(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一対の側方フレーム要素は、上面視において前記シート状部材と少なくとも部分的に重なるように位置し、前記シート状部材を下方から支持する、請求項5又は6に記載のシート支持ユニット。
前記連結部材は、その端部分において、前記側方フレーム要素の上側、幅方向外側および下側を順に延びて、当該側方フレーム要素の幅方向内側を向く面に取り付けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシート支持ユニット。
前記シートは、前記座部支持体によって支持されるシート座部と、前記シート座部に接続したシート背部と、を有し、前記シート背部は、下方に開口して前記背部支持体を受け入れる収容部を含み、
前記シート背部は、クッション性を有したシート背部本体と、前記シート背部本体を背面側から覆うカバー布状材と、を有し、
前記カバー布状材は、両側方縁部分および上縁部分において前記シート背部本体に縫い付けられ、前記シート背部本体および前記カバー布状材の間に前記収容部が形成されている、請求項13又は14に記載の乳母車。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に示された一具体例を参照しながら本発明の一実施の形態について説明する。
【0010】
図1〜
図11は本発明によるシート支持ユニットおよび乳母車の一実施の形態を説明するための図である。このうち、
図1〜
図4には、乳母車または乳母車本体の一具体例の全体構成が示されている。また、
図4〜
図8はシート支持ユニットの全体または一部分が示されている。
図9及び
図10は、主として、シート70を示している。なお、一部の図面に示された構成が、他の図面において省略されていることもある。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態の乳母車10は、乳母車本体15と、乳母車本体15に支持されたシート70と、を有している。乳母車本体15は、シート70を支持するシート支持ユニット40と、シート支持ユニット40を支持する本体フレーム20と、を有している。シート70は、乳母車10に乗車した乳幼児が着座する又は横臥する場所となる。シート70は、シート支持ユニット40から取り外して、洗濯することができる。以下に説明する乳母車10では、衛生面を改善するための工夫として、乳母車10から取り外して洗濯できない布製品の量が低減されている。
【0012】
以下、乳母車10の各構成要素について、順に説明していく。なお、
図1及び
図2に示すように、図示された乳母車10及び乳母車本体15は、全体的に、横方向中心に位置し前後方向及び上下方向に沿った面を中心として概ね対称な構成を有している。
【0013】
本明細書中において、乳母車およびその構成要素に対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車およびその構成要素に乗車する乳幼児を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」を意味する。さらに詳しくは、「前後方向」とは、
図1及び
図2における紙面の左下と右上とを結ぶ方向であって、
図3における紙面の左右の方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、乗車した乳幼児が向く側であり、
図1及び
図2における紙面の左下側並びに
図3における紙面の左側が前側となる。一方、「上下方向」とは乳母車の走行面に直交する方向である。したがって、走行面が水平面である場合、「上下方向」とは鉛直方向をさす。また、「横方向」とは幅方向であって、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。幅方向(横方向)における「内側」または「内方」とは、幅方向における乳母車の中心に近接する側を指し示し、幅方向(横方向)における「外側」または「外方」とは、幅方向における乳母車の中心から離間する側を指し示す。さらに、シート支持ユニット等に関連して用いられる「背面側」とは、乳母車に乗車する乳幼児に対面する側とは反対側のことを意味している。したがって、「背面側」とは、通常、後側または下側となる。
【0014】
まず、乳母車本体15について説明する。図示された乳母車本体15は、折り畳み可能に構成されている。上述したように乳母車本体15は本体フレーム20及びシート支持ユニット40を含んでいるが、まずは本体フレーム20及びシート支持ユニット40を明確に区別することなく、乳母車本体15を折り畳み可能に構成する各構成要素について説明する。
【0015】
乳母車本体15は、
図2に示すように、それぞれ左右に配置された一対の前脚21と、それぞれ左右に配置された一対の後脚23と、を有している。乳母車本体15は、それぞれ左右に配置された第1リンクL1、第2リンクL2、第3リンクL3及び第4リンクL4を更に有している。前脚21、後脚23及び第1〜第4リンクL1〜L4は、乳母車本体15を折り畳み可能および展開可能に構成するリンクとして機能する。
【0016】
図2に示すように、前脚21は、その下端部分において、前輪22を回転可能に保持している。前輪22は、キャスターを構成し、回転可能であるとともに旋回可能となっている。後脚23は、その下端部分において、後輪24を回転可能に保持している。前脚21及び後脚23は、例えばアルミニウム合金等の金属製パイプを用いて構成され得る。
【0017】
図2に示すように、前脚21の上端部分は、対応する側(左側または右側)に配置された第1リンクL1の前方部分に回動可能(揺動可能)に接続している。後脚23の上端部分は、対応する側(左側または右側)に配置された第1リンクL1の前方部分に回動可能(揺動可能)に接続している。第1リンクL1は、例えば樹脂成形物を用いて構成され得る。図示された例において、第1リンクL1はアームレストとして機能し得る。
【0018】
図3から理解されるように、第2リンクL2が、対応する側(左側または右側)に配置された第1リンクL1の後端部分に回動可能(揺動可能)に接続している。図示された例において、第2リンクL2は、ハンドル30の一部分として構成されている。ハンドル30は、全体としてU字状の形状を有している。ハンドル30は、一対の軸部31と、一対の軸部31を連結する連結部32と、を有している。各軸部31が、第2リンクL2を構成している。連結部32は、一対の軸部31の上端部分を連結している。ハンドル30は、例えばアルミニウム合金等の金属製パイプを用いて構成され得る。
【0019】
図2及び
図3に示すように、第3リンクL3は、対応する側(左側または右側)に配置された後脚23と回動可能に接続している。第3リンクL3は、例えばアルミニウム合金等の金属製パイプや樹脂成形物を用いて構成され得る。図示された例において、第3リンクL3は、その下端部分において、後脚23の中間部分と回動可能に接続している。
【0020】
図2及び
図3に示すように、第4リンクL4は、対応する側(左側または右側)に配置された前脚21と回動可能に接続している。図示された例において、第4リンクL4は、その前端部分において、前脚21の中間部分と回動可能に接続している。詳しくは後述するように、第4リンクL4は、シート支持ユニットの一部分を構成している。
【0021】
図示された例において、幅方向において同一側(左側または右側)に配置された第2リンクL2、第3リンクL3及び第4リンクL4は、同一の軸部材35(
図3参照)を用いて、互いに回動可能に接続されている。この軸部材35は、第2リンクL2、第3リンクL3及び第4リンクL4を貫通している。この構成により、第2リンクL2、第3リンクL3及び第4リンクL4は、軸部材35の中心軸線と一致する軸線を中心として、互いに回動可能となっている。
【0022】
図2に示すように、乳母車本体15は、横方向に延びる構成要素として、一対の前脚21間を連結する前方連結材26と、一対の後脚23間を連結する後方連結材27と、を有している。前方連結材26は、フットレストとして機能する。前方連結材26及び後方連結材27は、例えばアルミニウム合金等の金属製パイプや樹脂成形物を用いて構成され得る。また、一対の第1リンクL1間に可撓性を有したガード部材28が取り外し可能に設けられている。
【0023】
以上の構成を有した乳母車本体15は、各構成部材を相対回動させることにより、折り畳むことができる。具体的には、第2リンクL2を構成するハンドル30をいったん後上方に引き上げ、その後、下方に押し下げることによって、第3リンクL3を後脚23に対し
図3において時計回り方向に回動させる。この操作にともなって、第1リンクL1および第4リンクL4は第2リンクL2に対し
図3において時計回り方向に回動する。このような操作により、側面視においてハンドル30と前脚21とが略平行な関係を維持しながら互いに接近するとともに、ハンドル30の位置が下げられるようになる。以上のようにして、乳母車本体15を折り畳むことができる。折り畳まれた状態では、乳母車10の前後方向および上下方向に沿った寸法を小型化することができる。一方、乳母車本体15を折り畳み状態から展開するには、上述した折り畳み操作と逆の手順を踏めばよい。
【0024】
以上に説明した乳母車本体15の構成のうち、側方フレーム要素50がシート支持ユニット40に含まれ、その他の構成は本体フレーム20に含まれる。
【0025】
次に、シート支持ユニット40について詳述する。
図2〜
図3に示すように、シート支持ユニット40は、座部支持体42及び背部支持体44を有している。座部支持体42は、乳母車10に乗車した乳幼児の臀部に対面する。背部支持体44は、乳母車10に乗車した乳幼児の背中に対面する。
【0026】
まず、
図4〜
図7を参照して、シート支持ユニット40の座部支持体42について説明する。なお、
図1〜
図4では、
図4〜
図7に示されたシート支持ユニット40の一部または全部が省略されていることもある。
【0027】
図4及び
図5は、それぞれ、シート支持ユニット40を示す斜視図および上面図であり、
図6は、
図5のVI−VI線に沿った断面図である。
図4〜
図6に示すように、座部支持体42は、一対の側方フレーム要素50、連結部材60及びシート状部材65を主たる構成要素として、含んでいる。なお、
図7の斜視図は、シート状部材65を取り除いた状態のシート支持ユニット40を
図4と同じ方向から示している。
【0028】
図2に示すように、側方フレーム要素50は、上述したように、第4リンクL4を構成している。一対の側方フレーム要素50は、幅方向に離間して配置されている。各側方フレーム要素50は、前後方向に延びている。側方フレーム要素50は、その前端部分において、前脚21の中間部分と回動可能に接続している。また、側方フレーム要素50は、その後端部分において、第2リンクL2の下端部分及び第3リンクL3の上端部分と回動可能に接続している。
【0029】
図4に示すように、側方フレーム要素50は、前後方向に延びる側フレーム材51と、側フレーム材51の前端部分に固定された前端部材52と、側フレーム材51の後端部分に固定された後端部材53と、を有している。側フレーム材51は、例えばアルミニウム合金等の金属製パイプを用いて構成され得る。前端部材52及び後端部材53は、例えば樹脂成形物を用いて構成され得る。
図4によく示されているように、前端部材52には、側方フレーム要素50と前脚21とを回動可能に連結するための軸(図示せず)が通過する軸受け穴52aが設けられている。また、前端部材52には、連結部材60が通過する貫通穴52bが設けられている。後端部材53には、軸部材35が通過する軸受け穴(図示せず)が形成されている。
【0030】
次に、連結部材60は、一対の側方フレーム要素50に掛け渡されている。連結部材60は、一対の側方フレーム要素50の間に張り渡されて、シート70及び乳幼児を下方から支持する。連結部材60は、柔軟性を有していることが好ましく、更に弾性を有していてもよい。このような連結部材60によれば、乳幼児を優しく支持することができ、乳母車10の乗り心地を向上させることができる。
【0031】
図5に示すように、連結部材60は、幅方向に延びる細長い部材である。そして、側方フレーム要素50の前後方向に沿った長さLに対して、連結部材60の前後方向に沿った幅Wは非常に短くなっている。なお、図示された例において、連結部材60は、ベルト状の部材として構成されている。ただし、この例に限られず、連結部材60は、紐と呼ばれるような幅Wが非常に小さい部材として構成されてもよい。連結部材60として、布を縫い合わせて作製された布ベルトや布紐、天然皮革製または合成皮革製のベルト状部材や紐状部材、樹脂製のベルト状部材や紐状部材等を用いることができる。
【0032】
複数の連結部材60が前後方向に互いから離間して一対の側方フレーム要素50に掛け渡されていてもよい。
図5によく示されているように、図示されたシート支持ユニット40では、三つの連結部材60が前後方向に互いから離間して一対の側方フレーム要素50に掛け渡されている。ただし図示された例に限られず、一対の側方フレーム要素50の間に、二つの連結部材60が掛け渡されていてもよいし、四以上の連結部材60が掛け渡されていてもよい。複数の連結部材60が用いられる場合には、各連結部材60の配置に応じて物性や構成を変更してもよい。例えば、前後方向における最後方に位置する連結部材60の強度を、その他の連結部材60の強度よりも大きくしてもよい。前後方向における最後方に位置する連結部材60の幅Wを、その他の連結部材60の幅よりも太くしてもよい。また、前後方向における最前方に位置する連結部材60の伸び率を、その他の連結部材60の伸び率よりも大きくしてもよい。
【0033】
なお、前後方向における側方フレーム要素50の長さLに対する、前後方向における連結部材60が配置されている(占めている)長さの割合を、50%以下としてもよく、更には30%以下としてもよい。「前後方向における連結部材60が配置されている長さ」とは、複数の連結部材60が設けられている場合には、複数の連結部材60の前後方向に沿った幅Wの合計となる。この割合が小さい場合、使用材料の低減により製造コストの面において好ましいだけでなく、衛生面の面からも好ましい。連結部材60は、張った状態に維持すべきであることから、側方フレーム要素50から取り外し不可能となることが想定される。取り外し不可能な連結部材60の洗浄や清掃は、手間が掛かるとともに難しい。したがって、前後方向における連結部材60が配置されている長さを極力短くすることが好ましい。
【0034】
この点から、複数の連結部材60が前後方向に互いから離間して一対の側方フレーム要素50に掛け渡されていることが好ましい。この具体例によれば、前後方向に分散して配置された複数の連結部材60によって、シート70上の乳幼児を効率的に安定して支持することができる。すなわち、乳幼児を安定して支持することを可能にしながら、連結部材60の量を低減することができる。したがって、乳母車の衛生面をより改善することができる。
【0035】
ところで、
図1に示すように、乳母車10は、乳幼児をシート70に固定するための座席ベルト11を有している。座席ベルト11は、乳幼児の股を通過する股ベルト11Aと、乳幼児の腰を通過して股ベルト11Aと着脱可能な腰ベルト11Bと、乳幼児の肩を通過して股ベルト11Aと着脱可能な肩ベルト11Cと、を有している。
図4及び
図7によく示されているように、図示された座部支持体42では、一つの連結部材60に股ベルト11Aが取り付けられている。具体的には、股ベルト11Aの基端部分に、例えば縫い付けること等によって筒状部が形成され、連結部材60が股ベルト11Aの筒状部分を通過している。
【0036】
座席ベルト11が有効に機能する観点から、股ベルト11Aは、好ましくは、座部のうちの前後方向における中心よりいくらか前方となる位置から延び出している。図示された例においては、座部のうちの前後方向における中心より僅かに前方にずれた位置に、前後方向における中間に位置する第2連結部材60Bが設けられている。結果として、図示された例において、股ベルト11Aは、前後方向における最前方に位置する第1連結部材60A及び前後方向における最後方に位置する第3連結部材60C以外の連結部材に取り付けられている。このような例によれば、股ベルト11Aを連結部材60により安定して保持することができ、且つ、座席ベルト11を有効に機能させることができる。
【0037】
図5に示すように、座部支持体42は、股ベルト11Aが取り付けられた第2連結部材60Bよりも前後方向における前方に、最前方に位置する第1連結部材60Aを有している。この最前方の第1連結部材60Aによって、シート70上の乳幼児の脚部を安定して支持することができる。とりわけ柔軟性を有した第1連結部材60Aによれば、脚部を優しく支持することができ、乳母車10の乗り心地を向上させることができる。
【0038】
また、
図5に示すように、座部支持体42は、股ベルト11Aが取り付けられた第2連結部材60Bよりも前後方向における後方に、最後方に位置する第3連結部材60Cを有している。通常の乳母車の座面は、股ベルトの延び出し位置よりも後方の位置で、乳幼児の体重を主として受ける。したがって、この第3連結部材60Cによって、乳幼児を安定して支持することができる。とりわけ高強度の第3連結部材60Cによれば、乳幼児の支持の安定性を増して、乳母車10の乗り心地を向上させることができる。
【0039】
図6に示すように、連結部材60は、その両端部分において、対応する側の側方フレーム要素50に取り付けられている。各連結部材60は、その端部分において、対応する側の側方フレーム要素50の上方、幅方向外方および下方を順に延びて、当該側方フレーム要素50の幅方向内側の面に取り付けられている。言い換えると、連結部材60の一端は、側方フレーム要素50(側フレーム材51)の幅方向内側の面に取り付けられ、次に、側方フレーム要素50(側フレーム材51)の上下方向下側の面、側方フレーム要素50(側フレーム材51)の幅方向外側の面、側方フレーム要素50(側フレーム材51)の上下方向上側の面に順に接触し、そして更に、幅方向内方に延び出している。この具体例によれば、連結部材60をより堅固に側方フレーム要素50に取り付けることができる。また、連結部材60の長さを長く確保することができるので、乳幼児を優しく支持することができ、例えば乳母車10の走行面からの衝撃等を効率的に吸収することができる。さらに、側方フレーム要素50の幅方向内側から連結部材60が取り付けられるので、取り付け箇所が目立たず、乳母車10の美観を改善することができる。
【0040】
なお、
図6に示された例において、リベット等の固定具63を用いて連結部材60は、着脱不可能に側方フレーム要素50に固定されている。
図5に示すように、第2連結部材60B及び第3連結部材60Cは、側方フレーム要素50の側フレーム材51の周囲をまわり、側フレーム材51に取り付けられている。つまり、第2連結部材60B及び第3連結部材60Cは、その端部分において、対応する側の側方フレーム要素50の側フレーム材51の上側、幅方向外側および下側を順に延びて、当該側フレーム材51の幅方向内側の面に取り付けられている。
【0041】
図5及び
図7に示すように、第1連結部材60Aは、前端部材52に取り付けられている。ただし、第1連結部材60Aが取り付けられている位置において、前端部材52内には側フレーム材51が存在する。また、前端部材52のうちの側フレーム材51の下方となる位置に、貫通穴52bが設けられている。第1連結部材60Aは、貫通穴52bを通過して、側方フレーム要素50の幅方向外側から幅方向内側に延びている。貫通穴52bを利用することによって、複雑形状を有する前端部材52上に、第1連結部材60Aを安定して取り付けることができる。
【0042】
次に、シート状部材(sheet-like member)65について説明する。シート状部材65は、シート状または板状に形成された樹脂製の部材である。
図4〜
図6に示すように、シート状部材65は、連結部材60によって支持される。そして、
図8に示すように、シート70は、シート状部材65上に配置され、シート状部材65によって下方から支持される。樹脂製のシート状部材65は、或る程度の柔軟性を有していることが好ましい。樹脂材料や厚み等を調整することによって、シート状部材65に対して柔軟性を付与することができる。シート状部材65の厚みは、一例として、0.5mm以上2mm以下とすることができ、更には0.8mm以上1.5mm以下とすることができる。シート状部材65に用いる樹脂材料として、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートが例示される。
【0043】
このように、連結部材60によって支持された樹脂製のシート状部材65を設けた座部支持体42によれば、連結部材60は、シート状部材65を介し、広面積でシート70上の乳幼児を支持するようになる。したがって、乳幼児は、或る程度の柔軟性を有したシート状部材65および連結部材60によって、より均一な力で安定して支持される。また、連結部材60は、シート状部材65を介して乳幼児を支持するので、連結部材60の数量や前後方向への幅Wを低減して、連結部材60の量を低減することができる。なお、樹脂製のシート状部材65は、布等と比較して防汚性に優れ、乳母車10に取り付けられたままの状態で十分に洗浄および清掃することができる。例えば、樹脂製のシート状部材65は、乾拭きや水拭きによって、容易に汚れを除去することができる。すなわち、シート状部材65を設置することによって、乳幼児を安定して支持して乗り心地を改善しながら、乳母車の衛生面をより改善することができる。
【0044】
図5に示すように、シート状部材65の前後方向に沿った長さは、側方フレーム要素50の前後方向に沿った長さと略同一となっている。同様に、シート状部材65の幅方向に沿った長さは、一対の側方フレーム要素50の幅方向外側面の間の幅方向に沿った距離と略同一となっている。すなわち、図示されたシート状部材65は、上面視において、座部支持体42の略全域に広がっている。
【0045】
好ましくは、一対の側方フレーム要素50が、
図5に示された上面視においてシート状部材65と少なくとも部分的に重なるように位置する。この構成によれば、シート状部材65が、一対の側方フレーム要素50により下方から支持される。したがって、シート状部材65の幅方向外側部分が垂れ下がるように撓むことを抑制することができる。これにより、シート状部材65を介して乳幼児をより安定して支持することができる。また、シート状部材65による支持状態が安定するので、連結部材60の数や前後方向への幅Wを低減して、連結部材60の面積を低減することができる。
【0046】
図示された例において、シート状部材65は、連結部材60が通過する穴65aを設けられている。連結部材60がシート状部材65の穴65aを通過することによって、シート状部材65は連結部材60によって保持されている。このような保持手法によれば、シート状部材65が連結部材60に対していくらか相対移動することができる。このような遊びにより、路面からの衝撃等を吸収することができ、乳母車10の乗り心地を向上させることができる。
【0047】
とりわけ、
図5及び
図6に示すように、シート状部材65は、一つの連結部材60が通過する四つの穴65aを設けられている。図示された例では、三つの連結部材60が、前後方向に離間して配置されている。したがって、各連結部材60に対して四つの穴が設けられ、合計12の穴65aがシート状部材65に設けられている。各連結部材60は、その長手方向における両端部分および中央部分においてシート状部材65を下方から支持している。この構成によれば、シート状部材65が、連結部材60により下方から支持されることによって、幅方向外側部分において垂れ下がることや、幅方向中央部分において下方に凹むことを抑制することができる。これにより、連結部材60は、シート状部材65を介して乳幼児をより安定して支持することができる。また、シート状部材65による支持状態が安定するので、連結部材60の数や前後方向への幅Wを低減して、連結部材60の面積を低減することができる。
【0048】
上述したように、第2連結部材60Bには股ベルト11Aが取り付けられている。股ベルト11Aは、幅方向における中央に位置している。そして、シート状部材65の股ベルト11Aに対面する位置にベルト穴65bが設けられている。股ベルト11Aは、ベルト穴65bを通過して、シート状部材65の下方から上方へと延びている。
【0049】
なお、
図6のみに示すように、シート状部材65の端面が、被覆材67によって追われていてもよい。被覆材67は、シート状部材65の側端面、前端面および後端面いずれか一以上を覆うように設けられてもよいし、シート状部材65の全周に渡って端面を覆うように設けられてもよい。被覆材67は、一例として、布によって構成され得る。被覆材67を設けることによって、美観を向上させることができ、且つ、取り扱い性に優れる。
【0050】
ところで、
図7によく示されているように、座部支持体42は、幅方向に延びる部材として、前フレーム材55及び中間フレーム材57を更に有している。前フレーム材55及び中間フレーム材57は、例えば、例えばアルミニウム合金等の金属製パイプや樹脂成形物を用いて構成され得る。このような前フレーム材55及び中間フレーム材57は、一対の側方フレーム要素50の間に位置しており、一対の側方フレーム要素50の幅方向への離間間隔を一定以上に維持する。これにより連結部材60を張った状態に維持することができ、乳幼児をより安定して支持することができる。
【0051】
図7に示すように、前フレーム材55及び中間フレーム材57は、上下方向において、側方フレーム要素50、連結部材60及びシート70のいずれよりも下方に位置している。
図5に示すように、前フレーム材55は、前後方向において、側方フレーム要素50の前端よりも後方に位置している。前フレーム材55は、前後方向において、側フレーム材51の前端よりも後方に位置している。前フレーム材55は、前後方向において、第1連結部材60Aの前端よりも後方に位置している。前フレーム材55は、前後方向において、シート状部材65の前端よりも後方に位置している。このような位置に配置された前フレーム材55は、乳母車10に乗車した乳幼児の脚部に接触しにくくなる。
【0052】
次に、背部支持体44について説明する。
図3に示すように、背部支持体44は、座部支持体42に対して回動可能となっている。背部支持体44が座部支持体42に対して揺動することによって、リクライニングを可能としている。
図4に示すように、背部支持体44は、幅方向に離間した一対の背側フレーム部45と、一対の背側フレーム部45を連結する背連結フレーム部46と、を含んでいる。図示された例において、背連結フレーム部46は、背側フレーム部45の座部支持体42から離間する側の端部に接続している。背部支持体44は、三方枠として構成されている。
【0053】
具体的な構成として、背連結フレーム部46は、角張ったU字状に形成された背フレーム材47と、背フレーム材47の両端部分に固定された接続端部材48と、を有している。
図4によく示されているように、接続端部材48には、軸部材35が通過する軸受け穴48aが設けられている。軸部材35が、接続端部材48の軸受け穴48aと側方フレーム要素50の後端部材53の図示しない軸受け穴とを通過することにより、背部支持体44は座部支持体42と揺動可能に接続される。背フレーム材47は、例えばアルミニウム合金等の金属製パイプを用いて構成され得る。接続端部材48は、例えば樹脂成形物を用いて構成され得る。
【0054】
なお、
図8に示すように、シート支持ユニット40は、シート状部材65及び中間フレーム材57を連結する接続手段68を更に有している。接続手段68を設けることにより、座部支持体42でのシート状部材65の位置を安定させることができる。接続手段68は、シート状の部材、ベルト状の部材、紐状の部材でもよい。図示された例では、接続手段68は、布状の部材として構成され、両縁部をシート状部材65の後縁部に縫い付けられている。中間フレーム材57は、両縁部をシート状部材65に縫い付けられた接続手段68内を通過している。
【0055】
次に、
図8〜
図10を主として参照しながら、シート(seat)70について説明する。ここで、
図8はシート70をシート支持ユニット40とともに示す側断面図であり、
図9はシート70を示す斜視図であり、
図10は乳母車10に取り付けられたシート70を後方から示す図である。なお、
図1〜
図7では、
図8〜
図10に示されたシート70の一部または全部が省略されていることもある。
【0056】
図9によく示されているように、シート70は、シート座部71及びシート背部72を有している。シート座部71は、シート支持ユニット40の座部支持体42によって支持される。シート座部71には、股ベルト11Aを通過させるためのベルト通し穴71a(
図1参照)が設けられている。シート背部72は、シート座部71に後方から接続している。シート背部72は、シート支持ユニット40の背部支持体44によって支持される。シート70は、乳幼児が着座または横臥する部分となる。
【0057】
図9に示すように、シート70は、シート座部71の前縁部分に設けられた第1取り付け手段75aと、シート座部71の両側縁部分に設けられた第2取り付け手段75bと、を有している。第1取り付け手段75a及び第2取り付け手段75bによって、シート座部71は座部支持体42に取り外し可能に取り付けられる。
【0058】
第1取り付け手段75aは、幅方向に離間して一対設けられている。
図8に示すように、第1取り付け手段75aは、シート座部71の前縁部分と前フレーム材55とを連結する。シート座部71の座部支持体42よりも前方に延び出す部分は、座部支持体42の前端で折り返されている。すなわち、シート座部71は、座部支持体42に取り付けられた状態において、座部支持体42を前方から覆うようになっている。
【0059】
第1取り付け手段75aは、例えば、一つまたは二つのベルト状の部材や紐状の部材として構成され得る。シート座部71に固定された一つのベルト状または紐状の部材を、前フレーム材55での折り返し前後となる二つの部分にて、結び付けることや、メンファスナやボタン等の連結具で固定することによって、シート座部71の前端部分を座部支持体42に取り付けることができる。または、シート座部71に固定された二つのベルト状または紐状の部材を、前フレーム材55を間に配置させるようにして、結び付けることや、メンファスナやボタン等の連結具で固定することによって、シート座部71の前端部分を座部支持体42に取り付けることができる。
【0060】
図9から理解され得るように、第2取り付け手段75bは、シート座部71の側縁部分を側方フレーム要素50に連結する。第2取り付け手段75bの具体的な構成は、第1取り付け手段75aと同様としてもよい。
【0061】
図8及び
図10に示すように、シート背部72は、シート背部本体72Aと、シート背部本体72Aを背面側から覆うカバー布状材72Bと、を有している。シート背部本体72Aは、乳幼児の背中や頭部に接触するようになる。カバー布状材72Bは、シート背部本体72Aとの間に背部支持体44を収容する収容部RPを形成する。カバー布状材72Bは、両側方縁部分および上縁部分において、シート背部本体72Aに縫い付けられている。結果として、
図8に示すように、収容部RPは、座部支持体42側に向けて開口している。すなわち、収容部RPは下方に向けて開口している。
【0062】
シート座部71及びシート背部72のシート背部本体72Aは、乳幼児に接触する部分となる。したがって、シート座部71及びシート背部本体72Aは、クッション性を有していることが好ましい。例えば、シート座部71及びシート背部本体72Aは、表地、表地と周縁部において縫い付けられた裏地、表地及び裏地の間に収容された綿、スポンジ、樹脂等を含むようにしてもよい。一方、カバー布状材72Bには、クッション性は要求されない。カバー布状材72Bは、布地やメッシュ地を用いて構成されてもよい。
図10に示されたカバー布状材72Bには、開口に近接する下方領域にメッシュ地が使用され、開口か離間する上方領域に目が細かい布地が使用されている。
図10に示されたカバー布状材72Bによれば、下方開口を通じてシート背部72の収容部RP内に背部支持体44を容易に挿入することができ、また、背部支持体44を収容部RPの奥まで挿入することによって、シート背部72を背部支持体44によって安定して保持することができる。
【0063】
図9に示すように、シート70は、さらに一対のシート側部73を有している。シート側部73は、シート座部71及びシート背部72に両側方から接続している。シート側部73は、シート座部71及びシート背部72と同様にクッション性を有するように構成されてもよい。また、シート側部73は、布地等によって構成され、クッション性を有していなくてもよい。なお、
図8及び
図10においてシート側部73の図示を省略している。
【0064】
図1に示すように、シート側部73は、乳母車本体15の本体フレーム20に取り外し可能に取り付けられる。この具体例によれば、シート70を本体フレーム20及びシート支持ユニット40によって安定して保持することができる。
【0065】
具体的な構成として、
図9に示すように、各シート側部73は、シート背部72から離間する側の側縁部分に、第3取り付け手段75c及び第4取り付け手段75dを有している。第3取り付け手段75cは、例えば、上述した第1取り付け手段75aや第2取り付け手段75bと同様に構成され、本体フレーム20に取り付けられる。第4取り付け手段75dは、第3取り付け手段75cと異なる構成を有し、本体フレーム20に取り付けられる。第4取り付け手段75dは、例えば本体フレーム20に取り付けられた固定具と固定可能なボタン等の固定具として構成され得る。シート側部73が、種類の異なる取り付け手段75c,75dを有することによって、シート70をより安定して本体フレーム20に取り付けることができる。なお、図示された例において、シート側部73は、本体フレーム20の第2リンクL2に着脱可能となっている。
【0066】
ところで、
図10及び
図3等に示すように、乳母車10(乳母車本体15)は、更に、リクライニング部材37を有している。リクライニング部材37は、本体フレーム20に接続しシート支持ユニット40の背部支持体44を背面側から支持する。リクライニング部材37は、本体フレーム20に接続するとともに背部支持体44の背面側に位置することで、背部支持体44を背面側から支持する。
【0067】
図10によく示されているように、リクライニング部材37は、本体フレーム20のうちのシート支持ユニット40(背部支持体44)の両側方に位置するハンドル30の一対の部分に取り付けられている。一対の部分の間におけるリクライニング部材37の長さは、可変となっている。リクライニング部材37が取り付けられたハンドル30の部分は、側面視におけるハンドル30の全長の中心位置より下方に位置し、且つ、座部支持体42よりも上方に位置する。
図3に示すように、リクライニング部材37の長さを変更することによって、座部支持体42に対する背部支持体44の傾斜角度を変更することができる。すなわち、背部支持体44をリクライニングさせることができる。
【0068】
図示された例において、リクライニング部材37は、その両端において、第2リンクL2に取り付けられている。具体的な構成として、リクライニング部材37は、紐状またはベルト状の細長い第1リクライニング部材37A及び第2リクライニング部材37Bと、調整具37Cと、を有している。第1リクライニング部材37Aは、その一端において、一方の第2リンクL2に固定されている。第1リクライニング部材37Aは一方の第2リンクL2から延び出している。第2リクライニング部材37Bは、その一端において、他方の第2リンクL2に固定されている。第2リクライニング部材37Bは他方の第2リンクL2から延び出している。調整具37Cは、クリップのように、第1リクライニング部材37A及び第2リクライニング部材37Bの任意の位置に固定可能としてもよい。あるいは、調整具37Cは、第1リクライニング部材37Aの他端に固定され、更に第2リクライニング部材37Bの任意の位置に固定可能としてもよい。
【0069】
第1リクライニング部材37Aの一端から調整具37Cまでの長さと、第2リクライニング部材37Bの一端から調整具37Cまでの長さと、の合計長さによって、背部支持体44のリクライニング角度が決定される。この合計長さが長くなると、
図3に二点鎖線で示すように、背部支持体44が倒れた(寝た)状態となる。ここで
図3に二点鎖線で示された状態において、一対の第2リンクL2の間におけるリクライニング部材37の長さが最長長さに設定されている。すなわち、
図3の二点鎖線の位置が、背部支持体44の最も倒れた位置となる。
【0070】
なお、二点鎖線で示された位置から背部支持体44を押して立ち上げることは可能となる。そこで、図示された例では、一対の第2リンクL2の間におけるリクライニング部材37の最長長さは、手で押される等によって起こされた背部支持体44をリクライニング部材37が越えることができない長さとなっている。これにより、意図せず、リクライニング部材37が背部支持体44の前方に出てしまうことがない。したがって、背部支持体44が、リクライニング部材37によって背面側から支持されることなく後方に倒れてしまうことを効果的に防止することができる。すなわち、この構成によれば、極めて単純な構成の背部支持体44を、リクライニングを可能にしながら、リクライニング部材37によってによって安定して支持することができる。
【0071】
図10に示すように、背部支持体44は、第1リクライニング部材37A及び第2リクライニング部材37Bを誘導するための誘導手段76を有している。誘導手段76は、カバー布状材72Bとの間に、リクライニング部材37の通過経路を形成する。図示された誘導手段76は、その一端をカバー布状材72Bに縫い付けられ、その他端をカバー布状材72Bに着脱可能としている。シート背部72を背部支持体44から着脱する際、誘導手段76の他端をカバー布状材72Bから着脱して、リクライニング部材37をシート背部72に取り付け取り外しする。
【0072】
次に、以上のような構成からなる乳母車10の使用時の作用について説明する。
【0073】
乳母車10のシート70上に乳幼児を着座させて又は横臥させた状態にて、使用者はハンドル30を把持して、乳母車10を走行させる。シート70のシート座部71はシート支持ユニット40の座部支持体42によって支持され、シート70のシート背部72はシート支持ユニット40の背部支持体44によって安定して支持される。また、第1〜第4取り付け手段75a〜75dを用いることによって、シート支持ユニット40及び本体フレーム20によってシート70を安定して保持することができる。これにより、シート70上の乳幼児に過度の揺れや振動を感じさせることなく、乳幼児に優れた乗り心地をもたらすことができる。
【0074】
ところで、従来の乳母車では、シートのシート座部を支持する座部支持体として、例えば金属製パイプを曲げて作製された三方枠が使用されていた。このような従来の乳母車において、三方枠によって構成された座部支持体は、幅方向に延びる剛性を有したフレーム材によって、シートを下方から支持していた。このため、いくらシートがクッション性を有していたとしても、乳幼児は、幅方向に延びるフレーム材が脚部に当たっていることを感知し得た。このようにフレーム材が乳幼児の太腿等の脚部に当たることは、乳母車の乗り心地を低下させていた。
【0075】
一方、本実施の形態による乳母車10のシート支持ユニット40において、シート70を下方から支持する連結部材60は、一対の側方フレーム要素50によって支持されている。連結部材60は、例えば布地、比較、樹脂等からなり、側方フレーム要素50よりも柔軟性を有し側方フレーム要素50よりも変形しやすくなっている。この連結部材60が設けられているので、従来の乳母車と同様の位置に、すなわち、側方フレーム要素50と同じ高さに前フレーム材55を設置する必要がない。したがって、高剛性のフレーム材が乳幼児の脚部に当たることを回避することができ、乗り心地を改善することができる。
【0076】
図示された例では、
図5に示すように、前端部材52のうちの前後方向において側フレーム材51と重なる領域に位置する部分に、第1連結部材60Aが取り付けられている。つまり、図示された例では、前端部材52のうちの第1連結部材60Aが取り付けられている部分が、前後方向において位置する領域には、側フレーム材51も位置している。さらに言い換えると、前端部材52のうちの前後方向において側フレーム材51を覆っている部分に、第1連結部材60Aが取り付けられている。この具体例によれば、第1連結部材60Aが前方に配置され、この第1連結部材60Aを用いて乳幼児の脚部を優しく安定して下方から支持することができる。また、リベット等の固定具を用いて、この第1連結部材60Aを側方フレーム要素50へ固定する際に、側フレーム材51の前端部分に前端部材52をあわせて固定することができる。
【0077】
また、図示された例において、座部支持体42は、一対の側方フレーム要素50を連結する前フレーム材55を有している。ただし、この前フレーム材55は、前後方向において最前方の第1連結部材60Aの前端よりも後方に位置している。この具体例によれば、高剛性の前フレーム材55を設けることによって、一対の側方フレーム要素50の幅方向の間隔を維持することができる。これにより連結部材60を張った状態に維持することができ、シート70を介して乳幼児をより安定して支持することができる。そして、前フレーム材55が最前方の第1連結部材60Aの前端よりも後方に位置していることから、前フレーム材55が乳幼児の脚部に当たることを回避して、乳母車10の乗り心地を改善することができる。
【0078】
同様に、図示された例において、前フレーム材55は、側方フレーム要素50の側フレーム材51よりも下方に位置し且つ側方フレーム要素50の前端よりも後方に位置する。前フレーム材55は、シート状部材65よりも下方に位置し且つシート状部材65の前端よりも後方に位置する。この具体例によれば、側方フレーム要素50に取り付けられた連結部材60や連結部材60によって支持されるシート状部材65よりも下方かつ後方に、前フレーム材55を配置することができる。これにより、前フレーム材55は、シート70のうちの前後方向において側方フレーム要素50と重なる領域に位置し且つ側方フレーム要素50によって下方から支持される部分から上下方向に離間する。したがって、前フレーム材55が乳幼児の脚部に当たることを回避して、乳母車の乗り心地を改善することができる。
【0079】
また、乳母車10の使用にともなって、シート70が汚れてしまうことも想定される。この場合、シート70を乳母車本体15から取り外して、シート70を洗浄、清掃することができる。具体的には、まず、第1〜第4取り付け手段75a〜75dを解除することにより、シート支持ユニット40及び本体フレーム20によるシート70の保持を解除する。次に、シート支持ユニット40の背部支持体44を、シート背部72の収容部RPから抜き出す。以上のようにして、極めて簡単に乳母車本体15からシート70を取り外すことができる。
【0080】
ここで、従来の乳母車では、背景技術として既に説明したように、広範囲に張り渡された布製品としてのベースシートを乳母車本体から取り外して洗濯することができなかった。このベースシートは、座部支持体をなす三方枠および背部支持体をなす三方枠に、広く張り渡されていた。
【0081】
一方、本実施の形態によれば、一対の側方フレーム要素50に掛け渡されて幅方向に延びる細長い連結部材60によって、シート70を下方から支持するようになる。連結部材60は、一対の側方フレーム要素50の間の全域に設けられていなくとも、シート70上の乳幼児を安定して支持することができる。従来の乳母車では、前後方向における三方枠のほぼ全域にベースシートが広がっていた。これに対して、本実施の形態によれば、前後方向における側方フレーム要素50の長さL(
図5参照)に対する、前後方向における連結部材60が配置されている(占めている)長さの割合を、50%以下とすることができ、更には30%以下とすることもできる。このように、乳母車10から取り外して洗濯できない布製品の量を低減することができる。したがって、乳母車10の衛生面を改善することができる。また、連結部材60を布製品以外の部材、例えば布製品よりも防汚性に優れた樹脂や皮革等から構成することも可能であり、乳母車10の衛生面を大幅に向上させることも可能である。
【0082】
また、図示された例では、複数の連結部材60が前後方向に互いから離間して一対の側方フレーム要素50に掛け渡されている。この具体例によれば、前後方向に離間して配置された複数の連結部材60によって、シート70上の乳幼児を効率的に安定して支持することができる。すなわち、乳幼児を安定して支持することを可能にしながら、連結部材60の量を低減することができる。したがって、乳母車10の衛生面をより改善することができる。
【0083】
さらに図示された例において、座部支持体42は、複数の連結部材60のうちの最前方に位置する第1連結部材60A以外の連結部材60に取り付けられた股ベルト11Aを更に有している。この具体例によれば、股ベルト11Aの位置よりも前に、最前方の第1連結部材60Aが配置されている。この最前方の第1連結部材60Aによって、シート70上の乳幼児の脚部を安定して支持することができる。とりわけ柔軟性を有した第1連結部材60Aによれば、脚部を優しく支持することができる。また、前フレーム材55が脚部に当たることを安定して回避することも可能となる。これらにより、乳母車10の乗り心地を大幅に改善することができる。また、股ベルト11Aを連結部材60により安定して保持することができる。
【0084】
加えて、本実施の形態によれば、シート背部72が背部支持体44を受け入れる収容部RPを含んでおり、収容部RPが下方に開口している。したがって、収容部RPの大きさを背部支持体44の大きさに対して大きくなり過ぎないようにしておくことによって、背部支持体44によってシート背部72を安定して保持することができる。このため、背部支持体44が、従来のベースシートを有してない構造、すなわち単なる三方枠のようなフレーム構造でもあっても、シート背部72は背部支持体44上に安定して維持されるようになる。また、乳母車10に乗車した乳幼児がシート背部72にもたれかかったとしても、シート背部72が、その中央部において、大きく撓んでしまうことを効果的に防止することができる。すなわち、背部支持体44を単なる三方枠のようなフレーム構造としたとしても、シート70上の乳幼児を安定して支持することができる。これにより、乳母車10から取り外して洗濯できない布製品の量を大幅に低減することができ、乳母車の衛生面を大幅に改善することができる。
【0085】
なお、図示された乳母車10において、シート70は、連結部材60によって保持されたシート状部材65上に載置される。このシート状部材65は、樹脂製であり、布製品と比較して優れた防汚性を有し、乳母車本体15に取り付けられたままの状態での拭き取り等によって、十分に洗浄、清掃することができる。
【0086】
洗浄、清掃されたシート70は、再び、本体フレーム20に取り付けられる。まず、収容部RPの下方に開放された開口に背部支持体44をその上縁から挿入し、背部支持体44を収容部RP内に配置する。次に、第1〜第4取り付け手段75a〜75dを用いて、シート座部71を座部支持体42に取り付け、シート側部73を本体フレーム20に取り付ける。このようにして、シート70を乳母車本体15に極めて簡単に取り付けることができる。
【0087】
以上に説明してきた一実施の形態において、乳母車10に用いられシート70を支持するシート支持ユニット40は、乳幼児の臀部に対面するようになる座部支持体42を有している。座部支持体42は、幅方向に離間して配置された一対の側方フレーム要素50と、一対の側方フレーム要素50に掛け渡されて幅方向に延びる連結部材60と、を有している。
【0088】
このような本実施の形態によれば、一対の側方フレーム要素50に掛け渡されて幅方向に延びる連結部材60によって、シート70を下方から支持するようになる。連結部材60は、一対の側方フレーム要素50の間の全域に設けられていなくとも、シート70上の乳幼児を安定して支持することができる。これにより、乳母車10から取り外して洗濯できない布製品の量を低減することができる。したがって、乳母車10の衛生面を改善することができる。
【0089】
また、従来の乳母車では、座部支持体を構成する三方枠は、金属製のパイプによって構成されていた。従来の乳母車では、金属製パイプが乳幼児の太腿等の脚部に当たることから、乳母車の乗り心地を悪化させていた。一方、本実施の形態では、シート70を下方から支持する連結部材60が、一対の側方フレーム要素50によって支持され、この連結部材60によって乳幼児の脚部を支持することができる。したがって、前フレーム材55を連結部材60よりも低位置に配置して、前フレーム材55が乳幼児の脚部に当たることを回避することができる。結果として、乳母車の乗り心地を改善することができる。
【0090】
また、以上に説明してきた一実施の形態において、乳母車10は、本体フレーム20と、本体フレーム20に支持されたシート支持ユニット40と、シート支持ユニット40に支持されたシート70と、を有している。シート支持ユニット40は、乳幼児の臀部に対面するようになる座部支持体42と、座部支持体42に揺動可能な背部支持体44と、を有している。シート70は、座部支持体42によって支持されるシート座部71と、シート座部71に接続したシート背部72と、を有している。シート背部72は、下方に開口して背部支持体44を受け入れる収容部RPを含んでいる。
【0091】
このような本実施の形態によれば、背部支持体44が、従来のベースシートを有してない構造、すなわち三方枠のようなフレーム構造でもあっても、シート背部72は背部支持体44上に安定して保持されるようになる。したがって、シート70上の乳幼児を安定して支持することができる。これにより、乳母車10から取り外して洗濯できない布製品の量を大幅に低減することができ、乳母車10の衛生面を改善することができる。
【0092】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0093】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0094】
上述の具体例において、シート支持ユニット40が、連結部材60によって支持された樹脂製のシート状部材65を有していた。しかしながら、連結部材60の数量、位置、幅Wを適宜調整することによって、シート70を安定して支持することができる。したがって、シート支持ユニット40からシート状部材65を省略してもよい。
【0095】
また、上述した具体例において、第2リンクL2がハンドル30の一部分によって構成されていた。しかしながら、
図11に示すように、本体フレーム20は、第2リンクL2と回動可能に接続したハンドル30を更に有するようにしてもよい。背面押し位置にハンドル30を配置した場合、操作者(保護者)は乳幼児の背面側からハンドル30を把持して乳母車10を操縦する。このとき、乳幼児は、乳母車10の走行中、進行方向の前方を向いて景色を楽しむことができる。
シート支持ユニット(40)は、乳母車(10)に用いられシート(70)を支持する。シート支持ユニット(40)は、乳幼児の臀部に対面するようになる座部支持体42を有する。座部支持体(42)は、幅方向に離間して配置された一対の側方フレーム要素(50)と、一対の側方フレーム要素(50)に掛け渡されて幅方向に延びる連結部材(60)と、を有する。