(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本実施例におけるプロジェクタの光学系を示す構成図である。
図1において、プロジェクタの光学系1は、主として、光源装置2と、照明光学系3と、色分離光学系4と、映像表示素子6R、6G、6Bと、合成光学系である光合成プリズム7と、投射光学系である投射レンズ8とを備えている。
【0011】
図1を用いて、プロジェクタの光学系の全体の動作を説明する。光源装置2については、後述するが、光源装置2からは、青色光B(青色帯域の光、以下「B光」とも称する。)と蛍光Y(以下、黄色光「Y光」とも称する。)とが加算されたB+Y光である白色光W光束群(なお白色光Wは、以下「W光」とも称する。)が得られる。ここで、蛍光Yとは、緑色帯域の光と赤色帯域の光も含む黄色蛍光である。白色光W光束群は、照明光学系3のマルチレンズ31の複数のレンズセルにより複数の光に分割され、効率よく第2のマルチレンズ32と偏光変換素子33に導かれる。そして、偏光変換素子33により、光が所定の偏光方向に偏光される。偏光された光は、集光レンズ34により集光され、色分離光学系4に入射する。
【0012】
色分離光学系4では、まず、ダイクロイックミラー41Bに照射され、照射された白色光Wのうち、青色光B(青色帯域の光)が反射され、緑色光G(緑色帯域の光、以下「G光」とも称する。)及び赤色光R(赤色帯域の光、以下「R光」とも称する。)が透過する。反射されたB光は、反射ミラー42Aにより反射されコンデンサレンズ5Bを透過して映像表示素子6Bに入射される。一方、ダイクロイックミラー41Bを透過したG光及びR光は、ダイクロイックミラー41Gにより、G光が反射され、R光が透過する。反射されたG光は、コンデンサレンズ5Gを透過して映像表示素子6Gに入射される。また、ダイクロイックミラー41Gを透過したR光は、リレーレンズ43により集光され、その後反射ミラー42Bにより反射される。反射されたR光は、再びリレーレンズ44により集光され、反射ミラー42Cにより反射される。反射されたR光は、さらにリレーレンズ5Rによって集光され映像表示素子6Rに入射される。各映像表示素子では入射光に対して、映像信号(図示なし)に応じて画素ごとに光強度変調して映像を形成し、反射または透過による出射光を生成する。なお、
図1の例では、透過型の映像表示素子の例を開示している。各映像表示素子を出射したB光、G光、R光は光合成プリズム7によってカラー映像光として合成され、投射レンズ8を透過した後、スクリーン(図示なし)に到達する。すなわち、映像表示素子により形成された光学像がスクリーン(図示なし)上に拡大投影される。
【0013】
次に、
図2Aを用いて、本実施例における光源装置2の詳細説明を行う。
図2Aは、
図1の光源装置2の部分を抜き出し、さらに、ダイクロイックミラー24の持つ透過/反射特性を示した概念図を光軸1に対応した位置に図示している。
図2Aにおいて、光源21は青色レーザ(BL)であり、光軸1を中心として、青色レーザ光(B光)が出射される。そして、レンズ22により、B光束が集光されながら重畳され、レンズ23によってB光束が平行な光束になる。そして、ダイクロイックミラー24にB光束が照射される。
【0014】
ここで、ダイクロイックミラー24は、図示したようなB透過/Y反射の特性の領域を有し、かつ、全反射領域をダイクロイックミラーの中央部に備えている。すなわち、ダイクロイックミラー24は、B光透過Y光反射の特性の領域が広い。しかし、部分的に当該B光透過Y光反射の特性とは異なる全反射特性の領域を有するものである。本発明の以下の説明において、透過/反射特性が領域分割されたダイクロイックミラーが備える領域のうち、広範囲を占める特性の領域を以下、「広域特性領域」と称する。また、部分的な狭い領域において、前記「広域特性領域」の特性と異なる領域を以下、「異特性領域」と称する。
図2Aの例では、B透過/Y反射の特性の領域が「広域特性領域」であり、全反射領域が「異特性領域」である。なお、「広域特性領域」内のB光透過・反射特性は完全に一様でもよいが、左右の光の入射角度に依存する色ムラを解消するために、ダイクロイックコートのカット波長(例えば50%波長)を左右方向で傾斜をつけてもよい。この場合は、本発明の各実施例の説明では、カット波長の傾斜がついていても、同じ「広域特性領域」に属すると考える。また、本発明の各実施例の説明では「異特性領域」は、全反射特性か全透過特性を有する例を説明するが、本発明に影響が少ない範囲で、なんらかの理由によりダイクロイックコートを用いる可能性もある。その場合も「異特性領域」内で、透過・反射特性は完全に一様でもよいが、左右の光の入射角度に依存する色ムラを解消するために、ダイクロイックコートのカット波長(例えば50%波長)を左右方向で傾斜を設定してもよい。この場合も、カット波長の傾斜が設定されていても、同じ「異特性領域」に属すると考える。
【0015】
例えば、一例として、光源21からダイクロイックミラーに照射されるB光領域のうち、異特性領域である全反射領域の割合が入射光束の照射範囲の20%とする場合を説明すると、ダイクロイックミラー24に照射されたB光束は、20%程度が反射され、80%程度が透過する。すなわち、光源21からダイクロイックミラー24に照射されるB光束のうち、B光束中央部の20%程度が反射される。
【0016】
ダイクロイックミラー24によって反射されたB光束は、コンデンサレンズ25により集光されて拡散板26に照射される。そして、コンデンサレンズ25の光軸である光軸2を中心として、拡散板26により拡散されたB光束は、コンデンサレンズ25を透過して、ダイクロイックミラー24に照射される。この時、ダイクロイックミラー24に照射されるB光束の面積は、光源21からダイクロイックミラー24に照射されるB光束の面積よりも大きい。そして、拡散板26からダイクロイックミラー24に照射されるB光束のうち、例えば、拡散板によるB光入射領域の面積拡大率が2の場合、一例として、異特性領域の形状により10%程度が反射されてしまうが90%程度を透過させることが可能である。
【0017】
一方、光源21からダイクロイックミラー24に照射されるB光束のうち、ダイクロイックミラー24を透過するB光束はコンデンサレンズ27により集光されて蛍光体ホイール28に照射される。蛍光体ホイール28はB光を励起光としてY光を発光する蛍光体が塗布されており、焼き付け防止のためにモータ29により回転している。そして、光軸1を中心として、蛍光体ホイール28からY光が発光し、コンデンサレンズ27を透過してダイクロイックミラー24に照射される。そして、ダイクロイックミラー24によりY光束が反射され、B光束と重なりB+Y光束であるW光束となる。
【0018】
なお、
図2Bに本実施例に係る青色レーザの発光スペクトルの一例を示す。また、
図2Cに本実施例に係る黄色蛍光体の発光スペクトルの一例を示す。
【0019】
このように、本実施例における光源装置2は、光源21に青色レーザを使用し、B(青)+Y(黄)の光を合成することにより、白色光Wを生成する。つまり、光源装置2は、白色光生成部ともいえる。また、ダイクロイックミラー24は、広域特性領域としてB透過/Y反射の特性の領域を設け、かつ、異特性領域として全反射領域をダイクロイックミラー中央部に備えている。そして、拡散板26によりB光を拡散させ、B光の面積を拡大させる。これにより、白色光Wに含まれない光であるB光の光源21への戻り光の面積比を小さくすることが可能になり、B光利用率を増加させることができる。
【0020】
次に、
図4を用いて、本実施例におけるダイクロイックミラー24の広域特性領域であるB透過Y反射領域と異特性領域である全反射領域のコーティング方法の一例と、各領域の透過率特性の一例を説明する。
図4(A)が平面図、(B)が断面図、(C)がB透過Y反射領域の透過率特性、(D)が全反射領域の透過率特性である。
図4(B)に示すように、ダイクロイックミラー24はガラス基板の片面にB透過Y反射特性のダイクロイックコーティングを施し、反対面にARコーティング(Anti Reflective Coating:反射防止コーティング)を施し、その上に全反射領域用のミラーコーティングを施すことで製造できる。そして、各領域の透過率特性は、
図4(C)に示すように、広域特性領域であるB透過Y反射領域では、B光の波長である455nm近辺は透過率は少なくとも95%以上であり限りなく100%に近いことが望ましい、Y光に含まれる500から700nm近辺の緑色帯域から赤色帯域の光の透過率は少なくとも5%以下であり限りなく0%に近いことが望ましい。また、異特性領域である全反射領域は、
図4(D)に示すように、全波長領域で透過率は少なくとも5%以下であり、限りなく0%であることが望ましい。
【0021】
すなわち、本発明の各実施例において、B光透過Y光反射特性とは、B光の波長である455nm近辺は透過率が少なくとも95%以上であり、Y光に含まれる500から700nm近辺の緑色帯域から赤色帯域の光の反射率が少なくとも95%以上であることを意味する。同様に、本発明の各実施例において、B光反射Y光透過特性とは、B光の波長である455nm近辺は反射率が少なくとも95%以上であり、Y光に含まれる500から700nm近辺の緑色帯域から赤色帯域の光の透過率が少なくとも95%以上であることを意味する。
【0022】
また、本発明の各実施例において、全透過特性とは、少なくとも青色帯域455nm近辺から赤色帯域である700nmまでの全波長領域の透過率が少なくとも95%以上であることを意味する。同様に、本発明の各実施例において、全反射特性とは、少なくとも青色帯域455nm近辺から赤色帯域である700nmまでの全波長領域の反射率が少なくとも95%以上であることを意味する。
【0023】
なお、以下の説明で光利用率などの計算を行う際には、計算を簡単にするために、所定の帯域の光を反射する特性の場合は100%反射、所定の帯域の光を透過する特性の場合は100%透過として計算する。
【0024】
なお、本発明の各実施例において、「広域特性領域」においては、B光とY光の透過特性および反射特性は、逆となるように構成される。すなわち、「広域特性領域」においてB光透過の特性がある場合は、Y光は反射特性があるように構成され、結果的に当該「広域特性領域」の特性は、B光透過Y光反射特性と設定される。また、「広域特性領域」においてB光反射の特性がある場合は、Y光は透過特性があるように構成され、結果的に当該「広域特性領域」の特性は、B光反射Y光透過特性と設定される。
【0025】
なお、本発明の各実施例において、「異特性領域」においては、B光とY光の透過特性および反射特性は、同じになるように構成される。すなわち、「異特性領域」においてB光透過の特性がある場合は、Y光も透過特性があるように構成され、結果的に当該「異特性領域」の特性は、全透過特性と設定される。また、「異特性領域」においてB光反射の特性がある場合は、Y光も反射特性があるように構成され、結果的に当該「異特性領域」の特性は、全反射特性と設定される。
【0026】
次に、
図3を用いて、本実施例に係る構成によるB光利用率高効率化の原理を説明する。
図3において、(A)は本実施例による構成(透過/反射特性の領域分割および拡散板)を採用しない場合、(B)は本実施例による透過/反射特性の領域分割および拡散板ありの光源装置の光学系の一例である。
【0027】
図3(A)の構成は、ダイクロイックミラー24の透過/反射特性が領域全体で一様であり、B光反射率をR1、B光透過率をT1であるとする。この場合、B光の入射光に対するB出射光(本図ではB透過光)の割合であるB光利用率E1は、R1×(1−R1)=(R1×T1)となり、例えば、 ダイクロイックミラー24に入射するB光のうち20%を反射させ、80%を透過させる設定であるR1=0.2、T1=0.8とすると、B光利用率E1[%]=0.2×(1−0.2)×100=16[%]となる。
【0028】
一方、本実施例に係る
図3(B)の構成の場合は、
図3(C)に示すように、B入射光の入射領域Iの面積をSI、B拡散光の入射領域Oの面積をSO、B入射光の入射領域Iのうち異特性領域である全反射領域WI(B光の反射特性R≒1となる)の面積をSWI、B拡散光の入射領域Oのうち異特性領域である全反射領域WO(B光反射特性R≒1となる)の面積をSWOとする。このとき、レーザ光源からのB入射光に対する反射光の割合であるダイクロイックミラー24でのB入射光実質反射率R2はSWI/SIから算出できる。また、B拡散光に対する透過の割合であるダイクロイックミラー24でB拡散光実質透過率T2は(SO-SWO)/SOから算出できる。B光利用率E2は、R2×T2=(SWI/SI)×((SO-SWO)/SO)となる。ここで、SWI/SIはレーザ光源からダイクロイックミラーに入射するB光の利用効率と表現することもできる。また、(SO-SWO)/SOは、B拡散光からダイクロイックミラーに入射するB光の利用効率と表現することもできる。
【0029】
ここで、
図3(A)の構成と
図3(B)の構成の効率を比較するために、
図3(A)のB光反射率R1と
図3(B)のB入射光実質反射率R2の設定を等しくした場合を考える。この時、E2>E1となるための条件は、R2×T2>R1×(1−R1)である。ここで、R1にR2を代入すると、R2×T2>R2×(1−R2)となる。両辺をR2で除算すると、T2>1−R2となる。これは、(SO-SWO)/SO>(SI−SWI)/SIと変形できる。両辺にSOを乗ずると、SO-SWO>(SI−SWI)×SO/SIとなる。SO/SIを拡散光の入射領域の面積拡大率としてαとおくと、SO-SWO>SO-SWI×αとなり、SWI×α>SWOに変形できる。これはSWO/SWI<αと変形でき、SWO/SWI=βとおけば、α>βとなる。この式の意味としては、B入射光の入射領域I内の異特性領域の大きさであるSWIに対するB拡散光の入射領域Oのうちの異特性領域の大きさであるSWOの比βが拡散光の入射領域の面積拡大率αよりも大きくならないように、ダイクロイックミラー24における異特性領域の形状を設定することで、B光の利用率について、
図3(B)の構成の効率を
図3(A)の構成の効率より高めることができることを意味している。B光利用率E2をαとβを用いた式で表すと、E2=R2×T2=R2×(1−(R2×β/α))となる。すなわち、本実施例に係る
図3(B)の構成では、ダイクロイックミラー24の出射までのB光利用率だけを考慮すれば、拡散光の入射領域の面積拡大率αは大きければ大きいほど効率が良く、B入射光の入射領域I内の異特性領域の大きさであるSWIに対するB拡散光の入射領域Oのうちの異特性領域の大きさであるSWOの比βは小さければ小さいほどよいことになる。
【0030】
具体的には、例えば、R2=SWI/SI=0.2、拡散光の入射領域の面積拡大率α=SO/SI=2とし、異特性領域の形状がβ=SWO/SWIが1.2となる形状である場合、B光利用率E2[%]=0.2×(1−(0.2×1.2/2))×100=17.2[%]となり、より大となる。
【0031】
これは、R1=0.2とした場合の
図3(A)の構成のB光利用率E1[%]=16[%]よりも大きくなる。
【0032】
このように、本実施例によれば、光源21に青色レーザを使用し、B+Yの光を合成することにより、白色光を生成する光源装置において、ダイクロイックミラー24を、広域特性領域であるB透過/Y反射の特性領域を有し、かつ異特性領域である全反射領域を中央部に備えて、透過/反射特性が領域分割された構成とし、拡散板26によりB光を拡散させ、B光の面積を拡大させることで、B光利用率を増加させることができる。
【0033】
以上説明したように本実施例によれば、より好適にレーザ光源から白色光を生成し、画像表示に用いるプロジェクタを実現することが可能となる。
【実施例2】
【0034】
本実施例は、実施例1のプロジェクタにおいて、光源装置のダイクロイックミラーへのコーティング仕様を変更し、それにともない、蛍光体ホイール及び拡散板の配置を変更した例である。
【0035】
なお、説明を簡単にするため、本実施例の説明においては、実施例1からの変更点のみ説明するものとし、特に記載が無い構成及び動作については実施例1と同様であるものとする。特に、光源装置においてB+Y光である白色光W光を生成した後の、プロジェクタの光学系及び映像表示素子の構成および動作は実施例1の
図1と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
図5は、本実施例におけるプロジェクタの光源装置の構成図およびダイクロイックミラーの透過/反射特性を示す図である。
図5において、
図2Aと同じ機能を有する構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図5において、
図2Aと異なる点は、ダイクロイックミラーの透過/反射特性が異なる点と、蛍光体ホイール及び拡散板の位置が入れ替わっている点である。
【0037】
図5において、レンズ23によって略平行とされたB光束がダイクロイックミラー91に照射される。ここで、ダイクロイックミラー91は、図示したように、広域特性領域であるB反射/Y透過の特性領域を有し、かつ、異特性領域である全透過領域をダイクロイックミラーの中央部に備えている。すなわち、ダイクロイックミラー91は、広域特性領域であるB光反射Y光透過の特性の領域が広いが、部分的に当該B光反射Y光透過の特性とは異なる全透過特性の領域(異特性領域)を有するものである。例えば、一例として、光源21からダイクロイックミラーに照射されるB光領域のうち、全透過領域の割合を全体の20%とする場合を説明すると、ダイクロイックミラー91に照射されたB光束は、80%程度が反射され、20%程度が透過する。すなわち、光源21からダイクロイックミラー91に照射されるB光束のうち、B光束中央部の20%程度が透過される。このように実施例2は実施例1とダイクロイックミラーの透過反射特性が異なるが、所定の透過反射特性領域を有する広域特性領域と部分的に当該所定の透過反射特性とは異なる異特性領域を同一のダイクロイックミラーに有するという点で概念が共通している。
【0038】
ダイクロイックミラー91により反射されたB光束はコンデンサレンズ27により集光されて蛍光体ホイール28に照射される。コンデンサレンズ27の光軸である光軸2を中心として、蛍光体ホイール28からY光が発光し、コンデンサレンズ27を透過してダイクロイックミラー91に照射され、Y光束がダイクロイックミラー91を透過する。
【0039】
一方、光源21からダイクロイックミラー91に照射されるB光束のうち、ダイクロイックミラー91を透過したB光束は、コンデンサレンズ25により集光されて拡散板26に照射される。光軸1を中心として、拡散板26により拡散されたB光束は、コンデンサレンズ25を透過して、ダイクロイックミラー91に照射される。この時、ダイクロイックミラー91に照射されるB光束の面積は、光源21からダイクロイックミラー91に照射されるB光束の面積よりも大きい。拡散板26からダイクロイックミラー91に照射されるB光束のうち、例えば、拡散板によるB光入射領域の面積拡大率が2の場合、一例として、異特性領域の形状により10%程度が透過されてしまうが90%程度を反射させることが可能である。そして、ダイクロイックミラー91により反射されたB光束が、Y光束と重なりB+Y光束となる。これにより、実施例2の構成によっても実施例1と同程度に、B光利用率を増加させることができる。
【0040】
図6は、本実施例におけるダイクロイックミラー91のB反射Y透過領域と全透過領域のコーティング方法と、各領域の透過率特性を示す図である。
図6(A)が平面図、(B)が断面図、(C)がB反射Y透過領域の透過率特性、(D)が全透過領域の透過率特性である。
図6(B)に示すように、ダイクロイックミラー91はガラス基板の片面にARコーティングを施し、反対面にB反射Y透過特性のダイクロイックコーティングと、全透過領域用のARコーティングを施すことで製造できる。そして、各領域の透過率特性は、
図6(C)に示すように、広域特性領域であるB反射Y透過領域では、B光の波長である455nm近辺は透過率は少なくとも5%以下であり、限りなく0%に近いことが望ましい、Y光に含まれる500から700nm近辺の緑色帯域から赤色帯域の光の透過率は少なくとも95%以上であり限りなく100%に近いことが望ましい。また、異特性領域である全透過領域は、
図6(D)に示すように、全波長領域で透過率が少なくとも95%以上であり、限りなく100%であることが望ましい。
【0041】
なお、本実施例の構成においてB光利用率が高効率化の原理と条件の詳細は、実施例1の
図3の説明において、B光の「透過」を「反射」に置き換え、「全反射」を「全透過」に置き換えればよい。具体的には
図3(C)のB入射光の入射領域Iの面積をSI、B拡散光の入射領域Oの面積をSO、B入射光の入射領域Iのうち異特性領域である全透過領域WI(B光の透過特性T≒1となる)の面積をSWI、B拡散光の入射領域Oのうち異特性領域である全透過領域WO(B光透過特性T≒1となる)の面積をSWOとする。このとき、レーザ光源からのB入射光に対する透過光の割合であるダイクロイックミラー91でB入射光実質透過率T3はSWI/SIから算出できる。また、B拡散光に対する透過の割合であるダイクロイックミラー91でB拡散光実質反射率R3は(SO-SWO)/SOから算出できる。実施例2の光源装置におけるB光利用率E3は、T3×R3=(SWI/SI)×((SO-SWO)/SO)となる。つまり、実施例1に対してB光の反射特性と透過特性が反対になったとしても、当該光源装置のB光利用率E3は、レーザ光源からダイクロイックミラーに入射するB光の利用効率(SWI/SI)と、B拡散光からダイクロイックミラーに入射するB光の利用効率((SO-SWO)/SO)の積であることに変わりはない。
【0042】
すると本実施例の当該光源装置のB光利用率E3も実施例1E2の式変形と同様に、SO/SIを拡散光の入射領域の面積拡大率αとB入射光の入射領域I内の異特性領域の大きさであるSWIに対するB拡散光の入射領域Oのうちの異特性領域の大きさであるSWOの比βを用いることで、E3=T3×R3=T3×(1−(T3×β/α))と表現できる。
【0043】
すなわち、本実施例に係る構成においても、ダイクロイックミラー91の出射までのB光利用率だけを考慮すれば、拡散光の入射領域の面積拡大率αは大きければ大きいほど効率が良く、B入射光の入射領域I内の異特性領域の大きさであるSWIに対するB拡散光の入射領域Oのうちの異特性領域の大きさであるSWOの比βは小さければ小さいほどよいことになる。
【0044】
このように、本実施例によれば、光源21に青色レーザを使用し、B+Yの光を合成することにより白色光を生成する光源装置において、ダイクロイックミラー91を、広域特性領域であるB反射/Y透過の特性領域を有し、かつ異特性領域である全透過領域を中央部に備えて、透過/反射特性が領域分割された構成とし、拡散板26によりB光を拡散させ、B光の面積を拡大させることで、B光利用率を増加させることができる。
【0045】
以上説明したように本実施例によれば、実施例1と異なる構成でも、実施例1と同程度に、より好適にレーザ光源から白色光を生成し、画像表示に用いるプロジェクタを実現することが可能となる。
【実施例3】
【0046】
本実施例は、実施例1のプロジェクタにおいて、光源装置におけるダイクロイックミラーにおける異特性領域をコンデンサレンズ25の光軸である光軸2とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットした位置に配置する例について説明する。
【0047】
図7は、本実施例における光源装置の構成図およびダイクロイックミラーの透過/反射特性を示す図である。
図7において、
図2Aと同じ機能を有する構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0048】
実施例1の
図2Aにおいてダイクロイックミラーにおける異特性領域の位置は光軸2とダイクロイックミラーが接する中央部付近に配置したのに対し、本実施例の
図7においては、異特性領域の位置を光軸2とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットした位置としている。
【0049】
異特性領域の位置を光軸2とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットした位置をこのように変更するためには、単に、B色レーザ光源21からのB光入射光が入射する範囲で、異特性領域を光軸2とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットした位置に配置するだけでも良い。また、B色レーザ光源21の光軸1を、コンデンサレンズ25の光軸2とダイクロイックミラーに対して鏡面配置の関係にある光軸3からオフセットして配置することによりさらに異特性領域を光軸2からオフセットして配置することができる。
図7では一例として、レーザ光源21の光軸1のオフセットと異特性領域の中央部からのオフセットの両者を採用した例を示している。
【0050】
図7において、レンズ23によって平行とされたB光束がダイクロイックミラー92に照射される。ここで、ダイクロイックミラー92は、図示したように、広域特性領域であるB透過/Y反射の特性領域を有し、かつ、異特性領域である全反射領域を光軸2と接する位置からオフセットした位置に備えている。例えば、光源21からダイクロイックミラーに照射されるB光領域のうち、全反射領域の割合を全体の20%とすると、ダイクロイックミラー92に照射されたB光束は、20%程度が反射され、80%程度が透過する。すなわち、光源21からダイクロイックミラー92に照射されるB光束のうち、B光束の中心からオフセットした部分の20%が反射される。
【0051】
ダイクロイックミラー92によって反射されたB光束は、拡散板26により拡散され、ダイクロイックミラー92に照射される。この時、ダイクロイックミラー92に照射されるB光束の面積は、光源21からダイクロイックミラー92に照射されるB光束の面積よりも大きい。
【0052】
次に、拡散板26からダイクロイックミラー92に照射されるB光束のうち、異特性領域で反射される割合と広域特性領域で透過される割合を面積比だけに基づいて計算する。例えば、面積比計算で、拡散板によるB光入射領域の面積拡大率が2の場合、一例として、異特性領域の形状により10%程度が反射され90%程度を透過する構成を考える。ここで、実施例1と異なり、実施例3では、異特性領域の位置を光軸2とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットされている。ここで、
図8に、拡散板26から射出する光の照度分布図を示す。
図8に示すように、中心位置からずれるほど照度は低下する。すると、実施例3のように異特性領域の位置を光軸2とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットして配置することにより、例え異特性領域の面積が実施例1と同じであっても、拡散板26からのB拡散光のうち、ダイクロイックミラー92で反射されて光源21に戻る部分のB拡散光は、
図8の中心角度のピーク強度ではなく、周辺角度の相対的に小さい強度になり、実施例1の
図2Aに対し、レーザ光源への戻り光を少なくできる。例えば、このオフセットによる
図8の拡散光強度の相対比効果が50%だとすると、拡散板によるB光入射領域の面積拡大率が2で、面積比計算のみで異特性領域の形状により10%程度が反射され90%程度を透過する構成では、拡散板26からダイクロイックミラー92に照射されるB光束は、実際の
図8の強度分布を考慮すると、5%程度が反射され、95%程度が透過することとなる。
【0053】
一方、光源21からダイクロイックミラー92に照射されるB光束のうち、ダイクロイックミラー92を透過するB光束は蛍光体ホイール28に照射される。そして、コンデンサレンズ27の光軸である光軸3を中心として、蛍光体ホイール28からY光が発光し、ダイクロイックミラー92に照射される。そして、ダイクロイックミラー92の広域特性領域によりY光束が反射され、B光束と重なりB+Y光束となる。
【0054】
図9は、本実施例におけるダイクロイックミラー92の広域特性領域であるB透過Y反射領域と異特性領域である全反射領域のコーティング方法を示す図である。
図9(A)が平面図、(B)が断面図である。
図9(B)に示すように、ダイクロイックミラー92は、ガラス基板の片面にB透過Y反射特性のダイクロイックコーティングを施し、反対面にARコーティングを施し、その上に全反射領域用のミラーコーティングを施すことで製造できる。
【0055】
以上説明した本実施例によれば、光源21に青色レーザを使用し、B+Yの光を合成することにより白色光を生成する光源装置において、ダイクロイックミラー92を、広域特性領域であるB透過/Y反射の特性領域を有し、かつ異特性領域である全反射領域をコンデンサレンズ25の光軸である光軸2が接する位置からオフセットして配置して、透過/反射特性が領域分割された構成とし、拡散板26によりB光を拡散させ、B光の面積を拡大させることで、B光利用率を増加させることができる。
【0056】
以上説明したように本実施例によれば、実施例1よりB光利用率を増加させることが可能となり、より好適にレーザ光源から白色光を生成し、画像表示に用いるプロジェクタを実現することが可能となる。
【実施例4】
【0057】
本実施例は、実施例2のプロジェクタにおいて、光源装置におけるダイクロイックミラーにおける異特性領域を、コンデンサレンズ25の光軸である光軸3とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットした位置に配置する例について説明する。
【0058】
図10は、本実施例における光源装置の構成図およびダイクロイックミラーの透過/反射特性を示す図である。
図10において、
図5と同じ機能を有する構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0059】
実施例2の
図5においてダイクロイックミラーにおける異特性領域の位置は光軸3とダイクロイックミラーが接する中央部付近に配置したのに対し、本実施例の
図10においては、異特性領域の位置を光軸3とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットした位置としている。
【0060】
異特性領域の位置を光軸2とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットした位置をこのように変更するためには、単に、B色レーザ光源21からのB光入射光が入射する範囲で、異特性領域を光軸3とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットした位置に配置するだけでも良い。また、B色レーザ光源21の光軸1を光軸3からオフセットして配置することによりさらに異特性領域を光軸3からオフセットして配置することができる。
図10では一例として、レーザ光源21の光軸1のオフセットと異特性領域の中央部からのオフセットの両者を採用した例を示している。
【0061】
図10において、レンズ23によって平行とされたB光束がダイクロイックミラー93に照射される。ここで、ダイクロイックミラー93は、図示したように、広域特性領域としてB反射/Y透過の特性の領域を有し、かつ、異特性領域として全透過領域を光軸3と接する位置からオフセットした位置に備えている。例えば、光源21からダイクロイックミラーに照射されるB光領域のうち、異特性領域である全透過領域の割合を全体の20%とすると、ダイクロイックミラー93に照射されたB光束は、80%程度が反射され、20%程度が透過する。すなわち、光源21からダイクロイックミラー93に照射されるB光束のうち、B光束の中心からオフセットした部分の20%程度が透過される。
【0062】
ダイクロイックミラー93によって反射されたB光束は、蛍光体ホイール28に照射される。コンデンサレンズ27の光軸である光軸2を中心として、蛍光体ホイール28からY光が発光し、ダイクロイックミラー93に照射され、Y光束がダイクロイックミラー93を透過する。
【0063】
一方、光源21からダイクロイックミラー93に照射されるB光束のうち、ダイクロイックミラー93を透過したB光束は、拡散板26に照射され、コンデンサレンズ25の光軸である光軸3を中心として、拡散板26により拡散されたB光束は、ダイクロイックミラー93に照射される。この時、ダイクロイックミラー93に照射されるB光束の面積は、光源21からダイクロイックミラー93に照射されるB光束の面積よりも大きい。
【0064】
次に、拡散板26からダイクロイックミラー93に照射されるB光束のうち、異特性領域で透過される割合と広域特性領域で反射される割合を面積比だけに基づいて計算する。例えば、拡散板によるB光入射領域の面積拡大率が2の場合、一例として、異特性領域の形状により10%が透過され90%程度を反射する構成を考える。ここで、実施例2と異なり、本実施例では、異特性領域の位置を光軸3とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットされている。ここで、
図8に示したように、拡散板26から射出する光の照度分布は中心位置からずれるほど照度は低下する。すると、実施例3のように異特性領域の位置を光軸3とダイクロイックミラーが接する中央部からオフセットして配置することにより、例え異特性領域の面積が実施例2と同じであっても、拡散板26からのB拡散光のうち、ダイクロイックミラー93で透過されて光源21に戻る部分のB拡散光は、
図8の中心角度のピーク強度ではなく、周辺角度の相対的に小さい強度になり、実施例2の
図5に対し、レーザ光源への戻り光を少なくできる。例えば、このオフセットによる
図8の拡散光強度の相対比効果が50%だとすると、拡散板によるB光入射領域の面積拡大率が2で、面積比計算のみで異特性領域の形状により10%程度が透過され90%程度を反射する構成では、拡散板26からダイクロイックミラー93に照射されるB光束は、実際の
図8の強度分布を考慮すると、5%程度が透過され、95%程度が反射することとなる。
【0065】
そして、ダイクロイックミラー93の広域特性領域により反射されたB光束が、Y光束と重なりB+Y光束となる。
【0066】
図11は、本実施例におけるダイクロイックミラー93の広域特性領域であるB反射Y透過領域と異特性領域である全透過領域のコーティング方法を示す図である。
図11(A)が平面図、(B)が断面図である。
図11(B)に示すように、ダイクロイックミラー93はガラス基板の片面にARコーティングを施し、反対面にB反射Y透過特性のダイクロイックコーティングと、全透過領域用のARコーティングを施すことで製造できる。
【0067】
以上説明した本実施例によれば、光源21に青色レーザを使用し、B+Yの光を合成することにより白色光を生成する光源装置において、ダイクロイックミラー93を、広域特性領域であるB反射/Y透過の特性領域を有し、かつ異特性領域である全透過領域をコンデンサレンズ25の光軸である光軸3が接する位置からオフセットして配置して、透過/反射特性が領域分割された構成とし、拡散板26によりB光を拡散させ、B光の面積を拡大させることで、B光利用率を増加させることができる。
【0068】
以上説明したように本実施例によれば、実施例2よりB光利用率を増加させることが可能となり、より好適にレーザ光源から白色光を生成し、画像表示に用いるプロジェクタを実現することが可能となる。
【実施例5】
【0069】
本実施例は、実施例1から4で説明した、プロジェクタにおいて、ダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成と、光源として複数のレーザを用い、それらのレーザの強度を変えることで調光および/または調色を実現する例について説明する。
【0070】
図12は、本実施例における光源装置の光源部分の概略構成図である。
図12は、
図2A、
図5、
図7または
図10の光源装置の構成において、光源21の構成の詳細を示したものである。具体的には、光源21として光源21−1、21−2を2つ用いて、それぞれを電源1(20−1)、電源2(20−2)で駆動し、それぞれの電源1、電源2を制御する制御部10を有する。
【0071】
図13は実施例1(
図2Aの構成)及びその変形例に対応したダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成を示した図である。
図13(A)が、実施例1に対応した構成である。
図13(A)において、それぞれB透過Y反射領域(広域特性領域M)と全反射領域(異特性領域W)にまたがる領域に、光源21−1からのB光が照射される照射領域E21−1と、光源21−2からのB光が照射される照射領域E21−2とを有する。なお、光源21−1からのB光が照射される照射領域E21−1と、光源21−2からのB光が照射される照射領域E21−2とを合わせた領域が、
図3(C)の領域Iに相当する。なお、
図13(A)に示すB拡散光入射領域が、
図3(C)の領域Oに相当する。
【0072】
図13(A)の例では、左右対称に領域を配置しており、照射領域E21−1内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−2内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合が同じである。よって、光源21−1、21−2のレーザの強度を変えれば、光源装置2から出力されるB光とY光の比率は変わらないまま、光源装置2から出力される光の強度を調整する調光機能を実現することができる。
【0073】
図13(B)は、
図13(A)の領域分割の変形例であり、
図13(A)と異なり、異特性領域Wである全反射領域が紙面の幅方向に広く、かつ光源21−1からのB光が照射される照射領域E21−1と、光源21−2からのB光が照射される照射領域E21−2を合わせた領域(
図3(C)の領域Iに相当する)に包含される。
図13(B)の例では、異特性領域Wが、領域Iに包含されているので、異特性領域Wが
図3(C)の例の領域WIと領域WOの両者に相当する。実施例1で説明したとおり、光源装置2においては、B入射光の入射領域I内の異特性領域の大きさであるSWIに対するB拡散光の入射領域Oのうちの異特性領域の大きさであるSWOの比βは小さければ小さいほど光源装置としてB光利用効率がよい。ここで、異特性領域Wを領域Iに包含させることで、β=1とすることができ、βを最小化することができる。
【0074】
なお、実施例1で説明した
図3(B)の構成のB光利用効率E2は、β/αが1より小さいときには、必ず
図3(A)の構成のB光利用効率E1よりも効率が良くなる。すると、異特性領域Wを領域Iに包含させることでβ=1とできれば、コンデンサレンズ25と拡散板26の効果によりαが1より大きくなるので、
図3(B)の構成は
図3(A)の構成よりもB光利用効率が必ず大きくなる。
【0075】
すると、
図13(B)のように異特性領域Wを領域Iに包含させる構成とすれば、
図13(A)のように異特性領域Wが領域Iに包含させない構成よりも、B光利用率を高めることが可能となる。
【0076】
また、
図13(A)の構成では、異特性領域Wが照射領域E21−1と、照射領域E21−2の縦方向の境界線に細長く存在するため、光学部品の組み立て精度などにより、照射領域E21−1と、照射領域E21−2の位置と、ダイクロイックミラーの異特性領域Wの左右方向の相対位置が大きくずれた場合、照射領域E21−1内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−2内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合が大きく変化してしまう。例えば、上記相対位置のずれにより、異特性領域Wである全反射領域に照射されるB光が左右の光源のうち一方のみとなった場合、当該一方のレーザ光源を制御する電源が故障した場合、光源からダイクロイックミラーの入射する光のうち広域特性領域Mを経由した光だけが利用されることになるので、光源装置2からB光かY光のいずれか一方(
図13(A)の例では、Y光)のみが出力されることなり、白色光の生成が不可能となる。これに対し、
図13(B)の構成であれば、異特性領域Wである全反射領域が幅方向に広いため、上記左右方向の相対位置のズレが生じた場合でも、異特性領域Wである全反射領域に照射されるB光が左右の光源のうち一方のみとなりにくい。
【0077】
これにより、
図13(B)の構成では、一方のレーザ光源を制御する電源が故障した場合でも、光源装置2から出力光がB光かY光のいずれか一方の色になるという現象を回避することができる。
【0078】
また、
図13(C)は、さらに異なる領域分割の変形例である。
図13(C)の例では、
図13(A)、
図13(B)の例と異なり、異特性領域Wである全反射領域が左右で非対称であるように構成する。これにより、照射領域E21−1内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−2内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合とを異ならせている。これにより、光源21−1からのB光が最終的に光源装置2の出力光に寄与するB光とY光の比率と、光源21−2からのB光が最終的に光源装置2の出力光に寄与するB光とY光の比率を異ならせることができる。すると、電源1の制御によって光源21−1の光強度を可変制御したり、または電源2の制御によって光源21−2の光強度を可変制御したりすることにより、光源21−1の光強度と光源21−2の光強度との相対比率を可変することにより、光源装置2が出力する光の色と強度の両者を制御することが可能となる。すなわち、光源装置2から出力される光の調色機能と調光機能を実現することができる。
【0079】
なお、
図13(C)の例では、異特性領域Wが、異特性領域Wが、照射領域E21−1と照射領域E21−2を合わせた領域(領域I)に包含されているので、B光利用率が高いという利点もある。
【0080】
また、
図13(D)は、さらに異なる領域分割の変形例である。
図13(D)の例では、
図13(C)の例と同様、照射領域E21−1内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−2内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合とを異ならせている。よって、
図13(C)の例と同様、電源1の制御によって光源21−1の光強度を可変制御したり、または電源2の制御によって光源21−2の光強度を可変制御したりすることにより、光源21−1の光強度と光源21−2の光強度との相対比率を可変することにより、光源装置2が出力する光の色と強度の両者を制御することが可能となる。
【0081】
さらに、
図13(D)の例では、異特性領域W(全反射領域)として、左右の光源からの照射領域毎に独立した形状を有している。さらに、左右の光源からの照射領域の境界線から距離を離した位置にそれぞれ異特性領域Wを設けている。これにより、光学部品の組み立て精度などにより、照射領域E21−1の位置と、照射領域E21−2の位置と、ダイクロイックミラーの異特性領域Wの相対位置が、左右方向にずれても上下方向にずれても、照射領域E21−1内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−2内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合が変化しにくい構成とすることができる。
【0082】
すなわち、
図13(D)の例では、光源装置2から出力される光の調色機能と調光機能の実現と、光学部品の組み立て精度などによる、照射領域E21−1の位置と、照射領域E21−2の位置と、ダイクロイックミラーの異特性領域Wの相対位置のずれの影響の低減の両者を実現するとことができ、望ましい態様である。
【0083】
また、
図13(D)の例では、異特性領域Wが、照射領域E21−1と照射領域E21−2を合わせた領域(領域I)に包含されているので、B光利用率が高いという利点もある。
【0084】
以上のとおり、
図13を用いて、実施例1(
図2Aの構成)の異特性領域Wの形状の例およびその変形例を複数例説明した。なお、これらの変形例は、実施例3の
図7のように、コンデンサレンズ25の光軸2の鏡面関係にある光軸3に対して光源21の光軸1をオフセットした場合にも適用可能である。
【0085】
また、
図14は実施例2及びその変形例に対応したダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成を示した図である。
図14(A)が実施例2に対応した構成である。
図14(A)は、実施例2の
図5の構成において、光源21として
図12に示す構成を採用した場合の例を説明したものであり、
図14(B)(C)(D)はその変形例である。
【0086】
ここで、
図14(A)、
図14(B)、
図14(C)、
図14(D)に記載されるダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成例は、
図13(A)、
図13(B)、
図13(C)、
図13(D)のダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成例を、実施例2に対応するように、広域特性領域Mの特性をB反射Y透過に変え、異特性領域Wの特性を全透過に変えたものである。
図13の説明を当該特性の変更に対応して読み替えれば、構成及びその効果についても、
図14各図の説明になる。そのため、
図14各図の説明は当該
図13各図の読み替えで記載されたものとし、再度の記載は省略する。
【0087】
以上説明した
図14各図で示すダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成例により、実施例2の異特性領域Wの形状の例およびその変形例を複数例説明した。なお、これらの変形例は、実施例4の
図10のように、コンデンサレンズ25の光軸2の鏡面関係にある光軸3に対して光源21の光軸1をオフセットした場合にも適用可能である。
【0088】
以上説明した本実施例のダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成例によれば、異特性領域Wの形状とダイクロイックミラー上での複数の光源の照射領域の関係に応じて、B光利用率の向上、調光機能の実現、調色機能の実現、光学部品の組み立て精度などによる相対位置ずれ影響の低減等のいずれかの効果またはこれらを組み合わせた効果を得ることができる。
【0089】
なお、本実施例の
図13、
図14の各図の説明において、照射領域E21−1と、照射領域E21−2とは互いに重ならない例を説明した。しかしながら、照射領域E21−1と、照射領域E21−2とが一部重なり合っていてもよく、この場合でも本実施例の変形例の一態様となる。このとき各照射領域内の広域特性領域Mと異特性領域Wの割合が上述の説明を満たすのであれば、上述の説明と同様の効果を得ることができる。
【実施例6】
【0090】
実施例5ではプロジェクタの光源として2つのレーザを用いるのに対して、本実施例では、プロジェクタの光源として3つのレーザを用い場合について説明する
図15は、本実施例における光源装置の光源部分の概略構成図である。
図15においては、
図2A、
図5、
図7または
図10の光源装置の構成において、光源21−1、21−2、21−3の3つ用いて、それぞれを電源1(20−1)、電源2(20−2)、電源3(20−3)で駆動し、それぞれの電源1、電源2、電源3を制御する制御部11を有する。
【0091】
図16は実施例1(
図2Aの構成)及びその変形例に対応したダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成を示した図である。
図16(A)が、実施例1に対応した構成である。
図16(A)において、それぞれ左側のB透過Y反射領域(広域特性領域M)に光源21−1からのB光が照射される照射領域E21−1を有し、左側のB透過Y反射領域(広域特性領域M)と全反射領域(異特性領域W)と右側のB透過Y反射領域(広域特性領域M)にまたがる領域に光源21−2からのB光が照射される照射領域E21−2を有し、右側のB透過Y反射領域(広域特性領域M)に光源21−3からのB光が照射される照射領域E21−3を有する。照射領域E21−2での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−1、照射領域E21−3での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合(本図では異特性領域Wは0%)が異なるため、光源21−1、21−2、21−3のレーザの強度を変えることで、光源装置2から出力されるB光とY光の比率が変わり、調色機能と調光機能とを実現することができる。
【0092】
図16(B)は、
図16(A)の領域分割の変形例であり、
図16(A)と異なり、異特性領域Wである全反射領域が紙面の幅方向に広く、光源21−1からのB光が照射される照射領域E21−1と、光源21−2からのB光が照射される照射領域E21−2、光源21−3からのB光が照射される照射領域E21−3を合わせた領域(
図3(C)の領域Iに相当する)に包含される。当該構成により、
図13(B)での説明と同様に、B光利用効率においてβ=1とすることができる。これにより、B光利用効率を高めることが可能である。
【0093】
また、
図16(A)の構成では、電源20−2が故障した場合、光源からダイクロイックミラーの入射する光のうち広域特性領域Mを経由した光だけが利用されることになるので、光源装置2からY光のみが出力されることなり、白色光の再現が不可能となる。これに対し、
図16(B)の構成であれば、異特性領域Wである全反射領域が照射領域E21−1、照射領域E21−2、照射領域E21−3の全ての領域にそれぞれ掛かる。
【0094】
これにより、
図16(B)の構成では、レーザ光源を制御する複数の電源の一つが故障した場合でも、光源装置2から出力光がB光かY光のいずれか一方の色になるという現象を回避することができる。
【0095】
また、
図16(C)は、さらに領域分割の変形例である。
図13(C)では、複数のレーザ光源の照射領域が2つであるのに対して、
図16(C)の構成では、照射領域E21−1、照射領域E21−2、照射領域E21−3の3つに増えている。さらに、当該3つの照射領域における広域特性領域Mと異特性領域Wとの割合を、いずれも変えている。
【0096】
すると、光源21−1の光強度、光源21−2の光強度、光源21−3の光強度を可変制御することにより、光源装置2が出力する光の色と強度の両者を制御することが可能となり、さらに、
図13(C)よりも領域分割数が多いため、色と強度の制御の分解能を向上させることが可能となる。
【0097】
また、
図16(D)は、さらに領域分割の変形例である。
図16(D)の例では、
図16(C)の例と同様、照射領域E21−1内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−2内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−3内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合を異ならせている。よって、
図16(C)の例と同様、光源21−1の光強度、光源21−2の光強度、光源21−3の光強度を可変制御することにより、光源装置2が出力する光の色と強度の両者を制御することが可能となり、さらに、
図13(D)よりも領域分割数が多いため、色と強度の制御の分解能を向上させることが可能となる。
【0098】
さらに、
図16(D)の例では、異特性領域W(全反射領域)として、3つの光源からの照射領域毎に、独立した形状を有している。さらに、各照射領域の境界線から距離を離した位置にそれぞれ異特性領域Wを設けている。これにより、光学部品の組み立て精度などにより、照射領域E21−1の位置と、照射領域E21−2の位置と、照射領域E21−3の位置と、ダイクロイックミラーの異特性領域Wの相対位置が、左右方向にずれても上下方向にずれても、照射領域E21−1内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−2内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、照射領域E21−3内での広域特性領域Mと異特性領域Wの割合と、が変化しにくい構成とすることができる。
【0099】
すなわち、
図16(D)の例では、光源装置2から出力される光の調色機能と調光機能の実現と、光学部品の組み立て精度などによる、照射領域E21−1の位置と、照射領域E21−2の位置と、照射領域E21−3の位置と、ダイクロイックミラーの異特性領域Wの相対位置のずれの影響の低減の両者を実現するとことができ、望ましい態様である。
【0100】
また、
図16(D)の例では、異特性領域Wが、照射領域E21−1と照射領域E21−2、照射領域E21−3を合わせた領域(領域I)に包含されているので、B光利用率が高いという利点もある。
【0101】
以上のとおり、
図16を用いて、実施例1(
図2Aの構成)の異特性領域Wの形状の例およびその変形例を複数例説明した。なお、これらの変形例は、実施例3の
図7のように、コンデンサレンズ25の光軸2の鏡面関係にある光軸3に対して光源21の光軸1をオフセットした場合にも適用可能である。
【0102】
また、
図17は実施例2及びその変形例に対応したダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成を示した図である。
図17(A)が実施例2に対応した構成である。
図17(A)は、実施例2の
図5の構成において、光源21として
図15に示す構成を採用した場合の例を説明したものであり、
図17(B)(C)(D)はその変形例である。
【0103】
ここで、
図17(A)、
図17(B)、
図17(C)、
図17(D)に記載されるダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成例は、
図16(A)、
図16(B)、
図16(C)、
図16(D)のダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成例を、実施例2に対応するように、広域特性領域Mの特性をB反射Y透過に変え、異特性領域Wの特性を全透過に変えたものである。
図16の説明を当該特性の変更に対応して読み替えれば、構成及びその効果についても、
図17各図の説明になる。そのため、
図17各図の説明は当該
図16各図の読み替えで記載されたものとし、再度の記載は省略する。
【0104】
以上説明した
図17各図で示すダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成例により、実施例2の異特性領域Wの形状の例およびその変形例を複数例説明した。なお、これらの変形例は、実施例4の
図10のように、コンデンサレンズ25の光軸2の鏡面関係にある光軸3に対して光源21の光軸1をオフセットした場合にも適用可能である。
【0105】
以上説明した本実施例のダイクロイックミラーの透過/反射領域の分割構成例によれば、異特性領域Wの形状とダイクロイックミラー上での複数の光源の照射領域の関係に応じて、B光利用率の向上、調光機能の実現、調色機能の実現、光学部品の組み立て精度などによる相対位置ずれ影響の低減等のいずれかの効果またはこれらを組み合わせた効果を得ることができる。また、当該調光機能、調色機能においてはより分解能を向上させることができる。
【0106】
なお、本実施例の
図16、
図17の各図の説明において、照射領域E21−1と、照射領域E21−2と、領域E21−3とは互いに重ならない例を説明した。しかしながら、照射領域E21−1と、照射領域E21−2と、領域E21−3とが一部重なり合っていてもよく、この場合でも本実施例の変形例の一態様となる。このとき各照射領域内の広域特性領域Mと異特性領域Wの割合が上述の説明を満たすのであれば、上述の説明と同様の効果を得ることができる。
【実施例7】
【0107】
本実施例では、拡散板としてアルミナセラミック板を用いることで、より好適なプロジェクタを実現することができる実施例について説明する。
【0108】
図18は、本実施例における拡散板26としてのアルミナセラミック板の断面図を示す模式図である。
図18に示すように、アルミナセラミック板は、形状がランダムなアルミナ粒子の集合体であり、反射面表面に凹凸加工を施さなくとも、入射光がランダムに透過、反射する性質を有する。そのため、例えば、図に示す、同じ角度で出射する出射光Ao,Boであっても、同じ経路を経た光だけでなく異なる経路を経た光であるAiやBiも含まれている。すなわち、同じ角度で出射する出射光であっても、光路長が異なる光が含まれるため、スペックルノイズの低減に効果的となる。
【0109】
ここで、拡散板のメカニズムについて説明する。
図19は、本実施例における拡散板に対する入射光の集光角θi及び出射光の拡散角θoを説明する図である。
図19(A)に示すように、拡散板26への入射光はコンデンサレンズ25により集光されて集光角θiで拡散板26に入射される。また、
図19(B)に示すように、拡散板26からの出射光は拡散角θoで出射される。ここで、光は一般的に拡散するので、本実施例における拡散角θoの定義について、
図20を用いて説明する。
図20は、拡散板26から射出する光の強度分布を示し、縦軸が強度、横軸が拡散板の法線に対する拡散光の角度を示す。
図20に示すように、中心位置からずれるほど強度は低下し、出射光のピーク強度を100%とすると、出射光の強度が50%になる角度を、本実施例では拡散板の出射光の拡散角θoとして定義する。
【0110】
次に、
図19に示す入射光の集光角θiと出射光の拡散角θoとB光の利用効率の関係を計算する。ここで、計算を簡略化するために、
図3(C)に示すダイクロイックミラー24の領域I、領域O、領域WI、領域WOを円形領域のモデルに変換した場合の説明図を
図21に示す。
図21においては、既に説明した通り、B光の利用効率が最も高い、面積SWI=面積SWO(β=1)の例のモデルについて示している。なお、異特性領域Wの形状が、
図13(B)、(C)、(D)、
図14(B)、(C)、(D)、
図16(B)、(C)、(D)、
図17(B)、(C)、(D)に示す何れの形状の場合でも、
図21の円形モデルに換算することができる。
【0111】
図22は本実施例における拡散板付近の光路を示す。
図22において、Xiを入射光の円形領域の直径、Xoを出射光の円形領域の直径とする。また、Lは焦点距離である。
【0112】
ここで、実施例1で説明したとおり、
図3(B)の構成におけるB光利用率E2は、R2×T2=R2×(1−(R2×β/α)であり、透過/反射特性の領域分割および拡散板を採用しない
図3(A)の構成におけるB光利用率E1は、(R1×T1)=R1×(1−R1)である。また、E2>E1となるための条件は、実施例1で既に説明したとおり、(SO−SWO)/SO>(SI−SWI)/SIと変形できる。この式は、さらに1−SWO/SO>1−SWI/SIと変形でき、両辺から1を減じて不等号を整理すると、SWO/SO<SWI/SIと変形でき、SO/SWO>SI/SWIと変形できる。さらに、両辺にSWO/SWIを乗ずると、SO/SWI>(SI/SWI)×(SWO/SWI)と変形できる。
【0113】
ここで、SO/SWIとは、ダイクロイックミラーのおけるB光の入射領域I内の異特性領域WIの大きさであるSWIの面積(すなわちコンデンサレンズ25へ向かうB光束の断面積)に対して、ダイクロイックミラーに戻ってくるB拡散光の領域Oの面積SO(すなわちコンデンサレンズ25から戻ってくるB光束の断面積)の比であり、コンデンサレンズ25と拡散板26の機能により、B光束の断面積が拡大する効果を示すものである。さらに、SI/SWIとは、
図3(B)の構成における実質反射率R2の逆数である。また、SWO/SWIは既に説明したβである。よって、SO/SWI>(SI/SWI)×(SWO/SWI)は、SO/SWI>β/R2と変形できる。
【0114】
ここで、既に説明した透過/反射特性の領域分割および拡散板を採用しない
図3(A)で好適なB光反射率はR1=0.2であり、
図21のように、異特性領域WIが入射領域Iに包含される場合は、β=1であるから、SO/SWI>1/0.2つまりSO/SWI>5となる。すなわち、拡散板26の機能によって、従来方式でのB光利用率を超えるためには、SO/SWIの面積比が5倍を超える必要がある。
【0115】
SOは拡散光の入射領域Oの面積、SWIはB入射光の入射領域Iのうち異特性領域である全反射領域WIの面積であるから、
図22において、SO=π(Xo/2)
2、SWI=π(Xi/2)
2となる。よって、SO/SWIの面積比が5倍を超える条件は、π(Xo/2)
2>5×π(Xi/2)
2となる。すなわち、Xo>√5×Xiとなる。
【0116】
このとき、
図22において、集光角θiをXiとコンデンサレンズ25の焦点距離Lで表すと、集光角θi=2×arcsin((Xi/2)/L)となる。また、拡散角θoをXoとコンデンサレンズ25の焦点距離Lで表すと、拡散角θo=2×arcsin((Xo/2)/L)となる。これらの数式を考慮すると、SO/SWIの面積比が5倍を超える条件であるXo>√5×Xiを満たす拡散角の条件は、θo>2×arcsin((√5×Xi/2)/L)となる。
【0117】
ここで、光源装置2の光学系の全体スケールとしては、原則として、映像表示素子6R、6G、6Bに用いるパネルの開口サイズを基準として、効率が好適になる各種光路長や光束開口が定まることになり、各光学要素の設計により多少の許容幅が存在することになる。具体例としては、映像表示素子6R、6G、6Bに用いるパネルの開口サイズが約0.6インチである場合、例えば、
図22の焦点距離Lは約15mm程度が好適であり、
図21の面積SWIは35平方mm程度が好適である。映像表示素子6R、6G、6Bに用いるパネルの開口サイズとして、プロジェクタのモデルにより例えば0.3インチから1.0インチ程度のパネルを用いる可能性があることを考慮し、さらに上記光学系の各光学要素の設計に幅があることを考慮すると、
図22の焦点距離Lの許容範囲は12mm〜30mm程度であり、
図21の面積SWIの許容範囲は25平方mm〜42平方mm程度である。なお、面積SWIの許容範囲である25平方mm〜42平方mm程度をXiの範囲に換算すると、Xiの許容範囲は5.64mm〜7.31mmということなる。
【0118】
拡散版26の拡散角の特性は、上述の映像表示素子6R、6G、6Bに用いるパネルの開口サイズや、光源装置2の光学系の各光学要素の設計パラメータほど、プロジェクタのモデルにより容易に調整できるものではないため、拡散版26のコストを低減するためにはパネルの開口サイズの異なる複数のプロジェクタのモデルについて、共通の方式の拡散板を用いることが望ましい。すると、上述の
図22の焦点距離Lの許容範囲である12mm〜30mm程度と、
図21の面積SWIの許容範囲である25平方mm〜42平方mm程度(Xiの許容範囲では5.64mm〜7.31mm)の両者のすべての範囲で、SO/SWIの面積比が5倍を超える拡散角の条件を求める必要がある。
【0119】
すなわち、焦点距離Lの許容範囲12mm〜30mm程度とXiの許容範囲5.64mm〜7.31mmの範囲の全てにおいて上述の拡散角の条件式θo>2×arcsin((√5×Xi/2)/L)を満たす拡散角θoを求めればよい。上記の条件式では、Lが小さいほど拡散角θoが大きくなり、Xiが大きいほど拡散角θoが大きくなる。すると、上述のLとXiの許容範囲において最も拡散角θoの要求角度が大きい値となるのは、Lが許容範囲の最小値である12mmであって、Xiが許容範囲の最大値である7.31mmである(面積SWIが許容範囲の最小値である25平方mm)場合となる。そこで条件式θo>2×arcsin((√5×Xi/2)/L)に、L=12mm、Xi=7.31mmを代入すると、θo>2×arcsin((√5×7.31/2)/12)となる。これを計算すると、θo>86°となる。
【0120】
すなわち、本実施例のプロジェクタに用いる拡散板として、従来方式でのB光利用率を超えることが可能な拡散板であって、より低コストな拡散板の条件は、拡散角θo>86°を満たす方式の拡散板を用いれば良いこととなる。
【0121】
次に、
図23は、本実施例のプロジェクタに用いる拡散板の一例として、アルミナセラミック板を用いた場合とその他の方式の場合を比較した表である。
図23では、拡散板の方式として、4つの方式を比較している。A方式は、上記で説明したアルミナセラミック板を反射型拡散板として用いる方式である。B方式は、ガラスの両面にサンドブラストやエッチングによりザラザラ加工を加えたフロストガラスとその背面にミラーを付加して反射型拡散板とする方式である。C方式は、金属に凸凹の表面加工を行って反射型拡散板として用いる方式である。さらにD方式は、ガラスの片面にサンドブラストやエッチングによりザラザラ加工を加えたフロストガラスとその背面にミラーを付加して反射型拡散板とする方式である。さらにD方式は、ガラスの片面にサンドブラストやエッチングによりザラザラ加工を加えたフロストガラスとその背面にミラーを付加して反射型拡散板とする方式である(B方式に対してフロストガラスをガラスの片面のみに変更した方式ともいえる)。
【0122】
ここで、
図23は、各方式について、基板材質、加工内容、出射光拡散角θo、スペックル等ノイズの量、コストについて比較した結果を示している。まず、基板材質については、A方式はアルミナセラミック板のみ、C方式は金属のみを用いる。B方式、D方式は、透過ガラスとミラーを必要とする。よって、基板材質部分のコストを考慮すると、複数の基板材質が必要なB方式、D方式は比較的不利である。
【0123】
また、加工内容については、A方式はアルミナセラミックをプレスするのみで製作可能であり、凸凹加工が不要である。これは加工コスト面で有利である。また、他のB方式、C方式、D方式は、いずれも、反射面に凹凸加工が必要であり、加工コスト面で不利である。
【0124】
また、出射光拡散角θoについては、A方式のアルミナセラミック方式は、入射光の集光角に依存せずランダムな拡散出射光が生成され、その出射光拡散角θoは約120°と大きい。
【0125】
次に、B方式では、出射光拡散角は入射光の集光角に依存し、出射光拡散角は入射光の集光角に対して拡散板の拡散角増加効果を加えたものとなる。例えば、入射光の集光角を約14°とすると、B方式の拡散角増加効果は約30°程度あるので、最終的な出射光拡散角θoは、約14°+約30°=約44°となる。
【0126】
また、C方式では、入射光の集光角に依存せずランダムな拡散出射光が生成され、その出射光拡散角θoは約40°程度である。
【0127】
最後に、D方式については、出射光拡散角は入射光の集光角に依存し、出射光拡散角は入射光の集光角に対して拡散板の拡散角増加効果を加えたものとなる。例えば、入射光の集光角を約14°とすると、D方式の拡散角増加効果は約6°程度あるので、最終的な出射光拡散角θoは、約14°+約6°=約20°となる。
【0128】
ここで、A、B、C、D各方式の出射光拡散角と、上述した、B光利用率が従来方式を超える低コストな拡散板の拡散角の条件式θo>86°を比較すると、A方式のアルミナセラミック方式のみが条件を上回り、本実施例のプロジェクタに用いる拡散板としてより好適であるといえる。他の3方式では、この条件を満たしていないこととなる。
【0129】
次に、スペックル等のノイズについては、A方式、B方式が小であるのに対し、C方式、D方式は中または大となっている。この点でもA方式のアルミナセラミック方式は比較的優れていることとなる。
【0130】
最後に、基板材質と加工内容を考慮した総合的なコストについては、基板材質が複数必要なB方式、D方式は高価にならざるを得ないが、A方式、C方式は比較的安価である。総合的なコストの点でも、A方式のアルミナセラミック方式は比較的優れていることとなる。
【0131】
このように、本実施例のプロジェクタに用いる拡散版としては、いずれの比較項目でも有利であり、特に、出射拡散角θoが上述の拡散角の条件式を十分満足し、スペックル等のノイズも少なく、比較的安価なアルミナセラミック方式の拡散板を採用することが有利であることがわかる。
【0132】
以上説明した本実施例に係るプロジェクタは、出射光拡散角がθo>86°を満たす拡散板を用いることにより、よりB光利用率を高めた安価なプロジェクタを提供することが可能である。特に、アルミナセラミックを用いた拡散板を採用することで、より好適なプロジェクタを実現することができる。
【実施例8】
【0133】
本実施例では、上述の各実施例に係るプロジェクタにおいて、蛍光体への励起光のスポット形状と位置を工夫することで、蛍光体の変換効率低下を抑制する例について説明する。
【0134】
蛍光体は励起光量の増加に伴い、変換効率が減少する。これを輝度飽和という。そのため、本実施例では、蛍光体に照射する励起光の面積を大きくし、励起光の密度を下げることによって輝度飽和による蛍光体の変換効率低下を抑制する。
【0135】
本実施例に係るプロジェクタの光学系は
図1に示す光学系のうち、光源装置2を
図24の構成に変えたものである。その他の部分の構成及び動作は実施例1と同様であるため、その説明を省略する。
【0136】
図24は、本実施例における光源装置の構成図である。
図24において、
図2と同じ機能を有する構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図24において、
図2と異なる点は、ダイクロイックミラー24の手前にアレイレンズ101、102を配置した点である。これにより、蛍光体ホイールへの特定形状の励起光を形成する。アレイレンズの詳細については後述する。
図24において、光源21より出射された青色レーザ光は、レンズ22、23によってB光束が平行な光束となり、アレイレンズ101、102のレンズセルごとに分割され、ダイクロイックミラー24を通過した後、コンデンサレンズ27によって集光されながらレンズセル単位で重畳されレンズセルの相似形状で蛍光体ホイール28に照射される。すなわち、アレイレンズ101、102は、矩形形状の励起光を生成する生成レンズとして機能する。
【0137】
図25は、本実施例におけるアレイレンズの構成図である。
図25において、(A)は側面図、(B)、(C)は、(A)における矢印方向からみた正面図である。
図25に示すように、アレイレンズは光軸1の延在する方向から見て矩形形状を有する複数のレンズセル100がマトリクス(2次元)状に配設されたものであり、(B)は、レンズセルの矩形形状の縦横比が1:1でない場合の例、(C)は、縦横比が1:1の場合を示している。
【0138】
第1のアレイレンズ101のレンズセル分割と第2のアレイレンズ102のレンズセル分割は、いずれも
図25に示す同じレンズセル分割であり、アレイレンズ101と102のそれぞれのレンズセルは1対1で対応している。アレイレンズ101に入射された光は各レンズセルから空間的に分かれて出射し、各レンズセルを出射した光は、対応するアレイレンズ102のレンズセルに結像する。また、アレイレンズ102の複数のレンズセルの各々から射出される光は、ダイクロイックミラー24を介してコンデンサレンズ27で集光され、蛍光体ホイール28上に結像する。各レンズセルの曲率は、後述の共役関係を満たすようにそれぞれのアレイレンズのそれぞれのセルで適宜決定する。
【0139】
アレイレンズ101に入射した光を複数のレンズセルで複数の光に分割して、効率よくアレイレンズ102の各レンズセルを通過するように導くために、アレイレンズ101の位置と各レンズセルの曲率は、光源21とアレイレンズ102の各レンズセルとが光学的に略共役な関係になるように構成する。また、アレイレンズ102のレンズセルそれぞれが対応するアレイレンズ101のレンズセルの形状と相似の形状の光を蛍光体ホイール28に投影する。すなわち、アレイレンズ102の位置と各レンズセルの曲率は、対応するアレイレンズ101の各レンズセルと蛍光体ホイール面とが光学的に略共役な関係になるように設定されている。これにより、アレイレンズ101に入射した光は、レンズセル単位で重畳され、アレイレンズ101の矩形形状のレンズセルの相似形状で蛍光体ホイール28に照射される。これら複数のアレイレンズによる光学系は、光源から出射された光を矩形形状に変換して蛍光体ホイール28に照射することにより照射範囲での輝度分布を均一化する機能を有する。
【0140】
図26は、本実施例における蛍光体ホイールに照射する励起光の蛍光体ホイール1回転あたりの照射面積を説明する図である。
図26は、励起光照射領域と、蛍光体ホイール上の蛍光体塗布領域と、蛍光体ホイール1回転あたりの励起光照射面積の関係を示している。
図26において、前述したアレイレンズ101、102により、蛍光体ホイール上へ照射する励起光はアレイレンズ101のレンズセルと相似の矩形の像を形成し、励起光照射領域として照射される。ここで、蛍光体ホイール上の励起光照射領域を矩形の上下方向の長さ、すなわちy軸方向の長さをv、水平方向の長さ、すなわちx軸方向の長さをhとする。なお、x軸は、
図24に示したような光源装置を有するプロジェクタの水平方向であり、同様に、y軸は、プロジェクタの垂直方向に対応する。
【0141】
また、励起光照射領域の矩形の中心と蛍光体ホイールの中心との距離をr0とする。ここで、蛍光体ホイール1回転あたりの照射面積は、励起光照射領域の矩形上で最も蛍光体ホイールの中心から遠い点と蛍光体ホイールの中心との距離r2を半径とする円と、矩形上で最も蛍光体ホイールの中心に近い点と蛍光体ホイールの中心との距離r1を半径とする円に挟まれたドーナツ型の領域の面積として求められる。ここで、距離r1を定める矩形上で最も蛍光体ホイールの中心に近い点は矩形の頂点または辺上にある。また、距離r2を定める矩形上で最も蛍光体ホイールの中心から遠い点は必ず矩形の頂点にある。
【0142】
ここで、単位時間あたりに照射する光量が同じであれば、蛍光体ホイール1回転時間あたりの照射面積が大きいほど光の照射密度は小さくなり、蛍光体ホイール1回転時間あたりの照射面積が小さいほど光の照射密度は大きくなる。よって、蛍光体ホイール1回転あたりの照射面積がより大きくなるように励起光照射領域の配置を工夫することにより、輝度飽和による蛍光体の変換効率低下を抑制することができる。
【0143】
図27は、本実施例における蛍光体ホイールに照射する励起光の照射領域の配置の一例を説明する図であり、具体的には、蛍光体ホイールに照射する励起光の蛍光体ホイール1回転あたりの照射面積が最大となる場合を説明する図である。r0が一定の場合、
図27に示すように、蛍光体ホイールの中心からの延長線と矩形の励起光照射領域の対角線が重なる(略一致する)ように構成した場合、r1が最も小さくなり、r2が最も大きくなる。このため、蛍光体ホイール1回転あたりの照射面積を最大にすることができ、励起光の照射密度が最も小さくなる。よって、
図27のように構成することで、輝度飽和による蛍光体の変換効率低下を最も効果的に抑制することができる。
【0144】
しかしながら、構成上の制約等でこのような最も効果的な配置にできないこともあり得る。その場合でも、好ましい配置となる例を以下に説明する。
【0145】
図28は、本実施例における蛍光体ホイールの座標系と蛍光体塗布領域の分割領域を説明する図である。
図28において、(A)に蛍光体ホイールの座標系と蛍光体の塗布領域を示す。(B)に蛍光体塗布領域を16分割した図を示す(領域A〜P)。
(A)に示すように、蛍光体ホイール上でx軸(光源装置を有するプロジェクタの水平方向)、y軸(光源装置を有するプロジェクタ垂直方向)を定義し、蛍光体ホイールの中心oを中心とし、x軸を基準に反時計回りを正とする角度θを定義すると、(B)に示す各領域は、以下となる。
領域Aは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度0〜22.5°の領域、
領域Bは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度22.5°〜45°の領域、
領域Cは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度45〜67.5°の領域、
領域Dは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度67.5〜90°の領域、
領域Eは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度90〜112.5°の領域、
領域Fは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度112.5〜135°の領域、
領域Gは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度135〜157.5°の領域、
領域Hは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度157.5〜180°の領域、
領域Iは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度180〜202.5°の領域、
領域Jは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度202.5〜225°の領域、
領域Kは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度225〜247.5°の領域、
領域Lは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度247.5〜270°の領域、
領域Mは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度270〜292.5°の領域、
領域Nは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度292.5〜315°の領域、
領域Oは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度315〜337.5°の領域、
領域Pは、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち、角度337.5〜360°の領域である。
【0146】
図29A、
図29B、
図29Cは、蛍光体ホイールに照射する励起光の照射領域の配置の一例を説明する図であり、具体的には、本実施例における励起光照射領域の矩形形状によって蛍光体ホイール1回転あたりの励起光の照射面積が大きくなる励起光照射領域を説明する図である。
図29Aは励起光照射領域の矩形がh<vである場合を示しており、
図29Bは励起光照射領域の矩形がh=vである場合を示しており、
図29Cは励起光照射領域の矩形がh>vである場合を示している。
【0147】
まず、
図29Aの励起光照射領域の矩形がh<vである場合について説明する。
図29Aに示すように、例えば、矩形の中心と蛍光体ホイールの中心との距離r0が一定の条件で検討しても、y軸付近に励起光照射領域をレイアウトすれば、x軸付近に励起光照射領域をレイアウトする場合に比べて、距離r1は小さく、距離r2を大きくすることができる。そのため、励起光照射領域の矩形がh<vである場合、蛍光体ホイールの中心からの延長線と矩形の励起光照射領域の対角線が重なる位置付近および矩形がy軸側に位置する範囲を合わせた範囲、具体的には、励起光照射領域の位置を、矩形の中心が領域C,D,E,F,K,L,M,N内にあるような位置(矩形の中心が、蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち角度45°以上135°以下または225°以上315°以下の領域にあるような位置)とすることにより、矩形の中心が領域A、B、G、H、I、J、O、P内にあるような位置とする場合に比べて、蛍光体ホイール1回転あたりの照射面積を大きくすることができ、励起光の照射密度を小さくすることができ、輝度飽和による蛍光体の変換効率低下を効果的に抑制することができる。
【0148】
次に、
図29Bの励起光照射領域の矩形がh=vである場合について説明する。
図29Bに示すように、例えば、矩形の中心と蛍光体ホイールの中心との距離r0が一定の条件で検討しても、蛍光体ホイールの中心からの延長線と矩形の励起光照射領域の対角線が重なる位置付近である、45°、135°、225°、315°付近に励起光照射領域をレイアウトすれば、x軸やy軸付近に励起光照射領域をレイアウトする場合に比べて、距離r1は小さく、距離r2を大きくすることができる。そのため、励起光照射領域の矩形がh=vである場合、具体的には、励起光照射領域の位置を、矩形の中心が領域B,C,F,G,J,K,N,O内にあるような位置(矩形の中心が蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち角度22.5°以上67.5°以下、112.5°以上157.5°以下、202.5°以上247.5°以下または292.5°以上337.5°以下の領域にあるような位置)とすることにより、矩形の中心が領域A、D、E、H、I、L、M、P内にあるような位置とする場合に比べて、蛍光体ホイール1回転あたりの照射面積を大きくすることができ、励起光の照射密度を小さくすることができ、輝度飽和による蛍光体の変換効率低下を効果的に抑制することができる。
【0149】
次に、
図29Cの励起光照射領域の矩形がh>vである場合について説明する。
図29Cに示すように、例えば、矩形の中心と蛍光体ホイールの中心との距離r0が一定の条件で検討しても、x軸付近に励起光照射領域をレイアウトすれば、y軸付近に励起光照射領域をレイアウトする場合に比べて、距離r1は小さく、距離r2を大きくすることができる。そのため、励起光照射領域の矩形がh>vである場合、蛍光体ホイールの中心からの延長線と矩形の励起光照射領域の対角線が重なる位置付近および矩形がx軸側に位置する範囲を合わせた範囲、具体的には、励起光照射領域の位置を、矩形の中心が領域A、B、G、H、I、J、O、Pにあるような位置(矩形の中心が蛍光体ホイールの蛍光体塗布領域のうち角度0°以上45°以下または135°以上225°以下または315°以上360°以下の領域にあるような位置)とすることにより、矩形の中心が領域C,D,E,F,K,L,M,N内にあるような位置とする場合に比べて、蛍光体ホイール1回転あたりの照射面積を大きくすることができ、励起光の照射密度を小さくすることができ、輝度飽和による蛍光体の変換効率低下を効果的に抑制することができる。
【0150】
以上のように、本実施例によれば、矩形形状の励起光を生成する生成レンズを有し、矩形形状の励起光照射領域の配置を限定することで蛍光体ホイール1回転あたりの励起光の照射面積を大きくし、励起光の照射密度を小さくすることができ、輝度飽和による蛍光体の変換効率低下を効果的に抑制することができる。
【0151】
なお、以上説明した本実施例の光源装置は、実施例1のプロジェクタの光学系のみならず、実施例2、3、4、5、6、7のいずれの実施例に適用することが可能である。実施例2、3、4の光学系に本実施例の光源装置を適用する場合には、
図24の光源装置において、ダイクロイックミラー24の特性をそれぞれ
図5、7、10のダイクロイックミラーの特性に変更し、拡散板26の配置をそれぞれ
図5、7、10の拡散板の配置と合わせ、蛍光体ホイール28の配置をそれぞれ
図5、7、10の蛍光体ホイールの配置に合わせればよい。
【0152】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部を他の構成に置き換えることも可能である。