特許第6987648号(P6987648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6987648-連結構造及び連結方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987648
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】連結構造及び連結方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/02 20060101AFI20211220BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20211220BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   F16L23/02 D
   F16B7/18 B
   F16J15/10 L
   F16J15/10 T
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-2483(P2018-2483)
(22)【出願日】2018年1月11日
(65)【公開番号】特開2019-120387(P2019-120387A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】下田 純之
(72)【発明者】
【氏名】田頭 佑司
(72)【発明者】
【氏名】原田 恭之
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−008897(JP,A)
【文献】 実開平07−010683(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3152172(JP,U)
【文献】 実開昭57−112190(JP,U)
【文献】 特開昭58−054293(JP,A)
【文献】 実開昭56−060887(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/00 − 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管体及び第2管体を連結する連結構造であって、
前記第1管体は、軸線に沿って筒状に延びるとともに前記第2管体と連結される端部に第1フランジ部を備え、
前記第2管体は、前記軸線に沿って筒状に延びるとともに前記第1管体と連結される端部に第2フランジ部を備え、
前記第1フランジ部の径方向の第1位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第1対向面と、
前記第2フランジ部の前記第1位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第2対向面と、
前記第1フランジ部の前記第1対向面の前記第1位置の内周側の第2位置に設けられるとともに前記軸線回りに円環状に形成される凹溝部と、
前記第2フランジ部の前記第2対向面前記第2位置に設けられるとともに前記軸線回りに円環状に形成される突起部と、
前記軸線回りに円環状に形成されるとともに前記凹溝部に配置され、前記第1対向面と前記第2対向面の少なくとも一部を接触させることにより前記突起部により圧縮変形するシール部と、
前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の前記第1位置の外周側の第3位置に取り付けられるとともに前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部を接触させる軸力を付与する複数の締結部材と、
前記第1フランジ部の前記第3位置の外周側の第4位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第1外周突部と、
前記第2フランジ部の前記第4位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第2外周突部と、を備え、
前記第1外周突部及び前記第2外周突部は、
前記第1管体の内部および前記第2管体の内部の圧力が所定圧力未満である場合に、前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部が接触しかつ前記複数の締結部材の前記軸力が付与された状態で、前記軸線方向に所定範囲の隙間を空け
前記第1管体の内部および前記第2管体の内部の圧力が前記所定圧力以上である場合に、互いに接触するように配置される連結構造。
【請求項2】
前記シール部は、
前記凹溝部に配置され、前記軸線回りに円環状に形成される第1シール部材と、
前記凹溝部に配置され、前記軸線回りに円環状に形成され、前記第1シール部材の外周側または内周側に配置される第2シール部材とを備える請求項1に記載の連結構造。
【請求項3】
前記第1外周突部は、前記軸線回りの同一径周上の複数位置に設けられており、
前記第2外周突部は、前記軸線回りの前記同一径周上の複数位置であって前記第1外周突部に少なくとも一部が対向する位置に設けられている請求項1または請求項2に記載の連結構造。
【請求項4】
前記第1外周突部は、前記軸線回りの同一径周上の位置に連続して設けられており、
前記第2外周突部は、前記軸線回りの前記同一径周上の位置に連続して設けられている請求項1または請求項2に記載の連結構造。
【請求項5】
第1管体及び第2管体を連結する連結構造を用いた連結方法であって、
前記第1管体は、軸線に沿って筒状に延びるとともに前記第2管体と連結される端部に第1フランジ部を備え、
前記第2管体は、前記軸線に沿って筒状に延びるとともに前記第1管体と連結される端部に第2フランジ部を備え、
前記連結構造は、
前記第1フランジ部の径方向の第1位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を有する第1対向面と、
前記第2フランジ部の前記第1位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を有する第2対向面と、
前記第1フランジ部の前記第1対向面の前記第1位置の内周側の第2位置に設けられるとともに前記軸線回りに円環状に形成される凹溝部と、
前記第2フランジ部の前記第2対向面の前記第2位置に設けられるとともに前記軸線回りに円環状に形成される突起部と、
前記軸線回りに円環状に形成されるとともに前記凹溝部に配置され、前記第1対向面と前記第2対向面の少なくとも一部を接触させることにより前記突起部により前記軸線に沿って圧縮変形するシール部と、
前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の前記第1位置の外周側の第3位置に取り付けられるとともに前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部を接触させる軸力を付与する複数の締結部材と、
前記第1フランジ部の前記第3位置の外周側の第4位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第1外周突部と、
前記第2フランジ部の前記第4位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第2外周突部と、を備え、
前記第1外周突部及び前記第2外周突部は、
前記第1管体の内部および前記第2管体の内部の圧力が所定圧力未満である場合に、前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部が接触しかつ前記複数の締結部材の軸力が付与された状態で、前記軸線方向に所定範囲の隙間を空け
前記第1管体の内部および前記第2管体の内部の圧力が前記所定圧力以上である場合に、互いに接触するように配置され、
前記シール部を前記凹溝部に配置する工程と、
前記第3位置に複数の締結部材を締結して前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部を接触させる軸力を付与する工程と、を備える連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1管体と第2管体とを連結する連結構造及び連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体等が流通する管部材の端部のフランジ部と他の管部材のフランジ部とをボルト等により連結する連結構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、一方の管部材のフランジ部と他方の管部材のフランジ部との間に流動性シール部材を配置し、流動性シール部材を配置した位置の内周側と外周側に溝及び溝に挿入される溝挿入部を設け、溝と溝挿入部との間に流動性シール部材を行き渡らせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−138616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、火力発電プラントなどに使用する温度と圧力の高い蒸気などの流体を流通する大型配管に使用するフランジ部においては、大型構造でのシール性能を維持するとともに、配管温度や圧力によりフランジ部の一部に変形につながる応力が生じても、内部流体の漏出を防止する信頼性の高いシール構造が必要である。また、発明者らの経験から、フランジ部を締め付ける締結ボルトにおいてもサイズが500Aを超える大型の配管用になると、圧力の高い蒸気などの流体を流通させると、均一に安定なる締め付け力を維持してシール性を維持することが難しい場合があることが判明した。特許文献1に開示される連結構造のようにガラスシール等の流動性シール部材を用いている場合や、金属製の環状シール部材を採用した場合、作業者によってボルトの締め付け力にばらつきがあると、シール部材により適切なシールを行うことができない可能性がある。さらに、管部材の内部を流通する気体等の圧力が上昇して管部材に変形が生じた場合に、シール部材によるシール力が弱まって適切なシールを行うことがでない可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、第1管体の第1フランジ部と第2管体の第2フランジ部とを連結する場合に、作業者による締結部材の締め付け力のばらつきを抑制して、管体の内部圧力の上昇や温度の上昇があっても適切なシールを維持することが可能な連結構造及び連結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の一態様にかかる連結構造は、第1管体及び第2管体を連結する連結構造であって、前記第1管体は、軸線に沿って筒状に延びるとともに前記第2管体と連結される端部に第1フランジ部を備え、前記第2管体は、前記軸線に沿って筒状に延びるとともに前記第1管体と連結される端部に第2フランジ部を備え、前記第1フランジ部の径方向の第1位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第1対向面と、前記第2フランジ部の前記第1位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第2対向面と、前記第1フランジ部の前記第1対応面の前記第1位置の内周側の第2位置に設けられるとともに前記軸線回りに円環状に形成される凹溝部と、前記第2フランジ部の前記第2対向面の前記第2位置に設けられるとともに前記軸線回りに円環状に形成される突起部と、前記軸線回りに円環状に形成されるとともに前記凹溝部に配置され、前記第1対向面と前記第2対向面の少なくとも一部を接触させることにより前記突起部により圧縮変形するシール部と、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の前記第1位置の外周側の第3位置に取り付けられるとともに前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部を接触させる軸力を付与する複数の締結部材と、前記第1フランジ部の前記第3位置の外周側の第4位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第1外周突部と、前記第2フランジ部の前記第4位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第2外周突部と、を備え、前記第1外周突部及び前記第2外周突部は、前記第1管体の内部および前記第2管体の内部の圧力が所定圧力未満である場合に、前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部が接触しかつ前記複数の締結部材の前記軸力が付与された状態で、前記軸線方向に所定範囲の隙間を空け、前記第1管体の内部および前記第2管体の内部の圧力が前記所定圧力以上である場合に、互いに接触するように配置される。
【0007】
本発明の一態様にかかる連結構造によれば、第1管体の第1フランジ部と第2管体の第2フランジ部とを複数の締結部材により締結すると、第1フランジ部の第1対向面と第2フランジ部の第2対向面が近接または接触する。締結部材による締結により第1対向面と第2対向面が近づくにつれ、第1フランジ部の凹溝部に配置されるシール部が、第2フランジ部の突起部により圧縮変形し、第1対向面と第2対向面の接触位置の内周側に円環状のシール領域が形成される。第1対向面と第2対向面との少なくとも一部が接触することで、シール部に十分な圧縮変形が発生して停止するため、シール部の軸線回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。よって、作業者による締結部材の締め付け力のばらつきによらずに適切なシールを維持することができる。
【0008】
本発明の一態様にかかる連結構造によれば、第1フランジ部の締結部材の締結位置よりも外周側の第4位置に第1外周突部が設けられており、第2フランジ部の締結部材の締結位置よりも外周側の第4位置に第2外周突部が設けられている。第1外周突部及び第2外周突部は、第1対向面と第2対向面との少なくとも一部が接触しかつ複数の締結部材の軸力が付与された状態で、軸線方向に所定範囲の隙間を空けて配置される。そのため、第1対向面と第2対向面との少なくとも一部が接触した後に複数の締結部材による軸力を過剰に強めてしまった場合でも、第1外周突部と第2外周突部との軸線方向の隙間が所定範囲よりも小さくなることで締結部材による軸力過剰であることを把握して修正することができる。また、この軸線方向の隙間が所定範囲よりも大きな場合には締結部材による軸力不足であることを把握して、必要に応じて修正することができる。更には締結部材による軸力を更に過剰に強めてしまった場合でも、第1外周突部と第2外周突部と接触することにより、異常な締め付けによる第1フランジ部及び第2フランジ部のこれ以上の過剰な変形を停止することができる。すなわち、第1外周突部と第2外周突部との軸線方向の隙間が所定範囲にあることを外観より把握することで、第1フランジ部及び第2フランジ部の過剰な変形が防止され、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
【0009】
また、第1管体及び第2管体の内部の圧力が上昇することや、温度の上昇により、第1フランジ部の第1対向面及び第2フランジ部の第2対向面の内周側の接触部分の面圧が低下し、第1フランジ部の第1対向面及び第2フランジ部の第2対向面の外周側の接触部分の面圧が上昇するようなフランジ変形を発生させる現象(フランジローテーション)が発生する場合があるが、第1外周突部と第2外周突部とが接触することにより、第1フランジ部及び第2フランジ部の過剰な変形が防止され、シール部の軸線回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
【0010】
本発明の一態様にかかる連結構造において、前記シール部は、前記凹溝部に配置され、前記軸線回りに円環状に形成される第1シール部材と、前記凹溝部に配置され、前記軸線回りに円環状に形成され、前記第1シール部材の外周側または内周側に配置される第2シール部材とを備えていてもよい。
第1シール部材の外周側もしくは内周側に更に第2シール部材が配置されるため、第1シール部材と第2シール部材により二重のシール領域が形成される。そのため、第1シール部材と第2シール部材のいずれか一方に製造時の誤差等により所望のシール力が付与されたシール領域が形成されない場合であっても、他方のシール部材により確実にシール領域を形成することができる。
【0011】
本発明の一態様にかかる連結構造において、前記第1外周突部は、前記軸線回りの同一径周上の複数位置に設けられており、前記第2外周突部は、前記軸線回りの前記同一径周上の複数位置であって前記第1外周突部に少なくとも一部が対向する位置に設けられていてもよい。
第1外周突部が同一径周上の軸線回りの複数位置に設けられ、第2外周突部が第1外周突部に対向する位置に複数設けられているため、締結部材による締結を過剰に強めてしまった位置が軸線回りの周方向のいずれの領域であっても、いずれかの第1外周突部とそれに対向する第2外周突部とが所定範囲より小さくなることにより、第1フランジ部及び第2フランジ部の過剰な変形を把握して修正することができる。
【0012】
さらに、第1外周突部と第2外周突部との周方向での軸線方向の隙間の分布において、軸線方向に所定範囲よりも大きな部分と小さな部分の偏りがあると、複数の締結部材による軸力に分布があることを把握して、必要に応じて締結部材の軸力を修正することができる。すなわち、第1外周突部と第2外周突部との周方向での軸線方向の隙間が所定範囲にあることを外観より把握することで、第1フランジ部及び第2フランジ部の過剰な変形が防止され、シール部の軸線回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。また、締結部材による締結を過剰に強めてしまった位置が軸線X回りのいずれであっても、いずれかの第1外周突部とそれに対向する第2外周突部とが接触することにより、これ以上の第1フランジ部及び第2フランジ部の過剰な変形が防止される。従い、シール部30の軸線X回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
【0013】
本発明の一態様にかかる連結構造において、前記第1外周突部は、前記軸線回りの同一径周上の位置に連続して設けられており、前記第2外周突部は、前記軸線回りの前記同一径周上の位置に連続して設けられていてもよい。
第1外周突部及び第2外周突部を軸線回りの同一径周上の位置に連続して設ける形状とすることにより、第1外周突部及び第2外周突部の製造時の加工工数を低減しつつ、締結部材による締結を過剰に強めてしまった位置が軸線回りの周方向のいずれの領域であっても、第1フランジ部及び第2フランジ部の過剰な変形を把握して修正することができる。
【0014】
本発明の一態様にかかる連結構造は、第1管体及び第2管体を連結する連結構造を用いた連結方法であって、前記第1管体は、軸線に沿って筒状に延びるとともに前記第2管体と連結される端部に第1フランジ部を備え、前記第2管体は、前記軸線に沿って筒状に延びるとともに前記第1管体と連結される端部に第2フランジ部を備え、前記連結構造は、前記第1フランジ部の径方向の第1位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を有する第1対向面と、前記第2フランジ部の前記第1位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を有する第2対向面と、前記第1フランジ部の前記第1対向面の前記第1位置の内周側の第2位置に設けられるとともに前記軸線回りに円環状に形成される凹溝部と、前記第2フランジ部の前記第2対向面の前記第2位置に設けられるとともに前記軸線回りに円環状に形成される突起部と、前記軸線回りに円環状に形成されるとともに前記凹溝部に配置され、前記第1対向面と前記第2対向面の少なくとも一部を接触させることにより前記突起部により前記軸線に沿って圧縮変形するシール部と、前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部の前記第1位置の外周側の第3位置に取り付けられるとともに前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部を接触させる軸力を付与する複数の締結部材と、前記第1フランジ部の前記第3位置の外周側の第4位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第1外周突部と、前記第2フランジ部の前記第4位置に設けられるとともに前記軸線に直交する平面に沿った平坦形状を備える第2外周突部と、を備え、前記第1外周突部及び前記第2外周突部は、前記第1管体の内部および前記第2管体の内部の圧力が所定圧力未満である場合に、前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部が接触しかつ前記複数の締結部材の前記軸力が付与された状態で、前記軸線方向に所定範囲の隙間を空け、前記第1管体の内部および前記第2管体の内部の圧力が前記所定圧力以上である場合に、互いに接触するように配置され、前記シール部を前記凹溝部に配置する工程と、前記第3位置に複数の締結部材を締結して前記第1対向面と前記第2対向面との少なくとも一部を接触させる軸力を付与する工程と、を備える。
【0015】
本発明の一態様にかかる連結方法によれば、第1管体の第1フランジ部と第2管体の第2フランジ部とを連結する場合に作業者による締結部材の締め付け力のばらつきや管体の内部圧力の上昇や温度の上昇があっても適切なシールを維持することが可能な連結方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1管体の第1フランジ部と第2管体の第2フランジ部とを連結する場合に作業者による締結部材の締め付け力のばらつきを抑制し、管体の内部圧力の上昇や温度上昇があっても適切なシールを維持することが可能な連結構造及び連結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態にかかる連結構造を示す縦断面図である。
図2】比較例にかかる連結構造を示す縦断面図である。
図3】本発明の第2実施形態にかかる連結構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態にかかる連結構造300ついて、図面を参照して説明する。
本実施形態の連結構造300は、第1管体100及び第2管体200を、内部を流通する蒸気等の流体が外部へ漏出しないように連結するための構造である。
本実施形態の連結構造300は、例えば、火力発電プラントの蒸気タービン(図示略)では、蒸気タービンの高圧段で仕事をした蒸気を再熱器(図示略)へ導く再熱蒸気管(図示略)に配置されるフリーブロー用管体の連結などに用いられる。フリーブロー用管体は、再熱蒸気系統に存在する異物を系統外へ排出するための管体であり、タービン入口の主蒸気に比べると温度と圧力は相対的に低いものの、温度と圧力は高い状態の蒸気であり、メンテナンス時に分解可能なようにフランジ連結接合部を設けた大口径(例えば500Aから1000A)の蒸気配管である。
【0019】
図1に示すように、連結構造300により第2管体200と連結される第1管体100は、管体の長手方向の軸線Xに沿って筒状に延びるとともに第2管体200と連結される端部に第1フランジ部10を有する。また、連結構造300により第1管体100と連結される第2管体200は、軸線Xに沿って筒状に延びるとともに第1管体100と連結される端部に第2フランジ部20を有する。第1フランジ部10及び第2フランジ部20は、それぞれ第1管体100及び第2管体200と接続して一体に形成されており、金属材料(例えば、炭素鋼(SF490),低クロム鋼など)により形成されている。
【0020】
第1フランジ部10および第2フランジ部20は、図1に示すように軸線Xに対する外周へ向かう径方向で順に、第2位置A2,第1位置A1,第3位置A3,第4位置A4が設定されている。連結構造300は、第1フランジ部10の軸線Xに対する径方向の第1位置A1に設けられるとともに軸線Xに直交する平面に沿った平坦形状を有する第1対向面11と、第2フランジ部20の第1位置A1に設けられるとともに軸線Xに直交する平面に沿った平坦形状を有する第2対向面21と、を備える。図1に示すように、第1対向面11及び第2対向面21は、径方向の同じ位置(第1位置A1)に配置されるため、後述する締結部材40による軸力を第1フランジ部10及び第2フランジ部20に付与すると、少なくとも一部が互いに接触してメタルタッチした状態となる。
【0021】
連結構造300は、第1フランジ部10の第1対向面11の第2位置A2の内周側の第2位置A2に設けられるとともに軸線X回りに円環状に形成される凹溝部12と、第2フランジ部20の第2対向面21の第2位置A2に設けられるとともに軸線X回りに円環状に形成される突起部22と、を有する。
【0022】
連結構造300は、軸線X回りに円環状に形成されるとともに凹溝部12に配置されるシール部30を備える。シール部30は、凹溝部12に配置された状態で締結部材40を締結して締結部材40の軸力を増加させ、第1対向面11と第2対向面21の少なくとも一部を接触させることにより突起部22により軸線Xに沿って圧縮変形して、所望の密着状態とすることができる。なお、第1対向面11と第2対向面21との少なくとも一部が接触した場合、締結部材40の軸力を増加させることで第1対向面11と第2対向面21との接触する範囲が増加しても、第1対向面11の凹溝部12の深さに対する第2対向面21の突起部22の高さの関係は、シール部30が必要以上に圧縮変形することがないように設定されている。シール部30としては、例えば、耐熱性と耐薬品性に優れた膨張黒鉛材をシート状に形成したガスケットなどを用いることができる。
【0023】
連結構造300は、第1フランジ部10及び第2フランジ部20の第1位置A1の外周側の第3位置A3に取り付けられるとともに第1対向面11と第2対向面21とを接触させる軸力を付与する複数の締結部材40を有する。締結部材40は、例えば先端部に雄ねじが形成された締結ボルト41と、締結ボルト41の雄ねじに締結される雌ねじが形成された締結ナット42と、を備える。締結ボルト41の軸部は、第1フランジ部10に形成された第1貫通穴14と第2フランジ部20に形成された第2貫通穴24とに挿入され、締結ナット42と締結される。締結部材40は、上記形状に限定されるものでなく、例えば両端に雄ねじがある通しボルトを用いて両端側から締結ナットで締め付けてもよい。また、第1フランジ部10及び第2フランジ部20のいずれか一方に雌ねじが形成され、他方側のフランジ部から締結ボルトで締め付けてもよい。
【0024】
連結構造300は、第1フランジ部10の第3位置A3の外周側の第4位置A4に設けられるとともに軸線Xに直交する平面に沿った平坦形状を有する第1外周突部13と、第2フランジ部20の第4位置A4に設けられるとともに軸線Xに直交する平面に沿った平坦形状を有する第2外周突部23と、を備える。第1外周突部13及び第2外周突部23は、第1対向面11と第2対向面21との少なくとも一部が接触しかつ複数の締結部材40の軸力が付与された状態で、軸線方向に所定範囲の隙間CLを空けて配置される。
【0025】
第1外周突部13は、軸線X回りの周方向に所定の幅を持って形成されており、軸線X回りに等間隔の角度を隔てて複数位置に設けられている(例えば、45度間隔で8箇所)。同様に、第2外周突部23は、軸線X回りの周方向に所定の幅を持って形成されており、軸線X回りに等間隔の角度を隔てて複数位置に設けられている(例えば、45度間隔で8箇所)。第2外周突部23は、軸線X回りの複数位置であって第1外周突部13に少なくとも一部が相互に対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0026】
第1外周突部13と第2外周突部23との間の軸線X方向の隙間CLは、複数の締結部材40による軸力を過剰に強めてしまった場合に互いに接触して隙間CLがゼロになり、それ以上に締結部材40による軸力が過剰にならないようにするように予め設定された隙間である。また、隙間CLが所定範囲より小さい場合は、締結部材40による軸力が大きい場合であることを把握することができて、締結部材40による軸力を低減するよう修正することができる。隙間CLが所定範囲より大きい場合は、締結部材40による軸力が少ない場合であることを把握することができて、締結部材40による軸力を増加するよう修正することができる。
【0027】
さらに、第1外周突部13と第2外周突部23との周方向での、軸線X方向の隙間CLの分布において、軸線X方向に所定範囲よりも大きな部分と小さな部分の偏りがあると、複数の締結部材40による軸力に分布があることを把握して修正することができる。すなわち、第1外周突部13と第2外周突部23との周方向での軸線X方向の隙間CLが所定範囲にあることを外観より把握することで、第1フランジ部10及び第2フランジ部20の均一で適正な締め付け状態に調整することが出来て、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
【0028】
隙間CLの所定範囲としては、例えば、0.4mm〜1.0mmとすることができる。更に好ましくは、0.6mm〜0.8mmとすることができる。隙間CLが0.4〜0.6mmより小さいと目視で隙間の存在を認識し難しくなる。隙間CLが0.8〜1.0mmより大きいと目視で隙間の大小の差を認識し難くなる。また、隙間CLが1.0mmより大きいと隙間CLがゼロまで締結部材40で締め込んだ際に、締結部材40の軸力が過剰になり第1フランジ部10及び第2フランジ部20に大きな変形を発生させて、所望のシール力を与えることが難しくなる。隙間CLの所定範囲は、所定範囲にあることを外観より目視で把握することが可能とする範囲が好ましい。
【0029】
隙間CLを設けることにより、複数の締結部材40による軸力を過剰に強めてしまった場合であっても、第1外周突部13と第2外周突部23とが接触して隙間CLがゼロになり、第1フランジ部10及び第2フランジ部20のこれ以上の過剰な変形が防止される。周方向での軸線X方向の隙間CLが所定範囲にあることを外観より把握することで、第1フランジ部10及び第2フランジ部20の均一で適正な締め付け状態に管理することが出来て、シール部30の軸線X回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。なお、第1外周突部13と第2外周突部23は、軸線X回りの全ての円環状領域での隙間CLを外観より目視で把握することが一層に容易になるように、軸線X回りの周方向に所定の幅で等間隔の角度を隔てて複数位置に形成されているが、軸線X回りの同一径周上の位置に連続して設ける形状としてもよく、加工数を低減可能とし、ほぼ同様な効果を得ることができる。
【0030】
第1外周突部13と第2外周突部23との間の隙間CLは、フランジローテーションに対しても、第1フランジ部10及び第2フランジ部20の過剰な変形を防止することができる。ここで、フランジローテーションとは、第1管体100及び第2管体200の内部の圧力が上昇することや温度が上昇することにより、第1フランジ部10の第1対向面11及び第2フランジ部20の第2対向面21の内周側の接触面圧が低下し、第1フランジ部10の第1対向面11及び第2フランジ部20の第2対向面21の外周側の接触面圧が上昇するようなフランジ変形を発生させる現象をいう。
【0031】
図1に示すように、複数の締結部材40を締結して第1フランジ部10及び第2フランジ部20に軸力を付与することにより、第1フランジ部10の第1対向面11側は、内周側の第2位置A2において、シール部30に対して接触面圧F11を付与する。また、第1フランジ部10の第1対向面11側は、外周側の第1位置A1において、第2対向面21に対して接触面圧F12を付与する。同様に、第2フランジ部20の第2対向面21側は、内周側の第2位置A2において、シール部30に対して接触面圧F21を付与する。また、第2フランジ部20の第2対向面21側は、外周側の第1位置A1において、第1対向面11に対して接触面圧F22を付与する。
【0032】
図1に示すように、第1管体100の内周面には内部の圧力Pが作用しており、圧力Pが所定圧力以上となると、第1管体100にR11及びR12で示す方向に向けて回転する力が作用する。第1管体100にR11及びR12で示す方向に向けた力が作用すると、内周側の第2位置A2における接触面圧F11が低下するとともに外周側の第1位置A1における接触面圧F12が増加する。
【0033】
同様に、第2管体200の内周面には内部の圧力Pが作用しており、圧力Pが所定圧力以上となると、第2管体200にR21及びR22で示す方向に向けて回転する力が作用する。第2管体200にR21及びR22で示す方向に向けた力が作用すると、内周側の第2位置A2における接触面圧F21が低下するとともに外周側の第1位置A1における接触面圧F22が増加する。
【0034】
以上のように、フランジローテーションが発生すると、内周側の第2位置A2における接触面圧F11及び接触面圧F21が低下し、外周側の第1位置A1における接触面圧F12が上昇することで接触面圧に勾配が生じて軸力が変化する。内周側の第2位置A2における接触面圧F11及び接触面圧F21が低下すると、シール部30によるシール力が低下してしまう。そこで、本実施形態では、第1外周突部13及び第2外周突部23を設けることにより、第1管体100にR11及びR12で示す方向に向けて回転する力が過剰に作用し、かつ第2管体200にR21及びR22で示す方向に向けて回転する力が過剰に作用して、シール部30によるシール力が低下する前に、第1外周突部13及び第2外周突部23を接触させるようにしている。第1外周突部13と第2外周突部23とが接触することにより、第1フランジ部10及び第2フランジ部20の過剰な変形が防止され、内周側の第2位置A2における接触面圧F11及び接触面圧F21の低下が抑制される。
【0035】
第1管体100と第2管体200を連結構造300で連結する連結方法は、以下の手順である。
第1に、シール部30を第1フランジ部10の凹溝部12に配置する。
第2に、第1管体100に第2管体200を近接させ、第2フランジ部20の突起部22がシール部30に接触した状態とする。
第3に、第1フランジ部10に形成された第1貫通穴14と第2フランジ部20に形成された第2貫通穴24とに締結ボルト41の軸部を挿入し、締結ナット42と締結する。これにより、複数の締結部材40を締結して第1対向面11と第2対向面21との少なくとも一部を接触させる軸力を付与する。
第4に、第1外周突部13と第2外周突部23との周方向での、軸線X方向の隙間CLが所定範囲にあることを外観より把握し、必要に応じて複数の締結部材40の締め付け状態を調整する。
以上の工程により、第1管体100と第2管体200とが連結構造300により連結される。
【0036】
次に、本実施形態にかかる連結構造300と、比較例にかかる連結構造300Aとを対比して説明する。図2は、比較例にかかる連結構造300Aを示す縦断面図である。
比較例にかかる連結構造300Aは、第1フランジ部10Aに第1対向面11が設けられておらず、第2フランジ部20Bに第2対向面21が設けられていない点で本実施形態の連結構造300と異なる。また、比較例にかかる連結構造300Aは、第1フランジ部10Aに凹溝部12が設けられておらず、第2フランジ部20Aに突起部22が設けられていない点で本実施形態の連結構造300と異なる。
【0037】
比較例の連結構造300Aにおいて、第1フランジ部10Aが第2位置A2においてシール部30Aに対して接触面圧F1を付与し、第2フランジ部20Aが第2位置A2においてシール部30Aに対して接触面圧F2を付与するものとする。
また、以下の説明においては、周方向の各位置における接触面圧F1および接触面圧F2の最大値に対する最小値の割合を面圧保持率と定義する。面圧保持率が100%に近いほど、周方向の各位置における接触面圧の差が少なく、接触面圧が均一であることを示す。
【0038】
<第1比較例>
本実施形態の連結構造300と第1比較例の連結構造300Aとを、構造上の相違点を除き、他の条件を同じにして、内部を流通する蒸気温度が約350℃、蒸気圧力が約4.8MPのときに計測した温度分布と圧力分布を設定し、FEM解析を用いたシミュレーション計算により比較を行った。第1比較例の連結構造300Aと、それと比較する本実施形態の連結構造300においては、複数の締結部材40が均等な軸力を発生するものとする。
【0039】
この場合、比較例の連結構造300Aの接触面圧F1及び接触面圧F2の最大値を1.0とすると、接触面圧F1および接触面圧F2の最小値は0.3であり、面圧保持率は30%であった。それに対して、本実施形態の連結構造300の接触面圧F11及び接触面圧F21の最大値は0.7であり、接触面圧F11及び接触面圧F21の最小値は0.4であり、面圧保持率は57.1%であった。
【0040】
比較例の連結構造300Aの面圧保持率が低いのは、接触面圧F1および接触面圧F2の最小値を大きくしないとシール部30Aの軸線X回りの周方向の一部の位置に面圧の低い領域があり、所望のシール性能が得られないため、相対的に接触面圧F1および接触面圧F2の最大値を過剰に大きくしているからである。
それに対して本実施形態の連結構造300の面圧保持率が高いのは、第1対向面11と第2対向面21とが接触した場合、シール部30が軸線X回りの周方向の各位置に均等な面圧のシール領域を形成することができており、また締結部材40の軸力を増加させてもシール部30が更に圧縮変形することはなくなるからである。
【0041】
<第2比較例>
本実施形態の連結構造300と第2比較例の連結構造300Aとを、構造上の相違点を除き、他の条件を同じにして比較を行った。ただし、第2比較例の連結構造300Aと、それと比較する本実施形態の連結構造300においては、軸線Xよりも紙面上方に配置される締結部材40が発生する軸力を基準値よりも5%増加させたものとし、軸線Xよりも紙面下方に配置される締結部材40が発生する軸力を基準値よりも5%減少させたものとして、初期からシール部30、30Aの面圧分布にバラツキを発生させたものとする。
【0042】
この場合、前述した第1比較例の連結構造300Aの接触面圧F1及び接触面圧F2の最大値を1.0とすると、第2比較例の連結構造300Aの接触面圧F1及び接触面圧F2の最大値は1.2であり、第2比較例の連結構造300Aの接触面圧F1および接触面圧F2の最小値は0.2であり、面圧保持率は16.7%であった。それに対して、本実施形態の連結構造300の接触面圧F11及び接触面圧F21の最大値は0.4であり、接触面圧F11及び接触面圧F21の最小値は0.2であり、面圧保持率は50.0%であった。
【0043】
第2比較例の連結構造300Aの面圧保持率が低いのは、締結部材40が発生する軸力にばらつきがあるため、接触面圧F1および接触面圧F2の最大値と接触面圧F1および接触面圧F2の最小値に大きな差が発生したからである。
それに対して本実施形態の連結構造300の面圧保持率が高いのは、第1対向面11と第2対向面21の少なくとも一部が接触することにより、締結部材40が発生する軸力にばらつきがあってもシール部30の圧縮変形に大きな影響を与えず、シール部30が軸線X回りの周方向の各位置に均等な面圧のシール領域を形成することができるからである。
【0044】
<第3比較例>
本実施形態の連結構造300と第3比較例の連結構造300Aとを、構造上の相違点を除き、他の条件を同じにして比較を行った。ただし、第3比較例の連結構造300Aと、それと比較する本実施形態の連結構造300においては、第1管体100及び第2管体200の内部の圧力を第1比較例の2倍/4倍にして、初期から管体の内圧が増加した条件とすることで、管体の軸方向スラスト力と曲げモーメントを発生させたものとしている。
【0045】
この場合、前述した第1比較例の連結構造300Aの接触面圧F1及び接触面圧F2の最大値を1.0とすると、第2比較例の連結構造300Aの接触面圧F1及び接触面圧F2の最大値は1.1/1.3であり、第3比較例の連結構造300Aの接触面圧F1および接触面圧F2の最小値は0.3/0.3であり、面圧保持率は27.3%/23.7%であった。それに対して、本実施形態の連結構造300の接触面圧F11及び接触面圧F21の最大値は0.4であり、接触面圧F11及び接触面圧F21の最小値は0.2であり、面圧保持率は50.0%/50.0%であった。
【0046】
第3比較例の連結構造300Aの面圧保持率が低いのは、第1管体100及び第2管体200の内部の圧力の上昇に伴って接触面圧F1および接触面圧F2の最大値が増加し、接触面圧F1および接触面圧F2の最大値と接触面圧F1および接触面圧F2の最小値に大きな差が発生したからである。
それに対して本実施形態の連結構造300の面圧保持率が高いのは、第1管体100及び第2管体200の内部の圧力の上昇に伴って接触面圧F1および接触面圧F2の最大値が増加せず、接触面圧F1および接触面圧F2の最大値と接触面圧F1および接触面圧F2の最小値に大きな差が発生しないからである。
【0047】
以上説明した本実施形態の連結構造300が奏する作用及び効果について説明する。
本実施形態の連結構造300によれば、第1管体100の第1フランジ部10と第2管体200の第2フランジ部20とを複数の締結部材40により締結すると、第1フランジ部10の第1対向面11と第2フランジ部20の第2対向面21の少なくとも一部が接触する。締結部材40による締結により第1対向面11と第2対向面21が近づくにつれ、第1フランジ部10の凹溝部12に配置されるシール部30が、第2フランジ部20の突起部22により圧縮変形し、第1対向面11と第2対向面21の接触位置の内周側に円環状のシール領域が形成される。第1対向面11と第2対向面21の少なくとも一部とが接触すると、シール部30の圧縮変形が停止するため、シール部30の軸線X回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。よって、作業者による締結部材40の締め付け力のばらつきによらずに適切なシールを維持することができる。
【0048】
本実施形態の連結構造300によれば、第1フランジ部10の締結部材40の締結位置よりも外周側の第4位置A4に第1外周突部13が設けられており、第2フランジ部20の締結部材40の締結位置よりも外周側の第4位置A4に第2外周突部23が設けられている。第1外周突部13及び第2外周突部23は、第1対向面11と第2対向面21との少なくとも一部が接触しかつ複数の締結部材40の軸力が付与された状態で、軸線X方向に所定範囲の隙間CLを空けて配置される。そのため、第1対向面11と第2対向面21との少なくとも一部が接触した後に、第1外周突部13と第2外周突部23との軸線X方向の隙間CLが所定範囲にあることを外観より把握し、必要に応じて締結部材40の軸力を修正することができる。これにより、第1フランジ部及び第2フランジ部の過剰な変形が防止され、シール部30の軸線X回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
さらに、複数の締結部材40による軸力を過剰に強めてしまった場合でも、第1外周突部13と第2外周突部23とが接触して隙間CLがゼロになることにより、これ以上の第1フランジ部10及び第2フランジ部20の過剰な変形が防止され、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
【0049】
また、第1管体100及び第2管体200の内部の圧力が上昇することや温度が上昇することにより、第1フランジ部10及び第2フランジ部20の内周側の接触面圧が低下し第1フランジ部10及び第2フランジ部20の外周側の接触面圧が上昇する現象(フランジローテーション)が発生するが、第1外周突部13と第2外周突部23とが接触することにより、これ以上の第1フランジ部10及び第2フランジ部20の過剰な変形が防止され、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
【0050】
本実施形態の連結構造300において、第1外周突部13は、軸線X回りの同一径周上の複数位置に設けられており、第2外周突部23は、軸線X回りの同一径周上の複数位置であって、少なくとも一部が第1外周突部13に対向する位置に設けられている。
第1外周突部13が軸線X回りの複数位置に設けられ、第2外周突部23が第1外周突部13に対向する位置に複数設けられているため、軸線X回りの全ての周方向において、第1外周突部13と第2外周突部23との軸線X方向の隙間CLが所定範囲にあることを外観より把握し、必要に応じて締結部材40の軸力を修正することができる。これにより、第1フランジ部及び第2フランジ部の過剰な変形が防止され、シール部30の軸線X回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
また、締結部材40による締結を過剰に強めてしまった位置が軸線X回りのいずれであっても、いずれかの第1外周突部13とそれに対向する第2外周突部23とが接触することにより、これ以上の第1フランジ部10及び第2フランジ部20の過剰な変形が防止される。従い、シール部30の軸線X回りの全ての円環状領域において、所望のシール力が付与されたシール領域が維持される。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態にかかる連結構造300Bついて、図面を参照して説明する。
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとする。本実施形態は、シール部31が、第1シール部材32と第2シール部材33とを有する二重のシール構造である点で第1実施形態と異なる。
【0052】
図3に示すように、本実施形態のシール部31は、第1シール部材32の外周側もしくは内周側に更に第2シール部材33が配置されるため、第1シール部材32と第2シール部材33により二重のシール領域が形成されている。シール部31は、凹溝部12に配置された状態で締結部材40を締結して締結部材40の軸力を増加させ、第1対向面11と第2対向面21を接触させることにより突起部22により軸線Xに沿って圧縮変形する。なお、第1対向面11と第2対向面21とが接触した場合、締結部材40の軸力を増加させてもシール部31が更に圧縮変形することはない。シール部31としては、例えば、耐熱性と耐薬品性に優れた膨張黒鉛材をシート状に形成したガスケットなどを用いることができる。
【0053】
シール部31は、軸線X回りに円環状に形成されるとともに凹溝部12に配置される第1シール部材32と、軸線X回りに円環状に形成されるとともに凹溝部12に配置され、第1シール部材32の外周側に配置される第2シール部材33とを備える。
【0054】
本実施形態によれば、第1シール部材32の外周側に更に第2シール部材33が配置されるため、第1シール部材32と第2シール部材33により二重のシール領域が形成される。そのため、第1シール部材32と第2シール部材33のいずれか一方に製造時の誤差等により所望のシール力が付与されたシール領域が形成されない場合であっても、他方のシール部材により確実にシール領域を形成することができる。
【符号の説明】
【0055】
10,10A 第1フランジ部
11 第1対向面
12 凹溝部
13 第1外周突部
14 第1貫通穴
20,20A 第2フランジ部
21 第2対向面
22 突起部
23 第2外周突部
24 第2貫通穴
30,30A,31 シール部
32 第1シール部材
33 第2シール部材
40 締結部材
41 締結ボルト
42 締結ナット
100 第1管体
200 第2管体
300,300A,300B 連結構造
CL 隙間
X 軸線
図1
図2
図3