(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の煙感知器試験装置は、疑似煙を試験空間に満たす際、疑似煙の流れを考慮していない。そのため、煙感知器の感度を検査する際、煙感知器及び濃度計に疑似煙が行き渡っていない可能性がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、煙感知器及び濃度計に疑似煙を行き渡らすことが可能な煙感知器試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の煙感知器試験装置は、開口部が形成され、試験対象とな
る煙感知器及び濃度計が収容される試験空間を有する収容部
を備え、
前記試験空間に設けら
れ疑似煙が通過する煙流入口と
、前記煙感知器または前記濃度計を取り付け可能な第1取付ベースと、前記煙感知器または前記濃度計を取り付け可能な第2取付ベースと、前記第2取付ベースが設けられた上底部と、をさらに備え、前記第1取付ベースに前記濃度計が取り付けられている場合、前記第2取付ベースに前記煙感知器が取り付けられ、前記第2取付ベースに前記濃度計が取り付けられている場合、前記第1取付ベースに前記煙感知器が取り付けられ、前記上底部により前記第1取付ベースに取り付けられた前記煙感知器または前記濃度計の前記煙侵入口の高さと、前記第2取付ベースに取り付けられた前記煙感知器または前記濃度計の前記煙侵入口の高さと、が異なる。
【0008】
本発明の煙感知器試験装置は、
前記第1取付ベースと比較して前記疑似煙の下流側に前記第2取付ベースが配置されていてもよい。
【0010】
本発明の煙感知器試験装置によれば、
前記開口部を閉塞可能な中蓋部をさらに備え、前記中蓋部に前記煙感知器を取り付け可能な中蓋用取付ベースが設けられ、前記中蓋部を閉じた際、前記中蓋用取付ベースに取り付けられた前記煙感知器と、前記第1取付ベースに取り付けられた前記煙感知器
または前記濃度計との間に隙間が設けられていてもよい。
【0011】
本発明の煙感知器試験装置によれば、側面視において、前記隙間と同じ高さに、前記第2取付ベースに取り付けられた前記煙感知器
または前記濃度計の煙が侵入する前記煙侵入口が位置していてもよい。
【0013】
本発明の煙感知器試験装置によれば、開口部が形成され、試験対象とな
る煙感知器と濃度計が収容される試験空間を有する収容部と、
前記試験空間に設けら
れ疑似煙が通過する煙流入口と、前記煙感知器
または前記濃度計を取り付け可能な第1取付ベースと、
前記開口部を閉塞可能な中蓋部と、前記中蓋部に設けられ前記煙感知器を取り付け可能な中蓋用取付ベースと、を備え、前記中蓋部を閉じた際、前記中蓋用取付ベースに取り付けられた前記煙感知器と、前記第1取付ベースに取り付けられた前記煙感知器
または前記濃度計との間に隙間が設けられており、前記隙間の寸法は、前記煙感知器の高さ寸法より小さ
い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試験空間に収容される煙感知器の煙侵入口と濃度計の煙侵入口が煙流入口と対向するように煙感知器及び濃度計が配置されている。すなわち、煙流入口から見た場合、煙感知器の煙侵入口と濃度計の煙侵入口とは重なっていない。これにより、煙発生部により発生され煙流入口を通過した疑似煙が煙感知器及び濃度計に行き渡りやすい。
【0015】
本発明によれば、煙流入口と第1の距離を有する煙感知器の煙侵入口の高さと、煙流入口と第2の距離を有する煙感知器または濃度計の前記煙侵入口の高さとが異なっているため、例えば、疑似煙の進行方向に沿って、煙感知器と他の煙感知器または濃度計とが配置されていたとしても、煙侵入口の高さを異ならせることにより、疑似煙の下流側の煙感知器または濃度計にも疑似煙を行き渡らせることが可能となる。
【0016】
本発明によれば、第1取付ベースに取り付けられた煙感知器または濃度計の煙侵入口の高さと第2取付ベースに取り付けられた煙感知器または濃度計の煙侵入口の高さとが、上底部により異なっている。これにより、簡易な構成により煙感知器及び濃度計に疑似煙が行き渡りやすくなる。従って、精度よく煙感知器の感度の検査を行うことができる。
【0017】
また、中蓋部を閉じた際、中蓋用取付ベースに取り付けられた煙感知器と、第1取付ベースに取り付けられた煙感知器との間に隙間が設けられているため、この隙間に疑似煙が流れ込む。従って、疑似煙が滞ることなく流れるため、精度よく煙感知器の感度の検査を行うことができる。
また、側面視において、隙間と同じ高さに、第2取付ベースに取り付けられた煙感知器の煙が侵入する煙侵入口が位置しているため、隙間を通過した疑似煙が第2取付ベースに取り付けられた煙感知器の煙侵入口から入る。これにより、試験空間内の疑似煙が効率よく煙感知器内に侵入することができる。
また、疑似煙の下流側に上底部が配置されているため、下流側を高くすることにより、下流側に配置された煙感知器にも疑似煙を行き渡らせることが可能となる。
【0018】
また、中蓋部を閉じた際、中蓋用取付ベースに取り付けられた煙感知器と、第1取付ベースに取り付けられた煙感知器との間の隙間の寸法は、煙感知器の高さ寸法より小さいため、中蓋用取付ベースに取り付けられた煙感知器と第1取付ベースに取り付けられた煙感知器とが近接して配置されることになる。これにより、試験空間内に疑似煙を均一に行き渡らせることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る煙感知器試験装置について、
図1から
図13を参照して説明する。
本実施形態の煙感知器試験装置1は、試験空間Sに、試験対象となる5つの煙感知器2A,2B,2C,2D,2Eと、合否の基準となる基準煙感知器2Rとが収容可能に構成されている。煙感知器試験装置1は、収容部10と、中蓋部20と、煙発生部30と、表示部40と、上蓋部50とを備えている。
【0021】
図1に示すように、収容部10は、有底筒状形状である。具体的には、収容部10は、平面視矩形状の底部15と、底部15における対向する一方の一対の縁部15aから立設される第1壁部11及び縁部15cから立設される第3壁部13と、底部15における他方の一対の縁部15bから立設される第2壁部12及び縁部15dから立設される第4壁部14とを有している。また、第1壁部11と第2壁部12と第3壁部13と第4壁部14と底部15とで囲まれた空間が試験空間Sとして構成されている。なお、第3壁部13は、検査者が第4壁部14側から煙感知器試験装置1を使用する際、検査者から見て、第1壁部11と異なる左右の側の壁部である。
収容部10の底部15に対向する上面側には、厚み方向に貫通され試験空間を開放する開口部16を有する上面板17が設けられている。この開口部16から検査対象となる煙感知器2A,2B,2C,2D,2Eの出し入れが行われる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、煙感知器試験装置1の試験空間Sには、底部15と略平行、かつ、間隔をあけて台座18が設けられている。煙感知器試験装置1は、台座18上に設けられ、煙感知器2Bを取り付け可能な第1取付ベース60a及び煙感知器2Cを取り付け可能な第1取付ベース60bと、台座18上に設けられ、煙感知器2Aを取り付け可能な第2取付ベース62が設けられた上底部61とを備えている。台座18と上底部61により段部63が形成されている。すなわち、上底部61は所定の厚みを有しているため、台座18の上面に対して上底部61の上面の方が収容部10の上側に位置している。また、上底部61は、第2壁部12から第4壁部14に向かって延在している。
【0023】
図2に示すように、第2取付ベース62は、第1取付ベース60aの第3壁部13側に配置されている。また、基準煙感知器2Rは、第1取付ベース60bの第3壁部13側に設けられている。基準煙感知器2R内には、濃度検出部(濃度計)64が設けられている。濃度検出部64は、試験空間S内の濃度を検出し、検出した濃度検出値は後述する記憶部45に送られる。
【0024】
また、台座18上の、第1取付ベース60a,60bよりも第1壁部11側にはメッシュ状の整流板(煙流入口)19が立設されている。整流板19を設けることにより、疑似煙を煙感知器2A〜2Eに均一に流すことが可能となる。
【0025】
図1及び
図3に示すように、第1壁部11の外側面11aに第1のベルト取付部3が固定され、第3壁部13の外側面13aに第2のベルト取付部4が固定されている。検査者が肩に掛けるショルダーベルト5の一方の端部が第1のベルト取付部3に取り付けられ、ショルダーベルト5の他方の端部が第2のベルト取付部4に取り付けられている。本実施形態では、ショルダーベルト5は、第1のベルト取付部3及び第2のベルト取付部4に着脱可能に固定されている。本実施形態では、例えば、ショルダーベルト5の両端部に、第1のベルト取付部3,第2のベルト取付部4に引っ掛けるフックを有する構成を適用し、ショルダーベルト5が、第1のベルト取付部3及び第2のベルト取付部4に対して着脱可能に構成されている。なお、ショルダーベルト5は、第1のベルト取付部3及び第2のベルト取付部4に着脱不可能となるように取り付けられていてもよい。
【0026】
図1に示すように、第1のベルト取付部3は、第1壁部11における第2壁部12よりも第4壁部14側(手前側)に固定されている。第2のベルト取付部4は、第3壁部13における第4壁部14よりも第2壁部12側(奥側)に固定されている。以下、手前側とは、検査者が第4壁部14側から煙感知器試験装置1を使用する際、検査者から見て第4壁部14側を示し、奥側とは、検査者から見て第2壁部12側を示している。
第1のベルト取付部3は、
図3に示すように、側面視において、第2のベルト取付部4より底部15側に固定されている。第1のベルト取付部3は、第2のベルト取付部4に比べて約50mmほど底部15側に固定されている。
【0027】
図2に示すように、中蓋部20は、第1壁部11側の上面板17に、例えば、蝶番により回動可能に設けられている。中蓋部20には、煙感知器2Dを取り付け可能な中蓋用取付ベース21aと、煙感知器2Eを取り付け可能な中蓋用取付ベース21bとが設けられている。
【0028】
中蓋部20の大きさは、上面板17の開口部16の大きさとほぼ同じである。これにより、
図4に示すように、中蓋部20を閉じることにより、開口部16を閉塞可能である。すなわち、中蓋部20を閉じることにより、試験空間Sを密閉にすることが可能である。
【0029】
図5に示すように、中蓋部20を閉じた際、煙感知器2D,2Eが逆さまな状態で試験空間S内に配置される。このとき、煙感知器2Dが煙感知器2Bに対向して配置され、煙感知器2Eが煙感知器2Cに対向して配置される。本実施形態の煙感知器試験装置1では、台座18上に3つの煙感知器2A,2B,2C及び中蓋部20に2個の煙感知器2D,2Eが配置され、合計5個の煙感知器2A〜2Eの感度の検査が可能である。
【0030】
また、中蓋部20を閉じた際、煙感知器2Dと対向して配置された煙感知器2Bとの間に、隙間Gが形成される。同様に、煙感知器2Eと対向して配置された煙感知器2Cとの間に、隙間Gが形成される。
【0031】
図1に示すように、上面板17の開口部16の第3壁部13近傍には、中蓋部20を閉じた際に接触可能なマグネットスイッチ22が設けられている。マグネットスイッチ22は、後述する制御部42に接続されており、マグネットスイッチ22のON状態、または、OFF状態に応じて、制御部42は、中蓋部20が閉じられているか否かを判断する。
【0032】
煙発生部30は、発煙剤を有しており、試験空間Sに供給する疑似煙を発生させるものである。
図6及び
図7に示すように、煙発生部30は、台座18の下側に配置されたスライド機構31に設けられている。スライド機構31は、収容部10の底部15近傍に設けられており、収容部10の外部に向かってスライド可能である。スライド機構31は、2本のレール32と、レール32上をスライドするスライド部33と、第3壁部13の一部である蓋34とを備えている。スライド部33上に煙発生部30が配置され、スライド部33の端部に蓋34が固定されている。蓋34は、収容部10の第3壁部13に対して当設離反する方向にスライド可能となっている。すなわち、検査者が収容部10の外部から蓋34を引っ張ることで、スライド部33がレール32上をスライドし、煙発生部30は外部に露出されるように構成されている。
【0033】
図6及び
図7に示すように、台座18と底部15との間に位置する収容部10の第3壁部13には、試験空間Sと外部とを連通する連通口13bが形成されている。
図3に示すように、蓋34は、収容部10の第3壁部13に形成された連通口13bを覆うように構成されている。煙発生部30は、収容部10側の蓋34近傍に設けられている。すなわち、蓋34を閉めた際、煙発生部30は第3壁部13近傍に位置している。
【0034】
図5に示すように、煙感知器試験装置1は、底部15上にファン70を備えている。ファン70は、収容部10の底部15と台座18との間に配置され、煙発生部30よりも収容部10内の中央部側に配置されている。これにより、煙発生部30により発生された疑似煙は、ファン70により試験空間S内に効率良く循環される。
【0035】
また、側面視において、隙間Gに、第2取付ベース62に取り付けられた煙感知器2Aの煙が侵入する煙侵入口2aが位置している。
図5の矢印Fに示すように、煙発生部30により発生された疑似煙は、台座18の下部を通り、第1壁部11に沿って上昇し、第1取付ベース60a,60bを通り、第2取付ベース62に向かう。すなわち、第2取付ベース62が疑似煙の下流側になる。この疑似煙の下流側に、上底部61が配置されている。
【0036】
図8に示すように、連通口13bは、第3壁部13の、ファン70と対向する位置に形成されている。連通口13bの高さ寸法L1(底部15から収容部10の上側に向かう方向の寸法)及び幅寸法L2(第2壁部12から第4壁部14に向かう方の寸法)の大きさは、ファン70の外形寸法より大きく形成されている。
蓋34のスライド量Dは、
図6に示すように、ファン70の外形寸法より大きく設定されている。
【0037】
図1に示すように、上蓋部50は、収容空間Pを有し、この収容空間Pに表示部40と、入力可能な操作パネル41と、制御部42とが設けられている。
【0038】
図8に示すように、上蓋部50は、規制部材51により収容部10に回動可能に支持されている。また、上蓋部50は、規制部材51により、側面視において、上蓋部50の端面50aと収容部10の上面10aとの開口部16側でのなす角度αが180°未満となる開状態と、
図8の矢印で示すように回動し、上蓋部50が収容部10の上面に載置される閉状態(
図8の一点鎖線で示す状態)とになるように構成されている。すなわち、検査前や検査後など煙感知器試験装置1を持ち運ぶ際は、中蓋部20を閉じ、上蓋部50を閉じることにより、コンパクトな状態にすることが可能である。
【0039】
また、上蓋部50と収容部10との開口部16側でのなす角度αは、特に限定されないが、105°〜120°の範囲であることが好ましく、本実施形態では、角度αは110°である。
【0040】
図8に示すように、操作パネル41は、側面視において、上蓋部50の端面50aよりも収容空間P内に配置されている。すなわち、操作パネル41は上蓋部50の端面50aよりも内側に収まっているため、上蓋部50を閉じた状態において、操作パネル41が押されてしまうのを防止することができる。
【0041】
制御部42は、配線43を介して第1取付ベース60a,60bと、第2取付ベース62と、中蓋用取付ベース21a,21bとに電気的に接続されており、操作パネル41を操作することにより、各取付ベース60a,60b,62,21a,21bに電力を供給することが可能である。
【0042】
制御部42は、配線43を介して煙発生部30に接続されており、操作パネル41を操作することにより、煙発生部30に電力を供給することが可能である。煙発生部30に電力が供給されると、発煙剤が加熱され疑似煙が発生する。
【0043】
制御部42は、配線43を介して、ファン70に電気的に接続されており、操作パネル41を操作することにより、ファン70に電力を供給することが可能である。ファン70は、電力が供給されると回転駆動する。
【0044】
図1に示すように、配線43は、操作パネル41の下部から収容部10内に向かって延びている。上蓋部50を閉じる際、配線43は、収容部10内の第3壁部13近傍の隙間10bに収容されるため、配線43が上蓋部50と収容部10との間に挟まることはない。
【0045】
図9に、本実施形態の煙感知器試験装置1のブロック図を示す。煙感知器試験装置1は、煙感知器2A〜2Eと、濃度検出部64と、表示部40と、煙発生部30と、ファン70と、制御部42とを備えている。制御部42は、受信部44と、記憶部45と、判定部46とを有している。
【0046】
受信部44は、煙感知器2A〜2Eが疑似煙を感知し発報した際、煙感知器2A〜2Eを識別する番号情報を受信し、受信した番号情報を記憶部45に記憶させる。この番号情報は、取付ベースの位置に応じた番号を用いてもよいし、煙感知器を個別に識別するID情報が得られる場合には、このID情報を用いてもよい。
本実施形態の番号情報は、煙感知器2Aが、番号“1”に相当し、煙感知器2Bが、番号“2”に相当し、煙感知器2Cが、番号“3”に相当し、煙感知器2Dが、番号“4”に相当し、煙感知器2Eが、番号“5”に相当する。すなわち、取付ベースの位置と番号とが対応付けられている。このように、各煙感知器2A〜2Eが発報されると、各煙感知器2A〜2Eを識別する番号情報1〜5が、受信部44に送られる。
【0047】
記憶部45は、濃度検出部64からの濃度検出信号を受信する。煙感知器の作動試験に用いる煙濃度の単位は1mあたりの減光率で表記される為、濃度検出信号を現行率に変換した値を記憶する方がより好適である。以降特記なき場合、濃度検出値は減光率に変換したものとする。記憶部45は、受信部44から送られてきた煙感知器2A〜2Eを識別する番号情報1〜5と濃度検出部64から送られてきた濃度検出値とを対応付けて記憶する。具体的には、濃度検出部64から濃度検出値は随時読取を行い、表示部40に現在濃度として表示可能とする。制御部42は、煙感知器2A〜2Eが発報したタイミングで現在の濃度検出値と発報した煙感知器2A〜2Eを識別する番号情報とを対応付けて記憶部45に書き込む。記憶部45に記憶され番号情報に対応付けられた濃度検出値は制御部42により表示部40に表示可能である。
また、番号情報と、番号情報に対応付けられた濃度検出値とを、記録媒体に記憶させることや、煙感知器試験装置1の外部に出力することも可能である。また、制御部42により検査日や検査者等を記憶部45に記憶させることも可能である。
【0048】
判定部46は、各煙感知器2A〜2Eが疑似煙を感知し発報したときの濃度検出値が基準範囲内であるか否かを判定基準値と比較し、煙感知器2A〜2Eの感度が正常であるか否かを判定する。すなわち、判定部46により自動判定が行われる。
判定部46は、濃度検出値が判定基準値内である場合は、煙感知器2A〜2Eが正常であると判断し、判定基準値より小さい場合や大きい場合は正常ではないと判断する。また、煙感知器には1種、2種、3種があり、それぞれ公称作動濃度は減光率5%、10%、15%であり、種類ごとの判定基準値が記憶部45に記憶されている。
【0049】
表示部40には、判定部46の判定結果に基づいて、煙感知器2A〜2Eが既定の範囲内で疑似煙を感知するか否かの判定結果が表示される。表示部40には、
図10に示すように、番号に対応した煙感知器2A〜2Eの濃度検出値が表示される表示欄40aが設けられている。また、各番号に対応した位置、すなわち、判定結果表示領域には、合否表示灯(発光部)65がそれぞれ設けられている。表示部40は、表示欄40aのみが、例えば、液晶表示やセグメント表示のように表示が切り替わる画面であってもよく、番号を含めた表示部40全体が液晶表示やセグメント表示であってもよい。
【0050】
合否表示灯65は、通常消灯しているが、煙感知器2A〜2Eの感度が正常である場合、点灯し、煙感知器2A〜2Eの感度が正常ではない場合、点滅する。
各煙感知器2A〜2Eが発報されたときの濃度検出値が基準範囲内である場合、制御部42は合否表示灯65を点灯させる。一方、各煙感知器2A〜2Eが発報されたときの濃度検出値が基準範囲外である場合、制御部42は合否表示灯65を点滅させる。例えば、合否表示灯65は、ランプ(電球)であってもよいし、液晶表示であってもよい。
【0051】
制御部42は、すべての煙感知器2A〜2Eが発報されると、各取付ベース60a,60b,62,21a,21b、煙発生部30、ファン70への電力の供給を停止させる。
【0052】
次に、煙感知器試験装置1を用いて煙感知器を検査する方法について、
図11に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、検査者Tが建物内の天井等に設置されている5個の煙感知器を取り外す。
図12に示すように、検査者Tは、煙感知器試験装置1の表示部40が正面に位置するようにショルダーベルト5を肩に掛ける。
図1に示すように、5個の煙感知器を第1取付ベース60a,60b、第2取付ベース62、中蓋用取付ベース21a,21bそれぞれに取り付ける(ステップS1)。さらに、取り付けられたそれぞれの煙感知器が1種、2種、3種のいずれか操作パネル41を用いて入力する。
【0053】
次に、
図4に示すように、検査者Tにより中蓋部20が閉じられると、マグネットスイッチ22がON状態になり、制御部42は中蓋部20が閉じられたと判断する。検査者Tは、操作パネル41を操作して、制御部42により、各取付ベース60a,60b、62、21a,21bと、煙発生部30と、ファン70とに電力が供給される(ステップS2)。煙発生部30は加熱されると、発煙剤である水溶性液体が気化する。気化した疑似煙は、
図5の矢印Fで示すように、ファン70の回転により、台座18の下部を通り第1壁部11に向かい、第1壁部11に沿って上昇する。上昇した疑似煙は、メッシュ状の整流板19を通過し、疑似煙の一部が煙感知器2B,2C,2D,2Eの煙侵入口2aから侵入し、残りの疑似煙は隙間Gを通過し、煙感知器2Aの煙侵入口2aから侵入する。
【0054】
煙感知器2A〜2Eは疑似煙を感知すると発報信号を出力する。このとき、発報された煙感知器2A〜2Eを識別する番号情報が受信部44を介して記憶部45に送られ、濃度検出部64により検出された濃度検出値が記憶部45に送られる。そして、煙感知器2A〜2Eを識別する番号情報と濃度検出値とが対応付けられて記憶部45に記憶される(ステップS3)。
【0055】
具体的には、煙感知器2Aが発報信号を出力すると、制御部42は、煙感知器2Aの煙感知器信号と、煙感知器2Aが発報した時の濃度検出値とを記憶部45に書き込む。これにより、煙感知器2A、すなわち、番号“1”と、濃度検出値5とが対応付けられて、記憶部45に記憶される。制御部42は、5個すべての煙感知器2A〜2Eが発報されたか否かを判断する(ステップS4)。
【0056】
制御部42は、5個すべての煙感知器2A〜2Eが発報されていないと判断した場合(ステップS4のNO)、ステップS3に戻る。
【0057】
続いて、煙感知器2Cが発報信号を出力すると、煙感知器2Cを識別する番号情報と、煙感知器2Cが発報したときの濃度検出値とが記憶部45に送られる。煙感知器2C、すなわち、番号“3”と、濃度検出値9とが対応付けられて、記憶部45に記憶される。
【0058】
続いて、煙感知器2Bが発報すると、番号“2”と、濃度検出値11とが対応付けられて、記憶部45に記憶される。続いて、煙感知器2Dが発報すると、番号“4”と、濃度検出値15とが対応付けられて、記憶部45に記憶される。続いて、煙感知器2Eが発報すると、番号“5”と、濃度検出値16とが対応付けられて、記憶部45に記憶される。このようにして、5個すべての煙感知器2A〜2Eが発報し、発報された煙感知器2A〜2Eを識別する番号情報と濃度検出部64により検出された濃度検出値とが対応付けられて記憶部45に記憶される。
【0059】
次に、制御部42により、濃度検出部64により送られて濃度検出値と判定基準値とを比較する(ステップS6)。例えば、1種の基準判定値は3から7までの範囲、2種の基準判定値は6から14の範囲、3種の基準判定値は8から22の範囲に設定されている。煙感知器2A〜2Cが2種であり、煙感知器2D、2Eが3種であるとき、制御部42は、番号“1”,“2”,“3”の煙感知器の濃度検出値が6から14までであるか判定し、番号“4”,“5”の煙感知器の濃度検出値が8から22までであるか判定する。その結果、番号“2”,“3”,“4”,“5”の煙感知器2B,2C,2D,2Eの感度が正常(合格)であると判断する(ステップS6のYES)。制御部42は、
図13に示すように、表示欄40aに番号2,3,4,5に対応する濃度検出値を表示させ、合否表示灯65を点灯する(ステップS7−1)。
【0060】
一方、番号“1”の濃度検出値は5であるため、制御部42は、煙感知器2Aの感度は正常ではない(不合格)と判断し(ステップS6のNO)、番号1に対応する合否表示灯65を点滅させる(ステップS7−2)。なお、制御部42は、煙感知器2A〜2Eの合否判定結果を記憶部45に記憶させてもよく、必要に応じて記録媒体に記録したり、外部に出力することも可能である。
【0061】
煙感知器2A〜2Eの合否結果が表示されたら、中蓋部20を開け、各取付ベース60a,60b、62、21a,21bから煙感知器2A〜2Eを取り外し、所定の位置に戻す。以上より、煙感知器2A〜2Eの感度の検査が終了する。
【0062】
本実施形態では、煙感知器2Bと整流板19との距離、煙感知器2Cと整流板19との距離は同じであるが、煙感知器2Cと整流板19との距離と、煙感知器2Rと整流板19との距離とは異なる。そして、試験空間Sに収容される煙感知器2Cの煙侵入口2aと濃度検出部64を有する煙感知器2Rの煙侵入口2aは、整流板19と対向するように煙感知器2C及び煙感知器2Rが配置されている。すなわち、整流板19側から見た場合、煙感知器2Cの煙侵入口2aと煙感知器2Rの煙侵入口2aとは重なっていない。従って、煙感知器2R,2A〜2Eと整流板19との間、障害物がないため、各煙感知器2R,2A〜2Eに疑似煙を均一に行き渡らせることが可能となる。
【0063】
また、整流板19と第1の距離を有する煙感知器2Cの煙侵入口2aの高さと、整流板19と第2の距離を有する煙感知器2Rの煙侵入口2aの高さとが異なっている。その他、例えば、整流板19と第1の距離を有する煙感知器2Cの煙侵入口2aの高さと、整流板19と第2の距離を有する煙感知器2Aの煙侵入口2aの高さとが異なっている。このように、整流板19からの距離が異なる煙感知器の高さを変えることにより、特に疑似煙の進行方向に沿って、煙感知器2Cと濃度検出部64を有する煙感知器2Rとが配置されている場合でも、それぞれの煙感知器2C,2Rの煙侵入口2aの高さを変えることにより、疑似煙の下流側の煙感知器または濃度検出部64を有する煙感知器にも疑似煙を行き渡らせることが可能となる。
【0064】
また、煙感知器の高さを変える構成として上底部61を備えることによって、簡単に煙感知器2B,2Cと煙感知器2R,2Aとの高さを変えることが可能となる。これにより、試験空間Sに配置されている煙感知器2A〜2E,2Rに疑似煙が行き渡りやすくなる。従って、精度よく煙感知器2A〜2Eの感度の検査を行うことができる。
また、中蓋部20を閉じた際、中蓋用取付ベース21a,21bに取り付けられた煙感知器2B,2Cと、第1取付ベース60a,60bに取り付けられた煙感知器2B,2Cとの間の隙間Gの寸法は、煙感知器2B,2Cの高さ寸法より小さいため、中蓋用取付ベース21a,21bに取り付けられた煙感知器2D,2Eと第1取付ベース60a,60bに取り付けられた煙感知器2B,2Cとが近接して配置されることになる。これにより、試験空間S内に疑似煙を均一に行き渡らせることが可能となる。
【0065】
また、本実施形態によれば、第1取付ベース60a,60bは、台座18上に設けられ、第2取付ベース62は、台座18上に設けられた上底部61に設けられているため、台座18と上底部61とにより段部63が形成される。これにより、第1取付ベース60aに取り付けられた煙感知器2B,2Cと第2取付ベース62に取り付けられた煙感知器2Aとの高さ位置が異なる。すなわち、煙感知器2Aの方が煙感知器2B,2Cより、収容部10の開口部16側に位置することになる。従って、煙感知器2B,2Cを通過した疑似煙が煙感知器2Aの煙侵入口2aから入りやすくなるため、すべての煙感知器2A〜2Fに疑似煙が行き渡りやすくなる。従って、精度よく煙感知器2A〜2Eの感度の検査を行うことができる。
【0066】
また、中蓋部20を閉じた際、中蓋用取付ベース21a,21bに取り付けられた煙感知器2D,2Eと、第1取付ベース60a,60bに取り付けられた煙感知器2B,2Cとの間に隙間Gが設けられているため、この隙間Gに疑似煙が流れ込むことができる。従って、疑似煙が滞ることなく流れるため、精度よく煙感知器2A〜2Eの感度の検査を行うことができる。
また、側面視において、隙間Gと同じ高さに、第2取付ベース62に取り付けられた煙感知器2Aの煙が侵入する煙侵入口2aが位置しているため、隙間Gを通過した疑似煙が第2取付ベース62に取り付けられた煙感知器2Aの煙侵入口2aから流れ込む。これにより、試験空間S内の疑似煙を効率よく煙感知器2A〜2E内に侵入させることができる。
また、疑似煙の下流側に上底部61が配置されているため、下流側を高くすることにより、下流側に配置された煙感知器2Aにも疑似煙を行き渡らせることが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態では、複数の煙感知器2A〜2Eを検査する煙感知器試験装置1を例に挙げて説明したが、煙感知器を1つだけ設置可能な試験する煙感知器試験装置であっても良い。この構成の場合、煙感知器と整流板との距離と、濃度検出部64を有する煙感知器と整流板との距離とが異なるように、煙感知器と濃度検出部64を有する煙感知器とが配置されている。このように距離の異なる検査対象となる煙感知器及び濃度検出部64を有する煙感知器が、それぞれの煙侵入口が整流板19と対向するように配置される。これにより、距離が異なっていても整流板19を通過した疑似煙をいずれの煙感知器にも行き渡らせることが可能となる。
また、煙感知器試験装置1には台座18が設けられ、煙発生部30とファンとを1段目に配置し、煙感知器2A〜2E,2R及び整流板19とを2段目に配置する2段構造としたが、この構造に限らない。すなわち、煙発生部30及びファン70が、同じ段に設けられていてもよく、また、1段構造であってもよい。
また、煙感知器2B,2Cと煙感知器2R,2Aとの高さを変える構成として、台座18上に上底部61を配置する構成としたが、台座の一部に凸部が形成されている構成であってもよい。すなわち、台座18と上底部61が別構成でなくてもよい。
【0068】
なお、中蓋部20を閉じた際、中蓋用取付ベース21a,21bに取り付けられた煙感知器2D,2Eと、第1取付ベース60a,60bに取り付けられた煙感知器2B,2Cとの間に隙間Gが必ずしも設けられていなくてもよい。すなわち、煙感知器2Bと煙感知器2D、煙感知器2Cと煙感知器2Eとは、互いを押圧しない程度に接触して対向配置されていてもよい。
また、側面視において、隙間Gと同じ高さに、第2取付ベース62に取り付けられた煙感知器2Aの煙が侵入する煙侵入口2aが必ずしも位置していなくてもよい。
また、疑似煙の下流側に上底部61が配置されているため、下流側を高くするとしたが、この構成に限らない。すなわち、下流側の煙感知器2Aが上流側の煙感知器2B,2Cよりも下側に配置されていてもよい。
また、煙感知器2A〜2Eは、特に限定されず、通常の煙感知器やプチタイプの感知器を検査することが可能である。
【0069】
また、各煙感知器2A〜2Eが発報されたときの濃度検出値が基準範囲内である場合、合否表示灯65を点灯させ、各煙感知器2A〜2Eが発報されたときの濃度検出値が基準範囲外である場合、合否表示灯65を点滅させたが、これに限らない。例えば、各煙感知器2A〜2Eが発報されたときの濃度検出値が基準範囲外である場合、合否表示灯65を消灯のままにしてもよい。
【0070】
また、表示部40への表示は、すべての煙感知器2A〜2Eの判定結果をまとめて表示させる構成としたが、煙感知器2A〜2Eの判定結果を一つずつ表示させてもよい。この場合、操作パネル41を操作することにより、所望の煙感知器の判定結果を表示させるようにしてもよい。また、煙感知器2Aから順に、所定の時間間隔ごとに順次煙感知器の判定結果を表示させてもよい。
【0071】
なお、マグネットスイッチがOFF状態、すなわち、中蓋部20が閉じていない場合は、操作パネル41を操作しても、制御部42により、各取付ベース60a,60b、62、21a,21bと、煙発生部30と、ファン70とに電力が供給されないように構成されていてもよい。
【0072】
また、検査している煙感知器と表示される番号とを対応づけるために、取付ベース近傍に番号が振られていてもよい。
【0073】
また、煙感知器試験装置1は、中蓋部20及び上蓋部50を備える構成としたが、どちらは一方だけ設けられていてもよい。上蓋部50が設けられておらず、中蓋部20が設けられている場合は、表示部40の位置は特に限定されない。上記実施形態では上蓋部50に表示部40を取付けているが、収容部10内に表示部40を設けるようにしても良い。例えば、中蓋部20の上部に表示部40を設けるようにしても良いし、中蓋部20を観音開きに構成し、第1の中蓋の裏側に煙感知器を取り付けられるようにし、第2の中蓋に表示部40を設けるようにしても良い。中蓋部20を上記実施形態の半分程度の長さに構成した上で、試験空間Sの上面のうち、中蓋部20が閉塞しない場所に天板を設け、その上に表示部40を設けるようにしても良い。
【0074】
また、5個全ての煙感知器が発報されたと判断した場合に試験終了するとしたが、取付ベースに取り付けられる煙感知器全てが発報されたかどうかを判断して試験終了するようにしても良い。煙感知器が取り付けられているかどうかの判定は例えば以下のように行う。煙感知器取付後、試験開始前に操作パネル41を操作して取付ベースに取り付けられているか入力させる、または煙感知器取付時に種類を入力するため種類未入力の取付ベースについては煙感知器が取り付けられていないと判定する。または、試験開始後、煙感知器が取り付けられていない取付ベースについては断線することから断線検出を行い、煙感知器が取り付けられているかどうかを判定するようにしても良い。
【0075】
上記実施形態に加え、上蓋部50と収容部10に固定部を設け、上蓋部50に対して開放方向に力を加える機構を備えるようにしても良い。例えば、上蓋部50と収容部10との間のヒンジ部に開放方向へ力を加えるようにしたトルクヒンジを採用しても良い。このような機構を設けることで、意図しない上蓋部50の閉鎖を防ぐことが可能となり、中蓋部20を開いて煙感知器を取り付けている最中に上蓋部50が閉まることで生じる煙感知器と上蓋部50との接触を防ぐことが可能となる。また、中蓋部の奥側から壁面を立設させ保護板として機能させるようにしても良い。保護板は中蓋部20閉鎖時に下向き方向となり試験空間Sに収容され、中蓋部20開放時に上向き方向となり、上蓋部50の閉鎖経路上に存在するようにし、中蓋部20を開いて煙感知器を取り付けている最中に上蓋部50が閉まることで生じる煙感知器と上蓋部50の接触を防ぐことが可能となる。
また、上記実施形態に加え、第1のベルト取付部3と第2のベルト取付部4は、取り付けられた壁面に対して平行に回転自在な構成としても良い。このような構成とすることで、検査者が煙感知器試験装置1を肩掛けする際、ショルダーベルト5の方向にベルト取付部が回転するため、ショルダーベルトに余分な負荷がかからないようにできる。