(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987455
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】建設機械及び建設機械の組立方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20211220BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20211220BHJP
B66C 23/82 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
B66C23/26 C
E02F9/00 A
B66C23/82 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-15071(P2018-15071)
(22)【出願日】2018年1月31日
(65)【公開番号】特開2019-131364(P2019-131364A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2020年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】武藤 啓志
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−278368(JP,A)
【文献】
特開平09−067087(JP,A)
【文献】
特開2013−023969(JP,A)
【文献】
特開2009−002018(JP,A)
【文献】
特開2000−198672(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0175039(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第109592571(CN,A)
【文献】
中国実用新案第206156637(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 − 23/94
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端が上部旋回体の前部側に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の前脚と、上端が前記前脚の上端部に回動可能に装着されるとともに、下端が前記上部旋回体の後部側に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の後脚とを備えたガントリを上部旋回体に着脱可能に設けた建設機械において、前記ガントリは、上端部が前記前脚の後面に設けられた前脚側連結腕に連結されるとともに、下端部が前記後脚の前面に設けられた後脚側連結腕に連結されることにより、前記前脚と前記後脚とがなす相対角度をあらかじめ設定された角度に保持する後脚吊下げリンクを有し、該後脚吊下げリンクは、前記相対角度を保持した状態で、前記前脚側連結腕と前記後脚吊下げリンクとの重合部にそれぞれ設けられた前脚側ピン挿通孔に前脚側連結ピンを挿通することにより、前記後脚吊下げリンクの上端部が前記前脚側連結ピンを介して前記前脚に連結され、前記後脚側連結腕と前記後脚吊下げリンクとの重合部にそれぞれ設けられた後脚側ピン挿通孔に後脚側連結ピンを挿通することにより、前記後脚吊下げリンクの下端部が前記後脚側連結ピンを介して前記後脚に連結され、前記前脚側ピン挿通孔及び前記後脚側ピン挿通孔の少なくとも一方が、前記ガントリを前記上部旋回体に装着するときに、前記相対角度を調節可能な長孔に形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記前脚の後面及び前記後脚の前面に、前記前脚側連結ピンあるいは前記後脚側連結ピンを前記長孔に沿って移動させるための位置調節治具が取り付けられる取付腕がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
下端が上部旋回体の前部側に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の前脚と、上端が前記前脚の上端部に回動可能に装着されるとともに、下端が前記上部旋回体の後部側に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の後脚とを備えたガントリを上部旋回体に着脱可能に設けた建設機械の組立方法において、前記ガントリは、上端部が前記前脚の後面に設けられた前脚側連結腕に連結されるとともに、下端部が前記後脚の前面に設けられた後脚側連結腕に連結されることにより、前記前脚と前記後脚とがなす相対角度をあらかじめ設定された角度に保持する後脚吊下げリンクを有し、該後脚吊下げリンクは、前記相対角度を保持した状態で、前記前脚側連結腕と前記後脚吊下げリンクとの重合部にそれぞれ設けられた前脚側ピン挿通孔に前脚側連結ピンを挿通することにより、前記後脚吊下げリンクの上端部が前記前脚側連結ピンを介して前記前脚に連結され、前記後脚側連結腕と前記後脚吊下げリンクとの重合部にそれぞれ設けられた後脚側ピン挿通孔に後脚側連結ピンを挿通することにより、前記後脚吊下げリンクの下端部が前記後脚側連結ピンを介して前記後脚に連結され、前記前脚側ピン挿通孔及び前記後脚側ピン挿通孔の少なくとも一方が、前記ガントリを前記上部旋回体に装着するときに、前記相対角度を調節可能な長孔に形成され、前記ガントリを前記上部旋回体に装着する際に、前記相対角度を保持して前記ガントリを吊り上げる段階と、前記前脚を前記上部旋回体に連結する段階と、前記前脚に対して前記後脚を吊り上げて前記相対角度を調節する段階と、前記後脚を前記上部旋回体に連結する段階とを順に行うことを特徴とする建設機械の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、上部旋回体に起伏可能なガントリを備えた建設機械及びガントリの上部旋回体への装着を容易にする建設機械の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンや杭打機などの建設機械では、上部旋回体の後部に設けたウインチから巻き出されるワイヤーを、上部旋回体の後部に設けたガントリを介して上部旋回体の前部に起伏可能に設けたブームやリーダなどに接続するようにしている。ガントリとしては、上部旋回体に回動可能に装着された前脚と、該前脚の上端部と上部旋回体との間に回動可能かつ伸縮可能に形成された後脚とを組み合わせ、後脚を伸長させたときにガントリが起立状態(作業状態)になり、後脚を縮小させたときにガントリが倒伏状態(収納状態)になるように形成されている。
【0003】
このようなガントリを備えた建設機械を輸送する際には、ガントリを上部旋回体から分離して別々に輸送することが行われている。このため、現場でガントリを装着する際に、ガントリの前脚と後脚とを開き止めのリンクを介して互いに固定することにより、クレーンで吊り上げた状態であっても、前脚及び後脚のピン挿通孔と、これらに対応した上部旋回体のピン挿通孔との位置合わせを安定して行うことができるガントリの支持構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−278368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のガントリ支持構造は、リンクにより前脚と後脚との相対的な回動が規制されているため、吊り上げられたガントリの前脚及び後脚のいずれか一方を上部旋回体に連結すると、他方は、ピン挿通孔の位置合わせをクレーンの操作により上下方向に回動させて調節する他なく、ガントリの各可動部が持っているガタなどの影響を受けてピン挿通孔の位置が合致しないといった課題があった。しかし、特許文献1に記載されたものには、ピン挿通孔を効率良く位置合わせすることについては何ら記載がされていない。
【0006】
そこで本発明は、簡単な構造で上部旋回体への装着を容易に行うことができるガントリを備えた建設機械及び建設機械の組立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、下端が上部旋回体の前部側に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の前脚と、上端が前記前脚の上端部に回動可能に装着されるとともに、下端が前記上部旋回体の後部側に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の後脚とを備えたガントリを上部旋回体に着脱可能に設けた建設機械において、前記ガントリは、上端部が前記前脚の後面に設けられた前脚側連結腕に連結されるとともに、下端部が前記後脚の前面に設けられた後脚側連結腕に連結されることにより、前記前脚と前記後脚とがなす相対角度をあらかじめ設定された角度に保持する後脚吊下げリンクを有し、該後脚吊下げリンクは、前記相対角度を保持した状態で、前記前脚側連結腕と前記後脚吊下げリンクとの重合部にそれぞれ設けられた前脚側ピン挿通孔に前脚側連結ピンを挿通することにより、前記後脚吊下げリンクの上端部が前記前脚側連結ピンを介して前記前脚に連結され、前記後脚側連結腕と前記後脚吊下げリンクとの重合部にそれぞれ設けられた後脚側ピン挿通孔に後脚側連結ピンを挿通することにより、前記後脚吊下げリンクの下端部が前記後脚側連結ピンを介して前記後脚に連結され、前記前脚側ピン挿通孔及び前記後脚側ピン挿通孔の少なくとも一方が、前記ガントリを前記上部旋回体に装着するときに、前記相対角度を調節可能な長孔に形成されていることを特徴としている。
【0008】
また、前記前脚の後面及び前記後脚の前面に、前記前脚側連結ピンあるいは前記後脚側連結ピンを前記長孔に沿って移動させるための位置調節治具が取り付けられる取付腕がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の建設機械の組立方法は、下端が上部旋回体の前部側に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の前脚と、上端が前記前脚の上端部に回動可能に装着されるとともに、下端が前記上部旋回体の後部側に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の後脚とを備えたガントリを上部旋回体に着脱可能に設けた建設機械の組立方法において、前記ガントリは、上端部が前記前脚の後面に設けられた前脚側連結腕に連結されるとともに、下端部が前記後脚の前面に設けられた後脚側連結腕に連結されることにより、前記前脚と前記後脚とがなす相対角度をあらかじめ設定された角度に保持する後脚吊下げリンクを有し、該後脚吊下げリンクは、前記相対角度を保持した状態で、前記前脚側連結腕と前記後脚吊下げリンクとの重合部にそれぞれ設けられた前脚側ピン挿通孔に前脚側連結ピンを挿通することにより、前記後脚吊下げリンクの上端部が前記前脚側連結ピンを介して前記前脚に連結され、前記後脚側連結腕と前記後脚吊下げリンクとの重合部にそれぞれ設けられた後脚側ピン挿通孔に後脚側連結ピンを挿通することにより、前記後脚吊下げリンクの下端部が前記後脚側連結ピンを介して前記後脚に連結され、前記前脚側ピン挿通孔及び前記後脚側ピン挿通孔の少なくとも一方が、前記ガントリを前記上部旋回体に装着するときに、前記相対角度を調節可能な長孔に形成され、前記ガントリを前記上部旋回体に装着する際に、前記相対角度を保持して前記ガントリを吊り上げる段階と、前記前脚を前記上部旋回体に連結する段階と、前記前脚に対して前記後脚を吊り上げて前記相対角度を調節する段階と、前記後脚を前記上部旋回体に連結する段階とを順に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、後脚吊下げリンクの両端部に設けられた前脚側ピン挿通孔及び後脚側ピン挿通孔の少なくとも一方が、前脚と後脚とがなす相対角度を調節可能な長孔に形成されているので、ガントリを上部旋回体に装着するときに、先に装着した前脚の回動操作と、前脚に対する後脚の相対的な回動操作とを組み合わせて、後脚の移動方向に自由度を与えることが可能となり、後脚と上部旋回体とのピン挿通孔の位置合わせを容易にしてガントリの装着を容易に行うことができる。また、前脚の後面及び後脚の前面に位置調節治具を取り付けるための取付腕が設けられているので、位置調節治具として、小型の手動機械を採用することが可能となり、ガントリの装着を少ない労力と操作により容易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一形態例を示す杭打機の側面図である。
【
図2】同じく前脚と後脚とがなす相対角度を保持してガントリを吊り上げた状態を示す側面図である。
【
図5】同じくガントリの輸送状態を示す説明図である。
【
図6】同じくガントリを装着する際の前脚を連結する段階を示す説明図である。
【
図7】同じく相対角度を調節して後脚を連結する段階を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図7は、本発明の建設機械を杭打機に適用した一形態例を示すもので、杭打機11は、
図1に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12の上部に、旋回ベアリング13を介して上部旋回体14が旋回可能に設けられており、上部旋回体14の前部には、リーダ(図示せず)やフロントジャッキ15が取り付けられるリーダブラケット16が設けられている。
【0013】
上部旋回体14のフロアフレーム14a上には、右側部に運転室17や機器室(図示せず)が、左側部にエンジンや油圧ポンプを収納したエンジン室18が設けられ、機器室及びエンジン室18の側面には、複数の点検扉19やハウス昇降梯子20が設けられている。また、エンジン室18の前部には、フロアフレーム14aからエンジン室18の天井部に移動するための階段21が設けられている。さらに、上部旋回体14の後端下部には、リアジャッキ22が取り付けられるアウトリガボックス23と、該アウトリガボックス23上に載置されるカウンタウエイト(図示せず)とが設けられている。また、上部旋回体14の後部上方には、ガントリ24が設けられている。
【0014】
ガントリ24は、上部旋回体14の中央後部に設けられた起伏ウインチ(図示せず)から繰り出される起伏ロープ25をガイドするためのガイドシーブ26を備えている。また、起伏ロープ25は、起伏ウインチから上方に立ち上がってガイドシーブ26を経て前方のミドルシーブブロック27とガントリシーブブロック28とに掛け回されてロープ端がガントリシーブブロック28に固定されている。さらに、ミドルシーブブロック27には、一端がリーダに接続されたペンダントロープ(図示せず)の他端が接続されており、起伏ウインチで起伏ロープ25を巻き取ったり、繰り出したりすることによりリーダを起伏させることができる。
【0015】
また、ガントリ24は、
図1及び
図2に示すように、下端が上部旋回体14の前部に設けられた左右一対の前側ブラケット29に回動ピン30で前後方向に回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の前脚31と、上端が前脚31の上端部に支軸32を介して回動可能に装着されるとともに、下端が上部旋回体14の後部に設けられた左右一対の後側ブラケット33に回動ピン34で回動可能かつ着脱可能に装着された左右一対の後脚35とを備え、各前脚31の下部と上部旋回体14との間にそれぞれ設けられたガントリ起伏シリンダ36を伸縮させることにより、上部旋回体14の後部に起伏可能に設けられている。さらに、前脚31と後脚35との間には、前脚31と後脚35とがなす相対角度Aをあらかじめ設定された角度に保持する後脚吊下げリンク37が設けられている(
図2)。この相対角度Aは、クレーンの吊りワイヤ38を用いた吊り上げや、大型の低床トレーラによる輸送を安定して行うことができるように小さい角度、例えば、略18度の角度に設定されている。
【0016】
前脚31は、長尺で断面正方形状をなす筒状の本体部材31aの両端部に、上側部材31bと下側部材31cとをそれぞれ固着したものである。また、下側部材31cは、前側ブラケット29の上端部が差し込まれる二股状に形成されるとともに、回動ピン30が挿通される回動ピン挿通孔31dが設けられている。
【0017】
前脚31の前面には、起立させたガントリ24の頂部に昇降するためのガントリ昇降梯子31eと、輸送時にミドルシーブブロック27が固定される固定部31fと、吊りワイヤ38が取り付けられる複数の吊り部31gとが設けられている。また、前脚31の下部後面には、ガントリ起伏シリンダ36が取り付けられるシリンダ取付部31hが設けられている。さらに、前脚31の中間部後面には、後脚吊下げリンク37の上端部が連結される前脚側連結腕31iと、該前脚側連結腕31iよりも下部側に、後述する後脚35の位置調節治具として用いるレバーブロック(登録商標、以下同じ)39の上端部が取り付けられる前脚側取付腕31jとが設けられている。
【0018】
後脚35は、後側ブラケット33の上端部が差し込まれる二股状の下端部に、回動ピン34が挿通される回動ピン挿通孔40aが設けられた断面矩形状をなす筒状の下部後脚40と、上端部が前脚31の上側部材31bに支軸32を介して回動可能に装着された長尺で厚肉の板材からなる上部後脚41と、下部後脚40と上部後脚41とを連結する断面矩形状をなす筒状の中間連結部材42とを備えた入れ子式の伸縮構造体である。また、下部後脚40の中間部前面には、後脚吊下げリンク37の下端部が連結される後脚側連結腕40bと、該後脚側連結腕40bよりも下部側に、レバーブロック39の下端部が取り付けられる後脚側取付腕40cとが設けられている。
【0019】
後脚吊下げリンク37は、
図3及び
図4に示すように、上下方向に延びる2枚の平板材を所定間隔あけて固着したもので、上端に前脚側連結腕31iが差し込まれる二股部37aが、下端に後脚側連結腕40bが差し込まれる二股部37bがそれぞれ形成されている。また、前脚側連結腕31iと二股部37aとの重合部には、前脚側連結ピン43が挿通される前脚側ピン挿通孔31k,37cが設けられ、後脚側連結腕40bと二股部37bとの重合部には、後脚側連結ピン44が挿通される後脚側ピン挿通孔40d,37dが設けられている。さらに、後脚側ピン挿通孔37dは、後脚35を上部旋回体14に装着するときに、相対角度Aを調節可能な、言い換えると後脚側連結ピン44が後脚吊下げリンク37の長手方向に沿って移動可能な長孔に形成されている。
【0020】
このガントリ24は、後脚吊下げリンク37を外した状態で、ガントリ起伏シリンダ36を伸長させて前脚31の上端を上昇させることにより、後脚35が伸長してガイドシーブ26があらかじめ設定された高さに位置した起立状態(
図1)になるとともに、下部後脚40と中間連結部材42との重合部に設けた下部ピン挿通孔に下部固定ピン45が、上部後脚41と中間連結部材42との重合部に設けた上部ピン挿通孔に上部固定ピン46がそれぞれ挿通され、各固定ピン45,46がベータピン47で抜け止めされる。このとき、後脚吊下げリンク37は、上端部が前脚側連結腕31iに前脚側連結ピン43で連結されるとともに、下端部が前脚側取付腕31jに後脚側連結ピン44で連結されることにより不使用状態となり、前脚31後面の長手方向に格納される。
【0021】
一方、各固定ピン45,46を外した状態で、ガントリ起伏シリンダ36を縮小させてガイドシーブ26を降下させることにより、後脚35が縮小して前脚31の後面が後脚35の前面に近接した倒伏状態(
図2)になる。また、クレーン操作によりガントリ24を着脱する際には、あらかじめ下部後脚40と上部後脚41と中間連結部材42との重合部に設けた下部ピン挿通孔に下部固定ピン45が、上部後脚41と中間連結部材42との重合部に設けた上部ピン挿通孔に上部固定ピン46がそれぞれ挿通され、各固定ピン45,46がベータピン47で抜け止めされる。このとき、後脚吊下げリンク37は、前脚側取付腕31jから後脚側連結ピン44が抜き取られ、前脚側連結ピン43の軸まわりに下方に回動されるとともに、下端部が後脚側連結腕40bに後脚側連結ピン44で連結されることにより使用状態となり、前脚31と後脚35とがなす相対角度Aが保持される。
【0022】
このような杭打機11を輸送する際には、上部旋回体14からリーダやガントリ24などの作業関連機器を取り外し、大型の低床トレーラを使用して別々に輸送し、現場でこれらを組み立てて使用している。
【0023】
ここで、
図5乃至
図7を参照しながら、本発明の建設機械の組立方法を杭打機に適用した一形態例として、ガントリ24を上部旋回体14に装着する手順を説明する。
図5は、輸送状態のガントリ24を示すもので、ガントリ24は、前脚31と後脚35とが後脚吊下げリンク37で連結された状態で、前脚31が台座48で支持されるとともに、後脚35が輸送治具49に支持ピン50で支持され、低床トレーラの荷台に前下がりの安定した姿勢で搭載されている。
【0024】
まず、吊り部31gに吊りワイヤ38を取り付け、クレーンを操作して吊りワイヤ38に張力を与えた状態で、ベータピン51を外して輸送治具49から支持ピン50を抜き取る。次に、ガントリ24を前下がりに傾斜させた状態に吊り上げ、上部旋回体14の上方に移動させる。このとき、後脚側連結ピン44が後脚側ピン挿通孔37dの下端に当接して後脚35の開き止めがなされる。続いて、前脚31の下端を上部旋回体14の前側ブラケット29の真上に位置合わせした後、クレーンを巻下げ方向に操作してガントリ24を降下させ、前側ブラケット29及び前脚31の回動ピン挿通孔29a,31dを合致させた状態で回動ピン30を挿通する。これにより、前脚31が上部旋回体14の前部側に回動可能に連結された状態となる。
【0025】
一方、吊り上げられたガントリ24は、各可動部が持っているガタなどの影響を受け、
図6に示すように、クレーンを巻き下げ方向に操作して後側ブラケット33の上端部を後脚35の下端部に差し込んだときに、互いの回動ピン挿通孔33a,40aが合致せず、挿入した回動ピン34が途中でつかえてしまう場合がある。そこで、レバーブロック39を使用して回動ピン挿通孔33a,40aの位置合わせを行う。
【0026】
前脚側取付腕31jの係止孔31mに取り付けられたシャックル52に本体39a上部のフック39dを係止する。次に、後脚側取付腕40cの係止孔40eに取り付けられたシャックル53にチェーン39c先端のフック39eを係止する。続いて、レバー39bを回動させてチェーン39cを巻き取ると、チェーン39cの張力により後脚35が支軸32まわりに上方に回動するとともに、後脚側連結ピン44が後脚側ピン挿通孔37dの長孔を上方に移動する。この状態から、クレーンの操作による巻き上げ及び巻き下げと、レバーブロック39の操作による巻き上げ及び巻き下げとを適宜に組み合わせて、前脚31の起伏角度と、前脚31と後脚35とがなす相対角度Aとを調節し、回動ピン挿通孔33a,40aを合致させた後、回動ピン34を挿通する。これにより、後脚35が上部旋回体14の後部側に回動可能に連結された状態となる。最後に、レバーブロック39及びシャックル52,53を取り外し、後脚吊下げリンク37を前脚31後面に格納することによりガントリ24の装着が完了する。
【0027】
このように、後脚吊下げリンク37に設けられた後脚側ピン挿通孔37dが、前脚31と後脚35とがなす相対角度Aを調節可能な長孔に形成されているので、ガントリ24を上部旋回体14に装着するときに、先に装着した前脚31の回動操作と、前脚31に対する後脚35の相対的な回動操作とを組み合わせて、後脚35の移動方向に自由度を与えることが可能となり、後脚35と上部旋回体14との回動ピン挿通孔33a,40aの位置合わせを容易にしてガントリ24の装着を容易に行うことができる。また、前脚31の後面及び後脚35の前面にレバーブロック39を取り付けるための前脚側取付腕31j及び後脚側取付腕40cがそれぞれ設けられているので、レバーブロック39を使用して、ガントリ24の装着を少ない労力と操作により容易かつ迅速に行うことができる。
【0028】
なお、本発明は、前記形態例に限るものではなく、後脚吊下げリンクは、ガントリの輸送や上部旋回体への着脱を安全に行うことができる強度と剛性を有した形状であればよく、長孔の位置や形状も任意であり、例えば、前脚側ピン挿通孔を長孔に形成してもよい。また、位置調節治具にレバーブロックを採用したが、これに限るものではなく、例えば、電動ウインチや油圧ウインチなどを採用することができ、チェーンは、後脚の吊り上げに支障がない強度を有すれば、樹脂製ロープや金属製ワイヤロープなどで構成してもよい。また、各取付腕には、シャックルを介さず、レバーブロックのフックを直接に係止することもできる。さらに、前記形態例では、建設機械として杭打機を例示したが、アースドリルやクレーンなど、上部旋回体の後部にガントリを搭載する各種建設機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、14a…フロアフレーム、15…フロントジャッキ、16…リーダブラケット、17…運転室、18…エンジン室、19…点検扉、20…ハウス昇降梯子、21…階段、22…リアジャッキ、23…アウトリガボックス、24…ガントリ、25…起伏ロープ、26…ガイドシーブ、27…ミドルシーブブロック、28…ガントリシーブブロック、29…前側ブラケット、29a…回動ピン挿通孔、30…回動ピン、31…前脚、31a…本体部材、31b…上側部材、31c…下側部材、31d…回動ピン挿通孔、31e…ガントリ昇降梯子、31f…固定部、31g…吊り部、31h…シリンダ取付部、31i…前脚側連結腕、31j…前脚側取付腕、31k…前脚側ピン挿通孔、31m…係止孔、32…支軸、33…後側ブラケット、33a…回動ピン挿通孔、34…回動ピン、35…後脚、36…ガントリ起伏シリンダ、37…後脚吊下げリンク、37a,37b…二股部、37c…前脚側ピン挿通孔、37d…後脚側ピン挿通孔、38…吊りワイヤ、39…レバーブロック、39a…本体、39b…レバー、39c…チェーン、39d,39e…フック、40…下部後脚、40a…回動ピン挿通孔、40b…後脚側連結腕、40c…後脚側取付腕、40d…後脚側ピン挿通孔、40e…係止孔、41…上部後脚、42…中間連結部材、43…前脚側連結ピン、44…後脚側連結ピン、45…下部固定ピン、46…上部固定ピン、47…ベータピン、48…台座、49…輸送治具、50…支持ピン、51…ベータピン、52,53…シャックル