【文献】
Mol. Ther.,2006年,vol.14, no.2, p.255-267
【文献】
Neuromol. Med.,2014年,vol.16, p.551-564
【文献】
Exp. Biol. Med.,2015年08月,vol.240, p.1079-1086
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凍結保存する工程が、90%HS/10%DMSO、CryoStor 2%、CryoStor 5%およびCryoStor 10%、ならびにStem Cell Bankerからなる群から選択される培地中で行われる、請求項16記載の方法。
網膜疾患または網膜障害が、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、遺伝性または後天性の黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮症、脈絡膜欠如、パターンジストロフィー、RPEジストロフィー、シュタルガルト病、光傷害、レーザー傷害、炎症性傷害、感染性傷害、放射線傷害、新生血管傷害または外傷性傷害のいずれか1つによって生じた損傷に起因するRPE損傷および網膜損傷の少なくとも1つから選択される、請求項23記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の特定の態様の説明
本発明は、そのいくつかの態様において、多能性幹細胞から網膜色素上皮細胞を調製する方法に関する。
【0047】
本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明はその適用が必ずしも以下の説明に記載される詳細または実施例によって例示される詳細に限定されないということが理解されるべきである。本発明は、他の態様が可能である、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0048】
ヒト胚性幹細胞がRPE細胞産生のための細胞供給源として提案されている。hESCから網膜色素上皮(RPE)細胞を得るために、2つの一般的手法、すなわち自発的分化および分化誘導が使用されている。
【0049】
自発的分化において、平らなコロニーまたは胚様体(EB)中のhESCは、色素RPE細胞を含有する細胞の集団へと自発的に分化することを許される。
【0050】
RPE細胞へのヒト胚性幹細胞(hESC)の分化誘導は従来、胚様体/スフェロイド体(SB)の産生ののち実施される。たとえば、内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,956,866号を参照すること。しかし、この工程は本来、変動的であり、それが工業的プロセスに必要なスケールアップを妨げる。
【0051】
本発明者らは今、胚様体またはスフェロイド体としての初期分化なしでRPE細胞を産生し得るということを提案する。これは、完全に接着条件下で実施される分化誘導プロコトルの後の、RPEの典型的な多角形形態の識別によって実証されている(
図2A〜B)。
【0052】
酵素的に単離された細胞の増殖ののち実施されたFACS分析は、細胞の99%超がCRALBP
+PMEL17
+であることを実証し(
図3A〜C)、この方法が高度に精製されたRPE細胞集団を産生することを示した。
【0053】
したがって、本発明の第一の局面にしたがって、網膜色素上皮(RPE)細胞を産生する方法であって、
(a)分化誘導剤を含む培地中、接着性表面上で未分化ヒト多能性幹細胞の細胞集団を培養して、分化細胞を得る工程であって、該細胞集団の細胞の少なくとも50%がOct4
+TRA-1-60
+である、工程;および
(b)TGFβスーパーファミリーの1つまたは複数のメンバーを含む培地中、接着性表面上で分化細胞を培養して、RPE細胞を得る工程
を含む、方法が提供される。
【0054】
文脈が許すとき互換可能に使用され得る「網膜色素上皮細胞」、「RPE細胞」、「RPE」とは、網膜の色素上皮細胞層を形成する天然のRPE細胞の細胞型に機能的に類似する(たとえば、眼の中に移植されると、天然のRPE細胞の機能的活性に類似する機能的活性を示す)細胞型の細胞をいう。
【0055】
1つの態様にしたがって、RPE細胞は、成熟RPE細胞の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのマーカーを発現する。そのようなマーカーは、CRALBP、RPE65、PEDF、PMEL17、ベストロフィンおよびチロシナーゼを含むが、これらに限定されない。任意で、RPE細胞はまた、RPE前駆細胞のマーカー、たとえばMITFを発現し得る。別の態様において、RPE細胞はPAX-6を発現する。
【0056】
本明細書の中で使用される語句「成熟RPE細胞のマーカー」とは、非RPE細胞または未熟なRPE細胞と比べて成熟RPE細胞中で増加する(たとえば少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍)抗原(たとえばタンパク質)をいう。
【0057】
本明細書の中で使用される語句「RPE前駆細胞のマーカー」とは、非RPE細胞と比べてRPE前駆細胞中で増加する(たとえば少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍)抗原(たとえばタンパク質)をいう。
【0058】
別の態様にしたがって、RPE細胞は、網膜の色素上皮細胞層を形成する天然のRPE細胞の形態に類似する形態、すなわち色素を有し、かつ特徴的な多角形を有する形態を有する。
【0059】
さらに別の態様にしたがって、RPE細胞は、黄斑変性症のような疾患を処置することができる。
【0060】
さらに別の態様にしたがって、RPE細胞は、本明細書中で先に挙げた要件の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはすべてを満たす。
【0061】
本明細書の中で使用される語句「幹細胞」とは、培養中、特定の特別な機能を有する他の細胞型(たとえば完全に分化した細胞)へと分化するよう誘発されるまで長期間、未分化状態にとどまることができる細胞(たとえば多能性幹細胞または多分化能幹細胞)をいう。好ましくは、語句「幹細胞」は、胚性幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、成人幹細胞、間葉系幹細胞および造血幹細胞を包含する。
【0062】
特定の態様にしたがって、RPE細胞は多能性幹細胞から産生される。そのような細胞は、3つの胚葉:内胚葉(胃の内壁、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、尿生殖器)または外胚葉(表皮組織および神経系)のいずれにも分化することができる。特定の態様にしたがって、多能性幹細胞は、胚本体(embryo proper)の各細胞、たとえば胚性幹細胞およびiPSC(たとえばESCまたはiPSC)へと分化することができる。
【0063】
人工多能性幹細胞(iPSC)は、体細胞から、体細胞の遺伝子操作によって、たとえば体細胞、たとえば線維芽細胞、肝細胞、胃上皮細胞への転写因子、たとえばOct-3/4、Sox2、c-MycおよびKLF4のレトロウイルス導入によって産生することができる[Yamanaka S, Cell Stem Cell. 2007, 1(1):39-49;Aoi T, et al., Generation of Pluripotent Stem Cells from Adult Mouse Liver and Stomach Cells. Science. 2008 Feb 14.(電子版が書籍よりも先);IH Park, Zhao R, West JA, et al. Reprogramming of human somatic cells to pluripotency with defined factors. Nature 2008;451:141-146;K Takahashi, Tanabe K, Ohnuki M, et al. Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors. Cell 2007;131:861-872]。他の胚様幹細胞は、レシピエント細胞が有糸分裂を阻止されるならば、卵母細胞への核移植、胚性幹細胞との融合または接合子中への核移植によって産生することができる。
【0064】
語句「胚性幹細胞」とは、3つの胚性胚葉(すなわち、内胚葉、外胚葉、および中胚葉)すべての細胞へと分化することもできるし、または未分化状態にとどまることもできる胚細胞をいう。語句「胚性幹細胞」は、妊娠後に形成する胚組織から得られる細胞(たとえば胚盤胞)、胚の着床前に形成する胚組織から得られる細胞(すなわち着床前胚盤胞)、着床後/原腸形成前段階の胚盤胞から得られる拡張胚盤胞(EBC)(WO2006/040763を参照)および妊娠中のいずれかの時点、好ましくは妊娠10週よりも前に胎児の生殖器組織から得られる胚性生殖(EG)細胞を含み得る。本発明のいくつかの態様の胚性幹細胞は、周知の細胞培養法を使用して得ることができる。たとえば、ヒト胚性幹細胞はヒト胚盤胞から単離することができる。ヒト胚盤胞は一般に、ヒトのインビボ着床前胚または体外受精(IVF)胚から得られる。または、単一細胞ヒト胚を胚盤胞段階まで拡張することもできる。ヒトES細胞の単離の場合、胚盤胞から透明帯を取り出したのち、栄養外胚葉細胞を溶解し、穏やかなピペット操作によって無傷の内部細胞塊(ICM)から取り出す手法によってICMを単離する。次いで、ICMを、その増殖を可能にする適切な培地を含む組織培養フラスコ中にプレーティングする。9〜15日後、ICM誘導増殖物を機械的解離または酵素的分解のいずれかによって凝集塊へと解離し、次いで、細胞を新しい組織培養培地上に再びプレーティングする。未分化形態を示すコロニーをマイクロピペットによって個々に選択し、凝集塊へと機械的に解離し、再びプレーティングする。次いで、得られるES細胞を規定どおり4〜7日ごとに分割する。ヒトES細胞の調製方法に関するさらなる詳細に関しては、Reubinoff et al. Nat Biotechnol 2000, May: 18(5): 559;Thomson et al., [米国特許第5,843,780号;Science 282: 1145, 1998;Curr. Top. Dev. Biol. 38: 133, 1998;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 7844, 1995];Bongso et al., [Hum Reprod 4: 706, 1989];およびGardner et al., [Fertil. Steril. 69: 84, 1998]を参照すること。
【0065】
本発明のいくつかの態様にしたがって市販の幹細胞を使用することもできることが理解されよう。ヒトES細胞は、NIHヒト胚性幹細胞レジストリ[www.grants(dot)nih(dot)gov/stem_cells/registry/current(dot)htm]から購入することができる。市販の胚性幹細胞株の非限定的な例は、HAD-C102、ESI、BG01、BG02、BG03、BG04、CY12、CY30、CY92、CY10、TE03、TE32、CHB-4、CHB-5、CHB-6、CHB-8、CHB-9、CHB-10、CHB-11、CHB-12、HUES 1、HUES 2、HUES 3、HUES 4、HUES 5、HUES 6、HUES 7、HUES 8、HUES 9、HUES 10、HUES 11、HUES 12、HUES 13、HUES 14、HUES 15、HUES 16、HUES 17、HUES 18、HUES 19、HUES 20、HUES 21、HUES 22、HUES 23、HUES 24、HUES 25、HUES 26、HUES 27、HUES 28、CyT49、RUES3、WA01、UCSF4、NYUES1、NYUES2、NYUES3、NYUES4、NYUES5、NYUES6、NYUES7、UCLA 1、UCLA 2、UCLA 3、WA077(H7)、WA09(H9)、WA13(H13)、WA14(H14)、HUES 62、HUES 63、HUES 64、CT1、CT2、CT3、CT4、MA135、Eneavour-2、WIBR1、WIBR2、WIBR3、WIBR4、WIBR5、WIBR6、HUES 45、Shef 3、Shef 6、BJNhem19、BJNhem20、SA001、SA001である。
【0066】
特定の態様にしたがって、胚性幹細胞株はHAD-C102またはESIである。
【0067】
加えて、ES細胞は、マウス(Mills and Bradley, 2001)、ゴールデンハムスター[Doetschman et al., 1988, Dev Biol. 127: 224-7]、ラット[Iannaccone et al., 1994, Dev Biol. 163: 288-92]、ウサギ[Giles et al. 1993, Mol Reprod Dev. 36: 130-8;Graves & Moreadith, 1993, Mol Reprod Dev. 1993, 36: 424-33]、いくつかの家畜種[Notarianni et al., 1991, J Reprod Fertil Suppl. 43: 255-60;Wheeler 1994, Reprod Fertil Dev. 6: 563-8;Mitalipova et al., 2001, Cloning. 3: 59-67]および非ヒト霊長類種(アカゲザルおよびマーモセット)[Thomson et al., 1995, Proc Natl Acad Sci U S A. 92: 7844-8;Thomson et al., 1996, Biol Reprod. 55: 254-9]を含む他の種からも得ることができる。
【0068】
拡張胚盤胞細胞(EBC)は、受精後少なくとも9日の、原腸形成よりも前の段階の胚盤胞から得ることができる。胚盤胞を培養する前に、透明帯を消化して[たとえば酸性タイロード液(Sigma Aldrich, St Louis, MO, USA)によって]、内部細胞塊を露出させる。次いで、標準的な胚性幹細胞培養法を使用して、胚盤胞を胚全体として受精後少なくとも9日間かつ14日以内で(すなわち原腸形成イベントよりも前に)インビトロ培養する。
【0069】
ES細胞を調製するための別の方法がChung et al., Cell Stem Cell, Volume 2, Issue 2, 113-117, 7 February 2008に記載されている。この方法は、インビトロ受精工程中に胚から単一細胞を取り出す工程を含む。胚はこの工程中に破壊されない。
【0070】
EG細胞は、(ヒト胎児の場合)妊娠約8〜11週の胎児から得られる始原生殖細胞から当業者に公知の実験室技術を使用して調製される。生殖隆起を分離し、小さな塊へと切り分け、その後、その塊を機械的解離によって細胞へと分ける。次いで、EG細胞を、適切な培地を含む組織培養フラスコ中で増殖させる。細胞は、一般には7〜30日後または1〜4回の継代後にEG細胞と合致する細胞形態が認められるまで、培地を毎日交換しながら培養する。ヒトEG細胞を調製する方法に関するさらなる詳細に関しては、Shamblott et al., [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 13726, 1998]および米国特許第6,090,622号を参照すること。
【0071】
ES細胞を調製するさらに別の方法は、単為生殖による方法である。この工程においても、胚は破壊されない。
【0072】
現在実施されているES培養法は主に、幹細胞増殖に必要な因子を分泌すると同時にそれらの分化を阻害するフィーダー細胞層の使用に基づく。培養は一般に、固体表面、たとえばゼラチンまたはビメンチンでコートされた表面上で行われる。例示的なフィーダー層は、ヒト胚線維芽細胞、成人ファロピウス管上皮細胞、初代マウス胚線維芽細胞(PMEF)、マウス胚線維芽細胞(MEF)、マウス胎仔線維芽細胞(MFF)、ヒト胚線維芽細胞(HEF)、ヒト胚性幹細胞の分化から得られるヒト線維芽細胞、ヒト胎児筋細胞(HFM)、ヒト胎児皮膚細胞(HFS)、ヒト成人皮膚細胞、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)、ヒト臍帯線維芽細胞、臍帯または胎盤から得られるヒト細胞、ならびにヒト骨髄間質細胞(hMSC)を含む。ESCを未分化状態に維持するための増殖因子を培地に加えてもよい。そのような増殖因子はbFGFおよび/またはTGFβを含む。別の態様において、hESCをナイーブな未分化状態に維持するための薬剤を培地に加えてもよい。たとえば、Kalkan et al., 2014, Phil. Trans. R. Soc. B, 369: 20130540を参照すること。
【0073】
フィーダー細胞フリーの系もまた、ES細胞の培養に使用されている。そのような系は、フィーダー細胞層の代わりとして、血清代替品、サイトカインおよび増殖因子(IL6および可溶性IL6受容体キメラを含む)で補足されたマトリックスを利用する。幹細胞は、培地、たとえばLonza L7系、mTeSR、StemPro、XFKSR、E8、Nutristemの存在下、細胞外マトリックス(たとえばMatrigel(登録商標)、ラミニン、またはビトロネクチン)のような固体表面上で増殖させることができる。フィーダー細胞と幹細胞との同時増殖を必要とし、混合細胞集団を生じさせ得るフィーダーベースの培養とは異なり、フィーダーフリー系で増殖させた幹細胞は表面から容易に分離する。幹細胞を増殖させるために使用される培地は、分化を効果的に阻害し、それらの成長を促進する因子、たとえばMEFならし培地およびbFGFを含有する。
【0074】
任意選択の増殖ののち、多能性ESCは接着性表面上で分化誘導に供される(中間のスフェロイド体または胚様体の産生なしで)。
【0075】
したがって、本発明のこの局面にしたがって、接着性表面上で分化誘導に供される細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が未分化ESCであり、多能性のマーカーを発現する。たとえば、細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%がOct4
+TRA-1-60
+である。未分化ESCは、好ましくは、多能性の他のマーカー、たとえばNANOG、Rex-1、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-β、SSEA-3、SSEA-4および/またはTRA-1-81を発現する。
【0076】
1つの例示的な分化プロトコルにおいて、非分化胚性幹細胞は、第一の分化誘導剤を使用して接着性表面上でRPE細胞系へと分化させたのち、トランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)スーパーファミリーのメンバー(たとえばTGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3サブタイプ、ならびにアクチビン(たとえばアクチビンA、アクチビンBおよびアクチビンAB)、結節性抗ミュラー管ホルモン(AMH)、いくつかの骨形成タンパク質(BMP)、たとえばBMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6およびBMP7ならびに増殖分化因子(GDF)を含む相同性リガンド)を使用してRPE細胞へとさらに分化させる。特定の態様にしたがって、トランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)スーパーファミリーのメンバーはアクチビンA、たとえば20〜200ng/ml、たとえば100〜180ng/mlのアクチビンAである。
【0077】
特定の態様にしたがって、第一の分化誘導剤はニコチンアミド(NA)、たとえば1〜100mM、5〜50mM、5〜20mM、たとえば10mMのニコチンアミド(NA)である。
【0078】
別の態様にしたがって、第一の分化誘導剤は3-アミノベンズアミドである。
【0079】
「ナイアシンアミド」とも知られるNAは、β細胞機能を保存し、改善すると考えられるビタミンB3(ナイアシン)のアミド誘導体形態である。NAは化学式C
6H
6N
2Oを有する。NAは、成長、および食品のエネルギーへの変換にとって不可欠であり、関節炎の処置ならびに糖尿病の処置および予防に使用されている。
【0080】
特定の態様にしたがって、ニコチンアミドは、ニコチンアミド誘導体またはニコチンアミド模倣体である。本明細書の中で使用される用語「ニコチンアミド(NA)の誘導体」とは、天然NAの化学的に修飾された誘導体である化合物をいう。1つの態様において、化学的修飾は、アミド部分の窒素または酸素原子を介する基本的なNA構造のピリジン環の置換(環の炭素または窒素員を介する)であり得る。置換されると、1つまたは複数の水素原子が置換基によって置換される、および/または置換基がN原子に結合して四価の正電荷窒素を形成し得る。したがって、本発明のニコチンアミドは置換または非置換ニコチンアミドを含む。別の態様において、化学的修飾は、たとえばNAのチオベンズアミド類似体を形成するための、1つの基の欠失または置換であり得、そのすべては有機化学の当業者によって理解されるとおりである。本発明に関連する誘導体はまた、NAのヌクレオシド誘導体(たとえばニコチンアミドアデニン)を含む。多様なNA誘導体が、いくつかはPDE4酵素の阻害活性と関連して(WO03/068233;WO02/060875;GB2327675A)、またはVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤として(WO01/55114)、記載されている。たとえば、4-アリール−ニコチンアミド誘導体を調製する方法(WO05/014549)。他の例示的なニコチンアミド誘導体がWO01/55114およびEP2128244に開示されている。
【0081】
ニコチンアミド模倣体は、多能性細胞からのRPE細胞の分化および成熟におけるニコチンアミドの効果を再現するニコチンアミドの修飾形態およびニコチンアミドの化学的類似体を含む。例示的なニコチンアミド模倣体は、安息香酸、3-アミノ安息香酸および6-アミノニコチンアミドを含む。ニコチンアミド模倣体として作用し得る化合物の別のクラスがポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。例示的なPARP阻害剤は、3-アミノベンズアミド、イニパリブ(BSI 201)、オラパリブ(AZD-2281)、ルカパリブ(AG014699、PF-01367338)、ベリパリブ(ABT-888)、CEP 9722、MK 4827およびBMN-673を含む。
【0082】
特定の態様にしたがって、分化は以下のように行われる:
(a)第一の分化誘導剤(たとえばニコチンアミド)を含む培地中での、ESCの培養;および
(b)TGFβスーパーファミリーのメンバー(たとえばアクチビンA)および第一の分化誘導剤(たとえばニコチンアミド)を含む培地中での、工程(a)から得られた細胞の培養。
【0083】
好ましくは、工程(a)は、TGFβスーパーファミリーのメンバーの非存在下で行われる。
【0084】
上記プロトコルは、工程(b)で得られた細胞を、第一の分化誘導剤(たとえばニコチンアミド)を含むがTGFβスーパーファミリーのメンバー(たとえばアクチビンA)を欠く培地中で培養することによって続けてもよい。この工程を本明細書の中で工程(b
*)と呼ぶ。
【0085】
以下、さらなる態様によって上記プロトコルをさらに詳細に説明する。
【0086】
工程(a):十分な量のESCが得られたら(たとえばフィーダー上での増殖ののち)、プロセスを開始する。ESCは一般に、フィーダー培養物から取り出され(たとえばコラゲナーゼA、ディスパーゼ、TrypLE select、EDTAを使用することにより)、フィーダーフリーの接着性基材(たとえばラミニン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、コラーゲンIおよびコラーゲンIV)上にプレーティングされる。特定の態様にしたがって、フィーダーフリーの接着性基材はラミニン、たとえばラミニン521またはビトロネクチン(たとえばMillipore CC080 Lot LV1689930)である。未分化胚性幹細胞は、分化を防ぐ培地(たとえば、bFGFおよびTGFβを含有する培地)中での分化誘導の開始の前に、接着性基材上で1〜10日間さらに増殖させてもよいし、またはより長い期間(10日よりも長い期間)継代して増殖させてもよい。次いで、第一の分化誘導剤(たとえばニコチンアミド)を含む培地で培地を交換することによって分化誘導を開始する。培地は、第二の分化工程に使用されるレベルのTFGβスーパーファミリーのメンバー(アクチビンA、bFGFおよびTGFβ)を含まない。1つの態様において、培地はTFGβスーパーファミリーのメンバーを完全に欠いている。別の態様において、培地中のTFGβスーパーファミリーメンバーのレベルは、20ng/ml未満、10ng/ml未満、1ng/ml未満またはさらに0.1ng/ml未満である。
【0087】
ニコチンアミドの例示的な濃度は、1〜100mM、5〜50mM、5〜20mM、たとえば10mMである。
【0088】
この段階は、最低1日、より好ましくは2日間、3日間、1週間またはさらに14日間、行われ得る。好ましくは、細胞は、この段階では、ニコチンアミドの存在下(かつアクチビンの非存在下)で3週を超えては培養されない。
【0089】
1つの態様において、細胞が接着性基材、たとえばラミニン、ビトロネクチン上で培養されるとき、大気酸素条件は20%である。大気酸素条件は、その含有率が約20%未満、15%未満、10%未満、より好ましくは約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、さらに好ましくは約5%(たとえば1%〜20%、1%〜10%または0〜5%)になるように操作されてもよい。
【0090】
特定の態様にしたがって、細胞は、接着性基材上で、最初は通常大気酸素条件下、次いで通常未満に下げた大気酸素条件下で培養される。
【0091】
好ましくは、ひとたび未分化ESCが接着性基材上にプレーティングされたならば、未分化ESCは色素細胞が認められるまでは取り出されない。
【0092】
工程(b):第一の分化誘導段階(工程a;すなわち、ニコチンアミド(たとえば1〜100mM、5〜50mM、5〜20mM、たとえば10mM)の存在下での培養)ののち、半分化細胞が得られる。そのような半分化細胞(本明細書中、分化細胞とも呼ばれる)は網膜色素上皮経路に沿って分化している。そのような細胞は、神経前駆細胞のマーカー、すなわちRPE細胞の早期マーカーを発現し得る。
【0093】
次いで、分化細胞を接着性基材上でさらなる分化段階に供する、すなわち、ニコチンアミド(たとえば1〜100mM、5〜50mM、5〜20mM、たとえば10mM)およびアクチビンA(たとえば20〜200ng/mlまたは100〜200ng/ml、たとえば140ng/ml、150ng/ml、160ng/mlまたは180ng/ml)の存在下で培養する。この段階は、1日〜10週間、3日間〜10週間、1週間〜10週間、1週間〜8週間、1週間〜4週間、たとえば少なくとも1日、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、行われ得る。
【0094】
特定の態様にしたがって、この段階は約2週間行われる。この分化段階は、本明細書中で先に詳述したように、低または通常大気酸素条件で行われ得る。
【0095】
工程(b*):第二の分化誘導段階(すなわち、ニコチンアミドおよびアクチビンAの存在下で、接着性基材上での培養;工程(b))ののち、さらに分化した細胞を、任意で、接着性基材上での後続の分化段階に供する、すなわち、ニコチンアミド(たとえば1〜100mM、5〜50mM、5〜20mM、たとえば10mM)の存在下で、かつTGFβスーパーファミリーのメンバー、たとえばアクチビンAの非存在下で、培養する。
【0096】
1つの態様において、この培地はTFGβスーパーファミリーのメンバーを完全に欠いている。別の態様において、培地中のTFGβスーパーファミリーメンバーのレベルは、20ng/ml未満、10ng/ml未満、1ng/ml未満またはさらに0.1ng/ml未満である。
【0097】
この段階は、少なくとも1日、2日間、5日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間またはさらに4週間、行われ得る。好ましくは、この段階は約1週間行われる。この分化段階はまた、本明細書中で先に詳述したように、低または通常大気酸素条件で実施され得る。
【0098】
分化プロセスは一般に、プレート上の細胞の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、6%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%が色素細胞になるまで実施される。
【0099】
ESCが分化するところの基本培地は、インビトロでの細胞増殖を支持するための当技術分野において公知の任意の細胞培養培地、一般には、培養物中の細胞を生存可能な状態に維持するために必要な塩、糖、アミノ酸および任意の他の栄養素を含む、規定の基礎液を含む培地である。特定の態様にしたがって、基本培地はならし培地ではない。本発明にしたがって利用され得る市販の基本培地の非限定的な例は、Nutristem(ESC分化の場合はbFGFおよびTGFβを含まず、ESC増殖の場合はbFGFおよびTGFβを含む)、Neurobasal(商標)、ノックアウトSR(KnockOut SR)ゼノフリー培地、KO-DMEM、DMEM、DMEM/F12、Cellgro(商標)幹細胞増殖培地またはX-Vivo(商標)を含む。基本培地は、細胞培養を扱う技術分野において公知の多様な薬剤で補足されもよい。以下は、本開示にしたがって使用される、培養系に含まれ得る様々な補足物質の非限定的な参照である:
−血清または血清代替品を含有する培地、たとえば非限定的に、ノックアウト血清代替品(knock out serum replacement)(KOSR)、Nutridoma-CS、TCH(商標)、N2、N2誘導体もしくはB27、または組み合わせ;
−細胞外マトリックス(ECM)成分、たとえば非限定的に、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンおよびゼラチン。この場合、ECMは、TGFβスーパーファミリーの増殖因子の1つまたは複数のメンバーを担持するために使用され得る;
−抗菌剤、たとえば非限定的に、ペニシリンおよびストレプトマイシン;ならびに
−非必須アミノ酸(NEAA)、培養中のSCの生存を促進する際に役割を果たすことが知られているニューロトロフィン、たとえば非限定的にBDNF、NT3、NT4。
【0100】
好ましい態様にしたがって、ESCを分化させるために使用される培地はNutristem培地(Biological Industries, 05-102-1Aまたは05-100-1A)である。
【0101】
特定の態様にしたがって、ESCの分化はゼノフリー条件下で行われる。
【0102】
1つの態様にしたがって、増殖/成長培地は、異種由来の不純物を欠いている、すなわち、動物由来成分、たとえば血清、動物由来増殖因子およびアルブミンを含まない。したがって、この態様にしたがって、培養は異種由来の不純物の非存在下で実施される。
【0103】
ゼノフリー条件下でESCを培養するための他の方法が、内容全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願第20130196369号に提供されている。
【0104】
RPE細胞を含む調製物は、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(Good Manufacturing Practice)(GMP)(たとえば、調製物はGMP準拠調製物である)および/または現行の優良組織規則(Good Tissue Practice)(GTP)(たとえば、調製物はGTP準拠調製物であり得る)にしたがって調製され得る。
【0105】
分化工程中、胚性幹細胞の分化状態をモニターし得る。細胞分化は、分化を示すことが知られている細胞特異的マーカーまたは組織特異的マーカーの検査に基づいて判定することができる。
【0106】
組織/細胞特異的マーカーは、当技術分野において周知の免疫学的技術[Thomson JA et al., (1998). Science 282: 1145-7]を使用して検出することができる。例は、膜結合マーカーまたは細胞内マーカーの場合のフローサイトメトリー、細胞外マーカーおよび細胞内マーカーの場合の免疫組織化学的技術、ならびに分泌分子マーカーの場合の酵素イムノアッセイを含むが、これらに限定されない。
【0107】
本明細書中で先に記載された分化段階ののち、色素細胞および非色素細胞の両方を含む混合細胞集団が得られる。
【0108】
本発明のこの局面の1つの態様にしたがって、混合細胞集団の全ての細胞はプレートから取り出される。
【0109】
これは酵素的に行われ得る(たとえばトリプシン(TrypLE Select)を使用)。本発明のこの局面にしたがって、培養系から取り出される(およびその後、増殖される)細胞の少なくとも10%、20%、30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%が非色素細胞である。1つの態様においては、全細胞をプレートから取り出したのち(たとえば酵素的に)、それらの細胞を精製し(たとえば、ストレーナ、たとえば40μmストレーナを使用して)、その後でのみ、増殖させる。
【0110】
さらには、培養系から取り出される(およびその後、増殖される)細胞の少なくとも10%、20%または30%が色素細胞である。
【0111】
好ましくは、培養系中の全細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%を取り出す(およびその後、増殖させる)。
【0112】
別の態様にしたがって、まず、非色素細胞を培養プレートから機械的に単離して取り出し、その後、色素細胞を取り出す。
【0113】
細胞は、増殖の前および収集ののち、ろ過プロセスに供されてもよい。したがって、たとえば、細胞を10〜100μmストレーナ(たとえば40μmストレーナ)に通してろ過し得る。
【0114】
RPE細胞の増殖は、細胞外マトリックス、たとえばゼラチン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ラミニンおよびポリ-D-リジン上で行われ得る。増殖のために、細胞は、無血清KOM、血清含有培地(たとえば、DMEM + 20%)またはNutristem培地(06-5102-01-1A, Biological Industries)中で培養され得る。これらの培養条件下、適当な条件下で継代されたのち、色素細胞:非色素細胞の比が増して、精製されたRPE細胞集団が得られるようになる。そのような細胞は、RPE細胞に特徴的な多角形形態および色素形成を示す。
【0115】
RPE細胞は、懸濁液(マイクロキャリヤを含む、または含まない)中または単層中で増殖させ得る。単層培養または懸濁培養における混合細胞集団の増殖は、当業者に周知の方法により、バイオリアクタ中での大規模増殖へと変形されてもよい。
【0116】
1つの態様にしたがって、増殖段階は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間またはさらには10週間、行われる。好ましくは、増殖段階は、1週間〜10週間、より好ましくは2週間〜10週間、より好ましくは3週間〜10週間、より好ましくは4週間〜10週間または4週間〜8週間、行われる。
【0117】
さらに別の態様にしたがって、RPE細胞は、増殖段階中に少なくとも1回、増殖段階中に少なくとも2回、増殖段階中に少なくとも3回、増殖段階中に少なくとも4回、または増殖段階中に少なくとも5回、継代される。
【0118】
本明細書に記載される方法にしたがって産生されるRPE細胞集団は、いくつかの異なるパラメータにしたがって特性決定され得る。
【0119】
したがって、たとえば、得られるRPE細胞は、多角形であり、かつ色素を有し得る。
【0120】
増殖したRPE細胞集団の収集は、当技術分野において公知の方法を使用して(たとえば、トリプシンのような酵素を使用して)行われ得る。
【0121】
収集後、増殖したRPE細胞集団は、任意で、当技術分野において公知の方法を使用して凍結保存されてもよい。凍結保存に適した培地の例は、90%ヒト血清/10% DMSO、CryoStor 10%、5%および2%、Stem Cell bankerならびにPrime XV(登録商標)FreezISを含むが、これらに限定されない。
【0122】
本明細書に開示される細胞集団は未分化ヒト胚性幹細胞を欠いていることが理解されよう。1つの態様にしたがって、たとえばFACSによって計測して250,000個に対して1個未満の細胞がOct4
+TRA-1-60
+細胞である。細胞はまた、PCRによって計測して、下方制御(5,000倍超)されたGDF3またはTDGFの発現を有する。
【0123】
本発明のこの局面のRPE細胞は他の胚性幹細胞マーカーを発現しない。前記1つまたは複数の胚性幹細胞マーカーは、OCT-4、NANOG、Rex-1、アルカリホスファターゼ、Sox2、TDGF-β、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60および/またはTRA-1-81を含み得る。
【0124】
RPE調製物は、非RPE細胞に対して実質的に精製されてもよく、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のRPE細胞を含む。RPE細胞調製物は、非RPE細胞を本質的に含まなくてもよいし、またはRPE細胞からなってもよい。たとえば、実質的に精製されたRPE細胞調製物は、約25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満の非RPE細胞型を含み得る。たとえば、RPE細胞調製物は、約25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%または0.0001%未満の非RPE細胞を含み得る。
【0125】
RPE細胞調製物は、非RPE細胞および他の成熟レベルのRPE細胞の両方に関して実質的に純粋であり得る。調製物は、非RPE細胞に関して実質的に精製され、成熟RPE細胞に関して濃縮され得る。たとえば、成熟RPE細胞に関して濃縮されたRPE細胞調製物においては、RPE細胞の少なくとも約30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99%または100%が成熟RPE細胞である。調製物は、非RPE細胞に関して実質的に精製され、成熟RPE細胞ではなく分化RPE細胞に関して濃縮されてもよい。たとえば、RPE細胞の少なくとも約30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が、成熟RPE細胞ではなく分化RPE細胞であってもよい。
【0126】
本明細書に記載される調製物は、HIV I、HIV 2、HBV、HCV、HAV、CMV、HTLV 1、HTLV 2、パルボウイルスB19、エプスタイン・バルウイルスまたはヘルペスウイルス1および2、SV40、HHV5、6、7、8、CMV、ポリオーマウイルス、HPV、エンテロウイルスの存在を含むが、これらに限定されない、細菌、ウイルスまたは真菌の混入または感染を実質的に有しない状態であり得る。本明細書に記載される調製物は、マイコプラズマ混入または感染を実質的に有しない状態であり得る。
【0127】
本明細書に開示される細胞集団を特性決定する別の方法は、マーカー発現による方法である。したがって、たとえば、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも80%、85%、90%、95%または100%がベストロフィン1を発現する。1つの態様にしたがって、細胞の85〜100%がベストロフィンを発現する。
【0128】
別の態様にしたがって、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%が小眼球症関連転写因子(MITF)を発現する。たとえば、細胞の85〜100%がMITFを発現する。
【0129】
別の態様にしたがって、免疫染色またはFACSによって計測して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%がペアードボックス遺伝子6(PAX-6)を発現する。
【0130】
別の態様にしたがって、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%が細胞レチンアルデヒド結合タンパク質(CRALBP)を発現する。たとえば、細胞の85〜100%がCRALBPを発現する。
【0131】
別の態様にしたがって、免疫染色によって計測して、細胞の少なくとも80%、85%、87%、89%、90%、95%、97%または100%が網膜色素上皮特異的タンパク質65kDa(RPE65)を発現する。たとえば、細胞の85〜100%がRPE65を発現する。
【0132】
RPE細胞は、終末分化を示すマーカー、たとえばベストロフィン1、プレメラノソームタンパク質(PMEL17)、CRALBPおよび/またはRPE65を発現し、一般に共発現する。
【0133】
増殖段階ののち、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99またはさらには100%がCRALBP
+PMEL17
+であるRPE細胞を含む細胞集団が得られる。
【0134】
RPE細胞の誘導が非常に有益であることは当業者によって十分に理解されるであろう。RPE細胞は、それらの生存、再生および機能を促進するための新薬の開発のためのインビトロモデルとして使用され得る。RPE細胞は、RPE細胞に対して毒性または再生作用を有する化合物のハイスループットスクリーニングに役立ち得る。RPE細胞は、光受容体細胞の発生、分化、維持、生存および機能にとって重要である機構、新たな遺伝子、可溶性因子または膜結合因子を明らかにするために使用され得る。
【0135】
RPE細胞はまた、網膜変性における機能不全RPE細胞または変性RPE細胞の移植、補充および支持のためのRPE細胞の無限の供給源としても役立ち得る。さらに、遺伝子改変されたRPE細胞は、移植後に眼および網膜中で遺伝子を担持し、発現させるためのベクターとしても役立ち得る。
【0136】
RPE細胞が治療剤として働き得る眼の状態は、概して網膜機能不全、網膜傷害および/または網膜色素上皮の損失と関連する網膜疾患または網膜障害を含むが、これらに限定されない。本発明にしたがって処置され得る状態の非限定的なリストは、網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、遺伝性または後天性の黄斑変性症、加齢黄斑変性症(AMD)、乾性AMD、ベスト病、網膜剥離、脳回転状萎縮症、脈絡膜欠如、パターンジストロフィーおよびRPEの他のジストロフィー、シュタルガルト病、光傷害、レーザー傷害、炎症性傷害、感染性傷害、放射線傷害、新生血管傷害または外傷性傷害のいずれか1つによって生じた損傷に起因するRPE損傷および網膜損傷を含む。
【0137】
処置され得る対象は、霊長類(ヒトを含む)、イヌ、ネコ、有蹄類(たとえばウマ、ウシ、ブタ(swine)(たとえば、ブタ(pig)))、トリおよび他の対象を含む。商業的に重要なヒトおよび非ヒト動物(たとえば家畜)が特に関心対象である。処置され得る例示的な哺乳動物は、イヌ;ネコ;ウマ;ウシ;ヒツジ;げっ歯類など、および霊長類、特にヒトを含む。非ヒト動物モデル、特に哺乳動物、たとえば霊長類、ネズミ、ウサギなどを実験的調査のために使用してもよい。
【0138】
本明細書中に記載されるように産生されたRPE細胞は、対象の眼の様々な標的部位に移植され得る。1つの態様にしたがって、RPE細胞の移植は、RPEの通常の解剖学的位置(光受容体外節と脈絡膜との間の)である、眼の網膜下腔への移植である。加えて、細胞の移動能力および/またはポジティブな傍分泌効果に依存して、硝子体腔、網膜内層または外層、網膜周辺部および脈絡膜内を含むさらなる眼の区画への移植を考慮することができる。
【0139】
対象に投与し得る生細胞の数は注射1回あたり50,000〜5×10
6個または50,000〜500,000個であり得る。
【0140】
細胞は一般に、担体(たとえば等張溶液および/または食塩水)、たとえばBSS plus(商標)中に製剤化される。担体は、任意で、RPEの生着、組み込み、生存、効力などを支援するさらなる因子を含んでもよい。
【0141】
移植は、当技術分野において公知の様々な技術によって実施され得る。RPE移植を実施する方法は、たとえば、米国特許第5,962,027号、第6,045,791号および第5,941,250号ならびにEye Graefes Arch Clin Exp Opthalmol March 1997; 235(3): 149-58;Biochem Biophys Res Commun Feb. 24, 2000; 268(3): 842-6;Opthalmic Surg February 1991; 22(2): 102-8に記載されている。角膜移植を実施する方法は、たとえば、米国特許第5,755,785号およびEye 1995; 9 (Pt 6 Su):6-12;Curr Opin Opthalmol August 1992; 3 (4): 473-81;Ophthalmic Surg Lasers April 1998; 29 (4): 305-8;Ophthalmology April 2000; 107 (4): 719-24;およびJpn J Ophthalmol November-December 1999; 43(6): 502-8に記載されている。主に傍分泌効果が利用される場合、細胞はまた、半透過性の容器に封入された状態で眼に送達され、維持され得、これもまた、宿主免疫系への細胞の曝露を減らす(Neurotech USA CNTF delivery system;PNAS March 7, 2006 vol. 103(10) 3896-3901)。
【0142】
投与工程は、それを必要とする眼へのRPE細胞の眼内投与を含み得る。眼内投与は、網膜下腔へのRPE細胞の注射を含み得る。
【0143】
1つの態様にしたがって、移植は、扁平部硝子体切除術ののち、小さな網膜開口部を介して、または直接注入によって、細胞を網膜下腔の中に送達することによって実施される。
【0144】
RPE細胞は様々な形態で移植され得る。たとえば、RPE細胞は、細胞懸濁液の形態で、マトリックスとともに、またはマトリックスもしくは膜、細胞外マトリックスもしくは基材、たとえば細胞分解性ポリマーもしくはそれらの組み合わせに付着した状態で、標的部位に導入され得る。RPE細胞はまた、他の網膜細胞、たとえば光受容体と一緒に移植(共移植)されてもよい。
【0145】
処置の有効性は、視覚および眼の機能および構造の様々な尺度によって、とりわけ、最高矯正視力(BCVA)、暗順応および明順応状態でのペリメトリーもしくはマイクロペリメトリーにより計測される網膜感光度、全視野、多焦点、焦点またはパターン網膜電図(ERG)、コントラスト感度、読取り速度、色覚、臨床生体顕微鏡検査、眼底撮影、光干渉断層撮影(OCT)、眼底自発蛍光(FAF)、赤外およびマルチカラーイメージング、フルオレセインまたはICG血管造影、ならびに視覚機能および眼構造を評価するために使用されるさらなる手段によって評価され得る。
【0146】
対象は、RPE細胞の投与の前またはそれと同時に、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロン、プレド・フォルテ(Predforte)のようなコルチコステロイドを投与されてもよい。
【0147】
別の態様にしたがって、対象は、RPE細胞の投与の前またはそれと同時に、プレドニゾロンまたはメチルプレドニゾロン、プレド・フォルテのようなコルチコステロイドを投与されない。
【0148】
処置の前、それと同時および/またはその後に、免疫抑制薬が対象に投与されてもよい。
【0149】
免疫抑制薬は以下のクラスに属し得る:
糖質コルチコイド、細胞増殖抑制剤(たとえばアルキル化剤または代謝拮抗物質)、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)、イムノフィリンに作用する薬剤(たとえばシクロスポリン、タクロリムスまたはシロリムス)。さらなる薬物は、インターフェロン、オピオイド、TNF結合タンパク質、ミコフェノレートおよび小さな生物学的薬剤を含む。
【0150】
免疫抑制薬の例は、間葉系幹細胞、抗リンパ球グロブリン(ALG)ポリクローナル抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)ポリクローナル抗体、アザチオプリン、BAS1 L1X1MAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、シクロスポリン(シクロスポリンA)、DACLIZUMAB(登録商標)(抗IL-2Ra受容体抗体)、エベロリムス、ミコフェノール酸、RITUX1MAB(登録商標)(抗CD20抗体)、シロリムス、タクロリムス、タクロリムスおよび/またはミコフェノール酸モフェチルを含む。
【0151】
処置の前、それと同時および/またはその後に、抗生物質が対象に投与されてもよい。抗生物質の例は、オフロックス、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、トブレックス、ビガモックスまたは眼科用に認可された任意の他の局所抗生物質製剤を含む。
【0152】
本明細書の中で使用される用語「約」とは、±10%をいう。
【0153】
用語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびそれらの活用形は、「〜を含むが、〜に限定されない」を意味する。
【0154】
用語「〜からなる」は、「〜を含み、〜に限定される」を意味する。
【0155】
用語「〜から本質的になる」とは、組成物、方法または構造が、さらなる成分、工程および/または部品を含んでもよいが、ただし、そのさらなる成分、工程および/または部品が、請求項に係る組成物、方法または構造の基本的および新規な特徴を実質的に変化させないことを意味する。
【0156】
本明細書の中で使用される単数形冠詞「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別段指示しない限り、複数の指示対象を含む。たとえば、用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、それらの混合物を含め、複数の化合物を含み得る。
【0157】
本明細書の中で数値範囲が示される場合、それは、示された範囲内の任意の言及された数値(分数または整数)を含むことを意味する。第一の示された数値と第二の示された数値との「間の範囲」および第一の示された数値「から」第二の示された数値「までの範囲」は、本明細書の中では互換可能に使用され、かつ第一および第二の示された数値ならびにそれらの間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0158】
本明細書の中で使用される用語「方法」とは、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の当業者には公知である、またはそのような当業者によって容易に開発されるようなやり方、手段、技術および手法を含むが、それらに限定されない、所与の仕事を達成するためのやり方、手段、技術および手法をいう。
【0159】
本明細書の中で使用される用語「処置」とは、状態の進行を無効化する、実質的に阻害する、遅らせる、または好転させること、状態の臨床的または外観的症候を実質的に改善すること、または状態の臨床的または外観的症候の出現を実質的に予防することを含む。
【0160】
理解しやすくするために別々の態様に関して説明される本発明の特定の特徴は、1つの態様として組み合わされた状態で提供されてもよいことが理解されよう。逆に、簡潔に説明するために1つの態様に関して説明される本発明の様々な態様は、別々に提供されてもよいし、または任意の適当な部分的組み合わせとして提供されてもよいし、または適宜、本発明の任意の他の記載される態様として提供されてもよい。様々な態様に関して説明される特定の特徴は、これらの要素なしでは動作不能でない限り、これらの態様の不可欠な特徴と考慮されてはならない。
【0161】
本明細書中で先に詳細に説明され、以下、特許請求の範囲で定義されるような本発明の様々な態様および局面は、以下の実施例において実験的裏付けを見いだす。
【実施例】
【0162】
次に、上記詳細な説明とともに本発明のいくつかの態様を非限定的に例示する以下の実施例を参照する。
【0163】
概して、本明細書の中で使用される名称および本発明において利用される実験室手法は、分子的、生化学的、微生物学的および組換えDNA技術を含む。そのような技術は文献において徹底的に説明されている。たとえば、"Molecular Cloning: A laboratory Manual" Sambrook et al., (1989);"Current Protocols in Molecular Biology" Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994);Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989);Perbal, "A Practical Guide to Molecular Cloning", John Wiley & Sons, New York (1988);Watson et al., "Recombinant DNA", Scientific American Books, New York;Birren et al. (eds) "Genome Analysis: A Laboratory Manual Series", Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号および第5,272,057号に記載された方法;"Cell Biology: A Laboratory Handbook", Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994);"Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique" by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition;"Current Protocols in Immunology" Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994);Stites et al. (eds), "Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell and Shiigi (eds), "Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照すること;利用可能なイムノアッセイは特許および科学技術文献に広く記載されており、たとえば、米国特許第3,791,932号、第3,839,153号、第3,850,752号、第3,850,578号、第3,853,987号、第3,867,517号、第3,879,262号、第3,901,654号、第3,935,074号、第3,984,533号、第3,996,345号、第4,034,074号、第4,098,876号、第4,879,219号、第5,011,771号および第5,281,521号;"Oligonucleotide Synthesis" Gait, M. J., ed. (1984);"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985);"Transcription and Translation" Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984);"Animal Cell Culture" Freshney, R. I., ed. (1986);"Immobilized Cells and Enzymes" IRL Press, (1986);"A Practical Guide to Molecular Cloning" Perbal, B., (1984)および"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press;"PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications", Academic Press, San Diego, CA (1990);Marshak et al., "Strategies for Protein Purification and Characterization―A Laboratory Course Manual" CSHL Press (1996)を参照すること;これらすべてが参照により全文が記載されているごとくに本明細書に組み入れられる。他にも一般的な参考文献が本文献のあらゆるところで提供されている。それらにおける手法は当技術分野において周知であると考えられ、読み手の都合のために提供される。それらに含まれるすべての情報が参照により本明細書に組み入れられる。
【0164】
実施例1
スフェロイド体の産生なしでのRPE細胞の誘導(ラミニン)
材料および方法
HAD-C 102 hESCを、センターウェルプレート中、ヒト臍帯フィーダー(hUCF;コード008)上に手作業で増殖させたのち、コラゲナーゼを使用して、フィーダーフリーのラミニン521(5μg/mlを37℃で2時間;Biolamina、Lam-521)でコートされたフラスコ上で継代し、bFGFおよびTGFβを含有するHSA培地を含有するNutristem(商標)(Biological Industries、05-110-1A)で増殖させて、RPE細胞を製造した。ラミニン521上でのhESC増殖の6日目、分化を開始し、培地を、10mMニコチンアミド(Sigma、N-5535)を含有するNutristem Minus(bFGFおよびTGFβなし;Biological Industries、06-5102-01-1A)に換えて1週間(9日目に培地を交換した)、その後、10mMニコチンアミドおよび140ng/mlアクチビンA(Peprotech、G-120-14E)を含有するNutristem Minusに換えて2週間、10mMニコチンアミドを含有するNutristem Minusに換えて約1週間で、色素細胞のパッチが認められた。次いで、TrypLE select(Invitrogen、12563-011)を使用して細胞を収集し、40μmストレーナに通してろ過し、遠心分離した。生細胞をカウントし、3つの組み換えヒトゼラチン(rhゼラチン、Fibrogen、RhG100-001)でコートされたウェル(6ウェルプレートの)中、20%ヒト血清(Akron、AK9905)を含有するDMEM(HyClone、SH30081)の存在下で3日間、Nutristem Minusの存在下で11日間、播種した。次いで、継代0(P0、10日目)終了時に生細胞を収集し、20%ヒト血清培地を含むrhゼラチンなしのT75フラスコ中、20%ヒト血清を含有するDMEMの存在下で最大3日間、Nutristem Minusの存在下で最大11日間、播種した。この工程をもう1回繰り返し、継代2終了時の細胞を収集し、凍結保存した。プロセスの概要は
図1に見ることができる。
【0165】
結果
分化プロセスの終了時、色素細胞のパッチが産生された(
図2A、黄色の矢印)。TrypLE Selectによる全細胞の収集、40μmストレーナに通すろ過および1つの増殖工程ののち、多角形形態を有する細胞が細胞培養プレート全体を覆っていた(
図2B、P0終了時)。
【0166】
P1終了時、CRALBP/PMEL17二重染色FACSアッセイを使用して、同一性/純度に関して細胞を試験した。
図3A〜Cに示すように、細胞の99%超がCRALBPおよびPMEL17に関して二重陽性であった。
【0167】
P2終了時、CRALBP/PMEL17二重染色FACSアッセイを使用して、同一性/純度に関して細胞を試験した。
図4A〜Dに示すように、細胞の99%超がCRALBPおよびPMEL17に関して二重陽性であった。
【0168】
実施例2
スフェロイド体の産生なしでのRPE細胞の誘導(ビトロネクチン)
材料および方法
HAD-C 102 hESCを、センターウェルプレート中、ヒト臍帯フィーダー(hUCF;コード008)上に手作業で増殖させたのち、コラゲナーゼを使用して、フィーダーフリーのビトロネクチン(6ウェルプレートの1ウェルあたり5〜10μg/200ml PBS)でコートされたフラスコ上で継代し、bFGFおよびTGFβを含有するHSA培地を含有するNutristem(商標)(Biological Industries、05-110-1A)で増殖させて、RPE細胞を製造した。いくつかの実験においては、未分化hESCをコラゲナーゼで継代し、さらに増殖させるために、同じ培地中、ビトロネクチン上で再びプレーティングした。ビトロネクチン上でのhESC増殖の6日目または7日目、分化を開始し、培地を、10mMニコチンアミド(Sigma、N-5535)を含有するNutristem Minus(bFGFおよびTGFβなし;Biological Industries、06-5102-01-1A)に換えて2週間(9日目に培地を交換した)、その後、10mMニコチンアミドおよび140ng/mlアクチビンA(Peprotech、G-120-14E)を含有するNutristem Minusに換えて2週間、10mMニコチンアミドを含有するNutristem Minusに換えて約1週間で、色素細胞のパッチが認められた。Triple Selectを使用して培養物全体を収集した。生細胞をカウントし、3つの組み換えヒトゼラチン(rhゼラチン、Fibrogen、RhG100-001)でコートされたウェル(6ウェルプレートの)中、20%ヒト血清(Akron、AK9905)を含有するDMEM(HyClone、SH30081)の存在下で最大3日間、Nutristem Minusの存在下で最大11日間、播種した。次いで、継代0(P0、10日目)終了時に生細胞を収集し、20%ヒト血清培地を含むrhゼラチンなしのT75フラスコ中、20%ヒト血清を含有するDMEMの存在下で3日間、Nutristem Minusの存在下で11日間、播種した。この工程をもう1回繰り返し、継代2終了時の細胞を収集し、凍結保存した。実験を4回(低酸素濃度下で2回、通常酸素濃度下で2回)繰り返した。
【0169】
結果
分化プロセスの終了時、色素細胞のパッチが産生された。培養物全体を酵素消化によって収集し、さらなる培養および増殖のために、RPE細胞増殖を促進する条件下で、再びプレーティングした。多角形形態を有する細胞が細胞培養プレート全体を覆っていた。細胞の大部分が濃い色素を宿している(
図5A〜C)。免疫染色は、細胞の大部分がRPE細胞のマーカー、たとえばベストロフィン、CRALBP、MITF、PEDFおよびZO-1を発現することを示した(
図6A〜E)。
【0170】
本発明は、その具体的な態様に関連して説明されたが、多くの代替、修飾および変形が当業者に自明であることは明らかである。したがって、特許請求の範囲の精神および広い範囲に入るようなすべての代替、修飾および変形を包含することが意図される。
【0171】
本明細書中で挙げられたすべての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により具体的かつ個別に本明細書に組み入れられることが示される場合と同じ程度に、参照により全体として本明細書に組み入れられる。加えて、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されてはならない。セクションの見出しは、それらが使用される程度に、必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。