特許第6987423号(P6987423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6987423
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】起振装置用ブリーザー
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/38 20060101AFI20211220BHJP
   E01C 19/28 20060101ALI20211220BHJP
   E01C 19/30 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   E01C19/38
   E01C19/28
   E01C19/30
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2021-553797(P2021-553797)
(86)(22)【出願日】2021年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2021020015
【審査請求日】2021年9月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175386
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 禎久
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康太
(72)【発明者】
【氏名】藁科 智也
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭56−13369(JP,Y2)
【文献】 特開2014−1558(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0104718(US,A1)
【文献】 実開昭64−638(JP,U)
【文献】 実開平6−60607(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/38
E01C 19/28
E01C 19/30
B06B 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起振装置のケーシングの内側において延在する内側部と、ケーシングを貫通して外側へ突出する外側部と、によって構成される起振軸に形成された起振装置用のブリーザーであって、
起振軸の内部において、起振軸の内側部から外側部まで延在するように形成された中央通路と、
起振軸の内側部の外周面に形成された内側開口部と、
起振軸の外側部の表面に形成された吸気用開口部と、
起振軸の外側部の表面に形成された排気用開口部と、
中央通路と内側開口部とを連通させる内側通路と、
中央通路と吸気用開口部とを連通させる吸気用通路と、
中央通路と排気用開口部とを連通させる排気用通路と、を有し、
弁体と、弁体よりも半径方向外側に配置される弁座と、弁体を中央通路側から吸気用開口部側へ向かって付勢するスプリングとによって構成され、ケーシング内が負圧となった場合に開弁する吸気用バルブが、吸気用通路内に配置され、
弁体と、弁体よりも半径方向内側に配置される弁座と、弁体を排気用開口部側から中央通路側へ向かって付勢するスプリングとによって構成され、ケーシング内が正圧となった場合に開弁する排気用バルブが、排気用通路内に配置されていることを特徴とする起振装置用ブリーザー。
【請求項2】
起振軸が無回転状態にあるとき、ケーシング内が負圧となり、ケーシングの内側と外側の差圧が、一定の値を超えると、吸気用バルブが開弁して、ケーシングの内側へ空気が流入するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の起振装置用ブリーザー。
【請求項3】
起振軸が無回転状態にあるとき、ケーシング内が正圧となり、ケーシングの内側と外側の差圧が、一定の値を超えると、排気用バルブが開弁して、ケーシングの外側へ空気が流出するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の起振装置用ブリーザー。
【請求項4】
起振軸が回転状態にあるとき、吸気用バルブの開弁圧が、起振軸が無回転状態にあるときよりも大きくなるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の起振装置用ブリーザー。
【請求項5】
起振軸が回転状態にあるとき、排気用バルブの開弁圧が、起振軸が無回転状態にあるときよりも小さくなる、又は、排気用バルブが開弁するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の起振装置用ブリーザー。
【請求項6】
中央通路が、起振軸の中心軸線に沿って形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の起振装置用ブリーザー。
【請求項7】
吸気用開口部が、起振軸の外側部の外周面に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の起振装置用ブリーザー。
【請求項8】
排気用開口部が、起振軸の外側部の先端部に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の起振装置用ブリーザー。
【請求項9】
起振装置のケーシングの内側において延在する内側部と、ケーシングを貫通して外側へ突出する外側部と、によって構成される起振軸、及び、外側部に固定された部材に形成された起振装置用のブリーザーであって、
起振軸の内部において、起振軸の内側部から外側部まで延在するように形成された中央通路と、
起振軸の内側部の外周面に形成された内側開口部と、
起振軸の外側部に固定された部材の表面に形成された吸気用開口部と、
起振軸の外側部に固定された部材の表面に形成された排気用開口部と、
中央通路と内側開口部とを連通させる内側通路と、
中央通路と吸気用開口部とを連通させる吸気用通路と、
中央通路と排気用開口部とを連通させる排気用通路と、を有し、
弁体と、弁体よりも半径方向外側に配置される弁座と、弁体を中央通路側から吸気用開口部側へ向かって付勢するスプリングとによって構成され、ケーシング内が負圧となった場合に開弁する吸気用バルブが、吸気用通路内に配置され、
弁体と、弁体よりも半径方向内側に配置される弁座と、弁体を排気用開口部側から中央通路側へ向かって付勢するスプリングとによって構成され、ケーシング内が正圧となった場合に開弁する排気用バルブが、排気用通路内に配置されていることを特徴とする起振装置用ブリーザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動締固め機に搭載される起振装置用のブリーザーに関する。
【背景技術】
【0002】
路盤等の転圧に用いられる振動締固め機のうち、転圧盤を装備する機種(例えば、プレートコンパクター或いはバイブロコンパクター等)においては、転圧盤上に起振装置が配置され、起振装置によって発生した振動が転圧盤に伝達されて、転圧盤の下側の路盤等を締め固めることができるように構成されている。
【0003】
従来の一般的な起振装置は、ケーシングと、ケーシング内に配置される偏心錘と、偏心錘が取り付けられる又は偏心錘と一体化された回転軸(起振軸)と、起振軸を支持するベアリングとを有している。起振軸は、ケーシングの内側において延在する部分と、ケーシングを貫通して外側へ突出する部分(外側部)とによって構成されており、原動機(内燃機関エンジン、電動モーター等)から動力伝達機構(例えば、原動機の出力軸、及び、起振軸の外側部にそれぞれ固定されたプーリ、及び、それらのプーリに巻き掛けられたVベルト)を介して、回転駆動力が起振軸に伝達され、ケーシング内において偏心錘が回転して振動が発生するように構成されている。
【0004】
ケーシング内には、ベアリング等を潤滑させるためのオイルが貯留される。また、ケーシングを貫通する起振軸はオイルシールによって封止され、潤滑オイルの漏出(起振軸の周面に沿ってケーシングの外側へ漏出すること)を防止できるようになっている。
【0005】
また、起振装置には一般的に、ケーシングの内側空間と外側空間とを連通させる空気通路が形成されている。ケーシングを密閉してしまうと、内外に圧力差が生じた際に、起振軸を封止するオイルシールが破損したり、適正な装着位置から外れてしまう可能性があるが、ケーシングの内外を連通させる空気通路を形成することにより、そのような問題を回避することができる。尚、ケーシングの内外を連通させて、空気の流入及び流出を許容する空気通路は、一般に「ブリーザー」と呼ばれている。
【0006】
起振装置にブリーザーを形成して、ケーシングの内外を連通させた場合、転圧作業等に伴って発生した粉塵が、ブリーザーからケーシングの内側空間に侵入してしまう可能性があり、この場合、ベアリングや、その他の可動部分にダメージを与えてしまう恐れがある。従って、ブリーザーの外側開口部は、なるべく粉塵が侵入しにくい位置、或いは、粉塵が分布している蓋然性が低い位置に形成することが有効であると考えられる。
【0007】
例えば、起振軸の外側部(ケーシングを貫通して外側へ突出する部分)は、Vベルト用のプーリが固定された状態で、ベルトカバーによって覆われることになるため、この外側部にブリーザーの外側開口部を形成した場合(より具体的には、起振軸の内部にブリーザーを構成する空気通路を形成するとともに、この通路の一端を、ケーシングの外側へ突出する外側部において開口させ、他端をケーシングの内側において開口させた場合)、ブリーザーからケーシング内への粉塵の侵入を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭56−13369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、起振軸の内部にブリーザーを構成する空気通路を形成するとともに、起振軸の外側部にブリーザーの外側開口部を形成した場合、振動締固め機が部分的に(例えば下半部が)水没してしまったような場合に、起振装置のケーシング内に水が容易に侵入してしまうという問題がある。
【0010】
一般的な振動締固め機において、起振装置は、発生した振動を最下部の転圧盤に対して効果的に伝達できるように、転圧盤の上面に固定されており、原動機は、起振装置よりも高い位置において、防振手段を介して転圧盤の上方に保持された支持ベースの上に固定されている。つまり、振動締固め機が作業現場等の屋外において無人の状態で保管されていた場合であって、大雨や突発的な集中豪雨等により、その周辺で洪水が発生したような場合、水位の上昇に伴って、まず転圧盤が水没し、次に起振装置、その次に原動機、という順番で水没していくことになる。
【0011】
ここで、原動機以下の部分が水没してしまった場合、振動締固め機の全体の修理が必要となることは明白であるが、原動機は水没せず、下半部(起振装置以下の部分)のみが水没した場合、原動機自体は問題なく作動するため、下半部が水没したことを管理者において把握できない可能性がある。そして、ブリーザーが起振軸に形成されている起振装置が水没すると、ブリーザーを介してケーシング内に水分が侵入することになり、この状態のまま原動機を始動させて、起振装置を稼働させると、回転負荷の増大やベアリングの錆付き等に起因して、機械の不調或いは損傷が発生する可能性が高い。
【0012】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、起振装置の稼働時においては、ケーシング内外の差圧に応じて空気の流入又は流出を許容するとともに、非稼働時においては、水没した場合でも、ケーシング内への水の侵入を阻止することができる起振装置用ブリーザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る起振装置用ブリーザーは、起振装置のケーシングの内側において延在する内側部と、ケーシングを貫通して外側へ突出する外側部と、によって構成される起振軸に形成され、起振軸の内部において、起振軸の内側部から外側部まで延在するように形成された中央通路と、起振軸の内側部の外周面に形成された内側開口部と、起振軸の外側部の表面に形成された吸気用開口部と、起振軸の外側部の表面に形成された排気用開口部と、中央通路と内側開口部とを連通させる内側通路と、中央通路と吸気用開口部とを連通させる吸気用通路と、中央通路と排気用開口部とを連通させる排気用通路と、を有し、弁体と、弁体よりも半径方向外側に配置される弁座と、弁体を中央通路側から吸気用開口部側へ向かって付勢するスプリングとによって構成され、ケーシング内が負圧となった場合に開弁する吸気用バルブが、吸気用通路内に配置され、弁体と、弁体よりも半径方向内側に配置される弁座と、弁体を排気用開口部側から中央通路側へ向かって付勢するスプリングとによって構成され、ケーシング内が正圧となった場合に開弁する排気用バルブが、排気用通路内に配置されていることを特徴としている。
【0014】
尚、この起振装置用ブリーザーにおいては、起振軸が無回転状態にあるとき、ケーシング内が負圧となり、ケーシングの内側と外側の差圧が、一定の値を超えると、吸気用バルブが開弁して、ケーシングの内側へ空気が流入するように構成されていることが好ましく、また、ケーシング内が正圧となり、ケーシングの内側と外側の差圧が、一定の値を超えると、排気用バルブが開弁して、ケーシングの外側へ空気が流出するように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、起振軸が回転状態にあるとき、吸気用バルブの開弁圧が、起振軸が無回転状態にあるときよりも大きくなるように構成されていることが好ましく、更に、排気用バルブの開弁圧が、起振軸が無回転状態にあるときよりも小さくなる、又は、排気用バルブが開弁するように構成されていることが好ましい。
【0016】
また、中央通路が、起振軸の中心軸線に沿って形成されていることが好ましく、更に、吸気用開口部が、起振軸の外側部の外周面に形成され、排気用開口部が、起振軸の外側部の先端部に形成されていることが好ましい。
【0017】
更に、本発明に係る起振装置用ブリーザーは、起振装置のケーシングの内側において延在する内側部と、ケーシングを貫通して外側へ突出する外側部と、によって構成される起振軸、及び、外側部に固定された部材に形成され、起振軸の内部において、起振軸の内側部から外側部まで延在するように形成された中央通路と、起振軸の内側部の外周面に形成された内側開口部と、起振軸の外側部に固定された部材の表面に形成された吸気用開口部と、起振軸の外側部に固定された部材の表面に形成された排気用開口部と、中央通路と内側開口部とを連通させる内側通路と、中央通路と吸気用開口部とを連通させる吸気用通路と、中央通路と排気用開口部とを連通させる排気用通路と、を有し、弁体と、弁体よりも半径方向外側に配置される弁座と、弁体を中央通路側から吸気用開口部側へ向かって付勢するスプリングとによって構成され、ケーシング内が負圧となった場合に開弁する吸気用バルブが、吸気用通路内に配置され、弁体と、弁体よりも半径方向内側に配置される弁座と、弁体を排気用開口部側から中央通路側へ向かって付勢するスプリングとによって構成され、ケーシング内が正圧となった場合に開弁する排気用バルブが、排気用通路内に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る起振装置用ブリーザーを適用した起振装置においては、起振軸を封止するオイルシールの破損等の問題を好適に回避することができる。また、本発明に係る起振装置用ブリーザーは、吸気用開口部、及び、排気用開口部が、起振軸の外側部に形成されており、この外側部は、ベルトカバーによって覆われることになるため、ブリーザーからケーシング内への粉塵の侵入を好適に抑制できる。
【0019】
更に、本発明に係る起振装置用ブリーザーを適用した起振装置においては、ケーシングの内外の差圧が既定値を超えない限り、吸気用バルブ及び排気用バルブが閉弁状態に維持されるため、この起振装置を搭載した振動締固め機の姿勢を、どのような方向へ変化させた場合でも、ケーシング内の潤滑オイルがブリーザーから漏出するという問題を回避することができる。
【0020】
また、本発明に係る起振装置用ブリーザーを適用した起振装置を搭載した振動締固め機が水没した場合でも、閉弁状態の吸気用バルブ及び排気用バルブによって、ケーシング内への水の侵入を阻止することができ、水の侵入に起因する起振装置の不調或いは損傷の発生という問題を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係るブリーザー6が適用された起振装置1の部分断面図である。
図2図2は、図1に示す吸気用バルブ7の拡大断面図である。
図3図3は、図1に示す排気用バルブ8の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に沿って、本発明「起振装置用ブリーザー」の実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るブリーザーが適用された起振装置1の断面図である。この起振装置1は、ケーシング2と、起振軸3(回転軸)と、起振軸3を回転自在に支持するベアリング4と、起振軸3に対して取り付けられた偏心錘(図示せず)とによって構成されている。
【0023】
起振軸3は、ケーシング2の内側において延在する内側部31と、ケーシング2を貫通して外側へ突出する外側部32とによって構成されている。外側部32には、プーリ(図示せず)が固定され、原動機(内燃機関エンジン、電動モーター等)からVベルト(図示せず)を介して、起振軸3に回転駆動力が伝達される。ケーシング2内には、ベアリング4等を潤滑させるためのオイルが貯留される。また、ケーシング2を貫通する起振軸3はオイルシール5によって封止され、潤滑オイルの漏出を防止できるようになっている。
【0024】
本発明に係るブリーザー6は、図1に示すように、起振軸3に形成されている。より具体的には、起振軸3の内部には、ブリーザー6を構成する中央通路61が、起振軸3の中心軸線に沿って、内側部31側から外側部32側まで延在するように形成されている。また、起振軸3の内側部31の外周面には内側開口部62が形成され、外側部32の表面には、二つの外側開口部(吸気用開口部63、及び、排気用開口部64)が形成されている。尚、吸気用開口部63は、外側部32の外周面に形成され、排気用開口部64は、外側部32の先端部に形成されている。
【0025】
内側開口部62は、内側通路65を介して中央通路61と連通しており、吸気用開口部63は、吸気用通路66を介して中央通路61と連通している。また、排気用開口部64は、排気用通路67を介して中央通路61と連通している。
【0026】
吸気用通路66内には、吸気用バルブ7が配置されている。この吸気用バルブ7は、図2に示すように、ボール弁71(弁体)と、弁座72と、ボール弁71を弁座72に向かって付勢するスプリング73とによって構成されている。
【0027】
吸気用通路66内において、ボール弁71は、弁座72よりも半径方向内側の中央通路61側に配置され、弁座72は、ボール弁71よりも半径方向外側の吸気用開口部63側に配置されている。従って、吸気用バルブ7は、ボール弁71が、スプリング73によって中央通路61側から吸気用開口部63側へ向かって押し付けられて閉弁するように構成されている。
【0028】
吸気用バルブ7は、ケーシング2内が負圧となり、ケーシング2の内側と外側の差圧によってボール弁71に作用する圧力が、設定された開弁圧を超えた場合に開弁し、外側の空気が、吸気用開口部63から、吸気用通路66、中央通路61、及び、内側通路65を通ってケーシング2の内側へ流入することになる。
【0029】
起振軸3が無回転状態にあるときの吸気用バルブ7の開弁圧は、ボール弁71の受圧面積、及び、スプリング73のばね定数等から計算することができる。また、それらの値を適宜調整することにより、所望の開弁圧を実現できる。
【0030】
一方、起振装置1の稼働時、即ち、起振軸3が回転状態にあるとき、ボール弁71に対して遠心力が作用することになり、ボール弁71は、弁座72よりも半径方向内側に位置しているため、吸気用バルブ7の開弁圧は、起振軸3が無回転状態にあるときよりも大きくなる。
【0031】
排気用通路67内には、排気用バルブ8が配置されている。この排気用バルブ8は、図3に示すように、ボール弁81(弁体)と、弁座82と、ボール弁81を弁座82に向かって付勢するスプリング83とによって構成されている。
【0032】
排気用通路67内において、ボール弁81は、弁座82よりも半径方向外側の排気用開口部64(図1参照)側に配置され、弁座82は、ボール弁81よりも半径方向内側の中央通路61側に配置されている。従って、排気用バルブ8は、ボール弁81が、スプリング83によって排気用開口部64(図1参照)側から中央通路61側へ向かって押し付けられて閉弁するように構成されている。
【0033】
排気用バルブ8は、ケーシング2内が正圧となり、ケーシング2の内側と外側の差圧によってボール弁81に作用する圧力が、設定された開弁圧を超えた場合に開弁して、ケーシング2の内側の空気が、内側通路65、中央通路61、及び、排気用通路67を通って、排気用開口部64からケーシング2の外側へ流出することになる。
【0034】
起振軸3が無回転状態にあるときの排気用バルブ8の開弁圧は、ボール弁81の受圧面積、及び、スプリング83のばね定数等から計算することができる。また、それらの値を適宜調整することにより、所望の開弁圧を実現できる。
【0035】
一方、起振軸3が回転状態にあるとき、ボール弁81に対して遠心力が作用することになり、ボール弁81は、弁座82よりも半径方向外側に位置しているため、排気用バルブ8の開弁圧は、起振軸3が無回転状態にあるときよりも小さくなる、又は、排気用バルブ8が開弁する。
【0036】
以上に説明したように、図1に示す起振装置1は、ケーシング2の内外で差圧が生じ、その大きさが既定値を超えた場合に、ブリーザー6の吸気用バルブ7又は排気用バルブ8が開弁して、空気が流通するように構成されているため、起振軸3を封止するオイルシールの破損等の問題を好適に回避することができる。また、このブリーザー6は、外側開口部(吸気用開口部63、及び、排気用開口部64)が起振軸3の外側部32に形成されており、この外側部32は、ベルトカバーによって覆われることになるため、ブリーザー6からケーシング2内への粉塵の侵入を好適に抑制できる。
【0037】
更に、図1に示す起振装置1においては、ケーシング2の内外の差圧が既定値を超えない限り、ブリーザー6の吸気用バルブ7及び排気用バルブ8が閉弁状態に維持されるため、この起振装置1を搭載した振動締固め機の姿勢を、どのような方向へ変化させた場合でも、例えば、ブリーザー6が下方側となる方向へ機体を傾けた場合でも、ケーシング2内の潤滑オイルがブリーザー6から漏出するという問題を回避することができる。
【0038】
また、図1に示す起振装置1を搭載した振動締固め機が水没した場合でも、閉弁状態の吸気用バルブ7及び排気用バルブ8によって、ケーシング2内への水の侵入を阻止することができ、水の侵入に起因する起振装置1の不調或いは損傷の発生という問題を好適に回避することができる。起振装置1の非稼働時においては、吸気用バルブ7が開弁する程度までケーシング2の内側の圧力が低下した状態で水没した場合であっても、水の侵入は発生しない。これは流体としては空気よりも水のほうがバルブを通過しにくいためで、ケーシング2内の温度が極めて急激に、かつ、大きく変化しない限り、例えば、起振装置1が長時間稼働し、温度上昇が飽和した状態で、振動締固め機が水没したような場合を除き、水分の侵入を防止することができる。
【0039】
尚、本実施形態においては、図1に示すように、吸気用バルブ7が配置される吸気用通路66と、排気用バルブ8が配置される排気用通路67の一部とが、起振軸3の半径方向へ直列する構成(即ち、起振軸3の中心軸線を挟んで180°の位置に配置される構成)となっているが、排気用バルブ8が配置される排気用通路67の部分を、起振軸3の周回方向、或いは、中心軸線方向へずれた位置(例えば、起振軸3の中心軸線周りに90°移動した位置、或いは、排気用開口部64側へ移動した位置)に形成することもできる。この場合、組み立て時において、吸気用バルブ7のボール弁71、及び、スプリング73等を、吸気用通路66内へ導入するための連絡孔を、図1において排気用バルブ8が配置されている位置に形成することができる。
【0040】
また、上記実施形態においては、図1に示すように、ブリーザー6を構成する吸気用開口部63、及び、排気用開口部64が、起振軸3の外側部32の表面に形成されているが、「外側部に固定された部材」(外側部32に対して固定され、外側部32と一体となって回転する部材、例えば、プーリ又はカラー等(図示せず))の表面に、吸気用開口部、及び、排気用開口部をそれぞれ形成し、「外側部に固定された部材」の内部、及び、外側部32の内部に、中央通路61と前記吸気用開口部とを連通させる吸気用通路を形成するとともに、中央通路61と前記排気用開口部とを連通させる排気用通路を形成し、吸気用バルブを、前記吸気用通路内(「外側部に固定された部材」の内部、及び/又は、外側部32の内部)に配置し、排気用バルブを、前記排気用通路内(「外側部に固定された部材」の内部、及び/又は、外側部32の内部)に配置することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1:起振装置、
2:ケーシング、
3:起振軸、
31:内側部、
32:外側部、
4:ベアリング、
5:オイルシール、
6:ブリーザー、
61:中央通路、
62:内側開口部、
63:吸気用開口部、
64:排気用開口部、
65:内側通路、
66:吸気用通路、
67:排気用通路、
7:吸気用バルブ、
71:ボール弁、
72:弁座、
73:スプリング、
8:排気用バルブ、
81:ボール弁、
82:弁座、
83:スプリング
【要約】
ケーシング内外の差圧に応じて空気の流入又は流出を許容するとともに、水没した場合でも、ケーシング内への水の侵入を阻止することができる起振装置用ブリーザーを提供する。
起振軸3の内側部31から外側部32まで延在するように形成された中央通路61と、内側部31の外周面に形成された内側開口部62と、外側部32の表面に形成された吸気用開口部63、排気用開口部64と、中央通路61と内側開口部62とを連通させる内側通路65と、中央通路61と吸気用開口部63とを連通させる吸気用通路66と、中央通路61と排気用開口部64とを連通させる排気用通路67とを有し、ケーシング内が負圧となった場合に開弁する吸気用バルブ7を吸気用通路66内に配置し、ケーシング内が正圧となった場合に開弁する排気用バルブ8を排気用通路67内に配置した。
図1
図2
図3