(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記Aブロックが、ペルフルオロビニルエーテルモノマー及びペルフルオロアリルエーテルモノマーのうちの少なくとも1つに由来する繰り返し二価モノマー単位を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
前記Bブロックセグメントが、TFE、硬化部位モノマー、ペルフルオロビニルエーテルモノマー、ペルフルオロアリルエーテルモノマー、又はこれらの組み合わせに由来する繰り返し二価モノマー単位を更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
前記粉砕可能なフッ素化ブロックコポリマーが、前記粉砕可能なフッ素化ブロックコポリマーの重量に基づいて、0.05重量%〜1重量%のヨウ素を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
前記Aブロックが、30〜85重量%のTFE、5〜40重量%のHFP、及び5〜55重量%のVDFを含む、請求項1〜7及び11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用する場合、用語
「a」、「an」、及び「the」は互換可能に使用され、1以上を意味する。
「及び/又は」は、述べられた事例の一方又は両方が起こり得ることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。
「主鎖」とは、ポリマーの主な連続鎖を指す。
「コポリマー」は、少なくとも2種の異なる共重合したモノマー(すなわち、同一の化学構造を有さないモノマー)を含むポリマー材料を指し、ターポリマー(3種の異なるモノマー)、テトラポリマー(4種の異なるモノマー)などを包含する。
「架橋」とは、予め形成したポリマー鎖を、化学結合又は化学的な基を使用して連結することを指す。
「硬化部位」は、架橋に関与する場合がある、官能基を指す。
「ガラス転移温度」又は「T
g」は、ポリマー材料がガラス状態からゴム状態に転移する温度を指す。ガラス状態は、典型的には、例えば、脆く、剛直な、剛性の、又はこれらの組み合わせである材料に付随する。対照的に、ゴム状態は、典型的には、例えば、可撓性の材料及びエラストマー材料に付随する。
「共重合」とは、モノマーが一緒に重合してポリマー主鎖を形成することを指す。
「粉砕可能な」は、ゴム用ミル及び内部ミキサ上で加工される材料の能力である。
「モノマー」は、重合を経てその後ポリマーの基本的構造の部分を形成することができる分子である。
「全フッ素化」とは、全ての水素原子がフッ素原子に置換されている、炭化水素から得られる基又は化合物を意味する。但し、全フッ素化化合物は、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子のような、フッ素原子及び炭素原子以外の原子を更に含有してもよい。
「ポリマー」とは、共重合したモノマーの単位を含む、マクロ構造を指す。
【0008】
また、本明細書において、端点による範囲の記載には、その範囲内に包含される全ての数が含まれる(例えば、1〜10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる。)。
【0009】
また、本明細書において、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数(例えば少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)が含まれる。
【0010】
本開示は、特に高温で良好な引張り強さ及び圧縮永久歪みを有するポリマーに関する。更に、ポリマーは、例えば粉砕可能であることにより、エラストマーと同様に加工可能でなければならない。
【0011】
本開示は、フッ素化ブロックコポリマーを対象とする。「ブロックコポリマー」は、化学的に異なるブロック又は配列が互いに共有結合しているポリマーである。本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、少なくとも2種の異なるポリマーブロックを含み、Aブロック及びBブロックと呼ばれる。Aブロック及びBブロックは、異なる化学的組成及び/又は異なるガラス転移温度を有する。
【0012】
本開示のAブロックは、半結晶性セグメントである。示差走査熱量計(DSC)で分析した場合、ブロックは少なくとも1つの70℃より高い融点温度(T
m)、及び例えば0J/g(ジュール/グラム)より大きい、又は更には0.01J/gより大きい測定可能なエンタルピーを有する。エンタルピーを求めるには、本明細書に開示した試験を使用し、DSCにより測定した融解転移の曲線の下の面積により、ジュール/グラム(J/g)として表す。
【0013】
Aブロックは、少なくとも次のモノマー、すなわち、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びフッ化ビニリデン(VDF)に由来するコポリマーである。一実施形態では、Aブロックは、(30〜85重量%のTFE、5〜40重量%のHFP、及び5〜55重量%のVDF)、(30〜75重量%のTFE、5〜35重量%のHFP、及び5〜50重量%のVDF)、又は更には(40〜70重量%のTFE、10〜30重量%のHFP、及び10〜45重量%のVDF)を含む。
【0014】
ペルフルオロビニルエーテル及びペルフルオロアリルエーテルモノマーなど、追加のモノマーが更にAブロック中に更に組み込まれてもよい。典型的には、これらの追加のモノマーを使用するには、使用する他のモノマーに対し、10重量%、5重量%、又は更には1重量%の百分率にする。
【0015】
本開示において使用し得るペルフルオロビニルエーテルの例としては、式CF
2=CF−O−R
f(式中、R
fは、0、又は1個以上の酸素原子、及び12個以下、10個以下、8個以下、6個以下、又は更には4個以下の炭素原子を含有し得る全フッ素化脂肪族基を表す。)に相当するものが挙げられる。例示的な全フッ素化ビニルエーテルは、式CF
2=CFO(R
afO)
n(R
bfO)
mR
cf(式中、R
af及びR
bfは、1〜6個の炭素原子、特に2〜6個の炭素原子の異なる直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して、0〜10であり、R
cfは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。)に相当するものである。全フッ素化ビニルエーテルの具体例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル(PPVE−1)、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテル、CF
2=CFOCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
3、及びCF
3−(CF
2)
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF=CF
2が挙げられる。
【0016】
本開示において使用可能なペルフルオロアリルエーテルの例としては、式CF
2=CF(CF
2)−O−R
f[式中、R
fは、0、又は1個以上の酸素原子、及び10個以下、8個以下、6個以下、又は更には4個以下の炭素原子を含有し得る全フッ素化脂肪族基を表す。]に相当するものが挙げられる。全フッ素化アリルエーテルの具体例としては、CF
2=CF
2−CF
2−O−(CF
2)
nF(式中、nは、1〜5の整数である。)及びCF
2=CF
2−CF
2−O−(CF
2)
x−O−(CF
2)
y−F(式中、xは、2〜5の整数であり、yは、1〜5の整数である。)が挙げられる。全フッ素化アリルエーテルの具体例としては、ペルフルオロ(メチルアリル)エーテル(CF
2=CF−CF
2−O−CF
3)、ペルフルオロ(エチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(n−プロピルアリル)エーテル、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルアリルエーテル、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルアリルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルアリルエーテル、ペルフルオロ−メトキシ−メチルアリルエーテル、及びCF
3−(CF
2)
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF
2CF=CF
2、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
本開示の一実施形態では、フッ素化ブロックコポリマーは少なくとも1つのAブロックポリマー単位を含み、各Aブロックが0℃、5℃、10℃、15℃、又は更には20℃より高く、かつ100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、又は更には50℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。Aブロック及びBブロックのガラス転移は、ポリマーゴム上でのDSC測定が困難な場合があるため、硬化試料のトーションレオロジーをTg測定に使用してもよい。下の実施例セクションに記載の方法を使用して、硬化試料上でトーションレオロジーを実施する際、2つの転移が報告されるが、それは、一次転移でありBブロックのガラス転移と関連付けられたT
αと、Aブロックのガラス転移と関連付けられた二次のより高い転移であるT
βである。
【0018】
一実施形態では、半結晶性セグメントの重量平均分子量は、少なくとも1000、5000、10000、又は更には25000ダルトン、かつ最大400000、600000、又は更には800000ダルトンである。
【0019】
Bブロックは、少なくとも次のモノマー、すなわち、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びフッ化ビニリデン(VDF)に由来するコポリマーである。一実施形態では、Bブロックは、(25〜65重量%のVDF及び15〜60重量%のHFP)、又は更には(35〜60重量%のVDF及び25〜50重量%のHFP)を含む。
【0020】
上述のように、TFE、ペルフルオロビニルエーテル及びペルフルオロアリルエーテルモノマーなど、追加のモノマーが更にBブロック中に組み込まれてもよい。典型的には、これらの追加のモノマーを使用するには、Bブロックの30、20、10、5、又は更には1重量%未満の百分率にする。
【0021】
一実施形態では、本開示のBブロックは非晶質セグメントであり、長距離秩序がないことを意味する(即ち、長距離秩序では、最近接隣接物によるものより大きな巨大分子の配列及び配向があると理解される)。非晶質セグメントは、DSCで検出可能な結晶性の特性を有さない。DSC分析した場合、Bブロックは、DSCで2ミリジュール/gより大きいエンタルピーを有する融点又は溶融転移を有さないであろう。
【0022】
別の実施形態では、本開示のBブロックは半結晶性であり、ブロックは、DSCで測定した場合に、少なくとも1つの60℃より高い融点(T
m)、及び測定可能なエンタルピー(例えば、2ミリジュール/グラムより大きいもの)を有するであろうことを意味する。
【0023】
Bブロックの弾性率は、エラストマーとして加工できるようなものである。一実施形態では、Bブロックは、100℃にて1%の歪み及び1Hzの周波数で測定された際、2.5、2.0、1.5、1、又は更には0.5MPa未満の弾性率を有する。
【0024】
本開示では、Bブロックはヨード連鎖移動剤及び任意にハロゲン化(すなわち、Br、I又はCl)硬化部位モノマーの存在下で重合して、硬化部位をフルオロポリマー中に導入し、その次の後続の架橋反応に使用され得る。
【0025】
例示的なヨード連鎖移動剤としては、式RI
x[式中、(i)Rは3〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル又はクロロペルフルオロアルキル基であり、(ii)xは1又は2である]のものが挙げられる。ヨード連鎖移動剤は全フッ素化ヨード化合物でよい。例示的なヨード−ペルフルオロ化合物としては、1,3−ジヨードペルフルオロプロパン、1,4−ジヨードペルフルオロブタン、1,6−ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8−ジヨードペルフルオロオクタン、1,10−ジヨードペルフルオロデカン、1,12−ジヨードペルフルオロドデカン、2−ヨード−1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン、4−ヨード−1,2,4−トリクロロペルフルオロブタン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
一実施形態では、硬化部位モノマーは、式:a)CX
2=CX(Z)[式中、(i)各Xは、独立して、H又はFであり、(ii)Zは、I、Br、R
f−U(式中、UはI又はBrであり、R
fは任意にO原子を含有する全フッ素化アルキレン基である)である]、又はb)Y(CF
2)
qY[式中、(i)Yは独立して、Br、I又はClから選択され、(ii)qは1〜6である]のうちの、1つ以上の化合物に由来し得る。加えて、非フッ素化ブロモ又はヨードオレフィン、例えば、ヨウ化ビニル及びヨウ化アリルを使用することができる。いくつかの実施形態において、硬化部位モノマーは、CF
2=CFCF
2I、ICF
2CF
2CF
2CF
2I、CF
2=CFCF
2CF
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CF
2I、CF
2=CFOCF
2CF
2CH
2I、CF
2=CFCF
2OCH
2CH
2I、CF
2=CFO(CF
2)
3−OCF
2CF
2I、CF
2=CFCF
2Br、CF
2=CFOCF
2CF
2Br、CF
2=CFCl、CF
2=CFCF
2Cl、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の化合物に由来する。
【0027】
本開示の一実施形態では、フッ素化ブロックコポリマーは少なくとも1つのBブロックポリマー単位を含み、各Bブロックが0℃、−10℃、−20℃、又は更には−30℃未満のTg温度を有する。上述のように、Aブロック及びBブロックのガラス転移は、DSCを使用して測定するのが、困難な場合があり、したがって、硬化試料上のトーションレオロジーは特定のブロックにおけるTgを測定するのに使用可能である。
【0028】
ポリマーブロック(すなわち、Aブロック又はBブロック)のTgは、構成モノマーのTgとその重量パーセントとに基づいて、フォックスの式を用いて推定することができる。フォックスの式は、W.R.Sorenson and T.W.Campbell’s表題「Preparative Methods of Polymer Chemistry」(Interscience,New York(1968年)209頁)に記載されている。適切なホモポリマーのTgに対応する特定値は、J.Brandrup and E.H.Immergut編「polymer handbook,3rd ed.」の「P.Peyser’s chapter」(Wiley,New York(1989年)V−209〜I−227頁)から得ることができる。あるいは、ポリマーブロックのTgは示差走査熱量計(DSC)又は動的機械分析(DMA)を介して、構成モノマーを含むポリマー及びその重量パーセントを分析することにより測定してもよい。
【0029】
一実施形態では、Bブロックセグメントの重量平均分子量は、少なくとも5000、10000、又は更には25000、かつ最大400000、600000、又は更には800000である。
【0030】
本開示のフッ素化ブロックコポリマーでは、Aブロック及びBブロックは共に共有結合している。一実施形態では、AブロックはBブロックに直接的に結合している(換言すれば、Aブロックの炭素原子はBブロックの炭素原子と共有結合している)。一実施形態では、本開示のブロックコポリマーは、直鎖状ブロックコポリマーである。直鎖状ブロックコポリマーは、ジブロック((A−B)構造)、トリブロック((A−B−A)構造)、マルチブロック(−(A−B)
n−構造)及びこれらの組み合わせに分けることができる。別の実施形態では、本開示のブロックコポリマーは、分枝状のコポリマー、例えば、分枝が主ポリマー鎖から延びた櫛形ポリマーであってもよい。
【0031】
本開示の一実施形態では、フッ素化ブロックコポリマーは少なくとも1つのBブロック及び少なくとも2つのAブロックを含み、Bは中間ブロックであり、Aは末端ブロックである。本開示の別の実施形態では、フッ素化ブロックコポリマーは少なくとも1つのAブロック及び少なくとも2つのBブロックを含み、Aは中間ブロックであり、Bは末端ブロックである。末端ブロックの組成は、お互いに同一である必要はないが、好ましくは、それらは組成において類似している。
【0032】
一実施形態では、フッ素化ブロックコポリマーは、少なくとも1つのAブロック及び少なくとも1つのBブロックから本質的になる。換言すれば、フッ素化ブロックコポリマーは、A及びBブロックセグメントのみを含むが、重合が終了したポリマー鎖の末端は、重合中に使用される開始剤及び又は連鎖移動剤によってもたらされる異なる基(サイズが一対の原子)を含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、3つ以上の異なるブロックを使用する。一実施形態では、異なる重量平均分子量を有する複数のブロック又は異なる濃度のブロックポリマー単位を有する複数のブロックを使用することができる。一実施形態では、第三のブロックは、少なくとも1つの異なるモノマーを含むものを使用してもよい。
【0034】
本開示の一実施形態では、フッ素化ブロックコポリマーは、下の実施例セクションにて記載されたようにDSCにより測定した0、−5、−10、−15、−20、又は更には−25℃未満のTgを有する。
【0035】
本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、Aブロック及びBブロックが、ブロック形態又はグラフト形態で互いに共有結合している限り、様々な既知の方法により調製することができる。
【0036】
一実施形態では、Bブロックは、米国特許第4,158,678号(Tatemotoら)に記載されているように、ヨウ素移動重合より調製することができる。例えば、乳化重合の間、ラジカル開始剤及びヨウ素連鎖移動剤を使用して、例えば、非晶質ポリマーラテックスを生成する。非晶質セグメントを調製するために使用されるラジカル重合開始剤は、フッ素含有エラストマーの重合に使用される、当該技術分野において既知の反応開始剤と同じであってもよい。そのような開始剤の例には、有機及び無機パーオキサイド、並びにアゾ化合物がある。開始剤の典型例には、パーサルフェート、パーオキシカーボネート、及びパーオキシエステルなどがある。一実施形態において、アンモニウムパーサルフェート(APS)を、単独で、又はサルファイトのような還元剤との組み合わせでのいずれかで使用する。典型的には、ヨウ素連鎖移動剤は、二ヨウ素化合物であり、非晶質ポリマーの総重量に基づいて、0.01〜1重量%で使用される。例示的な二ヨウ素化合物としては、1,3−ジヨードペルフルオロプロパン、1,4−ジヨードペルフルオロブタン、1,3−ジヨード−2−クロロペルフルオロプロパン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロペルフルオロペンタン、1,6−ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8−ジヨードペルフルオロオクタン、1,12−ジヨードペルフルオロドデカン、1,16−ジヨードペルフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン及び1,2−ジヨードエタンが挙げられる。乳化重合のため、様々な乳化剤を使用することができる。重合中に生じる乳化剤の分子に対する連鎖移動反応を阻害するという観点から、望ましい乳化剤は、フルオロカーボン鎖又はフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩である。一実施形態では、乳化剤の量は、添加した水を基準にして約0.05重量%〜約2重量%、又は更には0.2〜1.5重量%である。こうして得られたラテックスは、半結晶性セグメントのブロック共重合の出発点になるヨウ素原子を有する非晶質ポリマーを含む。こうして得られたラテックスについて、モノマー組成を変更することができ、非晶質ポリマー上への半結晶性セグメントのブロック共重合を実施することができる。
【0037】
フッ素化ブロックコポリマーゴムは、架橋されていてもされていなくてもよい。得られるフッ素化ブロックコポリマーの架橋は、パーオキサイド硬化剤、2,3−ジメチル−2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、及びアゾ化合物などのその他のラジカル開始剤などの当該技術分野において既知の硬化系、並びにポリオール及びポリアミン硬化系などの他の硬化系を使用して実施できる。
【0038】
パーオキサイド硬化剤としては、有機又は無機パーオキサイドが挙げられる。有機パーオキサイド、特に動的混合温度にて分解しないものが好ましい。
【0039】
パーオキサイドを使用する架橋は、一般的に、架橋剤として有機パーオキサイドを使用することによって、所望により、例えばビスオレフィン(CH
2=CH(CF
2)
6CH=CH
2及びCH
2=CH(CF
2)
8CH=CH
2など)、グリセリンのジアリルエーテル、トリアリルリン酸、ジアリルアジペート、ジアリルメラミン及びトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、フッ素化オレフィン結合を含むフッ素化TAIC、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリ(メチル)アリルシアヌレート、ポリ−トリアリルイソシアヌレート(ポリ−TAIC)、キシリレン−ビス(ジアリルイソシアヌレート)(XBD)、及びN,N’−m−フェニレンビスマレイミドを含む架橋助剤を使用することによって実施することができる。
【0040】
有機パーオキサイドの例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルクロロへキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(TBIC)、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、カルボノパーオキソ酸、O,O’−1,3−プロパンジイルOO,OO’−ビス(1,1−ジメチルエチル)エステル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ラウレルパーオキサイド、及びシクロヘキサノンパーオキサイドが挙げられる。他の好適なパーオキサイド硬化剤は、米国特許第5,225,504号(Tatsuら)に掲載されている。一般的に、パーオキサイド硬化剤の使用量は、100部のフッ素化ブロックコポリマー当たり、0.1〜5重量部、好ましくは1〜3重量部である。他の従来のラジカル開始剤は、本開示での使用に好適である。
【0041】
本開示のフッ素化ブロックコポリマーを硬化するのに有用なアゾ化合物の例には、高い分解温度を有するものがある。換言すれば、それらは、得られる生成物の上限使用温度より上で分解する。このようなアゾ化合物は、例えば、J.C.Salamone編「Polymeric Materials Enclclopedia」(CRC Press Inc.,New York,(1996)Vol.1,432〜440頁)に見出され得る。
【0042】
一般的に、ポリオールの使用による架橋を行なうには、ポリオール化合物(架橋剤として)、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びイミニウム塩などの架橋助剤、並びにマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛などの2価金属の水酸化物又は酸化物を使用する。ポリオール化合物の例としては、ビスフェノールAF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ジヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキノン、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジン、4,4’−チオジフェノール、及びこれらの金属塩が挙げられる。
【0043】
一般的に、ポリアミンの使用による架橋を行なうには、ポリアミン化合物(架橋剤として)、及びマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛などの2価金属の酸化物を使用する。ポリアミン化合物又はポリアミン化合物の前駆体の例としては、ヘキサメチレンジアミン及びそのカルバメート、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン及びそのカルバメート、並びにN,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0044】
架橋剤(及び使用する場合は、架橋助剤)の各々は、従来から既知の量にて使用してもよく、使用量を当業者が適切に決めてもよい。架橋に関与するこれらの成分の各々の使用量は、例えば、100質量部のフッ素化ブロックコポリマー当たり、約1質量部以上、約5質量部以上、約10質量部以上、又は約15質量部以上、かつ約60質量部以下、約40質量部以下、約30質量部以下、又は約20質量部以下であってもよい。架橋に関与する成分の合計量は、例えば、100質量部のフッ素化ブロックコポリマー当たり、約1質量部以上、約5質量部以上又は約10質量部以上、かつ約60質量部以下、約40質量部以下、又は約30質量部以下であってもよい。
【0045】
例えば、強度を高めたり機能性を付与したりする目的のために、従来の補助剤、例えば、酸受容体、充填剤、加工助剤、又は着色剤等を組成物に添加してもよい。
【0046】
例えば、組成物の硬化及び熱安定性を促進するため、酸受容体を使用してよい。好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、二塩基性亜リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、アルカリステアレート、シュウ酸マグネシウム、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。酸受容体は、好ましくは100重量部のフッ素化ブロックコポリマー当たり、約1〜約20部の範囲の量で使用される。
【0047】
充填剤としては、有機充填剤又は無機充填剤[クレイ、シリカ(SiO
2)、アルミナ、ベンガラ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、珪灰石(CaSiO
3)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、フッ化カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、及びカーボンブラック充填剤など]が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン粉末、PFA(TFE/ペルフルオロビニルエーテルコポリマー)粉末、導電性充填剤、及び放熱充填剤などを任意による成分として組成物に加えてもよい。当業者は、特定の充填剤を、加硫処理した調合物に所望の物理的特性を得るのに必要な量にて選択することができる。充填剤成分により、より低温(TR−10)において収縮などの所望の特性を保持しながら、伸び及び引張り強さの値によって示されるとおり、好ましい弾性及び物理的引張性の保持が可能な調合物を得ることができる。一実施形態において、組成物は、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、又は更には10重量%未満の充填剤を含む。
【0048】
フッ素化ブロックコポリマー組成物を、硬化剤及び任意の従来の補助剤と混合する。混合方法としては、例えば、ゴム用2本ロール、加圧混練機、又はバンバリミキサを使用する混練が挙げられる。
【0049】
次いで、混合物を、押出又は成型などによって加工及び成形し、本開示の組成物から構成されるシート、ホース、ホースの裏層、Oリング、ガスケット、パッカー又はシールなどの様々な形状の物品を形成してもよい。次いで、成形物品を加熱し、ゴム組成物を硬化させ、硬化エラストマー物品を形成してもよい。
【0050】
典型的には、調合した混合物の加圧(すなわち、プレス硬化)を行なうには、約120〜220℃、又は更には約140〜200℃の温度で、約1分間〜約15時間、通常は約1〜15分間かける。約700〜20,000kPa(キロパスカル)、又は更には約3400〜6800kPaの圧力が、組成物の成型において典型的に使用される。最初に、モールドを離型剤でコーティングし、プレベークしてもよい。
【0051】
成形した加硫処理物は、試料の断面厚さに応じて、約140〜240℃の温度、又は更には約160〜230℃の温度で、約1〜24時間以上、オーブン内で後硬化してよい。厚さのある部分では、後硬化中の温度は、通常、範囲の下限から所望の最高温度まで次第に上昇する。使用最高温度は、好ましくは約260℃であり、この値で約1時間以上保持する。
【0052】
本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、ホース、シール(例えば、ガスケット、Oリング、パッカー構成部品、防噴装置、弁など)、ステータ、又はシートなどの物品にて使用されてもよい。これらの組成物を、後硬化してもよく、しなくてもよい。
【0053】
Aブロックにより得られた高い引張り及び高い弾性率の利点を利用して、良好な靱性(例えば、高い引張り強さ)及び良好な圧縮永久歪みを有するフッ素化ブロックコポリマーを得ることができる。
【0054】
本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、Aブロックにより付与された靱性と、Bブロックにより付与された粘性(及び任意の可撓性)のバランスを保つ。このAブロック及びBブロックのバランスにより、例えば、2本ロールミル又は内部ミキサで加工できるポリマーなど、従来のエラストマーのように加工できるフッ素化ブロックコポリマーが得られる。ミルブレンドは、ゴム製造者が、ポリマーゴムと必要な硬化剤及び/又は添加剤とを混ぜ合わせて使用する加工である。ミルによりブレンドするため、硬化性組成物は、十分な弾性率を有する必要がある。換言すれば、ミルに粘着するほどに軟質ではなく、ミル上に置くことができないほどに剛直ではない。本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、100℃にて1%の歪み及び1Hz(ヘルツ)の周波数で測定された際、少なくとも0.1、0.3、又は更には0.5MPa(メガパスカル)、かつ最大2.5、2.2、又は更には2.0MPaの弾性率を有する。フッ素化ブロックコポリマーで使用されるAブロック及びBブロックの量は、個々のポリマーセグメントの特性に基づいて変えることができる。例えば、Aブロックが高結晶化度を有する場合、フッ素化ブロックコポリマーで使用される全体的なAブロックは少なくなる。したがって、貯蔵弾性率は、ブロックコポリマー中でより高い結晶化度を有する半結晶性セグメントをより少なく使用することを、より低い結晶化度を有する半結晶性セグメントをより多く使用することに対して考慮して、使用され得る特性である。フッ素化ブロックコポリマー中へAブロックをより多く添加することで、より良好な引張りが得られ、ポリマーが高温での特性を維持する。しかし、Aブロック及びその組成物が多すぎると、エラストマーのように加工することができず、100%歪み時応力(100%弾性率)は悪化する。
【0055】
一実施形態では、本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、少なくとも100、110、150、又は更には175℃、かつ最高275、250、又は更には200℃の融点を有する。フッ素化ブロックコポリマーの融点は、非晶質ポリマーが融点を有さないため、半結晶性セグメントの融点に基づくものと考えられる。一実施形態では、ブロックコポリマーの融点は、Aブロックの補強効果を最大化させるために、得られる物品の上限使用温度よりも高い。
【0056】
一実施形態では、本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、下の実施例セクションにて記載されたようにDSCにより測定した際に−40、−30、又は更には−20℃より高く、かつ最高15、10、0、又は更には−5℃のTgを有する。AブロックとBブロックの両方が、Tgを有するであろう。一般的に、BブロックのTgは、報告されたブロックコポリマーのTgに関与するものと考えられる。
【0057】
フッ素化ブロックコポリマーの製造方法、並びに/又は使用される硬化部位モノマー、及び/若しくは連鎖移動剤に応じて、フッ素化ブロックコポリマーは、ヨウ素を含んでもよい。一実施形態では、フッ素化ブロックコポリマーは、フッ素化ブロックコポリマーの重量に基づいて、少なくとも0.05、0.1、又は更には0.2重量%、かつ最大1、0.8、又は更には0.5重量%のヨウ素を含む。
【0058】
本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも100,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも500,000ダルトン、少なくとも750,000ダルトン、少なくとも1,000,000ダルトン、又は更には少なくとも1,500,000ダルトンであり、かつフッ素化ブロックコポリマーの早期ゲル化を引き起こすほどには高くない重量平均分子量(Mw)を有してもよい。
【0059】
Aブロック及びBブロックが共に共有結合している本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、2つの個々のポリマーの混合物よりも改善された特性、例えば、より高い引張り強さ及び改善された圧縮永久歪みを有する。
【0060】
本開示のフッ素化ブロックコポリマーは、良好な引張り強さ及び100%弾性率を有することが見出された。驚くべきことに、本開示のフッ素化ブロックコポリマーは良好な圧縮永久歪みを有することも判明した。圧縮永久歪みは、力を除いた後に残存している、ポリマーの変形である。一般的には、より低い圧縮永久歪み値が、より良い(すなわち、材料の変形が、より小)。典型的には、プラスチック(半結晶性モルホロジーを含む。)は、良好な圧縮永久歪みを有さない。そのため、半結晶性セグメントを含むフッ素化ブロックコポリマーが良好な圧縮永久歪みを有することは驚くべきことであった。本開示のフッ素化ブロックコポリマーが、高温でそれらの特性を維持することも驚くべきことであった。
【実施例】
【0061】
別段の記載がない限り、実施例及び明細書の残りの部分における、全ての部、百分率、比などは全て重量によるものであり、実施例で使用された全ての試薬は、例えば、Sigma−Aldrich Company(Saint Louis,Missouri)などの一般的な化学物質供給元から得られたか、若しくは入手可能であり、又は従来の方法によって合成し得る。
【0062】
これらの略称は、次の実施例にて使用される:phr=ゴム100部当たりの部、rpm=毎分当たりの回転、mg=ミリグラム、g=グラム、in=インチ、kg=キログラム、L=リットル、min=分、hr=時間、℃=摂氏度、psig=平方インチゲージ当たりのポンド、MPa=メガパスカル、Hz=ヘルツ、wt=重量、wt%=重量%、及び、dNm=デシニュートン−メートル。
【0063】
方法
【0064】
融点及びガラス転移温度
【0065】
融点(T
m)及びガラス転移温度(T
g)を求めるには、窒素気流下での示差走査熱量測定(TA Instruments社製DSC、Q2000(New Castle,DE))によった。試料サイズは、5mg±0.25mgであった。DSCサーモグラムは、加熱/冷却/加熱サイクルの第2の加熱から入手した。第1の加熱サイクルは、−85℃で始め、10℃/分の昇温速度で、最終温度(予想融解温度より50〜100℃高温になるよう選択)までとした。冷却サイクルは、第1の加熱サイクルからの最終温度で始め、10℃/分の冷却速度で、−85℃までとした。第2の加熱サイクルは、−85℃で始め、10℃/分の昇温速度で、最終温度に戻るまでとした。
【0066】
エンタルピー
【0067】
第2の加熱サイクルから得たDSCサーモグラム(上記融点及びガラス転移温度法で取得)、及びTA instruments社製ユニバーサル分析ソフトウェアを使用して、融点の始まりと終わりを積分することにより、エンタルピーを求めた。
【0068】
ヨウ素パーセント
【0069】
未硬化ポリマー試料を、約12mm厚まで2本ロールミルで均質化した。次に、試料を40mm直径のパンチを使用して打ち抜き、ステンレス鋼試料カップ中へ装填した。試料を、「Supermini200WDXRF」の商品名にて、Rigaku Corporation(The Woodlands,TX)から入手可能な装置を使用して、X線蛍光によりヨウ素について分析し、「ZSX」の商品名にてRigaku Corporationから入手可能なソフトウェアを使用して、「クイックスキャン」モードで操作した。
【0070】
転移T
α及びT
β
【0071】
T
α及びT
βは、環境試験チャンバを装備しておりトーションモードで操作されるレオメータ(TA Instruments(New Castle,DE)から入手の「AR−2000ex」)で測定した。全て、厚さ2mm、幅6mm、長さ25mmのおよその寸法を有する後硬化フルオロポリマーの試料を、5℃/分の傾斜にて−65℃〜150℃の温度傾斜を用いて、1Hz及び1%歪みにて試験した。データ解析ソフトウェア(TA Instrumentsから入手のRweology advantage)を使用して、損失弾性率に対する貯蔵弾性率の比であるTanδにおける極大として、T
α及びT
βを測定した。
【0072】
弾性率
【0073】
ASTM 6204−07から入手した貯蔵弾性率から、1%の歪み及び1Hzの周波数にて、レオメータ(Alpha technologies(Akron,OH)社製RPA2000)を使用して、100℃における弾性率を測定した。
【0074】
硬化レオロジー
【0075】
硬化レオロジー試験を実施するには、未硬化の混練した試料を使用して、レオメータ(Alpha technologies(Akron,OH)社製PPA2000)を用いて、ASTM D5289−93aに従い、177℃、前加熱なし、経過時間12分、及び角度0.5度とした。最小トルク(M
L)、及び平坦域又は最大トルク(M
H)が得られない場合は特定の期間中に到達した最も高いトルク(M
H)の両方を、測定した。また、トルクがM
Lを超え2単位増加する時間(t
s2)、トルクがM
L+0.1(M
H−M
L)に等しい値に到達する時間(t'10)、トルクがM
L+0.5(M
H−M
L)に等しい値に到達する時間(t'50)、及びトルクがM
L+0.9(M
H−M
L)に到達する時間(t'90)も測定した。結果を表2に報告する。
【0076】
物理特性
【0077】
0.139インチ(3.5mm)の断面厚さを有するOリング及び2.0mmの厚さを有するシートを、未硬化の混練した試料を使用して成形及びプレス硬化し、次いで下表中に記述したとおり後硬化した。ダンベル状試験片をシートから切り出し、ASTM D412−06a(2013)に開示されている手順と同様に、物理的特性試験に供した。O−リングを、ASTM395−89の方法Bに開示されている手順と同様に、圧縮永久歪み試験に供した(初期歪み25%)。結果を表2に報告する。
【0078】
150℃で測定された物理特性
【0079】
ダンベル状試験片をシートから切り出し、ASTM D412−06a(2013)に開示されている手順と同様に、物理特性試験に供した。引張り、伸び及び100%弾性率を、環境チャンバを装備した張力計(MTS Systems Corp.(Eden Prairie,MN)から入手可能)で測定した。試料をオーブン内に置き、温度を平衡化(150℃である設定値温度の1℃以内)した。温度を平衡化してから、試料を試験開始後3分間浸した。張力計が伸び計を備えなかったため、伸びは、クロスヘッドの伸びにより計算した。
【表1】
【0080】
ポリマー1
【0081】
Bブロック:40L反応器に22500gの脱イオン水を充填して、80℃まで加熱した。次に、攪拌器の速度を350rpmにして、続いて40gのリン酸カリウム、140gの1,4−ジヨードオクタフルオロブタン及び20gのアンモニウムパーサルフェートを添加した。この添加に続いて、直ちに、HFPで真空を破り、40psig(0.38MPa)にした。次に、反応器が220psig(1.52MPa)の圧力に到達するまで、重量比0.88のHFP/VDF及び重量比1.0のTFE/VDFを用いて反応器を昇圧させた。いったん圧力がかかったら、モノマー重量比を、1.24のHFP/VDF及び0.73のTFE/VDFに変更した。加工中、固形試薬を溶解するため、及び試薬の送達後にリンスするために、追加の2500gの脱イオン水を添加した。反応は24.9固形分%まで行って停止し、反応器からラテックスを排出させた。
【0082】
Aブロック:40L反応器に11000gの脱イオン水、及び上記Bブロックを含む16.5kgのラテックスを充填した。次に、反応器を60℃にした。昇温した反応器で、攪拌器速度を350rpmに設定し、続いて330gの乳化剤を添加し、窒素で真空を破った。反応器を、TFEで15psig(0.10MPa)の圧力にし、次にHFPで133psig(0.92Mpa)にし、次にVDFで145psig(1.00Mpa)にし、最後にTFEで232psig(1.60MPA)にした。次に、モノマー比を重量比0.768のHFP/VDF、及び重量比8.068のTFE/VDFに設定した。加工中、固形試薬を溶解するため、及び試薬の送達後にリンスするために、追加の1000gの脱イオン水を添加した。反応は25固形分%まで行った。次に、ラテックスを脱イオン水中で1.25%塩化マグネシウム溶液を使用して凝固させ、130℃にて16時間、オーブンで乾燥させた。
【0083】
得られたフッ素化ブロックコポリマーは−11℃のTg、及びDSCで測定された252℃のTmを有した。BブロックのAブロックに対する理論上の比は、50:50であった。
【0084】
ポリマー2
【0085】
Bブロックを調製するには、反応を25.1固形分%まで行ったという点を除いては、ポリマー1におけるBブロックと同一条件下とした。
【0086】
Aブロック:40L反応器に7000gの脱イオン水、及び48lb(21.8kg)のBブロックラテックスを充填した。次に、反応器を60℃にした。昇温した反応器で、攪拌器速度を350rpmに設定し、続いて330gの乳化剤を添加し、窒素で真空を破った。反応器を、TFEで15psig(0.10MPa)の圧力にし、次にHFPで133psig(0.92Mpa)にし、次にVDFで145psig(1.00Mpa)にし、最後にTFEで232psig(1.60MPa)にした。次に、モノマー比を重量比0.768のHFP/VDF、及び重量比8.068のTFE/VDFに設定した。加工中、固形試薬を溶解するため、及び試薬の送達後にリンスするために、追加の1000gの脱イオン水を添加した。反応は25固形分%まで行った。次に、ラテックスを脱イオン水中で1.25%塩化マグネシウム溶液を使用して凝固させ、130℃にて32時間、オーブンで乾燥した。
【0087】
得られたフッ素化ブロックコポリマーは−11℃のTg、及びDSCで測定された249℃のTmを有した。BブロックのAブロックに対する理論上の比は、65:35であった。
【0088】
ポリマー3
【0089】
Bブロックを調製するには、反応を24.6固形分%まで行ったという点を除いては、ポリマー1におけるBブロックと同一条件下とした。
【0090】
Aブロック:40L反応器に3000gの脱イオン水、及び27.0kgのBブロックラテックスを充填した。次に、反応器を60℃にした。昇温した反応器で、攪拌器速度を350rpmに設定し、続いて330gの乳化剤を添加し、窒素で真空を破った。反応器を、TFEで15psig(0.10MPa)の圧力にし、次にHFPで133psig(0.92Mpa)にし、次にVDFで145psig(1.00Mpa)にし、最後にTFEで232psig(1.60MPa)にした。次に、モノマー比を重量比0.768のHFP/VDF、及び重量比8.068のTFE/VDFに設定した。加工中、固形試薬を溶解するため、及び試薬の送達後にリンスするために、追加の1000gの脱イオン水を添加した。反応は25固形分%まで行った。次に、ラテックスを脱イオン水中で1.25%塩化マグネシウム溶液を使用して凝固させ、130℃にて32時間、オーブンで乾燥させた。
【0091】
得られたフッ素化ブロックコポリマーは−11℃のTg、及びDSCで測定された248℃のTmを有した。BブロックのAブロックに対する理論上の比は、80:20であった。
【0092】
ポリマー4
【0093】
Bブロックを調製するには、反応を24.9固形分%まで行ったという点を除いては、ポリマー1におけるBブロックと同一条件下とした。
【0094】
Aブロック:40L反応器に11000gの脱イオン水、及び16.5kgのBブロックラテックスを充填した。次に、反応器を71℃にし、攪拌器の速度を350rpmにして、続いて330gの乳化剤を添加した。反応器でHFPを用いて真空を破り、25psig(0.17MPa)の圧力にし、続いて、重量比7.45のHFP/VDF及び重量比2.67のTFE/VDFを使用して、反応器を220psig(1.52Mpa)の圧力にした。いったん圧力がかかったら、25固形分%まで、重量比0.82のHFP/VDF及び重量比2.73のTFE/VDFにて反応を行った。加工中、固形試薬を溶解するため、及び試薬の送達後にリンスするために、追加の1000グラムの脱イオン水を添加した。次に、ラテックスを脱イオン水中で1.25%塩化マグネシウム溶液を使用して凝固させ、130℃にて16時間、オーブンで乾燥させた。
【0095】
得られたフッ素化ブロックコポリマーは−10℃のTg、及びDSCで測定された167℃のTmを有した。BブロックのAブロックに対する理論上の比は、50:50であった。
【0096】
ポリマー5
【0097】
Bブロックを調製するには、反応を25.5固形分%まで行ったという点を除いては、ポリマー1におけるBブロックと同一条件下とした。
【0098】
Aブロック:40L反応器に11000グラムの脱イオン水、及び15.9kgのBブロックラテックスを充填した。次に、反応器を71℃にし、攪拌器の速度を350rpmにして、続いて330グラムの乳化剤を添加した。反応器でHFPを用いて真空を破り、25psig(0.17MPa)の圧力にし、続いて、重量比2.56のHFP/VDF及び重量比0.84のTFE/VDFを使用して、反応器を220psig(1.52Mpa)の圧力にした。いったん圧力がかかったら、25固形分%まで、重量比0.52のHFP/VDF及び重量比1.22のTFE/VDFにて反応を行った。加工中、固形試薬を溶解するため、及び試薬の送達後にリンスするために、追加の1000グラムの脱イオン水を添加した。次に、ラテックスを脱イオン水中で1.25%塩化マグネシウム溶液を使用して凝固させ、130℃にて16時間、オーブンで乾燥させた。
【0099】
得られたフッ素化ブロックコポリマーは−7℃のTg、及びDSCで測定された118℃のTmを有した。BブロックのAブロックに対する理論上の比は、50:50であった。
【0100】
ポリマー6
【0101】
ポリマー6は2つのフルオロポリマーのミルブレンドである。
【0102】
反応を23.54固形分%まで行ったという点を除いては、ポリマー1におけるBブロックと同様に、第一フルオロポリマーを調製した。
【0103】
第二フルオロポリマーは、重量比1.10のTFE/VDF、及び重量比0.52のHFP/VDFを含むペレット形態であった。この半結晶性フルオロポリマーは、117℃のTmを有する。
【0104】
200gの半結晶性フルオロポリマーペレットを、薄膜が形成されるまで2本ロールミルに通し、その後に、これをおよそ幅50mm、長さ125mmのストリップに切断した。第一フルオロポリマーをミル上に置き、続いて、半結晶性フルオロポリマーストリップを添加し、エラストマーのフルオロポリマー中へブレンドした。この加工を残りのストリップで繰り返した。
【0105】
得られたフルオロポリマーブレンドは、第二(半結晶性)ポリマーに対して、第一フルオロポリマーを、50:50の比にて含んだ。ブレンドされたコポリマーの組成物は、ブロックコポリマーであるポリマー5の組成物と同様であろう。
【0106】
ポリマー7
【0107】
ポリマー7は、重量比0.707のTFE/VDF、及び重量比0.224のHFP/VDFを有する半結晶性フルオロポリマーである。
【0108】
ポリマー8
【0109】
ポリマー8は、重量比1.746のTFE/VDF、及び重量比0.350のHFP/VDFを有する半結晶性フルオロポリマーである。
【0110】
ポリマー9
【0111】
フルオロポリマーを、ポリマー1におけるBブロックと同様に調製した。このフルオロポリマーを、ポリマー9として使用した。
【0112】
ポリマー10
【0113】
Bブロック:40L反応器に22500グラムの脱イオン水を充填して、80℃まで加熱した。次に、攪拌器の速度を350rpmにして、続いて40gのリン酸カリウム、140gの1,4−ジヨードオクタフルオロブタン、330gの乳化剤、及び20gのアンモニウムパーサルフェートを添加した。この添加に続いて、直ちに、HFPで真空を破り、0.38MPaにした。次に、反応器が220psig(1.52MPa)の圧力に到達するまで、重量比0.65のHFP/VDF及び重量比0.09のTFE/VDFを用いて反応器を昇圧させた。いったん圧力がかかったら、モノマー重量比を、0.49のHFP/VDF及び0.15のTFE/VDFに変更した。加工中、固形試薬を溶解するため、及び試薬の送達後にリンスするために、追加の2500gの脱イオン水を添加した。反応は26.6固形分%まで行って停止し、反応器からラテックスを排出させた。
【0114】
Aブロック:40L反応器に11000gの脱イオン水、及び上記Bブロックを含む26.3kgのラテックスを充填した。次に、反応器を60℃にした。反応器を、TFEで15psig(0.10MPa)の圧力にし、次にHFPで133psig(0.92Mpa)にし、次にVDFで145psig(1.00Mpa)にし、最後にTFEで232psig(1.60MPA)にした。次に、モノマー比を重量比0.768のHFP/VDF、及び重量比8.068のTFE/VDFに設定した。加工中、固形試薬を溶解するため、及び試薬の送達後にリンスするために、追加の1000gの脱イオン水を添加した。反応は25固形分%まで行った。次に、ラテックスを脱イオン水中で1.25%塩化マグネシウム溶液を使用して凝固させ、130℃にて16時間、オーブンで乾燥させた。
【0115】
得られたフッ素化ブロックコポリマーは−27℃のTg、及びDSCで測定された257℃のTmを有した。BブロックのAブロックに対する理論上の比は、80:20であった。
【0116】
上述の試験方法を使用して測定された種々のポリマーの、Tg、Tm、100℃での弾性率、エンタルピー及びヨウ素パーセントをまとめたものを下表1に示す。
【表2】
【0117】
実施例1〜実施例5、及び比較例A〜比較例D
【0118】
弾性率があまりに高くて更に加工できないポリマー8を除いて、上述のポリマーの各々は、以下のとおり、個別に、2本ロールミル上で混練した。100部のポリマー、30phrのカーボンブラック、3phrの助剤、及び2phrのパーオキサイド。混練したポリマーを、上述したように「転移T
α及びT
β」、「硬化レオロジー」及び「物理的特性」ごとに試験し、結果を表2で報告する。比較例Cは十分な硬化特性を示さなかったため、物理的特性を試験しなかった。
【0119】
実施例1〜5並びに比較例A、比較例B及び比較例Dの物理的特性は150℃にて更に試験し、結果を同様に表2に示す。
【表3】
【0120】
表2において、NAは、該当なしを意味する。例えば、比較例Aでは、加工時の困難さ故に、Oリングが作製されなかったため、圧縮永久歪みは試験されなかった。加えて、ポリマーが100%歪む前に損傷したため、100%弾性率(100%歪み時応力)は入手できなかった。比較例Bは、ブロックコポリマーに代えてポリマーブレンドであること以外は、実施例4までの組成物と同様に作製した。表2にて示すように、ポリマーブレンドは、ブロックコポリマーと同様の100%弾性率(100%歪み時応力)を有するが、ブロックコポリマーは、ブレンドと比較して、高温での改善された引張り、改善された圧縮永久歪み及びより良好な特性維持を有する。実施例4及び比較例Bにおいては、1つのみの転移(T
α及びT
β)が観察されたが、これは、本質的には広く、ポリマーAとポリマーBの両方におけるガラス転移温度を含むと推測される。比較例C及び比較例Dは、単一のフルオロポリマーセグメントを含むため、1つのみのガラス転移が観察される。
【0121】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の予測可能な修正及び変更が当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のために本出願において説明された実施形態に限定されるべきではない。本明細書の記述と本明細書に述べられ参照により組み込まれる任意の文書内での開示との間の、任意の不一致及び矛盾が存在する点に関して、本明細書の記述は優先されるであろう。