特許第6987706号(P6987706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987706結合ベルト形成装置、及び結合ベルト形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987706
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】結合ベルト形成装置、及び結合ベルト形成方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 29/10 20060101AFI20211220BHJP
   F16G 5/20 20060101ALI20211220BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   B29D29/10
   F16G5/20 A
   F16G5/06 A
   F16G5/06 D
【請求項の数】8
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2018-120649(P2018-120649)
(22)【出願日】2018年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-10868(P2019-10868A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-129169(P2017-129169)
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】原 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】北村 英佐
(72)【発明者】
【氏名】中川 康一
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−033895(JP,A)
【文献】 特開2000−198095(JP,A)
【文献】 特開2016−203505(JP,A)
【文献】 特開2016−215539(JP,A)
【文献】 特開2000−061890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 29/00
F16G 1/00、5/00
F26D 1/46、3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブを周方向に切断し、複数の前記ゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトを切り出して形成する、結合ベルト形成装置であって、
軸回りに回転する回転体を有し、前記回転体の外周の少なくとも一部に前記ベルトスリーブが巻き掛けられた状態で、前記回転体を回転させ、前記ベルトスリーブを周方向に走行させるスリーブ走行機構と、
一対のワイヤーを有し、一対の前記ワイヤーのそれぞれに張力を付与し、それらの張力を付与した部分を直線方向に沿って互いに平行に走行させるワイヤー走行機構と、
走行する一対の前記ワイヤーの間の距離を、隣り合う前記ゴムベルト部の間の間隔の寸法に対応した所定の寸法に設定し、走行する前記ベルトスリーブの前記補強布に対して、隣り合う前記ゴムベルト部の間において、走行する一対の前記ワイヤーを押し付けることで、前記ベルトスリーブを周方向に切断し、前記結合ベルトを形成する切断機構と、
を備えていることを特徴とする、結合ベルト形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結合ベルト形成装置であって、
前記スリーブ走行機構は、複数の前記回転体を有し、複数の前記回転体のそれぞれの外周の一部に前記ベルトスリーブが巻き掛けられた状態で、複数の前記回転体のうちの少なくとも1つの前記回転体を回転駆動し、前記ベルトスリーブを周方向に走行させることを特徴とする、結合ベルト形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の結合ベルト形成装置であって、
前記スリーブ走行機構は、複数の前記回転体として一対の前記回転体を有し、
一対の前記回転体のうちの一方が、回転駆動される駆動ロールとして構成され、一対の前記回転体のうちの他方が、前記駆動ロールの回転に伴って周方向に走行する前記ベルトスリーブの走行とともに回転する従動ロールとして構成されていることを特徴とする、結合ベルト形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の結合ベルト形成装置であって、
前記ワイヤー走行機構は、一対の前記ワイヤーのそれぞれを保持する一対のワイヤー保持部を有し、
一対の前記ワイヤー保持部のそれぞれは、1本の連続した前記ワイヤーの両端部側の部分がそれぞれ巻き付けられるとともに同期して回転する一対の回転ボビンを有し、
前記ワイヤー走行機構は、一対の前記ワイヤー保持部のそれぞれにおいて、一対の前記回転ボビンの間で前記ワイヤーに張力を付与した状態で、一対の前記回転ボビンのうちの一方から前記ワイヤーを払い出すとともに一対の前記回転ボビンの他方にて前記ワイヤーを巻き取ることで、一対の前記回転ボビンの間において、前記ワイヤーにおける張力を付与した部分を直線方向に沿って走行させることを特徴とする、結合ベルト形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の結合ベルト形成装置であって、
前記ワイヤー走行機構は、一対の前記ワイヤー保持部を有するワイヤー保持部ユニットを複数有していることを特徴とする、結合ベルト形成装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の結合ベルト形成装置であって、
一対の前記回転ボビンは、同期して回転する回転方向を交互に逆転させながら回転を繰り返すことで、前記ワイヤーにおける張力を付与した部分を直線方向に沿って往復させながら走行させることを特徴とする、結合ベルト形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の結合ベルト形成装置であって、
前記切断機構は、前記回転体の外周に沿って走行する前記ベルトスリーブに対して、前記回転体の外周の接線方向と平行な方向に沿って走行する一対の前記ワイヤーを押し付けることを特徴とする、結合ベルト形成装置。
【請求項8】
それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブを周方向に切断し、複数の前記ゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトを切り出して形成する、結合ベルト形成方法であって、
軸回りに回転する回転体の外周の少なくとも一部に前記ベルトスリーブが巻き掛けられた状態で、前記回転体を回転させ、前記ベルトスリーブを周方向に走行させるスリーブ走行工程と、
一対のワイヤーのそれぞれに張力を付与し、それらの張力を付与した部分を直線方向に沿って互いに平行に走行させるワイヤー走行工程と、
走行する一対の前記ワイヤーの間の距離を、隣り合う前記ゴムベルト部の間の間隔の寸法に対応した所定の寸法に設定し、走行する前記ベルトスリーブの前記補強布に対して、隣り合う前記ゴムベルト部の間において、走行する一対の前記ワイヤーを押し付けることで、前記ベルトスリーブを周方向に切断し、前記結合ベルトを形成する切断工程と、
を備えていることを特徴とする、結合ベルト形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブを周方向に切断し、複数のゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトを切り出して形成する、結合ベルト形成装置、及び結合ベルト形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力を伝達する伝動ベルトとして、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなど、ゴム層を含む環状のベルトとして構成されて摩擦によって動力を伝達するベルトが広く知られている。例えば、Vベルトは、V字状の断面を有する環状の伝動ベルトとして構成されている。そして、Vベルトとしては、ラップドVベルト及びローエッジVベルトが、用いられている。尚、ラップドVベルトは、ベルト本体の周囲表面の全体がベルト周方向の全長に亘って外皮布で覆われたVベルトとして構成されている。一方、ローエッジVベルトは、摩擦によって動力を伝達する側面のゴム層が露出した状態のVベルトとして構成されている。
【0003】
ラップドVベルト或いはローエッジVベルト等のVベルト、Vリブドベルト、平ベルト等の伝動ベルトは、摩擦伝動面の表面性状或いは断面形状などの違いから用途に応じて使い分けが行われる。上記の伝動ベルト単体で動力の伝達が可能な用途の場合は、伝動ベルトは1本のみで用いられる。これに対し、例えば、粉砕機用或いは大型コンプレッサー用の用途など、伝達する動力が大きい用途の場合は、上記の伝動ベルトを複数本同時に用いる必要が生じる。即ち、回転装置のプーリ等に対して複数本の伝動ベルトをそれらが並列に並んだ状態で巻き掛け、複数本の伝動ベルトを同時に用いる必要が生じる。
【0004】
しかし、回転装置のプーリ等に複数本の伝動ベルトを巻き掛けて複数本の伝動ベルトを同時に用いる場合、伝動ベルト間において張力差が生じ、安定した動力伝達が損なわれてしまう虞がある。更には、隣り合う伝動ベルト同士において接触が生じてしまい、その接触が原因となり、伝動ベルトの内周側と外周側とがひっくり返るようにして反転して逆となってしまう転覆の問題が生じる虞がある。
【0005】
そこで、伝達する動力が大きい用途の場合は、上記の伝動ベルトと同様の或いは対応した構成を有する環状のゴムベルト部が複数結合されて構成された結合ベルトが用いられる。この結合ベルトは、上記のゴムベルト部が複数並列に並んだ状態でその複数のゴムベルト部の外周側が補強布で連結されて結合されたベルトとして構成される。
【0006】
上記の結合ベルトの製造においては、まず、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブが作製される。そして、ベルトスリーブが周方向に切断され、複数のゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトが切り出されて形成される。これにより、結合ベルトが製造される。
【0007】
ここで、ゴムベルト部がラップドVベルトと同様の或いは対応した構成を有する結合ベルトの場合を例にとり、結合ベルトの製造方法について更に説明する。この場合、上記のベルトスリーブの作製においては、まず、ラップドVベルトの製造工程が途中まで実施される。特許文献1においては、ラップドVベルトの製造方法が開示されている。特許文献1に開示された製造方法においては、次の工程A、工程B、及び工程Cの各工程が順次実施されることで、ラップドVベルトが製造される。
【0008】
上記の工程Aにおいては、まず、円筒状ドラムの外周面に、圧縮ゴム層の素材の未加硫ゴムシート、心線、及び伸張ゴム層の素材の未加硫ゴムシートが、順次積層されて貼着され、筒状に形成される。これにより、未加硫ゴム層と心線とを有する筒状の未加硫スリーブが形成される。そして、工程Aにおいては、作成された上記の未加硫スリーブが、円筒状ドラムの外周の全周に亘って巻き掛けられた状態で、周方向に切断される。これにより、環状の未加硫ゴムベルトが形成される。更に、工程Aにおいては、未加硫ゴムベルトがドラムから取り外され、未加硫ゴムベルトの両側面が所定の角度で切削される(スカイブされる)。これにより、未加硫ゴムベルトの断面形状が、V字状断面となるように形成される。そして、V字状断面となった未加硫ゴムベルトに対して、その周囲を外被布で覆うカバー巻き処理が施され、未加硫ベルト成形体が形成される。
【0009】
結合ベルトが切り出されるベルトスリーブの作製においては、上記の未加硫ベルト成形体が用いられる。尚、特許文献1のラップドVベルトの製造方法においては、上記の工程Aに次ぐ工程Bにおいて、上記の未加硫ベルト成形体が、リングモールドの凹溝に挿入される。そして、リングモールド及び未加硫ベルト成形体の外周面に円筒状のゴムスリーブが嵌め込まれた状態で、それらが加硫缶に収納され、所定の温度等の条件で加硫が行われる。これにより、加硫ベルトが生成される。最終の工程Cにおいては、生成された加硫ベルトが、リングモールドから取り外される。工程Cまで終了することで、ラップドVベルトが製造される。
【0010】
これに対し、結合ベルトが切り出されて形成される素材となるベルトスリーブの作製においては、まず、複数の未加硫ベルト成形体が、並列に並んだ状態で、V字状の断面の溝を複数有する金型の溝に対して、それぞれ嵌め込まれる。そして、並列した状態で金型に嵌め込まれた複数の未加硫ベルト成形体の外周側が補強布で被覆される。尚、補強布には、未加硫ゴムが含浸されている。金型の外周に複数の未加硫ベルト成形体が嵌め込まれてその外周が補強布で被覆された状態で、その外周に更にゴムスリーブが装着され、それらが加硫缶に収納され、所定の温度等の条件で加硫が行われる。加硫後、ゴムスリーブ及び金型が解体され、加硫された対象物であるベルトスリーブが取り出される。これにより、複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブが作製される。
【0011】
上記のベルトスリーブが作製されると、そのベルトスリーブが周方向に切断され、複数のゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトが切り出されて形成される。これにより、結合ベルトの製造が完了することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭63−236630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
結合ベルトが形成される際には、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブが周方向に切断される。これにより、複数のゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトが切り出されて形成される。そして、ベルトスリーブから結合ベルトを切り出して形成する際には、円筒状ドラム等の回転体の外周に上記のベルトスリーブが巻き掛けられた状態で、ベルトスリーブの切断が行われる。このとき、回転体とともに回転するベルトスリーブに対して、外周に刃が設けられた回転刃が回転しながら押し付けられ、ベルトスリーブが周方向に切断される。
【0014】
図1は、ベルトスリーブ200の一部を示す断面図であって、筒状のベルトスリーブ200における軸方向と平行な断面の一部を示す図である。図1に示すように、ベルトスリーブ200は、複数の環状のゴムベルト部201が並列に並んだ状態で外周側が補強布202で連結されている。ベルトスリーブ200においては、複数のゴムベルト部201は、ゴムベルト部201同士が寸法dの間隔を介して隣り合った状態で、補強布202で連結されている。尚、図1では、ベルトスリーブ200における各ゴムベルト部201がラップドVベルトと同様の或いは対応した構成を有する形態の場合を例示している。このため、各ゴムベルト部201は、圧縮ゴム層201a、伸張ゴム層201b、心線201c、外被布201dを備えている。
【0015】
図2は、従来の結合ベルト203の一部を示す断面図であって、環状の結合ベルト203の幅方向と平行な断面の一部を示す図である。尚、結合ベルト203の幅方向は、ベルトスリーブ200の軸方向と平行な方向に対応している。ベルトスリーブ200が周方向に切断されることで、図2に示すような結合ベルト203が切り出されて形成される。尚、図2では、ベルトスリーブ200から、2本のゴムベルト部201が結合した状態の結合ベルト203が切り出されて形成された場合が例示されている。
【0016】
ベルトスリーブ200から結合ベルト203が切り出されて形成される場合には、ベルトスリーブ200の補強布202は、図1にて破線で示す切断ライン204にて、周方向に切断される。即ち、ベルトスリーブ200は、円筒状ドラム等の回転体の外周に巻き掛けられて回転体とともに回転する状態で、外周に刃が設けられた回転刃が回転しながら押し付けられ、切断ライン204に沿って、周方向に切断される。
【0017】
隣り合うゴムベルト部201の間における補強布202の部分を切断する際の切断ライン204は、例えば、隣り合うゴムベルト部201の中間位置に設定される。このため、図2に示すように、ベルトスリーブ200から回転刃によって切り出された結合ベルト203においては、環状の結合ベルト203の幅方向の両側の縁部分において、ゴムベルト部201から寸法αの幅で外側にはみ出したはみ出し部202aが生じることになる。即ち、隣り合うゴムベルト部201の間の間隔の寸法dの約半分の寸法α(寸法約d/2)の幅で外側にはみ出した補強布202の部分であるはみ出し部202aが生じることになる。尚、切断ライン204が、隣り合うゴムベルト部201の間の補強布202の部分における隣り合うゴムベルト201の中間位置以外の位置に設定されると、切断ライン204が、隣り合うゴムベルト201のうちのいずれか一方に近い位置となる。この場合、環状の結合ベルト203の幅方向の両側の縁部分のうちのいずれか一方において、寸法αよりも寸法の大きい幅ではみ出したはみ出し部202aが生じることになる。
【0018】
結合ベルト203の幅方向の両側の縁部分の少なくとも一方において、ゴムベルト部201の間の間隔の寸法dの約半分の寸法α或いはそれ以上の寸法の過大なはみ出し部202aが生じると、結合ベルト203の屈曲性能の低下を招く要因となる虞がある。また、回転装置のプーリ等に複数本の結合ベルトが巻き掛けられて同時に用いられる場合、隣り合う結合ベルト同士においてはみ出し部202a同士の接触が生じてしまう虞が高くなる。この場合、その接触が原因となり、走行時の結合ベルトの振れが大きくなり、結合ベルトの内周側と外周側とがひっくり返るようにして反転して逆となってしまう転覆の問題が生じる虞がある。
【0019】
一方、ベルトスリーブ200から結合ベルト203を切り出して形成した後、はみ出し部202aを除去する作業を行うことで、上記の問題点の発生を抑制することができる。しかし、結合ベルト203の形成後にはみ出し部202aを除去する作業を行うと、作業工数の大幅な増加を招くことになり、作業性の低下を招くことになる。従って、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合ベルト203の幅方向の縁部分におけるはみ出し部202aの発生を容易に抑制できる技術の実現が望まれる。
【0020】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合ベルトの幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制できる、結合ベルト形成装置、及び結合ベルト形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)上記目的を達成するための本発明のある局面に係る結合ベルト形成装置は、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブを周方向に切断し、複数の前記ゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトを切り出して形成する、結合ベルト形成装置に関する。そして、本発明のある局面に係る結合ベルト形成装置は、軸回りに回転する回転体を有し、前記回転体の外周の少なくとも一部に前記ベルトスリーブが巻き掛けられた状態で、前記回転体を回転させ、前記ベルトスリーブを周方向に走行させるスリーブ走行機構と、一対のワイヤーを有し、一対の前記ワイヤーのそれぞれに張力を付与し、それらの張力を付与した部分を直線方向に沿って互いに平行に走行させるワイヤー走行機構と、走行する前記ベルトスリーブの前記補強布に対して、隣り合う前記ゴムベルト部の間において、走行する一対の前記ワイヤーを押し付けることで、前記ベルトスリーブを周方向に切断し、前記結合ベルトを形成する切断機構と、を備えている。
【0022】
この構成によると、スリーブ走行機構、ワイヤー走行機構、切断機構が作動し、ベルトスリーブが周方向に切断されて結合ベルトが形成される。そして、上記の構成によると、一対のワイヤーのそれぞれにおける張力が付与された部分の長手方向である直線方向に沿って互いに平行に走行する一対のワイヤーが、周方向に走行するベルトスリーブに押し付けられることで、ベルトスリーブの切断が行われる。このため、ベルトスリーブに押し付ける走行する一対のワイヤーの間の距離(間隔)を、隣り合うゴムベルト部の間の間隔の寸法に適宜対応した所定の寸法に設定することで、ベルトスリーブの切断の際に、隣り合うゴムベルト部の間の補強布の部分を容易に切除することができる。これにより、結合ベルトの幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制することができる。
【0023】
また、走行する一対のワイヤーを走行するベルトスリーブの補強布に押し付けてベルトスリーブを周方向に切断することで、結合ベルトの幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部が切除された状態の結合ベルトを容易に形成することができる。このため、ベルトスリーブから結合ベルトを切り出して形成した後にはみ出し部を除去する作業を行う必要がなく、作業性の低下を招くことを抑制することができる。
【0024】
よって、上記の構成によると、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合ベルトの幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制できる結合ベルト形成装置を提供することができる。
【0025】
尚、従来においては、ベルトスリーブから結合ベルトが切り出されて形成される際には、ベルトスリーブは、外周に刃が設けられた回転刃が回転しながら押し付けられることで、周方向に切断される。このように、従来においては、ベルトスリーブの補強布の切断に回転刃が用いられるため、回転刃と切断対象の補強布との接触面積が大きく、切断時の摩擦熱による大きな温度上昇が生じ、結合ベルトが高温となってしまう。これに対し、切断時の摩擦熱による温度上昇を抑制する観点から、切断中の回転刃に冷却水を掛けて冷却することも考えられる。しかし、その場合、切断中の回転刃に冷却水を掛けて冷却するための冷却用の設備が必要となる。更に、水を用いた冷却用の設備が必要となると、その設備自体の構築に加え、冷却用の設備に水を供給するための水供給系統の構築も必要となる。このため、ベルトスリーブから結合ベルトを形成する際に必要となる設備の種類及び数の増大を招くことになる。
【0026】
しかしながら、上記の構成によると、ベルトスリーブの補強布の切断時に、外周に刃が設けられた回転刃ではなく、直線方向に(即ち、張力が付与された部分の長手方向に)走行するワイヤーによって、補強布の切断が行われる。このため、ベルトスリーブにおいて切断される補強布と切断工具としてのワイヤーとの接触面積を、切断工具が回転刃の場合に比して、極めて小さくすることができる。これにより、ベルトスリーブの切断中における摩擦熱による温度上昇を大幅に抑制することができる。そして、ベルトスリーブの切断中における摩擦熱による温度上昇を大幅に抑制できるため、切断時における水を用いた冷却設備が不要となる。このため、ベルトスリーブから結合ベルトを形成する際に必要となる設備の種類及び数の増大を抑制することができる。
【0027】
(2)前記スリーブ走行機構は、複数の前記回転体を有し、複数の前記回転体のそれぞれの外周の一部に前記ベルトスリーブが巻き掛けられた状態で、複数の前記回転体のうちの少なくとも1つの前記回転体を回転駆動し、前記ベルトスリーブを周方向に走行させてもよい。
【0028】
この構成によると、複数の回転体にベルトスリーブを巻き掛けた状態で、ベルトスリーブを周回させるように周方向に走行させることができる。このため、ベルトスリーブの周方向長さが比較的長い(周長が長い)場合であっても、筒状のベルトスリーブの径寸法に比して小径の回転体を複数有するスリーブ走行機構によって、ベルトスリーブを容易に周方向に走行させることができる。
【0029】
また、上記の構成によると、ベルトスリーブの周方向長さが比較的長い場合であっても、小径の回転体の外周に沿ってベルトスリーブを走行させ、走行するベルトスリーブに走行する一対のワイヤーを押し付けてベルトスリーブを切断できる。このため、曲率半径が小さい回転体の近傍で一対のワイヤーをベルトスリーブに押し付けてベルトスリーブを切断することができる。従って、ベルトスリーブにおいて切断される補強布と切断工具としてのワイヤーとの接触面積を更に小さくでき、ベルトスリーブの切断中における摩擦熱による温度上昇を更に抑制することができる。
【0030】
(3)前記スリーブ走行機構は、複数の前記回転体として一対の前記回転体を有し、一対の前記回転体のうちの一方が、回転駆動される駆動ロールとして構成され、一対の前記回転体のうちの他方が、前記駆動ロールの回転に伴って周方向に走行する前記ベルトスリーブの走行とともに回転する従動ロールとして構成されていてもよい。
【0031】
この構成によると、複数の回転体にベルトスリーブを巻き掛けた状態でベルトスリーブを周回させるように周方向に走行させる構造を、駆動ロール及び従動ロールで構成される一対の回転体を用いた簡素な構造で実現することができる。
【0032】
(4)前記ワイヤー走行機構は、一対の前記ワイヤーのそれぞれを保持する一対のワイヤー保持部を有し、一対の前記ワイヤー保持部のそれぞれは、1本の連続した前記ワイヤーの両端部側の部分がそれぞれ巻き付けられるとともに同期して回転する一対の回転ボビンを有し、前記ワイヤー走行機構は、一対の前記ワイヤー保持部のそれぞれにおいて、一対の前記回転ボビンの間で前記ワイヤーに張力を付与した状態で、一対の前記回転ボビンのうちの一方から前記ワイヤーを払い出すとともに一対の前記回転ボビンの他方にて前記ワイヤーを巻き取ることで、一対の前記回転ボビンの間において、前記ワイヤーにおける張力を付与した部分を直線方向に沿って走行させてもよい。
【0033】
この構成によると、一対のワイヤー保持部のそれぞれにおいて、同期して回転する一対の回転ボビンの一方からワイヤーを払い出しながら他方で巻き取ることで、容易に、ワイヤーに張力を付与しながらワイヤーの張力を付与した部分を直線方向に沿って走行させることができる。そして、上記の構成によると、長尺のワイヤーを一対の回転ボビンの一方から払い出すとともに他方で巻き取りながら、ベルトスリーブの切断を行うことができる。このため、ベルトスリーブの補強布の切断の際に、ワイヤーにおける同一部分を集中的に用いることなく、長尺のワイヤーにおける異なる部分を順番に連続して用いることができる。これにより、ワイヤーにおけるそれぞれの部分が切断に用いられる時間が極めて短時間となり、且つ、切断後の放熱によるワイヤーの冷却時間も十分に長く確保することができる。これにより、ワイヤーに熱が蓄積されることを効率よく抑制でき、ベルトスリーブの切断中における摩擦熱による温度上昇を更に抑制することができる。
【0034】
(5)前記ワイヤー走行機構は、一対の前記ワイヤー保持部を有するワイヤー保持部ユニットを複数有していてもよい。
【0035】
この構成によると、複数のワイヤー保持部ユニットによって、ベルトスリーブを周方向に切断して結合ベルトを切り出して形成する作業を複数個所において同時に行うことができる。このため、ベルトスリーブを周方向に切断して環状の結合ベルトを形成する作業の能率を更に向上させることができる。
【0036】
(6)一対の前記回転ボビンは、同期して回転する回転方向を交互に逆転させながら回転を繰り返すことで、前記ワイヤーにおける張力を付与した部分を直線方向に沿って往復させながら走行させてもよい。
【0037】
この構成によると、一対の回転ボビンが同期して回転する回転方向を交互に逆転させながら回転を繰り返すことで、長尺のワイヤーを連続的に繰り返し往復させながら用いてベルトスリーブの切断作業を効率よく実施することができる。また、ベルトスリーブの切断に長尺のワイヤーを繰り返し往復させながら用いることができるため、ワイヤーにおけるそれぞれの部分が切断に用いられる時間を極めて短時間としつつ、且つ、切断後の放熱によるワイヤーの冷却時間も十分に長く確保しつつ、ベルトスリーブの切断作業を効率よく実施することができる。これにより、ワイヤーに熱が蓄積されることを効率よく抑制でき、ベルトスリーブの切断中における摩擦熱による温度上昇を更に抑制しつつ、長時間に亘ってベルトスリーブの切断作業を連続的に実施することができる。
【0038】
(7)前記切断機構は、前記回転体の外周に沿って走行する前記ベルトスリーブに対して、前記回転体の外周の接線方向と平行な方向に沿って走行する一対の前記ワイヤーを押し付けてもよい。
【0039】
この構成によると、回転体の外周に沿って走行するベルトスリーブに対して、回転体の外周の接線方向と平行な方向に沿って走行するワイヤーが押し付けられるため、ベルトスリーブの湾曲して走行する部分においてワイヤーによる切断作業を効率よく容易に行うことができる。即ち、回転体の外周に沿って湾曲して走行するベルトスリーブを、そのベルトスリーブの湾曲部分の接線方向に沿って直線方向に走行するワイヤーによって、効率よく容易に切断することができる。
【0040】
(8)上記目的を達成するための本発明のある局面に係る結合ベルト形成方法は、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブを周方向に切断し、複数の前記ゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトを切り出して形成する、結合ベルト形成方法に関する。そして、本発明のある局面に係る結合ベルト形成方法は、軸回りに回転する回転体の外周の少なくとも一部に前記ベルトスリーブが巻き掛けられた状態で、前記回転体を回転させ、前記ベルトスリーブを周方向に走行させるスリーブ走行工程と、一対のワイヤーのそれぞれに張力を付与し、それらの張力を付与した部分を直線方向に沿って互いに平行に走行させるワイヤー走行工程と、走行する前記ベルトスリーブの前記補強布に対して、隣り合う前記ゴムベルト部の間において、走行する一対の前記ワイヤーを押し付けることで、前記ベルトスリーブを周方向に切断し、前記結合ベルトを形成する切断工程と、を備えている。
【0041】
この構成によると、スリーブ走行工程、ワイヤー走行工程、切断工程が実施され、ベルトスリーブが周方向に切断されて結合ベルトが形成される。そして、上記の構成によると、一対のワイヤーのそれぞれにおける張力が付与された部分の長手方向である直線方向に沿って互いに平行に走行する一対のワイヤーが、周方向に走行するベルトスリーブに押し付けられることで、ベルトスリーブの切断が行われる。このため、ベルトスリーブに押し付ける走行する一対のワイヤーの間の距離(間隔)を、隣り合うゴムベルト部の間の間隔の寸法に対応した所定の寸法に設定することで、ベルトスリーブの切断の際に、隣り合うゴムベルト部の間の補強布の部分を容易に切除することができる。これにより、結合ベルトの幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制することができる。
【0042】
また、走行する一対のワイヤーを走行するベルトスリーブの補強布に押し付けてベルトスリーブを周方向に切断することで、結合ベルトの幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部が切除された状態の結合ベルトを容易に形成することができる。このため、ベルトスリーブから結合ベルトを切り出して形成した後にはみ出し部を除去する作業を行う必要がなく、作業性の低下を招くことを抑制することができる。
【0043】
よって、上記の構成によると、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合ベルトの幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制できる結合ベルト形成方法を提供することができる。
【0044】
また、上記の構成によると、ベルトスリーブの補強布の切断時に、外周に刃が設けられた回転刃ではなく、直線方向に(即ち、張力が付与された部分の長手方向に)走行するワイヤーによって、補強布の切断が行われる。このため、ベルトスリーブにおいて切断される補強布と切断工具としてのワイヤーとの接触面積を、切断工具が回転刃の場合に比して、極めて小さくすることができる。これにより、ベルトスリーブの切断中における摩擦熱による温度上昇を大幅に抑制することができる。そして、ベルトスリーブの切断中における摩擦熱による温度上昇を大幅に抑制できるため、切断時における水を用いた冷却設備が不要となる。このため、ベルトスリーブから結合ベルトを形成する際に必要となる設備の種類及び数の増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によると、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合ベルトの幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制できる、結合ベルト形成装置、及び結合ベルト形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】ベルトスリーブの一部を示す断面図であって、筒状のベルトスリーブにおける軸方向と平行な断面の一部を示す図である。
図2】従来の結合ベルトの一部を示す断面図であって、環状の結合ベルトの幅方向と平行な断面の一部を示す図である。
図3】結合ベルトの一部を示す斜視図である。
図4】結合ベルトの一部を示す斜視図であって、一部を断面で示す図である。
図5】結合ベルトの製造工程全体を示すチャート図である。
図6】ベルトスリーブを示す斜視図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る結合ベルト形成装置を示す正面図である。
図8】結合ベルト形成装置の平面図である。
図9】結合ベルト形成装置を側面から見た図であって、結合ベルト形成装置の一部を切欠き状態で示す図である。
図10図7に示す結合ベルト形成装置の一部を拡大して示す図である。
図11図8に示す結合ベルト形成装置の一部を拡大して示す図である。
図12】結合ベルト形成装置の作動を説明するための図である。
図13】結合ベルト形成装置の作動を説明するための図である。
図14】結合ベルト形成装置の作動を説明するための図であって、ワイヤー保持部ユニット及びその近傍を模式的に示す図である。
図15】結合ベルト形成装置の作動を説明するための図であって、ワイヤー保持部ユニット及びその近傍を模式的に示す図である。
図16】ベルトスリーブの一部を示す断面図であって、筒状のベルトスリーブにおける軸方向と平行な断面の一部を示す図である。
図17】結合ベルトの一部を示す断面図であって、環状の結合ベルトの幅方向と平行な断面の一部を示す図である。
図18】本発明の一実施の形態に係る結合ベルト形成方法を示すチャート図である。
図19】結合ベルト形成装置によって、ベルトスリーブが全幅に亘って周方向に切断され、複数の結合ベルトが形成された状態を示す図である。
図20】本発明の実施例に関する実施条件及び実施結果等を一覧表にして示す図である。
図21】実施例に係るワイヤーであって心線にダイヤモンド砥粒が電着により固定されたワイヤーの表面を撮影したSEM写真の画像を示す図である。
図22】変形例に係る結合ベルト形成装置を説明するための図である。
図23】変形例に係る結合ベルト形成装置を説明するための図である。
図24】変形例に係る結合ベルト形成装置を説明するための図である。
図25】変形例に係る結合ベルト形成装置のワイヤー走行機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、まず、結合ベルトの概略及び結合ベルトの製造工程全体の概略について説明し、次いで、結合ベルトの製造に関して適用される本発明の実施形態に係る結合ベルト形成装置及び結合ベルト形成方法について説明する。
【0048】
[結合ベルトの概略]
図3は、結合ベルト100の一部を示す斜視図である。図4は、結合ベルト100の一部を示す斜視図であって、一部を断面で示す図である。結合ベルト100は、破砕機或いは大型コンプレッサーなど、伝達する動力が大きい種々の機械において、動力伝達用の無端状のベルトとして用いられる。そして、図3及び図4においては、V字状の断面を有する環状のゴムベルト部101を複数有する結合Vベルトとして構成された結合ベルト100を例示している。尚、以下の説明においては、結合ベルト100について、結合Vベルト100とも称する。
【0049】
尚、図4においては、環状に延びる結合Vベルト100の周方向に対して垂直な断面が図示されている。また、図4においては、結合Vベルト100の周方向が、両端矢印Aで示されており、周方向に対して直交する幅方向(結合Vベルト100の幅方向)が、両端矢印Bで示されている。
【0050】
結合Vベルト100は、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部101と、補強布102とを備えて構成されている。結合Vベルト100は、複数の環状のゴムベルト部101が並列に並んだ状態で外周側が補強布102で連結されたベルトとして構成されている。そして、結合Vベルト100は、複数のゴムベルト部101が補強布102で連結されることで結合した状態のベルトとして構成されている。尚、図3及び図4においては、2つの環状のゴムベルト部101が並列に並んだ状態で外周側が補強布102で連結されて結合した結合Vベルト100の形態を例示している。図3及び図4においては、2つのゴムベルト部101が補強布102で連結されて結合した結合ベルトを例示しているが、本実施形態の結合ベルト形成装置及び結合ベルト形成方法が適用される結合ベルトの種類は、この通りでなくてもよい。例えば、3つ以上のゴムベルト部が補強布で連結されて結合した結合ベルトに関して、本実施形態の結合ベルト形成装置及び結合ベルト形成方法が適用されてもよい。
【0051】
結合Vベルト100の2つのゴムベルト部101は、同様に構成されている。そして、各ゴムベルト部101は、ゴム層としての圧縮ゴム層103及び伸張ゴム層104と、心線105と、外被布106とを備えて構成されている。尚、図4においては、ゴムベルト部101が、ラップドVベルトと同様の或いは対応した構成を有している形態を例示している。図4においては、ゴムベルト部101が、ラップドVベルトと同様の或いは対応した構成を有している形態を例示しているが、本実施形態の結合ベルト形成装置及び結合ベルト形成方法が適用される結合ベルトの種類は、この通りでなくてもよい。例えば、ゴムベルト部が、ラップドVベルト以外の伝動ベルトと同様の或いは対応した構成を有している形態の結合ベルトに関して、本実施形態の結合ベルト形成装置及び結合ベルト形成方法が適用されてもよい。
【0052】
環状に設けられたゴムベルト部101の本体部分は、積層構造を有しており、ゴムベルト部101の内周側から外周側に向かって、圧縮ゴム層103、心線105、伸張ゴム層104が、順次積層されている。よって、ゴムベルト部101においては、圧縮ゴム層103と伸張ゴム層104との間において、心線105が埋設されている。心線105は、ゴムベルト部101の周方向に沿って延びるように配置されている。そして、心線105は、ゴムベルト部101の周方向に垂直な断面において、ゴムベルト部101の幅方向に沿って所定の間隔で配列されている。尚、ゴムベルト部101の周方向は結合Vベルト100の周方向と同方向であり、ゴムベルト部101の幅方向は結合Vベルト100の幅方向と同方向である。
【0053】
また、ゴムベルト部101は、環状に設けられた無端状の本体部分の周囲表面の全体が周方向の全長に亘って外被布106で被覆されて構成されている。そして、ゴムベルト部101は、その周方向に対して垂直な断面の形状が、V字状の断面形状である。より具体的には、ゴムベルト部101の断面形状は、ゴムベルト部101の外周側から内周側に向かって幅方向の寸法が小さくなる台形状に構成されている。
【0054】
補強布102は、結合Vベルト100において、複数のゴムベルト部101をそれらの外周側である背面側で一体に結合する背面布として設けられている。結合Vベルト100においては、補強布102が設けられていることで、複数のゴムベルト部101が一体のベルト要素としての強度を発揮できるように構成されている。また、補強布102は、環状の布部分として構成され、各ゴムベルト部101の外皮布105の外周側の部分と一体的に結合されている。これにより、補強布102は、並列に並んだ状態の複数の環状のゴムベルト部101をそれらの外周側で連結して結合している。
【0055】
[結合ベルトの製造工程の概略]
図5は、結合ベルト100(結合Vベルト100)の製造工程全体を示すチャート図である。図5に示すように、結合Vベルト100の製造工程は、未加硫スリーブ形成工程S101、未加硫ゴムベルト形成工程S102、スカイブ工程S103、カバー巻き工程S104、ベルトスリーブ形成工程S105、結合ベルト形成工程S106を備えて構成されている。
【0056】
未加硫スリーブ形成工程S101は、未加硫ゴム層と心線とを有する筒状の未加硫スリーブを形成する工程として構成されている。未加硫スリーブ形成工程S101においては、まず、未加硫ゴム(即ち、加硫が行われていない状態のゴム)のシートが、圧延によって形成される。そして、圧延によって形成された未加硫ゴムのシートが、所定の長さに切断される。所定の長さに切断された未加硫ゴムのシートは、円筒状或いは円柱状に設けられて回転自在に支持された巻き付け用の型として構成された回転ドラムに対して、巻き付けられる。回転ドラムの外周に巻き付けられた未加硫ゴムのシートは、その端部同士が接合され、筒状に成形される。筒状に成形された未加硫ゴムのシートが、結合Vベルト100の各ゴムベルト部101における圧縮ゴム層103の素材となる。
【0057】
そして、回転ドラムの外周に筒状の未加硫ゴムの成形体が形成されると、次いで、前述の心線105が、周方向に沿って巻き付けられる。心線105は、筒状の未加硫ゴムの成形体に対して、幅方向に沿って所定のピッチでずらされながら、周方向に沿ってスパイラル状に巻き付けられる。尚、筒状の未加硫ゴムの成形体の幅方向は、上記の回転ドラムの軸方向と平行な方向として構成される。心線105は、筒状の未加硫ゴムの成形体に対して、幅方向のほぼ全長に亘って、巻き付けられる。
【0058】
筒状の未加硫ゴムの成形体の外周への心線105の巻き付けが終了すると、次いで、心線105の上から、圧延によって形成された未加硫ゴムのシートが巻き付けられる。心線105の上から巻き付けられた未加硫ゴムのシートは、その端部同士が接合され、筒状に成形される。心線105の外周側に巻き付けられた筒状の未加硫ゴムのシートが、結合Vベルト100の各ゴムベルト部101における伸張ゴム層104の素材となる。
【0059】
尚、未加硫スリーブにおける内周側及び外周側の未加硫ゴムの層を構成するゴム成分としては、加硫又は架橋可能なゴム、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなど)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示でき、これらのゴム成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDMなど)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム)、クロロプレンゴムである。特に好ましいゴム成分は、クロロプレンゴムである。クロロプレンゴムは、硫黄変性タイプであってもよく、非硫黄変性タイプであってもよい。尚、内周側の未加硫ゴムの層のゴム成分と外周側の未加硫ゴムの層のゴム成分とは、同系統又は同種のゴムを使用する場合が多い。
【0060】
心線105としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線105を構成する繊維としては、ポリエステル繊維、アラミド繊維などの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維などが使用できる。心線105の表面には、慣用の接着処理(又は表面処理)が施されていてもよい。
【0061】
上述した未加硫スリーブ形成工程S101によって未加硫スリーブが形成されると、次いで、未加硫ゴムベルト形成工程S102が実施される。未加硫ゴムベルト形成工程S102は、未加硫スリーブを周方向に切断して環状の未加硫ゴムベルトを形成する工程として構成されている。未加硫ゴムベルトは、矩形断面で環状に延びるゴムベルトとして構成され、その内周側から外周側に向かって、圧縮ゴム層103の素材の未加硫ゴム層、心線105、伸張ゴム層104の素材の未加硫ゴム層が、順次積層されて構成されている。
【0062】
スカイブ工程S103は、未加硫ゴムベルトの両側面における内周側の両角部分を周方向に亘って削るように切削することでスカイブ(skive)し、未加硫ゴムベルトの断面形状を変更する工程として構成されている。スカイブ工程S103においては、未加硫ゴムベルトの内周側の未加硫ゴム層における内周側の両角部分が周方向に亘って削られるように切削される。これにより、スカイブ工程S103の処理が施される前の状態で矩形状の断面だった未加硫ゴムベルトの断面の形状は、スカイブ工程S103の処理が施された後の状態においては、矩形状の部分と台形状の部分とが組み合わされた断面の形状となる。
【0063】
カバー巻き工程S104は、スカイブ工程S103の処理が終了した未加硫ゴムベルトを外被布106で被覆する工程として構成されている。カバー巻き工程S104においては、環状の未加硫ゴムベルトの周囲表面の全体が周方向の全長に亘って外被布106で被覆される。これにより、未加硫ゴムベルトが外被布106で被覆されて構成された未加硫ベルト成形体が形成される。
【0064】
図6は、ベルトスリーブ107を示す斜視図である。ベルトスリーブ形成工程S105は、複数のゴムベルト部101が並列に並んだ状態で外周側が補強布102で連結された筒状のベルトスリーブ107を形成する工程として構成されている。また、ベルトスリーブ形成工程S105は、ベルトスリーブ107を形成する際に、カバー巻き工程S104で形成された未加硫ベルト成形体における可塑性の未加硫ゴムを加熱して弾性ゴムに変化させる工程としても構成されている。
【0065】
ベルトスリーブ形成工程S105においては、まず、カバー巻き工程S104で形成された複数の未加硫ベルト成形体が、並列に並んだ状態で、V字状の断面の溝を複数有する金型の溝に対して、それぞれ嵌め込まれる。尚、複数の未加硫ベルト成形体が嵌め込まれる金型は、例えば、V字状の断面の溝を外周において区画する円筒状のリングモールドが組み合わされることで構成される。
【0066】
金型に複数の未加硫ベルト成形体が嵌め込まれると、次いで、並列した状態で金型に嵌め込まれた複数の未加硫ベルト成形体の外周側が補強布102で被覆される。尚、補強布102と未加硫ベルト成形体の外皮布106とには、未加硫ゴムが含浸されている。金型の外周に複数の未加硫ベルト成形体が嵌め込まれてその外周が補強布で被覆されると、それらの外周に更にゴムスリーブが装着される。そして、金型及び複数の未加硫ベルト成形体の外周に補強布102が被覆されて更にゴムスリーブが装着されて構成された構造体であって加硫対象を含む構造体が加硫缶に収納され、所定の温度等の条件で加硫が行われる。
【0067】
加硫が終了すると、ゴムスリーブ及び金型が解体され、加硫された対象物であるベルトスリーブ107が取り出される。これにより、それぞれゴム層(圧縮ゴム層103、伸長ゴム層104)を含む複数の環状のゴムベルト部101が並列に並んだ状態で外周側が補強布102で連結されている筒状のベルトスリーブ107が形成される。尚、加硫が完了してベルトスリーブ107が形成された状態では、未加硫ベルト成形体の未加硫ゴムは加熱されて弾性ゴムに変化し、各ゴムベルト部101においては、圧縮ゴム層103、伸長ゴム層104が構築されている。そして、各ゴムベルト部101の外皮布106と補強布102とは、それらに含浸されていた未加硫ゴムが加熱されて弾性ゴムに変化していることで、一体に結合されている。これにより、ベルトスリーブ107においては、複数のゴムベルト部101が、筒状のベルトスリーブ107の軸方向に並列に並んだ状態で、結合されている。
【0068】
ベルトスリーブ形成工程S105が終了すると、結合ベルト形成工程S106が実施される。結合ベルト形成工程S106は、ベルトスリーブ107を周方向に切断し、複数のゴムベルト部101が結合した状態の結合Vベルト100を切り出して形成する工程として構成されている。結合ベルト形成工程S106は、本発明の実施形態に係る結合ベルト形成方法として構成され、本発明の実施形態に係る結合ベルト形成装置を用いることで実施される。結合ベルト形成工程S106が終了することで、結合Vベルト100の製造が完了することになる。
【0069】
[結合ベルト形成装置の概略]
図7は、本発明の一実施の形態に係る結合ベルト形成装置1を示す正面図である。図8は、結合ベルト形成装置1の平面図である。図9は、結合ベルト形成装置1を側面から見た図であって、結合ベルト形成装置1の一部を切欠き状態で示す図である。結合ベルト形成装置1が作動することで、本発明の一実施の形態に係る結合ベルト形成方法が実施され、前述の結合Vベルト100の製造工程における結合ベルト形成工程S106が実施されることになる。
【0070】
図7乃至図9に示す結合ベルト形成装置1は、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部101が並列に並んだ状態で外周側が補強布102で連結されている筒状のベルトスリーブ107を周方向に切断し、複数のゴムベルト部101が結合した状態の結合Vベルト100を切り出して形成するための装置として構成されている。そして、結合ベルト形成装置1は、図7乃至図9に示すように、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13、制御装置14、等を備えて構成されている。尚、図9においては、ワイヤー走行機構12及び制御装置14の図示は省略されている。
【0071】
また、本実施形態においては、ベース15が更に備えられている未加硫ゴムベルト形成装置1が、例示されている。尚、図8においては、ベース15の図示が省略されている。スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13、制御装置14は、ベース15上に設置されている。本実施形態では、ベース15が備えられた結合ベルト形成装置1が例示されているが、ベース15が備えられていない形態の結合ベルト形成装置1が実施されてもよい。
【0072】
[スリーブ走行機構]
図7乃至図9に示すように、スリーブ走行機構11は、駆動ロール21、従動ロール22、駆動ユニット23、支持ユニット(24、25、26)、等を備えて構成されている。そして、スリーブ走行機構11は、駆動ロール21及び従動ロール22として構成された回転体の外周の少なくとも一部にベルトスリーブ107が巻き掛けられた状態で、上記の回転体を回転させ、ベルトスリーブ107を周方向に走行させる機構として構成されている。
【0073】
駆動ロール21は、回転軸21a、回転ドラム21b、外周スリーブ21c、等を備え、軸周りに(回転軸21a周りに)回転する回転体として構成されている。尚、以下の説明においては、駆動ロール21について、回転体21とも称する。
【0074】
回転軸21aは、金属製の円筒状又は円柱状の軸として構成されている。そして、回転軸21aは、一端側が駆動ユニット23によって回転自在に支持され、他端側が支持ユニット24によって回転自在に支持されている。また、回転軸21aは、その一端側において、駆動ユニット23からの駆動トルクが入力されることで、回転駆動されるように構成されている。
【0075】
回転ドラム21bは、例えば、円筒状の部分或いは円周方向に沿って配置された複数のスリーブ支持部分を有する筒状体或いは放射状体の構造体として設けられている。そして、回転ドラム21bは、回転軸21aとともに回転するように、回転軸21aに対して取り付けられている。例えば、回転ドラム21bにおける上記の円筒状の部分或いは複数のスリーブ支持部分が、直径方向に延びる複数の支柱部分を介して回転軸21aに対して固定されている。また、回転ドラム21bは、回転軸21aの回転中心軸線と回転ドラム21bの回転中心軸線とが一致するように、回転軸21aに対して取り付けられている。尚、上記の支柱部分は、油圧シリンダ機構等の拡縮自在に作動する機構を有し、上記の円筒状の部分或いは複数のスリーブ支持部分を回転ドラム21bにおける径方向に拡縮自在に支持するように構成されていてもよい。
【0076】
外周スリーブ21cは、ゴム製の円筒形状のスリーブとして設けられ、回転ドラム21bの外周に装着される。外周スリーブ21cの内周の直径は、回転ドラム21bの外周の直径にほぼ対応する寸法に設定されている。回転ドラム21bが回転する際、回転ドラム21bに装着された外周スリーブ21cは、回転ドラム21bとともに同一の回転速度で回転する。また、外周スリーブ21cには、その外周の表面側において、V字状の断面の溝が複数設けられている。外周スリーブ21cの外周に設けられた複数のV字状断面の溝は、外周スリーブ21cの周方向に沿って、互いに平行に延びるように設けられている。外周スリーブ21cの外周に設けられた複数の溝のそれぞれは、ベルトスリーブ107における複数のゴムベルト部101のそれぞれが嵌め込まれるように構成されている。尚、ベルトスリーブ107における複数のゴムベルト部101のそれぞれは、その内周側の部分において、外周スリーブ21cの外周に設けられた複数の溝のそれぞれに嵌め込まれる。
【0077】
回転軸21aに固定された回転ドラム21bの外周に外周スリーブ21cが装着されて構成された駆動ロール21の外周に対して、ベルトスリーブ107が巻き掛けられる。このとき、ベルトスリーブ107は、複数のゴムベルト部101のそれぞれが、外周スリーブ21cの外周の複数の溝のそれぞれに嵌め込まれた状態で、駆動ロール21の外周に巻き掛けられる。尚、本実施形態では、ベルトスリーブ107は、駆動ロール21の外周の一部に巻き掛けられる。より具体的には、ベルトスリーブ107は、駆動ロール21の外周の約半周に亘って巻き掛けられる。
【0078】
従動ロール22は、回転軸22a、回転ドラム22b、外周スリーブ22c、等を備え、軸周りに(回転軸22a周りに)回転する回転体として構成されている。尚、以下の説明においては、従動ロール22について、回転体22とも称する。
【0079】
回転軸22aは、金属製の円筒状又は円柱状の軸として構成されている。そして、回転軸22aは、一端側が支持ユニット25によって回転自在に支持され、他端側が支持ユニット26によって回転自在に支持されている。
【0080】
回転ドラム22bは、例えば、円筒状の部分或いは円周方向に沿って配置された複数のスリーブ支持部分を有する筒状体或いは放射状体の構造体として設けられている。そして、回転ドラム22bは、回転軸22aとともに回転するように、回転軸22aに対して取り付けられている。例えば、例えば、回転ドラム22bにおける上記の円筒状の部分或いは複数のスリーブ支持部分が、直径方向に延びる複数の支柱部分を介して回転軸22aに対して固定されている。また、回転ドラム22bは、回転軸22aの回転中心軸線と回転ドラム22bの回転中心軸線とが一致するように、回転軸22aに対して取り付けられている。尚、上記の支柱部分は、油圧シリンダ機構等の拡縮自在に作動する機構を有し、上記の円筒状の部分或いは複数のスリーブ支持部分を回転ドラム22bにおける径方向に拡縮自在に支持するように構成されていてもよい。
【0081】
外周スリーブ22cは、ゴム製の円筒形状のスリーブとして設けられ、回転ドラム22bの外周に装着される。外周スリーブ22cの内周の直径は、回転ドラム22bの外周の直径にほぼ対応する寸法に設定されている。回転ドラム22bが回転する際、回転ドラム22bに装着された外周スリーブ22cは、回転ドラム22bとともに同一の回転速度で回転する。また、外周スリーブ22cには、その外周の表面側において、V字状の断面の溝が複数設けられている。外周スリーブ22cの外周に設けられた複数のV字状断面の溝は、外周スリーブ22cの周方向に沿って、互いに平行に延びるように設けられている。外周スリーブ22cの外周に設けられた複数の溝のそれぞれは、ベルトスリーブ107における複数のゴムベルト部101のそれぞれが嵌め込まれるように構成されている。尚、ベルトスリーブ107における複数のゴムベルト部101のそれぞれは、その内周側の部分において、外周スリーブ22cの外周に設けられた複数の溝のそれぞれに嵌め込まれる。
【0082】
回転軸22aに固定された回転ドラム22bの外周に外周スリーブ22cが装着されて構成された従動ロール22の外周に対して、ベルトスリーブ107が巻き掛けられる。このとき、ベルトスリーブ107は、複数のゴムベルト部101のそれぞれが、外周スリーブ22cの外周の複数の溝のそれぞれに嵌め込まれた状態で、従動ロール22の外周に巻き掛けられる。尚、本実施形態では、ベルトスリーブ107は、従動ロール22の外周の一部に巻き掛けられる。より具体的には、ベルトスリーブ107は、従動ロール22の外周の約半周に亘って巻き掛けられる。
【0083】
尚、本実施形態では、ベルトスリーブ107が巻き掛けられる回転体として、回転ドラム(21b、22b)に外周スリーブ(21c、22c)が装着されて構成された回転体(21、22)を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、外周スリーブ(21c、22c)が設けられておらず、ベルトスリーブ107が回転ドラム(21b、22b)の外周に直接に巻き掛けられる形態の回転体が実施されてもよい。この場合、回転ドラム(21b、22b)の外周において、ベルトスリーブ107における複数のゴムベルト部101が嵌め込まれる複数のV字状断面の溝が設けられる。
【0084】
駆動ユニット23は、ベース15上に設置され、駆動ロール21を回転自在に支持するとともに駆動ロール21を回転駆動する機構として構成されている。駆動ユニット23は、ハウジング27、モータ28、ベルト駆動機構29、等を備えて構成されている。
【0085】
ハウジング27は、ベース15上に設置され、モータ28を収容するとともに、駆動ロール21の回転軸21aをその回転軸21aにおける一方の端部側において回転自在に支持する筐体として構成されている。モータ28は、回転軸21aを回転駆動するための駆動トルクを発生させる電動モータとして構成されている。モータ28は、図示が省略された電源から電気エネルギーが供給され、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動し、所定の回転速度で回転する。モータ28は、その出力軸28aの軸方向が回転軸21aの軸方向と平行となるように、ハウジング27に設置されている。
【0086】
ベルト駆動機構29は、モータ28からの駆動トルクを駆動ロール21の回転軸21aに伝達する機構として設けられている。ベルト駆動機構29は、駆動プーリ29a、従動プーリ29b、駆動ベルト29c、連結軸29d、を備えて構成されている。
【0087】
駆動プーリ29aは、モータ28の出力軸28aに固定され、出力軸28aとともに回転するように構成されている。従動プーリ29bは、駆動ロール21の回転軸21aに対して、連結軸29dを介して、連結されている。連結軸29dは、回転軸21aの端部に連結され、回転軸21aとともに同軸心で同期して回転するように構成されている。連結軸29dは、回転軸21aに連結される側の端部と反対側の端部において、従動プーリ29bに固定されている。また、連結軸29dは、回転軸21aとともに、ハウジング27において回転自在に支持されている。駆動ベルト29cは、無端状のベルトとして設けられている。そして、駆動ベルト29cは、駆動プーリ29a及び従動プーリ29bに対して巻き掛けられ、駆動プーリ29aの駆動トルクを従動プーリ29bに伝達するベルトとして構成されている。
【0088】
後述する制御装置14からの制御指令に基づいてモータ28の運転が行われると、出力軸28aとともに駆動プーリ29aが回転する。駆動プーリ29aが回転することで、駆動プーリ29a及び従動プーリ29bに巻き掛けられた駆動ベルト29cの周回動作が行われる。駆動ベルト29cの周回動作が行われると、従動プーリ29bが回転し、従動プーリ29bとともに回転軸21aが回転することになる。そして、回転軸21aとともに、回転ドラム21b及び外周スリーブ21cが回転する。即ち、駆動ロール21が回転する。
【0089】
上述のように、駆動ユニット23は、ハウジング27、モータ28、ベルト駆動機構29を有することで、駆動ロール21を回転自在に支持するとともに駆動ロール21を回転駆動するように構成されている。
【0090】
支持ユニット24は、支持ポスト24a、支持アーム24b、支持シリンダ24c、等を備えて構成されている。支持ポスト24aは、ベース15上に設置された柱状体として構成され、支持アーム24b及び支持シリンダ24cのそれぞれを回転自在に支持している。
【0091】
支持アーム24bは、一方の端部が、支持ポスト24aに回転自在に支持されている。そして、支持アーム24bは、他方の端部が、駆動ロール21の回転軸21aを、駆動ユニット23に支持される側と反対側の端部において、回転自在に支持するように構成されている。支持アーム24bにおける他方の端部には、開閉自在に構成されて、回転軸21aの端部を保持するチャック部24dが設けられている。支持アーム24bの端部のチャック部24dは、開状態においては回転軸21aの端部を受け入れて保持し、閉状態においては回転軸21aの端部を回転自在に保持するように構成されている。
【0092】
支持シリンダ24cは、一方の端部が、支持ポスト24aに回転自在に支持されている。そして、支持シリンダ24cは、他方の端部が、支持アーム24bをその長手方向における中途位置において回転自在に支持するように構成されている。また、支持シリンダ24cは、シリンダとロッドとを有し、圧油が給排されることで作動する油圧シリンダ機構として構成されている。支持シリンダ24cは、図示が省略された油圧源から圧油が供給されることで、図7及び図8に示すように、シリンダに対してロッドが伸長した状態となる。この状態では、支持アーム24bにおけるチャック部24dが設けられた他方の端部が所定の高さ位置に位置した状態が、支持シリンダ24cによって維持される。一方、支持シリンダ24cから圧油が排出されると、ロッドがシリンダに縮退した状態となり、支持アーム24bは、支持ポスト24aに支持された一方の端部を中心として回動する。そして、支持アーム24bにおけるチャック部24dが設けられた他方の端部が下方に変位した状態となる。
【0093】
支持ユニット25は、支持ポスト25aを備えて構成されている。支持ポスト25aは、ベース15上に設置された柱状体として構成されている。そして、支持ポスト25aは、従動ロール22の回転軸22aをその回転軸22aにおける一方の端部側において回転自在に支持するように構成されている。
【0094】
支持ユニット26は、支持ポスト26a、支持アーム26b、支持シリンダ26c、等を備えて構成されている。支持ポスト26aは、ベース15上に設置された柱状体として構成され、支持アーム26b及び支持シリンダ26cのそれぞれを回転自在に支持している。
【0095】
支持アーム26bは、一方の端部が、支持ポスト26aに回転自在に支持されている。そして、支持アーム26bは、他方の端部が、従動ロール22の回転軸22aを、支持ユニット25に支持される側と反対側の端部において、回転自在に支持するように構成されている。支持アーム26bにおける他方の端部には、開閉自在に構成されて、回転軸22aの端部を保持するチャック部26dが設けられている。支持アーム26bの端部のチャック部26dは、開状態においては回転軸22aの端部を受け入れて保持し、閉状態においては回転軸22aの端部を回転自在に保持するように構成されている。
【0096】
支持シリンダ26cは、一方の端部が、支持ポスト26aに回転自在に支持されている。そして、支持シリンダ26cは、他方の端部が、支持アーム26bをその長手方向における中途位置において回転自在に支持するように構成されている。また、支持シリンダ26cは、シリンダとロッドとを有し、圧油が給排されることで作動する油圧シリンダ機構として構成されている。支持シリンダ26cは、図示が省略された油圧源から圧油が供給されることで、図7及び図8に示すように、シリンダに対してロッドが伸長した状態となる。この状態では、支持アーム26bにおけるチャック部26dが設けられた他方の端部が所定の高さ位置に位置した状態が、支持シリンダ26cによって維持される。一方、支持シリンダ26cから圧油が排出されると、ロッドがシリンダに縮退した状態となり、支持アーム26bは、支持ポスト26aに支持された一方の端部を中心として回動する。そして、支持アーム26bにおけるチャック部26dが設けられた他方の端部が下方に変位した状態となる。
【0097】
上述したように、スリーブ走行機構11は、駆動ロール21及び従動ロール22として設けられた回転体(21、22)、駆動ユニット23、支持ユニット(24、25、26)を備えている。これにより、スリーブ走行機構11は、回転体(21、22)のそれぞれの外周の一部にベルトスリーブ107が巻き掛けられた状態で、回転体(21、22)を回転させ、ベルトスリーブ107を周方向に走行させるように構成されている。尚、回転体(21、22)の外周にベルトスリーブ107が巻き掛けられた状態では、回転体(21、22)は、筒状のベルトスリーブ107の内側に配置される。また、回転体(21、22)の外周にベルトスリーブ107が巻き掛けられた状態で、回転体(駆動ロール)21が回転駆動されることで、回転体21の回転とともに、ベルトスリーブ107が周方向に回転しながら回転体(従動ロール)22も回転する。尚、ベルトスリーブ107は、回転体(21、22)の回転とともに、回転体(21、22)の周囲で周回動作を行うことで、周方向に回転する。
【0098】
また、スリーブ走行機構11は、複数の回転体(21、22)を有している。そして、スリーブ走行機構11は、複数の回転体(21、22)のそれぞれの外周の一部にベルトスリーブ107が巻き掛けられた状態で、複数の回転体(21、22)のうちの1つの回転体21を回転駆動し、ベルトスリーブ107を周方向に走行させるように構成されている。また、スリーブ走行機構11は、複数の回転体(21、22)として一対の回転体(21、22)を有している。そして、一対の回転体(21、22)のうちの一方である回転体21が、回転駆動される駆動ロール21として構成されている。更に、一対の回転体(21、22)のうちの他方である回転体22が、駆動ロール21の回転に伴って周方向に走行するベルトスリーブ107の走行とともに回転する従動ロール22として構成されている。
【0099】
[ワイヤー走行機構]
図10は、図7に示す結合ベルト形成装置1の一部を拡大して示す図である。図11は、図8に示す結合ベルト形成装置1の一部を拡大して示す図である。図7乃至図11に示すように、ワイヤー走行機構12は、一対のワイヤー(30a、30b)、ワイヤー保持部ユニット31、ボビンモータ32、ボビン側動力伝達部33、モータ側動力伝達部34、ケース35、等を備えて構成されている。そして、ワイヤー走行機構12は、一対のワイヤー(30a、30b)のそれぞれに張力を付与するとともに、それらの張力を付与した部分を直線方向に沿って互いに平行に走行させる機構として構成されている。即ち、ワイヤー走行機構12は、一対のワイヤー(30a、30b)のそれぞれにおける張力を付与した部分を(ワイヤー30aにおける張力を付与した部分とワイヤー30bにおける張力を付与した部分とを)、直線方向に沿って互いに平行に走行させる機構として構成されている。
【0100】
ワイヤー走行機構12においては、ワイヤー保持部ユニット31の一部、ボビンモータ32、ボビン側動力伝達部33、モータ側動力伝達部34は、ケース35に収納されている。そして、ケース35は、後述する切断機構13に設置されている。これにより、ワイヤー走行機構12は、切断機構13によって移動させられるように構成されている。尚、ケース35においては、スリーブ走行機構11の従動ロール22に対向する側において、開口35aが設けられている。開口35aからは、ワイヤー保持部ユニット31の一部が露出している。
【0101】
一対のワイヤー(30a、30b)のそれぞれは(即ち、ワイヤー30a及びワイヤー30bのそれぞれは)、1本の長尺の連続したワイヤーとして設けられている。例えば、ワイヤー30a及びワイヤー30bのそれぞれは、長さ2000m程度の長尺のワイヤーとして設けられている。また、ワイヤー30a及びワイヤー30bのそれぞれは、例えば、ダイヤモンドワイヤーとして構成されている。より具体的には、ダイヤモンドワイヤーとして構成された各ワイヤー(30a、30b)は、例えば、炭素鋼製の金属線であるピアノ線として構成された芯線を有するとともに、この芯線の表面にダイヤモンド砥粒が電着により固定されたワイヤーとして構成されている。各ワイヤー(30a、30b)の直径寸法は、例えば、120〜320μmに設定され、各ワイヤー(30a、30b)の心線の直径寸法は、例えば、120〜250μmに設定される。
【0102】
ワイヤー保持部ユニット31は、一対のワイヤー(30a、30b)のそれぞれを保持する一対のワイヤー保持部(31a、31b)を備えて構成されている。一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれは、1本の連続したワイヤー(30a又は30b)の両端部側の部分がそれぞれ巻き付けられるとともに同期して回転する一対の回転ボビン((36a、36b)又は(37a、37b))を備えて構成されている。即ち、ワイヤー保持部31aは、1本の連続したワイヤー30aの両端部側の部分がそれぞれ巻き付けられるとともに同期して回転する一対の回転ボビン(36a、36b)を備えて構成されている。そして、ワイヤー保持部31bは、1本の連続したワイヤー30bの両端部側の部分がそれぞれ巻き付けられるとともに同期して回転する一対の回転ボビン(37a、37b)を備えて構成されている。
【0103】
ワイヤー保持部31aの各回転ボビン(36a、36b)は、円盤状の部材として設けられ、ワイヤー30aが巻き付けられる凹み溝が外周の全周に亘って設けられている。回転ボビン36aの外周の直径寸法と回転ボビン36bの外周の直径寸法とは、同一の寸法に設定されている。また、回転ボビン36aに対して、ワイヤー30aの長手方向における一方の端部が固定されている。そして、一方の端部が回転ボビン36aに固定されたワイヤー30aは、その一方の端部側の部分が、十分な長さに亘って、回転ボビン36aの外周に巻き付けられている。また、回転ボビン36bに対して、ワイヤー30aの長手方向における他方の端部が固定されている。そして、他方の端部が回転ボビン36bに固定されたワイヤー30aは、その他方の端部側の部分が、十分な長さに亘って、回転ボビン36bの外周に巻き付けられている。
【0104】
ワイヤー保持部31bの各回転ボビン(37a、37b)は、円盤状の部材として設けられ、ワイヤー30bが巻き付けられる凹み溝が外周の全周に亘って設けられている。回転ボビン37aの外周の直径寸法と回転ボビン37bの外周の直径寸法とは、同一の寸法に設定されている。また、回転ボビン37aに対して、ワイヤー30bの長手方向における一方の端部が固定されている。そして、一方の端部が回転ボビン37aに固定されたワイヤー30bは、その一方の端部側の部分が、十分な長さに亘って、回転ボビン37aの外周に巻き付けられている。また、回転ボビン37bに対して、ワイヤー30bの長手方向における他方の端部が固定されている。そして、他方の端部が回転ボビン37bに固定されたワイヤー30bは、その他方の端部側の部分が、十分な長さに亘って、回転ボビン37bの外周に巻き付けられている。
【0105】
尚、ワイヤー保持部31aの各回転ボビン(36a、36b)と、ワイヤー保持部31bの各回転ボビン(37a、37b)とは、外周の直径寸法が全て同一の寸法に設定されている。即ち、回転ボビン36aの外周の直径寸法と回転ボビン36bの外周の直径寸法と回転ボビン37aの外周の直径寸法と回転ボビン37bの外周の直径寸法とは、同一の寸法に設定されている。
【0106】
ワイヤー保持部31aの回転ボビン36a及びワイヤー保持部31bの回転ボビン37aは、ケース35に対して回転自在に取り付けられた連結軸38に対して取り付けられている。連結軸38は、その軸方向が、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行な方向に延びた状態で、ケース35に対して回転自在に取り付けられている。尚、図11においては、連結軸38におけるケース35に回転自在に支持される部分の図示が省略されている。回転ボビン36a及び回転ボビン37aは、連結軸38に対して、軸方向に並んだ状態で取り付けられている。
【0107】
また、ワイヤー保持部31aの回転ボビン36aは、付勢バネ(図示省略)を介して連結軸38に取り付けられるとともに、連結軸38とともに回転するように連結軸38に取り付けられている。回転ボビン36aと連結軸38との間に設けられた上記の付勢バネは、例えば、コイルバネとして設けられている。そして、その付勢バネは、回転ボビン36aに巻き付けられたワイヤー30aを回転ボビン36bとの間で引っ張り合う方向に向かって、回転ボビン36aを連結軸38に対して軸回り方向に付勢するように、構成されている。尚、回転ボビン36aは、上記の付勢バネによって付勢された状態で、連結軸38に対して相対回転しないように、連結軸38に対して、軸周りの位置が規制された状態で取り付けられている。このため、回転ボビン36aは、回転ボビン36bとの間でワイヤー30aに張力を付与した状態で、連結軸38とともに回転するように構成されている。
【0108】
ワイヤー保持部31bの回転ボビン37aは、付勢バネ(図示省略)を介して連結軸38に取り付けられるとともに、連結軸38とともに回転するように連結軸38に取り付けられている。回転ボビン37aと連結軸38との間に設けられた上記の付勢バネは、例えば、コイルバネとして設けられている。そして、その付勢バネは、回転ボビン37aに巻き付けられたワイヤー30bを回転ボビン37bとの間で引っ張り合う方向に向かって、回転ボビン37aを連結軸38に対して軸回り方向に付勢するように、構成されている。尚、回転ボビン37aは、上記の付勢バネによって付勢された状態で、連結軸38に対して相対回転しないように、連結軸38に対して、軸周りの位置が規制された状態で取り付けられている。このため、回転ボビン37aは、回転ボビン37bとの間でワイヤー30bに張力を付与した状態で、連結軸38とともに回転するように構成されている。
【0109】
ワイヤー保持部31aの回転ボビン36b及びワイヤー保持部31bの回転ボビン37bは、ケース35に対して回転自在に取り付けられた連結軸39に対して取り付けられている。連結軸39は、その軸方向が、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行な方向に延びた状態で、ケース35に対して回転自在に取り付けられている。尚、図11においては、連結軸39におけるケース35に回転自在に支持される部分の図示が省略されている。回転ボビン36b及び回転ボビン37bは、連結軸39に対して、軸方向に並んだ状態で取り付けられている。
【0110】
また、ワイヤー保持部31aの回転ボビン36bは、付勢バネ(図示省略)を介して連結軸39に取り付けられるとともに、連結軸39とともに回転するように連結軸39に取り付けられている。回転ボビン36bと連結軸39との間に設けられた上記の付勢バネは、例えば、コイルバネとして設けられている。そして、その付勢バネは、回転ボビン36bに巻き付けられたワイヤー30aを回転ボビン36aとの間で引っ張り合う方向に向かって、回転ボビン36bを連結軸39に対して軸回り方向に付勢するように、構成されている。尚、回転ボビン36bは、上記の付勢バネによって付勢された状態で、連結軸39に対して相対回転しないように、連結軸39に対して、軸周りの位置が規制された状態で取り付けられている。このため、回転ボビン36bは、回転ボビン36aとの間でワイヤー30aに張力を付与した状態で、連結軸39とともに回転するように構成されている。
【0111】
ワイヤー保持部31bの回転ボビン37bは、付勢バネ(図示省略)を介して連結軸39に取り付けられるとともに、連結軸39とともに回転するように連結軸39に取り付けられている。回転ボビン37bと連結軸39との間に設けられた上記の付勢バネは、例えば、コイルバネとして設けられている。そして、その付勢バネは、回転ボビン37bに巻き付けられたワイヤー30bを回転ボビン37aとの間で引っ張り合う方向に向かって、回転ボビン37bを連結軸39に対して軸回り方向に付勢するように、構成されている。尚、回転ボビン37bは、上記の付勢バネによって付勢された状態で、連結軸39に対して相対回転しないように、連結軸39に対して、軸周りの位置が規制された状態で取り付けられている。このため、回転ボビン37bは、回転ボビン37aとの間でワイヤー30bに張力を付与した状態で、連結軸39とともに回転するように構成されている。
【0112】
また、ワイヤー保持部31aの回転ボビン36a及び回転ボビン36bは、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行に延びた連結軸38及び連結軸39に対して、直交する方向に沿って並んで配置されている。同様に、ワイヤー保持部31bの回転ボビン37a及び回転ボビン37bは、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行に延びた連結軸38及び連結軸39に対して、直交する方向に沿って並んで配置されている。
【0113】
また、ワイヤー保持部31aの回転ボビン36aにおけるワイヤー30aが巻き付けられている位置と、ワイヤー保持部31bの回転ボビン37aにおけるワイヤー30bが巻き付けられている位置との間の距離の寸法は、ベルトスリーブ107における隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法に適宜対応した寸法に設定されている。同様に、ワイヤー保持部31aの回転ボビン36bにおけるワイヤー30aが巻き付けられている位置と、ワイヤー保持部31bの回転ボビン37bにおけるワイヤー30bが巻き付けられている位置との間の距離の寸法は、ベルトスリーブ107における隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法に適宜対応した寸法に設定されている。尚、例えば、回転ボビン(36a、36b)におけるワイヤー30aが巻き付けられている位置と、回転ボビン(37a、37b)におけるワイヤー30bが巻き付けられている位置との間の距離の寸法は、ベルトスリーブ107における隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法に対して所定の比率で対応した寸法に設定されている。
【0114】
ボビンモータ32は、動力伝達部33及び動力伝達部34を介してワイヤー保持部ユニット31を駆動する駆動トルクを発生する電動モータとして構成されている。そして、ボビンモータ32は、図示が省略された電源から電気エネルギーが供給され、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動して回転するように構成されている。また、ボビンモータ32は、制御装置14からの制御指令に基づいて正逆方向の両方向に回転可能に構成されている。
【0115】
動力伝達部33は、ボビンモータ32から動力伝達部34を介して伝達された駆動トルクをワイヤー保持部ユニット31に伝達する機構として設けられている。動力伝達部33は、駆動プーリ33a、従動プーリ33b、駆動ベルト33cを有する機構として構成されている。
【0116】
駆動プーリ33aは、ケース35に回転自在に取り付けられた連結軸39に対してその中途部分において固定されている。駆動プーリ33aは、連結軸39を介して回転ボビン37b及び回転ボビン36bと連結されており、連結軸39と回転ボビン37bと回転ボビン36bとともに回転するように構成されている。駆動プーリ33aが固定された連結軸39には、ボビンモータ32から動力伝達部34を介して伝達された駆動トルクが伝達される。従動プーリ33bは、ケース35に回転自在に取り付けられた連結軸38に対してその中途部分において固定されている。従動プーリ33bは、連結軸38を介して回転ボビン37a及び回転ボビン36aと連結されており、連結軸38と回転ボビン37aと回転ボビン36aとともに回転するように構成されている。駆動ベルト33cは、駆動プーリ33a及び従動プーリ33bに対して巻き掛けられ、駆動プーリ33aに伝達された駆動トルクを更に従動プーリ33bに伝達するベルトとして構成されている。
【0117】
動力伝達部34は、ボビンモータ32から伝達された駆動トルクを動力伝達部33に伝達する機構として設けられている。動力伝達部34は、駆動プーリ34a、従動プーリ34b、駆動ベルト34cを有する機構として構成されている。
【0118】
駆動プーリ34aは、ボビンモータ32の出力軸32aに固定され、出力軸32aとともに回転するように構成されている。従動プーリ34bは、ケース35に回転自在に取り付けられた連結軸39に対してその中途部分において固定されている。従動プーリ34bは、連結軸39を介して、駆動プーリ33aと回転ボビン37bと回転ボビン36bと連結されている。これにより、従動プーリ34bは、連結軸39、駆動プーリ33a、回転ボビン37b、及び回転ボビン36bとともに回転するように構成されている。駆動ベルト34cは、駆動プーリ34a及び従動プーリ34bに対して巻き掛けられ、駆動プーリ34aに入力された駆動トルクを従動プーリ34bに伝達するベルトとして構成されている。
【0119】
ワイヤー走行機構12においては、制御装置14からの制御指令に基づいてボビンモータ32の運転が行われると、出力軸32aとともに駆動プーリ34aが回転する。駆動プーリ34aが回転することで、駆動プーリ34a及び従動プーリ34bに巻き掛けられた駆動ベルト34cの周回動作が行われる。駆動ベルト34cの周回動作が行われると、従動プーリ34bが回転し、従動プーリ34bとともに連結軸39と駆動プーリ33aと回転ボビン37bと回転ボビン36bとが回転する。そして、駆動プーリ33aが回転することで、駆動プーリ33a及び従動プーリ33bに巻き掛けられた駆動ベルト33cの周回動作が行われる。駆動ベルト33cの周回動作が行われると、従動プーリ33bが回転し、従動プーリ33bとともに連結軸38と回転ボビン37aと回転ボビン36aとが回転する。
【0120】
上記により、ワイヤー走行機構12においては、ボビンモータ32からの駆動トルクによって、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおいて、一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))が、同方向に同期した状態で回転駆動される。
【0121】
そして、ワイヤー保持部31aにおいては、一対の回転ボビン(36a、36b)が、同方向に同期した状態で回転することで、一対の回転ボビン(36a、36b)の一方からワイヤー30aが払い出されるとともに、一対の回転ボビン(36a、36b)の他方にてワイヤー30aが巻き取られることになる。更に、一対の回転ボビン(36a、36b)の一方から払い出されたワイヤー30aが他方で巻き取られることで、一対の回転ボビン(36a、36b)の間において、ワイヤー30aが直線方向に沿って走行することになる。尚、一対の回転ボビン(36a、36b)のそれぞれは、一部がケース35の開口35aから外部に露出している。そして、ワイヤー30aにおいて、一対の回転ボビン(36a、36b)の間で直線方向に沿って走行する部分は、ケース35の外側に配置されている。
【0122】
同様に、ワイヤー保持部31bにおいては、一対の回転ボビン(37a、37b)が、同方向に同期した状態で回転することで、一対の回転ボビン(37a、37b)の一方からワイヤー30bが払い出されるとともに、一対の回転ボビン(37a、37b)の他方にてワイヤー30bが巻き取られることになる。更に、一対の回転ボビン(37a、37b)の一方から払い出されたワイヤー30bが他方で巻き取られることで、一対の回転ボビン(37a、37b)の間において、ワイヤー30bが直線方向に沿って走行することになる。尚、一対の回転ボビン(37a、37b)のそれぞれは、一部がケース35の開口35aから外部に露出している。そして、ワイヤー30bにおいて、一対の回転ボビン(37a、37b)の間で直線方向に沿って走行する部分は、ケース35の外側に配置されている。
【0123】
また、ワイヤー保持部31aにおいて、一対の回転ボビン(36a、36b)が同方向に同期した状態で回転駆動されてワイヤー30aが直線方向に沿って走行する際には、一対の回転ボビン(36a、36b)の間でワイヤー30aに張力が付与された状態が維持されている。即ち、ワイヤー30aが直線方向に沿って走行する際には、回転ボビン36aと連結軸38との間に設けられた前述の付勢バネと、回転ボビン36bと連結軸39との間に設けられた前述の付勢バネとによって、一対の回転ボビン(36a、36b)の間でワイヤー30aに張力が付与された状態が維持されている。
【0124】
同様に、ワイヤー保持部31bにおいて、一対の回転ボビン(37a、37b)が同方向に同期した状態で回転駆動されてワイヤー30bが直線方向に沿って走行する際には、一対の回転ボビン(37a、37b)の間でワイヤー30bに張力が付与された状態が維持されている。即ち、ワイヤー30bが直線方向に沿って走行する際には、回転ボビン37aと連結軸38との間に設けられた前述の付勢バネと、回転ボビン37bと連結軸39との間に設けられた前述の付勢バネとによって、一対の回転ボビン(37a、37b)の間でワイヤー30bに張力が付与された状態が維持されている。
【0125】
上記のように、ワイヤー走行機構12は、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおいて、1本の連続したワイヤー(30a又は30b)の両端部側の部分がそれぞれ巻き付けられるとともに同期して回転する一対の回転ボビン((36a、36b)又は(37a、37b))を有している。そして、ワイヤー走行機構12は、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおいて、一対の回転ボビン((36a、36b)又は(37a、37b))の間でワイヤー(30a又は30b)に張力を付与した状態で、一対の回転ボビン((36a、36b)又は(37a、37b))のうちの一方からワイヤー(30a又は30b)を払い出すとともに一対の回転ボビン((36a、36b)又は(37a、37b))の他方にてワイヤー(30a又は30b)を巻き取ることで、一対の回転ボビン((36a、36b)又は(37a、37b))の間において、ワイヤー(30a又は30b)における張力を付与した部分を直線方向に沿って走行させるように構成されている。
【0126】
また、ワイヤー走行機構12において、ボビンモータ32は、制御装置14からの制御指令に基づいて正逆方向の両方向に回転可能に構成されている。そして、一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))のそれぞれは、ボビンモータ32からの駆動トルクによって、同方向に同期した状態で回転駆動される。このため、ワイヤー走行機構12は、ボビンモータ32の回転方向を正逆方向の両方向で交互に繰り返すことで、一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))のそれぞれが同期して回転する回転方向を交互に逆転させるように構成されている。そして、ワイヤー走行機構12は、一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))が同期して回転する回転方向を交互に逆転させながら回転を繰り返すことで、ワイヤー(30a、30b)における張力を付与した部分を直線方向に沿って往復させながら走行させるように構成されている。尚、図10においては、ワイヤー(30a、30b)における張力が付与された部分が直線方向に沿って往復するように走行する方向と平行な方向が、両端矢印Cで示されている。尚、ボビンモータ32の回転数(r/min)は、例えば、ワイヤー(30a、30b)における張力を付与した部分を直線方向に沿って最高速度1500m/min程度の高速で走行させるような回転数(r/min)に設定される。
【0127】
[切断機構]
図7乃至図11に示すように、切断機構13は、幅方向移動機構40、進退移動機構41、基台部42、等を備えて構成されている。そして、切断機構13は、走行するベルトスリーブ107の補強布102に対して、隣り合うゴムベルト部101の間において、走行する一対のワイヤー(30a、30b)を押し付けることで、ベルトスリーブ107を周方向に切断し、結合Vベルト100をベルトスリーブ107から切り出して形成する機構として構成されている。
【0128】
基台部42は、ベース15上に設置され、幅方向移動機構40、進退移動機構41、及びワイヤー走行機構12を支持する台座部として設けられている。幅方向移動機構40、進退移動機構41、及びワイヤー走行機構12は、基台部42の上面に設置されている。
【0129】
幅方向移動機構40は、進退移動機構41及びワイヤー走行機構12を、基台部42に対して、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107の幅方向と平行な方向に沿って移動させる機構として、構成されている。尚、ベルトスリーブ107の幅方向は、ベルトスリーブ107が筒状に延びる方向であり、図8及び図9において、両端矢印Bで示されている。また、ベルトスリーブ107が回転体(21、22)の外周に巻き掛けられた状態においては、ベルトスリーブ107の幅方向は、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行な方向となる。
【0130】
幅方向移動機構40は、一対のレール(43a、43b)、ボールネジ機構44、移動プレート45、等を備えて構成されている。一対のレール(43a、43b)は、移動プレート45の移動方向をガイドするレールとして設けられている。一対のレール(43a、43b)は、基台部42の上面に固定されて設置されている。そして、一対のレール(43a、43b)は、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行に延びるように、即ち、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107の幅方向と平行に延びるように設置されている。
【0131】
ボールネジ機構44は、ネジ軸44a、ボールネジモータ44b、軸受44c、ナット部44d、図示が省略された複数のボール、等を備えて構成されている。
【0132】
ネジ軸44aは、一方の端部がボールネジモータ44bによって支持され、他方の端部が軸受44cによって回転自在に支持されている。そして、基台部42上において、ネジ軸44aは、その軸方向が一対のレール(43a、43b)と平行に延びるように、配置されている。ボールネジモータ44bは、ネジ軸44aをその軸心を中心として回転駆動する電動モータとして構成されている。そして、ボールネジモータ44bは、図示が省略された電源から電気エネルギーが供給され、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動し、所定の回数分だけ回転するように、構成されている。
【0133】
ナット部44dは、ネジ軸44aが貫通しており、ネジ軸44aが回転することでネジ軸44aの軸方向に沿ってネジ軸44aに対して相対移動するブロック状の要素として設けられている。ナット部44dの内部においては、ネジ軸44aのネジ溝に対向するネジ溝が形成されている。そして、ナット部44dのネジ溝とネジ軸44aのネジ溝との間には、両方の溝に対して転動自在に嵌まり込む複数のボールが配置されている。ネジ軸44aが軸心回りに回転することで、ナット部44d及びネジ軸44aの間で複数のボールが循環し、ナット部44dが、ネジ軸44aに対して軸方向に相対移動する。
【0134】
また、ナット部44dは、その上面側において、移動プレート45の下面に対して固定されている。また、ナット部44dは、一対のレール(43a、43b)の間に嵌りこむように配置されている。そして、ナット部44dは、一対のレール(43a、43b)に対して摺動自在の状態で配置されている。このため、ネジ軸44aが回転すると、ナット部44dが、一対のレール(43a、43b)によってガイドされながら、ネジ軸44aの軸方向に沿って移動する。
【0135】
移動プレート45は、平板状の部材として設けられ、その下面側においてナット部44dに固定されている。更に、移動プレート45は、その下面側において、一対のレール(43a、43b)の上面に対して、摺動自在の状態で、支持されている。そして、移動プレート45の上面には、進退移動機構41が設置されている。
【0136】
進退移動機構41は、ワイヤー走行機構12を、移動プレート45に対して、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107に対して進出及び退避させる方向に沿って移動させる機構として、構成されている。進退移動機構41は、一対のレール(46a、46b)、移動テーブル47、ボールネジ機構48、等を備えて構成されている。
【0137】
一対のレール(46a、46b)は、移動テーブル47の移動方向をガイドするレールとして設けられている。一対のレール(46a、46b)は、移動プレート45の上面に固定されて設置されている。そして、一対のレール(46a、46b)は、移動プレート45上において、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107に向かって接近する方向に沿って延びるように、設置されている。より具体的には、一対のレール(46a、46b)は、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107に向かって接近する方向であって、且つ、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行な方向に対して直交する方向に沿って、延びるように、移動プレート45上で設置されている。
【0138】
移動テーブル47は、移動プレート45の上面に対してスライド移動自在に配置されるとともに、ワイヤー走行機構12が設置される平坦な上面が設けられた部材として構成されている。ワイヤ走行機構12は、ケース35が移動テーブル47の上面に固定されることで、移動テーブル47に設置されている。また、移動テーブル47の下面側には、一対のレール(46a、46b)に対してスライド移動自在に嵌まり込む一対の溝が設けられている。また、移動テーブル47の下面側には、ボールネジ機構48のナット部48dが固定されて取り付けられる凹部(図示省略)が設けられている。
【0139】
ボールネジ機構48は、ネジ軸48a、ボールネジモータ48b、軸受48c、ナット部48d、図示が省略された複数のボール、等を備えて構成されている。
【0140】
ネジ軸48aは、一方の端部がボールネジモータ48bによって支持され、他方の端部が軸受48cによって回転自在に支持されている。そして、移動プレート45上において、ネジ軸48aは、その軸方向が一対のレール(46a、46b)と平行に延びるように、配置されている。ボールネジモータ48bは、ネジ軸48aをその軸心を中心として回転駆動する電動モータとして構成されている。そして、ボールネジモータ48bは、図示が省略された電源から電気エネルギーが供給され、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動し、所定の回数分だけ回転するように、構成されている。
【0141】
ナット部48dは、ネジ軸48aが貫通しており、ネジ軸48aが回転することでネジ軸48aの軸方向に沿ってネジ軸48aに対して相対移動するブロック状の要素として設けられている。ナット部48dの内部においては、ネジ軸48aのネジ溝に対向するネジ溝が形成されている。そして、ナット部48dのネジ溝とネジ軸48aのネジ溝との間には、両方の溝に対して転動自在に嵌まり込む複数のボールが配置されている。ネジ軸48aが軸心回りに回転することで、ナット部48d及びネジ軸48aの間で複数のボールが循環し、ナット部48dが、ネジ軸48aに対して軸方向に相対移動する。
【0142】
また、ナット部48dは、移動テーブル47に固定されている。より具体的には、ナット部48dは、その上面側において、移動テーブル47に対して、移動テーブル47の下面側の凹部において、固定されている。また、ナット部48dが固定された移動テーブル47は、その下面側の一対の溝において、一対のレール(46a、46b)に対してスライド移動自在に嵌まり込んだ状態で、移動プレート45の上面に対してスライド移動自在に配置されている。このため、ネジ軸48aが回転すると、ナット部48d及び移動テーブル47が、一対のレール(46a、46b)によってガイドされながら、ネジ軸48aの軸方向に沿って移動する。
【0143】
進退移動機構41は、ボールネジ機構48が作動してナット部48dが回転体22に接近する方向に移動することで、移動テーブル47が一対のレール(46a、46b)に沿って、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107に向かって進出する方向に移動するように、構成されている。また、進退移動機構41は、ボールネジ機構48が作動してナット部48dが回転体22から離れる方向に移動することで、移動テーブル47が一対のレール(46a、46b)に沿って、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107から退避する方向に移動するように、構成されている。
【0144】
図12は、結合ベルト形成装置1の正面図であって、結合ベルト形成装置1の作動を説明するための図である。図13は、結合ベルト形成装置1の平面図であって、結合ベルト形成装置1の作動を説明するための図である。図14及び図15は、結合ベルト形成装置1の作動を説明するための図であって、ワイヤー保持部ユニット31及びその近傍を模式的に示す図である。尚、図14は、結合ベルト形成装置1の正面側から見たワイヤー保持部ユニット31及びその近傍の模式図である。図15は、結合ベルト形成装置1の上面側から見たワイヤー保持部ユニット31及びその近傍の模式図である。
【0145】
結合ベルト形成装置1の切断機構13は、上述した幅方向移動機構40及び進退移動機構41を備え、後述する制御装置14からの制御指令に基づいて作動する。また、切断機構13が作動する際には、制御装置14からの制御指令に基づいて、スリーブ走行機構11及びワイヤー走行機構12も作動する。そして、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、及び切断機構13が作動することで、ベルトスリーブ107が周方向に切断され、結合Vベルト100が形成される(図13及び図15を参照)。
【0146】
切断機構13の作動の際には、まず、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ44bが所定の回数分だけ回転し、幅方向移動機構40が作動する。これにより、ベルトスリーブ107から切り出される結合Vベルト100の幅方向の寸法に対応した位置でベルトスリーブ107の切断が行われるように、ベルトスリーブ107の幅方向と平行な方向における移動プレート45の位置の位置決めが行われる。即ち、ベルトスリーブ107から切り出される結合Vベルト100の幅方向の寸法に対応した位置でベルトスリーブ107の切断が行われるように、進退移動機構41及びワイヤー走行機構12の位置の位置決めが行われる。
【0147】
尚、上記の移動プレート45の位置決めの際には、ワイヤー保持部ユニット31における一対のワイヤー(30a、30b)の中間位置が、ベルトスリーブ107から切り出される結合Vベルト100の幅方向の寸法に対応した位置であってベルトスリーブ107における隣り合うゴムベルト部101の間の中間位置に対応するように、位置決めが行われる。
【0148】
上記のように進退移動機構41及びワイヤー走行機構12の位置の位置決めが行われると、次いで、制御装置14からの制御指令に基づいて、モータ28の運転が開始されるとともに、ボビンモータ32の運転も開始される。これにより、スリーブ走行機構11の作動が開始され、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107の周方向の走行動作が開始される。そして、ワイヤー走行機構12の作動も開始され、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間において、ワイヤー(30a、30b)に張力が付与された状態で、ワイヤー(30a、30b)における張力が付与された部分が直線方向に沿って走行する動作が開始される。
【0149】
上記のようにスリーブ走行機構11及びワイヤー走行機構12の作動が開始されると、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ48bが所定の回数分だけ回転し、移動テーブル47が回転体22に接近する方向に移動するように、進退移動機構41が作動する。これにより、ワイヤー走行機構12が、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ107に向かって進出する。そして、ワイヤー走行機構12の進出に伴い、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間で走行するワイヤー(30a、30b)は、ベルトスリーブ107の補強布102を厚み方向に切断する位置まで、ベルトスリーブ107に向かって進出する。
【0150】
上記のように、ワイヤー走行機構12がベルトスリーブ107に向かって進出することで、スリーブ走行機構11によって駆動されて周方向に走行するベルトスリーブ107の補強布102に対して、隣り合うゴムベルト部101の間において、ワイヤー走行機構12にて直線方向に沿って互いに平行に走行する一対のワイヤー(30a、30b)が押し付けられることになる。そして、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間で走行する一対のワイヤー(30a、30b)が補強布102を切断する位置まで進出することで、ベルトスリーブ107が一対のワイヤー(30a、30b)によって周方向に切断される。これにより、ベルトスリーブ107の補強布102が、隣り合うゴムベルト部101の間において、周方向に切断され、ベルトスリーブ107から結合Vベルト100が切り出されて形成される。
【0151】
図13及び図15においては、一対のワイヤー(30a、30b)によって一対の切断ライン(107a、107b)にてベルトスリーブ107が切断され、ベルトスリーブ107から結合Vベルト100が切断されて形成された状態が図示されている。尚、一対のワイヤー(30a、30b)によってベルトスリーブ107が切断される際、ベルトスリーブ107は、ワイヤー30aによって切断ライン107aにて切断され、ワイヤー30bによって切断ライン107bにて切断される。
【0152】
上記のように、結合ベルト形成装置1は、切断機構13が、スリーブ走行機構11によって駆動されて周方向に走行するベルトスリーブ107の補強布102に対して、隣り合うゴムベルト部101の間において、ワイヤー走行機構12にて直線方向に沿って平行に走行する一対のワイヤー(30a、30b)を押し付けることで、ベルトスリーブ107を周方向に切断し、結合Vベルト100を形成するように構成されている。
【0153】
尚、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の回転軸である連結軸(38、39)は、その軸方向が、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行な方向に延びた状態で、ケース35に対して回転自在に取り付けられている。そして、進退移動機構41は、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行な方向に対して直交する方向に沿ってワイヤー走行機構12を移動させ、一対のワイヤー(30a、30b)をベルトスリーブ107に押し付ける。このため、結合ベルト形成装置1は、切断機構13が、回転体22の外周に沿って走行するベルトスリーブ107に対して、回転体22の外周の接線方向と平行な方向に沿って走行する一対のワイヤー(30a、30b)を押し付けるように構成されている。
【0154】
尚、前述のように、回転ボビン(36a、36b)におけるワイヤー30aが巻き付けられている位置と、回転ボビン(37a、37b)におけるワイヤー30bが巻き付けられている位置との間の距離の寸法は、ベルトスリーブ107における隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法に対して所定の比率で対応した寸法に設定されている。このため、ワイヤー保持部31における一対のワイヤー(30a、30b)の間の距離の寸法は、ベルトスリーブ107における隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法に対して所定の比率で対応した寸法に設定されている。
【0155】
図16は、ベルトスリーブ107の一部を示す断面図であって、筒状のベルトスリーブ107における軸方向と平行な断面の一部を示す図である。図16に示すように、ベルトスリーブ107においては、複数のゴムベルト部101は、ゴムベルト部101同士が寸法dの間隔を介して隣り合った状態で、補強布102で連結されている。これに対し、ワイヤー保持部ユニット31における一対のワイヤー(30a、30b)の間の距離の寸法D(寸法Dの符号の図示は省略)は、ベルトスリーブ107における隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法dに対して所定の比率βで対応した寸法に設定されている。このため、D=β×dの関係式が成り立つことになる。一対のワイヤー(30a、30b)によるベルトスリーブ107の切断の際の切断位置は、ワイヤー(30a、30b)の径寸法、ベルトスリーブ107の変形、等の影響を受けることになる。これにより、一対のワイヤー(30a、30b)の間の距離の寸法Dは、隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法dよりも僅かに小さくなるように設定される。このため、所定の比率βは、例えば、0.85〜0.95の範囲の数値として設定される。
【0156】
尚、図16においては、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、及び切断機構13が作動してベルトスリーブ107から結合Vベルト100が切り出される際に一対のワイヤー(30a、30b)によってベルトスリーブ107が切断される一対の切断ライン(107a、107b)が、破線で示されている。一対の切断ライン(107a、107b)は、ベルトスリーブ107から切り出される結合Vベルト100の幅方向の寸法に対応した位置であって隣り合うゴムベルト部101の外周側の縁の位置に対応した位置に設定されている。
【0157】
上記の所定の比率βは、寸法D(D=β×d)の距離を隔てて平行に配置された一対のワイヤー(30a、30b)が、ベルトスリーブ107の補強布102を隣り合うゴムベルト部101の間において一対の切断ライン(107a、107b)で切断するように、適宜設定される。上記の所定の比率βが適宜設定され、一対のワイヤー(30a、30b)の間の距離の寸法Dが、隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法dに適宜対応した寸法に設定されることで、ベルトスリーブ107は、一対のワイヤー(30a、30b)によって一対の切断ライン(107a、107b)で切断されることになる。これにより、一対のワイヤー(30a、30b)によるベルトスリーブ107の切断の際に、隣り合うゴムベルト部101の間の補強布102の部分が切除されることになる。
【0158】
図17は、結合Vベルト100の一部を示す断面図であって、環状の結合Vベルト100の幅方向と平行な断面の一部を示す図である。ベルトスリーブ107が一対のワイヤー(30a、30b)によって一対の切断ライン(107a、107b)で切断されると、隣り合うゴムベルト部101の間の補強布102の部分が切除される。これにより、結合Vベルト100の幅方向の両側の縁部分において、はみ出し部の発生が抑制されることになる。即ち、結合Vベルト100の幅方向の両側の縁部分において、ゴムベルト部101から幅方向の外側にはみ出した補強布102の部分(はみ出し部)の発生が抑制されることになる。
【0159】
[制御装置]
図8図11、及び図13に示す制御装置14は、結合ベルト形成装置1において、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13の作動を制御する制御部として設けられている。前述の通り、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13は、制御装置14からの制御指令に基づいて作動する。
【0160】
制御装置14は、CPU等のプロセッサ、メモリ、ユーザによって操作される操作パネル又は操作盤等の操作部、インターフェース回路、等を備えて構成されている。制御装置14のメモリには、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13の作動を制御する制御指令を作成するためのプログラムが記憶されている。ユーザによって操作部が操作されることで、メモリから上記のプログラムがプロセッサによって読み出されて実行される。これにより、上記の制御指令が作成され、その制御指令に基づいて、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13が作動する。
【0161】
制御装置14からの制御指令に基づいて、モータ28が回転し、駆動トルクがベルト駆動機構29を介して駆動ロール21に伝達される。そして、駆動ロール21の回転に伴って、従動ロール22の回転動作及びベルトスリーブ107の周回動作が行われる。これにより、駆動ロール21及び従動ロール22に巻き掛けられたベルトスリーブ107が周方向に走行する。また、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ44bが所定の回数分だけ回転して移動プレート45が基台部26上で所定量移動する。
【0162】
また、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボビンモータ32が回転し、駆動トルクが動力伝達部33及び動力伝達部34を介して一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))に伝達される。これにより、一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間において、ワイヤー(30a、30b)における張力が付与された部分が直線方向に沿って走行する。更に、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ48bが所定の回数分だけ回転して移動テーブル47が移動プレート45上で所定量移動する。これにより、一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間で走行するワイヤー(30a、30b)が、周方向に走行するベルトスリーブ107に向かって進出し、ベルトスリーブ107が周方向に切断され、結合Vベルト100が形成される。
【0163】
尚、ベルトスリーブ107の切断の際におけるボビンモータ32の回転方向は、制御装置14からの制御指令に基づいて、適宜、所定の周期で、正逆方向の両方向で交互に繰り返すように、制御される。これにより、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))は、同期して回転する回転方向を交互に逆転させながら回転を繰り返してワイヤー(30a、30b)における張力を付与した部分を直線方向に沿って往復させながら走行させるように、回転動作が制御される。
【0164】
尚、本実施形態では、制御装置14からの制御指令に基づいて、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13が作動する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。結合ベルト形成装置1において、制御装置14が備えられておらず、ユーザによる操作に基づいて、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13が作動する形態が実施されてもよい。
【0165】
[結合ベルト形成方法]
次に、本発明の一実施の形態に係る結合ベルト形成方法について説明する。図18は、本発明の一実施の形態に係る結合ベルト形成方法を示すチャート図である。図18に示す本実施形態の結合ベルト形成方法は、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部101が並列に並んだ状態で外周側が補強布102で連結されている筒状のベルトスリーブ107を周方向に切断し、複数のゴムベルト部101が結合した状態の結合Vベルト100を切り出して形成するための結合ベルト形成方法として構成されている。
【0166】
本実施形態の結合ベルト形成方法は、本実施形態に係る結合ベルト形成装置1が作動することで実施される。そして、本実施形態の結合ベルト形成方法は、図18に示すように、ベルトスリーブ巻き掛け工程S201、切断工程S202、結合ベルト取り外し工程S204を備えて構成されている。ベルトスリーブ巻き掛け工程S201が実施され、次いで、切断工程S202が複数回実施され、最後に結合ベルト取り外し工程S204が実施される。これらの工程が終了することで、1つのベルトスリーブ107から複数の結合Vベルト100が形成されることになる。
【0167】
ベルトスリーブ巻き掛け工程S201は、回転体(21、22)の外周にベルトスリーブ107が巻き掛けられる工程として、構成されている。
【0168】
ベルトスリーブ巻き掛け工程S201においては、例えば、駆動ユニット23及び支持ユニット(24、25、26)によって回転体(21、22)が支持されていないオフライン状態において、回転体(21、22)の外周にベルトスリーブ107が巻き掛けられる。そして、外周にベルトスリーブ107が巻き掛けられた回転体(21、22)が、駆動ユニット23及び支持ユニット(24、25、26)に支持されるように、設置される。
【0169】
或いは、ベルトスリーブ巻き掛け工程S201においては、回転体(21、22)の支持ユニット(24、26)による支持が開放され、回転体(21、22)が駆動ユニット23及び支持ユニット25によってそれぞれ片持ち状態で支持された状態で、回転体(21、22)の外周にベルトスリーブ107が巻き掛けられる。そして、回転体(21、22)の外周にベルトスリーブ107が巻き掛けられた後、回転体(21、22)の支持ユニット(24、26)による支持が行われる。
【0170】
切断工程S202は、スリーブ走行工程S205とワイヤー走行工程S206とを含んで構成されている。スリーブ走行工程S205とワイヤー走行工程S206とは、同時に実施される。そして、スリーブ走行工程S205とワイヤー走行工程S206とが同時に実施されている状態で、切断機構13が作動することで、ベルトスリーブ107が周方向に切断され、環状の結合Vベルト100がベルトスリーブ107から切り出されて形成される。
【0171】
スリーブ走行工程S205は、制御装置14からの制御指令に基づいて、スリーブ走行機構11が作動することで、実施される。具体的には、スリーブ走行工程S205においては、制御装置14からの制御指令に基づいて、モータ28が回転し、駆動トルクがベルト駆動機構29を介して駆動ロール21に伝達される。そして、駆動ロール21の回転に伴って、従動ロール22の回転動作及びベルトスリーブ107の周回動作が行われる。これにより、駆動ロール21及び従動ロール22に巻き掛けられたベルトスリーブ107が周方向に走行する。
【0172】
上記のように、スリーブ走行工程S205は、軸回りに回転する回転体(21、22)の外周の少なくとも一部にベルトスリーブ107が巻き掛けられた状態で、回転体(21、22)を回転させ、ベルトスリーブ107を周方向に走行させる工程として構成されている。
【0173】
ワイヤー走行工程S206は、制御装置14からの制御指令に基づいて、ワイヤー走行機構12が作動することで、実施される。具体的には、ワイヤー走行工程S206においては、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボビンモータ32が回転し、駆動トルクが動力伝達部33及び動力伝達部34を介して一対のワイヤ保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))に伝達される。これにより、一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間において、ワイヤー(30a、30b)における張力が付与された部分が直線方向に沿って走行する。
【0174】
上記のように、ワイヤー走行工程S206は、一対のワイヤー(30a、30b)のそれぞれに張力を付与し、それらの張力を付与した部分を直線方向に沿って互いに平行に走行させる工程として構成されている。
【0175】
また、切断工程S202においては、スリーブ走行工程S205とワイヤー走行工程S206とが同時に実施されている状態で、更に、制御装置14からの制御指令に基づいて、切断機構13が作動する。具体的には、まず、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ44bが所定の回数分だけ回転して移動プレート45が基台部26上で所定量移動する。更に、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ48bが所定の回数分だけ回転して移動テーブル47が移動プレート45上で所定量移動する。これにより、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間で走行するワイヤー(30a、30b)が、周方向に走行するベルトスリーブ107に向かって進出する。そして、ベルトスリーブ107の補強布102に対して、隣り合うゴムベルト部101の間において、一対のワイヤー(30a、30b)が押し付けられる。これにより、ベルトスリーブ107が周方向に切断され、結合Vベルト100がベルトスリーブ107から切り出されて形成される。
【0176】
上記のように、切断工程S202は、走行するベルトスリーブ107の補強布102に対して、隣り合うゴムベルト部101の間において、走行する一対のワイヤー(30a、30b)が押し付けられることで、ベルトスリーブ107が周方向に切断され、結合Vベルト100が形成される工程として構成されている。
【0177】
ベルトスリーブ107が全周に亘って周方向に切断され、結合Vベルト100が形成されると、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ48bが所定の回数分だけ先の回転方向とは逆方向に回転する。これにより、移動テーブル47が移動プレート45上で回転体22から離間する方向に所定量移動する。そして、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間で走行するワイヤー(30a、30b)が、周方向に走行するベルトスリーブ107から退避する方向に移動する。これにより、切断工程S202が一旦終了する。
【0178】
切断工程S202が一旦終了すると、制御装置14において、ベルトスリーブ107を全幅に亘って切断する処理が終了したか否かが判断される(工程S203)。即ち、工程S203においては、ベルトスリーブ107が周方向に切断されて結合Vベルト100が形成される処理が、ベルトスリーブ107の幅方向(図8及び図9で両端矢印Bで示す方向)における全長に亘って所定回数行われ、ベルトスリーブ107の全体が複数の結合Vベルト100に切断されたか否かが、判断される。尚、制御装置14は、例えば、予め入力されているベルトスリーブ107の切断前の状態の幅方向の寸法と、ボールネジモータ44bの回転量の積算値とに基づいて、ベルトスリーブ107を全幅に亘って切断する処理が終了したか否かを判断する。
【0179】
工程S203において、ベルトスリーブ107を全幅に亘って切断する処理が終了していないと判断されると(工程S203、No)、まず、制御装置14からの制御指令に基づいて、ボールネジモータ44bが所定の回数分だけ回転し、移動プレート45が、基台部42上で、結合Vベルト100の幅方向の寸法に対応した所定量だけ移動する。そして、再び、切断工程S202が実施される。これにより、回転体22の外周において、次の結合Vベルト100が形成されることになる。
【0180】
上記のように切断工程S202が実施され、結合Vベルト100が新たに形成されると、再び、制御装置14にて、ベルトスリーブ107を全幅に亘って切断する処理が終了したか否かが判断される(工程S203)。ベルトスリーブ107が全幅に亘って切断する処理が終了していないと判断されるかぎり(工程S203、No)、上記の処理が繰り返されることになる。そして、工程S203と切断工程S202とが繰り返されることで、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられた状態の複数の結合Vベルト100が形成されていくことになる。
【0181】
図19は、結合ベルト形成装置1によってベルトスリーブ107が全幅に亘って周方向に切断され、複数の結合Vベルト100が形成された状態を示す図である。工程S203と切断工程S202とが繰り返され、図19に示すように、ベルトスリーブ107が全幅に亘って切断されると、制御装置14において、ベルトスリーブ107を全幅に亘って切断する処理が終了したと判断される(工程S203、Yes)。上記のように判断されると、制御装置14からの制御指令に基づいて、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、及び切断機構13の作動が停止される。
【0182】
図19に示すように、ベルトスリーブ107が全幅に亘って切断され、複数の結合Vベルト100が形成されると、次いで、結合ベルト取り外し工程S204が実施される。結合ベルト取り外し工程S204では、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられた状態の複数の結合Vベルト100の全てが、回転体(21、22)から取り外される。回転体(21、22)から全ての結合Vベルト100が取り外されることで、図18に示す結合ベルト形成方法は終了することになる。
【0183】
[実施例]
次に、上述した結合ベルト形成装置1及び結合ベルト形成方法によって結合Vベルト100を形成した本発明の実施例について比較例とともに説明する。図20は、本発明の実施例に関する実施条件及び実施結果等を一覧表にして示す図である。本実施例では、一対のベルトスリーブ107をワイヤー(30a、30b)によって周方向に切断し結合Vベルト100を形成した。一方、比較例では、ベルトスリーブ200を後述する回転刃によって周方向に切断し結合Vベルト203を形成した。尚、結合Vベルト203は、V字状の断面を有する環状のゴムベルト部201を複数有する結合Vベルト203として構成されており、以下の説明において、結合ベルト200について、結合Vベルト203とも称する。
【0184】
本実施例における結合Vベルト100のゴムベルト部101の形状については、VベルトのJIS規格で定められている種類のうちC形を採用した。図16を参照して、実施例のベルトスリーブ107におけるゴムベルト部101の間の間隔の寸法dは、3.3mmに設定した。また、比較例における結合Vベルト203のゴムベルト部201の形状についても、VベルトのJIS規格で定められている種類のうちC形を採用した。図1及び図2を参照して、ゴムベルト部201の間の間隔の寸法dは、3.3mmに設定した。
【0185】
実施例においては、ベルトスリーブ107を切断するワイヤー30として、炭素鋼製の金属線であるピアノ線として構成された心線105の表面に、ダイヤモンド砥粒が電着により固定されたダイヤモンドワイヤー(以下、ダイヤモンドワイヤーと称する。)を用いた。ダイヤモンドワイヤーに関しては、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)による観察を行った。図21は、実施例に係るワイヤー30であって心線105にダイヤモンド砥粒が電着により固定されたワイヤーの表面を撮影したSEM写真の画像を示す図である。
【0186】
図20を参照して、実施例では、ワイヤー30の直径寸法を120μmに設定し、ダイヤモンド砥粒の径を10μm〜20μmに設定した。また、ダイヤモンドワイヤーが一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の間において走行する速度であるワイヤー走行速度については、最大値が1500m/minとなる走行速度に設定した。一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))のそれぞれの間においてダイヤモンドワイヤーに付与する張力であるワイヤー張力は、35Nに設定した。
【0187】
また、図15を参照して、互いに平行に走行する一対のワイヤー(30a、30b)の間の距離Dについては、ベルトスリーブ107の隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法dに対応させて、2.8mmに設定した。
【0188】
一方、図20の表に示す比較例は、上述した実施例との比較のための例として実施した。比較例では、ベルトスリーブ200を切断する手段として、外周に刃が設けられた円形形状の丸刃(以下、回転丸刃と称する。)を使用した。より具体的には、比較例では、回転丸刃として、外周側に向かって鋭く切っ先状に尖るように形成された刃が設けられ、その外周の刃が、円形の回転刃の外周の全周に亘って設けられたものを用いた。
【0189】
ベルトスリーブ200の切断は、回転丸刃を、回転体(21、22)の外周に巻き掛けられたベルトスリーブ200に向かって押し付ける方向であって、且つ、回転体(21、22)の回転軸(21a、22a)の軸方向と平行な方向に対して直交する方向に沿って進退させることで行った。
【0190】
また、比較例では、回転丸刃の回転数である丸刃回転数を1200rpmに設定した。回転丸刃の直径である丸刃径は、200mmに設定し、回転丸刃の厚みである丸刃厚みは、2.5mmに設定した。回転丸刃の先端部分における刃の角度は、8度に設定した。また、材質が超硬鋼で構成された回転丸刃を用いた。比較例においては、冷却水を掛けながら、結合Vベルト203の形成を行った。
【0191】
また、実施例においては、冷却水を使用することなく結合Vベルト100を形成したが、比較例においては、図20の「冷却水(リットル/min)」の欄に記載した水量の冷却水を掛けて、結合Vベルト203を形成した。尚、比較例で用いた水の量は、1分当たりに回転丸刃に対して掛けた水を容器に採取することで測定した。比較例では、2.75リットル/minの水量の冷却水を掛けた。
【0192】
上述の実施条件により、実施例におけるベルトスリーブ107から結合Vベルト100を切り出して形成した。より具体的には、図16に示すように、ベルトスリーブ107を、一対の切断ライン(107a、107b)で一対のワイヤー(30a、30b)によって切断した。そして、ゴムベルト部101から幅方向の外側にはみ出した補強布102の部分(はみ出し部)の寸法αを確認し計測を行った。計測の結果、ゴムベルト部101から幅方向の外側にはみ出した補強布102の部分(はみ出し部)の寸法αは、0.1mm〜0.3mmとごく小さい値に抑制することができた。即ち、結合Vベルト100の幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制することができた。
【0193】
これに対して、比較例においては、図1に示すように、ベルトスリーブ200の補強布202を、切断ライン204にて切断した。そして、ゴムベルト部201から幅方向の外側にはみ出した補強布202の部分であるはみ出し部202aの寸法αを確認し計測を行った。計測の結果、はみ出し部202aの寸法αは、1.3mm〜2.0mmと、実施例に対して相当に大きい値となった。即ち、上記の実施例におけるはみ出し部の寸法αは、比較例よりも大きく抑制できることが確認できた。
【0194】
上記のように、はみ出し部の寸法αを抑制することができることで、回転装置のプーリ等に複数本の結合Vベルト100が巻き掛けられて同時に使用される際において、隣り合って走行する結合Vベルト100同士が接触するのを防止することができる。これにより、接触が原因で走行時の結合Vベルト100の振れが大きくなって、一方の結合Vベルト100が他方に乗り上げたり、内周側と外周側とがひっくり返るようにして反転して逆となる転覆が生じることを回避することができる。
【0195】
[実施形態の作用効果]
本実施形態の結合ベルト形成装置1によると、スリーブ走行機構11、ワイヤー走行機構12、切断機構13が作動し、ベルトスリーブ107が周方向に切断されて結合Vベルト100(結合ベルト100)が形成される。また、本実施形態の結合ベルト形成方法によると、スリーブ走行工程S205及びワイヤー走行工程S206を含む切断工程S202が実施され、ベルトスリーブ107が周方向に切断されて結合Vベルト100(結合ベルト100)が形成される。そして、本実施形態の結合ベルト形成装置1及び結合ベルト形成方法によると、一対のワイヤー(30a、30b)のそれぞれにおける張力が付与された部分の長手方向である直線方向に沿って互いに平行に走行する一対のワイヤー(30a、30b)が、周方向に走行するベルトスリーブ107に押し付けられることで、ベルトスリーブ107の切断が行われる。このため、ベルトスリーブ107に押し付ける走行する一対のワイヤー(30a、30b)の間の距離(間隔)を、隣り合うゴムベルト部101の間の間隔の寸法に適宜対応した所定の寸法に設定することで、ベルトスリーブ107の切断の際に、隣り合うゴムベルト部101の間の補強布102の部分を容易に切除することができる。これにより、結合Vベルト100の幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制することができる。
【0196】
また、走行する一対のワイヤー(30a、30b)を走行するベルトスリーブ107の補強布102に押し付けてベルトスリーブ107を周方向に切断することで、結合Vベルト100の幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部が切除された状態の結合Vベルト100を容易に形成することができる。このため、ベルトスリーブ107から結合Vベルト100を切り出して形成した後にはみ出し部を除去する作業を行う必要がなく、作業性の低下を招くことを抑制することができる。
【0197】
よって、本実施形態によると、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合Vベルト100の幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制できる結合ベルト形成装置1及び結合ベルト形成方法を提供することができる。
【0198】
また、本実施形態の結合ベルト形成装置1及び結合ベルト形成方法によると、ベルトスリーブ107の補強布102の切断時に、外周に刃が設けられた回転刃ではなく、直線方向に(即ち、張力が付与された部分の長手方向に)走行するワイヤー(30a、30b)によって、補強布102の切断が行われる。このため、ベルトスリーブ107において切断される補強布102と切断工具としてのワイヤー(30a、30b)との接触面積を、切断工具が回転刃の場合に比して、極めて小さくすることができる。これにより、ベルトスリーブ107の切断中における摩擦熱による温度上昇を大幅に抑制することができる。そして、ベルトスリーブ107の切断中における摩擦熱による温度上昇を大幅に抑制できるため、切断時における水を用いた冷却設備が不要となる。このため、ベルトスリーブ107から結合Vベルト100を形成する際に必要となる設備の種類及び数の増大を抑制することができる。
【0199】
また、本実施形態の結合ベルト形成装置1によると、複数の回転体(21、22)にベルトスリーブ107を巻き掛けた状態で、ベルトスリーブ107を周回させるように周方向に走行させることができる。このため、ベルトスリーブ107の周方向長さが比較的長い(周長が長い)場合であっても、筒状のベルトスリーブ107の径寸法に比して小径の回転体(21、22)を複数有するスリーブ走行機構11によって、ベルトスリーブ107を容易に周方向に走行させることができる。
【0200】
また、本実施形態の結合ベルト形成装置1によると、ベルトスリーブ107の周方向長さが比較的長い場合であっても、小径の回転体(21、22)の外周に沿ってベルトスリーブ107を走行させ、走行するベルトスリーブ107に走行する一対のワイヤー(30a、30b)を押し付けてベルトスリーブ107を切断できる。このため、曲率半径が小さい回転体22の近傍で一対のワイヤー(30a、30b)をベルトスリーブ107に押し付けてベルトスリーブ107を切断することができる。従って、ベルトスリーブ107において切断される補強布102と切断工具としてのワイヤー(30a、30b)との接触面積を更に小さくでき、ベルトスリーブ107の切断中における摩擦熱による温度上昇を更に抑制することができる。
【0201】
また、本実施形態の結合ベルト形成装置1によると、複数の回転体(21、22)にベルトスリーブ107を巻き掛けた状態でベルトスリーブ107を周回させるように周方向に走行させる構造を、駆動ロール21及び従動ロール22で構成される一対の回転体(21、22)を用いた簡素な構造で実現することができる。
【0202】
また、本実施形態の結合ベルト形成装置1によると、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおいて、同期して回転する一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の一方からワイヤー(30a、30b)を払い出しながら他方で巻き取ることで、容易に、ワイヤー(30a、30b)に張力を付与しながらワイヤー(30a、30b)の張力を付与した部分を直線方向に沿って走行させることができる。そして、本実施形態の結合ベルト形成装置1によると、長尺のワイヤー(30a、30b)を一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))の一方から払い出すとともに他方で巻き取りながら、ベルトスリーブ107の切断を行うことができる。このため、ベルトスリーブ107の補強布102の切断の際に、ワイヤー(30a、30b)における同一部分を集中的に用いることなく、長尺のワイヤー(30a、30b)における異なる部分を順番に連続して用いることができる。これにより、ワイヤー(30a、30b)におけるそれぞれの部分が切断に用いられる時間が極めて短時間となり、且つ、切断後の放熱によるワイヤー(30a、30b)の冷却時間も十分に長く確保することができる。これにより、ワイヤー(30a、30b)に熱が蓄積されることを効率よく抑制でき、ベルトスリーブ107の切断中における摩擦熱による温度上昇を更に抑制することができる。
【0203】
また、本実施形態の結合ベルト形成装置1によると、一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))が同期して回転する回転方向を交互に逆転させながら回転を繰り返すことで、長尺のワイヤー(30a、30b)を連続的に繰り返し往復させながら用いてベルトスリーブ107の切断作業を効率よく実施することができる。また、ベルトスリーブ107の切断に長尺のワイヤー(30a、30b)を繰り返し往復させながら用いることができるため、ワイヤー(30a、30b)におけるそれぞれの部分が切断に用いられる時間を極めて短時間としつつ、且つ、切断後の放熱によるワイヤー(30a、30b)の冷却時間も十分に長く確保しつつ、ベルトスリーブ107の切断作業を効率よく実施することができる。これにより、ワイヤー(30a、30b)に熱が蓄積されることを効率よく抑制でき、ベルトスリーブ107の切断中における摩擦熱による温度上昇を更に抑制しつつ、長時間に亘ってベルトスリーブ107の切断作業を連続的に実施することができる。
【0204】
また、本実施形態の結合ベルト形成装置1によると、回転体22の外周に沿って走行するベルトスリーブ107に対して、回転体22の外周の接線方向と平行な方向に沿って走行するワイヤー(30a、30b)が押し付けられるため、ベルトスリーブ107の湾曲して走行する部分においてワイヤー(30a、30b)による切断作業を効率よく容易に行うことができる。即ち、回転体22の外周に沿って湾曲して走行するベルトスリーブ107を、そのベルトスリーブ107の湾曲部分の接線方向に沿って直線方向に走行するワイヤー(30a、30b)によって、効率よく容易に切断することができる。
【0205】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例が実施されてもよい。
【0206】
(1)前述の実施形態では、ワイヤー走行機構におけるワイヤーとして、ダイヤモンドワイヤーが用いられる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ダイヤモンドワイヤー以外のワイヤーが用いられてもよい。例えば、表面に砥粒が固定されていないピアノ線がワイヤーとして用いられてもよい。また、表面にダイヤモンド砥粒以外の材質の砥粒が固定されたピアノ線がワイヤーとして用いられてもよい。
【0207】
(2)前述の実施形態では、スリーブ走行機構が複数の回転体を有している形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ベルトスリーブが巻き掛けられる回転体を1つのみ有するスリーブ走行機構の形態が実施されてもよい。スリーブ走行機構が回転体を1つのみ有する結合ベルト形成装置の形態として、例えば、図22に示すような変形例が実施されてもよい。
【0208】
図22は、変形例に係る結合ベルト形成装置2を説明するための図であって、結合ベルト形成装置2の正面図である。尚、以下の結合ベルト形成装置2についての説明においては、前述の実施形態と同様に構成される要素及び前述の実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
【0209】
図22に示す結合ベルト形成装置2は、スリーブ走行機構50の構成において、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1と異なっている。結合ベルト形成装置2のスリーブ走行機構50は、回転体21、駆動ユニット23、及び支持ユニット24を備えて構成されている。しかし、スリーブ走行機構50は、結合ベルト形成装置1のスリーブ走行機構11とは異なり、回転体22及び支持ユニット(25、26)が備えられていない。そして、スリーブ走行機構50は、回転体21の外周の全周に亘ってベルトスリーブ107が巻き掛けられた状態で、回転体21を回転させ、ベルトスリーブ107を周方向に走行させるように構成されている。
【0210】
また、結合ベルト形成装置2においては、切断機構13は、回転体21の外周において回転体21とともに回転して周方向に走行するベルトスリーブ107に対して、ワイヤー走行機構12における走行する一対のワイヤー(30a、30b)を押し付けるように構成されている。そして、結合ベルト形成装置2は、回転体21の外周で回転体21とともに回転して周方向に走行するベルトスリーブ107を周方向に切断し、結合Vベルト100(結合ベルト100)を形成するように構成されている。
【0211】
上記の変形例のように、ベルトスリーブ107が巻き掛けられる回転体21を1つのみ有するスリーブ走行機構50を有する結合ベルト形成装置2の形態が実施されてもよい。上記の変形例の結合ベルト形成装置2によっても、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1と同様に、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合Vベルト100の幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制することができる。
【0212】
(3)前述の実施形態では、スリーブ走行機構が、複数の回転体として一対の回転体を有している形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ベルトスリーブが巻き掛けられる回転体を3つ以上有するスリーブ走行機構の形態が実施されてもよい。スリーブ走行機構が回転体を3つ有する結合ベルト形成装置の形態として、例えば、図23に示すような変形例が実施されてもよい。
【0213】
図23は、変形例に係る結合ベルト形成装置3を説明するための図であって、結合ベルト形成装置3の正面図である。尚、以下の結合ベルト形成装置3についての説明においては、前述の実施形態と同様に構成される要素及び前述の実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
【0214】
図23に示す結合ベルト形成装置3は、スリーブ走行機構51の構成において、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1と異なっている。結合ベルト形成装置3のスリーブ走行機構51は、回転体(52、53、22)、駆動ユニット54、支持ユニット(55、25、26)を備えて構成されている。そして、スリーブ走行機構51は、回転体(52、53、22)の外周にベルトスリーブ107が巻き掛けられた状態で、回転体(52、53、22)を回転させ、ベルトスリーブ107を周方向に走行させるように構成されている。
【0215】
回転体52及び回転体53のそれぞれは、径寸法の違いを除き、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1の回転体21と同様に構成されている。回転体52は、回転体21の回転軸21a、回転ドラム21b、外周スリーブ21cにそれぞれ対応する回転軸52a、回転ドラム52b、外周スリーブ52cを備え、軸周りに(回転軸52a周りに)回転する回転体として構成されている。回転体53は、回転体21の回転軸21a、回転ドラム21b、外周スリーブ21cにそれぞれ対応する回転軸53a、回転ドラム53b、外周スリーブ53cを備え、軸周りに(回転軸53a周りに)回転する回転体として構成されている。
【0216】
駆動ユニット54は、回転体52及び回転体53を回転駆動する機構として構成されている。駆動ユニット54は、図示が省略された電動モータを有し、この電動モータからの駆動トルクを2つのベルト駆動機構を介して2つの回転体(52、53)に伝達し、2つの回転体(52、53)を回転駆動するように構成されている。
【0217】
支持ユニット55は、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1の支持ユニット24とは異なり、支持アーム24b及び支持シリンダ24cを有して構成される支持機構を1つではなく2つ有している。そして、支持ユニット55における上記の各支持機構は、回転体52及び回転体53のそれぞれに対応して設けられている。尚、支持ユニット55の各支持機構における支持アーム24b及び支持シリンダ24cと、前述の実施形態の支持ユニット24の支持アーム24b及び支持シリンダ24cとは、寸法構成が異なっている。
【0218】
上記の変形例のように、ベルトスリーブ107が巻き掛けられる回転体(52、53、22)を3つ有するスリーブ走行機構51を備えた結合ベルト形成装置3の形態が実施されてもよい。また、ベルトスリーブが巻き掛けられる回転体を4つ以上有するスリーブ走行機構を備えた結合ベルト形成装置の形態が実施されてもよい。上記の変形例の結合ベルト形成装置3によっても、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1と同様に、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合Vベルト100(結合ベルト100)の幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制することができる。
【0219】
(4)前述の実施形態では、ワイヤー走行機構が、一対のワイヤー保持部を有するワイヤー保持部ユニットを1つ有している形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。一対のワイヤー保持部を有するワイヤー保持部ユニットを複数有しているワイヤー走行機構の形態が実施されてもよい。ワイヤー走行機構が一対のワイヤー保持部を有するワイヤー保持部ユニットを複数有する結合ベルト形成装置の形態として、例えば、図24又は図25に示すような変形例が実施されてもよい。
【0220】
図24は、変形例に係る結合ベルト形成装置4を説明するための図であって、結合ベルト形成装置4の正面図である。尚、以下の結合ベルト形成装置4についての説明においては、前述の実施形態と同様に構成される要素及び前述の実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
【0221】
図24に示す結合ベルト形成装置4は、ワイヤー走行機構56の構成において、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1と異なっている。結合ベルト形成装置4のワイヤー走行機構56は、第1ワイヤー走行ユニット12a及び第2ワイヤー走行ユニット12bを備えて構成されている。第1ワイヤー走行ユニット12a及び第2ワイヤー走行ユニット12bのそれぞれは、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1のワイヤー走行機構12と同様に構成されている。即ち、結合ベルト形成装置4は、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1のワイヤー走行機構12を2つ有して構成されたワイヤー走行機構56を備えて構成されている。
【0222】
結合ベルト形成装置4は、前述の実施形態のワイヤー走行機構12と同様に構成された第1ワイヤー走行ユニット12a及び第2ワイヤー走行ユニット12bを有しているため、一対のワイヤー保持部(31a、31b)を有するワイヤ保持部ユニット31を複数(2つ)有している。
【0223】
上記の変形例のように、一対のワイヤー保持部(31a、31b)を有するワイヤ保持部ユニット31を複数(2つ)有するワイヤー走行機構56を備えた結合ベルト形成装置4の形態が実施されてもよい。また、ワイヤ保持部ユニット31を3つ以上有するワイヤー走行機構を備えた結合ベルト形成装置の形態が実施されてもよい。
【0224】
上記の変形例の結合ベルト形成装置4によっても、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1と同様に、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合Vベルト100(結合ベルト100)の幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制することができる。そして、上記の変形例の結合ベルト形成装置4によると、複数のワイヤー保持部ユニット31によって、ベルトスリーブ107を周方向に切断して結合Vベルト100を切り出して形成する作業を複数個所において同時に行うことができる。このため、ベルトスリーブ107を周方向に切断して環状の結合Vベルト100を形成する作業の能率を更に向上させることができる。
【0225】
図25は、変形例に係る結合ベルト形成装置のワイヤー走行機構57を説明するための図である。図25では、変形例に係るワイヤー走行機構57のみを模式的に図示している。尚、以下のワイヤー走行機構57についての説明においては、前述の実施形態と同様に構成される要素及び前述の実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
【0226】
図25に示すワイヤー走行機構57は、一対のワイヤ保持部(31a、31b)を有するワイヤ保持部ユニット31を1つではなく複数(3つ)有している点において、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1のワイヤー走行機構12と異なっている。ワイヤー走行機構57は、一対のワイヤー(30a、30b)を複数対(3対)と、複数(3つ)のワイヤ保持部ユニット31と、ボビンモータ32と、ボビン側動力伝達部33と、モータ側動力伝達部34と、ケース35とを備えて構成されている。尚、図25では、ケース35の図示が省略されている。
【0227】
ワイヤー走行機構57においては、ワイヤ保持部ユニット31が複数(3つ)備えられているため、一対のワイヤー保持部(31a、31b)も複数対(3対)備えられている。即ち、複数のワイヤー保持部ユニット31のそれぞれは、一対のワイヤー(30a、30b)をそれぞれ保持する一対のワイヤー保持部(31a、31b)を有している。そして、複数のワイヤー保持部ユニット31のそれぞれにおいて、一対のワイヤー保持部(31a、31b)のそれぞれにおける一対の回転ボビン((36a、36b)、(37a、37b))にワイヤー(30a、30b)がそれぞれ巻き付けられている。
【0228】
また、複数のワイヤ保持部ユニット31の回転ボビン(36a、37a)は、連結軸38の軸方向に沿って直列に並んで配置された状態で、連結軸38によって連結されている。即ち、ワイヤー走行機構57において備えられる複数対(3対)の回転ボビン(36a、37a)は、連結軸38の軸方向に沿って直列に並んで配置された状態で、連結軸38によって連結されている。更に、各ワイヤ保持部ユニット31の回転ボビン36a及び回転ボビン37aも、連結軸38の軸方向に沿って直列に並んで配置された状態で、連結軸38によって連結されている。
【0229】
また、複数のワイヤ保持部ユニット31の回転ボビン(36b、37b)は、連結軸39の軸方向に沿って直列に並んで配置された状態で、連結軸39によって連結されている。即ち、ワイヤー走行機構57において備えられる複数対(3対)の回転ボビン(36b、37b)は、連結軸39の軸方向に沿って直列に並んで配置された状態で、連結軸39によって連結されている。更に、各ワイヤ保持部ユニット31の回転ボビン36b及び回転ボビン37bも、連結軸39の軸方向に沿って直列に並んで配置された状態で、連結軸39によって連結されている。
【0230】
上記の変形例のように、一対のワイヤ保持部(31a、31b)を有するワイヤ保持部ユニット31を複数(3つ)有し、複数のワイヤ保持部ユニット31における複数対の回転ボビン(36a、37a)又は複数対の回転ボビン(36b、37b)のそれぞれが同軸で連結された形態のワイヤー走行機構57を備えた結合ベルト形成装置の形態が実施されてもよい。また、ワイヤ保持部ユニット31を2つ又は4つ以上有し、2つ又は4つ以上のワイヤ保持部ユニット31における複数対の回転ボビン(36a、37a)又は複数対の回転ボビン(36b、37b)のそれぞれが同軸で連結された形態のワイヤー走行機構を備えた結合ベルト形成装置の形態が実施されてもよい。
【0231】
上記の変形例のワイヤー走行機構57を備えた結合ベルト形成装置によっても、前述の実施形態の結合ベルト形成装置1と同様に、作業性の低下を招くことを抑制でき、且つ、結合Vベルト100(結合ベルト100)の幅方向の両側の縁部分におけるはみ出し部の発生を容易に抑制することができる。そして、上記の変形例のワイヤー走行機構57を備えた結合ベルト形成装置によると、複数のワイヤー保持部ユニット31によって、ベルトスリーブ107を周方向に切断して結合Vベルト100を切り出して形成する作業を複数個所において同時に行うことができる。このため、ベルトスリーブ107を周方向に切断して環状の結合Vベルト100を形成する作業の能率を更に向上させることができる。
【0232】
(5)前述の実施形態では、ワイヤー走行機構における一対のワイヤー保持部のそれぞれが、1本の連続したワイヤーの両端部側の部分がそれぞれ巻き付けられるとともに同期して回転する一対の回転ボビンを有する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてよい。円環状に閉ループを構成するワイヤーが緊張状態で巻き掛けられるとともに同期して回転する一対の回転ボビンをそれぞれ有する一対のワイヤー保持部を備えたワイヤー走行機構の形態が実施されてもよい。また、1本の直線状に延びるワイヤーの両端部がそれぞれ固定されるとともに直線方向に沿って同期して往復運動を行う一対の往復振動部をそれぞれ有する一対のワイヤー固定部を備えたワイヤー走行機構の形態が実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0233】
本発明は、それぞれゴム層を含む複数の環状のゴムベルト部が並列に並んだ状態で外周側が補強布で連結されている筒状のベルトスリーブを周方向に切断し、複数のゴムベルト部が結合した状態の結合ベルトを切り出して形成する、結合ベルト形成装置、及び結合ベルト形成方法に関して、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0234】
1 結合ベルト形成装置
11 スリーブ走行機構
12 ワイヤー走行機構
13 切断機構
21 駆動ロール(回転体)
22 従動ロール(回転体)
30a、30b ワイヤー
100 結合Vベルト(結合ベルト)
101 ゴムベルト部
102 補強布
107 ベルトスリーブ
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