【実施例】
【0059】
本発明の具体的な実施の例を以下に示す。
【0060】
[実施例1]
前駆体であるコバルト含有水酸化ニッケルNi
0.84Co
0.16(OH)
2は水溶媒中のアンモニア錯体を経由した晶析法で数日間かけて得られた。該水酸化物と水酸化リチウム・一水塩LiOH・H
2Oと水酸化アルミニウムAl(OH)
3を、モル比でLi:Ni:Co:Al=1.02:0.81:0.15:0.04になるよう所定量を計量後、ハイスピードミキサーで混合し、ローラーハースキルンにおいて酸素雰囲気下770℃で芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物を得た。
【0061】
得られたニッケル酸リチウム複合酸化物粒子粉末30gを20℃、相対湿度21%の大気を80ft/min流通させて6時間保持し、含有するLiOHをLiOH・H
2Oへとした。続いて、大気中350℃、2時間で該不純物をLi
2CO
3へと変え、被覆化合物Zを作製した。
【0062】
被覆化合物Yを形成するため、上記の被覆化合物Zを備えたニッケル酸リチウム複合酸化物を原子層堆積法で処理した。該法の原料ガスAにトリメチルアルミニウムAl
2(CH
3)
3、原料ガスBにH
2Oを用いた。180℃で4サイクル処理して、本発明のニッケル酸リチウム系正極活物質粒子粉末を得た。
【0063】
本発明のニッケル酸リチウム系正極活物質粒子粉末の粉体評価は以下のように行った。
【0064】
試料表面、及び形状を観察するために電界放出形走査型電子顕微鏡(FE−SEM)のS−4800[(株)日立ハイテクノロジーズ]を用いた。高倍率における観察から炭酸リチウム粒子を推定した。
【0065】
試料のBET比表面積は試料を窒素ガス下で250℃、60分間乾燥脱気した後、Monosorb[Quantachrome Instruments]を用い、測定した。
【0066】
試料の結晶相の同定と結晶構造パラメータの算出のため、粉末X線回折装置SmartLab3kW[(株)リガク]を用いて測定した。X線回折パターンはCu−Kα、40kV、44mAの条件下で、モノクロメータを通して測定し、15≦2θ(deg.)≦120、0.02°のステップで、3deg./min.で測定した。
【0067】
試料の体積基準の凝集粒子メジアン径D
50の計測に、レーザー回折・散乱式の粒度分布計SALD−2201[(株)島津製作所]を用いた。
【0068】
試料中のLiOHとLi
2CO
3は室温で水溶媒懸濁させた溶液の塩酸滴定曲線から算出されるワルダー法を採用した。ここで、10gの試料を50ccの水に1時間マグネチィックスターラーで懸濁させた。
【0069】
試料の2%pHは100ccの純水中に2gの試料を室温で懸濁させ、pHメータを用いて室温で測定した。
【0070】
試料の主成分元素であるリチウムとニッケル、及び副成分のコバルト、アルミニウムの含有量は、該試料粉末を塩酸で完全に溶解後、ICP発光分光分析装置(ICP−OES)ICPS−7510[(株)島津製作所]を用い、検量線法で測定した。
【0071】
試料の表面組成分析にX線光電子分光(XPS)装置DLD Axis Ultra XPS[Kratos Analytical Ltd.]を用いた。測定条件として、単色化X線(Alkα)をX線源とし、アノード電圧14kV、エミッション電流8mAで、Arエッチングにより表面から深さ方向に分析し、Ta
2O
5基板換算の深さ方向のプロファイルを作成した。
【0072】
ALD法による被覆化合物は原料ガス種からAl
2O
3と推定され、定量化は、試料5gを純水100ccに分散させ、煮沸、冷却後、溶解したAlの量から計算した。
【0073】
得られた正極活物質粒子粉末を用いて、下記製造方法によるCR2032型コインセルでの二次電池特性を評価した。
【0074】
正極活物質と導電剤であるアセチレンブラック、グラファイト及び結着剤のポリフッ化ビニリデンを重量比90:3:3:4となるよう精秤し、N−メチル−2−ピロリドンに分散させ、高速混練装置で十分に混合して正極合剤スラリーを調整した。次に該合剤スラリーを集電体のアルミニウム箔にドクターブレードPI−1210 film coater[Tester Sangyo Co., LTD]で塗布し、120℃で乾燥して、0.5t/cmに加圧して、1cm
2当たり9mgの正極活物質粒子粉末を含有する正極シートを作製した。該正極シートを16mmφに打ち抜き、正極とした。
【0075】
負極として、16mmφに打ち抜いた金属リチウム箔を用いた。
【0076】
セパレーターとして、セルガード#2400[Celgard,LLC]20mmφを用いた。エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート(1:1体積比)混合溶媒に、1mol/LになるようLiPF
6を溶解し、電解液として用いた。これら部材を組み立て、CR2032型コインセルを作製した。
【0077】
電解液や金属リチウムが大気により分解されないよう、露点を管理したアルゴン雰囲気のグローブボックス中で電池の組み立てを行った。
【0078】
25℃における初期放電容量の測定は充放電試験装置TOSCAT−3000[TOYO system]を用い、0.1Cの定電流下で、放電電圧下限を3.0Vとし、充電上限電圧を4.4Vとした条件の試験を行った。また、25℃における100回の充放電サイクル試験に0.5C/1Cの定電流下で、放電電圧下限を3.0Vとし、充電上限電圧を4.4Vとした条件の試験を行った。
【0079】
電池内部の発生ガスの定量化にグラファイトを負極、LiPF
6を電解質(濃度:1mol/L)、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート(1:1体積比)を電解液溶媒とし、ラミネート型の電池(サイズ:105mm×55mm)を構成した。下限電圧3.0V、上限電圧4.2Vとし、初回充放電を充電レート0.05Cと放電レート0.1Cで、二回目の充放電を充電レート0.2Cと放電レート0.5Cで、3回目の充電レートを0.1Cで行った。3回目の充電状態で電流を流すのを止め、85℃−24時間保持後、室温にてアルキメデス法にて増加した体積を測定し、正極活物質1g当たりの二次電池体積増加分を算出した。
【0080】
前記の芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物はICP組成分析とXRD相分析により、層状構造のLi
1.02Ni
0.81Co
0.15Al
0.04O
2であった。
【0081】
また、前記のニッケル酸リチウム系正極活物質粒子粉末は
図6(1)にXPSの深さ方向のプロファイルを示すように、表層に元素Li、Al、Cが多く検出され、被覆化合物Yと被覆化合物Zを備えており、被覆化合物YはAl
2O
3、被覆化合物ZはLiOHとLi
2CO
3と推定される。Al濃度は最表面において最も高く、10nm/Ta
2O
5の深さから減少し始める。一方、Li濃度は最表面から内部に向かって増加し、10nm/Ta
2O
5の深さにおいて最大値に達する。これは、最表面において化合物Yがリッチとなり、一方表面下の内部において化合物Zがリッチであることを示す。保護層としてのそのような層は、優れた高電圧充放電繰り返し特性を有し、高温保存時のガス発生を抑制したニッケル酸リチウム系正極活物質粒子粉末を提供する。XRDによる格子定数は六方格子で表わすと、a=2.8651Å、c=14.185Åであった。
【0082】
実施例及び比較例のニッケル酸リチウム系正極活物質粒子粉末の粉体特性及び電池特性を表1、2及び4に示す。水酸化リチウム、炭酸リチウム、共に低い含有量であり、その比は1以上であった。4.4V高充電圧時の初期容量も200mAh/g程度を示し、同充電電圧での100回のサイクル特性の容量維持率も95%以上であった。85℃保存時のガス発生試験による体積増加もわずか0.33cc/gと推定され、高性能の二次電池特性を示した。
【0083】
[実施例2]
実施例1で得られた芯粒子Xとなり得る層状構造のニッケル酸リチウム複合酸化物Li
1.02Ni
0.81Co
0.15Al
0.04O
2を用い、原子層堆積法で被覆化合物Yを形成させた。同法での処理条件は実施例1と同様で、用いた原料ガスAはトリメチルアルミニウムAl
2(CH
3)
6、原料ガスBはH
2Oであり、180℃で4サイクルの処理であった。その後、温度20℃で相対湿度21%の空気を80ft/min.流通させて6時間加湿処理し、大気中350℃−2時間で被覆化合物Zを形成させた。
【0084】
得られたニッケル酸リチウム系正極活物質粒子粉末は
図6(2)にXPSの深さ方向のプロファイルを示すように、表層に元素Li、Al、Cが多く検出され、Al
2O
3と推定される被覆化合物Yと、LiOH及びLi
2CO
3と推定される被覆化合物Zを備えていた。Li濃度は最表面において最も高く、10nm/Ta
2O
5の深さから減少し始める。一方、Al濃度は最表面から内部に向かって増加し、10nm/Ta
2O
5の深さにおいて最大値に達する。これは、最表面において化合物Zがリッチとなり、一方表面下の内部において化合物Yがリッチであることを示す。XRDによる格子定数は六方格子で表わすと、a=2.8653Å、c=14.177Åであった。粉体特性及び電池特性を示すように、実施例1同様、高性能の二次電池特性を示した。
図2のSEM写真に示すように、該活物質粒子粉末は凝集粒子を構成しており、その平均粒子径はD
50=15.8μmと近い値と観察された。
図3のSEM写真に示すように、サブミクロンの一次粒子から構成され、被覆化合物Y或いは被覆化合物Zにより表層は凹凸が観察された。
【0085】
[比較例1]
実施例1で得られた芯粒子Xとなり得る層状構造のニッケル酸リチウム複合酸化物Li
1.02Ni
0.81Co
0.15Al
0.04O
2を、表面処理することなく正極活物質粒子粉末として用いた。
図6(3)にXPSの深さ方向のプロファイルを示すように、表層に元素Li、Cが多く検出され、Alは全く検出されず、LiOHとLi
2CO
3が存在すると推定される。しかしながら、
図4のSEM写真に示すように、粒子表面は滑らかであり、時折、100nm以下の粒子が観察される程度であり、被覆化合物を備えているとは言い難かった。また、XRDによる格子定数は六方格子で表わすと、a=2.8651Å、c=14.181Åであった。
【0086】
正極活物質粒子粉末としての粉体特性及び電池特性を表に示す。水酸化リチウムは高い含有量であり、水酸化リチウムに対する炭酸リチウムの比は1未満であり、水酸化リチウムの存在比は高かった。4.4V高充電圧時の初期容量は200mAh/g程度であったが、同充電電圧での100回のサイクル特性の容量維持率も86%と低かった。85℃保存時のガス発生試験による体積増加も1.06cc/gと高く、低性能の二次電池特性を示した。
【0087】
[比較例2]
実施例2の途中の製造工程から抜き取った試料、即ち、原子層堆積法での処理後の試料を正極活物質として用いた。表に粉体特性及び電池特性を示すように、高い水酸化リチウムの含有量を示し、2%粉体pHも高く、低性能の二次電池特性を示した。
【0088】
[比較例3]
実施例1の途中の製造工程から抜き取った試料、即ち、加湿処理と大気中の熱処理を経た直後の試料を正極活物質として用いた。表に粉体特性及び電池特性を示すように、高い炭酸リチウムの含有量を示し、低性能の二次電池特性を示した。
図5のSEM写真を示すように、粒子表面は滑らかでなく、粒子表面全体に渡って、100nm以下の粒子が観察され、炭酸リチウムと推定される被覆化合物Zを備えていた。
【0089】
[比較例4]
実施例1で得られた芯粒子Xとなり得る層状構造のニッケル酸リチウム複合酸化物Li
1.02Ni
0.81Co
0.15Al
0.04O
2を50vol%CO
2/50vol%大気の混合ガス流通下で250℃−2時間処理を行った。表に粉体特性及び電池特性を示すように、高い水酸化リチウムの含有量を示し、低性能の二次電池特性を示した。
図6(4)にXPSの深さ方向のプロファイルを示すように、表層に元素Li、Cが多く検出され、Alは全く検出されず、Li
2CO
3と推定された。
【0090】
[実施例3]
前駆体であるコバルト含有水酸化ニッケルNi
0.84Co
0.16(OH)
2(D
50は約6μm)は水溶媒中のアンモニア錯体を経由した晶析法で数日間かけて得られた。以降、実施例1と同様の処理を行った。実施例3〜7、及び比較例5〜14で得られたニッケル酸リチウム系正極活物質粒子粉末の粉体特性及び電池特性を表2に示す。
【0091】
[実施例4]
実施例1で得られた芯粒子Xとなり得る層状構造のニッケル酸リチウム複合酸化物Li
1.02Ni
0.81Co
0.15Al
0.04O
2を用い、原子層堆積法で被覆化合物Yを形成させた。同法での処理条件はサイクル数を2とした以外は実施例1と同様で、用いた原料ガスAはトリメチルアルミニウムAl
2(CH
3)
6、原料ガスBはH
2Oであり、180℃での処理であった。その後、温度20℃で相対湿度21%の空気を80ft/min.流通させて6時間加湿処理し、大気中350℃−2時間で被覆化合物Zを形成させた。
【0092】
[実施例5]
原子層堆積法のサイクル数を2から3.5と変更した以外は、実施例4と同様の処理を行った。
【0093】
[実施例6]
実施例5において、温度20℃で相対湿度21%の空気80ft/min.流通させた6時間の加湿処理を、温度20℃でAir:CO
2=1:1(体積比)の混合ガス8L/min(相対湿度約20%)で2時間流通させた処理、と変更した以外は、実施例5と同様の処理を行った。
【0094】
[実施例7]
原子層堆積法のサイクル数を2から7と変更した以外は、実施例4と同様の処理を行った。
【0095】
[比較例5]
実施例3の途中で得られたローラーハースキルンにおいて酸素雰囲気下770℃で芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物をそのまま正極活物質として用いた。
【0096】
[比較例6]
加湿処理後、大気中350℃、2時間で被覆化合物Zを作製する工程を省くこと以外、実施例3同様の処理を行った。
【0097】
[比較例7]
実施例1に用いた芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物を、空気:CO
2=3:1(体積比)の混合ガス条件下、350℃−2時間処理した。原子層堆積法での処理は行わなかった。
【0098】
[比較例8]
実施例4に用いた芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物を、空気:CO
2=3:1(体積比)の混合ガス条件下、350℃−2時間処理した。原子層堆積法での処理は行わなかった。
【0099】
[比較例9]
実施例4の途中の工程で得られた芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物に、被覆化合物Yを形成させて、正極活物質として用いた。
【0100】
[比較例10]
実施例5の途中の工程で得られた芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物に、被覆化合物Yを形成させて、正極活物質として用いた。
【0101】
[比較例11]
実施例7の途中の工程で得られた芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物に、被覆化合物Yを形成させて、正極活物質として用いた。
【0102】
[比較例12]
実施例3の途中の工程で得られた芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物粒子粉末30gを、温度20℃相対湿度21%の大気80ft/min流通させて6時間保持し、含有するLiOHをLiOH・H
2Oへとした。続いて、大気中350℃、2時間で該不純物をLi
2CO
3へと変え、被覆化合物Zを作製した。被覆化合物Yを形成させる工程は省略した。
【0103】
[比較例13]
温度20℃相対湿度21%の大気80ft/min流通させて6時間保持を、空気:CO
2=1:1(体積比)の混合ガスを8L/minで流しながら2時間保持と変更する以外は、比較例12と同様の処理を行った。
【0104】
[比較例14]
実施例4の途中の工程で得られた芯粒子Xとなり得るニッケル酸リチウム複合酸化物粒子粉末30gを、温度20℃の空気:CO
2=1:1(体積比)の混合ガスを8L/minで流しながら2時間保持し、含有するLiOHをLiOH・H
2Oへとした。続いて、大気中350℃、2時間で該不純物をLi
2CO
3へと変え、被覆化合物Zを作製した。被覆化合物Yを形成させる工程は省略した。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
本発明に係るニッケル酸リチウム系正極活物質粒子粉末で得られる二次電池特性は、高電圧充放電繰り返し及び高温保存時のガス発生の観点から高性能であったと言及できる。