特許第6987305号(P6987305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987305抵抗器、その製造方法及び抵抗器を備えた装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987305
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】抵抗器、その製造方法及び抵抗器を備えた装置
(51)【国際特許分類】
   H01C 17/242 20060101AFI20211213BHJP
   H01C 1/144 20060101ALI20211213BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20211213BHJP
   H01C 7/10 20060101ALI20211213BHJP
   H01C 17/28 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H01C17/242
   H01C1/144
   H01C7/04
   H01C7/10
   H01C17/28
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-517710(P2021-517710)
(86)(22)【出願日】2020年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2020031622
(87)【国際公開番号】WO2021044876
(87)【国際公開日】20210311
【審査請求日】2021年3月29日
(31)【優先権主張番号】特願2019-161270(P2019-161270)
(32)【優先日】2019年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390024729
【氏名又は名称】SEMITEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101834
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 順一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信吾
(72)【発明者】
【氏名】十文字 裕司
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−064402(JP,A)
【文献】 特開昭63−128605(JP,A)
【文献】 特開平02−058803(JP,A)
【文献】 特開昭60−177601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/242
H01C 1/144
H01C 7/04
H01C 7/10
H01C 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体と、
前記抵抗体の一面と、この一面に対向する他面に形成された少なくとも一対の電極層と、
を具備し、
前記電極層の少なくとも一方において、当該電極層の形成領域のうち、周縁部を除く領域にトリミング用の除去部が形成されていて、前記一対の電極層にはリード線が前記トリミング用の除去部を跨ぐように半田付けによって接続されていることを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
抵抗体は、感温抵抗体であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記トリミング用の除去部は、深さ寸法が前記電極層から前記抵抗体まで除去して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抵抗器。
【請求項4】
前記トリミング用の除去部は、直線状又は曲線状の形態であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項5】
前記トリミング用の除去部は、ドット状の形態であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項6】
前記抵抗体及びリード線の接続部は、絶縁樹脂の封止材によって被覆されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載された抵抗器が備えられていることを特徴とする抵抗器を備えた装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の抵抗器の製造方法であって、
前記電極層の形成領域のうち、周縁部を残して周縁部を除く領域にトリミング用の除去部を形成して抵抗値を調整する工程を含んでいることを特徴とする抵抗器の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の抵抗器の製造方法において、
XY軸サーボモータが搭載されているレーザー加工機が用いられることを特徴とする抵抗器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感温抵抗器等の抵抗器、抵抗器の製造方法及び抵抗器を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、感温抵抗器としてのサーミスタの示す抵抗値は、サーミスタの構成材料や材料の混合比、製造条件及び大きさ等に依存している。そのため、サーミスタが示す抵抗値は、ばらつきが生じやすい。
【0003】
そこで、サーミスタが示す抵抗値のばらつきを補正して、ばらつきを少なくするため、レーザー照射やサンドブラスト法によって、サーミスタの電極面やサーミスタ本体の一部を削ってトリミングする方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−54321号公報
【特許文献2】特開昭57−206003号公報
【特許文献3】特開平2−58803号公報
【特許文献4】特開平6−77007号公報
【特許文献5】特開2004−22672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたサーミスタは、図14及び図15に示すように電極の周縁部をトリミングするものである。図14は、サーミスタ本体の平面を示し、図15は、図14中、X−X線に沿う断面を示している。サーミスタ本体10はサーミスタ材料で形成されていて、両面に電極10a、10bが形成されている。また、電極10aの周縁部はトリミングにより除去10cされている。
【0006】
このトリミングによりサーミスタが示す抵抗値を大きくして、ばらつきを補正しようとするものであるが、トリミングに際し電極10aの金属成分が飛散し、サーミスタ本体10が露出する側面10dに付着して電極10a、10b間にショートが発生したり、マイグレーションが発生したりして絶縁性が低下する虞が生じる。
また、特許文献2に示されたサーミスタは、サーミスタ本体をトリミングにより除去するものであり、サーミスタ本体のダメージが大きくなる課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、絶縁性を確保するとともにダメージを抑制して信頼性の高い抵抗器、その製造方法及び抵抗器を備えた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による抵抗器は、抵抗体と、前記抵抗体の一面と、この一面に対向する他面に形成された少なくとも一対の電極層と、を具備し、前記電極層の少なくとも一方において、当該電極層の形成領域のうち、周縁部を除く領域にトリミング用の除去部が形成されていて、前記一対の電極層にはリード線が前記トリミング用の除去部を跨ぐように半田付けによって接続されていることを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、絶縁性を確保して信頼性の高い抵抗器を提供することができる。なお、抵抗器は、特性にかかわらず抵抗を有していればよく、単に電気的な抵抗を有するもの、感温抵抗器としての負の温度係数又は正の温度係数を有するサーミスタ、バリスタ等が含まれる。
本発明の実施形態による抵抗器を備えた装置は、前記抵抗器が備えられていることを特徴とする。
【0010】
抵抗器は、エアコン、冷蔵庫、給湯器等の家電機器、自動車等の車載機器の高精度の制御が必要な各種装置に好適に備えられ適用することができる。格別適用される装置が限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施形態による抵抗器の製造方法は、前記電極層の形成領域のうち、周縁部を残して周縁部を除く領域にトリミング用の除去部を形成して抵抗値を調整する工程を含んでいることを特徴とする。
【0012】
トリミング用の除去部の形成は、レーザー加工機によるレーザー光を用いるのが好適であるが、例えば、サンドブラスト法やブレードを用いて行ってもよく、除去部の形成手段が格別限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、絶縁性を確保するとともにダメージを抑制して信頼性の高い抵抗器、その製造方法及び抵抗器を備えた装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る抵抗器を示す斜視図である。
図2】同抵抗器を示す平面図である。
図3図2中、X−X線に沿う断面図である。
図4】同抵抗器にリード線を接続する状態を示す斜視図である。
図5】同抵抗器にリード線を接続する状態を示す正面図である。
図6】同抵抗器にリード線を接続する状態を示す側面図である。
図7】同抵抗器を封止した状態を示す斜視図である。
図8】同抵抗器にリード線を接続した後の状態を示す断面図である。
図9】同抵抗器にリード線を接続した後の半田付けよるフィレットの状態を示す写真であり、図9(a)は本実施形態を示し、図9(b)は比較例を示している。
図10】トリミング用の除去部の面積と抵抗値の変化との関係を示すグラフである。
図11】トリミング用の除去部の変形例を示す平面図である。
図12】同抵抗器とは異なるタイプの抵抗器を示す斜視図である(実施例1)。
図13】同抵抗器とは異なるタイプの抵抗器を示す平面図及び側面図である(実施例2)。
図14】従来例の抵抗器を示す平面図である。
図15図14中、X−X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る抵抗器について模式的に示した図1乃至図3を参照して説明する。図1は、抵抗器を示す斜視図であり、図2は、抵抗器を示す平面図であり、図3は、図2中、X−X線に沿う断面図である。なお、各図では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
図1に示すように抵抗器1は、感温性能を有するサーミスタであり、感温抵抗体としての感温焼結体2と、この感温焼結体2の両面に形成された一対の電極層3a、3bとを備えている。また、電極層3a、3bの少なくとも一方にはトリミング用の除去部11が形成されている。
【0017】
感温焼結体2は、略直方体形状に形成されていて、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、イットリウム(Y)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)等の遷移金属元素の中から選ばれる2種あるいはそれ以上の元素から構成され、結晶構造を有する複合金属酸化物を主成分として含む酸化物のサーミスタ材料で構成される。また、特性向上等のために副成分が含有されていてもよい。主成分、副成分の組成及び含有量は、所望の特性に応じて適宜決定することができる。
【0018】
また、感温焼結体2は、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)等の珪素(Si)系セラミクスから構成されていてもよい。さらに、感温焼結体2の形状は、略直方体形状に限らず、円盤状や多角形の形状等、適宜選択することができる。
【0019】
一対の電極層3a、3bは、感温焼結体2の一面と、この一面に対向する他面の略全面に積層されて形成されている。電極層3a、3bは、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、酸化イリジウム(IrO)、酸化ロジウム(Rh)、酸化ルテニウム(RuO)等の貴金属又は貴金属酸化物を含有している。電極層3a、3bの厚さ寸法は1μm程度である。
【0020】
電極層3a、3bの一面側(電極層3a)には、トリミング用の除去部11が形成されている。トリミング用の除去部11は、レーザー加工機を用いてレーザー光を照射することにより形成されている。具体的には、電極層3a、3bの形成領域は、感温焼結体2における両面の略全面であり、トリミング用の除去部11は、一面側(電極層3a)であって、前記形成領域のうち、周縁部を残して周縁部を除く領域に形成されている。
【0021】
本実施形態ではトリミング用の除去部11は、電極層3aの形成領域の略中央部に図示上、縦方向に直線状に形成されている。したがって、トリミング用の除去部11は、少なくとも電極層3aの形成領域における最外周縁の端部に至らず、端部を除去することなく形成される。
【0022】
さらに詳しくは、トリミング用の除去部11における深さ寸法は、電極層3aを超えて抵抗体である感温焼結体2まで至り、感温焼結体2の上面の一部が除去された状態となっている。因みに、抵抗器1の厚さ寸法は240μm〜360μm程度であり、300μmに設計されている。また、除去部11の幅寸法は20μm〜80μm程度、深さ寸法は5μm〜180μm程度である。なお、深さ寸法は、厚さ寸法の50%以内に設定することが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、抵抗器1の抵抗値は、主として電極層3a、3bの面積に反比例するので、適宜トリミング用の除去部11の長さ寸法や幅寸法等を調整し、面積を調整して、トリミング用の除去部11を形成することができる。これにより抵抗器1の抵抗値を調整して、各抵抗器1のばらつきを補正することが可能となる。
【0024】
また、トリミング用の除去部11は、電極層3a、3bの形成領域のうち、周縁部を残して周縁部を除く領域に形成されているので、既述の従来のように、トリミング用の除去部11を形成するに際し、電極層3a、3bの金属成分が飛散し、感温焼結体2が露出する側面に付着するのを回避できる。したがって、絶縁性を確保して信頼性を高めることが可能となる。
【0025】
なお、トリミング用の除去部は、電極層から感温焼結体まで除去して形成するのが好ましいが、感温焼結体までには至らないで電極層のみを除去するようにしてもよい。また、トリミング用の除去部は、電極層の両面に形成するようにしてもよく、除去部の形態(形状)は直線状、曲線状、ドット状や円形状等に形成することができ、格別形態が限定されるものではない。また、除去部の直線状の本数を複数にしたり、ドットの数を選定したり、円形状の大きさを変更したりして、除去部の面積を調整することができる。
【0026】
次に、図4乃至図9を参照して上記抵抗器1にリード線を接続する状態について説明する。図4乃至図6は、抵抗器にリード線を接続する前の状態を示し、図4は斜視図、図5は正面図、図6は側面図である。また、図7は、抵抗器にリード線を接続した後、抵抗器を封止した状態を示し、図8は、抵抗器にリード線を接続した状態を示す断面図である。
【0027】
図4乃至図6に示すように、リード線4は一対であり、その先端部が電極層3a、3bに接触するように折曲されて接合部41となっている。リード線4は、例えば、断面四角形状であり、その材料には錫めっきの42アロイが好適に用いられる。リード線4の材料としては、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミ(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)又はこれらの少なくとも1種を含む合金を用いることができる。このようなリード線4の接合部41は、電極層3a、3bに半田付けによって接合され電気的に接続される。
【0028】
図7に示すように、リード線4が接続された抵抗器1は封止材5によって封止されるようになっている。封止材5は、感温焼結体2及びリード線4の接続部を被覆して保護するものであり、耐熱温度の高いエポキシ樹脂等の絶縁樹脂が用いられる。これにより感温焼結体2及びリード線4の接続部は、高温の環境下で使用される場合にも効果的に保護される。
【0029】
図8に示すように、抵抗器1の電極層3a、3bにリード線4が半田付けによる半田付け部6によって接合され電気的に接続される。なお、図8においては、封止材5の図示は省略している。
リード線4は、トリミング用の除去部11を跨ぐようにして配置され半田付けされる。このため、リード線4の接続を確実にすることができる。
【0030】
また、トリミング用の除去部11の形成に際し、電極層3aの金属成分などの導電性物質Mが飛散し、除去部11の底部に付着する場合がある。この場合、仮に、除去部11が電極層3aのみであると、電極層3aの厚さ寸法は1μm程度と薄いため、半田付け部6が熱膨張で形状が変化すると、半田材料が除去部11に侵入して抵抗値が変化してしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では、トリミング用の除去部11は、電極層3aから感温焼結体2まで除去して形成されているので、例え、半田付け部6が熱膨張で形状が変化しても、半田材料が除去部11の底部に付着した金属酸化物成分及び金属成分などの導電性物質Mに触れるのを抑制することができる。したがって、抵抗値が変化してしまうという不具合を防止することができる。
【0031】
さらに、図9を併せて参照して半田付けによるフィレットについて説明する。図9は、図6の矢印A方向から見て示す写真である。図9(a)に示すように本実施形態では、半田付けよるフィレット、つまり、半田付け部6の裾広がりの形状が左右略均等で良好な形状をなしている。これに対し、図9(b)に示す比較例では、図14及び図15に示すように電極の周縁部はトリミングにより除去されているため、フィレットの片側は半田が付着しない凹んだ形状Rsに形成される。したがって、比較例では導通不良や抵抗器10の脱落等の不具合が生じる虞がある。
【0032】
本実施形態では、トリミング用の除去部11が形成されていないものと同等な良好な形状のフィレットを形成することができ、導通不良や抵抗器1の脱落等の不具合を回避することができる。
【0033】
次に、図10を参照して、トリミング用の除去部11の面積と抵抗値の変化(調整)との関係について説明する。具体的には、トリミング用の除去部11の面積は、直線状の除去部11の本数で表わしており、抵抗値の変化(調整)は、抵抗値シフトΔRとして抵抗値の増加の比率を表している。したがって、横軸はトリミング本数[本]を示し、縦軸は抵抗値シフトΔR[%]を示している。
【0034】
抵抗器の試料として、No.1〜No.5の5つの試料を用意し、抵抗値の増加の比率を測定した。No.1〜No.5の試料は、平面図を示しており、直線状の除去部11の本数が各1本〜5本に形成されたものである。
【0035】
図に示すように、除去部11の本数に比例して抵抗値が増加することが分る。つまり、除去部11の面積が増加することにより、抵抗値が増加することになる。したがって、除去部11の面積を調整することにより、抵抗値を調整して、抵抗器1の抵抗値のばらつきを補正することができる。
【0036】
なお、図11は、トリミング用の除去部11の変形例を示している。図11は抵抗器を示す平面図であり、トリミング用の除去部11をドット状に形成したパターンを示している。ドット状の除去部11が複数列、具体的には3列に亘って形成されている。このようなパターンにおいても上記の実施形態と同様な効果を奏することができる。
次に、本実施形態の抵抗器の製造方法、具体的にはトリミングによる抵抗値の調整方法について説明する。
一対の電極層3a、3bが形成された抵抗体としての感温焼結体2において、トリミング用の除去部11を形成して抵抗値を調整する。
【0037】
このトリミング用の除去部11を形成するに際しては、レーザー加工機を用いてレーザー光を照射して形成する。したがって、電極層3a、3bの形成領域のうち、周縁部を残して周縁部を除く領域に、レーザー光を照射してトリミング用の除去部11を形成して抵抗値を調整する工程を含んでいる。
【0038】
なお、レーザー加工機には、XY軸サーボモータが搭載されていて、このXY軸サーボモータは制御装置により制御されて、XY軸サーボモータの駆動によりレーザー照射ヘッドがXY軸方向に移動するようになっている。したがって、トリミング用の除去部11の形態(形状)の選択の自由度を高めることが可能となる。
【0039】
また、トリミング用の除去部11の形成は、レーザー光を用いるのが好適であるが、例えば、サンドブラスト法やブレードを用いて行ってもよく、形成手段が格別限定されるものではない。
【0040】
続いて、図12及び図13を参照して、上記実施形態とは異なるタイプの抵抗器について説明する。図12は抵抗器の斜視図を示しており、図13は抵抗器の平面図及び側面図を示している。なお、上記実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(実施例1)
【0041】
図12において、感温焼結体2の両面を覆うように図示上、一面から長手方向の4面に延出して電極層3a、3bが形成されている。そして、一面の電極層3aには、複数の円形状のトリミング用の除去部11が形成されている。つまり、電極層3aの一面及び一面から長手方向に延出する4面を含む形成領域のうち、周縁部を除く領域にトリミング用の除去部が形成されている。なお、感熱焼結体2の長手方向の4面はガラス被膜等で絶縁被覆されていてもよい。この場合、感温焼結体2の露出部はガラス被膜等で絶縁被覆される状態となる。
(実施例2)
【0042】
図13においては、リード線4が接続された抵抗器1が封止材として絶縁樹脂である樹脂フィルム5aによって封止されたものを示している。樹脂フィルム5aは抵抗器1及びリード線4の一部を含んで被覆して保護するものである。樹脂フィルム5aは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが好適に用いられる。
以上のような各実施例によれば、上記の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0043】
なお、抵抗器は、特性にかかわらず抵抗を有していればよく、単に電気的な抵抗を有するもの、感温抵抗器としての負の温度係数又は正の温度係数を有するサーミスタ、バリスタ等が含まれる。
【0044】
上記抵抗器は、エアコン、冷蔵庫、給湯器等の家電機器、自動車等の車載機器の高精度の制御が必要な各種装置に好適に備えられ適用することができる。格別適用される装置が限定されるものではない。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・・・・・抵抗器
2・・・・・・・抵抗体(感温焼結体)
3a、3b・・・電極層
4・・・・・・・リード線
5・・・・・・・封止材
6・・・・・・・半田付け部
11・・・・・・トリミング用の除去部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15