2. インターフェロン又はそのバリアントをさらに含む実施形態A1に記載の組成物。
A2.1. 有機溶媒をさらに含む実施形態A1、A2のいずれか1項に記載の組成物。
A2.2. 有機溶媒は3’,4’−ジメトキシフラボン(DMF)であるA2.1に記載の組成物。
A2.3. がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞のアポトーシス、壊死、オートファジー、又は死亡を誘導する実施形態A1〜A2.2のいずれか1項に記載の組成物。
A2.4. がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移を阻害、抑制、解消、又は停止する実施形態A1〜A2.3のいずれか1項に記載の組成物。
A3. 前記IFNはIFN−β又は生理活性を有するそのバリアントである実施形態A2〜A2.4のいずれか1項に記載の組成物。
A3.1. 前記IFN−βはヒトIFN−βである実施形態A2.5に記載の組成物。
A4. 前記IFNはIFN−γ又は生理活性を有するそのバリアントである実施形態A2〜A2.4のいずれか1項に記載の組成物。
A4.1. 前記IFN−γはヒトIFN−γである実施形態A4に記載の組成物。
A5. 薬学的に許容される1種以上の賦形剤を含む医薬組成物である実施形態A1〜A4.1のいずれか1項に記載の組成物。
A6. 1μg〜100g、1mg〜100g、100mg〜10g、又は1g〜10gのキノカルコン化合物を含む実施形態A1〜A5のいずれか1項に記載の組成物。
A7. 1ng/ml〜1g/ml、1μg/ml〜100mg/ml、又は100μg/ml〜100mg/mlのキノカルコン化合物を含む実施形態A1〜A6のいずれか1項に記載の組成物。
A8. 1×10単位(U)〜10×10U、1×10U〜1×10U、又は1×10U〜4×10UのIFNを含む実施形態A2〜A7のいずれか1項に記載の組成物。
A9. 1×10U/ml〜10×10U/ml、1×10U/ml〜10×10U/ml、1×10U/ml〜10×10U/ml、1×10U/ml〜1×10U/ml、又は1×10U/ml〜1×10U/mlのIFNを含む実施形態A2〜A8のいずれか1項に記載の組成物。
【0185】
B1. がんの治療を必要とする対象に治療有効量の実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含むがんの治療方法。
B2. がんに罹患している又はがんの罹患が疑われる対象のがんを治療するための、実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
B3. 前記対象はヒトである実施形態B2に記載の用途の組成物。
【0186】
C1. がんの治療を必要とする対象に、治療有効量のキノカルコン化合物又はその塩、治療有効量のIFN又は生理活性を有するそのバリアントを投与することを含むがんの治療方法。
C1.1. 前記キノカルコン化合物は式Iの構造を含む実施形態C1に記載の方法。
【化7】
C2. 前記IFNはIFN−β又は生理活性を有するそのバリアントである、又は前記IFNはIFN−γ又は生理活性を有するそのバリアントである、実施形態C1、C1.1のいずれか1項に記載の方法。
C2.1. 前記IFNはヒトIFN又は生理活性を有するそのバリアントである、実施形態C1〜C2のいずれか1項に記載の方法。
C3. 前記対象はヒトである、実施形態B1、C1〜C2のいずれか1項に記載の方法。
C4. 前記対象はがんに罹患している又はがんの罹患が疑われる、実施形態B1〜B3、C1〜C3のいずれか1項に記載の方法。
C5. 前記がんは新生物(neoplasm)、又は腫瘍(tumor)である、実施形態B1〜B3、C1〜C4のいずれか1項に記載の方法。
C6. 前記がんは悪性であり、且つ/又は、転移性がある、実施形態B1〜B3、C1〜C5のいずれか1項に記載の方法。
C7. 前記がんは非転移性である実施形態B1〜B3、C1〜C5のいずれか1項に記載の方法。
C8. 前記がんは、がん腫(carcinoma)、肉腫、神経腫、リンパ腫、骨髄腫、白血病、黒色腫、中皮腫、固形腫瘍又は軟部組織腫瘍、二次がんから選択される、実施形態B1〜B3、C1〜C7のいずれか1項に記載の方法。
C9. 前記がん腫(carcinoma)は、呼吸器系がん、消化器系がん、泌尿生殖器系がん、精巣がん、前立腺がん、内分泌器系がん、皮膚基底細胞がん、原発不明がん腫(carcinoma of unknown primary)、胆管がん、非浸潤性乳管がん(DCIS)、メルケル細胞がん、肺がん、胸腺腫と胸腺がん、正中線がん、小細胞肺がん、甲状腺がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、頭頸部扁平上皮がん、乳がん、上皮がん、副腎皮質がん、上皮性卵巣がん等から選択される、実施形態C8に記載の方法。
C10. 前記がんは、子宮がん、子宮頸がん、結腸がん、膵臓がん、腎臓がん、食道がん、胃がん、卵巣がんから選択される、実施形態C8に記載の方法。
C11. 前記肉腫は、ユーイング肉腫、リンパ肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、横紋筋肉腫、子宮肉腫、軟骨肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫等から選択される、実施形態C8に記載の方法。
C12. 前記神経腫は、神経膠腫、膠芽腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠細胞系腫瘍等から選択される、実施形態C8に記載の方法。
C13. 前記リンパ腫、前記骨髄腫、又は前記白血病は、骨髄芽球性白血病、多発性骨髄腫、低分化型急性白血病(例えば、赤芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病)、急性前骨髄球性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)(B細胞性ALL、T細胞性ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphoblastic leukemia)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、略称CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、有毛細胞白血病(HLL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、非ホジキンリンパ腫及びそのバリアント、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキンリンパ腫、リードシュテルンベルク病、及びこれらのバリアントから選択される、実施形態C8に記載の方法。
C14. 前記軟部組織腫瘍又は固形組織腫瘍は、内臓腫瘍、精上皮腫、肝細胞腫、乳がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、及び子宮、卵巣、精巣、頭、頸、眼、脳、口部、咽頭、声帯、耳、鼻、食道、胃、腸、結腸、副腎、腎臓、骨、膀胱、尿道、がん腫、肺、筋肉、皮膚、足、手、軟部組織における他の軟部組織腫瘍又は固形組織腫瘍から選択される、実施形態C8に記載の方法。
C15. 前記対象に抗がん治療を行うことをさらに含む実施形態B1〜B3、C1〜C14のいずれか1項に記載の方法。
C16. 前記抗がん治療は、前記対象にがんワクチンを投与することを含む実施形態C15に記載の方法。
C17. 前記抗がん治療は、前記対象に化学療法剤を投与する又は放射線療法を行うことを含む実施形態C15に記載の方法。
C18. 前記抗がん治療は、前記対象に免疫療法を行うことを含む実施形態C15に記載の方法。
C19. 前記免疫療法は、CD20、CD52、CD274、CD279、CTLA−4、プログラムされたデスリガンド1(PD−L1)、プログラムされた細胞死−1(PD−1)、又はPD−1受容体と特異的に結合する抗体を投与することを含む実施形態C18に記載の方法。
C20. キノカルコン化合物、IFNを対象に同時に投与する実施形態B1〜B3、C1〜C19のいずれか1項に記載の方法。
C21. キノカルコン化合物、IFNを個別に対象に投与する実施形態B1〜B3、C1〜C19のいずれか1項に記載の方法。
C22. キノカルコン化合物、IFNをそれぞれ5分間以内、1〜12時間以内、又は1〜2日以内に対象に投与する実施形態C21に記載の方法。
C23. 前記キノカルコン化合物の治療有効量は、1μg/kg(APIの重量/対象の体重)〜10g/kg、1mg/kg〜10g/kg、1mg/kg〜1g/kg、1mg/kg〜100mg/kg、又は1mg/kg〜10mg/kgの量を含む実施形態B1〜B3、C1〜C22のいずれか1項に記載の方法。
C24. 前記治療有効量のキノカルコン化合物が月1回、週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、これらの間の間隔(intervening intervals thereof)、又はこれらの組み合わせから選択された頻度で投与される、実施形態C23に記載の方法。
C25. 前記IFNの治療有効量は、1ug〜1000ug、10ug〜500ug、25ug〜300ug、又は30ug〜250ugの範囲内の量であり、且つ、月1回、月2回、週1回、週2回、2日に1回、又は1日1回から選択された頻度で投与される、実施形態B1〜B3、C1〜C24のいずれか1項に記載の方法。
【0187】
D1. 下記式Iの構造を含むキノカルコン化合物又はその塩。
【化8】
D2. HB−48である、実施形態D1に記載のキノカルコン化合物。
D3. がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞を実施形態D1又はD2に記載のキノカルコン化合物に接触させることを含む、がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞のアポトーシス、壊死、オートファジー、又は死亡を誘導する方法。
D4. 上記のがん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞をIFNβ、又はIFNγに接触させることをさらに含む、実施形態D3に記載の方法。
D5. がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移を抑制(suppressing)、解消(abrogating)、又は停止するための、実施形態D1又はD2に記載のキノカルコン化合物の使用。
D6. (i)実施形態D1又はD2に記載のキノカルコン化合物と、(ii)IFNβ又はIFNγとを含む組成物の、がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移を抑制、解消、又は停止するための使用。
【0188】
E1. がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞を実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物に接触させることを含む、がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞のアポトーシス、壊死、オートファジー、又は死亡を誘導する方法。
E2. 前記接触によって、がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞のアポトーシス、壊死、オートファジー、又は死亡が誘導される、実施形態E1に記載の方法。
E3. 前記接触によって、分化した腫瘍細胞、休眠する腫瘍幹細胞のアポトーシス、壊死、オートファジー、又は死亡が誘導される、実施形態E2に記載の方法。
E4. がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞を実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物に接触させることを含む、がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移を阻害、抑制、解消、又は停止する方法。
E5. 前記接触によって、がん、がん細胞、悪性細胞、腫瘍細胞、分化した腫瘍細胞、腫瘍幹細胞、又は休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移が阻害、抑制、解消、又は停止される、実施形態E4に記載の方法。
E6. 前記接触によって、分化した腫瘍細胞、休眠する腫瘍幹細胞の成長、活性、又は転移が阻害、抑制、解消、又は停止される、実施形態E5に記載の方法。
【0189】
F1. CD8+T細胞を実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物に接触させることによって、CD8+T細胞におけるPD−1の発現を阻害、低減、抑制、解消、又は阻止することを含む、CD8+T細胞におけるPD−1の発現を阻害、低減、抑制、解消、又は阻止する方法。
F2. CD8+T細胞におけるPD−1の発現は、Kyn媒介のPD−1上方制御の結果である、F1に記載の方法。
F3. (i)事前にkynに接触させておいたCD8+T細胞を提供することと、(ii)前記CD8+T細胞を実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物に接触させることによって、CD8+T細胞におけるPD−1の発現を阻害、低減、抑制、解消、又は阻止することと、を含むCD8+T細胞におけるkyn媒介のPD−1の発現を阻害、低減、抑制、解消、又は阻止する方法。
【0190】
G1. (i)CD8+T細胞を実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物に接触させることと、(ii)CD8+T細胞を腫瘍細胞に接触させることによって、CD8+T細胞を介して腫瘍細胞毒性を誘導、又は増強することと、を含むCD8+T細胞が媒介する腫瘍細胞毒性を誘導、又は増強する方法。
【0191】
H1. 炎症を治療するための、実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物、又は、実施形態D1〜D4のいずれか1項に記載のキノカルコン化合物の使用。
H2. 前記炎症は血管炎、関節炎、変形性関節症、又は大腸炎である、実施形態H1に記載の用途の組成物。
【0192】
J1. 実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物、又は実施形態D1〜D4のいずれか1項に記載のキノカルコン化合物を含む、ヒト用の食品。
【0193】
K1. 炎症の治療を必要とする対象に、治療有効量の実施形態A1〜A9のいずれか1項に記載の組成物、又は実施形態D1〜D4のいずれか1項に記載のキノカルコン化合物を投与することを含む炎症の治療方法。
【0194】
L1. HB−48を含む組成物。
L2. IFN−β又はそのバリアントをさらに含む、実施形態L1に記載の組成物。
L3. 薬学的に許容される1種以上の賦形剤を含む医薬組成物である、実施形態L1又はL2に記載の組成物。
L4. 前記IFN−βはヒトIFN−βである、実施形態L2又はL3に記載の組成物。
L5. IFN−βのバリアントは生理活性を有するバリアントである、実施形態L2〜L4のいずれか1項に記載の組成物。
L6. がんの治療が適用される対象に、治療有効量の実施形態L1〜L5のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、がんの治療方法。
L7. がんの治療が適用される対象に、治療有効量のHB−48を単独で投与する、又は治療有効量のHB−48と治療有効量のIFN−βを併用することを含む、がんの治療方法。
L8. 前記IFN−βはヒトIFN−β又は生理活性を有するそのバリアントである、実施形態L6又はL7に記載の方法。
L9. 前記対象はヒトである実施形態L6〜L8のいずれか1項に記載の方法。
L10. 前記がんは、リンパ腫、白血病、造血組織腫瘍、骨髄腫、黒色腫、固形腫瘍から選択される、実施形態L6〜L9のいずれか1項に記載の方法。
L11. 前記対象に抗がん治療を行うことをさらに含む、実施形態L6〜L11のいずれか1項に記載の方法。
L12. 前記抗がん治療は、前記対象にがんワクチンを投与することを含む、実施形態L11に記載の方法。
L13. 前記抗がん治療は、前記対象に化学療法剤を投与することを含む、実施形態L11に記載の方法。
L14. HB−48、IFN−βを同時に対象に投与する、実施形態L6〜L13のいずれか1項に記載の方法。
L15. HB−48、IFN−βを個別に対象に投与する、実施形態L6〜L13のいずれか1項に記載の方法。
L16. 前記HB−48、前記IFN−βをそれぞれ5分間以内、1〜12時間以内、又は1〜2日以内に投与する、実施形態L15に記載の方法。
【0195】
M1. 腫瘍疾患を治療する医薬品を製造するための、以下の構造を有するキノカルコン化合物の使用。
【化9】
M2. 前記腫瘍疾患は、乳がん、悪性黒色腫、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、脳腫瘍、又は白血病を含む、実施形態M1に記載の使用。
M3. 腫瘍疾患を治療する前記医薬品は、注射剤形、経口剤形を含む、実施形態M1又はM2に記載の使用。
M4. 腫瘍疾患を治療する前記試薬は、単位製剤である、実施形態M1〜M3のいずれか1項に記載の使用。
M5. 1〜5mgの前記キノカルコン化合物が有効成分として単位製剤なる前記医薬品に含まれる、実施形態M4に記載の使用。
M6. 腫瘍疾患を治療する前記試薬は、治療有効量のインターフェロン、キノカルコン化合物を含む試薬組成物である、実施形態M1〜M3に記載のいずれか1項の使用。
M7. 腫瘍疾患を治療する試薬は単位製剤である、実施形態M6に記載の使用。
M8. 単位剤形なる前記医薬品に腫瘍治療有効量のインターフェロン、1〜5mgのキノカルコン化合物が有効成分として含まれる、実施形態M7に記載の使用。
M9. 単位製剤は前記医薬品において1×10U〜4×10Uのインターフェロンを含む、実施形態M8に記載の使用。
M10. 腫瘍疾患を治療する前記医薬品は、臨床用抗腫瘍薬、キノカルコン化合物の製剤を含む組成物である、実施形態M1〜M4のいずれか1項の使用。
M11. 前記臨床用抗腫瘍薬は、抗腫瘍ワクチン又は化学療法薬を含む、実施形態M10に記載の使用。
M12. 前記治療有効成分はインターフェロン、実施形態M1に記載のキノカルコン化合物を含む抗腫瘍剤を製造するための試薬組成物。
M13. 単位製剤である実施形態M12に記載の製剤組成物。
M14. 単位用量の製剤に治療有効量の腫瘍インターフェロン、1〜5mgのキノカルコン化合物が有効成分として含まれる、実施形態M13に記載の組成物。
M15. 単位製剤は1×10U〜4×10Uのインターフェロンを含む、実施形態M14に記載の製剤。
M16. 前記インターフェロンはインターフェロンβ、インターフェロンγから選択される、実施形態M12〜M15に記載の試薬組成物。
M17. 治療有効成分として実施形態M1に記載のキノカルコン化合物、臨床用抗腫瘍剤が含まれる抗腫瘍剤組成物。
M18. 前記臨床用抗腫瘍剤は抗腫瘍ワクチン又は化学療法剤を含む、実施形態M17に記載の組成物。
【0196】
本明細書において言及する各特許、特許出願、刊行物、又は他の参考文献もしくは論文は、いずれも本願に援用される。もし矛盾が生じる場合、本明細書(定義の部分を含む)に準拠する。
【0197】
特許、特許出願、刊行物、又は他の論文を援用することは、これらの内容が関連の従来技術であることを認めるわけではなく、また、これらの刊行物又は論文の内容又は記載の日時を認めるわけでもない。
【0198】
特に定義される場合を除き、本願で使用される技術用語、科学用語は、そのいずれも当業者が理解している通常の意味を有する。本願に記載の関連の内容に類似する又は等価な方法又は材料は、本発明の実施又は検証に供することができるが、本願において適切な方法又は材料が提供されている。
【0199】
本願に記載の特徴は、いずれも適切に組み合わせることができる。本明細書に開示されている各特徴は、同一の目的、等価な目的、又は類似する目的とする特徴に置き換えてもよい。したがって、特に説明される場合を除き、開示されている特徴(例えば、抗体)は、その等価な特徴又は類似する特徴に関する一つの例に過ぎない。
【0200】
文脈中に明確に説明される場合を除き、本願で使用される数値、又は数値の範囲は、いずれも当該範囲内の整数、及び、当該範囲内の値又は整数に関する分数を含む。また、本明細書に値の列挙がある(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%又は86%)場合は、当該列挙は全ての中間の値、分数値(例えば、54%、85.4%)を含む。したがって、例えば、80%以上と記載された場合は、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%等、及び81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%等、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%等も含む。
【0201】
量に関する記載に「未満」が添えられた場合は、量の参照用に記載された数字より小さいゼロ以外の任意の量を含む。
【0202】
一連の範囲が記載された場合は、当該一連の範囲の境界値を組み合わせてなる範囲も含む。例えば、当該一連の範囲の説明として、例えば、1〜10及び10〜20が記載された場合は、1〜20である範囲を含む。
【0203】
なお、本願技術の基本を逸脱しない範囲で、関連の内容の補正が可能である。1つ以上の特定の実施形態を参照して、本願技術に関して多くの詳細な説明がされているが、本願に開示されている具体的な実施形態に変更を加えることができ、ただし変更として補正又は改良を加えた場合は、本願技術の趣旨の範囲内とすべきであることは当業者に自明である。
【0204】
本願では一般に、本発明に係る各種の実施形態、又は態様の具体的な説明に肯定形式の文言を使用しているが、本発明はまた、特定の事項(subject matter)が全部又は部分的に排除された実施形態、例えば、物質もしくは材料、方法のステップと条件、実施形態もしくは手順も含む。例えば、本発明に係るいくつかの実施例又は態様において、材料及び/又は方法のステップが排除される。したがって、本願では一般に、本発明が特定の事項を含まないという形式の表現を採用していないため、本願の記載には、本発明に明確に排除されていない特定の事項も含まれる場合がある。
【0205】
本願では具体的に説明されていない要素(element)が存在する場合においても、本明細書に例示的に説明された技術を適宜実施することができる。したがって、例えば、本願の各種の実施形態において、用語「含む」、「実質的に…からなる」、「…からなる」のいずれか一方は、他の2つの用語のいずれかが代用できる。記載されていた用語、表現は、限定の目的ではなく、説明目的の文言として理解される。しかもこれらの用語、表現の使用によって、すでに表示又は説明がされた特徴又はその一部に関する任意の等価な形態が排除されるわけではなく、且つ、本願技術の趣旨を超えない範囲内で各種の補正は可能である。用語「1つ」又は「1個」は、文脈中に一つの要素又は特定数量の要素と明確な記載がある場合を除き、それによって修飾された1つ以上の当該要素を指してもよい(例えば、「1種の試薬」と記載の場合は1種以上の試薬を意味してもよい)。本願で使用される用語「約」は、参照用に記載された数値の10%以内の値(即ち、±10%)であることを指し、しかも一連の値の前に添えられた用語「約」は、それぞれの値を修飾している(即ち、「約1、2、3」とは、約1、約2、約3であることを指す)。例えば、「約100g」の重量と記載された場合は、90g〜110gの間の重量を含む。本願で使用される用語「実質的に」は、数値を修飾して使用される用語であり、「少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%」、「少なくとも96%」、「少なくとも97%」、「少なくとも98%」、又は「少なくとも99%」であって、しかも100%を含むことを意味する。例えば、Xを実質的に含まない組成物と記載された場合は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満のXを含み、且つ/又は、前記組成物にXが存在しないもしくは検出されないことであってもよい。
【0206】
用語「特異的結合」とは、特定のインビトロ測定方法(例えば、Elisa、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー等)において、標的タンパク質又はペプチドとの結合が他の分子又はペプチドとの結合より優先する結合剤を指す。特異的結合による相互作用は、非特異的結合による相互作用の約2倍以上、一般に約10倍以上に相当し、場合によって、約100倍以上、1000倍以上、1万倍以上、10万倍以上、又は100万倍以上に相当する。
【0207】
なお、典型的な実施形態、好ましい特徴を参照して本願技術を具体的に開示してはいるが、当業者が本願に開示されている内容に補正、変形を行うことができ、しかもこれらの補正又は変形が本願技術の範囲に含まれることは理解される。
図1
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