特許第6987682号(P6987682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987682
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20211220BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20211220BHJP
   D06M 13/342 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   D06M13/463
   D06M13/144
   D06M13/342
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-50711(P2018-50711)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-163559(P2019-163559A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2020年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】永元 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 景子
【審査官】 南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−121423(JP,A)
【文献】 特開2016−011472(JP,A)
【文献】 特開2016−108680(JP,A)
【文献】 特開2010−047853(JP,A)
【文献】 特開2014−214404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)〜(C):
(A)不飽和率が38%以上の脂肪酸エステルタイプカチオン界面活性剤、
(B)炭素数10以上18以下の脂肪族アルコール、及び
(C)分子中に窒素原子を1つ含むアミノ酸系金属封鎖剤
を含有し、
(A)成分の(B)成分に対する比率((A)/(B))が0.5〜8である、液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
(B)成分の(C)成分に対する比率((B)/(C))が5〜100000である、請求項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
(A)成分の配合量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、5〜25質量%であり、
(B)成分の配合量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0.5質量%以上であり、 (C)成分の配合量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0.0001質量%以上である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(A)成分が、下記一般式(A1)で表されるアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【化1】
[式中、R1〜R3はそれぞれ独立に、炭素数10〜26の炭化水素基、−CH2CH(Y)OCOR4(Yは水素原子又はCH3である。)、炭素数1〜4のアルキル基、−CH2CH(Y)OH(Yは水素原子又はCH3である)であり、R1〜R3のうちの少なくとも1つは、−CH2CH(Y)OCOR4であり、R4は炭素数7〜21の炭化水素基である。]
【請求項5】
(B)成分が、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、及びステアリルアルコールから選ばれる1種以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(C)成分が、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、アスパラギン酸ジ酢酸(ASDA)、イソセリンジ酢酸(ISDA)、β−アラニンジ酢酸(ADAA)、セリンジ酢酸(SDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体柔軟剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、不飽和基を含有するカチオン界面活性剤を配合した柔軟剤で処理した衣料は吸水性が向上するものの、不具合についても知られている。例えば、特開2003−105668号公報には、太陽光のもとで乾燥させると、室内で乾燥した場合に比べて柔軟性が劣化したり、静電気の発生を防止する効果が低下する課題について述べられている。特に、柔軟基材(カチオン界面活性剤)の配合量が少ない柔軟剤において、その課題は顕著である。また、生分解性のよい脂肪酸エステルタイプの柔軟基材は、保存により加水分解がすすむことで、柔軟性や静電気抑制効果が低下する課題もある。
特開2003−105668号公報では、不飽和基を含有するカチオン界面活性剤と、特定の脂肪酸及び/又は特定の脂肪酸と低級アルコールとのエステル化反応生成物、特定のシリコーンを必須成分とした液体柔軟剤組成物で処理することにより天日干しした際にも優れた柔軟性を付与し、更に、生分解性も良好な柔軟基材からなる液体柔軟剤組成物が得られることが公知となっている。また、柔軟基材の加水分解を抑制する方法として、特開2012−233281号公報に記載の方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−105668号公報
【特許文献2】特開2012−233281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液体柔軟剤組成物で処理した場合に、内干しと外干しとの感触差を少なくし、かつ、組成物において加水分解を抑制し、その結果、保存後の柔軟性劣化が少なくなるにもかかわらず、環境中に排出されれば生分解性良好である液体柔軟剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、不飽和率の高い脂肪酸エステルタイプカチオン界面活性剤を含有する液体柔軟剤組成物に高級脂肪族アルコールと特定のアミノカルボン酸系キレート剤を併用することで、天日干しによる柔軟性劣化を低減し、かつ保存後の柔軟性劣化を抑制できることを見出した。すなわち、本発明は、下記の成分(A)〜(C):
(A)不飽和率が38%以上の脂肪酸エステルタイプカチオン界面活性剤、
(B)炭素数10以上18以下の脂肪族アルコール、及び
(C)分子中に窒素原子を1つ含むアミノ酸系金属封鎖剤
を含有する液体柔軟剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液体柔軟剤組成物を用いることにより、内干しと外干しとの感触差を少なくすることができる。また、本発明の液体柔軟剤組成物においては、加水分解を抑制することができ、その結果、保存後の柔軟性劣化が少なくなるにもかかわらず、環境中に排出されれば生分解性良好であるという利点も有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の液体柔軟剤組成物は、下記の成分(A)〜(C):
(A)不飽和率が38%以上の脂肪酸エステルタイプカチオン界面活性剤、
(B)炭素数10以上18以下の脂肪族アルコール、及び
(C)分子中に窒素原子を1つ含むアミノ酸系金属封鎖剤
を含有する。
【0008】
(A)成分(不飽和率が38%以上の脂肪酸エステルタイプカチオン界面活性剤)
(A)成分は、「エステル基(−COO−)で分断されている炭化水素基を分子内に1〜3個有し、その炭化水素基は不飽和率が38%以上となるアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」である、カチオン界面活性剤である。不飽和率とは(A)成分中における炭化水素基中のアルケニル基の割合(質量%)と定義する。例えば、原料にステアリン酸メチル25質量%とオレイン酸メチル40質量%とパルミチン酸メチル35質量%とを含む脂肪酸低級アルキルエステルの混合物を用いる場合、40/(25+40+35)×100=40%となり、不飽和率は40%となる。
(A)成分は、繊維製品へ柔軟性(風合い)を付与する効果(すなわち、柔軟剤本来の機能)を液体柔軟剤組成物へ付与するために配合される。
エステル基(−COO−)で分断されている炭化水素基の炭素数は10〜26が好ましく、17〜26がより好ましく、19〜24がさらに好ましい。炭素数が10以上であると柔軟性付与効果が良好であり、26以下であると液体柔軟剤組成物のハンドリング性が良好である。
エステル基(−COO−)で分断されている炭化水素基は、鎖状の炭化水素基であっても、構造中に環を含む炭化水素基であってもよく、好ましくは鎖状の炭化水素基である。鎖状の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。
前記炭化水素基は、エステル基(−COO−)で分断されている。すなわち、前記炭化水素基は、その炭素鎖中に、エステル基を有し、該エステル基によって炭素鎖が分断されている。該エステル基を有すると、生分解性が向上する。
1つの炭化水素基が有するエステル基の数は1つであっても2つ以上であってもよい。すなわち、炭化水素基は、エステル基によって1ヶ所が分断されていてもよく、2ヶ所以上が分断されていてもよい。
なお、エステル基が有する炭素原子は、炭化水素基の炭素数にカウントするものとする。
前記炭化水素基は、通常、工業的に使用される牛脂由来の未水添脂肪酸、不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸、パーム椰子、油椰子などの植物由来の未水添脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸又は脂肪酸エステル等を使用することにより導入される。
【0009】
アミン化合物としては、2級アミン化合物(長鎖炭化水素基の数が2個)又は3級アミン化合物(長鎖炭化水素基の数が3個)が好ましく、3級アミン化合物がより好ましい。
アミン化合物としては、下記一般式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
[式中、R1〜R3はそれぞれ独立に、炭素数10〜26の炭化水素基、−CH2CH(Y)OCOR4(Yは水素原子又はCH3である。)、炭素数1〜4のアルキル基、−CH2CH(Y)OH(Yは水素原子又はCH3である)であり、R1〜R3のうちの少なくとも1つは、−CH2CH(Y)OCOR4であり、R4は炭素数7〜21の炭化水素基である。]
【0010】
一般式(A1)中、R1〜R3における炭素数10〜26の炭化水素基の炭素数は、17〜26が好ましく、19〜24がより好ましい。該炭化水素基は、不飽和率が38%以上である。
−CH2CH(Y)OCOR4中、Yは水素原子又はCH3であり、水素原子が特に好ましい。R4は炭素数7〜21の炭化水素基、好ましくは炭素数15〜19の炭化水素基である。一般式(A1)で表される化合物中にR4が複数存在するとき、該複数のR4は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
4の炭化水素基は、炭素数8〜22の脂肪酸もしくは脂肪酸メチルエステル(R4COOMe)からカルボキシ基を除いた残基(脂肪酸残基)であり、R4のもととなる脂肪酸もしくは脂肪酸メチルエステル(R4COOMe)は、飽和脂肪酸もしくは飽和脂肪酸メチルエステルでも不飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸メチルエステルでもよく、また、直鎖脂肪酸もしくは直鎖脂肪酸メチルエステルでも分岐脂肪酸もしくは分岐脂肪酸メチルエステルでもよい。中でも、飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸が好ましい。柔軟処理した衣類に良好な吸水性を付与するために、R4のもととなる脂肪酸もしくは脂肪酸メチルエステルの不飽和比率は高いほど好ましい。
4のもととなる脂肪酸として具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10〜60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10〜60)などが挙げられる。中でも、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびリノール酸から選ばれる2種以上を所定量ずつ組み合わせて用いるのが好ましい。この場合、炭素数16〜18のものの割合は、繊維や衣類に対する柔軟性付与の観点から80質量%以上とし、炭素数20の脂肪酸が2質量%未満、炭素数21〜22の脂肪酸が1質量%未満とするのが好ましい。
【0011】
一般式(A1)において、R1〜R3のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つが−CH2CH(Y)OCOR4である。
1〜R3のうち、1つ又は2つが−CH2CH(Y)OCOR4である場合、残りの2つ又は1つは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、−CH2CH(Y)OHであり、炭素数1〜4のアルキル基、−CH2CH(Y)OHであることが好ましい。ここで、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。−CH2CH(Y)OHにおけるYは、−CH2CH(Y)OCOR4中のYと同様である。
【0012】
一般式(A1)で表される化合物の好ましい例として、下記一般式(A1−2)〜(A1−6)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
〔((A1−2)〜(A1−6)の各式中、R9はそれぞれ独立に、炭素数7〜21の炭化水素基である。〕
9における炭素数7〜21の炭化水素基としては、前記一般式(A1)のR4における炭素数7〜21の炭化水素基と同様のものが挙げられる。なお、式中にR9が複数存在するとき、該複数のR9は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
【0013】
(A)成分は、アミン化合物の塩であってもよい。
アミン化合物の塩は、該アミン化合物を酸で中和することにより得られる。アミン化合物の中和に用いる酸としては、有機酸でも無機酸でもよく、例えば塩酸、硫酸や、メチル硫酸等が挙げられる。アミン化合物の中和は、公知の方法により実施できる。
(A)成分は、アミン化合物の4級化物であってもよい。
アミン化合物の4級化物は、該アミン化合物に4級化剤を反応させて得られる。アミン化合物の4級化に用いる4級化剤としては、例えば、塩化メチル等のハロゲン化アルキルや、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸などが挙げられる。これらの4級化剤をアミン化合物と反応させると、アミン化合物の窒素原子に4級化剤のアルキル基が導入され、4級アンモニウムイオンとハロゲンイオン又はモノアルキル硫酸イオンとの塩が形成される。4級化剤により導入されるアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。アミン化合物の4級化は、公知の方法により実施できる。
【0014】
(A)成分としては、
一般式(A1)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、
一般式(A1−2)〜(A1−6)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、
一般式(A1−4)〜(A1−6)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
特に、一般式(A1−4)で表される化合物の4級化物と、(A1−5)で表される化合物の4級化物と、(A1−6)で表される化合物の4級化物とを併用することが好ましい。
一般式(A1)及び(A1−2)〜(A1−6)で表される化合物、その塩及びその4級化物は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
例えば、一般式(A1−2)で表される化合物(以下「化合物(A1−2)」という)と、一般式(A1−3)で表される化合物(以下「化合物(A1−3)」という)とを含む組成物は、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10〜60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10〜60)などの脂肪酸組成物、または該脂肪酸組成物における脂肪酸を該脂肪酸のメチルエステルに置き換えた脂肪酸メチルエステル組成物と、メチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、柔軟性付与を良好にする観点から、「化合物(A1−2)/化合物(A1−3)」で表される存在比率が、質量比で99/1〜50/50となるように合成することが好ましい。
更に、その4級化物を用いる場合には、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。その際、柔軟性付与の観点から「化合物(A1−2)の4級化物/化合物(A1−3)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1〜50/50となるように合成することが好ましい。
【0015】
一般式(A1−4)で表される化合物(以下「化合物(A1−4)」という)と、一般式(A1−5)で表される化合物(以下「化合物(A1−5)」という)と、一般式(A1−6)で表される化合物(以下「化合物(A1−6)」という)とを含む組成物は、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10〜60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10〜60)などの脂肪酸組成物または脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、化合物(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)の合計質量に対する個々の成分の含有比率は、柔軟性付与の観点から、化合物(A1−4)が1〜60質量%、化合物(A1−5)が5〜98質量%、化合物(A1−6)が0.1〜40質量%であることが好ましく、化合物(A1−4)が30〜60質量%、化合物(A1−5)が10〜55質量%、化合物(A1−6)が5〜35質量%であることがより好ましい。
また、その4級化物を用いる場合には、4級化反応を十分に進行させる点で、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。化合物(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)の各4級化物の存在比率は、柔軟性付与の観点から質量比で、化合物(A1−4)の4級化物が1〜60質量%、化合物(A1−5)の4級化物が5〜98質量%、化合物(A1−6)の4級化物が0.1〜40質量%であることが好ましく、化合物(A1−4)の4級化物が30〜60質量%、化合物(A1−5)の4級化物が10〜55質量%、化合物(A1−6)の4級化物が5〜35質量%であることがより好ましい。
なお、化合物(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、「4級化物/4級化されていないエステルアミン」の比率は70/30〜99/1の質量比率の範囲内であることが好ましい。
【0016】
(A)成分は、アシル基中に水酸基を有してもよい。水酸基を有するアシル基が存在することで、液体柔軟剤の粘度を減粘できる。減粘させる場合、アシル基中に水酸基を有するアシル基の割合が0.1〜5%の範囲であることが好ましい。
(A)成分は、1種類のアミン化合物、その塩又はその4級化物を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物、例えば、一般式(A1−4)〜(A1−6)で表される化合物の混合物として用いてもよい。
(A)成分の配合量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは6〜15質量%、さらに好ましくは6〜9質量%である。通常は(A)成分が少ない組成を天日干しすると柔軟効果が悪化するが、(B)成分と併用することで悪化を抑制できる。
【0017】
(B)成分(炭素数10以上18以下の脂肪族アルコール)
(B)成分としては、柔軟性、加水分解抑制、ハンドリング性の観点から、炭素数10以上18以下の脂肪族アルコールを用いる。脂肪族アルコールの炭素数は、柔軟性、加水分解抑制効果をより向上させる観点から、好ましくは12以上18以下、より好ましくは14以上18以下である。好ましいアルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、及びステアリルアルコールから選ばれる1種以上であり、これらの中でも、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールが特に好ましい。(B)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
(B)成分の配合量は、柔軟性、加水分解抑制の観点から、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。また、柔軟剤組成物の製造性や増粘抑制の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0018】
(C)成分(分子中に窒素原子を1つ含むアミノ酸系金属封鎖剤)
(C)成分としては、加水分解抑制の観点から、分子中に窒素原子を1つ含むアミノ酸系金属封鎖剤、すなわち分子中に窒素原子を1つ含むアミノカルボン酸を用いる。(C)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
好適なものとしては、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、アスパラギン酸ジ酢酸(ASDA)、イソセリンジ酢酸(ISDA)、β−アラニンジ酢酸(ADAA)、セリンジ酢酸(SDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、又はこれらの塩が挙げられる。中でもMGDA又はその塩が好ましい。
(C)成分の配合量は、加水分解抑制の観点から、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
【0019】
天日干しと室内干しの差の抑制、また加水分解抑制の観点から、(A)成分の(B)成分に対する比率((A)/(B))を0.5〜50とするのが好ましく、1.2〜3とするのがより好ましい。また、(A)成分と(B)成分の合計配合量((A)+(B))は、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、5.5〜35質量%とするのが好ましく、9〜14質量%とするのがより好ましい。
さらに加水分解抑制の観点からは、(B)成分の(C)成分に対する比率((B)/(C))は5〜100000とするのが好ましく、200〜5000とするのがより好ましい。
【0020】
(任意成分)
本発明の液体柔軟剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記(A)〜(C)の必須成分以外の任意成分を配合してもよい。
任意成分としては、液体柔軟剤組成物に一般的に配合される成分を挙げることができる。具体例としては、水、香料、ノニオン界面活性剤、粘度調整剤、水溶性塩類、染料、水溶性溶剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、消臭剤や、スキンケア成分などが挙げられる。
以下、いくつかの任意成分について詳細に説明する。
【0021】
(水)
本発明の液体柔軟剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては、水道水、精製水、純水、蒸留水、イオン交換水など、いずれも用いることができる。中でもイオン交換水が好適である。
水の配合量は特に限定されず、所望の成分組成を達成するために適宜配合することができる。
【0022】
(香料)
液体柔軟剤組成物には、香料を任意成分として配合することができる。
香料としては当該技術分野で汎用の香料を使用可能であり特に限定されないが、使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
香料は、1種類の香料を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
香料の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1〜3%質量%であり、より好ましくは0.5〜2質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0023】
(ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤は、本発明の液体柔軟剤組成物が乳化物である場合に、主に、乳化物中での油溶性成分の乳化分散安定性を向上する目的で配合することができる。ノニオン界面活性剤を配合すると、商品価値上充分なレベルの凍結復元安定性やカプセル香料の分散安定性が確保されやすい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、多価アルコール、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを用いることができる。より具体的には、グリセリンまたはペンタエリスリトールに炭素数10〜22の脂肪酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはペンタエリスリトール;炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(該アルキルの炭素数1〜3)エステル;エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン;炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド;エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルである硬化ヒマシ油などが挙げられる。中でも、炭素数10〜18のアルキル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が20〜80モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
ノニオン界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
ノニオン界面活性剤の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0024】
(防腐剤)
防腐剤は、主に、液体柔軟剤組成物の防腐力や殺菌力を強化し、長期保存中の防腐性を保つために配合され得る。
防腐剤としては、液体柔軟剤組成物分野において公知の成分を特に制限なく用いることができる。具体例としては、例えば、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物、安息香酸類、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
イソチアゾロン系の有機硫黄化合物としては、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−ブチル−3−イソチアゾロン、2−ベンジル−3−イソチアゾロン、2−フェニル−3−イソチアゾロン、2−メチル−4,5−ジクロロイソチアゾロン、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや、これらの混合物などが挙げられる。なかでも、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましく、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物がより好ましく、前者が約77質量%と後者が約23質量%との混合物やその希釈液(例えば、イソチアゾロン液)が特に好ましく、具体的には、ダウケミカル社製のケーソンCG−ICPなどが挙げられる。
ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、類縁化合物としてジチオ−2,2−ビス(ベンズメチルアミド)や、これらの混合物などが挙げられる。中でも、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンが特に好ましく、具体的には、クラリアント(株)製のニッパサイド、(株)ロンザ製のプロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL、プロキセルLV、プロキセルCRL、プロキセルNBZ、プロキセルAMや、プロキセルB20などが挙げられる。
安息香酸類としては、安息香酸又はその塩、パラヒドロキシ安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルや、パラオキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
防腐剤の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.0001〜1質量%である。0.0001質量%以上であると、防腐剤の配合効果が十分に得られ、1質量%以下であると、液体柔軟剤組成物の高い保存安定性を十分に維持することができる。
【0025】
(抗菌剤)
抗菌剤は、液体柔軟剤組成物の保存性を高めるために配合され得る。
抗菌剤としては、液体柔軟剤組成物分野において公知の成分を特に制限なく用いることができる。具体例としては、例えば、ダイクロサン、トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、ビス−(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、8−オキシキノリン、ビグアニド系化合物(例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド)、塩酸クロロヘキシジンや、ポリリジン等が挙げられる。これらの中でも、ダイクロサン、塩化ベンザルコニウム、ビグアニド系化合物や、塩酸クロロヘキシジンが好ましい。
抗菌剤の含量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.001〜5質量%である。
【0026】
前記の任意成分以外にも、液体柔軟剤組成物の香気や色調の安定性を向上させるための酸化防止剤や還元剤、乳濁剤(ポリスチレンエマルジョンなど)、不透明剤、縮み防止剤、洗濯じわ防止剤、形状保持剤、ドレープ性保持剤、アイロン性向上剤、酸素漂白防止剤、増白剤、白化剤、布地柔軟化クレイ、帯電防止剤、移染防止剤(ポリビニルピロリドンなど)、高分子分散剤、汚れ剥離剤、スカム分散剤、蛍光増白剤(4,4−ビス(2−スルホスチリル)ビフェニルジナトリウム(チバスペシャルティケミカルズ製チノパールCBS−X)など)、染料固定剤、退色防止剤(1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンなど)、染み抜き剤、繊維表面改質剤(セルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼや、ケラチナーゼなどの酵素)、抑泡剤、水分吸放出性など絹の風合い・機能を付与する成分(シルクプロテインパウダー、それらの表面改質物、乳化分散液、具体的にはK−50、K−30、K−10、A−705、S−702、L−710、FPシリーズ(出光石油化学)、加水分解シルク液(上毛)、シルクゲンGソルブルS(一丸ファルコス))や、汚染防止剤(アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位とからなる非イオン性高分子化合物、例えば、互応化学工業製FR627、クラリアントジャパン製SRC−1など)などを適宜配合することができる。
【0027】
(液体柔軟剤組成物のpH)
液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(A)成分の分子中に含まれるエステル基の加水分解を抑制する観点から、25℃におけるpHを1〜6の範囲に調整することが好ましく、2〜4の範囲に調整することがより好ましい。pH調整剤として、任意の無機または有機の酸およびアルカリを使用することができる。
【0028】
(液体柔軟剤組成物の粘度)
液体柔軟剤組成物の粘度は、その使用性を損なわない限り特に限定されないが、25℃における粘度が800mPa・s未満であることが好ましい。保存経日による粘度上昇を考慮すると、製造直後の液体柔軟剤組成物の25℃における粘度が500mPa・s未満であるのがより好ましく、300mPa・s未満であるのがさらに好ましい。このような範囲にあると、洗濯機への投入の際のハンドリング性等の使用性が良好である。
なお、液体柔軟剤組成物の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定することができる。
【0029】
(製造方法)
本発明の柔軟剤組成物は、公知の方法、例えば主剤としてカチオン界面活性剤を用いる従来の液体柔軟剤組成物の製造方法と同様の方法により製造できる。
例えば、(A)成分、(B)成分を含む油相と、(C)成分を含む水相とを、(A)成分の融点以上の温度条件下で混合して乳化物を調製し、その後、得られた乳化物に必要に応じて他の成分を添加、混合することにより製造することができる。
尚、(B)成分、(C)成分は、上記記載の添加方法に限定されない。
【実施例】
【0030】
[(A)成分]
・A−1(不飽和率:40%:カチオン界面活性剤(合成例1記載の化合物) A−1は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
・A−2(不飽和率:88%):カチオン界面活性剤(特開2010−047851のA−1)
A−2は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
・A−3(不飽和率:30%、比較品):カチオン界面活性剤(Stepan製、商品名:Stepantex SE−88)
A−3は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
・A−4(不飽和率:35%、比較品):カチオン界面活性剤(合成例2記載の化合物) A−4は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
・A−5(不飽和率:35%、比較品):カチオン界面活性剤(合成例3記載の化合物) A−5は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
・A−6(不飽和率:35%、比較品):カチオン界面活性剤(合成例4記載の化合物) A−6は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
・A−7(不飽和率:35%、比較品):カチオン界面活性剤(合成例5記載の化合物) A−7は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
・A−8(不飽和率:87%):カチオン界面活性剤(合成例6記載の化合物)
A−8は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。
【0031】
(合成例1)
−アルカノールアミンエステルの合成−
パーム油由来のステアリン酸メチル30質量%とオレイン酸メチル40質量%とパルミチン酸メチル30質量%とを含む脂肪酸低級アルキルエステルの混合物(ライオン株式会社、パステルM180、パステルM181、パステルM16の混合物)1100g(3.80モル)、トリエタノールアミン350g(2.35モル)、酸化マグネシウム0.25g、及び、25%水酸化ナトリウム水溶液2.89g(エステル交換触媒;モル比(ナトリウム化合物/マグネシウム化合物)=2.94/1、前記脂肪酸低級アルキルエステル及びトリエタノールアミンの総質量に対する触媒使用量:0.07質量%)を、攪拌器、分縮器、冷却器、温度計、及び、窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに仕込んだ。窒素置換を行った後、窒素を0.52L/minの流量で流しておいた。1.5℃/minの速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1質量%以下であることを確認し、反応を停止した。得られた生成物から触媒由来である脂肪酸塩をろ過除去し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。アミン価を測定し、分子量を求めると565であった。
【0032】
−カチオン性界面活性剤の合成−
得られたアルカノールアミンエステル(分子量565)300g(0.531モル)を、温度計、滴下ロート及び冷却器を備えた1Lの4つ口フラスコに仕込み、窒素置換した。その後、60℃に加熱し、ジメチル硫酸65.6g(0.520モル)を1時間かけて滴下した。反応熱による急激な温度上昇が無いように少しずつ温度を調節し、ジメチル硫酸滴下終了時点で、90℃に到達させた。そのまま90℃に保ち1.5時間攪拌した。反応終了後、エタノールを滴下しながら冷却しエタノールが15%となる溶液を調製し、カチオン性界面活性剤を得た。すべての操作は窒素微量流通下で行った。
【0033】
(合成例2)
−アルカノールアミンエステルの合成−
パーム油由来のステアリン酸メチル45質量%とオレイン酸メチル35質量%とパルミチン酸メチル20質量%とを含む脂肪酸低級アルキルエステルの混合物(ライオン株式会社、パステルM180、パステルM181、パステルM16の混合物)785g(2.68モル)、トリエタノールアミン250g(1.68モル)、酸化マグネシウム0.52g、及び、14%水酸化ナトリウム水溶液3.71g(エステル交換触媒;モル比(ナトリウム化合物/マグネシウム化合物)=1.01/1、前記脂肪酸低級アルキルエステル及びトリエタノールアミンの総質量に対する触媒使用量:0.10質量%)を、攪拌器、分縮器、冷却器、温度計、及び、窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに仕込んだ。窒素置換を行った後、窒素を0.52L/minの流量で流しておいた。1.5℃/minの速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1質量%以下であることを確認し、反応を停止した。得られた生成物から触媒由来である脂肪酸塩をろ過除去し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。アミン価を測定し、分子量を求めると582であった。
【0034】
−カチオン性界面活性剤の合成−
得られたアルカノールアミンエステル(分子量582)300g(0.515モル)を、温度計、滴下ロート及び冷却器を備えた1Lの4つ口フラスコに仕込み、窒素置換した。その後、60℃に加熱し、ジメチル硫酸63.7g(0.505モル)を1時間かけて滴下した。反応熱による急激な温度上昇が無いように少しずつ温度を調節し、ジメチル硫酸滴下終了時点で、90℃に到達させた。そのまま90℃に保ち1.5時間攪拌した。反応終了後、イソプロピルアルコールを滴下しながら冷却しイソプロピルアルコールが15%となる溶液を調製し、カチオン性界面活性剤を得た。すべての操作は窒素微量流通下で行った。
【0035】
(合成例3)
合成例2の−カチオン性界面活性剤の合成−において、イソプロピルアルコールの代わりにジエチレングリコールモノエチルエーテルを使用したこと以外は同様にして合成した。
【0036】
(合成例4)
合成例2の−アルカノールアミンエステルの合成−において、パーム油由来のステアリン酸メチル45質量%とオレイン酸メチル35質量%とパルミチン酸メチル20質量%とを含む脂肪酸低級アルキルエステルの混合物中にヒドロキシメチルエステルが1%となるよう添加した混合物を用いた。
また、−カチオン性界面活性剤の合成−において、イソプロピルアルコールの代わりにエタノールを使用したこと以外は同様にして合成した。
【0037】
(合成例5)
合成例2の−アルカノールアミンエステルの合成−において、パーム油由来のステアリン酸メチル45質量%とオレイン酸メチル35質量%とパルミチン酸メチル20質量%とを含む脂肪酸低級アルキルエステルの混合物中にヒドロキシメチルエステルが4%となるよう添加した混合物を用いた。
また、−カチオン性界面活性剤の合成−において、イソプロピルアルコールの代わりにエタノールを使用したこと以外は同様にして合成した。
【0038】
(合成例6)
天然パーム油由来の脂肪酸メチル2.5kgと市販の安定化ニッケル触媒0.9g(0.1%/脂肪酸メチル)を4Lのオートクレーブに仕込み、窒素ガス置換を3回行った。ついで、回転数を800rpmにあわせ、温度185℃で約40Lの水素ガスを導入した。導入した水素が完全に消費されたら、冷却し、濾過助剤を使用して触媒を除き、水素添加したパーム脂肪酸メチルを得た。けん化価より求めた分子量は297であった。GCから求めた脂肪酸メチル組成は、ステアリン酸メチル11%、エライジン酸メチル(トランス体)23%、オレイン酸メチル(シス体)64%、リノール酸メチル0%、ヒドロキシステアリン酸メチル1%、であった。
上記で調製した水素添加したパーム脂肪酸メチル489g(1.65モル)と、トリエタノールアミン98g(0.66モル)、酸化マグネシウム0.29g、14%水酸化ナトリウム水溶液2.1gを攪拌器、冷却器、温度計および窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに入れ、窒素置換を行った後窒素を0.52L/minの流量で流しておいた。1.5℃/minの速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1%以下であることを確認し、反応を停止した。得られた生成物から触媒由来である脂肪酸塩をろ過除去し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。得られたアルカノールアミンエステル300gを温度計、滴下ロート、冷却機を備えた4つ口フラスコに入れ窒素置換した。次いで85℃に加熱し、アルカノールアミンエステルに対して0.98倍モルのジメチル硫酸を1時間にわたり滴下した。滴下終了後、温度を90℃に保ち、1時間攪拌した。反応終了後、エタノールを滴下しながら冷却し、固形分85%のエタノール溶液を調製し、最後にフェリオックスCY−115(ライオン(株))と、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学工業(株))をそれぞれ100ppmの濃度になるように添加した。
【0039】
[(B)成分]
B−1:ミリスチルアルコール
B−2:オクチルアルコール(比較例)
【0040】
[(C)成分]
C−1:MGDA−3Na
C−2:クエン酸(比較例)
【0041】
[共通成分]
本発明の製造方法により製造される液体柔軟剤の共通成分として、D−1、D−2を使用した。

表1:D−1

表2:D−2

表3:香料組成物
【0042】
●評価法
[柔軟性評価]
◆評価用布の前処理洗浄
市販の220匁タオル(東進社製)を、市販洗剤「消臭ブルーダイヤ」(ライオン社製)で、二槽式洗濯機(東芝製VH−30S)を用いて、洗剤標準使用量、浴比30倍、45℃の水道水での洗浄10分間と、続く注水すすぎ10分間5回とのサイクルを2回行った後、室温にて乾燥した。
◆柔軟性評価用布の柔軟剤処理
前処理洗浄した乾燥タオル150gを25℃の水道水で浴比20倍、柔軟剤サンプルを1g使用し、柔軟剤処理を行い、脱水した。処理工程終了後タオルを取出し、天日干しまたは一晩室内にて乾燥し、翌日に下記に示す評価を行った。
◆天日干しと室内干しの柔軟性評価
上記に示した天日干ししたタオルと一晩室内にて乾燥後のタオルの柔軟性を比較評価した。具体的には、各柔軟剤組成物での処理によりタオルへもたらされる柔軟性を、以下の評価基準で、対照品との一対比較を官能評価で行った。専門パネラー6人により行った。
<評価基準>
◎:天日干しと室内干しで柔軟性の差がほとんどないと評価した人が6人中5〜6人
○:天日干しと室内干しで柔軟性の差がほとんどないと評価した人が6人中3〜4人
△:天日干しと室内干しで柔軟性の差がほとんどないと評価した人が6人中1〜2人
×:天日干しと室内干しで柔軟性の差がほとんどないと評価した人が6人中0人
◆保存後の柔軟性評価
上記柔軟剤処理(一晩室内にて乾燥)において、柔軟剤サンプルとして40℃4M保管した柔軟剤及び5℃4M保管した柔軟剤を用いて同様の評価を行った。
<評価基準>
◎:40℃4M保管品と5℃4M保管品で柔軟性の差がほとんどないと評価した人が6人中3〜6人
○:40℃4M保管品と5℃4M保管品で柔軟性の差がほとんどないと評価した人が6人中2人
△:40℃4M保管品と5℃4M保管品で柔軟性の差がほとんどないと評価した人が6人中1人
×:40℃4M保管品と5℃4M保管品で柔軟性の差がほとんどないと評価した人が6人中0人
【0043】