(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記LLZ系ガーネット型化合物が、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1に記載のセラミックス粉末材料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LLZ系ガーネット型化合物は、通常、粉末であり、LLZ系ガーネット型化合物を固体電解質として使用するためには、緻密な成形体とする必要があり、1200℃以上の焼結が必要になるとされている。
【0006】
しかしながら、LLZ系ガーネット型化合物は、大気雰囲気下、1100℃を超える高温条件下において、主成分であるLiの溶融・揮発を伴う分解反応が進行するため、焼結体の変形、破損の原因となるといった問題がある。
また、酸化物を用いた全固体電池の安価な製造方法として、各部材を共焼結させることによりセルをつくる手法(一体焼結)が検討されているが、当該プロセスを実施するにあたり、電解質と電極活物質との反応が生じない温度領域での熱処理が必要である。
【0007】
特許文献1〜3では、焼結体を形成する際の焼結温度を低下させるための手法として、低融点化合物(例えば、ホウ酸リチウム)をLLZ系ガーネット型化合物と共存させることが意図されていると考えられる(特に、特許文献2の段落[0108]参照)。
【0008】
特許文献1〜3では、低融点化合物が溶融することにより液相を形成し、この液相がLLZ系ガーネット型化合物(粉末)の表面を覆うことにより、焼結温度を低下させ得るものと考えられる。なお、本明細書において、低融点化合物とは、融点が1000℃以下の化合物をいう。
しかしながら、このような手法では、多量の液相を含むことになるため、この液相が抵抗となり、イオン伝導度の低下を招くおそれがある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的低温条件下で、緻密、且つ、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体を得ることが可能なセラミックス粉末材料を提供することにある。また、当該セラミックス粉末材料の製造方法を提供することにある。また、当該セラミックス粉末材料を焼結して得られた焼結体を有する電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、セラミックス粉末材料について鋭意研究を行った。その結果、驚くべきことに、セラミックス粉末材料を熱処理して焼結体を得る際、セラミックス粉末材料の結晶相の主相が正方晶相から立方晶相へ相転移するセラミックス粉末材料は、比較的低温条件下で焼結することを突き止めた。そして、当該セラミックス粉末材料を用いれば、比較的低温条件下で、緻密、且つ、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るセラミックス粉末材料は、
Li
7−3xAl
xLa
3Zr
2O
12(ここで、0≦x≦0.3)で示されるLLZ系ガーネット型化合物を含み、
25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移し、25℃まで降温した後も主相が立方晶相であることを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、少なくとも、1050℃という比較的低温で焼結体を得ることができる。
本発明者は、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移する現象について、昇温によりLLZ系ガーネット型化合物からリチウム(以下、「Li」ともいう)が脱離するためと推察している。
また、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移すると焼結が生じる理由について、本発明者は、LLZ系ガーネット型化合物の表面に、離脱したLiの塩が液相として均一に生成され、この液相の存在により焼結温度が低下するものと推察している。
そして、1050℃という比較的低温条件にて得られた焼結体は、主成分であるLiの溶融・揮発を伴う分解反応の進行が抑制されているため、緻密な成形体となる。また、1050℃という比較的低温条件でありながら焼結が生じるため、得られる焼結体は、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体となる。
このように、前記構成によれば、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、当該セラミックス粉末材料を用いれば、比較的低温条件下で、緻密、且つ、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体を得ることが可能となる。
なお、前記液相は、離脱したLiの塩により形成される液であり、LLZ系ガーネット型化合物の表面に均一に生成されるものであるため、低融点化合物を添加して液相を形成する特許文献1〜3の手法と比較して、液相の量は最小限とすることができる。
従って、特許文献1〜3において想定される、多量の液相を含むことによるイオン伝導度の低下を抑制することが可能となる。
また、前記構成よれば、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移した後、25℃まで降温した後も主相が立方晶相であるため、イオン伝導率を高く維持することできる。すなわち、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移したとしても、その後25℃まで降温した際に主相が正方晶相に戻る場合は、イオン伝導率が低下するおそれがあるが、本発明では、このようなイオン伝導率の低下を抑制し、高く維持することができる。
【0013】
前記構成においては、Zr原子2原子に対するLa原子の原子数が、3より多く4以下であり、
Zr原子2原子に対するAlの原子数をX、Laの原子数Yとしたとき、[X−(Y−3)]が、0.14以上0.25以下であることが好ましい。
【0014】
まず、「Zr原子2原子に対するLa原子の原子数が、3より多く4以下」について説明する。
本発明に係るセラミックス粉末材料は、LLZ系ガーネット型化合物を含み、その他の成分を任意成分として含み得るものである。
LLZ系ガーネット型化合物、すなわち、Li
7−3xAl
xLa
3Zr
2O
12は、Zr原子2原子に対するランタンの原子数が3であるため、Zr原子2原子に対するLa原子数が3である場合、前記任意成分は存在しないか、又は、存在したとしても前記任意成分にLa原子は存在しない。一方、Zr原子2原子に対するLa原子数が4である場合、LLZ系ガーネット型化合物中のZr原子2原子に対するLa原子数は3であるから、LLZ系ガーネット型化合物中のZr原子2原子に対して前記任意成分にLa原子が1原子含まれることになる。
つまり、「Zr原子2原子に対するLa原子数が3より多く4以下」であると、Zr原子2原子に対して、前記任意成分にLa原子が0原子より多く1原子以下で含まれることになる。
そして、「Zr原子2原子に対するLa原子数が3より多く」である場合、すなわち、前記任意成分にランタン原子が0原子より多く含む場合、La原子を含む化合物が焼結助剤として働くため、当該セラミックス粉末材料を焼結させる際の焼結温度を容易に低下させることが可能となる。
一方、La原子はイオン伝導性が低い。そこで、「Zr原子2原子に対するLa原子数を4以下」、すなわち、前記任意成分のLa原子数を1原子以下とすれば、当該セラミックス粉末材料から得られる焼結体のイオン伝導性を高く保つことができる。
【0015】
次に、「Zr原子2原子に対するAlの原子数をX、Laの原子数Yとしたとき、[X−(Y−3)]が、0.14以上0.25以下である」について説明する。
まず、(Y−3)の意味について説明する。
(Y−3)は、前記任意成分に含まれるLa原子数を意味する(以下、「余剰分のLa」ともいう)。
例えば、Yが3のとき、すなわち、Zr原子2原子に対して、Laの原子数が3のとき、(Y−3)は、「0」となる。これは、前記任意成分にLa原子が存在しないことを意味する。つまり、余剰分のLaは存在しないことを意味する。
一方、Yが3より大きいとき、Zr原子2原子に対して、(Y−3)の原子数だけ、前記任意成分にLa原子が存在することを意味する。
このように、(Y−3)は、Zr原子2原子当たりに、前記任意成分に含まれるランタン原子の数を意味する。
次に、[X−(Y−3)]の意味について説明する。
[X−(Y−3)]は、実際に、LLZ系ガーネット型化合物に固溶するアルミニウム原子数を意味する。
セラミックス粉末材料に余剰分のLaが存在する場合、すなわち、前記任意成分にLa原子が含まれる場合、LLZ系ガーネット型化合物からLa原子と同数のAl原子が引き抜かれ、前記任意成分として、ランタンアルミネート(LaAlO
3)等を形成することになる。そのため、LLZ系ガーネット型化合物中には、セラミックス粉末材料全体に存在するAlの原子数Xから、余剰分のLaと同数の(Y−3)を差し引いた[X−(Y−3)]のAl原子が、固溶することになる。
そして、[X−(Y−3)]が0.14以上である場合、すなわち、LLZ系ガーネット型化合物中にAl原子が0.14以上固溶する場合、LLZ系ガーネット型化合物は、立方晶相で安定しやすい。
一方、LLZ系ガーネット型化合物中のAl原子数が多すぎると、正方晶相が生じなくなる。本発明は、正方晶相から立方晶相への相転移が焼結温度の低下に寄与するものとしているところ、[X−(Y−3)]を0.25以下とすることにより、昇温工程の前、又は、途中で正方晶相の状態を生じやすくさせることができる。
このように、[X−(Y−3)]を0.14以上0.25以下とすれば、昇温工程の前、又は、途中では正方晶相の状態を生じやすくさせ、且つ、1050℃まで昇温する過程において、正方晶相から立方晶相への相転移を生じさせやすくすることができる。
【0016】
前記構成において、前記LLZ系ガーネット型化合物が、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましい。
【0017】
前記LLZ系ガーネット型化合物が、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むと、前記セラミックス粉末材料の特性を、要求特性に応じた特性に調整することができる。
【0018】
前記構成において、Li
xLa
1+2xAl
1−xO
3+2x(ただし、xは、0又は0.5)で示されるLa化合物を含むことが好ましい。
【0019】
Li
xLa
1+2xAl
1−xO
3+2x(ただし、xは、0又は0.5)で示されるLa化合物を含むと、25℃から1050℃まで昇温する過程で、セラミックス粉末材料の結晶相の主相が正方晶相から立方晶相により相転移し易い。
前記相転移に関しては、(1)セラミックス粉末材料の結晶相の主相が、昇温前は、立方晶相であり、25℃から昇温する過程で正方晶相に転移し、さらに、1050℃に達するまでの間に、立方晶相に転移する場合と、(2)セラミックス粉末材料の結晶相の主相が、昇温前の時点で正方晶相であり、25℃から1050℃に達するまでの間に、立方晶相に転移する場合とがある。
【0020】
以下上記(1)、上記(2)の場合の相転移について説明する。
【0021】
上記(1)の場合、セラミックス粉末材料を25℃から1050℃まで昇温する過程で、まず、La化合物によるLLZ系ガーネット型化合物からのAlの引き抜きが起こり、それにより、LLZ系ガーネット型化合物へのLiの固溶が誘起される。このときLLZ系ガーネット型化合物の結晶相は、立方晶相から正方晶相へ転移する。
Liが固溶したLLZ系ガーネット型化合物をさらに高温に熱処理をすると、La化合物に引き抜かれたAlがLLZ系ガーネット型化合物に再度固溶する。これにより、LLZ系ガーネット型化合物からLiが脱離してLLZ系ガーネット型化合物表層に液相(Li塩)を生成する。このとき、LLZ系ガーネット型化合物の結晶相は、正方晶相から立方晶相へ転移する。
このように、(1)は、セラミックス粉末材料の結晶相の主相は、昇温前は、立方晶相であり、25℃から昇温する過程で正方晶相に転移し、さらに、1050℃に達するまでの間に、立方晶相に転移する場合である。
【0022】
上記(2)の場合、セラミックス粉末材料を製造する際の焼成において、La化合物によるLLZ系ガーネット型化合物からのAlの引き抜きが起こり、それにより、LLZ系ガーネット型化合物へのLiの固溶が誘起される。このときLLZ系ガーネット型化合物の結晶相は、立方晶相から正方晶相へ転移する。つまり、(2)の場合、セラミックス粉末材料の製造が完了した時点、すなわち、製品としてのセラミックス粉末材料の主相は、正方晶相である。そして、主相が正方晶相である製品としてのセラミックス粉末材料を、25℃から1050℃まで昇温すると、セラミックス粉末材料を製造する際の焼成においてLa化合物に引き抜かれたAlが、LLZ系ガーネット型化合物に再度固溶する。これにより、LLZ系ガーネット型化合物からLiが脱離してLLZ系ガーネット型化合物表層に液相(Li塩)を生成する。このとき、LLZ系ガーネット型化合物の結晶相は、正方晶相から立方晶相へ転移する。
このように、(2)は、セラミックス粉末材料の結晶相の主相は、昇温前の時点で正方晶相であり、25℃から1050℃に達するまでの間に、立方晶相に転移する場合である。
なお、La化合物は、低融点化合物ではなく、融点は少なくとも1200℃より高い。前記La化合物の融点は、通常は、1200〜2400℃程度である。
【0023】
以上、上記(1)、上記(2)の場合の相転移について説明した。
【0024】
前記構成においては、1050℃の熱処理により、密度が4.6g/cm
3以上5.2g/cm
3以下となる焼結体が得られることが好ましい。
【0025】
前記構成によれば、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、1050℃という比較的低温での熱処理により、密度が4.6g/cm
3以上の焼結体を容易に得ることができる。
【0026】
前記構成においては、1050℃の熱処理により、測定温度30℃におけるリチウムイオン伝導率が、1×10
−5S/cm以上1×10
−3S/cm以下となる焼結体が得られることが好ましい。
【0027】
前記構成によれば、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、1050℃という比較的低温での熱処理により、リチウムイオン伝導率が、1×10
−5S/cm以上の焼結体を容易に得ることができる。リチウムイオン伝導率が1×10
−5S/cm以上の焼結体は、例えば、全固体リチウムイオン二次電池に好適に利用できる。
【0028】
また、本発明に係るセラミックス粉末材料の製造方法は、
前記セラミックス粉末材料の製造方法であって、
炭酸種の溶液と、Laを構成元素とする化合物と、Alを構成元素とする化合物とを混合させて沈殿物を得る第一工程、
前記沈殿物と、炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液と、Liを構成元素とする化合物とを混合した混合物を調製する第二工程、及び、
前記混合物を500℃以上900℃以下の温度で焼成して焼成物を得る第三工程を含むことを特徴とする。
【0029】
前記構成によれば、第一工程でまず、LaとAlとの炭酸塩である沈殿物(以下、「炭酸ランタン化合物」ともいう)を得る。
次に、第二工程において、前記沈殿物(炭酸ランタン化合物)と、炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液と、Liを構成元素とする化合物とを混合することにより、沈殿物(炭酸ランタン化合物)の表面にZr成分とLi成分とを均一に担持させることができる。
以上により、セラミックス粉末材料全体として、各元素が均一に分散された状態とすることができる。なお、本発明では、各元素をナノオーダーで均一に分散するのではなく、セラミックス粉末材料全体として、各元素が均一に分散された状態とすることを趣旨としている。
この点について説明する。
ナノオーダーで各元素を均一に分散させようとした場合、各元素すべて混合して沈殿物を得る(共沈させる)方がよいように思われる。しかしながら、各元素すべてを混合すると、各元素の沈殿速度が異なることやpHの影響を受ける等の原因により、均一に分散された状態とすることはできない。特に、本発明者らの検討によれば、Zr原子やLa原子が偏析してしまう場合があることがわかった。そのため、各元素すべて混合して共沈させる方法では、セラミックス粉末材料全体として、各元素が均一に分散された状態とはなり難い。
そこで、本発明では、各元素をナノオーダーで均一に分散させるのではないが、セラミックス粉末材料全体としては各元素が均一に分散された状態とすべく、前記工程を採用した。すなわち、炭酸ランタン化合物の表面にZr成分とLi成分とを均一に担持させることにより、セラミックス粉末材料全体として各元素が均一に分散された状態とした。
その後、第三工程において、前記混合物を500℃以上900℃以下の温度で焼成して焼成物を得る。
このようにして得られるセラミックス粉末材料は、各元素が均一に分散されているため、昇温により好適にLi原子の脱離が起こり、結晶相の主相が好適に正方晶相から立方晶相に相転移することとなる。従って、前記製造方法により得られたセラミックス粉末材料を用いれば、比較的低温条件下で、緻密、且つ、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体を得ることが可能となる。
【0030】
前記構成において、得られるセラミックス粉末材料は、
Zr原子2原子に対するLa原子の原子数が、3より多く4以下であり、
Zr原子2原子に対するAlの原子数をX、Laの原子数Yとしたとき、[X−(Y−3)]が、0.14以上0.25以下である
ことが好ましい。
【0031】
得られるセラミックス粉末材料のZr原子2原子に対するLa原子数が3より多い場合、すなわち、前記任意成分にランタン原子が0原子より多く含む場合、La原子を含む化合物が焼結助剤として働くため、当該セラミックス粉末材料を焼結させる際の焼結温度を容易に低下させることが可能となる。
一方、La原子はイオン伝導性が低い。そこで、得られるセラミックス粉末材料のZr原子2原子に対するLa原子数を4以下、すなわち、前記任意成分のLa原子数を1原子以下とすれば、当該セラミックス粉末材料から得られる焼結体のイオン伝導性を高く保つことができる。
また、[X−(Y−3)]を0.14以上0.25以下とすれば、得られるセラミックス粉末材料は、昇温工程の前、又は、途中では正方晶相の状態を生じやすくさせ、且つ、1050℃まで昇温する過程において、正方晶相から立方晶相への相転移を生じさせやすくすることができる。
【0032】
また、本発明に係る電池は、前記セラミックス粉末材料を焼結して得られた焼結体を有すること特徴とする。
【0033】
前記セラミックス粉末材料は、比較的低温条件下で、緻密、且つ、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体を得ることが可能であるため、当該セラミックス粉末材料を焼結して得られた焼結体を有する電池(特に、全固体リチウムイオン二次電池)は、電池として優れる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、比較的低温条件下で、緻密、且つ、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体を得ることが可能なセラミックス粉末材料を提供することができる。また、当該セラミックス粉末材料の製造方法を提供することができる。また、当該セラミックス粉末材料を焼結して得られた焼結体を有する電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0037】
[セラミックス粉末材料]
本実施形態に係るセラミックス粉末材料は、Li
7−3xAl
xLa
3Zr
2O
12(ここで、0≦x≦0.3)で示されるLLZ系ガーネット型化合物を含み、
25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移し、25℃まで降温した後も主相が立方晶相である。
【0038】
前記セラミックス粉末材料によれば、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、少なくとも、1050℃という比較的低温で焼結体を得ることができる。
本発明者は、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移する現象について、昇温によりLLZ系ガーネット型化合物からリチウム(以下、「Li」ともいう)が脱離するためと推察している。
また、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移すると焼結が生じる理由について、本発明者は、LLZ系ガーネット型化合物の表面に、離脱したLiの塩が液相として均一に生成され、この液相の存在により焼結温度が低下するものと推察している。
そして、1050℃という比較的低温条件にて得られた焼結体は、主成分であるLiの溶融・揮発を伴う分解反応の進行が抑制されているため、緻密な成形体となる。また、1050℃という比較的低温条件でありながら焼結が生じるため、得られる焼結体は、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体となる。
このように、前記セラミックス粉末材料によれば、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、当該セラミックス粉末材料を用いれば、比較的低温条件下で、緻密、且つ、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体を得ることが可能となる。
また、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移した後、25℃まで降温した後も主相が立方晶相であるため、イオン伝導率を高く維持することできる。すなわち、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移したとしても、その後25℃まで降温した際に主相が正方晶相に戻る場合は、イオン伝導率が低下するおそれがあるが、前記セラミックス粉末材料では、このようなイオン伝導率の低下を抑制し、高く維持することができる。
【0039】
前記セラミックス粉末材料の結晶相(主相)は、X線回折(XRD)測定により確認する。
本明細書においては、上記XRD測定において、2θ=16.0〜17.0°に認められる回折ピークを、立方晶系ガーネット型酸化物(ICDD:045−0109に帰属)に由来する回折ピークであるとする。また、前記範囲における最も強度の高いピークの強度をI
cと表記する。
また、本明細書においては、上記XRD測定において、2θ=27.9〜28.5°において認められる回折ピークを、正方晶系ガーネット型化合物(ICDD:01−078−6768に帰属)に由来する回折ピークであるとする。また、前記範囲における最も強度の高いピークの強度をI
tと表記する。
【0040】
そして、セラミックス粉末材料中に含まれる立方晶系ガーネット型化合物に対する正方晶系ガーネット型化合物の含有比率([正方晶系ガーネット型化合物の含有量]/[立方晶系ガーネット型化合物の含有量])を、次式のように各X線回折ピークの強度比を用いて表す。
含有比率([正方晶系ガーネット型化合物の含有量]/[立方晶系ガーネット型化合物の含有量])=I
t/I
c
【0041】
そして、I
t/I
cが0.1以上であるとき、主相が正方晶相であるとし、I
t/I
cが0.1未満であるとき、主相が立方晶相であるとする。
つまり、本明細書では、前記セラミックス粉末材料が、25℃から1050℃まで昇温する過程で、I
t/I
cが0.1以上から0.1未満に変化したとき、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移したと判断する。
【0042】
前記セラミックス粉末材料は、Zr原子2原子に対するLa原子の原子数が、3より多く4以下であることが好ましい。Zr原子2原子に対するLa原子の原子数は、より好ましくは3.03以上であり、さらに好ましくは3.04以上であり、特に好ましくは3.05以上であり、特別に好ましくは3.10以上である。Zr原子2原子に対するLa原子の原子数は、より好ましくは3.8以下であり、さらに好ましくは3.6以下である。
前記セラミックス粉末材料は、Zr原子2原子に対するAlの原子数をX、Laの原子数Yとしたとき、[X−(Y−3)]が、0.14以上0.25以下であることが好ましい。
前記[X−(Y−3)]は、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.16以上であり、特に好ましくは0.17以上であり、特別に好ましくは0.18以上である。前記[X−(Y−3)]は、より好ましくは0.24以下であり、さらに好ましくは0.23以下であり、特に好ましくは0.22以下である。
【0043】
まず、「Zr原子2原子に対するLa原子の原子数が、3より多く4以下」について説明する。
前記セラミックス粉末材料は、LLZ系ガーネット型化合物を含み、その他の成分を任意成分として含み得るものである。
LLZ系ガーネット型化合物、すなわち、Li
7−3xAl
xLa
3Zr
2O
12は、Zr原子2原子に対するLaの原子数が3であるため、Zr原子2原子に対するLa原子数が3である場合、前記任意成分は存在しないか、又は、存在したとしても前記任意成分にLa原子は存在しない。一方、Zr原子2原子に対するLa原子数が4である場合、LLZ系ガーネット型化合物中のZr原子2原子に対するLa原子数は3であるから、LLZ系ガーネット型化合物中のZr原子2原子に対して前記任意成分にLa原子が1原子含まれることになる。
つまり、「Zr原子2原子に対するLa原子数が3より多く4以下」であると、Zr原子2原子に対して、前記任意成分にLa原子が0原子より多く1原子以下で含まれることになる。
そして、「Zr原子2原子に対するLa原子数が3より多く」である場合、すなわち、前記任意成分にランタン原子が0原子より多く含む場合、La原子を含む化合物が焼結助剤として働くため、当該セラミックス粉末材料を焼結させる際の焼結温度を容易に低下させることが可能となる。
一方、La原子はイオン伝導性が低い。そこで、「Zr原子2原子に対するLa原子数を4以下」、すなわち、前記任意成分のLa原子数を1原子以下とすれば、当該セラミックス粉末材料から得られる焼結体のイオン伝導性を高く保つことができる。
【0044】
次に、「Zr原子2原子に対するAlの原子数をX、Laの原子数Yとしたとき、[X−(Y−3)]が、0.14以上0.25以下である」について説明する。
まず、(Y−3)の意味について説明する。
(Y−3)は、前記任意成分に含まれるLa原子数を意味する(以下、「余剰分のLa」ともいう)。
例えば、Yが3のとき、すなわち、Zr原子2原子に対して、Laの原子数が3のとき、(Y−3)は、「0」となる。これは、前記任意成分にLa原子が存在しないことを意味する。つまり、余剰分のLaは存在しないことを意味する。
一方、Yが3より大きいとき、Zr原子2原子に対して、(Y−3)の原子数だけ、前記任意成分にLa原子が存在することを意味する。
このように、(Y−3)は、Zr原子2原子当たりに、前記任意成分に含まれるランタン原子の数を意味する。
次に、[X−(Y−3)]の意味について説明する。
[X−(Y−3)]は、実際に、LLZ系ガーネット型化合物に固溶するアルミニウム原子数を意味する。
セラミックス粉末材料に余剰分のLaが存在する場合、すなわち、前記任意成分にLa原子が含まれる場合、LLZ系ガーネット型化合物からLa原子と同数のAl原子が引き抜かれ、前記任意成分として、ランタンアルミネート(LaAlO
3)等を形成することになる。そのため、LLZ系ガーネット型化合物中には、セラミックス粉末材料全体に存在するAlの原子数Xから、余剰分のLaと同数の(Y−3)を差し引いた[X−(Y−3)]のAl原子が、固溶することになる。
そして、[X−(Y−3)]が0.14以上である場合、すなわち、LLZ系ガーネット型化合物中にAl原子が0.14以上固溶する場合、LLZ系ガーネット型化合物は、立方晶相で安定しやすい。
一方、LLZ系ガーネット型化合物中のAl原子数が多すぎると、正方晶相が生じなくなる。本発明は、正方晶相から立方晶相への相転移が焼結温度の低下に寄与するものとしているところ、[X−(Y−3)]を0.25以下とすることにより、昇温工程の前、又は、途中で正方晶相の状態を生じやすくさせることができる。
このように、[X−(Y−3)]を0.14以上0.25以下とすれば、昇温工程の前、又は、途中では正方晶相の状態を生じやすくさせ、且つ、1050℃まで昇温する過程において、正方晶相から立方晶相への相転移を生じさせやすくすることができる。
【0045】
前記セラミックス粉末材料は、1050℃の熱処理により、密度が4.6g/cm
3以上5.2g/cm
3以下となる焼結体が得られることが好ましい。前記密度は、より好ましくは4.7cm
3以上、さらに好ましくは4.8cm
3以上であり、特に好ましくは4.83cm
3以上であり、特別に好ましくは4.86cm
3以上である。前記密度は、より好ましくは5.15cm
3以下、さらに好ましくは5.1cm
3以下である。前記密度の測定方法は、実施例記載の方法による。
【0046】
前記セラミックス粉末材料は、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、1050℃という比較的低温での熱処理により、密度が4.6g/cm
3以上の焼結体を容易に得ることができる。
【0047】
前記セラミックス粉末材料は、1050℃の熱処理により、測定温度30℃におけるリチウムイオン伝導率が、1×10
−5S/cm以上1×10
−3S/cm以下となる焼結体が得られることが好ましい。前記リチウムイオン伝導率は、より好ましくは7×10
−5S/cm以上、さらに好ましくは1×10
−4S/cm以上である。前記リチウムイオン伝導率は、より好ましくは9×10
−4S/cm以下、さらに好ましくは8×10
−4S/cm以下である。前記リチウムイオン伝導率の測定方法は、実施例記載の方法による。
【0048】
前記セラミックス粉末材料は、25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、1050℃という比較的低温での熱処理により、リチウムイオン伝導率が、1×10
−5S/cm以上の焼結体を容易に得ることができる。リチウムイオン伝導率が1×10
−5S/cm以上の焼結体は、例えば、全固体リチウムイオン二次電池に好適に利用できる。
【0049】
前記セラミックス粉末材料は、リチウムイオン伝導の活性化エネルギー(Ea)が42kJ/mol以下であることが好ましく、38kJ/mol以下であることがより好ましく、34kJ/mol以下であることがさらに好ましい。前記リチウムイオン伝導の活性化エネルギー(Ea)は、低いほど好ましいが、例えば、15kJ/mol以上、18kJ/mol以上等とすることができる。前記活性化エネルギー(Ea)が42kJ/mol以下であると、全固体リチウムイオン二次電池への適用の好適に使用できる。
前記セラミックス粉末材料のリチウムイオン伝導の活性化エネルギー(Ea)は、リチウムイオン伝導率(σ
T)の温度依存性を評価することで算出する。すなわち、アレニウス(Arrhenius)の式:σ=σ
0exp(−E
a/RT)(σ:リチウムイオン伝導度、σ
0:頻度因子、R:気体定数、T:絶対温度)を用いて、リチウムイオン伝導度の温度依存性を示すグラフ(アレニウスプロット)の傾きより算出する。
【0050】
[LLZ系ガーネット型化合物]
上述したように、本実施形態に係るセラミックス粉末材料は、Li
7−3xAl
xLa
3Zr
2O
12(ここで、0≦x≦0.3)で示されるLLZ系ガーネット型化合物を含む。
前記xは、イオン伝導率の観点から、好ましくは0より大きく、より好ましくは0.18以上、さらに好ましくは0.2以上である。前記xは、イオン伝導率の観点から、好ましくは0.29以下、より好ましくは0.27以下、さらに好ましくは0.25以下である。
なお、前記xが0である場合、前記LLZ系ガーネット型化合物以外の成分として、酸化数が2以上、かつ、そのイオン半径がLiサイトに固溶でき得る範囲内(例えば40pmから70pmの範囲内)である金属元素を含む化合物を共存させることにより、ガーネット構造中に構造欠陥を形成してLLZ系ガーネット型化合物を立方晶相で安定化させることができる。
つまり、前記xが0であっても、前記LLZ系ガーネット型化合物以外の成分として、酸化数が2以上、かつ、そのイオン半径がLiサイトに固溶でき得る範囲内である金属元素を含む化合物を共存させることにより、前記セラミックス粉末材料を25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相を正方晶相から立方晶相に相転移させ、25℃まで降温した後も主相を立方晶相のままで安定化させせることができる。
【0051】
前記LLZ系ガーネット型化合物は、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましい。
【0052】
前記LLZ系ガーネット型化合物が、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含むと、前記セラミックス粉末材料の特性を、要求特性に応じた特性に調整することができる。
【0053】
前記LLZ系ガーネット型化合物が、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む場合、前記LLZ系ガーネット型化合物は、(a)Li
7−3xAl
xLa
3Zr
2O
12を構成するLi、Al、La、Zrの一部が、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる1種以上の元素に置き換わった構成を有するか、又は、(b)Li
7−3xAl
xLa
3Zr
2O
12で示されるLLZ系ガーネット型化合物と、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含み且つAlを含まないLLZ系ガーネット型化合物との混合物である。
【0054】
[La化合物]
前記セラミックス粉末材料は、前記LLZ系ガーネット型化合物以外の成分として、Li
xLa
1+2xAl
1−xO
3+2x(ただし、xは、0又は0.5)で示されるLa化合物を含むことが好ましい。前記La化合物は、前記LLZ系ガーネット型化合物の粒子表面に形成されていることが好ましい。前記La化合物は、前記LLZ系ガーネット型化合物の粒子表面に、複数形成されていることが好ましい。
【0055】
図1は、後述する実施例2のセラミックス粉末材料のSEM画像であり、
図2は、その部分拡大画像である。
図1、
図2に示すように、La化合物は、LLZ系ガーネット型化合物の粒子表面に、複数、均一に形成されていることが好ましい。
【0056】
前記セラミックス粉末材料が、Li
xLa
1+2xAl
1−xO
3+2x(ただし、xは、0又は0.5)で示されるLa化合物を含むと、25℃から1050℃まで昇温する過程で、セラミックス粉末材料の結晶相の主相が正方晶相から立方晶相により相転移し易い。
前記相転移に関しては、(1)セラミックス粉末材料の結晶相の主相が、昇温前は、立方晶相であり、25℃から昇温する過程で正方晶相に転移し、さらに、1050℃に達するまでの間に、立方晶相に転移する場合と、(2)セラミックス粉末材料の結晶相の主相が、昇温前の時点で正方晶相であり、25℃から1050℃に達するまでの間に、立方晶相に転移する場合とがある。
【0057】
以下上記(1)、上記(2)の場合の相転移について説明する。
【0058】
上記(1)の場合、セラミックス粉末材料を25℃から1050℃まで昇温する過程で、まず、La化合物によるLLZ系ガーネット型化合物からのAlの引き抜きが起こり、それにより、LLZ系ガーネット型化合物へのLiの固溶が誘起される。このときLLZ系ガーネット型化合物の結晶相は、立方晶相から正方晶相へ転移する。
Liが固溶したLLZ系ガーネット型化合物をさらに高温に熱処理をすると、La化合物に引き抜かれたAlがLLZ系ガーネット型化合物に再度固溶する。これにより、LLZ系ガーネット型化合物からLiが脱離してLLZ系ガーネット型化合物表層に液相(Li塩)を生成する。このとき、LLZ系ガーネット型化合物の結晶相は、正方晶相から立方晶相へ転移する。
このように、(1)は、セラミックス粉末材料の結晶相の主相は、昇温前は、立方晶相であり、25℃から昇温する過程で正方晶相に転移し、さらに、1050℃に達するまでの間に、立方晶相に転移する場合である。
【0059】
上記(2)の場合、セラミックス粉末材料を製造する際の焼成において、La化合物によるLLZ系ガーネット型化合物からのAlの引き抜きが起こり、それにより、LLZ系ガーネット型化合物へのLiの固溶が誘起される。このときLLZ系ガーネット型化合物の結晶相は、立方晶相から正方晶相へ転移する。つまり、(2)の場合、セラミックス粉末材料の製造が完了した時点、すなわち、製品としてのセラミックス粉末材料の主相は、正方晶相である。そして、主相が正方晶相である製品としてのセラミックス粉末材料を、25℃から1050℃まで昇温すると、セラミックス粉末材料を製造する際の焼成においてLa化合物に引き抜かれたAlが、LLZ系ガーネット型化合物に再度固溶する。これにより、LLZ系ガーネット型化合物からLiが脱離してLLZ系ガーネット型化合物表層に液相(Li塩)を生成する。このとき、LLZ系ガーネット型化合物の結晶相は、正方晶相から立方晶相へ転移する。
このように、(2)は、セラミックス粉末材料の結晶相の主相は、昇温前の時点で正方晶相であり、25℃から1050℃に達するまでの間に、立方晶相に転移する場合である。
【0060】
以上、上記(1)、上記(2)の場合の相転移について説明した。
【0061】
前記La化合物の存在は、X線回折(XRD)測定により確認する。本明細書においては、上記XRD測定において、2θ=23〜23.7°の範囲と、2θ=41.2〜41.3°の範囲とにピークが存在する場合にLaAlO
3が存在すると判断し、2θ=24.1〜24.7°の範囲と、2θ=31.67〜31.77°の範囲と、2θ=44.2〜44.3°の範囲とにピークが存在する場合にLi
0.5La
2Al
0.5O
4が存在すると判断する。
【0062】
[セラミックス粉末材料の製造方法]
以下、セラミックス粉末材料の製造方法の一例について説明する。ただし、本発明のセラミックス粉末材料の製造方法は、以下の例示に限定されない。
【0063】
本実施形態に係るセラミックス粉末材料の製造方法は、
炭酸種の溶液と、Laを構成元素とする化合物と、Alを構成元素とする化合物とを混合させて沈殿物を得る第一工程、
前記沈殿物と、炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液と、Liを構成元素とする化合物とを混合した混合物を調製する第二工程、及び、
前記混合物を500℃以上900℃以下の温度で焼成して焼成物を得る第三工程を含む。
【0064】
<第一工程>
本実施形態に係るセラミックス粉末材料の製造方法においては、まず、炭酸種の溶液と、Laを構成元素とする化合物と、Alを構成元素とする化合物とを混合させてLaとAlとの炭酸塩である沈殿物(以下、「炭酸ランタン化合物」ともいう)を得る。
【0065】
前記炭酸種は、炭酸(H
2CO
3)、炭酸水素イオン(HCO
3−)及び炭酸イオン(CO
32−)の少なくともいずれか1種をいう。
【0066】
前記炭酸種の溶液は、炭酸種を含む化合物の溶液が挙げられる。前記炭酸種を含む化合物としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素テトラメチルアンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸ガス等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で、又は任意の2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0067】
前記Laを構成元素とする化合物(以下、「La源」ともいう)としては、元素Laの水溶性塩等が挙げられる。元素Laの水溶性塩としては、硝酸ランタン、酢酸ランタン、塩化ランタン、これらの水和物等が挙げられる。上記例示列挙した化合物は単独で、又は任意の2種以上の組み合わせで用いて、純水等に溶解することにより、La源が溶解した水溶液を得ることができる。
【0068】
La源は、固体状態であっても溶液の状態であってもよい。La源が、溶液形態である場合、La源の溶媒としては、水単独であってもよいし、水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒であってもよいが、製造全体において有機溶剤を不使用にするという観点からは、水単独であることが好ましい。つまり、La源が、溶液形態である場合は、水溶液であることが好ましい。
【0069】
なお、La源を水に溶解する際には、硝酸や塩酸等の酸を用いて水溶液のpHを調整してもよい。
【0070】
前記Alを構成元素とする化合物(以下、「Al源」ともいう)としては、元素Alの水溶性塩等が挙げられる。元素Alの水溶性塩としては、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、これらの水和物、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
上記例示列挙した化合物は単独で、又は任意の2種以上の組み合わせで用いて、純水等に溶解することにより、Al源が溶解した水溶液を得ることができる。
【0071】
前記La源が溶液形態である場合、Al源は、La源の溶液に溶解させてもよい。つまり、第一工程では、炭酸種の溶液と、La源及びAl源とを含む溶液とを混合させる工程であってもよい。
【0072】
第一工程においては、さらに、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を構成元素とする化合物(以下、「元素M
1を構成元素とする化合物」、「M
1源」ともいう)を混合してもよい。
【0073】
M
1源としては、元素M
1の水溶性塩等が挙げられる。元素M
1の水溶性塩としては、元素M
1の硝酸塩、酢酸塩、塩化物、酸化物、水酸化物等を挙げることができる。
上記例示列挙した化合物は単独で、又は任意の2種以上の組み合わせで用いて、純水等に溶解することにより、M
1源が溶解した水溶液を得ることができる。
【0074】
前記La源及び/又はAl源が溶液形態である場合、M
1源は、La源の溶液、Al源の溶液、又は、La源とAl源とを含む溶液に溶解させてもよい。
【0076】
<第二工程>
第二工程においては、前記沈殿物(炭酸ランタン化合物)と、炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液と、Liを構成元素とする化合物とを混合した混合物を調製する。これにより、沈殿物(炭酸ランタン化合物)の表面にZr成分とLi成分とを均一に担持させることができる。
以上により、セラミックス粉末材料全体として、各元素が均一に分散された状態とすることができる。なお、本実施形態では、各元素をナノオーダーで均一に分散するのではなく、セラミックス粉末材料全体として、各元素が均一に分散された状態とすることを趣旨としている。
この点について説明する。
ナノオーダーで各元素を均一に分散させようとした場合、各元素すべて混合して沈殿物を得る(共沈させる)方がよいように思われる。しかしながら、各元素すべてを混合すると、各元素の沈殿速度が異なることやpHの影響を受ける等の原因により、均一に分散された状態とすることはできない。特に、本発明者らの検討によれば、Zr原子やLa原子が偏析してしまう場合があることがわかった。そのため、各元素すべて混合して共沈させる方法では、セラミックス粉末材料全体として、各元素が均一に分散された状態とはなり難い。
そこで、本実施形態では、各元素をナノオーダーで均一に分散させるのではないが、セラミックス粉末材料全体としては各元素が均一に分散された状態とすべく、前記工程を採用した。すなわち、炭酸ランタン化合物の表面にZr成分とLi成分とを均一に担持させることにより、セラミックス粉末材料全体として各元素が均一に分散された状態とした。
【0077】
特に、第二工程においては、前記混合物を調製した後、90〜200℃の範囲内において加熱を行ってもよい。前記加熱を行うことで、前記混合物に増粘現象が観察される。この原因は定かではないが、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)
4)が生成されることによる、水素結合ネットワークによるゲル化のためと推察される。このゲル化により、Li原子がゲル中に均一に取り込まれることが期待されるため、各元素が均一に分散された状態をより得やすくなる。
【0078】
その後、必要に応じて、前記混合物を蒸発乾固させてもよい。ここでいう蒸発乾固とは、溶液や液体を含む物質から液体を蒸発させて固形物を得る操作をいう。蒸発乾固を行う方法は特に限定されず、一般的に知られている乾燥技術を利用することができる。例えば、静置型乾燥装置、搬送型乾燥装置、回転型乾燥装置、攪拌型乾燥装置、減圧乾燥装置、噴霧乾燥装置、真空凍結乾燥装置等を用いて蒸発乾固を行うことができる。蒸発乾固を行う温度は特に限定されないが、例えば静置型乾燥装置を用いる場合は50〜200℃の範囲の温度であることが好ましく、60〜150℃の範囲の温度であることがより好まく、さらに好ましくは70〜130℃の範囲の温度である。
【0079】
前記炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液は、少なくとも炭酸種を含む化合物及びジルコニウム種(Zr種)を含む化合物を混合することで調製することができる。
【0080】
前記炭酸種を含む化合物としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素テトラメチルアンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸ガス等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で、又は任意の2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0081】
前記Zr種は、ジルコニウム又はジルコニウムイオンを意味する。なお、以下では上記のZr種を含む化合物を「Zr源」ともいうこととする。
【0082】
上記Zr源の具体例としては、炭酸ジルコニウムアンモニウムの結晶((NH
4)
3Zr(OH)(CO
3)
3・2H
2O)、塩基性炭酸ジルコニウム(Zr(OH)
(4−2n)(CO
3)
n・mH
2O、n=0.2〜1.0、m=1〜10)、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOC
l2)又はオキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO
3)
2)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのZr源はいずれか1種を単独又は任意の2種以上の組み合わせで用いることができる。Zr源が上記のオキシ塩化ジルコニウム及びオキシ硝酸ジルコニウム等であれば、その水和物を用いてもよい。
【0083】
前記炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液は、炭酸種とZr種の両方を有する化合物を用いて調製することもできる。ここでいう、炭酸種とZr種の両方を有する化合物とは、例えば、上述の炭酸ジルコニウムアンモニウムの結晶((NH
4)
3Zr(OH)(CO
3)
3・2H
2O)、塩基性炭酸ジルコニウム(Zr(OH)
(4−2n)(CO
3)
n・mH
2O、n=0.2〜1.0、m=1〜10)等が挙げられる。このような炭酸種とZr種の両方を有する化合物は、Zr源であると同時に炭酸種を含む化合物としても扱うことができる。
【0084】
前記炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液を調製するにあたっては、炭酸種のジルコニウム種に対するモル比、すなわち[炭酸種のモル数/ジルコニウム種のモル数]の値が1.5以上15.0以下の範囲内となるように、上記炭酸種を含む化合物と上記Zr源を混合することが好ましい。この混合は、両者を固体状態のまま混合してから溶媒に分散させてもよいし、互いの溶液どうしを混合させる方法でもよい。また、炭酸種とZr種の両方を有する化合物を用いて調製する場合は、この化合物を溶媒に溶解させることで調製することができる。この場合、上記モル比[炭酸種のモル数/ジルコニウム種のモル数]の値が1.5以上15.0以下の範囲内、好ましくは2.0以上14.0以下の範囲内となるような、炭酸種とZr種の両方を有する化合物の種類を選定すればよい。
【0085】
ここで、上記モル比についてさらに詳述すると、「炭酸種のモル数/ジルコニウム種のモル数」とは、炭酸ジルコニウム錯体の溶液の調製に使用するすべての原料に含まれる炭酸種のモル数を、Zr源に含まれるZr元素のモル数で除した値(炭酸種のモル数/ジルコニウム種のモル数)として定義される。最終的に調製された水溶液からは、炭酸種及び後述のNR
4+種が僅かに揮発して濃度変化を生じる可能性があることを考慮したものである。尚、Zr源として炭酸ジルコニウムアンモニウムの結晶または塩基性炭酸ジルコニウム等を使用した場合は、それらに含まれる炭酸種のモル数も上記モル比に考慮する。
【0086】
上記モル比の範囲で炭酸種を含む化合物とZr源が混合されると、炭酸種はジルコニウム(IV)イオンに配位する。例えば炭酸種がCO
32−の場合は、Zr単量体錯イオン[Zr(CO
3)
n]
(2n−4)−{9≧n≧4}や、Zr二量体錯イオン[Zr
2(OH)
2(CO
3)
6]
6−等を形成すると考えられる。このようにして、炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液が得られる。また、炭酸種とZr種の両方を有する化合物を用いた場合も、上記錯イオンを形成することで炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液が得られる。尚、炭酸ジルコニウム錯イオンの形成は拡張X線吸収微細構造(EXAFS)測定やラマン分光測定、核磁気共鳴(NMR)測定等により得られる配位数や配位距離、局所構造についての情報を解析することで確認することができる。
【0087】
上記モル比[炭酸種のモル数/ジルコニウム種のモル数]は、3.0以上7.0以下であることがより好ましく、この場合、より安定な炭酸ジルコニウム錯体が形成される。
【0088】
上記炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液において、炭酸ジルコニウム錯イオンの対陽イオンの少なくとも一つは、NR
4+となるようにする。ここで、Rは、H、CH
3及びCH
2CH
2OHからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の置換基であり、各Rはすべて同一であってもよいし、全部又は一部が異なっていてもよい。このようなNR
4+の陽イオンが共存することで、炭酸ジルコニウム錯イオンが溶液中においてより安定に存在できる。NR
4+の具体例としては、アンモニウムイオン(NH
4+)、テトラメチルアンモニウムイオン((CH
3)
4N
+)、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムイオン((CH
3)
3N(CH
2CH
2OH)
+)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの内、NR
4+としては、アンモニウムイオン(NH
4+)がその原料が安価である観点から好ましい。炭酸ジルコニウム錯イオンの対陽イオンがNR
4+となるようにするには、例えば、炭酸ジルコニウム錯イオンを含む溶液を調製する時に、NR
4+を溶液に与えることができる材料を添加すればよい。NR
4+を溶液に与えることができる材料としては、水酸化アンモニウム(NH
4OH、アンモニア水)、水酸化テトラメチルアンモニウム((CH
3)
4N(OH))、水酸化コリン((CH
3)
3N(CH
2CH
2OH)(OH))等が挙げられるが、これらに限定はされない。これらは単独でまたは任意の2種以上の組み合わせで用いることができる。上記のNR
4+を溶液に与えることができる材料には、さらに、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素テトラメチルアンモニウム、炭酸アンモニウム等のいずれか1種以上を兼用してもよい。
【0089】
炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液を調製するにあたっては、炭酸ジルコニウム錯体の形成が阻害されなければ、炭酸種を含む化合物とZr源以外の化合物、例えば、キレート化剤を添加してもよい。キレート化剤の存在により、炭酸ジルコニウム錯体の水溶液の安定性が向上し、自己加水分解反応によるZrの消費を抑制することができる。キレート化剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類、酒石酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、グリコール酸等の有機酸類、あるいはエタノールアミン類の塩や有機酸の塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。キレート化剤とジルコニウムのモル比(キレート化剤/Zr)は、0.01〜1とすることができる。
【0090】
上記の炭酸ジルコニウム錯体を含む溶液は、そのpHが7.0以上9.5以下であることが好ましい。pHが7.0以上であることで、酸性水溶液と効率よく沈殿を形成することができる。また、pHが9.5以下であることで、炭酸ジルコニウム錯体の溶液中に存在するフリーの水酸化物イオン濃度が充分に低くなり、水酸化物として沈殿が生成することを抑制することができる。pHは、炭酸ジルコニウム錯体の溶液を調製するための各種原料の配合比や、溶媒の量で調整することができ、その他、pH調整剤などを添加してpH調整してもよい。
【0091】
前記Liを構成元素とする化合物(以下、「記Li源」ともいう)としては、酸化リチウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、クエン酸リチウム(Li
3C
6H
5O
7)、シュウ酸リチウム(Li
2(COO)
2)等が例示されるが、これらに限定されるものではない。また、Li源として上記列挙した各種Li塩を用いる場合は、それらの水和物であってもよい。
Li源は、Li源を含む溶液であってもよい。例えば、上記Li源塩の水溶液が挙げられる。
【0093】
<第三工程>
その後、第三工程において、前記混合物を500℃以上900℃以下の温度で焼成して焼成物を得る。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。前記焼成温度は、600℃以上が好ましく、700℃以上がより好ましい。前記焼成温度は、900℃以下が好ましく、850℃以下がより好ましい。得られた焼成物は、LLZ系ガーネット型化合物を含むセラミックス粉末材料である。そして、焼成を900℃以下の温度で行うことで、得られるセラミックス粉末材料は、粒子の形態になり得るものである。得られた焼成物であるセラミックス粉末材料が粒子の形態であることは、走査電子顕微鏡観察により確かめることができる。具体的には、走査電子顕微鏡写真において観測される一次粒子の大きさがいずれも20μm以下であるとき、セラミックス粉末材料が粒子の形態であると判断できる。
なお、第二工程の後、焼成する前に、前記混合物を粉砕してもよい。ただし、第二工程の後、焼成する前に、前記混合物を粉砕する場合であっても、粉砕しない場合であっても、得られるセラミックス粉末材料におけるLa化合物の形態や分散状態は、同等なものとなる。つまり、第二工程の後、焼成する前の前記混合物の粉砕は、必須ではない。後述する実施例では、第二工程の後、焼成する前の混合物を粉砕しているが、これは、
図1、
図2に示すようなSEM画像を得るためである。第二工程の後、焼成する前に、前記混合物を粉砕した場合、得られるセラミックス粉末材料の形状は板状となる。
【0094】
このようにして得られるセラミックス粉末材料は、各元素が均一に分散されているため、昇温により好適にLi原子の脱離が起こり、結晶相の主相が好適に正方晶相から立方晶相に相転移することとなる。従って、前記製造方法により得られたセラミックス粉末材料を用いれば、比較的低温条件下で、緻密、且つ、リチウムイオン伝導性に優れた焼結体を得ることが可能となる。
【0096】
上述した実施形態では、前記LLZ系ガーネット型化合物に、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含ませる場合、元素M
1を構成元素とする化合物を第一工程において混合する場合について説明した。しかしながら、前記セラミックス粉末材料の製造方法は、この例に限定されない。例えば、Li
7−3xAl
xLa
3Zr
2O
12で示されるLLZ系ガーネット型化合物と、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含み且つAlを含まないLLZ系ガーネット型化合物とを製造し、これらを混合してもよい。ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を含み且つAlを含まないLLZ系ガーネット型化合物は、上述した実施形態の第一工程において、Alを構成元素とする化合物を混合する代わりに、ガリウム、イットリウム、セリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、及び、タンタルからなる群より選ばれる1種以上の元素を構成元素とする化合物を混合すればよい。
【0097】
以上、前記セラミックス粉末材料の製造方法の一例につき、説明した。
【0098】
[焼結体]
本実施形態に係る焼結体は、前記セラミックス粉末材料を焼結させることにより得られる。焼結条件は、特に限定されないが、1050℃以下という比較的低温での熱処理による焼結が好ましい。前記セラミックス粉末材料は25℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移するため、1050℃よりも高い温度での処理を必要としないためである。前記焼結条件は、900℃以上が好ましく、950℃以上がより好ましい。
ただし、本実施形態に係る焼結体を得る際の焼結条件は、1050℃よりも高い温度としても構わない。例えば、前記焼結条件は、1200℃以下としてもよく、1100℃以下としてもよい。
【0099】
前記焼結体の密度は、4.6g/cm
3以上5.2g/cm
3以下であることが好ましい。前記密度は、より好ましくは4.8cm
3以上、さらに好ましくは4.9cm
3以上である。前記密度は、より好ましくは5.15cm
3以下、さらに好ましくは5.1cm
3以下である。
【0100】
前記焼結体の測定温度30℃におけるリチウムイオン伝導率は、1×10
−5S/cm以上1×10
−3S/cm以下であることが好ましい。前記リチウムイオン伝導率は、より好ましくは7×10
−5S/cm以上、さらに好ましくは1×10
−4S/cm以上である。前記リチウムイオン伝導率は、より好ましくは9×10
−4S/cm以下、さらに好ましくは8×10
−4S/cm以下である。
【0101】
前記焼結体のリチウムイオン伝導の活性化エネルギー(Ea)は、42kJ/mol以下であることが好ましい。前記リチウムイオン伝導の活性化エネルギー(Ea)は38kJ/mol以下であることがより好ましく、34kJ/mol以下であることがさらに好ましい。前記リチウムイオン伝導の活性化エネルギー(Ea)は、低いほど好ましいが、例えば、15kJ/mol以上、18kJ/mol以上等とすることができる。
【0102】
[全固体リチウムイオン二次電池]
次に、全固体リチウムイオン二次電池の実施形態の一例について説明する。
【0103】
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池は、
正極活物質を含有する正極層と、
負極活物質を含有する負極層と、
前記正極層及び前記負極層の間に介在される固体電解質層と、を備える。
そして、前記正極層、前記負極層及び前記固体電解質層の少なくとも一つの層が、上記セラミックス粉末材料を焼結して得られる焼結体を備える。
【0104】
以下、本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池について、構成ごとに説明する。
【0105】
(正極層)
正極層は少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、リチウムイオン伝導性材料、電子伝導助剤および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。
【0106】
正極層に含まれるリチウムイオン伝導性材料は、上記セラミックス粉末材料を焼結して得られる焼結体であることが好ましい。正極層における前記焼結体の含有量は特に限定されないが、例えば、正極層全体に対して0.1体積%〜80体積%の範囲内とすることができる。この内、好ましくは1体積%〜60体積%の範囲内であり、より好ましくは10体積%〜50体積%の範囲内である。正極層の厚さは特に限定されないが、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。正極層が0.1μmより薄いと全固体リチウムイオン二次電池の容量を大きくしにくく、1000μmを超過した厚みからなると均質な層を形成しにくくなる。
【0107】
正極活物質は電気化学的なLiイオンの吸蔵・放出が可能な材料であれば特に限定されないが、全固体リチウムイオン二次電池の容量を大きくする観点から、理論容量の大きな硫黄や硫化リチウム(Li
2S)を用いることが好ましい。また、全固体リチウムイオン二次電池の作動電圧を高くする観点からLi含有酸化物材料を用いてもよい。具体的には、LiCoO
2、LiMnO
2、LiNiO
2、LiVO
2、Li(Ni
xCo
yMn
z)O
2(x+y+z=1)、Li(Ni
xCo
yAl
z)O
2(x+y+z=1)等の層状岩塩型酸化物、LiMn
2O
4、Li(Ni
0.5Mn
1.5)O
4等のスピネル型酸化物、LiFePO
4、LiMnPO
4、LiNiPO
4、LiCuPO
4等のオリビン型リン酸塩、Li
2FeSiO
4、Li
2MnSiO
4等のケイ酸塩等を用いることができる。正極活物質としては上述した材料を単独で用いてもよく、または任意の2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0108】
正極層における正極活物質の含有量は、例えば正極層全体に対して10体積%〜99体積%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、20体積%〜99体積%の範囲内である。また、正極活物質の形状としては、例えば粒子形状とすることができる。その平均粒径は、例えば0.05μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0109】
正極層は正極活物質およびリチウムイオン伝導性材料の他に、電子伝導助剤および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。電子伝導助剤としては電子伝導性の高い材料が好ましく、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバ等を挙げることができる。また、結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等を用いることができる。
【0110】
正極層はその構成成分(上述した正極活物質、リチウムイオン伝導性材料、電子伝導助剤および結着材等)を混合し、成形することで作製することができる。この際、必要に応じて焼結を行ってもよい。正極層の構成成分の混合方法は特に限定されず、一般的な粉体技術であれば使用することができる。この際、水または任意の有機溶媒を分散溶媒として使用してもよい。さらに、正極層の構成成分の混合物を成形及び焼結する方法は特に限定されず、一般的に知られている成形及び焼結の方法を用いることができる。また、正極層は固体電解質層の上に作製してもよい。この場合、正極層の焼結は固体電解質層との一体焼結の形式で行うことができる。ここで、一体焼結とは、「固体電解質層を構成するリチウムイオン伝導性材料」または「正極層の構成成分の混合物」の一方を成形し、その上に他方を成形して、必要に応じてプレスを行った後に、焼結を行う方法である。
【0111】
正極層の集電を行う正極集電体は、例えば正極層の固体電解質層が配置される面と逆側の面に設けることができる。正極集電体の材料としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、鉄及びカーボン等を挙げることができる。この内、ステンレススチールが好ましい。
【0112】
(負極層)
負極層は少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、リチウムイオン伝導性材料、電子伝導助剤および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。
【0113】
負極層に含まれるリチウムイオン伝導性材料は、上記焼結体(上記セラミックス粉末材料を焼結して得られる焼結体)であることが好ましい。負極層における前記焼結体の含有量は特に限定されないが、例えば、負極層全体に対して0.1体積%〜80体積%の範囲内とすることができる。この内、好ましくは1体積%〜60体積%の範囲内であり、より好ましくは10体積%〜50体積%の範囲内である。負極層の厚さは特に限定されないが、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0114】
負極活物質は電気化学的なLiイオンの吸蔵・放出が可能な材料であれば特に限定されないが、全固体リチウムイオン二次電池の容量を大きくする観点から、理論容量の大きな金属材料を用いることが好ましい。金属材料としては例えばLi、Si、Sn、In等の金属及びこれらの合金を挙げることができる。この内、金属Liが最も理論容量が大きいために好ましい。また、電池の可逆作動に優れたチタン酸化物やチタン酸リチウム等のTi系材料を用いてもよい。Ti系材料の具体例としては、TiO
2、H
2Ti
12O
25、Li
4Ti
5O
12等が挙げられる。さらに、安価な炭素系材料を用いることもできる。炭素系材料の具体例としては、天然黒鉛、人工黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素等が挙げられる。負極活物質としては上述した材料を単独で用いてもよく、または任意の2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0115】
負極層における負極活物質の含有量は、例えば負極層全体に対して10体積%〜99体積%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、20体積%〜99体積%の範囲内である。また、負極活物質の形状としては、例えば粒子形状や箔形状、膜形状等とすることができる。負極活物質の形状が粒子形状の場合、その平均粒径は、例えば0.05μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0116】
負極層は負極活物質およびリチウムイオン伝導性材料の他に、電子伝導助剤および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。電子伝導助剤及び結着材としては、上述した正極層に用いられるものを同様に用いることができる。
【0117】
負極層はその構成成分(上述した負極活物質、リチウムイオン伝導性材料、電子伝導助剤および結着材等)を混合し、成形することで作製することができる。この際、必要に応じて焼結を行ってもよい。負極層の構成成分の混合方法は特に限定されず、一般的な粉体プロセスであれば使用することができる。この際、水または任意の有機溶媒を分散溶媒として使用してもよい。さらに、負極層の構成成分の混合物を成形及び焼結する方法は特に限定されず、一般的に知られている成形及び焼結の方法を用いることができる。尚、負極活物質の形状が箔形状または膜形状等である場合、上述した負極層の形成方法により負極層を形成してもよいが、負極活物質自身を単独で負極層と見なしてもよい。また、負極層は固体電解質層の上に作製してもよい。この場合、負極層の焼結は固体電解質層との一体焼結の形式で行うことができる。ここで、一体焼結とは、「後述する固体電解質層を構成するリチウムイオン伝導性材料」または「負極層の構成成分の混合物」の一方をまず成形し、その上に他方を成形して焼結を行う方法である。
【0118】
負極層の集電を行う負極集電体は、例えば負極層における固体電解質層が配置される面と逆側の面に設けることができる。負極集電体の材料としては、例えば、ステンレススチール、銅、ニッケル及びカーボン等を挙げることができる。この内、ステンレススチールが好ましい。
【0119】
(固体電解質層)
固体電解質層は、正極層および負極層の間に介在される層であり、リチウムイオン伝導性材料から構成される層である。固体電解質層に含まれるリチウムイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0120】
固体電解質層に含まれるリチウムイオン伝導性材料は、上記焼結体(上記セラミックス粉末材料を焼結して得られる焼結体)であることが好ましい。固体電解質層における上記焼結体の含有量は、電子伝導性が十分に抑制できる割合であれば特に限定されないが、例えば、50体積%〜100体積%の範囲内であることが好ましい。
【0121】
固体電解質層には上記焼結体以外のリチウムイオン伝導性材料を含有することもできる。具体的には、Li
1.3Al
0.3Ti
1.7(PO
4)
3、Li
1.5Al
0.5Ge
1.5(PO
4)
3、LiZr
2(PO
4)
3、Li
1.2Ca
0.1Zr
1.9(PO
4)
3、Li
1.15Y
0.15Zr
1.85(PO
4)
3等のNASICON型化合物、Li
2O−B
2O
3系ガラス、Li
2O−SiO
2系ガラス、Li
2O−P
2O
5系ガラス、Li
2.9PO
3.3N
0.46ガラス(LIPON)等のリチウムイオン伝導性酸化物ガラス、Li
2S−B
2S
3系ガラス、Li
2S−SiS
2系ガラス、Li
2S−P
2S
5系ガラス等のリチウムイオン伝導性硫化物ガラスを挙げることができる。リチウムイオン伝導性酸化物ガラス及びリチウムイオン伝導性硫化物ガラスは結晶化させてガラスセラミック材料として使用することもできる。
【0122】
固体電解質層の厚さは全固体リチウムイオン二次電池の短絡を防ぐことができる厚さであれば特に限定されないが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内とすることができる。この内、0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0123】
固体電解質層は上述したリチウムイオン伝導性材料を成形し焼結することで作製することができる。固体電解質層を構成するリチウムイオン伝導性材料の成形及び焼結の方法は特に限定されず、一般的に知られている成形及び焼結の方法を用いることができる。焼結温度は特に限定されないが、例えばリチウムイオン伝導性材料が上述したセラミックス粉末材料である場合、700〜1200℃の範囲の温度であることが好ましく、700〜1100℃の範囲の温度であることがより好ましく、700〜1000℃の範囲の温度であることがさらに好ましい。ただし、Liの溶融・揮発を伴う分解反応抑制の観点から、1050℃以下が好ましく、1000℃以下がより好ましい。固体電解質層の焼結密度は理論密度に対して60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらにより好ましくは90%以上である。焼結密度が大きいほど抵抗を抑制できるためである。固体電解質層の焼結を行う際は、上述した正極層または負極層の少なくとも一つと一体焼結することが好ましい。一体焼結により層界面の抵抗を小さくすることができるためである。
【0124】
(全固体リチウムイオン二次電池の構成)
全固体リチウムイオン二次電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等にすることができる。
【0125】
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池を製造する方法は、上述した全固体リチウムイオン二次電池を構築できる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な全固体リチウムイオン二次電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。例えば、上述した正極層、固体電解質層、及び負極層をこの順番に積層することで、本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池が製造される。
【0126】
本実施形態の全固体リチウムイオン二次電池によれば、上記焼結体を含有することにより、ガーネット型化合物の高いリチウムイオン伝導度に起因して電池の内部抵抗が抑制され、レート特性等の電池性能が向上する。また、セラミックス粉末材料は微粒子の形態であるため、電極層内に含有されることで電極活物質との接触界面が十分に確保できる。従って、電極活物質へのイオン伝導経路が良好に構築され、電池反応に寄与できない電極活物質の割合が減少するために、電池のエネルギー密度が向上する。
上述した実施形態では、上記セラミックス粉末材料を全固体リチウムイオン二次電池に用いる場合について説明した。しかしながら、本発明に係る電池は、上記セラミックス粉末材料を焼結して得られた焼結体を有する限り、全固体リチウムイオン二次電池に限定されない。
【実施例】
【0127】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0128】
[原料]
実施例及び比較例のセラミックス粉末材料を製造するために、以下の原料を準備した。
【0129】
<第1の原料(Zr源)>
以下のようにして調製した炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(以下、AZC水溶液と称する)をZr源として使用した。
塩基性炭酸ジルコニウム(Zr(OH)
3.2(CO3)
0.4・7H
2O、第一稀元素化学工業株式会社製)、炭酸種である炭酸水素アンモニウム、及び、キレート化剤である酒石酸を純水に溶解し、アンモニウム水を用いて溶液のpHを8.0にした。ここで、モル比(炭酸種のモル数/Zrのモル数)は6.59とし、モル比(酒石酸のモル数/Zrのモル数)は0.06とした。このように得られたAZC水溶液は炭酸ジルコニウム−NH
4錯体の水溶液であり、そのZr濃度は1.96質量%であった。
【0130】
なお、ジルコニウム化合物は通常、混入不可避の成分としてハフニウム成分を含有している。上記AZC水溶液及び下記実施例、比較例で得られたセラミックス粉末材料にはハフニウムがジルコニウムに対してモル比(Hfのモル数/Zrのモル数)として0.03の割合で含まれている。そして、製造されたセラミックス粉末材料においては、ハフニウム成分は不純物化合物として観測されることはなく、その結晶構造中のジルコニウム位置に存在していると考えられる。従って、下記実施例、比較例では、特に断りのない限り、Zr濃度はジルコニウムとハフニウムの濃度の和として表記している。また、組成比中のZrはジルコニウムとハフニウムの和を意味している。
【0131】
<第2の原料(La源)>
La源としてはLa(NO
3)
3水溶液(La濃度16.2%)を使用した。
【0132】
<第3の原料(Al源)>
Al源としてはAl(NO
3)
3水溶液(Al濃度10%)を使用した。
【0133】
<第4の原料(Li源)>
Li源としてLiNO
3(Li濃度3.2%)水溶液を使用した。
【0134】
<第5の原料(Ga源)>
Ga源としてはGa(NO
3)
3水溶液(Ga濃度6.5%)を使用した。
【0135】
[セラミックス粉末材料の作製]
(実施例1)
<第一工程:沈殿物の作製>
炭酸水素アンモニウム50.0gを水200gに溶解させ、そこへ上記La(NO
3)
3水溶液76.29gと上記Al(NO
3)
3水溶液3.16gとの混合液を、毎分10mL滴下し、沈殿物を含むスラリーを得た。
【0136】
<第二工程:混合物の作製>
得られた沈殿物を含むスラリーの吸引濾過を行い、濾物を純水2000mLで洗浄し、水分を除去して前記沈殿物をスラリーから分離した。得られた沈殿物に上記AZC水溶液272.46gと上記LiNO
3水溶液42.16gとを加え、攪拌により分散させてスラリーとした。このスラリーを100℃で加熱乾燥して乾燥粉末としての混合物を得た。
【0137】
<第三工程:焼成物の作製>
前記混合物をボールミルにより粉砕した後、800℃で3時間焼成することで、実施例1に係るセラミックス粉末材料を得た。なお、各原料から算出される、セラミックス粉末材料の組成は、表1の通りである。
【0138】
(実施例2)
La(NO
3)
3水溶液の使用量を76.55gに、Al(NO
3)
3水溶液の使用量を3.39gに、AZC水溶液の使用量を271.57gに、LiNO
3水溶液の使用量を41.39gに変更としたこと以外は実施例1と同様の方法で実施例2に係るセラミックス粉末材料を得た。
【0139】
(実施例3)
La(NO
3)
3水溶液の使用量を76.91gに、Al(NO
3)
3水溶液の使用量を3.84gに、AZC水溶液の使用量を269.35gに、LiNO
3水溶液の使用量を40.42gに変更としたこと以外は実施例1と同様の方法で実施例3に係るセラミックス粉末材料を得た。
【0140】
(実施例4)
La(NO
3)
3水溶液の使用量を76.29gに、Al(NO
3)
3水溶液の使用量を4.34gに、AZC水溶液の使用量を262.91gに、LiNO
3水溶液の使用量を43.74gに変更としたこと以外は実施例1と同様の方法で実施例4に係るセラミックス粉末材料を得た。
【0141】
(実施例5)
La(NO
3)
3水溶液の使用量を79.14gに、Al(NO
3)
3水溶液の使用量を7.58gに、AZC水溶液の使用量を242.69gに、LiNO
3水溶液の使用量を37.89gに変更としたこと以外は実施例1と同様の方法で実施例5に係るセラミックス粉末材料を得た。
【0142】
(実施例6)
<第一工程:沈殿物の作製>
炭酸水素アンモニウム50.0gを水200gに溶解させ、そこへ上記La(NO
3)
3水溶液75.24gと上記Al(NO
3)
3水溶液2.84gと上記Ga(NO
3)
3水溶液0.41gの混合液を、毎分10mL滴下し、沈殿物を含むスラリーを得た。
【0143】
<第二工程:混合物の作製>
得られた沈殿物を含むスラリーの吸引濾過を行い、濾物を純水2000mLで洗浄し、水分を除去して前記沈殿物をスラリーから分離した。得られた沈殿物に上記AZC水溶液272.44gと上記LiNO
3水溶液40.86gとを加え、攪拌により分散させてスラリーとした。このスラリーを100℃で加熱乾燥して乾燥粉末としての混合物を得た。
【0144】
<第三工程:焼成物の作製>
前記混合物をボールミルにより粉砕した後、800℃で3時間焼成することで、実施例6に係るセラミックス粉末材料を得た。
【0145】
(比較例1)
La(NO
3)
3水溶液の使用量を75.88gに、Al(NO
3)
3水溶液の使用量を2.96gに、AZC水溶液の使用量を276.43gに、LiNO
3水溶液の使用量を42.13gに変更としたこと以外は実施例1と同様の方法で比較例1に係るセラミックス粉末材料を得た。
【0146】
(比較例2)
La(NO
3)
3水溶液の使用量を75.39gに、Al(NO
3)
3水溶液の使用量を4.42gに、AZC水溶液の使用量を275.54gに、LiNO
3水溶液の使用量を41.22gに変更としたこと以外は実施例1と同様の方法で比較例2に係るセラミックス粉末材料を得た。
【0147】
図1に、実施例2で得られたセラミックス粉末材料のSEM画像を、
図2に、その部分拡大画像を示す。また、
図3に、比較例1で得られたセラミックス粉末材料のSEM画像を、
図4に、その部分拡大画像を示す。なお、SEM画像中、背景の黒色部分は、粉末材料の固定に使用したカーボンテープであり、セラミックス粉末材料は存在しない。
【0148】
図1、
図2に示すように、実施例2のセラミックス粉末材料は、LLZ系ガーネット型化合物の粒子表面に、複数の小粒子が均一に形成されていることが確認できた。この小粒子は、後述するX線回折スペクトルの結果からすると、La化合物であると推察される。なお、図示しないが、他の実施例においても実施例2と同様に、LLZ系ガーネット型化合物の粒子の表面に、複数の小粒子が均一に形成されていることが確認できた。
一方、
図3、
図4に示すように、比較例1のセラミックス粉末材料のSEM画像においては、LLZ系ガーネット型化合物の粒子表面に、実施例2のような小粒子は確認されなかった。なお、図示しないが、他の比較例においても、LLZ系ガーネット型化合物の粒子表面に、実施例2のような小粒子は確認されなかった。
【0149】
[結晶相の同定]
(熱処理前のセラミックス粉末材料の結晶相)
実施例、比較例のセラミックス粉末材料について、X線回折装置(「RINT2500」リガク製)を用い、X線回折スペクトルを得た。測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
測定装置:X線回折装置(リガク製、RINT2500)
線源:CuKα線源
管電圧:50kV
管電流:300mA
走査速度:4°(2θ)/min
【0150】
上記X線回折スペクトルにおいて、2θ=16.0〜17.0°において認められる回折ピークは、立方晶系ガーネット型酸化物(ICDD:045−0109に帰属)に由来する回折ピークであり、その範囲における最も強度の高いピークの強度をI
cと表記した。
【0151】
上記X線回折スペクトルにおいて、2θ=27.9〜28.5°において認められる回折ピークは、正方晶系ガーネット型化合物(ICDD:01−078−6768に帰属)に由来する回折ピークであり、その範囲における最も強度の高いピークの強度をI
tと表記した。
【0152】
セラミックス粉末材料中に含まれる、立方晶系ガーネット型化合物に対する正方晶系ガーネット型化合物の含有比率([正方晶系ガーネット型化合物の含有量]/[立方晶系ガーネット型化合物の含有量])を、次式のように各X線回折ピークの強度比を用いて表した。結果を表1に示す。
含有比率([正方晶系ガーネット型化合物の含有量]/[立方晶系ガーネット型化合物の含有量])=I
t/I
c
【0153】
I
t/I
cが0.1以上であるとき、主相が正方晶相であるとし、I
t/I
cが0.1未満であるとき、主相が立方晶相であるとした。結果を表1に示す。
【0154】
(900℃熱処理後のセラミックス粉末材料の結晶相)
実施例、比較例のセラミックス粉末材料について、まず、前処理として、以下の条件で遊星型ボールミルにより粉砕した。
<粉砕条件>
装置:遊星型ボールミル(FRITSCH製、PULVERISETTE6)
回転数:400rpm
粉砕時間:30min
【0155】
粉砕により得られた粉末をコールドプレスにより円柱状に成型し、冷間等方圧加圧法による加圧を行うことで、焼結用成型体を得た。
<コールドプレス条件>
装置名:100kNニュートンプレス(NPaシステム社製、NT−100H−V09)
成型圧:14MPa
金型:φ=20mm
<冷間等方圧加圧法条件>
装置名:小型研究用CIP装置、Dr.CIP(KOBELCO社製)
成型圧:245MPa
【0156】
得られた焼結用成型体を900℃で25時間熱処理した。その後25℃まで降温して円柱状の焼結体を得た。
【0157】
得られた円柱状の焼結体を、乳鉢を用いて粉砕し、粉末化したものについて、上記「熱処理前のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の方法で、X線回折スペクトルを得た。
また、上記「熱処理前のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の方法で、900℃熱処理後のセラミックス粉末材料中に含まれる立方晶系ガーネット型化合物に対する正方晶系ガーネット型化合物の含有比率([正方晶系ガーネット型化合物の含有量]/[立方晶系ガーネット型化合物の含有量])を求めた。
また、主相の結晶相が立方晶相であるか正方晶相であるかにつき、上記「熱処理前のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0158】
(1050℃熱処理後のセラミックス粉末材料の結晶相)
実施例、比較例のセラミックス粉末材料について、まず、上記「900℃熱処理後のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の方法で、焼結用成型体を得た。
【0159】
次に、得られた焼結用成型体を1050℃で25時間熱処理して円柱状の焼結体を得た。
【0160】
得られた円柱状の焼結体を、乳鉢を用いて粉砕し、粉末化したものについて、上記「熱処理前のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の方法で、X線回折スペクトルを得た。
また、上記「熱処理前のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の方法で、1050℃熱処理後のセラミックス粉末材料中に含まれる立方晶系ガーネット型化合物に対する正方晶系ガーネット型化合物の含有比率([正方晶系ガーネット型化合物の含有量]/[立方晶系ガーネット型化合物の含有量])を求めた。
また、主相の結晶相が立方晶相であるか正方晶相であるかにつき、上記「熱処理前のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0161】
図5に、実施例1、比較例1、比較例2のセラミックス粉末材料のX線回折スペクトルを、
図6に、実施例2、実施例3セラミックス粉末材料のX線回折スペクトルを示す。なお、
図5には、それぞれ、熱処理前、900℃熱処理後、及び、1050℃熱処理後のX線回折スペクトルを示している。また、
図6には、それぞれ、熱処理前、及び、1050℃熱処理後のX線回折スペクトルを示している。
【0162】
実施例では、900℃から1050℃まで昇温する過程で、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移することが確認できた。また、結晶相の主相が正方晶相から立方晶相に相転移した後、25℃まで降温した後も主相が立方晶相であることが確認できた。具体的に、実施例1では、熱処理前では、主相が立方晶相であったものが900℃の熱処理により正方晶相となり、さらに、1050℃まで昇温し、25℃まで降温した後には、立方晶相となることが確認できた。実施例2〜実施例6では、熱処理前では、主相が正方晶相であったものが、1050℃まで昇温し、25℃まで降温した後には、立方晶相となることが確認できた。
【0163】
[焼結体の密度の測定]
実施例、比較例のセラミックス粉末材料について、上記「1050℃熱処理後のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の方法で、円柱状の焼結体を得た。
その後、円柱状の焼結体の寸法(円の直径φ、厚みd)及び質量wから、次に示す式により焼結体の密度(g/cm
3)を算出した。結果を表1に示す。
[密度(g/cm
3)]=w/{(φ/2)
2×π×d}
【0164】
図7に、実施例3のセラミックス粉末材料を1050℃で熱処理して得た焼結体のSEM画像を示す。また、
図8に、比較例2のセラミックス粉末材料を1050℃で熱処理して得た焼結体のSEM画像を示す。なお、SEM画像中、黒色部分は空洞である。
図7に示すように、実施例3に係る焼結体は、空洞が少なく緻密な焼結体となっており、密度測定の結果で4.6g/cm
3以上であることと一致する。
一方、
図8に示すように、比較例2に係る焼結体は、空洞が多く、密度測定の結果においても、3.59g/cm
3となっており、実施例と比較して小さい値となっていることと一致する。
【0165】
[焼結体のイオン伝導率の測定]
実施例、比較例のセラミックス粉末材料について、上記「1050℃熱処理後のセラミックス粉末材料の結晶相」の項で説明したのと同様の方法で、円柱状の焼結体を得た。
得られた円柱状の焼結体の両面に導電性カーボンペーストを塗布、乾燥して電極を形成した。これを白金線に接続したステンレススチール製のプレートで挟んで固定し、大気雰囲気の恒温槽中に保持して、下記の条件で交流インピーダンス測定することにより、30〜60℃の各温度での焼結体のイオン伝導率(σ
T)を得た。この際の温度30℃でのイオン伝導率(σ
T(30℃))を表1に示す。
<交流インピーダンス測定条件>
装置名:ソーラトロン製の周波数応答アナライザ(1255B型)及びポテンショガルバノスタット(1287型)
測定周波数領域:1Hz〜1MHz
測定温度域:30〜60℃
【0166】
[リチウムイオン伝導の活性化エネルギー(Ea)]
リチウムイオン伝導の活性化エネルギー(Ea)は、上記「焼結体のイオン伝導率の測定」で算出したσ
Tの温度依存性より算出した。すなわち、横軸を温度、縦軸をイオン伝導率の対数(log[イオン伝導率])とし、30℃、40℃、50℃、60℃でのイオン伝導率をプロットし、アレニウス(Arrhenius)の式:σ=σ
0exp(−Ea/RT)(σ:リチウムイオン伝導度、σ
0:頻度因子、R:気体定数、T:絶対温度)を用いて、リチウムイオン伝導度の温度依存性を示すグラフ(アレニウスプロット)の傾きより算出した。結果を1に示す。
【0167】
実施例のセラミックス粉末材料から得られる焼結体のσ
TおよびEaの値は、これまで報告されているLLZ系ガーネット型化合物の焼結体の特性と同程度であり、高いリチウムイオン伝導性を有していることが確認できた。
【0168】
【表1】