(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のポリエステルフィルム層の、前記易剥離性樹脂層とは反対の側、又は前記第2のポリエステルフィルム層の、前記易剥離性樹脂層とは反対の側に、ヒートシール層を備える、請求項1に記載の複合フィルム。
前記第1のポリエステルフィルム層の前記易剥離性樹脂層と接する面の表面自由エネルギーの極性成分が、9.0mN/m以下である、請求項1又は2に記載の複合フィルム。
前記剥離の後の前記第1のポリエステルフィルム層の前記剥離面の表面自由エネルギーの極性成分が、2.0mN/m以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《複合フィルム》
本発明の複合フィルムは、少なくとも、第1のポリエステルフィルム層、易剥離性樹脂層、及び第2のポリエステルフィルム層を、この順で含み、第1のポリエステルフィルム層と第2のポリエステルフィルム層とは、易剥離性樹脂層によって互いに接着されている。そして、第1のポリエステルフィルム層と第2のポリエステルフィルム層の表面と、易剥離性樹脂層とが、特定の構成となっている。
【0014】
具体的には、本発明の複合フィルムでは、第1のポリエステルフィルム層は、その両面ともにコロナ処理が施されておらず、第2のポリエステルフィルム層は、少なくとも易剥離性樹脂層と接する面に、コロナ処理が施されており、易剥離性樹脂層が、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーとの混合物で構成されており、かつポリエチレンと環状オレフィンコポリマーの合計に対する環状オレフィンコポリマーの割合が、1〜10質量%である。
【0015】
本発明の複合フィルムは、易剥離性樹脂層、並びにその両面に配置する第1及び第2のポリエステルフィルム層を、このような特定の構成とすることで、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面にて、層間剥離が可能となっている。
【0016】
易剥離性樹脂層は、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーとの混合比率を変えることにより、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面の剥離強度をコントロールすることができる。
【0017】
一般に、環状オレフィンコポリマーの含有率が高い場合には、剥離強度が小さくなり、含有率がある程度を超えると層間強度が弱くなりすぎて意図しない剥離が生じ、積層を維持しづらくなる。一方で、環状オレフィンコポリマーの含有率が低い場合には、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面の剥離強度が大きくなり、剥離しにくくなる。
【0018】
本発明の複合フィルムにおける易剥離性樹脂層は、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーの合計に対する環状オレフィンコポリマーの割合が1〜10質量%と小さく、環状オレフィンコポリマーの含有率が比較的低い。一般的にはこの様な場合、剥離強度が大きくなり、剥離が困難となる傾向にある。しかしながら本発明においては、第1のポリエステルフィルム層を、その両面ともにコロナ処理が施されていないものとし、第2のポリエステルフィルム層を、少なくとも易剥離性樹脂層と接する面に、コロナ処理が施されているものとすることによって、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面での剥離を、確実に行うことができる。
【0019】
また一般にコロナ処理は、ポリマーフィルムの表面における極性基を増加させ、それによって隣接する層との接着性を改良するために行われている。したがって、本発明のように第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面での剥離を行う場合、第1のポリエステルフィルム層の、易剥離性樹脂層とは反対側の面に、コロナ処理を行って他の層との接着を改良し、かつ第1のポリエステルフィルム層の、易剥離性樹脂層側の面にはコロナ処理を行わずに、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面での剥離を促進することが行われている。
【0020】
しかしながら、本件の発明者らは、第1のポリエステルフィルム層を、その両面ともにコロナ処理が施されていないものとすることによって、易剥離性樹脂における環状オレフィンコポリマーの含有率が比較的低い場合にも、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面での剥離を確実に行えることを見いだした。
【0021】
理論に拘束されるものではないが、これは、第1のポリエステルフィルム層の易剥離樹脂層と反対側の面だけにコロナ処理をした場合であっても、第1のポリエステルフィルム層の易剥離樹脂層側の面にも、コロナ処理が影響しているためと考えられる。
【0022】
湯切りや排出のための開孔を形成する蓋材においては、剥離強度の違いが製品に大きな影響を及ぼし、例えば、剥離強度が強すぎる場合には蓋材が破れ、一方で、剥離強度が弱すぎる場合には、開孔をうまく出現させることができず、孔残りや孔の脱落等の不具合が生じる場合があった。このため、開孔を形成する蓋材においては、所望の剥離強度を実現するためのコントロールが重要な事項となっていた。
【0023】
そして、一般的に積層体を形成する際には、層間の接着性を確保するためのコロナ処理が施されていたところ、本発明者らは、所望の剥離強度からのわずかなズレは、剥離面ではない側の面に対するコロナ処理が影響していることを見出した。
【0024】
またコロナ処理は、処理装置や処理条件等によってばらつきが生じ、ロットによって違いが生じる場合が多く、このため、同じ樹脂を選定した場合であっても、異なる剥離強度となってしまい、コントロールが難しい状況にあった。
【0025】
そこで、本発明のように、その両面ともにコロナ処理が施されていないポリエステルフィルムを用いれば、剥離強度にバラツキを生じさせず、またコロナ処理工程を削減できることで、生産コスト的にも有利となる。
【0026】
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルムの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合フィルムの断面図である。
【0027】
図1に示される本発明の一実施形態に係る複合フィルム1は、外面側から、紙層7、第1のポリエステルフィルム層8a、易剥離性樹脂層10、第2のポリエステルフィルム層8b、バリア層11、ヒートシール層12の順に積層された積層体となっている。
【0028】
一実施形態に係る複合フィルム1は、紙層7に隣接する第1のポリエステルフィルム層8aと、易剥離性樹脂層10との界面が剥離可能となっており、この界面が剥離時に剥離面13を形成するものとなっている。すなわち、一実施形態に係る複合フィルム1は、剥離面13を境に、紙層7と、紙層7に隣接する第1のポリエステルフィルム層8aとが、外面層9を構成し、易剥離性樹脂層10、第2のポリエステルフィルム層8b、バリア層11、及びヒートシール層12が、内面層14を構成している。そして、外面層9と内面層14とが、両者の界面を剥離面13として、剥離可能に積層されたものとなっている。
【0029】
本発明の複合フィルムは、第1のポリエステルフィルム層、易剥離性樹脂層、及び第2のポリエステルフィルム層を、この順で含み、第1のポリエステルフィルム層と第2のポリエステルフィルム層とは、易剥離性樹脂層によって互いに接着されていれば、これら以外の層を任意に備えていてもよい。
【0030】
図1に示される一実施形態に係る複合フィルム1においては、任意の外面層9として、紙層7を備え、任意の内面層14として、バリア層11とヒートシール層12を備えている。
【0031】
本発明の複合フィルムを構成するそれぞれの層の厚み等は、複合フィルムの用途等に応じて、適宜決定することができる。以下、各層について説明する。
【0032】
<第1のポリエステルフィルム層>
第1のポリエステルフィルム層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層である。第1のポリエステルフィルム層は、易剥離性樹脂層に隣接し、易剥離性樹脂層を介して、第2のポリエステルフィルム層に積層される層である。
【0033】
(材料)
第1のポリエステルフィルム層の材料となるポリエステル樹脂は、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリカーボネート(PC)等の一般的な樹脂であってよい。
【0034】
なお、第1のポリエステルフィルム層の材料となるポリエステル樹脂は、1種単独であっても、2種以上の組成物であってもよい。また、第1のポリエステルフィルム層には、必要に応じて、ポリエステル樹脂以外の樹脂等や添加剤等が、少量、例えば20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下の量で配合されていてもよい。
【0035】
第1のポリエステルフィルム層の材料となるポリエステル樹脂と、後記する第2のポリエステルフィルム層の材料となるポリエステル樹脂とは、同じであっても異なっていてもよい。第1のポリエステルフィルム層と第2のポリエステルフィルム層を形成するポリエステル樹脂が同一の場合には、コロナ処理の有無による易剥離性樹脂層との接着性をより調整し易くなる。
【0036】
第1のポリエステルフィルム層の材料となるポリエステル樹脂としては、他のポリエステルフィルムよりも安価であり、食品用包材に使用される一般的な材料であることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。
【0037】
本発明の複合フィルムにおいて第1のポリエステルフィルム層は、ポリエステル樹脂を材料として予め成形されたフィルムから形成される。ポリエステルフィルムは、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。耐熱性及び低収縮性の観点からは、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0038】
(厚み)
第1のポリエステルフィルム層の厚さは、特に限定されるものではない。例えば、5μm以上、8μm以上、10μm以上、12μm以上、又は15μm以上であってよく、30μm以下、25μm以下、又は20μm以下であってもよい。5μm以上であれば、包材としての使用に耐えうる剛性を複合フィルムに付与するため好ましい。
【0039】
(コロナ処理)
本発明の複合フィルムにおいて、第1のポリエステルフィルム層は、その両面ともにコロナ処理が施されていないことを特徴とする。すなわち、本発明の複合フィルムにおいて、第1のポリエステルフィルム層は、隣接する、特定の成分及び特定の組成を有する易剥離性樹脂層に接する面についても、また、その反対の外面についても、コロナ処理は施されていない。そして、易剥離性樹脂層に接する面は、本発明の複合フィルムにおいて、剥離面となる界面を形成する面となる。
【0040】
図1に示される一実施形態に係る複合フィルム1においては、第1のポリエステルフィルム層8aは、紙層7に隣接する面、及び易剥離性樹脂層10の両面ともに、コロナ処理は施されていない。そして複合フィルム1においては、第1のポリエステルフィルム層8aと易剥離性樹脂層10との界面が、剥離面13となる。
【0041】
(易剥離性樹脂層と接する面の表面自由エネルギーの極性成分)
第1のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層と接する面の表面自由エネルギーの極性成分は、9.0mN/m以下であってもよい。ここで、この表面自由エネルギーの極性成分の値は、第1のポリエステルフィルム層を易剥離性樹脂層に積層する前の値である。
【0042】
第1のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層と接する面の表面自由エネルギーの極性成分は、8.5mN/m以下、8.0mN/m以下、7.5mN/m以下、7.25mN/m以下、7.0mN/m以下、6.75mN/m以下、又は6.5mN/m以下であってもよい。また、この値は、2.0mN/m以上、3.0mN/m以上、4.0mN/m以上、5.0mN/m以上、又は6.0mN/m以上であってよい。
【0043】
第1のポリエステルフィルム層を易剥離性樹脂層に積層する前の、第1のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層と接する面の表面自由エネルギーの極性成分が上記の範囲であれば、全開封する前に部分剥離部を剥離して開孔を形成することができる蓋材を形成したときに、確実な剥離が可能となる剥離強度を実現することができる。
【0044】
なお、本発明に関して、第1のポリエステルフィルム層を易剥離性樹脂層に積層する前の、第1のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層と接する面の表面自由エネルギーの極性成分は、装置として、ダブル滴定ハンディ接触角・表面自由エネルギー解析装置MSA(KRUSS社)を用い、水とジヨードメタンの接触角を測定し、OWRK法(Owens,Wendt,Rebbel,Kaelble法)により、表面自由エネルギーの極性成分を解析した。
【0045】
(剥離面の表面自由エネルギーの極性成分)
本発明の複合フィルムは、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面を剥離面として剥離される。剥離の後の第1のポリエステルフィルム層の剥離面の表面自由エネルギーの極性成分は、2.0mN/m以下であってもよい。
【0046】
剥離の後の第1のポリエステルフィルム層の剥離面の表面自由エネルギーの極性成分は、1.8mN/m以下、1.6mN/m以下、又は1.5mN/m以下であってもよい。また、この値は、0.5mN/m以上、1.0mN/m以上、又は1.25mN/m以上であってよい。
【0047】
剥離後の第1のポリエステルフィルム層の剥離面の表面自由エネルギーの極性成分が上記の範囲であれば、全開封する前に部分剥離部を剥離して開孔を形成することができる蓋材を形成したときに、確実な剥離が可能となる剥離強度を実現することができる。
【0048】
なお、本発明に関して、剥離の後の第1のポリエステルフィルム層の剥離面の表面自由エネルギーの極性成分は、下記のようにして測定することができる:
(1)第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面で剥離する。
(2)第1のポリエステルフィルム層の剥離面を、トルエンで湿らせたウエスを用いて、力を入れずに一方向に動かすことで、トルエンによる拭き取りを10回実施する。
(3)トルエンによる拭き取りの後で、トルエンを乾燥させるため、新しいウエスを用いて、力を入れずに一方向に動かすことで、10回乾拭き行う。
(4)乾拭きの後で、ダブル滴定ハンディ接触角・表面自由エネルギー解析装置MSA(KRUSS社)を用いて、水とジヨードメタンの接触角を測定し、OWRK法(Owens,Wendt,Rebbel,Kaelble法)により、表面自由エネルギーの極性成分の解析を行う。
【0049】
<第2のポリエステルフィルム層>
第2のポリエステルフィルム層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層である。第2のポリエステルフィルム層は、易剥離性樹脂層に隣接し、易剥離性樹脂層を介して、第1のポリエステルフィルム層に積層される層である。
【0050】
(材料)
第2のポリエステルフィルム層の材料となるポリエステル樹脂は、上記した第1のポリエステルフィルム層の材料となるポリエステル樹脂と同様である。
【0051】
(厚み)
第2のポリエステルフィルム層の厚みは、上記した第1のポリエステルフィルム層の厚みと同様である。
【0052】
(コロナ処理)
本発明の複合フィルムにおいて、第2のポリエステルフィルム層は、少なくとも易剥離性樹脂層と接する面に、コロナ処理が施されている。少なくとも易剥離性樹脂層と接する面に、コロナ処理が施されていればよく、両面にコロナ処理が施されていてもよい。
【0053】
<易剥離性樹脂層>
易剥離性樹脂層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層であり、上記した第1のポリエステルフィルム層と第2のポリエステルフィルム層の間に位置し、これらの層を互いに接着する層である。
【0054】
易剥離性樹脂層は、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーとの混合物から構成されており、これらが所定の比率で混合されている。易剥離性樹脂層を構成する混合物は、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーとを必須の成分として含んでいれば、その他の樹脂や添加剤等を、本発明の効果を損なわない程度に含んでいてもよい。
【0055】
(ポリエチレン)
本発明の易剥離性樹脂層を構成するポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
【0056】
中では、加工がし易く、安価であり、供給が安定しており、また、食品包装に一般的に使用される樹脂である等の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)、又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0057】
低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とは、分岐鎖を含めて、メチレン基の繰返し単位を80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、若しくは98mol%以上含み、又は実質的にすべての繰返し単位がメチレン基である、密度が0.930g/cm
3未満のポリエチレンをいう。
【0058】
本発明の易剥離性樹脂層を構成するポリエチレンが、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)である場合には、その密度は、0.925g/cm
3以下、又は0.923g/cm
3以下であってもよく、0.870g/cm
3以上、0.875g/cm
3以上、0.880g/cm
3以上、0.900g/cm
3以上、0.910g/cm
3以上、又は0.915g/cm
3以上であってもよい。
【0059】
低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、長鎖若しくは短鎖の分岐構造を有していてもよい。短鎖の分岐構造は、炭素原子数4〜18、4〜10、又は4〜8のα−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン等に由来する分岐構造であってよい。
【0060】
本発明の易剥離性樹脂層を構成するポリエチレンの熱特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、そのメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、JIS K6922−1及び−2、並びにJIS K7210−1に準拠して測定した場合に、好ましくは、0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g/10min以上、2.0g/10min以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であってよく、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、20g/10min以下、又は10g/10min以下であってよい。
【0061】
(環状オレフィンコポリマー)
環状オレフィンコポリマーは、環状オレフィンがモノマーとして用いられた重合体であり、重合体の主鎖又は側鎖に飽和炭化水素環構造を有する。
【0062】
本発明の易剥離性樹脂層を構成する環状オレフィンコポリマーとしては、少なくとも1種の環状オレフィンと、環状オレフィン以外の少なくとも1種のビニル化合物とをモノマーとする、共重合体であることが好ましい。
【0063】
また、環状オレフィンコポリマーは、環状オレフィンの少なくとも1種と、環状オレフィン以外のビニル化合物の少なくとも1種とをモノマーとして用いた、付加重合による環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)であっても、縮合環骨格に二重結合を有する化合物の少なくとも1種と、該化合物以外の不飽和化合物の少なくとも1種とをモノマーとして用いた、開環重合による環状オレフィン開環重合体又はその水素添加物(COP)であってもよい。
【0064】
本発明の易剥離性樹脂層を構成する環状オレフィンコポリマーが、付加重合による環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)である場合には、モノマーとなる環状オレフィンとしては特に限定されるものではないが、例えば、シクロブテン、3−メチルシクロブテン、3,4−ジイソプロペニルシクロブテン、シクロペンテン、1−メチルシクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、1−メチルシクロオクテン、5−メチルシクロオクテン、シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィンや、テトラシクロドデセンやノルボルネン等の多環シクロオレフィン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0065】
また、環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)のコモノマーとなる、環状オレフィン以外のビニル化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、及び1−デセン等のα−オレフィン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン等の単環ジエンや、不飽和結合を2個有するノルボルネン環等を有する多環ジエン、ブタジエンやイソプレン等の直鎖又は分岐のジエン等を挙げることができる。
【0066】
本発明の易剥離性樹脂層を構成する環状オレフィンコポリマーが、開環重合による環状オレフィン開環重合体又はその水素添加物(COP)である場合には、モノマーとなる縮合環骨格に二重結合を有する化合物としては、メタセンス重合触媒によって重合し得るものであれば特に限定されるものではない。例えば、テトラシクロドデセン、ノルボルネン、もしくはこれらの誘導体等のノルボルネン系骨格を有する化合物が挙げられる。
【0067】
また、環状オレフィン開環重合体のコモノマーとなる、縮合環骨格に二重結合を有する化合物以外の不飽和化合物としては、メタセンス重合触媒によって重合し得るものであれば特に限定されるものではない。例えば、上記した環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)のモノマーとなる環状オレフィンや、環状ジエン、主鎖に炭素−炭素二重結合を有する単量体、並びにこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0068】
なお、環状オレフィン開環重合体は、主鎖に炭素−炭素の二重結合(C=C)を有している。そして、水素添加を実施すると、主鎖の二重結合が炭素−炭素の単結合(C−C)となった水素添加物(COP)を得ることができる。耐熱性、耐候性等の観点からは、少なくとも主鎖の炭素−炭素二重結合が水素添加された重合体であってもよい。
【0069】
(組成)
易剥離性樹脂層を構成する混合物において、必須成分であるポリエチレンと環状オレフィンコポリマーの組成は、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーの合計に対して環状オレフィンコポリマーの割合が、1〜10質量%である。
【0070】
ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーの合計に対する環状オレフィンコポリマーの割合は、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、又は9質量%以上であってよく、10重量%未満、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってよい。
【0071】
(厚み)
易剥離樹脂層の厚みは、第1のポリエステルフィルム層との安定した剥離性を得るとともに、第2のポリエステルフィルム層との安定した接着性を得るために、好ましくは、10μm以上、12μm以上、14μm以上、16μm以上、18μm以上、20μm以上、22μm以上、又は24μm以上であってよく、30μm以下、28μm以下、26μm以下、24μm以下、22μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0072】
<その他の層>
本発明の複合フィルムは、第1のポリエステルフィルム層、易剥離性樹脂層、及び第2のポリエステルフィルム層以外に、その他の層を任意に備えていてもよい。
【0073】
その他の層は、第1のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層とは反対の側、又は第2のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層とは反対の側に配置することができる。
【0074】
中でも第1又は第2のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層とは反対の側の最表面、特に第2のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層とは反対の側の最表面には、ヒートシール層が配置されていることが好ましい。最表面にヒートシール層を備えることによって、本発明の複合フィルムを用いて包装体等を形成する際に、複合フィルム同士、又は複合フィルムと他の材料とをヒートシールすることが可能となる。
【0075】
また、第1又は第2のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層とは反対の側の最表面、特に第1のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層とは反対の側の最表面には、基材層が配置されていることが好ましい。基材層は、複合フィルムの表層となるため、本発明の複合フィルムを用いて包装体等を形成する際に、包装体等の外層となる。最内層にヒートシール層を備える場合には、ヒートシールして包装体等を形成するときの保護層ともなりうる。更に、基材層には、包装体等の内容物の表示等のための印刷を施すことでもきる。
【0076】
その他の層は、特に限定されるものではなく、基材層やヒートシール層以外に、例えば、バリア性を付与するためのバリア層、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
図1では示していないが、
図1に示される本発明の一実施形態に係る複合フィルム1においては、第1のポリエステルフィルム層8aと紙層7、第2のポリエステルフィルム層8bとバリア層11は、接着剤層によって互いに接着されている。なお、第1のポリエステルフィルム層8aと、易剥離性樹脂層10と、第2のポリエステルフィルム層8bとは、サンドラミネートによって互いに直接に接着されている。また、バリア層11とヒートシール層12とは、押出ラミネートによって互いに直接に接着されている。
【0077】
図1に示される本発明の一実施形態に係る複合フィルム1においては、その他の層として、第1のポリエステルフィルム層8aの易剥離性樹脂層10とは反対の側の最表面に紙層7、第2のポリエステルフィルム層8bの易剥離性樹脂層10とは反対の側に、バリア層11とヒートシール層12が配置されている。
【0078】
(基材層)
本発明の複合フィルムにおいて、任意の構成層である基材層は、単層であっても、複層からなる積層体となっていてもよい。
【0079】
基材層が単層である場合には、基材層は、樹脂、特に保護層となり、印刷が可能となる樹脂からなる樹脂層であってよい。基材層が樹脂層である場合には、その材料としては、一般的に用いられている樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0080】
なお、上記の樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0081】
なお、基材層が樹脂層である場合には、予め成形された樹脂フィルムを適用してもよい。基材層となる樹脂フィルムは、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0082】
あるいは基材層は、樹脂以外を材料とする層、例えば、紙層等であってもよい。紙層としては、例えば、上質紙、コート紙、アート紙等が挙げられる。また、紙層が複合フィルムの最外層となる場合には、紙層には、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷が施されていてもよい。
【0083】
また、基材層には、アルミニウム等の金属や、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物が蒸着された無機物蒸着膜が形成されていてもよい。あるいは、塩化ビニリデンコート層、ポリフッ化ビニリデンコート層等のバリアコート層を有していてもよい。更に、基材層が樹脂フィルムから構成される場合には、その表面を粗面化させる粗面化処理等が施されていてもよい。
【0084】
基材層が、2層以上の積層体である場合には、上記した単層である場合の樹脂からなる層が複数設けられていてもよいし、樹脂以外を材料とする層が設けられていてもよい。
【0085】
(ヒートシール層)
本発明の複合フィルムにおいて、任意の構成層であるヒートシール層は、本発明の複合フィルムを用いて包装体等を形成する際に、ヒートシールに用いられる層となる。このため、ヒートシール層は、複合フィルムの最内層となるように配置されている。
【0086】
ヒートシール層を構成する材料としては、ヒートシールが可能であり、本発明の複合フィルムから形成された包装体等に十分なシール強度を付与できるものであれば、特に限定されるものではない。公知の材料を適用することができ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0087】
例えば、内容物が充填される包装袋等を形成する場合には、ヒートシール層は内容物を充填するための空間を形成する層となる。このため、耐内容物性を付与したい場合には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることが好ましい。
【0088】
ヒートシール層は、上記の材料から予め成形されたフィルムを用いて形成してもよいし、ヒートシール層を形成するための材料を溶融して押出し、冷却固化させて形成してもよい。
【0089】
また、ヒートシール層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0090】
更に、ヒートシール層は、単層であっても、複層からなる構成であっていてもよい。
【0091】
なお、ヒートシール層は、使用の際に接合部の開封が容易となるように、イージーピール性(易開封性)を有していてもよい。イージーピール性を有するヒートシール層とすれば、例えば、本発明の複合フィルムから蓋材を形成し、容器本体と熱融着させて包装体を形成した場合に、内容物を取り出すための開封が容易となる。
【0092】
(バリア層)
バリア層は、複合フィルムにバリア性を付与するための層である。
【0093】
バリア層としては、例えば、酸素や水蒸気等のガスを遮断する機能を発現する、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、又はポリアクリロニトリル(PAN)等からなる樹脂層が挙げられる。
【0094】
なお、上記の樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0095】
あるいは、例えば、無機物蒸着膜層、金属箔層、有機物コート層等であってもよい。
【0096】
バリア層となる無機物蒸着膜層としては、例えば、シリカ蒸着膜、アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ・アルミナ蒸着膜等を挙げることができる。
【0097】
バリア層となる金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、チタン箔等の金属箔や、アルミニウム合金箔、ステンレス箔等の合金箔を挙げることができる。
【0098】
バリア層となる有機物コート層としては、塩化ビニリデンコート層、ポリフッ化ビニリデンコート層等のバリアコート層であってもよい。
【0099】
バリア層として無機物蒸着膜層又は有機物コート層を存在させる場合には、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0100】
バリア層として金属箔を存在させ場合には、バリア層の厚さは、5μm以上、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましい。また、100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0101】
(補強層)
補強層は、複合フィルムの強度を補強するための層である。補強層の材料としては、例えば、コート紙、アート紙等の紙、合成紙、不織布等が挙げられる。補強層となる紙等を複合フィルムの最表面に存在させる場合には、その表面に、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷がなされていてもよい。
【0102】
(接着層)
接着層は、層と層との間に存在し、層と層とを接着するための層である。接着層としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーからなる層等が挙げられる。
【0103】
また接着層は、接着剤からなる層であってもよい。例えば、ドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、ノンソルベントラミネート接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等であってよい。
【0104】
《複合フィルムの製造方法》
本発明の複合フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0105】
《複合フィルムの用途》
本発明の複合フィルムの用途は、特に限定されるものではない。例えば、包装材として用いて、包装袋や蓋材等を形成してもよい。
【0106】
<包装袋>
本発明の複合フィルムは、包装材として用いて、包装袋を形成してもよい。本発明の複合フィルムがヒートシール層を備える場合には、シートシール層を互いにヒートシールすることで、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋等を形成することができる。
【0107】
<蓋材>
本発明の複合フィルムからは、蓋材を成形してもよい。例えば、容器本体の上端開口部を密封するための蓋材となりうる。
【0108】
(ハーフカット)
本発明の複合フィルムから得られる蓋材は、ハーフカットを有していてもよい。ハーフカットは、複合フィルムの用途に応じて適宜設ければよい。
【0109】
例えば、本発明の複合フィルムを、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面を剥離面とし、開封する前に部分剥離部において開孔を形成することができる蓋材として用いる場合には、第1のポリエステルフィルム層の側から易剥離性樹脂層に達する深さの第1のハーフカットと、第2のポリエステルフィルム層の側から易剥離性樹脂層を厚み方向に貫通して、易剥離性樹脂と第1のポリエステルフィルム層との界面に少なくとも達する深さの第2のハーフカット及び第3のハーフカットを有するようにしてもよい。ここで、第2のハーフカット及び第3のハーフカットは、第1のポリエステルフィルム層に達する深さであってもよい。
【0110】
このような蓋材は、周縁部に、開封用タブと部分剥離用タブとを備え、第1のハーフカット及び部分剥離用タブが、部分剥離部の外縁を画定し、第2のハーフカットが、液体流通孔の外縁を画定し、第3のハーフカットが、部分剥離用タブを画定する。そして、液体流通孔が、部分剥離部内に配置されている。
【0111】
具体的には、部分剥離用タブの近傍に、少なくとも1つの第2のハーフカット、及び第3のハーフカットを備えさせ、部分剥離用タブの両脇に、第2のハーフカットが形成された領域を覆うように、周縁部を結ぶ第1のハーフカットを備えさせる。
【0112】
これによれば、部分剥離用タブを摘まんで部分剥離部を剥離したときに、液体流通孔以外の箇所では、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面で剥離し、かつ液体流通孔の箇所においては、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面で剥離せずに第2のポリエステルフィルムが第1のポリエステルフィルム層に随伴して除去されて、液体流通孔を形成することができる。
【0113】
本発明の複合フィルムから形成される本発明の蓋材のハーフカットについて、
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る複合フィルムの断面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る蓋材の平面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る蓋材の使用例の説明図である。
【0114】
図1に示される本発明の一実施形態に係る複合フィルム1は、
図2に示される蓋材1の断面図でもある。複合フィルム1の各層の構成は、上記した通りである。
【0115】
図2に示される蓋材1は複合フィルム1から構成されており、複合フィルム1が必要な蓋の形状に打ち抜かれたものである。一実施形態に係る蓋材1は、ほぼ円形をなす周縁の一部が外方へ延出して開封用タブ2が形成されていると共に、この開封用タブ2とは反対側の周縁の一部も外方へ延出して、部分剥離用タブ3が形成されている。
【0116】
また、蓋材1は、部分剥離用ハーフカットとしての第1のハーフカット5と、開孔用ハーフカットとしてのとしての第2のハーフカット4と、タブ形成用ハーフカットとしての第3のハーフカット6を備えている。
【0117】
蓋材1において、開孔用ハーフカットとしての第2のハーフカット4の形状は、環状となっており、蓋材1には、開孔用ハーフカットとしての第2のハーフカット4が、2個設けられている。
【0118】
本発明の複合フィルムから形成される本発明の蓋材においては、部分剥離用タブは、開孔用ハーフカットとしての第2のハーフカットの形成領域を覆う外面層(部分剥離部)を引き剥がしやすくするためのものであり、第2のハーフカットの形成領域を覆う外面層(部分剥離部)の外縁に設けられている。また、開封用タブは、蓋材全体を封止対象である容器本体から引き剥がす時に、蓋材を引っ張りやすくするためのものであり、開孔用ハーフカットとしての第2のハーフカットの形成領域を覆う外面層(部分剥離部)以外の外面層の外縁に設けられていればよい。
【0119】
図1に示される本発明の一実施形態に係る複合フィルム1、及び
図2に示される本発明の一実施形態に係る蓋材1において、部分剥離用ハーフカットとしての第1のハーフカット5は、外面層9、すなわち紙層7及び第1のポリエステルフィルム層8aを、厚み方向に貫通し、剥離面13に達する深さであり、また、開孔用ハーフカットとしての第2のハーフカット4及びタブ形成用ハーフカットとしての第3のハーフカット6は、内面層14、すなわちヒートシール層12、バリア層11、第2のポリエステルフィルム層8b、及び易剥離性樹脂層10を、厚み方向に貫通し、剥離面13、すなわち易剥離樹脂層と第1のポリエステルフィルム層との界面に達する深さである。
【0120】
この複合フィルム1から得られる蓋材1では、第1のハーフカット5及び部分剥離用タブ3が、部分剥離部の外縁を画定している。第2のハーフカット4が、液体流通孔の外縁画定しており、液体流通孔が、部分剥離部内に配置されている。また、第3のハーフカット6が、部分剥離用タブ3を画定している。これによれば、部分剥離用タブ3を摘まんで部分剥離部を剥離したときに、液体流通孔以外の箇所では、第1のポリエステルフィルム層8aと易剥離性樹脂層10との界面で剥離して、液体流通孔を形成することができる。
【0121】
具体的には、上記の複合フィルム1及び蓋材1において、開孔用ハーフカットである第2のハーフカット4の形状は、環状となっており、この第2のハーフカット4の形成領域の外面層9を、部分剥離用ハーフカットである第1のハーフカット5によって、内面層14から剥離面13にて剥離したときに、第2のハーフカット4の環状形状の内側部分が、外面層9に付着した状態で随伴除去されることで、開孔を形成することができる。
【0122】
次に、本発明に係る蓋材1の使用例を、
図3に基づいて説明する。
【0123】
図3(a)に示されるように、蓋材1は、通常、容器本体16の封止に用いられる。
図3(a)は、内容物(図示せず)が収納された容器本体16のフランジ部17に、蓋材1がヒートシールされた、内容物入り蓋付き容器である。
図3(a)に示される内容物入り蓋付き容器において、蓋材1は、内面層14の最表面に位置するヒートシール層12を容器本体16側にして容器本体16の上に被せられ、容器本体16の開口部周縁に張り出したフランジ部17に、ヒートシール層12がヒートシールされている。
【0124】
図3(b)は、
図3(a)の内容物入り蓋付き容器を全開封する前に、開孔を形成する様子を示す図である。
図3(b)に示されるように、部分剥離用タブ3を摘まんで上方へ引き上げ、開孔用ハーフカットである第2のハーフカット4の形成領域を覆う外面層9(部分剥離部)を、タブ形成用ハーフカットである第3のハーフカット6を介してその他の領域の外面層9から切り離し、内面層14から剥離して除去する。この外面層9の剥離時に、内面層14の第2のハーフカット4の環状形状の内側部分を、外面層14に付着した状態で随伴除去することで、開孔15が形成される。
【0125】
開孔15の形成後、開孔15側へ容器本体16を傾けることで、容器本体16内の水等の液体を、開孔15から排出することができる。開孔15の大きさを内容物の大きさよりも小さくしておくことで、内容物の流出を防止することができる。
【0126】
図3(c)は、外面層9を剥離して開孔15を形成した後に、蓋付き容器から蓋材1を除去して容器を全開封する様子を示す図である。
図3(c)に示されるように、開封用タブ2を上方へ引き上げ、蓋材1全体を容器本体16のフランジ部17から引き剥がして、容器本体16の開口部を全開にして、内容物を取り出す。
【0127】
なお、内容物がインスタント焼きそば等の場合には、まず、
図3(a)の状態で開封用タブ2を引き上げて容器本体16の開口部を部分的に開き、具材やソース等の包みを容器内部から取り出す。その後に注湯し、容器を再封する。その後、一定時間おいてから、
図3(b)のように開孔15を形成し、開孔15を通して湯切りし、続いて、
図3(c)のように容器本体16の開口部を全開にして、具材やソース等を投入する。
【0128】
本発明の複合フィルムから形成される本発明の蓋材においては、開孔用ハーフカットである第2のハーフカットの形状は、環状となっていれば特に制限はなく、円形の他、楕円形、角丸長方形、卵形、三角形、四角形、五角形以上の多角形等、適宜設定することができる。開孔用ハーフカットの環状形状の内側部分を、外面層に付着した状態で随伴除去する際に引っ掛かりを生じにくいことから、角のない円形、楕円形、角丸長方形、卵形等が好ましい。また、第2のハーフカットは、単数でも複数でもよいが、内容物を流出させない大きさとして液体を排出しやすくするために、複数形成することが好ましい。
【0129】
また、部分剥離用ハーフカットである第1のハーフカットは、通常、連続した線状に形成され、例えば、ミシン目や断続ライン状に形成してもよい。
【0130】
タブ形成用ハーフカットである第3のハーフカットは、部分剥離用タブを摘まんで上方へ引き上げたときに、外面層と内面層との界面に引っ張り力を作用させるために、部分剥離用タブの基部を横断して、内面側から開孔用ハーフカットである第2のハーフカットと同様の深さで形成してもよい。
【0131】
<内容物入り蓋付容器>
内容物入り蓋付容器は、容器本体と、内容物と、本発明の複合フィルムから形成された蓋材と、を備える。
(容器本体)
内容物入り蓋付容器を形成するための容器本体は、収納部及びフランジ部を有する。
【0132】
容器本体の材料は、特に限定されるものではなく、本発明の複合フィルムから形成された蓋材のヒートシール層がヒートシールできるものであればよい。例えば、樹脂で表面がコーティングされた紙製の容器、又は樹脂製の容器等が挙げられる。
【0133】
{収納部}
収納部は、内容物が収納されている部分である。この部分の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、略円錐台形、多角錐台形、直方体形、立方体形等であってよい。
【0134】
{フランジ部}
フランジ部は、容器本体の収納部の上端開口部周縁の部分である。その形状は特に限定されるものではなく、例えば、鍔状であってよい。また、フランジ部の外周の形状は、蓋材の形状に応じて適宜選択することができる。
【0135】
容器本体が紙製の場合には、フランジ部は、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有していてもよい。
【0136】
(内容物)
内容物は、収納部に収容されているものである。内容物としては、特に限定されるものではないが、例えば、即席麺、チルド食品、冷凍食品等の加熱式食品、又はスナック菓子、グミキャンディー、飲料等の非加熱式食品が挙げられる。
【実施例】
【0137】
実施例及び比較例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0138】
<材料>
実施例及び比較例においては、層を構成する材料として、以下を準備した。
【0139】
(1)紙層
・紙(坪量:80g/m
2)
【0140】
(2)第1のポリエステルフィルム層
・PETフィルム1(A社、厚み:12μm)
・PETフィルム2(B社、厚み:12μm)
・PETフィルム3(C社、厚み:8μm)
・PETフィルム4(D社、厚み:12μm)
【0141】
(3)易剥離性樹脂層
以下のポリエチレンと環状オレフィンコポリマーとを用いて、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーの合計に対する環状オレフィンコポリマーの割合が、10質量%未満となる混合物を作製した。
・ポリエチレン:(低密度ポリエチレン(LDPE))
・環状オレフィンコポリマー
【0142】
(4)第2のポリエステルフィルム層
・PETフィルム3(C社、厚み:8μm)
【0143】
(5)アルミニウム層
・アルミニウム箔(厚み:6.5μm)
【0144】
(6)ヒートシール層
・イージーピール性ポリオレフィン系樹脂
【0145】
《実施例1〜3、比較例1〜4》
<複合フィルムの作製>
表1に示す材料を用いて、以下に示す方法により、(紙層//第1のポリエステルフィルム層/易剥離性樹脂層/第2のポリエステルフィルム層//アルミニウム層/ヒートシール層)の積層構成となる複合フィルムを作製した。なお、ドライラミネートで貼り合わせた部分を、「//」で示している。
【0146】
なお、実施例1〜3では、第1のポリエステルフィルム層となるポリエステルフィルムとして、両面ともにコロナ処理が施されていないものを用いた。対応する比較例1〜3、及び比較例4では、第1のポリエステルフィルム層となるポリエステルフィルムとして、片面にコロナ処理が施されているものを用い、コロナ処理が施されている面を紙層側の面とし、かつコロナ処理が施されていない面を易剥離性樹脂層側の面として、複合フィルムを作製した。
【0147】
また、第2のポリエステルフィルム層となるポリエステルフィルムについては、実施例及び比較例の全てにおいて、その両面に対してコロナ処理が実施されているものを用いた。
【0148】
1.紙層と、第1のポリエステルフィルム層となるポリエステルフィルムとを、ドライラミネートにより貼り合わせて、(紙層//第1のポリエステルフィルム層)の積層体を作製した。ドライラミネート用接着剤としては、2液硬化型ドライラミネート接着剤を用いて、塗布量は2.5g/m
2とした。
【0149】
2.アルミニウム層となるアルミニウム箔と、第2のポリエステルフィルム層となるポリエステルフィルムとを、ドライラミネートにより貼り合わせて、(第2のポリエステルフィルム層//アルミニウム層)の積層体を作製した。ドライラミネート用接着剤としては、2液硬化型ドライラミネート接着剤を用いて、塗布量は2.5g/m
2とした。
【0150】
3.上記で作製した(紙層//第1のポリエステルフィルム層)の積層体と、(第2のポリエステルフィルム層//アルミニウム層)の積層体の間に、易剥離性樹脂層となる組成物を挟み込んでサンドラミし、(紙層//第1のポリエステルフィルム層/易剥離性樹脂層/第2のポリエステルフィルム層//アルミニウム層)の積層体を作製した。易剥離性樹脂層の厚みは、20μmとなるようにした。
【0151】
4.アルミニウム層の上に、ヒートシール層の材料となるイージーピール性ポリオレフィン系樹脂を、厚さ20μmとなるように押出ラミネートすることで、(紙層//第1のポリエステルフィルム層/易剥離性樹脂層/第2のポリエステルフィルム層//アルミニウム層/ヒートシール層)の積層構成となる複合フィルムを得た。
【0152】
<蓋材の作製>
得られた複合フィルムを切り抜き、必要なハーフカットを施して、
図2に示す蓋材を作製した。
【0153】
<蓋付容器の作製>
得られた蓋材を、発泡ポリスチレンカップ(フランジ幅:6mm、開口内径:157mm角)に、加熱したヒートシールバーを用いて、ヒートシール幅5mm、温度130℃、圧力0.3Mpa、時間0.3秒の条件でヒートシールして、蓋付容器を作製した。
【0154】
《評価》
【0155】
(給湯後開孔形成試験)
実施例1〜3、及び比較例1〜4で作製した蓋付容器について、開封用タブを摘まんで引き上げ1/3程度開封した後に98℃のお湯を注ぎ、タブを折り曲げて再封した。再封の3分後に、部分剥離用タブを摘まんで引き上げ、部分剥離部をその他の領域の外面層から切り離し、内面層から剥離して、開孔を形成した。剥離時に紙層の破れ、剥離面の白濁がないかについて、目視で確認した。評価基準を、以下に示す。
〇:部分剥離部の紙層が内面層に残らず、かつ内面層の剥離面に白濁がなかった
×:部分剥離部の紙層が内面層に残る、あるいは内面層の剥離面が白濁した
【0156】
(第1のポリエステルフィルム層の易剥離性樹脂層と接する面の表面自由エネルギーの極性成分の解析)
実施例1〜3、及び比較例1〜4の第1のポリエステルフィルム層として用いるポリエステルフィルムについて、コロナ処理が施されていない面の表面自由エネルギーの極性成分の解析を行った。装置として、ダブル滴定ハンディ接触角・表面自由エネルギー解析装置MSA(KRUSS社)を用い、水とジヨードメタンの接触角を測定し、OWRK法(Owens,Wendt,Rebbel,Kaelble法)により、表面自由エネルギーの極性成分を解析した。
【0157】
(剥離面の表面自由エネルギーの極性成分の解析)
実施例1〜3、及び比較例1〜4で作製した蓋を、第1のポリエステルフィルム層と易剥離性樹脂層との界面で剥離した。第1のポリエステルフィルム層の剥離面を、トルエンで湿らせたウエスを用いて、力を入れずに一方向に動かすことで、トルエンによる拭き取りを実施した。拭き取りは、各蓋でそれぞれ10回行い、蓋毎に新しいウエスを用いた。
【0158】
トルエンによる10回拭き取りの後、トルエンを乾燥させるため、乾拭きを行った。乾拭きは、新しいウエスを用いて、力を入れずに一方向に動かし、各蓋でそれぞれ10回行った。乾拭き後の各蓋について、上記と同様にして、表面自由エネルギーの極性成分の解析を行った。
【0159】
【表1】
【課題】全開封する前に部分剥離部において開孔を形成できる蓋材において、開孔を形成するための剥離の際に破れや孔残り等の不具合の発生を抑制し、確実な剥離が可能な剥離強度を実現する複合フィルム、当該複合フィルムから形成される蓋材、及び内容物入り蓋付容器を提供する。
【解決手段】蓋材を形成する複合フィルムとして、易剥離性樹脂層及びその両面に配置するポリエステルフィルムを特定の構成とする。具体的には、第1のポリエステルフィルム層8a、易剥離性樹脂層10、及び第2のポリエステルフィルム層8bを、この順で含む複合フィルム1において、第1のポリエステルフィルム層8aは、その両面ともにコロナ処理が施されておらず、第2のポリエステルフィルム層8bは、少なくとも易剥離性樹脂層10と接する面にコロナ処理が施されているものとし、易剥離性樹脂層の成分および組成を特定の範囲のものとする。