(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6987324
(24)【登録日】2021年12月2日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】固体絶縁母線及びこれを備えたガス絶縁開閉装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/035 20060101AFI20211213BHJP
H02G 5/06 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
H02B13/035 301E
H02B13/035 301C
H02B13/035 311C
H02G5/06 341E
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-547872(P2021-547872)
(86)(22)【出願日】2021年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2021012875
【審査請求日】2021年8月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西園寺 嶺
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒明 慎太郎
【審査官】
内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−44958(JP,A)
【文献】
特開2000−050436(JP,A)
【文献】
特許第6811905(JP,B1)
【文献】
特開2001−168573(JP,A)
【文献】
特開2017−189050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/00 − 13/08
H02G 5/00 − 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母線導体及び前記母線導体の周囲を覆う絶縁物を有する母線と、前記母線の両端部に設けられ前記母線を支持する絶縁アダプタとを備えた固体絶縁母線において、
前記絶縁アダプタの表面に設けられた第1の接地誘電層、
前記母線の表面に設けられた第2の接地誘電層、及び
前記絶縁アダプタ及び前記母線に取り付けられ前記第1の接地誘電層及び前記第2の接地誘電層と密着される接地用シートを備え、
前記接地用シートは、金属材料を含むメッシュシートであり、導電性及び可とう性を有し、円筒状または半円筒状であることを特徴とする固体絶縁母線。
【請求項2】
前記接地用シートは、前記母線の径よりも小さい径を有する円筒状であることを特徴とする請求項1記載の固体絶縁母線。
【請求項3】
前記接地用シートは、前記母線の径よりも大きい径を有する円筒状であり、固定用バンドによって前記絶縁アダプタ及び前記母線に固定されることを特徴とする請求項1記載の固体絶縁母線。
【請求項4】
2つの円筒状の前記接地用シートが、前記母線と前記絶縁アダプタとの接続部を覆うように取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固体絶縁母線。
【請求項5】
前記接地用シートは半円筒状であり、固定用バンドによって前記絶縁アダプタ及び前記母線に固定されることを特徴とする請求項1記載の固体絶縁母線。
【請求項6】
母線導体及び前記母線導体の周囲を覆う絶縁物を有する母線と、前記母線の両端部に設けられ前記母線を支持する絶縁アダプタとを備えた固体絶縁母線において、
前記絶縁アダプタの表面に設けられた第1の接地誘電層、
前記母線の表面に設けられた第2の接地誘電層、及び
前記絶縁アダプタ及び前記母線に取り付けられ前記第1の接地誘電層及び前記第2の接地誘電層と密着される接地用シートを備え、
前記接地用シートは、導電性及び可とう性を有する半円筒状のシートであり、固定用バンドによって前記絶縁アダプタ及び前記母線に固定されることを特徴とする固体絶縁母線。
【請求項7】
遮断器を収容する遮断器タンクと母線を収容する母線タンクとを有するガス絶縁開閉装置を、複数並べて列盤配置したガス絶縁開閉装置において、
前記複数のガス絶縁開閉装置の母線同士を接続する部分に、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の固体絶縁母線を備えたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項8】
各々の前記ガス絶縁開閉装置の前記母線は、前記母線タンクの外部で母線接続用ブッシングに接続され、前記母線接続用ブッシングを介して前記固体絶縁母線の前記絶縁アダプタに接続されることを特徴とする請求項7記載のガス絶縁開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、固体絶縁母線及びこれを備えたガス絶縁開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置は、絶縁ガスが封入された密閉容器である遮断器タンク及び母線タンク、操作室、制御室、及びケーブル室等を備えている(例えば特許文献1)。絶縁ガスとして、絶縁性に優れたSF
6ガスを密閉容器に封入することで、主回路機器の配置がコンパクト化される。また近年は、SF
6ガスに代わり例えばドライエア等の環境面にも優れたガスを代替ガスとして封入する場合もある。
【0003】
このようなガス絶縁開閉装置の母線部分に関しては、ガス絶縁開閉装置の据付時に母線タンクを接続し、母線タンク内の母線導体を接続するガス母線方式が一般的である。また近年は、非特許文献1に示されるように、固体絶縁母線を用いることでガス絶縁開閉装置据付時の現地ガス処理作業を無くしているケースもある。
【0004】
固体絶縁母線は、母線導体の周囲を絶縁物で覆った母線と、この母線を支持する複数の絶縁アダプタとで構成され、母線導体が充電されると母線導体を覆っている絶縁物の表面に電荷が溜まるため、これを接地に落とす必要がある。ただし、母線の表面と複数の絶縁アダプタの表面の電荷を接地に落とすために多点を接地すると、固体絶縁母線と大地間でループ回路となり、循環電流が発生し絶縁物の劣化につながる。
【0005】
そこで、固体絶縁母線の表面に導電性塗料をコーティングして接地誘電層を形成し、絶縁アダプタ表面の接地誘電層と母線表面の接地誘電層とを接続して一点で接地をとる手法がとられている。さらに、母線と絶縁アダプタとの接続部における接地誘電層の接続が十分でない可能性があるため、固体絶縁母線の表面に帯状の接地用シートを巻き付けることで接地を確実にしている。この接地用シートには、薄い銅製のメッシュシート等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6811905号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】NKT社カタログ 26 589 12(2017年3月13日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の接地用シートは、巻き付け作業の際に滑りやすく、固体絶縁母線との間に隙間が発生しやすいため、固体絶縁母線と密着させることが難しく、取り付け作業に長時間を要するという課題があった。このため、固体絶縁母線を備えたガス絶縁開閉装置の据付時には、接地用シートの巻き付け作業を含む固体絶縁母線の取り付け作業に長時間を要し、作業性が低いという課題があった。
【0009】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、接地を確実且つ容易に行うことができ、取り付け作業の時間を短縮することが可能な固体絶縁母線を提供することを目的とする。また、固体絶縁母線を備えたガス絶縁開閉装置の据付時の作業時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される固体絶縁母線は、母線導体及び母線導体の周囲を覆う絶縁物を有する母線と、母線の両端部に設けられ母線を支持する絶縁アダプタとを備えた固体絶縁母線において、絶縁アダプタの表面に設けられた第1の接地誘電層と、母線の表面に設けられた第2の接地誘電層と、絶縁アダプタ及び母線に取り付けられ第1の接地誘電層及び第2の接地誘電層と密着される接地用シートとを備え、接地用シートは、
金属材料を含むメッシュシートであり、導電性及び可とう性を有
し、円筒状または半円筒
状である。
また、本願に開示される固体絶縁母線は、母線導体及び母線導体の周囲を覆う絶縁物を有する母線と、母線の両端部に設けられ母線を支持する絶縁アダプタとを備えた固体絶縁母線において、絶縁アダプタの表面に設けられた第1の接地誘電層と、母線の表面に設けられた第2の接地誘電層と、絶縁アダプタ及び母線に取り付けられ第1の接地誘電層及び第2の接地誘電層と密着される接地用シートを備え、接地用シートは、導電性及び可とう性を有する半円筒状のシートであり、固定用バンドによって絶縁アダプタ及び母線に固定される。
【0011】
本願に開示されるガス絶縁開閉装置は、遮断器を収容する遮断器タンクと母線を収容する母線タンクとを有するガス絶縁開閉装置を、複数並べて列盤配置したガス絶縁開閉装置において、複数のガス絶縁開閉装置の母線同士を接続する部分に、本願に開示される固体絶縁母線を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本願に開示される固体絶縁母線によれば、可とう性を有する円筒状または半円筒状の接地用シートが第1の接地誘電層及び第2の接地誘電層と容易に密着されるため、接地を確実且つ容易に行うことができ、取り付け作業の時間を短縮することが可能である。
【0013】
また、本願に開示されるガス絶縁開閉装置によれば、複数のガス絶縁開閉装置の母線同士を接続する部分に本願による固体絶縁母線を備えることにより、接地を確実に行うことができ、取り付けが容易であるため、据付時の作業時間を短縮することが可能である。
本願の上記以外の目的、特徴、観点及び効果は、図面を参照する以下の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1による固体絶縁母線を示す断面図である。
【
図2】実施の形態1による固体絶縁母線を示す斜視図である。
【
図3】実施の形態2による固体絶縁母線を示す断面図である。
【
図4】実施の形態3による固体絶縁母線を示す断面図である。
【
図5】実施の形態3による固体絶縁母線を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態4による固体絶縁母線を示す断面図である。
【
図7】実施の形態4による固体絶縁母線を示す斜視図である。
【
図8】実施の形態5によるガス絶縁開閉装置を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1による固体絶縁母線について図面に基づいて説明する。
図1及び
図2は、実施の形態1による固体絶縁母線を示す断面図及び斜視図である。なお、各図において、同一または相当部分には同一符号を付している。実施の形態1に係る固体絶縁母線100は、主にガス絶縁開閉装置に用いられ、特に、ガス絶縁開閉装置を複数並べて列盤配置する際に互いの母線同士を接続する部分に配置されるものである。
【0016】
固体絶縁母線100は、母線導体2a及び母線導体2aの周囲を覆う絶縁物2bを有する母線2と、母線2の両端部に設けられ母線2を支持する絶縁アダプタ1とを備えている。絶縁アダプタ1は、
図1中、鉛直方向に円筒部が設けられ、さらにこの鉛直方向の円筒部と交差するように水平方向にも円筒部が設けられ、T字型の形状をしている。
【0017】
絶縁アダプタ1は、シリコーン樹脂またはエチレンプロピレン樹脂等の比較的柔らかく弾性を有する絶縁物で構成される。また、母線2は、母線導体2aの周囲をシリコーンゴムまたはエポキシ樹脂等の絶縁物2bで覆うことによって構成される。絶縁アダプタ1の水平方向の円筒部は、母線2が嵌め込まれる嵌合部1bとなっている。母線2の両端部は、それぞれ絶縁アダプタ1の嵌合部1bに挿入され固定される。
【0018】
また、絶縁アダプタ1の鉛直方向の円筒部は、両端部から中央部に向かって縮径するようにテーパー状に形成されたプラグイン部1aを有している。ブッシング3と絶縁栓4は、2箇所のプラグイン部1aにそれぞれねじ込まれ、絶縁アダプタ1と絶縁性能を確保して接続される。
【0019】
ブッシング3は、例えばガス絶縁開閉装置の母線接続用ブッシングであり、内部に中心導体3aを備え、周囲をエポキシ樹脂等の絶縁物3bで覆われている。絶縁物3bは、先端側が細くなったコーン状をしており、この部分がプラグイン部1aに嵌合する。絶縁栓4は、エポキシ樹脂等の絶縁物で構成される。
【0020】
絶縁アダプタ1の鉛直方向の円筒部と水平方向の円筒部との交差部には導電ゴム9が設けられ、2つの円弧形状の固定用導体6と、それらで挟まれた略円柱状の傾き防止導体8が組み込まれている。固定用導体6には、銅またはアルミニウム等の導電性の高い金属が用いられる。
【0021】
母線2を絶縁アダプタ1の嵌合部1bに挿入した後、スタッドボルト5をナット7で締め付けることで、母線2の内部の母線導体2aが固定され、母線2が絶縁アダプタ1に接続される。このようにして、絶縁アダプタ1の内部で、母線2の内部の母線導体2aとブッシング3内部の中心導体3aとが接続される。
【0022】
また、絶縁アダプタ1の表面には第1の接地誘電層10aが設けられ、母線2の表面には第2の接地誘電層10bが設けられる。第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bは、例えば導電性塗料等をコーティングすることによって形成される。
【0023】
さらに、固体絶縁母線100は、絶縁アダプタ1及び母線2に取り付けられ、第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bと密着される接地用シート11を備えている。接地用シート11は、導電性及び可とう性を有するシートであり、例えば銅、銀、アルミニウム等の金属材料を含むメッシュシートである。実施の形態1では、母線2の径よりも小さい径を有する円筒状の接地用シート11が用いられる。
【0024】
接地用シート11は、その可とう性によって第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bと密着されるため、通電機能が保持される。接地用シート11には接地線12が接続され、第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bが一点で接地される。これにより第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bの電位が0となる。
【0025】
実施の形態1による接地用シート11の取り付け方法について簡単に説明する。まず絶縁アダプタ1と接続される前の母線2を、円筒状の接地用シート11に挿入する。続いて、接地用シート11に挿入された母線2の両端部に絶縁アダプタ1を接続する。その後、接地用シート11の端部を伸ばして径を広げ、絶縁アダプタ1の嵌合部1bに接地用シート11を覆い被せる。実施の形態1では、接地用シート11は母線2よりも小径であるため、絶縁アダプタ1及び母線2との間に隙間が生じることなく、第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bと確実に密着される。
【0026】
なお、実施の形態1では、固体絶縁母線100の構成について
図1及び
図2を用いて説明したが、本願に係る固体絶縁母線の構成はこれに限定されるものではなく様々な変形が可能である。例えば絶縁アダプタ1はT字型ではなく十字型であってもよい。また、接地用シートは金属製のメッシュシートに限定されるものではなく、導電性を有する材料であればよく、メッシュ構造以外の構造であってもよい。
【0027】
実施の形態1によれば、絶縁アダプタ1及び母線2に取り付けられた可とう性を有する円筒状の接地用シート11が、第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bと容易に密着される。これにより、第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bの通電機能を損なうことなく、接地を確実且つ容易に行うことができ、取り付け作業の時間を短縮することが可能である。
【0028】
また、母線2よりも小径の接地用シート11を用いることにより、絶縁アダプタ1及び母線2との間に隙間が生じず、第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bと容易に密着されるため、接地用シート11を密着させるための固定用バンド等の部品が不要である。さらに、接地用シート11は円筒状であるため、母線2を挿入するだけで容易に取り付けが行え、接地用シートを巻き付ける従来方法に比べて作業時間の短縮が図られる。
【0029】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2による固体絶縁母線を示す断面図である。実施の形態2による接地用シート11aは、母線2の径よりも大きい径を有する円筒状であり、固定用バンド13によって絶縁アダプタ1及び母線2に固定される。実施の形態2による固体絶縁母線100のその他の構成は、上記実施の形態1と同様であるためここでは説明を省略する。
【0030】
実施の形態2においても、円筒状の接地用シート11aは、その可とう性によって第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bと密着し、通電機能が保持される。ただし、接地用シート11aの径が母線2の径よりも大きいため、接地用シート11aを固定用バンド13で固定し、第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bと確実に密着させている。
【0031】
接地用シート11aは、母線2を絶縁アダプタ1と接続した後に取り付けることが可能である。すなわち、接地用シート11aの径は、絶縁アダプタ1と接続された母線2を挿入することが可能な大きさであって、その中でより小さいものが選ばれる。
実施の形態2によれば、さらに取り付け作業が容易となり、作業時間を短縮することが可能である。
【0032】
実施の形態3.
図4及び
図5は、実施の形態3による固体絶縁母線を示す断面図及び斜視図である。実施の形態3による固体絶縁母線100は、2つの円筒状の接地用シート11bが、母線2と絶縁アダプタ1との接続部を覆うように取り付けられている。実施の形態3による固体絶縁母線100のその他の構成は、上記実施の形態1と同様であるためここでは説明を省略する。
【0033】
上記実施の形態1及び実施の形態2による接地用シート11、11aは、母線2全体と絶縁アダプタ1の嵌合部1bとを覆っているが、接地用シート11bは、絶縁アダプタ1及び母線2それぞれの少なくとも一部を覆い、第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bそれぞれの一部と密着していればよい。
【0034】
実施の形態3による接地用シート11bは、母線2と絶縁アダプタ1との接続部とその周辺を覆うように取り付けられている。このような構成によれば、上記実施の形態1及び実施の形態2よりも小さい面積の接地用シート11bで第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bの通電機能を確保し、接地を行うことができる。
【0035】
なお、実施の形態3による接地用シート11bの径は、母線2の径よりも小さくてもよいし大きくてもよい。接地用シート11bの径が母線2の径よりも大きい場合は、上記実施の形態2と同様に固定用バンド13で固定される。
実施の形態3によれば、上記実施の形態1または実施の形態2と同様の効果に加え、接地用シート11bの面積をより小さくすることが可能であるため低コスト化が図られ、取り付け作業も容易となる。
【0036】
実施の形態4.
図6及び
図7は、実施の形態4による固体絶縁母線を示す断面図及び斜視図である。実施の形態4による接地用シート11cは半円筒状であり、固定用バンド13によって絶縁アダプタ1及び母線2に固定される。実施の形態4による固体絶縁母線100のその他の構成は、上記実施の形態1と同様であるためここでは説明を省略する。
【0037】
実施の形態4では、半円筒状の接地用シート11cを母線2全体と絶縁アダプタ1の嵌合部1bを覆うように取り付け、固定用バンド13によって第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bと確実に密着させている。このような構成によれば、上記実施の形態1及び実施の形態2よりも小さい面積の接地用シート11cで第1の接地誘電層10a及び第2の接地誘電層10bの通電機能を確保し、接地を行うことができる。なお、半円筒状の接地用シート11cは、絶縁アダプタ1及び母線2に取り付けた際に母線2の表面の略半分程度を覆うものであればよい。
【0038】
また、実施の形態4による接地用シート11cの取り付け方法は、母線2を絶縁アダプタ1と接続した後に接地用シート11cを被せて固定用バンド13で固定するだけでよく、母線2を接地用シートに挿入する必要がないため短時間で行える。
実施の形態4によれば、さらに取り付け作業が容易となり、作業時間を短縮することが可能である。
【0039】
実施の形態5.
実施の形態5では、上記実施の形態1から実施の形態4いずれかの固体絶縁母線100を備え、複数台配列されたガス絶縁開閉装置の相互間を電気的に接続したガス絶縁開閉装置について説明する。
図8は、実施の形態5によるガス絶縁開閉装置を示す側面断面図であり、図中矢印Aで示す左側が前面である。なお、
図8はガス絶縁開閉装置の内部構成の一例を示すものであり、本願によるガス絶縁開閉装置の構成はこれに限定されるものではない。固体絶縁母線100については
図1を流用して説明する。
【0040】
図8に示すように、ガス絶縁開閉装置20は、絶縁ガスが封入された遮断器タンク21と母線タンク22を備えている。遮断器タンク21には遮断器23と計器用変流器24が収容され、母線タンク22には断路器25と母線26が収容されている。遮断器タンク21の前方には操作機構が収容された操作室27が配置され、その上方には制御機器が収容された制御室28が配置されている。また、遮断器タンク21の下方には電力ケーブル29が収容されたケーブル室30が配置されている。
【0041】
母線タンク22の内部には、3相の母線26が盤幅方向に向けて並行に配置されている。母線26の両端は、母線タンク22の壁を貫通して配置された母線接続用ブッシングに接続されて支持されている。
【0042】
実施の形態5によるガス絶縁開閉装置は、
図8に示すようなガス絶縁開閉装置20を複数並べて列盤配置しており、複数のガス絶縁開閉装置20の母線26同士を接続する部分に固体絶縁母線100を備えている。ガス絶縁開閉装置20の母線26は、母線タンク22の外部で母線接続用ブッシングであるブッシング3(
図1参照)に接続され、ブッシング3を介して固体絶縁母線100の一方の絶縁アダプタ1に接続される。固体絶縁母線100の他方の絶縁アダプタ1にも同様に、別のガス絶縁開閉装置20の母線26がブッシング3を介して接続される。このようにして、各々のガス絶縁開閉装置20の母線26は、固体絶縁母線100によって電気的に接続される。
【0043】
実施の形態5によれば、ガス絶縁開閉装置20を複数並べて列盤配置したガス絶縁開閉装置において、複数のガス絶縁開閉装置20の母線26同士を接続する部分に固体絶縁母線100を備えることにより、接地を確実に行うことができ、取り付けが容易であるため、ガス絶縁開閉装置の据付時の作業時間を短縮することが可能である。
【0044】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0045】
1 絶縁アダプタ、1a プラグイン部、1b 嵌合部、2 母線、2a 母線導体、2b 絶縁物、3 ブッシング、3a 中心導体、3b 絶縁物、4 絶縁栓、5 スタッドボルト、6 固定用導体、7 ナット、8 傾き防止導体、9 導電ゴム、10a 第1の接地誘電層、10b 第2の接地誘電層、11、11a、11b、11c 接地用シート、12 接地線、13 固定用バンド、20 ガス絶縁開閉装置、21 遮断器タンク、22 母線タンク、23 遮断器、24 計器用変流器、25 断路器、26 母線、27 操作室、28 制御室、29 電力ケーブル、30 ケーブル室、100 固体絶縁母線
【要約】
固体絶縁母線(100)は、複数の絶縁アダプタ(1)及び母線(2)に、導電性及び可とう性を有する円筒状の接地用シート(11)が取り付けられる。この接地用シート(11)に接地線(12)を接続することにより、絶縁アダプタ(1)表面の第1の接地誘電層(10a)及び母線(2)表面の第2の接地誘電層(10b)の接地が行われる。接地用シート(11)は円筒状であるため第1の接地誘電層(10a)及び第2の接地誘電層(10b)と容易に密着され、取り付け作業が容易であり、ガス絶縁開閉装置の据付時の作業時間を短縮することが可能である。