特許第6987421号(P6987421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987421
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】昇降式シェルター扉
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20211220BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20211220BHJP
   E06B 3/52 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   E04H9/14 Z
   E04H9/14 B
   E04H9/14 K
   E06B5/00 Z
   E06B3/52
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-549422(P2021-549422)
(86)(22)【出願日】2020年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2020034250
(87)【国際公開番号】WO2021070547
(87)【国際公開日】20210415
【審査請求日】2021年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2019-187503(P2019-187503)
(32)【優先日】2019年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 実公平03−042211(JP,Y2)
【文献】 特開2011−084883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E05F 15/56,15/643
E06B 3/52
E06B 5/00,5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルターの天井に設けられた開口部に、スライド自在に嵌合できる扉本体と、
前記扉本体を昇降させる昇降装置と、を備え、
前記昇降装置は、前記天井から一直線に延びるガイドレールを有し、前記扉本体は、前記ガイドレールに沿って昇降することで前記開口部を開閉し、
前記昇降装置は、前記扉本体と接続して、前記ガイドレールに沿って回動を伴って移動できる無端状帯を有し、
前記扉本体は、前記無端状帯の移動によって前記ガイドレールに沿って昇降することを特徴とする昇降式シェルター扉。
【請求項2】
前記扉本体は、下端部に設けられる昇降台を有することを特徴とする請求項に記載の昇降式シェルター扉。
【請求項3】
前記昇降台は、前記扉本体の上昇が完了したとき前記天井の上方に位置し、前記扉本体が前記開口部を閉鎖したとき前記シェルターの内部空間に位置することを特徴とする請求項に記載の昇降式シェルター扉。
【請求項4】
前記昇降台は、前記扉本体の昇降方向に沿ってスライド自在に前記扉本体に固定されることを特徴とする請求項またはに記載の昇降式シェルター扉。
【請求項5】
シェルターの天井に設けられた開口部に、スライド自在に嵌合できる扉本体と、
前記扉本体を昇降させる昇降装置と、を備え、
前記昇降装置は、前記天井から一直線に延びるガイドレールを有し、前記扉本体は、前記ガイドレールに沿って昇降することで前記開口部を開閉し、
前記扉本体は、下端部に設けられる昇降台を有し、
前記昇降台は、前記扉本体の昇降方向に沿ってスライド自在に前記扉本体に固定される
ことを特徴とする昇降式シェルター扉。
【請求項6】
前記昇降台は、前記扉本体の上昇が完了したとき前記天井の上方に位置し、前記扉本体が前記開口部を閉鎖したとき前記シェルターの内部空間に位置することを特徴とする請求項に記載の昇降式シェルター扉。
【請求項7】
前記昇降装置は、前記ガイドレールが延びる方向に沿って伸縮するリフトシリンダーを有し、
前記扉本体は、前記リフトシリンダーの伸縮によって前記ガイドレールに沿って昇降することを特徴とする請求項1、5または6に記載の昇降式シェルター扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドレールに沿って昇降することで開口部を開閉する昇降式シェルター扉に関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災では、巨大津波によって多くの人々の生命が奪われた。このような巨大津波から身を守るためには、津波襲来前に迅速に高台に避難することが防災上の有効な手段の一つとなっている。しかし、東海、東南海、南海の三連動地震が発生した場合、地震発生後わずか5分で高さ30mの津波が襲来する地域が存在することが予想されている。このような短時間で高台に避難することは、小さなお子様、高齢者・障害者の方々にとっては困難を極める。仮に、避難ビルに退避するとしても、階段を昇ることすら困難であるのが現状である。
【0003】
対策として、住居に近接した場所にシェルターを設置し、このシェルターに避難することが有効である。地震発生とともに速やかにシェルターに退避し、津波が去ったあとに脱出することで多くの人々の人命を津波災害から守ることができる。
【0004】
しかし、シェルター用の扉は、津波の波力や漂流物の衝突に耐える性能を具備することが求められるため、頑強なつくりとする必要がある。そのため、必然的に重量の重いものとなる。
【0005】
蝶番で扉を回転させて開閉するいわゆる「開き戸」は、シェルター用の扉として多用されるが、蝶番に大きな負荷が生じるため、重い扉を円滑に回転することは難しい。また、扉の回動中に、余震が発生した場合は、より大きな負荷が蝶番にかかり蝶番が破損して、扉が開閉できない事態も想定される。蝶番が破損しなくても、扉自体が地震力によって不意に回動し、人々が扉に挟まれる事態も想定される。また、シェルターを設置現場に長期間設置している状態では、経年変化によって蝶番が劣化し、扉の回転がますます困難になる事態が生じる。
【0006】
開き戸式の扉は、少なくとも90度、好ましくは180度回転させる必要がある。すなわち、開閉するために扉の回転端部を大きく移動させる必要があり、特に、シェルター用扉のように重い扉の開閉には時間を要する。そのため、シェルターへの避難が遅れ被災する危険もある。
【0007】
特に、上方に向かって回動するいわゆるハッチタイプの重量扉は、開閉がより一層困難となる。
【0008】
シェルター用の扉を「引戸式」とすることも考えられるが、引戸は壁面と引戸との間に隙間が生じ易く、気密性を確保することが難しい。例えば、津波で水没した状態では、シェルター内部が浸水する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2018/070467号公報
【特許文献2】特開2019−94667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、短時間に簡単に開閉できて、水密性が高く、耐久性に優れた昇降式のシェルター扉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、昇降式シェルター扉であって、シェルターの天井に設けられた開口部に、スライド自在に嵌合できる扉本体と、扉本体を昇降させる昇降装置を備え、昇降装置は、天井から一直線に延びるガイドレールを有し、扉本体は、ガイドレールに沿って昇降することで開口部を開閉し、昇降装置は、扉本体と接続して、ガイドレールに沿って回動を伴って移動できる無端状帯を有し、扉本体は、無端状帯の移動によってガイドレールに沿って昇降することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、扉本体は開口部とスライド自在に嵌合するので、水密性能が向上するとともに、扉本体の封止効果を高めることができる。扉本体は回動を伴うことなく、ガイドレールに沿って昇降するので、蝶番を用いた開閉式の扉に比べ経年変化による劣化を抑制できる。また、無端状帯をモータ等の駆動源によって駆動することで、開口部を簡単に開閉できる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の昇降式シェルター扉において、扉本体は、下端部に設けられる昇降台を有することを特徴とする。
この構成によれば、扉本体は、下端部に設けられる昇降台を有するので、昇降台を利用して避難用具等の荷物の搬入搬出を容易にできる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の昇降式シェルター扉において、昇降台は、扉本体の上昇が完了したとき天井の上方に位置し、扉本体が開口部を閉鎖したときシェルターの内部空間に位置することを特徴とする。
この構成によれば、昇降台は、扉本体の上昇が完了したとき天井の上方に位置し、扉本体が開口部を閉鎖したときシェルターの内部空間に位置するので、昇降台への荷物の積み下ろしが容易となる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に記載の昇降式シェルター扉において、昇降台は、扉本体の昇降方向に沿ってスライド自在に扉本体に固定されることを特徴とする。
この構成によれば、昇降台は、扉本体の昇降方向に沿ってスライド自在に扉本体に固定されるので、荷物の積み込み積卸に好適な高さを設定できる。
【0016】
上記課題を解決するために、請求項5に係る発明は、昇降式シェルター扉であって、シェルターの天井に設けられた開口部に、スライド自在に嵌合できる扉本体と、扉本体を昇降させる昇降装置を備え、昇降装置は、天井から一直線に延びるガイドレールを有し、扉本体は、ガイドレールに沿って昇降することで開口部を開閉し、扉本体は、下端部に設けられる昇降台を有し、昇降台は、扉本体の昇降方向に沿ってスライド自在に扉本体に固定されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、扉本体は開口部とスライド自在に嵌合するので、水密性能が向上するとともに、扉本体の封止効果を高めることができる。扉本体は回動を伴うことなく、ガイドレールに沿って昇降するので、蝶番を用いた開閉式の扉に比べ経年変化による劣化を抑制できる。また、扉本体は、下端部に設けられる昇降台を有するので、昇降台を利用して避難用具等の荷物の搬入搬出を容易にできる。さらに、昇降台は、扉本体の昇降方向に沿ってスライド自在に扉本体に固定されるので、荷物の積み込み積卸に好適な高さを設定できる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の昇降式シェルター扉において、昇降台は、扉本体の上昇が完了したとき天井の上方に位置し、扉本体が開口部を閉鎖したときシェルターの内部空間に位置することを特徴とする。
この構成によれば、昇降台は、扉本体の上昇が完了したとき天井の上方に位置し、扉本体が開口部を閉鎖したときシェルターの内部空間に位置するので、昇降台への荷物の積み下ろしが容易となる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1、5または6に記載の昇降式シェルター扉において、昇降装置は、ガイドレールが延びる方向に沿って伸縮するリフトシリンダーを有し、扉本体は、リフトシリンダーの伸縮によってガイドレールに沿って昇降することを特徴とする。
この構成によれば、リフトシリンダーを油圧ポンプ等の駆動源によって伸縮させることで、開口部を簡単に開閉できる。
【0023】
好ましくは、天井は、貯水できることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、火災のとき、天井に貯水された水の潜熱効果によりシェルター内部の温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は、実施形態1において、昇降式シェルター扉が開口部を閉鎖した状態の正面断面図であり、(b)は同、開放した状態の正面断面図である。
図2】(a)は実施形態1における昇降式シェルター扉の部分正面図であり、(b)は同、部分平面断面図である。
図3】実施形態1における開口部と昇降台の関係を説明する部分平面断面図である。
図4】(a)は、実施形態1における扉本体の側面図であり、(b)は、同正面図である。
図5】(a)は、実施形態2において、昇降式シェルター扉が開口部を閉鎖した状態の部分正面図であり、(b)は同、開放した状態の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〈実施形態1〉
本発明の実施形態1について、図1〜4を参照して説明する。
【0027】
図1(a)、(b)に示す通り、昇降式シェルター扉1(以下、シェルター扉1と呼ぶ)は、扉本体10が昇降装置50によってガイドレール20に沿って昇降することで、開口部31を開閉する。開口部31は、シェルター100の天井30に設けられている。シェルター100は、鉄筋コンクリート製であり、地下130に避難空間となる内部空間110が画定されている。
【0028】
天井30は、外周端から上方に向かって垂直に延びる天井側壁32が環状に設けられている。これにより、天井30は上方に開口する盆状の凹部が画定され、水Wを貯水できる。また、内部空間110の側に断熱材36が設けられている。仮に大規模な火災が発生した場合でも、貯水された状態では、水Wの潜熱効果、および断熱材36の断熱効果によって、内部空間110の温度上昇が抑制される。
【0029】
天井側壁32を乗り越えて、開口部31へ往来するための斜路Sが、天井側壁32の内部面、および外部面に接する状態で、天井30、および地面120の上面に設けられている。
【0030】
天井30に設けられた開口部31は、正面視でガイドレール20の傾斜角度と同様の傾斜角度で開口している。また、開口部31を往来するための梯子60が、内部空間110に設けられている。梯子60の設置角度はガイドレール20の傾斜角度と同じであることが好ましい。さらに、梯子60に替えて、踏板を有するタラップとしてもよい。この場合において、踏板は梯子60の傾斜角度に沿うように回動できることが好ましい。
【0031】
扉本体10は、本体部11、本体部11の下方に固定される受支柱12、受支柱12にスライド自在に固定される昇降台13、および昇降装置50に接続する接続部17を有する。
【0032】
本体部11は、中央部に、中央凸部11aが設けられている。中央凸部11aは、正面視で両側面がガイドレール20の傾斜方向に沿って下方に向かって延びている。また、中央凸部11aの下面には断熱材16が設けられている。断熱材16は、中央凸部11aと同様に正面視で両側面がガイドレール20の傾斜方向に沿って下方に向かって延びている。これにより、中央凸部11aは、ガイドレール20の傾斜方向に沿ってスライド自在に嵌合する。この嵌合によって、扉本体10は、ガイドレール20の傾斜方向に沿ってのみの昇降が可能となり、水平方向、鉛直方向の移動は制限される。本体部11は、鉄筋コンクリート製であることが好ましい。また、中央凸部11aが設けられた範囲の本体部11は、厚さが40cm〜70cmであることが好ましい。より好ましい厚さは、60cm〜70cmである。これにより、所定の放射線遮蔽性能を具備し、核シェルター用の扉として利用できる。
【0033】
図4に示す通り、2本の受支柱12は、一端が中央凸部11aに固定されて、下方に向かってガイドレール20の傾斜方向に沿って延びており、他端は自由端となっている。受支柱12は、斜材12a、および横繋材14によって補強されている。斜材12aの一端は、中央凸部11aに固定されて、他端は、受支柱12の中間部に固定されている。横繋材14は、梯子状に配設されて、端部はそれぞれの受支柱12に固定されている。斜材12a、および横繋材14によって補強されることで、受支柱12の変位は拘束され、見かけ上の剛性は高まる。
【0034】
昇降台13は、図3に示す通り、対向する位置に切欠き部13a、13aが設けられた略矩形の平板であり、水平を保った状態で、受支柱12にスライド自在に固定される。また、上面が受支柱12に接する位置まで上方に向かって回動できる。図1(a)、(b)に示す通り、扉本体10の上昇が完了したとき、昇降台13は、開口部31の上方に位置し、開口部31が閉鎖されたとき、内部空間110に位置する。
【0035】
本体部11の上面に、2個の接続部17が固定されている。接続部17は、本体部11と昇降装置50を接続するためのものであり、先端部は2股に分岐している。2股に分岐した一方の端部となる第1端部17aは、チェーン43(無端状帯)に固定され、他方の端部となる第2端部17bは、一対の従動輪45、45を介してガイドレール20と接続している。
【0036】
昇降装置50は、一対のガイドレール20、20、並びにモータ40、第1歯車41、第2歯車42、およびチェーン43を有している。ガイドレール20は、溝20aが設けられた断面視がコ字形の部材であり、天井30に固定されて、所定の角度を維持した状態で一直線に上方に向かって延びている。
【0037】
モータ40は、回転軸に第1歯車41が固定された状態で、一対のガイドレール20、20の上端に対向して設けられている。ガイドレール20の下端部には第2歯車42が回動自在に固定されている。また、チェーン43は、第1歯車41、および第2歯車42に架け渡されている。電源を入れてモータ40を回動すると、第1歯車41が回動し、それに伴って、無端状のチェーン43が回動を伴ってガイドレール20の傾斜方向に沿って移動する。また、第2歯車42が従動して回動する。本実施形態1では、第1歯車41は、モータ40の回転軸に直接固定されているが、変速機を介して固定することが好ましい。これによりモータの負荷を低減できるとともに、本体部11の滑らかな昇降が可能となる。
【0038】
第2端部17bに設けられた従動輪45、45はガイドレール20の対向するフランジ20b、20bに接触している。一方、第1端部はチェーン43に固定される。モータ40によって第1歯車41を回動させたとき、チェーン43はガイドレール20に沿って移動し、この移動に伴って本体部11は接続部17と一体となって、ガイドレール20の傾斜方向に沿って昇降する。
【0039】
シェルター扉1の使用について説明する。
【0040】
通常時においては、重量の重い物資、例えば酸素ボンベ等を容易に内部空間110に搬入し、また搬出できる。具体的には、遠隔操作で扉本体10の上昇を完了させた後、昇降台13を開口部31の上方に位置させて、水平を保つ。昇降台13に酸素ボンベを載せて、切欠き部13aから内部空間110を目視して安全を確認したうえで、扉本体10を降下させる。降下が完了した段階で、あらかじめ、内部空間110に待機していた作業員が、昇降台13から酸素ボンベを荷下ろしする。内部空間110から搬出するときは、ほぼ同様の手順を踏めばよい。
【0041】
災害が発生したときは、遠隔操作によって扉本体10の上昇を完了させて、開口部31を開放する。昇降台13は、上面が受支柱12に接した状態で上方にスライドされて固定されている。横繋材14を手摺として、梯子60を使用して内部空間110に避難する。全員の避難を確認した段階で、扉本体10を降下させて、開口部31を閉鎖する。その後、天井30に水Wを貯水する。火災が発生した場合でも、水Wの潜熱効果によって、内部空間110の温度上昇は抑制される。また、津波が発生した場合でも、本体部11は天井側壁32で防護される。
【0042】
本体部11は、中央凸部11aによって開口部31と嵌合しているため、開口部31の接触面積は増加する。これにより、開閉式の扉に比べ高い水密性能を具備できる。また、波力等の外力によって扉本体10が、開口部31から外れることはない。
【0043】
災害の終息を確認して、天井30に貯水された水Wを排水した後、扉本体10を上昇させて、開口部31を開放する。梯子60を使用して、開放された開口部31から脱出する。
【0044】
なお、自力での昇降が困難な人々、例えば日常生活において車椅子を使用している人々に対しては、安全基準等の諸条件を満たしたうえで、昇降台13に腰かけた状態で昇降して、内部空間110に避難できるようにすることが好ましい。具体的には、扉本体10の上昇が完了した時点で、昇降台13をスライドさせて腰かけ易い位置に固定する。足を切欠き部13aに入れた状態で昇降台13に座り、扉本体10を降下させる。この場合において、車椅子も同時に昇降台13に乗せてもよい。より好ましくは、車椅子に乗った状態で昇降台13まで移動して、車椅子ごと昇降することである。
【0045】
〈実施形態2〉
本発明の実施形態2について、図5を参照して説明する。実施形態2は、実施形態1とほぼ同様の構成となっていることから、主な相違点となる昇降装置について説明する。実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付し、異なる構成については200番台の符号を付す。
【0046】
昇降装置250は、一対のガイドレール220、220、並びに滑車245、ワイヤー246、およびリフトシリンダー240を有する。ガイドレール220は、外ガイドレール221、および内ガイドレール222で構成されている。外ガイドレール221は、天井30に固定されて、一直線に上方に向かって垂直に延びている。
【0047】
内ガイドレール222は、外ガイドレール221に沿って昇降する構造となっており、上端部に滑車245が回動自在に固定されている。
【0048】
リフトシリンダー240は、一端が天井30に固定されて、上方に向かって垂直に延び、他端は内ガイドレール222に接続している。
【0049】
扉本体210は、従動輪(図示略)等によって内ガイドレール222に沿って昇降可能となっている。
【0050】
ワイヤー246は、一端が扉本体210に固定されて、滑車245を経由して他端が外ガイドレール221に固定されている。
【0051】
リフトシリンダー240を上昇させると、内ガイドレール222が、外ガイドレール221に沿ってリフトシリンダー240の上昇した距離と同等の距離を上昇する。同時に、内ガイドレール222に固定された滑車245もリフトシリンダー240の上昇した距離と同等の距離を上昇する。このとき、扉本体210は、リフトシリンダー240の昇降する距離の2倍の距離を昇降する。これにより、扉本体210の昇降速度を速めることが可能となるとともに、開口部31が閉鎖された状態で、ガイドレール220の構造高さを低くできる。
【0052】
なお、内ガイドレール222を外ガイドレール221に沿って昇降させるために必要となる構成、および扉本体210を内ガイドレールに沿って昇降させるために必要となる構成については、フォークリフトの昇降で用いるものとほぼ同様であり、一般的構成であることから説明は省略する。
【0053】
実施形態1、2はあくまでも例示であり、上述した実施形態に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、様々な改変、置換等を行うことができる。例えば、実施形態1、2においてガイドレールの傾斜角度は垂直であっても、所定の傾斜角度であってもよい。また、実施形態1で用いた昇降装置において、モータに替えて、リフトシリンダーで扉本体を直接昇降させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る昇降式シェルター扉を、地下シェルターに用いることで、通常時において、重量物の内部空間への搬入・搬出を行い得る。また、津波災害、火災、放射能災害に対して幅広く対応できることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0055】
1: シェルター扉
10: 扉本体
13: 昇降台
20、220: ガイドレール
30: 天井
31: 開口部
43: チェーン(無端状帯)
50、250: 昇降装置
100: シェルター
110: 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5