特許第6987289号(P6987289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987289ポンプ制御装置、ポンプ制御システム、及びポンプ制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6987289
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ポンプ制御装置、ポンプ制御システム、及びポンプ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20211213BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   F04B49/06 341L
   F04D15/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2021-116491(P2021-116491)
(22)【出願日】2021年7月14日
【審査請求日】2021年7月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長重 洸紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 洋
(72)【発明者】
【氏名】中 徹平
(72)【発明者】
【氏名】清水 省吾
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 悠
(72)【発明者】
【氏名】内田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】岸 雄大
【審査官】 大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−049221(JP,A)
【文献】 特開平08−240185(JP,A)
【文献】 特開2012−237384(JP,A)
【文献】 特開2000−265967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04D 15/00
F04D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクからガスを払い出す複数のポンプのうち、運転中の前記ポンプの台数である運転台数を取得する取得部と、
運転中の前記ポンプの合計負荷が、前記運転台数毎に定められた余裕値を運転中の前記ポンプの定格負荷の合計から減算した値に達した場合に、停止中の前記ポンプを新たに起動させるように制御する制御部と、
を有し、
前記余裕値は、前記運転台数が多いほど小さな値である、
ポンプ制御装置。
【請求項2】
前記余裕値は、前記運転中の前記ポンプの定格負荷の合計から、前記運転台数から1減算した台数分の前記ポンプの最大負荷の合計を減算した値である、請求項1に記載のポンプ制御装置。
【請求項3】
前記余裕値は、前記運転台数から1減算した台数分の前記ポンプの最大負荷の合計が、前記運転中の前記ポンプの前記定格負荷の合計以上となる場合は0である、請求項1又は請求項2に記載のポンプ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、運転中の前記ポンプがトリップし、残りの運転中の前記ポンプの合計負荷が、前記残りの運転中の前記ポンプの最大負荷の合計である許容値を超える場合は、運転中の全ての前記ポンプの運転を中止させるように制御する、
請求項1から請求項の何れか1項に記載のポンプ制御装置。
【請求項5】
タンクからガスを払い出す複数のポンプと、
前記複数のポンプのうち、運転中の前記ポンプの台数である運転台数を取得する取得部と、
運転中の前記ポンプの合計負荷が、前記運転台数毎に定められた余裕値を運転中の前記ポンプの定格負荷の合計から減算した値に達した場合に、停止中の前記ポンプを新たに起動させるように制御する制御部と、
を有し、
前記余裕値は、前記運転台数が多いほど小さな値である、
ポンプ制御システム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から請求項の何れか1項に記載のポンプ制御装置の各部として機能させるためのポンプ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ制御装置、ポンプ制御システム、及びポンプ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LNGタンクからLNGを払い出しするLNGポンプ制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このLNGポンプ制御システムは、LNGタンクの液位を測定する液位測定手段と、前記LNGの吐出圧力を測定する圧力測定手段と、前記LNGの吸込温度を測定する温度測定手段と、を備える。また、このLNGポンプ制御システムは、前記液位測定手段で測定した液位と、前記圧力測定手段で測定した吐出圧力と、前記温度測定手段で測定した吸込温度とにもとづいて、前記LNGタンクから吐出したLNGが気化しないで、当該LNGポンプ内の圧力が所定値以上であるか否かを判定する判定手段と、を備える。また、このLNGポンプ制御システムは、判定手段によって、前記LNGタンクから吐出したLNGが気化しないで、当該LNGポンプ内の圧力が所定値以上であると判定された場合に、前記LNGポンプに配設された前記LNGを吐出する吐出弁を開操作する制御手段を備える。
【0003】
また、LNGタンクにLNGを受入れ貯蔵し、貯蔵しているLNGを所定の性状に調整し気化ガス、LNGとして供給するLNG基地も知られている(例えば、特許文献2参照。)。このLNG基地は、メタンガス又はメタンガスを主成分とする気化ガスを発電用ガスとして供給する発電用ガス供給系統と、外部から増熱剤を供給することなく、都市ガスとして使用可能な発熱量に調整された熱量調整ガス及び熱量調整LNGのうち少なくとも一方を供給する燃料供給系統と、を備える。
【0004】
また、LNG貯蔵タンク内に発生するBOGの再液化装置も知られている(例えば、特許文献3参照。)。このBOGの再液化装置は、LNG貯蔵タンク内に発生するBOGをコンプレッサーで昇圧後、熱交換器または再液化容器に導き、LNG貯蔵タンクから熱交換器または再液化容器に払い出しLNGを導くとともに該払い出しLNGによって熱交換器または再液化容器内に導かれたBOGを冷却して再液化を行う。そして、このBOGの再液化装置は、再液化したBOGをドラム内に一時的に貯え、昇圧ポンプによって昇圧した後に気化器に送出する。このBOGの再液化装置は、LNG貯蔵タンクから熱交換器または再液化容器に導かれる払い出しLNGの一部が過冷却LNGとして、制御弁を介して昇圧ポンプのポンプサクションに導かれる。
【0005】
また、1以上の供給先に電力を供給する複数台の供給装置の運転台数を制御する台数制御装置も知られている(例えば、特許文献4参照。)。この台数制御装置は、所定の起動条件に基づいて運転台数を増加させ、所定の停止条件に基づいて運転台数を減少させる台数制御部と、前記供給先のこれから先の電力負荷の傾向を予測する予測部と、電力負荷が増えないと予測された場合、運転台数が減少しやすくなるように前記停止条件を変更する条件変更部と、を備える。また、この台数制御装置は、電力および熱を発生させ工場へ供給するコージェネレーションシステム(CGS)の運転台数を増加させるための電力負荷の閾値である起動設定値と、CGSの運転台数を減少させるための電力負荷の閾値である停止設定値が、予め運転台数毎に設定されており、CGSが運転中に電力負荷が増加し起動設定値を超えると、CGSの運転台数を増やすように台数制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−237384号公報
【特許文献2】国際公開2014−010033号公報
【特許文献3】特開2008−309195号公報
【特許文献4】特開2018−078679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、LNG(液化天然ガス)又はLPG(液化石油ガス)等のガスの払い出しのために用いるポンプの運転中に、負荷上昇に伴い新たにポンプを起動させる場合、当該新たに起動させるポンプは、運転中のポンプの合計負荷が定格負荷の合計に達した場合に起動を開始すれば、コストデメリットが発生しない。しかし、運転中のポンプの合計負荷を上げると、何れかのポンプがトリップした場合に、残りのポンプの負荷が許容値を超える可能性がある。そこで現状は、運転中のポンプの合計負荷が、定格負荷の合計から一定値を減算した値に達した場合に、ポンプを新たに起動させている。このため、必要以上にポンプを運転する必要があり、コストデメリットが発生しているという課題があった。
【0008】
本発明は、運転中のポンプの合計負荷が、定格負荷の合計から一定値を減算した値に達した場合に、ポンプを新たに起動する場合に比較して、ポンプの過剰な運転時間を削減しつつ、運転中のポンプの合計負荷が許容値を超えないようにすることができる、ポンプ制御装置、ポンプ制御システム、及びポンプ制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るポンプ制御装置は、タンクからガスを払い出す複数のポンプのうち、運転中の前記ポンプの台数である運転台数を取得する取得部と、運転中の前記ポンプの合計負荷が、前記運転台数毎に定められた余裕値を運転中の前記ポンプの定格負荷の合計から減算した値に達した場合に、停止中の前記ポンプを新たに起動させるように制御する制御部と、を含んで構成される。これにより、運転中のポンプの合計負荷が、定格負荷の合計から一定値を減算した値に達した場合に、ポンプを新たに起動する場合に比較して、ポンプの過剰な運転時間を削減しつつ、運転中のポンプの合計負荷が許容値を超えないようにすることができる。
【0010】
また、前記余裕値は、前記運転台数が多いほど小さな値としてよい。これにより、運転台数が多くなるほど、ポンプの過剰な運転をより削減することができる。
【0011】
また、前記余裕値は、前記運転中の前記ポンプの定格負荷の合計から、前記運転台数から1減算した台数分の前記ポンプの最大負荷の合計を減算した値としてよい。これにより、ポンプが1台トリップした場合でも、運転中のポンプの合計負荷が、運転台数から1減算した台数分のポンプの最大負荷を超えないようにすることができる。
【0012】
また、前記余裕値は、前記運転台数から1減算した台数分の前記ポンプの最大負荷の合計が、前記運転中の前記ポンプの前記定格負荷の合計以上となる場合は0としてよい。これにより、ポンプが1台トリップした場合でも、過剰なポンプの運転を発生させずに、運転中のポンプの合計負荷が、運転台数から1減算した台数分のポンプの最大負荷を超えないようにすることができる。
【0013】
また、前記制御部は、運転中の前記ポンプがトリップし、残りの運転中の前記ポンプの合計負荷が、前記残りの運転中の前記ポンプの最大負荷の合計である許容値を超える場合は、運転中の全ての前記ポンプの運転を中止させるように制御してよい。これにより、許容値を超えるようなポンプの運転を抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係るポンプ制御システムは、タンクからガスを払い出す複数のポンプと、前記複数のポンプのうち、運転中の前記ポンプの台数である運転台数を取得する取得部と、運転中の前記ポンプの合計負荷が、前記運転台数毎に定められた余裕値を運転中の前記ポンプの定格負荷の合計から減算した値に達した場合に、停止中の前記ポンプを新たに起動させるように制御する制御部と、を含んで構成される。
【0015】
また、本発明に係るポンプ制御プログラムは、コンピュータを、上記ポンプ制御装置の各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るポンプ制御装置、ポンプ制御システム、及びポンプ制御プログラムによれば、運転中のポンプの合計負荷が、定格負荷の合計から一定値を減算した値に達した場合に、ポンプを新たに起動する場合に比較して、ポンプの過剰な運転時間を削減しつつ、運転中のポンプの合計負荷が許容値を超えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ポンプ制御システムの概略構成を示す図である。
図2】ポンプ制御装置におけるCPUの機能構成の例を示すブロック図である。
図3】余裕値データベースの一例を示す図である。
図4】所定閾値の一例を示す図である。
図5】起動処理の一例を示すフローチャートである。
図6】中止処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るポンプ制御システム1は、タンクからLNG又はLPG等のガスを払い出す複数のポンプ10A、10B、10Cと、ポンプ制御装置20と、を含む。以下、ポンプ10A、10B、10Cの各々を区別なく説明する場合には、単に「ポンプ10」と表記する。なお、ポンプ制御システム1に含まれるポンプ10の数は図1の例に限定されない。
【0020】
ポンプ10及びポンプ制御装置20は、通信手段Nを介して相互に通信可能とされている。本実施形態では、通信手段Nとして、LAN(Local Area Network)、又はWAN(Wide Area Network)等の企業内の通信回線を適用している。
【0021】
図1に示すように、ポンプ制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、ストレージ24、及び通信I/F(Interface)27を有する。各構成は、バス29を介して相互に通信可能に接続されている。
【0022】
CPU21は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU21は、ROM22又はストレージ24からプログラムを読み出し、RAM23を作業領域としてプログラムを実行する。CPU21は、ROM22又はストレージ24に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM22又はストレージ24には、ポンプ制御プログラムとしての起動プログラム及び中止プログラムが格納されている。起動プログラム及び中止プログラムは、1つのプログラムであってもよいし、複数のプログラム又はモジュールで構成されるプログラム群であってもよい。
【0023】
ROM22は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM23は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ24は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0024】
通信I/F27は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi−Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0025】
以下では、ポンプ10の1台あたりの最大負荷が130t/hで、かつ定格負荷が100t/hである場合について説明する。しかし、ポンプ10の1台あたりの最大負荷及び定格負荷はこれらの値に限定されない。
【0026】
次に、ポンプ制御装置20の機能構成について説明する。図2に示すように、ポンプ制御装置20は、取得部20A及び制御部20Bを備えている。さらに、ポンプ制御装置20は、余裕値データベース200を備えている。
【0027】
取得部20Aは、複数のポンプ10のうち、運転中のポンプ10の台数である運転台数を取得する。例えば、取得部20Aは、各ポンプ10から、通信I/F27を介して、稼働状況を示す情報を取得することにより、運転台数を取得する。また、取得部20Aは、余裕値データベース200から、運転台数に応じた余裕値を取得する。ここで、余裕値とは、運転中のポンプ10の合計負荷が閾値に達した際に、新たにポンプ10を起動させる場合における閾値を規定するための値である。本実施形態では、運転中のポンプ10の定格負荷の合計に一定の余裕を持たせた値を閾値とするために、定格負荷の合計から減算する値を余裕値という。
【0028】
図3に示すように、余裕値データベース200は、運転台数毎に余裕値が記憶されたデータベースである。なお、余裕値データベース200には、運転台数が7台以上の場合の余裕値が記憶されてもよい。図3に示すように、余裕値データベース200で定める余裕値は、運転台数が多いほど小さな値である。具体的には、余裕値は、運転中のポンプ10の定格負荷の合計から、運転台数から1減算した台数分のポンプ10の最大負荷の合計を減算した値である。例えば、運転台数が3台の場合、3台分のポンプ10の定格負荷の合計が300t/hであり、2台分のポンプ10の最大負荷の合計が260t/hであるため、余裕値は40t/hである。また、余裕値は、運転台数から1減算した台数分のポンプ10の最大負荷の合計が、運転中のポンプ10の定格負荷の合計以上となる場合は0t/hである。例えば、運転台数が5台の場合、4台分のポンプ10の最大負荷の合計が520t/hであり、5台分のポンプ10の定格負荷の合計である500t/h以上であるため、余裕値は0t/hである。運転中のポンプ10の負荷の許容値を最大負荷として設定した場合、余裕値を上記のように定めることで、運転中のポンプ10が1台トリップした場合であっても、残りの運転中のポンプ10の合計負荷が許容値を超えないようにすることができる。
【0029】
制御部20Bは、運転中のポンプ10の合計負荷が、取得部20Aが取得した余裕値を運転中のポンプ10の定格負荷の合計から減算した値である所定閾値に達した場合に、通信I/F27を介して、停止中のポンプ10を新たに起動させるように制御する。
【0030】
例えば、運転台数が3台の場合、3台分のポンプ10の定格負荷の合計は300t/hであり、図3に示す例から余裕値は40t/hである。したがって、図4に示すように、ポンプ10の合計負荷が、所定閾値である260t/hに達した場合に、制御部20Bは、停止中のポンプ10を新たに起動させるように制御する。
【0031】
また、制御部20Bは、運転中のポンプ10がトリップし、残りの運転中のポンプ10の合計負荷が、残りの運転中のポンプ10の最大負荷の合計である許容値を超える場合は、通信I/F27を介して、運転中の全てのポンプ10の運転を中止させるように制御する。図3に示したような余裕値を定めていたとしても、負荷が上昇中にポンプ10がトリップした場合や、2台以上のポンプ10がトリップした場合には、残りのポンプ10の合計負荷が許容値を超える場合がある。そのため、上記制御は、許容値を超えるようなポンプ10の運転を回避するための制御である。
【0032】
次に、本実施形態に係るポンプ制御システム1の作用について説明する。
【0033】
図5は、ポンプ制御装置20による起動処理の流れを示すフローチャートである。CPU21がROM22又はストレージ24から起動プログラムを読み出して、RAM23に展開して実行することにより、起動処理が行なわれる。
【0034】
ステップS100で、CPU21は、運転台数を取得する。
【0035】
ステップS102で、CPU21は、ステップS100で取得した運転台数に対応する余裕値を余裕値データベース200から取得する。
【0036】
ステップS104で、CPU21は、ステップS102で取得した余裕値を、運転中のポンプ10の定格負荷の合計から減算した値を所定閾値として導出する。
【0037】
ステップS106で、CPU21は、運転中のポンプ10の合計負荷が、ステップS104で導出した所定閾値に達したか否かを判定する。合計負荷が所定閾値に達していない場合は、本ステップの判定を繰り返す(ステップS106:NO)。合計負荷が所定閾値に達すると(ステップS106:YES)、CPU21は、ステップS108に移行する。
【0038】
ステップS108で、CPU21は、停止中のポンプ10を新たに起動させるように制御し、本起動処理を終了する。本起動処理を繰り返し実行することにより、運転台数に応じた余裕値に基づいて導出された所定閾値を用いて、停止中のポンプ10を新たに起動させるか否かを判定することができる。
【0039】
図6は、ポンプ制御装置20による中止処理の流れを示すフローチャートである。CPU21がROM22又はストレージ24から中止プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、中止処理が行なわれる。
【0040】
ステップS200で、CPU21は、通信I/F27を介してポンプ制御装置20の制御対象以外のポンプ10(例えば他の基地のポンプ。以下、「対象外ポンプ」という。)の運転状況に関する情報を取得し、全ての対象外ポンプが運転を中止したか否かを判定する。全ての対象外ポンプが運転を中止した場合(ステップS200:YES)、CPU21はステップS202へ移行する。一方、何れかの対象外ポンプが運転を中止していない場合(ステップS200:NO)、CPU21はステップS204へ移行する。
【0041】
ステップS202で、CPU21は、運転中のポンプ10が1台トリップしても対象基地の運転を継続できるようにするため、運転台数が2台以上になるようにポンプ10を制御し、本中止処理を終了する。
【0042】
ステップS204で、CPU21は、運転中のポンプ10がトリップしたか否かを判定する。運転中のポンプ10がトリップした場合(ステップS204:YES)、CPU21は、ステップS206に移行する。一方、運転中のポンプ10がトリップしていない場合(ステップS204:NO)、CPU21は本中止処理を終了する。
【0043】
ステップS206で、CPU21は、運転台数が3台以上であるか否かを判定する。運転台数が3台以上である場合(ステップS206:YES)、CPU21はステップS208へ移行する。一方、運転台数が2台以下である場合(ステップS206:NO)、CPU21はステップS210へ移行する。
【0044】
ステップS208で、CPU21は、停止中のポンプ10を新たに起動させるように制御し、本中止処理を終了する。
【0045】
ステップS210で、CPU21は、運転中のポンプ10の合計負荷が許容値を超えたか否かを判定する。運転中のポンプ10の合計負荷が許容値を超えた場合(ステップS210:YES)、CPU21はステップS212へ移行する。一方、運転中のポンプ10の合計負荷が許容値を超えていない場合(ステップS210:NO)、CPU21はステップS208へ移行する。
【0046】
ステップS212で、CPU21は、運転中の全てのポンプ10の運転を中止させるように制御し、本中止処理を終了する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るポンプ制御装置20は、運転台数を取得し、運転中のポンプ10の合計負荷が、運転台数毎に定められた余裕値を運転中のポンプ10の定格負荷の合計から減算した値に達した場合に、停止中のポンプ10を新たに起動させるように制御する。
【0048】
例えば運転台数が4台の場合において、運転台数に関係なく、合計負荷が定格負荷の合計から一定値(例えば、40t/h)を減算した値に達した場合に、ポンプ10が新たに起動する場合、合計負荷が360t/hに達した場合に、5台目のポンプ10が起動する。一方、本発明を適用し、合計負荷が、運転台数毎に定められた余裕値(図3に示す例では、10t/h)を定格負荷の合計から減算した値に達した場合に、ポンプ10が新たに起動する場合、合計負荷が390t/hに達した場合に、5台目のポンプ10が起動する。したがって、本発明により、運転中のポンプ10の合計負荷が定格負荷の合計から一定値を減算した値に達した場合に、ポンプ10が新たに起動する場合に比較して、ポンプ10の過剰な運転時間を削減しつつ、運転中のポンプ10の合計負荷が許容値を超えないようにすることができる。
【0049】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した起動処理及び中止処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field−Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、起動処理及び中止処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0050】
また、上記実施形態では、ポンプ制御プログラムがROM22又はストレージ24に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD−ROM、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ポンプ制御システム
10 ポンプ
20 ポンプ制御装置
20A 取得部
20B 制御部
200 余裕値データベース
【要約】
【課題】運転中のポンプの合計負荷が、定格負荷の合計から一定値を減算した値に達した場合に、ポンプを新たに起動する場合に比較して、ポンプの過剰な運転時間を削減しつつ、運転中のポンプの合計負荷が許容値を超えないようにする。
【解決手段】ポンプ制御装置20は、タンクからガスを払い出す複数のポンプ10のうち、運転中のポンプ10の台数である運転台数を取得する取得部20Aと、運転中のポンプ10の合計負荷が、運転台数毎に定められた余裕値を運転中のポンプ10の定格負荷の合計から減算した値に達した場合に、停止中のポンプ10を新たに起動させるように制御する制御部20Bと、を有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6