(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の動作領域は、前記ヒータ及び前記加湿器をそれぞれ高精度で動作させることが可能であると予め定められている高精度動作領域のうち低出力側の省エネ動作領域である、請求項1に記載の空気調和装置。
前記冷却器制御部は、前記ヒータの省エネ動作領域及び前記加湿器の省エネ動作領域について下限閾値及び上限閾値をそれぞれ記憶しており、ヒータ制御信号及び加湿器制御信号を前記下限閾値に対応する制御信号値及び前記上限閾値に対応する制御信号値とそれぞれ比較することにより、前記ヒータ及び前記加湿器が前記省エネ動作領域内で動作しているか否かを判定する、請求項2に記載の空気調和装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態である空気調和装置10の概略構成図である。空気調和装置10は、空気流路形成部材12、ファン13、冷却器14、ヒータ16および加湿器18を備える。また、空気調和装置10は、制御部(冷却器制御部)15、温度指示調節部(ヒータ制御部)17および湿度指示調節部(加湿器制御部)19をさらに備える。
【0023】
空気流路形成部材12は、例えば、樹脂製または金属製の筐体状またはダクト状の部材により構成される。
図1では空気流路形成部材12が略直方体状をなす例が示されるが、これに限定されるものではなく、空気流路形成部材12の形状は適宜に変更可能である。
【0024】
空気流路形成部材12の一方の端部に吸込口12aが形成され、他方の端部に吹出口12bが形成されている。空気流路形成部材12の内部の空間は、吸込口12aから吸い込まれた空気が吹出口12bへ向かって流れる空気流路11が形成されている。
【0025】
ファン13は、空気流路形成部材12の内部であって吹出口12bの近傍に設けられている。ファン13は、内部の羽根が回転駆動されることにより空気を吸い込んで吹出口12bに向けて吹き出す機能を有する。ファン13による空気の吹出量は、一定であってもよい、図示しない指示調節部によって自動または手動で複数段階(例えば、強、中、弱)に調節可能になっていてもよい。
【0026】
冷却器14は、ファン13の作動によって吸込口12aから空気流路形成部材12内に吸い込まれた空気が通過することにより、空気を冷却する機能を有する。冷却器14は、空気流路11において空気流れ方向の最上流側に設けられている。
図1において、吸込口12aから空気流路11内に取り込まれる空気が吸込空気(1)として示され、冷却器14を通過した空気が冷却器出口空気(2)として示されている。
【0027】
冷却器14には、例えば、直膨式の冷却コイルが好適に用いられる。冷却コイルは、例えば、冷媒が循環される冷媒回路と、冷媒回路に連結されて冷媒を圧縮する圧縮機などを備える。この圧縮機の運転周波数や冷却コイルにおける蒸発温度を設定することによって、冷却器14の冷却性能(例えば、冷却量、顕熱比など)を調節することができる。冷却器14の構成は特に限定されるものではなく、公知の如何なる構成のものが用いられてもよい。詳しくは後述するが、冷却器14の動作は制御部(冷却器制御部)15によって制御される。
【0028】
ヒータ16は、ファン13の作動によって空気流路形成部材12内を流れる空気を加熱して昇温させる機能を有する。ここでヒータ16による加熱は、冷却器14によって冷却した空気を再び加熱して昇温させるので「再熱」ともいう。本実施形態では、ヒータ16は空気流路形成部材12内において冷却器14と加湿器18との間に設けられている。すなわち、ヒータ16は、空気流路11における空気流れ方向において冷却器14の下流側で、かつ、加湿器18の上流側に配置されている。ヒータ16は、例えば、電気式の加熱装置を好適に用いることができる。
図1には、ヒータ16を通過した空気がヒータ出口空気(3)として示されている。ヒータ16の動作は温度指示調節部17によって制御可能であり、ヒータ16による加熱量は温度指示調節部17によって調節される。
【0029】
加湿器18は、ファン13の作動によって空気流路形成部材12内を流れる空気を加湿する機能を有する。本実施形態では、加湿器18は、空気流路形成部材12内においてヒータ16とファン13との間に設けられている。すなわち、加湿器18は、空気流路11における空気流れ方向においてヒータ16の下流側で、かつ、ファン13の上流側に配置されている。加湿器18は、ヒータ出口空気(3)が通過する際に水蒸気または噴霧状の水を付加して吹出空気(4)に含有される水蒸気量(すなわち湿度)を増加させる。加湿器18の動作は湿度指示調節部19によって制御可能であり、加湿器18による加湿量は湿度指示調節部19によって調節される。
【0030】
制御部15は、温度指示調節部17からヒータ16への温度制御信号、及び、湿度指示調節部19から加湿器18への湿度制御信号に基づいて、冷却器14を制御する機能を有する。制御部15は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)によって好適に構成される。制御部15は、図示しない記憶部に記憶されているプログラムやデータを用いて、冷却器14の動作を制御することができる。
【0031】
空気調和装置10が空調対象とする室内には、温度センサ20および湿度センサ22が設置されている。
図1では温度センサ20および湿度センサ22が吹出口近くに設置されており、吹出空気(4)の温度および湿度を検出している例が示されている。温度センサ20および湿度センサ22は、例えば、室内の壁面または天井面に配置されている。温度センサ20の検出結果である室内温度は、有線または無線により温度指示調節部17に送信される。また、湿度センサ22の検出結果である室内湿度は、有線または無線により湿度指示調節部19に送信される。
【0032】
温度指示調節部17は、温度センサ20から受信した室内温度に基づいてヒータ16の動作を制御する。具体的には、温度指示調節部17は、温度センサ20で検出された室内温度が予め設定されている目標温度Ttargetとなるようにヒータ制御信号を生成してヒータ16に出力する。ヒータ制御信号は、例えば、mA(ミリアンペア)を単位とする電流信号によって表すことができる。
【0033】
湿度指示調節部19は、湿度センサ22から受信した室内湿度に基づいて加湿器18の動作を制御する。具体的には、湿度指示調節部19は、湿度センサ22で検出された室内湿度が予め設定されている目標湿度Htargetとなるように加湿器制御信号を生成して加湿器18に出力する。加湿器制御信号は、例えば、mA(ミリアンペア)を単位とする電流信号によって表すことができる。
【0034】
温度指示調節部17によって生成されたヒータ制御信号、および、湿度指示調節部19によって生成された加湿器制御信号は、制御部15にも入力される。制御部15は、これらのヒータ制御信号および加湿器制御信号に基づいて、冷却器制御信号を生成して冷却器14に出力する。この冷却器制御信号には、例えば、圧縮機周波数情報や冷媒蒸発温度情報などが含まれる。
【0035】
図2は、本実施形態の空気調和装置10における恒温恒湿制御を示す空気線図である。
図2の空気線図は、横軸が乾球温度を表し、縦軸が絶対湿度を表している。横軸の乾球温度は右側にいくほど高くなり、絶対湿度は上側にいくほど高くなる。以下では、乾球温度を適宜に温度とだけいう。また、
図2の空気線図では左下がりで下の凸状に湾曲した相対湿度100%の曲線が示されている(
図6〜
図13でも同様)。
【0036】
図2に示すように、ファン13の吸込み機能によって吸込口12aから空気流路11に流れ込んだ吸込空気(1)は、冷却器14を通過する間に冷却および除湿されて、冷却器出口空気(2)となる。このことが
図2の空気線図では、(1)の点と(2)の点とを結ぶ左下がりの直線によって表されている。すなわち、(1)の点から(2)の点へ移ることで、冷却器14を通過した空気は、温度がΔTだけ低下し、湿度がΔHだけ減少する。
【0037】
ここで、(1)の点と(2)の点とを結ぶ直線の長さが冷却器14による冷却量を表し、この直線の傾きが顕熱比を表している。顕熱比とは、冷却器14において吸込空気(1)に対して加わる潜熱と顕熱との和である全熱に対する顕熱分の比をいい、以下では適宜にSHF(Sensible Heat Factor)という。
【0038】
続いて、
図2に示すように、ファン13の吸込み機能によって冷却器出口空気(2)はヒータ16を通過してヒータ出口空気(3)となる。このことが
図2の空気線図では、(2)の点と(3)の点とを結ぶ横軸に平行な直線によって表されている。すなわち、(2)の点から(3)の点へ移ることで、ヒータ16を通過する間に加熱(または再熱)された空気は、温度が目標温度Ttargetまで上昇する。
【0039】
それから、ヒータ16によって加熱されたヒータ出口空気(3)は、ファン13の吸込み機能によって加湿器18を通過して加湿される。このことが
図2の空気線図では、(3)の点と(4)の点とを結ぶ縦軸に平行な直線によって表されている。厳密には、加湿を行うことで空気は加熱され、点は横にも移動するが、便宜上、縦軸に並行な直線とする。すなわち、(3)の点から(4)の点へ移ることで、加湿器18を通過する間に加湿された空気は、湿度が目標湿度Htargetまで増加する。
【0040】
そして、加湿器18を通過した空気は、ファン13によって吹出口12bから空気流路形成部材12の外部に吹き出される。これにより、目標温度Ttargetおよび目標湿度Htargetとなった吹出空気(4)が室内に放出される。その後吹出空気(4)は、室外からの浸入熱や、室内に設置された発熱体から発生する熱によって温湿度が変化し、吸込空気(1)として空気調和装置10に吸い込まれる。このように冷却器14に加えてヒータ16および加湿器18を用いて空調制御が実行されることで、室内温湿度が目標温度Ttargetおよび目標湿度Htargetとなるように高精度な恒温恒湿制御を行うことができる。
【0041】
図3は、従来の空気調和装置10Aの一例を示す概略構成図である。空気調和装置10Aの構成は、
図1に示した本実施形態の空気調和装置10と比較すると、制御部15を備えていない点だけが異なる。この従来例の空気調和装置10Aでは、冷却器14が一定能力で連続運転されている。この場合、外気温度の変化に伴う吸込空気の温度変化等の外乱があった場合に、ヒータや加湿器が不安定な動作領域になったり或いは消費電力が過剰な動作領域となったりすることがある。その結果、空気調和装置10Aでは、高精度の恒温恒湿制御を安定かつ省エネルギーで行うことが困難であった。
【0042】
これに対し、本実施形態の空気調和装置10によれば、上述したようにヒータ16の温度制御信号、及び、加湿器18の湿度制御信号に基づいて冷却器14を制御することで、冷却器14を一定出力で動作させてヒータ及び加湿器により恒温恒湿制御を行う場合に比べて、ヒータ16及び加湿器18を安定かつ省エネルギーで動作させることができ、その結果、高精度の恒温恒湿制御を安定かつ省エネルギーで実現することができる。次に、
図4以降を参照して、本実施形態の空気調和装置10における恒温恒湿制御について詳細に説明する。
【0043】
図4(a)はヒータ16についての制御信号と加熱量との関係を示すグラフであり、(b)は加湿器18についての制御信号と加湿量との関係を示すグラフである。
【0044】
図4(a)に示すように、ヒータ16は、制御信号をSt0からSt3の範囲で変化させることによって加熱量を0%から100%の範囲で調節することが可能であり、このような制御信号と加熱量との関係が直線30で表されることが制御部15の記憶部に予め記憶されている。このうち、ヒータ16のメーカは、直線30のうち実線部で示される範囲でヒータ16を使用することを高精度制御のために推奨しており、直線30のうち実線部よりも低出力側の破線部に対応する領域A、及び、高出力側の破線部に対応する領域Cでは機器の特性上精度が悪くなるとされている。
【0045】
ヒータ16を用いて高精度の恒温恒湿制御を行うためには、ヒータ16を直線30の実線部に対応する動作領域で使用することが好ましく、特に、実線部のうち低出力側に対応する領域B(省エネ動作領域)の範囲で動作させることとすれば高精度の恒温恒湿制御を省エネルギーで行うことができるのでより好ましい。そこで、本実施形態の空気調和装置10では、ヒータ16の動作点が領域Bとなるように冷却器14を制御する。
【0046】
ヒータ16の加熱量において、領域Bの下限(すなわち領域Aとの境界)に対応する下限閾値Tabと、領域Bの上限(すなわち領域Cとの境界)に対応する上限閾値Tbcが予め定められて制御部15の記憶部に記憶されている。また、記憶部には、下限閾値Tabに対応する制御信号St1が例えば単位mAの電流値で記憶されており、上限閾値Tbcに対応する制御信号St2が例えば単位mAの電流値で記憶されている。ここで、ヒータ16の制御信号について、St0<St1<St2<St3の関係が成立する。そして、領域Bを規定する制御信号St1,St2の間でヒータ16が動作するように冷却器14を制御する。
【0047】
ヒータ16の加熱量について領域Bの下限に対応する下限閾値Tabは、機器を高精度で動作させるための下限値として推奨されるものであり、例えば20%程度、より好ましくは15%程度に設定される。これに対し、領域Bの上限に対応する上限閾値Tbcは、冷却器14による冷却が過冷却となってヒータ16による再熱が過剰になっているか否かを判定するための出力値であり、例えば50%程度、より好ましくは45%程度に設定される。
【0048】
図4(b)に示すように、加湿器18は、制御信号をSh0からSh3の範囲で変化させることによって加湿量を0%から100%の範囲で調節することが可能であり、このような制御信号と加湿量との関係が直線32で表されることが制御部15の記憶部に予め記憶されている。このうち、加湿器18のメーカは、直線32のうち実線部で示される範囲で加湿器18を使用することを高精度制御のために推奨しており、直線32のうち実線部よりも低出力側の破線部に対応する領域A、及び、高出力側の破線部に対応する領域Cでは機器の特性上精度が悪くなるとされている。
【0049】
加湿器18を用いて高精度の恒温恒湿制御を行うためには、加湿器18を直線32の実線部に対応する動作領域で使用することが好ましく、特に、実線部のうち低出力側に対応する領域B(省エネ動作領域)の範囲で動作させることとすれば高精度の恒温恒湿制御を省エネルギーで行うことができるのでより好ましい。そこで、本実施形態の空気調和装置10では、加湿器18の動作点が領域Bとなるように冷却器14を制御する。
【0050】
加湿器18の加湿量において、領域Bの下限(すなわち領域Aとの境界)に対応する閾値Habと、領域Bの上限(すなわち領域Cとの境界)に対応する閾値Hbcが予め定められて制御部15の記憶部に記憶されている。また、記憶部には、下限閾値Habに対応する制御信号Sh1が例えば単位mAの電流値で記憶されており、上限閾値Hbcに対応する制御信号Sh2が例えば単位mAの電流値で記憶されている。ここで、加湿器18の制御信号について、Sh0<Sh1<Sh2<Sh3の関係が成立する。そして、領域Bを規定する制御信号Sh1,Sh2の間で加湿器18が動作するように冷却器14を制御する。
【0051】
加湿器18の加湿量について領域Bの下限に対応する下限閾値Habは、機器を高精度で動作させるための下限値として推奨されるものであり、例えば20%程度、より好ましくは15%程度に設定される。これに対し、領域Bの上限に対応する上限閾値Hbcは、冷却器14での過除湿のために加湿器18による加湿が過剰になっているか否かを判定するための出力値であり、例えば50%程度、より好ましくは45%程度に設定される。
【0052】
図5は、加熱および加湿と、冷却量および顕熱比との関係を示す表である。この表は、制御部15の記憶部に予め記憶されている。制御部15は、温度指示調節部17から入力されるヒータ制御信号を、
図4(a)に示した領域Bを規定する制御信号St1,St2と比較し、ヒータ16の動作点が領域A,B,Cのいずれに属するかを判定する。また、制御部15は、湿度指示調整部19から入力される加湿器制御信号を
図4(b)に示した領域Bを規定する制御信号Sh1,Sh2と比較し、加湿器18の動作点が領域A,B,Cにいずれに属するかを判定する。
【0053】
なお、制御部15は、温度指示調節部17から入力されるヒータ制御信号に対応する加熱量(%)を導出して下限閾値Tabおよび上限閾値Tbcと比較して、ヒータ16の動作点が領域A,B,Cのいずれに属するかを判定してもよい。また、制御部15は、湿度指示調整部19から入力される加湿器制御信号に対応する加湿量(%)を導出し、この加湿量を下限閾値Habおよび上限閾値Hbcと比較して、加湿器18の動作点が領域A,B,Cにいずれに属するかを判定してもよい。
【0054】
続いて、制御部15は、ヒータ16及び加湿器18の動作点がいずれも領域Bである場合を除いて、換言すればいずれか一方でも領域A又はCに属する場合に、冷却量およびSHFの少なくとも一方を調節する。具体的には、
図5に示す表において3行3列で示される場合分けにおいて、ヒータ16による加熱が領域Bで且つ加湿器18による加湿が領域Bに属する場合を除いて、冷却量およびSHFのすくなくとも一方が調節されることになる。次に、
図5における各場合の具体的な制御について
図6〜
図13を参照して説明する。
【0055】
図6(a)はヒータ16が領域Aで加湿器18が領域Aで動作している場合の制御を示す空気線図であり、
図6(b),(c)はこの場合のヒータ16および加湿器18の動作点変更をそれぞれ示すグラフである。
【0056】
この場合、ヒータ16及び加湿器18のいずれもが領域Aで動作しており、領域Bに届いていない状態である。したがって、この場合には、
図6(a)に示すように、冷却器14による冷却量を増加させる。すなわち、(2)の点を(2´)の点となるように冷却器14の動作点を変更して、(1)の点から(2´)の点を結ぶ直線について傾き(すなわちSHF)を維持しながら、その直線の長さ(すなわち冷却量)が長くなるように調節する。
【0057】
具体的には、制御部15は、冷却器14について、蒸発温度を変更することなく、冷却量を増加させる制御を行う。これにより、
図6(a)に示すように、ヒータ16の動作点が(3)から(3´)に変更となり、その結果、(2´)と(3´)を結ぶ直線の長さ、および、(3´)と(4)とを結ぶ直線の長さがそれぞれ長くなる。その結果、
図6(b)に示すように、ヒータ16の加熱量が増加されて領域Aから領域Bに変更され、
図6(c)に示すように、加湿器18による加湿量が増加されて領域Aから領域Bに変更される。これにより、ヒータ16および加湿器18の各動作点がそれぞれ領域Bに属することとなり、高精度の恒温恒湿制御が安定かつ省エネルギーで実行される状態となる。
【0058】
図7(a)はヒータ16が領域Aで加湿器18が領域Bでそれぞれ動作している場合の制御を示す空気線図であり、
図7(b),(c)はこの場合のヒータ16および加湿器18の動作点変更をそれぞれ示すグラフである。
【0059】
この場合、加湿器18の動作点は所望の領域Bに属しているが、ヒータ16の動作点が領域Aに属しており加熱量が不足している状態にある。したがって、この場合には、
図7(a)に示すように、冷却器14による冷却量およびSHFの両方を増加させる。すなわち、(2)の点を(2´)の点となるように冷却器14の動作点を変更して、(1)の点から(2´)の点を結ぶ直線の傾きを減少させる(すなわちSHFを増加させる)とともに、その直線の長さが長くなる(すなわち冷却量を増加させる)ように調節する。
【0060】
具体的には、制御部15は、冷却器14について、冷却量を増加させるとともに、蒸発温度を上昇させる制御を行う。これにより、
図7(a)に示すように、(2´)の点と(3)の点とを結ぶ直線の長さは長くなるが、(3)の点は不変であるため(3)の点と(4)の点を結ぶ直線の長さは変わらない。その結果、
図7(b)に示すように、ヒータ16の加熱量が増加されて領域Aから領域Bに変更され、
図7(c)に示すように、加湿器18の動作点は領域Bに維持されることになる。これにより、ヒータ16および加湿器18の各動作点がそれぞれ領域Bに属することとなり、高精度の恒温恒湿制御が安定かつ省エネルギーで実行される状態となる。
【0061】
図8(a)はヒータ16が領域Aで加湿器18が領域Cでそれぞれ動作している場合の制御を示す空気線図であり、
図8(b),(c)はこの場合のヒータ16および加湿器18の動作点変更をそれぞれ示すグラフである。
【0062】
この場合、ヒータ16の動作点が領域Aに属しており動作不足の状態にあり、加湿器18の動作点が領域Cに属しており過剰動作の状態にある。したがって、この場合には、
図8(a)に示すように、冷却器14について冷却量を維持しながらSHFを増加させる。すなわち、(2)の点を(2´)の点となるように冷却器14の動作点を変更して、(1)の点から(2´)の点を結ぶ直線の長さを変更することなく、その直線の傾きを減少させる(すなわちSHFを増加させる)。
【0063】
具体的には、制御部15は、冷却器14について、冷却量を維持しながら、蒸発温度を上昇させる制御を行う。これにより、
図8(a)に示すように、(1)の点と(2´)の点を結ぶ直線の長さは変わらないが、(2´)の点と(3´)の点とを結ぶ直線の長さは長くなり、(3´)の点と(4)の点とを結ぶ直線の長さは従前より短くなる。その結果、
図8(b)に示すように、ヒータ16の加熱量が増加されて領域Aから領域Bに移行し、
図8(c)に示すように、加湿器18による加湿量が低下して動作点が領域Cから領域Bに移行する。これにより、ヒータ16および加湿器18の各動作点がそれぞれ領域Bに属することとなり、高精度の恒温恒湿制御が安定かつ省エネルギーで実行される状態となる。
【0064】
図9(a)はヒータ16が領域Bで加湿器18が領域Aでそれぞれ動作している場合の制御を示す空気線図であり、
図9(b),(c)はこの場合のヒータ16および加湿器18の動作点変更をそれぞれ示すグラフである。
【0065】
この場合、ヒータ16の動作点は領域Bに属しているが、加湿器18の動作点が領域Aに属しており動作不足の状態にある。したがって、この場合には、
図9(a)に示すように、冷却器14について冷却量を増加させるとともにSHFを減少させる。すなわち、(2)の点を(2´)の点となるように冷却器14の動作点を変更して、(1)の点から(2´)の点を結ぶ直線の長さを従前より長くするとともに、その直線の傾きを増加させる(すなわちSHFを減少させる)。
【0066】
具体的には、制御部15は、冷却器14について、冷却量を増加させるとともに、蒸発温度を低下させる制御を行う。これにより、
図9(a)に示すように、(2´)の点と(3´)の点を結ぶ直線の長さは変わらないが、(3´)の点と(4)の点とを結ぶ直線の長さは長くなる。その結果、
図9(b)に示すように、ヒータ16の動作点は領域Bに維持され、
図9(c)に示すように、加湿器18による加湿量が増加して動作点が領域Aから領域Bに移行する。これにより、ヒータ16および加湿器18の各動作点がそれぞれ領域Bに属することとなり、高精度の恒温恒湿制御が安定かつ省エネルギーで実行される状態となる。
【0067】
図10(a)はヒータ16が領域Bで加湿器18が領域Cでそれぞれ動作している場合の制御を示す空気線図であり、
図10(b),(c)はこの場合のヒータ16および加湿器18の動作点変更をそれぞれ示すグラフである。
【0068】
この場合、ヒータ16の動作点は領域Bに属しているが、加湿器18の動作点が領域Cに属しており過剰動作した状態にある。したがって、この場合には、
図10(a)に示すように、冷却器14について冷却量を減少させるとともにSHFを増加させる。すなわち、(2)の点を(2´)の点となるように冷却器14の動作点を変更して、(1)の点から(2´)の点を結ぶ直線の長さを従前より短くするとともに、その直線の傾きを減少させる(すなわちSHFを増加させる)。
【0069】
具体的には、制御部15は、冷却器14について、冷却量を減少させるとともに、蒸発温度を上昇させる制御を行う。これにより、
図10(a)に示すように、(2´)の点と(3´)の点を結ぶ直線の長さは変わらないが、(3´)の点と(4)の点とを結ぶ直線の長さは短くなる。その結果、
図10(b)に示すように、ヒータ16の動作点は領域Bに維持され、
図10(c)に示すように、加湿器18による加湿量が減少して動作点が領域Cから領域Bに移行する。これにより、ヒータ16および加湿器18の各動作点がそれぞれ領域Bに属することとなり、高精度の恒温恒湿制御が安定かつ省エネルギーで実行される状態となる。
【0070】
図11(a)はヒータ16が領域Cで加湿器18が領域Aでそれぞれ動作している場合の制御を示す空気線図であり、
図11(b),(c)はこの場合のヒータ16および加湿器18の動作点変更をそれぞれ示すグラフである。
【0071】
この場合、ヒータ16の動作点が領域Cに属しており過剰動作の状態にあり、加湿器18の動作点が領域Aに属しており動作不足の状態にある。したがって、この場合には、
図11(a)に示すように、冷却器14について冷却量を維持しながらSHFを減少させる。すなわち、(2)の点を(2´)の点となるように冷却器14の動作点を変更して、(1)の点から(2´)の点を結ぶ直線の長さを変更することなく、その直線の傾きを増加させる(すなわちSHFを減少させる)。
【0072】
具体的には、制御部15は、冷却器14について、冷却量を維持しながら、蒸発温度を低下させる制御を行う。これにより、
図11(a)に示すように、(1)の点と(2´)の点を結ぶ直線の長さは変わらないが、(2´)の点と(3´)の点とを結ぶ直線の長さは短くなり、(3´)の点と(4)の点を結ぶ直線は従前より長くなる。その結果、
図11(b)に示すように、ヒータ16の加熱量が減少して領域Cから領域Bに移行し、
図11(c)に示すように、加湿器18による加湿量が増加して動作点が領域Aから領域Bに移行する。これにより、ヒータ16および加湿器18の各動作点がそれぞれ領域Bに属することとなり、高精度の恒温恒湿制御が安定かつ省エネルギーで実行される状態となる。
【0073】
図12(a)はヒータ16が領域Cで加湿器18が領域Bでそれぞれ動作している場合の制御を示す空気線図であり、
図12(b),(c)はこの場合のヒータ16および加湿器18の動作点変更をそれぞれ示すグラフである。
【0074】
この場合、ヒータ16の動作点は領域Cに属して過剰動作の状態にあるが、加湿器18の動作点が領域Bに属している。したがって、この場合には、
図12(a)に示すように、冷却器14について冷却量を減少させるとともにSHFを減少させる。すなわち、(2)の点を(2´)の点となるように冷却器14の動作点を変更して、(1)の点から(2´)の点を結ぶ直線の長さを従前より短くするとともに、その直線の傾きを増加させる(すなわちSHFを減少させる)。
【0075】
具体的には、制御部15は、冷却器14について、冷却量を減少させるとともに、蒸発温度を低下させる制御を行う。これにより、
図12(a)に示すように、(2´)の点と(3)の点を結ぶ直線の長さが従前より短くなるが、(3)の点と(4)の点とを結ぶ直線の長さは変わらない。その結果、
図12(b)に示すように、ヒータ16の動作点は領域Cから領域Bに移行し、
図12(c)に示すように、加湿器18の動作点は領域Bに維持される。これにより、ヒータ16および加湿器18の各動作点がそれぞれ領域Bに属することとなり、高精度の恒温恒湿制御が安定かつ省エネルギーで実行される状態となる。
【0076】
図13(a)はヒータ16が領域Cで加湿器18が領域Cでそれぞれ動作している場合の制御を示す空気線図であり、
図13(b),(c)はこの場合のヒータ16および加湿器18の動作点変更をそれぞれ示すグラフである。
【0077】
この場合、ヒータ16及び加湿器18のいずれもが領域Cに属しており、過剰動作した状態にある。したがって、この場合には、
図13(a)に示すように、冷却器14による冷却量を減少させる。すなわち、(2)の点を(2´)の点となるように冷却器14の動作点を変更して、(1)の点から(2´)の点を結ぶ直線の傾き(すなわちSHF)を維持しながら、その直線の長さ(すなわち冷却量)が短くなるように調節する。
【0078】
具体的には、制御部15は、冷却器14について、蒸発温度を変更することなく、冷却量を減少させる制御を行う。これにより、
図13(a)に示すように、ヒータ16の動作点が(3)から(3´)に変更となり、その結果、(2´)と(3´)を結ぶ直線の長さ、および、(3´)と(4)とを結ぶ直線の長さがそれぞれ短くなる。その結果、
図13(b)に示すように、ヒータ16の加熱量が減少されて領域Cから領域Bに変更され、
図13(c)に示すように、加湿器18による加湿量が減少されて領域Cから領域Bに変更される。これにより、ヒータ16および加湿器18の各動作点がそれぞれ領域Bに属することとなり、高精度の恒温恒湿制御が安定かつ省エネルギーで実行される状態となる。
【0079】
上述したように本実施形態の空気調和装置10によれば、ヒータ16の温度制御信号と加湿器18の湿度制御信号とに基づいて、制御部15は冷却器14を制御することで、冷却器14を一定出力で動作させてヒータ16及び加湿器18により恒温恒湿制御を行う場合に比べて、ヒータ16及び加湿器18を安定かつ省エネルギーで動作させることができ、その結果、高精度の恒温恒湿制御を安定かつ省エネルギーで実現することができる。
【0080】
また、冷却器14をヒータ16および加湿器18とは独立して制御した場合、ハンチング(制御の暴れ)が生じて動作が不安定になることがあるが、本発明のように冷却器14をヒータ16の温度制御信号と加湿器18の湿度制御信号とに基づいて制御することで上記のようなハンチングが生じるのを抑制できる。
【0081】
なお、本発明に係る空気調和装置は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることはもちろんである。