(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987713
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】ギ酸のPd触媒分解
(51)【国際特許分類】
C01B 32/40 20170101AFI20211220BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20211220BHJP
C01B 3/22 20060101ALI20211220BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20211220BHJP
【FI】
C01B32/40
B01J31/24 M
C01B3/22 Z
C01B32/50
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-141351(P2018-141351)
(22)【出願日】2018年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-89690(P2019-89690A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2021年1月19日
(31)【優先権主張番号】17185340.1
(32)【優先日】2017年8月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイ サン
(72)【発明者】
【氏名】ジエ リウ
(72)【発明者】
【氏名】カイウ ドン
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジャックステル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ベラー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
【審査官】
青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭59−5341(JP,B2)
【文献】
米国特許第3488383(US,A)
【文献】
中国特許出願公開第105833914(CN,A)
【文献】
特表2015−505858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/40
B01J 31/24
C01B 3/22
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程;
a)ギ酸を存在させ、
b)Pdを含有する化合物を添加し、前記Pdは錯体を形成することができ、
c)一般式(I)の化合物を添加し、
d)MeOHを添加し、
e)当該反応混合物を加熱し、前記ギ酸を分解する工程
を有する方法。
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、−H、−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
4−C
14)−アリール、−O−(C
4−C
14)−アリール、シクロアルキル、−(C
1−C
12)−ヘテロアルキル、−O−(C
1−C
12)−ヘテロアルキル、−(C
3−C
14)−ヘテロアリール、−O−(C
3−C
14)−ヘテロアリール、−COO−アルキル、−COO−アリール、−C−O−アルキル、−C−O−アリール、NH
2、ハロゲンから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、アリール基、シクロアルキル、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよく、
前記基R
1、R
2、R
3、R
4の少なくとも1つは、フェニルではない。)
【請求項2】
前記工程b)の化合物が、Pd(acac)2、PdCl2、Pd(dba)3*CH3Cl(dba=ジベンジリデンアセトン)、Pd(OAc)2、Pd(TFA)2、Pd(CH3CN)Cl2から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程b)の化合物はPd(OAc)2である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
追加工程;
f)酸を添加する工程
を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程f)の酸が、H2SO4、CH3SO3H、CF3SO3H、PTSAから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程f)の酸がPTSAである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、−(C1−C12)−アルキル、−O−(C1−C12)−アルキル、−(C4−C14)−アリール、−O−(C4−C14)−アリール、シクロアルキル、−(C1−C12)−ヘテロアルキル、−O−(C1−C12)−ヘテロアルキル、−(C3−C14)−ヘテロアリール、−O−(C3−C14)−ヘテロアリール、−COO−アルキル、−COO−アリール、−C−O−アルキル、−C−O−アリール、NH2、ハロゲンから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、アリール基、シクロアルキル、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C1−C12)−アルキル、−O−(C1−C12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよく、
前記基R1、R2、R3、R4の少なくとも1つは、フェニルではない、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、−(C1−C12)−アルキル、−(C4−C14)−アリール、シクロアルキル、−(C1−C12)−ヘテロアルキル、−(C3−C14)−ヘテロアリール、ハロゲンから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、アリール基、シクロアルキル、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C1−C12)−アルキル、−O−(C1−C12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよく、
前記基R1、R2、R3、R4の少なくとも1つは、フェニルではない、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して、−(C1−C12)−アルキル、シクロアルキル、−(C3−C14)−ヘテロアリールから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、シクロアルキル、ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C1−C12)−アルキル、−O−(C1−C12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよく、
前記基R1、R2、R3、R4の少なくとも1つは、フェニルではない、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
式中、R1、R4は、それぞれ独立して、−(C1−C12)−アルキル、シクロアルキルから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、シクロアルキルは、以下のように;
−(C1−C12)−アルキル、−O−(C1−C12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよい、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
式中、R2、R3は、それぞれ独立して、−(C3−C14)−ヘテロアリールを表し、
前記ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C1−C12)−アルキル、−O−(C1−C12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよい、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記一般式(I)の化合物が、構造(1)〜(3)から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項13】
前記一般式(I)の化合物が、構造(2)を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【化5】
【請求項14】
前記一般式(I)の化合物が、構造(3)を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギ酸(HCOOH)のPd触媒分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ギ酸は、例えば酸または溶媒として化学反応において使用されるが、反応の副生成物としても生成され得る。その腐食性や強烈な臭いのために、ギ酸を除去することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、触媒作用を利用してギ酸を効率的に分解する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0005】
以下の工程;
a)ギ酸を存在させ、
b)Pdを含有する化合物を添加し、前記Pdは錯体を形成することができ、
c)一般式(I)の化合物を添加し、
d)MeOHを添加し、
e)当該反応混合物を加熱し、前記ギ酸を分解する工程
を有する方法。
【0006】
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、−H、−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
4−C
14)−アリール、−O−(C
4−C
14)−アリール、シクロアルキル、−(C
1−C
12)−ヘテロアルキル、−O−(C
1−C
12)−ヘテロアルキル、−(C
3−C
14)−ヘテロアリール、−O−(C
3−C
14)−ヘテロアリール、−COO−アルキル、−COO−アリール、−C−O−アルキル、−C−O−アリール、NH
2、ハロゲンから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、アリール基、シクロアルキル、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよく、
前記基R
1、R
2、R
3、R
4の少なくとも1つは、フェニルではない。)
【0007】
本方法の一変形例では、前記工程b)の化合物はPd(OAc)
2である。
【0008】
本方法の一変形例では、本方法は、追加工程f):
f)酸を追加する工程
を有する。
【0009】
本方法の一変形例では、前記工程f)の酸が、H
2SO
4、CH
3SO
3H、CF
3SO
3H、PTSAから選択される。
【0010】
本方法の一変形例では、前記工程f)の酸がPTSAから選択される。
【0011】
本方法の一変形例では、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
4−C
14)−アリール、−O−(C
4−C
14)−アリール、シクロアルキル、−(C
1−C
12)−ヘテロアルキル、−O−(C
1−C
12)−ヘテロアルキル、−(C
3−C
14)−ヘテロアリール、−O−(C
3−C
14)−ヘテロアリール、−COO−アルキル、−COO−アリール、−C−O−アルキル、−C−O−アリール、NH
2、ハロゲンから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、アリール基、シクロアルキル、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよく、
前記基R
1、R
2、R
3、R
4の少なくとも1つは、フェニルではない。
【0012】
本方法の一変形例では、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
4−C
14)−アリール、シクロアルキル、−(C
1−C
12)−ヘテロアルキル、−(C
3−C
14)−ヘテロアリール、ハロゲンから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、アリール基、シクロアルキル、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよく、
前記基R
1、R
2、R
3、R
4の少なくとも1つは、フェニルではない。
【0013】
本方法の一変形例では、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して、−(C
1−C
12)−アルキル、−(C
3−C
14)−ヘテロアリールから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、シクロアルキル、ヘテロアルキル基は、以下のように;
−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよく、
前記基R
1、R
2、R
3、R
4の少なくとも1つは、フェニルではない。
【0014】
本方法の一変形例では、R
1、R
4は、それぞれ独立して、−(C
1−C
12)−アルキル、シクロアルキルから選択され、その残基は、より大きな縮合環を形成することもでき、
前記アルキル基、シクロアルキルは、以下のように;
−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよい。
【0015】
本方法の一変形例では、R
2、R
3は、それぞれ独立して、−(C
3−C
14)−ヘテロアリールを表し、
前記ヘテロアリール基は、以下のように;
−(C
1−C
12)−アルキル、−O−(C
1−C
12)−アルキル、ハロゲン
置換されていてもよい。
【0016】
本方法の一変形例では、一般式(I)の化合物は、構造(1)〜(3)から選択される。
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
本方法の一変形例では、一般式(I)の化合物は、構造(2)を有する。
【0021】
【化5】
【0022】
本方法の一変形例では、一般式(I)の化合物は、構造(3)を有する。
【0023】
【化6】
【0024】
本発明は、以下の実施例によって詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
アルゴン雰囲気下、[Pd(OAc)
2](4.48mg、0.02mmol、0.05mol%)、リガンドL(0.08mmol、0.2mol%)、PTSA・H
2O(76mg、0.4mmol、1.0mol%)をオートクレーブに導入した。(個々の成分の添加は、以下の表の通り個々の実験においては控えた。)続いて、MeOH(6.5ml)およびHCOOH(40mmol、1.50ml)をシリンジで注入した。次いで、前記オートクレーブを窒素(5バール)で3回パージした。当該反応混合物を100℃に加熱し、この温度で18時間保持した。当該時間の経過後、前記オートクレーブを室温まで冷却した。
圧力は、電子オートクレーブ圧力記録センサによって測定した。CO、H
2およびCO
2の選択性は、ガスGC分析によって測定した。
【0030】
上記の実験によって示されるように、本目的は、本発明に係る方法によって達成される。