(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持層データ更新ステップにて更新された前記支持層データに基づき、前記杭長設定ステップにて設定されている杭打ち地点毎の杭長の過不足状態を判定する杭長判定ステップを備え、
前記杭長変更ステップでは、前記杭長判定ステップでの判定結果に基づいて杭長を設定変更する請求項1記載の杭施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、大規模な敷地に大量の杭を施工する場合等では、精度の高い支持層データを作成するために必要となる地盤調査地点数が多くなる。そのため、杭打ち作業前の地盤調査に要する期間や費用が嵩み、全体工期の長期化や高コスト化を招く不都合がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、大規模な敷地に大量の杭を施工する場合等でも、地盤調査に要する期間や費用を抑えながら杭の施工を適切に行える杭施工方法及び杭施工管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、地盤調査地点の支持層深度情報から杭打ち対象地で想定される支持層の全貌を示す支持層データを作成する支持層データ作成ステップと、
前記支持層データ作成ステップにて作成された前記支持層データに基づいて杭打ち地点毎に杭長を設定する杭長設定ステップと、
杭打ち作業にて逐次取得される杭打ち地点毎の杭の支持層到達深度情報を前記支持層深度情報として追加して前記支持層データを更新する支持層データ更新ステップ
と、
前記支持層データ更新ステップにて更新された前記支持層データに基づいて杭長を設定変更する杭長変更ステップとを備える点にある。
【0007】
本構成によれば、支持層データ作成ステップにて地盤調査地点の支持層深度情報から支持層データを作成し、杭長設定ステップにて支持層データに基づいて杭打ち地点毎の杭長を設定して杭打ち作業を行うが、支持層データ更新ステップにて杭打ち作業にて逐次取得される支持層到達深度情報を支持層深度情報として追加して支持層データを更新する。
そのため、事前の地盤調査地点数が少なくて当初の支持層データの精度があまり高くなくても、杭打ち作業の進捗に連れて支持層データの精度を高めることができ、その精度を高めた支持層データに基づいて後続の杭打ち作業を行うことができる。
よって、大規模な敷地に大量の杭を施工する場合等でも、地盤調査地点数を極力少なくして地盤調査に要する期間や費用を抑えながら杭の施工を適切に行うことができる。
【0009】
更に、本構成によれば、支持層データ更新ステップにて更新された支持層データに基づいて杭打ち作業の途中で杭長を設定変更するので、その設定変更された杭長の杭を後続の杭打ち作業で使用し、後続の杭打ち作業の適切な実施を簡単・確実に行うことができる。
【0010】
本発明の第
2特徴構成は、前記支持層データ更新ステップにて更新された前記支持層データに基づき、前記杭長設定ステップにて設定されている杭打ち地点毎の杭長の過不足状態を判定する杭長判定ステップを備え、
前記杭長変更ステップでは、前記杭長判定ステップでの判定結果に基づいて杭長を設定変更する点にある。
【0011】
本構成によれば、支持層データ更新ステップにて更新された最新の精度の高い支持層データに基づき、杭長判定ステップにて現在設定されている杭打ち地点毎の杭長の過不足状態を適切に判定することができる。そして、その杭長判定ステップでの適切な判定結果に基づき、杭長変更ステップにて杭長を適切に設定変更することができる。
【0012】
本発明の第
3特徴構成は、第
2特徴構成に記載の杭施工方法に用いられる杭施工管理システムであって、
前記支持層データ作成ステップにて作成された前記支持層データに基づいて杭打ち地点毎に杭長を自動設定する杭長設定部と、
杭打ち作業にて逐次取得される前記支持層到達深度情報が前記支持層深度情報として追加された場合に、前記支持層データを自動更新する支持層データ更新部と、
前記支持層データ更新部にて前記支持層データが更新された場合に、前記杭長設定部にて設定された杭打ち地点毎の杭長の過不足状態を自動判定する杭長判定部と、を備える点にある。
【0013】
本構成によれば、杭長設定ステップにおける杭長の設定、及び、支持層データ更新ステップにおける支持層データの更新、並びに、杭長判定ステップにおける杭長の判定を自動的に行うことができ、前述した杭施工方法による杭の施工を少ない手間で効率良く行うことができる。
【0014】
本発明の第
4特徴構成は、前記支持層データが、杭打ち対象地の支持層の全貌を表示部に三次元的に表示した支持層モデルである点にある。
【0015】
本構成によれば、支持層データ作成ステップにて作成された支持層データや支持層データ更新ステップにて更新された支持層データが支持層モデルとして表示部に表示されるので、支持層の状態を立体的に把握することができ、その立体的な支持層の把握に基づいて前述した杭施工方法による杭の施工を適切に行うことができる。
【0016】
本発明の第
5特徴構成は、前記杭長判定部は、杭長の過不足状態の判定結果を杭打ち地点毎に前記支持層モデル上の該当する杭打ち地点に対応する位置に表示する点にある。
【0017】
本構成によれば、杭長判定ステップの後に行う杭長変更ステップにて、杭長が過剰な杭や杭長が不足する杭を支持層モデル上で杭打ち地点を特定しながら正確に把握しながら杭長の設定変更を一層適切に行うことができ、前述した杭施工方法による杭の施工を更に適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の杭施工方法及び杭施工管理システムの実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の杭施工方法のフローを示している。同
図1に示すように、この杭施工方法は、杭打ち対象地の地中の支持層の全貌を示す支持層モデルMs(支持層データの一例、
図3参照)を作成する支持層データ作成ステップ♯1、支持層モデルMsに基づいて杭打ち地点毎に杭長(杭の長さ)を設定する杭長設定ステップ♯2、杭打ち地点の位置と設定された杭長とを関連付けて示した杭伏図を作成する杭伏図作成ステップ♯3、杭伏図に基づいて杭打ち作業を行う杭施工ステップ♯4を順番に実施して杭の施工を行う。
【0020】
更に、この杭施工方法は、杭施工ステップ♯4の杭打ち作業にて逐次得られる杭の支持層到達深度情報に基づいて支持層モデルMsを更新する支持層データ更新ステップ♯5、更新した支持層モデルMsに基づいて杭長の過不足状態を判定する杭長判定ステップ♯6、その判定結果に基づいて杭長を設定変更する杭長変更ステップ♯7を順番に実施して後続の杭の杭長を適切なものに設定変更し、杭施工ステップ♯4に戻って後続の杭の施工を行う。
このように、杭施工ステップ♯4〜杭長変更ステップ♯7を繰り返すことで、杭工事の進捗に連れて支持層モデルMsの精度を高め、それに伴って杭長を適切なものに見直しながら、大規模な敷地に対する多量の杭の施工を適切に行うことができる。
【0021】
また、この杭施工方法は、上述した一連のステップ♯1〜♯7の少なくとも一部を自動的に実施する杭施工管理システム1を用いることで、大規模な敷地に対する多量の杭の施工を少ない手間で効率良く行えるとともに、多量の杭の施工を適切に管理することができる。
図2は杭施工管理システム1の概略構成を示している。この杭施工管理システム1は、例えば、1台又は複数台のコンピュータ等から構成され、
図2に示すように、CPUやメモリやハードディスク等を備えて各種の情報の演算や送受信が可能な制御部2と、各種の情報や画像を表示可能なモニタ等の表示部3等が備えられている。制御部2には、記憶部27の他、機能部として、例えば、支持層データ作成部21、杭長設定部22、杭伏図作成部23、支持層データ更新部24、杭長判定部25、杭長変更部26等が備えられ、詳細は後述するが、杭工事前と杭工事中の夫々のタイミングで所定の情報の入力を受けながら、杭施工ステップ♯4を除くステップ♯1〜♯3,♯5〜♯7の夫々を自動的に実施可能に構成されている。
以下、杭施工方法の各ステップ♯1〜♯7の具体的構成の一例について説明を加える。
【0022】
(支持層データ作成ステップ♯1)
支持層データ作成ステップ♯1では、杭打ち対象地に対するボーリング調査(地盤調査の一例)で得られた多数の地盤調査地点の支持層深度情報から杭打ち対象地で想定される支持層の全貌を立体的に表現した支持層モデルMsを作成する。
支持層モデルMsは、各種の表現方法を採用できるが、
図3に示す例では、地中における支持層の上面レベルの深度(深さ位置)の全貌を多数の等高線Cで表現し、更に、深度範囲毎に異なる色調や濃淡で表現したモデルとなっている。なお、支持層モデルMsは、図示は省略するが、例えば、支持層の傾斜角度が急なほど濃く表現するなど、更に支持層の傾斜角度を表現するようにしてもよい。
【0023】
本実施形態では、杭施工管理システム1にて支持層モデルMsを自動作成するように構成されている。具体的には、まず、設計者等が、ボーリング調査で得られた多数の地盤調査地点の支持層深度情報(位置情報に関連づけた支持層深度情報)に基づき、例えば、隣接する地盤調査地点の中間地点の支持層深度を隣接する調査地点の支持層深度の中間値とする等の算出形態により、地盤調査地点を含む設定面積毎等の多数の設定地点の支持層の三次元座標を示した支持層XYZ座標リストを作成し、その支持層XYZ座標リストを杭施工管理システム1に入力する。
【0024】
図2に示すように、杭施工管理システム1は、支持層XYZ座標リストが入力されると、記憶部27に支持層XYZ座標リストを記憶するとともに、支持層データ作成部21にて、例えば、隣接する設定地点のXYZ座標を3次元的に結ぶ等の演算形態で支持層モデルMsを自動作成する。そして、その支持層モデルMsを記憶部27に格納するとともに表示部3に表示する。
なお、杭施工管理システム1は、多数の設定地点のXYZ座標のうち、地盤調査地点のXYZ座標は、支持層モデルMsの作成のための確度の高い基本情報(固定情報)として他の設定地点のXYZ座標と識別可能に記憶することができる。つまり、この基本情報は、支持層データ更新ステップ♯5でも変更されない固定情報となる。
【0025】
(杭長設定ステップ♯2)
杭長設定ステップ♯2では、支持層データ作成ステップ♯1にて作成された支持層モデルMsに基づいて杭打ち地点毎に杭長を設定する。また、支持層モデルMsに対して杭の位置や杭長を追加表現した杭施工管理モデルMk(杭施工管理データの一例)を作成する。
【0026】
杭長の設定は、各種の方法を採用可能であるが、例えば、支持層XYZ座標リスト中の多数の設定地点とは関係なく、杭打ち地点の平面的な位置を示した杭位置図等の杭位置情報から支持層モデルMs上での杭打ち地点の平面的な位置を特定し、各杭打ち地点における床付け面から支持層までの深さ(長さ)に対して杭先端の所定の貫入量を加算する等の算出形態で杭長を算出して設定することができる。
【0027】
杭施工管理モデルMkは、
図4に示す例では、支持層モデルMsにおける各杭打ち地点に対応する位置に杭打ち地点を示す縦姿勢の直線状の杭表示体Kを重ねて表示したモデルとなっている。杭表示体Kの長さは、設定杭長に応じた長さとなっており、図示は省略するが、杭表示体Kの近傍に杭長を示す文字が表示される。なお、
図4〜
図7に示す杭施工管理モデルMkにおいて、支持層モデルMsに表現された色調や濃淡等は省略している。
【0028】
本実施形態では、杭施工管理システム1にて、杭打ち地点毎の杭長を自動設定するとともに、杭施工管理モデルMkを自動作成するように構成されている。
具体的には、設計者側の設計システム等から平面的な杭打ち地点の位置(平面配置)を示す杭位置図(杭位置情報の一例)を杭施工管理システム1に入力する。
図2に示すように、杭施工管理システム1は、杭位置図が入力されると、杭長設定部22にて、例えば、杭位置図に基づいて支持層モデルMs上での杭打ち地点の平面的な位置を特定し、各杭打ち地点における床付け面から支持層までの深さ(長さ)に対して杭先端の所定の貫入量を加算する等の演算形態で杭長を算出して自動設定する。更に、杭長設定部22は、上述した杭施工管理モデルMkを自動作成し、その杭施工管理モデルMkを記憶部27に格納するとともに表示部3に表示する。
【0029】
(杭伏図作成ステップ♯3)
杭伏図作成ステップ♯3では、図示は省略するが、前述した杭位置図上に各杭打ち地点の杭長を表示した杭伏図(構造図や施工図の一例)を作成する。
この杭伏図は、例えば、杭位置図上の各杭打ち地点の直上又は近傍に当該杭打ち地点に設定された杭長を表示した図とすることができる。
【0030】
本実施形態では、杭施工管理システム1にて杭伏図を自動作成するように構成されている。具体的には、杭施工管理システム1は、設計者等により杭伏図の作成が指令されると、既に入力されて記憶部27に格納されている杭位置図上に杭長設定ステップ♯2にて設定した杭長を追加表示する演算形態で杭伏図を自動作成し、その杭伏図を記憶部27に格納するとともに表示部3に表示する。
【0031】
(杭施工ステップ♯4)
杭施工ステップ♯4では、杭施工業者等が、杭打ち対象地における杭伏図等にて特定される位置に対して、杭伏図にて特定される杭長を有した既成杭等の杭を建て込む杭打ち作業を行う。また、その際、杭打ち地点毎に杭の支持層到達深度情報(杭打ち地点に関連付けられた支持層到達深度情報)を含む杭施工管理情報を取得し、例えば、タブレット等の端末機を操作して管理用サーバ等の施工管理情報データベース等に登録する。なお、杭は、既成杭に限らず、場所打ち杭等であってもよく、各種の構造の杭を適用することができる。
【0032】
(支持層モデル更新ステップ♯5)
支持層モデル更新ステップ♯5では、杭施工ステップ♯4の杭打ち作業にて逐次取得される杭打ち地点毎の杭の支持層到達深度情報を支持層深度情報として追加して支持層モデルMsを更新する。
【0033】
本実施形態では、杭施工管理システム1にて支持層モデルを自動更新するように構成されている。具体的には、前述した施工管理情報データベース等から杭打ち作業にて逐次取得される杭打ち地点毎の支持層到達深度情報を杭施工管理システム1に入力する。
図2に示すように、杭施工管理システム1は、杭打ち地点毎の支持層到達深度情報が入力されると、例えば、記憶部27に記憶されている支持層XYZ座標リスト対して、支持層到達深度情報としての支持層到達位置のXYZ座標を確度の高い基本情報として追加する。そして、その基本情報の追加により当初よりも基本情報が増えた支持層XYZ座標リスト中の各XYZ座標を3次元的に結ぶ等の演算形態で支持層モデルMsを自動更新(再構築)する。また、更新後の支持層モデルMsを記憶部27に格納するとともに表示部3に表示する。
【0034】
この支持層モデル更新ステップ♯5では、支持層XYZ座標リスト中における確度の高い基本情報(ボーリング調査の支持層深度情報、及び、杭の支持層到達深度情報)を増やす形態で支持層モデルMsを更新することで、支持層モデルMsの精度を高めることができる。なお、支持層モデル更新ステップ♯5において、支持層XYZ座標リスト中における基本情報を増やした場合に、その時点で取得している全ての基本情報に基づいて支持層XYZ座標リスト中の他の設定地点を再算出する形態で支持層XYZ座標リストを全体的に再構築し、その再構築した支持層XYZ座標に基づいて支持層モデルMsを自動更新するようにしてもよい。
【0035】
支持層モデルMsの更新例としては、例えば、
図3,4に示す支持層モデルMsが、等高線Cが一層密に表示された
図5に示す支持層モデルMsに更新される例を挙げることができる。
また、例えば、
図6(a)に示す支持層モデルMsが、主として支持層到達深度情報を取得した杭打ち地点の周辺エリアPで等高線Cが変更(更新)された
図6(b)に示す支持層モデルMsに更新される例等を挙げることができる。
【0036】
(杭長判定ステップ♯6)
杭長判定ステップ♯6では、支持層データ更新ステップ♯5にて更新された支持層モデルMsに基づき、杭長設定ステップ♯3にて設定されている杭打ち地点毎の杭長(その時点で設定されている現在杭長)の過不足状態を判定する。
【0037】
本実施形態では、支持層モデルMsが更新された場合に、杭施工管理システム1にて杭打ち地点毎の現在杭長の過不足状態を自動判定するように構成されている。
具体的には、杭施工管理システム1は、支持層データ更新ステップ♯5にて支持層モデルMsが更新されると、杭長判定部25にて、更新された支持層モデルMs上の支持層に対する杭打ち地点毎の現在杭長での根入れ深さを演算し、その根入れ深さに基づいて杭打ち地点毎の現在杭長の過不足状態を判定する。
【0038】
例えば、杭長判定部25は、杭長の過不足状態として、現在杭長の根入深さが杭径の2倍未満である場合は「余長が少ない」と判定し、現在杭長の根入深さが杭径の1倍未満である場合は「余長不足」と判定し、現在杭長の根入れ深さが杭径の5倍を超える場合は「余長過剰」と判定し、現在杭長の根入れ深さが杭径の2倍以上且つ杭径の5倍未満である場合は「余長適正」と判定する。
【0039】
そして、杭施工管理システム1の杭長判定部25は、
図5に示すように、杭施工管理モデルMkにおいて杭の過不足状態の判定結果を線種や色を異ならせる等により識別可能に表現し、その杭施工管理モデルMkを記憶部27に格納するとともに表示部3に表示する。
【0040】
例えば、
図5に示す杭施工管理モデルMkの例では、杭打ち地点を示す杭表示体Kのうち、「余長が少ない」と判定した杭打ち地点に相当する杭表示体K2を太点線で表示し、「余長不足」と判定した杭打ち地点に相当する杭表示体K3を太実線で表示している。また、「余長過剰」と判定した杭打ち地点に相当する杭表示体K4を太一点鎖線で表示し、「余長適正」と判定した杭打ち地点に相当する杭表示体K1を細実線で表示している。なお、これに代え、杭表示体K1〜K4を夫々異なる色で表示してもよい。
【0041】
図5に示す杭施工管理モデルMkは、
図3,4に示す支持層モデルMsから等高線Cが一層密に表示された
図5に示す支持層モデルMsに更新された場合に、一部の杭表示体Kが、「余長適正」を示す杭表示体K1から「余長が少ない」や「余長不足」や「余長過剰」を示す杭表示体K2〜K4に変更された場合を例示している。
【0042】
また、
図6(b)に示す杭施工管理モデルMkは、
図6(a)に示す支持層モデルMsから新たに支持層到達深度情報を取得した杭打ち地点の周辺エリアPの等高線Cが深くなる側に変更された
図6(b)に示す支持層モデルMsに更新された場合に、当該周辺エリアPに位置する杭表示体Kが、「余長適正」を示す杭表示体K1から「余長が少ない」や「余長不足」を示す杭表示体K2,K3に変更された場合を例示している。
【0043】
(杭長変更ステップ♯7)
杭長変更ステップ♯7では、支持層データ更新ステップ♯5にて更新された支持層モデルMsに基づく杭長判定ステップ♯6での判定結果に基づいて杭打ち地点毎の杭長を設定変更する。このように、支持層モデルMsが更新される毎に、杭長判定ステップ♯6での判定結果に基づいて杭長を設定変更することで、後続の杭打ち作業を適切且つ効率的に行うことができる。
【0044】
本実施形態では、杭施工管理システム1にて、杭長の設定変更を自動的に行うように構成されている。具体的には、杭施工管理システム1は、設計者等から杭長の設定変更が指令されると、杭長変更部26にて、例えば、「余長が少ない」や「余長不足」や「余長過剰」と判定した杭打ち地点の杭長を、「余長適正」と判定される範囲(根入深さが杭径の2倍以上且つ杭径の5倍未満となる範囲)で設定された設定杭長に自動的に設定変更する。
【0045】
なお、「余長が少ない」や「余長不足」や「余長過剰」と判定した杭打ち地点の杭長のうちで「余長不足」や「余長過剰」等の重要性の高い特定の一部の判定結果がなされた杭打ち地点の杭長のみを自動的に設定変更するように構成してもよい。
また、杭長の設定変更を人為的に行うようにしてもよく、その場合、例えば、設計者や施工管理者等が、杭施工管理モデルMkにて杭長の過不足状態の判定結果を確認して杭打ち地点毎に杭長の設定変更の要否を判断し、必要と判断した杭打ち地点の杭長を杭施工管理システム1に入力する等により杭長の設定変更を行うことができる。
【0046】
以上説明したように、本発明の杭施工方法によれば、杭工事の進捗に連れて支持層モデルMsの精度を高め、それに伴って杭長を適切なものに見直しながら、大規模な敷地に対する多量の杭の施工を適切に行うことができる。しかも、上述した杭施工管理システム1を用いることで、大規模な敷地に対する多量の杭の施工を少ない手間で効率良く行うことができ、更に、多量の杭の施工を適切に管理することができる。
【0047】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用するものに限られず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
(1)杭施工管理モデル(杭施工管理データ)Mkは、前述の実施形態で示した構成に限らず、種々の構成変更が可能である。
図7は、杭施工管理モデルMkの別実施形態を示している。
図7では、平面的な表示状態を示しているが、視点の変更指令等により立体的な表示状態に変更可能なものとなっている。また、杭施工管理モデルMk中の支持層モデルMsに表現された色調や濃淡等は省略している。
この杭施工管理モデルMkは、前述の実施形態でも識別可能に表示されていた「余長が少ない」、「余長不足」、「余長過剰」に加えて、直近の施工日に杭の施工が完了した「杭施工済み(直近の施工日)」や直近の施工日より前に杭の施工が完了した「杭施工済み(直近の施工日より前)」も識別可能に表示され、更に、「地盤調査地点」も識別可能に表示されるように構成されている。
【0049】
ちなみに、図示の例では、杭打ち地点を示す円形の杭表示体Kのうち、「余長が少ない」と判定した杭打ち地点に相当する杭表示体K2は円形の内部をグレーで塗り潰して表示し、「余長不足」と判定した杭打ち地点に相当する杭表示体K3は円形の内部を黒で塗り潰して表示している。「余長過剰」と判定した杭に相当する杭表示体K4は円形の内部に斜めハッチングを施して表示し、「余長適正」と判定した杭打ち地点に相当する杭表示体K1は円形の内部を白抜きにして表示している。
更に、「杭施工済み(直近の施工日)」に該当する杭打ち地点は、円形の杭表示体Kの外側に点線の円Dtを表示し、「杭施工済み(直近の施工日より前)」に該当する杭打ち地点は、円形の杭表示体Kの外側に実線の円Dbを表示している。また、「地盤調査地点」は×印Bを表示している。
【0050】
更に、この杭施工管理モデルMkは、
図8に示すように、表示変更指令等により、杭表示体Kの近傍に当該杭打ち地点における「杭天端の高さ」や「杭長」、「支持層深度」、「余長」に関する設計時の情報と工事計画時の情報と実施時の情報とを並べて表示することができる。
【0051】
(2)前述の実施形態では、杭長設定ステップ♯2において、各杭打ち地点における床付け面から支持層までの深さ(長さ)に対して杭先端の所定の貫入量を加算する等の算出形態等で各杭打ち地点の杭長を算出して設定する場合を例に示したが、例えば、このように算出形態等で算出した杭長に対して支持層深度が想定と異なるリスクを考慮した補正値を加えて設定することもできる。
【0052】
この場合、支持層深度が想定と異なるリスクの変化要因としては、杭打ち地点における杭芯位置の支持層の傾斜角度が考えられるので、例えば、杭打ち地点における杭芯位置の支持層の傾斜角度をθとして、設定値にsinθを乗じて得られた値等を補正値として杭長に加えるようにしてもよい。
また、これに代えて、又は、これに加えて、支持層深度が想定と異なるリスクの変化要因として、杭打ち地点における杭芯位置と最も近い地盤調査地点の距離が考えられるので、例えば、その距離をLとして、Lを設定値で除して得られた値等を補正値として杭長に加えるようにしてもよい。
【0053】
なお、このように算出した補正値の大小は、支持層深度が想定と異なるリスクの大小を示すものとなるので、例えば、この補正値の大小を杭施工管理モデルMk等に表示し、ボーリング調査の追加の要否等の検討資料とすることもできる。
【0054】
(3)前述の実施形態では、支持層データ作成ステップ♯1において、一部の作業を杭施工管理システム1を用いずに人為的に実施し、他部の作業を杭施工管理システム1にて自動的に実施する場合を例に示したが、全ての作業を人為的に実施したり、杭施工管理システム1にて自動的に実施したりしてもよい。
【0055】
(4)前述の実施形態では、杭長設定ステップ♯2、杭伏図作成ステップ♯3、支持層データ更新ステップ♯5、杭長判定ステップ♯6、杭長変更ステップ♯7の夫々において、全ての作業を杭施工管理システム1にて自動的に実施する場合を例に示したが、各ステップ♯2,♯3,♯5,♯6,♯7の夫々において、全ての作業を人為的に実施したり、一部の作業を人為的に実施し、他部の作業を杭施工管理システム1にて自動的に実施したりしてもよい。
【0056】
(5)前述の実施形態では、支持層の全貌を示す支持層データとして支持層の全貌を立体的に表現した支持層モデルMsを例に示したが、支持層データは、支持層の全貌に関する情報を表形式等で表現したリスト等であってもよい。
【0057】
(6)同様に、前述の実施形態では、杭施工管理データとして杭施工管理モデルMkを例に示したが、杭施工管理データは各種情報が表形式等で表示されたリスト等であってもよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。