(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定子の内周側に配置された回転子を有する回転電機であって、前記回転子はシャフトに固定された回転子コアと、前記回転子コアに径方向外側に向かって互いに遠ざかるようにV字型に配置された一対の磁石スロットと、各前記磁石スロットに挿入された永久磁石と、各前記磁石スロットの径方向外側に設けられた孔部により構成され、前記永久磁石と前記孔部の間の距離は、径方向外側に行くに従って大きくなるよう構成するとともに、前記回転子コアの外周から前記孔部との間の距離は各前記磁石スロットと前記回転子コアの外周との間の距離以上になるよう構成され、
各前記磁石スロットを分断している前記回転子における中央ブリッジ部の最小部分の幅をDbi、前記永久磁石の残留磁束密度をBr、前記回転子コアを構成する金属の磁束飽和密度をBSとし、前記永久磁石の前記中央ブリッジ部に最も近い角部から前記永久磁石の径方向外側に向かう辺に沿って前記磁石スロットと前記孔部との間の距離が最小値をとる点をX点とし、前記永久磁石の径方向外側に向かう辺に沿って前記X点から距離mの点での前記孔部と前記永久磁石との間の距離をdとした場合、
d≧Br×m/BSかつd≧Dbi/2なる関係式を満たす回転電機。
V字型に配置された一対の前記磁石スロットの内周側に径方向外側に向かって互いに遠ざかるようにV字型に配置された一対の第1内周側磁石スロットを設けるとともに、前記第1内周側磁石スロットに第1内周側永久磁石を挿入した請求項1又は請求項3に記載の回転電機。
V字型に配置された一対の前記磁石スロットの内周側にU字型に配置された3個以上の第2内周側磁石スロットを設けるとともに、前記第2内周側磁石スロットに第2内周側永久磁石を挿入した請求項1又は請求項3に記載の回転電機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態は、埋込磁石型永久磁石同期回転電機の回転子構造に関するものである。
以下内周側及び外周側とは、回転子の内周側及び外周側をいうものとする。
図1は回転電機であるモータの回転軸に沿った断面側面図である。
図2は実施の形態1における回転子を示す一部断面平面図であり、回転軸に対して垂直な方向における断面図である。尚回転子は、
図2に示された一部回転子と同様の構造が円周方向に多数配列された状態で構成されている。
図1に示すように、モータ1はフレーム10内に収納された固定子20及び回転子30により構成されている。そして回転子30においては、シャフト5の軸方向両端を負荷側軸受け6および反負荷側軸受け7より回転自在に保持されている。固定子20は、環状のヨーク部から回転子30に向かって径方向に凸設されたティース部を有する固定子コア21とティース部に巻回されたコイル22により構成される。
【0011】
図2に示すように、回転子30はシャフト5に圧入などにより固定された回転子コア31と、回転子コア31にV字型であり帯状に配置された一対の磁石スロット35を有している。即ち一対の磁石スロット35は径方向外側に向かって互いに遠ざかるように配置されるとともに、径方向内側においては間隔(後述するDbi)をおいて配置されている。
更に回転子30は磁石スロット35に挿入された永久磁石32と、一対の磁石スロット35の径方向外側に設けられた孔部33とで構成される。孔部33を設けることにより回転子30全体の質量が減少して後述する各ブリッジ部における遠心力による応力を緩和することができ、回転電機の高速回転化を促すことができる。
回転子コア31は、薄板鋼板を軸方向に積層して構成されている。又磁石スロット35の空隙部35Aは回転子コア31の外周表面より流出入する高調波磁束の影響を受けにくいようにするために設けられたものである。更に磁石スロット35におけるフラックスバリア部35Bは漏れ磁束の発生を防止するために設けられている。V字型であり、帯状に配置された一対の磁石スロット35は、回転子コア31において2つに分けられており、一対の磁石スロット35を分断している回転子コア31の部分Aを中央ブリッジ部と呼ぶ。これに対して磁石スロット35と回転子30の最外周部との間の部分Bを外周ブリッジ部と呼ぶ。そして磁石スロット35を分断している回転子コア31における中央ブリッジ部Aの最小部分の幅はDbiである。
【0012】
永久磁石32は2つに分けられた一対の磁石スロット35にそれぞれ挿入されている。磁石スロット35と孔部33との間の距離を考えた場合、永久磁石32の中央ブリッジ部Aに最も近い角部35Dから永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿って、X点において最小値xをとる。そしてx=Dbi/2となる。即ち中央ブリッジ部Aの最小部分の幅Dbiに作用する遠心力による応力を磁石スロット35と孔部33との間で支えなければならず、X点は左右2箇所に存在するので、最低限度xはDbi/2必要となる。
更に永久磁石32の残留磁束密度(永久磁石による磁気の磁束密度)をBr、回転子コア31(鉄)の磁束飽和密度を2T(TESLA)、回転子30の軸方向長さをLとすると、中央ブリッジ部Aにおいて通過できる最大の磁束は以下の式(1)より求められる。
2(T)×Dbi×L・・・・・(1)
一方X点において、永久磁石32から中央ブリッジ部Aを通って失われる磁束(漏れ磁束)は以下の式(2)より求められる。
x×Br×L×2(X点は2カ所存在する)・・・・(2)
式(1)=式(2)の関係が成立するのでx=Dbi/Brの関係が成立する。
【0013】
永久磁石32と孔部33の距離は、X点での距離xを最小として、径方向外周側に行くに従って徐々に広がっていき、永久磁石32の径方向外側に向かう辺にそってX点から距離mの点での孔部33と永久磁石32との距離dはd=Br×m/2である。
即ちX点から距離mの点までの永久磁石32における範囲から回転子コア31の外周側に出る磁束量は以下の式(3)より求められる。
Br×m×L・・・・(3)
一方鉄の磁束飽和密度を2Tとすると、X点から距離mの点において、通過できる磁束の最大量は以下の式(4)より求められる。
d×L×2(T)・・・・(4)
従って式(4)≧式(3)の関係が成立する必要があり、
d≧Br×m/2となる。
なお回転子コア31を構成する金属の磁束飽和密度をBSとするとd≧Br×m/BSなる関係を満たす必要がある。
【0014】
また、回転子コア31の外周から孔部33との距離は、2つに分断された磁石スロット35と回転子コア31の外周との距離(外周ブリッジ部Bにおける距離)と等しい。即ち外周ブリッジ部Bにおいては回転子コア31が破壊しないように磁石スロット35と回転子コア31の外周との距離が確保されているので、回転子コア31の外周から孔部33との距離を磁石スロット35と回転子コア31の外周との距離と等しく設計することで充分となる。
【0015】
以上のように、永久磁石32の中央ブリッジ部Aに最も近い角部35Dから永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿って、X点において、永久磁石32と孔部33の距離は最小となり、X点から径方向外周側に行くに従って徐々に広がっていき、永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿ってX点から距離mの点では、孔部33と永久磁石32との距離dはd=Br×m/2である。従って永久磁石32の出す磁束を阻害せずに孔部33を設けることができる。このように孔部33を設けることにより、回転子コア31における永久磁石32の外周側の重量を軽減することができるので、遠心力を低減することができる。更に強度を充分に保てるので、中央ブリッジ部Aおよび外周ブリッジ部Bの幅を低減することができ、従って漏れ磁束を低減することができる。
【0016】
永久磁石32の中央ブリッジ部Aに最も近い角部35Dから永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿うX点において、永久磁石32と孔部33の距離は最小となり、その距離はDbi/2である。従って永久磁石32と孔部33との間の回転子コア31に発生する遠心力による応力は、中央ブリッジ部Aにおいて発生する遠心力による応力と同等であり、応力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。
又回転子コア31の外周から孔部33との間の距離は、2つに分断された磁石スロット35と回転子コア31の外周との間の距離と等しい。従って回転子コア31における孔部33の外周側に発生する遠心力による応力は、回転子コア31における外周ブリッジ部Bに発生する遠心力による応力と同等であり、外周ブリッジ部Bにおいては回転子コア31が破壊しないように磁石スロット35と回転子コア31の最外周との距離が確保されているので、遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。
尚回転子コア31の外周から孔部33との間の距離は、より強度を増すために2つに分断された磁石スロット35と回転子コア31の外周との間の距離以上になるよう構成することもできる。
【0017】
なお、本実施の形態において、永久磁石32の残留磁束密度をBrとすると、磁石スロット35と孔部33の距離は、永久磁石32の中央ブリッジ部Aに最も近い角部35Dから永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿うX点で最小であり、その距離はDbi/2であるとした。そして永久磁石32と孔部33の距離は、X点での距離を最小として、径方向外周側に行くに従って徐々に広がっていき、永久磁石32の径方向外側に向かう辺にそってX点から距離mの点において、孔部33と永久磁石32との距離dはd=Br×m/2(d=Br×m/BS)であるとした。但しX点における永久磁石32と孔部33の間の距離は、Dbi/2以上であれば同様の効果を奏する。よってd≧Dbi/2となる。更に永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点において孔部33と永久磁石32との距離dについても、距離dはBr×m/BS以上であれば、同様の効果を奏する。
【0018】
実施の形態2.
図3は実施の形態2における回転子を示す一部断面平面図である。本実施の形態においては、回転電機をリラクタンスモータとして使用した場合、回転子コア31に入るリラクタンストルクを発生させるための磁束が、孔部33により阻害されないようにして、高いトルクを得ることができるようにしたものである。
図4は一般的なリラクタンスモータの原理を説明するための図であり、説明を簡単にするために固定子及び回転子を直線状に描いているが、実際は円形状に形成されている。
図4において、固定子100からの回転磁界による磁束が回転子101に流れ、これにより回転子101に形成された凸部102に磁力が発生し、回転子101が回転する。その際凸部102と凸部102の間の上部に板状物体103が存在してもリラクタンスモータとして動作することが判っている。そして
図3において、60で示された部分が凸部102に該当し、孔部33が凹部104に該当する。
【0019】
そして本実施の形態においては、回転子コア31の最外周から孔部33の最短距離Eと、永久磁石32の中央ブリッジ部Aに近い角部35D同士を結んだ線と孔部33との最短距離Fとの和(E+F)は、永久磁石32の最外周に位置する角部35H同士の間の距離Gの2分の1である。即ち
図3において、2×(E+F)=Gなる関係式が成立している。
このように構成することにより、V字型であり帯状に配置された一対の永久磁石32の外周側にある回転子コア31に入るリラクタンストルクを発生させるための磁束が、孔部33により阻害されないので、大きなリラクタンストルクを得ることができる。即ち
図5に示すように、(E+F)=G/2となるよう設計されているので、G/2の範囲に入る固定子からの磁束が全て回転子コア31側を通過することになるので、大きなリラクタンストルクを得ることができる。更に
図3に示すように、孔部33の外周側に内周側に向けて凸状となる円弧形状33Aを設けることにより、固定子からの磁束をより多く通過させることができる。
【0020】
なお、本実施の形態において、回転子コア31の外周から孔部33の最短距離Eと、永久磁石32の中央ブリッジ部Aに近い角部35D同士を結んだ線と孔部33との最短距離Fとの和(E+F)は、永久磁石32の最外周に位置する角部35H同士の間の距離Gの2分の1であるとしたが、(E+F)は大きければ大きいほどより多くの磁束を通し易いので、距離Gの2分の1以上に設計すれば同様の効果を奏する。
【0021】
図6は
図3と同様の図であり、実施の形態2における回転子を示す一部断面平面図である。実施の形態1と同様、永久磁石32は2つに分断された磁石スロット35にそれぞれ挿入されている。永久磁石32の残留磁束密度をBrとすると、磁石スロット35と孔部33の距離は、永久磁石32の中央ブリッジ部Aに最も近い角部35Dから永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿って、距離がDbi/BrのX1点よりも径方向外側に距離m1の点で最小であり、そこでの磁石スロット35と孔部33の距離は、実施の形態1と同様Dbi/2よりも大きく、Br×m1/2より大きくなるよう構成する。永久磁石32と孔部33との間の距離は、距離m1の点で最小として、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、かつ径方向内側に行くに従って徐々に広がっていく。永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿うX1点から距離m1の点での孔部33と永久磁石32との距離d1はBr×m/2とDbi/2の大きい方よりも大きい。その他の構成は実施の形態1と同様である。このような構成においても、実施の形態1と同様に漏れ磁束を低減することができるとともに、遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。
【0022】
実施の形態3.
図7は実施の形態3における回転子を示す一部断面平面図である。本実施の形態においては、実施の形態2と同様、回転電機をリラクタンスモータとして使用した場合、回転子コア31に入るリラクタンストルクを発生させるための磁束が、孔部33により阻害されないようにして、高いトルクを得ることができるようにしたものである。
図7に示すように、回転子コア31の外周から孔部33の距離Jは、永久磁石32の最外周に位置する角部35H同士の間の距離Iの2分の1になるよう構成する。その他の構成は実施の形態2と同様である。
【0023】
回転子コア31の外周から孔部33の距離Jは、永久磁石32の最外周に位置する角部35H同士の間の距離Iの2分の1であるため、実施の形態2と同様、V字型かつ帯状に配置された永久磁石32の外周側にある回転子コア31に入るリラクタンストルクを発生させるための磁束が、孔部33により阻害されないので、高いトルクを得ることができる。
なお実施の形態3において、回転子コア31の外周から孔部33の距離Jは、永久磁石32の最外周に位置する角部35H同士の間の距離Iの2分の1であるとしたが、距離Jは大きければ大きいほど多くの磁束を通すことができるので、2分の1以上であれば同様の効果を奏する。
【0024】
実施の形態4.
図8は実施の形態4における回転子を示す一部断面平面図である。
図8に示すように、孔部33の周方向中心から回転子コア31の外周の間に径方向外側に向かって貫通するスリット部50を設ける。リラクタンストルクを生じさせる磁束が少なくなるのを防止するため、スリット部50の幅は孔部33と回転子コア31の外周との間の距離に比べて小さくなるよう構成される。その他の構成は実施の形態3と同様である。
このような構成においても実施の形態3と同様、回転子コア31に入るリラクタンストルクを発生させるための磁束が、孔部33により阻害されないようにして、高いトルクを得ることができる。
【0025】
またスリット部50が回転子コア31の外周付近に発生する、遠心力によるフープ応力(円周の接線方向に作用する引っ張り応力)を切るため、外周ブリッジ部Bに発生する遠心力を低減することができ、外周ブリッジ部Bにおける幅を低減でき、従って漏れ磁束を低減することができる。またスリット部50が一対の永久磁石32の中心部分にあるため、遠心力による応力の偏りが発生せず、バランスよく漏れ磁束を低減することができる。
【0026】
実施の形態5.
図9は実施の形態5における回転子を示す一部断面平面図である。
図9に示すように、回転子30においては、シャフト5に圧入などで固定された回転子コア31と、回転子コア31にバスタブ状であって帯状に配置された3つの磁石スロット35と、磁石スロット35に挿入された永久磁石32と、磁石スロット35の径方向外側に設けられた孔部33により構成される。磁石スロット35は回転子コア31において3つに分けられており、磁石スロット35を分断している2つの回転子コア31部分を中央ブリッジ部A1と呼ぶ。この磁石スロット35を分断している回転子コア31の2つの中央ブリッジ部A1の最小部分の幅はDbiである。本実施形態においては、実施の形態1と異なり幅Dbiの最小部分が2つ存在する。
【0027】
永久磁石32は3つに分断された磁石スロット35にそれぞれ挿入されている。そして実施の形態1と同様、永久磁石32の残留磁束密度をBrとすると、V字型に配置された両サイドの磁石スロット35と孔部33の距離は、両サイドの永久磁石32の中央ブリッジ部A1に最も近い角部35Dから永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿って、距離がDbi/BrのX点で最小となり、更にその距離はDbiとなる。本実施形態においては、実施の形態1と異なり幅Dbiの中央ブリッジ部A1が2つ存在するので、距離はDbi/2とはならず、Dbiとなる。更に実施の形態1と同様、両サイドの永久磁石32と孔部33の距離は、点Xでの距離を最小として、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、永久磁石32の半径方向外側に向かう辺にそってX点から距離mの点での孔部33と永久磁石32との距離dはd=Br×m/2である。上記構造の原理は実施の形態1で説明したものと同様である。
【0028】
更に実施の形態3と同様、回転子コア31の外周から孔部33の距離は、両サイドの永久磁石32の最外周に位置する角部35H同士の間の距離の2分の1になるよう構成されている。更にV字型に配置された両サイドの磁石スロット35の間であって孔部33の内周側には中央磁石スロット35Nが設けられ、中央磁石スロット35Nには中央永久磁石32Aが挿入されている。そして中央永久磁石32Aが挿入された中央磁石スロット35Nと孔部33の距離は、中央永久磁石32Aの中央部で最小であり、その距離はDbiである。
回転子コア31の外周から孔部33の最短距離Kは、両サイドの永久磁石32の最外周角部と回転子コア31の外周との間の距離と等しく、最短距離になる位置は孔部33の中心から周方向に離れた位置であり、回転子コア31の外周から孔部33までの距離は、中心に向かって徐々に大きくなる。これによりリラクタンストルクを増加させることができる。
【0029】
以上のように、両サイドの永久磁石32の中央ブリッジ部A1に最も近い角部35Dから永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿うX点において、両サイドの永久磁石32と孔部33の距離は最小となり、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、永久磁石32の径方向外側に向かう辺にそって点Xから距離mの点での孔部33と永久磁石32との距離dはd=Br×m/2であるように形成する。従って実施の形態1と同様、永久磁石32の出す磁束を阻害せずに孔部33を設けることができる。更に回転子コア31における永久磁石32の外周側のコア重量を軽減することにより、遠心力を低減することができる。更に中央ブリッジ部A1および外周ブリッジ部の幅を低減することができるので、漏れ磁束を低減することができる。
【0030】
永久磁石32の中央ブリッジ部A1に最も近い角部35Dから永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿うX点において永久磁石32と孔部33の間の距離は最小であり、その距離はDbiである。従って永久磁石32と孔部33の間の回転子コア31に発生する遠心力による応力は、中央ブリッジ部A1に発生する遠心力による応力と同等であり、遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。
更に回転子コア31の外周から孔部33までの最短距離Kは、両サイドの永久磁石32の最外周角部35Hと回転子コア31の外周との距離と等しく、最短距離になる位置は孔部33の中心から周方向に離れた位置にあり、回転子コア31の外周から孔部33までの距離は、中心に向かって徐々に大きくなる。
【0031】
従って回転子コア31の孔部33の外周側に発生する遠心力による応力は、回転子コア31の外周ブリッジ部に発生する応力と同等であり、遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。また永久磁石32の最外周角部35Hよりも孔部33の最外周位置33Dが内周側にあるため、永久磁石32と孔部33との間の磁路の外周側の開口幅を大きく取ることができ、リラクタンストルクを発生させるための磁束を多く導入することが出来、トルクを大きくすることができる。さらに回転子コア31の外周から孔部33の最短距離Kは孔部33の中心から周方向に離れた位置に存在し、回転子コア31の外周から孔部33までの距離は、中心に向かって徐々に大きくなる。従って回転子コア31の外周から孔部33の間にある回転子コア31において、リラクタンストルクを発生させるための磁束を多く導入することが出来、リラクタンストルクを大きくし、高いトルクを得ることができる。
【0032】
なお本実施の形態においても、実施の形態1と同様、X点における永久磁石32と孔部33の距離はDbi以上であれば同様の効果を奏する。また、永久磁石32の径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点での孔部33と永久磁石32との距離dは、Br×m/2(Br×m/BS)以上であれば、同様の効果を奏する。更に
図9に示した構成に実施の形態4で示したスリット部50を設けても良い。
【0033】
実施の形態6.
図10は実施の形態6における回転子を示す一部断面平面図である。
図10に示すように、回転子30は、シャフト5に圧入などで固定された回転子コア31を有する。そして回転子コア31には、外周側と内周側とにおいて2層を構成するように、V字型かつ帯状に配置された外周側磁石スロットおよび内周側磁石スロットを有している。即ち回転子コア31には、内周側磁石スロット35a(第1内周側磁石スロット)と、内周側磁石スロット35aに挿入された内周側永久磁石32a(第1内周側永久磁石)と、外周側磁石スロット35bと、外周側磁石スロット35bに挿入された外周側永久磁石32bとを有している。更に回転子コア31には、V字型であり帯状に配置された外周側磁石スロット35bの径方向外側に設けられた孔部33が設けられている。
このように磁石を多層化することによりリラクタンストルクが発生し易くなるため、高トルク化が可能になる。磁石を1層から2層にすると、1層目と2層目の間に新たな磁路が生じる。この磁路はdq座標系におけるq軸磁路に相当するもので、q軸磁束が通るため、q軸インダクタンスが増加する。リラクタンストルクはd軸インダクタンスとq軸インダクタンスの突極性によって発生するため、q軸インダクタンスが大きくなるとリラクタンストルクが増加する。したがって、多層化することで高トルク化がし易くなる。
一方、磁石を多層化した場合、磁束が通る回転子内の鉄心の量が減るため、磁気飽和もし易くなる。とりわけ、
図10に示す外周側永久磁石32bと回転子30の外周との間に存在する鉄心(
図10における点線Zで囲われた部分)が少なくなるので、2層化する前より磁気飽和はし易くなる。しかし、本実施の形態に示しているように、孔部33を形成することにより上述の箇所も磁気飽和させずに軽量化が可能となるため、ブリッジ部の幅を減らすことができ、漏れ磁束を低減できるので、高トルク化が可能となる。
【0034】
回転子コア31は薄板鋼板を軸方向に積層して構成されている。V字型であり帯状に配置された内周側磁石スロット35aおよび外周側磁石スロット35bは、回転子コア31で2つに分けられており、内周側磁石スロット35aおよび外周側磁石スロット35bを分断している回転子コア31をそれぞれ内周側中央ブリッジ部A3、外周側中央ブリッジ部A4と呼ぶ。そして外周側磁石スロット35bを分断している回転子コア31の外周側中央ブリッジ部A4の最小部分の幅はDbiである。内周側永久磁石32aおよび外周側永久磁石32bは2つに分断された内周側磁石スロット35aおよび外周側磁石スロット35bにそれぞれ挿入されている。
【0035】
外周側永久磁石32bの残留磁束密度をBrとすると、実施の形態1の場合と同様に、外周側磁石スロット35bと孔部33との間の距離は、外周側永久磁石32bの外周側中央ブリッジ部A4に最も近い角部から外周側永久磁石32bの径方向外側に向かう辺に沿うX点において最小であり、その距離はDbi/2である。外周側永久磁石32bと孔部33との間の距離は、X点における距離を最小として、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、外周側永久磁石32bの径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点での孔部33と外周側永久磁石32bとの距離dはd=Br×m/2である。
また、実施の形態3と同様、回転子コア31の外周から孔部33との間の距離は、外周側永久磁石32bの最外周角部同士の距離の2分の1となっている。
【0036】
以上のように、外周側永久磁石32bの外周側中央ブリッジ部A4に最も近い角部から外周側永久磁石32bの径方向外側に向かう辺に沿うX点において、外周側永久磁石32bと孔部33の距離は最小となり、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、外周側永久磁石32bの径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点での孔部33と外周側永久磁石32bとの距離dはd=Br×m/2となるよう構成する。従って実施の形態1の場合と同様に、外周側永久磁石32bの出す磁束を阻害せずに孔部33を設けることができる。更に回転子コア31における外周側永久磁石32bの外周側のコア重量を軽減することができ、遠心力を低減することができる。更に中央ブリッジ部および外周ブリッジ部の幅を低減することができ、漏れ磁束を低減することができる。
【0037】
更に実施の形態1と同様、外周側永久磁石32bの外周側中央ブリッジ部A4に最も近い角部から外周側永久磁石32bの径方向外側に向かう辺に沿うX点において外周側永久磁石32bと孔部33の距離は最小となり、その距離はDbi/2である。従って外周側永久磁石32bと孔部33の間の回転子コア31に発生する遠心力による応力は、外周側中央ブリッジ部A4に発生する応力と同等であり、遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。
又実施の形態3と同様、回転子コア31の外周から孔部33との間の距離は、外周側永久磁石32bの最外周側角部同士の距離の2分の1よりも大きいため、回転子コア31のV字型であり、帯状に配置された外周側磁石スロット35bよりも径方向外周側で発生するリラクタンストルクに関与する磁束を阻害しないため、トルクを大きくすることができる。
【0038】
なお実施の形態6において、外周側永久磁石32bの残留磁束密度をBrとすると、外周側磁石スロット35bと孔部33の距離は、外周側永久磁石32bの外周側中央ブリッジ部A4に最も近い角部から外周側永久磁石32bの径方向外側に向かう辺に沿って、距離がDbi/BrのX点で最小であり、かつその距離はDbi/2であるとした。更に外周側永久磁石32bと孔部33の距離は、X点での距離を最小として、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、外周側永久磁石32bの径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点において孔部33と外周側永久磁石32bとの距離dはd=Br×m/2であるとした。但しX点における外周側永久磁石32bと孔部33の距離dは、Dbi/2以上であれば遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。
【0039】
また外周側永久磁石32bの径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点での孔部33と外周側永久磁石32bとの距離dはBr×m/2以上であれば、永久磁石32の出す磁束を阻害せずに孔部33を設けることができる。
また、外周側磁石スロット35bには外周側永久磁石32bが挿入されるものとしたが、外周側永久磁石32bを挿入せずに、外周側磁石スロット35bのみを設けてもよい。
この場合、外周側永久磁石32bのBrは0であるものと考えてよく、X点においては、外周側磁石スロット35bと孔部33の距離は無限大の位置となるが、外周側永久磁石32bと孔部33の距離は、全ての点で、Dbi/2以上、かつBr×m/2の条件を満たすこととなるので、結果として外周側磁石スロット35bと孔部33の距離はDbi/2以上であればよいこととなる。
尚内周側磁石スロット35aと、内周側磁石スロット35aに挿入された内周側永久磁石32aについてはどのような構造であってもよい。
【0040】
実施の形態7.
図11は実施の形態7における回転子を示す一部断面平面図である。
図11に示すように、回転子30は、シャフト5に圧入などで固定された回転子コア31と、回転子コア31に周方向において非対称に構成されたV字型であり帯状に配置された磁石スロット35c及び磁石スロット35dにより構成されている。更に回転子30は、磁石スロット35c及び磁石スロット35dにそれぞれ挿入された永久磁石32c、永久磁石32dと、磁石スロット35c及び磁石スロット35dの径方向外側に設けられた孔部33により構成される。
【0041】
回転子コア31は、薄板鋼板を軸方向に積層して構成されている。磁石スロット35cと磁石スロット35dを分断している回転子コア31の部分を中央ブリッジ部A5と呼ぶ。中央ブリッジ部A5における最小部分の幅はDbiである。永久磁石32c、永久磁石32dは長手方向における寸法が異なる。これにより一方向(
図11では反時計方向)に回転するときのトルクを大きくすることができる。即ち
図11において、回転子コア31における31M部分の面積が小さくなるので、この部分に磁束が集中し易くなり、反時計方向の回転に有利となる。永久磁石32c、永久磁石32dの残留磁束密度をBrとすると、磁石スロット35cと孔部33との間の距離および磁石スロット35dと孔部33との間の距離は、実施の形態1の場合と同様に構成される。即ち、磁石スロット35cと孔部33の距離は、永久磁石32cの中央ブリッジ部A5に最も近い角部から永久磁石32cの径方向外側に向かう辺に沿って、距離がDbi/BrのXa点において最小であり、その距離はDbi/2である。更に磁石スロット35dと孔部33の距離は永久磁石32dの中央ブリッジ部A5に最も近い角部から永久磁石32dの径方向外側に向かう辺に沿って、距離がDbi/BrのXb点において最小であり、その距離はDbi/2である。
【0042】
永久磁石32cと孔部33の距離は、Xa点における距離を最小として、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、永久磁石32cの径方向外側に向かう辺に沿うXa点から距離maの点での孔部33と永久磁石32cとの距離daは、da=Br×m/2である。更に永久磁石32dと孔部33の距離は、Xb点における距離を最小として、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、永久磁石32dの径方向外側に向かう辺に沿うXb点から距離mbの点での孔部33と永久磁石32dとの距離dbはdb=Br×m/2である。
【0043】
また、実施の形態3と同様、回転子コア31の外周から孔部33の距離は、永久磁石32c及び永久磁石32dの最外周に位置する角部同士の間の距離の2分の1である。これによりリラクタンストルクに関与する磁束が阻害されないため、トルクを大きくすることができる。
更に孔部33の周方向中心から回転子コア31の外周の間に径方向外側に向かって貫通するスリット部50を設ける。そしてスリット部50の幅は孔部33と回転子コア31の外周部との間の距離に比べて小さい。
【0044】
図11においては、永久磁石32cと永久磁石32dは長手方向の寸法が異なり、その他の構成は同じとした。しかし長手方向の寸法だけではなく、短手方向の寸法または残留磁束密度Brが異なってもよい。また、長手方向の寸法、短手方向の寸法、残留磁束密度Brが同じで、磁石スロット35cと磁石スロット35dの傾きを半径方向の中心線Qに対して非対称に構成してもよい。逆に磁石スロット35cと磁石スロット35dの傾きが半径方向の中心線Qに対して対称に構成し、長手方向の寸法、短手方向の寸法、残留磁束密度Brのいずれか1つまたは全てが異なるよう構成してもよい。また磁石スロット35cと磁石スロット35dの傾きが、半径方向の中心線Qに対して対称であり、永久磁石32cと永久磁石32dの長手方向の寸法、短手方向の寸法および残留磁束密度Brが同じで、スリット部50を半径方向の中心線Qに対して角度を持たせるよう傾斜させてもよい。このような構成においても、一方向に回転するときのトルクを大きくすることができる。またスリット部50を半径方向の中心線Qに対して角度をもたせるよう傾斜し、反時計回り方向に傾いているため、反時計回りの方向に回転する際の回転方向進み側に磁束を集中しやすく、この方向に対するトルクを向上することができる。更に孔部33を半径方向の中心線Qに対して非対称になるよう構成してもよい。
【0045】
実施の形態8.
図12は実施の形態8における回転子を示す一部断面平面図である。
図12に示すように、回転子30は、シャフト5に圧入などで固定された回転子コア31を有する。そして回転子コア31には、内周側にバスタブ状であって帯状に配置された3つの内周側磁石スロット35f、35g、35h(第2内周側磁石スロット)と、内周側磁石スロット35f、35g、35hに挿入された内周側永久磁石32f、32g、32h(第2内周側永久磁石)と、外周側にV字型かつ帯状に配置された外周側磁石スロット35i、35jと、外周側磁石スロット35i、35jに挿入された外周側永久磁石32i、32jを有する。ここで、
図12に示すように、バスタブ状とはV字型に配置された内周側磁石スロット35f、35hのV字型の中心にさらに内周側磁石スロット35gを配置し、3個の内周側磁石スロットがU字型に配置された形状をいう。なお、
図12では内周側に3個の内周側磁石スロット35f、35g、35hがU字型に配置された形状であるが、バスタブ状は3個の磁石スロットに限定されず、3個以上の磁石スロットがU字型に配置された形状であってもよい。更に回転子コア31には、V字型であり帯状に配置された外周側磁石スロット35i、35jの径方向外側に孔部33が設けられている。
このように内周側に3個の内周側磁石スロット35f、35g、35hをU字型に配置することにより、実施の形態6と同様の効果を奏するとともに、永久磁石をV字型ではなくバスタブ状(U字型)に3つに分割することで、1層目と2層目の間のq軸磁束が通る余分な鉄心を減らすことができるため、ブリッジ部の幅を減らすことが可能となる。ブリッジ部の幅を減らすことができれば、漏れ磁束も減らすことができるため、高トルク化が可能となる。
【0046】
回転子コア31は薄板鋼板を軸方向に積層して構成されている。バスタブ状であって帯状に配置された内周側磁石スロット35f、35g、35hは回転子コア31において3つに分けられており、V字型であり帯状に配置された外周側磁石スロット35i、35jは回転子コア31で2つに分けられている。そして内周側磁石スロット35f、35g、35hおよび外周側磁石スロット35i、35jを分断している回転子コア31部分をそれぞれ内周側中央ブリッジ部A6、外周側中央ブリッジ部A7と呼ぶ。そして外周側磁石スロット35i、35jを分断している回転子コア31の外周側中央ブリッジ部A7の最小部分の幅はDbiである。内周側永久磁石32f、32g、32hは3つに分断された内周側磁石スロット35f、35g、35hにそれぞれ挿入されており、外周側永久磁石32i、32jは2つに分断された外周側磁石スロット35i、35jにそれぞれ挿入されている。
【0047】
外周側永久磁石32iの残留磁束密度をBrとすると、実施の形態1の場合と同様に、外周側磁石スロット35iと孔部33との間の距離は、外周側永久磁石32iの外周側中央ブリッジ部A7に最も近い角部から外周側永久磁石32iの径方向外側に向かう辺に沿うX点において最小であり、その距離はDbi/2である。外周側永久磁石32iと孔部33との間の距離は、X点における距離を最小として、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、外周側永久磁石32iの径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点での孔部33と外周側永久磁石32iとの距離dはd=Br×m/2である。
また、実施の形態3と同様、回転子コア31の外周から孔部33との間の距離は、外周側永久磁石32i、32jの最外周角部同士の距離の2分の1となっている。
【0048】
以上のように、外周側永久磁石32iの外周側中央ブリッジ部A7に最も近い角部から外周側永久磁石32iの径方向外側に向かう辺に沿うX点において、外周側永久磁石32iと孔部33の距離は最小となり、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、外周側永久磁石32iの径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点での孔部33と外周側永久磁石32iとの距離dはd=Br×m/2となるよう構成する。従って実施の形態1の場合と同様に、外周側永久磁石32iの出す磁束を阻害せずに孔部33を設けることができる。更に回転子コア31における外周側永久磁石32iの外周側のコア重量を軽減することができ、遠心力を低減することができる。更に中央ブリッジ部および外周ブリッジ部の幅を低減することができ、漏れ磁束を低減することができる。
【0049】
更に実施の形態1と同様、外周側永久磁石32iの外周側中央ブリッジ部A7に最も近い角部から外周側永久磁石32iの径方向外側に向かう辺に沿うX点において外周側永久磁石32iと孔部33の距離は最小となり、その距離はDbi/2である。従って外周側永久磁石32iと孔部33の間の回転子コア31に発生する遠心力による応力は、外周側中央ブリッジ部A7に発生する応力と同等であり、遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。
又実施の形態3と同様、回転子コア31の外周から孔部33との間の距離は、外周側永久磁石32iの最外周側角部同士の距離の2分の1よりも大きいため、回転子コア31においてV字型であり、帯状に配置された外周側磁石スロット35iよりも径方向外周側で発生するリラクタンストルクに関与する磁束を阻害しないため、トルクを大きくすることができる。
【0050】
なお実施の形態8において、外周側永久磁石32iの残留磁束密度をBrとすると、外周側磁石スロット35iと孔部33の距離は、外周側永久磁石32iの外周側中央ブリッジ部A7に最も近い角部から外周側永久磁石32iの径方向外側に向かう辺に沿って、距離がDbi/BrのX点で最小であり、かつその距離はDbi/2であるとした。更に外周側永久磁石32iと孔部33の距離は、X点での距離を最小として、径方向外側に行くに従って徐々に広がっていき、外周側永久磁石32iの径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点において孔部33と外周側永久磁石32iとの距離dはd=Br×m/2であるとした。但しX点における外周側永久磁石32iと孔部33の距離は、Dbi/2以上であれば遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができる。又このことはd≧Dbi/2であれば遠心力による回転子コア31の破壊を防ぐことができるということになる。
【0051】
また外周側永久磁石32iの径方向外側に向かう辺に沿うX点から距離mの点での孔部33と外周側永久磁石32iとの距離dはBr×m/2以上であれば、永久磁石32の出す磁束を阻害せずに孔部33を設けることができる。
また、外周側磁石スロット35iには外周側永久磁石32iが挿入されるものとしたが、外周側永久磁石32iを挿入せずに、外周側磁石スロット35iのみを設けてもよい。この場合、外周側永久磁石32iのBrは0であるものと考えてよく、X点においては、外周側磁石スロット35iと孔部33の距離は無限大の位置となるが、外周側永久磁石32iと孔部33の距離は、全ての点で、Dbi/2以上、かつBr×m/2の条件を満たすこととなるので、結果として外周側磁石スロット35iと孔部33の距離はDbi/2以上であればよいこととなる。
尚内周側磁石スロット35f、35g、35hと、内周側磁石スロット35f、35g、35hに挿入された内周側永久磁石32f、32g、32hについてはどのような構造であってもよい。
【0052】
上記実施の形態1から8において、永久磁石32は、方形断面を有するものとして説明したが、角部をR(円弧状)に面取りし、もしくはC面(直角二等辺三角形で切り取る)に面取りされていてもよい。その場合、上記説明の角部は方形断面を有すると仮定した場合の仮想角部とするとよい。
上記実施の形態1から8において、1つの孔部33を設けた場合を説明したが、孔部を複数に分割してもよい。その場合全ての孔部は、孔部が1つであるとした上記実施の形態1から8の孔部33に内包される位置に配置される。
上記実施の形態1から8において、永久磁石と孔部との間の距離は径方向外側に行くに従い単調に増加する場合について説明したが、部分的に平行であっても良く、あるいは孔部33に凹凸をつけて非単調に増加するようにしてもよい。
上記実施の形態4、7で、スリット部50は孔部33に至るまで貫通した場合を示したが、回転子コア31により途中分断されていてもよい。
更に上記実施の形態1から8において、固定子コイルの巻線方法は分布巻でも集中巻でもよい。
【0053】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
回転子(30)はシャフト(5)に固定された回転子コア(31)と、回転子コア(31)に径方向外側に向かって互いに遠ざかるようにV字型に配置された一対の磁石スロット(35)と、各磁石スロット(35)に挿入された永久磁石(32)と、各磁石スロット(35)の径方向外側に設けられた孔部(33)により構成され、永久磁石(32)と孔部(33)の間の距離は、径方向外側に行くに従って大きくなるよう構成するとともに、回転子コア(31)の外周から孔部(33)との間の距離は各磁石スロット(35)と回転子コア(31)の外周との間の距離以上になるよう構成する。