特許第6987603号(P6987603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987603固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987603
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/355 20110101AFI20211220BHJP
   H04N 5/374 20110101ALI20211220BHJP
   H04N 5/378 20110101ALI20211220BHJP
【FI】
   H04N5/355
   H04N5/374
   H04N5/378
   H04N5/355 720
【請求項の数】20
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-207029(P2017-207029)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-80225(P2019-80225A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】521182560
【氏名又は名称】ブリルニクス シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大高 俊徳
(72)【発明者】
【氏名】盛 一也
【審査官】 鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−017219(JP,A)
【文献】 特開2000−217037(JP,A)
【文献】 特開2001−008101(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/058488(WO,A1)
【文献】 特表2018−530250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30−5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換を行う画素が配置された画素部と、
前記画素部の前記画素から画素信号を読み出す読み出し部と、を有し、
前記画素は、
蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、
前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送されるフローティングディフュージョンにより形成された出力ノードと、
前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、
前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器と、
前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含み、
前記比較器は、前記読み出し部の制御の下、
前記蓄積期間に前記光電変換素子から前記出力ノードに溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力する第1の比較処理と、
前記蓄積期間後の前記転送期間に前記出力ノードに転送された前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号を出力する第2の比較処理と、を行い、
前記第1の比較処理では、
前記第1の比較処理の期間が複数のサブ期間に分割され、前記各サブ期間のそれぞれにおいて、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う
固体撮像装置。
【請求項2】
前記読み出し部は、
複数の前記サブ期間の各々において、少なくとも前記出力ノードをリセットレベルにリセットしてから前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較するAD変換処理を行う
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記読み出し部は、
複数の前記サブ期間の各々において、少なくとも前記出力ノードをリセットレベルにリセットしてから各サブ期間の終了まで前記出力バッファ部による電圧信号とランプ状のサブ参照電圧とを比較するAD変換処理を繰り返し実行する
請求項1または2記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記サブ参照電圧の最終値は、少なくとも最終のサブ期間において、前記出力ノードの暗電流により前記出力バッファ部の出力電圧信号が変化しても前記比較器における誤判定を回避し得るレベルに設定される
請求項3記載の固体撮像装置。
【請求項5】
複数の前記サブ期間に得られるA変換伝達曲線は、少なくとも2つのサブ期間でオーバーラップする領域を含む
請求項1から4のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記各サブ期間におけるAD変換伝達関数は逆伝達関数を適用して線形化される
請求項1から5のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
AD変換コードは、MSBビットとLSBビットにセグメント化され、MSBビットは比較器の出力が反転するときのAD変換サイクル数を表し、LSBビットは各AD変換サイクル内のコードステップを表す
請求項1から6のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
MSBコードは次のサブ期間のAD変換処理が開始されると増減し、LSBコードは各サブ期間のAD変換処理時に増減し、サブ期間のAD変換開始時に初期値にリセットされる
請求項7記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記比較器は、前記第1の比較処理において、
前記オーバーフロー電荷の量に応じた時間に対応する前記第1の比較結果信号を出力し、
前記オーバーフロー電荷が前記光電変換素子から前記出力ノードに溢れ始める最大サンプリング時間における前記光電変換素子の信号レベルから最小サンプリング時間で得られる信号レベルまでの光レベルに対応可能である
請求項1から8のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記蓄積期間は、
前記光電変換素子および前記出力ノードがリセットレベルにリセットされてから、前記転送素子が導通状態に切り替えられて前記転送期間が開始されるまでの期間であり、
前記第1の比較処理の期間は、
前記光電変換素子および前記出力ノードがリセットレベルにリセットされてから、前記転送期間が開始される前に、前記出力ノードがリセットレベルにリセットされるまでの期間であり、
前記第2の比較処理の期間は、
前記出力ノードがリセットレベルにリセットされた後の期間であって、前記転送期間後の期間を含む期間である
請求項1から9のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記読み出し部は、
前記第1の比較処理と前記第2の比較処理を、照度に応じて選択的に行うように制御する
請求項1から10のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記読み出し部は、
通常の照度の場合、前記第1の比較処理と前記第2の比較処理を行うように制御し、
通常の照度より高照度の場合、前記第1の比較処理を行うように制御し、
通常の照度より低照度の場合、前記第2の比較処理を行うように制御する
請求項11記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記読み出し部は、
前記比較器に対して、前記蓄積期間に前記光電変換素子から前記出力ノードに溢れ出ない場合であっても、前記第1の比較処理により、電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力するように制御する
請求項1から12のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項14】
前記画素は、
前記出力ノードとしてのフローティングディフュージョンと、
リセット期間に前記フローティングディフュージョンを所定の電位にリセットするリセット素子と、を含み、
前記出力バッファ部は、
前記フローティングディフュージョンの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した信号を出力するソースフォロワ素子
前記ソースフォロワ素子のソースに接続された電流源と、を含む
請求項1から13のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項15】
前記比較器は、
第1の入力端子に、前記出力バッファ部による前記電圧信号が供給され、
第2の入力端子に、前記参照電圧が供給され、
前記第1の入力端子への前記電圧信号の供給ラインに結合キャパシタが接続されている
請求項1から14のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項16】
前記比較器は、
出力端子と前記第1の入力端子との間にリセットスイッチが接続され、
前記出力端子側に負荷キャパシタが接続されている
請求項15記載の固体撮像装置。
【請求項17】
第1の基板と、
第2の基板と、を含み、
前記第1の基板と前記第2の基板は接続部を通して接続された積層構造を有し、
前記第1の基板には、
少なくとも、前記画素の前記光電変換素子、前記転送素子、前記出力ノード、および出力バッファ部が形成され、
前記第2の基板には、
少なくとも、前記比較器、前記メモリ部、および前記読み出し部の少なくとも一部が形成されている
請求項1から16のいずれか一に記載の固体撮像装置。
【請求項18】
前記画素は、
前記出力ノードとしてのフローティングディフュージョンと、
リセット期間に前記フローティングディフュージョンを所定の電位にリセットするリセット素子と、を含み、
前記出力バッファ部は、
前記フローティングディフュージョンの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した信号を出力するソースフォロワ素子と、
前記ソースフォロワ素子のソースに接続された電流源と、を含み、
前記フローティングディフュージョン前記リセット素子、および前記ソースフォロワ素子は前記第1の基板に形成され、
前記電流源は、前記第1の基板または前記第2の基板に形成されている
請求項17記載の固体撮像装置。
【請求項19】
光電変換を行う画素が配置された画素部と、
前記画素部の前記画素から画素信号を読み出す読み出し部と、を有し、
前記画素は、
蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、
前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送されるフローティングディフュージョンにより形成された出力ノードと、
前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、
前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器と、
前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含む
固体撮像装置の駆動方法であって、
前記画素の画素信号を読み出す場合、前記比較器において、
前記読み出し部の制御の下、
前記蓄積期間に前記光電変換素子から前記出力ノードに溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力する第1の比較処理を行い、
前記蓄積期間後の前記転送期間に前記出力ノードに転送された前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号を出力する第2の比較処理を行い、
前記第1の比較処理では、
前記第1の比較処理の期間が複数のサブ期間に分割され、前記各サブ期間のそれぞれにおいて、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う
固体撮像装置の駆動方法。
【請求項20】
固体撮像装置と、
前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、
前記固体撮像装置は、
光電変換を行う画素が配置された画素部と、
前記画素部の前記画素から画素信号を読み出す読み出し部と、を有し、
前記画素は、
蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、
前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、
前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送されるフローティングディフュージョンにより形成された出力ノードと、
前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、
前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器と、
前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含み、
前記比較器は、前記読み出し部の制御の下、
前記蓄積期間に前記光電変換素子から前記出力ノードに溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力する第1の比較処理と、
前記蓄積期間後の前記転送期間に前記出力ノードに転送された前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号を出力する第2の比較処理と、を行い、
前記第1の比較処理では、
前記第1の比較処理の期間が複数のサブ期間に分割され、前記各サブ期間のそれぞれにおいて、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を検出して電荷を発生させる光電変換素子を用いた固体撮像装置(イメージセンサ)として、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが実用に供されている。
CMOSイメージセンサは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ、医療用内視鏡、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話等の携帯端末装置(モバイル機器)等の各種電子機器の一部として広く適用されている。
【0003】
CMOSイメージセンサは、画素毎にフォトダイオード(光電変換素子)および浮遊拡散層(FD:Floating Diffusion、フローティングディフュージョン)を有するFDアンプを持ち合わせており、その読み出しは、画素アレイの中のある一行を選択し、それらを同時に列(カラム)出力方向へと読み出すような列並列出力型が主流である。
【0004】
また、列並列出力型CMOSイメージセンサの画素信号読み出し(出力)回路については実に様々なものが提案されている。
それらの中で、その最も進んだ回路のひとつが、列(カラム)毎にアナログ−デジタル変換器(ADC(Analog digital converter))を備え、画素信号をデジタル信号として取り出す回路である(たとえば特許文献1,2参照)。
【0005】
この列並列ADC搭載CMOSイメージセンサ(カラムAD方式CMOSイメージセンサ)では、比較器(コンパレータ)はいわゆるRAMP波と画素信号の比較をして、後段のカウンタでデジタルCDSを行うことによりAD変換を行う。
【0006】
しかしながら、この種のMOSイメージセンサは、信号の高速転送が可能であるが、グローバルシャッタ読み出しができないという不利益がある。
【0007】
これに対して、各画素に比較器を含むADC(さらにはメモリ部)を配置して、画素アレイ部中の全画素に対して同一のタイミングで露光開始と露光終了とを実行するグローバルシャッタをも実現可能にするデジタル画素(ピクセル)センサが提案されている(たとえば特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−278135号公報
【特許文献2】特開2005−295346号公報
【特許文献3】US 7164114 B2 FIG、4
【特許文献4】US 2010/0181464 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上述した従来のデジタル画素センサを備えたCMOSイメージセンサでは、グローバルシャッタ機能を実現することは可能であるが、たとえば蓄積期間にフォトダイオードから溢れ出る電荷をリアルタイムに利用していないことから、広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化には限界がある。
【0010】
また、CMOSイメージセンサの重要な性能指標にランダムノイズがあり、主なランダムノイズ源として、画素とAD変換器があることが知られている。
一般的には、ランダムノイズ低減手法として、トランジスタサイズを大きくすることでフリッカノイズ(flicker noise)を低減する、もしくは比較器出力に容量を付加し、帯域を落とすことでCDSによるノイズのフィルタ効果を狙う方法が知られている。
しかし、それぞれの手法では、面積が増大する、容量増により比較器の反転遅延が悪化し、撮像素子のフレームレートが上げられないという不利益がある。
【0011】
また、各画素に比較器を含むADC(さらにはメモリ部)を配置することから、有効画素領域を最大限に拡大することは困難で、コストあたりの価値を最大限に高めることが困難である。
【0012】
また、ダイナミックレンジを拡大させる方法としては、たとえば、イメージセンサの同一の画素から蓄積時間の異なる2種類の信号を読み出し、この2種類の信号を組み合わせて、ダイナミックレンジを拡大させる方法や、高感度の画素でダイナミックレンジの小さい信号と、低感度でダイナミックレンジを拡大した信号を組み合わせてダイナミックレンジを拡大させる方法などが知られている。
【0013】
いずれの方法においても、組み合わせようとする(合成しようとする)複数の信号は、組み合わせ(信号の切り替え)を行う信号値の近傍において、それぞれ入射光量(照度)に対する出力電圧の直線性がほぼ同等に保たれている必要がある。
各々の信号はダイナミックレンジ(Dレンジ)を拡大するために光量(照度)に対するゲインが異なるように設計されるため、主としてアナログデジタルコンバータ(ADC)でデジタル変換後のデジタル信号処理回路でゲインを補正し、直線性(あるいは傾き)が同じに保たれるようにしている。
【0014】
ところで、デジタル画素センサを備えたCMOSイメージセンサにおいて、たとえば蓄積期間(露光期間)にフォトダイオードから溢れ出るオーバーフロー電荷をリアルタイムに利用しようとすると、この蓄積期間中においても出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFDの暗電流とそのショットノイズの影響を受けて、比較器の反転タイミングが変動する。
そのため、比較器の誤判定や非感受性入力範囲が発生し、カラム全体の画像のオフセットである固定パターンノイズ(FPN)やA変換伝達曲線に非線形性が生じるという不利益がある。
【0015】
フローティングディフュージョンFDの暗電流の電荷を実際のオーバーフロー電荷から分離することは困難であることから、接合する高輝度側A変換伝達曲線と低輝度側AD変換伝達曲線の接合点(AD変換コード境界)に接合ギャップ(AD変換コードギャップ)が生じ、その切り替え領域においての直線性(リニアリティ)が必ずしも保証されない場合がある。
このような場合、スムーズな切り替えが不能となり、その不連続点がノイズとなってしまい、いわゆるトーンジャンプ等の画像劣化の要因になるという不利益がある。
【0016】
本発明は、出力ノードとしてのフローティングディフュージョンの暗電流の影響を抑止することが可能で、画像劣化を抑止しつつ実質的に広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化を実現することが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
また、本発明は、出力ノードとしてのフローティングディフュージョンの暗電流の影響を抑止することが可能で、画像劣化を抑止しつつ実質的に広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化を実現することが可能で、しかも低ノイズ化を図れ、有効画素領域を最大限に拡大することができ、コストあたりの価値を最大限に高めることが可能な固体撮像装置、固体撮像装置の駆動方法、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の観点の固体撮像装置は、光電変換を行う画素が配置された画素部と、前記画素部の前記画素から画素信号を読み出す読み出し部と、を有し、前記画素は、蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送されるフローティングディフュージョンにより形成された出力ノードと、前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器と、前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含み、前記比較器は、前記読み出し部の制御の下、前記蓄積期間に前記光電変換素子から前記出力ノードに溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力する第1の比較処理と、前記蓄積期間後の前記転送期間に前記出力ノードに転送された前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号を出力する第2の比較処理と、を行い、前記第1の比較処理では、前記第1の比較処理の期間が複数のサブ期間に分割され、前記各サブ期間のそれぞれにおいて、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う。
【0018】
本発明の第2の観点は、光電変換を行う画素が配置された画素部と、前記画素部の前記画素から画素信号を読み出す読み出し部と、を有し、前記画素は、蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送されるフローティングディフュージョンにより形成された出力ノードと、前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器と、前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含む固体撮像装置の駆動方法であって、前記画素の画素信号を読み出す場合、前記比較器において、前記読み出し部の制御の下、前記蓄積期間に前記光電変換素子から前記出力ノードに溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力する第1の比較処理を行い、前記蓄積期間後の前記転送期間に前記出力ノードに転送された前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号を出力する第2の比較処理を行い、前記第1の比較処理では、前記第1の比較処理の期間が複数のサブ期間に分割され、前記各サブ期間のそれぞれにおいて、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う。
【0019】
本発明の第3の観点の電子機器は、固体撮像装置と、前記固体撮像装置に被写体像を結像する光学系と、を有し、前記固体撮像装置は、光電変換を行う画素が配置された画素部と、前記画素部の前記画素から画素信号を読み出す読み出し部と、を有し、前記画素は、蓄積期間に光電変換により生成した電荷を蓄積する光電変換素子と、前記光電変換素子に蓄積された電荷を前記蓄積期間後の転送期間に転送可能な転送素子と、前記転送素子を通じて前記光電変換素子で蓄積された電荷が転送されるフローティングディフュージョンにより形成された出力ノードと、前記出力ノードの電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力する出力バッファ部と、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器と、前記比較器の比較結果信号に応じたデータを記憶するメモリ部と、を含み、前記比較器は、前記読み出し部の制御の下、前記蓄積期間に前記光電変換素子から前記出力ノードに溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力する第1の比較処理と、前記蓄積期間後の前記転送期間に前記出力ノードに転送された前記光電変換素子の蓄積電荷に応じた前記電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号を出力する第2の比較処理と、を行い、前記第1の比較処理では、前記第1の比較処理の期間が複数のサブ期間に分割され、前記各サブ期間のそれぞれにおいて、前記出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、出力ノードとしてのフローティングディフュージョンの暗電流の影響を抑止することが可能で、画像劣化を抑止しつつ実質的に広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化を実現することが可能となる。
また、本発明によれば、出力ノードとしてのフローティングディフュージョンの暗電流の影響を抑止することが可能で、画像劣化を抑止しつつ実質的に広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化を実現することが可能で、しかも低ノイズ化を図れ、有効画素領域を最大限に拡大することができ、コストあたりの価値を最大限に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の画素部のデジタル画素アレイの一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の画素の一例を示す回路図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略断面図およびオーバーフロー時のポテンシャル図である。
図5】本実施形態に係る比較器の基本的な第1の比較処理を説明するための図である。
図6】本実施形態に係る比較器の基本的な第1の比較処理を説明するための図であって、参照電圧の他のパターン例を説明するための図である。
図7】本実施形態に係る比較器に種々の参照電圧を入力した場合の光時間変換の状態を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素における光応答カバレッジを示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係るメモリ部および出力回路の構成例を示す図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置におけるフレーム読み出しシーケンスの一例を示す図である。
図11】タイムスタンプADCモード時にフローティングディフュージョンの暗電流が、基本的な第1の比較処理に及ぼす影響について説明するための図である。
図12】フローティングディフュージョンの暗電流の影響を抑止またはキャンセルするための第1の比較処理期間におけるAD変換処理方法等について説明するための図である。
図13図12の第1の比較処理期間におけるAD変換処理方法によるAD変換伝達曲線等について説明するための図である。
図14】本第1の実施形態に係る固体撮像装置の積層構造について説明するための模式図である。
図15】本第1の実施形態に係る固体撮像装置の積層構造について説明するための簡略断面図である。
図16】本第1の実施形態に係る固体撮像装置の所定シャッタモード時の主として画素部における読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
図17】本第1の実施形態に係る固体撮像装置の所定シャッタモード時の主として画素部における読み出し動作を説明するための動作シーケンスおよびポテンシャル遷移を示す図である。
図18】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置を説明するための図であって、タイムスタンプADCモード動作とリニアADCモード動作の選択処理の一例を示す図である。
図19】本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置10Bにおけるフレーム読み出しシーケンスの一例を示す図である。
図20】本第3の実施形態に係る比較器に参照電圧を入力した場合の光時間変換の状態を示す図である。
図21】本第3の実施形態におけるデジタルコードと光変換による電荷量との関係を示す図である。
図22】本発明の第4の実施形態に係る固体撮像装置の画素の一例を示す回路図である。
図23】本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用される電子機器の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の構成例を示すブロック図である。
本実施形態において、固体撮像装置10は、たとえば画素としてデジタル画素(Digital Pixel)を含むCMOSイメージセンサにより構成される。
【0024】
この固体撮像装置10は、図1に示すように、撮像部としての画素部20、垂直走査回路(行走査回路)30、出力回路40、およびタイミング制御回路50を主構成要素として有している。
これらの構成要素のうち、たとえば垂直走査回路30、出力回路40、およびタイミング制御回路50により画素信号の読み出し部60が構成される。
【0025】
本第1の実施形態において、固体撮像装置10は、画素部20において、デジタル画素として光電変換読み出し部、AD(アナログデジタル)変換部、およびメモリ部を含み、グローバルシャッタの動作機能を持つ、たとえば積層型のCMOSイメージセンサとして構成されている。
本第1の実施形態に係る固体撮像装置10において、後で詳述するように、各デジタル画素DPがAD変換機能を有しており、AD変換部は、光電変換読み出し部により読み出される電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器(コンパレータ)を有している。
比較器は、読み出し部60の制御の下、蓄積期間に光電変換素子から出力ノード(フローティングディフュージョン)に溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号を出力する第1の比較処理と、蓄積期間後の転送期間に出力ノードに転送された光電変換素子の蓄積電荷に応じた電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号を出力する第2の比較処理と、を行う。
【0026】
そして、本第1の実施形態においては、第1の比較処理では、出力ノードを形成するフローティングディフュージョンFDの暗電流の影響を抑止あるいはキャンセルするために、第1の比較処理の期間が複数のサブ期間に分割され、各サブ期間のそれぞれにおいて、出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う。
読み出し部60は、複数のサブ期間の各々において、少なくとも出力ノードを形成するフローティングディフュージョンFDをリセットレベルにリセットしてから出力バッファ部による電圧信号と参照電圧とを比較するAD変換処理を行う。
より具体的には、読み出し部60は、複数のサブ期間の各々において、少なくとも出力ノードを形成するフローティングディフュージョンFDをリセットレベルにリセットしてから各サブ期間の終了まで出力バッファ部による電圧信号とランプ状のサブ参照電圧とを比較するAD変換処理を繰り返し実行する。
具体的な第1の比較処理期間におけるAD変換処理等については、後で詳述する。
【0027】
以下、固体撮像装置10の各部の構成および機能の概要、特に、画素部20およびデジタル画素の構成および機能、それらに関連した読み出し処理、並びに、画素部20と読み出し部60の積層構造、第1の比較処理期間におけるAD変換処理等について詳述する。
【0028】
(画素部20およびデジタル画素200の構成)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素部のデジタル画素アレイの一例を示す図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10の画素の一例を示す回路図である。
【0029】
画素部20は、図2に示すように、複数のデジタル画素200がN行M列の行列状(マトリクス状)に配列されている。
なお、図2においては、図面の簡単化のため、9つのデジタル画素200が3行3列の行列状(M=3、N=3のマトリクス状)に配置されている例が示されている。
【0030】
本第1の実施形態に係るデジタル画素200は、光電変換読み出し部(図2ではPDと表記)210、AD変換部(図2ではADCと表記)220、およびメモリ部(図2ではMEMと表記)230を含んで構成されている。
本第1の実施形態の画素部20は、後で詳述するように、第1の基板110と第2の基板120の積層型のCMOSイメージセンサとして構成されるが、本例では、図3に示すように、第1の基板110に光電変換読み出し部210が形成され、第2の基板120にAD変換部220およびメモリ部230が形成されている。
【0031】
デジタル画素200の光電変換読み出し部210は、フォトダイオード(光電変換素子)と画素内アンプとを含んで構成される。
具体的には、この光電変換読み出し部210は、たとえば光電変換素子であるフォトダイオードPD1を有する。
このフォトダイオードPD1に対して、転送素子としての転送トランジスタTG1−Tr、リセット素子としてのリセットトランジスタRST1−Tr、ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF1−Tr、電流源素子としてのカレントトランジスタIC1−Tr,出力ノードND1としてのフローティングディフュージョンFD1,および読み出しノードND2をそれぞれ一つずつ有する。
このように、第1の実施形態に係るデジタル画素200の光電変換読み出し部210は、転送トランジスタTG1−Tr、リセットトランジスタRST1−Tr、ソースフォロワトランジスタSF1−Tr、およびカレントトランジスタIC1−Trの4トランジスタ(4Tr)を含んで構成されている。
【0032】
そして、本第1の実施形態においては、ソースフォロワトランジスタSF1−Tr、カレントトランジスタIC1−Tr、および読み出しノードND2を含んで出力バッファ部211が構成されている。
【0033】
本第1の実施形態に係る光電変換読み出し部210は、出力バッファ部211の読み出しノードND2がAD変換部220の入力部に接続されている。
光電変換読み出し部210は、出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFD1の電荷を電荷量に応じた電圧信号に変換し、変換した電圧信号VSLをAD変換部220に出力する。
【0034】
より具体的には、光電変換読み出し部210は、AD変換部220の第1の比較処理期間PCMP1において、蓄積期間PIに光電変換素子であるフォトダイオードPD1から出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFD1に溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた電圧信号VSLを出力する。
【0035】
さらに、光電変換読み出し部210は、AD変換部220の第2の比較処理期間PCMP2において、蓄積期間PI後の転送期間PTに出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFD1に転送されたフォトダイオードPD1の蓄積電荷に応じた電圧信号VSLを出力する。
光電変換読み出し部210は、第2の比較処理期間PCMP2において、画素信号としての読み出しリセット信号(信号電圧)(VRST)および読み出し信号(信号電圧)(VSIG)をAD変換部220に出力する。
【0036】
フォトダイオードPD1は、入射光量に応じた量の信号電荷(ここでは電子)を発生し、蓄積する。
以下、信号電荷は電子であり、各トランジスタがn型トランジスタである場合について説明するが、信号電荷が正孔(ホール)であったり、各トランジスタがp型トランジスタであっても構わない。
また、本実施形態は、複数のフォトダイオードおよび転送トランジスタ間で、各トランジスタを共有している場合にも有効である。
【0037】
各デジタル画素200において、フォトダイオード(PD)としては、埋め込み型フォトダイオード(PPD)が用いられる。
フォトダイオード(PD)を形成する基板表面にはダングリングボンドなどの欠陥による表面準位が存在するため、熱エネルギーによって多くの電荷(暗電流)が発生し、正しい信号が読み出せなくなってしまう。
埋め込み型フォトダイオード(PPD)では、フォトダイオード(PD)の電荷蓄積部を基板内に埋め込むことで、暗電流の信号への混入を低減することが可能となる。
【0038】
光電変換読み出し部210の転送トランジスタTG1−Trは、フォトダイオードPD1とフローティングディフュージョンFD1の間に接続され、制御線を通じてゲートに印加される制御信号TGにより制御される。
転送トランジスタTG1−Trは、制御信号TGがハイ(H)レベルの転送期間PTに選択されて導通状態となり、フォトダイオードPD1で光電変換され蓄積された電荷(電子)をフローティングディフュージョンFD1に転送する。
なお、フォトダイオードPD1およびフローティングディフュージョンFD1が所定のリセット電位にリセットされた後、転送トランジスタTG1−Trは、制御信号TGがロー(L)レベルの非導通状態となり、フォトダイオードPD1は蓄積期間PIとなるが、このとき、入射する光の強度(量)が非常に高い場合、飽和電荷量を超えた電荷が転送トランジスタTG1―Tr下のオーバーフローパスを通じてオーバーフロー電荷としてフローティングディフュージョンFD1に溢れ出す。
【0039】
リセットトランジスタRST1−Trは、電源電圧VDDの電源線VddとフローティングディフュージョンFD1の間に接続され、制御線を通じてゲートに印加される制御信号RSTにより制御される。
リセットトランジスタRST1−Trは、制御信号RSTがHレベルのリセット期間に選択されて導通状態となり、フローティングディフュージョンFD1を電源電圧VDDの電源線Vddの電位にリセットする。
【0040】
ソースフォロワ素子としてのソースフォロワトランジスタSF1−Trは、ソースが読み出しノードND2に接続され、ドレイン側が電源線Vddに接続され、ゲートがフローティングディフュージョンFD1に接続されている。
読み出しノードND2と基準電位VSS(たとえばGND)の間に電流源素子としてのカレントトランジスタIC1−Trのドレイン、ソースが接続されている。カレントトランジスタIC1−Trのゲートは制御信号VBNPIXの供給ラインに接続されている。
そして、読み出しノードND2とAD変換部220の入力部間の信号線LSGN1は、電流源素子としてのカレントトランジスタIC1−Trにより駆動される。
【0041】
図4(A)および(B)は、本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素の主要部である電荷蓄積転送系の構成例を示す簡略断面図およびオーバーフロー時のポテンシャル図である。
【0042】
各デジタル画素セルPXLCは、光Lが照射される第1基板面1101側(たとえば裏面側)と、この第1基板面1101側と対向する側の第2基板面1102側とを有する半導体基板(本例では第1の基板110)に形成され、分離層SPLにより分離されている。
そして、図4のデジタル画素セルPXLCは、光電変換読み出し部210を形成するフォトダイオードPD1、転送トランジスタTG1−Tr、フローティングディフュージョンFD1、リセットトランジスタRST1−Tr、分離層SPL、さらには図示しないカラーフィルタ部およびマイクロレンズを含んで構成されている。
【0043】
(フォトダイオードの構成)
フォトダイオードPD1は、第1基板面1101側と、第1基板面1101側と対向する側の第2基板面1102側とを有する半導体基板に対して埋め込むように形成された第1導電型(本実施形態ではn型)半導体層(本実施形態ではn層)2101を含み、受光した光の光電変換機能および電荷蓄積機能を有するように形成されている。
フォトダイオードPD1の基板の法線に直交する方向(X方向)における側部には第2の導電型(本実施形態ではp型)分離層SPLが形成されている。
【0044】
このように、本実施形態では、各デジタル画素セルPXLCにおいて、フォトダイオード(PD)としては、埋め込み型フォトダイオード(PPD)が用いられる。
フォトダイオード(PD)を形成する基板表面にはダングリングボンドなどの欠陥による表面準位が存在するため、熱エネルギーによって多くの電荷(暗電流)が発生し、正しい信号が読み出せなくなってしまう。
埋め込み型フォトダイオード(PPD)では、フォトダイオード(PD)の電荷蓄積部を基板内に埋め込むことで、暗電流の信号への混入を低減することが可能となる。
【0045】
図4のフォトダイオードPD1においては、n層(第1導電型半導体層)2101が、基板110の法線方向(図中の直交座標系のZ方向)に2層構造を持つように構成されている。
本例では、第1基板面1101側にn−層2102が形成され、このn−層2102の第2基板面1102側にn層2103が形成され、このn−層2103の第2基板面1102側にp+層2104およびp層2105が形成されている。
また、n−層2102の第1基板面1101側にp+層2106が形成されている。
p+層2106は、フォトダイオードPD1のみならず分離層SPL、さらには他のデジタル画素セルPXLCにわたって一様に形成されている。
【0046】
なお、このP+層2106の光入射側には、カラーフィルタ部が形成され、さらに、カラーフィルタ部の光入射射側であって、フォトダイオードPD1および分離層SPLの一部に対応するようにマイクロレンズが形成されている。
【0047】
これらの構成は一例であり、単層構造であってもよく、また、3層、4層以上の積層構造であってもよい。
【0048】
(X方向(列方向)における分離層の構成)
図4のX方向(列方向)におけるp型分離層SPLにおいては、フォトダイオードPD1のn−層2102と接する側であって基板の法線に直交する方向(図中の直交座標系のX方向)の右側部に、第1のp層(第2導電型半導体層)2107が形成されている。
さらに、p型分離層SPLにおいては、第1のp層2107のX方向の右側に、第2のp層(第2導電型半導体層)2108が、基板110の法線方向(図中の直交座標系のZ方向)に2層構造を持つように構成されている。
本例では、第2のp層2108において、第1基板面1101側にp−層2109が形成され、このp−層2109の第2基板面1102側にp層2110が形成されている。
【0049】
これらの構成は一例であり、単層構造であってもよく、また、3層、4層以上の積層構造であってもよい。
【0050】
p型分離層SPLの第1のp層2107および第2のp−層2109の第1の基板面1101側にはフォトダイオード2110と同様のp+層2106が形成されている。
【0051】
p型分離層SPLの第1のp層2107の第2の基板面1102側の一部にかかりオーバーフローパスOVPが形成されるように、n層2103が延長するように形成されている。
そして、n層2103の第2基板面1102側のp層2105上に、ゲート絶縁膜を介して転送トランジスタTG1−Trのゲート電極2111が形成されている。
さらに、p型分離層SPLの第1のp層2107の第2の基板面1102側にはフローティングディフュージョンFD1となるn+層2112が形成され、n+層2112に隣接してリセットトランジスタRST1−Trのチャネル形成領域となるp層2113、p層2113に隣接してn+層2114が形成されている。
そして、p層2113上に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極2115が形成されている。
【0052】
このような構造において、入射する光の強度(量)が非常に高い場合、飽和電荷量を超えた電荷が転送トランジスタTG1―Tr下のオーバーフローパスOVPを通じてオーバーフロー電荷としてフローティングディフュージョンFD1に溢れ出す。
【0053】
デジタル画素200のAD変換部220は、光電変換読み出し部210により出力されるアナログの電圧信号VSLを、所定の傾きを持たせて変化させたランプ波形または固定電圧の参照電圧VREFと比較して、デジタル信号に変換する機能を有する。
【0054】
AD変換部220は、図3に示すように、比較器(COMP)221、カウンタ(CNT)222、入力側結合キャパシタC221、出力側の負荷キャパシタC222、およびリセットスイッチSW−RSTを含んで構成されている。
【0055】
比較器221は、第1の入力端子としての反転入力端子(−)に、光電変換読み出し部210の出力バッファ部211から信号線LSGN1に出力された電圧信号VSLが供給され、第2の入力端子としての非反転入力端子(+)に参照電圧VREFが供給され、電圧信号VSTと参照電圧VREFとを比較し、デジタル化した比較結果信号SCMPを出力する比較処理を行う.
【0056】
比較器221は、第1の入力端子としての反転入力端子(−)に結合キャパシタC221が接続されており、第1の基板110側の光電変換読み出し部210の出力バッファ部211と第2の基板1120側のAD変換部220の比較器221の入力部をAC結合することにより、低ノイズ化を図り、低照度時に高SNRを実現可能なように構成されている。
【0057】
また、比較器221は、出力端子と第1の入力端子としての反転入力端子(−)との間にリセットスイッチSW−RSTが接続され、出力端子と基準電位VSSとの間に負荷キャパシタC222が接続されている。
【0058】
基本的に、AD変換部220においては、光電変換読み出し部210の出力バッファ部211から信号線LSGN1に読み出されたアナログ信号(電位VSL)は比較器221で参照電圧VREF、たとえばある傾きを持った線形または非線形に変化するスロープ波形であるランプ信号RAMPと比較される。
このとき、比較器221と同様に列毎に配置されたカウンタ222が動作しており、ランプ波形のあるランプ信号RAMPとカウンタ値が一対一の対応を取りながら変化することで電圧信号VSLをデジタル信号に変換する。
基本的に、AD変換部220は、参照電圧VREF(たとえばランプ信号RAMP)の変化は電圧の変化を時間の変化に変換するものであり、その時間をある周期(クロック)で数えることでデジタル値に変換する。
そして、アナログ信号VSLとランプ信号RAMP(参照電圧VREF)が交わったとき、比較器221の出力が反転し、カウンタ222の入力クロックを停止し、または、入力を停止していたクロックをカウンタ222に入力し、そのときのカウンタ222の値(データ)がメモリ部230に記憶されてAD変換を完了させる。
以上のAD変換期間終了後、各デジタル画素200のメモリ部230に格納されたデータ(信号)は出力回路40から図示しない信号処理回路に出力され、所定の信号処理により2次元画像が生成される。
【0059】
(比較器221のおける基本的な第1の比較処理および第2の比較処理)
そして、本第1の実施形態のAD変換部220の比較器221は、画素信号の読み出し期間に、基本的に次の2つの第1の比較処理および第2の比較処理を行うように、読み出し部60により駆動制御される。
【0060】
第1の比較処理CMPR1において、比較器221は、読み出し部60の制御の下、蓄積期間PIに光電変換素子であるフォトダイオードPD1から出力ノードであるフローティングフュージョンFD1に溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた電圧信号VSL1に対するデジタル化した第1の比較結果信号SCMP1を出力する。
なお、この第1の比較処理CMPR1の動作を、タイムスタンプ(TS)ADCモードの動作ともいう。
【0061】
第2の比較処理CMPR2において、比較器221は、読み出し部60の制御の下、蓄積期間PI後の転送期間PTに出力ノードであるフローティングフュージョンFD1に転送されたフォトダイオードPD1の蓄積電荷に応じた電圧信号VSL2(VSIG)に対するデジタル化した第2の比較結果信号SCMP2を出力する。
実際には、第2の比較処理CMPR2において、蓄積電荷に応じた電圧信号VSL2(VSIG)に対するデジタル化の前に、リセット時のフローティングディフュージョンFD1のリセット電圧に応じた電圧信号VSL2(VRST)に対するデジタル化を行う。
なお、この第2の比較処理CMPR2の動作を、リニア(Lin)ADCモードの動作ともいう。
【0062】
なお、本実施形態において、基本的に、蓄積期間PIは、フォトダイオードPD1およびフローティングディフュージョンFD1がリセットレベルにリセットされてから、転送トランジスタTG1−Trが導通状態に切り替えられて転送期間PTが開始されるまでの期間である。
第1の比較処理CMPR1の期間PCMPR1は、フォトダイオードPD1およびフローティングディフュージョンFD1がリセットレベルにリセットされてから、転送期間PTが開始される前に、フローティングディフュージョンFD1がリセットレベルにリセットされるまでの期間である。
第2の比較処理CMPR2の期間PCMPR2は、フローティングディフュージョンFD1がリセットレベルにリセットされた後の期間であって、転送期間PT後の期間を含む期間である。
【0063】
ここで、基本的な第1の比較処理CMPR1についてさらに詳述する。
図5は、本実施形態に係る比較器221の基本的な第1の比較処理CMPR1を説明するための図である。
図5において、横軸が時間を示し、縦軸が出力ノードであるフローティングディフュージョンFD1の電圧レベルVFDを示している。
【0064】
フローティングディフュージョンFD1の電圧レベルVFDは、リセットレベルのときが電荷量が最も少なく電圧レベルVFDは最も高いレベルVFDiniとなる。
一方、飽和状態のときが電荷量が多く、電圧レベルVFDは低いレベルVFDsatとなる。
このような条件に従って、比較器221の参照電圧VREF1を、飽和状態となる手前の非飽和状態時のレベルに固定した電圧VREFsatに設定する、あるいはリセットレベル時の電圧レベルVREFrstから電圧レベルVREFsatに至るランプ電圧VREFrampに設定する。
【0065】
第1の比較処理CMPR1のときに、このような参照電圧VREF1がVREFsatまたはVREFrampに設定されると、図5に示すように、入射光の強度が高い高照度のときほど電荷量が多いため比較器221の出力がフリップ(反転)する時間が速い。
最も高い照度の例EXP1の場合には、比較器221の出力が時刻t1に直ちにフリップ(反転)する。
例EXP1より低い照度の例EXP2の場合には、比較器221の出力が時刻t1より遅い時刻t2にフリップ(反転)する。
例EXP2より低い照度の例EXP3の場合には、比較器221の出力が時刻t2より遅い時刻t3にフリップ(反転)する。
【0066】
このように、比較器221は、第1の比較処理CMPR1において、蓄積期間PIの所定期間にフォトダイオードPD1からフローティングディフュージョンFD1へのオーバーフロー電荷の量に応じた時間に対応する第1の比較結果信号SCMP1を出力する。
【0067】
より具体的には、比較器221は、第1の比較処理CMPR1において、オーバーフロー電荷がフォトダイオードPD1から出力ノードであるフローティングディフュージョンFD1に溢れ始める最大サンプリング時間におけるフォトダイオードPD1の所定の閾値に対応した信号レベルから最小サンプリング時間で得られる信号レベルまでの光レベルとの比較処理に対応可能である。
【0068】
上述したように、タイムスタンプADCモードにおける光変換動作(Photo conversion operation)は、蓄積期間PIにおいて、光―時間変換(Light to time conversion)を伴って実行される。
図5に示すように、非常に明るい光の下では、リセット活性化期間の直後に比較器221の出力状態が反転され、その光レベルは、以下の時間で説明される飽和信号(ウェル容量)に対応する。
【0069】
((FD飽和量×蓄積時間)/サンプリング期間)+PD飽和量
たとえば、FD飽和:8Ke @ 150uV / e〜FD容量の1.1fF、最小サンプリング時間:15nsec、蓄積時間:3msec:
であると仮定する。
【0070】
このタイムスタンプADC動作モードでは、上述したように、オーバーフロー電荷がフォトダイオードPD1から出力ノードであるフローティングディフュージョンFD1に溢れ始める最大サンプリング時間におけるフォトダイオードPD1の所定の閾値に対応した信号レベルから最小サンプリング時間で得られる信号レベルまでの光レベルをカバーすることができる。
【0071】
図6は、本実施形態に係る比較器221の基本的な第1の比較処理CMPR1を説明するための図であって、参照電圧の他のパターン例を説明するための図である。
【0072】
参照電圧VREFは、図6中に(1)で示す所定の傾きを持たせて変化させたランプ波形(信号)RAMPまたは図6中に(2)で示す固定電圧DCであってもよく、また、図6中に(3)で示すログ(log)や図6中に(4)で示す指数関数的な値をとる電圧信号あってもよい。
【0073】
図7は、本実施形態に係る比較器に種々の参照電圧VREFを入力した場合の光時間変換の状態を示す図である。
図7において,横軸がサンプリング時間を示し、縦軸がオーバーフロー信号における推定信号を示している。
【0074】
図7は、適用される光の性質(適性)によるオーバーフロー電荷(信号)に対応する比較器221が反転するサンプリング時間を示している。
図7においては、さまざまな固定基準電圧DC1、DC2、DC3とランプ基準電圧VRAMPに対して反転するサンプリング時間を示している。ここでは、線形基準ランプが使用されている。
【0075】
以上の飽和したオーバーフロー電荷に対する第1の比較処理CMPR1を行うタイムスタンプADCモードの動作が終了すると、フローティングディフュージョンFD1と比較器221をリセットした後に、非飽和電荷に対する第2の比較処理CMPR2を行うリニアADCモードの動作に移行する。
【0076】
図8は、本発明の第1の実施形態に係るデジタル画素における光応答カバレッジを示す図である。
図8において、TC1がタイムスタンプADCモード動作による信号(AD変換伝達曲線)を示し、TC2がリニアADCモード動作による信号(AD変換伝達曲線)を示している。
【0077】
タイムスタンプADCモードは,非常に明るい光に対する光応答を有することができることから、リニアADCモードは暗いレベルからの光応答を有することができる。たとえば、120dBのダイナミックレンジ性能を実現することができる。
たとえば、上述したように、光変換範囲の飽和信号は900Keに相当する
リニアADCモードは、ADCを適用した通常の読み出しモード動作のため、2eのノイズレベルから8KeのフォトダイオードPD1とフローティングディフュージョンFD1の飽和までカバーすることがでる。
リニアADCモードのカバレッジは、追加のスイッチと容量で30Keに拡張することができる。
【0078】
図8は、第1の比較処理CMPR1に応じた第1のAD変換伝達曲線TC1と第2の比較処理CMPR2に応じた第2のAD変換伝達曲線TC2の合成処理が理想的に行われ、両曲線TC1、TC2の接合部(接合領域)で接合ギャップがなくスムーズな切り替え(接続)が行われる場合を示している。
【0079】
しかし、実際には、タイムスタンプADCモードにおいて、蓄積期間(露光期間)にフォトダイオードから溢れ出るオーバーフロー電荷をリアルタイムに利用しようとすると、この蓄積期間中においてもフローティングディフュージョンFD1の暗電流とそのショットノイズの影響を受けて、比較器221の反転タイミングが変動するおそれがある。
そのため、比較器221の誤判定や非感受性入力範囲が発生し、カラム全体の画像のオフセットである固定パターンノイズ(FPN)やA変換伝達曲線に非線形性が生じるおそれがある。
【0080】
そこで、本実施形態においては、後で詳述するように、第1の比較処理では、第1の比較処理の期間が複数のサブ期間に分割され、各サブ期間のそれぞれにおいて、出力バッファ部211による電圧信号VSLと参照電圧VREFとを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するアナログデジタル(AD)変換処理を行う。
より具体的には、読み出し部60は、複数のサブ期間の各々において、少なくとも出力ノードND1を形成するフローティングディフュージョンFD1をリセットレベルにリセットしてから各サブ期間の終了まで出力バッファ部211による電圧信号VSLとランプ状のサブ参照電圧RAMPとを比較するAD変換処理を繰り返し実行することにより、出力ノードND1を形成するフローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑止あるいはキャンセルし、画像劣化を抑止しつつ実質的に広ダイナミックレンジ化を実現している。
【0081】
図9は、本発明の第1の実施形態に係るメモリ部および出力回路の構成例を示す図である。
【0082】
比較器221において、第1の比較処理CMPR1によりフローティングディフュージョンFD1のオーバーフロー電荷に応じた電圧信号がデジタル化された第1の比較結果信号SCMP1、および、第2の比較処理CMPR2によりフォトダイオードPD1の蓄積電荷がデジタル化された第2の比較結果信号SCMP2は、関連付けられてメモリ231,232にデジタルデータとして記憶される。
メモリ部230はSRAMやDRAMにより構成され、デジタル変換された信号が供給され、フォトコンバージョン符号に対応し、画素アレイ周辺の出力回路40の外部IOバッファ41により読み出すことができる。
【0083】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置10におけるフレーム読み出しシーケンスの一例を示す図である。
ここで、固体撮像装置10におけるフレーム読み出し方式の一例について説明する。
図10において、TSはタイムスタンプADCの処理期間を示し、LinはリニアADCの処理期間を示している。
【0084】
上述したように、オーバーフロー電荷は蓄積期間PI中にフローティングディフュージョンFD1に蓄積される。タイムスタンプADCモードは蓄積時間PI中に動作する。
実際には、タイムスタンプADCモードは、蓄積期間PI中であって、フローティングディフュージョンFD1がリセットされるまでの期間に動作する。
タイムスタンプADCモードの動作が終了すると、リニアADCモードに遷移し、フローティングディフュージョンFD1のリセット時の信号(VRST)を読み出してデジタル信号をメモリ部230に格納するように変換する。
さらに蓄積期間PIの終了後、リニアADCモードではフォトダイオードPD1の蓄積電荷に応じた信号(VSIG)を読み取ってデジタル信号をメモリ部230に格納するように変換する。
読み出されたフレームは、メモリノードからのデジタル信号データの読み出しによって実行され、そのようなMIPIデータフォーマットを有する、たとえば出力回路40のIOバッファ41(図9)を介して固体撮像装置10(イメージセンサ)の外部に送られる。この動作は、全画素(ピクセル)アレイに対してグローバルに実行することができる。
【0085】
また、画素部20において、全画素同時にリセットトランジスタRST1−Trと転送トランジスタTG1−Trを使ってフォトダイオードPD1をリセットすることで、全画素同時並列的に露光を開始する。また、所定の露光期間(蓄積期間PI)が終了した後、転送トランジスタTG1−Trを使って光電変換読み出し部からの出力信号をAD変換部220、メモリ部230でサンプリングすることで、全画素同時並列的に露光を終了する。これにより、完全なシャッタ動作を電子的に実現する。
【0086】
垂直走査回路30は、タイミング制御回路50の制御に応じてシャッタ行および読み出し行において行走査制御線を通してデジタル画素200の光電変換読み出し部210の駆動を行う。
垂直走査回路30は、タイミング制御回路50の制御に応じて、各デジタル画素200の比較器221に対して、第1の比較処理CMPR1、第2の比較処理CMPR2に準じて設定される参照電圧VREF1,VREF2を供給する。
また、垂直走査回路30は、アドレス信号に従い、信号の読み出しを行うリード行と、フォトダイオードPDに蓄積された電荷をリセットするシャッタ行の行アドレスの行選択信号を出力する。
【0087】
出力回路40は、たとえば図9に示すように、画素部20の各デジタル画素200のメモリ出力に対応して配置されたIOバッファ41を含み、各デジタル画素200から読み出されるデジタルデータを外部に出力する。
【0088】
タイミング制御回路50は、画素部20、垂直走査回路30、出力回路40等の信号処理に必要なタイミング信号を生成する。
【0089】
本第1の実施形態において、読み出し部60は、たとえばグローバルシャッタモード時に、デジタル画素200からの画素信号の読み出し制御を行う。
【0090】
(FD1の暗電流の影響を抑止またはキャンセルするための第1の比較処理期間におけるAD変換処理方法)
以上、固体撮像装置10の各部の構成および機能の概要、特に、画素部20およびデジタル画素の構成および機能について説明した。
以下に、フローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑止またはキャンセルするための第1の比較処理期間におけるAD変換処理方法等について詳述する。
【0091】
まず、暗電流の影響を抑止またはキャンセルするための第1の比較処理期間におけるAD変換処理方法等について説明する前に、タイムスタンプADCモード時にフローティングディフュージョンFD1の暗電流が、前述した基本的な第1の比較処理に及ぼす影響について考察する。
【0092】
比較器221において、高輝度側の入力範囲はフォトダイオードPD1のリニアフルウェル(Linear Fill Well)によって制限されないが、ADCクロック周波数によって制限されるため、リニアADCと組み合わせたタイムスタンプADCはデジタル画素センサアーキテクチャのダイナミックレンジを大幅に増加させることが可能である。
この技術は、たとえば近未来の有望なグローバルシャッタ技術となり得る。
【0093】
しかし、フローティングディフュージョンFD1はタイムスタンプADCフェーズで使用されるため、フローティングディフュージョンFD1の暗電流とショットノイズによって誤判定や非感受性入力範囲が発生し、特に露光時間を長くする必要がある場合には有害となるおそれがある。
【0094】
通常の3μm画素のフローティングディフュージョンFD1の暗電流は、60°C、10msで約300elであり、これは60mVrmsに相当すると考えられる。この変動は、約0.3mVrmsである比較器(コンパレータ)リセットノイズ変動と比較して非常に大きい。
【0095】
図11は、タイムスタンプADCモード時にフローティングディフュージョンFD1の暗電流が、前述した基本的な第1の比較処理に及ぼす影響について説明するための図である。
【0096】
図11に示すように、フローティングディフュージョンFD1の暗電流が発生しない理想的な状況では、FD電圧VFDIRは同じレベルに維持され、オーバーフロー電荷のみが電圧降下を生じさせる。
しかしながら、実際には、フローティングディフュージョンFD1の暗電流が発生し、それに応じてFD電圧VFDDCが低下する。
フローティングディフュージョンFD1の暗電流は、期間が最大10msのタイムスタンプADC(TS−ADC)期間である第1の比較処理期間PCMPR1に比例する。
したがって、比較器221の反転(フリップ)時間の変化は、フローティングディフュージョンFD1の暗電流とショットノイズによって大きく影響され、カラム全体の画像のオフセットである固定パターンノイズ(FPN)やA変換伝達曲線に非線形性が生じるおそれがある。
また、フローティングディフュージョンFD1の暗電流の電荷を実際のオーバーフロー電荷から分離することは困難であることから、接合する第1のA変換伝達曲線TC1と第2のAD変換伝達曲線TC2の接合点(AD変換コード境界)に接合ギャップ(AD変換コードギャップ)が生じ、その切り替え領域においての直線性(リニアリティ)が必ずしも保証されない場合がある。
このような場合、スムーズな切り替えが不能となり、その不連続点がノイズとなってしまい、いわゆるトーンジャンプ等の画像劣化の要因になる。
したがって、フローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑えることが重要である。

【0097】
図12は、フローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑止またはキャンセルするための第1の比較処理期間におけるAD変換処理方法等について説明するための図である。
図13は、図12の第1の比較処理期間におけるAD変換処理方法によるAD変換伝達曲線等について説明するための図である。
【0098】
本例の第1の比較処理のタイムスタンプADCでは、出力ノードND1を形成するフローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑止あるいはキャンセルするために、第1の比較処理の期間PCMPR1が複数(図12の例では一例として7)のサブ期間PSUB1〜PSUB7に分割され、各サブ期間PSUB1〜PSUB7のそれぞれにおいて、出力バッファ部211による電圧信号VSLと参照電圧VREF1とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するAD変換処理を行う。
すなわち、読み出し部60は、複数のサブ期間PSUB1〜PSUB7の各々において、少なくとも出力ノードND1を形成するフローティングディフュージョンFD1をリセットレベルにリセットしてから出力バッファ部211による電圧信号VSLと参照電圧VREF1とを比較するAD変換処理を行う。
より具体的には、読み出し部60は、複数のサブ期間PSUB1〜PSUB7の各々において、少なくとも出力ノードを形成するフローティングディフュージョンFD1をリセットレベルにリセットしてから各サブ期間PSUB1〜PSUB7の終了まで出力バッファ部211による電圧信号VSL(VFD)とランプ状のサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17とを比較するAD変換処理を繰り返し実行する。
【0099】
換言すれば、このタイムスタンプADCにおけるAD変換処理においては、AD変換のランプ波形を畳み込み(フォールドあるいは折り返す)することによって、フローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響をキャンセルまたは抑制することを目的としており、冗長なAD変換伝達曲線を作成している。
【0100】
タイムスタンプADCにおける本AD変換処理方法においては、複数のADC変換タイムスロットで露光時間(蓄積期間)を分割し、最初にフローティングディフュージョンFD1をクリアしてアナログCDSを行った後、出力バッファ部211による電圧信号VSLとランプ状のサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17とを比較するAD変換処理を繰り返し実行する。
このように、フローティングディフュージョンFD1を定期的にクリアすることにより、より高い動作温度でもフローティングディフュージョンFD1の暗電流が無視できるようになる。
【0101】
たとえば、フローティングディフュージョンFD1の暗電流が10msで100el/secの場合、サブAD変換動作を16回行うことで、1.25msの周期的AD変換では6.25elしか生成されない。
これは光子ショットノイズよりもはるかに小さく、5kelのフルウェル容量の場合、通常〜70elである。
したがって、フローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響は、光子ショットノイズによってマスクされる。
【0102】
ADC_CODE <n-1:0>はMSBビットとLSBビットにセグメント化される。
ここで、MSBビットは、比較器221が反転するときのAD変換サイクル数を表している。また、LSBビットは各AD変換サイクル内の細かいコードステップを表している。このようにして、ミッシングコードを生成することなく、比較器221の反転(フリップ)タイミングを記録することができる。
【0103】
上記のスキームにより、AD変換伝達曲線TCのオーバーラップ領域を作成することが可能となる。
このオーバーラップによって、サブ期間で細かくAD変換を行ったとしても、継ぎ目でのコードジャンプを発生させることなく、タイムスタンプ(TS)AD変換コードを再現することができる。
また、デジタル画素200のソースフォロアバイアス電流と比較器(コンパレータ)221のバイアス電流を停止して消費電力を節約することができる。
また、AD変換毎にアナログCDS動作を行うことができるため、1/fノイズやオフセットを含むRTSノイズを大幅に抑えることができ、タイムスタンプ(TS)ADCのノイズ読み出しを低減することができる。
【0104】
上述したように、タイムスタンプ(TS)ADCモードの第1の比較処理期間中に複数のサブAD変換を行うが、各サブ期間PSUB1〜PSUB7に設定されるランプ状のサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17の最終値は、たとえば図12に示すように、99%に設定される。
このサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17の最終値は、は任意の値に設可能である。
ただし、サブ参照電圧RAMP11〜RAMP17の最終値は、少なくとも最終のサブ期間PSUB7において、フローティングディフュージョンFD1の暗電流により出力バッファ部211の出力電圧信号が変化しても比較器221における誤判定を回避し得るレベルに設定されることが望ましい。
最終値のパーセンテージは、実際の回路条件によって異なる。
【0105】
また、図12の例では、ADC_CODEをMSBおよびLSBセグメントに分類している。ここで、次のサブAD変換が開始されるとMSBコードが増減する。LSBコードはサブAD変換時に増減し、サブAD変換開始時には初期値にリセットされる。
【0106】
図12に示すように、ランプ波形のいわゆるフォールディング特性のために、比較器221の複数の反転(フリップ)ポイント(たとえば、P1、P2およびP3)が存在する。
ただし、最初の反転ポイントのADC_CODEはASICピクセルのSRAMに格納され、ASICピクセルに内蔵されているメモリ上書き保護機能により安全に保持される。なお、反転ポイントP1、P2、P3は同じ最終AD変換コードを表す。
【0107】
そして、本実施形態においては、図13に示すように、各サブ期間PSUB1〜PSUB8(図13の例ではサブ期間の数は一例として8としている)におけるAD変換伝達関数STC1〜STC8は逆伝達関数を適用して線形化される。
複数のサブ期間PSUB1〜PSUB8に得られるA変換伝達曲線は、少なくとも2つのサブ期間でオーバーラップする領域を含む。
このように、A変換伝達関数が少し重なっているので、1つの入射光には複数のAD変換コードがある。図13のポイントP11、P12およびP13のようなものである。
図13において、MSB <y-1:0>はサブAD変換の伝達回数を表し、LSB <n-y:0>は等価FD電圧の範囲を表している。
【0108】
以上のように、フローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑止またはキャンセルするための第1の比較処理期間におけるAD変換処理方法においては、複数のADC変換タイムスロットで露光時間(蓄積期間)を分割し、最初にフローティングディフュージョンFD1をクリアしてアナログCDSを行った後、出力バッファ部211による電圧信号VSLとランプ状のサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17とを比較するAD変換処理を繰り返し実行する。
これにより、フローディングディフュージョンFD1の暗電流の影響を除外して、タイムスタンプADC(TS-ADC)とリニアADC(LIN-ADC)の境界でAD変換コードギャップを減少させることが可能となる。
また、1/fやRTSなどの低周波ノイズは、AD変換周期が短いためアナログCDS動作によって大幅に除去される。
【0109】
また、各サブ期間PSUB1〜PSUB7に設定されるランプ状のサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17の最終値は、たとえば99%に設定される。
これにより、各サブAD変換時に、比較器221のクロックフィードスルーとミスマッチのために誤った比較器221の反転(フリップ)が発生しないようすることが可能となる。
【0110】
また、複数のサブ期間PSUB1〜PSUB8に得られるA変換伝達曲線は、少なくとも2つのサブ期間でオーバーラップする領域を含むことができることから、AD変換コードが失われることを防止することが可能となる。
【0111】
(固体撮像装置10の積層構造)
次に、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の積層構造について説明する。
【0112】
図14(A)および(B)は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の積層構造について説明するための模式図である。
図15は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10の積層構造について説明するための簡略断面図である。
【0113】
本第1の実施形態に係る固体撮像装置10は、第1の基板(上基板)110と第2の基板(下基板)120の積層構造を有する。
固体撮像装置10は、たとえばウェハレベルで貼り合わせた後、ダイシングで切り出した積層構造の撮像装置として形成される。
本例では、第1の基板110と第2の基板120が積層された構造を有する。
【0114】
第1の基板110には、その中央部を中心として画素部20の各デジタル画素200の光電変換読み出し部210が形成されている。
第1の基板110の光Lが入射側である第1面111側にフォトダイオードPDが形成され、その光入射側にマイクロレンズMCLやカラーフィルタが形成されている。
第1の基板110の第2面側に転送トランジスタTG1−Tr,リセットトランジスタRST1−Tr,ソースフォロワトランジスタSF1−Tr,カレントトランジスタIC1−Trが形成されている
【0115】
このように、本第1の実施形態においては、第1の基板110には、基本的に、デジタル画素200の光電変換読み出し部210が行列状に形成されている。
【0116】
第2の基板120には、各デジタル画素200のAD変換部220、メモリ部230がマトリクス状に形成されている。
また、第2の基板120には、垂直走査回路30、出力回路40、およびタイミング制御回路50も形成されてもよい。
【0117】
このような積層構造において、第1の基板110の各光電変換読み出し部210の読み出しノードND2と第2の基板120の各デジタル画素200の比較器221の反転入力端子(−)とが、たとえば図3に示すように、それぞれ信号線LSGN1、マイクロバンプBMPやビア(Die−to−Die Via)等を用いて電気的な接続が行われている。
また、本実施形態においては第1の基板110の各光電変換読み出し部210の読み出しノードND2と第2の基板120の各デジタル画素200の比較器221の反転入力端子(−)とが、結合キャパシタC221によりAC結合されている。
【0118】
(固体撮像装置10の読み出し動作)
以上、固体撮像装置10の各部の特徴的な構成および機能について説明した。
次に、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10のデジタル画素200の画素信号の読み出し動作等について詳述する。
【0119】
図16は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置の所定シャッタモード時の主として画素部における読み出し動作を説明するためのタイミングチャートである。
図17(A)〜(D)は、本第1の実施形態に係る固体撮像装置の所定シャッタモード時の主として画素部における読み出し動作を説明するための動作シーケンスおよびポテンシャル遷移を示す図である。
【0120】
まず、読み出し動作を開始するに当たって、図16および図17(A)に示すように、各デジタル画素200のフォトダイオードPD1およびフローティングディフュージョンFD1をリセットするグローバルリセットが行われる。
グローバルリセットにおいては、全画素同時にリセットトランジスタRST1−Trと転送トランジスタTG1−Trが所定期間導通状態に保持されて、フォトダイオードPD1およびフローティングディフュージョンFD1がリセットされる。そして、全画素同時にリセットトランジスタRST1−Trと転送トランジスタTG1−Trが非導通状態に切り替えられて、全画素同時並列的に露光、すなわち電荷の蓄積が開始される。
【0121】
そして、図16および図17(B)に示すように、オーバーフロー電荷に対するタイムスタンプ(TS)ADCモードの動作が開始される。
オーバーフロー電荷は蓄積期間PI中にフローティングディフュージョンFD1に蓄積される。タイムスタンプADCモードは蓄積時間PI中、具体的には、蓄積期間PI中であって、フローティングディフュージョンFD1がリセットされるまでの期間に動作する。
【0122】
タイムスタンプ(TS)ADCモードにおいては、光電変換読み出し部210において、AD変換部220の第1の比較処理期間PCMP1に対応して、蓄積期間PIにフォトダイオードPD1から出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFD1に溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた電圧信号VSL1が出力される。
そして、AD変換部220の比較器221において、第1の比較処理CMPR1が行われる。
第1の比較処理のタイムスタンプADCでは、出力ノードND1を形成するフローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑止あるいはキャンセルするために、第1の比較処理の期間PCMPR1が、たとえば複数のサブ期間PSUB1〜PSUB7に分割され、各サブ期間PSUB1〜PSUB7のそれぞれにおいて、出力バッファ部211による電圧信号VSLと参照電圧VREF1とが比較され、デジタル化した第1の比較結果信号SCMP1を出力するAD変換処理が行われる。
より具体的には、複数のサブ期間PSUB1〜PSUB7の各々において、少なくとも出力ノードを形成するフローティングディフュージョンFD1をリセットレベルにリセットしてから各サブ期間PSUB1〜PSUB7の終了まで出力バッファ部211による電圧信号VSLとランプ状のサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17とを比較するAD変換処理を繰り返し実行される。
比較器221から各第1の比較結果信号SCMP1が出力され、第1の比較結果信号SCMP1に応じたデジタルデータがメモリ部230のメモリ231に格納される。
【0123】
次に、図16および図17(C)に示すように、オーバーフロー電荷に対するタイムスタンプ(TS)ADCモードの動作が終了し、リニアADCモードに遷移し、フローティングディフュージョンFD1のリセット期間PR2に移行する。
リセット期間PR2においては、リセットトランジスタRST1−Trが所定期間導通状態に保持されて、フローティングディフュージョンFD1がリセットされる。フローティングディフュージョンFD1のリセット時の信号(VRST)を読み出してデジタル信号がメモリ部230のメモリ232に格納される。
そして、リセットトランジスタRST1−Trが非導通状態に切り替えられる。この場合、蓄積期間PIは継続される。
【0124】
次に、図16および図17(D)に示すように、蓄積期間PIが終了し、転送期間PTに移行する。
転送期間PTにおいては、転送トランジスタTG1−Trが所定期間導通状態に保持されて、フォトダイオードPD1の蓄積電荷がフローティングディフュージョンFD1に転送される。
【0125】
リニア(Lin)ADCモードにおいては、光電変換読み出し部210において、AD変換部220の第2の比較処理期間PCMP2に対応して、蓄積期間PI終了後に、フォトダイオードPD1から出力ノードとしてのフローティングディフュージョンFD1に転送された蓄積電荷に応じた電圧信号VSL2が出力される。
そして、AD変換部220の比較器221において、第2の比較処理CMPR2が行われる。比較器221では、読み出し部60の制御の下、蓄積期間PI後に、フォトダイオードPD1から出力ノードであるフローティングフュージョンFD1に転送された蓄積電荷に応じた電圧信号VSL2に対するデジタル化した第2の比較結果信号SCMP2が出力され、第2の比較結果信号SCMP2に応じたデジタルデータがメモリ部230のメモリ232に格納される。
【0126】
メモリ部230に読み出された信号は、メモリノードからのデジタル信号データの読み出しによって実行され、そのようなMIPIデータフォーマットを有する、たとえば出力回路40のIOバッファ41を介して固体撮像装置10(イメージセンサ)の外部に送られる。この動作は、全画素(ピクセル)アレイに対してグローバルに実行される。
【0127】
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、固体撮像装置10は、画素部20において、デジタル画素として光電変換読み出し部210、AD変換部220、およびメモリ部230を含み、グローバルシャッタの動作機能を持つ、たとえば積層型のCMOSイメージセンサとして構成されている。
本第1の実施形態に係る固体撮像装置10において、各デジタル画素200がAD変換機能を有しており、AD変換部220は、光電変換読み出し部210により読み出される電圧信号と参照電圧とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力する比較処理を行う比較器221を有している。
そして、比較器221は、読み出し部60の制御の下、蓄積期間にフォトダイオードPD1から出力ノード(フローティングディフュージョン)FD1に溢れ出たオーバーフロー電荷に応じた電圧信号に対するデジタル化した第1の比較結果信号SCMP1を出力する第1の比較処理CMPR1と、蓄積期間後の転送期間にフローティングノードFD1(出力ノード)に転送されたフォトダイオードPD1の蓄積電荷に応じた電圧信号に対するデジタル化した第2の比較結果信号SCMP2を出力する第2の比較処理CMPR2と、を行う。
【0128】
そして、第1の比較処理のタイムスタンプADCでは、出力ノードND1を形成するフローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑止あるいはキャンセルするために、第1の比較処理の期間CMPR1が複数(本例では一例として7)のサブ期間PSUB1〜PSUB7に分割され、各サブ期間PSUB1〜PSUB7のそれぞれにおいて、出力バッファ部211による電圧信号VSLと参照電圧VREF1とを比較し、デジタル化した比較結果信号を出力するAD変換処理を行う。
【0129】
したがって、本第1の実施形態の固体撮像装置10によれば、蓄積期間にフォトダイオードから溢れ出る電荷をリアルタイムに利用し、フローティングディフュージョンFD1の暗電流の影響を抑制またはキャンセルすることが可能となることから、画像劣化を抑止しつつ実質的に広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化を実現することが可能となる。
また、本第1の実施形態によれば、実質的に広ダイナミックレンジ化、高フレームレート化を実現することが可能で、しかも低ノイズ化を図れ、有効画素領域を最大限に拡大することができ、コストあたりの価値を最大限に高めることが可能となる。
【0130】
また、本第1の実施形態によれば、複数のADC変換タイムスロットで露光時間(蓄積期間)を分割し、最初にフローティングディフュージョンFD1をクリアしてアナログCDSを行った後、出力バッファ部211による電圧信号VSLとランプ状のサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17とを比較するAD変換処理を繰り返し実行する。
これにより、フローディングディフュージョンFD1の暗電流の影響を除外して、タイムスタンプADC(TS-ADC)とリニアADC(LIN-ADC)の境界でAD変換コードギャップを減少させることが可能となる。
また、1/fやRTSなどの低周波ノイズは、AD変換周期が短いためアナログCDS動作によって大幅に除去することができる。
【0131】
また、各サブ期間PSUB1〜PSUB7に設定されるランプ状のサブ参照電圧RAMP11〜RAMP17の最終値は、たとえば99%に設定される。
これにより、各サブAD変換時に、比較器221のクロックフィードスルーとミスマッチのために誤った比較器221の反転(フリップ)が発生しないようすることが可能となる。
【0132】
また、複数のサブ期間PSUB1〜PSUB8に得られるA変換伝達曲線は、少なくとも2つのサブ期間でオーバーラップする領域を含むことができることから、AD変換コードが失われることを防止することが可能となる。
換言すれば、このオーバーラップによって、サブ期間で細かくAD変換を行ったとしても、継ぎ目でのコードジャンプを発生させることなく、タイムスタンプ(TS)AD変換コードを再現することができる
【0133】
また、本第1の実施形態の固体撮像装置10によれば、構成の複雑化を防止しつつ、レイアウト上の面積効率の低下を防止することができる。
【0134】
また、本第1の実施形態に係る固体撮像装置10は、第1の基板(上基板)110と第2の基板(下基板)120の積層構造を有する。
したがって、本第1の実施形態において、第1の基板110側を、基本的に、NMOS系の素子だけで形成すること、および、画素アレイにより有効画素領域を最大限に拡大することにより、コストあたりの価値を最大限に高めることができる。
【0135】
(第2の実施形態)
図18は、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置を説明するための図であって、タイムスタンプADCモード動作とリニアADCモード動作の選択処理の一例を示す図である。
【0136】
本第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aが、上述した第1の実施形態に係る固体撮像装置10と異なる点は、次のとおりである。
第1の実施形態に係る固体撮像装置10では、タイムスタン(TS)ADCモード動作とリニア(Lin)ADCモード動作が連続して行われる。
【0137】
これに対して、本第2の実施形態に係る固体撮像装置10Aでは、照度に応じてタイムスタンプ(TS)ADCモード動作とリニア(Lin)ADCモード動作を選択的に行うことができる。
【0138】
図18の例では、通常の照度である場合(ST1)、タイムスタンプADCモード動作とリニアADCモード動作が連続して行う(ST2)。
通常の照度ではなく、非常に(極めて)高照度の場合(ST1、ST3)、フォトダイオードPD1から電荷がフローティングディフュージョンFD1にオーバーフローする確率が高いことから、タイムスタンプADCモード動作のみを行う(ST4)、
通常の照度ではなく、非常に(極めて)高照度でもなく、非常に(極めて)低照度の場合(ST1、ST3、ST5)、フォトダイオードPD1から電荷がフローティングディフュージョンFD1にオーバーフローする確率がきわめて低いことから、リニアADCモード動作のみを行う(ST6)、
【0139】
本第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができることはもとより、読み出し処理の高速化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0140】
(第3の実施形態)
図19は、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置10Bにおけるフレーム読み出しシーケンスの一例を示す図である。
図20は、本第3の実施形態に係る比較器に参照電圧を入力した場合の光時間変換の状態を示す図である。
図20において,横軸がサンプリング時間を示し、縦軸がオーバーフロー信号における推定信号を示している。なお、ここでのオーバーフロー信号とは、転送トランジスタTG1−Trを導通状態にしてフォトダイオードPD1に電荷をためない条件(非オーバーフロー)にして見積もったものである。
図21は、適用される光の性質(適性)による非オーバーフロー電荷(信号)に対応する比較器221が反転するサンプリング時間を示している。
図21(A)および(B)は、本第3の実施形態におけるデジタルコードと光変換による電荷量との関係を示す図である。図21(A)はリニアのランプ信号を用いた場合の特性を、図21(B)はログ信号を用いた場合の特性を示している。
【0141】
本第3の実施形態において、読み出し部60は、比較器221に対して、蓄積期間にフォトダイオードPD1から出力ノードであるフローティングディフュージョンFD1に溢れ出ない場合であっても、第1の比較処理CMPR1により、電荷に応じた電圧信号VSLに対するデジタル化した第1の比較結果信号SCMP1を出力するように制御する。
【0142】
本第3の実施形態において、良好な変換処理を実現でき、場合によっては86dBのダイナミックレンジ性能を実現することができる。
【0143】
(第4の実施形態)
図22は、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像装置の画素の構成例を示す図である。
【0144】
本第4の実施形態に係る固体撮像装置10Cが、上述した第1の実施形態に係る固体撮像装置10と異なる点は、次のとおりである。
本第4の実施形態に係る固体撮像装置1CBでは、電流源としてのカレントトランジスタIC1−Trが第1の基板110側ではなく、たとえば第2の基板120側のAD変換部220の入力側に配置されている。
【0145】
本第4の実施形態によれば、上述した第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0146】
以上説明した固体撮像装置10,10A,10B,10Cは、デジタルカメラやビデオカメラ、携帯端末、あるいは監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器に、撮像デバイスとして適用することができる。
【0147】
図23は、本発明の実施形態に係る固体撮像装置が適用されるカメラシステムを搭載し
た電子機器の構成の一例を示す図である。
【0148】
本電子機器300は、図23に示すように、本実施形態に係る固体撮像装置10が適用可能なCMOSイメージセンサ310を有する。
さらに、電子機器300は、このCMOSイメージセンサ310の画素領域に入射光を導く(被写体像を結像する)光学系(レンズ等)20を有する。
電子機器00は、CMOSイメージセンサ310の出力信号を処理する信号処理回路(PRC)330を有する。
【0149】
信号処理回路330は、CMOSイメージセンサ310の出力信号に対して所定の信号処理を施す。
信号処理回路330で処理された画像信号は、液晶ディスプレイ等からなるモニタに動画として映し出し、あるいはプリンタに出力することも可能であり、またメモリカード等の記録媒体に直接記録する等、種々の態様が可能である。
【0150】
上述したように、CMOSイメージセンサ310として、前述した固体撮像装置10,10A,10Bを搭載することで、高性能、小型、低コストのカメラシステムを提供することが可能となる。
そして、カメラの設置の要件に実装サイズ、接続可能ケーブル本数、ケーブル長さ、設置高さなどの制約がある用途に使われる、たとえば、監視用カメラ、医療用内視鏡用カメラなどの電子機器を実現することができる。
【符号の説明】
【0151】
10,10A,10B,10C・・・固体撮像装置、20・・・画素部、PD1・・・フォトダイオード、TG1−Tr・・・転送トランジスタ、RST1−Tr・・・リセットトランジスタ、SF1−Tr・・・ソースフォロワトランジスタ、IC1−Tr・・・カレントトランジスタ、FD1・・・フローティングディフュージョン、200・・・デジタル画素、210・・・光電変換読み出し部、211・・・出力バッファ部、220・・・AD変換部、221・・・比較器、222・・・カウンタ、230・・・メモリ部、30・・・垂直走査回路、40・・・出力回路、50・・・タイミング制御回路、60・・・読み出し部、PSUB1〜PSUB8・・・サブ期間、RAMP11〜RAMP17・・・サブ参照電圧、300・・・電子機器、310・・・CMOSイメージセンサ、320・・・光学系、330・・・信号処理回路(PRC)。
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