(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多孔質支持体と共有結合した免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む分離マトリックスを洗浄および/または消毒する方法であって、前記方法が、
a)少なくとも50体積%のアルカリ金属水酸化物水溶液であって、500mM〜2Mのモル濃度を有するアルカリ金属水酸化物水溶液を含む洗浄液を準備する工程と;
b)前記洗浄液と前記分離マトリックスを30分から50時間の接触時間の間、接触させることによって前記分離マトリックスを洗浄および/または消毒する工程と;
を含み、
前記アルカリ安定化プロテインAドメインは、配列番号51または配列番号52によって定義されるブドウ球菌プロテインA(SpA)の親Fc結合ドメインの変異体を含み、配列番号51または52の13位および44位のアミノ酸残基はアスパラギンであり、少なくとも配列番号51または52の3位のアスパラギン残基は、グルタミン酸、リジン、チロシン、トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、バリン、アラニン、ヒスチジンおよびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸に変異している、方法。
前記変異体が、配列番号51または52の1、2、7、10、15、20、21、24、25、28、29、32、34、35、36、39、42および43位の1以上においてさらなる変異を含む、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の一態様は、多孔質支持体と共有結合した免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む分離マトリックスを洗浄および/または消毒する方法に関する。
【0037】
この詳細な説明を通して、2つの別個の番号付けの慣習が使用されることがある。別段の記載がない限り、
図1のアミノ酸残基位置番号付けの慣習が使用され、位置番号は、配列番号4〜7の位置番号に対応するように指定される。これは多量体にもあてはまり、そこで位置番号は別段の記載がない限り、
図1の慣習によるポリペプチド単位またはモノマーの位置を指定する。しかし、特許請求の範囲、発明の概要および時に発明を実施するための形態を通じて、配列番号51および52の位置番号に対応する位置番号が使用される。配列番号51または配列番号52の1位は配列番号4〜7の9位に相当すること、そしてこのように異なる番号付けの慣習は相互変換されてよいことに注意されたい。
【0038】
本発明の免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインは、本明細書において「ポリペプチド」とも呼ばれ、配列番号51または配列番号52によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも80%、例えば90%、95%または98%などの同一性を有するブドウ球菌プロテインA(SpA)の親Fc結合ドメインの変異体を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、この際、配列番号51または52の13位および44位のアミノ酸残基はアスパラギンであり、配列番号51または52の3位の少なくともアスパラギン残基は、グルタミン酸、リジン、チロシン、トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、バリン、アラニン、ヒスチジンおよびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸に変異している。
【0039】
配列番号51(末端切断型Zvar)
QQ NAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQ
配列番号52(末端切断型Cドメイン)
QQ NAFYEILHLP NLTEEQRNGF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQ
そのような免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインは、
図1に図示される配列番号1(Eドメイン)、配列番号2(Dドメイン)、配列番号3(Aドメイン)、配列番号22(バリアントAドメイン)、配列番号4(Bドメイン)、配列番号5(Cドメイン)、配列番号6(プロテインZ)、配列番号7(Zvar)、配列番号51(リンカー領域アミノ酸1〜8および56〜58を含まないZvar)または配列番号52(リンカー領域アミノ酸1〜8および56〜58を含まないCドメイン)によって定義されるかあるいはそれと少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の同一性を有する、ブドウ球菌プロテインA(SpA)の親Fc結合ドメインの変異体を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなってよく、この際、配列番号4〜7の11位に対応する位置の少なくともアスパラギン(または配列番号2の例ではセリン)残基は、グルタミン酸、リジン、チロシン、トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、バリン、アラニン、ヒスチジンおよびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸に変異しており、配列番号4〜7の21位および52位に対応するアスパラギン残基(配列番号51または52の13位および44位)は保存される。
【0040】
上に列挙したFc結合ドメインのいくつかを
図1にアラインさせて示す。親の、すなわち操作されていないブドウ球菌プロテインA(SpA)は、ドメインE(配列番号1)、D(配列番号2)、A(配列番号3)、B(配列番号4)およびC(配列番号5)と呼ばれる5つのFc結合ドメインを含む。プロテインZ(配列番号6)は、参照によりその全文がここに援用される米国特許第5143844号に開示される変異Bドメインである。配列番号7は、変異N3A、N6D、N23Tを含む、本明細書においてZvarと呼ばれるプロテインZのさらに変異したバリアントを示す。配列番号22(
図1に図示せず)は、
図1の位置用語法を用いて、A46S変異を有する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)N315株由来のプロテインAのAドメインの天然バリアントである。配列番号51は、1〜8位および56〜58位にリンカー領域アミノ酸を含まないZvar(配列番号7)である。配列番号52は、
図1に図示されるようにリンカー領域アミノ酸1〜8および56〜58を含まないプロテインAのCドメインである。
【0041】
これらのドメインのN11(配列番号51:52のN3)の変異は、アスパラギン残基N21およびN52(配列番号51:52のN13およびN44)の保存とともに、免疫グロブリン結合性を損なうことなく親ドメイン/ポリペプチドと比較して改善されたアルカリ安定性を付与する。そのため、このポリペプチドは、Fcまたは免疫グロブリン結合ポリペプチド、あるいはFcまたは免疫グロブリン結合ポリペプチド単位としても記載され得る。
【0042】
代わりの言葉で説明すると、免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインは、配列番号53によって定義されるか、あるいは、配列番号53との少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の同一性を有する配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなってよい。
【0043】
配列番号53
X
1Q X
2AFYEILX
3LP NLTEEQRX
4X
5F IX
6X
7LKDX
8PSX
9 SX
10X
11X
12LAEAKX
13 X
14NX
15AQ
ここで、互いに個別に:
X
1=A、Qまたは欠失
X
2=E、K、Y、T、F、L、W、I、M、V、A、HまたはR
X
3=HまたはK
X
4=AまたはN
X
5=A、G、S、Y、Q、T、N、F、L、W、I、M、V、D、E、H、RまたはK、例えばS、Y、Q、T、N、F、L、W、I、M、V、D、E、H、RまたはKなど
X
6=QまたはE
X
7=SまたはK
X
8=EまたはD
X
9=Q、Vまたは欠失
X
10=K、R、Aまたは欠失
X
11=A、E、Nまたは欠失
X
12=IまたはL
X
13=KまたはR
X
14=LまたはY
X
15=D、F、Y、W、KまたはR
である。
【0044】
具体的には、配列番号53のアミノ酸残基は、互いに個別に:
X
1=Aまたは欠失
X
2=E
X
3=H
X
4=N
X
6=Q
X
7=S
X
8=D
X
9=Vまたは欠失
X
10=Kまたは欠失
X
11=Aまたは欠失
X
12=I
X
13=K
X
14=L
である。
【0045】
ある種の実施形態では、配列番号53のアミノ酸残基は:
X
1=A、X
2=E、X
3=H、X
4=N、X
6=Q、X
7=S、X
8=D、X
9=V、X
10=K、X
11=A、X
12=I、X
13=K、X
14=Lであってよい。いくつかの実施形態では、X
2=E、X
3=H、X
4=N、X
5=A、X
6=Q、X
7=S、X
8=D、X
12=I、X
13=K、X
14=LおよびX
15=Dであり、X
1、X
9、X
10およびX
11の1以上は欠失している。さらなる実施形態では、X
1=A、X
2=E、X
3=H、X
4=N、X
5=S、Y、Q、T、N、F、L、W、I、M、V、D、E、H、RまたはK、X
6=Q、X
7=S、X
8=D、X
9=V、X
10=K、X
11=A、X
12=I、X
13=K、X
14=LおよびX
15=D、あるいはX
1=A、X
2=E、X
3=H、X
4=N、X
5=A、X
6=Q、X
7=S、X
8=D、X
9=V、X
10=K、X
11=A、X
12=I、X
13=K、X
14=LおよびX
15=F、Y、W、KまたはRである。
【0046】
いくつかの実施形態では、アミノ酸残基は、互いに個別に:
a)X
1=Aまたは欠失、X
2=E、X
3=H、X
4=N、X
6=Q、X
7=S、X
8=D、X
9=Vまたは欠失、X
10=Kまたは欠失、X
11=Aまたは欠失、X
12=I、X
13=K、X
14=L;
b)X
1=A、X
2=E、X
3=H、X
4=N、X
5=A、X
6=Q、X
7=S、X
8=D、X
9=V、X
10=K、X
11=A、X
12=I、X
13=K、X
14=LおよびX
15=D;
c)X
1=A、X
2=E、X
3=H、X
4=N、X
6=Q、X
7=S、X
8=D、X
9=V、X
10=K、X
11=A、X
12=I、X
13=K、X
14=LおよびX
15=D;または
d)X
1=A、X
3=H、X
4=N、X
5=A、X
6=Q、X
7=S、X
8=D、X
9=V、X
10=K、X
11=A、X
12=I、X
13=K、X
14=LおよびX
15=Dであってよい。
【0047】
N11(X
2)変異(例えばN11EまたはN11K変異)は、唯一の変異であってよく、あるいは、ポリペプチドは、さらなる変異、例えば配列番号4〜7の3、6、9、10、15、18、23、28、29、32、33、36、37、40、42、43、44、47、50、51、55および57位に対応する位置の少なくとも1つでの置換などを含んでもよい。これらの位置の1または複数で、最初のアミノ酸残基は、例えばアスパラギン、プロリンまたはシステインでないアミノ酸で置換されていてよい。最初のアミノ酸残基は、例えばアラニン、バリン、トレオニン、セリン、リジン、グルタミン酸またはアスパラギン酸で置換されていてよい。さらに、1または複数のアミノ酸残基が、例えば1〜6位および/または56〜58位から欠失されていてよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、配列番号4〜7の9位に対応する位置のアミノ酸残基(X
1)は、グルタミン、アスパラギン、プロリンまたはシステイン以外のアミノ酸、例えばアラニンなどであるか、あるいはそれは欠失され得る。9位および11位の変異の組合せは、例によって示されるように、特に良好なアルカリ安定性をもたらす。具体的な実施形態では、配列番号7において9位のアミノ酸残基はアラニンであり、11位のアミノ酸残基はリジンまたはグルタミン酸、例えばリジンなどである。9位の変異は、参照によりその全文が本明細書に援用される同時係属出願PCT/SE2014/050872号明細書においても考察されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、配列番号4〜7の50位に対応する位置のアミノ酸残基(X
13)は、アルギニンまたはグルタミン酸である。
【0050】
ある種の実施形態では、配列番号4〜7の3位に対応する位置のアミノ酸残基は、アラニンであり、かつ/または配列番号4〜7の6位に対応する位置のアミノ酸残基は、アスパラギン酸である。3位および6位のアミノ酸残基の1つはアスパラギンであってよく、代替実施形態では、3位および6位の両方のアミノ酸残基がアスパラギンであってよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、配列番号4〜7の43位に対応する位置のアミノ酸残基(X
11)は、アラニンまたはグルタミン酸、例えばアラニンなどであるか、あるいはそれは欠失され得る。具体的な実施形態では、配列番号7の9位および11位のアミノ酸残基は、それぞれ、アラニンおよびリジン/グルタミン酸であり、一方、43位のアミノ酸残基は、アラニンまたはグルタミン酸である。
【0052】
ある種の実施形態では、配列番号4〜7の28位に対応する位置のアミノ酸残基(X
5)は、アラニンまたはアスパラギン、例えばアラニンなどである。
【0053】
いくつかの実施形態では、配列番号4〜7の40位に対応する位置のアミノ酸残基(X
9)は、アスパラギン、アラニン、グルタミン酸およびバリンからなる群から選択されるか、またはグルタミン酸およびバリンからなる群から選択されるか、またはバリンであるか、またはそれは欠失され得る。具体的な実施形態では、配列番号7の9位および11位のアミノ酸残基は、それぞれ、アラニンおよびグルタミン酸であり、一方、40位のアミノ酸残基は、バリンである。随意に、43位のアミノ酸残基は、アラニンまたはグルタミン酸であってよい。
【0054】
ある種の実施形態では、配列番号4〜7の42位に対応する位置のアミノ酸残基(X
10)は、アラニン、リジンまたはアルギニンであるか、あるいはそれは欠失され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、配列番号4〜7の18位に対応する位置のアミノ酸残基(X
3)は、リジンまたはヒスチジン、例えばリジンなどである。
【0056】
ある種の実施形態では、配列番号4〜7の33位に対応する位置のアミノ酸残基(X
7)は、リジンまたはセリン、例えばリジンなどである。
【0057】
いくつかの実施形態では、配列番号4〜7の37位に対応する位置のアミノ酸残基(X
8)は、グルタミン酸またはアスパラギン酸、例えばグルタミン酸などである。
【0058】
ある種の実施形態では、配列番号4〜7の51位に対応する位置のアミノ酸残基(X
14)は、チロシンまたはロイシン、例えばチロシンなどである。
【0059】
いくつかの実施形態では、配列番号4〜7の44位に対応する位置のアミノ酸残基(X
12)は、ロイシンまたはイソロイシンである。具体的な実施形態では、配列番号7の9位および11位のアミノ酸残基は、それぞれ、アラニンおよびリジン/グルタミン酸であり、一方、44位のアミノ酸残基はイソロイシンである。随意に、43位のアミノ酸残基は、アラニンまたはグルタミン酸であってよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、配列番号4〜7の1、2、3および4位、または3、4、5および6位に対応する位置のアミノ酸残基は欠失されている。これらの実施形態の特定のバリアントでは、親ポリペプチドは、プロテインAのCドメイン(配列番号5)である。これらの欠失の天然のCドメインへの影響は、参照によりその全文が本明細書に援用される米国特許第9018305号明細書および米国特許第8329860号明細書に記載されている。
【0061】
ある種の実施形態では、配列番号4〜7における、例えば配列番号7における変異は、以下からなる群から選択される:N11K;N11E;N11Y;N11T;N11F;N11L;N11W;N11I;N11M;N11V;N11A;N11H;N11R;N11E、Q32A;N11E、Q32E、Q40E;N11E、Q32E、K50R;Q9A、N11E、N43A;Q9A、N11E、N28A、N43A;Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43E、L44I;Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I;N11K、H18K、S33K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R、L51Y;Q9A、N11E、N28A、Q40V、A42K、N43A、L44I;Q9A、N11K、H18K、S33K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R、L51Y;N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44I;Q9A、N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44I;Q9A、N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R;Q9A、N11K、H18K、D37E、A42R;Q9A、N11E、D37E、Q40V、A42K、N43A、L44IおよびQ9A、N11E、D37E、Q40V、A42R、N43A、L44I。これらの変異は、特に高いアルカリ安定性をもたらす。配列番号4〜7における、例えば配列番号7における変異はまた、以下からなる群から選択され得る:N11K;N11Y;N11F;N11L;N11W;N11I;N11M;N11V;N11A;N11H;N11R;Q9A、N11E、N43A;Q9A、N11E、N28A、N43A;Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43E、L44I;Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I;Q9A、N11E、N28A、Q40V、A42K、N43A、L44I;N11K、H18K、S33K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R、L51Y;Q9A、N11K、H18K、S33K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R、L51Y;N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44I;Q9A、N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44IおよびQ9A、N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも90%、95%または98%の同一性を有する配列を含むかまたはそれから本質的になる:配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49および配列番号50。それは例えば、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも90%、95%または98%の同一性を有する配列を含むかまたはそれから本質的になってよい:配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号16、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29。また、それは、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも90%、95%または98%の同一性を有する配列を含むかまたはそれから本質的になり得る:配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号16、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号27、配列番号28、配列番号38、配列番号40;配列番号41;配列番号42;配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47および配列番号48。
【0063】
ある種の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号54〜70からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも90%、95%または98%の同一性を有する配列を含むかまたはそれから本質的になり;配列番号71〜75からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも90%、95%または98%の同一性を有する配列を含むかまたはそれから本質的になり;あるいは、それは、配列番号76〜79からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも90%、95%または98%の同一性を有する配列を含むかまたはそれから本質的になってよい。それはさらに、配列番号89〜95からなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも90%、95%または98%の同一性を有する配列を含むかまたはそれから本質的になってよい。
【0064】
ポリペプチドは、例えば上記の群から、またはこれらの群の部分集合から選択される配列によって定義されてよいが、それはまた、Nおよび/またはC末端にさらなるアミノ酸残基、例えばN末端のリーダー配列および/またはC末端のテール配列を含んでもよい。
【0065】
配列番号8 Zvar(Q9A,N11E,N43A)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPK
配列番号9 Zvar(Q9A,N11E,N28A,N43A)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPK
配列番号10 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43E,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK
配列番号11 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号12 Zvar(N11E,Q32A)
VDAKFDKEQQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IASLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号13 Zvar(N11E)
VDAKFDKEQQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号14 Zvar(N11E,Q32E,Q40E)
VDAKFDKEQQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IESLKDDPSE SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号15 Zvar(N11E,Q32E,K50R)
VDAKFDKEQQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IESLKDDPSQ SANLLAEAKR LNDAQAPK
配列番号16 Zvar(N11K)
VDAKFDKEQQ KAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号23 Zvar(N11K,H18K,S33K,D37E,A42R,N43A,L44I,K50R,L51Y)
VDAKFDKEQQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQKLKDEPSQ SRAILAEAKR YNDAQAPK
配列番号24 Zvar(Q9A,N11E,N28A,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号25 Zvar(Q9A,N11K,H18K,S33K,D37E,A42R,N43A,L44I,K50R,L51Y)
VDAKFDKEAQ KAFYEILKLP NLTEEQRAAF IQKLKDEPSQ SRAILAEAKR YNDAQAPK
配列番号26 Zvar(N11K,H18K,D37E,A42R,N43A,L44I)
VDAKFDKEQQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSQ SRAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号27 Zvar(Q9A,N11K,H18K,D37E,A42R,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSQ SRAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号28 Zvar(Q9A,N11K,H18K,D37E,A42R,N43A,L44I,K50R)
VDAKFDKEAQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSQ SRAILAEAKR LNDAQAPK
配列番号29 Zvar(Q9A,N11K,H18K,D37E,A42R)
VDAKFDKEAQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSQ SRNLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号36 B(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
ADNKFNKEAQ EAFYEILHLP NLNEEQRNGF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号37 C(Q9A,N11E,E43A)
ADNKFNKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNGF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号38 Zvar(N11Y)
VDAKFDKEQQ YAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号39 Zvar(N11T)
VDAKFDKEQQ TAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号40 Zvar(N11F)
VDAKFDKEQQ FAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号41 Zvar(N11L)
VDAKFDKEQQ LAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号42 Zvar(N11W)
VDAKFDKEQQ WAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号43 Zvar(N11I)
VDAKFDKEQQ IAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号44 Zvar(N11M)
VDAKFDKEQQ MAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号45 Zvar(N11V)
VDAKFDKEQQ VAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号46 Zvar(N11A)
VDAKFDKEQQ AAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号47 Zvar(N11H)
VDAKFDKEQQ HAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号48 Zvar(N11R)
VDAKFDKEQQ RAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
配列番号49 Zvar(Q9A,N11E,D37E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号50 Zvar(Q9A,N11E,D37E,Q40V,A42R,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SRAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号54 Zvar(Q9A,N11E,A29G,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNGF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号55 Zvar(Q9A,N11E,A29S,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNSF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号56 Zvar(Q9A,N11E,A29Y,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNYF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号57 Zvar(Q9A,N11E,A29Q,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNQF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号58 Zvar(Q9A,N11E,A29T,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNTF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号59 Zvar(Q9A,N11E,A29N,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNNF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号60 Zvar(Q9A,N11E,A29F,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNFF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号61 Zvar(Q9A,N11E,A29L,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNLF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号62 Zvar(Q9A,N11E,A29W,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNWF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号63 Zvar(Q9A,N11E,A29I,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNIF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号64 Zvar(Q9A,N11E,A29M,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNMF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号65 Zvar(Q9A,N11E,A29V,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNVF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号66 Zvar(Q9A,N11E,A29D,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNDF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号67 Zvar(Q9A,N11E,A29E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNEF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号68 Zvar(Q9A,N11E,A29H,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNHF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号69 Zvar(Q9A,N11E,A29R,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNRF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号70 Zvar(Q9A,N11E,A29K,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNKF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号71 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I,D53F)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNFAQAPK
配列番号72 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I,D53Y)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNYAQAPK
配列番号73 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I,D53W)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNWAQAPK
配列番号74 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I,D53K)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNKAQAPK
配列番号75 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I,D53R)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNRAQAPK
配列番号76 Zvar(Q9del,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKE_Q EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号77 Zvar(Q9A,N11E,Q40del,A42K,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPS_ SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号78 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42del,N43A,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV S_AILAEAKK LNDAQAPK
配列番号79 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43del,L44I)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SK_ILAEAKK LNDAQAPK
配列番号89 Zvar(D2del,A3del,K4del,Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
V___FDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号90 Zvar(V1del,D2del,Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I,K58del)
__AKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAP_
配列番号91 Zvar(K4del,F5del,D6del,K7del,E8del,Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
VDA_____AQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号92 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I,A56del,P57del,K58del)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQ___
配列番号93 Zvar(V1del,D2del,A3del,Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
___KFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号94 Zvar(V1del,D2del,A3del,K4del,F5del,D6del,K7del,E8del,Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)
________AQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK
配列番号95 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I,K58_insYEDG)
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKYE DG
分離マトリックスは、免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む。そのような多量体は、上記のいずれかの実施形態によって定義される複数の免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメイン(ポリペプチド単位)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。多量体を使用することにより、免疫グロブリン結合容量を増加させることができ、多量体はモノマーよりも高いアルカリ安定性を有することもができる。多量体は、例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体または九量体であり得る。多量体は、多量体の全ての単位が同一であるホモ多量体であってもよいし、少なくとも1つの単位が他の単位と異なるヘテロ多量体であってもよい。有利には、多量体中の全ての単位は、例えば、上記で開示された変異/保存を含むことによってアルカリ安定性である。ポリペプチドは、ポリペプチドのC末端とN末端との間のペプチド結合によって直接に互いと結合することができる。あるいは、多量体中の2以上の単位は、オリゴマー種またはポリマー種、例えば最大25または30アミノ酸、例えば3〜25または3〜20アミノ酸などを有するペプチドを含むリンカーによって結合することができる。リンカーは、例えば、APKVDAKFDKE、APKVDNKFNKE、APKADNKFNKE、APKVFDKE、APAKFDKE、AKFDKE、APKVDA、VDAKFDKE、APKKFDKE、APK、APKYEDGVDAKFDKEおよびYEDGからなる群から選択されるか、あるいは、APKADNKFNKE、APKVFDKE、APAKFDKE、AKFDKE、APKVDA、VDAKFDKE、APKKFDKE、APKYEDGVDAKFDKEおよびYEDGからなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるか、あるいはそれとの少なくとも90%の同一性または少なくとも95%の同一性を有するペプチド配列を含むかまたはそれから本質的になる。それらはまた、APKADNKFNKE、APKVFDKE、APAKFDKE、AKFDKE、APKVDA、VDAKFDKE、APKKFDKE、APKおよびAPKYEDGVDAKFDKEからなる群から選択されるアミノ酸配列によって定義されるか、あるいはそれとの少なくとも90%の同一性または少なくとも95%の同一性を有するペプチド配列から本質的になる。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチドAPKVDAKFDKEまたはAPKVDNKFNKEからならない、あるいは、ペプチドAPKVDAKFDKE、APKVDNKFNKE、APKFNKE、APKFDKE、APKVDKEまたはAPKADKEからならない。
【0066】
そのようなリンカーの性質は、好ましくはタンパク質単位の空間的立体構造を不安定化するべきではない。これは、例えばリンカー中にプロリンが存在しないようにすることによって達成することができる。さらに、前記リンカーはまた、好ましくは変異したタンパク質単位の性質を損なわないようにアルカリ環境で十分に安定しているべきでもある。この目的のため、リンカーがアスパラギンを含まない場合は有利である。リンカーがグルタミンを含まない場合はさらに有利であり得る。多量体はさらにN末端で複数のアミノ酸残基、例えばクローニングプロセスに由来するか、または切断されるシグナル伝達配列由来の残基を構成するアミノ酸残基などを含むことがある。さらなるアミノ酸残基の数は、例えば20以下、例えば15以下、例えば10以下または5以下であってよい。具体例として、多量体はAQ、AQGT、VDAKFDKE、AQVDAKFDKEまたはAQGTVDAKFDKE配列をN末端に含むことがある。
【0067】
ある種の実施形態では、多量体は、配列番号80〜87からなる群から選択される配列を含むかまたはそれから本質的になってよい。これらのおよびさらなる配列は下の表に記載され、親(変異)nと命名される。ここでnは多量体中の単量体単位の数である。
【0068】
配列番号17 Zvar(Q9A,N11E,N43A)4
AQGT VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPKC
配列番号18 Zvar(Q9A,N11E,N28A,N43A)4
AQGT VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSQ SAALLAEAKK LNDAQAPKC
配列番号19 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43E,L44I)4
AQGT VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKEILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号20 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)4
AQGT VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号30 Zvar(N11K,H18K,S33K,D37E,A42R,N43A,L44I,K50R,L51Y)4
AQGT VDAKFDKEQQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQKLKDEPSQ SRAILAEAKR YNDAQAPK VDAKFDKEQQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQKLKDEPSQ SRAILAEAKR YNDAQAPK VDAKFDKEQQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQKLKDEPSQ SRAILAEAKR YNDAQAPK VDAKFDKEQQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQKLKDEPSQ SRAILAEAKR YNDAQAPKC
配列番号31 Zvar(Q9A,N11K,H18K,D37E,A42R)4
AQGT VDAKFDKEAQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSQ SRNLLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSQ SRNLLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSQ SRNLLAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ KAFYEILKLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSQ SRNLLAEAKK LNDAQAPKC
配列番号32 Zvar(Q9A,N11E,N28A,Q40V,A42K,N43A,L44I)4
AQGT VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRAAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号33 Zvar(Q9A,N11E,Q40V,A42K,N43A,L44I)6
AQGT VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号34 Zvar(Q9A,N11E,D37E,Q40V,A42K,N43A,L44I)4
AQGT VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号35 Zvar(Q9A,N11E,D37E,Q40V,A42R,N43A,L44I)4
AQGT VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SRAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SRAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SRAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDEPSV SRAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号80 リンカーのD2、A3およびK4が欠失したZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号81 リンカーのK58、V1およびD2が欠失したZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAP AKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号82 リンカーのP57、K58、V1、D2およびA3が欠失したZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAP AKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号83 リンカーのK4、F5、D6、K7およびE8が欠失したZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号84 リンカーのA56、P57およびK58が欠失したZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQ VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号85 リンカーのV1、D2およびA3が欠失したZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK KFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号86 リンカーのV1、D2、A3、K4、F5、D6、K7およびE8が欠失したZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK AQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号87 YEDGがリンカーのK58とV1の間に挿入されたZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK YEDG VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
配列番号88 Zvar2
VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPK VDAKFDKEAQ EAFYEILHLP NLTEEQRNAF IQSLKDDPSV SKAILAEAKK LNDAQAPKC
いくつかの実施形態では、上に開示されるポリペプチドおよび/または多量体は、C末端またはN末端に、1または複数のシステイン残基、複数のリジン残基および複数のヒスチジン残基からなる群から選択される、1または複数の連結要素をさらに含む。1または複数の連結要素はまた、C末端またはN末端から1〜5アミノ酸残基の範囲内、例えば1〜3または1〜2アミノ酸残基の範囲内に位置してもよい。連結要素は、例えばC末端の単一のシステインであることがある。1または複数の連結要素は、CまたはN末端に直接に結合してもよいし、あるいは連結要素は、最大15アミノ酸、例えば1〜5、1〜10または5〜10アミノ酸を含むストレッチを介して結合してもよい。このストレッチもまた、好ましくは変異したタンパク質の性質を損なわないようにアルカリ環境で十分に安定しているべきである。この目的のために、ストレッチがアスパラギンを含まない場合に有利である。ストレッチがグルタミンを含まない場合はさらに有利であり得る。C末端システインを有する利点は、タンパク質のエンドポイントカップリングがシステインチオールと支持体上の求電子基との反応を通じて達成され得ることである。これは、結合容量にとって重要な、カップリングタンパク質の優れた可動性を提供する。
【0069】
ポリペプチドまたは多量体のアルカリ安定性は、例えばNHS−またはマレイミドカップリング化学を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)チップ、例えば実施例に記載されるようなBiacore CM5センサーチップとそれをカップリングさせ、指定された温度、例えば22+/−2℃のアルカリ溶液中でのインキュベーションの前後に一般にポリクローナルヒトIgGを用いてチップの免疫グロブリン結合容量を測定することによって評価することができる。インキュベーションは、例えば0.5M NaOH中で何回かの10分サイクル、例えば100、200または300サイクルなどで実施することができる。22+/−2℃の0.5M NaOH中で100回の10分インキュベーションサイクルの後のマトリックスのIgG容量は、インキュベーション前のIgG容量の少なくとも55、例えば少なくとも60、少なくとも80または少なくとも90%などであり得る。あるいは、上記のように測定される特定の変異体の100サイクル後の残存IgG容量は、親ポリペプチド/多量体の残存IgG容量と比較することができる。この例では、変異体の残存IgG容量は、親ポリペプチド/多量体の少なくとも105%、例えば少なくとも110%、少なくとも125%、少なくとも150%または少なくとも200%などであることがある。
【0070】
免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインおよび/またはその多量体は、核酸配列、例えばポリペプチドまたは多量体をコードするRNA配列またはDNA配列などによってコードされることがある。コード配列に加えて必要なシグナル配列を含む、プラスミドなどのベクターがポリペプチドまたは多量体の発現に使用されることがある。ベクターは、上記のような多量体をコードする核酸を含むことがあり、この際、各単位をコードする個別の核酸は、相同または異種のDNA配列を有することがある。
【0071】
上記のような核酸またはベクターを含む発現系は、ポリペプチドまたは多量体の発現に使用されてよい。発現系は、例えば、本発明のポリペプチドまたは多量体を発現するよう改変されている、グラム陽性またはグラム陰性の原核生物宿主細胞系、例えば大腸菌(E.coli)またはバチルス属の種(Bacillus sp.)であってよい。あるいは、発現系は、真核生物宿主細胞系、例えば酵母、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)など、または哺乳動物細胞、例えばCHO細胞であってよい。
【0072】
分離マトリックスは、多孔質支持体と共有結合した、上記のような免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0073】
分離マトリックスは、多孔質支持体と共有結合した、少なくとも11、例えば11〜21、15〜21または15〜18mg/mlのFc結合リガンドを含んでよく、この際:
a)リガンドはアルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含み、
b)多孔質支持体は56〜70、例えば56〜66マイクロメートルの体積加重メジアン径(d50,v)および55〜80、例えば60〜78または65〜78mg/mlの乾燥固体重量を有する架橋ポリマー粒子を含む。架橋ポリマー粒子はさらに、分子量110kDaのデキストランの逆ゲル濾過クロマトグラフィーのKd値0.69〜0.85、例えば0.70〜0.85または0.69〜0.80に相当する孔径を有してよい。多量体は、例えばアルカリ安定化プロテインAドメインの四量体、五量体、六量体または七量体、例えばアルカリ安定化プロテインAドメインの六量体などを含んでよい。高いリガンド含有量と粒度範囲、乾燥固体重量範囲および随意のKd範囲を組み合わせることにより、例えば、IgGに対する10%貫流の動的結合容量が2.4分の滞留時間で少なくとも45mg/ml、例えば少なくとも50または少なくとも55mg/mlであるような、高い結合容量が得られる。あるいは、またはさらに、IgGに対する10%貫流の動的結合容量は、6分の滞留時間で少なくとも60mg/ml、例えば少なくとも65、少なくとも70または少なくとも75mg/mlなどであることがある。
【0074】
アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体は、IgGに対して選択性が高く、分離マトリックスは、20mMリン酸緩衝液、180mM NaCl、pH7.5中で、ヒトIgG2に対して0.2mg/mlよりも低い、例えば0.1mg/mlよりも低い解離定数を適切に有することができる。これは、N Pakiman et al:J Appl Sci 12,1136−1141(2012)に記載の吸着等温線法に従って求めることができる。
【0075】
ある種の実施形態では、分離マトリックスは、多孔質支持体と共有結合した、少なくとも15、例えば15〜21または15〜18mg/mlのFc結合リガンドを含み、この際、リガンドは、アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む。これらの多量体は、適切に、上記の実施形態または下に指定される実施形態のいずれかに開示される通りであり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、分離マトリックスは、支持体と結合した、5〜25、例えば5〜20mg/ml、5〜15mg/ml、5〜11mg/mlまたは6〜11mg/mlのポリペプチドまたは多量体を含む。結合したポリペプチド/多量体の量は、カップリングプロセスで使用したポリペプチド/多量体の濃度、使用した活性化およびカップリング条件、および/または使用した支持体の多孔構造によって制御することができる。概して、マトリックスの絶対結合容量は、カップリングされたポリペプチド/多量体の量に伴い、少なくとも細孔がカップリングされたポリペプチド/多量体によって著しく狭窄される点まで増加する。理論に縛られるものではないが、しかし、支持体に対して列挙されるKd値に関して、結合したリガンドによる細孔の狭窄はそれほど重要ではないと思われる。カップリングされたポリペプチド/多量体1mg当たりの相対結合容量はカップリングレベルが高くなると減少し、上記の範囲内で最適な費用便益をもたらす。
【0077】
そのような分離マトリックスは、免疫グロブリンまたはその他のFc含有タンパク質の分離に有用である。そして、ポリペプチド/多量体のアルカリ安定性が改善されたために、マトリックスは洗浄中の高アルカリ条件に耐え、それはバイオプロセス分離の状況において長期の反復使用に不可欠である。マトリックスのアルカリ安定性は、指定された温度、例えば22+/−2℃のアルカリ溶液中でのインキュベーションの前後に一般にポリクローナルヒトIgGを使用して、免疫グロブリン結合容量を測定することによって評価することができる。インキュベーションは、例えば、0.5Mまたは1.0M NaOH中で何回かの15分サイクル、例えば25、50または75時間の総インキュベーション時間に相当する100、200または300サイクルなどで実施することができる。22+/−2℃の0.5M NaOH中で96〜100回の15分インキュベーションサイクルあるいは24または25時間の総インキュベーション時間の後のマトリックスのIgG容量は、インキュベーション前のIgG容量の少なくとも80、例えば少なくとも85、少なくとも90または少なくとも95%などであり得る。22+/−2℃の1.0M NaOH中で合計24時間のインキュベーションの後のマトリックスの容量は、インキュベーション前のIgG容量の少なくとも70、例えば少なくとも80または少なくとも90%などであり得る。2.4分または6分の滞留時間のIgGに対する10%貫流の動的結合容量(Qb10%)は、例えば、22+/−2℃の1.0M NaOH水溶液中、31時間のインキュベーションの後に20%未満低下していることがある。
【0078】
当業者の理解するように、発現したポリペプチドまたは多量体は、支持体に固定される前に適切な程度まで精製されるべきである。そのような精製方法は当分野で周知であり、タンパク質に基づくリガンドの支持体への固定は標準法を用いて容易に実行される。適切な方法および支持体は、以下により詳細に述べる。
【0079】
分離マトリックスの多孔質支持体は、任意の適した周知の種類のものであってよい。従来のアフィニティー分離マトリックスは多くの場合有機性であり、使用する水性媒体に親水性表面を曝露している、すなわちヒドロキシ(−OH)、カルボキシ(−COOH)、カルボキシアミド(−CONH
2、N−置換型であってもよい)、アミノ(−NH
2、置換されていてもよい)、オリゴ−またはポリエチレンオキシ基をそれらの外部に曝露し、存在する場合にはその内部にも曝露しているポリマーに基づく。支持体の空隙率は、Gel Filtration Principles and Methods,Pharmacia LKB Biotechnology 1991,pp6−13に記載の方法による逆サイズ排除クロマトグラフィーによって測定されたKavまたはKd値(特定のサイズのプローブ分子に利用可能な細孔容積の割合)として表すことができる。Kavは、比(V
e−V
0)/(V
t−V
0)として求められ、式中、V
eは、プローブ分子の溶出量(例えば、デキストラン110kD)であり、V
0は、カラムの空隙容量(例えば、高Mwのボイドマーカー、例えば未加工のデキストランなどの溶出量)であり、V
tはカラムの総容積である。Kdは、(V
e−V
0)/V
iとして求めることができ、式中、V
iは、マトリックス体積(マトリックスポリマー分子によって占有される体積)を除く全ての容積に入ることのできる塩(例えば、NaCl)の溶出量である。定義上、KdおよびKav値は両方とも常に0〜1の範囲内にある。有利には、分子量110kDaのデキストランをプローブ分子として用いて測定した場合、Kav値は0.6〜0.95、例えば、0.7〜0.90または0.6〜0.8であり得る。分子量110kDaのデキストランで測定されるKd値は、適切には0.68〜0.90、例えば0.68〜0.85または0.70〜0.85などであり得る。この有利性は、支持体が、本発明のポリペプチド/多量体および該ポリペプチド/多量体に結合する免疫グロブリンの両方を収容することができ、結合部位への、および結合部位からの免疫グロブリンの質量輸送を提供することができる細孔を大きな割合で有することである。
【0080】
ポリペプチドまたは多量体は、例えば、リガンド中に存在するチオール、アミノおよび/またはカルボキシ基を利用する従来のカップリング技術を介して多孔質支持体に結合させることができる。ビスエポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などは、周知のカップリング試薬である。支持体とポリペプチド/多量体との間には、ポリペプチド/多量体の有効性を改善し、ポリペプチド/多量体と支持体との化学カップリングを促進する、スペーサーとして公知の分子を導入することができる。ポリペプチド/多量体の性質およびカップリング条件に応じて、カップリングは、マルチポイントカップリング(例えば複数のリジンを介するもの)であってもよいし、シングルポイントカップリング(例えば単一のシステインを介するもの)であってもよい。
【0081】
特定の実施形態において、ポリペプチドまたは多量体は、チオエーテル結合を介して支持体にカップリングされる。このような結合を実施する方法は、この分野において周知であり、標準的な技術および装置を使用して当業者によって容易に実施される。チオエーテル結合は、柔軟で安定であり、一般的にアフィニティークロマトグラフィーでの使用に適している。特に、チオエーテル結合が、ポリペプチドまたは多量体上の末端または近末端のシステイン残基を介している場合、カップリングされたポリペプチド/多量体の可動性が向上し、結合容量および結合反応速度が改善される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド/多量体は、上記のタンパク質に提供されるC末端システインを介してカップリングされる。このことは、システインチオールと支持体上の求電子基、例えばエポキシド基、ハロヒドリン基等との効率的なカップリングを可能にし、その結果チオエーテル架橋結合となる。
【0082】
特定の実施形態において、支持体は、ポリヒドロキシポリマー、例えば多糖類を含む。多糖類の例としては、例えば、デキストラン、デンプン、セルロース、プルラン、寒天、アガロースなどが挙げられる。多糖類は本質的に親水性であり、非特異的相互作用の程度は低く、反応性(活性化可能な)ヒドロキシル基含量が高く、バイオプロセスに使用されるアルカリ清浄化液に対して一般に安定である。
【0083】
いくつかの実施形態において、支持体は、寒天またはアガロースを含む。本発明で使用する支持体は、標準的な方法、例えば逆懸濁ゲル化(S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2),393−398(1964))により容易に調製することができる。または、塩基性マトリクッスは、SEPHAROSE(商標)FF(GE Healthcare)の名称で販売されている架橋アガロースビーズなどの市販品である。大規模分離に特に有利な一実施形態において、支持体は、米国特許第6602990号または米国特許第7396467号(当該特許は参照によりその全文が本明細書に援用される)に記載されている方法を使用して、その剛性を増加させるように適合されており、そのためにマトリックスは高い流量により適したものとなる。
【0084】
特定の実施形態において、支持体、例えばポリマー、多糖類またはアガロースなどは、ヒドロキシアルキルエーテル架橋などで架橋される。このような架橋を生成する架橋剤試薬は、例えば、エピクロロヒドリンのようなエピハロヒドリン、ブタンジオールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド、アリルハライドまたはアリルグリシジルエーテルのようなアリル化試薬であってよい。架橋は、支持体の剛性に有益であり、化学的安定性を改善する。ヒドロキシアルキルエーテル架橋はアルカリ安定性であり、著しい非特異的吸着を引き起こさない。
【0085】
あるいは、多孔質支持体は、合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどに基づく。ジビニルおよびモノビニル置換ベンゼンに基づくマトリックスなどの疎水性ポリマーの場合、マトリックス表面は、多くの場合親水化されて、上で定義した親水性基を周囲の水性液体に曝露する。このようなポリマーは、標準的な方法に従って容易に製造され、例えば、“Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization”(R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9),70−75(1988))を参照されたい。または、SOURCE(商標)(GE Healthcare)などの市販品が使用される。別の代替法では、本発明による多孔質支持体は、無機性の支持体、例えばシリカ、酸化ジルコニウムなどを含む。
【0086】
さらに別の実施形態において、固相支持体は、表面、チップ、キャピラリー、またはフィルタ(例えば、膜または深層フィルタマトリックス)などの別の形態である。
【0087】
本発明によるマトリックスの形状に関して、一実施形態において、マトリックスは多孔質モノリスの形態である。別の実施形態において、マトリックスは、多孔質または非多孔質であり得るビーズまたは粒子の形態である。ビーズまたは粒子の形態のマトリックスは、充填床として、または懸濁形態で使用することができる。懸濁形態には、粒子またはビーズが自由に移動する膨張床および純粋な懸濁液として知られている形態が含まれる。モノリス、充填床および膨張床の場合、分離手順は一般に、濃度勾配を用いた従来のクロマトグラフィーに従う。純粋な懸濁液の場合、バッチ様式が使用される。
【0088】
上に開示される分離マトリックスは優れたアルカリ安定性を有するので、アルカリ性洗浄液を用いて洗浄および/または消毒されてよい。分離マトリックスを洗浄および/または消毒する方法は、以下の
a)所望により、分離マトリックスを用いて第1の免疫グロブリンを含む混合物を精製する工程;
b)少なくとも50体積%のアルカリ金属水酸化物水溶液を含む洗浄液を準備する工程;および
c)洗浄液と分離マトリックスを所定の接触時間の間、接触させることによって分離マトリックスを洗浄および/または消毒する工程を含む。
【0089】
洗浄および/または消毒は、使用前にマトリックスを消毒するために、これまでに使用されていない分離マトリックスで、例えば分離マトリックスを含むカラムを詰めた後に最初に実施されてよい。また、洗浄および/または消毒は、免疫グロブリンを精製するために分離マトリックスを使用した後に、すなわち上記の方法の工程a)の後に実施されてもよい。分離マトリックスを最大限に活用するために、免疫グロブリンを精製するために分離マトリックスを使用する工程と、その後に分離マトリックスを洗浄および/または消毒する工程は、繰り返されてよい。工程は、少なくとも10回、例えば少なくとも50回または50〜200回繰り返されてよい。洗浄/消毒の工程c)は、免疫グロブリンを精製する各工程a)の後に実施されてもよいし、それよりも少ない頻度で、例えば、2回の精製ごとに、または10回の精製ごとになどで実施されてもよい。分離マトリックスを洗浄および/または消毒する工程c)は、各回同じ条件を使用して実施する必要はない。例えば、分離マトリックスは、毎回の精製工程の後に第1の条件の組を用いて洗浄されてよく、n回目の精製ごとにより厳しい条件を用いて消毒されてよい。
【0090】
アルカリ金属水酸化物水溶液は効果的な洗浄剤であり、それ自体殺菌性であるので、そのようなアルカリ金属水酸化物水溶液を含む洗浄液を用いて洗浄および消毒することにより、洗浄および消毒剤としてアルコールを使用する必要性はより少ない。アルカリ金属水酸化物は、アルコールと比較して安価であり、規制上の負担になりにくい。さらに、アルカリ金属水酸化物は不燃性であり、処分が容易である。
【0091】
分離マトリックスは、多孔質支持体と共有結合した免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む、上に開示されるような分離マトリックスであり、この際、アルカリ安定化プロテインAドメインは、配列番号51または配列番号52によって定義されるかあるいはそれとの少なくとも80%、例えば90%、95%または98%などの同一性を有するブドウ球菌プロテインA(SpA)の親Fc結合ドメインの変異体を含み、配列番号51または52の13位および44位のアミノ酸残基はアスパラギンであり、配列番号51または52の3位の少なくともアスパラギン残基は、グルタミン酸、リジン、チロシン、トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、バリン、アラニン、ヒスチジンおよびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸に変異している。免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインは、さらなる変異を含むことがある。例えば、配列番号51または52の1位のグルタミン残基は、アラニンに変異させてよい;かつ/または配列番号51または52の35位のアスパラギンまたはグルタミン酸残基は、アラニンに変異させてよい。
【0092】
アルカリ安定化プロテインAドメインのアルカリ安定性が高いために、分離マトリックスは、結合容量を過剰に失うことなく、濃アルカリ金属水酸化物溶液を使用してさえ、大規模な洗浄および消毒処置に耐えることができる。例えば、分離マトリックスは、洗浄および/または消毒の後に、その最初の動的結合容量の少なくとも80%を保持することがある。
【0093】
洗浄液は、少なくとも50体積%のアルカリ金属水酸化物水溶液を含む。アルカリ金属水酸化物水溶液は、単一のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属水酸化物の混合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物などを含んでよい。アルカリ金属水酸化物水溶液は、アルカリ金属水酸化物の混合物を使用する場合のアルカリ金属水酸化物の総合濃度として表して、500mM〜5M、例えば1M〜2Mなどのモル濃度を有してよい。洗浄液は、アルカリ金属水酸化物水溶液から本質的になるか、またはそれからなってよい。しかし、洗浄液は、いくつかの実施形態においてさらなる成分も含んでよい。そのようなさらなる成分には、アルコール、例えばC
2−C
7アルコール、例えばエタノール、イソプロパノールまたは安息香酸アルコールなどが含まれてよい。そのようなさらなる成分には、塩、例えば塩化ナトリウムなどが含まれてよい。アルコールおよび/または塩を洗浄液中に使用することにより、ある種の微生物、例えば胞子形成細菌などを抑制または不活性化する洗浄液の効力を増加させることができる。
【0094】
洗浄液の限定されない例としては、以下が挙げられる:
水酸化ナトリウム溶液(0.5M、1M、2Mまたは5M);
水酸化カリウム溶液(0.5M、1M、2Mまたは5M);
10〜20体積%のエタノールを含む水酸化ナトリウム溶液(0.5M、1M、2Mまたは5M);
10〜50体積%のイソプロパノールを含む水酸化ナトリウム溶液(0.5M、1M、2Mまたは5M);
1〜5体積%のベンジルアルコールを含む水酸化ナトリウム溶液(0.5M、1M、2Mまたは5M);
10〜20体積%のエタノールを含む水酸化カリウム溶液(0.5M、1M、2Mまたは5M);
10〜50体積%のイソプロパノールを含む水酸化カリウム溶液(0.5M、1M、2Mまたは5M);または
1〜5体積%のベンジルアルコールを含む水酸化カリウム溶液(0.5M、1M、2Mまたは5M)。
【0095】
比較的濃縮されたアルカリ金属水酸化物溶液、例えば0.5M〜5M溶液などを使用することにより、タンパク質および核酸などのマトリックス夾雑物の例外的な除去、ならびにウイルス、細菌、酵母および真菌の迅速かつ効果的な不活性化がもたらされる。一般に用いられる消毒効力の尺度は、測定される微生物または夾雑物の6−log
10減少である。濃アルカリ金属水酸化物溶液による消毒は、大部分の微生物およびエンドトキシンを6−log
10減少させることが可能である。
【0096】
分離マトリックスの洗浄中、夾雑物をマトリックスから流すために、洗浄液は適した流量で分離マトリックスに通されるべきである。消毒の間、分離マトリックスに洗浄液が完全に浸透するまで、洗浄液は最初のうちは適した流量で分離マトリックスに通される。洗浄液は、好ましくは、消毒工程の全ての期間の間、適した流量で分離マトリックスに通される。しかし、必要に応じて、分離マトリックスを通る洗浄液の流れは、ひとたび分離マトリックスに洗浄液が完全に浸透すると停止されてよい。これは消毒工程を実施するために必要な洗浄流体の量を減らすが、一定流量の洗浄流体が適用される手順と比較して、分離マトリックスの不十分な洗浄を提供する。
【0097】
アルカリ金属水酸化物水溶液は分離マトリックスから夾雑物を除去することにとても効果的であるので、宿主細胞タンパク質の混入またはキャリーオーバーの危険の低い、多様な免疫グロブリンの精製のための精製プラットフォームとして分離マトリックスを使用することができる。第1の免疫グロブリン生成物の精製の後、分離マトリックスはまず、第2の免疫グロブリン生成物の精製で使用する前に、アルカリ金属水酸化物水溶液を含む洗浄液を用いて十分に洗浄および消毒される。
【0098】
実施例
タンパク質の変異誘発
部位特異的変異誘発を、変異をコードするオリゴヌクレオチドを用いて2工程のPCRによって実施した。鋳型として、Z、BまたはCのいずれかの単一のドメインを含有するプラスミドを使用した。PCR断片を大腸菌発現ベクターに連結した。DNA塩基配列決定法を使用して、挿入した断片の正しい配列を検証した。
【0099】
変異体の多量体を形成するために、アミノ酸VDに対応する、B、CまたはZドメインの出発コドン(GTA GAC)に位置するAcc I部位を使用した。単量体ドメインのベクターをAcc Iで消化し、ホスファターゼ処理した。各々のバリアントに特異的なAcc I粘着末端プライマーを設計し、2つのオーバーラップPCR産物を各々の鋳型から作製した。PCR産物を精製し、2%アガロースゲル上でPCR産物を比較することによって濃度を推定した。等量の対のPCR産物をライゲーション緩衝液中でハイブリダイズした(45分で90℃→25℃)。結果として得られる産物は、Acc I部位(正しいPCR断片および/または消化ベクター)に連結される可能性の高い断片の約1/4からなる。ライゲーションおよび形質転換の後、コロニーをPCRスクリーニングして所望の変異体を含む構築物を同定した。陽性クローンは、DNA塩基配列決定法により確認した。
【0100】
構築物の発現および精製
構築物を、標準培地中の大腸菌K12の発酵によって細菌ペリプラズム内に発現させた。発酵後、細胞を熱処理してペリプラズムの内容物を培地に放出させた。培地に放出された構築物を、孔径0.2μmの膜を用いる精密濾過法によって回収した。
【0101】
各々の構築物(ここでは濾過工程からの透過液中にある)を、アフィニティーによって精製した。透過液を、固定化IgG(IgG Sepharose 6FF、GE Healthcare)を含有するクロマトグラフィー培地に添加した。添加した産物をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、pHを低下させることによって溶出した。
【0102】
溶出プールを中性pH(pH8)に調節し、ジチオトレイトールの添加によって還元した。次に、試料を陰イオン交換体に添加した。洗浄工程の後、構築物をNaCl勾配に溶出し、それを夾雑物から分離した。溶出プールを限外濾過によって40〜50mg/mlに濃縮した。固定IgG培地での構築物のアフィニティー精製の成功は、問題の構築物がIgGに対して高い親和性を有することを意味することに留意する必要がある。
【0103】
精製したリガンドをRPC LC−MSで分析して、純度を求め、分子量が(アミノ酸配列に基づく)予測値と一致することを確かめた。
【実施例1】
【0104】
配列番号8〜16、23〜28および36〜48についてN末端のAQGTリーダー配列およびC末端のシステインをさらに含む、表1に記載の精製単量体リガンドを、Biacore CM5センサーチップ(GE Healthcare、スウェーデン)上に固定化し、十分な量でGE Healthcareのアミンカップリングキット(チップ上のカルボキシメチル基のアミンのカルボジイミドカップリング用)を使用して、Biacore表面プラズモン共鳴(SPR)計測器(GE Healthcare、スウェーデン)で約200〜1500RUのシグナル強度を得た。固定化表面のIgG結合容量を追跡するため、1mg/mlヒトポリクローナルIgG(Gammanorm)をチップの上に流し、シグナル強度(結合量に比例)を記録した。次に、表面を定置洗浄した(CIP)、すなわち、室温で(22+/−2℃)10分間、500mM NaOHを流した。これを96〜100サイクル繰り返し、固定化リガンドのアルカリ安定性を、各サイクルの後に残存IgG結合容量(シグナル強度)として追跡した。結果は表1に示され、少なくともリガンドZvar(N11K)1、Zvar(N11E)1、Zvar(N11Y)1、Zvar(N11T)1、Zvar(N11F)1、Zvar(N11L)1、Zvar(N11W)1、Zvar(N11I)1、Zvar(N11M)1、Zvar(N11V)1、Zvar(N11A)1、Zvar(N11H1)、Zvar(N11R)1、Zvar(N11E、Q32A)1、Zvar(N11E、Q32E、Q40E)1およびZvar(N11E、Q32E、K50R)1、Zvar(Q9A、N11E、N43A)1、Zvar(Q9A、N11E、N28A、N43A)1、Zvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43E、L44I)1、Zvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)1、Zvar(Q9A、N11E、N28A、Q40V、A42K、N43A、L44I)1、Zvar(N11K、H18K、S33K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R、L51Y)1、Zvar(Q9A、N11K、H18K、S33K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R、L51Y)1、Zvar(N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44I)1、Zvar(Q9A、N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44I)1およびZvar(Q9A、N11K、H18K、D37E、A42R、N43A、L44I、K50R)1、ならびに29位にG、S、Y、Q、T、N、F、L、W、I、M、V、D、E、H、RまたはKを有するZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)1の変種、53位にF、Y、W、KまたはRを有するZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)1の変種、およびQ9、Q40、A42またはN43を欠失しているZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)1の変種が、基準として使用した親構造Zvar1と比較してアルカリ安定性が改善されたことを示す。さらに、リガンドB(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)1およびC(Q9A、N11E、E43A)1は、基準として使用した親BドメインおよびCドメインと比較して安定性が改善された。
【0105】
表1.Biacore(0.5M NaOH)で評価した単量体リガンド
【0106】
【表1-1】
【0107】
【表1-2】
Biacore実験は、リガンドとIgGとの結合速度および解離速度を求めるためにも使用することができる。これを上記の設定でプローブ分子としてIgG1モノクローナル抗体を用いて使用した。基準Zvar1に関して、オンレート(10
5M
−1s
−1)は3.1であり、オフレート(10
5s
−1)は22.1であり、親和性(オフレート/オンレート)は713pMとなった。Zvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)1(配列番号11)に関して、オンレートは4.1であり、オフレートは43.7で、親和性は1070pMであった。このようにIgG親和性は変異バリアントについて多少高かった。
【実施例2】
【0108】
表2に記載の精製二量体、四量体および六量体リガンドを、Biacore CM5センサーチップ(GE Healthcare、スウェーデン)上に固定化し、十分な量でGE Healthcareのアミンカップリングキット(チップ上のカルボキシメチル基のアミンのカルボジイミドカップリング用)を使用して、Biacore計測器(GE Healthcare、スウェーデン)で約200〜1500RUのシグナル強度を得た。固定化表面のIgG結合容量を追跡するため、1mg/mlヒトポリクローナルIgG(Gammanorm)をチップの上に流し、シグナル強度(結合量に比例)を記録した。次に、表面を定置洗浄した(CIP)、すなわち、室温で(22+/−2℃)10分間、500mM NaOHを流した。これを300サイクル繰り返し、固定化リガンドのアルカリ安定性を、各サイクルの後に残存IgG結合容量(シグナル強度)として追跡した。結果は表2および
図2に示され、少なくともリガンドZvar(Q9A、N11E、N43A)4、Zvar(Q9A、N11E、N28A、N43A)4、Zvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43E、L44I)4およびZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)4、Zvar(Q9A、N11E、D37E、Q40V、A42K、N43A、L44I)4およびZvar(Q9A、N11E、D37E、Q40V、A42R、N43A、L44I)4が、基準として使用した親構造Zvar4と比較してアルカリ安定性が改善されたことを示す。六量体リガンドZvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)6も、基準として使用した親構造Zvar6と比較してアルカリ安定性が改善されたことを示す。さらに、2つの単量体単位間のリンカー領域のa)D2、A3、K4;b)K58、V1、D2;c)P57、K58、V1、D2、A3;d)K4、F5、D6、K7、E8;e)A56、P57、K58;V1、D2、A3またはf)V1、D2、A3、K4、F5、D6、K7、E8が欠失した、Zvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)二量体は、基準として使用した親構造Zvar2と比較してアルカリ安定性を改善させた。また、リンカー領域のK58とV1の間にYEDGが挿入された、Zvar(Q9A、N11E、Q40V、A42K、N43A、L44I)二量体は、Zvar2と比較してアルカリ安定性を改善させた。
【0109】
表2.Biacore(0.5M NaOH)で評価した二量体、四量体および六量体リガンド
【0110】
【表2-1】
【0111】
【表2-2】
【実施例3】
【0112】
実施例2のような500mMの代わりに1M NaOHを用いて、3つのリガンドの100回のCIPサイクルを用いて実施例2を繰り返した。結果は表3に示され、3つ全てのリガンドが、基準として使用した親構造Zvar4と比較して1M NaOH中でも安定性を改善したことを示す。
【0113】
表3.Biacore(1M NaOH)で評価した四量体リガンド
【0114】
【表3】
【実施例4】
【0115】
表2の精製四量体リガンド(全てN末端にさらなるシステインを含む)を、下に記載される方法を用いてアガロースビーズに上に固定化し、能力および安定性について評価した。結果を表4および
図3に示す。
【0116】
表4.カラム(0.5M NaOH)で評価した、四量体リガンドを含むマトリックス。
【0117】
【表4】
活性化
使用したベースマトリックスは、参照によりその全文がここに援用される米国特許第6602990号に記載の方法に従って調製し、Gel Filtration Principles and Methods,Pharmacia LKB Biotechnology 1991,pp 6−13に記載の方法に従う、Mw110kDaのデキストランの逆ゲル濾過クロマトグラフィーのKav値0.70に相当する孔径をもつ、85マイクロメートル(容積重量、d50V)の中位径の硬質架橋アガロースビーズであった。
【0118】
25mL(g)の水切りしたベースマトリックス、10.0mLの蒸留水および2.02gのNaOHを、100mLフラスコ中で機械的に撹拌しながら25℃において10分間混合した。4.0mLのエピクロロヒドリンを加え、反応を2時間進行させた。活性化されたゲルを、10ゲル沈殿物体積(GV)の水で洗浄した。
【0119】
カップリング
50ml Falconチューブ中20mLのリガンド溶液(50mg/mL)に、169mgのNaHCO
3、21mgのNa
2CO
3、175mgのNaClおよび7mgのEDTAを添加した。Falconチューブをローラーテーブルの上に5〜10分間載せた後、77mgのDTEを添加した。還元は45分超進行した。次に、Sephadex G−25を充填したPD10カラムでリガンド溶液を脱塩した。脱塩した溶液中のリガンド含有量を、276nmのUV吸収を測定することによって求めた。
【0120】
活性化したゲルを3〜5GV{0.1Mリン酸塩/1mM EDTA pH8.6}で洗浄し、次に参照によりその全文がここに援用される米国特許第6399750号に記載の方法に従ってリガンドを結合させた。この実験で使用した全ての緩衝液を、窒素ガスによって少なくとも5〜10分間脱気した。ゲルのリガンド含有量は、リガンド溶液の量および濃度を変化させることによって制御することができた。
【0121】
固定化の後、ゲルを3xGVの蒸留水で洗浄した。ゲル+1GV{0.1M リン酸塩/1mM EDTA/10%チオグリセロールpH8.6}を混合し、チューブを室温で一晩振動台に置いた。次に、ゲルを3xGV{0.1M TRIS/0.15M NaCl pH8.6}および0.5M HAcで、その後8〜10xGVの蒸留水で交互に洗浄した。ゲル試料をアミノ酸分析のために外部の試験所に送り、リガンド含有量(mg/mlゲル)を全アミノ酸含有量から計算した。
【0122】
タンパク質
Gammanorm165mg/ml(Octapharma)、平衡化緩衝液中2mg/mlに希釈。
【0123】
平衡化緩衝液
PBSリン酸緩衝液10mM+0.14M NaCl+0.0027M KCl、pH7.4(Medicago)
吸着緩衝液
PBSリン酸緩衝液10mM+0.14M NaCl+0.0027M KCl、pH7.4(Medicago)
溶出緩衝液
100mM酢酸塩pH2.9
動的結合容量
2mlの樹脂を、TRICORN(商標)5 100カラムに充填した。貫流容量を、AKTAExplorer10システムで滞留時間6分(流量0.33ml/分)で求めた。安定したベースラインが得られるまで平衡化緩衝液をバイパスカラムに流した。これは自動ゼロ化の前に行った。100%UVシグナルが得られるまで試料をカラムに適用した。その後、安定したベースラインが得られるまで、平衡バッファーを再度適用した。
【0124】
UVシグナルが最大吸光度の85%に達するまで試料をカラムに添加した。その後、流量0.5ml/分の5カラム容量(CV)の平衡緩衝液でカラムを洗浄した。タンパク質を5CVの溶出緩衝液で流量0.5ml/分で溶出した。次に、カラムを流量0.2ml/分の0.5M NaOHで洗浄し、平衡化緩衝液で再び平衡化させた。
【0125】
10%の貫流容量の計算には、下の式を使用した。それは、カラム流出液中のIgGの濃度がフィード液中のIgG濃度の10%になるまでカラムに添加されるIgGの量である。
【0126】
【数1】
A
100%=100%UVシグナル;
A
sub=非結合IgGサブクラスによる吸光度への寄与;
A(V)=所与添加容量での吸光度;
V
c=カラム容量;
V
app=10%貫流までの添加量;
V
sys=システムのデッドボリューム;
C
0=フィード濃度。
【0127】
10%貫流での動的結合容量(DBC)を計算した。動的結合容量(DBC)は、10および80%貫流について計算した。
【0128】
CIP−0.5M NaOH
10%貫流のDBC(Qb10)は、アルカリ洗浄溶液に繰り返し曝露する前と後に求めた。各々のサイクルには、0.5M NaOHを0.5/分の速度で20分間カラムに通してポンプ送達し、その後カラムを4時間静置するCIP工程が含まれた。曝露は室温(22+/−2℃)で行った。このインキュベーションの後、カラムを平衡緩衝液で流量0.5ml/分で20分間洗浄した。表4は、6回の4時間サイクル後の残存容量(すなわち、0.5M NaOHへの累積曝露時間は24時間)を、絶対数で、そして初期容量と比較して表す。
【実施例5】
【0129】
実施例4を、表5に示される四量体リガンドを用いて、但しCIP工程で0.5Mの代わりに1.0M NaOHを使用して繰り返した。結果を表5および
図4に示す。
【0130】
表5.カラム−1.0M NaOHで評価した、四量体リガンドを含むマトリックス。
【0131】
【表5】
【実施例6】
【0132】
ベースマトリックス
使用したベースマトリックスは、米国特許第6602990号の方法に従って調製され、上記の方法に従って、0.2M NaCl中のプロトタイプとプローブ分子として一連のデキストラン画分を充填したHR10/30カラム(GE Healthcare)を用いる(流量0.2ml/分)分子量110kDaのデキストランの逆ゲル濾過クロマトグラフィーのKd値0.62〜0.82に相当する孔径をもつ、59〜93マイクロメートル(体積加重、d50V)の中位径(Malvern Mastersizer2000レーザー回折装置で測定)の、一組の剛性架橋アガロースビーズ試料であった。1.0mlの排水した濾過ケーキ試料を105℃で一晩乾燥させ、秤量することによって求めたビーズ試料の乾燥重量は、53から86mg/mlに及んだ。
【0133】
表6ベースマトリックス試料
【0134】
【表6】
カップリング
100mlのベースマトリックスをガラスフィルタ上で10ゲル体積の蒸留水で洗った。ゲルを秤量し(1g=1ml)、撹拌器を備えた250mlフラスコ中で30mlの蒸留水および8.08gのNaOH(0.202mol)と混合した。温度は水浴中27+/−2℃に調節した。16mlのエピクロロヒドリン(0.202mol)を、90+/−10分の間に激しい撹拌下で(約250rpm)添加した。反応をさらに80+/−10分間継続させ、その後、ゲルをガラスフィルタ上で10ゲル体積を上回る蒸留水で中性のpHに達するまで洗った。この活性化したゲルを下のようなカップリングに直接使用した。
【0135】
50ml Falconチューブ中16.4mLのリガンド溶液(50mg/mL)に、139mgのNaHCO
3、17.4mgのNa
2CO
3、143.8mgのNaClおよび141mgのEDTAを添加した。Falconチューブをローラーテーブルの上に5〜10分間載せた後、63mgのDTEを添加した。還元は45分超進行した。次に、Sephadex G−25を充填したPD10カラムでリガンド溶液を脱塩した。脱塩した溶液中のリガンド含有量を、276nmのUV吸収を測定することによって求めた。
【0136】
活性化したゲルを3〜5GV{0.1Mリン酸塩/1mM EDTA pH8.6}で洗い、次に、かなり高いリガンド量であるが、米国特許第6399750号明細書5.2.2に記載の方法に従ってリガンドを結合させた(下記参照)。この実験で使用した全ての緩衝液を、窒素ガスによって少なくとも5〜10分間脱気した。ゲルのリガンド含有量は、ゲル1ml当たり5〜20mgのリガンドを添加して、リガンド溶液の量および濃度を変化させることによって制御した。リガンドは、アルカリ安定化変異体の四量体(配列番号20)かまたは六量体(配列番号33)であった。
【0137】
固定化の後、ゲルを3xGVの蒸留水で洗浄した。ゲル+1GV{0.1M リン酸塩/1mM EDTA/10%チオグリセロールpH8.6}を混合し、チューブを室温で一晩振動台に置いた。次に、ゲルを3xGV{0.1M TRIS/0.15M NaCl pH8.6}および0.5M HAcで、その後8〜10xGVの蒸留水で交互に洗浄した。ゲル試料をアミノ酸分析のために外部の試験所に送り、リガンド含有量(mg/mlゲル)を全アミノ酸含有量から計算した。
【0138】
評価
2.4分および6分の滞留時間でのポリクローナルヒトIgGに対するQb10%動的容量を、実施例4に概説されるように決定した。
【0139】
表7.プロトタイプの結果
【0140】
【表7-1】
【0141】
【表7-2】
【実施例7】
【0142】
上記の通り調製した、異なるリガンド含有量をもつ一連のプロトタイプ(四量体、配列番号20)を1M NaOH中22+/−2℃で4、8および31時間インキュベートし、インキュベーションの前後に動的IgG容量(Qb10%、滞留時間6分)を測定した。プロトタイプを表8に示し、結果を
図5および6に示す。この厳しいアルカリ処理に対する安定性は、リガンド含有量の増加に伴って増加することが分かる。
【0143】
表8.1M NaOHでのインキュベーションの試料
【0144】
【表8】
【実施例8】
【0145】
上記の通り調製した、異なるリガンド含有量(六量体、配列番号33)、ビーズメジアン径(d50,v)62μmおよび分子量110kDのデキストランのKd0.70をもつ、2つの架橋アガロースビーズプロトタイプを、実際のmAbフィード液によって評価した。プロトタイプAのリガンド含有量は14.3mg/mlであり、プロトタイプBのリガンド含有量は18.9mg/mlであった。比較のために、市販品MabSelect SuRe(登録商標)LX(GE Healthcare Life Sciences)を使用した。樹脂をTricornカラム(GE Healthcare Life Sciences)にベッド高10cmまで詰めて、2mlのベッドボリュームを得、カラムが0.8〜1.5の区間内でピーク非対称を有することが示された。負荷した試料は、生理学的pHで4.9mg/mlのモノクローナルIgG1抗体を含む清澄化したCHO細胞上清であり、実験条件は下の表9に記載される通りであった(CV=カラム体積、RT=滞留時間)。
【0146】
表9.実際のフィード液による評価の条件。
【0147】
【表9】
UVウォッチ機能(UV watch function)を用いてmAbピークを回収し、280nmでのUV測定によってmAbの濃度を求めた(吸光係数1.5)。全ての吸光度の検出は、分光光度計を使用して実施された(収量計算のための測定を含む)。
【0148】
HCP(宿主細胞タンパク質)分析用の試料は、各回の実施後に、10%保存緩衝液(0.2M NaH
2PO
4*H
2O(5.3%)、0.2M Na
2HPO
4*12H
2O(94.7%)、0.5% Tween20、1% BSA pH8)を直接試料に(例えば50μlの保存緩衝液を450μlの試料に)添加することによって調製した。HCP含有量は、市販の抗CHO抗体(Cygnus Technologies)およびGyrolab(Gyros AB、スウェーデン)ワークステーションを用いて測定した。
【0149】
結果は下の表10に示され、プロトタイプの成績が市販品と同じ範囲内であることを示す。フィード液中のHCP含有量は331000ppmであった。
【0150】
表10.実際のフィード液での評価の結果
【0151】
【表10】
【実施例9】
【0152】
上記の通り調製した、14.5mg/mlのリガンド(六量体、配列番号33)を含み、ビーズメジアン径(d50,v)が57.4μMであり、分子量110kDのデキストランのKdが0.72であり、乾燥重量が70.3mg/mlである、架橋アガロースビーズマトリックスのプロトタイプを、2つの実際のmAbフィード液(mAb1 2.4g/lおよびmAb2 4.9g/l)IgG1の溶出pH、生理学的pH、およびポリクローナルヒトIgGの試料(Gammanorm、Octapharma)について評価した。比較のために、市販品MabSelect SuRe(登録商標)LX(GE Healthcare Life Sciences)を使用した。樹脂をTricornカラム(GE Healthcare Life Sciences)にベッド高10cmまで詰めて、2mlのベッドボリュームを得、カラムが0.8〜1.5の区間内でピーク非対称を有することが示された。負荷した試料は、生理学的pHでIgG1 mAbsを含む清澄化したCHO細胞上清であり、実験条件は下の表11に記載される通りであった(CV=カラム体積、RT=滞留時間)。
【0153】
表11.溶出pHの評価の条件。
【0154】
【表11】
結果は下の表12に示され、特定の抗体と樹脂の組合せに応じていくつかの個々の変化を伴うが、抗体が基準と同様のpHレベルで溶出することを示す。
【0155】
表12.溶出pHの評価の結果
【0156】
【表12】
ポリクローナルIgGのpH勾配溶出から得られる画分も、Biacore SPR計測器(GE Healthcare Sciences)をCM5 Biacoreチップに固定化された4つの異なるIgGクラスに対する抗体とともに用いて、IgG1、IgG2およびIgG4の含有量について分析した。
【0157】
基準およびプロトタイプのポリクローナルIgGのクロマトグラムを
図7に示し、IgGクラス分析を
図8に示す。データは、3つ全てのクラスが同様の方法で両方の樹脂と結合すること、および第1のピークが主にIgG2を含み、IgG1およびIgG4は主に第2のピークで溶出することを示す。抗IgG3抗体はIgG4と交差反応したので、IgG3について信頼できる結果は得られなかった。IgG3は通常、プロテインAと結合しないか、ごく弱くしか結合しないことが公知である。
【実施例10】
【0158】
上記の通り調製した、12.6mg/mlのリガンド(四量体、配列番号20)を含み、ビーズメジアン径(d50,v)が84.9μmであり、分子量110kDのデキストランのKdが0.71であり、乾燥重量が62.2mg/mlである、架橋アガロースビーズマトリックスのプロトタイプを、市販品のMabSelect SuRe LXを基準として用いてアルカリ安定性に関して評価した。樹脂を10cmのベッド高まで詰めたTricorn5カラムを、3カラム体積の1M NaOHでフラッシした。それから、流れを240分間(15分/サイクルの通常のCIPサイクル16回に相当)停止させた後、3カラム体積のPBS緩衝液でNaOH溶液を洗い流した。次に、ポリクローナルIgG(Gammanorm、Octapharma)の動的結合容量を測定し、1M NaOHをもう1回注入してこのプロセスを繰り返した。動的容量は、1M NaOHによる各240分のインキュベーションサイクルの後に測定した。容量測定では、カラムをPBS緩衝液で平衡化し、その後に最大吸光度の85%のUVシグナルに達するまで2mg/mlの試料を負荷した(滞留時間6分)。次に、カラムをPBS緩衝液で洗浄し、500mM酢酸pH3.0で溶出し、再平衡化した。10%および80%貫流の動的結合容量を上記のように計算した。結果は
図9に示され、プロトタイプが市販品よりも大いに安定していたことを示す。
【実施例11】
【0159】
本発明による分離マトリックスを、2M NaOHを用いるCIPサイクルの繰り返しに対する許容量について試験した。本発明の例(Inv.Ex.)を、基準として市販品のMabSelect SuRe(MSS)と比較した。この調査は、GE HealthcareのAKTA4−カラム周期的向流(PCC)クロマトグラフィー設定を使用して50サイクル実施された。
【0160】
各カラムは、3.5ml/分の流れで10分間、20%エタノール+0.2M NaClの溶液を用いて詰められた。充填チューブおよびトップフィルタを除去し、アダプターをカラムの上部に設置した。3.5ml/分で10分間のさらなる充填流の後、アダプターをベッド面に寄せて調整した。MabSelect SuReの1.02mlと比較して、本発明の例の充填カラム体積V
cは1.04mlであった。
【0161】
次に、以下の条件を用いてPCC設定を動作させた:
【0162】
【表13】
結果は
図10に示され、そこで、各マトリックスの35%貫流の動的結合容量に対する負荷体積は、35%DBCに対するその負荷体積に対して正規化される。市販基準MabSelect SuRe(MSS)が、各サイクルでその免疫グロブリン結合容量の一部を失い、16サイクル後にはその最初の容量の80%未満が残ることが分かる。一方、本発明の例(Inv.Ex.)は、結合容量の損失はほとんどなく、750分の接触時間に相当する、2M NaOH中で50回のCIPサイクルの後に、その最初の結合容量の95%が残存することを示す。
【実施例12】
【0163】
1Mおよび2M NaOHに対するリガンド安定性を、共焦点顕微鏡を用いて、本発明による分離マトリックスについて調査した。本発明の例(Inv.Ex.)を、基準としての市販品のMabSelect SuRe LX(MSS LX)と比較した。調査は以下の通り実施した:
分離マトリックスの調製
分離マトリックスゲルをその保存溶液から洗浄して、遠心分離によって水を加え、1:1ゲルスラリーを得た。各ゲルについて、2mlの水中1:1スラリーを50mLのファルコンチューブに添加し、遠心し、デカントした。各チューブに19mlの1Mまたは2M NaOHを添加した(2種類の分離マトリックス
*2種類の[NaOH]濃度→合計4本のチューブ)。ゲルをHeidolphシェーカー(1300rpm)で振盪しながら室温でインキュベートした。ゲルスラリーの1500μlの試料を2、4、6、8、16、24および32時間のインキュベーションの後に取り、2mlエッペンドルフチューブ中で遠心分離によって洗浄した(13000rpm、エッペンドルフ遠心機)。洗浄工程は以下の通りであった:
2×1.8mL MQ水
1×1.8mL HAc緩衝液
2×1.8mL Tris緩衝液
2×1.8mL PBS緩衝液
最後のデカンテーションの後、75μlのPBS緩衝液でゲルを再懸濁して、約1:1 PBSゲルスラリーを得た。
【0164】
プレインキュベーション
NaOH中でインキュベートしていない各ゲルの試料、すなわち最初の1:1 ゲル水スラリーを交換して、1:1 PBSスラリーを得た。各ゲルスラリーの16μl試料を500μlのCy5−hIgG溶液(Cy5標識したヒト免疫グロブリンG)に添加し、錫箔で覆って、室温で週末に回転して混合した。
【0165】
顕微鏡設定
Leica SP8共焦点顕微鏡を調査に使用した。顕微鏡設定は、本発明の例を使用して決定し、飽和がどのゲルでも得られないことを確認するために、MSS LXを使用してチェックした。
【0166】
対物レンズ:63x/130 Glyc 21C(Leica)
レーザー:638nm
検出器PTMゲイン:629.6V
検出器オフセット:−0.8%
走査速度:400Hz
フレームサイズ:512×512ピクセル
フレーム平均:2
反応速度実験(時間の関数としてのゲルでのhIgGの吸着)
各々NaOHでインキュベートし、洗浄した、1:1 ゲルスラリー15μlの試料を500μlのCy5−hIgGに添加し、>300mg Ab/mlゲル未満の混合物を得た。これらの混合物を1300rpmのHeidolphシェーカーで室温でインキュベートした。所定の時間(5、10、15、30、60、90、120、180および240分)に、15μlの試料を取り出し、顕微鏡を用いて画像化した。共焦点画像を積分し、各ビーズの相対蛍光、Q
relを計算することによって吸着曲線を得た、式1を参照されたい。
【0167】
【数2】
(式1)
式中、r
outおよびr
inは、ビーズの蛍光領域の外側および内側の境界半径を示す(顕微鏡ソフトウェア、LAS−Xのラインツールを用いて決定)および
【0168】
【数3】
(式2)
式中、F
ringは、LAS−Xのサークルツールを用いて決定したビーズの蛍光領域の合計蛍光である。
【0169】
式1と2を組み合わせると式3が得られる:
【0170】
【数4】
(式3)。
【0171】
この手順は、A.Ljunglof、J.Thommes J.Chromatogr.A 813(1998)387−395に提示される研究から得られる。
【0172】
結果、分析および結論
1M NaOH中でのインキュベーション後の時間の関数として決定された分離マトリックスの相対蛍光Q
relを、
図11a(MabSelect SuRe LX)および11b(本発明の例)として示す。基準(アルカリ処置なし、すなわち0時間)と比較して、MSS LX(
図11a)は、その最初の結合容量の約50%を失い、1M NaOH中で16時間のインキュベーションの後に、より速く飽和に達することが分かる。1M NaOH中で32時間のインキュベーションの後、それはほぼ全てのIg結合容量を失った。対照的に、本発明の例の分離マトリックス(
図11b)は、1M NaOH中でのインキュベーションに安定していて、その最初の結合容量を1M NaOH中で32時間のインキュベーション後も実験変動内で維持する。
【0173】
2M NaOH中でのインキュベーション後の時間の関数として決定された分離マトリックスの相対蛍光Q
relを、
図12a(MabSelect SuRe LX)および12b(本発明の例)として示す。MSS LX(
図12a)の容量損失の速度は、2M NaOHでのインキュベーションによって加速されることが分かる。8時間のインキュベーションの後、Ig結合容量の約50%が失われ、2M NaOH中16時間のインキュベーションの後、ほぼ全てのIg結合容量が失われる。対照的に、本発明の例(
図12b)はアルカリに対して比較的安定していて、2M NaOH中16時間以下のインキュベーションの後にその最初の結合容量を少なくとも実験変動内で維持する。しかし、2M NaOH中で24時間以上のインキュベーションの後、本発明の例は結合容量を失うこと、そして32時間のインキュベーションの後に結合容量の約50%が失われたことが分かる。また、結合容量が失われるので、より速く飽和に達し、32時間インキュベートした試料で最も明白に分かる。
【0174】
これらの結果は、本発明の例の分離マトリックスが、MabSelect SuRe LXよりもはるかにアルカリ安定性が高く、大量輸送および結合容量にあまり影響を及ぼすことなく最大16時間の2M NaOHインキュベーションに耐えると思われることを実証する。
【実施例13】
【0175】
枯草菌胞子の不活性化を、本発明による様々な洗浄液を用いて調べた。胞子形成枯草菌(ATCC第6633)は、NaOH消毒に抵抗性のある微生物の1つであることが公知である。枯草菌のコロニーを様々な洗浄液(1M NaOH、2% BnOHを含む1M NaOH、および40% IPAを含む1M NaOH)でインキュベートし、様々な所定のインキュベーション時間でコロニー形成単位(CFU/ml)の数を求めた。
図13は、調査の結果を、インキュベーション時間および洗浄液の関数としてのCFU/mlとして示す。1M NaOHを単独で使用することは、24時間消毒した後でさえも、枯草菌を完全に不活性化するには不十分であることが分かる。2%ベンジルアルコールを洗浄液に添加しても、著しい改善は得られない。しかし、洗浄液として1M NaOHを40%イソプロピルアルコールとともに使用すると、4時間の処置後に検出可能なレベル以下まで枯草菌を減少させることができる。
[実施態様1]
多孔質支持体と共有結合した免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む分離マトリックスを洗浄および/または消毒する方法であって、前記方法が、
a)所望により、前記分離マトリックスを用いて第1の免疫グロブリンを含む混合物を精製する工程と;
b)少なくとも50体積%のアルカリ金属水酸化物水溶液を含む洗浄液を準備する工程と;
c)前記洗浄液と前記分離マトリックスを所定の接触時間の間、接触させることによって前記分離マトリックスを洗浄および/または消毒する工程と;
を含み、
前記アルカリ安定化プロテインAドメインは、配列番号51または配列番号52によって定義されるブドウ球菌プロテインA(SpA)の親Fc結合ドメインの変異体を含み、配列番号51または52の13位および44位のアミノ酸残基はアスパラギンであり、配列番号51または52の3位の少なくとも前記アスパラギン残基は、グルタミン酸、リジン、チロシン、トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、バリン、アラニン、ヒスチジンおよびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸、例えばグルタミン酸などに変異している、方法。
[実施態様2]
前記変異体が、配列番号51または52の1、2、7、10、15、20、21、24、25、28、29、32、34、35、36、39、42および43位の1以上においてさらなる変異を含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
配列番号51または52の1位の前記グルタミン残基がアラニンに変異している、実施態様1または2に記載の方法。
[実施態様4]
配列番号51または52の35位の前記アスパラギンまたはグルタミン酸残基がアラニンに変異している、実施態様1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様5]
前記免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体が、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体または九量体からなる群から選択されるホモ多量体である、実施態様1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様6]
前記免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体が、各々、前記多孔質支持体と共有結合するためのC末端システイン残基を含む、実施態様1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様7]
前記免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体が、チオエーテル結合によって前記多孔質支持体に結合されている、実施態様1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様8]
前記分離マトリックスが、少なくとも11mg/ml、例えば少なくとも15mg/ml、15〜21、17〜21または18〜20mg/mlなどの、前記多孔質支持体と共有結合した前記免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む、実施態様1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様9]
前記多孔質支持体が高度に架橋されたアガロースビーズである、実施態様1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様10]
前記アルカリ金属水酸化物水溶液が、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液またはその混合物、好ましくは水酸化ナトリウム溶液である、実施態様1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様11]
前記アルカリ金属水酸化物水溶液が、500mM〜5M、例えば1M〜2Mなどのモル濃度を有する、実施態様1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様12]
前記洗浄液が、C
2−C
7アルコール、例えばエタノール、イソプロパノールまたはベンジルアルコールなどをさらに含む、実施態様1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様13]
前記洗浄液が、少なくとも70体積%のアルカリ金属水酸化物水溶液、例えば少なくとも90体積%のアルカリ金属水酸化物水溶液、好ましくは少なくとも99体積%のアルカリ金属水酸化物水溶液を含む、実施態様1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様14]
前記所定の接触時間が、前記分離マトリックスにおけるエンドトキシン濃度および/または微生物濃度の6−log
10の減少をもたらすために十分な時間である、実施態様1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様15]
前記所定の接触時間が、10分〜50時間、例えば30分〜24時間、または例えば1時間〜12時間である、実施態様1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様16]
工程a)〜c)が少なくとも10回、例えば少なくとも50回または50〜200回繰り返される、実施態様1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様17]
多孔質支持体と共有結合した免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む分離マトリックスによる免疫グロブリンの精製においてキャリーオーバーを防ぐ方法であって、前記アルカリ安定化プロテインAドメインは配列番号51または配列番号52によって定義されるブドウ球菌プロテインA(SpA)の親Fc結合ドメインの変異体を含み、配列番号51または52の13位および44位のアミノ酸残基はアスパラギンであり、配列番号51または52の3位の少なくとも前記アスパラギン残基はグルタミン酸、リジン、チロシン、トレオニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、メチオニン、バリン、アラニン、ヒスチジンおよびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸に変異していて;前記方法が:
実施態様1乃至15のいずれか1項に記載の分離マトリックスを洗浄および/または消毒する前記方法の前記工程a)〜c)を実施することにより、第1の免疫グロブリンを精製する工程ならびに前記分離マトリックスを洗浄および消毒する工程を含み;さらに、
d)前記分離マトリックスを用いて第2の免疫グロブリンを含む混合物を精製する工程であって、前記第2の免疫グロブリンが前記第1の免疫グロブリンとは異なる工程を含む、方法。
[実施態様18]
前記分離マトリックスが、工程c)の後にその最初の動的結合容量の少なくとも80%、例えばその最初の動的結合容量の少なくとも90%などを保持する、実施態様1乃至17のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様19]
多孔質支持体と共有結合した免疫グロブリン結合アルカリ安定化プロテインAドメインの多量体を含む分離マトリックスの前記消毒のための、少なくとも70体積%のアルカリ金属水酸化物水溶液を含む洗浄液の使用。