【文献】
鈴木 和雅 他,耐干渉無線通信方式に関する検討,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2014年12月11日,Vol.114, No.368,pp.77-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記干渉除去部は、前記干渉電力推定部で推定された前記干渉電力および前記第2の雑音電力を用いて重み係数を算出し、前記重み係数を前記干渉信号に乗算し、前記受信信号から前記重み係数を乗算した干渉信号を除去した信号から前記データシンボルを抽出した第2の干渉除去後信号を出力し、
さらに、
前記第2の干渉除去後信号に復調処理を行う復調部、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
前記干渉除去部が、前記干渉電力推定部で推定された前記干渉電力および前記第2の雑音電力を用いて重み係数を算出し、前記重み係数を前記干渉信号に乗算し、前記受信信号から前記重み係数を乗算した干渉信号を除去した信号から前記データシンボルを抽出した第2の干渉除去後信号を出力する第5のステップと、
復調部が、前記第2の干渉除去後信号を用いて復調を行う第6のステップと、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の干渉電力推定方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態に係る受信装置、無線通信システムおよび干渉電力推定方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る送信装置1の構成例を示すブロック図である。送信装置1と後述する受信装置とはそれぞれ別の装置である。送信装置1は、受信装置に対して信号を送信して通信を行う。送信装置1は、符号化部100と、シンボルマッピング部101と、ヌルシンボル挿入部102と、送信波形整形部103と、D/A(Digital/Analog)変換部104と、送信高周波部105と、アンテナ106と、を備える。
【0013】
符号化部100は、送信情報ビットに対して誤り訂正符号化を行い、送信ビット系列として出力する。誤り訂正符号化は、例えば、畳み込み符号化、ターボ符号化、LDPC(Low Density Parity Check code)などが挙げられるが、誤り訂正符号化はこれらに限定されない。なお、送信装置1は、誤り訂正符号化を行わない構成でもよい。
【0014】
シンボルマッピング部101は、符号化部100で誤り訂正符号化された送信ビット系列に対して一次変調を施し、送信シンボル系列に変換する。一次変調における変調方式は、例えば、PSK(Phase Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などが挙げられるが、変調方式はこれらに限定されない。
【0015】
ヌルシンボル挿入部102は、送信シンボル系列にヌルシンボルを挿入する。ヌルシンボルは、振幅が0となる信号である。ヌルシンボル挿入部102の詳細な動作については後述する。
【0016】
送信波形整形部103は、送信シンボル系列をアップサンプリングする。また、送信波形整形部103は、送信シンボル系列に帯域制限を行い、ベースバンド信号またはIF(Intermediate Frequency)信号である送信デジタル信号を生成する。送信波形整形部103が送信シンボル系列に帯域制限を行うときに用いる帯域制限フィルタの種類については特に限定されない。ただし、帯域制限フィルタについては、ヌルシンボル区間のナイキスト点における送信信号成分の漏れ込みを低減することができるナイキストフィルタの適用が効果的である。
【0017】
D/A変換部104は、送信デジタル信号を送信アナログ信号に変換する。送信高周波部105は、D/A変換部104でD/A変換された送信アナログ信号を無線周波数信号に変換する。アンテナ106は、無線周波数信号を送信する。なお、送信装置1において、ヌルシンボル挿入部102以外の構成要素における送信処理は一般的な無線送信装置で行われる送信処理であり、特に限定されるものではない。
【0018】
ヌルシンボル挿入部102の動作について詳細に説明する。
図2は、本実施の形態に係るヌルシンボル挿入部102が出力する送信シンボル系列の例を示す図である。
図2において、横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示す。
図2において、D0〜D5はデータシンボル200を示す。
図2に示すように、ヌルシンボル挿入部102は、送信シンボル系列すなわちデータシンボル200がマッピングされているデータシンボル区間の間にヌルシンボル区間を設け、ヌルシンボル201を挿入する。
図2は、ヌルシンボル挿入部102が、各データシンボル200の間にそれぞれ1つのヌルシンボル201を挿入した例を示す。ただし、ヌルシンボル201の挿入間隔は任意であり、複数のデータシンボル区間毎に1つの間隔でヌルシンボル区間が設けられてもよい。また、データシンボル200に対するヌルシンボル201の挿入間隔は、必ずしも等間隔でなくてもよい。
【0019】
ヌルシンボル挿入部102は、ヌルシンボル201の挿入間隔を調整することによって、送信シンボル系列のヌル挿入率を任意に調整できる。ヌルシンボル201の挿入間隔を短くするほど、後述する受信装置においてヌルシンボル区間に現れる干渉信号をサンプリングする際のサンプリングレートを早める効果があり、より広帯域な干渉信号をサンプリングすることが可能となる。このように、送信装置1は、ヌルシンボル挿入部102がデータシンボル200の時間方向にヌルシンボル201を挿入した信号を受信装置に送信する。なお、送信装置1は、送信データの中にヌルシンボル201の挿入位置を示す制御情報を入れて受信装置への通知を行ってもよいし、あらかじめ送信装置1と受信装置との間でヌルシンボル201の挿入規則を決めておいてもよい。これにより、送信装置1は、ヌルシンボル201の挿入位置を示す制御情報を削減することもできる。
【0020】
送信装置1と通信を行う受信装置の構成および動作について説明する。
図3は、本実施の形態に係る受信装置3の構成例を示すブロック図である。受信装置3は、アンテナ300と、受信高周波部301と、A/D(Analog/Digital)変換部302と、受信波形整形部303と、干渉除去部304と、干渉電力推定部305と、復調部306と、復号部307と、を備える。
【0021】
アンテナ300は、無線周波数信号を受信する。アンテナ300が受信した無線周波信号には、所望信号、干渉信号、および雑音が含まれる。所望信号は、送信シンボル系列に含まれる前述のデータシンボル200である。受信高周波部301は、アンテナ300で受信された無線周波数信号を、アナログ信号であるIF信号またはベースバンド信号に周波数変換する。A/D変換部302は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。受信波形整形部303は、所望信号の周波数帯域外の雑音を除去するため、デジタル信号の帯域制限を行う。
【0022】
干渉除去部304は、受信波形整形部303で帯域制限が行われたデジタル信号である受信信号から干渉信号を再生し、受信信号から干渉信号を除去する。干渉除去部304は、受信信号から干渉信号を除去した干渉除去後信号であるデータシンボルを出力する。干渉除去部304の詳細な構成および動作については後述する。
【0023】
干渉電力推定部305は、干渉除去部304に入力される信号すなわち受信波形整形部303で帯域制限が行われたデジタル信号である受信信号と、干渉除去部304から出力される干渉除去後信号とを用いて、所望信号の電力である所望信号電力および雑音の電力である雑音電力を推定し、受信信号に含まれる干渉信号の電力である干渉電力を推定する。干渉電力推定部305の詳細な構成および動作については後述する。
【0024】
復調部306は、干渉除去後信号であるデータシンボルに復調処理を行い、誤り訂正復号用のデマッピング結果である復調結果を出力する。復号部307は、デマッピング結果である復調結果に誤り訂正復号化を行い、復号結果である復号ビットを出力する。なお、受信装置3において、干渉除去部304および干渉電力推定部305以外の構成要素における受信処理は一般的な無線受信装置で行われる受信処理であり、特に限定されるものではない。
【0025】
つづいて、干渉除去部304の構成および動作について詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係る干渉除去部304の構成例を示すブロック図である。干渉除去部304は、ヌルシンボル抽出部400と、信号補間部401と、減算器402と、データシンボル抽出部403と、重み乗算部404と、減算器405と、データシンボル抽出部406と、を備える。
【0026】
ヌルシンボル抽出部400は、送信装置1のヌルシンボル挿入部102で挿入されたヌルシンボルを抽出する。信号補間部401は、ヌルシンボル抽出部400で抽出されたヌルシンボルの信号の間の信号を補間する信号補間処理を行って、データシンボル区間の干渉信号を再生する。信号補間部401は、再生した干渉信号を干渉レプリカとして出力する。
【0027】
減算器402は、受信波形整形部303から取得した受信信号から、信号補間部401で再生されたデータシンボル区間の干渉信号を減算し、受信信号から干渉信号を除去する。データシンボル抽出部403は、減算器402で干渉信号が除去された受信信号からデータシンボルを抽出し、干渉除去後信号として干渉電力推定部305に出力する。データシンボル抽出部403が出力する干渉除去後信号を第1の干渉除去後信号と称することがある。
【0028】
重み乗算部404は、干渉電力推定部305で推定された干渉電力推定値および雑音電力推定値の比の情報から重み係数を算出する。重み乗算部404は、信号補間部401で再生された干渉レプリカと算出した重み係数とを乗算して出力する。重み乗算部404は、例えば、干渉電力推定値をP
Iとし、雑音電力推定値をσ
2とすると、重み係数αを次の式(1)のように計算することができる。
【0029】
α=P
I/(P
I+β・σ
2) …(1)
【0030】
ここで、雑音電力推定値σ
2は、所望信号の帯域幅に含まれる雑音電力を表している。βは、雑音電力推定値σ
2を干渉信号の帯域幅に対する雑音電力に変換するための係数であり、実数値で設定される。重み係数αを適正に設定することによって、受信装置3は、受信信号から干渉信号が除去された干渉除去後信号の搬送波レベル対干渉雑音比(CINR:Carrier power to Interference plus Noise power Ratio)を最大化することができる。受信装置3において干渉除去性能を向上させる重み係数αを正しく設定するためには、式(1)に示すように、受信信号に含まれる干渉信号の干渉電力、および受信信号に含まれる雑音の雑音電力をそれぞれ知る必要がある。本実施の形態における干渉電力および雑音電力の詳細な推定方法については後述する。
【0031】
減算器405は、受信波形整形部303から取得した受信信号から、重み乗算部404で干渉レプリカに重み係数αが乗算された信号を減算して干渉信号を除去する。データシンボル抽出部406は、減算器405で干渉信号が除去された受信信号からデータシンボルを抽出し、干渉除去後信号として復調部306に出力する。データシンボル抽出部406が出力する干渉除去後信号を第2の干渉除去後信号と称することがある。
【0032】
図5は、本実施の形態に係る干渉除去部304の信号補間部401による信号補間処理の例を示す図である。
図5において、横軸は時間を示し、縦軸は信号の振幅を示す。
図5は、受信波形整形部303から取得した受信シンボル系列である受信信号を示すものである。
図5において、D0〜D5はデータシンボル500を示す。データシンボル500は、データシンボル区間のシンボルである。ヌルシンボル501は、データシンボル区間の間に設けられたヌルシンボル区間のシンボルである。干渉信号502は、干渉信号と受信装置3内で発生した雑音とが合成された信号である。信号補間処理503は、信号補間部401における信号補間処理をイメージしたものである。干渉信号504は、信号補間部401から出力される干渉レプリカ、すなわち信号補間部401で再生された干渉信号をイメージしたものである。
図5に示すように、受信信号は、所望信号であるデータシンボル500と、送信装置1のヌルシンボル挿入部102で挿入されたヌルシンボル501と、に分けられる。また、受信信号には、所望信号の他に、干渉信号と、受信装置3内で発生した干渉信号502とが含まれる。ヌルシンボルは第1のシンボルとも呼ばれる。
【0033】
ヌルシンボル抽出部400は、受信波形整形部303から取得した受信信号からヌルシンボル501のみを抽出し、データシンボル500を破棄する。信号補間部401は、ヌルシンボル抽出部400で抽出されたヌルシンボルを用いて信号補間処理を行うことで、データシンボル区間の干渉信号を再生する。ここで、信号補間部401における信号補間処理の方法は特に限定されないが、例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いる方法がある。また、信号補間部401は、DFT(Discrete Fourier Transform)およびIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)、またはFFT(Fast Fourier Transform)およびIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)などを用いて周波数領域でフィルタリングする方法を用いてもよい。いずれの信号補間処理の方法においても、信号補間部401は、補間フィルタの周波数通過帯域を干渉が含まれる帯域にすることで、雑音の影響を低減して効果的に干渉信号を再生することができる。なお、干渉が含まれる帯域の推定方法は特に限定されない。信号補間部401は、例えば、周波数領域に変換後の信号における各周波数の電力の分布を観測し、平均電力に基づいたしきい値と比較し、電力の大きい周波数を干渉が含まれる帯域と判定してもよい。
【0034】
つぎに、干渉電力推定部305の構成および動作について詳細に説明する。
図6は、本実施の形態に係る干渉電力推定部305の構成例を示すブロック図である。干渉電力推定部305は、データシンボル抽出部600と、平均電力算出部601と、ヌルシンボル抽出部602と、平均電力算出部603と、減算器604と、平均電力算出部605と、減算器606と、雑音電力推定部607と、減算器608と、を備える。
【0035】
データシンボル抽出部600は、受信波形整形部303から取得した受信信号から、送信装置1のシンボルマッピング部101で生成された送信シンボル系列のデータシンボルを抽出する。平均電力算出部601は、データシンボル抽出部600で抽出されたデータシンボルの平均電力を算出する。平均電力算出部601が算出したデータシンボルの平均電力を第1の平均電力と称することがある。
【0036】
ヌルシンボル抽出部602は、受信波形整形部303から取得した受信信号から、送信装置1のヌルシンボル挿入部102で挿入されたヌルシンボルを抽出する。平均電力算出部603は、ヌルシンボル抽出部602で抽出されたヌルシンボルの平均電力を算出する。平均電力算出部603が算出したヌルシンボルの平均電力を第2の平均電力と称することがある。
【0037】
減算器604は、平均電力算出部601で算出されたデータシンボルの平均電力から、平均電力算出部603で算出されたヌルシンボルの平均電力を減算し、所望信号電力の推定値を算出する。減算器604は、算出した所望信号電力推定値を出力する。減算器604は、平均電力算出部601で算出されたデータシンボルの平均電力をP
DATAとし、平均電力算出部603で算出されたヌルシンボルの平均電力をP
NULLとすると、所望信号電力推定値P
Dを次の式(2)のように計算することができる。
【0038】
P
D=P
DATA−P
NULL …(2)
【0039】
ここで、データシンボルの平均電力P
DATAは、所望信号電力、干渉電力、および雑音電力の総電力である。一方、ヌルシンボルの平均電力P
NULLは、干渉電力、および雑音電力の総電力である。このように、ヌルシンボルの平均電力P
NULLには、所望信号電力が含まれない。そのため、減算器604は、データシンボルの平均電力P
DATAとヌルシンボルの平均電力P
NULLとの差分をとることによって、所望信号電力推定値P
Dを推定することができる。
【0040】
平均電力算出部605は、干渉除去部304のデータシンボル抽出部403から取得した干渉除去後信号の平均電力を算出する。平均電力算出部605が算出した干渉除去後信号の平均電力を第3の平均電力と称することがある。平均電力算出部605が算出した干渉除去後信号の平均電力をP
ICとする。干渉除去後信号は、受信信号から干渉信号が除去された後の信号であり、所望信号および雑音の他、干渉除去時に用いた干渉レプリカに含まれている雑音が含まれている。以降において、受信信号に含まれている元の受信信号の雑音の電力を受信信号雑音電力とし、受信信号雑音電力と干渉レプリカによる干渉除去時に混入した雑音の電力とを合わせた電力を残留雑音電力とする。
【0041】
減算器606は、平均電力算出部605で算出された干渉除去後信号の平均電力P
IC、すなわち所望信号電力および残留雑音電力の総電力から、減算器604で算出された所望信号電力推定値P
Dを減算し、残留雑音電力推定値σ
IC2を算出する。減算器606が算出した残留雑音電力推定値σ
IC2を第1の雑音電力と称することがある。減算器606は、残留雑音電力推定値σ
IC2を次の式(3)のように計算することができる。
【0043】
雑音電力推定部607は、残留雑音電力から干渉レプリカによる干渉除去時に加わった雑音を取り除き、雑音電力推定値σ
2を推定する。ここで、残留雑音電力推定値σ
IC2と雑音電力推定値σ
2との関係は、式(4)により表すことができる。
【0044】
σ
2=(1/γ)・σ
IC2 …(4)
【0045】
式(1)で示される重み係数αは、干渉レプリカを生成する信号補間部401が信号補間処理を行ったときの入力信号および出力信号の電力比、すなわち出力信号電力/入力信号電力に依存している。重み係数αは、例えば、信号補間部401の入力信号および出力信号の平均電力を変化させないように振幅を調整した場合、すなわち出力信号電力/入力信号電力=1の場合、ヌルシンボルの挿入シンボル間隔により決定される。すなわち、送信装置1がヌルシンボルを2シンボル周期で挿入した場合はγ=2となり、送信装置1がヌルシンボルを4シンボル周期で挿入した場合はγ=4となる。ゲイン値すなわち出力信号電力/入力信号電力が1以外の場合、送信装置1によるヌルシンボルの挿入シンボル間隔に対して、入力信号および出力信号の電力比を乗じたものをγと設定する。すなわち、信号補間部401の信号補間処理により生成される干渉レプリカに含まれる雑音は、信号補間処理によって雑音が強調され、入力信号に含まれる雑音電力に対して出力信号はα倍になって現れることを意味する。雑音電力推定部607は、この性質を利用して、雑音電力推定値σ
2を推定することができる。雑音電力推定部607が推定した雑音電力推定値σ
2を第2の雑音電力と称することがある。
【0046】
減算器608は、平均電力算出部603で算出されたヌルシンボルの平均電力P
NULLから、雑音電力推定部607で算出された雑音電力推定値σ
2を減算し、干渉電力推定値P
Iを算出する。減算器608は、干渉電力推定値P
Iを次の式(5)のように計算することができる。
【0048】
ヌルシンボルの平均電力P
NULLは、干渉信号および雑音の総電力である。そのため、減算器608は、ヌルシンボルの平均電力P
NULLと雑音電力推定値σ
2との差分をとることによって、干渉電力推定値P
Iを算出することができる。
【0049】
上述した受信装置3の動作を、フローチャートを用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る受信装置3の動作を示すフローチャートである。なお、受信装置3の動作に先立って、送信装置1は、データシンボルの時間方向にデータシンボルの振幅より値が小さい信号である第1の信号を挿入して送信する。受信装置3において、干渉除去部304は、データシンボルの時間方向にデータシンボルの振幅より値が小さい信号である第1の信号が挿入された受信信号から、第1の信号に対応する区間の信号であるシンボルを抽出する。干渉除去部304は、信号補間処理を行ってデータシンボルに対応する区間の干渉信号を再生する(ステップS1)。干渉除去部304は、受信信号から干渉信号を除去した信号からデータシンボルを抽出した第1の干渉除去後信号を出力する(ステップS2)。
【0050】
干渉電力推定部305は、受信信号から抽出したデータシンボルの第1の平均電力から、受信信号から抽出した第1の信号のシンボルの第2の平均電力を減算して所望信号電力を推定する(ステップS3)。干渉電力推定部305は、第1の干渉除去後信号のデータシンボルの第3の平均電力から、所望信号電力を減算して第1の干渉除去後信号に含まれる第1の雑音電力を推定し、第1の雑音電力から受信信号に含まれる第2の雑音電力を推定する。干渉電力推定部305は、第2の平均電力から第2の雑音電力を減算して干渉電力を推定する(ステップS4)。
【0051】
干渉除去部304は、干渉電力推定部305で推定された干渉電力および第2の雑音電力を用いて重み係数を算出する。干渉除去部304は、重み係数を干渉信号に乗算し、受信信号から重み係数を乗算した干渉信号を除去した信号からデータシンボルを抽出した第2の干渉除去後信号を出力する(ステップS5)。復調部306は、第2の干渉除去後信号を用いて復調を行う(ステップS6)。
【0052】
つづいて、受信装置3のハードウェア構成について説明する。前述のように、受信装置3において、干渉除去部304および干渉電力推定部305以外の構成要素は、一般的な受信処理を行う従来のハードウェア構成により実現される。受信装置3において、干渉除去部304および干渉電力推定部305は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
【0053】
図8は、本実施の形態に係る受信装置3が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで構成する場合の例を示す図である。処理回路がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、受信装置3の処理回路の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路は、受信装置3の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。また、これらのプログラムは、受信装置3の手順および方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0054】
ここで、プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などであってもよい。また、メモリ92には、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0055】
図9は、本実施の形態に係る受信装置3が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の例を示す図である。処理回路が専用のハードウェアで構成される場合、
図9に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。受信装置3の各機能を機能別に処理回路93で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路93で実現してもよい。
【0056】
なお、受信装置3の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態において、送信装置1は、送信シンボル系列に対してヌルシンボルを挿入する。受信装置3は、ヌルシンボル501に現れる干渉信号に基づいて信号補間処理を行うことでデータシンボル区間の干渉信号を再生する。受信装置3は、再生したデータシンボル区間の干渉信号に基づいて受信信号に含まれる干渉信号を除去する。受信装置3は、干渉を除去する前の受信信号から、データシンボル500とヌルシンボル501の電力差を利用して所望信号電力を推定する。そして、受信装置3は、信号補間処理による干渉除去前後の雑音電力の増加量が予測できる性質を利用して、干渉を除去した後の受信信号から雑音電力を推定する。これにより、受信装置3は、受信信号に含まれる所望信号、干渉信号、および雑音の中から干渉信号のみを分離して、干渉信号の干渉電力を精度良く推定することができる。
【0058】
また、受信装置3は、受信信号に含まれる干渉電力の大きさが正確に分かるため、干渉除去精度を向上させることができ、所望信号の受信品質、例えば、ビット誤り率の劣化を低減することができる。また、受信装置3は、受信信号に含まれる干渉電力を正確に推定し、干渉信号を除去することによって耐干渉性を向上させ、未知の干渉が存在する電波伝搬環境において安定した無線通信を実現することができる。また、受信装置3は、受信信号に含まれる干渉電力を正確に推定することで、干渉信号の有無の検出精度の向上が図れる。
【0059】
また、受信装置3は、無線回線品質の指標として利用できる搬送波レベル対雑音比(CNR:Carrier power to Noise Ratio)、搬送波レベル対干渉比(CIR:Carrier power to Interference power Ration)、CINRなどを正確に測定できるので、電波伝搬環境に応じた適応変調伝送、送信電力制御、無線リソース割当制御などに活用することで耐干渉性を向上し、安定した無線通信を実現することができる。具体的には、受信装置3において、干渉電力推定部305は、所望信号電力、干渉電力、および第2の雑音電力を用いてCINRを測定することができる。また、干渉電力推定部305は、所望信号電力、および干渉電力を用いてCIRを測定することができる。また、干渉電力推定部305は、所望信号電力、および第2の雑音電力を用いてCNRを測定することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、受信装置3は、干渉電力推定部305で推定した干渉電力推定値および雑音電力推定値を干渉除去部304にフィードバックし、干渉レプリカに乗算する重み係数αの計算に利用し、干渉除去性能を向上させる構成としているが、これに限定されない。受信装置3は、干渉電力の推定だけを目的とする場合、または、各々推定した受信信号に含まれる所望信号電力、干渉電力、および雑音電力を用いてCNR、CIR、CINRなどの推定だけを目的とする場合、干渉除去部304へのフィードバックを必ずしも行う必要はない。同様に、受信装置3は、干渉除去を目的としない場合、干渉除去部304において干渉信号が除去された受信信号すなわち干渉除去後信号を必ずしも後段の復調部306に出力する必要はない。
【0061】
また、本実施の形態では、ヌルシンボルを振幅が0となる信号として説明したが、一例であり、ヌルシンボルの振幅は0に限らず、シンボルマッピング部101で生成される送信シンボル系列のデータシンボルの振幅より小さい振幅の信号に置き換えてもよい。ヌルシンボルの振幅は、例えば、送信シンボル系列の振幅の1/R以下の振幅である。ただし、Rは1以上とする。振幅が0、または送信シンボル系列の振幅より小さい振幅の信号を第1の信号とする。また、ヌルシンボル挿入部102がヌルシンボルを挿入するヌルシンボル区間は、ヌルシンボルではなく第1の信号を挿入する区間であってもよい。
【0062】
なお、本実施の形態では、送信装置1が受信装置3に信号を送信して通信を行う無線通信システムについて説明したが、これに限定されない。送信装置1および受信装置3を備える通信装置が、送信装置1および受信装置3を備える他の通信装置との間で、双方向で信号を送受信する無線通信システムにも適用可能である。
図10は、本実施の形態に係る送信装置1および受信装置3を備える無線通信システム10の構成例を示す図である。無線通信システム10は、送信装置1と、受信装置3と、を備え、送信装置1が受信装置3に信号を送信するシステムである。
図11は、本実施の形態に係る通信装置4を備える無線通信システム11の構成例を示す図である。通信装置4は、送信装置1と、受信装置3と、を備える。無線通信システム11は、通信装置4同士が双方向で信号を送受信するシステムである。
【0063】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。