特許第6987628号(P6987628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987628
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20211220BHJP
【FI】
   B60N2/06
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-237535(P2017-237535)
(22)【出願日】2017年12月12日
(65)【公開番号】特開2019-104346(P2019-104346A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆之
(72)【発明者】
【氏名】逸見 敏克
(72)【発明者】
【氏名】大上 真吾
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−035029(JP,U)
【文献】 実開昭53−108031(JP,U)
【文献】 特開2015−009589(JP,A)
【文献】 特開2008−024034(JP,A)
【文献】 特開昭56−031839(JP,A)
【文献】 実開平06−035028(JP,U)
【文献】 特開平10−006824(JP,A)
【文献】 実開平07−040249(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06−2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の背部を支持するシートバックを有するシートと、
フロア側に設けられたロアレール、該ロアレールに移動可能に係合し、前記シートが設けられるアッパレールからなるスライドレールと、
を有するシート装置であって、
前記ロアレールまたは前記アッパレールのどちらか一方側に設けられ、前記ロアレールまたは前記アッパレールのどちらか他方と当接可能な位置と、当接不可能な位置に移動可能に設けられたストッパと、
前記ストッパが前記他方と前記当接可能な位置にあるときには前記当接可能な位置方向へ、前記ストッパが前記他方と前記当接不可能な位置にあるときには前記当接不可能な位置方向へ付勢するターンオーバースプリングと、
からなるスライドストッパ機構を有し、
前記ストッパは、前記ロアレール側に設けられたベースに設けられ、
前記ターンオーバースプリングは、前記ストッパと前記ベースとの間に設けられている、
ことを特徴とするシート装置。
【請求項2】
車両の駐車状態信号に基づいて、前記ストッパを前記当接可能な位置と前記当接不可能な位置に駆動する駆動部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のシート装置。
【請求項3】
前記ストッパは、前記ベースに回転可能に設けられ、前記ベースに向かって突出するように形成された突部を有し、
前記ベースには、前記突部が挿通し、前記ストッパの回転範囲を規制する窓が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート装置。
【請求項4】
前記ストッパには、
前記アッパレールの後端部に当接可能なストッパ面と、
前記アッパレールの下面に当接すると、前記ストッパを前記当接不可能な位置方向へ移動させる力が発生する斜面と、
を有することを特徴とする請求項3に記載のシート装置。
【請求項5】
前記ストッパは、
回転軸方向に段を介して異なる2つの平面を有し、
該2つの平面のうち、一方の面に前記ストッパ面が形成され、他方の面に前記突部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者の背部を支持するシートバックを有するシートと、フロア側に設けられたロアレール、該ロアレールに移動可能に係合し、前記シートが設けられるアッパレールからなるスライドレールと、を有するシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられるシート装置では、通常のスライド範囲を超えて、更にスライド可能なシート装置が提案されている。尚、本明細書では、通常のスライド領域を通常スライド領域、通常スライド領域を越えたスライド領域をロングスライド領域という。
このようなシート装置では、アッパレールに当接可能なストッパを設け、通常は通常スライド領域内でのシートスライドとし、ストッパを退避させることでロングスライド領域までシートスライドできるようにしている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5073320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたシート装置では、ストッパは付勢部材で常にアッパレールに当接する方向に付勢され、ロングスライド領域へのシートスライドを規制している。 この規制を解除するには、付勢部材の付勢力に抗して人手でストッパを移動させる。即ち、ロングスライド領域までシートをスライド可能な状態となっている間は、人手で付勢部材の付勢力に抗してストッパを移動させ続ける必要があり、操作性が悪いという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その課題は、操作性が良いシート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したシート装置は、着座者の背部を支持するシートバックを有するシートと、フロア側に設けられたロアレール、該ロアレールに移動可能に係合し、前記シートが設けられるアッパレールからなるスライドレールと、を有するシート装置であって、前記ロアレールまたは前記アッパレールのどちらか一方側に設けられ、前記ロアレールまたは前記アッパレールのどちらか他方と当接可能な位置と、当接不可能な位置に移動可能に設けられたストッパと、前記ストッパが前記他方と前記当接可能な位置にあるときには前記当接可能な位置方向へ、前記ストッパが前記他方と前記当接不可能な位置にあるときには前記当接不可能な位置方向へ付勢するターンオーバースプリングと、からなるスライドストッパ機構を有し、前記ストッパは、前記ロアレール側に設けられたベースに設けられ、前記ターンオーバースプリングは、前記ストッパと前記ベースとの間に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の特徴は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート装置よれば、前記ロアレールまたは前記アッパレールのどちらか一方側に設けられ、前記ロアレールまたは前記アッパレールのどちらか他方と当接可能な位置と、当接不可能な位置に移動可能に設けられたストッパと、前記ストッパが前記他方と前記当接可能な位置にあるときには前記当接可能な位置方向へ、前記ストッパが前記他方と前記当接不可能な位置にあるときには前記当接不可能な位置方向へ付勢するターンオーバースプリングと、からなるスライドストッパ機構を有することにより、ストッパが前記アッパレールの後端部と当接可能/当接不可能な位置に移動すれば、ターンオーバースプリングにより、前記他方と前記当接可能な位置にあるときには前記当接可能な位置方向へ、前記ストッパが前記他方と前記当接不可能な位置にあるときには前記当接不可能な位置方向へ付勢される。
【0009】
よって、人手で付勢部材の付勢力に抗してストッパを移動させ続ける必要がなく、操作性が良い。
本発明の他の効果は、以下に述べる発明を実施するための形態並びに添付の図面から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ロック解除装置の分解斜視図である。
図2図1のF方向矢視図であって、駐車時で操作レバーが操作されていない状態を示す図である。
図3図1のR方向矢視図であって、駐車時で操作レバーが操作されていない状態を示す図である。
図4図1のF方向矢視図であって、駐車時で操作レバーが操作されている状態を示す図である。
図5図1のR方向矢視図であって、駐車時で操作レバーが操作されている状態を示す図である。
図6図1のF方向矢視図であって、駐車時以外で操作レバーが操作されていない状態を示す図である。
図7図1のR方向矢視図であって、駐車時以外で操作レバーが操作されていない状態を示す図である。
図8図1のF方向矢視図であって、駐車時以外で操作レバーが操作されている状態を示す図
図9図1のR方向矢視図であって、駐車時以外で操作レバーが操作されている状態を示す図、
図10】ロック解除装置の電気的構成を説明するブロック図である。
図11】スライドストッパ機構の分解斜視図である。
図12図11のF方向矢視図であって、駐車時の状態を示す図である。
図13図11のR方向矢視図であって、駐車時の状態を示す図である。
図14図11のF方向矢視図であって、駐車時以外の状態を示す図である。
図15図11のR方向矢視図であって、駐車時以外の状態を示す図である。
図16】実施形態のシート装置の全体構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて実施形態を説明する。
最初に、図16を用いて、本実施形態のシート装置の全体構成を説明する。図16は本実施形態のシート装置の全体構成を示す構成図である。
図において、シート1は着座者の臀部を支持するシートクッション3と、シートクッション3に対して前傾/後傾可能に設けられ、着座者の背部を支持するシートバック5とからなっている。
【0012】
フロアFには、一対のロアレール(車両の外側に設けられるアウタロアレール、車両の内側に設けられるインナロアレール)7と、ロアレール7に移動可能に係合し、シート1が設けられる一対のアッパレール(アウタロアレール、インナロアレール)9とからなる一対のスライドレール(アウタスライドレール、インナスライドレール)11が設けられている。
【0013】
更に、各スライドレール11には、アッパレール9の移動をロック/ロック解除するシートスライドロック装置(アウタスライドロック装置、インナスライドロック装置)13が設けられている。
シートスライドロック装置は、スプリング等の付勢力でもって、通常はアッパレール9の移動を禁止するロック状態にある。
【0014】
そして、本実施形態のシート装置では、シート1の後方に位置するシートバック5に、シートスライドロック装置13をロック解除するロック解除装置21と、ロック解除装置21のハンドル22とが設けられている。
また、本実施形態のシート装置は、通常スライド範囲NSを超えて、更にロングスライド領域LSまでスライド可能なシート装置である。シートスライドレール11には、アッパレール9に当接可能なストッパを有するスライドストッパ機構101が設けられ、通常は通常スライド領域NS内でのシートスライドとし、スライドストッパ機構101のストッパを退避させることでロングスライド領域LSまでシートスライドできるようにしている。
(ロック解除装置21)
図1図10を用いて,ロック解除装置21を説明する。図1はロック解除装置の分解斜視図、図2図1のF方向矢視図であって、駐車時で操作レバーが操作されていない状態を示す図、図3図1のR方向矢視図であって、駐車時で操作レバーが操作されていない状態を示す図、図4図1のF方向矢視図であって、駐車時で操作レバーが操作されている状態を示す図、図5図1のR方向矢視図であって、駐車時で操作レバーが操作されている状態を示す図、図6図1のF方向矢視図であって、駐車時以外で操作レバーが操作されていない状態を示す図、図7図1のR方向矢視図であって、駐車時以外で操作レバーが操作されていない状態を示す図、図8図1のF方向矢視図であって、駐車時以外で操作レバーが操作されている状態を示す図、図9図1のR方向矢視図であって、駐車時以外で操作レバーが操作されている状態を示す図、図10はロック解除装置の電気的構成を説明するブロック図である。
【0015】
最初に、図1を用いてロック解除装置21を説明する。
ベース23の背面には、ベース23に設けられた2つの穴23aを挿通する2本のねじ25を用いてモータ27が取り付けられている。このモータ27の出力軸に設けられた腕28の回転端部側には、長穴28aが形成されている。
【0016】
また、ベース23には、シートバック5のフレームに取り付けるための2つの穴23bが形成され、この穴23bには、角ナット29が溶接されている。
ベース23には、3つのアウタケーブルを係止する溝23c、23d、23eが形成されている。
【0017】
インナケーブル31aとインナケーブル31aを覆うアウタケーブル31bからなるケーブル31は、ハンドル22の動きを後述するレバーへ伝達するもので、溝23cには、アウタケーブル31bが係止されている。
インナケーブル33aとインナケーブル33aを覆うアウタケーブル33bからなるケーブル33は、後述するリンクの動きを2つあるシートスライドロック装置のうちの一方のシートスライドロック装置(アウタシートスライドロック装置)13へ伝達するもので、溝23dには、アウタケーブル33bが係止されている。
【0018】
インナケーブル35aとインナケーブル35aを覆うアウタケーブル35bからなるケーブル35は、後述するリンクの動きを2つあるシートスライドロック装置のうちの他方のシートスライドロック装置(インナシートスライドロック装置)13へ伝達するもので、溝23eには、アウタケーブル35bが係止されている。
【0019】
ベース23の表面には、レバー39とリンク41とが重なるように配置されている、そして、レバー39に形成された穴39a、リンク41に形成された穴41a、ベース23に形成された穴23fに嵌合するピン37を用いて、レバー39とリンク41とは、ベース23に対してピン37を中心にそれぞれ回転可能に設けられている。
【0020】
リンク41には、切り起こし部41bが形成され、この切り起こし部41bには、スライド部材(移動部材)43の直線的に延びる溝43aが係合している。よって、スライド部材43はリンク41に対して直線移動可能に設けられている。
中間部がピン37に巻回され、一方の端部がベース23に形成されたばね係止部23g
に係止され、他方の端部がリンク41に形成されたばね係止部41cに係止されたトーションスプリング45により、リンク41はベース23の溝23dの近傍のストッパ部(溝23d近傍の立壁面)23hに当接する方向に付勢されている。
【0021】
レバー39には、ケーブル31のインナケーブル31aが接続される溝39dが形成されている。
リンク41には、ケーブル33のインナケーブル33aが接続される穴41dと、ケーブル35のインナケーブル35aが接続される穴41eとが形成されている。そして、トーションスプリング45の付勢力に抗して回転すると、ケーブル33のインナケーブル33a、ケーブル35のインナケーブル35aが引かれ、2つのシートスライドロック装置(アウタシートスライドロック装置、インナシートスライドロック装置)13がロック解除されるようになっている。
【0022】
スライド部材43は、レバー39の当接部39bが当接可能な被当接部43bが形成されている。そして、スライド部材43はその被当接部43bがレバー39の当接部39bと当接可能な位置(図2図4参照)と、当接不可能な位置(図6図8参照)とに移動可能となっている。
【0023】
スライド部材43には、モータ27により回転駆動される腕28の長穴28aに嵌合する突部43c(図3図5図7図9参照)が形成されている。よって、腕28が正転または逆転すると、スライド部材43はその被当接部43bがレバー39の当接部39bと当接可能な位置と、当接不可能な位置とに移動する。
【0024】
よって、モータ27と、モータ27によって回転駆動され、スライド部材43の突部43cが嵌合する長穴28aを有する腕28とで駆動部30が構成されている。
一端部がスライド部材43に係止され、他端部がリンク41に係止されたターンオーバースプリング49により、スライド部材43は、レバー39と当接可能な位置(図2図4参照)にあるときには当接可能な位置方向へ、レバー39と当接不可能な位置にあるときには当接不可能な位置方向へ付勢されている。
【0025】
一端部がベース23に形成されたばね係止部23iに係止され、他端部がレバー39に形成されたばね係止部39cに係止されたコイルスプリング47により、レバー39は、ベース23に形成されたストッパ部23jに当接する方向に付勢されている。
よって、シート1の後方から操作可能なハンドル22によって操作されるレバー39と、レバー39が押接/押接不可能な2つの状態になることが可能で、レバー39に押接されると、ハンドル22の動きをシートスライドロック装置13に伝達するリンク41とで、ハンドル22の動きをシートスライドロック装置21へ伝達する伝達状態と、ハンドル22の動きをシートスライドロック装置21へ伝達しない遮断状態に移動可能なキャンセルリンク機構61が構成されている。
【0026】
次に、図10を用いて、ロック解除装置21の電気的構成を説明する。51はオートマチックトランスミッション(AT)がPレンジ(トランスミッションのギアを固定した駐車状態)になった際にAT用コンピュータより出されるPレンジ信号(駐車状態信号)を取り込む制御部で、53は制御部51によって制御されるモータ27の駆動回路である。
【0027】
ここで、上記構成のロック解除装置21の作動を説明する。
<駐車時>
図1図5を用いて説明する。
駐車時には、制御部51は、Pレンジ信号:ONに基づき、駆動回路53を介してモータ27を駆動し、スライド部材43をその被当接部43bがレバー39の当接部39bと当接可能な位置(図2図3)まで移動させている。
【0028】
ここで、ハンドル22を操作すると、ケーブル31のインナケーブル31aが引かれ、コイルスプリング47の付勢力に抗してレバー39を図2において反時計方向へ回転させる。
レバー39が回転すると、図4図5に示すように、レバー39の当接部39bがリンク41に設けられたスライド部材43の被当接部43bを押接し、リンク41はトーションスプリング45の付勢力に抗して図4において反時計方向に回転し、ケーブル33のインナケーブル33a,ケーブル35のインナケーブル35aを引いて、ロック状態にある2つのシートスライドロック装置(アウタシートスライドロック装置、インナシートスライドロック装置)13がロック解除され、シート1が移動可能となる。
<非駐車時>
図1図6図9を用いて説明する。
【0029】
非駐車時には、制御部51は、Pレンジ信号:OFFに基づいて、駆動回路53を介してモータ27を駆動し、スライド部材43をその被当接部43bがレバー39の当接部39bと当接不可能な位置(図6図7)まで移動させている。
ここで、ハンドル22を操作すると、ケーブル31のインナケーブル31aが引かれ、コイルスプリング47の付勢力に抗してレバー39を図6において反時計方向へ回転させる。
【0030】
レバー39が回転しても、図8図9に示すように、レバー39の当接部39bがリンク41に設けられたスライド部材43の被当接部43bを押せないので、リンク41は回転せず、ケーブル33のインナケーブル33a,ケーブル35のインナケーブル35aも引かれず、2つのシートスライドロック装置(アウタシートスライドロック装置、インナシートスライドロック装置)13はロック状態のままであり、シート1は移動できない。
【0031】
上記構成によれば,以下のような効果が得られる。
(1) ロック解除装置21は、シートバック5に設けられたハンドル22と、ハンドル22の動きをシートスライドロック装置(アウタシートスライドロック装置、インナシートスライドロック装置)13へ伝達する伝達状態と、ハンドルの動きをシートスライドロック装置(アウタシートスライドロック装置、インナシートスライドロック装置)13へ伝達しない遮断状態に移動可能なキャンセルリンク機構61と、車両のPレンジ信号(駐車状態信号)に基づいて、キャンセルリンク機構61を伝達状態と遮断状態に切り替える駆動部30とを有することで、車両の走行中には、キャンセルリンク機構61により、ハンドル22の動きは、シートスライドロック装置13に伝達されないので、着座者の意に反してシート1がスライドしない。
【0032】
(2) シートバック5に設けられたロック解除装置21(特にリンク41)で、2つのシートスライドロック装置(アウタシートスライドロック装置、インナシートスライドロック装置)13を駆動することで、アウタ、インナのシートスライドロック装置のロック解除の初動タイミングのズレが少なくなり、安定したロック解除が得られる。また、1つのリンク41だけなので、省スペースである。
【0033】
(3) スライド部材(移動部材)43はリンク41に対して直線移動するので、省スペースである。
(4) スライド部材43は、ターンオーバースプリング49により、レバー39と当接可能な位置(図2図4参照)にあるときには当接可能な位置方向へ、レバー39と当接不可能な位置にあるときには当接不可能な位置方向へ付勢されているので、安定した作動が得られる。
【0034】
本発明は,上記実施形態に限定するものではない。
上記実施形態では、移動部材として直線移動するスライド部材43で説明を行ったが、リンク41に対して回転可能に設けられた移動部材でもよい。
また、駐車状態信号として、オートマチックトランスミッションがPレンジ(トランスミッションのギアを固定した駐車状態)になった際にAT用コンピュータより出されるPレンジ信号を用いたが、他に、サイドブレーキが作動した際に出される信号を駐車状態信号としても良い。
(スライドストッパ機構101)
図11図15を用いて、スライドストッパ機構101を説明する。図11はスライドストッパ機構の分解斜視図、図12図11のF方向矢視図であって、駐車時の状態を示す図、図13図11のR方向矢視図であって、駐車時の状態を示す図、図14図11のF方向矢視図であって、駐車時以外の状態を示す図、図15図11のR方向矢視図であって、駐車時以外の状態を示す図である。
【0035】
ロアレール7側(フロアF側)に設けられるベース103の背面には、ベース103に設けられた2つの穴103aを挿通する2本のねじ105を用いてモータ107が取り付けられている。このモータ107の出力軸に設けられた腕108の回転端部には、ベース103方向に突出する突部108aが形成されている。この突部108aは、ベース103に形成された開口103bを挿通し、ベース103の表面へ突出している。
【0036】
ベース103の表面には、ストッパ111が配置される。このストッパ111の一方の端部(基端部)には、穴111aが形成されている。またベース103にも、穴111aに対向する穴103cが形成されている。そして、ストッパ111の穴111a、ベース103の穴103cに嵌合するピン113により、ストッパ111はピン113を中心にベース103に回転可能に取り付けられている。
【0037】
ストッパ111には、長穴111bが形成され、この長穴111bには、モータ107によって回転駆動される腕108の突部108aが嵌合している。よって、腕108が上方に向かって回転すると、ストッパ111も上方に向かって回転し、腕108が下方に向かって回転すると、ストッパ111も下方に向かって回転する。
【0038】
ストッパ111の回転端部には、ベース103に向かって突出する突部111cが形成され、この突部111cには、樹脂キャップ114が取り付けられている。このストッパ111の突部111c、樹脂キャップ114は、ベース103に形成された窓(穴)103dに挿通している。よって、ストッパ111は、突部111c、樹脂キャップ114が窓103dの上部ストッパとして機能する上辺103eと、下部ストッパとして機能する下辺103fとに当接する範囲で、回転可能となっている。
【0039】
ストッパ111の上部には、シートスライドレール11のアッパレール9の後端部に当接可能なストッパ面111eを有するストッパ部111dが形成されている。
ストッパ111が窓103dの上部ストッパとして機能する上辺103eに当接している状態では、図14図15に示すように、ストッパ部111dのストッパ面111eは、シートスライドレール11のアッパレール9の後端部に当接可能な位置にある。
【0040】
ストッパ111が窓103dの下部ストッパとして機能する下辺103fに当接している状態では、図12図13に示すように、ストッパ部111dのストッパ面111eは、シートスライドレール11のアッパレール9の後端部に当接不可能な位置にある。
ベース103とストッパ111との間には、一端部がストッパ111に係止され、他端部がベース103に係止された単一のターンオーバースプリング115が配置されている。このターンオーバースプリング115により、ストッパ111は、ストッパ面111eがシートスライドレール11のアッパレール9の後端部に当接可能な位置にあるときには当接可能な位置方向へ、ストッパ面111eがシートスライドレール11のアッパレール9の後端部に当接不可能な位置にあるときには当接不可能な位置方向へ付勢されている。
【0041】
また、ストッパ111のストッパ部111dには、アッパレール9の下面に当接すると、ストッパ111をアッパレール9の後端部と当接不可能な位置方向へ移動させる力が発生し、ストッパ部111d上に乗り上げたアッパレール9が移動可能となる斜面111fが形成されている。
【0042】
また、ストッパ111は、回転軸方向に段111gを介して異なる2つの平面を有し、2つの平面のうち、一方の面にはストッパ面が111eを有するストッパ部111dが形成され、他方の面には突部111cと穴111aが形成されている。
次に、スライドストッパ機構101の電気的構成は、ロック解除装置と同じで、オートマチックトランスミッションがPレンジ(トランスミッションのギアを固定した駐車状態)になった際にAT用コンピュータより出されるPレンジ信号(駐車状態信号)を取り込む制御部と、制御部によって制御されるモータ104の駆動回路からなっている。
【0043】
ここで、上記構成のスライドストッパ機構101の作動を説明する。
<駐車時>
図11図13を用いて説明する。
駐車時には、制御部は、Pレンジ信号:ONに基づいて、駆動回路を介してモータ107を駆動し、ストッパ面111eがシートスライドレール11のアッパレール9の後端部に当接不可能な位置までストッパ111を移動させる(図12図13参照)。即ち、ストッパ111を退避させる。
【0044】
この状態では、通常スライド領域NSに加え、ロングスライドLS領域までシート1が移動可能となる。
<非駐車時>
図11図14図15を用いて説明する。
【0045】
非駐車時には、制御部は、Pレンジ信号:OFFに基づいて、駆動回路を介してモータ107を駆動し、ストッパ面111eがシートスライドレール11のアッパレール9の後端部に当接可能な位置までストッパ111を移動させる(図14図15参照)。
この状態では、通常スライド領域NS内のみでシート1が移動可能となる。
【0046】
上記構成によれば,以下のような効果が得られる。
(1) ロアレール7側に設けられ、アッパレール9の後端部と当接可能/当接不可能な位置に移動可能に設けられたストッパ111と、ストッパ111がアッパレール9の後端部と当接可能な位置にあるときには当接可能な位置方向へ、ストッパ111がアッパレール9の後端部と当接不可能な位置にあるときには当接不可能な位置方向へ付勢するターンオーバースプリング115と、を有することにより、ストッパ111がアッパレール9の後端部と当接可能/当接不可能な位置に移動すれば、ターンオーバースプリング115により、ストッパ111がアッパレール9の後端部と当接可能な位置にあるときには当接可能な位置方向へ、ストッパ111がアッパレール9の後端部と当接不可能な位置にあるときには当接不可能な位置方向へ付勢される。よって、2つの位置での安定性がよく、また、人手で付勢部材の付勢力に抗してストッパ111を移動させ続ける必要がなく、操作性が良い。
【0047】
(2) 車両の駐車信号に基づいてストッパ111が駆動するため、安定した作動が得られる。
(3) ターンオーバースプリング115は、ベース103とストッパ111との間に設けられているので、ターンオーバースプリング115を保護するカバー等を設けなくても、他部材と干渉しにくい。
【0048】
(4) ストッパ111の突部111cがベース103に設けられた窓(穴)103dに挿通されているために、ストッパ111の回転範囲を規制しつつ、更に回転方向以外にストッパ111が傾いた際の規制面としても機能させることができる。
(5) ストッパ111のストッパ部111dには、アッパレール9の下面に当接すると、ストッパ111をアッパレール9の後端部と当接不可能な位置方向へ移動させる力が発生し、ストッパ部111d上に乗り上げたアッパレール9が移動可能となる斜面111fが形成されていることにより、シート1がロングスライド領域LSにあるとき、非駐車状態となり、退避していたストッパ111がアッパレール9の後端部と当接可能な位置に移動しても、シート1を通常スライド領域NSまでは移動できる。
【0049】
(6) ストッパ111は、回転軸方向に段111gを介して異なる2つの平面を有することにより、ストッパ111の強度が向上する。
また、2つの平面のうち、一方の面にはストッパ面が111eを有するストッパ部111dが形成され、他方の面には突部111cとストッパ111の回転中心である穴111aとが形成されていることにより、例えば、一方の面のストッパ部111dが衝撃等で変形しても、突部111cや穴111aが形成された他方の面への変形が阻止される。
【0050】
本発明は,上記実施形態に限定するものではない。
駐車状態信号として、オートマチックトランスミッションがPレンジ(トランスミッションのギアを固定した駐車状態)になった際にAT用コンピュータより出されるPレンジ信号を用いたが、他に、サイドブレーキが作動した際に出される信号を駐車状態信号としても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、ストッパ111をロアレール7側に設け、アッパレール9がストッパ111に当接するようにしたが、逆に、ストッパをアッパレール側に設け、ロアレール側(フロアF側)に当接するようにしても良い
【符号の説明】
【0052】
1 シート
5 シートバック
7 ロアレール
9 アッパレール
11 スライドレール
101 スライドストッパ機構
111 ストッパ
115 ターンオーバースプリング
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図16