(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記システムにおいて生じた安全リスクの前記表示は少なくとも、前記光ビームが前記光/電力変換器に衝突したことを示す信号を与えるように構成された前記検出器から、及び前記少なくとも一つの電力受信装置から反射された前記光ビームの前記光共振器において受信されたレベルにより生成された信号から、取得される、請求項22に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
物理的な有線接続を必要とすることなく電力を遠隔箇所に送信することの、長年にわたる切実な必要性が存在する。この必要性は、周期的な再充電を必要とする電池により動作する携帯型電子デバイスが一般的になるにつれ、この数十年にわたり重要となってきた。かかる移動式アプリケーションには、移動式電話機、ノートパソコン、車、おもちゃ、装着可能デバイス及び補聴器が含まれる。現在のところ、最新式の電池の容量、及びスマートフォンの典型的な電池の使用は、一日に一回は電池の充電を必要とするというものであり、遠隔無線電池再充電の必要性が重要となる。
【0003】
電池の技術は、長い歴史を有し、未だに開発中である。1748年、ベンジャミン・フランクリンは、ライデン瓶から作られた最初の電池(バッテリー)、すなわち最初の電力源を記載した。これは、大砲の列(キャノンバッテリー)に似ていた(それゆえバッテリーとの名称となった)。1800年の後半、ボルタは銅亜鉛電池を発明した。これは、有意に携帯型といえるものであった。最初の再充電可能電池、すなわち鉛酸蓄電池が、1859年にガストン・プランテにより発明された。それ以来、再充電可能電池のエネルギー密度の増加は、当初の鉛酸化学から現在のリチウム系化学及び亜鉛空気化学までの様々な再充電可能電池のエネルギー密度を重量パラメータ及び体積パラメータの双方において示す
図1に見られるように、8倍未満である。同時に、携帯型電子/電気デバイスにより消費される電力は、いくつかの完全な電池充電を毎日補充する必要がある点にまで到達している。
【0004】
電池の発明からほぼ一世紀の後、1870年から1910年までの期間において、テスラは、電磁波を使用して長距離にわたる電力の送信を試みた。それ以来、送信デバイス又は受信デバイスよりも有意に大きな距離にわたることを特徴とし得る遠隔箇所まで安全に電力を送信するべく多くの試みがなされてきた。これは、1980年台にSHARP(静止型高高度中継プラットフォーム(Stationary High Altitude Relay Platform))プロジェクトを指揮したNASAから、2007年にテスラに類似するシステムによる実験をしたマリン・ソーリャチッチまでの範囲にわたる。
【0005】
それでも、これまでのところ、無線で電力を移動式デバイスまで移送することを許容する商業的に利用可能な技術は3つのみである。すなわち、以下のとおりである。
磁気誘導…これは典型的に、ほんの数mmまでの範囲に限られる。
光起電力セル…これは、太陽光又は通常(安全)な照明の部屋における利用可能なレベルの人工光のいずれかにより照射される場合、移動式電話機に関連するサイズに対し、0.1ワットを超えて発電することができない。
エネルギーハーベスティング技術…これは、RF波を使用可能なエネルギーに変換するが、現行の実際的な状況においては0.01Wを超えて動作することができない。RF信号の送信は、健康及び連邦通信委員会(FCC)規制ゆえに限られるからである。
他方、携帯型電子デバイスの典型的な電池は、1〜100ワット時の容量を有し、毎日の充電を要するのが典型的である。それゆえ、かなり長い範囲における、かなり高い電力移送が必要とされる。
【0006】
したがって、再充電可能電池を備えるのが典型的な携帯型電子デバイスまで、大きな視野及び数メートルより大きな範囲にわたり安全に電力を移送する未だ対処されていない必要性が存在する。
【0007】
コリメートされた又は本質的にコリメートされた電磁波、特にレーザビームを使用して、居住環境において電力を移送する試みがいくつかなされている。しかしながら、かかる製品の、大量市場にとっての商業的な利用可能性は、現在のところ限られている。かかる商業的なシステムを立ち上げる前に、いくつかの問題を解決する必要がある。すなわち、
安全なシステムを開発するべきである。
コスト効果の高いシステムを開発するべきである。
ほこり及び指紋又は液体のこぼれのような汚染、振動、ビーム阻止、専門外の者による設置、並びに時々の床への落下を含む通常の家庭環境のハザードに耐えることができるシステムを開発するべきである。
【0008】
現在許容されている送信レーザ電力レベルは、複雑な安全システムなしに有用な量の電力を与えるには不十分である。例えば、米国においては、2014年4月改定の連邦規則集、タイトル21第8巻(21CFRセクション8)、チャプターI、サブチャプターJパート1040が、レーザ製品を含む発光製品の性能基準を扱う。可視範囲外の波長に対し、クラスI、クラスIII−b及びクラスIVのレーザが存在する(クラスII、IIa及びIIIaは、400nm〜710nmのレーザ、例えば可視レーザである)。可視範囲外のレーザについて、クラス1は一般公衆使用に対して安全とみなされるが、クラスIIIb及びIVは危険とみなされる。
【0009】
ここで
図2を参照する。これは、0.1〜60秒の露光に対する上記21CFRセクション8によるクラスIレーザの、瞳孔径7mmに対するMPE(最大許容露光値(Maximal Permissible Exposure Value))を示すグラフである。上記グラフから以下のことがわかる。(i)最大許容露光レベルは一般に(ただし必ずというわけではない)、波長とともに増加し、(ii)21CFRセクション8に規定される要件を満たすべく、人がビームに入って0.1秒後にレーザがオフにされても、2.5μよりも長い波長において1.25Wを超えない光が送信され得る。波長が短くなれば限界桁数も小さくなる。すなわち、ある種の安全システムがなければ、ほんの数ミリワットのレーザ電力が送信され得る。これは、完全に電気に変換し戻されても、ほとんどの携帯型電子デバイスを充電するのに必要な電力よりも有意に小さな電力の供給となる。例えば、セルラー電話機は、充電するのに機種に応じて1〜12Wを必要とする。
【0010】
クラス1レーザMPEよりも高い電力を送信するには、安全システムが必要となる。訓練を受けてない人が近づき得る居住環境において有意なレベルの電力を送信するものは、出願人の知る限りにおいて、未だに商用化されていない。
【0011】
ロバストな安全システムを有する送信システムを構築することは難しい。必要とされる検出レベルが、送信される必要のある電力と比較して非常に小さく、システムが動作する環境は制御されず、作動中に多くの予測不能なシナリオが生じ得る。
【0012】
指紋及びほこりがレーザ光を散乱させること、及び透明な表面が当該光を反射又は散乱させることは、業界周知である。高い電力が移送される場合、信頼できる安全システムを要求するクラスIV(又はIIIb)レーザが必要となる。クラスIVレーザに対しては、メインビームからの散乱放射であっても危険である。2014年4月改定の21CFRセクション8、チャプターI、サブチャプターJパート1040によれば、0.5Wビーム出力を超える400nm〜1400nmのレーザ放射は通常、0.5秒を上回る露光に対しクラスIVレーザとみなされ、かかるレーザからの散乱放射であっても危険となり得る。かかるレーザは、ロックキーと、
図3に示されるものと同様の警告標識とを有する必要がある。ここで、当該警告は「散乱放射」にも関連しており、当該レーザのユーザは通常、安全グーグルを着用する必要があり、典型的には訓練を受けた専門家である。これらの側面すべては、移動式電子デバイスを充電するべく家庭で利用可能なレーザ電力送信システムの使用についての許容可能な条件とは非常にかけ離れている。
【0013】
先行技術は典型的に、かかる反射を防止する表面上の反射防止(Anti−Reflective)膜を、それにもかかわらず万一反射が生じた場合に備えてかかる反射を阻止する精密なビーム阻止構造物と組み合わせて使用する。しかしながら、先行技術において使用されるAR膜の解決策は、その表面に堆積するほこり又はこぼれた液体により、又は、例えば不適切なクリーニングゆえの摩耗及び破れにより、失敗しがちである。それに加え、ビーム阻止の解決策は典型的に、システムの視野を厳しく制限するので、現代の携帯型電子デバイスの寸法と比較してかさばる。
【0014】
したがって、先行技術には、電力ビームが望ましくない方向に散乱及び反射するのを防止するべく信頼できる「小さな専有面積」のメカニズムが欠如している。かかる散乱及び反射は、いずれかが送信器と受信器との間に不注意に配置された透明表面により引き起こされ得るので、当該透明表面の光学的特徴は、膨大な数の異なる透明物質の影響、又は、システムの外部表面に、典型的には受信器の前面に、堆積し得る液体のこぼれ及び指紋の影響を受け得る。
【0015】
先行技術において提案される解決策の3番目の問題は、かかる安全システムは一般に、電力ビームシステムと安全システムとの良好な整列を保証するメカニズムを必要とすることである。それにより、双方のシステムは、もはや安全限界を超えることがないように電力ビームが十分に散逸し、又は十分に減衰する(又はこれらの因子と任意の他の因子との組み合わせ)まで、同じ軸に照準が合わせられる。これは、距離があってもほとんど拡張せず、ひいては非常に長距離でも安全限界を超えるのが典型的な、コリメートされたクラスIV又はIIIbレーザビームに関して達成することが極めて困難である。
【0016】
かかる安全システムを構築するべく使用される先行技術の一つの動作原理は、ビーム経路に位置決めされ得る透明表面を光学的に検出することにある。しかしながら、ビーム経路に入り得る透明表面は、膨大な数の異なる透明物質から作られ、反射防止ARコーティングがされるか又は当該材料がビームを吸収しない限りにおいて光システムにとってほぼ不可視となるようにブリュースター角に近い角度に配置される。しかしながら、それぞれの物質の光吸収レベルは異なり無視さえできるので、及び光吸収に依存する光学システムを構築することは高度に物質固有となるので、並びに利用可能な物質の数は極めて大きいので、かかるシステムは、複雑、大規模かつ高価となりがちであり、適切に設計されない限り、特に、重要な安全システムとするつもりであることを考慮すれば、信頼できるものとはならない。ビームの検出可能な減衰を与えるべく反射に依存することにも問題がある。表面が反射防止膜によりコーティングされ、又はビームに対する近ブリュースター角に配置されると、当該表面のそのような特定位置に対しては反射が最小限となり得るからである。
【0017】
先行技術システムの他の制限は、高効率を得るべく良好なビーム品質(低m
2値)が大きな光学系と組み合わされたレーザを使用すること(例えば特許文献1及び特許文献2はレーザビームに対して広い開口を使用する)が典型的である一方、特許文献3は、小さな光学系を許容して光学システムの費用及びサイズを低減するべく0.8μmの波長を使用する。
【0018】
したがって、先行技術のシステム及び方法の不利点の少なくともいくつかを克服する組み込み型安全機能を備えたレーザ電力送信システムの必要性が存在する。
【0019】
本明細書のこのセクション及び他のセクションで言及される公報それぞれの開示は、その全体がここに参照として組み入れられる。
【発明の概要】
【0021】
無線電力送信の主要な課題の一つは、安全、低コストかつ小さな、それでいてパワフルな(例えば有意なレベルの電力を送信することができる)送信器及び受信器を構築することにある。パワフルかつ小さな送信器及び受信器を可能にするには、ビームの放射輝度を、光経路全体にわたってではあるが特に送信器の出力部において、できる限り高く維持することが必須となる。光経路にあるコンポーネントはすべて、一定の放射輝度損失を引き起こす。本明細書において、放射輝度効率との用語が何度か使用される。本明細書の文脈におけるその通常の意味は、光学コンポーネントの外へ出て行く放射輝度の、当該コンポーネントに入るビームの入射放射輝度に対する比である。様々な態様で構成され得るコンポーネントについて、例えばミラーは、異なる角度に傾斜させることができる。各構成に対して異なる放射効率が存在し得る。
【0022】
一般に、システムは全体的に、できる限り高い放射効率を有する必要があり、60%を超え、90%又は95%までもの放射効率の典型的な値を得ようと努力するべきである。
【0023】
送信器の放射効率は一般に、受信器の放射効率よりもはるかに重要である。ビームの放射輝度を低減させる2つの主要な因子が存在する。すなわち、レーザシステム、及び送信器の放射効率である。これらの因子のほかに、他の小さな因子も影響を与える。
【0024】
高い放射輝度値を備えたレーザが一般に大きくかつ複雑となる一方、低い放射輝度を有するレーザは典型的に小さくかつ単純となる。現在のシステムは、改善された安全機能を許容する稀な波長を典型的に使用するので、レーザ放射輝度が限られている。そのような非従来的な波長の小さく、低コストで、高放射輝度のレーザは、それほど一般的に利用可能ではなく、システムのコストを増加させる傾向がある。
【0025】
特許文献3及び4のような先行技術のシステムは、コンパクトな送信器及び受信器を許容するべく短い波長(0.8μm又は0.532μm)を使用する。しかしながら、現行のシステムは長い波長を利用するので、当該システムのサイズを低減するには異なる方法を使用する必要がある。
【0026】
現行のシステムにより使用される長い波長は、発明者が本願と共通する米国特許出願第14/811,260号に説明されるように、実質的にすべてのプラスチック材料により特定的に吸収される波長を使用することにより、ビームの経路における透明なプラスチックの検出を可能とする。
【0027】
不透明な材料又は部分的に不透明な材料でも、ビームの中に配置された場合、当該ビームの減衰を測定することにより、容易に検出することができる。しかしながら、いくつかの材料は透明又はほぼ透明であり、そのような透明な材料でも検出するのが有意に困難である。固体の透明な材料には2つの主要なグループが存在する。有機材料及び無機材料である。一般公衆にとって利用可能な無機透明固体材料の数は、かなり限られる。ほとんどは、ガラス、一般に使用されるいくつかの半導体材料、水晶、並びにダイヤモンド、ルビー及び方解石のようないくつかの天然鉱物からなる。したがって、無機透明な材料からの反射のための検出システムを構築してすべての同様のシナリオをカバーすることができる。
【0028】
他方、異なる有機透明材料の、一般公衆にとっての利用可能性は、莫大である。新たな透明材料が常にリストに加えられている。これは、重要な問題である。このグループを光学的に特徴付けることが実質的に不可能となるからである。
【0029】
ポリマーは、重要なグループの透明有機物質であり、本発明が動作することが意図される態様を説明するのに役立つサンプルグループとして使用される。ポリマーは典型的に、長鎖のモノマーからなる。かかるポリマーの骨格は典型的に、炭素又はケイ素のいずれかからなる。
図4〜9は、一般的に使用されるいくつかの透明なポリマーの化学構造を示す。
図4はポリメチルメタクリレート(PMMA)鎖を示す。
図5はポリカーボネートの構造を示す。
図6はポリスチレン構造を示す。
図7はナイロン6,6を示す。
図8はポリプロピレン鎖を示す。
図9はポリエチレン鎖構造を示す。
【0030】
観測されることだが、示されるサンプルポリマーの化学構造は、非常に異なり、これらのポリマーの吸収スペクトルは、材料の密度、試薬の痕跡量、及び鎖の長さを含む多くの因子に依存する。それにもかかわらず、上述の透明なポリマーはすべて、いくつかの共通の化学結合、特にC−C結合及びC−H結合を有する。これは、商業的に利用可能な、本開示のシステムにより検出されるであろうほぼ完全に有機物質のポリマーに対し、又はやはり本開示のシステムにより検出されるであろうシリコーン、ポリシラン、ポリゲルマン及びポリスタナン若しくはポリホスファゼンのような半有機ケイ素系ポリマーに対し、特に当てはまる。
【0031】
それとは別に、炭素化学系ではない一般公衆にとって利用可能な透明材料(ほとんどが様々なガラスからなる)の数は、かなり限られる。そのほとんどは、透過スペクトルについて容易に利用可能なデータを有する。
【0032】
振動性のC−H又はおそらくはポリマー内のC−C結合のいずれかは、レーザにより励起されるようにシステムが設計されていれば、そのようなポリマーの一つをビームの中に位置決めする場合に当該ポリマーにより引き起こされる電力低下をモニタリングすることにより、検出が容易となる。これは、常にC−H又はC−C結合の吸収が存在し、常に、レーザ波長に整合する波長となることを前提とする。回転ピークもまたこの目的のために使用することができるが、回転ピークはポリマーにおいては信頼できないので、この目的に対しては振動性のC−H(又はC−C)吸収が良好に適する。
【0033】
ここで、異なるポリマー結合の典型的な吸収領域のチャートを示す
図10を参照する。示されるポリマーのほぼすべてにおいて2900〜3200cm
−1付近のC−H伸縮振動が現れることが観測される。したがって、これは、吸収帯域から得られる送信電力変化を使用する安全システム用の吸収メカニズムの引き金として使用し得る。しかしながら、これらの吸収帯域に関し、この目的のために有用となることを妨げる2つの問題が存在する。
【0034】
(i)C−H振動性吸収線は典型的に非常に急峻であり、その正確な周波数は、ポリマーごとに変わるので、レーザは一のポリマーを励起しても他のポリマーを励起しないことがあり得る。すなわち、レーザは、当該ポリマーの固有のC−H振動線に正確にチューニングされない限り、吸収されない。
(ii)かかるC−H振動ピークは一般に、数mm厚さの材料セクションゆえにビームの減衰が20〜50%になる(すなわち小さな容器における材料の痕跡量であっても検出可能となる)ことを意味する中程度の吸収ピークであり、中程度(cm材料当たり20〜70%の減衰)及び強度(cm当たり70%を超える減衰)の吸収ピークは一般に、かなり容易に検出されるので、これらの吸収ピークは、ロバストなシステムを作り上げるべく使用することができない。
【0035】
消費者環境のために設計された商業的なシステムにおいて、指紋は一般的な問題である。通常の動作において、システムは、単に指紋が堆積されるだけで故障してはならず、その代わり、安全限界を超えるリスクが存在する場合にはシステムは送信をシャットダウンするべきである。これを行うべく、システムは、ビームの阻止を検出するべきではあるが、受信器に堆積された任意の指紋に起因して送信を停止するべきではない。強度の又は中程度の吸収ピークが使用される場合、万一、受信器又は送信器の外部光学表面に指紋又は何らかの他の汚染が堆積していたら、当該ビームが有意に吸収されて電力送信の失敗が生じてしまう。これが生じるのは、指紋が、ビームを吸収して制御不良のシステム故障をもたらす有機化合物を包含するからでもある。指紋のような有機物質が、典型的には外部の光コンポーネントの表面に堆積され得る環境においてシステムが動作できるようにするべく、レーザビームが指紋を成功裏に横切る一方で当該ビームの中に挿入され得る危険な透明物品が安全システムにより検出されるシステムを構築する必要がある。他方、安全システムが、中程度又は強度の吸収帯域の代わりに弱い吸収帯域を利用するとすれば、システムは、指紋ありでも動作するはずであり、電子的決定に基づいてシャットオフを行うことができるので制御不良の態様とはならない。
【0036】
800cm
−1から1300cm
−1まで伸びるC−C吸収帯域に目を向けると、これは、狭帯域レーザがほぼ確実に、この領域における狭帯域吸収ピークを外すほどの広帯域である。当該ピークが800cm
−1〜1300cm
−1の範囲内に位置する一方でその典型的な幅は非常に小さく、狭帯域レーザによっては容易に見逃されるからである。それに加え、以下の
図11においてわかることだが、この帯域は、いくつかのポリマーに対しては消滅する。この場合、800〜1300cm
−1で可視の吸収ピークは存在せず、C−C結合が存在せず、及び芳香族炭素−炭素結合又はC=C結合及びC−O−C結合により置換されるポリマーがいくつか存在する。
【0037】
C−C線の吸収強度からはさらなる問題が生じる。ポリエチレンのような対称化合物においはその検出がほぼ不可能となり得る一方、他の化合物においては、受信器の表面上の弱い指紋でさえ、システムを動作不能にするほど強くなり得るので、電力の有意な部分が当該指紋に吸収されてデバイスを使用不可にする。指紋が光学表面上に堆積され得るシステムの動作を有効にするべく、異なるポリマー同士でそれほど変わらずにほとんどの有機ポリマーに見出される弱いが弱すぎるほどではない吸収線が必要となる。そのようなピークにチューニングされたレーザを、当該ピーク付近で動作するシステムとともに使用するべきである。
図10からわかるように、一般に使用されるポリマーには図示の吸収帯域においてそのようなピークは存在しない。
【0038】
電力受信装置への光無線電力送信のシステムであって、
(a)端部反射器を有して光ビームを放射するべく適合された光共振器と、
(b)当該光共振器の内部に位置決めされて第1帯域ギャップエネルギーを有する利得媒体であって、冷却システムに熱的に取り付けられて自身を通過する光を増幅させるように構成された利得媒体と、
(c)当該光の発散を低減して高放射効率(50%超過)を有するコリメータレンズと、
(d)当該利得媒体に電力を供給して当該利得媒体の小信号利得を制御するドライバと、
(e)光ビームを複数の方向の少なくとも一つに向けるように構成されて典型的には高放射効率(典型的には50%を超える)を有するビーム操舵装置と、
(f)光ビームを一の電圧を有する電力に変換するように構成され、第2帯域ギャップエネルギー、及び吸収層(典型的には半導体)として作用する厚さを有する光/電力変換器と、
(g)当該光/電力変換器により生成された電力の一の電圧を異なる電圧に変換するように適合され、インダクタ、エネルギー貯蔵デバイス及びスイッチを含む電圧変換器と、
(h)当該光/電力変換器に関連付けられて当該利得媒体と当該光/電力変換器との間に光学的に配置された少なくとも一つの表面と、
(i)当該光ビームが当該光/電力変換器に衝突したことを示す信号を与えるように構成された検出器と、
(j)安全違反の潜在性を評価する安全システムと、
(k)当該ビーム操舵装置及び当該ドライバのステータスの少なくとも一つを制御するように適合され、少なくとも当該検出器からの制御入力信号を受信する制御器と
を含み、
(l)当該少なくとも一つの表面は、(i)一を超える方向に、又は(ii)反射光が、当該表面に対して当該光共振器から遠隔するように位置決めされた虚焦点を有するように、又は(iii)反射光が、当該表面に対して当該光共振器の方向に少なくとも1cmのところに位置決めされた実焦点を有するように、入射光の小部分を反射する特性を有し、
(m)当該制御器は、(i)当該ドライバに当該利得媒体の小信号利得を変化させることと、(ii)当該光ビームの放射輝度を変更することと、(iii)当該ドライバにより供給される電力を変更することと、(iv)当該ビーム操舵装置のスキャン速度を変更することと、(v)当該ビーム操舵装置のスキャン位置を変更することと、(vi)当該光/電力変換器の位置を画定するスキャン位置を記録することとの少なくとも一つにより、当該検出器から受信した制御入力信号に応答するように構成され、
(n)当該利得媒体は、Ndイオンがドープされた半導体デバイス又は固体ホストであって、8,300cm
−1から12,500cm
−1の範囲にある波数を有する少なくとも一つの周波数に対する放射を減衰させるフィルタを含み、
(o)当該光/電力変換器の能動半導体層の厚さは、当該光ビームのほとんどを吸収できる程度に十分大きいが、半導体層の量子効率が有意に低減されるほど大きくはないように選択され、
(p)第2帯域ギャップエネルギーは第1帯域ギャップエネルギーよりも小さく、
(q)第1帯域ギャップエネルギーは0.8eV〜1.1eVであり、
(r)当該スイッチは、式
【数1】
により与えられるRよりも小さな閉直列抵抗を有し、
ここで、Rはオーム単位で測定され、E
gainはジュール単位で測定された第1帯域ギャップエネルギーであり、P
laser driverは、レーザドライバにより当該利得媒体に供給されるワット単位で測定された電力であり、
(s)当該光ビームは、少なくとも8kW/m
2/ステラジアンの放射輝度、及び近似的に6940cm
−1に位置するC−H吸収の第1倍音と近似的に8130cm
−1に位置するC−H吸収の第2倍音との間にある周波数を有し、
(t)当該システムにおける光コンポーネント、特にコリメータレンズ及びビーム導波器は、少なくとも50%の放射効率を有する。
【0039】
かかるシステムのいずれにおいても、当該異なる電圧は、光/電気変換器により生成される電圧よりも高い電圧となり得る。さらに、ビーム操舵装置のステータスは、ビーム操舵装置の照準方向及びスキャン速度のいずれか又は双方となり得る。
【0040】
さらに、上記システムのいずれにおいても、光ビームは、少なくとも800kW/m
2/ステラジアンの放射輝度を有し得る。
【0041】
他の実装例は、共振器の端部反射器の各一つが、(i)誘電体ミラー、(ii)ブラッグミラー、(iii)フレネル反射器、又は(iv)異なる屈折率を有する誘電体若しくは半導体材料の交代層からなるミラーのいずれかとなる上記システムのいずれかを含み得る。それに加え、利得媒体は、Ndイオンがドープされた透明な固体ホスト材料又は半導体のいずれかとなり得る。かかる場合、システムはさらに、8300cm
−1よりも大きな波数を有する放射を抽出するフィルタを含み得る。利得媒体が半導体である場合、量子ドット利得媒体が有利となり得る。
【0042】
上記システムのさらなる典型的な実装において、冷却システムは、ヒートシンク、ペルチェダイオード及び液冷プレートの少なくとも一つとなり得る。それには、ファンが装備され得る。それに加え、利得媒体は、熱抵抗が200度ケルビン/ワット未満のはんだ層を使用して冷却システムに取り付けることができる。いずれにせよ、冷却システムは、利得媒体と周囲空気との間の熱抵抗が200度ケルビン/ワット未満となるようにされ得る。
【0043】
上記システムのいずれかの代替実装において、光/電力変換器は光起電力セルとしてよい。かかる場合、光起電力セルはIII−Vデバイスとなり得る。いずれにせよ、光/電力変換器の直列抵抗は1オーム未満とすべきである。
【0044】
光/電力変換器は典型的に、その上に導体を有する。その導体は、少なくとも0.02/μ
10の厚さを有する。ここで、μ
10は、1/mの単位で測定される10進法減衰係数である。
【0045】
かかる導体は、少なくとも(0.01*Pρ)/(V
2*χ)メートルの厚さを有するべきである。ここで、Pは、光起電力セルにより吸収されるワット単位で測定される送信電力であり、ρは、当該導体の固有電気抵抗率であり、Vは、光起電力セルにより最大電力点において放出される電圧であり、χは、導体により覆われる吸収層の面積の割合である。
【0046】
上記システムのさらなる実装によれば、インダクタは、オーム単位で測定される直列抵抗が、ジュール単位で測定される第1帯域ギャップエネルギーの二乗を、ワット単位で測定されるドライバ電力の2×10
−40倍により除算したもの未満とすべきである。
【0047】
他の実装において、エネルギー貯蔵デバイスは、キャパシタ又は再充電可能電池のいずれかとなり得る。
【0048】
上記システムのさらなる実装によれば、様々なセンサ及びモニタからの入力が与えられて安全違反の確率を推定する少なくとも一つの安全システムが含まれる。これは、特許文献1のレーダーシステムのような、エラーの確率を示さずに実際の測定データのみを与える先行技術のシステムとは異なる。本システムは、実際に検出された安全違反とは対照的に、安全違反の確率を示す信号を与える点で異なる。これにより、いくつかの有意な利点が許容される。第一に、システムは、低い信号/ノイズ又は信号中断により明らかとなる潜在的に問題をはらむ状況に対し、高リスクの状況と低リスクの状況とを判別することにより応答することができるので、各状況に対して異なるように応答することができる。例えば、例えば汚れた開口により、整列不良又は同様の事象により引き起こされる低リスクの状況を、例えば高確率のビーム侵入、又は高いか低いかにかかわらず不合理なビーム電力のような高リスクの状況とは異なるように扱うことができる。第二に、システムは、十分に高い検出精度を達成するべく、異なる安全システムからの確率を組み合わせて統一確率にすることができる。例えば、変化する環境において典型的に毎時10
−9故障の故障率を有するようにシステムが設計される場合、故障なしでそのような信頼できる測定を与えることができる単一の安全システムは存在しない。しかしながら、安全システムの組み合わせは、良好な故障確率を有し得る。そのようなデータがエラーの確率と組み合わせられ、かつ、双方の安全システムからのエラーの統計的相関が既知であり若しくは推定若しくは近似される場合、2つのシステムからのデータは、有意に高い確率でデータがもたらされるように組み合わせることができる。かかる信頼性のあるデータを、とりわけ、信号/ノイズから、コンポーネントの温度から、同じ若しくは類似のデバイスでの測定に基づくプリロードデータから、製造業者若しくは販売者によりアップロードされた若しくはユーザにより与えられたユーザ入力情報から、推定することができる。
【0049】
上記システムのさらなる実装によれば、当該レーザ共振器の出力ビームは、レンズを使用して、少なくとも一つの軸にコリメートされる(又はほぼコリメートされる)。レンズは、高い開口数(Numerical Aperture(NA))のレンズが使用されるべき高い放射輝度効率(典型的には50%超過)を有する必要がある。
【0050】
上記システムのさらなる実装によれば、ビーム偏向メカニズムはさらに、50%を超える高い放射輝度効率を有する必要があり、さらにその回転中心が、ビームの重み付き平均ポイントに近くなるように、又はビームの最大強度ポイントに若しくはビームの50%強度線又は90%強度線の中心に近くなるように位置決めする必要がある。
【0051】
送信/受信/変換プロセスのための30%という全体的な放射輝度効率が、システムエネルギーを効率的にするべく望ましいレベルであるが、これは、利用可能なコンポーネントの制約、及び環境状態により限られることを理解するべきであり、20%若しくはそれ以下のような30%未満のレベルも動作可能であることを理解するべきである。
【0052】
それに加え、上記システムのいずれも、再帰反射器を含み得る。また、利得媒体は、ドライバにより電気的又は光学的に励起され得る。さらに、第2帯域ギャップエネルギーは、第1帯域ギャップエネルギーの50%を超え得る。
【0053】
さらに他の実装は、送信器から受信器に電力を送信する方法を行う。この方法は、
(a)第1電力を、近似的に6940cm
−1に位置するC−H吸収の第1倍音と近似的に8130cm
−1に位置するC−H吸収の第2倍音との間にある周波数を有する電磁波に変換することであって、当該電磁波は少なくとも8kW/m
2/ステラジアンの放射輝度を有し、当該変換は、端部反射器を有する光共振器と第1電力を受信するレーザドライバに接続された利得媒体とを使用することにより行われ、当該利得媒体は、0.8eV〜1.1eVの第1帯域ギャップエネルギーを有し、当該光共振器の内部に配置され、冷却システムに熱的に取り付けられ、及び自身を通過する電磁波を増幅するように構成されることと、
(b)当該電磁波を、制御ユニットにより制御されるビーム操舵装置を使用して複数の方向の少なくとも一つに向けることと、
(c)関連付けられた部分的に透明な表面を有する標的へのビームの衝突を検出することであって、当該衝突に関連する表示が、当該制御ユニットが(i)当該利得媒体の小信号利得に変化を引き起こすことと、(ii)当該電磁ビームの放射輝度に変化を引き起こすことと、(iii)第1電力に変化を引き起こすことと、(iv)当該ビーム操舵装置のスキャン速度を変えることと、(v)当該ビーム操舵装置のスキャン位置を変えることと、(vi)当該標的の位置を画定するスキャン位置を記録することとの少なくとも一つを行うことにより利用されることと、
(d)第1帯域ギャップエネルギーよりも小さな第2帯域ギャップエネルギーを有する光/電力変換器を使用することにより、当該電磁波を一の電圧を有する第2電力に変換することと、
(e)インダクタ、エネルギー貯蔵デバイス、及び式
【数2】
により与えられるRよりも小さな閉直列抵抗を有するスイッチを含む電圧変換器により、当該一の電圧を異なる電圧に変換することであって、ここで、Rはオーム単位で測定され、E
gainは、ジュール単位で測定される第1帯域ギャップエネルギーであり、P
laser driverは、ワット単位で測定される第1電力であることと
を含み、
(f)当該表面は、(i)拡散するように、又は(ii)反射光が、当該表面に対して当該光共振器から遠隔して位置決めされた虚焦点を有するように、又は(iii)反射光が、当該表面に対して当該光共振器の方向に少なくとも1cmに位置決めされた実焦点を有するように、入射する電磁波の小部分を反射するように設計され、
(g)当該利得媒体は、8,300cm
−1〜12,500cm
−1の範囲にある波数を有する少なくとも一つの周波数に対する放射を減衰させるフィルタを含む半導体デバイス、又はNdイオンがドープされた固体ホストのいずれかである。
【0054】
かかる方法において、スイッチは、式
【数3】
により決定される周波数でスイッチングされ得る。
ここで、fはHz単位で測定されるスイッチング周波数であり、E
gainはジュール単位で測定される利得媒体の帯域ギャップであり、V
outputはボルト単位で測定される電圧変換器からの出力電圧であり、P
laser driverはワット単位で測定される当該レーザドライバにより利得媒体へと励起される電力である。
【0055】
それに加え、ビームが標的に衝突したことの検出は、当該標的からの再帰反射照明の検出の送信器における使用、又は受信器センサを使用した標的の照明の検出の使用のいずれかにより、行うことができる。
【0056】
さらに、上記方法のいずれにおいても、第2帯域ギャップエネルギーは、第1帯域ギャップエネルギーの50%を超え得る。
【0057】
少なくとも一つの電力受信装置への光無線電力送信のためのシステムであって、このシステムは、
(i)複数の端部反射器を有して光ビームを放射するべく適合された光共振器と、
(ii)8,300cm
−1から12,500cm
−1の範囲にある波数を有する少なくとも一つの周波数に対する放射を減衰させるフィルタと光通信をしてネオジムイオンがドープされた(a)半導体デバイス又は(b)固体ホストのいずれかを含む利得媒体であって、当該光共振器の内部に位置決めされて第1帯域ギャップエネルギーを有するとともに、冷却システムに熱的に取り付けられて自身を通過する光を増幅するように構成される利得媒体と、
(iii)当該利得媒体に電力を供給するように構成されて当該利得媒体の小信号利得の制御を可能にするドライバと、
(iv)当該光ビームを複数の方向の少なくとも一つに向けるように構成されたビーム操舵装置と、
(v)当該少なくとも一つの電力受信装置の中に配置されて当該光ビームを、一の電圧を有する電力に変換するように構成された光/電力変換器であって、第2帯域ギャップエネルギーを有する光/電力変換器と、
(vi)当該光ビームが当該光/電力変換器に衝突することを示す信号を与えるように構成された検出器と、
(vii)当該ビーム操舵装置及び当該ドライバのステータスの少なくとも一方を制御するように適合された制御器であって、少なくとも当該検出器から制御入力信号を受信する制御器と
を含み、
当該光ビームは、少なくとも8kW/m
2/ステラジアンの放射輝度を有し、当該送信器と当該少なくとも一つの電力受信装置との間の送信の全体的な放射輝度効率は少なくとも20%である。
【0058】
かかるシステムにおいて、送信器と少なくとも一つの電力受信装置との間の送信の全体的な放射輝度効率は少なくとも30%とするべきである。
【0059】
さらに、上述のシステムはいずれも、光/電力変換器の出力部に接続された電圧変換器をさらに含んでよい。かかる場合、電圧変換器は、光/電力変換器の最大電力点を追跡するように構成されてよい。それに加え、電圧変換器はDC/DCブースト電圧変換器であってよい。
【0060】
さらに他の実装は、上述のシステムの一つを含んでよく、共振器が少なくとも一つの誘電体ミラーを含む。
【0061】
代替的に、光/電力変換器は光起電力セルとしてよく、その場合、光起電力セルはIII−V半導体材料を含んでよい。
【0062】
さらなる実装例は、上述のようなシステムを含んでよく、キャパシタ又は再充電可能電池であり得るエネルギー貯蔵デバイスをさらに含んでよい。
【0063】
さらに他の有利な実装は、上述のシステムのようなシステムとしてよく、インダクタをさらに含んでよい。かかる状況において、インダクタは、
【数4】
と
【数5】
との間のインダクタンスを有してよい。
ここで、fはヘルツ単位で測定されるスイッチング周波数であり、E
gainはジュール単位で測定される利得媒体の帯域ギャップエネルギーであり、V
outputはボルト単位のDC/DC変換器の出力電圧であり、P
laser driverは、レーザドライバにより利得媒体に供給されるワット単位で測定される電力である。
【0064】
本開示のさらに他のシステムは、上述されたものとしてよく、当該システムは、電力受信装置からの情報を受信するように構成される。この情報は、電池ステータス、デバイス識別、必要な電力、必要な電圧、及びキーの少なくとも一つを含んでよい。
【0065】
さらに、上述のシステムのいずれも、光/電力変換器の温度を決定するセンサをさらに含んでよい。このセンサは、この場合、光/電力変換器の温度の変化に応答して光ビームの電力を修正するように構成してよい。温度センサの出力は、制御器によって受信されるべきである。
【0066】
本開示に記載されるさらに他の実装によれば、かかるシステムはいずれも、光起電力光/電力変換器とビーム操舵装置との間に位置決めされた光学窓をさらに含んでよい。かかる場合、窓は、少なくとも1.5の、又は少なくとも1.6もの屈折率を有してよく、反射防止膜によりコーティングされてよい。
【0067】
それに加え、かかるシステムでは、第2帯域ギャップエネルギーは、第1帯域ギャップエネルギーよりも小さくするべきである。
【0068】
さらに、制御器は、ビーム操舵装置が光ビームを、少なくとも一つの電力受信装置に向けるように適合するべきである。
【0069】
本開示に記載されるシステムのさらに他の実装によれば、少なくとも一つの電力受信装置への光無線電力送信のためのシステムが与えられる。このシステムは、
(i)複数の端部反射器を有して光ビームを放射するべく適合された光共振器と、
(ii)8,300cm
−1から12,500cm
−1の範囲にある波数を有する少なくとも一つの周波数に対する放射を減衰させるフィルタと光通信をしてネオジムイオンがドープされた(a)半導体デバイス又は(b)固体ホストのいずれかを含む利得媒体であって、当該光共振器の内部に位置決めされて第1帯域ギャップエネルギーを有するとともに、冷却システムに熱的に取り付けられて自身を通過する光を増幅するように構成される利得媒体と、
(iii)当該利得媒体に電力を供給するように構成されて当該利得媒体の小信号利得の制御を可能にするドライバと、
(iv)当該光ビームを複数の方向の少なくとも一つに向けるように構成されたビーム操舵装置と、
(v)当該少なくとも一つの電力受信装置の中に配置されて当該光ビームを、一の電圧を有する電力に変換するように構成された光/電力変換器であって、第2帯域ギャップエネルギーを有する光/電力変換器と、
(vi)当該光ビームが当該光/電力変換器に衝突することを示す信号を与えるように構成された検出器と、
(vii)当該ビーム操舵装置及び当該ドライバのステータスの少なくとも一方を制御するように適合された制御器であって、少なくとも当該検出器から制御入力信号を受信する制御器と
を含み、
当該制御器は、
(a)当該ドライバに当該利得媒体の小信号利得を変更させることと、
(b)当該光ビームの放射輝度を変更することと、
(c)当該ドライバにより供給される電力を変更することと、
(d)当該ビーム操舵装置のスキャン速度を変更することと、
(e)当該ビーム操舵装置の姿勢を変更することと、
(f)当該光/電力変換器の配置を画定するスキャン姿勢を記録することと
の少なくとも一つをもたらす指令を出力することにより、当該システムにおいて生じた安全リスクの表示に応答するように構成される。
【0070】
姿勢との用語は、ビーム操舵装置がビームを向ける位置及び角度配向の双方を意味するものと理解される。さらに、電力を利得媒体に供給するように構成された上記ドライバはまた、当該利得媒体への励起電力入力を変えること、又は当該ドライバを完全にオン若しくはオフにすることにより、当該利得媒体の小信号利得を制御できるものと理解される。
【0071】
かかるシステムでは、システムにおいて生じる安全リスクの表示は少なくとも、光ビームが光/電力変換器に衝突したことを表示する信号を与えるように構成された検出器により生成された信号から、及び少なくとも一つの電力受信装置から反射されたビームの共振器において受信されたレベルにより生成された信号から、取得される。
【0072】
後半に記載のシステムはいずれも、光/電力変換器の出力部に接続された電圧変換器をさらに含んでよい。かかる電圧変換器は、光/電力変換器の最大電力点を追跡するように構成するべきである。それに加え、電圧変換器はDC/DCブースト電圧変換器としてよい。
【0073】
かかるシステムのさらなる実装によれば、共振器は少なくとも一つの誘電体ミラーを含み得る。さらに、光/電力変換器は光起電力セルとしてよく、かかる光起電力セルはIII−V半導体材料を含んでよい。
【0074】
かかるシステムのさらに他の実装は、キャパシタ又は再充電可能電池となり得るエネルギー貯蔵デバイスをさらに含み得る。それに加え、これらはさらにインダクタを含み得る。かかるインダクタは、
【数6】
と
【数7】
との間のインダクタンスを有し得る。
ここで、fはHz単位で測定されるスイッチング周波数であり、E
gainはジュール単位で測定される利得媒体の帯域ギャップエネルギーであり、V
outputはボルト単位で測定されるDC/DC変換器の出力電圧であり、P
laser driverは、レーザドライバにより当該利得媒体に供給されるワット単位で測定される電力である。
【0075】
さらに、かかるシステムはいずれも、少なくとも一つの電力受信装置からの情報を受信するように構成され得る。かかる情報は、電池ステータス、デバイス識別、必要な電力、必要な電圧、及びキーの少なくとも一つを含み得る。
【0076】
システムはさらに、光/電力変換器の温度を決定するセンサを含み得る。かかるシステムは、光/電力変換器の温度の変化に応答して光ビームの電力を修正するように構成してよい。これを行うべく、温度センサの出力は、制御器によって受信するべきである。
【0077】
かかるシステムの追加例はさらに、光起電力光/電力変換器とビーム操舵装置との間に位置決めされた光学窓を含んでよい。かかる窓は、少なくとも1.5の屈折率を有してよく、又は少なくとも1.6の屈折率を有してよく、さらには反射防止膜によりコーティングされてよい。
【0078】
最後に、上述のシステムのいずれにおいても、第2帯域ギャップエネルギーは第1帯域ギャップエネルギーよりも小さくするべきである。
【0079】
多くの状況において、システムにより放射される最大電力は、当該システムの安全要件から、当該システムの工学的要件から、受信器の電力要件から(これは動的に変化し得る)、又は他の問題点から、導かれ得る所定最大値が超過されるのを防止するべく、制限する必要がある。かかる場合において、光ビームが一定の電力を超える場合、システムは、利得媒体の小信号利得を低減させ、当該システムにより放射される放射輝度の低下をもたらすことができる。
【0080】
したがって、なおもさらなる実装によれば、かかるシステムはさらに、少なくとも一つの電力受信装置に衝突する前に光ビームにより搬送された電力を示す信号を与えるように配置された電力センサを含み得る。かかる状況において、ドライバは、電力センサの電力表示がしきい値を超えたときに利得媒体の小信号利得を低減するように構成することができる。
【0081】
それに加え、安全リスクの一つの重要な表示は、「電力喪失」、すなわちシステムによっては説明されない電力の推定、である。かかる電力は、システムにとって喪失され得るが、リスクのある態様での電力放射にとっての喪失でもあり得る。かかる「電力喪失」が検出されると、システムは、安全な動作を保証するべく様々な動作を行う必要がある。その動作には、ビームの電力の低減、小信号利得の低減、システムの放射輝度の低減、ビームの偏向、又はユーザへの通知が含まれ得る。したがって、検出器はまた、少なくとも一つの電力受信装置が受信した電力を表示する信号も与える。この場合、安全の表示の少なくとも一つは、電力センサにより表示される電力と、当該少なくとも一つの電力受信装置の一つにおける検出器により表示される電力との差異に由来し得る。その後、安全の表示の少なくとも一つが、当該差異がしきい値を超えることから生じ得る。
【0082】
他の安全ハザード表示は、光学的となり得るビーム侵入センサに由来し、又はシステムが安全ではないことを示し得るウォッチドッグ、インターロック、サーミスタのようなシステム完全性センサに由来し得る。かかる場合において、システムは、ビームの電力の低減、小信号利得の低減、システムの放射輝度の低減、ビームの偏向、又はユーザへの通知のような安全動作を行うことができる。
【0083】
したがって、上記システムのさらなる実装は、望ましくない物体が光ビームに侵入するときを検知するように適合されたビーム侵入センサを含み得る。望ましくない物体の侵入が安全リスクの表示を構成する。代替的に及び追加的に、かかるシステムはさらに、エンクロージャ完全性センサを含み得る。ここで、当該センサにより発行されるエンクロージャの完全性が喪失されたとの警告が、安全リスクを示す。かかるシステムはまた、システムにおける少なくとも一つの重要なサブシステムの逸脱動作を検知する検知デバイスを含み得る。逸脱動作が安全リスクの表示を構成する。
【発明を実施するための形態】
【0086】
上記考慮に鑑み、本開示の光無線給電システムの一つの典型的な実装は、6940cm
−1におけるC−H吸収の第1倍音と8130cm
−1におけるC−H吸収の第2倍音との間で作動するようにチューニングされたシステムとなり得る。かかる倍音帯域は、あまり知られた帯域ではなく、それほど多くの化学的な情報を含むわけではなく、実質的に禁止された量子力学的遷移から生じ、及び、複雑なメカニズムゆえに許容されるにすぎない。したがって、倍音帯域は、本願にとってまさに好ましい広くて弱い吸収帯域を与えるが、分析化学においては有意に使用されないことがわかっている。帯域の幅広い性質により、様々な異なるポリマー組成を検出することが可能となる一方、弱い吸収により、システムは、有機汚れ及び指紋の近くにおいてであっても動作を続けることができる。このことにより、これらの線は、典型的な吸収測定用途にとってはそれほど有用ではないが、本タスクにとっては理想的である。これらの線の他の利点は、同じ周波数に直に位置決めされる一般吸収線が存在しないことにあり、それゆえ、材料の化学組成が変化しても、測定結果がそれほど強く改変されることがない。多くのかかる倍音帯域が、
図12のチャートに例示される。
【0087】
その帯域で動作する電気光コンポーネントは、不足しており調達が困難である。これはおそらく、ダイオードレーザ及び半導体励起固体(Diode−Pumped,Solid State(DPSS))レーザの双方ともが、その周波数においてあまり効率的でなく、低電力レーザのみが現在のところ商業的に入手可能だからである。好ましい周波数における所望のパラメータを有するレーザが現在のところ入手可能ではないので、この用途に適切なレーザは、ゼロから設計しなければならない。共振器及び利得媒体を設計する必要がある。粗くコリメートされた又はほぼコリメートされたビームを促すのに十分な選択された周波数及び放射輝度値を備えたレーザを構築する必要がある。ビームの良好なコリメーションを達成するべく、少なくとも8kW/m
2/ステラジアンの放射輝度が必要であり、効率的な電力送信のための高電力システムには800kW/m
2/ステラジアンくらいは必要となる。長距離で作動する小さなシステムに対し、同様の原理に従えば、将来、かなり高い放射輝度(10GW/m
2/ステラジアンまで)を設計することができる。当該レベル未満の放射輝度で使用される受信器は、システムが扱いにくくなるほど大きくならざるを得ない。
【0088】
共振器のための異なるミラー設定が使用された。具体的には、金、銀又はアルミニウムから作られた良好な品質の金属ミラーが使用された。これらは、レーザ発振効率を有意に低減することがわかっている。誘電体材料ミラーによって、かなり良好な結果が達成される。代替的に、フレネルミラーは、低コストである点で一つの利点を有する。使用可能な他のミラーは、ブラッグミラー(誘電体であり得る)である。ミラーは、安定若しくはほぼ安定した共振器、又は光子がレーザの内側(ファイバ又はダイオードレーザにおいてのような)にある障壁により一定空間に閉じ込められる共振器を形成するように位置決めする必要がある。利得媒体は、当該利得媒体がビームを増幅させて当該共振器内部で共振することが許容される位置のミラー間において、少なくとも8kW/m
2/ステラジアンの放射輝度を有するように当該共振器に配置される必要がある。
【0089】
利得媒体が一を超える波長においてレーザ発振することができる場合、誘電体ミラーは、当該波長を固有値に制限するように選択することができる。代替的に、フィルタを使用してレーザ発振周波数を固定することもできる。
【0090】
具体的には、6940cm
−1におけるC−H吸収の第1倍音と8130cm
−1におけるC−H吸収の第2倍音との間にある少なくとも一つの波長に対してミラーが高い反射率を有する場合に良好となる。
【0091】
利得媒体に対しては3つの異なるアプローチを使用することができる。
【0093】
DPSS設計において、利得媒体は、NdドープYAG結晶とすることができる。ただし、YVO
4結晶、GGG結晶及びガラスも、透明なホストのためのオプションとなる。C−H帯域の第1倍音とC−H帯域の第2倍音との間での動作には、ネオジムが最も適切である。Ndは、ほぼ7450cm
−1付近における遷移を有するからである。Ndイオンは、典型的には808nmレーザダイオードからの放射を吸収することによって励起される必要がある。ただし、他の波長も使用することができる。Nd系利得媒体は、9400cm
−1付近の遷移を阻止するフィルタを共振器内部に付加しない限り、又は共振器からの望ましくない放射が抽出されない限り、かなり高い周波数でレーザ発振する傾向がある。かかるフィルタが追加されると、7440〜7480cm
−1においてレーザ発振が開始する。かかるフィルタ作用は、フィルタの代わりにプリズム又は格子を使用することにより、又は当該レーザ共振器の適切な色設計により、達成することができる。
【0095】
代替として、半導体系設計を提案することができる。半導体レーザの波長を、使用される半導体のレーザ発振帯域ギャップを改変することにより、チューニングすることができる。半導体、特定的には1eVのオーダーの帯域ギャップを有するIII−Vタイプのもの、及びさらに特定的には、ただし排他的ではなく、量子ドットタイプのものが、6900cm
−1〜8200cm
−1の所望の周波数において発光する。具体的には、0.8eV〜1.1eVの帯域ギャップが良好な結果をもたらし、少なくとも部分的に、一般に使用されるポリマーの実質的にすべてにより吸収される。
【0096】
3.様々な代替設計、例えばブラッグミラー及び/又はファイバループミラーを含み得るNdドープファイバレーザもまた、本開示に記載のシステムにおいて使用することができる。代替的に、ラマンシフトファイバレーザも使用することができる。
【0097】
動作中、利得媒体は加熱するので、波長シフト及び効率劣化を防止するべく冷却しなければならない。利得媒体が適切に冷却されれば、少なくとも8kW/m
2/ステラジアンの放射輝度を有し、6900cm
−1〜8200cm
−1の周波数を有するビームが放射されるまでずっと、励起電力又は電流を増加させることができる。かかるビームは、ほぼコリメートされ得るので、検出が許容されるポリマーを含む大抵の有機物質により減衰される。それにもかかわらず、指紋のような汚染物質により強く吸収されることはない。
【0098】
レーザ利得媒体は典型的に、摂氏150度未満の温度で作動するように構成される。その温度が、典型的には摂氏250度付近の一定レベルを超えると、一定数の問題が生じ得る。
【0099】
第一に、特に3レベル及び4レベルのレーザにおいて、低レベルの励起状態が集合することに起因して、さらには半導体の電荷担体の熱再結合に起因して、発光効率が有意に低下し得る。
【0100】
第二に、利得媒体のはんだ付けが、かかる熱的な取り付け方法が使用される場合、損傷を受け得る。
【0101】
第三に、ビーム劣化を引き起こす熱収差が生じ得る。
【0102】
第四に、レーザ利得媒体の熱膨張が、その周囲の熱膨張とは異なり得るので、機械的応力、又は利得媒体の歪み及び破砕が引き起こされ得る。
【0103】
これらの理由により、とりわけ利得媒体は、冷却システムに熱的に取り付ける必要がある。典型的に、利得媒体は0.1〜100Wの熱を、1mm
2〜40mm
2の表面から放出する。利得媒体の温度が150度未満に維持されるように、利得媒体の冷却システムは、熱抵抗が200ケルビン毎ワット未満となる必要がある。10Wを超える電力入力から生じるのが典型的な高電力を送信するシステムにとって、熱抵抗は有意に低くする必要があり、多くの場合、0.05ケルビン/ワット未満の熱抵抗が必要とされる。
【0104】
冷却システムの表面の利得媒体への取り付けは、利得媒体自体の膨張係数及び冷却システムの前面の膨張係数双方に整合する膨張係数を有する必要がある典型的にははんだ又は接着剤のような第3の材料を使用して行われる。
【0105】
かかる冷却システムは典型的に、受動ヒートシンク、ファン付きヒートシンク、ファンあり又はなしのヒートシンクに接続されるペルチェ素子、又は液冷型冷却システムのいずれかとなり得る。代替的に、循環ポンプに基づく能動循環による、又はヒートパイプに基づく受動循環による、独立型の液体循環冷却システムを使用することもできる。
【0106】
冷却システムがファン付きヒートシンクを含む場合、その熱抵抗は、0.1度ケルビン毎ワット未満でなければならない。
【0107】
冷却システムが受動ヒートシンクの場合、その熱抵抗は、0.3度ケルビン毎ワット未満でなければならない。
【0108】
冷却システムがペルチェ素子の場合、少なくとも5度の温度差ΔTを生成する必要がある。
【0109】
冷却システムが能動液冷冷却システムの場合、ここで言及する熱抵抗の範囲全体をカバーすることができなければならない。
【0110】
受動ヒートシンクが好ましいのが、低コストかつ静音動作のために設計されたシステムにおいてである一方、液冷システムは高電力システムに対して好ましい。ファン付きヒートシンク又は流体ポンプは、1Wを超える電気出力を有するのが典型的なシステム、及び近似的に1リットル未満のような小体積を有する送信器に対して使用される。
【0111】
利得媒体は典型的にドライバにより駆動され、ドライバは利得媒体にパワーを供給するが、そのパワーは、いくつかの半導体利得媒体の場合には電力として与えられ、又は他の半導体利得媒体若しくはDPSSシステム、若しくは化学若しくは他の形態のエネルギーの場合には光として与えられる。ドライバにより供給される電力の量は、作動条件及びレーザ放射を決定する達成される小信号利得を決定する。他方、利得媒体の飽和利得は一般に、利得媒体のために選択された材料の関数となり、究極的にはレーザから放射される放射輝度となる。ただし、必ずしも単純な線形態様となるわけではない。かかるレーザドライバは、2つ以上の動作状態を有し得る。一つは電力送信のために使用され、他は、標的探索、セットアップ及び情報送信のようなシステムの他の機能のために使用される。重要なのは、レーザドライバが、双方の作動条件において(電力及びビームのパラメータに関し)安定した放射を作り出すことである。ただし、電力送信中の安定動作の方が重要である。
【0112】
有用な電力が送られるように光ビームを再び電気に変換するべく、光/電力変換器、典型的には光起電力セル、を使用する必要がある。レーザと同様、使用されるビームの周波数にあつらえられた適切な光起電力セルは、市販のコンポーネントとして一般に入手可能というわけではないので、カスタム電池が必要となる。光起電力半導体の帯域ギャップは、半導体によりビーム周波数が効率的に吸収されるように、使用される利得媒体の帯域ギャップよりもわずかに小さくする必要がある。そうでなければ、変換効率は非常に悪くなる。他方、使用される帯域ギャップが小さすぎると、悪い効率のシステムが達成されてしまう。また、光起電力セル上の導体は、使用されるビームの放射輝度にあつらえる必要がある。放射輝度が高ければ高いほど、必要とされる導体は厚くなる。
【0113】
レーザ利得媒体の帯域ギャップは、0.8〜1.1eVの範囲とする必要があり、使用される光起電力セルの帯域ギャップは、それよりも低くなければならない。単一接合光起電力セルは典型的に、電子電荷により除算された帯域ギャップエネルギーの約60〜80%の電圧を生成するので、当該レーザ周波数にあつらえた単一接合電池は、実際のシステムに必要な数ワットの出力電力を仮定すれば、典型的には0.3〜0.8Vの非常に低い電圧、及び典型的には高い電流をもたらす。半導体上の導体は、生成された電流を(例えば5%を超える)有意な損失なしに搬送するべく十分に厚くする必要がある。典型的には、導体の直列抵抗を1オーム未満、さらに良好には0.1オーム未満にする必要があり、発生する熱は、光起電力セルから効率的に抽出する必要がある。その効率は一般に、温度とともに減少する。
【0114】
この低電圧と高電力との組み合わせを、携帯型デバイスを充電するのに必要な、典型的には3.3又は5Vの高電圧に、容易に変換することはできない。さらに、通信システムのようないくつかのシステムは、−48V、12V又は3.8Vのような電圧を必要とし得る。システムは、安定電圧を、光起電力セルから予測される出力電圧よりも高いレベルで供給する必要がある。光起電力セルの電圧を増加させる典型的な方法は、当該セルを直列に接続することであり、例えば「P/Nセル及びN/Pセルを含む光起電力直列アレイ」との名称のM.F.Amsterdam et alの米国特許第3,370,986号に記載される。これは、ほぼ同じ量の半導体を追加コンポーネントなしで利用しながら、高電圧をもたらす典型的な構成を示すので、典型的に選択される解決策となる。
【0115】
しかしながら、この解決策は、8kW/m
2/ステラジアンもの高い放射輝度を有するレーザが使用される本願記載のシステムにとって適切ではない。これは特に、そのようなレーザは典型的に、均一な形状のビームを有しないからである。さらに、そのビーム形状は、経時的に可変となり得るので、指向精度は、最適になるように所望されたものよりも低くなり得る。かかる状況において、すべてのセルを均等に照明するコンパクトかつ効率的なシステムを設計することは実質的に不可能である。直列に接続された光起電力セルは、均一に照明されることとはならないので、同じ電流を生成することがない。かかる場合において、実際のところ電圧は、所望のレベルまで増加させられるが、電流は、最小電流をもたらすセル、通常は最小限に照明されるセル、により生成される電流まで低下する。かかる状況において、効率は非常に悪い。したがって、電圧を増加させる改善された代替方法が必要とされる。
【0116】
単一セルの電圧を増加させる一つの方法は、キャパシタを並列に充電し、その後に、直列に放電させることによる。この方法は、低電流に対しては良好な結果をもたらすが、電流が一定レベルを超えるように増加すると、スイッチング時間が、効率に影響を与える支配因子となる。効率は、スイッチング時間の増加に伴い劣化する。
【0117】
高速かつ低い抵抗のスイッチングメカニズムを使用してエネルギーがACに変換される場合、そのAC電流は、結合されたインダクタンスを使用して増幅された後、再びACに変換される。増加した電圧のACは、ダイオードブリッジと、キャパシタ又は電池のようなエネルギー貯蔵デバイスとを使用してDCに変換することができる。かかるシステムは、電圧を光電セル電圧の20倍を超えて増加させる必要がある場合に利点を有する。かかるシステムの他の利点は、レーザを使用してスイッチングを送信器から行えるので、受信器のコスト及び複雑性を減じることができる。かかるシステムは、電圧を10倍未満だけ増加させる必要がある場合、又はアプリケーションにとってサイズ及び体積の制限が重要となる場合、不利点を有する。
【0118】
ここで、効率的かつ単純な電圧変換の方法を示す
図13Aを参照する。
図13Aの構成において、光起電力セルの電圧を増加させるべく、単一のインダクタを、低抵抗スイッチングメカニズム及びエネルギー貯蔵デバイスとともに使用することができる。
図13Aにおいて、左側の正方形は光起電力セルであり、スイッチSは、MOSFET、JFET、BJT、IGBT又はpHEMTのような低抵抗スイッチであり、インダクタンスLが光起電力セルの出力に接続され、キャパシタCがエネルギー貯蔵デバイスとして作用する。
【0119】
以下の記載は、簡潔のため、ゼロ抵抗のコンポーネントの使用を仮定する。抵抗損失を考慮に入れると、計算が複雑となるので、本開示の後のセクションで説明する。スイッチングメカニズムは、インダクタを2つの一次動作フェーズすなわち充電フェーズ及び放電フェーズの間で循環させる。充電フェーズにおいて、インダクタは、スイッチSを閉にすることにより光起電力セルと並列に接続される。このフェーズの間、インダクタは、光起電力セルにより変換されたエネルギーにより充電されている。インダクタエネルギーの増加は、
【数8】
により与えられる。
ここで、
V
pvは光起電力セルの出力電圧であり、
I
Lは平均インダクタ電流であり、
T
CHは充電フェーズの持続時間である。
【0120】
放電フェーズにおいて、インダクタは、スイッチSを開にすることにより、光起電力セルと負荷との間に接続される。このフェーズの間、インダクタから出力エネルギー貯蔵デバイスへと送られるエネルギーは、インダクタエネルギーの減少
【数9】
によって与えられる。
ここで、
V
oは、典型的にはデバイスの所望出力電圧に非常に近いエネルギー貯蔵デバイスの電圧であり、したがって、システムの出力電圧として近似され得る。
I
Lは平均インダクタ電流であり、
T
DISは放電フェーズの持続時間である。
【0121】
当該フェーズの間に光起電力セルからインダクタへと送られるエネルギーは、
【数10】
により与えられる。当該フェーズの間のインダクタエネルギーの変化は、入射エネルギーと流出エネルギーとの差
【数11】
となる。
【0122】
定常状態動作において、サイクルの終わりにおけるインダクタのエネルギーは、当該サイクルの最初にもたらされていた
【数12】
と同じ値に戻る。これは、置換の後に
【数13】
をもたらす。したがって、エネルギー貯蔵デバイスにおける電圧は、光起電力セル電圧、及び充電フェーズ持続時間と放電フェーズ持続時間との比によって定義される。
【0123】
しかしながら、本システムにおいては、コンポーネントの寄生特性及び他の側面が変換動作及び効率に有意な影響を与えるかもしれないので、システムの効率的な動作を許容するべく正しいコンポーネントを選択及び使用する上で注意を払う必要がある。これらの要素を以下、一つずつ考慮する。
【0125】
1.インダクタのインダクタンスは、印加電圧に起因するインダクタ電流の変化率を定義する。これは、dI/dt=V/Lによって与えられる。ここで、dI/dtは電流の変化率であり、Vはインダクタの両端に印加された電圧であり、Lはインダクタンスである。電流システムの文脈において、Vは、送信器における利得媒体によって決定される。異なる利得媒体を選択することにより、光子エネルギーに変化が引き起こされ、このことが、その後の光起電力帯域ギャップの変化、ひいては光起電力電圧の変化を支配する。そして、これは、異なるインダクタ及び/又はスイッチング周波数を要求する。スイッチング速度は、光/電力変換器を介した送信器からの入射電力の変化にインダクタ電流が応答できる程度に十分に高速でなければならず、かつ、電力損失、入力電圧リップル及び出力電圧リップルに寄与する高振幅電流リップルを回避できる程度に十分遅くなければならない。インダクタの最適値は、最大の予測入力電流の20%〜40%となるリップル電流をもたらすべきだが、システムは10%〜60%で動作可能となり得る。回路パラメータの厳密な分析によれば、この目的を達成するには、ヘンリー単位で測定されるインダクタの値Lは、限界
【数14】
内でなければならない。ここで、
fは、Hz単位で測定されるスイッチング周波数であり、
E
gainは、利得媒体の帯域ギャップであり、ジュール単位で測定され、
V
outputは、電圧変換器からの出力電圧であり、ボルト単位で測定され、
P
laser driverは、レーザドライバにより利得媒体へと励起される電力であり、ワット単位で測定される。
【0126】
インダクタを移動式クライアントに成功裏に組み入れるには、インダクタンスは典型的に、10mHよりも小さくするべきである。これは、移動式クライアントの充電に要求される電流にとって適切なインダクタであって、携帯型アプリケーションにとって適切な体積制限を有するインダクタは典型的に、この値を十分に下回るからである。また、10nHのような小さすぎるインダクタンスを有するインダクタは、システムにおけるスイッチのような他のコンポーネントに利用可能性を厳しく制限する高いスイッチング周波数を要求する。そのような高い周波数により引き起こされるスイッチング損失は、光起電力セルにより送られる電力量よりも高くなり得る。
【0127】
2.インダクタの直列抵抗R
parasiticは、伝導電力損失を最小限にするべくできるだけ低くする必要がある。典型的には、10%未満の効率低下をもたらす値が選択され、オーム単位で測定されるインダクタの直列抵抗は、
【数15】
未満にする必要がある。
ここで、
E
gainは、利得媒体の帯域ギャップであり、ジュール単位で測定され、
P
laser driverは、レーザドライバにより利得媒体へと励起されるワット単位で測定される電力である。
【0128】
3.典型的なシステムであれば、インダクタ直列抵抗は10Ω未満となる。インダクタの飽和電流は通常、予測されるインダクタピーク電流よりも高くなるように選択され、
【数16】
によって与えられる。10mWを超える電力を単一接合光起電力セルから抽出するべく、飽和電流は、10mW/0.8v=12.5mAよりも高くする必要がある。
【0129】
4.信頼できる動作を目的として、インダクタは、予測される最大入力電流よりも高い電流に定格される。10mWを超える電力を単一接合光起電力セルから抽出するべく、インダクタ定格電流は、10mW/0.8v=12.5mAよりも高くする必要がある。
【0131】
1.スイッチングメカニズムは通常、2以上のデバイスから作られる。第1デバイス、メインスイッチは、導通すると、インダクタを充電フェーズに設定する。第2デバイスは、放電フェーズの間にインダクタに負荷又は出力エネルギー貯蔵デバイスを接続するとともに充電フェーズの間に当該接続を解除する機能を有するダイオード(
図13A)又はスイッチのいずれかとなり得る。
【0132】
2.スイッチングメカニズムは、スイッチング損失を最小限にするべく低いスイッチノードキャパシタンス
【数17】
を有する必要がある。レーザ電力の50%超過を抽出するべく、スイッチノードキャパシタンスは、
【数18】
未満にする必要がある。
【0133】
3.典型的なシステムにおいて、スイッチノードキャパシタンスは、100nF未満かつ10pF超過となる。
【0134】
4.スイッチノードにおける、インダクタをグランドに接続し又は光/電力変換器をインダクタに接続するメインスイッチの直列抵抗は、
【数19】
未満とする必要がある。典型的なシステムにおいて、スイッチ直列抵抗は10Ω未満となる。
【0136】
1.エネルギー貯蔵デバイスは、キャパシタ若しくは電池のいずれか又は双方としてよい。
【0137】
2.エネルギー貯蔵デバイスは、インダクタが出力から接続解除されたときの充電フェーズの間、出力電圧を維持することが要求される。貯蔵デバイスのキャパシタンスは、スイッチング周波数、レーザ電力、及び所望の出力リップル電圧に基づいて、
【数20】
のように選択される。ここで、ΔV
oは所望の出力リップル電圧である。
【0138】
3.エネルギー貯蔵デバイスはまた、光経路が一時的に中断している間、電力を負荷に供給することができる。中断しない給電を目的として、エネルギー貯蔵デバイスは少なくとも、最小動作出力電力(P
OUT_MIN)に中断時間間隔(T
INT)が乗算された
【数21】
に等しい量のエネルギーを貯蔵する必要がある。エネルギー貯蔵デバイスとしてキャパシタが使用される場合、キャパシタンスは、
【数22】
よりも大きくなければならない。
10mWよりも大きな最小動作出力電力及び100msよりも長い中断時間間隔での中断しない動作を目的として、貯蔵エネルギーは1mJよりも大きく、かつ、キャパシタンスは80μFよりも大きくする必要がある(V
OUT=5Vを仮定)。
【0139】
いくつかの場合、キャパシタは、クライアントアプリケーションのためのエネルギー貯蔵デバイスとしての役割を果たす。かかる場合、クライアントアプリケーションは、いずれの二次エネルギー貯蔵デバイス(移動式デバイスに装備される従来より使用される電池)なしでも設計することができる。本明細書に記載のシステムのエネルギー貯蔵デバイスは、クライアントデバイスに必要な電力を次の充電事象までずっと供給できる程度に十分なエネルギーを貯蔵する必要がある。かかる場合、少なくとも0.5Fの、及び10Fをも上回るキャパシタンスを有するスーパーキャパシタを使用することができる。他の場合、すなわちクライアントデバイスの電力要件が低い場合、又はデバイス内部に装備された電池のような独立したエネルギー貯蔵デバイスを有する場合、若しくはデバイスが、電力供給のないときは動作する必要がない場合、使用されるキャパシタは典型的に、1Fを十分に超える。エネルギー貯蔵デバイスとして再充電可能電池が使用される場合は上記キャパシタの論理と同様になり、電池が電圧調整手段としてのみ使用されるが、充電事象同士の間でクライアントデバイスへの電力供給を維持する手段としては使用されない場合は、電池のエネルギー容量は、スイッチの100サイクルの間に供給されるエネルギー(典型的には0.1Wh未満)の100倍までとするのが有利である。このレベルは、電池の体積割当量及びコスト効率に応じて決定される。他方、電池が、充電事象同士の間にクライアントデバイスに電力を供給するためにも使用される場合、その容量は少なくとも、充電事象同士の間にクライアントデバイスにより必要とされるエネルギー(セルラー電話機の場合には典型的に0.1Whを上回る)を貯蔵する程度に十分大きくなければならない。電池はまた、使用が意図される製品に応じた体積制限を有する。すなわち、ある程度の体積Vを有する製品の電池は、デバイスの外部に組み入れられると、典型的には、当該デバイスの体積の数倍すなわち3Vまでに制限される。この経験則の一例として、体積100ccのセルラー電話機に電力を供給するべく使用される電池は典型的に、体積300cc未満にまで制限される。かかる電池は典型的に、上述した制限ゆえに300Wh未満の容量を有する。
【0140】
図13Aにおける回路は、唯一の可能なトポロジーというわけではない。
図13Bは、同様の性能特性を達成することができる異なる設計を示す。
図13Bに対するコンポーネントの役割、制約、及び予測値は、
図13Aにおける回路に対して列挙したものと同じである。一次的な差異は、出力電圧の正側端子及び負側端子が反転されていることにある。
【0141】
いくつかのアプリケーションにおいて、エネルギー貯蔵デバイスは、受信された電力を使用することが意図されるデバイスの内部に配置することが好ましい。他のアプリケーションにおいては、具体的には、短期間の動作が期待されて調整済み電圧を必要としないアプリケーションにおいては、エネルギー貯蔵デバイスでさえもなくすことができる。
【0143】
光起電力セルの電力出力は、入射光電力及びそれに適用される負荷に依存する。最適な負荷条件が光起電力セルからの最大出力電力をもたらすので、電圧変換器の制御メカニズムは、負荷ポイントを調整する必要がある。制御メカニズムは、ほとんどの条件のための最大電力動作ポイントとして知られるセル端子間の定電圧を維持するように設計されるか、又は、任意の動作条件のもとでセル出力電力を測定して最適セル電圧を探索することにより、最大電力動作ポイントを追跡することができる。第1のアプローチは単純であり、第2のアプローチはさらに電力効率的である。
【0144】
発生するレーザビームは、受信器の方に向ける必要がある。ビームを受信器の方に向けるべく、ビーム操舵装置を使用する必要がある。使用され得るいくつかのビーム操舵サブシステムは、可動ミラー、可動レンズ、電気/光変調器、磁気/光変調器、送信器システム全体を一以上の方向に動かす一セットのモータ、又は任意の他の適切なビーム偏向デバイスを含む。
【0145】
ビーム操舵装置は、制御器によって、最も便宜には、レーザドライバを制御するべく使用される同じ制御器によって、制御する必要がある。
【0146】
ビーム操舵装置は、8kW/m
2/ステラジアンを超えるビームを一定数の方向のいずれにも向けられるように構成される。
【0147】
ビーム操舵装置の損傷しきい値は、ビームの放射輝度に耐えることができるようにする必要がある。
【0148】
例えば、開口数0.5の合焦メカニズムを使用してビームがミラーに合焦されると、当該ミラーは、8kW/m
2/ステラジアンのビームに対して少なくとも6.7kW/m
2の電力密度に耐える必要がある。高い放射輝度のビームが使用されると、ミラーは、それに対応して高い損傷しきい値を有するように選択する必要がある。
【0149】
図14は、8kW/m
2/ステラジアンのビームが合焦される場合の平方メートル当たりのミラーにより反射された電力を、開口数の関数として示す。高い放射輝度のビームが使用される場合、ミラーにより反射された電力はそれに対応して線形態様で増加する。
【0150】
ビームは均一からかけ離れているので、時にはビーム平均と比べて10倍の放射輝度を有する「ホットスポット」が生成され得る。
【0151】
このため、ミラーは、ミラー上の合焦メカニズムの実際のビーム放射輝度及び開口数に合わせたスケールの、
図14に示されるものと少なくとも同じ大きさ、好ましくは少なくとも10倍の損傷しきい値を有する必要がある。
【0152】
典型的に、受信器には、光起電力セル近くであって光起電力セルと送信器との間に位置決めされた光前面が存在する。当該光前面を介してビームが受信器に入り、当該光前面は、光起電力セルの典型的には繊細な構造を保護するべく必要とされ、多くの場合、電力受信器が統合されるデバイスの外部設計に整合される。前面は、コーニング社のゴリラガラス(登録商標)等のような、引っかき傷から保護する膜を有し、又は引っかき傷に良好に耐えるように処理される。当該前面はまた、定着し得る指紋及びほこりのような汚染のレベルを低減するように若しくは光学的効果を低減するように処理され、又は反射される光のレベルを低減する反射防止膜がコーティングされ得る。光起電力セルの前面もまたコーティングされ得る。いくつかの場合、前面は、光起電力セル自体の構造の一部となり、又は光起電力セル上にコーティングされる。
【0153】
いくつかの状況にある間、表面からの反射量を、非常に低い反射の反射防止膜を選択することにより、安全しきい値未満まで低減することができる。万一、こぼれた液体又は指紋のいずれかにより膜が汚染され又は覆われると、かかる反射防止膜は、反射量を低減する効果がなくなり、典型的には入射光の3〜4%が、制御不良の方向に反射される。かかる反射が発散態様で反射される場合、そのパワー密度は間もなく安全レベルまで低下する。しかしながら、万一反射が合焦されると、パワー密度は危険レベルまで増加し得る。これを理由として、かかる表面のROC(曲率半径(Radius Of Curvature))が、いずれのポイントにおいても、所定値未満とはならないようにすることが重要となる。一般に、表面からの反射は、入射光の小部分のみとなるように意図されるので、当該表面の曲率がどのような性質又はどのような形状であるかにかかわらず、任意の有意なビーム反射の危険性は低減される。反射される光のレベルは可変となり得る。これは、未処理ガラス表面からのほぼ4%の反射であっても、表面上の外来性汚染物質の層が、増加された反射率を生じさせる場合には、増加し得るからである。しかしながら、その反射は、20%を超えることがないと予測され、0.1%又はこれよりもかなり低い反射率が一般的なARコーティングガラスの場合のように、概して未処理ガラスの実質的に4%未満となる。したがって、表面は、入射光の小部分を反射する特性を有するものとして本開示に記載され、そのように特許請求の範囲に記載される。本明細書は、入射光の20%未満、一般には未処理ガラスの4%未満を意味するべく使用される。
【0154】
ここで、表面から反射され得る入射光の小部分に対してであっても、上記危険な反射を回避する方法を模式的に例示する
図15A〜15Cを参照する。
図15Aは表面が凹表面の状況を示し、
図15Bは表面が凸表面の状況を示し、
図15Cは表面が拡散表面の状況を示す。
図15Aにおいて、少なくとも8kW/m
2/ステラジアンの放射輝度を有する入射ビーム110は、光起電力セル112へと向けられ、光起電力セルの前面となり得る前面111を貫通する。前面111は、ビーム110の一定程度を反射し、表面から一定距離のところに焦点114を有する合焦ビーム113を生成する。焦点114が目若しくは皮膚又は他の物体にとって何ら危険とならないことを保証するべく、表面111の曲率半径(ROC)は、
図15Aにおいてのようにビームが低開口数により合焦されるようにしなければならず、又は
図15Bにおいてのように焦点ぼけとされるように、若しくは
図15Cにおいてのように拡散されるようにしなければならない。これらの制限を達成するべく、
図15Aにおいてのように送信器から光起電力セルに向かって見て表面が凹となる場合、そのROCは1cmよりも大きくしなければならず、典型的には0.5Wを上回る光の高電力システムが使用される場合は5cmよりも大きくしなければならない。代替的に、表面のROCは、
図15Bにおいてのように負にすることができるが、ROCは、0〜1cmの範囲にあってはならない。これらの制限により、反射された光のビームが、焦点が仮想的、すなわち発散反射ビームに関連付けられるか、又は焦点が表面の前の少なくとも1cmにあるかのいずれかとなることが保証される。その結果、焦点により生じるリスクが有意に低減される。表面はまた、
図15Cにおいてのような拡散表面をもたらす小さな曲率を有するおびただしい数の領域を有することがある。これは、危険な焦点のリスクを有意に低減するのに役立つ。かかる場合において、表面の各サブセクションの曲率半径は、焦点を生じることのない1cm未満となり得る。さらに、表面が多数のゾーンに分割される場合、各ゾーンは小さな曲率を有し得る。
【0155】
安全に動作するべくシステムはまた、電力ビームが光起電力セルにより阻止されて何らかの危険な領域に向けられないように、電力ビームを光起電力セルに向けることができるようにする必要がある。これを達成するべく検出器は、受信器へのビーム衝突の表示を与えるように位置決めする必要がある。かかる検出器は典型的に、受信器に位置決めされるが、かかる検出器が送信器に配置される構成もまた可能である。この場合、検出器は、受信器へのビームの衝撃ゆえに生じる現象に応答する必要がある。かかる送信器関連システムは、画像取得、及び受信器から受け取る、受信器に印刷されたバーコードからのビームの反射のような光情報の処理を含み得る。その結果、送信器はバーコードの照明パターンを検出することができる。単数若しくは複数の再帰反射器又はそのアレイ若しくはパターンからの反射は、受信器に位置決めされ、かかる反射は、画像処理、後方反射測定、又は反射のコヒーレンス効果測定のいずれかにより、送信器において検出することができる。検出器は、受信器に位置決めされた電流又は電圧センサ、受信器若しくは送信器における光ダイオード、又は送信器若しくは受信器のいずれかに存在し得るイメージングデバイスとすることができる。光起電力セルの近傍にある再帰反射器も、送信器における、当該再帰反射器から反射された光を検出する追加の検出器と組み合わせて使用することができる。
【0156】
検出器は、光起電力セルに衝突する光のビームを検出すると、システム制御器に従って信号を送信する。検出器が受信器にある場合、かかるシグナリングは、RF、IR、可視光、UV、ビームの変調、TCP/IP、又は音となり得る通信チャネルを使用して無線により行うことができる。システム制御器は通常、送信器に配置されるが、送信器からのコンピュータネットワーク上にも存在し得るメイン制御ユニットに配置してもよい。信号を受信すると制御器は、以下の少なくとも一つを行うことにより応答する。(a)レーザドライバの状態を変更する。(b)ビームが向けられる方向、かかる方向が変更される速度のような、ビーム操舵装置の動作特性を変更する。
【0157】
ここで、完全なシステムの詳細な記載を示す模式的な図である
図16を参照する。システムは送信器21及び受信器22を含む。一般に、送信器及び受信器は、互いから遠隔するように配置されるが、
図16には、便宜上、互いに近づいているように示される。ビーム15は送信器21から受信器22へ電力を移送する。
【0158】
受信器22において、前面7が、入射ビーム15の小部分を反射ビーム16として反射する一方、当該ビームを拡散させるか、又は前面7の後ろに仮想焦点を、若しくは表面7の前の少なくとも1cmに現実焦点を生じさせる。少なくとも部分的に透明な表面7を介しての送信後、ビーム15は光/電力変換器1に衝突する。
【0159】
光/電力変換器1は、表面7又は別個の窓となり得る前窓を有し得るパッケージに封入することができる。これはまた、空気又はそのまわりの接着剤若しくはガラスとの界面として機能するべく適合された外部表面を有するようにコーティングしてもよい。典型的な構成において、光/電力変換器1は、典型的には導体が堆積される半導体層の接合部となり得る。多くの実施形態において、表面7は、これらの半導体層の一つにコーティングされ、又は当該一つの外部表面となる。
【0160】
シグナリング検出器8は、ビーム15が光起電力セル1に衝突していることを示し、その情報を、このシステムの例において送信器21に配置された制御器13に送信する。制御信号は、リンク23により、送信器における検出器24に送信される。
【0161】
電力変換器1は帯域ギャップE8を有し、典型的には0.35〜1.1Vの電圧をもたらす。ただし、多接合光起電力セルの使用により、さらに高い電圧がもたらされる。電力は光起電力セル1から、低抵抗を有する導体2a及び2bを通ってインダクタ3へと流れる。インダクタ3は、磁場において自身を通って流れるエネルギーの一部を貯蔵する。
【0162】
自動スイッチ4は典型的に、制御回路(
図16には示さず)に接続されたMOSFETトランジスタであり、交代する状態間で切り替わるので、時間の第1部分の間に電流がインダクタ3を通ってグランドへと流れることが許容され、当該時間の第2部分の間に当該インダクタがその貯蔵磁気エネルギーを、光起電力セルよりも高い電圧の電流として放射することが許容される。その電流はダイオード5を通り、その後に電力を使用することができる負荷6へと流れる。
【0163】
自動スイッチ4は、固定周波数で、又は送信器から制御されるか又はクライアント負荷から制御される可変周波数及び/又はデューティーサイクル及び/又は波形で動作しており、又は負荷における電流、電圧又は温度に基づき、又は自動スイッチ4における電流、電圧又は温度に基づき、又は光/電力変換器1により放射される電流、電圧又は温度に基づき、又はシステムの状態に関するいくつかの他のインジケータに基づき得る。
【0164】
受信器は、
図16に示されるように、負荷6に直接接続することができる。または、負荷6は、受信器の外部となり、又はセル電話機若しくは他の電力消費デバイスのような別個のデバイスであり、USB/マイクロUSB/ライトニング(登録商標)/USBタイプCのようなソケットを使用して接続することができる。
【0165】
ほとんどの場合、負荷6に並列に接続されたキャパシタ又は電池のようなエネルギー貯蔵デバイスも存在し、又は、負荷6が、キャパシタ若しくは電池のようなエネルギー貯蔵デバイスを含み得る。
【0166】
送信器21は、ビーム15を生成して受信器22へと向ける。第1動作モードにおいて、送信器21は、受信器22の存在を探索する。これは、スキャンビームを使用して、又は、RF、光、IR光、UV光若しくは音のような通信手段を使用して受信器を検出することにより、又は、再帰反射器若しくは再帰反射構造、バーコード、高コントラストパターン又は他の視覚インジケータのような受信器の視覚インジケータを検出するカメラを使用して行われる。大まかな位置が発見されると、ビーム15は典型的には低い電力で、受信器22まわりの近接エリアをスキャンする。かかるスキャンの間、ビーム15は光起電力セル1に衝突する。ビーム15が光起電力セル1に衝突すると、検出器8はそれを検出し、それに応じて制御器13に信号を送る。
【0167】
制御器13は、レーザドライバ12に命令して電力Pを変更して利得媒体11への入力とすること、及び/又はミラー14に命令してそのスキャン速度又は方向のいずれかを改変し、ビームをその位置に向け又はその位置を保持し、スキャンステップ速度を変更することのいずれか又は双方により、かかる信号に応答する。利得媒体11が異なる電力Pをレーザ電源12から受信すると、その小信号利得、すなわち単一の光子が当該利得媒体を横切るときに受ける利得であって当該利得媒体を同時に横切る他の光子が存在しないもの、が変化する。後方ミラー10と出力結合器9との間の方向に向けられた光子が利得媒体11を通過すると、より多くの光子が、ビーム15の方向と同じ方向に放射され、後方ミラー10と出力結合器9との間で光共振が生じる。
【0168】
出力結合器9は部分的に、反射率Rを有するミラーを通過し、6940cm
−1におけるC−H吸収の第1倍音と8130cm
−1におけるC−H吸収の第2倍音との間のスペクトルの少なくとも一部で動作し、典型的には、異なる屈折率材料の交代層が、典型的にはガラス、プラスチック、又は利得媒体11の表面となる基板に堆積された多層誘電体又は半導体膜となる。代替的に、フレネル反射は、利得媒体が十分小さな信号利得を与えることができるか若しくは十分高い屈折率を有する場合に使用することができる。標準の金属ミラーも使用することができる。利得媒体が半導体又はファイバ増幅器であれば、ブラッグ反射器もまた使用することができる。出力結合器9はまた、光の一つの部分を透過させて、共振器の内部を前方向に進行する波から当該光の他の部分を抽出するが、典型的には第3の部分も、当該共振器の内部を後方向に伝播する波から抽出される半透明光コンポーネントのようなビーム抽出器と組み合わされた高反射率ミラーからなり得る。
【0169】
後方反射器10は、高反射率ミラーとすべきであるが、少量の光が後方漏洩し、モニタリング又は他の目的で使用されて6940cm
−1におけるC−H吸収の第1倍音と8130cm
−1におけるC−H吸収の第2倍音との間にあるスペクトルの少なくとも一部分で作動し得る。典型的には、通常はガラス、金属又はプラスチックである基板に堆積される異なる屈折率材料の交代層から構築することができる。代替的に、利得媒体が十分小さな信号利得を与えることができる場合には、フレネル反射も使用することができる。標準の金属ミラーも使用することができる。利得媒体が半導体又はファイバ増幅器である場合、ブラッグ反射器もまた使用することができる。
【0170】
利得媒体11は、6940cm
−1におけるC−H吸収の第1倍音と8130cm
−1におけるC−H吸収の第2倍音との間の放射を増幅する。ただし、必ずしもこのスペクトル範囲全体にわたるわけではない。これは、レーザドライバ12により電力Pで励起される場合、出力結合器9により引き起こされる損失よりも大きな小信号利得を送ることができる。その領域、視野、損傷しきい値は、少なくとも8kW/m
2/ステラジアン/(1−R)のビームを維持する程度に十分大きくする必要がある。ここで、Rは出力結合器9の反射率である。これは、Ndイオンがドープされた透明なホスト材料の0.8〜1.1eVの帯域ギャップを有する半導体材料、又は当該スペクトル範囲における放射を模擬することができる他の構造物、から構成され得る。利得媒体11は、後方反射器10から出力結合器9への光学的視線に位置決めされ、ひいては、後方反射器10により反射された放射の、利得媒体11を介して後方反射器10と出力結合器9との間での共振が許容される。
【0171】
利得媒体11が0.8〜1.1eVの帯域ギャップを有する半導体である典型的な実装に対しては、熱抽出デバイスに取り付けられるのが好ましく、レーザドライバ12により電気的に又は光学的に励起することができる。
【0172】
利得媒体11が、NdイオンがドープされたYAG、YVO
4、GGG、又はガラス若しくはセラミックスのような透明なホストである典型的な実装において、この場合、利得媒体11は、後方ミラー10と出力結合器9との間での共振から9400cm
−1付近の放射を抽出するべく、フィルタと光通信することが好ましい。
【0173】
ビーム操舵装置14は、制御器13により制御されるように示される。これは、ビーム15を複数の方向に偏向させることができる。その面積は、最大動作傾斜角度まで傾斜されても、ビーム15の実質的にほとんどが包含されるように十分に大きくしなければならない。単純な2Dの例を挙げる。ビーム15が、コリメートされた5mm直径(1/e
2直径)のガウシアンビームであり、かつ、ビーム操舵装置が、ビーム中心を中心とする単一の丸まったジンバルミラーである場合、及び、ミラーに必要な最大傾斜が30度であり、かつ、ビーム操舵装置14が他の開口を有しないことが仮定される場合、ミラーは、当該ビームと同様の5mm直径を有するのであれば、当該ビームの法線入射において近似的に13%損失となる一方、60度傾斜角度では近似的に60%損失となる。これは、システムの性能をひどく損なわせる。この電力損失は、
図17のグラフに例示される。
【0174】
動作開始時、制御器13は、レーザドライバ12及びミラー14に探索動作を行うように指令する。これは、レーザドライバ12が第1状態で動作することにより、受信器22が発見される可能性が高い一般的な方向にビーム15を向けることによって行われる。例えば、送信器が部屋の天井の隅に取り付けられる場合、スキャンは、下方、及び当該部屋の2つの近接した壁間で行われる。光/電力変換器1を包含する受信器22にビーム15が当たると、検出器8は信号を例えば制御器13に送る。かかる信号が受信されない限り、制御器13は、ビーム操舵部14に対してビーム15を他の方向に向けて受信器を探索するように指令する。かかる信号が検出器8から受信されると、制御器13は、ビーム操舵部14に対してスキャンを停止又は減速して当該受信器にロックするように指令し、レーザドライバ12に電力放射を増加させるように指示する。代替的に制御器13は、受信器22の位置を認識して後のステージでそこに戻ることもできる。
【0175】
レーザドライバ12がその電力放射を増加させると、利得媒体11の小信号利得が増加し、その結果、ビーム15は多くの電力を搬送して電力送信が開始する。検出器8が、しきい値よりも大きな電力損失を検出すると、制御器13は通常、レーザドライバ12にその状態を、必要とされる安全レベルを維持するべく電力を低減することにより変更するように指令する。当該しきい値は、予め決定又は動的に設定され、典型的には最大許容露光レベルの有意な部分を代表するレベルにあり、典型的にはシステムノイズ指数よりも大きく、これらの条件は、ビーム15がもはや正確には光/電力変換器1に向けられていないこと、又は何らかの物体がビームの経路に侵入したこと、又は誤作動が生じたことと示唆する。安全動作の他の表示、例えば、ユーザインタフェイス若しくはAPIにより表示され得る送信の安全に関するユーザからの表示、又は第2の安全システムからの安全動作の表示、が存在すると、制御器はレーザに対して電力損失を補償するべく電力を増加させるように指令することができる。制御器13はまた、ビーム操舵アセンブリ14に対して再び探索動作を行うように指令することもできる。
【0176】
探索動作には2つの異なるステージが存在する。第一に、視覚パターンを求めて探索可能なカメラを使用して、再帰反射器を求めて、高コントラストの画像を求めて、受信器からの応答信号を求めて、又は他の表示を求めて、又はビーム操舵部14のスキャン特徴部を使用することにより、粗い探索が行われる。そうして、受信器が発見され得る潜在的な位置のリストを生成することができる。第2ステージは精細な探索である。ここで、ビーム操舵ミラー14は、ビーム15が光/電力変換器1に衝突しているとの信号を検出器8が送るまでずっと、小面積にビーム15を向ける。
【0177】
ここで、
図16のシステムの利得媒体11のための冷却システムの一例を示す
図18を参照する。反射器9、10は別個の光学素子として示されるが、これらの一方又は双方が、システムを単純化するべく利得媒体端面に直接コーティングされ得ることを理解すべきである。利得媒体11は、レーザドライバ12から受信する電力を熱及び光子の双方に変換し、当該利得媒体が一定温度を上回るまで加熱されると、典型的にはシステム性能が劣化する。これを理由として、利得媒体11は、熱抵抗が低い熱伝導はんだが好ましい結合剤33を使用してヒートシンク34に取り付けられる。結合剤33は伝導性接着剤としてもよい。結合剤33は、利得媒体11の熱膨張係数とヒートシンク34の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有し得る。ヒートシンク34は典型的に、金属製の低熱抵抗ヒートシンクとしてよく、表面積を増加させるフィン、又はファン若しくは液体ポンプ35のような外部流体ポンプシステムが装備される。
【0178】
ここで
図19を参照する。これは、
図16のシステムの詳細な記載を示すが、本願に記載の方法及びシステムに従い構成されて動作可能な安全システム31をさらに組み入れた模式的な図である。
図19には、設けられる追加の入力を示すべく別個のモジュールとして示されるが、安全システムを制御器13に組み入れることができ、これは一般に記載され、そのように特許請求の範囲とされる。上述したように、システムは送信器21及び受信器22を含む。一般に、送信器及び受信器は互いから遠隔して配置されるが、便宜上、
図19に示されるように互いに近づいている。ビーム15は送信器21から受信器22へ電力を移送する。
【0179】
受信器22において、前面7が、入射ビーム15の小部分を反射ビーム16として反射する一方、当該ビームを拡散させるか、又は前面7の後ろに仮想焦点を、若しくは表面7の前の少なくとも1cmに現実焦点を生じさせる。少なくとも部分的に透明な表面7を介しての送信後、ビーム15は、厚さTと当該光ビーム15に対する一定の吸収係数とを有する半導体層を有する光/電力変換器1に衝突する。層の厚さは、cm単位で測定されるビームの設計波長に依存し、以下の
図20についてさらに詳述されるように、半導体層における光ビームの吸収係数の逆数の0.02倍とする必要がある。
【0180】
光/電力変換器1は、表面7又は別個の窓となり得る前窓を有し得るパッケージに封入することができる。これはまた、空気又はそのまわりの接着剤若しくはガラスとの界面として機能するべく適合された外部表面を有するようにコーティングしてもよい。典型的な構成において、光/電力変換器1は、典型的には導体が堆積された半導体層の接合部となり得る。多くの実施形態において、表面7は、これらの半導体層の一つにコーティングされ、又は当該一つの外部表面となる。
【0181】
シグナリング検出器8は、ビーム15が光起電力セル1に衝突していることを示し、その情報を制御器13に送信し、多くの場合、受信した電力、受信した光パワー、識別情報、受信器の温度、及び光起電力、並びに、制御情報となり得るクライアントデバイスから中継された情報のような他のデータも送信する。この例において、システム制御器13は送信器21に配置されるが、そこから遠隔して配置されてもよい。制御信号は、リンク23により送信器の検出器24に送信される。
【0182】
安全システム31は、以下に
図21において詳述される様々なソースからの情報を受信し、特には、ビーム結合器32からの結合されたビーム15の小部分から、及びシグナリング検出器8から、通常は電力受信器と電力送信器との間のデータチャネルを介して情報を受信する。安全システム31は、安全表示を制御ユニット13に出力する。
【0183】
電力変換器1は帯域ギャップE8を有し、典型的には0.35〜1.1Vの電圧をもたらす。ただし、多接合光起電力セルの使用により、さらに高い電圧がもたらされる。電力は光起電力セル1から、低抵抗を有する導体2a及び2bを通ってインダクタ3へと流れる。インダクタ3は、磁場において自身を通って流れるエネルギーの一部を貯蔵する。
【0184】
自動スイッチ4は典型的に、制御回路(
図19には示さず)に接続されたMOSFETトランジスタであり、交代する状態間で切り替わるので、時間の第1部分の間に電流がインダクタ3を通ってグランドへと流れることが許容され、当該時間の第2部分の間に当該インダクタがその貯蔵磁気エネルギーを、光起電力セルよりも高い電圧の電流として放射することが許容される。その電流はダイオード5を通り、その後に電力を使用することができる負荷6へと流れる。
【0185】
自動スイッチ4は、固定周波数で、又は送信器から制御されるか又はクライアント負荷から制御される可変周波数及び/又はデューティーサイクル及び/又は波形で動作し、又は負荷における電流、電圧又は温度に基づき、又は自動スイッチ4における電流、電圧又は温度に基づき、又は光/電力変換器1により放射される電流、電圧又は温度に基づき、又はシステムの状態に関するいくつかの他のインジケータに基づき得る。
【0186】
受信器は、
図16に示されるように、負荷6に直接接続することができる。または、負荷6は、受信器の外部となり、又はセル電話機若しくは他の電力消費デバイスのような別個のデバイスであり、USB/マイクロUSB/ライトニング(登録商標)/USBタイプCのようなソケットを使用して接続することができる。受信器は典型的には、当該受信器からの余剰のエネルギーを散逸させるべく使用される負荷バラストをさらに含む。これは、クライアントによっては必要とされない。
【0187】
ほとんどの場合、負荷6に並列に接続されたキャパシタ又は電池のようなエネルギー貯蔵デバイスも存在し、又は、負荷6が、キャパシタ若しくは電池のようなエネルギー貯蔵デバイスを含み得る。
【0188】
送信器21は、ビーム15を生成して受信器22へと向ける。第1動作モードにおいて、送信器21は、受信器22の存在を探索する。これは、スキャンビームを使用して、又は、RF、光、IR光、UV光若しくは音のような通信手段を使用して受信器を検出することにより、又は、再帰反射器若しくは再帰反射構造、バーコード、高コントラストパターン又は他の視覚インジケータのような受信器の視覚インジケータを検出するカメラを使用して行われる。大まかな位置が発見されると、ビーム15は典型的には低い電力で、受信器22まわりの近接エリアをスキャンする。かかるスキャンの間、ビーム15は光起電力セル1に衝突する必要がある。ビーム15が光起電力セル1に衝突すると、検出器8はそれを検出し、それに応じて制御器13に信号を送る。
【0189】
制御器13は、レーザドライバ12に命令して電力Pを変更して利得媒体11への入力とすること、及び/又はミラー14に命令してそのスキャン速度又は方向のいずれかを改変し、ビームをその位置に向け又はその位置を保持し、スキャンステップ速度を変更することのいずれか又は双方により、かかる信号に応答する。利得媒体11が異なる電力Pをレーザ電源12から受信すると、その小信号利得、すなわち単一の光子が当該利得媒体を横切るときに受ける利得であり、当該利得媒体を同時に横切る他の光子が存在しないもの、が変化する。後方ミラー10と出力結合器9との間の方向に向けられた光子が利得媒体11を通過すると、より多くの光子が、ビーム15の方向と同じ方向に放射され、後方ミラー10と出力結合器9との間で光共振が生じる。
【0190】
出力結合器9は部分的に、反射率Rを有するミラーを通過し、6940cm
−1におけるC−H吸収の第1倍音と8130cm
−1におけるC−H吸収の第2倍音との間のスペクトルの少なくとも一部で動作し、典型的には、異なる屈折率材料の交代層が、典型的にはガラス、プラスチック、又は利得媒体11の表面となる基板に堆積された多層誘電体又は半導体膜となる。代替的に、フレネル反射は、利得媒体が十分小さな信号利得を与えることができるか若しくは十分高い屈折率を有する場合に使用することができる。標準の金属ミラーも使用することができる。利得媒体が半導体又はファイバ増幅器であれば、ブラッグ反射器もまた使用することができる。出力結合器9はまた、光の一つの部分を透過させて、共振器の内部を前方向に進行する波から当該光の他の部分を抽出するが、典型的には第3の部分も、当該共振器の内部を後方向に伝播する波から抽出される半透明光コンポーネントのようなビーム抽出器と組み合わされた高反射率ミラーからなり得る。
【0191】
後方反射器10は、高反射率ミラーとすべきであるが、少量の光がそこから後方漏洩することが許容されてモニタリング又は他の目的で使用することができる。これらの光学的特徴は、6940cm
−1におけるC−H吸収の第1倍音と8130cm
−1におけるC−H吸収の第2倍音との間にあるスペクトルの少なくとも一部分で動作する必要がある。典型的には、通常はガラス、金属又はプラスチックである基板に堆積される異なる屈折率材料の交代層から構築することができる。代替的に、利得媒体が十分小さな信号利得を与えることができる場合には、フレネル反射も使用することができる。標準の金属ミラーも使用することができる。利得媒体が半導体又はファイバ増幅器であれば、ブラッグ反射器もまた使用することができる。
【0192】
利得媒体11は、6940cm
−1におけるC−H吸収の第1倍音と8130cm
−1におけるC−H吸収の第2倍音との間の放射を増幅する。ただし、必ずしもこのスペクトル範囲全体にわたるわけではない。これは、レーザドライバ12により電力Pで励起される場合、出力結合器9により引き起こされる損失よりも大きな小信号利得を送ることができる。その領域、視野、損傷しきい値は、少なくとも8kW/m
2/ステラジアン/(1−R)のビームを維持する程度に十分大きくする必要がある。ここで、Rは出力結合器9の反射率である。これは、Ndイオンがドープされた透明なホスト材料の0.8〜1.1eVの帯域ギャップを有する半導体材料、又は当該スペクトル範囲における放射を模擬することができる他の構造物、から構成され得る。利得媒体11は、後方反射器10から出力結合器9への光学的視線に位置決めされ、ひいては、後方反射器10により反射された放射の、利得媒体11を介して後方反射器10と出力結合器9との間での共振が許容される。
【0193】
利得媒体11が0.8〜1.1eVの帯域ギャップを有する半導体である典型的な実装に対しては、熱抽出デバイスに取り付けられるのが好ましく、レーザドライバ12により電気的に又は光学的に励起することができる。
【0194】
利得媒体11が、NdイオンがドープされたYAG、YVO
4、GGG、又はガラス若しくはセラミックスのような透明なホストである典型的な実装において、この場合、利得媒体11は、後方ミラー10と出力結合器9との間で共振する放射から9400cm
−1付近の放射を抽出するべく、フィルタと光通信することが好ましい。
【0195】
ビーム操舵装置14は、制御器13により制御されるように示される。これは、ビーム15を複数の方向に偏向させることができる。その面積は、最大動作傾斜角度まで傾斜されても、ビーム15の実質的にほとんどが包含されるように十分に大きくしなければならない。単純な2Dの例を挙げる。ビーム15が、コリメートされた5mm直径(1/e
2直径)のガウシアンビームであり、かつ、ビーム操舵装置が、ビーム中心を中心とする単一の丸まったジンバルミラーである場合、及び、ミラーに必要な最大傾斜が30度であり、かつ、ビーム操舵装置14が他の開口を有しないことが仮定される場合、ミラーは、当該ビームと同様の5mm直径を有するのであれば、当該ビームの法線入射において近似的に13%損失となる一方、60度傾斜角度では近似的に60%損失となる。これは、システムの性能をひどく損なわせる。この電力損失は、
図17のグラフに、並びに以下の
図22及び23に例示される。
【0196】
動作開始時、制御器13は、レーザドライバ12及びミラー14に探索動作を行うように指令する。これは、レーザドライバ12が第1状態で動作することにより、受信器22が発見される可能性が高い一般的な方向にビーム15を向けることによって行われる。例えば、送信器が部屋の天井の隅に取り付けられる場合、スキャンは、下方向に、及び当該部屋の2つの近接した壁間で行われる。光/電力変換器1を包含する受信器22にビーム15が当たると、検出器8は信号を例えば制御器13に送る。かかる信号が受信されない限り、制御器13は、ビーム操舵部14に対してビーム15を他の方向に向けて受信器を探索するように指令する。かかる信号が検出器8から受信されると、制御器13は、ビーム操舵部14に対してスキャンを停止又は減速して当該受信器にロックするように指令することができる。制御器13はその後、安全システム31が、安全に動作することを示す信号を生成するのを待ち、かかる安全信号がひとたび安全システム31から受信されると、制御器13は、レーザドライバ12に対してその電力放射を増加させるように指示することができる。代替的に制御器13は、受信器22の位置を認識して後のステージでそこに戻ることができる。これは、安全信号が存在しなくても行うことができる。
【0197】
レーザドライバ12がその電力放射を増加させると、利得媒体11の小信号利得が増加し、その結果、ビーム15は多くの電力を搬送して電力送信が開始する。検出器8が一定のしきい値よりも大きな電力損失を検出すると、安全システム31は、かかる状況を制御器31に報告することができる。制御器31は通常、レーザドライバ12にその状態を、必要とされる安全レベルを維持するべく電力を低減することにより変更するように指令する必要がある。かかる電力損失しきい値は、予め決定又は動的に設定され、典型的には最大許容露光レベルの有意な部分を代表するレベルにあり、典型的にはシステムノイズ指数よりも大きい。かかる条件は、ビーム15がもはや正確には光/電力変換器1に向けられていないこと、又は何らかの物体がビームの経路に侵入したこと、又は誤作動が生じたことと示唆する。安全動作の他の表示、例えば、ユーザインタフェイス若しくはAPIにより表示され得る送信の安全に関するユーザからの表示、又は第2の安全システムからの安全動作の表示、が存在すると、制御器はレーザに対して電力損失を補償するべく電力を増加させるように指令することができる。制御器13はまた、ビーム操舵アセンブリ14に対して再び探索動作を行うように指令することもできる。
【0198】
探索動作には2つの異なるステージが存在する。第一に、視覚パターンを求めて探索可能なカメラを使用して、再帰反射器を求めて、高コントラストの画像を求めて、(LED又は他の光源からの点滅光のような)受信器からの応答信号を求めて、又は他の表示を求めて粗い探索が行われ、又は当該粗い探索は、ビーム操舵ユニット14のスキャン特徴部を使用することにより行われてよい。そうして、受信器が発見され得る潜在的な位置のリストを生成することができる。第2ステージは精細な探索である。ここで、ビーム操舵ミラー14は、ビーム15が光/電力変換器1に衝突しているとの信号を検出器8が送るまでずっと、小面積にビーム15を向ける。
【0199】
ここで、
図16、19において要素1として標識された光/電力変換器の模式的な図である
図20を参照する。ビーム15が、熱除去システム107に熱的に接続された光起電力セル106に衝突する。ビーム15は吸収層108に吸収され、電流が導体111に流れることが引き起こされ、その電流は通常、バスにより収集される。吸収層108により吸収される光パワーは典型的に、電力及び熱に変換される。電力が導体111及び下部電極を介して移送される一方、熱エネルギーは、ほとんどが冷却システム107を介して排除される。導体111は吸収層108上に影を作るので、その効率を低下させる。このため、導体111は、3×10
−6オーム*メートル未満の比電気抵抗を有する材料のような高伝導率の材料から作る必要がある。かかる導体は、メートル単位の厚さ、すなわち、少なくとも(0.034*Pρ)/(V
2*χ)mの厚さを有する必要があることが示されている。ここで、Pは、ワット単位で測定される光起電力部により吸収される電力であり、ρは当該導体の比電気抵抗である。Vは、光起電力セルにより最大電力点において放出される電圧であり、χは、導体により覆われる吸収層の面積の割合である。
【0200】
吸収層はまた、衝突するビーム15のほとんどを吸収するのに十分な厚さとする必要がある。これを行うべく、吸収層108のメートル単位で測定される厚さは、少なくとも0.02/μ
10とする必要がある。ここで、μ
10は、1/m単位で測定される10進法減衰係数である。
【0201】
ここで、
図19の安全システム31のブロック図を示す
図21を参照する。安全システム31は、当該安全システムが制御器13の統合部分でない状況において、又は当該安全システムが外部制御ユニットの中にある場合は、様々なセンサ及びサブシステムからの入力を受信して出力を制御器13に送信する。安全システム13はまた、これらの様々なセンサ及びサブシステムからの入力を時々受信することもできる。かかる入力は、ビームの波長を一次にモニタリングして当該ビームに関連付けられた安全限界を推定するのに必要な情報を与える波長センサ407のものとすることができる。これはまた、形状、M
2、対称性、極性、電力、発散、コヒーレンス、並びにビームに及び上記パラメータに関連する他の情報のようなビームの特性をモニタリングするビーム分析器(401)からの情報を受信することもできる。これはまた、通常、外部サブシステムにより測定された情報を、RFリンク402を介して受信する。送信器、受信器及び周囲エリアにおける様々なコンポーネントの温度測定を、温度センサ403によって与えることができる。これは、可視、熱、IR又はUVとなり得るカメラ404からの画像、又はビームの電力を様々な位置において測定する電力メータ406からの画像、を受信することができる。多くの場合、安全システム31に接続された一次センサを、ビーム経路又はその周囲に対して横切り又は近づく異物を求めてビームをモニタリングする侵入センサ(405)としてよい。これはまた、電流、電圧、煙、湿度及び他の環境センサのような他のセンサからの入力を受信することもできる。これらの入力を受信すると、又は予めスケジュールされた時刻に、安全システム31は、安全違反の潜在性を評価し、その評価が所定しきい値を超える場合に制御器13に通知を発する。
【0202】
ここで、単数又は複数のジンバル軸で回転するミラーにより偏向されるビームを示す
図22を参照する。ビーム15が、二次元において2軸まわりに回転するミラー332に衝突する。ビーム15は、ミラー332上にスポット333を形成し、異なる方向に偏向される。適切な回転中心及びミラー寸法を選択することの重要性が、
図23を参照することにより明らかになる。
図23において、ミラー332がここで回転されることにより、ビーム15はここで、
図22と比較して大きな角度となるように偏向される。増加した角度ゆえに、スポット333はここで、ミラー332の有効長よりも長い投影を当該ミラー表面上に形成する。その結果、ビーム15の有意な部分、すなわち333Aとして標識される部分、がミラー332まわりからあふれる。このあふれが、ビーム15の輝度を、そのパワーを低減することとエッジを切り落とすこととの双方により低減する。これにより、ほとんどの場合、遠距離場におけるビームの品質が劣化する。典型的に、ビーム直径は、ミラーに近い近接場において又は近接場の像において低下すると、遠距離場においては増加する。相対的に高い効率で作動する最小寸法のシステムを達成するには、できる限り高い輝度を維持することが重要となる。これは、システム視野内のすべての角度にわたってビーム15が受ける輝度損失を低減することによってなし得る。これは、ミラーの回転中心が、ビーム強度の重み付き平均、一定強度でのビームの断面直径、ビームが通過する楕円開口の中心のいずれかにより測定されるビームの中心に実質的に近くなるようにミラーを取り付けることによってなし得る。なお、長さの投影とは対照的に、ミラー上のビーム投影の幅は、衝突角度によっては変わらない。
【0203】
図24は、典型的なビームの強度特性の模式的な表現を示す。輪郭1は最大強度の90%線を標識し、輪郭2は最大強度線の80%を標識し、輪郭3はFWHM(半値全幅)強度線を標識し、輪郭4は1/e強度線を標識し、輪郭5は1/e
2強度線を標識し、輪郭6は1/e
4強度線を標識する。ポイント231は近似的にビームの重み付き平均ポイントにあり、ポイント232は第1輪郭の中心にあり、ポイント233は第6輪郭の中心にあり、これらはすべて、ミラーの回転中心を設置する有効なポイントである。しかしながら、かかるポイントを超えるように当該回転中心を設置するには、ジンバルミラーの高い放射輝度効率を維持する大きなミラーが必要となる。
【0204】
他のコンポーネントに対して高い放射輝度効率を維持することも重要である。ただし、レーザに追従するジンバルミラー及び第1レンズは典型的に、放射輝度効率に対しては限定的なコンポーネントである。
【0205】
図25は、レーザの速軸に直交する方向からの、レーザダイオードの模式的な側面図を示し、さらには、操作用であって速軸をほぼコリメートするのが通常のレンズ242を示す。ほとんどの場合、レンズ242は、いくつかの光学素子を含む複合レンズである。レーザ241は、ヒートシンク243に接続され、ビーム15を界面層244に放射する。界面層244は、ビーム15に関連付けられた波長に対して屈折率nを有する。nの値は、532nmでの空気界面の場合に1.000293であり、油又は光セメントの場合にはさらに高くなる。ビーム15は、少なくとも一つの方向に発散を有する。レンズ242の前面におけるビーム15のFWHM輪郭は、FWHM輪郭上の任意の2つのポイント間の最大距離として定義される直径dを有する。高い放射輝度効率を有するべく、レンズ242は、レーザ241の放射体に対して少なくとも
【数23】
の開口数NAを有する必要がある。
ここで、
dは、レンズ前面のビームのFWHM輪郭上の2つの最も遠いポイント間の、mm単位で測定されるFWHM直径であり、
BFLは、mm単位で測定されるレンズの後方焦点距離であり、
nは、レーザとレンズとの間にある界面層の屈折率である。
【0206】
小さな開口数を有するレンズが使用される場合、ビームの放射輝度は当該レンズにより低減され、システムの悪い効率、又は大きな受信器との結果になる。これらは多くの状況において不利となり得る。小さなNAを使用することはまた、レンズ保持器の加熱ももたらす。これは、2つの有害な効果を引き起こす。第一には、熱膨張してレンズがその最適位置から移動することであり、第二には、レンズに力が加わって当該レンズに歪みが生じることによりその光学的品質が低減され、その結果、ビームの放射輝度が低減される。さらに、小さなNAは、レーザに向かう反射ももたらし得る。これは、レーザモードと干渉し、当初のビームの放射輝度をさらに低減し得る。これはさらに、放射されたビームの放射輝度にとって有害となる。レンズのエッジから放射される光は、小さなNAのレンズが使用される場合、システムの他の部分、例えば、システムにおけるビームモニタ、追跡サーボ又は他の光学素子、の動作と干渉することがあり、又は、システムの他の部分の、その動作を妨害し得る過剰な加熱を引き起こすことがある。
【0207】
ここで、レーザ保護器251のブロック図を示す
図26を参照する。上述したように、安全システム31は、安全違反の潜在性を評価し、かかる潜在性がしきい値を超える場合には制御器13に通知する。制御器13はその後、レーザドライバ12に対し、ビーム15を放射するレーザとなり得るか又はビーム15を生成するべく使用される利得媒体を励起するレーザとなり得るレーザ252に供給される電力を停止又は低減するように指令することができる。電力をそのように停止することは、超高速としなければならない。供給される電力が急激に切断又は低減されると、レーザドライバ電流を搬送する導体内に負電圧が進展し(電気導体である場合)、レーザ252を損傷しかねない。レーザ252へのそのような損傷を防止するべく、レーザ保護器251がレーザドライバ12とレーザ252との間に、典型的にはレーザ252の近くに接続される。レーザ保護器251は、典型的にはダイオード、又は等価回路/コンポーネント、例えばツェナーダイオード、バリスタ、又はかかる過剰負電圧を電流導体間で迅速にドレインするべく設計された回路、を接続することにより、レーザ252を負電圧から保護する。その結果、導体間に負電圧が存在しても、電流が保護ダイオード又は等価回路を通って流れることにより、電圧の、安全レベルまでの高速な減衰が引き起こされる。レーザ保護器251はまた、過温度又は過電流が検知されたときにレーザ252へと送られる電力を減衰させることにより、レーザを過熱から又は電流波から保護するべく使用することもできる。
【0208】
当業者により認識されることだが、本発明は、特に図示され及び上述されたものに限られない。むしろ、本発明の範囲は、上述された様々な特徴のコンビネーション及びサブコンビネーション双方、並びに、上記記載を読んで当業者に想起されて先行技術には存在しないこれらの変形例及び修正例を含む。