(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二部材の前記突出部と前記第一部材の前記周面との第一つなぎ目と、前記第三部材の前記突出部と前記第一部材の前記周面との第二つなぎ目とが丸められている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコア片。
前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々における前記外周面の合計面積は、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々における前記内周面の合計面積に対して1倍超4倍以下である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のコア片。
前記コア片を前記第一側面の前記第二平行面に沿った仮想面と前記第二側面の前記第二平行面に沿った仮想面とで3分割した部位のうち、前記周方向の第一方向側の第一部位及び前記周方向の第二方向側の第二部位と、前記第一部位と前記第二部位との間の第三部位との相対密度の差が5.0%以下である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のコア片。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
ステータコアの生産性を高めることが望まれている。ヨーク部とティースとつば部とを一体に成形することで、ステータコアの生産性が高められると考えられる。しかし、ヨーク部とティースとつば部とを一体に成形する最適な製造方法は十分に検討されていなかった。
【0010】
本開示は、生産性に優れるコア片を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、生産性に優れるステータコア、ステータ、及び回転電機を提供することを別の目的の一つとする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示に係るコア片、ステータコア、ステータ、及び回転電機は、生産性に優れる。
【0012】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
(1)本開示の一態様に係るコア片は、環状に配置されてアキシャルギャップ型の回転電機のステータコアを構築するコア片であって、前記ステータコアの軸方向に延びている柱状の第一部材と、前記第一部材における前記軸方向の第一の端部側に設けられている板状の第二部材と、前記第一部材における前記軸方向の第二の端部側に設けられている板状の第三部材と、を備え、前記第一部材は、前記第二部材と前記第三部材とにつらなっている周面を有し、前記第二部材は、前記第一部材の前記周面よりも外方に張り出している突出部を有し、前記第三部材は、前記第一部材の前記周面よりも外方に張り出している突出部を有し、前記第一部材と前記第二部材と前記第三部材とは一体成形された圧粉成形体で構成されている。
【0014】
本開示の一態様に係るコア片は、生産性に優れる。
【0015】
従来のコア片は、例えば、第一部材と第二部材とが一体成形された圧粉成形体と、この圧粉成形体とは別途構成される第三部材とを組み合わされて構成される。或いは、従来のコア片は、例えば、第一部材と第三部材とが一体成形された圧粉成形体と、この圧粉成形体とは別途構成される第二部材とを組み合わされて構成される。即ち、従来のコア片は、少なくとも二つの部材を作製して組み合わせて構成する必要がある。そのため、従来のコア片の製造に要する工程数が多く、製造時間が長い。また、従来のコア片の製造に要する金型が少なくとも二つ必要である。
【0016】
一方、本開示の一態様に係るコア片は、第一部材と第二部材と第三部材とが一体成形された圧粉成形体で構成されているため、複数の部材を組み合わせる必要がない。よって、本開示の一態様に係るコア片は、従来のコア片に比較して、少ない工程かつ短時間で製造できる。また、本開示の一態様に係るコア片は、第一部材と第二部材と第三部材とが一体成形された圧粉成形体で構成されているため、一つの金型で製造できる。よって、金型の作製やメンテナンスなどに要する費用を低減できるため、本開示の一態様に係るコア片は、低コストで製造できる。
【0017】
従来のコア片の圧粉成形体は、金型のダイの型孔に充填された原料粉末を上パンチと下パンチとで加圧成形することで製造される。加圧方向は、コア片におけるステータコアの軸方向に沿った方向、即ち、第一部材と第二部材の並列方向である。圧粉成形体のうち、ステータコアの軸方向の第一の端部側の面及び第二の端部側の面が、下パンチの上端面及び上パンチの下端面によって形成される。圧粉成形体のうち、ステータコアの周方向の第一方向側の面及び第二方向側の面が、下パンチの内周面によって形成される。圧粉成形体のうち、ステータコアの外周側の面及び内周側の面が、ダイの型孔の内周面で形成される。即ち、第一部材の上記軸方向の第一端面と第二部材の上記軸方向の第一端面とが下パンチの上端面で形成される。第二部材の上記軸方向の第二端面が上パンチの下端面で形成される。第一部材の上記周方向の第一方向側の面及び第二方向側の面が下パンチの内周面で形成される。第一部材及び第二部材の外周側の面及び内周側の面がダイの型孔の内周面で形成される。圧粉成形体の金型からの抜き方向は、加圧方向と同様の方向であり、コア片におけるステータコアの軸方向に沿った方向、即ち、第一部材と第二部材の並列方向である。
【0018】
本開示の一態様に係るコア片は、従来のコア片の加圧方向及び抜き方向と同じ方向に沿った製造方法では製造できない。その理由は、第二部材と第三部材の各々が突出部を有するため、突出部がダイの型孔の内周面に引っ掛かることでコア片が金型から抜けないからである。
【0019】
本開示の一態様に係るコア片は、詳しくは後述するものの、加圧方向及び抜き方向をステータコアの径方向に沿った方向とすることで製造できる。コア片のうち、ステータコアの外周側の面及び内周側の面が上パンチの下端面及び下パンチの上端面で形成される。コア片のうち、ステータコアの周方向の第一方向側の面及び第二方向側の面と、ステータコアの軸方向の第一の端部側の面及び第二の端部側の面とがダイの型孔の内周面で形成される。この場合、第二部材及び第三部材の各々が突出部を有していても、突出部がダイの型孔の内周面に引っ掛からない。そのため、コア片は金型から抜き出すことができる。
【0020】
(2)上記コア片の一形態として、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々は、前記ステータコアの外周側に配置される外周面と、前記ステータコアの内周側に配置される内周面と、前記ステータコアの周方向の第一方向側に配置されて前記外周面と前記内周面とにつらなっている第一側面と、前記ステータコアの周方向の第二方向側に配置されて前記外周面と前記内周面とにつらなっている第二側面と、を有し、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々において、前記外周面における前記第一側面と前記第二側面との間の長さは、前記内周面における前記第一側面と前記第二側面との間の長さよりも長く、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々における前記第一側面及び前記第二側面の各々は、前記外周面につらなる第一平行面と、前記内周面につらなる第二平行面と、前記第一平行面と前記第二平行面とにつらなっている第一傾斜面と、を有し、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々において、前記第一側面の前記第一平行面と前記第二側面の前記第一平行面とが平行であり、前記第一側面の前記第二平行面と前記第二側面の前記第二平行面とが平行であり、前記第一側面の前記第一平行面と前記第一側面の前記第二平行面とが平行であることが挙げられる。
【0021】
上記コア片は、相対密度が高い。その理由は、次の通りである。第一平行面と第二平行面とは、詳しくは後述するように、金型のダイの型孔において、上パンチと下パンチの加圧方向に沿ったストレート部で形成できる。そのため、コア片を構成する原料粉末に圧力を十分に付加できる。
【0022】
上記コア片は、生産性に優れる。その理由は、次の通りである。第一傾斜面は、詳しくは後述するように、金型のダイの型孔において、上パンチと下パンチの加圧方向に交差するテーパー部で形成できる。ダイの型孔がストレート部を有することで、上パンチと下パンチとがテーパー部の内周面に接触することが抑制される。そのため、金型の寿命が長くなるので、一つの金型で生産できるコア片の数が多くなる。
【0023】
(3)上記(2)のコア片の一形態として、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々において、前記第一側面の前記第一平行面の延長面と前記第一傾斜面とのなす角は、5°以上20°以下であり、前記第二側面の前記第一平行面の延長面と前記第一傾斜面とのなす角は、5°以上20°以下であることが挙げられる。
【0024】
上記コア片は、第一部材における上記なす角が上記範囲を満たすことで、第一部材の周面に巻線を巻回し易く、ステータを構築し易い。上記コア片は、第二部材における上記なす角が上記範囲を満たすことで、環状に配置し易く、ステータコアを構築し易い。上記コア片は、第三部材における上記なす角が上記範囲を満たすことで、コア片内の密度のばらつきを抑制できる。
【0025】
(4)上記(2)又は上記(3)のコア片の一形態として、前記第二部材の前記突出部及び前記第三部材の前記突出部の各々は、前記周方向の第一方向側に張り出している第一突出部と、前記周方向の第二方向側に張り出している第二突出部とを有し、前記第二部材における前記第一突出部の突出量は、前記第三部材における前記第一突出部の突出量よりも大きく、前記第二部材における前記第二突出部の突出量は、前記第三部材における前記第二突出部の突出量よりも大きく、前記第二部材における前記第一突出部の前記第一傾斜面は、第一仮想面よりも外方に張り出している部分を有し、前記第二部材における前記第二突出部の前記第一傾斜面は、第二仮想面よりも外方に張り出している部分を有し、前記第一仮想面は、前記第二部材における前記第一突出部の前記第一側面において、前記第一平行面と前記第一傾斜面との接続箇所と前記第二平行面と前記内周面との接続箇所とを結ぶ平面であり、前記第二仮想面は、前記第二部材における前記第二突出部の前記第二側面において、前記第一平行面と前記第一傾斜面との接続箇所と前記第二平行面と前記内周面との接続箇所とを結ぶ平面であることが挙げられる。
【0026】
上記コア片は、磁路面積の大きなステータコアを構築し易い。その理由は、次の通りである。
【0027】
ステータコアは、複数のコア片を環状に配置して構成される。このステータコアとしては、周方向に隣り合う第一のコア片と第二のコア片とが互いに接触するように組み合わされて構成されるものがある。
【0028】
例えば、第一突出部の第一側面と第二突出部の第二側面の各々が、第一平行面と第二平行面と第一傾斜面とを有し、第一傾斜面が上記張り出し部を有さないコア片の場合は、次のようになる。そのコア片を環状に配置する際、第一のコア片の第二部材における第一突出部の第一側面と第二のコア片の第二部材における第二突出部の第二側面とを接触させようとすると、第一のコア片の第一の角部と第二のコア片の第二の角部とが接触する。第一の角部は、第二部材における第一突出部の第一側面と内周面との角部である。第二の角部は、第二部材における第二突出部の第二側面と内周面との角部である。そのため、第一のコア片の第二部材における第一突出部の第一側面と第二のコア片の第二部材における第二突出部の第二側面とを十分接触させられない。
【0029】
これに対して、上記コア片は、第一突出部の第一側面と第二突出部の第二側面の各々が、第一平行面と第二平行面と第一傾斜面とを有し、第一傾斜面が上記第一仮想面及び第二仮想線の各々よりも張り出している部分を有している。上記コア片を環状に配置する際、第一のコア片の第二部材における第一突出部の第一側面と第二のコア片の第二部材における第二突出部の第二側面とを接触させても、第一のコア片の上記第一の角部と、第二のコア片の上記第二の角部とが接触することを防止できる。よって、第一のコア片の第二部材における第一突出部の第一側面と第二のコア片の第二部材における第二突出部の第二側面とを十分に接触させられる。
【0030】
(5)上記(4)のコア片の一形態として、前記第二部材における前記第一突出部の前記第一側面は、凹部及び凸部の少なくとも一方と、段差と、第二傾斜面とからなる群より選択される一つを有し、前記第二部材における前記第二突出部の前記第二側面は、前記第一側面の前記凹部に対応する凸部及び前記第一側面の前記凸部に対応する凹部の少なくとも一方と、前記第一側面の前記段差に対応する段差と、前記第一側面の前記第二傾斜面に対応する第二傾斜面とからなる群より選択される一つを有することが挙げられる。
【0031】
上記コア片は、磁路面積の大きなステータコアを構築し易い。その理由は、次の通りである。ステータコアの周方向に隣り合う第一のコア片と第二のコア片とを、上記段差同士又は上記凹凸同士で互いに嵌め合わせたり、上記第二傾斜面同士で接触させたりすることができる。よって、第一のコア片と第二のコア片とを十分に接触させられるため、第一のコア片と第二のコア片との接触面積を大きくできる。
【0032】
(6)上記(4)又は上記(5)のコア片の一形態として、前記第三部材は、前記第二部材に向かい合う側とは反対側に配置される第一端面を有し、前記第一端面は、前記反対側に向かって凸状に設けられていることが挙げられる。
【0033】
上記コア片は、騒音や振動の小さい回転電機を構築できる。その理由は、次の通りである。回転電機は、ステータと、ロータとが向かい合って配置される。ステータは、ステータコアの各第一部材にコイルが配置されて構成される。ステータコアは、複数のコア片を環状に配置して構成される。コア片の第一端面が凸状に設けられていることで、コア片が受けるロータの磁石の磁束の急激な変化が抑制され易い。磁束の急激な変化が抑制され易いことで、コギングトルクが低減され易い。コギングトルクが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。
【0034】
(7)上記(2)から上記(6)のいずれか一つのコア片の一形態として、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々の前記外周面は、前記外周側に向かって凸となる湾曲面を有し、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々の前記内周面は、前記内周側に向かって凸となる湾曲面を有していることが挙げられる。
【0035】
上記コア片は、コア片内の密度のばらつきを抑制できる。
【0036】
(8)上記(2)から上記(7)のいずれか一つのコア片の一形態として、前記第二部材の前記突出部と前記第一部材の前記周面との第一つなぎ目と、前記第三部材の前記突出部と前記第一部材の前記周面との第二つなぎ目とが丸められていることが挙げられる。
【0037】
上記コア片は、第一つなぎ目と第二つなぎ目とが丸められていることで、各々のつなぎ目を起点に損傷し難い。
【0038】
(9)上記(8)のコア片の一形態として、前記第一つなぎ目の曲げ半径と前記第二つなぎ目の曲げ半径とが0.2mm以上4.0mm以下であることが挙げられる。
【0039】
上記コア片は、第一つなぎ目と第二つなぎ目の曲げ半径が0.2mm以上であることで、コア片の製造時に金型への負荷を低減できる。上記コア片は、第一つなぎ目と第二つなぎ目の曲げ半径が4.0mm以下であることで、ステータを構築する際、コイルを巻き易いため、コイルの巻き数を増やし易い。
【0040】
(10)上記(2)から上記(9)のいずれか一つのコア片の一形態として、前記第二部材及び前記第三部材の各々は、互いに向かい合う側とは反対側に配置される第一端面を有し、前記第二部材及び前記第三部材の各々において、前記外周面と前記第一端面との角部、及び前記内周面と前記第一端面との角部が面取りされていることが挙げられる。
【0041】
上記コア片は、上記角部が面取されていることで、上記角部が損傷し難い。
【0042】
(11)上記(2)から上記(10)のいずれか一つのコア片の一形態として、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々における前記外周面の合計面積は、前記第一部材、前記第二部材、及び前記第三部材の各々における前記内周面の合計面積に対して1倍超4倍以下であることが挙げられる。
【0043】
上記コア片は、外周面の合計面積が内周面の合計面積に対して1倍超であることで、環状に配置し易く、ステータコアを構築し易い。上記コア片は、外周面の合計面積が内周面の合計面積に対して4倍以下であることで、製造し易い。内周面の合計面積の割合が比較的多いことで、金型からコア片を抜き出す際、下パンチでコア片を押し出す面積が広い。そのため、金型からコア片を抜き出す際のコア片の損傷を抑制し易い。
【0044】
(12)上記(2)から上記(11)のいずれか一つのコア片の一形態として、前記コア片を前記第一側面の前記第二平行面に沿った仮想面と前記第二側面の前記第二平行面に沿った仮想面とで3分割した部位のうち、前記周方向の第一方向側の第一部位及び前記周方向の第二方向側の第二部位と、前記第一部位と前記第二部位との間の第三部位との相対密度の差が5.0%以下であることが挙げられる。
【0045】
上記コア片は、相対密度の差が小さいため、コア片内で磁気特性などの物理的特性が実質的に均一である。
【0046】
(13)上記コア片の一形態として、前記第一部材と前記第二部材と前記第三部材のうち、相対密度の最も大きな部材と相対密度の最も小さな部材との相対密度の差が5%以下であることが挙げられる。
【0047】
上記コア片は、相対密度の差が小さいため、コア片内で磁気特性などの物理的特性が実質的に均一である。
【0048】
(14)上記コア片の一形態として、前記圧粉成形体の相対密度が85%以上であることが挙げられる。
【0049】
上記コア片は、相対密度が85%以上であることで、高密度であるため、飽和磁束密度等の磁気特性に優れるアキシャルギャップ型の回転電機を構築できる。その上、上記コア片は、強度等の機械的特性に優れる。
【0050】
(15)上記コア片の一形態として、前記圧粉成形体は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成され、前記軟磁性粒子は、純鉄、Fe−Si系合金、Fe−Al系合金、及びFe−Si−Al系合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属からなる鉄系粒子であることが挙げられる。
【0051】
上記コア片は、高密度で寸法精度に優れる。上記材質は比較的軟質であるため、圧粉成形体の成形時に軟磁性粒子が変形し易いからである。
【0052】
(16)本開示の一態様に係るステータコアは、アキシャルギャップ型の回転電機のステータコアであって、環状に配置される複数のコア片を有し、前記複数のコア片の各々が上記(1)から上記(15)のいずれか1つのコア片である。
【0053】
上記ステータコアは、環状に配置される複数のコア片の各々が生産性に優れる上記コア片であるため、生産性に優れる。
【0054】
(17)上記ステータコアの一形態として、前記複数のコア片の各々における前記軸方向の第一の端部側の面と第二の端部側の面との間の長さのばらつきが、0.1mm以下であることが挙げられる。
【0055】
上記ステータコアは、上記長さのばらつきが非常に小さい。そのため、上記ステータコアは、騒音や振動の小さい回転電機を構築できる。その理由は、次の通りである。回転電機は、上述したように、ステータコアの各コア片の第一部材にコイルが配置されて構成されるステータと、ロータとが対向配置される。ステータコアの上記長さのばらつきが小さいことで、ステータとロータとの間隔のばらつきが小さい。上記間隔のばらつきが小さいことで、トルクリップルが小さくなる。トルクリップルが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。
【0056】
(18)本開示の一態様に係るステータは、アキシャルギャップ型の回転電機のステータであって、上記(16)又は上記(17)のステータコアと、前記ステータコアにおける前記第一部材の各々に配置されるコイルとを備える。
【0057】
上記ステータは、生産性に優れるステータコアを備えるため、生産性に優れる。
【0058】
(19)本開示の一態様に係る回転電機は、ロータとステータとを備え、前記ロータと前記ステータとが軸方向に向かい合って配置されたアキシャルギャップ型の回転電機であって、前記ステータが上記(18)のステータである。
【0059】
上記回転電機は、生産性に優れるステータを備えるため、生産性に優れる。
【0060】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0061】
《実施形態1》
〔コア〕
図1から
図6を参照して、実施形態1に係るコア片1を説明する。本形態のコア片1は、
図11を参照して後述するように、環状に配置されてステータコア7を構築する。このステータコア7は、詳細は後述するものの、
図13、
図14を参照して後述するアキシャルギャップ型の回転電機9に用いられる。本形態のコア片1は、
図1に示すように、柱状の第一部材10と板状の第二部材20と板状の第三部材30とを備えている。第一部材10は、ステータコア7の軸方向に延びる。第二部材20は、第一部材10における上記軸方向の第一の端部側に設けられている。第三部材30は、第一部材10における上記軸方向の第二の端部側に設けられている。本形態のコア片1の特徴の一つは、第二部材20と第三部材30の各々が特定の突出部21,31を有し、第一部材10と第二部材20と第三部材30とが一体成形された圧粉成形体で構成されている点にある。一体成形されたとは、ねじなどを用いた機械的な接続や接着剤などによる接着がされることなく、成形によって第一部材10と第二部材20と第三部材30とが一連に形成されていることをいう。以下、詳細に説明する。
【0062】
コア片1におけるステータコア7の径方向に沿った方向をX軸方向とする。
コア片1におけるステータコア7の軸方向に沿った方向をZ軸方向とする。
コア片1のX軸方向及びZ軸方向の両方に直交する方向をY軸方向とする。
X軸方向のうち、コア片1におけるステータコア7の内周側をX1方向、ステータコア7の外周側をX2方向とする。
Z軸方向のうち、コア片1における第一部材10に対する第二部材20側をZ1方向、第一部材10に対する第三部材30側をZ2方向とする。
Z1方向が、第一部材10の第一の端部側である。
Z2方向が、第一部材10の第二の端部側である。
Y軸方向のうち、コア片1におけるステータコア7の第一の方向側をY1方向、ステータコア7の第二の方向側をY2方向とする。
【0063】
[第一部材]
第一部材10は、Z軸方向に延びる柱状の部材である。第一部材10は、コア片1がアキシャルギャップ型の回転電機9のうちダブルステータ・シングルロータ形態のステータコア7を構築する場合、又はアキシャルギャップ型の回転電機9のうちシングルステータ・ダブルロータ形態のステータコア7を構築する場合のいずれの場合においてもティースを構成する。ダブルステータ・シングルロータ形態のアキシャルギャップ型の回転電機9は、
図13に示すように、一つのロータ90が二つのステータ8で挟まれるように組み付けられる。シングルステータ・ダブルロータ形態のアキシャルギャップ型の回転電機9は、
図14に示すように、一つのステータ8が二つのロータ90で挟まれるように組み付けられる。以下、説明の便宜上、ダブルステータ・シングルロータをDS/SRと称し、シングルステータ・ダブルロータをSS/DRと称することがある。
【0064】
第一部材10の形状は、例えば、角柱状や円柱状が挙げられる。角柱状は、Z軸方向に直交する平面で切断した断面形状が四角形の四角柱状などが挙げられる。四角柱状としては、上記断面形状が台形状である台形柱状が挙げられる。上記断面は、Z軸方向に一様であることが挙げられる。「台形状」とは、幾何学上の台形だけでなく、本例のように角部に丸みを有している形状を含めて、実質的に台形とみなされる範囲を含む。「台形状」には、等脚台形状のように両脚の長さが互いに同じ台形の他、直角台形状など両脚の長さが互いに異なる台形が含まれる。この点は、後述する第二部材20、及び第三部材30でも同様である。
【0065】
本形態の第一部材10の形状は、
図1、
図4に示すように、上記断面形状が台形状である台形柱状である。上記断面形状は、X2方向側の辺の長さが長く、X1方向側の辺の長さが短い。第一部材10の上記断面形状は、Z軸方向に一様である。第一部材10の形状が台形柱状であれば、断面積を大きく確保し易い。また、コア片1のデッドスペースを低減し易く、占積率が高いステータ8を構築し易い。
【0066】
第一部材10は、
図1、
図3に示すように、第二部材20と第三部材30とにつらなっている周面11を有している。
図1、
図3に示す第一部材10の周面11は、
図4に示すように外周面12と内周面13と第一側面14aと第二側面14bとを有している。外周面12は、X2方向側に位置している。内周面13は、X1方向側に位置している。第一側面14aと第二側面14bとは、コア片1におけるステータコア7の周方向の互いに離れる側に位置している。即ち、第一側面14aは、コア片1におけるステータコア7の周方向の第一方向側に位置している。第二側面14bは、コア片1におけるステータコア7の周方向の第二方向側に位置している。外周面12、内周面13、第一側面14a、及び第二側面14bの位置関係は、後述する第二部材20、及び第三部材30でも同様である。
【0067】
外周面12は、第一側面14aの外周側縁と第二側面14bの外周側縁とにつらなっている。内周面13は、第一側面14aの内周側縁と第二側面14bの内周側縁とにつらなっている。即ち、第一側面14aと第二側面14bとは、外周面12と内周面13とにつらなっている。
【0068】
外周面12における第一側面14aと第二側面14bとの間の長さは、内周面13における第一側面14aと第二側面14bとの間の長さよりも長い。外周面12は、本形態ではX2方向側に向かって凸となる湾曲面を有している。なお、外周面12は、平面で構成されていてもよい。内周面13は、本形態ではX1方向側に向かって凸となる湾曲面を有している。なお、内周面13は、X2方向側に向かって凸となる湾曲面を有していてもよいし、平面で構成されていてもよい。外周面12と内周面13の曲げ半径は、互いに同一であってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0069】
第一側面14aと第二側面14bの各々は、第一平行面141と第二平行面142と第一傾斜面143とを有している。第一側面14aと第二側面14bの第一平行面141同士は平行である。第一側面14aと第二側面14bの第二平行面142同士は平行である。第一側面14aの第一平行面141と第一側面14aの第二平行面142とは平行である。第一平行面141と第二平行面142とは、コア片1におけるX軸方向に平行な面である。X軸方向とは、ステータコア7の中心を通ってコア片1をステータコア7の周方向に二等分する直線に沿った方向をいう。第一平行面141は、外周面12につらなっている。第二平行面142は、内周面13につらなっている。第一傾斜面143は、第一平行面141と第二平行面142とにつらなっている。
【0070】
第一平行面141と第二平行面142のX軸方向に沿った長さは、コア片1のサイズなどによるものの、例えば、0.3mm以上25mm以下であることが好ましい。上記下限値以上であれば、
図7を参照して後述する下パンチ55とダイ50との接触に伴う金型5の損傷を抑制できる。このコア片1の製造方法は後述するものの、上記下限値以上であれば、コア片1を構成する原料粉末に圧力を十分に付加できるからである。上記上限値以下であれば、第一部材10の断面積を大きくすることができるため、アキシャルギャップ型の回転電機9におけるトルクの向上や鉄損の抑制できる。第一平行面141と第二平行面142のX軸方向に沿った長さは、更に、0.4mm以上20mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以上15mm以下であることが好ましい。第一部材10の第一側面14a及び第二側面14bの各々における第一平行面141と第二平行面142のX軸方向に沿った長さの上述した好適な範囲は、後述する第二部材20の第一側面24a及び第二側面24bの各々における第一平行面241と第二平行面242、第三部材30の第一側面34a及び第二側面34bの各々における第一平行面341と第二平行面342でも同様である。
【0071】
図4に示すように、第一傾斜面143の第一傾斜角度θ11及び第二傾斜角度θ12は、例えば、5°以上20°以下が好ましい。第一傾斜角度θ11及び第二傾斜角度θ12が5°以上20°以下であれば、第一部材10の周面11に後述する巻線を巻回し易いため、
図11に示すステータコア7を構築し易い。第一傾斜角度θ11及び第二傾斜角度θ12は、更に、5.5°以上18°以下が好ましく、特に6°以上16°以下が好ましい。第一傾斜角度θ11と第二傾斜角度θ12とは、同じ角度であることが好ましいものの、異なっていてもよい。第一傾斜角度θ1は、第一側面14aにおける第一平行面141の延長面E11と第一傾斜面143との間のなす角をいう。第二傾斜角度θ12は、第二側面14bにおける第一平行面141の延長面E12と第一傾斜面143との間のなす角をいう。
【0072】
[第二部材]
第二部材20は、
図1、
図3に示すように、第一部材10のZ軸方向の第一の端部側に設けられている板状の部材である。第二部材20は、コア片1がDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、ヨークを構成する。第二部材20は、コア片1がSS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、つば部を構成する。
【0073】
第二部材20の形状は、本形態では台形板状である。台形板状は、第二部材20をZ軸方向に直交する平面で切断した断面形状が台形状である。上記断面は、Z軸方向に一様であることが挙げられる。なお、第二部材20の形状は、コア片1がSS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、矩形板状であってもよい。
【0074】
第二部材20は、
図1から
図3に示すように、突出部21を有している。突出部21は、第一部材10の周面11よりも外方に張り出している。突出部21は、第一部材10の周面11の一部において、第一部材10の周面11よりも外方に突出していてもよいし、第一部材10の周方向の全周において、第一部材10の周面11よりも外方に突出していてもよい。突出部21は、本形態では、第一突出部211と第二突出部212とを有している。第一突出部211は、ステータコア7の周方向の第二方向側に張り出している。第二突出部212は、ステータコア7の周方向の第二方向側に張り出している。なお、突出部21は、第一突出部211及び第二突出部212を有さず、X1方向側に張り出している部分、及びX2方向側に張り出している部分を有していてもよい。突出部21は、第一突出部211及び第二突出部212に加えて、X1方向側に張り出している部分、及びX2方向側に張り出している部分を有していてもよい。この場合、突出部21は、環状に設けられる。
【0075】
第二部材20の第一突出部211及び第二突出部212の突出長さは、コア片1がDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、後述する第三部材30の第一突出部211及び第二突出部212の突出長さよりも長い。第二部材20の第一突出部211及び第二突出部212の突出長さは、コア片1がSS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、第三部材30の第一突出部211及び第二突出部212の突出長さと同じとすることが挙げられる。突出長さとは、第一部材10の周面11に対して直交する方向に沿った長さをいう。周面11が曲面を有する場合には、突出長さとは、曲面の法線方向に沿った長さをいう。
【0076】
第二部材20は、
図3,
図5に示すように、外周面22、内周面23、第一側面24a、第二側面24b、第一端面26、及び第二端面27を有している。外周面22、内周面23、第一側面24a、及び第二側面24bの位置関係は、上述の通り、第一部材10における各面の位置関係と同様である。第一端面26と第二端面27とは互いに向かい合う位置に配置されている。第一端面26は、Z1方向側に位置している。第一端面26は、第二部材20のZ1方向側に位置している。第二端面27は、Z2方向側に位置している。第二端面27は、第二部材20における第一部材10側に位置している。第一端面26及び第二端面27の位置関係は、後述する第三部材30でも同様である。
【0077】
外周面22は、第一側面24aの外周側縁と、第二側面24bの外周側縁と、第一端面26の外周側縁と、第二端面27の外周側縁とにつらなっている。第二部材20の外周面22は、第一部材10の外周面12につらなっている。内周面23は、第一側面24aの内周側縁と、第二側面24bの内周側縁と、第一端面26の内周側縁と、第二端面27の内周側縁とにつらなっている。第二部材20の内周面23は、第一部材10の内周面13につらなっている。第一側面24aと第二側面24bとは、外周面22と内周面23とにつらなっている。第一端面26は、外周面22と、第一側面24aと、第二側面24bと、内周面23とにつらなっている。第二端面27は、外周面22と、第一側面24aと、第二側面24bと、内周面23と、第一部材10の周面11とにつらなっている。
【0078】
外周面22における第一側面24aと第二側面24bとの間の長さは、内周面23における第一側面24aと第二側面24bとの間の長さよりも長い。第二部材20の外周面22における第一側面24aと第二側面24bとの間の長さは、第一部材10の外周面11における第一側面14aと第二側面14bとの間の長さよりも長い。第二部材20における内周面23における第一側面24aと第二側面24bとの間の長さは、第一部材10における内周面13における第一側面14aと第二側面14bとの間の長さと同じである。
【0079】
外周面22は、本形態ではX2方向側に向かって凸となる湾曲面を有している。なお、外周面22は、平面で構成されていてもよい。内周面23は、本形態ではX1方向側に向かって凸となる湾曲面を有している。なお、内周面23は、X2方向側に向かって凸となる湾曲面を有していてもよいし、平面で構成されていてもよい。外周面22と内周面23の曲げ半径は、互いに同一であってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0080】
第一側面24aと第二側面24bの各々は、第一平行面241と第二平行面242と第一傾斜面243とを有している。第一側面24aと第二側面24bの第一平行面241同士は平行である。第一側面24aと第二側面24bの第二平行面242同士は平行である。第一側面24aの第一平行面241と第一側面24aの第二平行面242とは平行である。第一平行面241と第二平行面242とは、コア片1のX軸方向に平行な面である。第一平行面241は、外周面22につらなっている。第二平行面242は、内周面23につらなっている。第一傾斜面243は、第一平行面241と第二平行面242とにつらなっている。
【0081】
図5に示すように、第一傾斜面243の第一傾斜角度θ21及び第二傾斜角度θ22は、例えば、5°以上20°以下が好ましい。第一傾斜角度θ21及び第二傾斜角度θ22が5°以上20°以下であれば、コア片1を環状に配置し易く、ステータコア7を構築し易い。第一傾斜角度θ21及び第二傾斜角度θ22は、更に、5.5°以上18°以下が好ましく、特に6°以上16°以下が好ましい。第一傾斜角度θ21と第二傾斜角度θ22とは、同じ角度であることが好ましいものの、異なっていてもよい。第一傾斜角度θ21は、第一側面24aにおける第一平行面241の延長面E21と第一傾斜面243との間のなす角をいう。第二傾斜角度θ22は、第二側面24bにおける第一平行面241の延長面E22と第一傾斜面243との間のなす角をいう。
【0082】
コア片1がDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、ステータコア7の周方向に隣り合う第一のコア片1と第二のコア片1とは、第一のコア片1の第二部材20における第一側面24aと第二のコア片1の第二部材20における第二側面24bとが接触する。この場合、第一側面24aにおける第一傾斜面243は、第一仮想面V21よりも外方に張り出している部分244を有していることが好ましい。第二側面24bにおける第一傾斜面243は、第二仮想面V22よりも外方に張り出している部分244を有していることが好ましい。
【0083】
第一仮想面V21は、第一突出部211の第一側面24aにおいて、第一の接続箇所と第二の接続箇所とを結ぶ平面である。第一側面24aにおける第一の接続箇所は、第一側面24aの第一平行面241と第一傾斜面243との接続箇所である。第一側面24aにおける第二の接続箇所は、第一側面24aの第二平行面242と内周面23との接続箇所である。第二仮想面V22は、第二突出部212の第二側面24bにおいて、第一の接続箇所と第二の接続箇所とを結ぶ平面である。第二側面24bにおける第一の接続箇所は、第二側面24bの第一平行面241と第一傾斜面243との接続箇所である。第二側面24bにおける第二の接続箇所は、第二側面24bの第二平行面242と内周面23との接続箇所である。第一仮想面V21及び第二仮想面V22は、
図5において、紙面斜め方向に延びる二点鎖線で示す。
【0084】
第一側面24aと第二側面24bの各々における第一傾斜面243が張り出している部分244を有していることで、ステータコア7の磁路面積が大きくなり易い。その理由は、次の通りである。例えば、第一側面24aと第二側面24bの各々が、第一平行面241と第二平行面242と第一傾斜面243とを有し、第一傾斜面243が張り出している部分244を有さないコア片の場合は、次のようになる。そのコア片を環状に配置する際、ステータコア7の周方向に隣り合う第一のコア片の第一側面24aと第二のコア片の第二側面24bとを接触させようとすると、第一のコア片の第一の角部と、第二のコア片の第二の角部とが接触する。第一の角部は、第一側面24aと内周面23との角部である。第二の角部は、第二側面24bと内周面23との角部である。そのため、第一のコア片1の第一側面24aと第二のコア片の第二側面24bとを十分接触させられない。即ち、第一のコア片1の第一側面24aと第二のコア片の第二側面24bとの接触面積が減少する。
【0085】
これに対して、上記コア片1は、第一側面24aが、第一平行面241と第二平行面242と第一傾斜面243とを有し、第一傾斜面243が第一仮想面V21よりも張り出している部分244を有している。また、上記コア片1は、第二側面24bが、第一平行面241と第二平行面242と第一傾斜面243とを有し、第一傾斜面243が第二仮想面V22よりも張り出している部分244を有している。このコア片1を環状に配置する際、第一のコア片1の第一側面24aと第二のコア片1の第二側面24bとを接触させても、第一のコア片1の上記第一の角部と、第二のコア片1の上記第二の角部とが接触することを防止できる。よって、第一のコア片1の第一側面24aと第二のコア片1の第二側面24bとを十分に接触させられる。即ち、第一のコア片1の第一側面24aと第二のコア片1の第二側面24bとの接触面積が増大する。
【0086】
コア片1がDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、上述したように、ステータコア7の周方向に隣り合う第一のコア片1と第二のコア片1とは、第一のコア片1の第二部材20における第一側面24aと第二のコア片1の第二部材20における第二側面24bとが接触する。この場合、コア片1の第一側面24aと第二側面24bの各々は、
図3に示すように、互いに嵌め合い可能な段差240を有していることが好ましい。そうすれば、ステータコア7の磁路面積が大きくなり易い。ステータコア7の周方向に隣り合う第一のコア片1と第二のコア片1とを、第一のコア片1の第二部材20における第一突出部211の第一側面24aの段差240と第二のコア片1の第二部材20における第二突出部212の第二側面24bの段差240とで互いに嵌め合わせられる。そのため、第一のコア片1と第二のコア片1とを十分に接触させられるので、ステータコア7の周方向に隣り合うコア片1同士の接触面積を大きくできる。第一側面24aの段差240は、第一端面26側に設けられている。第一側面24aの段差240は、第一端面26から第二端面27に向かうにしたがって第一部材10の第一側面14aから遠ざかるように構成されている。一方、第二側面24bの段差240は、第二端面27側に設けられている。第二側面24bの段差240は、第二端面27から第一端面26に向かうにしたがって第一部材10の第二側面14bから遠ざかるように構成されている。
【0087】
コア片1の第一側面24aは、図示を省略しているものの、段差ではなく、凹部及び凸部の少なくとも一方を有していてもよい。第二側面24bは、第一側面24aの凹部に対応する凸部及び第一側面24aの凸部に対応する凹部の少なくとも一方を有していてもよい。即ち、第一側面24aと第二側面24bとは、いずれも凹凸を有していてもよい。また、第一側面24aと第二側面24bのいずれか一方の側面は凹部のみを有し、他方の側面は凸部のみを有していてもよい。凹部と凸部の数や形状は、特に限定されない。
【0088】
コア片1の第一側面24aと第二側面24bの各々は、図示を省略しているものの、段差や凹凸ではなく、互いに接する第二傾斜面を有していてもよい。例えば、第一側面24aの第二傾斜面は、第一端面26から第二端面27に向かうにしたがって外方側に傾斜することが挙げられる。そして、第二側面24bの第二傾斜面は、第二端面27から第一端面26に向かうにしたがって外方側に傾斜することが挙げられる。
【0089】
コア片1がSS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、コア片1同士を接触させることなく環状に配置する。この場合、第一側面24aと第二側面24bの各々は、互いに嵌め合い可能な段差240、凹部、凸部、及び第二傾斜面のいずれもなくてもよい。
【0090】
第一側面24aと第一端面26との角部、第一側面24aと第二端面27との角部は、丸められている。第二側面24bと第一端面26との角部、第二側面24bと第二端面27との角部は、丸められている。
【0091】
第一端面26は、コア片1がDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、平面で構成することが挙げられる。第一端面26は、コア片1がSS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、平面で構成してもよいし、Z1方向側に向かって凸状に構成されていてもよい。このようなコア片1は、騒音や振動の小さいアキシャルギャップ型の回転電機9を構築できる。その理由は、次の通りである。SS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9は、
図14に示すように、ステータ8とロータ90とが向かい合って配置される。ステータ8は、
図12に示すように、ステータコア7とコイル80とを備えている。ステータコア7は、
図11、
図12に示すように、複数のコア片1を環状に配置して構成される。コイル80は、
図12に示すように、各コア片1の第一部材10に配置される。コア片1の第二部材20の第一端面26が凸状に設けられていれば、
図14に示すアキシャルギャップ型の回転電機9において、コア片1が受けるロータ90の磁石95の磁束の急激な変化が抑制され易い。そのため、コギングトルクが低減され易い。コギングトルクが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。
【0092】
第一端面26と内周面23との角部28と第一端面26と外周面22との角部とは、面取りされていることが好ましい。これらの角部は、面取りされていることで損傷し難い。これらの面取りは、C面取でもR面取でもよい。
【0093】
[第三部材]
第三部材30は、
図1、
図3に示すように、第一部材10のZ軸方向の第二の端部側に設けられている板状の部材である。第三部材30は、コア片1がDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合とSS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合のいずれの場合であっても、つば部を構成する。
【0094】
第三部材30の形状は、本形態では台形板状である。台形板状は、第三部材30をZ軸方向に直交する平面で切断した断面形状が台形状である。上記断面は、Z軸方向に一様であることが挙げられる。なお、第三部材30の形状は、矩形板状であってもよい。例えば、コア片1は、第一部材10が台形柱状で、第二部材20と第三部材30の少なくとも一方が矩形板状であってもよい。
【0095】
第三部材30は、
図1から
図3に示すように、突出部31を有している。突出部31は、第一部材10の周面11よりも外方に張り出している。突出部31は、第一部材10の周面11の一部において、第一部材10の周面11よりも外方に突出していてもよいし、第一部材10の周方向の全周において、第一部材10の周面11よりも外方に突出していてもよい。突出部31は、本形態では、第一突出部311と第二突出部312とを有している。第一突出部311は、ステータコア7の周方向の第一方向側に張り出している。第二突出部312は、ステータコア7の周方向の第二方向側に張り出している。なお、突出部31は、第一突出部311及び第二突出部312を有さず、X1方向側に張り出している部分、及びX2方向側に張り出している部分の少なくとも一方を有していてもよい。突出部31は、第一突出部311及び第二突出部312に加えて、X1方向側に張り出している部分、及びX2方向側に張り出している部分を有していてもよい。この場合、突出部31は、環状に設けられる。
【0096】
第三部材30の第一突出部311及び第二突出部312の突出長さは、上述したように、コア片1がDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、第二部材20の第一突出部311及び第二突出部312の突出長さよりも短い。第三部材30の第一突出部311及び第二突出部312の突出長さは、上述したように、コア片1がSS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合、第二部材20の第一突出部211及び第二突出部212の突出長さと同じとすることが挙げられる。
【0097】
第三部材30は、
図6に示すように、外周面32、内周面33、第一側面34a、第二側面34b、第一端面36、及び第二端面37を有している。外周面32、内周面33、第一側面34a、及び第二側面34bの位置関係は、上述の通り、第一部材10における各面の位置関係と同様である。第一端面36及び第二端面37の位置関係は、上述の通り、第二部材20における各面の位置関係と同様である。
【0098】
外周面32は、第一側面34aの外周側縁と、第二側面34bの外周側縁と、第一端面36の外周側縁と、第二端面37の外周側縁とにつらなっている。第三部材30の外周面32は、第一部材10の外周面12につらなっている。内周面33は、第一側面34aの内周側縁と、第二側面34bの内周側縁と、第一端面36の内周側縁と、第二端面37の内周縁側とにつらなっている。第三部材30の内周面33は、第一部材10の内周面13につらなっている。第一側面34aと第二側面34bとは、外周面32と内周面33とにつらなっている。第一端面36は、外周面32と、第一側面34aと、第二側面34bと、内周面33とにつらなっている。第二端面37は、外周面32と、第一側面34aと、第二側面34bと、内周面33と、第一部材10の周面11とにつらなっている。
【0099】
外周面32における第一側面34aと第二側面34bとの間の長さは、内周面33における第一側面34aと第二側面34bとの間の長さよりも長い。第三部材30の外周面32における第一側面34aと第二側面34bとの間の長さは、第一部材10の外周面12における第一側面14aと第二側面14bとの間の長さよりも長い。第三部材30の外周面32における第一側面34aと第二側面34bとの間の長さは、第二部材20の外周面22における第一側面24aと第二側面24bとの間の長さよりも短い。第三部材30の内周面33における第一側面34aと第二側面34bとの間の長さは、第一部材10の内周面13における第一側面14aと第二側面14bとの間の長さと同じである。即ち、第一部材10の内周面13における第一側面14aと第二側面14bとの間の長さ、第二部材20の内周面23における第一側面24aと第二側面24bとの間の長さ、及び第三部材30の内周面33における第一側面34aと第二側面34bとの間の長さは互いに同一である。
【0100】
外周面32は、本形態ではX2方向側に向かって凸となる湾曲面を有している。なお、外周面32は、平面で構成されていてもよい。内周面33は、本形態ではX1方向側に向かって凸となる湾曲面を有している。なお、内周面33は、X2方向側に向かって凸となる湾曲面を有していてもよいし、平面で構成されていてもよい。外周面32と内周面33の曲げ半径は、互いに同一であってもよいし互いに異なっていてもよい。
【0101】
外周面12と外周面22と外周面32のうち、少なくとも2つの外周面の曲げ半径は同一であってもよい。勿論、外周面12と外周面22と外周面32の曲げ半径が全て同一であってもよい。外周面12と外周面22と外周面32の曲げ半径は、全て異なっていてもよい。内周面13と内周面23と内周面33のうち、少なくとも2つの内周面の曲げ半径は同一であってもよい。勿論、内周面13と内周面23と内周面33の曲げ半径が全て同一であってもよい。内周面13と内周面23と内周面33の曲げ半径は、全て異なっていてもよい。
【0102】
第一側面34aと第二側面34bの各々は、第一平行面341と第二平行面342と第一傾斜面343とを有している。第一側面34aと第二側面34bの第一平行面341同士は平行である。第一側面34aと第二側面34bの第二平行面342同士は平行である。第一側面34aの第一平行面341と第一側面34aの第二平行面342とは平行である。第一平行面341と第二平行面342とは、コア片1のX軸方向に平行な面である。第一平行面341は、外周面32につらなっている。第二平行面342は、内周面33につらなっている。第一傾斜面343は、第一平行面341と第二平行面342とにつらなっている。
【0103】
図6に示すように、第一傾斜面343の第一傾斜角度θ31及び第二傾斜角度θ32は、例えば、5°以上20°以下が好ましい。第一傾斜角度θ31及び第二傾斜角度θ32が5°以上20°以下であれば、コア片1の密度のばらつきを抑制できる。第一傾斜角度θ31及び第二傾斜角度θ32は、更に、5.5°以上18°以下が好ましく、特に6°以上16°以下が好ましい。第一傾斜角度θ31と第二傾斜角度θ32とは、同じ角度であることが好ましいものの、異なっていてもよい。第一傾斜角度θ31は、第一側面34aにおける第一平行面341の延長面E31と第一傾斜面343との間のなす角をいう。第二傾斜角度θ32は、第二側面34bにおける第一平行面341の延長面E32と第一傾斜面343との間のなす角をいう。
【0104】
第一傾斜角度θ11と第一傾斜角度θ21と第一傾斜角度θ31のうち、少なくとも2つの傾斜角度は同一であってもよい。第二傾斜角度θ12と第二傾斜角度θ22と第二傾斜角度θ32のうち、少なくとも2つの傾斜角度は同一であってもよい。勿論、第一傾斜角度θ11と第一傾斜角度θ21と第一傾斜角度θ31が全て同一であってもよい。第二傾斜角度θ12と第二傾斜角度θ22と第二傾斜角度θ32が全て同一であってもよい。なお、第一傾斜角度θ11と第一傾斜角度θ21と第一傾斜角度θ31は、全て異なっていてもよい。第二傾斜角度θ12と第二傾斜角度θ22と第二傾斜角度θ32は、全て異なっていてもよい。
【0105】
第一側面34aと第一端面36との角部、第一側面34aと第二端面37との角部は、丸められている。第二側面34bと第一端面36との角部、第二側面34bと第二端面37との角部は、丸められている。
【0106】
第一端面36は、コア片1がDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合とSS/DR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に備わるステータコア7を構築する場合のいずれの場合であっても、
図3の実線で示すように平面で構成してもよいし、
図3の二点鎖線で示すようにZ2方向側に向かって凸状に構成されていてもよい。第一端面36が凸状に構成されていれば、騒音や振動の小さいアキシャルギャップ型の回転電機9を構築できる。その理由は、次の通りである。アキシャルギャップ型の回転電機9は、
図13又は
図14に示すように、ステータ8とロータ90とが向かい合って配置されている。ステータ8は、
図12に示すように、ステータコア7とコイル80とを備えている。ステータコア7は、
図11、
図12に示すように、複数のコア片1を環状に配置して構成される。コイル80は、
図12に示すように、各コア片1の第一部材10に配置される。
図3の二点鎖線で示すようにコア片1の第三部材30の第一端面36が凸状に設けられていることで、
図13,
図14に示すアキシャルギャップ型の回転電機9において、コア片1が受けるロータ90の磁石95の磁束の急激な変化が抑制され易い。そのため、コギングトルクが低減され易い。コギングトルクが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。
【0107】
第一端面36と内周面33との角部38と第一端面36と外周面32との角部とは、面取りされていることが好ましい。これらの角部は、面取りされていることで損傷し難い。これらの面取りは、C面取でもR面取でもよい。
【0108】
[つなぎ目]
第二部材20の突出部21と第一部材10の周面11との第一つなぎ目と、第三部材30の突出部31と第一部材10の周面11との第二つなぎ目とは、
図3に示すように、丸められている。本形態では、第一つなぎ目は、第二部材20の第一突出部211と第一部材10の周面11とのつなぎ目と、第二部材20の第二突出部212と第一部材10の周面11とのつなぎ目とを有している。これらのつなぎ目が丸められている。第二つなぎ目は、第三部材30の第一突出部311と第一部材10の周面11とのつなぎ目と、第三部材30の第二突出部312と第一部材10の周面11とのつなぎ目とを有している。これらのつなぎ目が丸められている。各つなぎ目が丸められた形状であることで、上記つなぎ目を起点にコア片1が損傷し難い。
【0109】
第一つなぎ目の曲げ半径と第二つなぎ目の曲げ半径は、0.2mm以上4.0mm以下が好ましい。第一つなぎ目と第二つなぎ目の曲げ半径が0.2mm以上であることで、コア片1の製造時に金型への負荷が少ない。第一つなぎ目と第二つなぎ目の曲げ半径が4.0mm以下であることで、
図12を参照して後述するステータ8を構築する際、コイル80を巻き易いため、コイル80の巻き数を増やし易い。第一つなぎ目の曲げ半径と第二つなぎ目の曲げ半径は、更に0.3mm以上3.0mm以下が好ましく、特に0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。第一つなぎ目の曲げ半径と第二つなぎ目の曲げ半径とは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0110】
[面積比]
第一部材10、第二部材20、及び第三部材30の各々における外周面12,22,32の合計面積は、第一部材10、第二部材20、及び第三部材30の各々における内周面13,23,33の合計面積に対して1倍超4倍以下であることが好ましい。外周面12,22,32の合計面積が内周面13,23,33の合計面積に対して1倍超のコア片1は、環状に配置し易く、ステータコア7を構築し易い。外周面12,22,32の合計面積が内周面13,23,33の合計面積に対して4倍以下のコア片1は、製造し易い。内周面13,23,33の合計面積の割合が比較的多いことで、金型5からコア片1を抜き出す際、下パンチ55で押し出す面積が広い。そのため、金型5からコア片1を抜き出す際のコア片1の損傷を抑制し易い。外周面12,22,32の合計面積は、内周面13,23,33の合計面積に対して更に1.2倍以上3.8倍以下が好ましく、特に1.5倍以上3.5倍以下が好ましい。
【0111】
[材質]
圧粉成形体は、複数の軟磁性粒子を有している。圧粉成形体は、軟磁性粒子の集合体で構成されている。圧粉成形体は、複数の軟磁性粒子を有する軟磁性粉末を圧縮成形したものである。軟磁性粒子は、純鉄又は鉄基合金からなる複数の鉄系粒子を有している。純鉄は、Fe(鉄)の純度が99質量%以上のものをいう。鉄基合金は、Si(シリコン)及びAl(アルミニウム)の少なくとも一方の元素を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる。鉄基合金は、Fe−Si系合金、Fe−Al系合金、及びFe−Si−Al系合金からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。Fe−Si系合金としては、例えば、ケイ素鋼が挙げられる。Fe−Si−Al系合金としては、例えば、センダストが挙げられる。上記材質は比較的軟質であるため、圧粉成形体の成形時に軟磁性粒子が変形し易い。そのため、コア片1が高密度で寸法精度に優れる。圧粉成形体は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成されていることが好ましい。即ち、圧粉成形体は、複数の被覆軟磁性粒子を有する被覆軟磁性粉末を圧縮成形したものであることが好ましい。絶縁被覆が形成されていれば、絶縁被覆により粒子間の電気的絶縁を確保し易い。そのため、渦電流損に起因する圧粉成形体の鉄損を低減できる。軟磁性粒子は上述の通りである。絶縁被覆としては、例えば、リン酸塩被覆やシリカ被覆などが挙げられる。
【0112】
[相対密度]
圧粉成形体の相対密度は85%以上が好ましい。相対密度が85%以上の圧粉成形体は、飽和磁束密度等の磁気特性、及び強度等の機械的特性に優れる。圧粉成形体の相対密度は、更に90%以上が好ましく、特に93%以上が好ましい。圧粉成形体の相対密度は、100%未満が挙げられる。「相対密度」は、圧粉成形体を構成する軟磁性粒子の真密度に対する、実際の圧粉成形体の密度の比率(%)をいう。
【0113】
[相対密度の差]
コア片1における第一部位、第二部位、及び第三部位のうち、第一部位及び第二部位と第三部位との相対密度の差は、5.0%以下であることが好ましい。このコア片1は、相対密度の差が小さいため、コア片1内で磁気特性などの物理的特性が実質的に均一である。第一部位及び第二部位と第三部位との相対密度の差は、小さいほど好ましい。第一部位及び第二部位と第三部位との相対密度の差は、更に4.0%以下が好ましく、特に3.0%以下が好ましい。ここでは、
図2に示すように、第一側面の第二平行面に沿った仮想面Vaと第二側面の第二平行面に沿った仮想面Vbとでコア片1を3分割した部位のうち、周方向の第一方向側の部位を第一部位、周方向の第二方向側の部位を第二部位、第一部位と第二部位との間の部位を第三部位とする。
【0114】
第一部材10と第二部材20と第三部材30のうち、相対密度の最も大きな部材と相対密度の最も小さな部材との相対密度の差が5.0%以下であることが好ましい。このコア片1は、上記相対密度の差が小さいため、コア片1内で磁気特性などの物理的特性が実質的に均一である。上記相対密度の最も大きな部材と上記相対密度の最も小さな部材との相対密度の差は、小さいほど好ましい。上記相対密度の最も大きな部材と上記相対密度の最も小さな部材との相対密度の差は、更に4.0%以下が好ましく、特に3.0%以下が好ましい。
【0115】
第一部位及び第二部位と第三部位との相対密度の差が5.0%以下であり、かつ上記相対密度の最も大きな部材と上記相対密度の最も小さな部材との相対密度の差が5.0%以下であることが好ましい。
【0116】
〔製造方法〕
実施形態1に係るコア片1は、充填工程と成形工程とを備えるコア片の製造方法により製造できる。充填工程は、原料粉末を金型5のキャビティに充填する。成形工程は、キャビティ内の原料粉末を圧縮成形する。まず、
図7から
図10を参照して、金型5を説明し、その後、各工程を説明する。
【0117】
[金型]
金型5は、ダイ50と上パンチ54と下パンチ55とを備えている。原料粉末が充填されるキャビティは、ダイ50と下パンチ55とで構成される。
【0118】
(ダイ)
ダイ50は、型孔50hを有している。型孔50hは、上パンチ54と下パンチ55とが向かい合うように配置される。型孔50hの内周形状は、コア片1の形状に対応した形状である。上パンチ54は、ダイ50に対して上下方向に独立して駆動可能である。下パンチ55は、ダイ50に対して上下方向に独立して駆動可能である。
【0119】
型孔50hは、
図7、
図8に示す第一孔部51と、
図7、
図9に示す第二孔部52と、
図7、
図10に示す第三孔部53とを有している。
図7は、ダイ50の型孔50hにおける上パンチ54側の開口縁を示す。
図7は、説明の便宜上、ダイ50にハッチングを付している。
図8から
図10は、キャビティ内に充填された原料粉末を上パンチ54と下パンチ55とで加圧成形した状態を示す断面図である。
図8の断面図の切断位置は、
図7のVIII−VIII切断線で示す位置に相当する。
図9の断面図の切断位置は、
図7のIX−IX切断線で示す位置に相当する。
図10の断面図の切断位置は、
図7のX−X切断線で示す位置に相当する。
【0120】
第一孔部51は、第一部材10の第一側面14a及び第二側面14bを形成する内周面を有している。第二孔部52は、第二部材20の第一側面24a、第二側面24b、第一端面26、及び第二端面27を形成する内周面を有している。第三孔部53は、第三部材30の第一側面34a、第二側面34b、第一端面36、及び第二端面37を形成する内周面を有している。第一孔部51と第二孔部52と第三孔部53とは、上パンチ54と下パンチ55の向かい合う方向と直交する方向に一連に形成されている。具体的には、第一孔部51の上記直交する方向の第一の端部側に第二孔部52が連通している。また、第一孔部51の上記直交する方向の第二の端部側に第三孔部53が連通している。
【0121】
第一孔部51は、第一ストレート部511と、第二ストレート部512と、テーパー部513とを備えている。第一ストレート部511とテーパー部513と第二ストレート部512とは、上パンチ54側から下パンチ55側に向かって順に一連に形成されている。同様に、第二孔部52は、第一ストレート部521と、第二ストレート部522と、テーパー部523とを備えている。第一ストレート部521とテーパー部523と第二ストレート部522とは、上パンチ54側から下パンチ55側に向かって順に一連に形成されている。同様に、第三孔部53は、第一ストレート部531と、第二ストレート部532と、テーパー部533とを備えている。第一ストレート部531とテーパー部533と第二ストレート部532とは、上パンチ54側から下パンチ55側に向かって順に一連に形成されている。第一ストレート部511,521,531は、コア片1の外周面側の部分を形成する。第二ストレート部512,522,532は、コア片1の内周面側の部分を形成する。テーパー部513,523,533は、コア片1の外周面側と内周面側との間の部分を形成する。
【0122】
(上パンチ)
上パンチ54は、
図8に示す第一上パンチ部541と、
図9に示す第二上パンチ部542と、
図10に示す第三上パンチ部543とを有する。第一上パンチ部541は、第一下端面541eを有している。第一下端面541eは、第一部材10の外周面12を形成する。第二上パンチ部542は、第二下端面542eを有している。第二下端面542eは、第二部材20の外周面22を形成する。第三上パンチ部543は、第三下端面543eを有している。第三下端面543eは、第三部材30の外周面32を形成する。第一上パンチ部541と第二上パンチ部542と第三上パンチ部543とは、一連に形成されていてもよいし、独立して昇降可能なように互いに独立して形成されていてもよい。第一上パンチ部541と第二上パンチ部542と第三上パンチ部543とが一連に形成されている場合、第一下端面541eと第二下端面542eと第三下端面543eとは一連に形成されている。第一下端面541eの形状は、第一部材10の外周面12の形状に対応した形状である。第二下端面542eの形状は、第二部材20の外周面22の形状に対応した形状である。第三下端面543eの形状は、第三部材30の外周面32の形状に対応した形状である。
【0123】
(下パンチ)
下パンチ55は、
図8に示す第一下パンチ部551と、
図9に示す第二下パンチ部552と、
図10に示す第三下パンチ部553とを有している。第一下パンチ部551は、第一上端面551eを有している。第一上端面551eは、第一部材10の内周面13を形成する。第二下パンチ部552は、第二上端面552eを有している。第二上端面552eは、第二部材20の内周面23を形成する。第三下パンチ部553は、第三上端面553eを有している。第三上端面553eは、第三部材30の内周面33を形成する。第一下パンチ部551と第二下パンチ部552と第三下パンチ部553とは、一連に形成されていてもよいし、独立して昇降可能なように互いに独立して形成されていてもよい。第一下パンチ部551と第二下パンチ部552と第三下パンチ部553とが一連に形成されている場合、第一上端面551eと第二上端面552eと第三上端面553eとは一連に形成されている。第一上端面551eの形状は、第一部材10の内周面13の形状に対応した形状である。第二上端面552eの形状は、第二部材20の内周面23の形状に対応した形状である。第三上端面553eの形状は、第三部材30の内周面33の形状に対応した形状である。
【0124】
[充填工程]
ダイ50と下パンチ55とで形成されるキャビティ内に原料粉末を充填する。原料粉末には、上述した軟磁性粉末や被覆軟磁性粉末が利用できる。原料粉末は、軟磁性粉末や被覆軟磁性粉末に加えて、バインダや潤滑剤を含んでもよい。ダイ50の型孔50hの内周面には潤滑剤を塗布してもよい。
【0125】
[成形工程]
キャビティ内の原料粉末を上パンチ54及び下パンチ55で圧縮成形する。原料粉末を圧縮する方向は、ステータコア7の径方向に沿った方向である。圧縮成形時の圧力が高いほど、相対密度の高いコア片1が製造される。上記圧力は、例えば、700MPa以上が挙げられ、更に980MPa以上が挙げられる。
【0126】
[その他の工程]
成形工程後、必要に応じて熱処理を施してもよい。例えば、熱処理によって、歪みを除去することで、低損失なコア片1を製造できる。又は、例えば、熱処理によって、バインダや潤滑剤を除去してもよい。原料粉末が上述の被覆軟磁性粒子を含む場合、熱処理温度は、絶縁被覆の分解温度以下が好ましい。
【0127】
〔作用効果〕
本形態のコア片1は、第一部材10と第二部材20と第三部材30とが一体成形された圧粉成形体で構成されていることで、生産性に優れる。
【0128】
《実施形態2》
〔ステータコア〕
図11を参照して、実施形態2に係るステータコア7を説明する。本形態のステータコア7は、環状に配置される複数のコア片1を有している。複数のコア片1の各々は、実施形態1に係るコア片1である。複数のコア片1は、周方向に隣り合うコア片1のうち、第一のコア片1の第二部材20における第一側面24aの段差240と第二のコア片1の第二部材20における第二側面24bの段差240とが互いに嵌め合うように環状に組み合わされている。このステータコア7は、
図13に示すDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に用いられる。
【0129】
複数のコア片1の各々におけるZ軸方向の第一の端部側の面と第二の端部側の面との間の長さのばらつきが、0.1mm以下であることが好ましい。Z軸方向の第一の端部側の面と第二の端部側の面との間の長さとは、第二部材20の第一端面26と第三部材30の第一端面36との間の長さの最大長さである。
【0130】
複数のコア片1の各々における第二部材20の第一端面26と第三部材30の第一端面36との間の長さのばらつきが、0.1mm以下であれば、上記長さのばらつきが非常に小さい。そのため、ステータコア7は、騒音や振動の小さいアキシャルギャップ型の回転電機9を構築できる。その理由は、次の通りである。アキシャルギャップ型の回転電機9は、
図13に示すようにステータ8とロータ90とが向かい合うように配置されている。ステータコア7の上記長さのばらつきが小さいことで、ステータ8とロータ90との間隔のばらつきが小さい。上記間隔のばらつきが小さいことで、トルクリップルが小さくなる。トルクリップルが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。上記長さのばらつきは、次のようにして求める。各コア片1において、第二部材20の第一端面26から第三部材30の第一端面36までの長さを測定する。この長さは、コア片1のZ軸方向に沿った最大長さとする。複数のコア片1の各々における上記長さの最大値と最小値との差を算出する。この差を上記長さのばらつきとする。複数のコア片1の各々における第二部材20の第一端面26と第三部材30の第一端面36との間の長さのばらつきは、更に、0.05mm以下が好ましく、特に0.01mm以下が好ましい。
【0131】
〔作用効果〕
本形態のステータコア7は、ステータコア7を構成する複数のコア片1が生産性に優れる実施形態1のコア片1で構成されているため、生産性に優れる。
【0132】
《実施形態3》
〔ステータ〕
図12を参照して、実施形態3に係るステータ8を説明する。本形態のステータ8は、ステータコア7とコイル80とを備える。ステータコア7は、実施形態2に係るステータコア7が利用できる。コイル80は、ステータコア7の各コア片1における第一部材10に巻回される。このステータ8は、
図13に示すDS/SR形態のアキシャルギャップ型の回転電機9に用いられる。
【0133】
各コイル80は、巻線を巻回してなる筒状部を備えている。巻線は、被覆丸線を用いている。被覆丸線は、丸線の導体と、導体の外周に設けられる縁被覆とを備えている。なお、
図12では、各コイル80の筒状部のみを簡略化して示し、巻線の両端部は図示を省略している。ステータコア7は、各コア片1の第一部材10の外側に巻線を巻きつけることで作製できる。
【0134】
〔作用効果〕
実施形態3に係るステータ8は、生産性に優れる実施形態2のステータコア7を備えているため、生産性に優れる。
【0135】
《実施形態4》
〔回転電機〕
図13を参照して、実施形態4に係る回転電機9を説明する。
図13は、回転電機9の回転軸91に平行な平面であり、かつコア片1の周方向の中心を通る平面で切断した断面図である。この点は、後述する実施形態5で参照する
図14でも同様である。本形態の回転電機9は、アキシャルギャップ型の回転電機である。本形態の回転電機9は、一つのロータ90と二つのステータ8とを備えているDS/SR形態である。即ち、回転電機9は、ロータ90とステータ8とが軸方向に向かい合って配置されている。一つのロータ90が二つのステータ8で挟まれるように組み付けられている。各ステータ8には、上述の実施形態3に係るステータ8が利用できる。回転電機9は、モータ又は発電機に利用できる。回転電機9は、ケース92を備えている。
【0136】
ケース92は、ステータ8及びロータ90を収納する円柱状の内部空間を有している。ケース92は、円筒部921と二つのプレート922とを備えている。円筒部921は、ステータ8及びロータ90の外周を囲んでいる。円筒部921の両端にそれぞれプレート922が配置されている。二つのプレート922は、ステータ8及びロータ90を軸方向両側から挟むように円筒部921の両端面に固定されている。両プレート922は、その中心部に貫通孔を備えている。貫通孔には軸受け93が設けられている。この軸受け93を介して回転軸91が貫通孔に挿通されている。回転軸91は、ケース92内を貫通している。
【0137】
ロータ90は、磁石95とロータ本体とを備えている。ロータ90は、本形態では平板状の部材である。磁石95の数は、本形態のように複数でもよいし、本形態とは異なり1枚でもよい。磁石95の数が複数である場合、具体的な磁石95の数はコア片1の数と同数とすることが挙げられる。複数の磁石95は、ロータ本体の周方向に等間隔に配置されている。各磁石95は、本形態では、各コア片1における第三部材30の第一端面36の平面形状に対応した平面形状を有している平板状である。なお、各磁石95は、各ステータ8側に向かって凸状面を有する凸レンズ状であってもよい。磁石95の数が1枚である場合、磁石95の形状は円環状である。1枚の磁石95は、S極とN極とが周方向に交互に配置されている。ロータ本体は、複数の磁石95を支持している。ロータ本体は、円環状の部材である。ロータ本体は、回転軸91によって回転可能に支持されている。各磁石95は、ロータ本体の周方向に等間隔に配置されている。各磁石95は、回転軸91の軸方向に着磁される。ロータ本体の周方向に隣り合う磁石95の磁化方向は互いに逆である。ステータ8で発生される回転磁界によって磁石95が各コア片1と吸引と反発を繰り返すことでロータ90が回転する。
【0138】
ステータ8は、各コア片1における第三部材30の第一端面36がロータ90の磁石95に向かい合うように配置されている。ロータ90が回転すると、各コア片1における第三部材30の第一端面36は、回転する磁石95からの磁束を受ける。
図3に示すように各コア片1における第三部材30の第一端面36が上述したように凸状に構成されていれば、回転電機9の騒音や振動を低減できる。その理由は、次の通りである。各コア片1の第三部材30の第一端面36が凸状に設けられていることで、各コア片1が受けるロータ90の磁石95の磁束の急激な変化が抑制され易い。そのため、コギングトルクが低減され易い。コギングトルクが小さいことで、騒音や振動が増加し難い。
【0139】
〔作用効果〕
実施形態4に係る回転電機9は、生産性に優れる実施形態3のステータ8を備えているため、生産性に優れる。
【0140】
《実施形態5》
〔回転電機〕
図14を参照して、実施形態5に係る回転電機9を説明する。本形態の回転電機9は、アキシャルギャップ型の回転電機である。本形態の回転電機9は、主に、二つのロータ90と一つのステータ8とを備えているSS/DR形態である点が、実施形態4の回転電機9と相違する。即ち、回転電機9は、ロータ90とステータ8とが軸方向に向かい合って配置されている。一つのステータ8が二つのロータ90で挟まれるように組み付けられている。以下の説明は、実施形態4との相違点を中心に行う。実施形態4と同様の構成の説明は省略する。
【0141】
各ロータ90は、ロータ本体と、複数の磁石95と、バックヨーク98とを備えている。ロータ本体と複数の磁石95とは、上述した実施形態4の通りである。バックヨーク98は、ロータ90とプレート922との間に設けられている。バックヨーク98は、平板状の部材である。バックヨーク98は、上述したコア片1と同様の圧粉成形体、又は積層鋼板で構成されている。
【0142】
ステータ8は、環状に配置される複数のコア片1と、各コア片1の第一部材10に巻回されるコイル80と、複数のコア片1を保持する支持部材とを備えている。支持部材の図示は省略する。各コア片1は、第二部材20と第三部材30の構成が互いに同一である。即ち、各コア片1は、第二部材20における第一突出部211及び第二突出部212の突出量と、第三部材30における第一突出部311及び第二突出部312の突出量とが互いに同じである。また、第二部材20における第一突出部211の第一側面24a及び第二突出部212の第二側面24bには、上述したような段差が設けられていない。コイル80は、上述した実施形態3の通りである。ホルダは、各コア片1同士の間の間隔が等間隔となるように複数のコア片1を保持している。このホルダによって、周方向に隣り合うコア片1同士が互いに接触しない。
【0143】
〔作用効果〕
実施形態5に係る回転電機9は、実施形態4の回転電機9と同様、生産性に優れるステータ8を備えているため、生産性に優れる。
【0144】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、回転電機は、一つのロータと一つのステータとを備えるものでもよい。
環状に配置されてアキシャルギャップ型の回転電機のステータコアを構築するコア片であって、前記ステータコアの軸方向に延びている柱状の第一部材と、前記第一部材における前記軸方向の第一の端部側に設けられている板状の第二部材と、前記第一部材における前記軸方向の第二の端部側に設けられている板状の第三部材と、を備え、前記第一部材は、前記第二部材と前記第三部材とにつらなっている周面を有し、前記第二部材は、前記第一部材の前記周面よりも外方に張り出している突出部を有し、前記第三部材は、前記第一部材の前記周面よりも外方に張り出している突出部を有し、前記第一部材と前記第二部材と前記第三部材とは一体成形された圧粉成形体で構成されている、コア片。