特許第6987433号(P6987433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987433
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】乾燥食品製造システム
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/08 20060101AFI20211220BHJP
   A23B 7/02 20060101ALI20211220BHJP
   F26B 9/06 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   A23N12/08 Z
   A23B7/02
   F26B9/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-119467(P2017-119467)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-67(P2019-67A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504399200
【氏名又は名称】道本食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174791
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 敬義
(72)【発明者】
【氏名】道本 英之
(72)【発明者】
【氏名】道本 泰久
(72)【発明者】
【氏名】濱田 良一
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−101861(JP,A)
【文献】 特開2011−217628(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1544979(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/
A23N 12/
F26B 9/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の受入れを行う受入部と,
前記原料を浄水によって洗浄する洗浄部と,
洗浄後の前記原料をスライスするスライス部と,
スライス後のスライス原料を乾燥する乾燥部と,
乾燥後の乾燥原料の製品化を行う製品化部と,を備えた乾燥食品製造システムであって
前記受入部ならびに洗浄部と,前記スライス部と乾燥部と製品化部とは,区別された空間に配置されているとともに,
前記スライス部と乾燥部と製品化部は,
各部が配置されるそれぞれの空間において,外部との接続が,人の出入りのための扉,
原料の受け入れ又は送り出しのための扉ないし送出口,ダクト,これらのいずれかに
限定されており,かつ,
空間内部において使用される金属がステンレス鋼に限定されており,
前記洗浄部は,
洗浄装置と,前記原料を受入部から受け入れるための受入扉と,洗浄後の原料をスライ
ス部へと送り出すための送出口と,を備え,
前記スライス部は,
スライス装置と,前記スライス原料を乾燥部へと移動させるための第一移動扉と,を備え,
前記乾燥部は,
乾燥装置と,前記乾燥原料を製品化部へと移動させるための第二移動扉と,を備え,
前記乾燥装置が,
乾燥室と,
前記乾燥室の開閉を行う開閉扉と,
前記乾燥室内に設けられ,前記スライス原料が静置されたステンレス製枠状部材を
上下方向に複数設置することが可能であって,底部に回転ローラを備えることにより
,乾燥室とスライス部との移動が可能なステンレス製枠状部材用台と,
前記乾燥室の内部の温度ないし湿度の設定・表示を行う設定表示部と,
前記設定表示部のデータを送受信するデータ通信部と,
前記設定表示部におけるデータを送受信することにより,温湿度の設定ないしモニタ
ーが可能な外部管理端末と,から構成されており,
さらに,複数のステンレス製枠状部材用台が,乾燥室の片側もしくは両側に,動線を
確保した状態で配置され,
前記製品化部は,計量装置と,包装装置と,品質検査装置と,を備え,
前記品質検査装置として金属探知機と,X線異物検査装置と,含水量測定装置と,を
備え,
受入部,洗浄部,スライス部,乾燥部,製品化部の順に,原料の送り出しがなされるとともに,インターネットを通じて温湿度の設定ならびにモニターが可能なことを特徴とする乾燥食品製造システム。
【請求項2】
前記乾燥装置において,40から60度で18から25時間維持することにより,前記スライス原料の乾燥を行う請求項1に記載の乾燥食品製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,乾燥食品製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
切り干し大根をはじめとして,天日干しを行い乾燥させた野菜(以下,「天日干し食品」と略する)は,天日によって生じる独特な風味と保存性に優れる点において,有用な食品である。
しかるに,天日干し食品には,天日干しによって生じる,避けがたい,いくつかの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−169688号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JA宮崎中央主催webページ,[online],[平成29年5月8日検索],インターネット〈URL:http://shop.ja-direct.net/magazine/83/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つ目は,衛生管理の問題である。
すなわち,切り干し大根を例に挙げると,畑付近で利用できる用水路から供給された水(以下,「農業用水」)で大根が洗浄された後,機械により,切り出しが行われる(非特許文献1)。
この農業用水自体,川などから引かれた水であり,いわゆる浄水ではない。そのため,農業用水そのものが,安全性が十分に担保されたものとは必ずしもいえず,その品質管理すらほとんど行われていないのが現状である。
また,切り出しについては,通常,畑で行われるため,土や火山灰,PM2.5など,空中浮遊物が存在しうる中での作業となってしまい,切り出しされた野菜への空中浮遊物の付着を完全に防ぐことは不可能である。
これら一連の作業の後,天日干しが行われるが,この場合も,畑で行われるのが通常であるため,前述の空中浮遊物に加え,鳥の糞や葉っぱなどの飛散物が付着することもしばしばである(例えば,図9B)。
【0006】
二つ目は,安定生産が難しいという問題である。
天日干しの場合,空気が乾燥し風が強い時期(冬)に行われ,この時期にのみ生産しているのが現状であるため,年間を通じた安定的な生産は実質的に不可能である。
【0007】
三つ目は,安定的な品質担保が困難であるという問題である。
例えば,雨が予測される場合は早めに干すのをやめて収穫せざるをえないなど,天日干しの時間にばらつきが生じたり,日照時間,湿度,風などにも違いが出てきたりする。結果として,乾燥具合にばらつきが出てしまい,均一な品質を担保することは極めて困難である。
また,これらの結果として,切り干し大根は,その色がまちまちとなりがちであり,色を均一にする技術の開発が行われている(特許文献1,特許文献2)
【0008】
近年,食品に対する安全性や品質担保の要求度が高くなり,HACCAPに準じる安全性確保の手法が要求されているものの,天日干し食品は,これを満たすことは実質的に不可能である。
さらにいうと,天日干し食品は,その製造過程における温湿度などの条件やどのような環境でどのような資材を用いて製造されたかのトレースも十分にはできないため,この点からも,現在の品質担保基準から問題を抱えるものである。
上記事情を背景として,本発明では,天日干し食品に相当する,現在の品質基準を満たしうる乾燥食品製造システムの開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは,鋭意研究の結果,原料のスライスから包装まで,一連の作業を準閉鎖空間内で行うとともに,工程管理を可能とするシステムに想到し,発明を完成させたものである。
【0010】
本発明は,以下の構成からなる。
本発明の第一の構成は,原料の受入れを行う受入部と,
前記原料を浄水によって洗浄する洗浄部と,
洗浄後の前記原料をスライスするスライス部と,
スライス後のスライス原料を乾燥する乾燥部と,
乾燥後の乾燥原料の製品化を行う製品化部と,を備え,
前記スライス部,乾燥部,製品化部が準閉鎖空間として構成され,
前記各部に順じて原料の送出しが行われる乾燥食品製造システムであって,
前記洗浄部は,
洗浄装置と,前記原料を受け入れるための受入扉と,洗浄後の原料を送り出すための送出口と,を備え,
前記スライス部は,
スライス装置と,前記スライス原料を移動させるための第一移動扉と,を備え,
前記乾燥部は,
乾燥装置と,前記乾燥原料を移動させるための第二移動扉と,を備え,
前記製品化部は,
計量装置と,包装装置と,品質検査装置と,を備えることを特徴とする乾燥食品製造システムである。
【0011】
本発明の第二の構成は,前記品質検査装置が,金属探知機,X線異物検査装置,含水量測定装置のいずれか又は複数を含むことを特徴とする第一の構成に記載の乾燥食品製造システムである。
本発明の第三の構成は,前記乾燥装置が,
乾燥室と,
前記乾燥室の開閉を行う開閉扉と,
前記乾燥室内に設けられ,前記スライス原料が静置された枠状部材を上下方向に複数設置することが可能な乾燥内腔部と,
前記乾燥室の内部の温度ないし湿度の設定・表示を行う設定表示部と,を備えることを特徴とする第一又は第二の構成に記載の乾燥食品製造システムである。
本発明の第四の構成は,前記乾燥装置が,前記設定表示部のデータを送受信するデータ通信部をさらに備えるとともに,前記設定表示部におけるデータを送受信することにより,温湿度の設定ないしモニターが可能な外部管理端末を備えることを特徴とする第三の構成に記載の乾燥食品製造システムである。
本発明の第五の構成は,前記乾燥装置において,40から60度で18から25時間維持することにより,前記スライス原料の乾燥を行うことを特徴とする第三又は第四の構成に記載の乾燥食品製造システムである。
【0012】
本発明の第六の構成は,前記準閉鎖空間内において用いられる金属がステンレス鋼であることを特徴とする第一から第五の構成に記載の乾燥食品製造システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により,天日干し食品に相当する,現在の品質基準を満たしうる乾燥食品製造システムの提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態の乾燥食品製造システムを用いた工場の概要を示す図
図2】本発明の一実施の形態の乾燥食品製造システムにおけるデータ通信の概要を示す図
図3】本発明の実施例の洗浄部における図
図4】本発明の実施例のスライス部における図
図5】本発明の実施例の乾燥部における図
図6】本発明の実施例の製品化部における図
図7】本発明の実施例の乾燥部におけるモニターの様子と条件画面の例を示す図
図8】本発明の実施例における,作業を行う前の作業者の様子を示す図
図9】本発明の実施例における,製造された乾燥食品と天日干し食品の外観を比較した様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,好適な実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し,下記の実施の形態は本発明を具現化した例に過ぎず,本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
<<I.乾燥食品製造システムの概要>>
本発明の乾燥食品製造システムは,受入部,洗浄部,スライス部,乾燥部,製品化部を必須の構成要素とし,これら各部に順じて原料の送出しが一方向で行われる。すなわち,原料は,原料としての清浄性がより高まるもしくは損なわれない方向に進み,製品として最終化されるものである。
【0017】
本発明の乾燥食品製造システムにおいては,受入部と洗浄部を除く各部が,準閉鎖空間として構成されている。本発明において,準閉鎖空間とは,人やモノの移動を行うための扉やダクトなどで外部との接触が最小限に抑えられている,密閉性の十分高い空間として定義される。
また,前記準閉鎖空間内において,装置などに用いられる金属はステンレス鋼であることが好ましい。かかる好ましい構成によれば,作業等によって金属片が生じるリスクを極めて少なくすることが可能となり,金属混入による不良品の発生をほぼ防ぐことができる。
【0018】
受入部は,原料の受入れを行う機能を果たす。受入部は,かかる機能を果たす限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものとすることができる。
受入部は,典型的には,原料を運んでくるトラックなどからの積み卸ろしが行いやすくなるよう,一定程度の高さを有するプラットホーム状の解放空間とすればよい。
なお,作業を行う際は,通常の作業着で行えばよい。
【0019】
洗浄部は,受入部に受け入れられた原料を,浄水ないしは薬液によって洗浄を行う機能を果たす。受け入れられる原料は一定程度の重量と大きさを有することから,洗浄部は,原料を受け入れるための扉(受入扉)を有する必要がある。また,洗浄後の原料は準閉鎖空間であるスライス部へ送出口を通じてそのまま送り出されるため,洗浄部は,一定程度の清浄性を確保する必要がある。洗浄部は,かかる機能や受入扉および送出口を備える限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものとすることができる。
洗浄部は,典型的には,原料受入のための受入扉を有するとともに,内部に,浄水を供給するための水道と,洗浄装置とを備えた構成とすればよい。また,洗浄部は,原料を洗浄した後,当該原料をそのままベルトコンベアなどで続くスライス部に移動させることを可能にする送出口を備えた構成とすればよい。
なお,作業を行う際は,防塵服を着用する必要は必ずしもなく,一定程度の清浄性が保たれた作業着を着用すればよい。
【0020】
スライス部は,洗浄後の原料をスライスする機能を果たす。また,スライス部は,スライス後のスライス原料を,一定程度蓄積した後,続く乾燥部に移動させることから,そのための第一移動扉を備える必要がある。スライス部は,かかる機能ならびに第一移動扉を備える限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものとすることができる。
スライス部は,典型的には,準閉鎖空間内に,スライス装置と,スライス後のスライス原料を蓄積・移動させるための各種備品とを備えた構成とすればよい。スライス後のスライス原料については,例えば,枠状部材(通称,「エビラ」,図5l)に静置し,エビラを複数載せることが可能な台(図4f)に載せ,台ごと,スライス原料を乾燥部に移動させればよい。
なお,作業を行う際,スライス部は準閉鎖空間であるため,防塵服を着用して作業を行う必要がある。
【0021】
乾燥部は,スライス原料を乾燥させる役割を果たす。また,乾燥が完了した後の乾燥原料を,続く製品化部へ移動させる必要があるため,そのための第二移動扉を備える必要がある。乾燥部は,かかる機能ならびに第二移動扉を備える限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものとすることができる。
乾燥部は,典型的には,準閉鎖空間内に,乾燥装置を備えた構成とすればよい。乾燥装置は,乾燥部の片側もしくは両側に配置する構成とすることが好ましい。かかる好ましい構成によれば,作業を行うスペースならびに動線の確保が可能となる。
なお,作業を行う際,乾燥部は準閉鎖空間であるため,防塵服を着用して作業を行う必要がある。
【0022】
乾燥装置は,乾燥室と,乾燥室の開閉を行う開閉扉と,乾燥室内に設けられ,スライス原料が静置された枠状部材を上下方向に複数設置することが可能な乾燥内腔部と,乾燥室の内部の温度ないし湿度の設定・表示を行う設定表示部とを備えることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば,スライス原料の効率的な乾燥ならびに管理が可能となり,本発明の乾燥食品製造システムの性能を向上させることができる。すなわち,かかる好ましい構成によれば,例えば,乾燥食品の乾燥度が行き過ぎた場合,新たにスライス原料を乾燥装置の乾燥内腔部の最下段に設置し,乾燥内腔部の空気を内部循環させることにより,乾燥食品の乾燥度を緩和して,目的の乾燥度に適合させるなどが可能となる。
【0023】
また,乾燥装置は,設定表示部のデータを送受信するデータ通信部をさらに備えるとともに,前記設定表示部におけるデータを送受信することにより,温湿度の設定ないしモニターが可能な外部管理端末を備えることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば,乾燥装置を,内部のみならず,外部からモニター・管理することが可能となり,本発明の乾燥食品製造システムの,より効率的な管理・運用が可能となる。
このような構成としては,例えば,図2に示すような構成が挙げられる。すなわち,乾燥装置を含む本発明の乾燥食品製造システムが工場として構成されており,これを,インターネット回線を通じて,外部の管理端末により,モニター・管理する構成である。これにより,食品製造工程を事後的にトレースすることや,不具合の発生を早期に発見することが可能となる。
【0024】
乾燥装置は,対象となる原料や製造時期を考慮し,適宜,温度等の設定を変更することができるが,典型的には,40から60度で18から25時間を目安に維持することなどにより,スライス原料の乾燥を行えばよい。
本発明において,原料として大根を用いる場合,温度を55度以下にすることが好ましい。すなわち,乾燥における55度の温度は,製造された大根乾燥食品の変色にかかる臨界的意義を有する温度であり,55度以下とすることにより,大根乾燥食品の変色を防止することができ,品質の安定化ならびに向上を図ることが可能となるという効果を有する。この場合,温度を40から55度ないし50から55度で,18から20時間を目安に乾燥を行えばよい。
【0025】
製品化部は,乾燥後の乾燥原料の製品化を行う機能を果たす。製品化部は,乾燥原料の製品化が可能である限り,特に限定されるものではなく,種々の構成のものとすることができる。すなわち,製品化部は,最終的な乾燥製品の仕様に応じて,その構成・態様を適宜変更することができる。
製品化部は,例えば,最終的な乾燥製品を袋詰め乾燥食品とする場合,乾燥原料の計量装置,前記乾燥原料の包装装置,包装後の乾燥食品の品質検査装置を備える仕様とすればよい。
また,品質検査については,金属探知,X線異物検査,含水量測定のいずれか又は複数を行うことができるが,これらに限定されるものではない。製品の仕様や取引先の要求に応じて,他の項目を追加することもできる。
なお,作業を行う際,製品化部は準閉鎖空間であるため,防塵服を着用する必要がある。
【0026】
製品化部は,各種検査を行った後の製品を送り出すための第二送出口を備えることができる。これにより,準閉鎖空間である製品化部から,非準閉鎖空間に送り出すことで,出荷を行うための作業を行うことができる。すなわち,箱詰めを行うための箱詰部,出荷や荷積みを行うための出荷部を備えることができる。
【0027】
本発明の乾燥食品製造システムは,上記一連の構成を備えることで,現在の品質基準を担保した乾燥食品を製造することを可能とするものである。
用いられる原料については,一連の構成に適応可能な限り特に限定する必要はないが,好適には野菜を原料として用いることができ,さらに好適な野菜原料として,大根,さつまいも,ごぼう,にんじんなどを用いることができる。
【0028】
<<II.実施の形態>>
図1に,本発明の一実施の形態の乾燥食品製造システムを用いた工場の概要を示す。また,図2に,当該乾燥食品製造システムにおけるデータ通信の概要を示す。
【0029】
[原料受入]
図1に示すように,原料の受入れは,受入部1において行われる。受入部1は,一定程度の高さを有するプラットホーム状の解放空間であり,トラックなどに積まれた乾燥野菜の原料となる生大根などを受け入れることができるようにされている。
【0030】
[原料洗浄]
原料の洗浄は,洗浄部2において行われる。受入が完了した原料は,受入扉2aを通して洗浄部2への受け渡しがなされ,浄水もしくは薬剤を含んだ薬液によって当該原料の洗浄が行われる。また,洗浄は,洗浄装置2bによって行われ,洗浄後の原料は,ベルトコンベアなどで,送出口2cを通じて,準閉鎖空間であるスライス部3に送り出される構成となっている。
【0031】
[原料スライス]
洗浄後の原料のスライスは,スライス部3において行われる。スライス部3では,送り出された原料のスライスがスライス装置3aによって行われる。スライス後のスライス原料は,枠状部材(網状の箱,エビラ)に分散して載せられ,一定数蓄積された後,専用の移動装置により,第一移動扉3bを通じて,同じく準閉鎖空間である乾燥部4に移動される。
【0032】
[スライス原料乾燥]
スライス後のスライス原料の乾燥は,乾燥部4において行われる。乾燥部4には,部屋の両側にそれぞれ5台,計10台の乾燥装置4aが配列され,これにより,作業を行うスペースならびに動線の確保がなされている。そして,乾燥装置4aの乾燥室内の乾燥内腔部に,スライス原料が静置された枠状部材を上下方向に複数設置して,開閉扉を閉めることにより,スライス原料の乾燥が行われる。
乾燥室内の温度ならびに湿度はすべてモニターされており,乾燥室内の湿度が一定値に達することにより,乾燥が完了したことを確認することが可能となる。乾燥が完了した後の乾燥原料は,第二移動扉4bを通じて,同じく準閉鎖空間である製品化部5に移動される。
乾燥装置4aは,乾燥室の内部の温度ないし湿度の設定・表示を行う設定表示部4cをさらに備えている。また,乾燥装置4aは,設定表示部4cのデータを送受信するデータ通信部4dを備えており,本実施の形態の乾燥食品製造システムは,図2に示すように,設定表示部4cにおけるデータを送受信することにおより,温湿度の設定ないしモニターが可能なタブレット端末6a,汎用コンピュータ6b等の外部管理端末を備えている。そして,これにより,乾燥室の内部の温度や湿度のデータは,インターネット回線を通じて外部管理端末に保存されるとともに,共有されている。
【0033】
[乾燥原料計量,包装,品質検査]
乾燥後の乾燥原料の一連の処理(製品化)は,製品化部5において行われる。製品化部5には,計量装置(不図示),包装装置5a,金属探知機5b,X線異物検査装置5cが配列されている。そして,各種検査が行われた後の製品は,ベルトコンベアなどで,第二送出口5dを通じて,非準閉鎖空間である箱詰部7に送り出される構成となっている。
なお,箱詰部7に隣接して,一定程度の高さを有する出荷部8が設けられており,トラックなどに乾燥野菜などの製品を積み込むことができるようにされている。
【実施例】
【0034】
以下,実施例を用いて,本発明の乾燥食品製造システム等について詳細に説明する。ただし,本発明を当該実施例に限定して解釈すべきでないことは言うまでもない。
【0035】
<<I.乾燥食品製造システムを用いた工場の様子>>
乾燥食品製造システムを用いた工場の様子について,図3から図8を参照しながら説明する。ここでは,大根を原料とした乾燥食品を製造する様子を示している。
【0036】
1.図3は,洗浄部における図である。図3aは受け入れられた原料である生大根の様子を,図3bは洗浄装置の様子をそれぞれ示している。
(1) 図3aに示す生大根は,農家によって持ち込まれたものである。通常,この状態の生大根は,皮が剥かれており,農業用水によって一次洗浄された状態にある。すなわち,未だ土などの付着物が完全に洗浄されている状態とは言えないものである。
(2) この生大根について,図3bに示す洗浄装置を用いて浄水による洗浄が行われる。この場合,必要に応じて,薬液を用いた洗浄によって殺菌が行われる。
【0037】
2.図4は,スライス部における図である。図4cは洗浄後の送り出し先の様子を,図4dはスライス作業の様子を,図4eはスライス装置を,図4fは台の様子を,図4gは乾燥部に通じる第一移動扉の様子をそれぞれ示している。
(1) 洗浄装置の先は,洗浄部に設けられた送出口に連結されており,かかる送り出し先から,洗浄された生大根が,図4cに示すプラスチックタンクに送り出される。
(2) なお,図4cでは,作業が行われていない状態を示しているが,作業を行う際は,図4dに示すように,プラスチックタンクの底に網を張るとともに,浄水を満たした状態で,洗浄された生大根の送出しが行われる。
(3) プラスチックタンクに送り出された生大根原料は,図4dに示すように,作業者によってスライス装置にかけられて,スライスが行われる。すなわち,生大根原料は,スライス装置の筒状部分に入れられて,スライスが行われ,ベルトコンベアによって送り出されていく。
(4) スライスされたスライス原料は,網状の箱(枠状部材,通称「エビラ」。例えば,図5lを参照)に静置される。エビラ1枚に対して,およそ10kgのスライス原料が静置される。
(5) 図4fは,エビラを載せるための台である。この台は,エビラを前後上下に複数載せることができる構造となっており,さらに,底部に回転ローラを備えているため,容易に移動させることができる。
(6) 台の全部の段が,エビラで満たされた後,台ごとスライス部から乾燥部に図4gに示す第一移動扉を通って移動させ,その後の作業が行われる。
【0038】
3.図5は,乾燥部における図である。図5hは乾燥装置が配列されている様子を,図5iは乾燥装置の外観を,図5j,図5kは乾燥室の内部の様子をそれぞれ示している。
(1) 乾燥装置は,図5hに示すように,乾燥部の壁側に配置されている。また,それぞれの乾燥装置の扉前部には,図5iに示すようなモニター(設定表示部)が備えられ,乾燥条件の設定やモニタリングができるようになっている。
(2) 図5j,図5kに示すように,乾燥室の内部には,乾燥内腔部が備えられ,開閉扉を開けることにより,エビラを設置できるようになっている。
(3) 乾燥後は,図5lに示すように,水分含量が極端に低下した影響で,スライス原料は,干からびた外観となっており,その重量は,約10kgから700g程度にまで減少する。
【0039】
4.図6は,製品化部における図である。図6mは乾燥部からの受渡部(第二移動扉)の様子を,図6nは包装装置の様子を,図6oは包装作業の様子を,図6pは金属探知機の様子を,図6qは検査終了後の製品が搬出される様子をそれぞれ示している。
(1) 乾燥スライス原料は,図6mに示す受渡部(第二移動扉)を通じて製品化部に送られる。
(2) 乾燥スライス原料は,図6nに示す包装装置により,脱気を行いながら袋詰めされる。この際,作業者により,混入物が無いかの目視検査が合わせて行われる。
(3) 袋詰めされた製品は,金属探知機(図6p)やX線異物検査装置により,内部に金属片の混入がないかどうか検査される。
(4) 検査によって異常がないことが確認された袋詰製品は,図6qに示すように,受渡部(第二移動扉)を通じて箱詰部に送り出される。送り出された袋詰製品は,箱詰めされて出荷される。
【0040】
5.図7r,図7sは,乾燥部に設けられたモニターの様子を示している。
(1) モニターでは,乾燥部に配列された10台の乾燥装置の管理・モニターを行うことができる。
(2) 図7rでは,乾燥装置の選択画面が表示されており,図7sでは,選択された乾燥装置の条件をモニターする画面が表示されている。
(3) なお,これらのデータは,図2に例示するように,インターネット回線を通じて,管理サーバーと双方向に通信可能であり,全ての管理データやモニターデータの共有が可能である。
【0041】
6.図7tから図7vは,乾燥装置の乾燥を行う際の条件画面の例を示している。
(1) 図7tは,温度設定に関するプログラムであり,最初の工程で温度を55℃まで昇温させ,19時間かけて水分を10±2%にするという設定である。
(2) 図7uは,外気を取り入れるためのダンパの開閉度合いの設定である。
(3) 図7vは,通常運転時における画面表示である。
【0042】
7.図8は,作業を行う前の作業者の様子を示している。
(1) 図8wに示すように,作業者は,入退室を行う際に記名することとなっており,これにより,誰がいつどのような経緯で作業エリアに入退室を行ったのか,また,誰が作業を行ったかの管理が可能となる。
(2) 図8x,図8yに示すように,作業者は,防塵服に着替えた後,肘から先を入念に洗浄するとともに,アルコールによる消毒を行う。
(3) 図8zに示すように,作業エリアに入る際は,エアシャワーにより,全身を洗浄した後,作業エリアに入る。
【0043】
<<II.本発明の乾燥食品と天日干し食品との比較>>
1.本発明の乾燥食品は,下記の条件によって製造を行った。
(1) 乾燥室内を,常温から1時間かけて55度まで昇温し,その後5時間維持する。
(2) 温度を55度から50度まで下げ,その後10時間維持する。
(3) 温度を50度から5度まで下げ,その後3時間維持する。
【0044】
2.図9に,製造された乾燥食品と天日干し食品の外観を比較した様子を示す。
(1) 本発明の乾燥食品は,全体的に白色の外観を有し(図9A),また,これを水で戻した後の戻し液には,何らの懸濁もなかった(図9C)。
(2) 一方,天日干し食品は,全体的に茶色がかった外観を有し,植物片と思われるものが混ざっていた(図9B)。さらに,これを水で戻した後の戻し液には,懸濁が見られ,かつ,外観では判別できないような粒子が混ざっていることが分かった(図9D)。
3.これらの結果から,本発明の乾燥食品においては,天日干し食品と比較して,粒状物質等の混入は一切ないかもしくは極めて少なく,清浄かつ安定した品質の製品として作製可能であることが分かった。
【符号の説明】
【0045】
1 受入部
2 洗浄部
2a 受入扉
2b 洗浄装置
2c 送出口
3 スライス部
3a スライス装置
3b 第一移動扉
4 乾燥部
4a 乾燥装置
4b 第二移動扉
4c 設定表示部
4d データ通信部
5 製品化部
5a 包装装置
5b 金属探知機
5c X線異物検査装置
5d 第二送出口
6a タブレット端末
6b 汎用コンピュータ
7 箱詰部
8 出荷部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9