(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開閉自在な連通部を介して屋内に連通すると共に当該連通部よりも上方で排気部を介して屋外に連通するボイド空間を設けた建物において、屋外に対する前記ボイド空間の温度差であるボイド空間温度差の減少に伴って前記連通部を閉鎖させる連通部閉鎖制御を実行する制御手段を備えた自然換気システムであって、
前記排気部が、屋外での風力により前記ボイド空間の空気を屋外に誘引するように構成され、
前記制御手段が、屋外の風速が所定の設定風速未満である低風速時には前記連通部閉鎖制御を実行し、屋外の風速が前記設定風速以上である高風速時には前記連通部閉鎖制御を実行せずに前記連通部を開放させる自然換気システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような従来の自然換気システムは、屋外に対するボイド空間の温度差が重力換気を行うのに十分なものではない場合には、例えば排熱をボイド空間に導入しない限り、ボイド空間を利用した自然換気を実行することができないため、十分な省エネルギー化が実現できない場合があった。
また、屋外に対するボイド空間の温度差が小さく、ボイド空間において生じる上昇気流が弱い場合には、屋外に連通する排気部に近いボイド空間の上層部において局所的に空気が降下する逆流が発生することがある。また、屋外に対するボイド空間の温度差が一層小さくなった場合には、ボイド空間の全体においてこのような逆流が発生することがある。そして、このようにボイド空間に逆流が発生した場合には、その逆流した空気が屋内に吹き込むことで、屋内の快適性が損なわれるという問題が生じる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、省エネルギー性を向上しながら、ボイド空間において上昇気流が不十分なことによるボイド空間から屋内への空気の逆流を防止して屋内の快適性の悪化を防止できる自然換気システムを実現する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、開閉自在な連通部を介して屋内に連通すると共に当該連通部よりも上方で排気部を介して屋外に連通するボイド空間を設けた建物において、屋外に対する前記ボイド空間の温度差であるボイド空間温度差の減少に伴って前記連通部を閉鎖させる連通部閉鎖制御を実行する制御手段を備えた自然換気システムであって、
前記排気部が、屋外での風力により前記ボイド空間の空気を屋外に誘引するように構成され、
前記制御手段が、屋外の風速が所定の設定風速未満である低風速時には前記連通部閉鎖制御を実行し、屋外の風速が前記設定風速以上である高風速時には前記連通部閉鎖制御を実行せずに前記連通部を開放させる点にある。
【0009】
本構成によれば、ボイド空間の上方において屋外と連通する排気部では、屋外での風力によりボイド空間の空気を屋外に誘引することができる。このことで、ボイド空間温度差が比較的小さいためにボイド空間において当該温度差による重力換気に十分な上昇気流の発生が見込めない場合であっても、屋外の風速が比較的高い場合には、その排気部による誘引力によってボイド空間に上昇気流を生じさせて風力換気を行うことができる。
そこで、制御手段により、屋外の風速が所定の設定風速未満である低風速時には、重力換気の可否の指標となるボイド空間温度差に基づく上記連通部閉鎖制御が実行されるが、屋外の風速が前記設定風速以上である高風速時には、ボイド空間温度差に基づく上記連通部閉鎖制御が停止される。よって、高風速時においては、ボイド空間温度差に関係なく屋内とボイド空間とを連通する連通部を強制的に開放させて風力も利用した換気を実行することができる。
従って、本発明により、重力換気と風力換気とを適切に併用して省エネルギー性を向上しながら、ボイド空間において上昇気流が不十分なことによるボイド空間から屋内への空気の逆流を防止して屋内の快適性の悪化を防止できる自然換気システムを実現することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記建物が、複数階を有すると共に、当該複数階の夫々に前記連通部が設けられており、
前記制御手段が、前記連通部閉鎖制御において、前記ボイド空間温度差が所定の第1設定温度差以上である場合には前記複数階のうちの全階における前記連通部を開放させる全階連通部開放処理を実行し、前記ボイド空間温度差が前記第1設定温度差未満且つ当該第1設定温度差よりも小さい第2設定温度差以上である場合には前記複数階のうちの上層階における前記連通部を閉鎖させると共に当該上層階よりも下層側の下層階における前記連通部を開放させる上層連通部閉鎖処理を実行し、前記ボイド空間温度差が前記第2設定温度差未満である場合には前記複数階のうちの全階における前記連通部を閉鎖させる全階連通部閉鎖処理を実行する点にある。
【0011】
本構成によれば、ボイド空間温度差が非常に小さい第2設定温度差未満となった場合には、ボイド空間の全体において屋内への逆流が発生する可能性がある。そこで、上記連通部閉鎖制御において、ボイド空間温度差が第2設定温度差未満である場合には、上記全階連通部閉鎖処理が実行される。すると、全階におけるボイド空間への連通部が閉鎖される。このことで、全階においてボイド空間から屋内への逆流の発生を抑制することができる。
【0012】
更に、ボイド空間温度差が上記第2設定温度差以上ではあるもののその第2設定温度差よりも大きい第1設定温度差未満である場合には、ボイド空間において屋外に連通する排気部に近い上層部において屋内への逆流が発生する可能性がある。そこで、上記連通部閉鎖制御において、ボイド空間温度差が第1設定温度差未満且つ第2設定温度差以上である場合には、上層連通部閉鎖処理が実行される。すると、上層階における連通部が閉鎖され、それよりも下層側の中層階や低層階等の下層階における連通部が開放される。このことで、上層階においてボイド空間から屋内への逆流の発生を抑制しながら、下層階において屋内空気を連通部からボイド空間に流入させて適切な重力換気を行うことができる。
【0013】
そして、ボイド空間温度差が十分に大きい上記第1設定温度差以上となった場合には、ボイド空間の全体において適切な上昇気流が発生する。そこで、上記連通部閉鎖制御において、ボイド空間温度差が第1設定温度差以上である場合には、上記全階連通部開放処理が実行される。すると、全階におけるボイド空間への連通部が開放される。このことで、全階において屋内空気を連通部からボイド空間に流入させて適切な重力換気を行うことができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、前記建物が、排熱を発生すると共に当該排熱を前記ボイド空間に導入可能な排熱発生部を有し、
前記制御手段が、前記連通部閉鎖制御において、前記ボイド空間温度差が所定の設定温度差未満である場合に前記排熱発生部で発生した排熱を前記ボイド空間に導入させる排熱導入処理を実行する点にある。
【0015】
本構成によれば、ボイド空間温度差が所定の設定温度差未満である場合には、上記排熱導入処理が実行されて、排熱発生部で発生した排熱がボイド空間に導入される。すると、ボイド空間に面する壁部等に排熱が蓄熱されるので、屋外に対するボイド空間の温度差であるボイド空間温度差を増加させることができる。よって、このような排熱導入処理の実行時や実行後において、開放された連通部から屋内空気をボイド空間に流入させて適切な重力換気を行うことができる。
【0016】
本発明の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、前記制御手段が、日中において前記排熱導入処理を実行し、夜間において前記連通部を開放させるパージ処理を実行する点にある。
【0017】
本構成によれば、日中においては上記排熱導入処理が適時実行されてボイド空間温度差が増加されるので、後の夜間においてボイド空間温度差を大きい状態に維持することができる。そして、その夜間において上記パージ処理を実行して連通部が開放された際には、屋内空気を連通部からボイド空間に流入させて適切な重力換気を行うことができ、翌日において屋内を快適な状態に保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る自然換気システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の自然換気システムは、オフィスビルやマンション等の複数の階を有する中高層の建物100に設けられている。
この建物100には、建物100の下層から上層にかけて延在するボイド空間20が設けられている。かかるボイド空間20は、開閉ダンパ12により開閉自在な連通口11(連通部の一例)を介して居室10(屋内の一例)に連通すると共に当該連通口11よりも上方で屋外排気口21(排気部の一例)を介して屋外60に連通する。
【0020】
このようなボイド空間20を備えた建物100では、屋外温度よりもボイド空間20の温度が高くなると、ボイド空間20の空気の比重が屋外60の空気よりも小さくなって、ボイド空間20に上昇気流(自然対流)が発生する。そして、ボイド空間20に上昇気流が発生すると、連通口11を通じて居室10の空気をボイド空間20に取り込みながら、ボイド空間20の空気を上方の屋外排気口21を通じて屋外60へ排出する換気を行うことができる。
尚、ボイド空間20における屋外60に対する温度差(以下、「ボイド空間温度差」と呼ぶ場合がある。)に起因して発生する上昇気流を利用した自然換気を重力換気と呼ぶ。
しかしながら、ボイド空間温度差がこのような重力換気を行うのに十分なものではない場合には、ボイド空間20を利用した自然換気を実行することができない。
そこで、本実施形態の自然換気システムは、詳細については後述するが、ボイド空間温度差の減少に伴って開閉ダンパ12を閉状態に切り替えて連通口11を閉鎖させる連通部閉鎖制御を実行する制御装置50を備えたものとして構成されている。
【0021】
この建物100には、各階の居室10として、複数階のうちの上層階側である上層階側居室10aや、それよりも下層階側の下層階側居室10bが存在する。各階の居室10の天井裏空間等には、ボイド空間20に連通する連通口11が設けられており、天井面に設けられた天井排気口13を通じて居室10が連通口11に連通する。この連通口11には、制御装置50により開閉制御可能な開閉ダンパ12が設けられている。そして、この開閉ダンパ12を開閉させることで、連通口11の状態が、空気の通過を許容する開放状態と空気の通過を禁止する閉鎖状態とで切り替えられる。
【0022】
各階の居室10には、屋外60と直接連通する給気口14が設けられている。この給気口14には、制御装置50により開閉制御可能な開閉ダンパ15が設けられている。そして、この開閉ダンパ15を開閉させることで、給気口14の状態が、空気の通過を許容する開放状態と空気の通過を禁止する閉鎖状態とで切り替えられる。
尚、この給気口14に設けられた開閉ダンパ15は、例えば、連通口11に設けられた開閉ダンパ12と連動して開閉される。このことにより、居室10の空気が連通口11を通じてボイド空間20に排出されることに伴って、屋外60の新鮮な空気が給気口14から居室10に取り込まれることになる。
また、このような居室10には、個別の空調装置18が適宜設置されている。
【0023】
ボイド空間20には、当該ボイド空間20の温度を計測可能なボイド空間温度センサ51が設けられている。また、このボイド空間温度センサ51は、代表的な単一の箇所に設けても構わないが、本実施形態では、複数のボイド空間温度センサ51が、上下方向に沿って分散配置されている。そして、制御装置50は、これら複数のボイド空間温度センサ51の夫々の計測結果を取得し、それらの平均値をボイド空間温度として認識することができる。
【0024】
建物100の屋上部等には、屋外60の温度を計測可能な屋外温度センサ52や、屋外60の風速を計測可能な風速計測器53が設けられている。そして、制御装置50は、屋外温度センサ52の計測結果を屋外温度として取得し、風速計測器53の計測結果を屋外風速として取得することができる。
【0025】
この建物100の例えば1階部分には、機械室30が設けられており、制御装置50は、その機械室30に設置されている。このような機械室30には、図示は省略するが、管理システム関連機器、通信ネットワーク関連機器、中央空調システム関連機器等の各種機器が設置されており、これら機器の排熱により機械室30の空気は昇温する。
そして、機械室30には、このような排熱を含む機械室30の空気を外部に排出するための排気ファン35が設けられている。排気ファン35による機械室30の空気の排気状態は、制御装置50によるバルブ31,33の開閉制御により、排気ダクト32を通じて屋外60に排気する状態と、排気ダクト34を通じてボイド空間20に排気する状態との間で切替可能に構成されている。
即ち、この機械室30は、排熱を発生すると共に当該排熱をボイド空間20に導入可能な排熱発生部となる。
尚、本実施形態では、機械室30を排熱発生部としているが、建物100において排熱が発生する別の箇所を排熱発生部としても構わない。例えば、各居室10やトイレなどを排熱発生部としても良く、また、各居室10に設置された空調装置18を排熱発生部としても構わない。
【0026】
以上のような自然換気システムでは、ボイド空間温度差が小さく、ボイド空間20において生じる上昇気流が弱い場合に、屋外60に連通する屋外排気口21に近いボイド空間20の上層部において局所的に空気が降下する逆流が発生することが懸念される。そして、このような逆流が連通口11を通じて屋内の居室10に吹き込むことで、居室10の快適性が損なわれる。
そこで、本実施形態の自然換気システムは、省エネルギー性を向上しながら、ボイド空間20において上昇気流が不十分なことによるボイド空間20から居室10への空気の逆流を防止して居室10の快適性の悪化を防止するための構成を有しており、その詳細について以下に説明を加える。
【0027】
ボイド空間20の上方において屋外60に開放される屋外排気口21は、上方に向かう水平方向に沿った開口として形成されており、それにより屋外60での風力によりボイド空間20の空気を屋外60に誘引するように構成されている。
このことで、ボイド空間温度差が比較的小さいためにボイド空間20において温度差による重力換気に十分な上昇気流の発生が見込めない場合であっても、屋外60の風速が比較的高い場合には、その屋外排気口21による誘引力によってボイド空間20に上昇気流が発生する。そして、ボイド空間20に上昇気流が発生すると、連通口11を通じて居室10の空気をボイド空間20に取り込みながら、ボイド空間20の空気を上方の屋外排気口21を通じて屋外60へ排出する換気を行うことができる。
尚、屋外60での風力に起因して発生する上昇気流を利用した自然換気を風力換気と呼ぶ。
【0028】
そして、制御装置50は、以下に説明する制御フローを実行することで、重力換気と風力換気とを適宜行って、屋内居室10の快適性確保と省エネルギー性の向上が実現されている。以下、制御装置50により実行される制御フローの詳細について説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
先ず、第1実施形態での制御装置50による制御フローについて、
図2及び
図3に基づいて説明する。
本実施形態において、制御装置50は、
図2に示す制御フローを実行する。この制御フローでは、先ず、風速計測器53により屋外風速が計測され(ステップ#01)、その計測結果により屋外60が強風状態であるか弱風状態であるかが判定される(ステップ#02)。例えば、このステップ#02の判定処理では、屋外排気口21による誘引力によってボイド空間20に風力換気に十分な上昇気流が発生するときの屋外風速の下限値(例えば2m/s)を設定風速として、屋外風速が、その設定風速以上であるときには強風状態であると判定され、その設定風速未満であるときには弱風状態であると判定される。
【0030】
そして、上記ステップ#02において弱風状態であると判定された場合には、後述する連通部閉鎖制御が実行される(ステップ#04)。
一方、上記ステップ#02において強風状態であると判定された場合には、その連通部閉鎖制御が実行されずに、全階の居室10(上層階側居室10a及び下層階側居室10b)における連通口11を開放させる全階連通部開放処理が実行される(ステップ#03)。即ち、強風時には、屋外排気口21による誘引力によってボイド空間20に十分な上昇気流が生じるので、全階において居室10の連通口11が開放されて風力換気が行われる。
【0031】
次に、上記ステップ#02において弱風状態であると判定された場合に実行される連通部閉鎖制御(ステップ#04)の制御フローを、
図3に基づいて説明する。
かかる連通部閉鎖制御では、先ず、ボイド空間温度センサ51によりボイド空間20の温度であるボイド空間温度Tvが計測され、屋外温度センサ52により屋外60の温度である屋外温度Toが計測される(ステップ#11)。
そして、ボイド空間温度Tvからの屋外温度Toの差分(Tv−To)が、屋外60に対するボイド空間20の温度差であるボイド空間温度差ΔTとして求められる(ステップ#12)。
【0032】
そして、ボイド空間温度差ΔTが、所定の第1設定温度差T1a(例えば2℃)以上である(ステップ#13のYes)場合には、全階の居室10(上層階側居室10a及び下層階側居室10b)における連通口11を開放させる全階連通部開放処理が実行される(ステップ#14)。即ち、ボイド空間温度差ΔTが第1設定温度差T1a以上の比較的高い場合には、その屋外60に対する温度差によってボイド空間20に十分な上昇気流が生じるので、全階連通部開放処理が実行されることで、全階において居室10の連通口11が開放されて、ボイド空間温度差により発生する上昇気流を利用した重力換気が行われる。
【0033】
ボイド空間温度差ΔTが、第1設定温度差T1a未満であり(ステップ#13のNo)、且つ当該第1設定温度差T1aよりも小さい所定の第2設定温度差T1b(例えば0℃)以上である(ステップ#15のYes)場合には、複数階のうちの上層階側居室10aにおける連通口11を閉鎖させると共に下層階側居室10bにおける連通口11を開放させる上層連通部閉鎖処理が実行される(ステップ#16)。即ち、ボイド空間温度差ΔTが、第2設定温度差T1b以上ではあるもののその第1設定温度差T1a未満である場合には、ボイド空間20において屋外60に連通する屋外排気口21に近い上層部において逆流が発生し、その逆流が上層階側居室10aへ流入する可能性がある。そのような場合に、上層連通部閉鎖処理が実行されて、上層階側居室10aにおける連通口11が閉鎖されるので、ボイド空間20から上層階側居室10aへの逆流の発生が防止される。一方、下層階側居室10bでは、連通口11が開放されるので、下層階側居室10bの屋内空気が連通口11からボイド空間20に流入して適切な重力換気が行われることになる。
【0034】
ボイド空間温度差ΔTが、第2設定温度差T1b未満である(ステップ#15のNo)場合には、全階の居室10(上層階側居室10a及び下層階側居室10b)における連通口11を閉鎖させる全階連通部閉鎖処理が実行される(ステップ#17)。即ち、ボイド空間温度差ΔTが非常に小さい第2設定温度差T1b未満となった場合には、ボイド空間20の全体において居室10への逆流が発生し、その逆流が居室10に流入する可能性がある。そのような場合に、全階連通部閉鎖処理が実行されて、全階の居室10における連通口11が閉鎖されるので、全階においてボイド空間20から居室10への逆流の発生が防止される。
【0035】
更に、上記ステップ#17において全階連通部閉鎖処理が実行されて全階の居室10における連通口11が閉鎖された場合において、ボイド空間温度差ΔTが、上記第2設定温度差T1bよりも小さい所定の第3設定温度差T1c(例えば−2℃)未満である(ステップ#18のNo)場合には、機械室30の空気をボイド空間20へ供給する形態で、機械室30で発生した排熱をボイド空間20に導入させる排熱導入処理が実行される(ステップ#19)。すると、ボイド空間20に面する壁部等には機械室30の排熱が蓄熱されることになり、その結果、ボイド空間温度差ΔTが増加する。よって、ボイド空間20において温度差による十分な上昇気流が生じることになり、次に居室10の連通口11が開放された際には、居室10の屋内空気を連通口11からボイド空間20に流入させて適切な重力換気を行うことができる。
尚、本実施形態では、全階連通部閉鎖処理の実行により連通口11が閉鎖された場合であっても、ボイド空間温度差ΔTが第3設定温度差T1c以上である(ステップ#18のYes)場合には、このような排熱導入処理は実行せずに、機械室30の空気を屋外60へ排気している。しかし、連通口11が閉鎖された場合には必ず機械室30の空気をボイド空間20へ流入させる排熱導入処理を実行するようにしても構わない。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態での制御装置50による制御フローについて、
図4及び
図5に基づいて説明する。
本実施形態において、制御装置50は、
図4に示す制御フローを実行する。この制御フローでは、先ず、内蔵する時計(図示省略)を参照して日中であるか否かが判定される(ステップ#21)。例えば、午前6時頃から午後6時頃までが日中として判定され、午後6時から翌日の午前6時までが夜間として判定される。
【0037】
そして、上記ステップ#21において夜間であると判定された(ステップ#21のNo)場合には、例えば全階の居室10の連通口11を開放させるパージ処理が実行される(ステップ#26)。そして、その前の日中においては、後述する排熱導入処理(
図5のステップ#37)が適時実行されて、屋外60に対するボイド空間20の温度差が大きい状態に維持されている。よって、夜間においては、ボイド空間20において温度差による十分な上昇気流が生じることになるので、パージ処理を実行して連通口11を開放すると、居室10の屋内空気を連通口11からボイド空間20に流入させて適切な重力換気を行うことができる。
【0038】
一方、上記ステップ#21において日中であると判定された(ステップ#21のYes)場合には、以下の処理フローが実行される。
即ち、上記第1実施形態と同様に、風速計測器53により屋外風速が計測され(ステップ#22)、その計測結果により屋外60が強風状態であるか弱風状態であるかが判定される(ステップ#23)。
そして、上記ステップ#23において弱風状態であると判定された場合には、後述する連通部閉鎖制御が実行される(ステップ#25)。
一方、上記ステップ#23において強風状態であると判定された場合には、上記第1実施形態と同様に、その連通部閉鎖制御が実行されずに、全階連通部開放処理が実行されて(ステップ#24)、屋外排気口21の誘引力によりボイド空間20に発生する上昇気流を利用した風力換気が行われる。
【0039】
次に、上記ステップ#23において弱風状態であると判定された場合に実行される連通部閉鎖制御(ステップ#25)の制御フローを、
図5に基づいて説明する。
かかる連通部閉鎖制御では、先ず、ボイド空間温度センサ51によりボイド空間20の温度であるボイド空間温度Tvが計測され、屋外温度センサ52により屋外60の温度である屋外温度Toが計測される(ステップ#31)。
そして、ボイド空間温度Tvからの屋外温度Toの差分(Tv−To)が、屋外60に対するボイド空間20の温度差であるボイド空間温度差ΔTとして求められる(ステップ#32)。
【0040】
そして、ボイド空間温度差ΔTが、所定の第1設定温度差T2a(例えば2℃)以上である(ステップ#33のYes)場合には、全階の居室10(上層階側居室10a及び下層階側居室10b)における連通口11を開放させる上記第1実施形態と同様の全階連通部開放処理が実行されて(ステップ#34)、全階の居室10において、ボイド空間温度差によりボイド空間20に発生する上昇気流を利用した重力換気が行われる。
【0041】
ボイド空間温度差ΔTが、第1設定温度差T2a未満である(ステップ#33のNo)場合には、全階の居室10(上層階側居室10a及び下層階側居室10b)における連通口11を閉鎖させる上記第1実施形態と同様の全階連通部閉鎖処理が実行されて(ステップ#35)、全階においてボイド空間20から居室10への逆流の発生が防止される。
【0042】
更に、上記ステップ#35において全階連通部閉鎖処理が実行されて全階の居室10における連通口11が閉鎖された場合において、ボイド空間温度差ΔTが、上記第1設定温度差T2aよりも小さい所定の第2設定温度差T2b(例えば0℃)未満である(ステップ#36のNo)場合には、機械室30の空気をボイド空間20へ供給する形態で、機械室30で発生した排熱をボイド空間20に導入させる上記第1実施形態と同様の排熱導入処理が実行されて(ステップ#37)、ボイド空間温度差ΔTが増加される。よって、ボイド空間20において温度差による十分な上昇気流が生じることになり、夜間にパージ処理(
図4のステップ#26)が実行されて、居室10の屋内空気を連通口11からボイド空間20に流入させて適切な重力換気を行うことができる。
尚、本実施形態では、全階連通部閉鎖処理の実行により連通口11が閉鎖された場合であっても、ボイド空間温度差ΔTが第2設定温度差T2b以上である(ステップ#36のYes)場合には、このような排熱導入処理は実行せずに、機械室30の空気を屋外60へ排気している。しかし、連通口11が閉鎖された場合には必ず機械室30の空気をボイド空間20へ流入させる排熱導入処理を実行するようにしても構わない。
【0043】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0044】
(1)上記第1実施形態では、ボイド空間温度差ΔTが第1設定温度差T1a未満であり且つ第2設定温度差T1b以上である場合に実行する上層連通部閉鎖処理(
図3のステップ#16)では、上層階側居室10aにおける連通口11を閉鎖させると共に、上層階側居室10aよりも下層側の全ての下層階側居室10bにおける連通口11を開放させるように構成したが、ボイド空間温度差ΔTに応じて設定した一部の階の下層階側居室10bにおける連通口11を開放させるように構成しても構わない。例えば、下層階側居室10bとして中層階側と低層階側とが存在する場合に、ボイド空間温度差ΔTが第1設定温度差未満T1a且つ第2設定温度差T1b以上の範囲内において小さめの場合には、中層階での逆流を抑制するべく中層階側の下層階側居室10bの連通口11を閉鎖しながら、低層階側の下層階側居室10bの連通口11のみを開放する状態としても構わない。
【0045】
(2)上記実施形態では、連通口11が閉鎖している連通部閉鎖時において機械室30等の排熱発生部の排熱をボイド空間20に導入する排熱導入処理を実行するように構成したが、このような排熱導入処理を省略しても構わない。
【0046】
(3)上記第2実施形態では、日中において排熱導入処理(
図5のステップ#37)を適時実行し、夜間においてパージ処理(
図4のステップ#26)を実行するように構成したが、このような排熱導入処理を行う時間帯や、パージ処理を行う時間帯については、適宜変更することができる。また、状況に応じて排熱導入処理とパージ処理とを時間で切り替えるようにしてもよい。
【0047】
(4)上記実施形態では、全階連通部閉鎖処理(
図3のステップ#17、
図5のステップ#35)が実行されて全階の居室10における連通口11が閉鎖された場合において、排熱導入処理(
図3のステップ#19、
図5のステップ#37)を適時実行するように構成したが、一部の階又は全階において連通口11を開放させて重力換気を行っている状態で、排熱導入処理を適時実行するように構成しても構わない。例えば、ボイド空間においてボイド空間温度差が比較的小さい箇所近傍の連通口については閉鎖しながら、ボイド空間においてボイド空間温度差が比較的大きい箇所近傍の連通口については開放させて当該連通口を介した重力換気を行うように構成しても構わない。