(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る封止機構の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であるが、これらの実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
(実施の形態1)
本発明の一実施の形態に係る封止機構を備える封止装置について、
図1を参照して説明する。
【0015】
本実施の形態に係る封止装置1は、
図1に示すように、第1の予備加熱機構110と、第2の予備加熱機構120と、封止機構130と、容器200を搭載したトレイ140を一定の方向に搬送する搬送機構150と、を備える。第1の予備加熱機構110と、第2の予備加熱機構120と、封止機構130と、搬送機構150は、真空チャンバ100の中に収容される。
【0016】
真空チャンバ100は、容器200を搭載したトレイ140を搬入する搬入口101と、封止処理が終了したトレイ140を搬出する搬出口102とを備える。真空ポンプ(図示せず)により、内部は真空雰囲気となっている。搬入口101と搬出口102は、ゲートバルブを備え、真空チャンバ100内の真空を保持する。容器200を搭載したトレイ140は、図示のX方向に搬送されながら容器200の封止処理が行われる。
【0017】
トレイ140には、
図2に示すように、容器を収容する複数の第1の凹部141がマトリクス状に並べられて形成される。トレイ140は、体積比熱が小さく、強度のあるチタンを使用して形成される。ここで、トレイ140の長手方向をL方向とし、短手方向をM方向とする。トレイ140は、トレイ140のL方向を、封止装置1のX方向と平行にして搬送される。
【0018】
容器200は、
図3に示すように、開口部を有し、内部に水晶振動子等のワーク201を収容する容器本体202と、容器本体202の開口部を塞ぐリッド203とを備える。容器本体202とリッド203との間には、封止材が挿入される。封止材として、低融点ガラス、金錫、銀ろう、半田等が使用される。容器本体202は、セラミック材料により形成され、リッド203は、コバール等の金属、又はセラミック材料により形成される。
【0019】
第1の予備加熱機構110は、上下に配置された一対のヒートブロック111を備える。一対のヒートブロック111は、下側ヒートブロック111aと上側ヒートブロック111bとから構成される。ヒートブロック111は、熱源112を備え、熱源112からの熱伝導により全体が加熱される。一対のヒートブロック111の間に、容器200を搭載したトレイ140が搬送され、トレイ140が加熱される。
【0020】
第2の予備加熱機構120は、上下に配置された一対のヒートブロック121を備える。一対のヒートブロック121は、下側ヒートブロック121aと上側ヒートブロック121bとから構成される。ヒートブロック121は、熱源122を備え、熱源122からの熱伝導により全体が加熱される。一対のヒートブロック121の間に、第1の予備加熱機構110により加熱されたトレイ140が搬送され、トレイ140はさらに加熱される。
【0021】
第1と第2の予備加熱機構110、120は、容器本体202とリッド203の間に挿入される封止材の融点より低い温度で、トレイ140を予備加熱する。予備加熱により、加熱による脱ガスを促進させ、次工程の封止機構130における加熱時間を短縮でき、長時間加熱されることに起因する封止材の拡散が防止される。
【0022】
封止機構130は、上下に配置された一対のヒートブロック131を備える。ヒートブロック131は、熱源132を備え、熱源132からの熱伝導により全体が加熱される。一対のヒートブロック131の間に、第2の予備加熱機構120により加熱されたトレイ140が搬送され、トレイ140はさらに加熱され、封止材が溶融し容器200が封止される。
【0023】
第1の予備加熱機構110、第2の予備加熱機構120、及び封止機構130は、それぞれ、下側のヒートブロックを上下に移動させる昇降駆動装置113、123、133を備える。昇降駆動装置113、123、133により下側のヒートブロックが上昇し、上側のヒートブロックとの間に搬送されたトレイ140を、上下のヒートブロックの間で挟む。
【0024】
搬送機構150は、トレイ140を搬送方向であるX方向に沿って並べられた複数のローラ151と、当該ローラ151を回転させる駆動装置(図示せず)とを備える。複数のローラ151は、トレイ140を搬送するX方向に垂直な方向に回転軸が配置される円筒状のローラである。ローラ151が駆動装置により回転されることで、ローラ151の上に載置されたトレイ140が、X方向に搬送される。
【0025】
なお、封止機構130の下流側に、冷却装置(図示せず)を配置してもよい。冷却装置は、例えば、一対の冷却ブロックからなり、一対の冷却ブロックの間に封止処理が完了したトレイ140を挿入して挟み込む。挟み込まれたトレイ140は、冷却ブロックにより冷却され、封止材を固めることができる。
【0026】
次に、封止機構130を、
図3を用いて説明する。
図3は、トレイ140の1つの第1の凹部141に載置された容器が、ヒートブロックにより挟まれた状態を示す概要断面図である。
【0027】
トレイ140は、一対の主面を備え、一方の主面142に第1の凹部141が形成される。トレイ140には、第1の凹部141の底面からトレイ140の他方の主面143まで貫通する第1の貫通孔144が形成されている。第1の貫通孔144は、本実施の形態では円筒状の孔である。第1の貫通孔144の直径は、第1の凹部141の底面に載置される容器200の幅より小さい。
【0028】
第1の貫通孔144は、封止処理中に発生するガスを排出する、ガス抜き用の孔として使用してもよい。また、第1の貫通孔144は、封止処理が終了した容器200を第1の凹部141から取り出すための、ピンが通過する孔として使用してもよい。
【0029】
トレイ140の一方の主面142には、容器押さえ板160が取り付けられ、トレイ140の第1の凹部141に収容された容器200が、トレイ140の第1の凹部141から離脱することを阻止する。
【0030】
具体的には、容器押さえ板160は、
図3に示すように、トレイ140の一方の主面142と対向する第1の面161を有し、一方の主面142と第1の面161が当接することで、容器200がトレイ140から離脱することを阻止する。
【0031】
容器押さえ板160には、
図1、3に示すように、第1の面161から第1の面161と対向する面である第2の面162まで貫通する第2の貫通孔163が形成されている。
【0032】
図4(a)、(b)は、第2の貫通孔163を第2のヒートブロック131bから見た図であり、トレイ140と容器押さえ板160を、トレイ140のM方向に沿って一部を切り取った状態を示す図である。(a)は、第1の凹部141に容器200が収容された状態を示す図であり、(b)は、第1の凹部141から容器200が取り除かれた状態を示す図である。
【0033】
第2の貫通孔163は、
図3、
図4(a)、(b)に示すように、孔の貫通方向と垂直な断面が、長孔形状に形成された筒状の孔である。、第2の貫通孔163は、当接するトレイ140のM方向に沿って形成された複数の第1の凹部141が並べられた方向と、第2の貫通孔163の長孔の長辺とのなす角度がα度となるように、傾斜されて形成されている。
【0034】
第1の凹部141に収容された容器200は、
図4(a)に示すように、周縁部の一部が第2の貫通孔163の外側に配置される。具体的には、第2の貫通孔163の傾斜する長孔の辺より外側に、容器200の周縁部の一部が配置されることで、容器200は、容器押さえ板160により押さえられる。
【0035】
容器200を第1の凹部141から取り除いたトレイ140には、
図4(b)に示すように、第1の凹部141の底面に第1の貫通孔144が形成されている。第2の貫通孔163が第1の凹部141に開口するように形成されるので、第1の貫通孔144と第2の貫通孔163とは連通する。
【0036】
一対のヒートブロック131は、
図1に示すように、トレイ140と容器押さえ板160とを両側から挟みこむように配置される。
図3に示すように、トレイ140の他方の主面143に当接するヒートブロックを第1のヒートブロック131aとし、容器押さえ板160の第2の面162と当接するヒートブロックを第2のヒートブロック131bとする。第1のヒートブロック131aと第2のヒートブロック131bとは、熱伝導性の良い銅などの金属により成形されている。
【0037】
第1のヒートブロック131aは、
図1に示す熱源132により加熱され、第1のヒートブロック131aと接触するトレイ140に熱を伝える。トレイ140に伝導された熱により、第1の凹部141に収容された容器200が加熱される。
【0038】
また、容器200は、第1のヒートブロック131aの熱放射によっても、加熱される。熱放射は、第1のヒートブロック131aが熱源132により加熱されることにより、第1のヒートブロック131aの表面から赤外線等の電磁波を放射する現象である。放射された電磁波が加熱対象物に当たることで、加熱対象物が加熱される。本実施の形態では、第1のヒートブロック131aから放射された電磁波は、一定の軌跡を描きながら、第1のヒートブロック131aの電磁波発生面と直交する方向に伝播される。具体的には、第1のヒートブロック131aから放射された電磁波は、トレイ140に形成された第1の貫通孔144の内部を容器200に向けて伝播し、伝播する途中で、第1の貫通孔144の内壁に反射しながら容器200に当たる。
【0039】
第1のヒートブロック131aから放射される電磁波は、第1の貫通孔144の内壁の表面積が大きいほど、内壁に多く反射して、容器200に当たる。したがって、電磁波が、第1の貫通孔144を介して容器200に放射されると、容器200に大きな放射熱を発生させる。
【0040】
第2のヒートブロック131bは、熱源132により加熱され、第2のヒートブロック131bと接触する容器押さえ板160に熱を伝える。容器押さえ板160に伝導された熱は、容器押さえ板160と接触するトレイ140に伝導され、第1の凹部141に収容された容器200を加熱する。
【0041】
また、容器200は、第2のヒートブロック131bから熱放射によっても、加熱される。第2のヒートブロック131bが熱源132により加熱されることにより、第2のヒートブロック131bの表面から赤外線等の電磁波を放射する。放射された電磁波は、容器押さえ板160に形成された第2の貫通孔163の内部を容器200に向けて伝播し、伝播する途中で、第2の貫通孔163の内壁に反射しながら容器200に当たる。
【0042】
第2のヒートブロック131bから放射される電磁波は、第2の貫通孔163の内壁の表面積が大きいほど、内壁に多く反射する。したがって、電磁波が、第2の貫通孔163を介して容器200に放射されると、容器200に大きな放射熱を発生させる。ここで、第2の貫通孔163は、貫通方向と垂直な断面が長孔形状で形成されているので、第2の貫通孔163の内壁の表面積を、円筒の断面形状の貫通孔より大きくとることができる。したがって、第2のヒートブロック131bから放射された電磁波により、大きな放射熱を容器200に与えることができる。また、第2の貫通孔163は、
図4(a)に示すように、当接するトレイ140のM方向に沿って形成された複数の第1の凹部141が並べられた方向と、第2の貫通孔163の長孔の長辺とのなす角度がα度となるように、傾斜されて形成されている。このような形状に第2の貫通孔163を形成することで、限られた容器押さえ板160の板面の面積を有効に使用しつつ、第2の貫通孔163の内壁の表面積を大きくとることができる。
【0043】
次に、封止機構130を含む封止装置1により、容器200を封止する方法について説明する。
【0044】
図1に示すように、容器200を搭載したトレイ140は、真空チャンバ100の搬入口101から搬入されて、搬送機構150により第1の予備加熱機構110まで搬送される。
【0045】
第1の予備加熱機構110まで搬送されたトレイ140は、第1の予備加熱機構110の上下に配置された一対のヒートブロック111の間に配置される。昇降駆動装置113が下側のヒートブロック111aを上昇させることで、トレイ140は、一対のヒートブロック111の間に挟まれる。ヒートブロック111は、トレイ140を、容器本体202とリッド203の間に挿入されている封止材が溶解しない程度に加熱する。
【0046】
次に、トレイ140は、搬送機構150により第2の予備加熱機構120まで搬送される。第2の予備加熱機構120は、第1の予備加熱機構110と同様に、昇降駆動装置123が下側のヒートブロック121aを上昇させることで、トレイ140は、一対のヒートブロック121の間に挟まれる。ヒートブロック121は、トレイ140を、容器本体202とリッド203の間に挿入されている封止材が溶解する直前まで加熱する。
【0047】
次に、トレイ140は、搬送機構150により封止機構130まで搬送される。封止機構130では、
図3に示すように、容器200は、トレイ140の第1の凹部141の底面に載置された状態で、第1のヒートブロック131aと、容器押さえ板160を介して第2のヒートブロック131bと、によって挟まれる。
【0048】
容器200は、第1のヒートブロック131aによりトレイ140に伝導された伝導熱と、第1のヒートブロック131aが放射する電磁波が第1の貫通孔144を伝播することにより発生する放射熱と、により、加熱される。また、容器200は、第2のヒートブロック131bにより容器押さえ板160を介してトレイ140に伝導された伝導熱と、第2のヒートブロック131bが放射する電磁波が第2の貫通孔163を伝播することにより発生する放射熱と、により、加熱される。
【0049】
第1のヒートブロック131aと第2のヒートブロック131bにより生成される伝導熱と放射熱により、容器200は加熱され、容器本体202とリッド203との間に挿入された封止材は溶解し、容器本体202とリッド203とが接合される。容器本体202とリッド203が接合されることにより、容器200は気密封止される。
【0050】
本実施の形態によれば、トレイ140に第1の貫通孔144を形成し、容器押さえ板160に第2の貫通孔163を形成することで、第1のヒートブロック131aと第2のヒートブロック131bの熱放射により、容器200に大きな放射熱を与えることができる。したがって、ピンがなくても、容器本体202とリッド203を簡単に接合して容器200を封止することができる。また、ピンがないことから、長時間、装置の点検をしなくてもよく、継続して運転することが可能である。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態1では、トレイ140に第1の貫通孔144を形成し、容器押さえ板160に第2の貫通孔163を形成したが、第1の貫通孔144と第2の貫通孔163に加えて、第1のヒートブロック131a又は第2のヒートブロック131bに、凹部を形成してもよい。
【0052】
本実施の形態に係る封止機構を備える封止装置1を
図5に示す。
図5に示すように、封止装置1は、第1の予備加熱機構110と、第2の予備加熱機構120と、封止機構300と、容器200を搭載したトレイ140を一定の方向に搬送する搬送機構150と、を備える。第1の予備加熱機構110と、第2の予備加熱機構120と、封止機構300と、搬送機構150とは、真空チャンバ100の中に収容される。
【0053】
ここで、第1の予備加熱機構110と、第2の予備加熱機構120と、搬送機構150は、実施の形態1と同一の構成であり、本実施の形態では、詳述しない。
【0054】
封止機構300を、
図5、
図6を用いて説明する。
図6は、封止機構300の1つの第1の凹部141に載置された容器200がヒートブロックにより挟まれた状態を示す概要断面図である。
【0055】
封止機構300は、トレイ140と、トレイ140に収容された容器200の離脱を阻止する容器押さえ板160と、トレイ140と容器押さえ板160とを両側から挟みこむ一対のヒートブロック131が配置される。トレイ140と容器押さえ板160の構造は実施の形態1と同様であり、本実施の形態では、詳述しない。
【0056】
一対のヒートブロック131は、
図6に示すように、トレイ140の他方の主面143に当接するヒートブロックを第1のヒートブロック131aとし、容器押さえ板160の第2の面162と当接するヒートブロックを第2のヒートブロック131bとする。
【0057】
第1のヒートブロック131aには、トレイ140の他方の主面143と対向する面に、第2の凹部301が形成される。第2のヒートブロック131bには、容器押さえ板160の第2の面162と対向する面に第3の凹部302が形成される。第2の凹部301と第3の凹部302は、それぞれ円筒形状の孔である。
【0058】
第1のヒートブロック131aは、実施の形態1と同様に、熱源132を有し、熱源132により加熱され、第1のヒートブロック131aと接触するトレイ140に熱を伝える。トレイ140に伝導された伝導熱により、第1の凹部141に収容された容器200は加熱される。
【0059】
また、容器200は、第1のヒートブロック131aの熱放射によっても、加熱される。第1のヒートブロック131aの第2の凹部301の内表面から放射された電磁波は、第2の凹部301に形成された空間と、トレイ140に形成された第1の貫通孔144を介して容器200に向けて伝播する。電磁波は、伝播する途中で、第2の凹部301の内表面と第1の貫通孔144の内壁に反射しながら容器200に当たる。
【0060】
第1のヒートブロック131aから放射された電磁波は、第2の凹部301の内表面の面積と第1の貫通孔144の内壁の面積が大きいほど多く反射して、容器200に大きな放射熱を発生させる。
【0061】
第2のヒートブロック131bは、熱源132により加熱され、第2のヒートブロック131bと接触する容器押さえ板160に熱を伝える。容器押さえ板160に伝導された伝導熱は、容器押さえ板160に接触するトレイ140に伝導され、伝導された熱により第1の凹部141に収容された容器200は加熱される。
【0062】
また、容器200は、第2のヒートブロック131bの熱放射によっても、加熱される。第2のヒートブロック131bの第3の凹部302の内表面から放射された電磁波は、第3の凹部302に形成された空間と、容器押さえ板160に形成された第2の貫通孔163を介して容器200に向けて伝播する。電磁波は、伝播する途中で、第3の凹部302の内表面と第2の貫通孔163の内壁に反射しながら容器200に当たる。
【0063】
第2のヒートブロック131bから放射される電磁波は、第3の凹部302の内表面の面積と第2の貫通孔163の内壁の面積が大きいほど多く反射して、容器200に大きな放射熱を発生させる。
【0064】
第1のヒートブロック131aに第2の凹部301を形成し、第2のヒートブロック131bに第3の凹部302を形成したので、双方のヒートブロックから放射される電磁波が反射する面積が、実施の形態1の場合より大きくなり、容器200に大きな放射熱を生じさせることができる。
【0065】
本実施の形態で使用される封止機構300は、複数の第1の凹部141が形成されたトレイ140を使用する場合、複数の第1の凹部141のそれぞれに対応する第2の凹部301と第3の凹部302を形成してもよい。
【0066】
図7に示すように、トレイ140には、複数の第1の凹部141に対応して、複数の第1の貫通孔144が形成されている。トレイ140と対向する第1のヒートブロック131aには、複数の第1の貫通孔144と対向する位置に、複数の第2の凹部301が形成される。
【0067】
また、容器押さえ板160には、複数の第1の凹部141に対応して、複数の第2の貫通孔163が形成されている。容器押さえ板160と対向する第2のヒートブロック131bには、複数の第2の貫通孔163と対向する位置に、複数の第3の凹部302が形成される。
【0068】
複数の第2の凹部301と複数の第3の凹部302は、円筒状の凹部である。複数の第2の凹部301の円筒の深さ及び直径は、等しい方が好ましい。また、複数の第3の凹部302の深さ及び直径も、等しい方が好ましい。円筒の深さと直径を揃えることにより、電磁波が反射する表面積を等しくすることができ、容器200に加わる放射熱を均一にすることができる。
【0069】
また、複数の第3の凹部302のうち、いずれか1つの第3の凹部302を、第2のヒートブロック131bを貫通する第3の貫通孔303とし、
図5、8に示すように、第3の貫通孔303の開口部分に、放射温度計400を配置してもよい。具体的には、第3の貫通孔303の一方の開口は、容器押さえ板160の第2の貫通孔163に開口し、他方の開口は、第2のヒートブロック131bの容器押さえ板160と対向する面と反対の面に開口する。第3の貫通孔303の他方の開口に、放射温度計400が配置される。
【0070】
放射温度計400は、物体が放射する放射エネルギーの強度を測定することで物体の温度を測定する温度計である。放射温度計は、光に由来する熱放射を測定する温度計であるので、高速に温度の測定が可能である。
【0071】
放射温度計400は、真空チャンバ100に赤外線を透過する覗窓等を取付け、真空チャンバ100の外側に配置してもよいし、真空チャンバ100の内部に配置してもよい。
【0072】
従来は、第1の凹部141に収容した容器200の温度は、測定することが困難であった。実験としては、容器200の温度の代わりに、トレイ140に取り付けた熱電対によりトレイ140の温度を測定できても、このような方法では生産中の温度を測定することはできない。また、トレイ140をヒートブロック131により加熱した場合、トレイ140と容器200の熱容量、熱伝達率の違いによって温度上昇に時間差が生じる。特に、本実施形態による放射伝熱による熱伝達では、トレイ140が上昇する温度より容器200の上昇する温度が早く、容器200の温度を正確に把握することは困難であった。
【0073】
本実施の形態によれば、第2のヒートブロック131bに第3の貫通孔303を形成し、第3の貫通孔303の他方の開口に放射温度計400を配置して、一方の開口が開口する第2の貫通孔163を介して、直接、容器200の温度を測定することができる。容器200の温度を直接測定することで、封止処理中の容器200をリアルタイムで測定しながら、封止処理に反映することができる。
【0074】
ピンを使用した封止機構では、容器がヒートブロックにより挟まれており、容器の温度を測定することは困難であった。本実施の形態によれば、温度を測定しながら、封止処理ができるので、精度よく封止処理を行うことができる。
【0075】
本実施の形態によれば、第1の貫通孔144、第2の貫通孔163に加えて、第1のヒートブロック131aに第2の凹部301、第2のヒートブロック131bに第3の凹部302を形成した。実施の形態1に比較して、第1のヒートブロック131a及び第1のヒートブロック131aから放射される電磁波が反射できる表面積が増加するので、より大きな放射熱を容器200に加えることができる。
【0076】
実施の形態1、2において封止される容器は、ワークとして水晶振動子を使用した場合、水晶振動子の実装サイズが、2016タイプ(2.0mm×1.6mm)以下の実装サイズ、例えば、1612タイプ(1.6mm×1.2mm)、1210タイプ(1.2mm×1.0mm)である水晶振動子を使用すると、本発明の効果は更に大きい。水晶振動子が小さくなると熱容量も小さくなるため、ピンによる荷重を受けなくても、伝導熱及び放射熱のみで封止材を溶融して、容器を封止できる。
【0077】
実施の形態1、2では、第1の予備加熱機構110と第2の予備加熱機構120を備え、封止機構130にトレイ140が搬送される前に、トレイ140を予備加熱していた。本発明は、予備加熱機構を2つ備える封止装置1に限定されない。予備加熱機構は1または3つ以上あってもよい。また、水晶振動子の実装サイズが小さい場合、予備加熱機構はなくてもよい。
【0078】
実施の形態1、2において、第1の貫通孔144は、円筒形状であり、第2の貫通孔163は、断面が長孔の筒状形状であると説明した。本願発明は、第1の貫通孔144と第2の貫通孔163の形状が筒状である形状に限定されない。円錐形状、半球形状など、孔の内壁の表面積を大きくすることができる形状であれば、いかなる形状で形成してもよい。
【0079】
実施の形態1、2において、第2の貫通孔163は、当接するトレイ140の短手方向に沿って形成された複数の第1の凹部141が並べられた方向と、第2の貫通孔163の長孔の長辺とのなす角度がα度となるように、傾斜して形成すると説明した。本発明において、α度は、容器200の一部が第2の貫通孔163の外側に位置するように形成されれば、いかなる角度も取ることができる。
【0080】
実施の形態2において、第2の凹部301と第3の凹部302は、それぞれ円筒形状の孔であると説明したが、本願発明は、円筒形状に限定されない。第1の貫通孔144と第2の貫通孔163と同様に、円錐形状、半球形状など、凹部の内壁の表面積を大きくすることができる形状であれば、いかなる形状で形成してもよい。
【0081】
実施の形態2において、第2の凹部301と第3の凹部302の双方がヒートブロック131に形成されていると説明したが、本発明は、第2の凹部301と第3の凹部302のどちらか一方をヒートブロック131に形成してもよい。
【0082】
実施の形態2において、第2のヒートブロック131bに第3の貫通孔303を形成し、他方の開口に放射温度計を配置することを説明したが、実施の形態1における第2のヒートブロック131bに第3の貫通孔303を形成し、他方の開口に放射温度計を配置してもよい。
【0083】
実施の形態2において、第3の凹部302と第3の貫通孔303を配置することを説明したが、第3の凹部302を全て第3の貫通孔303としてもよい。トレイ140に搭載された容器200全てが第3の貫通孔303に連通することになるため、容器200を全て同じ条件で加熱封止することができる。更に、第3の貫通孔303を介し、放射温度計400によりトレイ140に搭載された容器200全てを測温することも可能となる。放射温度計400の一部を真空チャンバ100内部に導入し、所望の第3の貫通孔303に対面する位置に放射温度計400の一部移動させてもよいし、トレイ140及びヒーターブロックを一体にXYステージ等により移動させ、放射温度計400の位置に第3の貫通孔303を対面させてもよい。