特許第6987301号(P6987301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987301
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】直流電源装置および空気調和機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20211213BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20211213BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H02M7/12 Q
   H02M7/48 M
   H02M7/12 H
   H02M3/155 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-513145(P2021-513145)
(86)(22)【出願日】2019年4月12日
(86)【国際出願番号】JP2019016020
(87)【国際公開番号】WO2020208822
(87)【国際公開日】20201015
【審査請求日】2021年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩基
(72)【発明者】
【氏名】志津 圭一朗
(72)【発明者】
【氏名】沓木 知宏
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/207824(WO,A1)
【文献】 特開2000−278955(JP,A)
【文献】 特開昭58−207870(JP,A)
【文献】 特開2009−50109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00−7/98
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路の一方の出力端子に一端が接続されるリアクトルと、
前記リアクトルの他端と前記整流回路の他方の出力端子との間に直列接続される第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を備え、負荷が接続される出力端子間に直列接続される第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを充電する充電部と、
前記交流電力の線間電圧でゼロクロスが発生するタイミングに同期して前記充電部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の双方をオフにするデッドタイムを前記ゼロクロスが発生するタイミングに基づいて設定し、前記ゼロクロスが発生した時の前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の状態が予め定められた状態と一致する場合、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の状態を反転させる、
直流電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ゼロクロスが発生した時の前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の状態が前記定められた状態と一致しない場合、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の双方をオフに制御してデッドタイムを新たに設定した後、前記第1のスイッチング素子または前記第2のスイッチング素子をオンさせる、
請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ゼロクロスが発生した時の前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の状態が前記定められた状態と一致しない場合、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の状態を変化させずに次のデッドタイムが経過するまで待った後、前記第1のスイッチング素子または前記第2のスイッチング素子をオンさせる、
請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子の状態を反転させる場合、まず、前記第1のスイッチング素子をオフ、かつ前記第2のスイッチング素子をオンの状態に制御し、第1の一定時間が経過後に第2のスイッチをオフ状態に制御し、第2の一定時間が経過後に前記第1のスイッチング素子をオン状態に制御して前記デッドタイムを設定する、
請求項1から3のいずれか一つに記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ゼロクロスが発生したとき、前記第1のスイッチング素子がオフ、かつ前記第2のスイッチング素子がオンであれば前記定められた状態であると判定する、
請求項4に記載の直流電源装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の直流電源装置と、
前記直流電源装置が出力する直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インバータから交流電力の供給を受けて駆動するモータを備え、冷凍サイクル内部の冷媒を圧縮する圧縮機と、
を備える空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置および空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機、冷蔵庫、冷凍庫、ヒートポンプ給湯器等の機器には、交流を直流に変換する直流電源装置が搭載されている。これらの機器では、直流電源装置に負荷としてインバータを接続し、圧縮機モータを駆動している。たとえば、特許文献1には、高調波を抑制し、また電力変換効率を高めて省エネルギ化をすることが可能な直流電源装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−68028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術によれば、交流電源が正から負に切り替わるゼロクロスのタイミングでスイッチング素子のオンオフ状態を切り替える際にスイッチング素子の上下短絡を防ぐために、デッドタイムを設けているとある。しかしながら、電源から供給される交流電圧にノイズが混入するなどの理由で、ゼロクロスのタイミングが周期に対してずれた場合、ゼロクロスのタイミングによっては、スイッチング素子の上下短絡を阻止できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スイッチング素子の上下短絡を防ぐことができ、素子の破壊および回路の熱損を防止することができる直流電源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる直流電源装置は、交流電力を直流電力に変換する整流回路と、整流回路の一方の出力端子に一端が接続されるリアクトルと、リアクトルの他端と整流回路の他方の出力端子との間に直列接続される第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を備え、負荷が接続される出力端子間に直列接続される第1のコンデンサおよび第2のコンデンサを充電する充電部とを備える。また、直流電源装置は、交流電力の線間電圧でゼロクロスが発生するタイミングに同期して充電部を制御する制御部を備え、制御部は、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の双方をオフにするデッドタイムをゼロクロスが発生するタイミングに基づいて設定し、ゼロクロスが発生した時の第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の状態が予め定められた状態と一致する場合、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子の状態を反転させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる直流電源装置は、デッドタイムとゼロクロスのタイミングにずれが生じた場合にスイッチング素子の上下短絡が発生するのを回避して素子の破壊および回路の熱損を防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかる直流電源装置の構成例を示す図
図2】実施の形態1にかかる直流電源装置が備える制御部の動作を説明するための図
図3】スイッチング素子を駆動する駆動信号とゼロクロス信号の関係の一例を示す図
図4】スイッチング素子を駆動する駆動信号とゼロクロス信号の関係の他の例を示す図
図5】実施の形態1にかかる直流電源装置の制御部の動作の一例を示すフローチャート
図6】実施の形態1にかかる直流電源装置が備える制御部の第1の制御動作例を示す図
図7】実施の形態1にかかる直流電源装置が備える制御部の第2の制御動作例を示す図
図8】実施の形態1にかかる直流電源装置が備える制御部の第3の制御動作例を示す図
図9】実施の形態2にかかる直流電源装置の制御部の動作の一例を示すフローチャート
図10】実施の形態2にかかる直流電源装置が備える制御部の第1の制御動作例を示す図
図11】実施の形態2にかかる直流電源装置が備える制御部の第2の制御動作例を示す図
図12】実施の形態2にかかる直流電源装置が備える制御部の第3の制御動作例を示す図
図13】実施の形態1,2にかかる直流電源装置の制御部を実現するハードウェアの一例を示す図
図14】実施の形態3にかかる空気調和機の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態にかかる直流電源装置および空気調和機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる直流電源装置の構成例を示す図である。本実施の形態にかかる直流電源装置13は、三相交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換し、この直流電力を負荷8に出力するコンバータである。負荷8としては、空気調和機に用いられる圧縮機のモータを駆動するインバータを例示することができる。
【0011】
直流電源装置13は、三相交流電源1からの交流電力を整流して直流電力を出力する整流回路2と、整流回路2の正極側の出力端子に接続されたリアクトル3と、負荷8への出力端子間に直列接続されたコンデンサ6aおよびコンデンサ6bを充電する充電部7と、充電部7を制御する制御部11と、を備える。なお、リアクトル3を整流回路2の負極側の出力端子に接続する構成としてもよい。
【0012】
整流回路2は、整流ダイオードがフルブリッジ接続された三相全波整流回路である。
【0013】
リアクトル3は、整流回路2の出力側に配置された直流リアクトルとして示しているが、整流回路2の入力側に配置された交流リアクトルであってもよい。
【0014】
充電部7は、第1のスイッチング素子であるスイッチング素子4aおよび第2のスイッチング素子であるスイッチング素子4bと、第1の逆流防止ダイオードである逆流防止ダイオード5aおよび第2の逆流防止ダイオードである逆流防止ダイオード5bと、を備える。
【0015】
スイッチング素子4aおよび4bは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)、パワートランジスタであり、スイッチング素子4aは駆動信号12a、スイッチング素子4bは駆動信号12bによってオンオフが制御される。
【0016】
駆動信号12aがHi(High)のとき、スイッチング素子4aがオンし、コンデンサ6bを充電する。駆動信号12bがHiのとき、スイッチング素子4bがオンすることにより、コンデンサ6aを充電する。なお、駆動信号がLo(Low)のときにスイッチング素子がオンとなる回路構成であってもよい。
【0017】
逆流防止ダイオード5aは、スイッチング素子4aのコレクタあるいはドレインから、コンデンサ6aと負荷8の接続点に向けて順方向に設置されている。逆流防止ダイオード5bは、コンデンサ6bと負荷8の接続点から、スイッチング素子4bのエミッタあるいはドレインに向けて順方向に設置されている。
【0018】
逆流防止ダイオード5aは、コンデンサ6aに充電された電荷が逆流することを防止する。逆流防止ダイオード5bは、コンデンサ6bに充電された電荷が逆流することを防止する。
【0019】
スイッチング素子4aとスイッチング素子4bの接続点と、コンデンサ6aとコンデンサ6bの接続点は接続されている。
【0020】
制御部11は、ゼロクロス検出回路9および駆動信号生成部10を備えている。ゼロクロス検出回路9は、三相交流電源1が出力する3相のうちの2相の状態を観測し、観測対象の2相間の電圧である線間電圧が正から負または負から正に切り替わるタイミングであるゼロクロス点を検出する。ゼロクロス検出回路9は、線間電圧が正の状態のときはHiとなり、線間電圧が負の状態のときはLoとなるゼロクロス信号を出力する。すなわち、ゼロクロス信号がHiとLoとの間で切り替わるタイミングがゼロクロス点となる。駆動信号生成部10は、ゼロクロス検出回路9によるゼロクロス点の検出結果に基づくタイミングで駆動信号12aおよび12bを生成する。制御部11は、駆動信号生成部10で生成した駆動信号12aでスイッチング素子4aのオンオフを制御し、駆動信号12bでスイッチング素子4bのオンオフを制御する。制御部11が行うスイッチング制御について、図2を用いて以下に説明する。
【0021】
図2は、実施の形態1にかかる直流電源装置13が備える制御部11の動作を説明するための図である。詳細には、図2は、本実施の形態において、スイッチング素子4aおよびスイッチング素子4bの状態と、電流の経路と充電されるコンデンサ6aおよび6bの関係を示す図である。
【0022】
図2の(a)は、スイッチング素子4aとスイッチング素子4bの双方がオフの状態であり、コンデンサ6aとコンデンサ6bに充電電流が流れる。
【0023】
図2の(b)は、スイッチング素子4aがオン、スイッチング素子4bがオフの状態であり、コンデンサ6bに充電電流が流れる。
【0024】
図2の(c)は、スイッチング素子4aがオフ、スイッチング素子4bがオンの状態であり、コンデンサ6aに充電電流が流れる。
【0025】
図2の(d)は、スイッチング素子4aとスイッチング素子4bの双方がオンの状態であり、スイッチング素子4aおよびスイッチング素子4bを介して整流回路2の出力端子間を短絡する電流が流れる。
【0026】
制御部11の制御としては、図2の(b)と(c)を交互に繰りかえすことにより、つまりスイッチング素子4aとスイッチング素子4bを交互にオンすることにより、コンデンサ6aとコンデンサ6bを交互に充電し、負荷8に供給する直流電圧の昇圧を行う。
【0027】
直流電圧の昇圧を行う際、スイッチング素子4aがオンするタイミングとスイッチング素子4bがオフするタイミング、スイッチング素子4aがオフするタイミングとスイッチング素子4bがオンするタイミングは理想的には同時である。しかし、制御タイミングが理想的なタイミングからずれてしまうとスイッチング素子4aと4bが同時にオンとなり上下短絡が発生する。そのため、制御部11は、スイッチング素子4aおよび4bをオンオフさせる際に、短絡防止時間であるデッドタイムを設け、スイッチング素子4aと4bが同時にオンとなるのを防止する。
【0028】
また、制御部11は、電力の安定化、高調波の抑制などを目的として、ゼロクロス検出回路9が検出するゼロクロス信号に同期してスイッチング素子4a,4bのスイッチングを制御する。ここでの同期とは、ゼロクロスが発生するタイミングとスイッチング素子4a,4bをスイッチングさせるタイミングの関係が一定であることを意味する。具体的には、ゼロクロスが発生してからスイッチングを行うまでの時間が一定であることを意味する。ゼロクロスが発生する周期は一定であるため、制御部11は、ゼロクロスが発生する予定のタイミングを中心とする一定範囲をデッドタイムに設定するものとする。ここで、制御部11がデッドタイムを設定する方法について説明する。一例として、スイッチング素子4aがオフ、かつスイッチング素子4bがオンの状態のときにデッドタイムを設定する場合について説明する。制御部11は、ゼロクロス検出回路9でゼロクロス点を検出したタイミングに基づいてデッドタイムを設定する。具体的には、制御部11は、スイッチング素子4aがオフ、かつスイッチング素子4bがオンの状態のときに、ゼロクロス検出回路9でゼロクロス点を検出すると、駆動信号12aをLo、かつ駆動信号12bをHiにするとともに、ゼロクロス点を検出してからの経過時間のカウントを開始する。制御部11は、その後、定められた一定時間T1が経過した時点で駆動信号12bをLoにしてスイッチング素子4aおよび4bの双方をオフの状態にする。制御部11は、さらに一定時間T2が経過した時点で駆動信号12aをHiにしてスイッチング素子4aをオンの状態にする。このような手順で駆動信号を制御することにより、制御部11はデッドタイムを設定してスイッチング素子4aおよび4bをスイッチングさせる。
【0029】
しかし、三相交流電源1が出力する電圧にノイズが混入するなどした場合、予定されるタイミングとは異なるタイミングでゼロクロスが発生し、これに同期してスイッチング素子4aおよび4bのオンオフを切り替えると、スイッチング素子4aおよび4bの双方がオンになってしまう場合がある。このような場合の例を図3および図4に示す。
【0030】
図3は、スイッチング素子4aおよび4bを駆動する駆動信号12aおよび12bとゼロクロス信号の関係の一例を示す図である。図4は、スイッチング素子4aおよび4bを駆動する駆動信号12aおよび12bとゼロクロス信号の関係の他の例を示す図である。なお、本実施の形態では、ゼロクロス信号の立ち上がりタイミング(LoからHiに切り替わるタイミング)に同期してスイッチング素子4a,4bのスイッチングを制御するものとする。
【0031】
三相交流電源1が出力する三相交流の周期をTs、すなわち、ゼロクロス信号の周期をTsとし、駆動信号12aと駆動信号12bが周期Tcで交互に反転を繰り返す。この場合、周期Tsの長さと周期Tcの長さとが一致していれば、図3に示すように、ゼロクロスに同期して制御部11がスイッチング素子4aおよび4bのオンオフを切り替えたとしても、すなわち、ゼロクロスの発生に伴い制御部11が上記の手順を実行してデッドタイムを設定する制御を行ったとしてもスイッチング素子4a,4bの上下短絡は発生しない。
【0032】
しかし、三相交流電源1の電圧にノイズが混入するなどの要因で、ゼロクロスのタイミングがデッドタイムの周期Tsに対してずれた場合は問題が生じる。例えば、ゼロクロスのタイミングにずれが生じ、図4に示す(a)の時点でゼロクロス信号が反転した場合、このタイミングに同期してスイッチング素子4a,4bの制御を行うと、すなわち、上述したデッドタイムを設定する手順に従い駆動信号12aをLo、かつ駆動信号12bをHiにすると、スイッチング素子4aおよび4bの双方が同時にオンとなって上下短絡が発生し、電流が流れる経路上にある素子の破壊および回路の熱損を引き起こす。
【0033】
このため、本実施の形態にかかる直流電源装置13では、駆動信号の判定値として、駆動信号12aをLo、かつ駆動信号12bをHiと定め、ゼロクロスのタイミングで駆動信号12aおよび12bと判定値を比較する。各駆動信号と判定値が一致していない場合には、駆動信号12a,12bの双方をLoに切り替えて、ゼロクロスのタイミングを起点として新たにデッドタイムを設定し直すといった処置を施すことにより、スイッチング素子4aとスイッチング素子4bとの上下短絡を防ぐ。
【0034】
なお、図3および図4に示す例ではゼロクロス信号の半周期ごとに1つの駆動信号を出力する制御パターンを示したが、出力パターンはこれに限定されない。ゼロクロス信号の1/n周期ごとに1つの駆動信号を出力する、ゼロクロス信号の1周期のn倍ごとに1つの駆動信号を出力する、などとしてもよい。なお、nは正の整数である。
【0035】
図5は、実施の形態1にかかる直流電源装置13の制御部11の動作の一例を示すフローチャートである。具体的には、図5は、制御部11がスイッチング素子4aとスイッチング素子4bの上下短絡を防止する駆動信号を生成する動作を示すフローチャートである。なお、図5に示した制御は一定の周期で定期的に繰り返すものとする。
【0036】
制御部11は、動作を開始すると、まず、三相交流電源1が出力する3相の中の2相の間の電源電圧Vsを読み取り(ステップS1)、電源電圧Vsに基づいてゼロクロスのタイミングかを判定する(ステップS2)。これらのステップS1およびS2の処理はゼロクロス検出回路9が行う。
【0037】
ゼロクロスのタイミングではない場合(ステップS2:No)、制御部11はステップS1に戻り、定められた時間が経過すると電源電圧Vsを再度読み取る。一方、ゼロクロスのタイミングである場合(ステップS2:Yes)、駆動信号生成部10が、駆動信号12aおよび駆動信号12bそれぞれの判定値を定める(ステップS3)。本実施の形態では、駆動信号生成部10は、判定値を、駆動信号12aがLo、かつ駆動信号12bがHiと定める。
【0038】
次に、駆動信号生成部10が、駆動信号12aおよび12bの状態を読み取り(ステップS4)、駆動信号が判定値と一致しているかを確認する(ステップS5)。駆動信号生成部10は、駆動信号が判定値と一致している場合、すなわち、駆動信号12aがLo、かつ駆動信号12bがHiの場合(ステップS5:Yes)、駆動信号の状態を維持する(ステップS6)。
【0039】
駆動信号生成部10は、駆動信号が判定値と一致していない場合、すなわち、駆動信号12aがLo、かつ駆動信号12bがHiの状態に該当しない場合(ステップS5:No)、充電部7の制御を停止する(ステップS7)。駆動信号生成部10は、次に、駆動信号12aおよび12bの双方をLoに切り替えて新たにデッドタイムを設け(ステップS8)、次に、駆動信号12a,12bを判定値と同じ状態、すなわち、駆動信号12aをLo、かつ駆動信号12bをHiにする(ステップS9)。駆動信号生成部10は、ステップS6を実行した後、および、ステップS9を実行した後、駆動信号12a,12bの制御を行う(ステップS10)。
【0040】
つづいて、制御部11が駆動信号を生成する動作の具体的について、図6図8を用いて説明する。
【0041】
図6は、実施の形態1にかかる直流電源装置13が備える制御部11の第1の制御動作例を示す図である。図6は、駆動信号12aがHiかつ駆動信号12bがLoのときにゼロクロスが発生した場合の駆動信号12a,12bの制御動作のタイムチャートである。図6に示した例の場合、駆動信号12a,12bが判定値(駆動信号12a=Lo,駆動信号12b=Hi)と一致しないタイミングでゼロクロスが発生している。この場合、駆動信号生成部10は、ゼロクロスのタイミングで駆動信号12aおよび駆動信号12bの状態を判定値と比較し、駆動信号12a,12bが判定値と一致していないため、駆動信号12a,12bの双方をLoに切り替えて新たにデッドタイムTdを設定してから、それまでLoであった駆動信号12bをHiに切り替える。
【0042】
図7は、実施の形態1にかかる直流電源装置13が備える制御部11の第2の制御動作例を示す図である。図7は、駆動信号12aがLoかつ駆動信号12bがLoのときにゼロクロスが発生した場合の駆動信号12a,12bの制御動作のタイムチャートである。図7に示した例の場合、駆動信号12a,12bが判定値(駆動信号12a=Lo,駆動信号12b=Hi)と一致しないタイミングでゼロクロスが発生している。この場合、駆動信号生成部10は、ゼロクロスのタイミングで駆動信号12aおよび駆動信号12bの状態を判定値と比較し、駆動信号12a,12bが判定値と一致していないため、駆動信号12a,12bの双方をLoに切り替えて新たにデッドタイムTdを設定してから、それまでLoであった駆動信号12bをHiに切り替える。
【0043】
図8は、実施の形態1にかかる直流電源装置13が備える制御部11の第3の制御動作例を示す図である。図8は、駆動信号12aがLoかつ駆動信号12bがHiのときにゼロクロスが発生した場合の駆動信号12a,12bの制御動作のタイムチャートである。図8に示した例の場合、駆動信号12a,12bが判定値(駆動信号12a=Lo,駆動信号12b=Hi)と一致するタイミングでゼロクロスが発生している。この場合、駆動信号生成部10は、ゼロクロスのタイミングで駆動信号12aおよび駆動信号12bの状態を判定値と比較し、駆動信号12a,12bが判定値と一致しているため、スイッチング素子4aおよび4bの双方をオフの状態とし、ゼロクロスが発生したタイミングからの経過時間をカウントする。そして、駆動信号生成部10は、定められた一定時間Tdが経過した時点で駆動信号12aをHiにしてスイッチング素子4aをオンの状態にする。
【0044】
以上のように、実施の形態1にかかる直流電源装置13は、三相交流電源1のゼロクロスを検出すると、充電部7を構成する直列接続されたスイッチング素子4aおよびスイッチング素子4bのそれぞれの駆動信号12aおよび12bの状態を確認し、デッドタイムでは無い場合、すなわち、駆動信号12aおよび12bの状態が判定値と一致しない場合、新たにデッドタイムを設定してから駆動信号12aをHiに切り替える。これにより、デッドタイムとゼロクロスのタイミングにずれが生じた場合にスイッチング素子の上下短絡が発生するのを回避して素子の破壊および回路の熱損を防止することができる直流電源装置を実現できる。
【0045】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる直流電源装置は、実施の形態1にかかる直流電源装置13と同様の構成であり、動作が一部異なる。本実施の形態では、実施の形態1と異なる動作、具体的には、図1に示す充電部7のスイッチング素子4aおよびスイッチング素子4bをオンオフ制御する動作について説明する。
【0046】
実施の形態1にかかる直流電源装置13は、ゼロクロスが発生した場合に駆動信号12aおよび12bが判定値と一致している場合はそのまま駆動信号の切り替えを行い、一致していない場合は新たにデッドタイムを設けてから駆動信号の切り替えを行うものであった。これに対して、本実施の形態にかかる直流電源装置13は、駆動信号12aおよび12bが判定値と一致していない場合、新たにデッドタイムを設けることは行わずに次のデッドタイムとなるのを待ち、次のデッドタイムにおいて駆動信号を切り替える。
【0047】
図9は、実施の形態2にかかる直流電源装置13の制御部11の動作の一例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートのS7およびS8をステップS11およびS12に置き換えたものとなる。本実施の形態では、実施の形態1の動作と異なるステップS11およびS12について説明を行う。
【0048】
実施の形態2にかかる直流電源装置13の制御部11は、ステップS5において駆動信号が判定値と一致していないと判定すると(ステップS5:No)、新たにデッドタイムを設けることなく制御を継続する(ステップS11)。ただし、制御部11は、ステップS11では駆動信号12aおよび12bの切り替えを行わない。その後、制御部11は、次のデッドタイムが経過したかの確認を繰り返し行い(ステップS12:No)、デッドタイムが経過した場合(ステップS12:Yes)、駆動信号を判定値と同じ状態にする(ステップS9)。制御部11は、ステップS12では、前回のデッドタイムが終了してからの経過時間がゼロクロス信号の周期Tsに相当する時間に達したかを確認し、経過時間が周期Tsに相当する時間に達した場合にステップS10に移行する。
【0049】
つづいて、実施の形態2にかかる制御部11が駆動信号を生成する動作の具体的について、図10図12を用いて説明する。
【0050】
図10は、実施の形態2にかかる直流電源装置13が備える制御部11の第1の制御動作例を示す図である。図10は、駆動信号12aがHiかつ駆動信号12bがLoのときにゼロクロスが発生した場合の駆動信号12a,12bの制御動作のタイムチャートである。図10に示した例の場合、駆動信号12a,12bが判定値(駆動信号12a=Lo,駆動信号12b=Hi)と一致しないタイミングでゼロクロスが発生している。この場合、駆動信号生成部10は、ゼロクロスのタイミングで駆動信号12aおよび駆動信号12bの状態を判定値と比較し、駆動信号12a,12bが判定値と一致していないため、駆動信号12aおよび12bの切り替えを行わずに制御を継続する。その後、デッドタイムTdになり、さらにこのデッドタイムTdが経過してから、駆動信号12bをHiに切り替える。
【0051】
図11は、実施の形態2にかかる直流電源装置13が備える制御部11の第2の制御動作例を示す図である。図11は、駆動信号12aがLoかつ駆動信号12bがLoのときにゼロクロスが発生した場合の駆動信号12a,12bの制御動作のタイムチャートである。図11に示した例の場合、駆動信号12a,12bが判定値(駆動信号12a=Lo,駆動信号12b=Hi)と一致しないタイミングでゼロクロスが発生している。この場合、駆動信号生成部10は、ゼロクロスのタイミングで駆動信号12aおよび駆動信号12bの状態を判定値と比較し、駆動信号12a,12bが判定値と一致していないため、駆動信号12aおよび12bの切り替えを行わずに制御を継続する。その後、デッドタイムTdが経過してから、駆動信号12bをHiに切り替える。
【0052】
図12は、実施の形態2にかかる直流電源装置13が備える制御部11の第3の制御動作例を示す図である。図12は、駆動信号12aがLoかつ駆動信号12bがHiのときにゼロクロスが発生した場合の駆動信号12a,12bの制御動作のタイムチャートである。図12に示した例の場合、駆動信号12a,12bが判定値(駆動信号12a=Lo,駆動信号12b=Hi)と一致するタイミングでゼロクロスが発生している。この場合、駆動信号生成部10は、ゼロクロスのタイミングで駆動信号12aおよび駆動信号12bの状態を判定値と比較し、駆動信号12a,12bが判定値と一致しているため、駆動信号12aおよび12bの状態を維持する。
【0053】
以上のように、実施の形態2にかかる直流電源装置13は、三相交流電源1のゼロクロスを検出すると、充電部7を構成する直列接続されたスイッチング素子4aおよびスイッチング素子4bのそれぞれの駆動信号12aおよび12bの状態を確認し、デッドタイムでは無い場合、すなわち、駆動信号12aおよび12bの状態が判定値と一致しない場合、駆動信号12aおよび12bの切り替えを行うことなく制御動作を継続して次のデッドタイムとなるまで待ち、次のデッドタイムが経過した後に、駆動信号12bをHiに切り替える。これにより、実施の形態1にかかる直流電源装置13と同様の効果を得ることができる。すなわち、デッドタイムとゼロクロスのタイミングにずれが生じた場合にスイッチング素子の上下短絡が発生するのを防止して素子の破壊および回路の熱損を防止することができる直流電源装置を実現できる。
【0054】
つづいて、実施の形態1,2にかかる直流電源装置13の制御部11を実現するハードウェアについて説明する。図13は、実施の形態1,2にかかる直流電源装置13の制御部11を実現するハードウェアの一例を示す図である。
【0055】
実施の形態1,2にかかる直流電源装置13の制御部11は、図13に示すプロセッサ201、メモリ202およびインタフェース203で実現することができる。
【0056】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)である。メモリ202は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリである。インタフェース203は、信号の入出力回路である。
【0057】
実施の形態1,2にかかる直流電源装置13の制御部11を図13に示すプロセッサ201およびメモリ202で実現する場合、制御部11として動作するためのプログラムをメモリ202に予め格納しておく。プロセッサ201は、メモリ202に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、制御部11として動作する。
【0058】
なお、図13に示すプロセッサ201およびメモリ202は、それぞれ汎用のプロセッサおよびメモリを想定しているが、専用の処理回路で制御部11を実現することも可能である。専用の処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた回路である。
【0059】
実施の形態3.
図14は、実施の形態3にかかる空気調和機の構成例を示す図である。図14に示す空気調和機100は、実施の形態1または2で説明した直流電源装置13を備え、直流電源装置13が生成する直流電力を利用して空気調和を行う。
【0060】
図14に示すように、実施の形態3にかかる空気調和機100は、三相交流電源1と、実施の形態1または2にかかる直流電源装置13と、インバータ20と、圧縮機30と、冷凍サイクル40とを備える。
【0061】
圧縮機30は、インバータ20からモータ31および圧縮要素32を備える。冷凍サイクル40は、四方弁41、室内熱交換器42、膨張弁43および室外熱交換器44を備え、これらの各部は冷媒配管を介して接続されている。
【0062】
インバータ20は、直流電源装置13が出力する直流電力を交流に変換して圧縮機30のモータ31に供給する。圧縮機30のモータ31は、インバータ20から交流電力の供給を受けて駆動する。圧縮要素32は、モータ31が回転することによって、冷媒配管内の冷媒を圧縮する動作を行い、冷媒を冷凍サイクル40の内部で循環させる。
【0063】
なお、上述した各実施の形態において、直流電源装置13は、三相交流電源1が出力する三相交流電力を直流電力に変換することとしたがこれに限定されない。単相交流電力を直流電力に変換する直流電源装置であってもよい。すなわち、図1に示した整流回路2を、単相交流電力を直流電力に変換する整流回路に置き換えた構成の直流電源装置としてもよい。
【0064】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 三相交流電源、2 整流回路、3 リアクトル、4a,4b スイッチング素子、5a,5b 逆流防止ダイオード、6a,6b コンデンサ、7 充電部、8 負荷、9 ゼロクロス検出回路、10 駆動信号生成部、11 制御部、12a,12b 駆動信号、13 直流電源装置、20 インバータ、30 圧縮機、31 モータ、32 圧縮要素、40 冷凍サイクル、41 四方弁、42 室内熱交換器、43 膨張弁、44 室外熱交換器、100 空気調和機。
図1
図2
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図5
図6
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図9
図10
図11
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図14