特許第6987775号(P6987775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6987775テトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵するための容器及びテトラフルオロプロペンを貯蔵するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987775
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】テトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵するための容器及びテトラフルオロプロペンを貯蔵するための方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/42 20060101AFI20211220BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20211220BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20211220BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20211220BHJP
   C09D 5/10 20060101ALI20211220BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20211220BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20211220BHJP
   B65D 23/02 20060101ALI20211220BHJP
   B65D 25/14 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   B65D65/42 Z
   C09K5/04 F
   C09D201/00
   C09D7/61
   C09D5/10
   B32B15/04 Z
   F25B1/00 396Z
   B65D23/02 Z
   B65D25/14 Z
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-549979(P2018-549979)
(86)(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公表番号】特表2019-516625(P2019-516625A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】FR2017050617
(87)【国際公開番号】WO2017162961
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2020年2月17日
(31)【優先権主張番号】1652436
(32)【優先日】2016年3月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブウサンド, ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】ラシェッド, ウィサム
(72)【発明者】
【氏名】ベンドリンガー, ローラン
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−230243(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161724(WO,A1)
【文献】 特開平11−092959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/42
C09K 5/04
C09D 201/00
C09D 7/61
C09D 5/10
B32B 15/04
F25B 1/00
B65D 23/02
B65D 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロプロペンを含む組成物を収容する容器であって、前記容器は金属で作製され、且つ内部表面を含み、前記組成物と接触する前記内部表面は亜鉛を含むコーティングで少なくとも部分的に覆われ;有利には前記組成物が組成物の総重量に対して少なくとも15重量%のテトラフルオロプロペンを含み、コーティングは、コーティングの総重量に対して少なくとも50重量%の亜鉛を含む、容器。
【請求項2】
前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも90%が、亜鉛を含むコーティングで覆われていることを特徴とする、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
容器が鋼から作製されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
容器が炭素鋼から作製されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
コーティングが、コーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の亜鉛を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
組成物が、組成物の総重量に対して10000重量ppm未満の水を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
組成物が、塩酸換算で計算して、組成物の総重量に対して100重量ppm未満の酸含有量を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
組成物が気相及び液相から作製されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の容器。
【請求項9】
組成物が、気相の総体積に対して0.1体積%から5体積%の気体空気含有量を含むことを特徴とする、請求項8に記載の容器。
【請求項10】
組成物が、組成物の総重量に対して少なくとも90重量%のテトラフルオロプロペンを含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項11】
テトラフルオロプロペンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の容器。
【請求項12】
10から100barの間である試験圧力に耐える密閉容器であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の容器。
【請求項13】
テトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵するための方法であって、内部表面が、亜鉛を含むコーティングで少なくとも部分的に覆われている金属容器を提供すること及び前記容器をテトラフルオロプロペンを含む組成物で充填することを含む、方法。
【請求項14】
テトラフルオロプロペンを含む前記組成物と接触することが意図される内部表面が、亜鉛を含むコーティングで少なくとも部分的に覆われていることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
容器が炭素鋼から作製され、コーティングが少なくとも99.9重量%の亜鉛を含み、テトラフルオロプロペンが有利には2,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
空調回路若しくは冷凍回路を搭載するため、又は空調回路若しくは冷凍回路に含有される冷媒混合物を交換するための装置であって、請求項1から12のいずれか一項に記載の第1の容器と、潤滑剤を含む第2の容器とを備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵するための方法に関する。本発明は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵するための容器にも関する。特に、本発明は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を安定的に貯蔵するための容器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、例えば温室効果ガスであるクロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)又はヒドロフルオロカーボン(HFCのような冷媒を置換するための新しい冷媒として、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFCF=CH、以下、HFO−1234yfともいう)が注目されている。一般に、ヒドロクロロプロペン又はヒドロフルオロプロペンタイプの化合物は不安定であり得、水、酸又は酸素の存在下で副生成物の形成をもたらしうる。モルホリン若しくはその誘導体又はリン酸トリアルキルの存在下での1,1,2,3−テトラクロロプロペンを安定化するための方法は、特に米国特許第922828号から既知である。
【0003】
HFO−1234yfは、その一部が、一般的にガス状態及び/又は液体状態で貯蔵され、加圧密閉容器内で輸送される。特定の条件下で、HFO−1234yfは、酸素の存在下で分解及び/又は重合することができる。米国特許公開第2015/0051426号は、酸素濃度がHFO−1234yfの分解及び重合を防止するために1000体積ppm未満に維持される容器中のHFO−1234yfの貯蔵を特に記載している。
【0004】
HFO−1234yfの貯蔵中又は輸送中のその分解に付随する固体堆積物の存在は、その後の冷媒としての使用を妨げる可能性がある。さらに、組成物中に安定剤が存在する場合、HFO−1234yfを使用する前に安定剤を除去する必要があり、それによってその使用がより複雑になり、安定剤の残留物の存在に関連するリスクが増大する。
【0005】
したがって、既知の方法の欠点を回避することを可能にする貯蔵方法の実施が必要である。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を含有する容器を提供し、前記容器は金属で作製され、且つ内部表面を含み、前記組成物と接触する前記内部表面は、亜鉛を含むコーティングで少なくとも部分的に覆われ;有利には、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも15重量%のテトラフルオロプロペンを含む。
【0007】
好ましい一実施態様によれば、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも90%は、亜鉛を含むコーティングで覆われており、有利には、組成物と接触する前記内部表面の少なくとも95%は、亜鉛を含むコーティングで覆われており、好ましくは、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも98%は、亜鉛を含むコーティングで覆われており、特に、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも99%は、亜鉛を含むコーティングで覆われている。より具体的には、前記組成物と接触する容器の内部表面全体は、亜鉛を含むコーティングで覆われていてもよい。
【0008】
好ましい一実施態様によれば、容器は鋼から作製されている。
【0009】
好ましい一実施態様によれば、容器は炭素鋼から作製されている。
【0010】
好ましい一実施態様によれば、コーティングは、コーティングの総重量に対して少なくとも50重量%の亜鉛、有利にはコーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の亜鉛、好ましくはコーティングの総重量に対して少なくとも90重量%の亜鉛、より優先的にはコーティングの総重量に対して少なくとも95重量%の亜鉛、特にコーティングの総重量に対して少なくとも99重量%の亜鉛、より具体的にはコーティングの総重量に対して少なくとも99.9重量%の亜鉛を含む。
【0011】
好ましい一実施態様によれば、組成物は、組成物の総重量に対して10000重量ppm未満の水、有利には組成物の総重量に対して5000重量ppm未満の水、好ましくは組成物の総重量に対して1000重量ppm未満の水、特に組成物の総重量に対して0.1重量ppmから100重量ppmの水、より具体的には組成物の総重量に対して1から20重量ppmの水を含む。
【0012】
好ましい一実施態様によれば、組成物は、塩酸換算で計算して、組成物の総重量に対して100重量ppm未満、有利には組成物の総重量に対して50重量ppm未満、好ましくは組成物の総重量に対して10重量ppm未満、特に組成物の総重量に対して0.01重量ppmから2重量ppmの酸含有量を有する。
【0013】
好ましい一実施態様によれば、組成物は気相及び液相から作製されている。
【0014】
好ましい一実施態様によれば、組成物は、気相の総体積に対して0.1体積%から5体積%、有利には気相の総体積に対して0.5体積%から3体積%、好ましくは気相の総体積に対して0.01体積%から2体積%の気体空気含有量を含む。
【0015】
好ましい一実施態様によれば、組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも90重量%、有利には組成物の総重量に対して少なくとも95重量%、好ましくは組成物の総重量に対して少なくとも98重量%、特に組成物の総重量に対して少なくとも99.5重量%のテトラフルオロプロペンを含む。
【0016】
好ましい一実施態様によれば、テトラフルオロプロペンは2,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。
【0017】
好ましい一実施態様によれば、容器は、10から100barの間、有利には15から70barの間、好ましくは20から60barの間、特に40から50barの間である試験圧力に耐える密閉容器である。
【0018】
好ましい一実施態様によれば、前記容器は円筒状の形状であり、スチールフレームワーク内に取り付けられ、前記フレームワークはISO 1496−1:2013規格によるISO容器の寸法に従う。
【0019】
第2の態様によれば、本発明は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵するための方法であって、内部表面が亜鉛を含むコーティングで少なくとも部分的に覆われている金属容器を提供すること及び前記容器をテトラフルオロプロペンを含む組成物で充填することを含む方法を提供する。有利には、組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも15重量%のテトラフルオロプロペンを含む。
【0020】
好ましい一実施態様によれば、テトラフルオロプロペンを含む前記組成物と接触することが意図される内部表面は、亜鉛を含むコーティングで少なくとも部分的に覆われている。
【0021】
好ましい一実施態様によれば、容器は炭素鋼から作製されており、コーティングは少なくとも99.9重量%の亜鉛を含み、テトラフルオロプロペンは、有利には2,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。
【0022】
本発明の別の態様によれば、空調回路若しくは冷凍回路をロードするため、又は空調若しくは冷凍回路に含有される冷媒混合物を交換するための装置が提供される。前記装置は、本発明による第1の容器と、潤滑剤を含む第2の容器とを備え;有利には、前記第1及び第2の容器を空調回路又は冷凍回路に連結することが可能な一又は複数のパイプも含み;好ましくは空調回路は車両の空調回路である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の態様によれば、容器が提供される。容器は任意の形状でありうるが、好ましくは円筒形である。容器は内部表面を含む。好ましくは、容器はテトラフルオロプロペンを含む組成物を含有する。前記容器は、好ましくは金属から作製されている。容器は、例えば、各区画に、様々な量のテトラフルオロプロペンを含む組成物を含有するため、又は例えば一つの区画にテトラフルオロプロペンを含む組成物を、別の区画に別の化合物、例えば潤滑剤又はヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン若しくはヒドロクロロカーボンのような別のフッ素化化合物を含有するために、任意選択的に区分されうる。
【0024】
容器は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を輸送すること及び/又はテトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵することに適していることがある。例えば、後者は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造単位から誘導されうる。
【0025】
容器は、前記容器を充填する及び/又は空にするための一又は複数のバルブを備えていてもよい。例えば、入口バルブは、容器にテトラフルオロプロペンを含む組成物を含有する流れが供給されるように配置されうる。容器はまた、前記容器からその中に含有される組成物を排出するための一又は複数の出口バルブを備えていてもよい。例えば、組成物は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を精製するための装置を供給するために、又は本発明による、テトラフルオロプロペンを含む組成物を輸送するのに適した第2の容器を供給するために、容器から排出されうる。組成物はまた、空調回路を供給するために、容器から排出されうる。よって、本発明による容器は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵するための貯蔵タンク又はISO輸送基準を満たす容器である。前記容器は、好ましくは、耐圧性の密閉容器である。容器はシリンダー又はカートリッジ又は耐圧性の小型容器であってもよく、その容積は、好ましくは、1m未満、有利には0.1m未満、好ましくは0.01m未満でありうる。あるいは、容器は貯蔵又は輸送タンクであってもよく、その容積は0.5m超、有利には100m超、好ましくは1000m超、特に5000m超でありうる。貯蔵又は輸送タンクは、好ましくは、球状又は円筒形でありうる。本発明による容器は、断熱壁を含みうる。
【0026】
好ましくは、前記テトラフルオロプロペンを含む組成物と接触する前記内部表面は、亜鉛を含むコーティングで少なくとも部分的に覆われている。
【0027】
好ましい一実施態様によれば、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも90%は、亜鉛を含むコーティングで覆われ、有利には、組成物と接触する前記内部表面の少なくとも95%は、亜鉛を含むコーティングで覆われ、好ましくは、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも98%は、亜鉛を含むコーティングで覆われ、特に、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも99%は、亜鉛を含むコーティングで覆われうる。より具体的には、前記容器に含有される前記組成物と接触する内部表面全体は、亜鉛を含むコーティングで覆われていてもよい。
【0028】
好ましくは、コーティングは、コーティングの総重量に対して少なくとも50重量%の亜鉛、有利にはコーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の亜鉛、好ましくはコーティングの総重量に対して少なくとも90重量%の亜鉛、より優先的にはコーティングの総重量に対して少なくとも95重量%の亜鉛、特にコーティングの総重量に対して少なくとも99重量%の亜鉛、より具体的にはコーティングの総重量に対して少なくとも99.9重量%の亜鉛を含む。
【0029】
あるいは、コーティングは、亜鉛、好ましくはコーティングの総重量に対して50重量%未満の亜鉛を含む合金であってもよい。例えば、コーティングは黄銅から作製されうる。あるいは、コーティングは、有利にはコーティングの総重量に対して少なくとも60重量%の銅、好ましくはコーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の銅、特にコーティングの総重量に対して少なくとも90重量%の銅を含みうる。あるいは、本出願に記載される容器は、亜鉛の代わりとして銅又は黄銅を含むコーティングで覆われた、好ましくは内部表面全体が前記組成物と接触する内部表面も有しうる。
【0030】
特定の一実施態様によれば、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも90%は、コーティングの総重量に対して少なくとも50重量%の亜鉛、有利にはコーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の亜鉛、好ましくはコーティングの総重量に対して少なくとも90重量%の亜鉛、より優先的にはコーティングの総重量に対して少なくとも95重量%の亜鉛、特にコーティングの総重量に対して少なくとも99重量%の亜鉛、より具体的にはコーティングの総重量に対して少なくとも99.9重量%の亜鉛を含むコーティングで覆われうる。
【0031】
特に有利な一実施態様によれば、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも95%は、コーティングの総重量に対して少なくとも50重量%の亜鉛、有利にはコーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の亜鉛、好ましくはコーティングの総重量に対して少なくとも90重量%の亜鉛、より優先的にはコーティングの総重量に対して少なくとも95重量%の亜鉛、特にコーティングの総重量に対して少なくとも99重量%の亜鉛、より具体的にはコーティングの総重量に対して少なくとも99.9重量%の亜鉛を含むコーティングで覆われうる。
【0032】
特に好ましい一実施態様によれば、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも98%は、コーティングの総重量に対して少なくとも50重量%の亜鉛、有利にはコーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の亜鉛、好ましくはコーティングの総重量に対して少なくとも90重量%の亜鉛、より優先的にはコーティングの総重量に対して少なくとも95重量%の亜鉛、特にコーティングの総重量に対して少なくとも99重量%の亜鉛、より具体的にはコーティングの総重量に対して少なくとも99.9重量%の亜鉛を含むコーティングで覆われうる。
【0033】
特に好ましい一実施態様によれば、前記組成物と接触する前記内部表面の少なくとも99%は、コーティングの総重量に対して少なくとも50重量%の亜鉛、有利にはコーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の亜鉛、好ましくはコーティングの総重量に対して少なくとも90重量%の亜鉛、より優先的にはコーティングの総重量に対して少なくとも95重量%の亜鉛、特にコーティングの総重量に対して少なくとも99重量%の亜鉛、より具体的にはコーティングの総重量に対して少なくとも99.9重量%の亜鉛を含むコーティングで覆われうる。
【0034】
より具体的には、前記容器中に含有される前記組成物と接触する前記容器の前記内部表面全体は、コーティングの総重量に対して少なくとも50重量%の亜鉛、有利にはコーティングの総重量に対して少なくとも70重量%の亜鉛、好ましくはコーティングの総重量に対して少なくとも90重量%の亜鉛、より優先的にはコーティングの総重量に対して少なくとも95重量%の亜鉛、特にコーティングの総重量に対して少なくとも99重量%の亜鉛、より具体的にはコーティングの総重量に対して少なくとも99.9重量%の亜鉛を含むコーティングで覆われうる。これは、前記組成物と鋼との間の接触を最小化することが可能である。これは、テトラフルオロプロペンを含む組成物と鋼との間の接触の延長が、特に組成物が水又は塩酸を含む場合に、水素の形成を促進させうるためである。
【0035】
好ましい一実施態様によれば、容器は鋼から作製されていてもよい。有利には、容器は炭素鋼又はステンレス鋼から作製されている。好ましくは、容器は炭素鋼から作製されている。あるいは、容器は亜鉛から作製されていてもよい。あるいは、容器は銅又は黄銅から作製されていてもよい。
【0036】
有利には、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも15重量%のテトラフルオロプロペンを含む。好ましくは、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも40重量%のテトラフルオロプロペン、より優先的には組成物の総重量に対して少なくとも60重量%のテトラフルオロプロペン、特に組成物の総重量に対して少なくとも70重量%のテトラフルオロプロペン、より具体的には組成物の総重量に対して少なくとも80重量%のテトラフルオロプロペンを含む。
【0037】
特定の一実施態様によれば、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも90重量%、有利には組成物の総重量に対して少なくとも95重量%、好ましくは組成物の総重量に対して少なくとも98重量%、特に組成物の総重量に対して少なくとも99.5重量%のテトラフルオロプロペンを含みうる。
【0038】
好ましくは、テトラフルオロプロペンは2,3,3,3−テトラフルオロプロペン及び/又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンでありうる。
【0039】
よって、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも15重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含みうる。好ましくは、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも40重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、より優先的には組成物の総重量に対して少なくとも60重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、特に組成物の総重量に対して少なくとも70重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、より具体的には組成物の総重量に対して少なくとも80重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む。特定の一実施態様によれば、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも90重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、有利には組成物の総重量に対して少なくとも95重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、好ましくは組成物の総重量に対して少なくとも98重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、特に組成物の総重量に対して少なくとも99.5重量%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含みうる。
【0040】
あるいは、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも15重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含みうる。好ましくは、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも40重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、より優先的には組成物の総重量に対して少なくとも60重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、特に組成物の総重量に対して少なくとも70重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、より具体的には組成物の総重量に対して少なくとも80重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む。特定の一実施態様によれば、前記組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも90重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、有利には組成物の総重量に対して少なくとも95重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、好ましくは組成物の総重量に対して少なくとも98重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、特に組成物の総重量に対して少なくとも99.5重量%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含みうる。
【0041】
容器に含有される前記組成物は、組成物の総重量に対して10000重量ppm未満の水、有利には組成物の総重量に対して5000重量ppm未満の水、好ましくは組成物の総重量に対して1000重量ppm未満の水、より優先的には組成物の総重量に対して500重量ppm未満の水、特に組成物の総重量に対して100重量ppm未満の水、より具体的には組成物の総重量に対して50重量ppm未満の水を含みうる。
【0042】
有利には、前記組成物は、組成物の総重量に対して0.01から500重量ppmの水、好ましくは組成物の総重量に対して0.05から250重量ppmの水、特に組成物の総重量に対して0.1から100重量ppmの水、より具体的には組成物の総重量に対して1から20ppmの水を含みうる。
【0043】
好ましい一実施態様によれば、前記組成物は、気相の総体積に対して0.1体積%から5体積%、有利には気相の総体積に対して0.5体積%から3体積%、好ましくは気相の総体積に対して0.01体積%から2体積%の気体空気含有量を含みうる。
【0044】
好ましくは、前記組成物は、組成物の総重量に対して10000重量ppm未満の水、有利には組成物の総重量に対して5000重量ppm未満の水、好ましくは組成物の総重量に対して1000重量ppm未満の水、より優先的には組成物の総重量に対して500重量ppm未満の水、特に組成物の総重量に対して100重量ppm未満の水、より具体的には組成物の総重量に対して50重量ppm未満の水を含み;気相の総体積に対して0.1体積%から5体積%、有利には気相の総体積に対して0.5体積%から3体積%、好ましくは気相の総体積に対して0.01体積%から2体積%の気体空気含有量を含みうる。
【0045】
特に、前記組成物は、組成物の総重量に対して0.01から500重量ppmの水、好ましくは組成物の総重量に対して0.05から250重量ppmの水、特に組成物の総重量に対して0.1から100重量ppmの水、より具体的には組成物の総重量に対して1から20重量ppmの水;並びに、気相の総体積に対して0.1体積%から5体積%、有利には気相の総体積に対して0.5体積%から3体積%、好ましくは気相の総体積に対して0.01体積%から2体積%の気体空気含有量を含みうる。
【0046】
好ましい一実施態様によれば、組成物は、塩酸換算で計算して、組成物の総重量に対して100重量ppm未満の酸、有利には組成物の総重量に対して50重量ppm未満の酸、好ましくは組成物の総重量に対して10重量ppm未満の酸、特に組成物の総重量に対して0.01重量ppmから2重量ppmの酸含有量を有しうる。
【0047】
有利には、前記組成物は、塩酸換算で計算して、組成物の総重量に対して100重量ppm未満、有利には組成物の総重量に対して50重量ppm未満、好ましくは組成物の総重量に対して10重量ppm未満、特に組成物の総重量に対して0.01ppmから2重量ppmの酸を含み;組成物の総重量に対して10000重量ppm未満の水、有利には組成物の総重量に対して5000重量ppm未満、好ましくは組成物の総重量に対して1000重量ppmの水、より優先的には組成物の総重量に対して500重量ppm未満の水、特に組成物の総重量に対して100重量ppm未満の水、より具体的には組成物の総重量に対して50重量ppm未満の水を含みうる。あるいは、前記組成物は、塩酸換算で計算して、組成物の総重量に対して100重量ppm未満、有利には組成物の総重量に対して50重量ppm未満、好ましくは組成物の総重量に対して10重量ppm未満、特に組成物の総重量に対して0.01ppmから2重量ppmの酸含有量を有し;組成物の総重量に対して0.01から500ppmの水、好ましくは組成物の総重量に対して0.05から250重量ppm、特に組成物の総重量に対して0.1重量ppmから100重量ppm、より具体的には組成物の総重量に対して1から20重量ppmの水を含みうる。
【0048】
前記組成物は、塩酸換算で計算して、組成物の総重量に対して100重量ppm未満、有利には組成物の総重量に対して50重量ppm未満、好ましくは組成物の総重量に対して10重量ppm未満、特に組成物の総重量に対して0.01ppmから2重量ppmの酸含有量;並びに気相の総体積に対して0.1体積%から5体積%、有利には気相の総体積に対して0.5体積%から3体積%、好ましくは気相の総体積に対して0.01体積%から2体積%の気体空気含有量を有しうる。
【0049】
好ましくは、前記組成物は、塩酸換算で計算して、組成物の総重量に対して100重量ppm未満、有利には組成物の総重量に対して50重量ppm未満、好ましくは組成物の総重量に対して10重量ppm未満、特に組成物の総重量に対して0.01ppmから2重量ppm未満の酸含有量;並びに気相の総体積に対して0.1体積%から5体積%、有利には気相の総体積に対して0.5体積%から3体積%、好ましくは気相の総体積に対して0.01体積%から2体積%の気体空気含有量を有し;組成物の総重量に対して0.01から500重量ppmの水、好ましくは組成物の総重量に対して0.05から250重量ppm未満の水、特に組成物の総重量に対して0.1から100重量ppmの水、より具体的には組成物の総重量に対して1から20重量ppmの水を含みうる。
【0050】
好ましくは、前記組成物は、塩酸換算で計算して、組成物の総重量に対して100重量ppm未満、有利には組成物の総重量に対して50重量ppm未満、好ましくは組成物の総重量に対して10重量ppm未満、特に組成物の総重量に対して0.01ppmから2重量ppmの酸含有量;並びに気相の総体積に対して0.1体積%から5体積%、有利には気相の総体積に対して0.5体積%から3体積%、好ましくは気相の総体積に対して0.01体積%から2体積%の気体空気含有量を有し;組成物の総重量に対して10000重量ppm未満の水、有利には組成物の総重量に対して5000重量ppm未満の水、好ましくは組成物の総重量に対して1000ppm未満の水、より優先的には組成物の総重量に対して500ppm未満の水、特に組成物の総重量に対して100重量ppm未満の水、より具体的には組成物の総重量に対して50重量ppm未満の水を含みうる。
【0051】
前記容器は、10から100barの間、有利には15から70barの間、好ましくは20から60barの間、特に40から50barの間である試験圧力に耐える密閉容器でありうる。
【0052】
好ましくは、前記組成物が容器に含有されるとき、前記組成物は気相及び液相から作製されうる。特に、気相及び液相は同じ化学組成を有しうる。つまり、液相中及び気相中のテトラフルオロプロペンの割合は、前記組成物が少なくとも95重量%のテトラフルオロプロペン、好ましくは少なくとも98重量%のテトラフルオロプロペン、特に少なくとも99.5重量%のテトラフルオロプロペンを含むとき、実質的に同一である。
【0053】
好ましい一実施態様によれば、前記容器は円筒状の形状であり、スチールフレームワーク内に取り付けられ、前記フレームワークはISO 1496−1:2013規格によるISO容器の寸法に従う。
【0054】
別の好ましい実施態様によれば、前記容器は、上記の前記試験圧力に耐えるカートリッジである。好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む組成物を含有するカートリッジの内部容積は、1m未満、有利には0.1m未満、好ましくは0.01m未満である。
【0055】
第2の態様によれば、本発明は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を貯蔵するための方法であって、内部表面が亜鉛を含むコーティングで少なくとも部分的に覆われている金属容器を提供すること及び前記容器をテトラフルオロプロペンを含む組成物で充填することを含む方法を提供する。容器及び組成物は、本発明の第1の態様に規定される通りである。
【0056】
好ましい一実施態様によれば、容器は炭素鋼から作製されており、コーティングはコーティングの総重量に対して少なくとも99.9重量%の亜鉛を含み、テトラフルオロプロペンは、有利には2,3,3,3−テトラフルオロプロペン及び/又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。
【0057】
本発明の別の態様によれば、装置が提供される。前記装置は、本発明による容器、好ましくはシリンダー又はカートリッジ又は小型容器、及び潤滑剤を含む第2の容器を含む。よって、本発明による装置は、潤滑剤とテトラフルオロプロペンを含む組成物とを含む冷媒混合物を調製するのに適している。本発明による装置は、空調回路、好ましくは自動車の空調回路、又は凍結回路のローディングにも適している。好ましくは、潤滑剤は、自動車の空調に適している。潤滑剤の例として、特に、ポリアルキレングリコール、ポリオールエステル及び/又はポリビニルエーテルが使用されうる。前記装置は、容器のそれぞれを、前記第2の容器の潤滑剤が本発明による前記容器中に含有される前記テトラフルオロプロペンを含む組成物と混合される空調又は凍結容器又は回路に任意選択的に独立して連結するコネクタも備える。
【実施例】
【0058】
99.9重量%超の亜鉛を含むコーティングで完全に覆われた炭素鋼試験片を密閉ガラス管へ導入する。ある量の水及び0.1N塩酸を秤量して各管に導入する。密閉管を、前記管内の冷媒流体の引き込み及び移動を容易にするために、ドライアイス中に置く。冷媒流体を含有するシリンダーを密閉管に接続し、装置全体を真空引きして漏れ止め性を確認する。その後、流体は既知の容量のバッファーシリンダー内で膨張する。このようにして、所定の重量の流体を密閉管に導入することができる。この重量は、圧力差、温度及びバッファー容積に応じて計算される。生成物が実際に移されたことを圧力計で確認し、管を密閉する。このようにして密閉した管を秤量し、その後金属鞘に入れ、85℃のインキュベーター内に14日間置く。この実施例では、冷媒流体は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。
【0059】
14日の最後に、管の目視観察は、液体2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの色の変化を示さない。気相もクロマトグラフィーによって分析する。表1は、各管の分析結果を再現している。
【0060】
参照管と試験片及び水又はHClを含有する管との間に大きな差異は観察されない。亜鉛とHFO−1234yfとの間の接触は、水又はHClが存在しているか否かにかかわらず、その組成に影響を及ぼさない。本発明による亜鉛を含むコーティングで覆われた容器は、テトラフルオロプロペンを含む組成物を安定して貯蔵することを可能にする。
【0061】
亜鉛めっき炭素鋼試験片もまた腐食を示さない。試験片の重量の変化は観察されない。