特許第6987671号(P6987671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987671注意喚起ユニット及び建設機械の点検方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987671
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】注意喚起ユニット及び建設機械の点検方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 15/00 20060101AFI20211220BHJP
   B66C 13/52 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   B66C15/00 Z
   B66C13/52 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-36430(P2018-36430)
(22)【出願日】2018年3月1日
(65)【公開番号】特開2019-151438(P2019-151438A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花原 晃
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−186350(JP,A)
【文献】 特開2004−225353(JP,A)
【文献】 特開平07−319407(JP,A)
【文献】 実開昭50−107975(JP,U)
【文献】 特開平09−078904(JP,A)
【文献】 特開平10−331493(JP,A)
【文献】 特開平03−096457(JP,A)
【文献】 特開平10−144183(JP,A)
【文献】 実開昭58−098371(JP,U)
【文献】 実開平05−093350(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3082467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06
B66F 9/00−11/04
E02F 9/00− 9/28
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械を始動させるための鍵を挿入する鍵穴である第1鍵穴を塞いで前記建設機械を始動させることができないようにする、もしくは、前記建設機械の外部から前記第1鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材の鍵穴である第2鍵穴を塞いで前記第1鍵穴に接近できないようにすると共に、前記第1鍵穴または前記第2鍵穴から自由に取り外すことができる閉塞部材と、
前記閉塞部材に連結されている、または前記閉塞部材と一体に構成される注意喚起部材と、
を有する注意喚起ユニット。
【請求項2】
建設機械を始動させるための鍵を挿入する鍵穴である第1鍵穴、もしくは、前記建設機械の外部から前記第1鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材の鍵穴である第2鍵穴の少なくとも一方を塞ぐ閉塞部材と、
前記閉塞部材に連結されている、または前記閉塞部材と一体に構成される注意喚起部材と、有し、
前記閉塞部材は、前記第1鍵穴、もしくは、前記第2鍵穴の少なくとも一方に挿入可能な形状であり、前記第1鍵穴に挿入されても前記建設機械を始動させることができない、もしくは前記第2鍵穴に挿入されても前記開閉部材を開錠することができない形状となっており、
前記閉塞部材は、前記建設機械を始動させることができる、もしくは前記開閉部材を開錠することができる正規鍵の形状に対し、前記第1鍵穴または前記第2鍵穴に挿入される部分の鍵溝の形状が共通し、鍵山の形状が異なることを特徴とする注意喚起ユニット。
【請求項3】
建設機械の点検または整備作業中に使用され、当該建設機械のオペレータに注意喚起するための注意喚起ユニットであって、
建設機械を始動させるための鍵を挿入する鍵穴である第1鍵穴を塞いで前記建設機械を始動させることができないようにする、もしくは、前記建設機械の外部から前記第1鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材の鍵穴である第2鍵穴を塞いで前記第1鍵穴に接近できないようにする閉塞部材と、
前記閉塞部材に連結されている、または前記閉塞部材と一体に構成される注意喚起部材と、
を有する注意喚起ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の注意喚起ユニットにおいて、
前記注意喚起部材は、前記建設機械を始動させてはいけないことを注意喚起することを特徴とする注意喚起ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の注意喚起ユニットにおいて、
前記閉塞部材は、前記注意喚起部材の重量の2分の1よりも重いことを特徴とする注意喚起ユニット。
【請求項6】
建設機械を始動させるための鍵を挿入する鍵穴である第1鍵穴を塞いで前記建設機械を始動させることができないようにする、もしくは、前記建設機械の外部から前記第1鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材の鍵穴である第2鍵穴を塞いで前記第1鍵穴に接近できないようにする閉塞部材と、前記閉塞部材に連結されている、または前記閉塞部材と一体に構成される注意喚起部材とを有する注意喚起ユニットを用いた建設機械の点検方法であって、
前記第1鍵穴または前記第2鍵穴を前記閉塞部材で閉塞し、
前記第1鍵穴または前記第2鍵穴が前記閉塞部材で閉塞された状態で、前記建設機械を点検し、
前記建設機械の点検が終了した後に、前記第1鍵穴または前記第2鍵穴から前記閉塞部材を取り外すことを特徴とする建設機械の点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のエンジンを始動させてはいけないことを提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場などにおいては、状況によって、クローラクレーンなどの建設機械のエンジンを始動させてはいけないことを、当該建設機械の例えばオペレータに提示する必要がある。
【0003】
また建設機械のエンジン始動に関して、以下の文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−154844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、例えばオペレータによるエンジンの始動を抑制するため、注意喚起用の表示札などを所定の場所に吊り下げたりして、注意喚起を行う必要がある。しかしながら、オペレータが注意喚起用の表示札に気付かない場合も考えられ、この場合、例えばオペレータはクレーンなどのエンジンを始動させる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、クレーンなどの建設機械を操作する例えばオペレータに対し、エンジンを始動させてはいけないことを気付かせる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、代表的な本発明の注意喚起ユニットは、建設機械を始動させるための鍵を挿入する鍵穴である第1鍵穴を塞いで前記建設機械を始動させることができないようにする、もしくは、前記建設機械の外部から前記第1鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材の鍵穴である第2鍵穴を塞いで前記第1鍵穴に接近できないようにすると共に、前記第1鍵穴または前記第2鍵穴から自由に取り外すことができる閉塞部材と、前記閉塞部材に連結されている、または前記閉塞部材と一体に構成される注意喚起部材と、を有する。
この構成により、オペレータに対しエンジンを始動させてはいけないことを気付かせることができる。
また、他の形態に係る注意喚起ユニットは、建設機械を始動させるための鍵を挿入する鍵穴である第1鍵穴、もしくは、前記建設機械の外部から前記第1鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材の鍵穴である第2鍵穴の少なくとも一方を塞ぐ閉塞部材と、前記閉塞部材に連結されている、または前記閉塞部材と一体に構成される注意喚起部材と、有し、前記閉塞部材は、前記第1鍵穴、もしくは、前記第2鍵穴の少なくとも一方に挿入可能な形状であり、前記第1鍵穴に挿入されても前記建設機械を始動させることができない、もしくは前記第2鍵穴に挿入されても前記開閉部材を開錠することができない形状となっており、前記閉塞部材は、前記建設機械を始動させることができる、もしくは前記開閉部材を開錠することができる正規鍵の形状に対し、前記第1鍵穴または前記第2鍵穴に挿入される部分の鍵溝の形状が共通し、鍵山の形状が異なることを特徴とする。
この構成により、鍵穴に閉塞部材が挿入された状態において、オペレータが誤って当該閉塞部材を回しても、この誤操作により建設機械が始動することを抑止し、開閉部材が開状態となることを抑止することができる
規鍵に対して鍵山形状を異ならせた閉塞部材を作成するのは、例えば正規鍵の予備を作成するのと同じ要領で行うことができ、容易である。また低コストで閉塞部材を作成することができる。
また、他の形態に係る注意喚起ユニットは、建設機械の点検または整備作業中に使用され、当該建設機械のオペレータに注意喚起するための注意喚起ユニットであって、建設機械を始動させるための鍵を挿入する鍵穴である第1鍵穴を塞いで前記建設機械を始動させることができないようにする、もしくは、前記建設機械の外部から前記第1鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材の鍵穴である第2鍵穴を塞いで前記第1鍵穴に接近できないようにする閉塞部材と、前記閉塞部材に連結されている、または前記閉塞部材と一体に構成される注意喚起部材と、を有する。
上記に記載の注意喚起ユニットにおいて、前記注意喚起部材は、前記建設機械を始動させてはいけないことを注意喚起することを特徴とする。
この構成により、前記閉塞部材と前記注意喚起部材とが別体となり別位置となることを抑止することができる。
記に記載の注意喚起ユニットにおいて、前記閉塞部材は、前記注意喚起部材の重量の2分の1よりも重いことを特徴とする。
この構成により、前記注意喚起部材の重さにより注意喚起ユニットが落下することを低減させることができる。
また、代表的な本発明の建設機械の点検方法は、建設機械を始動させるための鍵を挿入する鍵穴である第1鍵穴を塞いで前記建設機械を始動させることができないようにする、もしくは、前記建設機械の外部から前記第1鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材の鍵穴である第2鍵穴を塞いで前記第1鍵穴に接近できないようにする閉塞部材と、前記閉塞部材に連結されている、または前記閉塞部材と一体に構成される注意喚起部材とを有する注意喚起ユニットを用いた建設機械の点検方法であって、前記第1鍵穴または前記第2鍵穴を前記閉塞部材で閉塞し、前記第1鍵穴または前記第2鍵穴が前記閉塞部材で閉塞された状態で、前記建設機械を点検し、前記建設機械の点検が終了した後に、前記第1鍵穴または前記第2鍵穴から前記閉塞部材を取り外すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えばオペレータに対し、エンジンを始動させてはいけないことを気付かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】クレーンの外観側面図である。
図2】クレーンの外観上面図である。
図3】実施形態の注意喚起ユニットの一例を示す図である。
図4】正規の鍵と実施形態の加工した鍵との差異を説明するための模式図である。
図5】実施形態の注意喚起ユニットがイグニッションキーシリンダの鍵穴に挿入されている状況を示す図である。
図6】実施形態の注意喚起ユニットが運転室の開閉ドアの鍵穴に挿入されている状況を示す図である。
図7】従来の注意喚起用の表示札が運転室内のシガープラグに吊り下げられている状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態の態様について図面を参照しつつ説明する。尚、本実施形態では、クローラクレーン(以下、クレーンと記す)を例示しているが、これに限らずどのような建設機械や作業用機械であってもよい。
【0011】
図1はクレーンの外観側面図であり、図2は外観上面図である。以下では、図1および図2の姿勢を基準にクレーンの上下および前後、左右方向を定義する。
【0012】
図1に示すように、クレーン100は、無限軌道履帯が装着されている走行体101と、旋回輪を介して走行体101の上部に旋回可能に設けられた旋回体103と、旋回体103に対して上下に回動可能に軸支されたブーム104とを有する。図1および図2に示すように、旋回体103の右前部には運転室107が設けられ、旋回体103の後部にはカウンタウエイト109が取り付けられている。
【0013】
旋回体103のフレーム上には、フック108を昇降させるためのウインチドラムである巻上ドラム105と、ブーム104を起伏させるためのウインチドラムである起伏ドラム106とが搭載されている。巻上ドラム105には巻上ロープ105aが巻回され、巻上ドラム105の回転により巻上ロープ105aが巻き取られまたは繰り出され、フック108が昇降する。起伏ドラム106には起伏ロープ106aが巻回され、起伏ドラム106の駆動により起伏ロープ106aが巻き取られまたは繰り出され、ブーム104が起伏する。
【0014】
旋回体103の左後部には、動力源であるエンジン、油圧ポンプや油圧バルブ装置、ラジエータ、排気ガス浄化装置などの各種装置が搭載されており、これらの装置は、防音用の建屋カバー120(図2では破線枠で図示される)により覆われている。またこれら各種装置は、騒音や発熱の影響をオペレータに与えないように、運転室107から遠い位置に設置されていることが多い。よって、整備員が建屋カバー120の中に入り点検/整備を行っていても、外部からは見え難く、運転室107からも見え難い配置関係となっている。
【0015】
ここで、点検/整備作業中であることを示す、すなわちエンジンを始動させてはいけないことを気付かせる従来の表示札の態様例を、図7に示す。図7は、運転室107の内部の一部を図示しており、注意喚起用の表示札51が室内コンソール部70のシガープラグ73に吊り下げられた状況を示している。
【0016】
図7の例において、整備者は、点検/整備作業を行う前にシガーソケット72に挿入されたシガープラグ73に、吊り紐52を通して表示札51を吊り下げ、その後点検/整備作業を行う。点検/整備作業が終了すると、整備者は表示札51を取り外して回収する。表示札51には、オペレータに対し注意喚起を促すため、例えば「点検/整備中」などと記した文字55が付されている。
【0017】
図7の例において、表示札51は、オペレータが運転室107のシートに着席すると確認することができる箇所に位置している。しかしながら、オペレータが起立した状態など、シートに着席していない状態では、高さや角度の関係からオペレータが気付き難い位置となっている。このことから、オペレータは表示札51に気付かずに、シートに着席していない状態でイグニッションキーシリンダ71の鍵穴に鍵を挿入し、エンジンを始動させる可能性が高くなる。
【0018】
この従来例に対し、本実施形態の注意喚起ユニットの構成例を図3に示す。注意喚起ユニット10は、挿入部材21と、注意喚起部材11とが紐状部材12で連結し、一体となった構成となっている。挿入部材21は、クレーン100を始動させるための鍵を挿入する鍵穴(第1鍵穴)に挿入可能な鍵状部材である。
【0019】
注意喚起部材11は、直径が10〜11cm程度の大きさの板材である。注意喚起部材11は、例えばプラスチック製であり、表層がラミネート加工されている。注意喚起部材11は、挿入部材21よりも重量が軽くなるように設計されている。また注意喚起部材11は、軸受け(ハトメ)により補強された孔部14が設けられている。
【0020】
注意喚起部材11には、注意喚起を促すためのメッセージ11a、および、整備者の氏名や所属部署、企業名など、整備者もしくは当該整備者の所属組織を特定可能な文字を記すための欄11bが設けられている。このメッセージ11aおよび欄11bは注意喚起部材11の両面に設けられている。尚、メッセージ11aとして、本実施形態では日本語で「点検・整備中 さわるな!」と記されるが、日本語以外の他言語を合わせて併記してもよい。また、メッセージ11aとともに注意喚起を促すためのマーク(例えばエクスクラメーションマーク)を付してもよい。またメッセージ11aに記される文言は、エンジンを始動させてはいけないことを気付かせるものであればよい。
【0021】
紐状部材12は、長さが約12〜13cm程度、直径が2mm程度のワイヤー線である。ワイヤー線などの鋼線を用いるため、容易に切断することができない。
【0022】
注意喚起部材11の孔部14と挿入部材21のリング16とを紐状部材12に通し、圧着金具13により紐状部材12を結束固定することで、注意喚起部材11と挿入部材21とが連結されて一体となる。また圧着金具13は、注意喚起部材11が挿入部材21の近傍に常に位置するように、紐状部材12の中央部付近を圧着して固定する。
【0023】
ここで挿入部材21の形状について、図4を参照しつつ説明する。図4(A)は、エンジンを始動させることが可能な正規鍵の一例を示す模式図であり、図4(B)は、本実施形態の挿入部材21の模式図である。図示するように、図4(B)に示す挿入部材21は、正規鍵201を模した形状を含んでおり、挿入部材21の鍵溝21aは、正規鍵201の鍵溝201aと形状が一致するように形成されている。尚、挿入部材21の鍵溝21aと正規鍵201の鍵溝201aとは、完全一致であることは要せず、ストレス無く挿入可能となる程度に一致していればよい。これに対し、挿入部材21の側面(鍵山)21bは、正規鍵201の側面201bとは異なる形状となっている。このような鍵溝21aおよび側面21bを有することで、挿入部材21は、エンジンを始動する鍵穴に挿入させることのみ可能となり、挿入後に回転してエンジンを始動させることは不可能な部材となっている。このような形状を有する挿入部材21は、正規鍵の予備を準備し、これを研磨等して鍵山を一部もしくは全部無くすことで作成することができるため、低コストで作成することができる。尚、鍵山を無くす以外にも、鍵山の形状が異なってさえいれば、回転不可となりエンジンを始動させることができなくなる。よって、挿入部材21の形状は、正規鍵に対して鍵山の形状が異なる形状を有していればよい。このような場合でも、正規鍵の予備を準備し、この予備鍵に対して研磨等することで作成することができ、容易且つ低コストで挿入部材21を作成することができる。また、予備鍵を作成するのと同じ要領で鍵山の形成前段階の部材を用意し、この部材に対し鍵山の形状を正規鍵のものと異ならせるように研磨等することで、挿入部材21を作成してもよい。
【0024】
図5は、注意喚起ユニット10の挿入部材21を、運転室107内のイグニッションキーシリンダ71の鍵穴に挿入した状況を示す図である。図5に示すように、挿入部材21をイグニッションキーシリンダ71の鍵穴に挿入して塞ぐことは可能であるが、上記のように挿入部材21の側面21bの形状が正規鍵201の側面形状と異なるため、回転してエンジンを始動させることはできない。また、上記のとおり挿入部材21の方が注意喚起部材11よりも重いため、注意喚起部材11の重さに耐えきれずに挿入部材21がイグニッションキーシリンダ71から抜け落ちることも低減される。尚、ここでは挿入部材21の方が注意喚起部材11よりも重いとしているが、少なくとも、挿入部材21の重量は注意喚起部材11の重量の2分の1以上であればよい。つまり、挿入部材21と鍵穴との間に発生する摩擦力が、注意喚起部材11の重量による張力より大きく、挿入部材21が鍵穴から自然に外れて落下しなければ、注意喚起部材11の方が挿入部材21よりも重くてもよい。
【0025】
このようにイグニッションキーシリンダ71の鍵穴が挿入部材21により塞がる構成とすることで、オペレータによる正規鍵201の挿入を制止することができる。また注意喚起部材11は、鍵穴近傍に位置することになるため、オペレータは、エンジンを始動させてはいけないことに気付くことができる。これに加え、挿入部材21の挿入状態時に、オペレータが誤って当該挿入部材21を用いてエンジン始動操作を行っても、上記のとおり回転しないため、エンジンを始動させることも無い。
【0026】
図6は、注意喚起ユニット10の挿入部材21を、運転室107の開閉ドア117の施錠用鍵穴118(第2鍵穴)に挿入した状況を示す図である。開閉ドア117は、クレーン100の外部から運転室107内のイグニッションキーシリンダ71の鍵穴に接近するまでの間に設けられる開閉部材である。図6に示す挿入部材21もまた、開閉ドア117の施錠や開錠を行う正規鍵を模した形状となっている。すなわち、施錠用鍵穴118に挿入可能とするため、挿入部材21の鍵溝は正規鍵の鍵溝と一致するように形成されており、また開錠操作を実施できないようにするため、挿入部材21の鍵山は、正規鍵の鍵山と異なった形状となっている。
【0027】
図6に示す態様でも、オペレータは運転室107に入る前に、注意喚起部材11を容易に見つけ出し、エンジンを始動させてはいけないことに気付くことができる。尚、施錠用鍵穴118の形状とイグニッションキーシリンダ71の鍵穴形状とが同じである場合、挿入部材21の形状を両方の鍵穴に挿入可能な形状とすることで、両鍵穴のいずれにも、挿入部材21を挿入することができる。また、施錠用鍵穴118の形状とイグニッションキーシリンダ71の鍵穴形状とが異なる場合については、挿入部材21の形状をいずれか一方に合わせるのみでもよい。
【0028】
尚、運転室107の内装は、一般的に黒色もしくは灰色であることが多く、クレーン100の外装ボディの色は、一般的に黄色、橙色、淡緑色などが多い。このように、挿入部材21が鍵穴に挿入される状態での背景色は、黒色や灰色もしくは黄色、橙色、淡緑色となることが多い。よって本実施形態では、注意喚起部材11に記されるメッセージ11aの色を、黒色や灰色、黄色、橙色、淡緑色とは異なる色とし、且つ、オペレータの目に留まる例えば赤色とする。また、注意喚起部材11の下地には、赤色のメッセージ11aを引き立てるための色(例えば白色)を採用する。
【0029】
注意喚起部材11の表面と裏面とに記されるメッセージやマークの表記内容は、双方で異なっていてもよい。また、表面と裏面とで、メッセージの色や下地色を異ならせてもよい。例えば、表面を開閉ドア挿入用、裏面をイグニッションキーシリンダ挿入用として、外側を向く面を切り替えてもよい。
【0030】
本実施形態では、背景色と注意喚起部材11の下地とメッセージ11aとですべて異なる色を用いているが、すべて異なる色でなくてもよい。つまり、例えば、背景色とメッセージ11aが同色で注意喚起部材11の下地の色だけを異ならせてもよいし、注意喚起部材11の下地の色と背景色は同色でメッセージ11aの色だけを異ならせてもよい。
【0031】
本実施形態の注意喚起ユニット10は、挿入部材21と、注意喚起部材11とが紐状部材12で連結し、一体となった構成となっているが、紐状部材12で連結しなくても棒状部材や板状部材などの他の部材を介して連結されてもよい。また、挿入部材21と、注意喚起部材11が直接一体になっている形状でもよい。つまり、挿入部材を抜き差ししようとする例えばオペレータが、注意喚起部材に気付くことができるように一体となっていればよい。
【0032】
本実施形態の挿入部材21は、イグニッションキーシリンダ71の鍵穴に挿入される正規鍵、もしくは、開閉ドア117の鍵穴に挿入される正規鍵の少なくともいずれか一方を模した形状となっているが、これらの鍵穴を塞ぐ部材であればよい。例えば、鍵穴を上から覆う蓋部材でもよい。本実施形態における挿入部材や蓋部材は、鍵穴を塞ぐ閉塞部材の例示であり、これらに限定されない。
【0033】
本実施形態では、エンジンを始動させてはいけない状況の一例として、オペレーター以外の他者が点検や整備を行っている状況を例示したが、これ以外にもさまざまな状況が考えられる。
【0034】
以上に詳説したように、本実施形態により、エンジンを始動させてはいけないことを気付かせることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 :注意喚起ユニット
11 :注意喚起部材
11a :メッセージ
11b :欄
12 :紐状部材
13 :圧着金具
21 :挿入部材
21a :鍵溝
21b :側面
100 :クレーン
107 :運転室
117 :開閉ドア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7