特許第6987754号(P6987754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987754多シリンダ2段式EVI圧縮機および空気調和装置、ヒートポンプ給湯機ならびに制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987754
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】多シリンダ2段式EVI圧縮機および空気調和装置、ヒートポンプ給湯機ならびに制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 23/00 20060101AFI20211220BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   F04C23/00 F
   F04C29/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-521051(P2018-521051)
(86)(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公表番号】特表2018-531347(P2018-531347A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】CN2016100801
(87)【国際公開番号】WO2017088586
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2018年4月23日
【審判番号】不服2020-3266(P2020-3266/J1)
【審判請求日】2020年3月10日
(31)【優先権主張番号】201510819605.8
(32)【優先日】2015年11月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089359
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンスィズ,インコーポレーテッド オブ ジュハイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン,フイ
(72)【発明者】
【氏名】フ,ユーシェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,フイジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,オウシャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ,ペンケ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ミンファ
【合議体】
【審判長】 窪田 治彦
【審判官】 小川 恭司
【審判官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/154726(WO,A1)
【文献】 特開2006−29085(JP,A)
【文献】 特開2008−196343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底蓋板(10)、下フランジ(9)、上部仕切り板(4)および中部仕切り板(5)と、前記底蓋板(10)と前記下フランジ(9)によって形成された第1中間チャンバーと、上部仕切り板と中部仕切り板によって形成された第2中間チャンバーと、を含み、総中間チャンバー容積は、前記第1中間チャンバーの容積および前記第2中間チャンバーの容積の和であり、前記総中間チャンバー容積又は前記第2中間チャンバー容積と容積比を乗算した積と、2段目シリンダの排気量の2乗との比率は、所定の比率範囲内にあり、容積比は、2段目の吸気量と1段目の吸気量との比であって、
シリンダ2段式EVI圧縮機は、上部シリンダと、中部シリンダと、下部シリンダとを含み、前記圧縮機が2シリンダである場合、前記下部シリンダを取り外し、前記上部シリンダと、前記中部シリンダとが動作し、前記中部シリンダが1段目シリンダになり、前記上部シリンダが2段目シリンダになっており、前記圧縮機が3シリンダである場合、前記上部シリンダと、前記中部シリンダと、前記下部シリンダとがいずれも動作し、前記中部シリンダ及び前記下部シリンダが1段目シリンダになり、前記上部シリンダが2段目シリンダになっており、
前記総中間チャンバー容積は、第1中間チャンバーの容積V中1および第2中間チャンバーの容積V中2の2つの中間チャンバーの容積を含み、総中間チャンバー容積は、V=V中1+V中2になり、
前記圧縮機が2シリンダである場合、V中2*は、Vの0.05〜0.20倍であり、ただし、Vは、2段目シリンダの排気量であり、Kは、2シリンダの容積比であって、
前記圧縮機が3シリンダである場合、V中*は、Vの0.1〜0.3倍であり、ただし、Vは、2段目シリンダの排気量であり、Kは、3シリンダの容積比であることを特徴とする多シリンダ2段式EVI圧縮機。
【請求項2】
前記下フランジにはピン孔が設けられ、前記ピン孔の内部にピンがさらに設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の多シリンダ2段式EVI圧縮機。
【請求項3】
前記底蓋板には、一端が前記ピン孔に位置する第1連通孔が設けられ、前記下フランジには、前記第1連通孔の他端に連通する第2連通孔が設けられ、前記第2連通孔の他端が前記圧縮機の低圧吸気口に連通する、ことを特徴とする請求項2に記載の多シリンダ2段式EVI圧縮機。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の多シリンダ2段式EVI圧縮機を備える、ことを特徴とする空気調和装置又はヒートポンプ給湯機。
【請求項5】
請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の多シリンダ2段式EVI圧縮機を制御調整する、ことを特徴とする多シリンダ2段式EVI圧縮機の制御方法。
【請求項6】
圧縮機がピン、下スライディングベーンおよび下部シリンダを含む場合、(1)圧縮機が軽負荷の定格状況において運転すれば、ピンによって下スライディングベーンをロックし、下部シリンダを取り外すことにより、2シリンダモードでの運転を実現し、(2)圧縮機が重負荷の低温状況において運転すれば、ピンによるロックを解除し、下部シリンダが動作することにより、3シリンダモードでの運転を実現する、ことを特徴とする請求項5に記載の多シリンダ2段式EVI圧縮機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年11月23日にて中国特許庁へ出願した、出願番号が201510819605.8で、発明の名称が「多シリンダ2段式EVI圧縮機および空気調和装置、ヒートポンプ給湯機ならびに制御方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容を全て参照により本願に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、エアコンの技術分野に属し、具体的には、多シリンダ2段式EVI(enhanced vapor injection、高められた蒸気注入)圧縮機およびそれを備えた空気調和装置、ヒートポンプ給湯機ならびに該圧縮機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
科学技術の発展に伴い、2段式EVI圧縮機は、低温状況においても高効率化を保つ特性を有するため、エアコン、給湯機、冷凍冷蔵などの分野においてますます重要な地位を占めているが、従来の2段式EVI圧縮機は、2シリンダ式がほとんどであり、低温状況など、高い冷房能力が要求される場合に、排気量が制限されてしまう。このため、多シリンダ2段式EVI可変容量圧縮機を使用するのは、必然性がある。多シリンダ2段式EVI圧縮機の低圧側に2つ以上の圧縮機構を備え、少なくとも1つのシリンダは、切り替え構造によって取り付け運転又は取り外し運転を実現することができ、これにより、2つの高低圧容積比の切り替え運転を実現し、定格暖房能力のエネルギー効率を最適化し、エネルギー効率を保証する前提において低温暖房による暖房能力を向上させる目的を達成する。
【0004】
多シリンダ2段式EVI圧縮機にとって、中間チャンバーは、1段圧縮後に排気ガスと補給ガスが混合するチャンバーである。ロータリングローター型圧縮機の吸排気が周期的に行われ、かつシリンダ同士の動作位相角が異なり、中間チャンバーが小さすぎると、ポンプ内部の冷媒に過度的な圧力変動が発生するため、圧縮機の性能、ノイズ等に悪影響を与える。一方、中間チャンバーが大きすぎると、設計やプロセスがある程度困難になるため、中間チャンバーの容積を適切に設計しなければならない。
【0005】
従来技術における多シリンダ2段式EVI圧縮機は、内部冷媒に過度的な圧力変動が発生することによって、圧縮機の性能、ノイズ等に悪影響を与え、設計やプロセスが困難である課題を有するため、本発明は、多シリンダ2段式EVI圧縮機およびそれを備えた空気調和装置、ヒートポンプ給湯機ならびに該圧縮機の制御方法を研究し開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、従来技術の2段式圧縮機に存在する、シリンダ内部の冷媒に過度的な圧力変動が発生することによって、圧縮機の性能、ノイズ等に悪影響を与える欠点を解消することにあり、多シリンダ2段式EVI圧縮機およびそれを備えた空気調和装置、ヒートポンプ給湯機ならびに該圧縮機の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、底蓋板、下フランジ、上部仕切り板および中部仕切り板と、上述した2つの部材同士で形成される少なくとも1つの中間チャンバーの容積と、を含み、総中間チャンバー容積は、すべての中間チャンバーの容積の和であり、いずれかの前記中間チャンバーの容積又は前記総中間チャンバー容積のうちの1つと容積比を乗算した積と、2段目シリンダの排気量の2乗との比率は、所定の比率範囲内にあり、容積比は、2段目の吸気量と1段目の吸気量との比である、多シリンダ2段式EVI圧縮機を提供する。
【0008】
前記圧縮機が2シリンダである場合、前記所定の比率範囲は0.05〜0.20であることが好ましい。
【0009】
前記圧縮機が3シリンダである場合、前記所定の比率範囲は0.1〜0.3であることが好ましい。
【0010】
前記底蓋板と下フランジによって第1中間チャンバーが形成され、上部仕切り板と中部仕切り板によって第2中間チャンバーが形成され、総中間チャンバー容積は、前記第1中間チャンバーの容積と前記第2中間チャンバーの容積との和であることが好ましい。
【0011】
前記総中間チャンバー容積は、第1中間チャンバーの容積V中1および第2中間チャンバーの容積V中2という2つの中間チャンバーの容積を含み、総中間チャンバー容積は、V=V中1+V中2になることが好ましい。
【0012】
前記圧縮機が2シリンダである場合、V中2*は、Vの0.05〜0.20倍であり、ただし、Vは、2段目シリンダの排気量であり、Kは、2シリンダの容積比であることが好ましい。
【0013】
前記圧縮機が3シリンダである場合、V中*は、Vの0.1〜0.3倍であり、ただし、Vは、2段目シリンダの排気量であり、Kは、3シリンダの容積比であることが好ましい。
【0014】
前記下フランジにはピン孔が設けられ、前記ピン孔の内部にピンがさらに設けられていることが好ましい。
【0015】
前記底蓋板には、一端が前記ピン孔に位置する第1連通孔が設けられ、前記下フランジには、前記第1連通孔の他端に連通する第2連通孔が設けられ、前記第2連通孔の他端が前記圧縮機の低圧吸気口に連通することが好ましい。
【0016】
本発明は、上述した多シリンダ2段式EVI圧縮機を備える空気調和装置又はヒートポンプ給湯機をさらに提供する。
【0017】
本発明は、上述した多シリンダ2段式EVI圧縮機を制御調整する多シリンダ2段式EVI圧縮機の制御方法をさらに提供する。
【0018】
圧縮機がピン、下スライディングベーンおよび下部シリンダを含む場合、(1)圧縮機が軽負荷の定格状況において運転すれば、ピンによって下スライディングベーンをロックし、下部シリンダを取り外すことにより、2シリンダモードでの運転を実現し、(2)圧縮機が重負荷の低温状況において運転すれば、ピンによるロックを解除し、下部シリンダが動作することにより、3シリンダモードでの運転を実現することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に提供される多シリンダ2段式EVI圧縮機、空気調和装置、給湯機および制御方法は、以下の有益な効果を有する。
1.中間チャンバーの容積を適切に設計することで、2シリンダ、3シリンダモードにおける2段目シリンダの吸気を安定にすることができ、1段目シリンダの排気の円滑化に寄与し、2段式圧縮機のシリンダ内部の冷媒に過度的な圧力変動が発生する課題を効果的に改善することができるため、圧縮機の運転性能の安定化や圧縮機のノイズ低減を図る。
2.そのうえ、圧縮機の容積効率を向上させ、多シリンダ2段式EVI圧縮機の高効率化や省エネルギー化を最大限にする。
3.さらに、中間チャンバーの容積を適切に設計することで、中間チャンバーが大きすぎることに起因する設計やプロセス上の困難を効果的に回避することができる。
4.ピンと下スライディングベーンの組み合わせによって、該圧縮機の2シリンダモード及び3シリンダモードを簡易かつ迅速に切り替えるよう効果的に制御することができ、操作が簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の多シリンダ2段式EVI圧縮機の構造模式図である。
図2】本発明の多シリンダ2段式EVI圧縮機が2シリンダモードで運転する場合の性能変化規則曲線図である。
図3】本発明の多シリンダ2段式EVI圧縮機が3シリンダモードで運転する場合の性能変化規則曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、本発明は、多シリンダ2段式EVI圧縮機を提供し、底蓋板、下フランジ、上部仕切り板および中部仕切り板と、上述した2つの部材同士で形成される少なくとも1つの中間チャンバーの容積と、を含み、総中間チャンバー容積はすべての中間チャンバーの容積の和であり、前記総中間チャンバー容積又は前記総中間チャンバー容積のうちの1つ(即ち、いずれか1つの中間チャンバー容積および総中間チャンバー容積からいずれか1つを選ぶ)と容積比とを乗算した積と、2段目(即ち、前に述べた「2段式」)シリンダの排気量の2乗との比率は所定の比率範囲内にあり、容積比は、2段目の吸気量と1段目の吸気量との比である。
【0022】
上述したいくつかのパラメータについて上述のような関係を設定することで、中間チャンバーの容積を適切に設計することができ、これにより、2シリンダ、3シリンダモードにおける2段目シリンダの吸気が安定し、1段目シリンダの排気の円滑化に寄与し(図2〜3を参照し、該所定の比率範囲内にある圧縮機の性能が安定になる)、2段式圧縮機のシリンダ内部の冷媒に過度的な圧力変動が発生する課題を効果的に改善することができるため、圧縮機の運転性能の安定化や圧縮機のノイズ低減を効果的に図る。そのうえ、圧縮機の容積効率を向上させることができ、多シリンダ2段式EVI圧縮機の高効率化や省エネルギー化を最大限にする。さらに、中間チャンバーの容積を上述のように適切に設計することで、中間チャンバーが大きすぎることに起因する設計やプロセス上の困難を効果的に回避することができる。
【0023】
前記圧縮機が2シリンダである場合、前記所定の比率範囲は0.05〜0.20であることが好ましい。これにより、圧縮機が2シリンダ運転モードにあり、該圧縮機の2段目シリンダの吸気が安定し、1段目シリンダの排気の円滑化に寄与し、圧縮機は安定して運転することができ、ノイズを効果的に低減する。上述した取りうる値の範囲は、大量の実験及びシミュレーションを重ねて得た好適なものであり、より優れた技術効果を達成した。
【0024】
前記圧縮機が3シリンダである場合、前記所定の比率範囲は0.1〜0.3であることが好ましい。これにより、圧縮機が3シリンダ運転モードにあり、該圧縮機の2段目シリンダの吸気が安定し、1段目シリンダの排気の円滑化に寄与し、圧縮機は安定して運転することができ、ノイズを効果的に低減する。上述取りうる値の範囲は、大量の実験及びシミュレーションを重ねて得た好適なものであり、より優れた技術効果を達成した。
【0025】
前記底蓋板と下フランジによって第1中間チャンバーが形成され、上部仕切り板と中部仕切り板によって第2中間チャンバーが形成され、総中間チャンバー容積は、前記第1中間チャンバーの容積と前記第2中間チャンバーの容積との和であることが好ましい。上述の構造によって、第1中間チャンバーと第2中間チャンバーの位置関係を具体的に限定し、2段目シリンダの吸気の安定化、1段目シリンダの排気の円滑化、および圧縮機の安定した運転の前提条件となる。
【0026】
前記総中間チャンバー容積は、第1中間チャンバーの容積V中1および第2中間チャンバーの容積V中2という2つの中間チャンバーの容積を含み、総中間チャンバー容積は、V=V中1+V中2になることが好ましい。これは1つの好適な実施形態であり、2段目シリンダの吸気の安定化、1段目シリンダの排気の円滑化、および圧縮機の安定した運転の前提条件となる。
【0027】
前記圧縮機が2シリンダである場合、V中2*は、Vの0.05〜0.20倍であり、ただし、Vは、2段目シリンダの排気量であり、Kは、2シリンダの容積比であることが好ましい。この割合関係および数値範囲によって、2シリンダモードにおける第2中間チャンバーの容積と2段目シリンダの排気量および2シリンダの容積比との関係を限定することで、中間チャンバーの容積を適切に設計し、これにより、圧縮機の運転性能の安定化や圧縮機のノイズ低減を図る。そのうえ、圧縮機の容積効率を効果的に向上させることができ、多シリンダ2段式EVI圧縮機の高効率化や省エネルギー化を最大限にする。
【0028】
前記圧縮機が3シリンダである場合、V中*は、Vの0.1〜0.3倍であり、ただし、Vは、2段目シリンダの排気量であり、Kは、3シリンダの容積比であることが好ましい。この割合関係および数値範囲によって、3シリンダモードにおける総中間チャンバー容積と2段目シリンダの排気量および3シリンダの容積比との関係を限定することで、中間チャンバーの容積を適切に設計し、これにより、圧縮機の運転性能の安定化や圧縮機のノイズ低減を図る。そのうえ、圧縮機の容積効率を効果的に向上させることができ、多シリンダ2段式EVI圧縮機の高効率化や省エネルギー化を最大限にする。なお、ここで、3シリンダの場合、総中間チャンバー容積を使用し、2シリンダの場合、第2中間チャンバーの容積を使用する理由は、第1、第2中間チャンバーの容積がそれぞれ下部シリンダおよび中部シリンダ(双方とも低圧シリンダである)に対応することにある。2シリンダ運転の場合、下部シリンダが取り外されているため、実際に動作するのは中部シリンダのみである。第1、第2中間チャンバーが流通孔を介して連通するものの、流通孔が実際に絞り作用(その直径がとても小さい)を果たすことを考慮し、第1中間チャンバーによる中部シリンダの圧力脈動低減作用は非常に小さいため、2シリンダの場合、第2中間チャンバーの容積に検討の重点を置く。一方、3シリンダの場合、下部シリンダおよび中部シリンダがともに動作し、第1中間チャンバーおよび第2中間チャンバーによる中部シリンダおよび下部シリンダの圧力脈動低減作用をそれぞれ考慮しなければならないため、3シリンダの場合、総中間チャンバー容積を検討すべきである。
【0029】
前記下フランジにはピン孔(未図示)が設けられ、前記ピン孔の内部にピン(未図示)がさらに設けられていることが好ましい。ピンによって、下部シリンダの下スライディングベーンをロックしたりロック解除したりすることができ、さらに、下部シリンダを取り外すか、動作を開始させる作用を担う。
【0030】
前記底蓋板には、一端が前記ピン孔に位置する第1連通孔が設けられ、前記下フランジには、前記第1連通孔の他端に連通する第2連通孔が設けられ、前記第2連通孔の他端が前記圧縮機の低圧吸気口に連通することが好ましい。上述のような第1連通孔および第2連通孔を設けることで、ピン孔から漏れ出るガスを圧縮機の低圧吸気口に効果的に導入することができ、これにより、圧縮機内部の冷媒漏れを効果的に防止し、安定した圧力を維持する。
【0031】
本発明は、上述の多シリンダ2段式EVI圧縮機を備える空気調和装置又はヒートポンプ給湯機をさらに提供する。上述の多シリンダ2段式EVI圧縮機を備えた空気調和装置又はヒートポンプ給湯機によれば、上述したいくつかのパラメータについて上述のような関係を設定することで、圧縮機の中間チャンバーの容積を適切に設計することができ、これにより、2シリンダ、3シリンダモードにおける2段目シリンダの吸気が安定し、1段目シリンダの排気の円滑化に寄与し(図2〜3を参照し、該所定の比率範囲内にある圧縮機の性能が安定になる)、2段式圧縮機のシリンダ内部の冷媒に過度的な圧力変動が発生する課題を効果的に改善することができるため、圧縮機の運転性能の安定化や圧縮機のノイズ低減を効果的に図る。そのうえ、圧縮機の容積効率を向上させることができ、多シリンダ2段式EVI圧縮機の高効率化や省エネルギー化を最大限にする。さらに、中間チャンバーの容積を上述のように適切に設計することで、中間チャンバーが大きすぎることに起因する設計やプロセス上の困難を効果的に回避することができる。これにより、空気調和装置及びヒートポンプ給湯機の運転性能を向上させる。
【0032】
本発明は、上述の多シリンダ2段式EVI圧縮機を制御調整する多シリンダ2段式EVI圧縮機の制御方法をさらに提供する。これにより、2シリンダ、3シリンダモードにおける2段目シリンダの吸気を安定にすることができ、1段目シリンダの排気の円滑化に寄与し(図2〜3を参照し、該所定の比率範囲内にある圧縮機の性能が安定になる)、2段式圧縮機のシリンダ内部の冷媒に過度的な圧力変動が発生する課題を効果的に改善することができるため、圧縮機の運転性能の安定化や圧縮機のノイズ低減を効果的に図る。そのうえ、圧縮機の容積効率を向上させることができ、多シリンダ2段式EVI圧縮機の高効率化や省エネルギー化を最大限にする。さらに、中間チャンバーの容積を上述のように適切に設計することで、中間チャンバーが大きすぎることに起因する設計やプロセス上の困難を効果的に回避することができる。
【0033】
好ましくは、圧縮機がピン、下スライディングベーンおよび下部シリンダを含む場合、(1)圧縮機が軽負荷の定格状況において運転すれば、ピンによって下スライディングベーンをロックし、下部シリンダを取り外すことにより、2シリンダモードでの運転を実現し、(2)圧縮機が重負荷の低温状況において運転すれば、ピンによるロックを解除し、下部シリンダが動作することにより、3シリンダモードでの運転を実現する。ピンと下スライディングベーンの組み合わせによって、該圧縮機の2シリンダモード及び3シリンダモードを簡易かつ迅速に切り替えるよう効果的に制御することができ、操作が簡便である。
【0034】
次に、本発明の好適な実施例を説明する。
【0035】
図1に示すように、本発明による多シリンダ2段式EVI可変容量圧縮機では、中間チャンバーは、合わせて2つあり、それぞれ、底蓋板10および下フランジ9からなる第1中間チャンバーと、上部仕切り板4および中部仕切り板5からなる第2中間チャンバーである。両者は中間流路を介して連通する。多シリンダ2段式EVI可変容量圧縮機の具体的な動作原理は、以下の通りである。
【0036】
軽負荷の定格状況において運転すれば、2シリンダモードを採用し、この場合、ピンによって下スライディングベーンをロックし、下部シリンダを取り外し、中部シリンダから排出される1段目の中圧ガスと補給ガスは、中間チャンバー及び中間流路内に混合した後、2段目シリンダ(上部シリンダ)に入る。重負荷の低温状況において運転すれば、3シリンダモードを採用し、この場合、ピンによるロックを解除し、下部シリンダが動作し、中、下部シリンダから排出される1段目の中圧ガスと補給ガスは、中間チャンバー及び中間流路内に混合した後、2段目シリンダ(上部シリンダ)に入る。さらに、2シリンダモードに比べ、3シリンダモードの場合、1段目シリンダにおける圧縮ガスの流量がより大きく、中間チャンバー及び中間流路の容積が一定である場合、3シリンダモードにおける圧力変動がより激しいはずである。
【0037】
本技術案は、多シリンダ2段式EVI可変容量圧縮機を提供し、第1中間チャンバーの容積および第2中間チャンバーの容積と2段目シリンダの排気量、容積比(2段目の吸気量と1段目の吸気量との比)の比率範囲が限定されている。第1中間チャンバーの容積をV中1、第2中間チャンバーの容積をV中2、中間チャンバーの容積をV中=V中1+V中2、2段目シリンダの排気量をV、2シリンダの容積比をK1、3シリンダの容積比をK2とそれぞれ定義し、V中2*K1はV2の0.05〜0.20倍(図2に示す)であり、V中*K2はV2の0.1〜0.3倍(図3に示す)であると設定することで、2シリンダ、3シリンダモードにおける2段目シリンダの吸気の安定化を保証することができ、1段目シリンダの排気の円滑化に寄与し、これにより、圧縮機の容積効率を向上させ、多シリンダ2段式EVI圧縮機の高効率化や省エネルギー化を最大限にする。
【0038】
衝突しない限り、上記各有利な方式を自由に組み合わせたり、重畳したりすることができるのは、当業者が容易に理解される。
【0039】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定することは意図していない。本発明の思想や原則内の如何なる修正、均等の置き換え、改良なども、本発明の権利範囲内に含まれるべきである。以上、本発明の好適な実施形態のみについて説明したが、当業者であれば、本発明の原則から逸脱しない前提において若干の改善や変形が可能であることは指摘されるべきである。これら改善や変形も、本発明の権利範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0040】
1…クランクシャフト、2…上フランジ、3…上部シリンダ、4…上部仕切り板、5…中部仕切り板、6…中部シリンダ、7…下部仕切り板、8…下部シリンダ、9…下フランジ、10…底蓋板。
図1
図2
図3