特許第6987279号(P6987279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987279
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】平滑化装置付き粉末層3次元プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/218 20170101AFI20211213BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20211213BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20211213BHJP
   B22F 12/63 20210101ALI20211213BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20211213BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20211213BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20211213BHJP
   B29C 64/188 20170101ALI20211213BHJP
   B29C 64/165 20170101ALN20211213BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALN20211213BHJP
【FI】
   B29C64/218
   B29C64/321
   B33Y30/00
   B22F12/63
   B22F12/50
   B22F3/16
   B28B1/30
   B29C64/188
   !B29C64/165
   !B33Y10/00
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-563761(P2020-563761)
(86)(22)【出願日】2019年5月21日
(65)【公表番号】特表2021-519713(P2021-519713A)
(43)【公表日】2021年8月12日
(86)【国際出願番号】US2019033242
(87)【国際公開番号】WO2019231748
(87)【国際公開日】20191205
【審査請求日】2021年1月13日
(31)【優先権主張番号】16/151,569
(32)【優先日】2018年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/677,309
(32)【優先日】2018年5月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516046581
【氏名又は名称】ザ エクスワン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ストラウド、アダム、ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス、リック、ディー
(72)【発明者】
【氏名】マッコイ、マイケル、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】デュガン、アンソニー、エス
(72)【発明者】
【氏名】ボルト、ジョゼフ、ジェイ
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−012282(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0066190(US,A1)
【文献】 特開2016−221870(JP,A)
【文献】 特開2017−132059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 10/00 − 99/00
B22F 10/00 − 12/90
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末層3次元プリンタであって、
粉末床を収容するように適合された造形ボックスと、
回転軸を有する反転ローラを備え、当該反転ローラは当該回転軸に沿って延びる複雑な粉末係合面を有し、当該粉末床に堆積した粉末の表面にせん断力を与えるように適合されている、平滑化装置と、
当該平滑化装置を、当該造形ボックスを横切って移動させるように適合されたキャリッジと
を具備するものであり、
前記複雑な粉末係合面の少なくとも一部が、隆起、溝、稜、縦溝、ローレット目、およびエッジから成る群から選択された構造を有する、
粉末層3次元プリンタ。
【請求項2】
前記複雑な粉末係合面の少なくとも一部が、前記回転軸に沿って延びる1本以上の縦溝を有する、請求項1の粉末層3次元プリンタ。
【請求項3】
前記1本以上の縦溝の各々が、前記回転軸と平行な直線状の溝から成る、請求項2の粉末層3次元プリンタ。
【請求項4】
前記1本以上の縦溝の各々が、前記回転軸の周りにねじれている螺旋状の溝から成る、請求項2の粉末層3次元プリンタ。
【請求項5】
前記1本以上の縦溝のねじり比が、1対1.90cmないし1対127cmの範囲である、請求項4の粉末層3次元プリンタ。
【請求項6】
前記複雑な粉末係合面の少なくとも一部が、前記回転軸に沿って延びるローレット目を有する、請求項1の粉末層3次元プリンタ。
【請求項7】
前記ローレット目が菱形のパターンから成る、請求項の粉末層3次元プリンタ。
【請求項8】
前記ローレット目が真直ぐな稜線のパターンから成る、請求項の粉末層3次元プリンタ。
【請求項9】
前記平滑化装置が、前記キャリッジ上に配置された仕上げローラをさらに具備し、当該仕上げローラは、前記キャリッジが前記造形ボックスを横切って移動する際に前記反転ローラに追従するように垂直方向に調節可能であることを特徴とする、請求項1の粉末層3次元プリンタ。
【請求項10】
前記キャリッジ上に配置された粉末ディスペンサをさらに具備し、当該粉末ディスペンサと前記垂直方向に調節可能な仕上げローラとの間に前記反転ローラが配置されることを特徴とする、請求項9の粉末層3次元プリンタ。
【請求項11】
前記造形ボックス内に造形粉末を供給するように適合された粉末ディスペンサをさらに具備し、前記平滑化装置は前記キャリッジ上に配置された仕上げローラをさらに具備し、当該仕上げローラは前記キャリッジが前記造形ボックスを横切って移動する際に前記反転ローラに追従するように垂直方向に調節可能であり、当該粉末ディスペンサと前記平滑化装置は互いに独立に移動可能であることを特徴とする、請求項1の粉末層3次元プリンタ。
【請求項12】
前記ローレット目が菱形のパターンから成る、請求項6の粉末層3次元プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な粉末係合面を有する反転ローラを含む平滑化装置を有する粉末層3次元プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、さまざまな種類の3次元プリンタが存在する。3次元プリンタとは、1つ以上の材料を系統的に積み重ねることにより3次元の物品の電子的表現を物品それ自体に変換する装置である。本発明の装置は、順次積み重ねられた粉末層の予め選択された領域を選択的に結合させることにより3次元の物品を作り出す種類の3次元プリンタに特に有用である。この種類の3次元プリンタは、3次元物品を構築するための造形材料として粉末の層を用いるので、本明細書では「粉末層3次元プリンタ」と呼ぶことにする。このような粉末をベースとする3次元プリンタの例として、結合剤噴射3次元プリンタ、選択的焼結3次元プリンタ、および電子ビーム溶融3次元プリンタが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0003】
「粉末」という用語は、当技術分野では「粒子状物質」または「粒子」と呼ばれることもあると理解されたい。「粉末」という用語は、本明細書では、どのような名称であれ、3次元プリンタで層形成材料として使われるあらゆる材料を意味するものと解釈されるべきである。粉末は、粉末の形態を取り得る物質であれば、例えば金属、プラスチック、セラミックス、炭素、黒鉛、複合材料、鉱物およびこれらの組み合わせなど、いかなる種類のもので構成してもよい。本明細書で使用する「造形粉末」という用語は、粉末層を形成するために用いられる粉末であって、粉末層3次元プリンタで物品を構築するための材料となる粉末を意味する。
【0004】
粉末層3次元プリンタの動作中、造形粉末の第1の層は垂直方向に割り出しできる造形プラットフォームの上に堆積し、次いで、第1の粉末層の上に後続の粉末層が一度に1層ずつ堆積していく。選択された粉末層の選択部分が互いに結合されるように処理することにより、1つ以上の3次元物品が形成される。堆積した粉末層のうち互いに結合していない部分を、本明細書では「粉末床」と総称する。
【0005】
粉末層を形成するプロセスを当技術分野では「リコーティング」と呼ぶことがあり、本明細書ではその呼称を用いる。リコーティングを行う特定の粉末層3次元プリンタの装置またはそのような複数の装置の組合せを当技術分野では「粉末リコータ」またはより簡潔に「リコータ」と呼ぶことがあり、本明細書ではその呼称を用いる。
【0006】
一部の粉末層3次元プリンタでは、まず、貯蔵部内で粉末を支持するプラットフォームを所定量だけ上方に割り送ることによって貯蔵部壁の上方に所定量の粉末を上昇させ、次に、例えばドクターブレードや反転ローラを用いて当該プラットフォームまたは粉末床の上面全体に当該所定量の粉末を押し出すことによって、上部が開いた定置式の粉末貯留部から所定量の造形粉末を移送することにより、各粉末層を形成する。そのようなリコータの例は、Cimaらに付与された米国特許第5,387,380号に記載されている。そのようなリコータは、一般的に、リコーティング方向の長さが数十センチメートル以下の比較的小型の粉末床と一緒での使用に限られる。
【0007】
一部の粉末層3次元プリンタでは、移動式の粉末ディスペンサを具備するリコータによって、造形プラットフォームまたは既存の粉末床の上に各粉末層を堆積させ、当該ディスペンサは、当該造形プラットフォームまたは当該粉末床の上をトラバースする際に開口スリットを介して造形粉末を分配する。そのようなリコータの例は、Hochsmannらに付与された米国特許第7,799,253B2号に記載されている。そのようなリコータは、粉末層の最上部を平滑にするように適合された装置を含んでも含まなくてもよい。本明細書で使用する「平滑化」という用語は、或る量の粉末に対して次の少なくとも1つの操作を実施することを意味する。すなわち、(a)当該或る量の粉末の少なくとも一部を層に形成すること、(b)当該或る量の粉末から成る層の少なくとも一部の表面の粗さを低減すること、および(c)当該或る量の粉末から成る層の少なくとも一部を圧縮すること、のうちの少なくとも1つである。本明細書では、或る量の粉末を平滑化するための機構を「平滑化装置」と呼ぶ。
【0008】
平滑化装置を有するリコータの先行技術の一例を図1A、1Bに示す。図1Aに示す先行技術のリコータ2に含まれるブリッジ部3は、その両端部に、粉末床(図示せず)を横切ってリコータ2を選択的に移動させるための一対の平行なトロリー(図示せず)にリコータ2を取り付けるように適合された第1のトロリーマウント4aおよび第2のトロリーマウント4bを有する。図1Bは、図1Aの切断面1B-1Bに沿って切断したリコータ2の断面図である。リコータ2は、上部粉末貯蔵部5と、粉末分配機構7と、滑らかな円筒面を有する電動式反転ローラ6の形態をとる粉末平滑化装置とを含む。動作中、リコータ2は矢印Aで示す方向に移動し、上部粉末貯蔵部5および下部粉末貯蔵部8から弁を介して粉末支持板9の上に粉末(図示せず)を分配し、さらにそこから粉末床(図示せず)の上に粉末を分配する。反転ローラ6は、粉末分配機構7に追従し、堆積した粉末にローラの滑面を接触させ、堆積した粉末を滑らかにする。
【0009】
当技術分野に今日存在する滑面を有する円筒形ローラは、その所期の目的達成に概して有効であるが、堆積した粉末の平滑化のためのリコーティング速度に関して改善の余地がある。単一層の平滑化速度がわずかに上昇するだけでも、粉末床で1つ以上の物品を生産するのに必要な数百層または数千層を積算した場合に有意な差が生じる。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、粉末床を収容するように適合された造形ボックスと、回転軸と当該回転軸に沿って延びる複雑な粉末係合面とを有する反転ローラを具備する平滑化装置と、当該平滑化装置を造形ボックスを横切って移動させるように適合されたキャリッジとを具備する粉末層3次元プリンタを提供する。
【0011】
当該反転ローラの一部の実施態様において、当該複雑な粉末係合面の少なくとも一部は、当該回転軸に沿って延びる1本以上の縦溝を有している。当該1本以上の縦溝は、当該回転軸と平行な直線状の溝を含んでもよいし、当該回転軸の周りにねじれている螺旋状の縦溝を含んでもよい。当該螺旋状の縦溝のねじり比は、約1対約0.75インチないし約1対約50インチの範囲とすることができる。
【0012】
当該反転ローラはさらに、当該回転軸に沿って延びるローレット目付きの複雑な粉末係合面を含んでもよい。一部の実施態様において、当該ローレット目は、菱形パターンまたは真直ぐな稜線パターンを有する。
【0013】
当該粉末層3次元プリンタの当該平滑化装置の或る実施態様は、当該キャリッジの上に配置された垂直方向に調節可能な仕上げローラをさらに具備することができ、当該仕上げローラは、当該キャリッジが当該造形ボックスを横切って移動する際に当該反転ローラに追従する。一部の実施態様では、当該キャリッジ上に粉末ディスペンサを配置し、当該粉末ディスペンサと当該垂直方向に調節可能な仕上げローラとの間に当該反転ローラが配置されるようにしてもよい。別の実施態様では、当該粉末ディスペンサと当該平滑化装置は互いに独立に移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の特徴の重要度および利点を、添付の図面を参照して以下により詳しく説明する。ただし、添付の図面は説明目的のためにのみ作成されており、本発明の範囲を規定するものではないことを理解されたい。
【0015】
図1A】粉末分配機構と反転ローラとを有する先行技術のリコータの等角図である。
【0016】
図1B図1Aの先行技術のリコータを、図1Aの切断面1B−1Bに沿って切断した等角断面図である。
【0017】
図2】粉末層3次元プリンタ10の一実施態様の概略斜視図である。
【0018】
図3A】リコータの一実施態様の等角側面図である。
【0019】
図3B】リコータの実施態様の等角底部斜視図である。
【0020】
図4】一実施態様に従って縦溝が設けられた面を有する反転ローラの等角斜視図である。
【0021】
図5】一実施態様に従ってローレット目の付いた面を有する反転ローラの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本セクションでは、本発明の好ましい実施態様のいくつかを、当業者が過度な実験を行うことなく本発明を実施できるよう十分詳細に示す。ただし、本セクションに記載された限られた数の好ましい実施態様は、特許請求の範囲に示す本発明の範囲を何ら制限するものではないことを理解されたい。
【0023】
本セクションまたは本明細書の他のいずれかの部分に値の範囲が記載される場合、当該範囲は常に、両端点とその間にあるすべての点をあたかもそれらが明示的に記載されているかのように含むことを理解されたい。他に明記しない限り、本明細書で使用する用語「約」および「実質的に」は、その「約」および「実質的に」という語が修飾する値または状態に関連する通常の計測限度および/または製造限度を意味するものとして解釈されたい。特に断りのない限り、本明細書で使用する「実施態様」という用語は、本発明の実施態様を意味する。
【0024】
本発明のリコータは、粉末層3次元プリンタに特に有用である。リコータは任意の種類の粉末層3次元プリンタとともに使用できるが、本セクションでは簡潔化のため、粉末層3次元プリンタの種類としては結合剤噴射式3次元プリンタのみを論じる。結合剤噴射式3次元プリンタは、インクジェット印刷用に開発されたものによく似た印刷ヘッドを用いて結合剤を噴射するので、当技術分野では「3次元インクジェットプリンタ」と呼ばれることもある。基本的な結合剤噴射式3次元印刷プロセスは、マサチューセッツ工科大学(MIT)で1980年代に発明され、さらに1990年代に開発されたものであり、以下を含む数々の米国特許に記述されている。Sachsらの5,490,882号、Cimaらの第5,490,962号、Cimaらの第5,518,680号、Bredtらの第5,660,621号、Sachsらの第5,775,402号、Sachsらの第5,807,437号、Sachsらの第5,814,161号、Bredtらの第5,851,465号、Cimaらの第5,869,170号、Sachsらの第5,940,674号、Sachsらの第6,036,777号、Sachsらの第6,070,973号、Sachsらの第6,109,332号、Sachsらの第6,112,804号、Vacantiらの第6,139,574号、Sachsらの第6,146,567号、Vacantiらの第6,176,874号、Griffithらの第6,197,575号、Monkhouseらの第6,280,771号、Sachsらの第6,354,361号、Sachsらの第6,397,722号、Sherwoodらの第6,454,811号、Yooらの第6,471,992号、Sachsらの第6,508,980号、Monkhouseらの第6,514,518号、Cimaらの第6,530,958号、Sachsらの第6,596,224号、Sachsらの第6,629,559号、Teungらの第6,945,638号、Sachsらの第7,077,334号、Sachsらの第7,250,134号、Payumoらの第7,276,252号、Pryceらの第7,300,668号、Serdyらの第7,815,826号、Pryceらの第7,820,201号、Payumoらの第7,875,290号、Pryceらの第7,931,914号、Wangらの第8,088,415号、Bredtらの第8,211,226号、およびWangらの第8,465,777号。
【0025】
説明を容易にするために、本明細書の幾つかの箇所で記述する本発明のリコータからの粉末の放出は、望ましい量の粉末の観点からのものである。本発明のリコータからの粉末の放出量および当該リコータからの粉末の放出速度のうちの一方または両方の制御が、本発明に含まれると理解されたい。
【0026】
図2は、粉末層3次元プリンタ10の形態を取る一実施態様の概略斜視図を示す。粉末層3次元プリンタ10は、垂直方向に割り出しできる造形プラットフォーム(図示せず)を有する取り外し可能な造形ボックス12を含み、さらに粉末床14、リコータ16、および選択的に配置可能な結合剤噴射式印刷装置18を備える。動作中、リコータ16は造形プラットフォームまたは粉末床14の上を移動し、造形プラットフォームまたは粉末床14の上に粉末層を堆積させる。リコータ16によって堆積された粉末の表面には欠陥があることが一般的なので、結合剤噴射式印刷装置18によって粉末床に結合剤を塗布する前に欠陥を除去または修正する必要がある。粉末床14の既存の頂面の上に均一な厚さの粉末層を形成するために、堆積した粉末を平滑化装置20を用いて滑らかにする。この操作は、リコータ16が粉末を分配する際の粉末床14のトラバース時に行ってもよいし、その後の粉末床14のトラバース時に行ってもよい。所望であれば、さらに別の粉末層を堆積させてもよく、あるいは、結合剤噴射式印刷装置18を粉末床14の上で移動させて新たな堆積層の上に結合剤を選択的に堆積させてから、結合剤噴射式印刷装置18を粉末床14の外側に退避させて、粉末床14の上に次の粉末層が堆積できるようにしてもよい。
【0027】
図3A、3Bはそれぞれ、粉末層3次元プリンタと共に使用するように適合されたリコータ30の一実施態様の側面図および側面斜視図である。リコータ30は、移動式粉末ディスペンサ32と、複雑な粉末接触面38を有するモータ駆動式反転ローラ36を含む平滑化装置34とを含み、これらはすべて、造形ボックス内の粉末床を選択的にトラバースできるようにキャリッジ40によって支持されている。粉末ディスペンサ32は、所望の量の造形粉末を収容するホッパー42と、粉末を選択的に放出させる開口(図示せず)とを含む。粉末ディスペンサ32の要素および機構は特に限定されず、粉末層3次元プリンタの粉末床に選択された量または制御された量の粉末を分配するように適合された任意の様々な粉末ディスペンサを含めることができる。平滑化装置34および粉末ディスペンサ32は、リコータ30に接続しているように示されているが、いくつかの実施態様では、平滑化装置34は、粉末ディスペンサ32と物理的に接続されている必要はなく、粉末ディスペンサ32から分離して独立に操作可能であってもよいことを理解されたい。そのような構成にすることで、互いの動きを協調させることがある一方で、平滑化装置の動きをリコータの他の部分の動きから独立させることができる。例えば、リコータと粉末ディスペンサが物理的に接続されていない場合、平滑化装置は、粉末ディスペンサの進行方向とは反対、垂直、または斜めの方向に移動するように操作することができる。
【0028】
平滑化装置34は、複雑な粉末係合面38を有する反転ローラ36を含む。ここで、ローラの反転とは、ローラの回転軸周りの回転方向が、粉末床の平面に沿ってローラが転動する場合に回転するであろう方向とは逆の方向であることを意味する。反転ローラ36は、好ましくは、ユーザが回転速度を調節可能なように電動化されている。
【0029】
複雑な粉末係合面38は、反転ローラの機械加工されたまたはラッピングされた面であり、円筒形ローラが普通の円筒面を有する場合に比べて、粉末床に塗布されるおよび/または粉末床に含まれる粉末とローラとの間の相互作用、摩擦および/またはせん断力を増大させる効果がある。複雑な粉末係合面38は、ローラの円筒面には、非限定的な例として隆起、溝、稜、縦溝、ローレット目、エッジなどの構造を含めることができる。複雑な粉末係合面38は、表面を形成するためにビードブラストまたはビットブラストを施した面であってもよい。
【0030】
反転ローラ36の反転する複雑な粉末係合面38は、反転ローラ36が粉末床を横切って移動する際に、粉末床に堆積した粉末の表面にせん断力を与える。かくして、反転ローラ36が粉末床表面の高位部から余分な粉末を除去し、粉末層の低位部または窪みに粉末を再分配することにより、造形ボックスから余分な粉末を除去する。
【0031】
いくつかの実施態様において、反転ローラは、反転ローラの回転軸の少なくとも一部に沿って延びる1本以上の縦溝を含む。縦溝は、反転ローラの面に形成された細長い溝または凹部を含んでおり、それが造形ボックス上に堆積したまたは造形ボックス内に収容された粉末と係合するように適合されたエッジを形成する。複雑な粉末係合面は、好ましくは、回転軸の少なくとも一部に沿って延びる1本以上の縦溝を含む。一部の実施態様では、当該1本以上の縦溝は、反転ローラの全長にわたって延びている。一部の実施態様では、縦溝の本数は、約2〜約40本、好ましくは約2〜約10本の範囲とすることができる。縦溝は、真直ぐ、すなわち反転ローラの回転軸と平行に延びるものでも、あるいは、回転軸の周りにねじれている螺旋状のものでもよい。
【0032】
螺旋状縦溝のねじり比は特に限定されず、設計上の考慮事項に応じて変えることができる。本明細書で使用する「ねじり比」という用語は、インチ単位のローラの長さまたは距離に対するローラの回転軸周りの縦溝の回転数を意味し、回転数と距離(インチ単位)との比(回転数:距離)で表すことができる。一般に、材料を少なめに除去するには高めのねじり比が望ましく、材料を多めに除去するには低めのねじり比が望ましい。一部の実施態様では、縦溝のねじり比は、約1対約1.90cmである約1対約0.75インチ(1:0.75)から約1対約127cmである約1対約50インチ(1:50)の範囲であってよく、好ましくは、約1対約5.08cmである約1対約2インチ(1:2)から約1対約38.1cmである約1対約15インチ(1:15)の範囲である。或る特定の実施態様において、ねじり比は約1対約17.8cmである約1対約7インチ(1:7)である。縦溝の形状は特に限定されないが、縦溝は、粉末床の最上部粉末層から余分な粉末を削ぎ取るように適合された、粉末床に接触するエッジを含むことが好ましい。縦溝は、粉末床から削ぎ取られた余分な粉末を受け取って除去するための通路または凹部を含んでもよい。
【0033】
図4は、複数の縦溝(そのうちの1つを参照番号54で表す)を含む複雑な粉末係合面52を有する反転ローラ50の一実施態様を示している。縦溝54は螺旋状であり、回転軸56に沿って延びている。
【0034】
その他の実施態様では、複雑な粉末係合面は、反転ローラの回転軸の少なくとも一部に沿ったローレット目を含んでもよい。ローレット目は、直線、斜線または交差線の稜線パターンや、正方形または菱形のパターンを含んでもよい。図5は、本発明の一実施態様に従う反転ローラ60を示している。この反転ローラ60は、回転軸66に沿って延びる菱形パターンのローレット目64を有する複雑な粉末係合面62を含んでいる。
【0035】
反転ローラの構成材料は、ステンレス鋼などの金属、セラミックス、またはその他の剛性のある機械加工可能な材料を含むことができる。多くの実施態様において、複雑な粉末係合面は、反転ローラの本体に所望のパターンを機械加工することによって作成できる。代案として、反転ローラの上に、所望の複雑な粉末係合面を有する外皮またはスリーブを施してもよい。また、反転ローラの直径は特に限定されない。一部の実施態様では、反転ローラの直径は約0.25〜約6インチ、好ましくは約0.25〜約2インチの範囲であり、実施態様によっては約0.25〜約1インチの範囲である。
【0036】
反転ローラによって形成された粉末床の表面は、多くの印刷操作に適しているかもしれないが、粉末層をさらに平滑化および/または稠密化することが好ましいこともある。この目的のために、図3A図3Bに示すように、平滑化装置34は、キャリッジ40が造形ボックスを横切って移動する際に反転ローラ36に追従する垂直方向に調節可能な仕上げローラ35を含んでもよい。仕上げローラ35の面が反転ローラ36の複雑な粉末係合面38の最下部より上方または下方にあるよう調節できるように、仕上げローラ35は垂直方向、すなわちキャリッジ40の進行方向に対して法線方向または直交方向に調節可能である。仕上げローラは、仕上げローラ面が反転ローラ36の複雑な粉末係合面38より下方にあるように配置するのが好ましい。或る特定の実施態様では、仕上げローラ35は、凹凸のない滑らかな円筒面を有する普通の円筒とすることができる。実施態様によっては、仕上げローラ35は電動式で、反転ローラ36と同じ方向または反対方向に転動または回転することができる。余分な粉末が反転ローラによって除去または再分配された状態で、仕上げローラは、堆積した粉末をさらに平滑化して稠密化するのに最小限の粉末を圧迫またはこて押しするように適合されている。仕上げローラの直径は、反転ローラの直径と同じであっても、異なっていてもよい。仕上げローラの直径は特に限定されない。一部の実施態様では、仕上げローラの直径は約0.25〜約6インチ、好ましくは約0.25〜約2インチの範囲であり、一部の実施態様では約0.25〜約1インチの範囲である。
【0037】
また、一部の実施態様では、平滑化装置は選択的に使用できること、すなわち、選択された層に対してのみ、および/または選択された層の選択された部分に対してのみ、或いはすべての層に対して使用できることを理解されたい。さらに、一部の実施態様では、複数の平滑化装置を使用してもよい。かかる平滑化装置は、粉末層3次元プリンタと共に使用することができ、同種のまたは異種の反転ローラおよび仕上げローラを含むことができる。
【0038】
実施例
9ミクロンの316ステンレス鋼粉末を粉末床に散布した。第1の試行では、図1A、1Bに示すものと同様のリコータを使用し、平滑化装置は普通の滑らかな円筒体とした。第2の試行では、図3A、3Bに示すものと同様の本発明によるリコータを使用し、平滑化装置は図4に示す縦溝付きの反転ローラを有するものとした。第3の試行では、図3A、3Bに示すものと同様の本発明によるリコータを使用し、平滑化装置は図4に示すローレット目付きの反転ローラを有するものとした。リコーティング工程で、有意な欠陥を伴わずに均一な粉末層が得られる処理速度を測定した。第1の試行では約5mm/秒、第2の試行では約85mm/秒、第3の試行では約125mm/秒の速度が得られた。
【0039】
本発明のごく少数の実施態様のみを示し、説明してきたが、当業者にとっては、請求項に記載される発明の精神と範囲から逸脱することなく本発明に多くの変更と修正を行えることは明らかである。本明細書で特定される米国のすべての特許および特許出願、ならびに米国外のすべての特許および特許出願等の文書は、法の下で認められる最大限の範囲で、本明細書に省略せずに記載されているかの如く参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5