【実施例1】
【0020】
実施例1では、本発明におけるウェアラブル装置への電力供給の基本構成について説明する。ユーザが身体に装着して使用するウェアラブル装置の例として、メガネ型のヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を取り上げる。HMDは複数のバッテリーを装着しており、使用中のバッテリーの残量が不足するとHMDから取り外して充電器にて充電する。バッテリー充電中は待機している他のバッテリーに切り替えてHMDへ電力を供給するので、ユーザはHMDを継続して使用することができる。その際、HMDとバッテリー、及びバッテリーと充電器の間では、電力を無線(非接触)で伝送するとともに、バッテリーの残量や充電量等の情報を互いに通信にて伝送する構成としている。
【0021】
図1は、HMD100、バッテリー200および充電器300からなる給電システムの全体構成を示す図である。まず、基本操作を説明する。メガネ型のHMD100には、メガネの左右対称の「つる」の部分(テンプル部114)に受電部102a,102bがあり、2個のバッテリー200a,200bを装着する。バッテリー200a,200bから受電部102a,102bへは送受電コイルを介して電力を供給する。ここではバッテリーを2個装着する構成としたが、もちろん2個以上の複数個であっても良い。
【0022】
HMD100を使用することで一方のバッテリー200aの残量が不足すると、HMD100のディスプレイ119に残量不足の警告を表示する。ユーザは受電部102aからバッテリー200aを外して、充電器300の充電スロット311(この例では4個のスロット311a〜311d)に挿入する。その間HMD100は、待機している他方のバッテリー200bに切り替えて動作を継続する。
【0023】
充電器300からバッテリー200aへの充電動作も、送受電コイルを介して電力を供給する。バッテリー200aの充電が完了するとHMD100の表示部に充電完了を知らせ、ユーザはバッテリー200aを取り出してHMD100の受電部102aに装着する。このように、HMD100には複数のバッテリーを装着し、交互に切り替えて使用するので、ユーザはHMD100を継続して使用できる。ただし、HMD100に対するバッテリー200の交換作業と、充電器300への挿入作業はユーザがHMD100を装着した状態で行うため、以下の工夫が施されている。
【0024】
HMD100にてバッテリー200を装着する受電部102aのすぐ後ろには、テンプル部の外側に向けて赤外線センサ115aが設置されている。また、反対側の受電部102bにおいても同様に赤外線センサ115bが設置されている。ユーザが受電部102aに装着されているバッテリー200aを外すときは、受電部102aの後端にある窪みに指を入れてバッテリー200aを容易に外すことができる。そのとき、受電部102aの後端近傍にある赤外線センサ115aは、バッテリー200aを外すために手を近づいたことを検知する。もしもユーザが誤って、バッテリー200a(左目側)ではなく反対側のバッテリー200b(右目側)を外そうとすると、右目側の受電部102bの近傍に設置した赤外線センサ115bがユーザの手の接近を検知し、今交換すべきバッテリーは右目側ではなく左目側のバッテリーであると警告を発することで、ユーザの誤操作を防止することができる。
【0025】
次にユーザは、取り外したバッテリー200aを、充電器300の複数の充電スロット311a〜311dのいずれかに挿入設置する。各充電スロットに対応するスロット番号部分312a〜312dは番号の形で凸構造をしており、ユーザは指で触れてスロット番号や充電器の向きを認識できる。なお、スロット番号部分312はバッテリーの充電が開始されると赤色のLEDが点灯し、充電が完了すると緑色のLEDが点灯する。充電スロット311に挿入されたバッテリー200においても同様で、充電が開始されると赤色のLED215が点灯し、充電が完了すると緑色のLED215が点灯する。
【0026】
また、メガネ型HMD100はテンプル部を広げることにより、頭部への装着および頭部からの脱着が可能である。テンプル部の表示部側の端にはひずみセンサ116a,116bが備えられており、HMD装着時の広がりをひずみセンサ116a,116bにより検知することで、頭部から脱着したことがわかる。ひずみセンサ116a,116bの検出信号に所定時間(例えば1分間)変化がなければ、HMD100は自動的にスタンバイモードになり、再び検出信号が変化すると、HMD動作を起動する。これによりHMD100の消費電力を節約できる。HMD100の正面側には、カメラ120と赤外線センサ115cが備えられている。
次に、HMD100、バッテリー200、充電器300のそれぞれの構成を説明する。
【0027】
図2は、HMD100の内部構成を示すブロック図である。HMD100は、制御部101、メモリ部105、電源管理部106、センサ部107、通信部108、データ出力部109、データ入力部110より構成される。制御部101はHMD100の全体の動作を制御する。
【0028】
メモリ部105は、HMD100の内部状態の情報やバッテリー200の蓄電状態の情報を記憶し、またHMDで表示する画像データを保存する。電源管理部106は、使用中のバッテリー200から電力を受電するための、受電部102、変換部103、制限部104を備え、HMD100内の各部に電力を供給する。受電部102は、無線で電力を受電するための受電コイルを有する。また電源管理部106は、HMD100で使用中のバッテリー200、充電器300で充電中のバッテリー200、また内蔵するバッテリーの状態を監視する。周波数カウンタ121は、使用中のバッテリー200が外れたことを検知する。これらの動作の詳細は後述する。
【0029】
センサ部107は、赤外線センサ115、ひずみセンサ116を備えているが、その他に加速度センサ、ジャイロセンサ、磁気センサ、温度センサ、静電センサ、触覚センサなど、必要に応じて備えるものとする。通信部108は、バッテリー200や充電器300と無線通信するための無線LANやBluetooth(登録商標)を備え、またGPS(Global Positioning System)による位置情報取得機能やワンセグ機能を備えていても良い。
【0030】
データ出力部109は、メガネのレンズ部の位置にユーザに提供する映像や情報を表示するディスプレイ119と、音声を出力するスピーカ(イヤホン)、発光素子などで構成される。データ入力部110は、HMD100の前方の風景を撮影するカメラ120や、音声を入力するマイク、ユーザからの操作入力部などで構成される。
【0031】
図3は、バッテリー200の内部構成を示すブロック図である。バッテリー200は、制御部204、通信部205、メモリ部206、蓄電状態認識部207、蓄電部208、表示部209より構成される。制御部204は、バッテリー200の全体の動作を制御する。
【0032】
通信部205は、HMD100や充電器300と無線通信するための無線LANやBluetooth(登録商標)を備える。メモリ部206はバッテリー200の内部状態の情報を記憶し、またHMD100で表示する画像データを保存することができる。
【0033】
蓄電状態認識部207は、当該バッテリーの残存蓄電量、あるいは充電量を検知してその情報を保持している。蓄電部208は、蓄電素子からなる蓄電池部201と、変換部202、HMD100や充電器300との間で電力を送電または受電する送受電部203を備える。送受電部203は、電力を無線で送受電するための送受電コイルを有する。表示部209は、当該バッテリーの蓄電量を色分けして表示するLED215である。
【0034】
なお、以下の説明では、バッテリー200はその使用状態(HMDで使用中、充電器で充電中)に応じて、200a〜200d(バッテリーの内部要素についても同様)と区別表記する。
【0035】
図4は、充電器300の内部構成を示すブロック図である。充電器300は、制御部301、通信部302、メモリ部303、充電中バッテリー監視部304、表示部305、給電電源部306より構成される。制御部301は、充電器300の全体の動作を制御する。
【0036】
通信部302は、HMD100やバッテリー200と無線通信するための無線LANやBluetooth(登録商標)を備える。さらに、GPSによる位置情報取得機能やワンセグ機能を備えていても良い。
【0037】
メモリ部303は充電器300の内部状態の情報やバッテリー200の蓄電状態の情報を記憶し、またHMD100で表示する画像データを保存することができる。
【0038】
充電中バッテリー監視部304は、充電中のバッテリー200の充電量の情報を取得する。表示部305は、バッテリーの充電の開始と完了を色分けして表示するLEDである。
【0039】
給電電源部306は、バッテリー200へ給電する蓄電池部307、変換部308、送電部309を備える。送電部309は、電力を無線送電するための送電コイルを有する。なお、表示部305と給電電源部306は、充電スロット311の数だけ備えている。
【0040】
ここで給電電源部306の蓄電池部307は、外部電源により充電可能である。そして、HMD100の使用状況に応じて外部電源を併用して用いる。例えば映画鑑賞のように1か所に座ってHMD100を長時間使用する場合は、給電電源部306を商用電源など外部電源に接続して利用する。一方HMD100を持ち歩く場合は、充電された蓄電池部307によりHMDのバッテリー200を充電する。
【0041】
なお、
図2〜
図4において、送電部/受電部には送電コイル/受電コイルを備え、通信部にはアンテナを備えているが、図面では簡単化のために省略している。
【0042】
図5Aと
図5Bは、HMD100、バッテリー200、充電器300の間の電力伝送を説明する図である。このうち
図5Aは、HMD100と使用中バッテリー200a,b間の、
図5Bは、充電中バッテリー200cと充電器300間の電力伝送を示す。
【0043】
図5Aにおいて、HMD100には複数(ここでは2個)のバッテリー200a,200bを装着可能であり、それぞれのバッテリー200a,200bから電力を供給できる構成となっている。バッテリーの蓄電池部201a,bから直流電流が流れ出て、変換部202a,bで例えば150kHzの交流電流に変換する。そして、送電部203a,b(送電コイル)からHMD100に対して無線により電力を送電する。
【0044】
HMD100は複数の受電部102a,b(受電コイル)を有し、それぞれバッテリー200a,200bから、例えば150kHzで無線送電された電力を受電する。変換部103a,bでは受電した交流電流を所定の直流電流に変換する。制限部104a,bは、直流電流を制御部101に供給するが、HMD100内の負荷の使用電力状況に応じて、供給する電力を制限する。そのため制御部101は、制限部104に対して負荷の使用電力状況に基づいて電力制限のための制御信号を送るが、図面では省略している。
【0045】
HMD100における複数のバッテリー200a,200bの使い方については、例えば残存蓄電量の少ない方を優先して使用するなど、制御部101の行う制御シーケンスを選択することで設定可能である。また、受電部102a,bおよび変換部103a,bを、双方向の送電および電力変換を可能にすることで、一方の受電部、例えば102aは常にバッテリー200aを装着しておき、他方の受電部102bは交換専用と設定できる。これにより、受電部102bに装着されたバッテリー200bは、HMD100の操作に必要な電力を賄うとともに、バッテリー200aに蓄電するという設定も可能になる。この場合、何らかの事情で片手が使えない場合でも、HMD100を装着したままで、単一のバッテリー容量での使用時間を超える長時間の継続使用が可能になる。
【0046】
このように、複数のバッテリーを備えることで、バッテリー交換時にはもう一方のバッテリーがHMD100の電源として働いているため、バッテリー交換時にもHMDの継続使用が可能となる。さらには、HMD100の電源管理部106の備える内蔵バッテリーも利用できる。内蔵バッテリーは装着するバッテリー200a,200bよりもバッテリー容量は小さいが、バッテリー交換時間の間は十分にHMD100を作動させるに足るバッテリー容量とすることで、バッテリー交換時にもHMDの継続使用が可能となる。但し、所定の時間バッテリー交換がなされない場合は、データ保全等のため、HMD100そのものをシャットダウンする。
【0047】
図5Bは、充電器300からバッテリー200cへの電力伝送(充電動作)を示す。充電器300の給電電源部306において、蓄電池部307から発生する直流電流は、変換部308にて交流電流に変換され、送電部309(送電コイル)から充電中のバッテリー200cに無線で送電される。充電器300から送電された電力は、バッテリー200cの蓄電部208において、受電部203c(受電コイル)にて受電し、変換部202cにて直流に変換し、蓄電池部201cに蓄電される。
【0048】
図6Aと
図6Bは、HMD100、バッテリー200、充電器300の間の通信を説明する図である。このうち
図6Aは、使用中バッテリー200a(200b)に関する通信を、
図6Bは、充電中バッテリー200cに関する通信を示す。
【0049】
図6Aにおいて、HMD100の通信部108は使用中のバッテリー200a(200b)の通信部205aと無線通信を行い、使用中のバッテリー200a,bの蓄電状態認識部207aにより得られたバッテリーの残存蓄電量の情報を、HMD100の電源管理部106が取得する。さらに、HMD100の通信部108は充電器300の通信部302と無線通信を行い、HMD100が得た使用中のバッテリー200a,bの残存蓄電量の情報を送信する。またHMD100の通信部108は、HMD100内の負荷の使用電力状況に基づき、制御部101からの送電停止などの制御命令を使用中のバッテリー200a,bに送信する。
【0050】
図6Bにおいて、充電器300の通信部302は充電中のバッテリー200cの通信部205cと無線通信を行い、バッテリー200cの蓄電状態認識部207により得られたバッテリー200cの蓄電状態の情報(充電量)を、充電器300の充電中バッテリー監視部304が取得する。さらに、HMD100の通信部108は充電器300の通信部302と無線通信を行い、充電中のバッテリー200cの蓄電状態の情報を、HMD100の電源管理部106が取得する。またHMD100の通信部108は、使用中のバッテリー200a,bの残存蓄電量やHMD100内の負荷の使用電力状況に基づき、制御部101からの充電開始/停止などの制御命令を充電器300に送信し、これに従い充電器300は充電中のバッテリー200cを制御する。
【0051】
このようにしてHMD100と充電器300は、使用中のバッテリー200a,bの残存蓄電量や充電中のバッテリー200cの蓄電状態情報を互いに通信し、それぞれのメモリ部105,303に記憶する。
【0052】
図7Aと
図7Bは、HMD100のディスプレイ119によるバッテリー状況の表示例を示す。
【0053】
図7Aは、ディスプレイ119にHMDの各種機能メニューを表示した例である。ユーザは、このメニューパレットからバッテリーに関するメニュー701を選択する。バッテリーの状況を確認するには、このメニュー701を起動するか、常に起動状態にしておく。
【0054】
図7Bは、ディスプレイ119にバッテリーの状況を表示した例である。左側ディスプレイ119aにはバッテリー交換を促す警告が、右側ディスプレイ119bには各充電スロットに入っているバッテリーの充電量の情報を表示している。バッテリーの残量が低下すると、HMD100の左目のディスプレイ119aに「左側のバッテリー残量が少なくなっています」というバッテリー交換を促す警告が自動で表示される。このときユーザの勘違いをなくすため、バッテリー残量の少なくなったバッテリーの側に表示する。これが表示されると、ユーザは左側のバッテリーを交換することになる。
【0055】
また、そのとき反対側である右目のディスプレイ119bには、各スロットの充電中のバッテリー充電量がバーで表示される。この表示例では、スロット番号2のバッテリーの充電量が最大になっていることが示され、スロット2の番号およびバーが点滅して表示される。同時に充電器300では、バッテリー充電スロット311bの番号312b(数字の2)が緑色のLEDで点滅するとともに、当該バッテリー200のLEDも緑色で点滅する。これが表示されると、ユーザは充電スロット311bで充電中のバッテリーを取り出して、HMDに装着すればよい。
【0056】
以上のように実施例1の構成によれば、ユーザはHMD100を装着したままでバッテリー交換による電力の補給ができ、HMDの使用を中断せずに継続使用が可能となる。このように、装置のバッテリーを交換する際に、その装置を使用しながらバッテリーの交換が可能である場合は、「ホットスワップ可能」と呼ばれる。また、バッテリー200からHMD100への送電と充電器300からバッテリー200への送電は、近接距離の無線電力伝送であるため、必要な電力を容易に伝送することができる。さらに、バッテリー200は金属端子が外部に露出しない構造であるので、HMDをユーザの頭部に装着して使用しても、汗による端子の腐食やバッテリー交換時の端子間短絡の懸念がなく、安全な使用が可能となる。例えば、ユーザが長時間の映画を鑑賞する場合でも、搭載するバッテリーを増加することにより装着感を損なうことなく、またウェアラブル装置の端子から外部電源に電力供給用のケーブルを接続する煩わしさもなく、使い勝手が向上する。
【0057】
ここで実施例1の変形例として、本実施例の給電システムを利用してクラウドから大容量のデータをダウンロードする構成を説明する。
【0058】
図8は、本実施例の給電システムとクラウド600とのデータ伝送を示す図である。給電システムは、HMD100、HMDで使用中(装着中)のバッテリー200a、充電器300、充電器で充電中のバッテリー200cからなる。
【0059】
HMD100とクラウド600の間のデータ伝送は、クラウド600から画像データ等をダウンロードしてHMD100で視聴する場合(符号601a)と、HMD100のデータ入力部110(カメラ120)で取得した画像データをクラウド600にアップロードする場合(符号601b)がある。いずれの場合も、HMD100とクラウド600の間で直接伝送するので、映画等の大容量のデータを伝送するためには時間がかかるとともにバッテリーの容量が不足する懸念がある。そこで本実施例の構成では、充電中のバッテリー200を介してその充電時間を利用してデータ伝送を行うようにした。
【0060】
充電器300の通信部302はクラウド600からデータをダウンロードし、充電中のバッテリー200cのメモリ206cに保存する。充電したバッテリー200cをHMD100で使う際に、使用中バッテリー200aのメモリ部206aに保存されているデータを読み出して視聴する(符号602aの経路)。また逆に、HMD100で生成したデータを、メモリ部105をバッファとして使用中バッテリー200aのメモリ部206に保存する。このバッテリーを充電器300で充電しているときに、バッテリー200cのメモリ部206cから保存したデータを読み出し、充電器300の通信部302を介してクラウド600にアップロードする(符号602bの経路)。このように、HMD100は充電中のバッテリー200のメモリ部を利用してクラウド600との間でデータ伝送を行うことで、大容量のデータを効率的に伝送することができる効果がある。
【実施例2】
【0061】
実施例2では、HMDのバッテリー交換をHMDを使用しながら行うための構成、すなわちホットスワップ機能について説明する
図9は、HMDとバッテリー間の電力伝送の制御を示す図である。HMD100には複数のバッテリー200a,200bを装着し、これらを切り替えるための構成を示す。
【0062】
HMD100において、制限部104a,104bは、それぞれのバッテリー200a,bから供給される電力ラインに、逆流防止用ダイオードD、電流検知用抵抗R、MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)M1、蓄電キャパシタCを有する。制御部101は、MOSFET(M1)をON/OFF制御することで、バッテリー200から受電した電力を遮断する。
【0063】
またHMD100の電源管理部106a,106bには、アンプと周波数カウンタ121a,bを有し、バッテリー200がHMD100から外れたことを検知する。バッテリー200が外れた場合には受電部102a,bにおける無線給電の共振周波数が変動するため、周波数カウンタ121で共振周波数を監視することで検知可能となる。
【0064】
一方バッテリー200a,200bにおいては、蓄電部208a,b内の蓄電池部201a,bと変換部202a,bの間に、MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)M2a,bを備える。制御部204a,bによりMOSFET(M2)を制御することで、蓄電池部201a,bから変換部202a,bへ流出する電流を制限する。またバッテリー200の残存蓄電量は、蓄電状態認識部207a,bにより蓄電池部201a,bの端子間電圧VBを測定することで判定する。
以下、HMDで使用中のバッテリーを交換するときの処理手順を説明する。
【0065】
図10は、使用中のバッテリーの残存蓄電量が不足し、HMDから取り外す処理を示すフローチャートである。
【0066】
使用中のバッテリー200は、蓄電状態認識部207により蓄電池部201の端子間電圧VB(残存蓄電量)を読み取り、HMD100との通信によりHMD100に伝える(S101)。HMD100は、受け取った電圧VBを予め設定した第一のしきい値Vth1と比較する(S102)。電圧VBがしきい値Vth1より大きければ、バッテリーは継続使用が可能であるので、S101に戻る。しかし、電圧VBがしきい値Vth1より小さくなった場合には、HMD100のディスプレイ119に、「バッテリー残量が少なくなっています」などの警告を表示する(S103)。具体的には、
図7Bで示したように、残存蓄電量が少なくなったバッテリー側のディスプレイ119aに表示する。
【0067】
さらにバッテリー200を使用すると、バッテリー200は、端子間電圧VBの読み取りと通信を行い(S104)、HMD100は、受け取った電圧VBを予め設定した第二のしきい値Vth2と比較する(ただしVth2<Vth1)(S105)。電圧VBがしきい値Vth2より大きい間は、バッテリーは継続使用が可能であるので、S104に戻る。しかし、電圧VBがしきい値Vth2より小さくなった場合には、バッテリーの取り外し処理を行う。
【0068】
HMD100は、制限部104のMOSFET(M1)をOFFし(S106)、バッテリー200側への逆方向電流を防止する。さらに使用中のバッテリー200に対しMOSFET(M2)をOFFするよう指示し、蓄電池部201からの電流流出を止める(S107)。この段階で、HMD100のディスプレイ119のうち残存蓄電量が少なくなったバッテリーのある側に、「バッテリーを交換してください」という警告を表示する(S108)。
【0069】
ユーザはHMD100からバッテリー200を取り外し(S109)、バッテリー200とHMD100間の通信はOFFする(S110)。
【0070】
なお、2つのしきい値Vth1、Vth2のかわりに、安全のため、例えば10%程度の電力残量の余裕を持たせた第三のしきい値Vth3を1つ設定しておき、ユーザにはバッテリー電力残量に余裕のあるうちにバッテリー交換作業に移ってもらうことも可能である。
【0071】
図11は、使用中のバッテリーの残存蓄電量が不足し、待機中のバッテリーに切り替える処理を示すフローチャートである。ここでは、左側のバッテリー200aから右側のバッテリー200bに切り替える場合を例に説明する。
【0072】
使用中のバッテリー200aの蓄電池部201aの端子間電圧VB(残存蓄電量)を読み取り、第一のしきい値Vth1、および第二のしきい値Vth2と比較する(S201からS205)までは、
図10のS101からS105と同様である。電圧VBがしきい値Vth2より小さくなった場合には(S205でYes)、バッテリー200aから200bへの切り替えを行う。
【0073】
まず、HMD100の制御部101は、使用中のバッテリー200a側の制限部104aのMOSFET(M1a)をOFFし、さらに使用中のバッテリー200aに対しMOSFET(M2a)をOFFさせて、蓄電池部201aからの電流流出を止める(S206)。次に、待機中のバッテリー200b側の制限部104bのMOSFET(M1b)をONし、さらに待機中のバッテリー200bに対しMOSFET(M2b)をONさせ、蓄電池部201bからの電流流出を開始させる(S207)。これにより、バッテリー200aから200bへの受電系統の切り替えがなされる。この切り替えの間、制限部104aのキャパシタCaに蓄えられていた電力やHMD100の内蔵バッテリーにより、HMD100の電力が賄われる。よって、バッテリーの切り替えによりHMD100の動作が中断することはない。
【0074】
その後、HMD100の左側のディスプレイ119aには、「バッテリーを交換してください」という警告を表示する(S208)。ユーザはバッテリー200aを取り外し(S209)、バッテリー200aとHMD100間の通信はOFFする(S210)。
【0075】
図12は、バッテリーがHMDから外れた際の処理を示すフローチャートである。バッテリー交換時だけでなく、何らかの原因でバッテリーが外れた場合に電力供給を遮断する処理を記述している。
【0076】
HMD100は、電源管理部106の周波数カウンタ121により受電部102(受電コイル)の共振周波数FRを監視している(S301)。使用中のバッテリー200が受電部102から外れる、あるいは所定位置からずれると、共振周波数FRが変動する。周波数カウンタ121がこの周波数の変動を検知した場合(S302でYes)、HMD100の制御部101は、制限部104のMOSFET(M1)をOFFする(S303)。また、HMD100の通信部108からバッテリー200へ通信し、バッテリー200のMOSFET(M2)をOFFし、蓄電池部201からの電流流出を止める(S304)。この段階で、HMD100のディスプレイ119のうち外れたバッテリーのある側に、「バッテリーが外れました」という警告を表示する(S305)。
【0077】
実施例2によれば、HMD100のバッテリー交換において、HMD100の動作は中断することなくユーザは継続して使用でき、ホットスワップ機能を実現できる。
【実施例3】
【0078】
実施例3では、HMD100や充電器300に装着するのに好適なバッテリー200の構造について説明する。
【0079】
図13は、バッテリー200をHMD100と充電器300に装着する動作を示す図である。HMD100において、受電部102のバッテリー装着面には複数のマグネット111a,111b,111cが取り付けてある。ここでは複数のマグネットを取り付けているが、1個でもよい。またバッテリー200には、同じ形状のフェライトが取り付けてある。これらのマグネットとフェライトは、HMD100とバッテリー200の間での送受電コイルの位置合わせと磁界漏洩低減のためである。一方、充電器300においても、同じ形状のマグネットが取り付けてあり、充電器300とバッテリー200の間での送受電コイルの位置合わせと磁界漏洩の低減を行う。
【0080】
図14は、バッテリー200内の電力系統回路の例を示す図である。バッテリー200は、蓄電池部201、変換部202、送受電部203で構成される。変換部202は直流/交流変換の双方向コンバータであり、送受電部203におけるコイル203Lは、送電と受電の双方に使用できるものとしている。以下、バッテリーの構造を詳細に説明する。
【0081】
図15は、バッテリー200の内部構造の一例を示す図で、(a)はケース214の上側の蓋を透視した図、(b)はα−α’断面図である。(b)に示すように、例えば樹脂性のケース214の中に、蓄電池部201、電子基板213、フェライト板211と、フェライト板211の上にはフェライト円柱212a,212b,212cおよびコイル203Lが実装されている。
【0082】
図16は、バッテリー200をHMD100に装着したときの状態を示す図である。(a)はHMDにバッテリーを装着した図、(b)および(c)はβ−β’断面図である。HMD100のテンプル部114は、(b)ではバッテリーのケース214の上下面を全て覆う形状であるのに対し、(c)ではケース214の下部の一部を保持する形状としている。(c)の場合でも、HMD100のマグネット111によりバッテリー200のフェライト212,211を吸引し、バッテリー200を固定することができる。
【0083】
(b)や(c)において、HMD100の受電部102には、フェライト板113の上にコイル102Lとともにマグネット111を配置している。マグネット111とバッテリー200のフェライト円柱212により、HMD100のコイル102Lとバッテリー200のコイル203Lの位置合わせを行うことができる。また電力伝送時には、コイル203Lの作る磁界はフェライト板211,113、マグネット111、フェライト円柱212を通るため、磁界漏洩を少なくすることができる。
【0084】
図17は、バッテリー200の内部構造の他の例を示す図であり、(a)はケース214の上側の蓋を透視した図、(b)はα−α’断面図である。この例では、バッテリー200のケース214内の両側に、コイル203Lとフェライト211,212をそれぞれ2組設けている。バッテリー200の装着時は、HMD100の受電部102に近い方のコイル203Lとフェライト211,212を使用することができる。よってユーザは、バッテリー200の装着側を気にしないで装着できる。
【0085】
図18は、
図17の変形例を示す図である。この例では、ケース214内の両側に配置した2組のコイル203Lの端部を接続して、1つのコイルとして構成したものである。言い換えれば、1つのコイルをほぼ真ん中で折り曲げて、ケース214内の両側に配置した構成である。この場合にも、バッテリー200の構成は対称性があるため、HMD100への装着、充電器300への設置が容易になる。
【0086】
図19は、HMD100に装着した状態のバッテリー200を充電する充電器400の構成を示す図である。充電器400の動作は実施例1の充電器300と同じであるが、本図は充電部の構造を説明するためのものであり、充電器内の電子基板等、他のものは省略している。ここでは、バッテリー200は
図17の構造とし、これを装着したHMD100を充電器400に設置した状態を示す。HMD100のテンプル部114の断面形状は、
図16(b)の場合である。(a)は上から見た図、(b)はγ−γ’断面図、(c)は一部拡大図である。
【0087】
充電器400の形状は、真ん中に盛り上がった部分401と、その両脇に盛り上がった充電部402a,402bがあり、HMD100のテンプル部114は、401と402a,bの間に収納される。拡大図(c)で示すように、充電部402aの内壁には、バッテリー充電用の送電コイル403Lとマグネット411が、フェライト板413上に配置されている。
【0088】
HMD100のテンプル部114に装着されたバッテリー200は、図面左側のコイル203Lが充電器400のコイル403Lと対向している。バッテリー200のコイル203Lは送受電共用のコイルであり、充電器400のコイル403Lからバッテリー200に充電できる。また、充電器400のマグネット411とバッテリー200のフェライト円柱212との吸引力により、充電器400のコイル403Lとバッテリー200のコイル203Lとは自動的に位置合わせがなされ、常に十分な電力伝送効率が得られる。また電力伝送時には、コイル403Lの作る磁界はフェライト板413,211、フェライト円柱212、マグネット411を通るため、磁界漏洩は少なくて済む。例えば、一晩HMD100を充電器400に設置するだけで、バッテリー200は充電される。また、
図8の構成とすれば、必要な映画等のデータをクラウド600からダウンロードできる。
【0089】
実施例3の構成によれば、HMD100と充電器300に対してバッテリー200の装着が容易であり、電力伝送効率が向上する。また、
図19の構成によれば、HMD100に装着した状態のバッテリー200に対し、簡単に充電することが可能となる。