【文献】
作花済夫 編,ガラスの百科事典,初版第1刷,日本,株式会社朝倉書店,2007年10月20日,pp. 578-579
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の支持ガラス基板の製造方法を詳細に説明する。
【0031】
本発明の支持ガラス基板の製造方法では、まずガラス原料を調合、混合して、ガラスバッチを作製し、このガラスバッチをガラス溶融炉に投入した後、得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、成形装置に供給して、板状に成形し、支持ガラス基板を得ることが好ましい。
【0032】
ガラスバッチは、所望の熱膨張係数になるように調製することが好ましい。具体的には、加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合は、高膨張のガラス組成になるようにガラスバッチを調製し、逆に、加工基板内で半導体チップの割合が多く、封止材の割合が少ない場合は、低膨張のガラス組成になるようにガラスバッチを調製することが好ましい。
【0033】
30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を0×10
−7/℃以上、且つ50×10
−7/℃未満に規制する場合、支持ガラス基板が、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜75%、Al
2O
3 15〜30%、Li
2O 0.1〜6%、Na
2O+K
2O(Na
2OとK
2Oの合量) 0〜8%、MgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 0〜10%を含有するようにガラスバッチを調製することが好ましく、SiO
2 55〜75%、Al
2O
3 10〜30%、Li
2O+Na
2O+K
2O(Li
2O、Na
2O及びK
2Oの合量) 0〜0.3%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜20%を含有するようにガラスバッチを調製することも好ましく、SiO
2 55〜68%、Al
2O
3 12〜25%、B
2O
3 0〜15%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜30%を含有するようにガラスバッチを調製することも好ましい。30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を50×10
−7/℃以上、且つ70×10
−7/℃未満に規制する場合、支持ガラス基板が、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜75%、Al
2O
3 3〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 5〜15%、K
2O 0〜10%を含有するようにガラスバッチを調製することが好ましく、SiO
2 64〜71%、Al
2O
3 5〜10%、B
2O
3 8〜15%、MgO 0〜5%、CaO 0〜6%、SrO 0〜3%、BaO 0〜3%、ZnO 0〜3%、Na
2O 5〜15%、K
2O 0〜5%を含有するようにガラスバッチを調製することが更に好ましい。30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を70×10
−7/℃以上、且つ85×10
−7/℃以下に規制する場合、支持ガラス基板が、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 60〜75%、Al
2O
3 5〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 7〜16%、K
2O 0〜8%を含有するようにガラスバッチを調製することが好ましく、SiO
2 60〜68%、Al
2O
3 5〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜3%、BaO 0〜3%、ZnO 0〜3%、Na
2O 8〜16%、K
2O 0〜3%を含有するようにガラスバッチを調製することが更に好ましい。30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を85×10
−7/℃超、且つ120×10
−7/℃以下に規制する場合、支持ガラス基板が、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 45〜70%(55〜70%)、Al
2O
3 3〜25%(好ましくは3〜13%)、B
2O
3 0〜8%(好ましくは2〜8%)、P
2O
5 0〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 10〜21%、K
2O 0〜5%を含有するようにガラスバッチを調製することが好ましい。30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を120×10
−7/℃超、且つ165×10
−7/℃以下に規制する場合、支持ガラス基板が、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 53〜65%、Al
2O
3 3〜13%、B
2O
3 0〜5%、MgO 0.1〜6%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O+K
2O 20〜40%、Na
2O 12〜21%、K
2O 7〜21%を含有するようにガラスバッチを調製することが好ましい。このようにすれば、熱膨張係数を目標値に調整し易くなると共に、耐失透性が向上するため、全体板厚偏差が小さい支持ガラス基板を成形し易くなる。なお、「30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定した値を指す。
【0034】
ガラスバッチ中に、清澄剤としてAs
2O
3、Sb
2O
3、CeO
2、SnO
2、F、Cl、SO
3の群(好ましくはSnO
2、Cl、SO
3の群)から選択された一種又は二種以上を0.05〜2質量%添加してもよい。SnO
2、SO
3及びClの合量は、好ましくは0〜1質量%、100〜3000ppm(0.01〜0.3質量%)、300〜2500ppm、特に500〜2500ppmである。なお、SnO
2、SO
3及びClの合量が100ppmより少ないと、清澄効果を享受し難くなる。
【0035】
環境的観点から、As
2O
3、Sb
2O
3及びFの使用は極力控えることが好ましく、実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「実質的に〜を含有しない」とは、具体的には、明示の成分の含有量が500ppm(質量)未満であることを指す。環境的観点から、ガラス組成中に実質的にPbO、Bi
2O
3を含有しないことも好ましい。
【0036】
本発明の支持ガラス基板の製造方法において、支持ガラス基板のヤング率が60GPa以上(望ましくは65GPa以上、70GPa以上、特に75〜130GPa)になるようにガラスバッチを調製することが好ましい。加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合、積層体全体の剛性が低下して、加工処理工程で加工基板が反り易くなる。そこで、支持ガラス基板のヤング率を高めると、加工基板の反り変形を抑制し易くなり、加工基板を強固、且つ正確に支持することが可能になる。ここで、「ヤング率」は、曲げ共振法により測定した値を指す。
【0037】
支持ガラス基板の液相温度が1150℃未満(望ましくは1120℃以下、1100℃以下、1080℃以下、1050℃以下、1010℃以下、980℃以下、960℃以下、950℃以下、特に940℃以下)になるようにガラスバッチを調製することが好ましい。また支持ガラス基板の液相粘度が10
4.8dPa・s以上(望ましくは10
5.0dPa・s以上、10
5.2dPa・s以上、10
5.4dPa・s以上、特に10
5.6dPa・s以上)になるようにガラスバッチを調製することが好ましい。このようにすれば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で支持ガラス基板を成形し易くなるため、板厚が小さい支持ガラス基板を作製し易くなると共に、表面を研磨しなくても、全体板厚偏差を低減することができる。或いは、少量の研磨によって、全体板厚偏差を2.0μm未満、特に1.0μm未満まで低減することができる。結果として、支持ガラス基板の製造コストを低廉化することもできる。なお、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定することにより算出可能である。「液相粘度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。
【0038】
本発明の支持ガラス基板の製造方法において、板厚が400μm以上、且つ2mm未満になるように、支持ガラス基板を成形することが好ましい。支持ガラス基板の板厚は、好ましくは400μm以上、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上、900μm以上、特に1000μm以上である。支持ガラス基板の板厚は小さ過ぎると、機械的強度が低下して、半導体パッケージの製造工程で支持ガラス基板が破損し易くなる。一方、支持ガラス基板の板厚が大き過ぎると、積層体の質量が大きくなるため、ハンドリング性が低下する。また半導体パッケージの製造工程で、積層体が半導体パッケージの製造装置内の高さ制限をクリアできない虞が生じる。よって、支持ガラス基板の板厚は、好ましくは2.0mm未満、1.5mm以下、1.2mm以下、特に1.1mm以下である。
【0039】
ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で支持ガラス基板を成形することが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、耐熱性の樋状構造物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下頂端で合流させて、ガラス内部に成形合流面を形成しながら、下方に延伸成形する方法である。オーバーフローダウンドロー法では、ガラス表面になるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形される。このため、板厚が小さい支持ガラス基板を作製し易くなると共に、表面を研磨しなくても、全体板厚偏差を低減することができる。或いは、少量の研磨によって、全体板厚偏差を2.0μm未満、特に1.0μm未満まで低減することができる。結果として、支持ガラス基板の製造コストを低廉化することができる。
【0040】
支持ガラス基板の成形方法として、オーバーフローダウンドロー法以外にも、例えば、スロットダウン法、リドロー法、フロート法等を採択することもできる。
【0041】
本発明の支持ガラス基板の製造方法は、熱処理工程前に、成形後の支持ガラス基板の熱膨張係数を測定する工程を備えることが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板の熱膨張係数の測定値を考慮した上で、熱処理条件(熱処理の最高温度、熱処理の降温速度等)を制御することにより、支持ガラス基板の熱膨張係数を目標値に調整し易くなる。
【0042】
本発明の支持ガラス基板の製造方法は、熱処理工程前に、支持ガラス基板の洗浄工程を設けてもよい。これにより、支持ガラス基板に異物が付着しても、付着した異物が熱処理により支持ガラス基板の表面に焼き付くことを防止することができる。
【0043】
本発明の支持ガラス基板の製造方法は、成形後の支持ガラス基板を熱処理して、支持ガラス基板の熱膨張係数を変動させる熱処理工程を備えるが、その場合、成形工程後の支持ガラス基板を熱処理して、支持ガラス基板の熱膨張係数を低下させることが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板の熱膨張係数を目標値に制御し易くなる。なお、熱処理により、支持ガラス基板の熱膨張係数を増加させることも可能であるが、この場合、成形時に支持ガラス基板を十分に徐冷した後、熱処理工程に供しなければならず、支持ガラス基板の製造効率が低下し易くなる。
【0044】
熱処理工程で、支持ガラス基板の温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数を0.05×10
−7〜3×10
−7/℃低下させることが好ましく、0.1×10
−7〜3×10
−7/℃低下させることがより好ましく、0.2×10
−7〜1×10
−7/℃低下させることが更に好ましく、0.3×10
−7〜0.8×10
−7/℃低下させることが特に好ましい。溶融条件、成形条件等の変動により支持ガラス基板の熱膨張係数は変動する。その変動幅はそれほど大きくないが、熱膨張係数を厳密に調整する必要がある支持ガラス基板の用途では、これらの僅かな変動が問題になる。そして、溶融条件、成形条件等を管理して、熱膨張係数を目標値に制御することは困難である。そこで、熱処理工程で熱処理条件(熱処理の最高温度、熱処理の降温速度など)を調整すると、溶融条件、成形条件等を厳密に管理しなくても、支持ガラス基板の熱膨張係数を目標値に制御し易くなる。
【0045】
本発明の支持ガラス基板の製造方法は、成形後の支持ガラス基板を熱処理して、支持ガラス基板の密度を変動させる熱処理工程を備えることが好ましく、その場合、成形工程後の支持ガラス基板を熱処理して、支持ガラス基板の密度を上昇させることが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板の密度を厳密に調整する必要がある場合に、支持ガラス基板の密度を目標値に制御し易くなる。なお、熱処理により、支持ガラス基板の密度を低下させることも可能であるが、この場合、成形時に支持ガラス基板を十分に徐冷した後、熱処理工程に供しなければならず、支持ガラス基板の製造効率が低下し易くなる。
【0046】
支持ガラス基板の密度の上昇度合いは、支持ガラス基板の熱膨張係数の低下度合いと相関している。よって、支持ガラス基板の密度の上昇値を測定すれば、支持ガラス基板の熱膨張係数の低下値を簡易に見積もることができる。熱処理工程で、支持ガラス基板の密度を0.001〜0.05g/cm
3上昇させることが好ましく、0.004〜0.03g/cm
3上昇させることが更に好ましく、0.007〜0.015g/cm
3上昇させることが特に好ましい。密度の上昇値が上記範囲外になると、支持ガラス基板の熱膨張係数の低下値を見積もり難くなる。
【0047】
熱処理の最高温度は、好ましくは(支持ガラス基板の歪点−100)℃超、(支持ガラス基板の歪点−50)℃以上、(支持ガラス基板の歪点−30)℃以上、支持ガラス基板の歪み点以上、(支持ガラス基板の歪点+10)℃以上、(支持ガラス基板の歪点+20)℃以上、(支持ガラス基板の歪点+30)℃以上、特に(支持ガラス基板の歪点+50)℃以上である。熱処理の最高温度が低過ぎると、支持ガラス基板の熱膨張係数を変動させるための熱処理時間が不当に長くなり、熱処理効率が低下し易くなる。更に熱処理により支持ガラス基板の熱膨張係数を低下させ難くなる。その一方で、熱処理の最高温度が高すぎると、支持ガラス基板が熱変形し易くなる。よって、熱処理の最高温度は、好ましくは(支持ガラス基板の歪点+150)℃以下、(支持ガラス基板の歪点+120)℃以下である。
【0048】
熱処理工程では、熱処理炉から支持ガラス基板を安全に取り出すために、熱処理の最高温度から降温する必要がある。その降温速度は、好ましくは5℃/分以下、4℃/分以下、3℃/分以下、2℃/分以下、1℃/分以下、特に0.8℃/分以下である。降温速度が速過ぎると、熱処理工程後に支持ガラス基板に熱歪が残留し易くなり、また熱処理炉から支持ガラス基板を取り出す際に支持ガラス基板が破損する虞がある。その一方で、降温速度が遅過ぎると、支持ガラス基板の熱膨張係数を変動させるための熱処理時間が不当に長くなり、熱処理効率が低下し易くなる。よって、降温速度は、好ましくは0.01℃/分以上、0.05℃/分以上、0.1℃/分以上、0.2℃/分以上、特に0.5℃/分以上である。
【0049】
支持ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後の支持ガラス基板を載置した後、熱処理工程に供することが好ましい。このようにすれば、熱処理の際に、支持ガラス基板の温度ムラを低減することができる。なお、熱処理用セッターの寸法が支持ガラス基板の寸法と同等又は小さいと、支持ガラス基板の一部が熱処理用セッターから食み出し易く、その食み出し部分に熱変形が生じ易くなる。
【0050】
本発明の支持ガラス基板の製造方法では、熱処理により支持ガラス基板の反り量を40μm以下まで低減することが好ましい。そして、支持ガラス基板の反り量を低減するために、支持ガラス基板の上方に耐熱基板を配置し、熱処理用セッターと耐熱基板で支持ガラス基板を挟持しながら熱処理を行うことが好ましい。なお、耐熱基板として、ムライト基板、アルミナ基板等が使用可能である。また、複数枚の支持ガラス基板を積層させた状態で、熱処理を行うことが好ましい。これにより、積層下方に積層された支持ガラス基板の反り量が、上方に積層された支持ガラス基板の質量によって適正に低減される。更に支持ガラス基板の熱処理効率を高めることができる。
【0051】
本発明の支持ガラス基板の製造方法は、熱処理工程後に、支持ガラス基板の表面を研磨して、全体板厚偏差を2.0μm未満に低減する研磨工程を備えることが好ましい。研磨処理の方法としては、種々の方法を採用することができるが、支持ガラス基板の両面を一対の研磨パッドで挟み込み、支持ガラス基板と一対の研磨パッドを共に回転させながら、支持ガラス基板を研磨処理する方法が好ましい。更に一対の研磨パッドは外径が異なることが好ましく、研磨の際に間欠的に支持ガラス基板の一部が研磨パッドから食み出すように研磨処理することが好ましい。これにより、全体板厚偏差を低減し易くなり、また反り量も低減し易くなる。なお、研磨処理において、研磨深さは特に限定されないが、研磨深さは、好ましくは50μm以下、30μm以下、20μm以下、特に10μm以下である。研磨深さが小さい程、支持ガラス基板の生産性が向上する。
【0052】
支持ガラス基板の全体板厚偏差が2.0μm未満、1μm以下、特に0.1〜1μm未満になるように支持ガラス基板の表面を研磨することが好ましく、また支持ガラス基板の表面の算術平均粗さRaが5nm以下、2nm以下、1.5nm以下、1nm以下、0.8nm以下、特に0.5nm以下になるように支持ガラス基板の表面を研磨することが好ましい。全体板厚偏差が小さい程、或いは表面精度が高い程、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。また支持ガラス基板の強度が向上して、支持ガラス基板及び積層体が破損し難くなる。なお、「算術平均粗さRa」は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定可能である。
【0053】
本発明の支持ガラス基板の製造方法は、熱処理工程後に、支持ガラス基板の周辺部を切断除去する切断除去工程を備えることが好ましく、研磨工程後に、支持ガラス基板の周辺部を切断除去する切断除去工程を備えることが更に好ましい。熱処理工程では、支持ガラス基板の中央部に比べて、周辺部の方が反り量が大きい傾向がある。そこで、熱処理工程後に、支持ガラス基板の周辺部を切断除去すれば、支持ガラス基板の反り量を低減することができる。
【0054】
支持ガラス基板の周辺部を切断除去する際に、矩形の支持ガラス基板から略円板状又はウェハ状に切抜き加工することが好ましい。このようにすれば、半導体パッケージの製造工程に適用し易くなる。必要に応じて、それ以外の形状、例えば矩形等の形状に加工してもよい。切り抜いた支持ガラス基板の真円度(但し、ノッチ部を除く)は1mm以下、0.1mm以下、0.05mm以下、特に0.03mm以下が好ましい。真円度が小さい程、半導体パッケージの製造工程に適用し易くなる。なお、真円度の定義は、ウェハの外形の最大値から最小値を減じた値である。
【0055】
本発明の支持ガラス基板の製造方法は、切断除去工程後に、支持ガラス基板の外周の一部にノッチ部(位置合わせ部)を形成するノッチ加工工程を備えることが好ましい。これにより、支持ガラス基板のノッチ部に位置決めピン等の位置決め部材を当接させて、支持ガラス基板を位置固定し易くなる。結果として、加工基板と支持ガラス基板の位置合わせが容易になる。なお、加工基板にもノッチ部を形成して、位置決め部材を当接させると、加工基板と支持ガラス基板の位置合わせが更に容易になる。
【0056】
本発明の支持ガラス基板の製造方法は、切断除去工程後に、支持ガラス基板の端面(ノッチ部の端面を含む)に対して面取り加工を行う面取り工程を備えることが好ましい。これにより、端面からガラス粉等が発生することを防止することができる。面取り加工には、溝つき砥石を使用した面取り加工、フッ酸等の酸エッチングによる面取り加工等を採択することができる。
【0057】
本発明の支持ガラス基板の製造方法において、支持ガラス基板に対してイオン交換処理を行わないことが好ましい。イオン交換処理を行うと、支持ガラス基板の製造コストが高騰し、更に支持ガラス基板の全体板厚偏差を低減し難くなる。
【0058】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層体を作製する積層工程と、積層体の加工基板に対して、加工処理を行う加工処理工程と、を備えると共に、支持ガラス基板が、上記の支持ガラス基板の製造方法により作製されていることを特徴とする。本発明の半導体パッケージの製造方法において、本発明の支持ガラス基板の製造方法の技術的特徴は記載済みであるため、その部分の詳細な記載を省略する。
【0059】
本発明の半導体パッケージの製造方法において、加工基板と支持ガラス基板の間に、接着層を設けることが好ましい。接着層は、樹脂であることが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化樹脂)等が好ましい。また半導体パッケージの製造工程における熱処理に耐える耐熱性を有するものが好ましい。これにより、半導体パッケージの製造工程で接着層が融解し難くなり、加工処理の精度を高めることができる。なお、加工基板と支持ガラス基板を容易に固定するため、紫外線硬化型テープを接着層として使用することもできる。
【0060】
更に、加工基板と支持ガラス基板の間に、より具体的には加工基板と接着層の間に、剥離層を設けることが好ましい。このようにすれば、加工基板に対して、所定の加工処理を行った後に、加工基板を支持ガラス基板から剥離し易くなる。加工基板の剥離は、生産性の観点から、レーザー光等の照射光により行うことが好ましい。レーザー光源として、YAGレーザー(波長1064nm)、半導体レーザー(波長780〜1300nm)等の赤外光レーザー光源を用いることができる。また、剥離層には赤外線レーザーを照射することで分解する樹脂を使用することができる。また、赤外線を効率良く吸収し、熱に変換する物質を樹脂に添加することもできる。例えば、カーボンブラック、グラファイト粉、微粒子金属粉末、染料、顔料等を樹脂に添加することもできる。
【0061】
剥離層は、レーザー光等の照射光により「層内剥離」又は「界面剥離」が生じる材料で構成される。つまり一定の強度の光を照射すると、原子又は分子における原子間又は分子間の結合力が消失又は減少して、アブレーション(ablation)等を生じ、剥離を生じさせる材料で構成される。なお、照射光の照射により、剥離層に含まれる成分が気体となって放出されて分離に至る場合と、剥離層が光を吸収して気体になり、その蒸気が放出されて分離に至る場合とがある。
【0062】
本発明の半導体パッケージの製造方法において、加工基板の寸法を支持ガラス基板の寸法よりも大きくすることが好ましい。これにより、加工基板と支持ガラス基板を積層する際に、両者の中心位置が僅かに離間した場合でも、支持ガラス基板から加工基板の縁部が食み出し難くなる。
【0063】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、更に積層体を搬送する搬送工程を備えることが好ましい。これにより、加工処理の処理効率を高めることができる。なお、「搬送工程」と「加工処理工程」とは、必ずしも別途に行う必要はなく、同時であってもよい。
【0064】
本発明の半導体パッケージの製造方法において、加工処理は、加工基板の一方の表面に配線する処理、或いは加工基板の一方の表面に半田バンプを形成する処理が好ましい。本発明の半導体パッケージの製造方法では、これらの処理時に加工基板が寸法変化し難いため、これらの工程を適正に行うことができる。
【0065】
加工処理として、上記以外にも、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)を機械的に研磨する処理、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)をドライエッチングする処理、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)をウェットエッチングする処理の何れかであってもよい。なお、本発明の半導体パッケージの製造方法では、加工基板に反りが発生し難いと共に、積層体の剛性を維持することができる。結果として、上記加工処理を適正に行うことができる。
【0066】
図面を参酌しながら、本発明を更に説明する。
【0067】
図1は、本発明に係る積層体1の一例を示す概念斜視図である。
図1では、積層体1は、支持ガラス基板10と加工基板11とを備えている。支持ガラス基板10は、加工基板11の寸法変化を防止するために、加工基板11に貼着されている。支持ガラス基板10と加工基板11との間には、剥離層12と接着層13が配置されている。剥離層12は、支持ガラス基板10と接触しており、接着層13は、加工基板11と接触している。
【0068】
図1から分かるように、積層体1は、支持ガラス基板10、剥離層12、接着層13、加工基板11の順に積層配置されている。支持ガラス基板10の形状は、加工基板11に応じて決定されるが、
図1では、支持ガラス基板10及び加工基板11の形状は、何れも略円板状である。剥離層12は、例えばレーザーを照射することで分解する樹脂を使用することができる。また、レーザー光を効率よく吸収し、熱に変換する物質を樹脂に添加することもできる。たとえば、カーボンブラック、グラファイト粉、微粒子金属粉末、染料、顔料などである。剥離層12は、プラズマCVDや、ゾル−ゲル法によるスピンコート等により形成される。接着層13は、樹脂で構成されており、例えば、各種印刷法、インクジェット法、スピンコート法、ロールコート法等により塗布形成される。また、紫外線硬化型テープも使用可能である。接着層13は、剥離層12により加工基板11から支持ガラス基板10が剥離された後、溶剤等により溶解除去される。紫外線硬化型テープは、紫外線を照射した後、剥離用テープにより除去可能である。
【0069】
図2は、fan out型のWLPの製造工程を示す概念断面図である。
図2(a)は、支持部材20の一方の表面上に接着層21を形成した状態を示している。必要に応じて、支持部材20と接着層21の間に剥離層を形成してもよい。次に、
図2(b)に示すように、接着層21の上に複数の半導体チップ22を貼付する。その際、半導体チップ22のアクティブ側の面を接着層21に接触させる。次に、
図2(c)に示すように、半導体チップ22を樹脂の封止材23でモールドする。封止材23は、圧縮成形後の寸法変化、配線を成形する際の寸法変化が少ない材料が使用される。続いて、
図2(d)、(e)に示すように、支持部材20から半導体チップ22がモールドされた加工基板24を分離した後、接着層25を介して、支持ガラス基板26と接着固定させる。その際、加工基板24の表面の内、半導体チップ22が埋め込まれた側の表面とは反対側の表面が支持ガラス基板26側に配置される。このようにして、積層体27を得ることができる。なお、必要に応じて、接着層25と支持ガラス基板26の間に剥離層を形成してもよい。更に、得られた積層体27を搬送した後に、
図2(f)に示すように、加工基板24の半導体チップ22が埋め込まれた側の表面に配線28を形成した後、複数の半田バンプ29を形成する。最後に、支持ガラス基板26から加工基板24を分離した後に、加工基板24を半導体チップ22毎に切断し、後のパッケージング工程に供される。また、支持ガラス基板26は、HCl等による酸処理を経た後に再利用に供される(
図2(g))。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0071】
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜7、9〜22)と比較例(試料No.8)を示している。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
次のようにして、試料No.1〜7を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 65.6%、Al
2O
3 8.0%、B
2O
3 9.1%、Na
2O 12.8%、CaO 3.2%、ZnO 0.9%、SnO
2 0.3%、Sb
2O
3 0.1%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1550℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が0.7mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。なお、得られたガラス基板について、ASTM C336に記載の方法により歪点を測定したところ、519℃であった。
【0075】
続いて、ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後のガラス基板を載置し、更にこのガラス基板の上に耐熱基板を載置した後、これを電気炉に投入した。次に、表中に記載の最高温度まで電気炉内を昇温し、その最高温度において表中に記載の時間で保持した後、表中に記載の降温速度で電気炉内を降温した。
【0076】
熱処理後のガラス基板について、温度範囲20〜220℃における平均線熱膨張係数と温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数をディラトメーター(ネッチジャパン社製DIL402C)で測定した。なお、試料No.8は、上記熱処理を行っていない成形後のガラス基板を示している。
【0077】
更に、熱処理後のガラス基板について、アルキメデス法により密度を測定した。
【0078】
表1から明らかなように、試料No.1〜7は、所定の熱処理により、熱膨張係数の低下が認められた。これらのデータを利用し、熱処理条件を適宜調整すると、成形後のガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。更に、試料No.1〜7は、所定の熱処理により、密度の上昇が認められた。よって、熱処理条件を適宜調整すると、成形後のガラス基板の密度を目標値に変動させることも可能である。
【0079】
次のようにして、試料No.9、10を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 61.7%、Al
2O
3 18.0%、B
2O
3 0.5%、Na
2O 14.5%、K
2O 2.0%、MgO 3.0%、SnO
2 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1600℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.1mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。なお、得られたガラス基板について、ASTM C336に記載の方法により歪点を測定したところ、567℃であった。
【0080】
続いて、ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後のガラス基板を載置し、更にこのガラス基板の上に耐熱基板を載置した後、これを電気炉に投入した。次に、表中に記載の最高温度まで電気炉内を昇温し、その最高温度において表中に記載の時間で保持した後、表中に記載の降温速度で電気炉内を降温した。
【0081】
熱処理後のガラス基板について、温度範囲20〜220℃における平均線熱膨張係数と温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数をディラトメーター(ネッチジャパン社製DIL402C)で測定した。
【0082】
表2から明らかなように、試料No.9、10は、熱処理条件を適宜調整すると、ガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。
【0083】
次のようにして、試料No.11、12を作製した。まず、質量%で、SiO
2 56.2%、Al
2O
3 13.0%、B
2O
3 2.0%、Na
2O 14.5%、K
2O 4.9%、MgO 2.0%、CaO 2.0%、ZrO
2 4.0% SnO
2 0.35%、Sb
2O
3 0.05%、CeO
2 1.0%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1600℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.1mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。なお、得られたガラス基板について、ASTM C336に記載の方法により歪点を測定したところ、558℃であった。
【0084】
続いて、ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後のガラス基板を載置し、更にこのガラス基板の上に耐熱基板を載置した後、これを電気炉に投入した。次に、表中に記載の最高温度まで電気炉内を昇温し、その最高温度において表中に記載の時間で保持した後、表中に記載の降温速度で電気炉内を降温した。
【0085】
熱処理後のガラス基板について、温度範囲20〜220℃における平均線熱膨張係数と温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数をディラトメーター(ネッチジャパン社製DIL402C)で測定した。
【0086】
表2から明らかなように、試料No.11、12は、熱処理条件を適宜調整すると、ガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。
【0087】
次のようにして、試料No.13、14を作製した。まず、質量%で、SiO
2 60.4%、Al
2O
3 10.7%、Na
2O 15.5%、K
2O 8.8%、MgO 1.7%、CaO 2.6%、Sb
2O
3 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1400℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.1mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。なお、得られたガラス基板について、ASTM C336に記載の方法により歪点を測定したところ、452℃であった。
【0088】
続いて、ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後のガラス基板を載置し、更にこのガラス基板の上に耐熱基板を載置した後、これを電気炉に投入した。次に、表中に記載の最高温度まで電気炉内を昇温し、その最高温度において表中に記載の時間で保持した後、表中に記載の降温速度で電気炉内を降温した。
【0089】
熱処理後のガラス基板について、温度範囲20〜220℃における平均線熱膨張係数と温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数をディラトメーター(ネッチジャパン社製DIL402C)で測定した。
【0090】
表2から明らかなように、試料No.13、14は、熱処理条件を適宜調整すると、ガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。
【0091】
次のようにして、試料No.15、16を作製した。まず、質量%で、SiO
2 60.4%、Al
2O
3 8.7%、Na
2O 13.6%、K
2O 12.7%、MgO 1.6%、CaO 2.5%、Sb
2O
3 0.2%,SnO
2 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1350℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.1mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。なお、得られたガラス基板について、ASTM C336に記載の方法により歪点を測定したところ、445℃であった。
【0092】
続いて、ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後のガラス基板を載置し、更にこのガラス基板の上に耐熱基板を載置した後、これを電気炉に投入した。次に、表中に記載の最高温度まで電気炉内を昇温し、その最高温度において表中に記載の時間で保持した後、表中に記載の降温速度で電気炉内を降温した。
【0093】
熱処理後のガラス基板について、温度範囲20〜220℃における平均線熱膨張係数と温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数をディラトメーター(ネッチジャパン社製DIL402C)で測定した。
【0094】
表2から明らかなように、試料No.15、16は、熱処理条件を適宜調整すると、ガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。
【0095】
次のようにして、試料No.17、18を作製した。まず、質量%で、SiO
2 66.1%、Al
2O
3 8.5%、B
2O
3 12.4%、Na
2O 8.4%、CaO 3.3%、ZnO 1.0%、SnO
2 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1500℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.1mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。なお、得られたガラス基板について、ASTM C336に記載の方法により歪点を測定したところ、532℃であった。
【0096】
続いて、ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後のガラス基板を載置し、更にこのガラス基板の上に耐熱基板を載置した後、これを電気炉に投入した。次に、表中に記載の最高温度まで電気炉内を昇温し、その最高温度において表中に記載の時間で保持した後、表中に記載の降温速度で電気炉内を降温した。
【0097】
熱処理後のガラス基板について、温度範囲20〜220℃における平均線熱膨張係数と温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数をディラトメーター(ネッチジャパン社製DIL402C)で測定した。
【0098】
表2から明らかなように、試料No.17、18は、熱処理条件を適宜調整すると、ガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。
【0099】
次のようにして、試料No.19、20を作製した。まず、質量%で、SiO
2 58.1%、Al
2O
3 13.0%、Li
2O 0.1%、Na
2O 14.5%、K
2O 5.5%、MgO 2.0%、CaO 2.0%、ZrO
2 4.5%、SnO
2 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1500℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が0.7mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。なお、得られたガラス基板について、ASTM C336に記載の方法により歪点を測定したところ、517℃であった。
【0100】
続いて、ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後のガラス基板を載置し、更にこのガラス基板の上に耐熱基板を載置した後、これを電気炉に投入した。次に、表中に記載の最高温度まで電気炉内を昇温し、その最高温度において表中に記載の時間で保持した後、表中に記載の降温速度で電気炉内を降温した。
【0101】
熱処理後のガラス基板について、温度範囲20〜220℃における平均線熱膨張係数と温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数をディラトメーター(ネッチジャパン社製DIL402C)で測定した。
【0102】
表2から明らかなように、試料No.19、20は、熱処理条件を適宜調整すると、ガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。
【0103】
次のようにして、試料No.21、22を作製した。まず、質量%で、SiO
2 47.5%、Al
2O
3 23.0%、P
2O
5 13.1%、Na
2O 14.7%、MgO 1.5%,SnO
2 0.2%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1500℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が0.7mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。なお、得られたガラス基板について、ASTM C336に記載の方法により歪点を測定したところ、595℃であった。
【0104】
続いて、ガラス基板の寸法よりも大きい熱処理用セッターを用意し、その熱処理用セッター上に、成形後のガラス基板を載置し、更にこのガラス基板の上に耐熱基板を載置した後、これを電気炉に投入した。次に、表中に記載の最高温度まで電気炉内を昇温し、その最高温度において表中に記載の時間で保持した後、表中に記載の降温速度で電気炉内を降温した。
【0105】
熱処理後のガラス基板について、温度範囲20〜220℃における平均線熱膨張係数と温度範囲30〜380℃における平均線熱膨張係数をディラトメーター(ネッチジャパン社製DIL402C)で測定した。
【0106】
表2から明らかなように、試料No.21、22は、熱処理条件を適宜調整すると、ガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。
【0107】
表1、2から分かるように、熱処理条件を適宜調整すると、各種ガラス組成を有するガラス基板の熱膨張係数を目標値に変動させることが可能である。
【0108】
更に、熱処理後の各種ガラス基板(試料No.1〜7、9〜22:全体板厚偏差約4.0μm)をφ300mmにくり抜いた後、ガラス基板の両表面を研磨装置により研磨処理した。具体的には、ガラス基板の両表面を外径が相違する一対の研磨パットで挟み込み、ガラス基板と一対の研磨パッドを共に回転させながらガラス基板の両表面を研磨処理した。研磨処理の際、時折、ガラス基板の一部が研磨パッドから食み出すように制御した。なお、研磨パッドをウレタン製、研磨処理の際に使用した研磨スラリーの平均粒径を2.5μm、研磨速度を15m/分とした。得られた各研磨済みガラス基板について、コベルコ科研社製のBow/Warp測定装置 SBW−331ML/dにより、全体板厚偏差と反り量を測定した。その結果、全体板厚偏差がそれぞれ1.0μm未満であり、反り量がそれぞれ35μm以下であった。