【実施例】
【0060】
これらの実施例は、単に例示のために過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、特に断りのない限り、重量による。溶媒はAlfa Aesar(ChemSealグレード)であり、更に精製することなく使用した。分離、単離、クロマトグラフィ、及び他の一般的用途に使用した溶媒は、EMD(Omnisolv Grade)から入手した。
【0061】
実施例全体にわたって、以下の省略形を使用する:M=モル;min=分;h=時間;equiv=当量;×=回数;g=グラム;mg=ミリグラム;mmol=ミリモル;L=リットル;mL=ミリリットル;rt=室温;aq=水溶液;RBF=丸底フラスコ。
【0062】
材料。
以下は、使用した市販の材料及び試薬の表である。
【表1】
【0063】
開示されているフェノール及び保護されたフェノール(エーテル)化合物の構造式
下記の表は、フェノレート塩を調製するために本出願で使用したフェノール化合物に関する構造式の概要を示す。フェノールは、市販されている、又は下記の合成実施例において調製される。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【0064】
フェノールの一般的合成
下記の実施例において、Biotage,Inc.(Charlottesville,Virginia,USA)から入手可能なISOLERAシステムを使用して、自動化フラッシュクロマトグラフィ(AFC)を行った。これらの精製のために、Biotage SNAP Ultraシリカカラムを、ヘキサン/酢酸エチル勾配混合物とともに使用した。
【0065】
全ての中間体及び生成物は、500MHz Bruker製の機器で
1H及び
13C核磁気共鳴(NMR)を使用して確認した。場合によっては、HRMSも入手した。
【0066】
特殊な反応を使用して、下記の合成実施例SE1に示すようにフェノール−3を調製し、合成した他のフェノールに関しては、一般的な反応スキームIに従った。
【0067】
合成実施例SE1:フェノール−3
【化5】
【0068】
標準的なジアゾ化手順(WO08131921;Bioorg.Med.Chem.Lett.2010,20,4193〜4195.)に従って上記のジアゾ化合物を合成し、その後、還元的環化を行ってフェノール−3を得た。
【0069】
本開示のフェノレート塩を調製するために使用した多数のフェノールを調製するために従った一般的な反応スキームIを、下記に示す。具体的な詳細は、各合成実施例に示す。
【0070】
一般的な反応スキームI.
【化6】
【0071】
パートA:クロスカップリング。保護されたフェノールAを、パラジウム又は銅触媒を用いたクロスカップリング条件にさらした。具体的な反応条件については、各個々の実施例を参照されたい。
【0072】
パラジウム触媒反応(Buchwald−Hartwigクロスカップリング):Buchwald、Hartwig、及び共同研究者らは、パラジウム触媒及び嵩高いホスフィン配位子を使用してハロゲン化アリールをヘテロ原子に変換することができる変換を、文献で報告している。以下の市販の配位子(Buchwaldにより開発された)が、ヘテロ原子がオルト位に導入されたベンゾトリアゾールフェノール類似体(化合物Bを参照)を合成するために使用されてきた。これらの配位子はまた、パラジウム触媒とすでに錯体形成された、触媒前駆体と呼ばれるものを購入することもできる。
【化7】
【0073】
銅触媒反応(Chan−Evans−Lamカップリング):銅もまた、アリールボロン酸とフェノール、アニリン、又はアリールチオールとの間のクロスカップリング反応を行うために使用することができる。これは、Kurti,L.;Czako.Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis,1
sted.Burlington:MA,2005,pp.464〜465に記載されているように、Ullmann縮合の改良法と考えられる。この反応は、銅塩に関して化学量論的であり、通常は周囲条件下で行われる。
【0074】
パートB:メチルエーテルの脱保護。メトキシエーテルベンゾトリアゾール(B,P=Me)をジクロロメタン(0.1M)中に溶解し、N
2下で撹拌しながら−78℃まで冷却した。三臭化ホウ素(保護フェノールに対して1当量)を滴下添加し、反応混合物をゆっくりと室温まで温めた。反応終了時(TLCにより分析)、水を滴下添加し、混合物を10min撹拌した。有機層を分離し、水層をDCMで抽出した(2x)。合わせた有機層をNaHCO
3飽和水溶液及びブラインで洗浄し、乾燥し(Na
2SO
4又はMgSO
4)、濾過し、濃縮した。残渣を精製(SiO
2)して、78〜98%の収率で生成物を得た。
【0075】
以下の合成実施例において、「エーテル」と称する化合物は保護フェノールであり、−OH基は代わりに「保護された水酸基」、すなわち、脱保護されてフェノール性水酸基を再形成する−OCH
3基であることに留意されたい。
【0076】
合成実施例SE2:エーテル−1及びフェノール−5
2−(3−ブロモ−2−メトキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール
【化8】
【0077】
パートA:臭素化。2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(100g、309mmol)を、スターラーバーを入れた1L丸底フラスコに入れ、クロロホルム(500mL)中に溶解した。これに、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(DBDMH)(45.95g、161mmol)を添加し、混合物をrtで終夜撹拌した。その後、混合物を濾過し、濃縮して暗赤色の残渣を得た。ジクロロメタン/エタノールから残渣を再結晶させて、白色の結晶を得た。母液を複数回再結晶させて、フェノール−5の純粋な生成物113g(91%収率)を得た。
【0078】
パートB:メチル化。パートAの反応生成物を、スターラーバーを入れた1L丸底フラスコに入れ、アセトニトリル(400mL)中に溶解した。炭酸カリウム(20.70g、150mmol)、その後、ヨードメタン(3.3mL、52.5mmol)を添加した。混合物をrtで終夜撹拌した。その後、反応混合物を部分的に濃縮し、酢酸エチルで希釈し、セライトで濾過した。溶液を濃縮し、粘稠なベージュ色の油状物を得たが、これは時間が経つにつれて最終的には凝固して、エーテル1の生成物20.8g(定量的収率)を得た。
【0079】
合成実施例SE3:フェノール−6
2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−((トリイソプロピルシリル)オキシ)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化9】
【0080】
パートA.標準的な手順に従って、トリイソプロピルクロロシラン(TIPS−Cl)を用いて、合成実施例SE2の反応生成物をシリル化した。
【0081】
パートB.スターラーバーを入れ、N
2を充満させた丸底フラスコ中に、パートAの反応生成物(1.57g、2.81mmol)を入れた。THF(20mL)を添加し、フラスコを−78℃まで冷却した。n−ブチルリチウム(1.8mL、2.81mmol)を添加し、混合物をゆっくりとrtまで温め、3h撹拌した。その後、飽和塩化アンモニウムで反応をクエンチし、生成物をEtOAcで抽出した(3×)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し、濾過した。AFCによって粗残渣を精製して、無色の固体(0.74g、55%収率)を得た。
【0082】
合成実施例SE4:フェノール−7
2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ブトキシ−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化10】
【0083】
スターラーバー及び活性化4Åモレキュラーシーブをそれぞれ備えた、3つの火炎乾燥した40−ドラムバイアル中に、合成実施例SE1で調製したエーテル1(4.179g、10.04mmol)、炭酸セシウム(4.91g、15.06mmol)、アリルパラジウムクロリドダイマー(18.4mg、0.5mol%)、及びRockPhos配位子(23.4mg、0.5mol%)を入れた。各バイアルにセプタムキャップをはめ、排気し、N
2を再び充満させた(3×)。トルエン(10mL)、続いて無水n−ブタノール(1.8mL、20.08mmol)を各バイアルに添加した。ChemGlass反応ブロックにバイアルをセットし、100℃まで72h加熱した。その後、反応混合物を合わせ、セライトで濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィで粗残渣を精製して、淡黄色の固体を得た(9.80g、79%収率)。パートB(一般的な反応スキームI)に従って、フラッシュカラムクロマトグラフィで精製した後、遊離フェノールをベージュ色の固体として単離した(8.50g、85%収率)。
【0084】
合成実施例SE5:フェノール−8
2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−6−(ヘキシルアミノ)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化11】
【0085】
スターラーバーを入れた3つの火炎乾燥したバイアルに、合成実施例SE1で調製したエーテル1(1.66g、4mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(73.3mg、0.08mmol)、XPhos配位子(95.3mg、0.2mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(538mg、5.6mmol)、及び1−ヘキシルアミン(0.74mL、5.6mmol)を入れた。バイアルにセプタムキャップをはめ、排気し、N
2を再び充満させた。ジオキサン(20mL)を添加し、反応物を130℃まで16h加熱した。その後、混合物をrtまで冷却し、合わせ、EtOAcで希釈し、セライトで濾過した。残渣をAFCで精製した。ベージュ色の固体を単離した(3.88g、74%収率)。パートB(一般的な反応スキームI)に従って、黄色の固体として遊離フェノールを得た(3.32、88%収率)。
【0086】
合成実施例SE6:フェノール−9
2−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(m−トリルオキシ)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化12】
【0087】
スターラーバー及び活性化4Åモレキュラーシーブをそれぞれ備えた、2つの火炎乾燥した40−ドラムバイアルに、合成実施例SE1で調製したエーテル1(4.16g、10mmol)、リン酸カリウム(4.25g、20mmol)、酢酸パラジウム(II)(45mg、2mol%)、及びRockPhos配位子(93mg、2mol%)を入れた。各バイアルにセプタムキャップをはめ、排気し、N
2を再び充満させた(3×)。トルエン(10mL)、続いてm−クレゾール(1.3mL、12mmol)を各バイアルに添加した。ChemGlass反応ブロックにバイアルをセットし、100℃まで16h加熱した。その後、反応混合物を合わせ、セライトで濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィで粗残渣を精製して、ベージュ色の固体を得た(7.07g、80%収率。パートB(一般的な反応スキームI)に従って、フラッシュカラムクロマトグラフィで精製した後、遊離フェノールをベージュ色の固体として単離した(6.50g、98%収率)。
【0088】
合成実施例SE7:フェノール−11
2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−6−((4−ヘキシルフェニル)アミノ)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化13】
【0089】
スターラーバーを入れた3つの火炎乾燥したバイアルに、合成実施例SE1で調製したエーテル1(1.66g、4mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(73.3mg、0.08mmol)、XPhos配位子(95.3mg、0.2mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(538mg、5.6mmol)、及び4−ヘキシルアニリン(1mL、5.6mmol)を入れた。バイアルにセプタムキャップをはめ、排気し、N
2を再び充満させた。ジオキサン(20mL)を添加し、反応物を130℃まで16h加熱した。その後、混合物をrtまで冷却し、合わせ、EtOAcで希釈し、セライトで濾過した。残渣をAFCで精製した。ベージュ色の固体を単離した(3.88g、74%収率)。パートB(一般的な反応スキームI)に従って、黄色の固体として遊離フェノールを得た(4.67g、96%収率)。
【0090】
合成実施例SE8:フェノール−13
6,6’−アザンジイルビス(2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)
【化14】
【0091】
パートA.スターラーバーを取り付けたオーブン乾燥したSchlenkフラスコに、4Åモレキュラーシーブ、ナトリウムtert−ブトキシド(23.37mmol、2.25g)、Pd
2(dba)
3(0.33mmol、306mg)、XPhos(0.83mmol、398mg)及び合成実施例SE1で調製したエーテル1(16.69mmol、6.95g)を入れた。次に、フラスコを排気し、N
2をフラッシュし(3×)、ジオキサン中のアンモニア(0.5M、100mL)をカニューレで添加した。Schlenkフラスコを閉じ、130℃に16h加熱した。その後、反応混合物をEtOAcで希釈し、濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィで粗油状物を精製して、ベージュ色の固体を得た。
【0092】
パートB.パートAの生成物をジクロロメタン(150mL)中に溶解し、N
2下で撹拌しながら−78℃まで冷却した。三臭化ホウ素(17.10mmol、1.6mL)を滴下添加し、反応混合物をゆっくりとrtまで温めた。反応終了時(TLCにより分析)、水を滴下添加し、混合物を10min撹拌した。有機層を分離し、水層をDCMで抽出した(2x)。合わせた有機層をNaHCO
3飽和水溶液及びブラインで洗浄し、乾燥し(Na
2SO
4又はMgSO
4)、濾過し、濃縮した。熱アセトンから残渣を再結晶させて、黄色の結晶性固体を得た(3.38g、エーテル1から61%収率)。
【0093】
合成実施例SE9:フェノール−14
6,6’−(メチルアザンジイル)ビス(2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)
【化15】
【0094】
パートA.合成実施例SE6、パートAの反応生成物(12.79mmol、8.8g)を、ジメチルホルムアミド(120mL)中に溶解し、これに、N
2流下でrtにて、水素化ナトリウム(14.07mmol、0.56g)を添加した。混合物を10min撹拌し、次に、ヨードメタン(14.07mmol、0.88mL)を添加し、撹拌を更に2h続けた。塩化アンモニウム飽和水溶液で反応をクエンチし、EtOAcで抽出した(3×)。合わせた有機層を水、次いでブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、濃縮した。更に精製は行わなかった。
【0095】
パートB.パートBの生成物をジクロロメタン(150mL)中に溶解し、
N
2下で撹拌しながら−78℃まで冷却した。三臭化ホウ素(17.10mmol、1.6mL)を滴下添加し、反応混合物をゆっくりとrtまで温めた。反応終了時(TLCにより分析)、水を滴下添加し、混合物を10min撹拌した。有機層を分離し、水層をDCMで抽出した(2x)。合わせた有機層をNaHCO
3飽和水溶液及びブラインで洗浄し、乾燥し(Na
2SO
4又はMgSO
4)、濾過し、濃縮した。熱アセトンから残渣を再結晶させて、黄色の結晶性固体を得た(6.74g、エーテル1から60%収率)。
【0096】
合成実施例SE10:フェノール−15
6,6’−チオビス(2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)
【化16】
【0097】
スターラーバーを入れた火炎乾燥バイアルに、3−ブロモ−2−メトキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェニル)−2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール(0.416g、1mmol)、チオ酢酸カリウム(0.057g、0.5mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.023g、0.025mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.028g、0.05mmol)及びリン酸カリウム(0.127g、0.6mmol)を入れた。次にバイアルを排気し、N
2を流し(3×)、トルエン(0.5mL)及びアセトン(0.25mL)を添加した。反応混合物を130℃で72h撹拌した。その後、混合物を冷却し、濾過し、フラッシュカラムクロマトグラフィで精製して、白色の固体としてフェノール−15を得た(0.240g、68%収率)。実施例10、パートBの手順に従って、白色の固体として生成物を得た(0.230g、99%収率)。
【0098】
合成実施例SE11:フェノール17
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−((3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化17】
【0099】
スターラーバーを入れた250mLのSchlenkフラスコに、SE2のエーテル−1(20.0g、48.03mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(1.04g、1.14mmol)、XPhos配位子(1.35g、2.75mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(7.63g、79.4mmol)、及び3,5−ビス(トリフルオロメチル)アニリン(8mL、51.36mmol)を入れた。Schlenkフラスコを排気し、N
2を再び充満させた。ジオキサン(200mL)を添加し、反応物を130℃まで16h加熱した。その後、混合物をrtまで冷却し、EtOAcで希釈し、セライトで濾過し、濃縮した。残渣をAFCで精製した。褐色の固体を単離した(26.8g、98%収率)。パートB(一般的な反応スキームI)に従って、黄色の固体として遊離フェノールを得た(21.3g、82%収率)。
【0100】
合成実施例SE12:フェノール18
2−(2H−トリアゾール−2−イル)−6−((4−(パーフルオロオクチル)フェニル)アミノ)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化18】
【0101】
スターラーバーをそれぞれ備えた、2つの火炎乾燥した40−ドラムバイアルに、SE8、パートAのアニリン副生成物(3−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−2−メトキシ−5−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)アニリン)(1.162g、3.30mmol)、1−ブロモ−4−(ヘプタデカフルオロオクチル)ベンゼン(2.0g、3.30mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(60.4mg、0.066mmol)、XPhos配位子(80mg、0.163mmol)、及びナトリウムtert−ブトキシド(444mg、4.62mmol)を入れた。各バイアルにセプタムキャップをはめ、排気し、N
2を再び充満させた。ジオキサン(20mL)を各バイアルに添加し、ChemGlass反応ブロックにバイアルをセットし、130℃まで16h加熱した。その後、混合物をrtまで冷却し、EtOAcで希釈し、合わせ、セライトで濾過し、濃縮した。残渣をAFCで精製した。褐色の固体を単離した(4.41g、79%収率)。パートB(一般的な反応スキームI)に従って、黄色の固体として遊離フェノールを得た(3.41g、79%収率)。
【0102】
合成実施例SE13:フェノール19
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(p−トリルチオ)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノールベンゾトリアゾール
【化19】
【0103】
スターラーバーを入れた火炎乾燥したバイアルに、2−(2H−ベンゾ[1,2,3]トリアゾール−2−イル)−6−ブロモ−4−(2,4−ジメチルペンタン−2−イル)フェノール(2.88g、6.92mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.317g、0.346mmol)、1,1’ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.383g、0.692mmol)、リン酸カリウム(1.76g、8.30mmol)、及び4−メチルベンゼンチオールトルエン(1.031g、8.30mmol)を入れた。バイアルにセプタムキャップをはめ、排気し、N
2を再び充満させた。トルエン(14mL)を添加し、反応物を110℃まで16h加熱した。その後、混合物をrtまで冷却し、合わせ、EtOAcで希釈し、セライトで濾過した。残渣をAFCで精製した。ベージュ色の固体を単離した(3.09g、97%収率)。パートB(一般的な反応スキームI)に従って、象牙色の固体として遊離フェノールを得た(2.70g、90%収率)。
【0104】
合成実施例SE14:フェノール20
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(p−トリルスルフィニル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化20】
【0105】
以下は、文献の手順を改変した(Org Lett.2003,5,235)。スターラーバーを入れたバイアルに、SE13のアリールスルフィド(1.2g、2.69mmol)を加えた。エタノール(7mL)及び過酸化水素(30%、1.5mL)を添加し、混合物にN
2を数分間バブリングした。スカンジウムトリフラート(0.265g、0.539mmol)を添加し、混合物をrtで終夜撹拌させておいた。その後、H
2O(2mL)で反応をクエンチし、濾過した。AFCで濾液を精製し、白色の固体を得た(0.764g、61%収率)。母液から再結晶させて更に0.167gの生成物を得、合計0.931gの生成物を得た(75%収率)。
【0106】
合成実施例SE15:フェノール21
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−トシル−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール
【化21】
【0107】
SE13のアリールスルフィド(1.5g、3.366mmol)を、スターラーバーを入れたバイアル中でジクロロメタン(17mL)中に溶解した。m−クロロ過安息香酸50wt%(2.56g、7.40mmol)を添加し、TLCによる終了まで反応物を撹拌した。次に、NaHCO
3飽和水溶液で反応をクエンチし、有機層を分離し、乾燥し(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮した。EtOAcで洗浄し濾過して、これを精製した。白色の固体を得た(1.34g、83%収率)。
【0108】
合成実施例SE16:フェノール22
6,6’−チオビス(2−(2H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)
【化22】
【0109】
文献の手順(Org Lett,1999,1,189)を使用して、SE10の6,6’−チオビス(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)を酸化した。6,6’−チオビス(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)(7.39mmol、5.0g)を、スカンジウムトリフラート(0.74mmol、364mg)及び過酸化水素・尿素付加物(8.5mmol、820mg)とともに、エタノール(5mL)中に溶解した。反応物を80℃で終夜撹拌し、白色の沈澱物を濾過し、水及びエタノールで洗浄した。スルホキシド:スルホンの2:1混合物を単離した(4.18g、81%収率)。
【0110】
合成実施例SE17:フェノール23
6,6’−スルホニルビス(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)
【化23】
【0111】
実施例24と同様にして、6,6’−スルホニルビス(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)を合成した。SE10のアリールスルフィド(4.5g、6.6mmol)を、スターラーバーを入れたフラスコ中でジクロロメタン(33mL)中に溶解した。m−クロロ過安息香酸50wt%(7.40mmol、5.05g)を添加し、TLCによる終了まで反応物を撹拌した。次に、NaHCO
3飽和水溶液で反応をクエンチし、有機層を分離し、乾燥し(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮した。EtOAcで洗浄し濾過して、これを精製した。白色の固体を得た(2.9g、62%収率)。
【0112】
合成実施例SE18:フェノール24
6,6’−(オクタデシルアザンジイル)ビス(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2,4,4−トリメチルペンタン−2−イル)フェノール)
【化24】
【0113】
パートA.SE8のパートAの反応生成物(4.0g、5.81mmol)をジメチルホルムアミド(60mL)中に溶解し、これに、N
2流下でrtにて水素化ナトリウム(6.40mmol、256mg)を添加した。混合物を10min撹拌し、次に、1−ヨードオクタデカン(6.40mmol、2.43g)を添加し、撹拌を更に2h続けた。塩化アンモニウム飽和水溶液で反応をクエンチし、EtOAcで抽出した(3×)。合わせた有機層を水、次いでブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、濃縮した。更に精製は行わなかった。
【0114】
パートB.パートAの生成物をジクロロメタン(40mL)中に溶解し、N
2下で撹拌しながら−78℃の温度まで冷却した。三臭化ホウ素(12.20mmol、1.2mL)を滴下添加し、反応混合物をゆっくりとrtまで温めた。反応終了時(TLCにより分析)、水を滴下添加し、混合物を10min撹拌した。有機層を分離し、水層をDCMで抽出した(2x)。合わせた有機層をNaHCO
3飽和水溶液及びブラインで洗浄し、乾燥し(Na
2SO
4又はMgSO
4)、濾過し、濃縮して、粘性のある油状物を得た(5.16g、97%収率)。
【0115】
フェノレート塩の一般的合成
上述のフェノールを用いて、下記の合成経路のうちの1つを使用してフェノレート塩を調製した。塩を調製するために使用した試薬を表A及びBに示し、形成したフェノレート塩を下記の表1にまとめている。
【0116】
合成手順
アルコキシド経路
マグネチックスターラーバー、冷却器及び滴下ロートを取り付けた2口RBFにおいて、フェノール出発物質を10〜40%でTHFに添加する。溶液を撹拌し、フェノール出発物質の全てが溶解するまで、窒素下で加熱還流する。窒素下で、滴下ロートからRBFに化学量論量の金属アルコキシド原液を滴下添加する。溶液を1〜36時間還流する。減圧して溶液をストリッピングし、回収した粉末を真空乾燥する。
【0117】
水素化物経路
マグネチックスターラーバー、還流冷却器、窒素注入口、及び栓を付けた口を備えた乾燥した3口RBFに、無水メタノールを加える。金属水素化物をRBFに添加し、窒素下で30分間還流する。使用される水素化物の量は、使用されるフェノールに対して1〜5%化学量論的に過剰であり、使用されるフェノールの量は典型的には10〜50%固体である。30分後、反応物を室温まで冷却し、3つ目の口の栓をはずし、スパーテルで数回に分けてフェノールを加えることによって、化学量論量のフェノールを反応物に添加する。反応混合物に再び栓を付け、窒素下で24時間撹拌し、この時点で反応混合物を真空濾過し、真空乾燥する。本発明者らは、化学量論量よりも少ない量のカチオンを使用する化学量論的に過少の化合物、及び化学量論的に過剰量のカチオンを使用する化学量論的に過剰の量もまた調製した。
【0118】
金属経路 (Metal Route)
1つのフラスコで、ゼロ酸化状態の金属をアルコールとともに撹拌し、その間に、別のフラスコで適切な有機溶媒中でフェノールを撹拌した。典型的な溶媒はトルエンであった。金属がアルコールで完全に分解されたら、1つのフラスコに溶液を合わせて入れた。得られた沈澱物を真空濾過し、メタノールで洗浄し、真空乾燥した。
【0119】
代替経路
これらの錯体を製造するために別の代替経路が想定され得る。これらの経路は、フェノールを、ブチルリチウムなどの有機金属と反応させることを含み得る。
【0120】
材料
以下は、フェノレート塩を調製するために使用した市販の材料及び試薬の表である。
【表3】
【表4】
【表5】
【0121】
計算データ
上述したように、これらの塩化合物の予期せぬ特徴は、1個、2個、3個又はそれ以上のフェノレートで構成される複数の金属中心をもつ錯体を形成することである。本発明者らは、これらの化合物を高分子塩組成物と呼ぶ。分かりやすくするために、高分子塩組成物は、標準的な高分子命名法を使用して単量体、二量体、三量体などと称する。この特徴を実証するために、以下の一般化された反応スキームを使用して、いくつかのモデル化合物について反応熱ΔH
rxnを計算した。
【化25】
【0122】
まず、B3LYP密度関数及びMIDI!基底関数系を用いて構造を最適化し、その後、振動数計算を行って構造が極小であることを確認して、反応熱を算出した。B3LYP密度関数及び6−31G(d,p)基底関数系を用いて最適化して、形状を更に精密化した。B3LYP/6−31G(d,p)電子エネルギーから反応熱を計算した。報告した反応熱は、金属中心の数に対して正規化されている。全ての計算処理は、NWChem6.5(M.Valiev,E.J.Bylaska,N.Govind,K.Kowalski,T.P.Straatsma,H.J.J.van Dam,D.Wang,J.Nieplocha,E.Apra,T.L.Windus,W.A.de Jong,”NWChem:a comprehensive and scalable open−source solution for large scale molecular simulations”Comput.Phys.Commun.181,1477,2010)を用いて行った。結果を表2に報告している。
【表6】
【0123】
NMRデータ
サンプル調製:
この試験で使用した重水素化溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)又はベンゼンであった。溶媒は、親フェノールと金属錯体の両方の可溶性に基づいて選択した。更に、溶媒は、錯体中の配位子を置き換えることによって結合を妨害しないものであるべきである。選択した重水素化溶媒の粘度に対する溶質濃度の影響が無視できるように、調製するサンプルの濃度は低く保った。重水素化溶媒の粘度が低い(大部分の有機溶媒)場合、サンプルは、5mmのNMRチューブではなく3mmのNMRチューブ内で調製して、チューブ内での対流を抑制した。
【0124】
測定及びデータ処理
拡散測定は、Bruker 500MHz又はBruker 600MHz NMR分光計のいずれかにおいて行った。勾配は、重水サンプルを使用して適切に校正した。標準的なBruker 2D−DOSYシーケンスledbpgp2sを使用した。ポリマー以外のサンプルでは、Δ=75ms及びδ=3msというデフォルト設定で十分である。錯体又は会合体のサイズが1nmより大きい半径を有すると予想される場合、Δを大きくすることが必要な場合がある。DOSYパルスシーケンスの説明に関しては、Antalek,B.,Concepts in Magnetic Resonance,14(4),225〜258(2002)を参照されたい。
【0125】
データは、Bruker Top Spinソフトウェアを使用して処理した。これは、対象の化合物とサンプル中の残留単量体又は他の不純物との間にスペクトルの重なりがない場合、最も適している。各データ点に関して単一成分による指数関数フィットを選択したことが、非常に功を奏した。水又は主溶媒である重水素化溶媒の拡散係数をサンプル間の内部標準として使用して、無希釈の(neat)重水素化溶媒と比較して溶液の粘度が大きく変化しなかったことを確認することができる。分析物の拡散係数はm
2/s単位で測定する。
【0126】
出発物質及びフェノレート錯体の拡散スペクトルを重ね合わせて、拡散係数の違いを容易に可視化することができる。
【0127】
錯体の多くでプロトンスペクトルは出発物質とかなり異なっている。1つ目の違いは、出発物質において約12ppmに観察されるOHプロトンが消失したことである。
【0128】
多くの共鳴線の分裂もまた、プロトンスペクトルにおいて観察される。例えば、イソ−C8基にある2個のt−ブチル基は、出発物質において約0.78ppmのピークを有する単一共鳴線である。反応して金属錯体を形成すると、この共鳴線は分裂して見えることが多い。この例では(
図1に示す)、共鳴線は6つの別個の幅の狭いピークに分裂する。これは、異なる分子上の異なるt−ブチル基が異なる磁場環境にある結果である。交換NMR実験を行ったが、NOESY実験を使用して、錯体中の複数のt−ブチル共鳴線の間で化学交換は観察されなかった。
【0129】
経験的関係を使用して、会合数を算出した。log−logプロットで、分子量に対して拡散係数をプロットする。いくつかの参考文献によれば、分子が同じようなフラクタル指数を有する場合、直線関係となるはずである(Auge,S.et al.;J.Phys.Chem.B,113,1914〜1918,(2009).Neufeld,R.,Stalke,D.;Chem.Sci.,DOI:10.1039/c5sc00670h,(2015).)。
【0130】
線形回帰により、分子量のLogを拡散係数のlogと関連づける実験式が得られる。ベンゼンでは:
Log M=−(1/0.73825)*(Log D+6.99798)
及びTHFでは:
Log M=−(1/0.66235)*(Log D+7.11205)
これらの関係を使用して、形成するフェノレート錯体の分子量を推定する。結果を表3に報告している。
【表7-1】
【表7-2】
【0131】
金属錯体の熱安定性
熱重量分析(TGA)によって、フェノール及びフェノレートの熱安定性を測定した。使用した機器は、TA Instruments製のQ500モデルであった。手順としては、乾燥したサンプルを、窒素下で10℃/minで450℃の温度まで加熱した。開始温度は約35℃であり、典型的なサンプルサイズは5mgであった。5%、10%、及び20%の重量減少に関して温度を表4に報告している。場合によっては、正確な重量減少を報告するために、吸収された溶媒又は水分を蒸発させる必要があった。これは、サンプルを180℃以下の温度まで加熱し、サンプルを室温まで再び冷却し、その後450℃の温度まで再加熱することによって行った。
【表8】
【0132】
実施例1〜8及び比較例CE−1〜CE−8
ステップA−配合添加剤の調製
サンプルを調製するために、ポリプロピレン中に添加剤の1つを乾式混合した。濃度は下記の表5に記載している。コニカル二軸押出機において、材料を配合した。押出温度は約250℃〜300℃の範囲であった。押出速度は5〜7lbs/hrの範囲であった。使用した樹脂はMF−650X(PP−1)又はMF−650W(PP−2)のいずれかであり、両方の樹脂とも、LyondellBasellから購入した。
【0133】
ステップB−抗酸化能力の判定
ASTM D3895と類似した修正酸化誘導時間(OIT)テストを実施した。修正テストでは、2〜6mgのサンプルをアルミニウムパンに入れ、示差走査熱量計(DSC)において窒素下で190℃まで加熱した。次に、雰囲気を21%酸素及び78%窒素の雰囲気に交換し、記録されるサーモグラム上に発熱の急増が表示されるまで、温度を180℃〜200℃に維持した。その後、酸素含有環境への曝露から発熱開始までの時間を、誘導時間と定義した。表5に示すデータは、3つのサンプルの平均である。
【表9】