【実施例】
【0023】
以下に図面を参照して、本発明の実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム、及び、温泉蒸気発電・製湯装置について詳細に説明する。
【0024】
本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1について
図1乃至
図11を参照して説明する。
【0025】
本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1は、
図1に示すように、角筒型のクーリングタワー形態に構成されるとともに、自然エネルギー源の一種である温泉蒸気が供給される温泉蒸気の流路配管部3、製湯を排出する製湯排出管路系4、残余の温泉蒸気を余剰温泉蒸気として排出する余剰温泉蒸気排出管路系5を備え、枠組みされた基台6から立設した例えば4本の支柱7により垂直配置に支持され、かつ、詳細は後述する熱電変換・冷却ユニット11を内蔵した温泉蒸気発電・製湯ユニット2と、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2の正面側に配置した制御・計測ユニット21と、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2の側部に配置した交流電源(パワーコンディショナー)ユニット23と、を有している。
【0026】
次に、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2について
図2乃至
図9をも参照して詳述する。
【0027】
図1乃至
図9に示す温泉蒸気発電・製湯ユニット2は、4本の支柱7により垂直配置に支持された角型のクーリングタワー61を有している。
【0028】
このクーリングタワー61における前後左右の四側面部は、
図1乃至
図3に示すように、4枚の遮熱板62により覆い角筒状を呈するように構成している。
【0029】
前記4枚の遮熱板62のうち、例えば正面の遮熱板62には、
図1乃至
図3に示すように、温泉蒸気発電・製湯ユニット2全体の制御や動作監視を行うための制御監視盤63を配置している。
【0030】
前記クーリングタワー61の角筒状を呈する4枚の遮熱板62の内部には、
図4乃至
図8に示すように、キューブ状を呈するクーリングタワー本体71を配置している。
【0031】
前記クーリングタワー本体71は、内部を空洞構造とした四角箱型状の筐体72と、この筐体72の例えば正面側上部に設けた温泉蒸気取り入れ管部73と、前記筐体72の例えば上面部に設けた余剰蒸気排出管部74と、前記筐体72の例えば下面部に設けた製湯排出管部75と、前記遮熱板62の内側において筐体72の前後左右各面を覆うように配置した冷却要素ユニット17を構成する多数のヒートシンク16と、多数のヒートシンク16と前記筐体72との間に配置した熱電変換素子ユニット14と、前記筐体72の外側上部、下部に配置した前記ヒートシンク16の空冷用の所要数のクーリングタワーファン18と、を具備している。
【0032】
尚、前記遮熱板62は、例えば太陽光の加熱による冷却要素ユニットの冷却性能低下を防止し、また、クーリングタワーファン18による空気流の整流機能や、クーリングタワーファン18の回転による騒音防止機能を発揮する。
【0033】
前記熱電変換素子ユニット14と、冷却要素ユニット17とにより
図11に示すような熱電変換・冷却ユニット11を構成している。
【0034】
また、前記クーリングタワーファン18は前記熱電変換素子ユニット14の発電電力を基に回転駆動するように構成している。
【0035】
図9は本実施例の温泉蒸気発電・製湯システム1における発電系のブロック構成を示すものであり、この発電系は、温泉蒸気に基づき発電する熱電変換素子ユニット14と、冷却要素ユニット17とを有する熱電変換・冷却ユニット11と、熱電変換素子ユニット14からの発電電力(直流電力)を蓄電する蓄電ユニット22と、熱電変換素子ユニット14からの発電電力(直流電力)又は蓄電ユニット22からの発電電力(直流電力)を交流電力に変換する交流電源(パワーコンディショナー)ユニット23と、熱電変換素子ユニット14からの電力(直流電力)の前記蓄電ユニット22への供給又は前記交流電源(パワーコンディショナー)ユニット23への供給の切り替えを行う切替器24と、前記各要素を制御し、また所要のデータ計測等を行う制御・計測ユニット21と、を具備し、前記交流電源(パワーコンディショナー)ユニット23からの交流電力を基に交流電源として機能する配電盤(出力盤)25へ供給するように構成している。
【0036】
図10は、前記熱電変換素子ユニット14、筐体72の壁部72a(高温側)、ヒートシンク16(低温側)の配置関係を示すものである。
【0037】
次に、本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の動作について説明する。
【0038】
本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1においては、
(1)温泉蒸気を流路配管部3から流入させる。
【0039】
(2)温泉蒸気を流入させることにより熱電変換・冷却ユニット11内は高温(約100℃)となる。
【0040】
(3)すなわち、前記熱電変換・冷却ユニット11に設置した熱電変換素子ユニット14(サーモモジコール)の内面が高温(約100℃)になる。
【0041】
(4)また、熱電変換素子ユニット14の外側の冷却要素ユニット17であるヒートシンク16の外面側がクーリングタワーファン18により冷却され、それにより熱電変換素子ユニット14の両面には温度差(△t)が生じる。
【0042】
例えば外気温度30℃であれば強制的な冷却により△t=70℃の温度差が生じる。
【0043】
(5)この温度差(△t)により熱電変換素子ユニット14には電流が流れ始め温泉蒸気に基づく発電が開始される(発電量[電力:電圧と電流]は△tの値により増減する)。
【0044】
また、同時に熱電変換・冷却ユニット11内の蒸気は冷却されて製湯(温泉湯)となり製湯排出管路系4から下方に排出されてこれは従来の場合と同様温
泉湯として利用される。
【0045】
(6)温泉蒸気は途切れることなく噴出するため蒸気を図示しないがバルブで止めない限り、熱電変換・冷却ユニット11内側は一定の高温に保たれ、また、熱電変換素子ユニット14の外側はクーリングタワーファン76による風冷(又は、ミスト状の液体噴霧による気化熱、あるいは水冷)により冷却されるが、冷却能力に依り温度差(△t)は変動することになる。
【0046】
(7)ここで熱電変換・冷却ユニット11内外の温度制御が必要となるが、本装置にはこの熱電変換・冷却ユニット11の内側・外側を監視する温度センサーが設置されモニタリングし、そのモニタリング情報を制御・計測ユニット21にフィードバックしてクーリングタワーファン76等の冷却機能を制御するように構成している。この結果、常に一定の温度差(△t)を維持し安定した電力供給を可能としている。
【0047】
(8)熱電変換・冷却ユニット11にて発電した電力は直流電力であるが、発電した直流電力を交流電源ユニット23により商用電源と同じ単相交流100Vの交流電力に変換する。この交流電力は一般的な照明器具や家電製品用として使用することができる。
【0048】
(9)更に安定した発電電力を維持するために蓄電機能を設置することももちろん可能である。
【0049】
次に、本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の発電能力について言及する。
【0050】
本実施例の温泉蒸気発電・製湯システム1の発電能力は前記熱電変換素子ユニット14の内外温度差(△t)とその設置面積に依存する。
【0051】
温度範囲としては、3℃から80℃の温度差(△t)で発電可能であるが、好ましくは温度差(△t)=60℃〜70℃である。
【0052】
最も効率の良い温度差(△t)を維持するために外側の冷却機構が重要となるが、これは温泉蒸気の温度、流量などに応じて、自然空冷、強制空冷、ミスト噴霧冷却、水冷などなどの冷却方法のうちから最適な冷却方法を選択可能である。
【0053】
尚、標準発電能力は、温度差△tを70℃とした場合、一般的なクーリングタワーの大きさでは直流(DC)36Vで10500Wh(10.5kWh)、交流電源ユニット23を経由した単相AC100Vで最大9000Wh(9kWh)程度が可能であるが、温度差(△t)、大きさ(発電面積)などに依存することになる。
【0054】
図12、
図13は、
図11に示す熱電変換・冷却ユニット11を含む温泉蒸気発電・製湯ユニット2を複数台(例えば2台)並列接続(
図12)し、又は、複数台(例えば2台)直列(カスケード)接続(
図13)して、各々前記熱電変換・冷却ユニット11による発電量、製湯量の増大を図る構成を示すものである。尚、温泉蒸気発電・製湯ユニット2の配列段数は2段の他、3段、4段等さらに多数段とすることももちろん可能である。
【0055】
次に、
図14乃至18を参照して前記熱電変換・冷却ユニット11の具体例について説明する。
【0056】
すなわち、熱電変換・冷却ユニット11は、
図14乃至
図17に示すように、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2側に配置した前記温泉蒸気の流路配管部3の一部を構成する温泉蒸気入口管路部12から温泉蒸気を受け入れ、この温泉蒸気をユニット内温泉蒸気流通箱部13内を流通させ、さらに前記余剰温泉蒸気排出管路系5に向けて流通させるように構成するとともに、前記ユニット内温泉蒸気流通箱部13の外壁面に添着した前記温泉蒸気の熱を利用して発電出力を得る熱電変換素子ユニット14と、前記ユニット内温泉蒸気流通箱部13の周り(外側)に配置した前記温泉蒸気の一部を温泉湯に変換して(冷却して)製湯として排出する多数のヒートシンク16を用いた冷却要素ユニット17と、を有している。
【0057】
前記熱電変換素子ユニット14は、例えば
図18に示すように、例えばフィルム状に形成されゼーベック素子15を3連設状態に構成して一体化することで構成し、前記ユニット内温泉蒸気流通箱部13の両外壁面と、その両外側のヒートシンク16との間に挟まれる一対構成の態様で配置している。
【0058】
この熱電変換素子ユニット14は、前記ユニット内温泉蒸気流通箱部13内を流れる温泉蒸気による伝達熱に基づく温度と、前記ヒートシンク16を経て伝達される例えば外気温の温度との温度差を利用して発電出力を得るようにしたものである。
【0059】
次に、
図19乃至
図24を参照して、本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の蒸気に基づく発電性能を試験するための試験システム51について説明する。
【0060】
図19に示す試験システム51は、温泉蒸気を温泉蒸気噴開閉バルブ52a付きの温泉蒸気供給筒52を経て蒸気配管53内を流し、前記熱電変換・冷却ユニット11と同様に構成し、外周部に多数のヒートシンク16を用いた冷却要素ユニット17により囲まれた熱電変換・冷却ユニット11A(Thomas試験装置と称する)に供給し、熱電変換・冷却ユニット11Aにより発電した発電出力(DC)をケーブル54を介して発電負荷55に伝送するように構成するとともに、熱電変換・冷却ユニット11Aに製湯を排水する排水管路56を設けたものである。
【0061】
前記発電負荷55としては、10列120LED構成又は10列60LED構成を採用している。
【0062】
また、
図20は
図19に示す試験システム51における多数のヒートシンク16のヒートシンクA面、ヒートシンクB面を示すものであり、
図21は
図19に示す試験システム51における熱電変換・冷却ユニット11A、ヒートシンクA面、ヒートシンクB面の試験前の温度環境を示すものである。
【0063】
次に、
図19に示す試験システム51による試験データ(負荷:10列120LED)及び試験データ(負荷:10列60LED)について
図22、
図23を参照して説明する。
【0064】
図22は、
図19に示す試験システム51における熱電変換・冷却ユニット11A、ヒートシンクA面、ヒートシンクB面の各温度、及び、温泉蒸気入口(スチーム入口)、温泉蒸気出口(スチーム出口)の各温度と、負荷:10列120LEDに供給される発電電圧、負荷電流の関係を試験時間の経過に応じて、かつ、空冷時4例と、空冷ミスト併用時3例とに分けて示している。
【0065】
これらの場合、10列120LEDの負荷に供給される発電電圧はDC8.1〜8.2V、負荷電流はDC41〜63mAの試験データが得られた。
【0066】
図23は、
図19に示す試験システム51における熱電変換・冷却ユニット11A、ヒートシンクA面、ヒートシンクB面の各温度、及び、温泉蒸気入口(スチーム入口)、温泉蒸気出口(スチーム出口)の各温度と、負荷:10列60LEDに供給される発電電圧、負荷電流の関係を試験時間の経過に応じて、かつ、空冷ミスト併用時3例として示している。
【0067】
この場合、10列60LEDの負荷に供給される発電電圧はDC8.4〜8.7V、負荷電流はDC20〜26mAの試験データが)得られた。
【0068】
図24は
図19に示す試験システムの試験確認データ等を示すものである。
【0069】
(変形例)
図25は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の変形例である三面体形態の温泉蒸気発電・製湯装置81を示すものである。
【0070】
この温泉蒸気発電・製湯装置81は、三面体形態の例えば金属材からなる冷却部82を具備し、この冷却部82の前後側部を閉塞板83で閉塞して空洞の三角筒体部84を構成し、前側の閉塞板83の上部に温泉蒸気流入口85を、前側の閉塞板83の下部に温泉湯排出口86を形成するとともに、前側の閉塞板83から冷却部82にわたって熱電変換素子を用いた蒸気発電モジュール87を組み込み、温泉蒸気流入口85から流入する温泉蒸気を冷却部82により冷却して蒸気発電モジュール87に生じる温度差を利用して発電出力を得るとともに、温泉蒸気の冷却により生じた温泉湯を温泉湯排出口86から流出させるように構成したものである。
【0071】
尚、余剰温泉蒸気は後側の閉塞板83から流出させるように構成している。
【0072】
図26は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システム1の変形例である丸パイプ型形態の温泉蒸気発電・製湯装置91を示すものである。
【0073】
この温泉蒸気発電・製湯装置91は、例えば金属材からなり冷却機能を発揮する丸パイプ92の一端側を温泉蒸気流入口92a、他端側を余剰温泉蒸気排出口92bとして構成するとともに、前記丸パイプ92の長さ方向任意位置に所要数の温泉湯排出孔92cを設け、さらに、前記丸パイプ92に熱電変換素子を用いた蒸気発電モジュール93を組み込むことにより構成している。
【0074】
そして、温泉蒸気流入口92aから流入する温泉蒸気を丸パイプ92により冷却して蒸気発電モジュール93に生じる温度差を利用して発電出力を得るとともに、温泉蒸気の冷却により生じた温泉湯を温泉湯排出孔92cから排出するとともに、余剰温泉蒸気は余剰温泉蒸気排出口92bから流出させるように構成している。
【0075】
図27は本実施例に係る温泉蒸気発電・製湯システムの変形例である円形タワー型形態の温泉蒸気発電・製湯装置96の正面、平面及び側面を示すものである。
【0076】
この温泉蒸気発電・製湯装置96は、全体として
図11に示す場合と同様に熱電変換・冷却ユニット11Bを構成し、所要数のヒートシンク16を用いた冷却要素ユニット17を熱電変換・冷却ユニット11Bの外周部に円形配置したことが特徴である。
【0077】
尚、
図27に示す熱電変換・冷却ユニット11Bにおいて、
図11に示す熱電変換・冷却ユニット11の場合と同一の要素には同一の符号を付して示す。
【0078】
上述したような三面体形態の温泉蒸気発電・製湯装置81、丸パイプ型形態の温泉蒸気発電・製湯装置91、及び、
図11に示す場合と略同様な形態の温泉蒸気発電・製湯装置96によっても、各々既述した実施例の温泉蒸気発電・製湯システム1における熱電変換・冷却ユニット11の場合と同様な作用効果を発揮させることができる。
【0079】
既述した本実施例の温泉蒸気発電・製湯システム1において、前記温泉蒸気発電・製湯ユニット2としては、上述した場合の他、形状、サイズ等に関して種々の変形実施が可能である。
【0080】
本発明の温泉蒸気発電・製湯システム1の応用例に言及すると、例えば、常駐不要とする遠隔監視手段を付加し、異常時の警報発報を行ったり、人感センサーを配置し、警報発報を行うようにして安全性を高めたり、各種センサーを配置し、蓄電池設備等の電気系統の異常・故障、遮断等の警報発報を行ったり、振動センサー・人感センサー等によりスマートフォン等へ異常を自動通報するように構成したり、データロガーを配置し、発電量(電力、電圧、電流等)、温度等を自動計測したりというような各種応用手段を採用することも可能である。