特許第6987366号(P6987366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987366温泉蒸気発電・製湯システム及び温泉蒸気発電・製湯装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987366
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】温泉蒸気発電・製湯システム及び温泉蒸気発電・製湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24T 50/00 20180101AFI20211220BHJP
   F24T 10/20 20180101ALI20211220BHJP
   F28D 1/04 20060101ALI20211220BHJP
   H01L 35/28 20060101ALI20211220BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20211220BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   F24T50/00
   F24T10/20
   F28D1/04 B
   H01L35/28 Z
   H01L35/32 Z
   H02N11/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-178057(P2018-178057)
(22)【出願日】2018年9月5日
(65)【公開番号】特開2020-38045(P2020-38045A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】517129348
【氏名又は名称】株式会社アステックス
(74)【代理人】
【識別番号】100075605
【弁理士】
【氏名又は名称】寒河江 孝允
(72)【発明者】
【氏名】桜井 克利
(72)【発明者】
【氏名】笠原 正康
(72)【発明者】
【氏名】眞部 健一郎
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−201873(JP,A)
【文献】 特開2000−337715(JP,A)
【文献】 特開2009−268282(JP,A)
【文献】 特開2013−045929(JP,A)
【文献】 米国特許第4047093(US,A)
【文献】 特開2009−005585(JP,A)
【文献】 特開2018−124038(JP,A)
【文献】 特開2008−095331(JP,A)
【文献】 特開2003−111459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T 50/00
F24T 10/20
F28D 1/04
H01L 35/28
H01L 35/32
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三面体形態の冷却部と、
この冷却部の前後側部を閉塞する閉塞板と、
前記閉塞板に設けた温泉蒸気流入口及び温泉湯排出口と、
前側の閉塞板から冷却部にわたって組み込んだ熱電変換素子を用いた蒸気発電モジュールと、
を具備し、
前記温泉蒸気流入口から流入する温泉蒸気を冷却部により冷却して蒸気発電モジュールに生じる温度差を利用して発電出力を得るとともに、温泉蒸気の冷却により生じた温泉湯を温泉湯排出口から流出させるように構成したこと特徴とする温泉蒸気発電・製湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温泉蒸気発電・製湯装置に関し、詳しくは自然エネルギー源の一種である温泉蒸気を利用し発電機能、製湯機能を併せ持つ温泉蒸気発電・製湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クーリングタワー形態に構成した温泉蒸気製湯システムにて、自然エネルギー源の一種である温泉蒸気を冷却することで製湯する例が知られている。
【0003】
このようなクーリングタワー形態に構成した温泉蒸気製湯システムの一例を図28を参照して説明する。
【0004】
従来の温泉蒸気発電・製湯システム101は、図28に示すように、円筒のクーリングタワー形態に構成されるとともに、自然エネルギー源の一種である温泉蒸気が供給される温泉蒸気の流路配管部103、製湯を排出する製湯排出管路系104、残余の温泉蒸気を余剰温泉蒸気として排出する余剰温泉蒸気排出管路系105を備え、基台106から立設した例えば4本の支柱107により垂直配置に支持された温泉蒸気発電・製湯ユニット102と、前記基台106上に配置され前記温泉蒸気発電・製湯ユニット102の製湯排出管路系104を介して供給される製湯用の製湯入口管路132を備えるストレージタンク131と、前記基台106上に配置され前記余剰温泉蒸気排出管路系105を介して供給される余剰温泉蒸気用の余剰温泉蒸気入口管路142を備える蒸気消費負荷であるスチームクッカー(蒸し器)141と、を有している。
【0005】
前記ストレージタンク131は、製湯入口管路132の他に、温水排水管路133、蒸気排出管路134、ベンチレーション管路135、及び、オーバーフロー処理管路136を備えている。
【0006】
しかし、このような温泉蒸気製湯システムの場合、温泉蒸気を冷却して製湯するのみで発電機能は無く温泉蒸気の十分な活用が図られておらず、余剰の温泉蒸気は大気中に放出せざるを得ず、非効率なものであった。
【0007】
特許文献1には、自然エネルギー源の一種である温泉水や川からの冷水を利用する温度差発電システムが開示されている。
【0008】
特許文献1の温度差発電システムは、高低差もしくは温泉の自噴力を用いて、温泉からの熱水を取り込むための熱水取込路と、高低差もしくは川の流動力を用いて、川からの冷水を取り込むための冷水取込路と、熱水取込口より熱水を取り込み、熱水排水口より熱水を排水する熱水流路と、冷水取込口より冷水を取り込み、冷水排水口より冷水を排水する冷水流路と、一端部が熱水流路に熱的に接続され、他端部が冷水流路に熱的に接続されたペルチェ素子を含む熱電変換素子と、を備える構成としたものである。
【0009】
しかし、特許文献1の温度差発電システムの場合、温泉からの熱水と川からの冷水との二つの熱媒体を必須とする温度差発電システムであり、温泉蒸気のみを利用し発電機能、製湯機能を併せて実現するようなシステムではない。
【0010】
この他、二つの流体の温度差を利用した温度差発電システムも多く提案されているが、自然エネルギー源の一種である温泉蒸気のみを利用して発電機能、製湯機能を併せて実現し得るような温泉蒸気発電・製湯システムは見当たらないのが現状である。
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−247753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自然エネルギー源の一種である温泉蒸気のみを利用し発電機能、製湯機能を併せて実現でき、温泉蒸気の有効利用を図ることができる温泉蒸気発電・製湯装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る温泉蒸気発電・製湯装置は、自然エネルギー源の一種である温泉蒸気を基に発電出力を得るとともに前記温泉蒸気を温泉湯に変換する温泉蒸気発電・製湯装置であって、三面体形態の冷却部と、この冷却部の前後側部を閉塞する閉塞板と、前記閉塞板に設けた温泉蒸気流入口及び温泉湯排出口と、前側の閉塞板から冷却部にわたって組み込んだ熱電変換素子を用いた蒸気発電モジュールと、を具備し、前記温泉蒸気流入口から流入する温泉蒸気を冷却部により冷却して蒸気発電モジュールに生じる温度差を利用して発電出力を得るとともに、温泉蒸気の冷却により生じた温泉湯を温泉湯排出口から流出させるように構成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、三面体形態とした構成の基に発電機能、製湯機能を併有し、温泉蒸気の有効利用を実現することが可能な温泉蒸気発電・製湯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムの全体構成を示す外観斜視図である。
図2図2は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムのクーリングタワー形態とした温泉蒸気発電・製湯ユニットの外観構成を示す概略正面図である。
図3図3は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムのクーリングタワー形態とした温泉蒸気発電・製湯ユニットの外観構成を示す概略側面図である。
図4図4は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおけるクーリングタワー本体の筐体及び温泉蒸気取り入れ管路部、製湯排出管路部、余剰蒸気排出管路部、ヒートシンクを示す正面図である。
図5図5は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯ユニットにおけるクーリングタワー本体の筐体及び温泉蒸気取り入れ管路部、製湯排出管路部、余剰蒸気排出管路部、ヒートシンクを示す側面図である。
図6図6は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯ユニットにおけるクーリングタワー本体の筐体及び温泉蒸気取り入れ管路部、余剰蒸気排出管路部、筐体に取り付けるクーリングタワーファンを示す平面図である。
図7図7は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯ユニットにおけるクーリングタワー本体の筐体及び温泉蒸気取り入れ管路部、製湯排出管路部、筐体に取り付けるクーリングタワーファンを示す概略底面図である。
図8図8は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける温泉蒸気発電・製湯ユニットの概略分解斜視図である。
図9図9は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける発電系のブロック構成図である。
図10図10は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける発電モジュール(熱電変換素子ユニット)の配置構成図である。
図11図11は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける内部を露出状態に図示した熱電変換・冷却ユニットを組み込み製湯管路系、余剰温泉蒸気排出管路系を含む温泉蒸気発電・製湯ユニットを示す概略斜視図である。
図12図12図11に示す温泉蒸気発電・製湯ユニットを並列接続した態様を示す概略斜視図である。
図13図13図11に示す温泉蒸気発電・製湯ユニットを直列接続した態様を示す概略斜視図である。
図14図14は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける熱電変換・冷却ユニットを構成する蒸気の流路配管部、熱電変換素子ユニット、冷却要素ユニットを示す概略平面図である。
図15図15は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける熱電変換・冷却ユニットを構成する蒸気の流路配管部、熱電変換素子ユニット、冷却要素ユニットを示す概略正面図である。
図16図16は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける熱電変換・冷却ユニットを構成する蒸気の流路配管部、冷却要素ユニットを示す概略側面図である。
図17図17は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける熱電変換・冷却ユニットを構成する蒸気の流路配管部の概略縦断面図である。
図18図18は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムにおける熱電変換・冷却ユニットを構成する熱電変換素子ユニットの概略側面図である。
図19図19は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムの蒸気に基づく発電性能を試験するための試験システムの概略構成図である。
図20図20図19に示す試験システムにおける試験装置のヒートシンクA面、ヒートシンクB面を示す平面図である。
図21図21図19に示す試験システムにおける試験前の温度環境を示す図である。
図22図22図19に示す試験システムによる試験データ(負荷:10列120LED)を示す図である。
図23図23図19に示す試験システムによる試験データ(負荷:10列60LED)を示す図である。
図24図24図19に示す試験システムの試験確認データ等を示す図である。
図25図25は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムの変形例である三面体形態の温泉蒸気発電・製湯装置の概略斜視図である。
図26図26は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムの変形例である丸パイプ型形態の温泉蒸気発電・製湯装置の概略斜視図である。
図27図27は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムの変形例である円形タワー型形態の温泉蒸気発電・製湯装置の概略斜視図である。
図28図28従来の温泉蒸気を利用した製湯システムの構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、自然エネルギー源の一種である温泉蒸気を基に発電出力を得るとともに前記温泉蒸気を温泉湯に変換する温泉蒸気発電・製湯装置を提供するという目的を、三面体形態の冷却部と、この冷却部の前後側部を閉塞する閉塞板と、前記閉塞板に設けた温泉蒸気流入口及び温泉湯排出口と、前側の閉塞板から冷却部にわたって組み込んだ熱電変換素子を用いた蒸気発電モジュールと、を具備し、前記温泉蒸気流入口から流入する温泉蒸気を冷却部により冷却して蒸気発電モジュールに生じる温度差を利用して発電出力を得るとともに、温泉蒸気の冷却により生じた温泉湯を温泉湯排出口から流出させるように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0023】
以下に図面を参照して、本発明の実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム、及び、温泉蒸気発電・製湯装置について詳細に説明する。
【0024】
本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1について図1乃至図11を参照して説明する。
【0025】
本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1は、図1に示すように、角筒型のクーリングタワー形態に構成されるとともに、自然エネルギー源の一種である温泉蒸気が供給される温泉蒸気の流路配管部3、製湯を排出する製湯排出管路系4、残余の温泉蒸気を余剰温泉蒸気として排出する余剰温泉蒸気排出管路系5を備え、枠組みされた基台6から立設した例えば4本の支柱7により垂直配置に支持され、かつ、詳細は後述する熱電変換・冷却ユニット11を内蔵した温泉蒸気発電・製湯ユニット2と、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2の正面側に配置した制御・計測ユニット21と、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2の側部に配置した交流電源(パワーコンディショナー)ユニット23と、を有している。
【0026】
次に、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2について図2乃至図9をも参照して詳述する。
【0027】
図1乃至図9に示す温泉蒸気発電・製湯ユニット2は、4本の支柱7により垂直配置に支持された角型のクーリングタワー61を有している。
【0028】
このクーリングタワー61における前後左右の四側面部は、図1乃至図3に示すように、4枚の遮熱板62により覆い角筒状を呈するように構成している。
【0029】
前記4枚の遮熱板62のうち、例えば正面の遮熱板62には、図1乃至図3に示すように、温泉蒸気発電・製湯ユニット2全体の制御や動作監視を行うための制御監視盤63を配置している。
【0030】
前記クーリングタワー61の角筒状を呈する4枚の遮熱板62の内部には、図4乃至図8に示すように、キューブ状を呈するクーリングタワー本体71を配置している。
【0031】
前記クーリングタワー本体71は、内部を空洞構造とした四角箱型状の筐体72と、この筐体72の例えば正面側上部に設けた温泉蒸気取り入れ管部73と、前記筐体72の例えば上面部に設けた余剰蒸気排出管部74と、前記筐体72の例えば下面部に設けた製湯排出管部75と、前記遮熱板62の内側において筐体72の前後左右各面を覆うように配置した冷却要素ユニット17を構成する多数のヒートシンク16と、多数のヒートシンク16と前記筐体72との間に配置した熱電変換素子ユニット14と、前記筐体72の外側上部、下部に配置した前記ヒートシンク16の空冷用の所要数のクーリングタワーファン18と、を具備している。
【0032】
尚、前記遮熱板62は、例えば太陽光の加熱による冷却要素ユニットの冷却性能低下を防止し、また、クーリングタワーファン18による空気流の整流機能や、クーリングタワーファン18の回転による騒音防止機能を発揮する。
【0033】
前記熱電変換素子ユニット14と、冷却要素ユニット17とにより図11に示すような熱電変換・冷却ユニット11を構成している。
【0034】
また、前記クーリングタワーファン18は前記熱電変換素子ユニット14の発電電力を基に回転駆動するように構成している。
【0035】
図9は本実施例の温泉蒸気発電・製湯システム1における発電系のブロック構成を示すものであり、この発電系は、温泉蒸気に基づき発電する熱電変換素子ユニット14と、冷却要素ユニット17とを有する熱電変換・冷却ユニット11と、熱電変換素子ユニット14からの発電電力(直流電力)を蓄電する蓄電ユニット22と、熱電変換素子ユニット14からの発電電力(直流電力)又は蓄電ユニット22からの発電電力(直流電力)を交流電力に変換する交流電源(パワーコンディショナー)ユニット23と、熱電変換素子ユニット14からの電力(直流電力)の前記蓄電ユニット22への供給又は前記交流電源(パワーコンディショナー)ユニット23への供給の切り替えを行う切替器24と、前記各要素を制御し、また所要のデータ計測等を行う制御・計測ユニット21と、を具備し、前記交流電源(パワーコンディショナー)ユニット23からの交流電力を基に交流電源として機能する配電盤(出力盤)25へ供給するように構成している。
【0036】
図10は、前記熱電変換素子ユニット14、筐体72の壁部72a(高温側)、ヒートシンク16(低温側)の配置関係を示すものである。
【0037】
次に、本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の動作について説明する。
【0038】
本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1においては、
(1)温泉蒸気を流路配管部3から流入させる。
【0039】
(2)温泉蒸気を流入させることにより熱電変換・冷却ユニット11内は高温(約100℃)となる。
【0040】
(3)すなわち、前記熱電変換・冷却ユニット11に設置した熱電変換素子ユニット14(サーモモジコール)の内面が高温(約100℃)になる。
【0041】
(4)また、熱電変換素子ユニット14の外側の冷却要素ユニット17であるヒートシンク16の外面側がクーリングタワーファン18により冷却され、それにより熱電変換素子ユニット14の両面には温度差(△t)が生じる。
【0042】
例えば外気温度30℃であれば強制的な冷却により△t=70℃の温度差が生じる。
【0043】
(5)この温度差(△t)により熱電変換素子ユニット14には電流が流れ始め温泉蒸気に基づく発電が開始される(発電量[電力:電圧と電流]は△tの値により増減する)。
【0044】
また、同時に熱電変換・冷却ユニット11内の蒸気は冷却されて製湯(温泉湯)となり製湯排出管路系4から下方に排出されてこれは従来の場合と同様温湯として利用される。
【0045】
(6)温泉蒸気は途切れることなく噴出するため蒸気を図示しないがバルブで止めない限り、熱電変換・冷却ユニット11内側は一定の高温に保たれ、また、熱電変換素子ユニット14の外側はクーリングタワーファン76による風冷(又は、ミスト状の液体噴霧による気化熱、あるいは水冷)により冷却されるが、冷却能力に依り温度差(△t)は変動することになる。
【0046】
(7)ここで熱電変換・冷却ユニット11内外の温度制御が必要となるが、本装置にはこの熱電変換・冷却ユニット11の内側・外側を監視する温度センサーが設置されモニタリングし、そのモニタリング情報を制御・計測ユニット21にフィードバックしてクーリングタワーファン76等の冷却機能を制御するように構成している。この結果、常に一定の温度差(△t)を維持し安定した電力供給を可能としている。
【0047】
(8)熱電変換・冷却ユニット11にて発電した電力は直流電力であるが、発電した直流電力を交流電源ユニット23により商用電源と同じ単相交流100Vの交流電力に変換する。この交流電力は一般的な照明器具や家電製品用として使用することができる。
【0048】
(9)更に安定した発電電力を維持するために蓄電機能を設置することももちろん可能である。
【0049】
次に、本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の発電能力について言及する。
【0050】
本実施例の温泉蒸気発電・製湯システム1の発電能力は前記熱電変換素子ユニット14の内外温度差(△t)とその設置面積に依存する。
【0051】
温度範囲としては、3℃から80℃の温度差(△t)で発電可能であるが、好ましくは温度差(△t)=60℃〜70℃である。
【0052】
最も効率の良い温度差(△t)を維持するために外側の冷却機構が重要となるが、これは温泉蒸気の温度、流量などに応じて、自然空冷、強制空冷、ミスト噴霧冷却、水冷などなどの冷却方法のうちから最適な冷却方法を選択可能である。
【0053】
尚、標準発電能力は、温度差△tを70℃とした場合、一般的なクーリングタワーの大きさでは直流(DC)36Vで10500Wh(10.5kWh)、交流電源ユニット23を経由した単相AC100Vで最大9000Wh(9kWh)程度が可能であるが、温度差(△t)、大きさ(発電面積)などに依存することになる。
【0054】
図12図13は、図11に示す熱電変換・冷却ユニット11を含む温泉蒸気発電・製湯ユニット2を複数台(例えば2台)並列接続(図12)し、又は、複数台(例えば2台)直列(カスケード)接続(図13)して、各々前記熱電変換・冷却ユニット11による発電量、製湯量の増大を図る構成を示すものである。尚、温泉蒸気発電・製湯ユニット2の配列段数は2段の他、3段、4段等さらに多数段とすることももちろん可能である。
【0055】
次に、図14乃至18を参照して前記熱電変換・冷却ユニット11の具体例について説明する。
【0056】
すなわち、熱電変換・冷却ユニット11は、図14乃至図17に示すように、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2側に配置した前記温泉蒸気の流路配管部3の一部を構成する温泉蒸気入口管路部12から温泉蒸気を受け入れ、この温泉蒸気をユニット内温泉蒸気流通箱部13内を流通させ、さらに前記余剰温泉蒸気排出管路系5に向けて流通させるように構成するとともに、前記ユニット内温泉蒸気流通箱部13の外壁面に添着した前記温泉蒸気の熱を利用して発電出力を得る熱電変換素子ユニット14と、前記ユニット内温泉蒸気流通箱部13の周り(外側)に配置した前記温泉蒸気の一部を温泉湯に変換して(冷却して)製湯として排出する多数のヒートシンク16を用いた冷却要素ユニット17と、を有している。
【0057】
前記熱電変換素子ユニット14は、例えば図18に示すように、例えばフィルム状に形成されゼーベック素子15を3連設状態に構成して一体化することで構成し、前記ユニット内温泉蒸気流通箱部13の両外壁面と、その両外側のヒートシンク16との間に挟まれる一対構成の態様で配置している。
【0058】
この熱電変換素子ユニット14は、前記ユニット内温泉蒸気流通箱部13内を流れる温泉蒸気による伝達熱に基づく温度と、前記ヒートシンク16を経て伝達される例えば外気温の温度との温度差を利用して発電出力を得るようにしたものである。
【0059】
次に、図19乃至図24を参照して、本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の蒸気に基づく発電性能を試験するための試験システム51について説明する。
【0060】
図19に示す試験システム51は、温泉蒸気を温泉蒸気噴開閉バルブ52a付きの温泉蒸気供給筒52を経て蒸気配管53内を流し、前記熱電変換・冷却ユニット11と同様に構成し、外周部に多数のヒートシンク16を用いた冷却要素ユニット17により囲まれた熱電変換・冷却ユニット11A(Thomas試験装置と称する)に供給し、熱電変換・冷却ユニット11Aにより発電した発電出力(DC)をケーブル54を介して発電負荷55に伝送するように構成するとともに、熱電変換・冷却ユニット11Aに製湯を排水する排水管路56を設けたものである。
【0061】
前記発電負荷55としては、10列120LED構成又は10列60LED構成を採用している。
【0062】
また、図20図19に示す試験システム51における多数のヒートシンク16のヒートシンクA面、ヒートシンクB面を示すものであり、図21図19に示す試験システム51における熱電変換・冷却ユニット11A、ヒートシンクA面、ヒートシンクB面の試験前の温度環境を示すものである。
【0063】
次に、図19に示す試験システム51による試験データ(負荷:10列120LED)及び試験データ(負荷:10列60LED)について図22図23を参照して説明する。
【0064】
図22は、図19に示す試験システム51における熱電変換・冷却ユニット11A、ヒートシンクA面、ヒートシンクB面の各温度、及び、温泉蒸気入口(スチーム入口)、温泉蒸気出口(スチーム出口)の各温度と、負荷:10列120LEDに供給される発電電圧、負荷電流の関係を試験時間の経過に応じて、かつ、空冷時4例と、空冷ミスト併用時3例とに分けて示している。
【0065】
これらの場合、10列120LEDの負荷に供給される発電電圧はDC8.1〜8.2V、負荷電流はDC41〜63mAの試験データが得られた。
【0066】
図23は、図19に示す試験システム51における熱電変換・冷却ユニット11A、ヒートシンクA面、ヒートシンクB面の各温度、及び、温泉蒸気入口(スチーム入口)、温泉蒸気出口(スチーム出口)の各温度と、負荷:10列60LEDに供給される発電電圧、負荷電流の関係を試験時間の経過に応じて、かつ、空冷ミスト併用時3例として示している。
【0067】
この場合、10列60LEDの負荷に供給される発電電圧はDC8.4〜8.7V、負荷電流はDC20〜26mAの試験データが)得られた。
【0068】
図24図19に示す試験システムの試験確認データ等を示すものである。
【0069】
(変形例)
図25は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の変形例である三面体形態の温泉蒸気発電・製湯装置81を示すものである。
【0070】
この温泉蒸気発電・製湯装置81は、三面体形態の例えば金属材からなる冷却部82を具備し、この冷却部82の前後側部を閉塞板83で閉塞して空洞の三角筒体部84を構成し、前側の閉塞板83の上部に温泉蒸気流入口85を、前側の閉塞板83の下部に温泉湯排出口86を形成するとともに、前側の閉塞板83から冷却部82にわたって熱電変換素子を用いた蒸気発電モジュール87を組み込み、温泉蒸気流入口85から流入する温泉蒸気を冷却部82により冷却して蒸気発電モジュール87に生じる温度差を利用して発電出力を得るとともに、温泉蒸気の冷却により生じた温泉湯を温泉湯排出口86から流出させるように構成したものである。
【0071】
尚、余剰温泉蒸気は後側の閉塞板83から流出させるように構成している。
【0072】
図26は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の変形例である丸パイプ型形態の温泉蒸気発電・製湯装置91を示すものである。
【0073】
この温泉蒸気発電・製湯装置91は、例えば金属材からなり冷却機能を発揮する丸パイプ92の一端側を温泉蒸気流入口92a、他端側を余剰温泉蒸気排出口92bとして構成するとともに、前記丸パイプ92の長さ方向任意位置に所要数の温泉湯排出孔92cを設け、さらに、前記丸パイプ92に熱電変換素子を用いた蒸気発電モジュール93を組み込むことにより構成している。
【0074】
そして、温泉蒸気流入口92aから流入する温泉蒸気を丸パイプ92により冷却して蒸気発電モジュール93に生じる温度差を利用して発電出力を得るとともに、温泉蒸気の冷却により生じた温泉湯を温泉湯排出孔92cから排出するとともに、余剰温泉蒸気は余剰温泉蒸気排出口92bから流出させるように構成している。
【0075】
図27は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムの変形例である円形タワー型形態の温泉蒸気発電・製湯装置96の正面、平面及び側面を示すものである。
【0076】
この温泉蒸気発電・製湯装置96は、全体として図11に示す場合と同様に熱電変換・冷却ユニット11Bを構成し、所要数のヒートシンク16を用いた冷却要素ユニット17を熱電変換・冷却ユニット11Bの外周部に円形配置したことが特徴である。
【0077】
尚、図27に示す熱電変換・冷却ユニット11Bにおいて、図11に示す熱電変換・冷却ユニット11の場合と同一の要素には同一の符号を付して示す。
【0078】
上述したような三面体形態の温泉蒸気発電・製湯装置81、丸パイプ型形態の温泉蒸気発電・製湯装置91、及び、図11に示す場合と略同様な形態の温泉蒸気発電・製湯装置96によっても、各々既述した実施例の温泉蒸気発電・製湯システム1における熱電変換・冷却ユニット11の場合と同様な作用効果を発揮させることができる。
【0079】
既述した本実施例の温泉蒸気発電・製湯システム1において、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2としては、上述した場合の他、形状、サイズ等に関して種々の変形実施が可能である。
【0080】
本発明の温泉蒸気発電・製湯システム1の応用例に言及すると、例えば、常駐不要とする遠隔監視手段を付加し、異常時の警報発報を行ったり、人感センサーを配置し、警報発報を行うようにして安全性を高めたり、各種センサーを配置し、蓄電池設備等の電気系統の異常・故障、遮断等の警報発報を行ったり、振動センサー・人感センサー等によりスマートフォン等へ異常を自動通報するように構成したり、データロガーを配置し、発電量(電力、電圧、電流等)、温度等を自動計測したりというような各種応用手段を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の温泉蒸気発電・製湯システムは、上述した場合の他、温泉蒸気の蒸気供給管を利用した発電や、地熱発電用の蒸気タービン配管系の残熱を利用した発電等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 温泉蒸気発電・製湯システム
2 温泉蒸気発電・製湯ユニット
3 流路配管部
4 製湯排出管路系
5 余剰温泉蒸気排出管路系
6 基台
7 支柱
11 熱電変換・冷却ユニット
11A 熱電変換・冷却ユニット
11B 熱電変換・冷却ユニット
12 温泉蒸気入口管路部
13 ユニット内温泉蒸気流通箱部
14 熱電変換素子ユニット
15 ゼーベック素子
16 ヒートシンク
17 冷却要素ユニット
18 クーリングタワーファン
21 制御・計測ユニット
22 蓄電ユニット
23 交流電源(パワーコンディショナー)ユニット
24 切替器
51 試験システム
52 温泉蒸気供給筒
52a 温泉蒸気噴開閉バルブ
53 蒸気配管
54 ケーブル
55 発電負荷
56 排水管路
61 クーリングタワー
62 遮熱板
63 制御監視盤
71 クーリングタワー本体
72 筐体
72a 壁部
73 温泉蒸気取り入れ管部
74 余剰蒸気排出管部
75 製湯排出管部
81 温泉蒸気発電・製湯装置
82 冷却部
83 閉塞板
84 三角筒体部
85 温泉蒸気流入口
86 温泉湯排出口
87 蒸気発電モジュール
91 温泉蒸気発電・製湯装置
92 丸パイプ
92a 温泉蒸気流入口
92b 余剰温泉蒸気排出口
92c 温泉湯排出孔
93 蒸気発電モジュール
96 温泉蒸気発電・製湯装置
図1
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