特許第6987580号(P6987580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987580波形生成装置及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987580
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】波形生成装置及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20211220BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   B41J2/015 101
   B41J2/14 303
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-181959(P2017-181959)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-55545(P2019-55545A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 洋之
(72)【発明者】
【氏名】高村 純
(72)【発明者】
【氏名】仁田 昇
【審査官】 長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−112722(JP,A)
【文献】 特開平06−340066(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00467656(EP,A2)
【文献】 特開2004−090542(JP,A)
【文献】 特開2001−171115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室内の液体をノズルから吐出させるためにアクチュエーターに印加する駆動信号を生成する生成部を備え、
前記駆動信号は、前記圧力室のインク圧力を減少させるように前記アクチュエーターを駆動させる第1のパルスと、前記圧力室のインク圧力を段階的に増加させる第2のパルスとを含み、
前記第2のパルスの第1の増加のタイミングは、前記第1の増加が印加されることによって前記第2のパルスが印加されなかった場合よりも前記圧力室のインク圧力の正のピークが大きくなるときであり、
前記第2のパルスの第2の増加のタイミングは、前記第1の増加よりも後であり、前記圧力室のインク圧力が負であるときであり、
前記第2のパルスの、前記第1の増加のタイミングから前記第2の増加のタイミングまでの期間は、前記圧力室の固有振動周期の半分の時間と等しい、波形生成装置。
【請求項2】
前記第2のパルスは、段階的に印加を終了する、請求項1に記載の波形生成装置。
【請求項3】
前記駆動信号は、前記第2のパルスの印加開始から前記第2のパルスの第1の印加終了までの時間をP、前記第1の印加終了から前記第2のパルスの第2の印加終了までの時間をvとするとき、下記(1)式を満たす、請求項2に記載の波形生成装置。
P = −0.6v + 2.63 (1)
【請求項4】
前記駆動信号は、前記第1のパルスの印加終了の後、前記第2のパルスの印加開始までの間に、ゼロ電位の印加を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の波形生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の波形生成装置を備える、インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、波形生成装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出させるインクジェットヘッドを搭載した、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、液体を吐出する方式として様々なものが知られているが、一例として、圧電素子を利用するものが知られている。このようなインクジェット記録装置は、駆動信号を圧電素子に印加して当該圧電素子を変形させることで、液体を吐出させる。消費電力低減などのために、駆動信号の電圧(以下「駆動電圧」という。)を低く抑えることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5871851号公報
【特許文献2】特許第5890812号公報
【特許文献3】特許第5732311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、駆動電圧を低く抑えることができる波形生成装置及びインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の波形生成装置は、圧力室内の液体をノズルから吐出させるためにアクチュエーターに印加する駆動信号を生成する生成部を含む。前記駆動信号は、前記圧力室のインク圧力を減少させるように前記アクチュエーターを駆動させる第1のパルスと、前記圧力室のインク圧力を段階的に増加させる第2のパルスとを含む。前記第2のパルスの第1の増加のタイミングは、前記第1の増加が印加されることによって前記第2のパルスが印加されなかった場合よりも前記圧力室のインク圧力の正のピークが大きくなるときである。前記第2のパルスの第2の増加のタイミングは、前記第1の増加よりも後であり、前記圧力室のインク圧力が負であるときである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るインクジェット記録装置の構成の一例を示す模式図。
図2図1中に示す液体吐出ヘッドの構成の一例を示す斜視模式図。
図3図1中に示す液体吐出ヘッドの構成の一例を示す分解斜視模式図。
図4図2のF−F線断面模式図。
図5図1に示すインクジェット記録装置の要部回路構成の一例を示すブロック図。
図6】実施形態に係る駆動波形の一例及び当該駆動波形をアクチュエーターに印加した場合のインク圧力、インク流速、メニスカス及び推進力を示す図。
図7】実施形態に係る駆動波形の一例及び当該駆動波形をアクチュエーターに印加した場合のインク圧力、インク流速、メニスカス及び推進力を示す図。
図8】時間w、時間v及び時間Pを様々に変化させた場合の残留振動の大きさを示すグラフ。
図9】時間w、時間v及び時間Pを様々に変化させた場合の残留振動の大きさを示すグラフ。
図10】時間wが1.54μ秒のときに時間vを0.1μ秒から0.4μ秒まで、0.1μ秒刻みで変化させた場合の、残留振動が最も小さくなるようなPの値を抜き出して示したグラフ。
図11】実施例に係るインクの飛翔状態を示す図面代用写真。
図12】比較例に係るインクの飛翔状態を示す図面代用写真。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係るインクジェット記録装置について図面を用いて説明する。なお、実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、各部の縮尺を適宜変更して示している場合がある。また、実施形態の説明に用いる各図面は、説明のため、構成を省略して示している場合がある。
図1は、実施形態に係るインクジェット記録装置1の構成の一例を示す模式図である。
インクジェット記録装置1は、インクなどの記録材を用いて画像形成媒体Sなどに画像を形成する。インクジェット記録装置1は、一例として、複数の液体吐出部2と、液体吐出部2を移動可能に支持するヘッド支持機構3と、画像形成媒体Sを移動可能に支持する媒体支持機構4と、を備える。画像形成媒体Sは、例えば、紙、布又は樹脂などを素材とするシートである。
【0008】
図1に示すように、複数の液体吐出部2が、所定の方向に並列して配置された状態でヘッド支持機構3に支持される。ヘッド支持機構3は、ローラー3aに掛けられた無端ベルト3bに取り付けられている。インクジェット記録装置1は、ローラー3aを回転させることで、ヘッド支持機構3を、画像形成媒体Sの搬送方向に対して直交する主走査方向Aに移動させることが可能である。液体吐出部2は、インクジェットヘッド10及び循環装置20を一体に備える。液体吐出部2は、液体として例えばインクIをインクジェットヘッド10から吐出させる吐出動作を行う。インクジェット記録装置1は、一例として、ヘッド支持機構3を主走査方向Aに往復移動させながらインク吐出動作を行うことで、対向して配置される画像形成媒体Sに所望の画像を形成するスキャン方式である。あるいは、インクジェット記録装置1は、ヘッド支持機構3を移動させずにインク吐出動作を行うシングルパス方式であっても良い。この場合、ローラー3a及び無端ベルト3bを設けるには及ばない。またこの場合、ヘッド支持機構3は、例えばインクジェット記録装置1の筐体などに固定される。
【0009】
複数の液体吐出部2は、例えば、CMYK(cyan, magenta, yellow, and key(black))に対応する4色のインク、すなわちシアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクを、それぞれ吐出する。
【0010】
以下、インクジェットヘッド10について図2図4に基づいて説明する。なお、インクジェットヘッド10として、シェアモードシェアウォール方式の循環タイプのサイドシューター型インクジェットヘッドを各図に例示する。しかしながら、インクジェットヘッド10は、その他の種類のインクジェットヘッドであっても良い。
図2は、インクジェットヘッド10の構成の一例を示す斜視図である。図3は、インクジェットヘッド10の構成の一例を示す分解斜視図である。図4は、図2のF−F線断面図である。
【0011】
インクジェットヘッド10は、インクジェット記録装置1に搭載され、チューブのような部品を介してインクタンクに接続されている。このようなインクジェットヘッド10は、ヘッド本体11と、ユニット部12と、一対の回路基板13とを備えている。インクジェットヘッド10は、波形生成装置の一例である。
【0012】
ヘッド本体11は、インクを吐出するための装置である。ヘッド本体11は、ユニット部12に取り付けられている。ユニット部12は、ヘッド本体11と前記インクタンクとの間の経路の一部を形成するマニホールドや、インクジェット記録装置1の内部に取り付けるための部材を含んでいる。一対の回路基板13は、ヘッド本体11にそれぞれ取り付けられている。
【0013】
ヘッド本体11は、図3及び図4に示すようにベースプレート15と、ノズルプレート16と、枠部材17と、一対の駆動素子18とを備えている。ヘッド本体11の内部には、図4に示すように、インクが供給されるインク室19が形成されている。
【0014】
ベースプレート15は、図3に示すように、例えばアルミナのようなセラミックスによって矩形の板状に形成されている。ベースプレート15は、平坦な実装面21を有している。ベースプレート15は、実装面21に、複数の供給孔22と、複数の排出孔23とが開口している。
【0015】
供給孔22は、ベースプレート15の中央部において、ベースプレート15の長手方向に並んで設けられている。供給孔22は、ユニット部12の前記マニホールドのインク供給部12aに連通している。供給孔22は、インク供給部12aを介して循環装置20内のインクタンクに接続されている。前記インクタンクのインクは、インク供給部及び供給孔22を通じてインク室19に供給される。
【0016】
排出孔23は、供給孔22を挟むように二列に並んで設けられている。排出孔23は、ユニット部12の前記マニホールドのインク排出部12bに連通している。排出孔23は、インク排出部12bを介して循環装置20内のインクタンクに接続されている。インク室19のインクは、インク排出部12b及び排出孔23を通じて前記インクタンクに回収される。このように、インクは前記インクタンクとインク室19との間で循環する。
【0017】
ノズルプレート16は、例えば表面に撥液性機能を付与したポリイミド製の矩形状のフィルムによって形成されている。ノズルプレート16は、ベースプレート15の実装面21に対向している。ノズルプレート16に、複数のノズル25が設けられている。複数のノズル25は、ノズルプレート16の長手方向に沿って二列に並んでいる。
【0018】
枠部材17は、例えばニッケル合金によって矩形の枠状に形成されている。枠部材17は、ベースプレート15の実装面21とノズルプレート16との間に介在している。枠部材17は、実装面21とノズルプレート16とにそれぞれ接着されている。すなわち、ノズルプレート16は、枠部材17を介してベースプレート15に取り付けられている。インク室19は、図4に示すように、ベースプレート15と、ノズルプレート16と、枠部材17とに囲まれて形成されている。
【0019】
駆動素子18は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成された板状の二つの圧電体によって形成されている。前記二つの圧電体は、分極方向がその厚さ方向に互いに逆向きになるように貼り合わされている。
【0020】
一対の駆動素子18は、図3に示すように、ベースプレート15の実装面21に接着されている。一対の駆動素子18は、図4に示すように、二列に並ぶノズル25に対応して、インク室19の中に平行に配置されている。駆動素子18は、断面台形状に形成されている。駆動素子18の頂部は、ノズルプレート16に接着されている。
【0021】
駆動素子18に、複数の溝27が設けられている。溝27は、駆動素子18の長手方向と交差する方向にそれぞれ延びており、駆動素子18の長手方向に並んでいる。複数の溝27は、ノズルプレート16の複数のノズル25に対向している。本実施形態の駆動素子18は、図4に示すように、溝27にインクを吐出する駆動流路となる複数の圧力室51を配置している。
【0022】
複数の溝27のそれぞれに、電極28が設けられている。電極28は、例えばニッケル薄膜をフォトレジストエッチング加工することによって形成されている。電極28は、溝27の内面を覆っている。
【0023】
図3に示すように、ベースプレート15の実装面21から駆動素子18に亘って、複数の配線パターン35が設けられている。これらの配線パターン35は、例えばニッケル薄膜をフォトレジストエッチング加工することによって形成されている。
【0024】
配線パターン35は、実装面21の一つの側端部21aおよび他方の側端部21bからそれぞれ延びている。なお、側端部21a,21bは、実装面21の縁のみならずその周辺の領域を含む。このため、配線パターン35は、実装面21の縁よりも内側に設けられても良い。
【0025】
以下、一つの側端部21aから延びる配線パターン35について代表して説明する。なお、他方の側端部21bの配線パターン35の基本的な構成は、一つの側端部21aの配線パターン35と同様である。
【0026】
配線パターン35は、図3及び図4に示すように、第1の部分35aと、第2の部分35bとを有している。配線パターン35の第1の部分35aは、実装面21の側端部21aから駆動素子18に向かって直線状に延びている部分である。第1の部分35aは、互いに平行に延びている。配線パターン35の第2の部分35bは、第1の部分35aの端部と、電極28とに跨る部分である。第2の部分35bは、電極28にそれぞれ電気的に接続されている。
【0027】
一つの駆動素子18において、複数の電極28のうち幾つかの電極28は、第1の電極群31を構成する。複数の電極28のうち他の幾つかの電極28は、第2の電極群32を構成する。
【0028】
第1の電極群31と第2の電極群32とは、駆動素子18の長手方向の中央部を境に分かれている。第2の電極群32は、第1の電極群31と隣り合っている。第1および第2の電極群31,32は、例えば159個の電極28をそれぞれ含んでいる。
【0029】
図2に示すように、一対の回路基板13のそれぞれは、基板本体44と、一対のフィルムキャリアーパッケージ(FCP)45とをそれぞれ有している。なお、FCPは、テープキャリアーパッケージ(TCP)とも称される。
【0030】
基板本体44は、矩形状に形成された剛性を有するプリント配線板である。基板本体44に、種々の電子部品やコネクターが実装される。また、基板本体44に、一対のFCP45がそれぞれ取り付けられている。
【0031】
一対のFCP45は、複数の配線が形成されるとともに柔軟性を有する樹脂製のフィルム46と、前記複数の配線に接続されたヘッド駆動回路47とをそれぞれ有している。フィルム46は、テープオートメーテッドボンディング(TAB)である。ヘッド駆動回路47は、電極28に電圧を印加するためのIC(integrated circuit)である。ヘッド駆動回路47は、樹脂によってフィルム46に固定されている。
【0032】
一方のFCP45の端部は、異方性導電性フィルム(ACF)48によって、配線パターン35の第1の部分35aに、熱圧着接続されている。これにより、FCP45の前記複数の配線は、配線パターン35に電気的に接続される。
【0033】
FCP45が配線パターン35に接続されることで、ヘッド駆動回路47が、FCP45の前記配線を介して電極28に電気的に接続される。ヘッド駆動回路47は、フィルム46の前記配線を介して電極28に電圧を印加する。
【0034】
ヘッド駆動回路47が電極28に電圧を印加すると、駆動素子18がシェアモード変形することにより、当該電極28が設けられた圧力室51の容積が増減させられる。これにより、圧力室51の中のインクの圧力が変化し、当該インクがノズル25から吐出される。このように、圧力室51を隔てる駆動素子18は、圧力室51の内部に圧力振動を与えるためのアクチュエーターとなる。
【0035】
図1に示す循環装置20は、金属製などの連結部品によりインクジェットヘッド10の上部に一体に連結されている。循環装置20は、前記インクタンク及びインクジェットヘッド10を通り液体が循環可能に構成された所定の循環路を備える。循環装置20は、液体を循環させるためのポンプを備える。当該液体は、ポンプの働きにより循環装置20からインク供給部を通じてインクジェットヘッド10内に供給され、所定の流路を通った後、インク排出部を通じてインクジェットヘッド10内から循環装置20へと送られる。
また、循環装置20は、循環路の外部に設けられる補給タンクとしてのカートリッジから循環路に液体を補給する。
【0036】
インクジェット記録装置1の要部回路構成について説明する。図5は、実施形態に係るインクジェット記録装置1の要部回路構成の一例を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、プロセッサー101、ROM(read-only memory)102、RAM(random-access memory)103、通信インターフェース104、表示部105、操作部106、ヘッドインターフェース107、バス108及びインクジェットヘッド10を含む。
【0037】
プロセッサー101は、インクジェット記録装置1の動作に必要な処理及び制御を行うコンピューターの中枢部分に相当する。プロセッサー101は、ROM102に記憶されたシステムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア又はファームウェアなどのプログラムに基づいて、インクジェット記録装置1の各種の機能を実現するべく各部を制御する。プロセッサー101は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)又はGPU(graphics processing unit)などである。あるいは、プロセッサー101は、これらの組み合わせである。
【0038】
ROM102は、プロセッサー101を中枢とするコンピューターの主記憶部分に相当する、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM102は、上記のプログラムを記憶する。また、ROM102は、プロセッサー101が各種の処理を行う上で使用するデータ又は各種の設定値などを記憶する。
【0039】
RAM103は、プロセッサー101を中枢とするコンピューターの主記憶部分に相当する、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM103は、プロセッサー101が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶しておく、いわゆるワークエリアなどとして利用される。
【0040】
通信インターフェース104は、インクジェット記録装置1がネットワーク又は通信ケーブルなどを介してホストコンピューターなどと通信するためのインターフェースである。
【0041】
表示部105は、インクジェット記録装置1の操作者に各種情報を通知するための画面を表示する。表示部105は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(electro-luminescence)ディスプレイなどのディスプレイである。
【0042】
操作部106は、インクジェット記録装置1の操作者による操作を受け付ける。操作部106は、例えば、キーボード、キーパッド、タッチパッド又はマウスなどである。また、操作部106としては、表示部105の表示パネルに重ねて配置されたタッチパッドを用いることもできる。すなわち、タッチパネルが備える表示パネルを表示部105として、タッチパネルが備えるタッチパッドを操作部106として用いることができる。
【0043】
ヘッドインターフェース107は、プロセッサー101がインクジェットヘッド10と通信するために設けられる。ヘッドインターフェース107は、プロセッサー101の制御のもと、階調データなどをインクジェットヘッド10へ送信する。
【0044】
バス108は、コントロールバス、アドレスバス及びデータバスなどを含み、インクジェット記録装置1の各部で授受される信号を伝送する。
【0045】
インクジェットヘッド10は、ヘッドドライバー100を備える。
ヘッドドライバー100は、インクジェットヘッド10を動作させるための駆動回路である。ヘッドドライバー100は、例えばラインドライバーである。ヘッドドライバー100は、波形データWDを記憶する。
ヘッドドライバー100は、波形データWDに基づいて単一の駆動信号を繰り返し生成する。そして、ヘッドドライバー100は、階調データに基づき、画像形成媒体S上の画素それぞれに対して液滴を吐出する回数を制御する。単一の駆動信号の印加ごとに、ノズル25からは1発のインク(主液滴)が吐出される。したがって、インクジェット記録装置1は、例えば、何発のインクをそれぞれの画素に吐出するかによって濃淡を表現する。すなわち、1つの画素に対して多くのセットのインクを吐出するほど、当該画素における対応する色の濃さが濃くなる。
ヘッドドライバー100は、波形生成装置の一例である。また、ヘッドドライバー100は、駆動信号を生成することで、生成部として動作する。
【0046】
一例として、ヘッドドライバー100は、波形データWDが記憶された状態でヘッドドライバー100の管理者などへと譲渡される。しかしながら、ヘッドドライバー100は、波形データWDがヘッドドライバー100に記憶されない状態で当該管理者などに譲渡されても良い。また、ヘッドドライバー100は、別の波形データが記憶された状態で当該管理者などに譲渡されても良い。そして、波形データWDが別途に当該管理者などへと譲渡され、当該管理者又はサービスマンなどによる操作の下にヘッドドライバー100へと書き込まれても良い。このときの波形データWDの譲渡は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク又は半導体メモリなどのようなリムーバブルな記憶媒体に記録して、あるいはネットワークなどを介したダウンロードにより実現できる。
【0047】
駆動信号が印加されることで、圧電体である駆動素子18は、シェアモード変形する。この変形により、圧力室51の容積が変化する。
駆動信号の電位がゼロのときの圧力室51は、通常状態であるとする。駆動信号の電位が正のとき、圧力室51は収縮して圧力室51の容積は通常状態に比べて減少する。また、駆動信号の電位が負のとき、圧力室51は拡張して圧力室51の容積は通常状態に比べて増加する。以上のような圧力室51の容積変化に伴い、圧力室51内のインクの圧力が変化する。インクジェットヘッド10は、特定の波形を有する駆動信号が印加されることによって、インクを吐出させる。なお、駆動信号の波形を以下「駆動波形」という。
【0048】
実施形態に係る駆動波形の例を図6に基づいて説明する。図6は、インクをノズル25から吐出させるためにヘッドドライバー100がアクチュエーターに印加する駆動信号D1の波形の一例を示す。駆動信号D1がアクチュエーターに印加されることで、ノズル25からインクが吐出される。
【0049】
なお、図6に示すインク流速は、圧力室51のノズル25におけるメニスカス面での液体(インク)の速度である。インク流速は、ノズルの開口面(以下「ノズル面」という。)に垂直でインクが吐出する方向を正、ノズル面に垂直でインク室側の方向を負とする量である。また、図6に示すインク圧力は、ノズル25におけるメニスカス面での液体(インク)の圧力である。インク圧力は、インク流速と同様に、ノズル面に垂直でインクが吐出する方向を正とし、ノズル面に垂直でインク室側の方向を負とする量である。図6に示すメニスカスは、メニスカス面の、基準面に対する変位を表す。当該変位は、同様に、ノズル面に垂直でインクが吐出する方向を正とし、ノズル面に垂直でインク室側の方向を負とする量である。図6に示す推進力は、メニスカス面でのインクを押し出そうとする力を表す。推進力は、同様に、ノズル面に垂直でインクが吐出する方向を正とし、ノズル面に垂直でインク室側の方向を負とする量である。
【0050】
駆動信号D1は、パルスPL1及びパルスPL2をこの順で含む。
パルスPL1は、ゼロ電位(a)、第1の負電位(b)、第2の負電位(c)、第1の負電位(d)、ゼロ電位(e)の順で変化する波形を有する。なお、第1の負電位の大きさは、一例として、第2の負電位の大きさの1/2である。
パルスPL2は、ゼロ電位(e)、第1の正電位(f)、第2の正電位(g)、第1の正電位(h)、ゼロ電位(i)の順で変化する波形を有する。すなわち、パルスPL2は、一例として、2段階に分けて段階的に増加し、2段階に分けて段階的に印加を終了する。なお、第1の正電位の大きさは、一例として、第2の正電位の大きさの1/2である。
すなわち、駆動信号D1は、ゼロ電位(a)、第1の負電位(b)、第2の負電位(c)、第1の負電位(d)、ゼロ電位(e)、第1の正電位(f)、第2の正電位(g)、第1の正電位(h)、ゼロ電位(i)の順で変化する波形を有する。ゼロ電位(e)から第1の正電位(f)への遷移は、1段階目の増加である。第1の正電位(f)から第2の正電位(g)への遷移は、2段階目の増加である。第2の正電位(g)から第1の正電位(h)への遷移は、1段階目の印加終了である。第1の正電位(h)からゼロ電位(i)への遷移は、2段階目の印加終了である。1段階目の増加は、第1の増加の一例である。2段階目の増加は、第2の増加の一例である。1段階目の印加終了は、第1の印加終了の一例である。2段階目の印加終了は、第2の印加終了の一例である。
なお、ゼロ電位は、基準電位との電位差がゼロ近傍の所定の範囲内であることを示す。
パルスPL1は、圧力室の圧力を減少させるようにアクチュエーターを駆動させる第1のパルスの一例である。パルスPL2は、圧力室の圧力を増加させるようにアクチュエーターを駆動させる第2のパルスの一例である。
【0051】
駆動信号D1の印加開始後、一定時間ゼロ電位(a)が印加される。一例として、ゼロ電位(a)の印加時間は、0.12μ秒である。そして、ゼロ電位(a)の後、パルスPL1の印加が開始される。パルスPL1は、まず、ゼロ電位(a)から第1の負電位(b)、第1の負電位(b)から第2の負電位(c)へ変化する。そして、パルスPL1は、第2の負電位(c)になった後、パルスPL1の印加開始からD秒経過するまで第2の負電位(c)を継続する。パルスPL1は、パルスPL1の印加開始からD秒経過後、第2の負電位(c)から第1の負電位(d)、第1の負電位(d)からゼロ電位(e)への変化を開始する。
駆動信号D1は、パルスPL1の印加終了後、ゼロ電位(e)がR秒継続した後、パルスPL2の印加を開始する波形を有する。
パルスPL2は、ゼロ電位(e)から第1の正電位(f)に変化し、第1の正電位(f)をw秒継続した後に第1の正電位(f)から第2の正電位(g)へ変化する。そして、パルスPL2の印加開始からP秒後に第2の正電位(g)から第1の正電位(h)へ変化する。そして、第1の正電位(h)をv秒継続した後、第1の正電位(h)からゼロ電位(i)へと変化する。
【0052】
時間Dは、圧力室51の固有振動周期の半分の時間であることが好ましい。なお、圧力室51の固有振動周期の半分の時間を、1AL(acoustic length)とする。したがって、時間Dは、1ALであることが好ましい。
【0053】
パルスPL2は、パルスPL2が印加されなかった場合のインク圧力の正のピークよりもインク圧力の正のピークが大きくなるようなタイミングで印加開始(1段階目の増加)されることが好ましい。より好ましくは、パルスPL2は、パルスPL1の印加終了の直後に印加開始されることである。ここで、パルスPL1の印加終了の直後とは、時間Rが0秒より大きい0秒近傍の時間、又は0秒であることである。このうち、Rは、0秒より大きい0秒近傍の時間であることが特に好ましい。0秒より大きい0秒近傍の時間は、例えば、インクジェットヘッド10の機械的性能で可能な最小の時間である。実施形態では、時間Rは、0.2μ秒である。したがって、0秒より大きい0秒近傍の時間は、0.2μ秒以下の範囲を含む。
パルスPL2が、パルスPL2が印加されなかった場合のインク圧力の正のピークよりもインク圧力の正のピークが大きくなるようなタイミングで印加開始されることで、従来に比べて駆動電圧の低減が可能となる。特に、パルスPL1の直後に印加開始されることで、従来に比べて駆動電圧の低減が可能となる。さらに、Rが0秒より大きいことで、Rが0秒である場合に比べて、駆動電圧の低減が可能となる。
【0054】
第1の正電位(f)から第2の正電位(g)に変化するタイミング(2段階目の増加)は、インク圧力が負の値を持つときが好ましい。より好ましくは、第1の正電位(f)から第2の正電位(g)に変化するタイミングは、インク圧力が負の値のピークであるときである。第1の正電位(f)から第2の正電位(g)に変化するタイミングが、このようなタイミングで印加終了することにより、残留振動が小さくなる。残留振動が小さくなることで、印刷品質の向上が期待できる。
また、時間wは、1ALであることが好ましい。時間wが1ALであることにより、残留振動が特に小さくなる。
【0055】
時間Pは、1.3AL〜1.6ALであることが好ましい。これにより、残留振動が小さくなる。
【0056】
図8に、時間w、時間v及び時間Pを様々に変化させた場合の残留振動の大きさを示す。図8の横軸には、134−218又は134−228などのようにXXX−YYYの形式で2つの数値が「−」で連結された文字列が記載されている。これは、wが(XXX×0.01)μ秒、Pが(YYY×0.01)μ秒であることを示す。図8より、時間wと時間vとの組み合わせごとに、残留振動が最小となる時間Pが異なることが分かる。図8に示された範囲の中では、ほとんどの時間wと時間vとの組み合わせにおいて、残留振動が最小となる時間Pは、2.28μ秒〜2.58μ秒の範囲内であることが分かる。
図8に示すデータの中から、時間wと時間vの組み合わせごとに、残留振動が最も小さくなるようなPについてのデータを抜き出す。抜き出したデータを、図9に示す。図9の横軸には、134−258−010のようにxxx−yyy−zzzの形式で3つの数値が「−」で連結された文字列が記載されている。これは、wが(xxx×0.01)μ秒、Pが(yyy×0.01)μ秒、vが(zzz×0.01)μ秒であることを示す。
さらに、図8に示すデータの中から、時間wが1.54μ秒のときの、時間vを0.1μ秒から0.4μ秒まで0.1μ秒刻みで変化させた場合の、残留振動が最も小さくなるようなPの値を抜き出して示したグラフを図10に示す。
図8図10より、時間w、時間v及び時間Pをどのように選択すれば残留振動が小さくなるかが分かる。
【0057】
時間vは、例えばインクジェットヘッド10の機械的性能で可能な最小の時間である。あるいは、時間vは、これより長い時間であっても良い。時間vを長くする場合、時間vを長くすることに応じて時間Pを短くすることが好ましい。
図10より、時間P及び時間vは、下記(1)式を満たすことが好ましい。
P = −0.6v + 2.63 (1)
(1)式は、図10に示す「線形(1.54)」を表す式である。「線形(1.54)」は、時間Pと時間vの関係を線形に近似したものである。
時間P及び時間vが(1)式を満たすことで、残留振動が小さくなる。
なお、時間Pと時間vとの組み合わせは、パルスPL2の印加終了時点でインク流速が0であるような時間の組み合わせであることが好ましい。
【0058】
なお、実施形態において1ALは、一例として約1.7μ秒である。ただし、ALの長さは、インクの物性などよって変化する。
【0059】
図6及び図7を用いて、駆動信号D1の波形を従来の駆動波形と比較する。図7は、従来の駆動信号D2の波形の一例を示す図である。
【0060】
駆動信号D2は、パルスPL21の印加終了の後、所定の時間経過後に、パルスPL22の印加を開始する波形を有する。
パルスPL21は、負電位を印加するパルスであり、例えば、図6の駆動信号D1のパルスPL1と同様である。
パルスPL22は、正電位を印加するパルスである。
図6及び図7を比べれば分かるように、駆動信号D2よりも駆動信号D1の方が、インク圧力のピークが大きくなっている。したがって、駆動信号D2の電圧を駆動信号D1の駆動電圧よりも低くしても、駆動信号D1と同等の吐出が可能であることがわかる。あるいは、駆動信号D1の駆動電圧と駆動信号D2の駆動電圧が同じ場合には、駆動信号D1の方が大きな吐出の力が得られる。
【0061】
〔実施例〕
実施例として、D=1AL、R=0.2μ秒、w=1AL、P=1.3〜1.6ALであるような駆動信号D1を用いて7本のノズルからインクを吐出させた。これによって吐出されたインクが飛翔している状態を側方から撮影したものを図11に示す。図11は、実施例に係るインクの飛翔状態を示す図面代用写真である。図11の左側の黒く濃くなっている部分がインクジェットヘッドであり、縦方向1目盛ごとに1つのノズルが合計7つ設けられている。なお、各ノズルは、目盛と目盛の丁度中間に設けられている。そして、当該7つのノズルから吐出されたインクが左側から右側に飛翔しているものである。なお、黒い点それぞれが飛翔しているインクである。インクは、目盛と目盛の真ん中に近いところを飛翔しているほど、印刷精度が高いことを示している。
〔比較例〕
比較例として、駆動信号D1に代えて駆動信号D2を用いた以外は実施例と同様にしてインクを吐出させた。ただし、実施例の方が比較例よりも駆動電圧が低く設定されている。これによって吐出されたインクが飛翔している状態を側方から撮影したものを図12に示す。図12は、比較例に係るインクの飛翔状態を示す図面代用写真である。
【0062】
図11図12を比較すると、大きな差はみられない。したがって、実施例は、比較例と同等の印刷精度が得られることが分かる。
したがって、実施例の駆動信号D1は、駆動信号D2に比べて少ない電力で、駆動信号D2と同等の印刷精度が得られることがわかる。
【0063】
上記の実施形態は以下のような変形も可能である。
上記の実施形態では、パルスPL2は、2段階に分けて段階的に増加する。しかしながら、パルスPL2は、3段階以上に分けて段階的に増加しても良い。この場合、複数の段階のうちから選択される2つの段階が第1の増加及び第2の増加である。
また、上記の実施形態では、パルスPL2は、2段階に分けて段階的に印加を終了する。しかしながら、パルスPL2は、3段階以上に分けて段階的に印加を終了しても良い。この場合、複数の段階のうちから選択される2つの段階が第1の印加終了及び第2の印加終了である。
【0064】
上記の実施形態では、駆動素子18は、シェアモード変形する。しかしながら、駆動素子18は、シェアモード以外のモードで変形するものであっても良い。
【0065】
インクジェットヘッド10は、上記実施形態の他、例えば静電気で振動板を変形させてインクを吐出する構造、あるいはヒーターなどの熱エネルギーを利用してノズルからインクを吐出する構造などであってもよい。これらの場合、当該振動板又はヒーターなどは、圧力室51の内部に圧力振動を与えるためのアクチュエーターである。
【0066】
実施形態のインクジェット記録装置1は、画像形成媒体Sに、インクによる二次元の画像を形成するインクジェットプリンターである。しかしながら、実施形態のインクジェット記録装置は、これに限られるものではない。実施形態のインクジェット記録装置は、例えば、3Dプリンター、産業用の製造機械、又は医療用機械などであっても良い。実施形態のインクジェット記録装置が3Dプリンターなどである場合には、実施形態のインクジェット記録装置は、例えば、素材となる物質又は素材を固めるためのバインダーなどをインクジェットヘッドから吐出させることで、立体物を形成する。
【0067】
実施形態のインクジェット記録装置1は、液体吐出部2を4つ備え、それぞれの液体吐出部2が使用するインクIの色はシアン、マゼンタ、イエロー又はブラックである。しかしながら、インクジェット記録装置が備える液体吐出部2の数は4つに限定せず、また、複数ではなくても良い。また、それぞれの液体吐出部2が使用するインクIの色及び特性などは限定しない。
また、液体吐出部2は、透明光沢インク、赤外線又は紫外線等を照射したときに発色するインク、又はその他の特殊インクなども吐出可能である。さらに、液体吐出部2は、インク以外の液体を吐出することができるものであっても良い。なお、液体吐出部2が吐出する液体は、懸濁液などの分散液であっても良い。液体吐出部2が吐出するインク以外の液体としては例えば、プリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体、人工的に組織又は臓器などを形成するための細胞などを含む液体、接着剤などのバインダー、ワックス、又は液体状の樹脂などが挙げられる。
【0068】
上記実施形態における各数値は、本発明の目的が達成される範囲の誤差が許容される。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]圧力室内の液体をノズルから吐出させるためにアクチュエーターに印加する駆動信号を生成する生成部を備え、前記駆動信号は、前記圧力室のインク圧力を減少させるように前記アクチュエーターを駆動させる第1のパルスと、前記圧力室のインク圧力を段階的に増加させる第2のパルスとを含み、前記第2のパルスの第1の増加のタイミングは、前記第1の増加が印加されることによって前記第2のパルスが印加されなかった場合よりも前記圧力室のインク圧力の正のピークが大きくなるときであり、前記第2のパルスの第2の増加のタイミングは、前記第1の増加よりも後であり、前記圧力室のインク圧力が負であるときである、波形生成装置。
[2]前記第2のパルスは、段階的に印加を終了する、付記[1]に記載の波形生成装置。
[3]前記駆動信号は、前記第2のパルスの印加開始から前記第2のパルスの第1の印加終了までの時間をP、前記第1の印加終了から前記第2のパルスの第2の印加終了までの時間をvとするとき、下記(1)式を満たす、付記[2]に記載の波形生成装置。
P = −0.6v + 2.63 (1)
[4]前記駆動信号は、前記第1のパルスの印加終了の後、前記第2のパルスの印加開始までの間に、ゼロ電位の印加を含む、付記[1]乃至付記[3]のいずれか1項に記載の波形生成装置。
[5]付記[1]乃至付記[4]のいずれか1項に記載の波形生成装置を備える、インクジェット記録装置。
【符号の説明】
【0070】
1……インクジェット記録装置、10……インクジェットヘッド、18……駆動素子、100……ヘッドドライバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12