(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6987790
(24)【登録日】2021年12月3日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】隔壁貫通孔閉鎖先端アセンブリを備えた経カテーテル弁送達システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20211220BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-561023(P2018-561023)
(86)(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公表番号】特表2019-517289(P2019-517289A)
(43)【公表日】2019年6月24日
(86)【国際出願番号】US2017035304
(87)【国際公開番号】WO2017210356
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】62/344,869
(32)【優先日】2016年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502129357
【氏名又は名称】メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン マーク
【審査官】
田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−535342(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0142691(US,A1)
【文献】
特表2012−510879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント付き人工心臓弁を埋め込むための送達デバイスであって、
遠位領域を有する支持シャフトと、
前記支持シャフトに連結されており、かつ前記ステント付き人工心臓弁を保持するように構成されている、保持アセンブリと、
前記保持アセンブリの遠位部の前記支持シャフトの前記遠位領域に取り外し可能に連結されている先端アセンブリと、を備え、
前記ステント付き人工心臓弁のインビボでの取り外しを可能にするように、及び個別の操作で、前記送達デバイスから前記先端アセンブリのインビボでの取り外しを駆動するように構成されている、
送達デバイス。
【請求項2】
前記先端アセンブリが送達状態から留置状態まで移行するように構成されており、更に、前記留置状態にある前記先端アセンブリの最大外径が、前記送達状態にある最大外径よりも大きい、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項3】
前記先端アセンブリが、前記留置状態において、組織と係合するように構成されている、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項4】
前記先端アセンブリが、前記留置状態にあり、前記送達デバイスから取り外されると、心臓の隔壁の貫通孔の上から埋め込むように構成されている、請求項2に記載の送達デバイス。
【請求項5】
前記先端アセンブリが、
近位側面、遠位側面及び空洞を画定する、ハウジングと、
前記ハウジングにスライド可能に接続されたアームアセンブリと、を含み、
前記先端アセンブリが、送達状態から留置状態まで移行するように構成されており、更に、前記送達状態が、前記空洞内に配設されている前記アームアセンブリの長さの少なくとも大部分を含み、前記留置状態が、前記空洞の外側側面の前記ハウジングから突き出た前記アームアセンブリの前記長さの少なくとも大部分を含む、
請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項6】
前記ハウジングが、前記送達状態における前記先端アセンブリの最大外径を画定し、前記アームアセンブリが、前記留置状態における前記先端アセンブリの最大外径を画定し、更に前記留置状態の前記先端アセンブリの前記最大外径が、前記送達状態の前記先端アセンブリの前記最大外径よりも大きい、請求項5に記載の送達デバイス。
【請求項7】
前記アームアセンブリが、複数のアームを含み、更に前記アームが、前記送達状態では長手方向に配置されており、更に前記アームが、前記留置状態では横方向に配置されている、請求項5に記載の送達デバイス。
【請求項8】
前記アームアセンブリが、複数のアーム及び複数の戻り部を含んでおり、更に前記戻り部の少なくとも1つが、前記アームの1つずつに取り付けられて、そこから延在している、請求項5に記載の送達デバイス。
【請求項9】
前記送達状態が、前記空洞内に配設されている前記戻り部を含み、更に前記留置状態が、組織に係合するため、前記空洞の外側側面に配置されている前記戻り部を含む、請求項8に記載の送達デバイス。
【請求項10】
前記アームアセンブリが、スカートを維持する複数のアームを含む、請求項5に記載の送達デバイス。
【請求項11】
前記先端アセンブリが、前記ハウジングにより運搬されるシールを更に含む、請求項10に記載の送達デバイス。
【請求項12】
前記先端アセンブリが、一般に、円錐形状しているハウジングを含む、請求項1に記載の送達デバイス。
【請求項13】
経中隔アプローチにより欠陥心臓弁を処置するためのシステムであって、
前記システムが、
遠位領域を有する支持シャフトと、
前記支持シャフトに連結している保持アセンブリと、
前記支持シャフトの前記遠位領域に取り外し可能に連結されている先端アセンブリと、を含む、送達デバイスと、
前記支持シャフト上で圧縮され、前記送達デバイスの装填配置にある前記保持アセンブリによって保持されている、ステント付き人工心臓弁と、を含み、
前記送達デバイスが、前記ステント付き人工心臓弁、及び前記送達デバイスから前記先端アセンブリをインビボで取り外すことが可能になるように構成されている、システム。
【請求項14】
前記送達デバイスが外側シースを含み、更に、前記送達デバイスが、前記外側シースの遠位端部が前記先端アセンブリの近位かつ前記ステント付き人工心臓弁の上にある装填配置から、前記外側シースの遠位端部が、前記ステント付き人工心臓弁の近位にある弁留置配置まで移行して、前記送達デバイスから前記人工心臓弁の留置を可能にする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記先端アセンブリが、送達状態から留置状態まで移行するように構成されている、請求項14に記載のシステムであって、前記留置状態にある前記先端アセンブリの最大外径が、前記送達状態にある前記最大外径よりも大きく、更に前記先端アセンブリが、前記装填配置と前記弁留置配置の両方において、前記送達状態にある、システム。
【請求項16】
前記先端アセンブリが、前記留置状態にあり、前記送達デバイスから取り外されると、心臓の隔壁の貫通孔を埋め込むように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記先端アセンブリが、
近位側面、遠位側面及び空洞を画定する、ハウジングと、
前記ハウジングにスライド可能に接続されたアームアセンブリと、を含み、
前記先端アセンブリが、送達状態から留置状態まで移行するように構成されており、更に、前記送達状態が、前記空洞内に配設されている前記アームアセンブリの長さの少なくとも大部分を含み、前記留置状態が、前記空洞の外側側面の前記ハウジングから突き出た前記アームアセンブリの長さの少なくとも大部分を含む、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工僧帽弁などのステント付き人工心臓弁を送達するための送達システムに関する。より詳細には、本発明は、例えば心臓の隔壁貫通孔又は穿孔を閉じるために留置可能な先端アセンブリを有する経カテーテル心臓弁送達システムに関する。
【0002】
本非仮特許出願は、その教示の全体が参照により本明細書に組み込まれている、「 Transcatheter Valve Delivery System with Septum Hole Closure Tip Assembly」と題する2016年6月2日出願の米国仮特許出願第62/344,869号の出願日の権利を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
ヒト心臓は、心臓を通る血流の経路を決定する4つの心臓弁である、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁、及び肺動脈弁を含む。僧帽弁及び三尖弁は、心房と心室との間にある房室弁であり、一方で、大動脈弁及び肺動脈弁は、心臓を出る動脈中にある半月弁である。理想的には、心臓弁の生来の尖は、弁が開口位置にあるときに互いから離れて移動し、弁が閉鎖位置にあるときに接触又は「接合」する。弁に関して生じ得る問題としては、弁が適切に開口しない狭窄、及び/又は弁が適切に閉鎖しない不全症若しくは逆流が挙げられる。狭窄及び不全症は、同一の弁内で付随して生じ得る。弁機能不全の効果は、典型的には患者にとって比較的重大な生理学的結果を有する逆流(regurgitation)又は逆流(backflow)によって変化する。
【0004】
罹患した又はそうでない場合、不全の心臓弁は、さまざまな異なるタイプの心臓弁手術を使用して修復又は交換され得る。1つの従来技術は、一般的な麻酔下で実施される心臓切開手術アプローチを伴い、その間、心臓は停止され、血流は心臓肺バイパス機械によって制御される。
【0005】
より最近では、拍動している心臓への弁補綴物のカテーテルを用いた埋め込みを容易にし、伝統的な胸骨切開及び心肺バイパスの使用を不要にすることを意図するために、低侵襲アプローチが開発されてきた。一般的には、拡張可能な人工弁は、カテーテルの周囲又はカテーテル内で圧縮され、大腿動脈などの患者の体腔内に挿入され、心臓内の所望の位置に送達される。
【0006】
カテーテルを基本とする又は経カテーテル手技と共に用いられる心臓弁補綴物は、一般的に、複数の尖を有する弁構造を支持する拡張可能なマルチレベルフレーム又はステントを含む。フレームは、経皮経管送達中に収縮され得、生来の弁又はその内部に留置されると拡張され得る。ステント付き人工心臓弁設計のタイプの1つの場合、ステントフレームは、自己拡張するように形成される。弁付きステントは、所望のサイズに圧着されて、経管送達のため、シース内でその圧縮状態で又は他の手段によって保持される。この弁付きステントからシースを撤収することにより(又は、他の取り外し操作)、ステントはより大きな直径に自己拡張し、生来の弁部位で固定化することが可能となる。より一般的には、次に、一旦人工弁が処置部位、例えば、機能不全の生来の弁内に位置付けられると、ステントフレーム構造は拡張されて、人工弁が定位置でしっかりと保持され得る。ステント付き人工弁の一例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Leonhardtらへの米国特許第5,957,949号に開示されている。別のタイプの弁ステントは、最初に拡張又は非圧着状況で供給され、次いで、カテーテルのバルーン部分の周囲で圧着又は圧縮され得る。次いで、バルーンが膨張して、人工心臓弁を拡張して留置する。
【0007】
任意の特定の経カテーテル人工心臓弁の実際の形状及び構成は、交換又は修復される弁(例えば、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁又は肺動脈弁)に少なくともある程度依存する。ステントフレームは、多くの場合、対応する生来の身体構造との所望の固定を達成するために、比較的複雑な形状を供給して、維持しなければならない(例えば、高いフープ強度及び半径方向の圧縮力に対する耐性)。組み合わせを考慮すると、これらの設計特徴は、送達妨害を生じるおそれがある。
【0008】
他の身体構造に基づいた制約は、サイズ及び/又は長さなどの経カテーテル送達システムにあり得る。例えば、ある種のアプローチ技法によってある種の弁に接近する場合、慣用的に圧縮して送達されてきた人工心臓弁の留置は、身体構造の空間的制限のために困難なことがある(例えば、経中隔アプローチにより僧帽弁に接近すると、人工弁の留置を達成する際に、送達システムを位置決めして操作するための左心房に利用可能な空間に制限があり得る)。これらの身体構造による制約は、より大きなステント付き人工弁設計に対処するのが一層、困難になり得る。
【0009】
人工心臓弁の経中隔送達における別の深刻な送達妨害は、隔壁である。隔壁からの人工心臓弁及び送達デバイスの通路を設けるために、隔壁に貫通孔が形成される。一部の状況では、この貫通孔は、隔壁に残しておくには、医師が安全と考えているよりも大きくなるおそれがあり、これらの場合では、この貫通孔は手技の終わりに閉じられなければならない。
【0010】
本発明は、関連技術に伴う問題及び制限に対処するものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の態様は、僧帽弁などの、欠陥のある生来の心臓弁にステント付き人工心臓弁を送達して留置するように構成されている送達デバイスを対象とする。本送達デバイスは、送達シースアセンブリ、支持シャフトアセンブリ及び先端アセンブリを含むことができる。本送達デバイスは、ステント付き人工心臓弁が支持シャフトアセンブリの上で圧縮されて、送達シースアセンブリのカプセル内に保持された、装填状態をもたらすように構成されている。先端アセンブリは、先端アセンブリが患者の血管構造及び隔壁から送達するよう圧縮されている送達状態、更にまた、送達デバイスが、それを介してステント付き人工心臓弁の送達中に挿入される、隔壁中の貫通孔を塞ぐための拡張した留置状態をもたらすように構成されている。ステント付き人工心臓弁が欠陥弁に埋め込まれた後、先端アセンブリが、貫通孔に隣接して置かれ、支持シャフトアセンブリから取り外される。一旦、定位置に置かれると、先端アセンブリは、送達状態から留置状態に移行することができる。留置状態では、先端アセンブリの少なくとも一端が、直径を拡張して、隔壁の穿孔又は貫通孔の直径よりも大きい直径を有するようになる。先端アセンブリを所定の位置に維持して、貫通孔を塞ぐため、各アームは、それに取り付けられた、及びそこから延在する1つ以上の戻り部(barb)を含むことができる。戻り部は、留置状態への移行後に、貫通孔の近位の組織と係合するように構成されている。一旦、所定の位置で固定されると、先端アセンブリは、送達デバイスの他の構成要素が患者から引き抜かれると、支持シャフトアセンブリからはずれて、隔壁内に残される。
【0012】
本発明の態様はまた、送達デバイスを取り除く前に、同じ送達デバイスを用いてステント付き人工心臓弁を留置した後に、送達デバイスにより隔壁における貫通孔を閉じることを含む、欠陥心臓弁(例えば、僧帽弁)を処置する方法も対象としている。方法の一例は、一般に、患者の心臓の隔壁の貫通孔を形成すること、この貫通孔から送達デバイスの遠位領域に向かわせること、送達デバイスからステント付き人工心臓弁を留置して欠陥心臓弁にステント付き人工心臓弁を埋め込むこと、及び隔壁の貫通孔において送達デバイスの先端アセンブリを埋め込んで貫通孔を塞ぐことを含む。先端アセンブリの近位の送達デバイスの残りの構成要素は、先端アセンブリから接続解除されて、患者から引き抜かれ、先端アセンブリは隔壁に埋め込まれた状態になる。本明細書において開示されているさまざまな送達デバイス及び方法は、手技時間及び複雑さを低減する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書において開示されているデバイス及び方法に有用な、例示的なステント付き人工心臓弁の側面図である。
【
図2】
図1のステント付き人工心臓弁を送達するための、例示的な送達デバイスの分解斜視図の一部である。
【
図3】
図2の組み立て後の送達デバイスの上面図である。
【
図4】隔壁から欠陥のある生来の僧帽弁(断面で示されている)にステント付き人工心臓弁(目視できない)を送達する、
図2及び
図3の送達デバイスの概略図である。
【
図5】先端アセンブリが組み立て後の第1の送達状態で示されている、
図2及び
図3の送達デバイスの例示的な先端アセンブリの1つの側面断面図である。
【
図6】
図5の先端アセンブリのアームアセンブリの斜視図である。
【
図7】一部が組み立てられた
図5の先端アセンブリの断面透視図である。
【
図8】組み立てられた第2の送達状態における、
図5及び
図7の先端アセンブリの断面透視図である。
【
図9】部分的に留置状態にある先端アセンブリを置くために、アームアセンブリが隔壁の近位方向に引き抜かれている、隔壁の貫通孔に隣接する
図5の先端アセンブリの側面断面図である。
【
図10】アームアセンブリが、留置状態で隔壁と係合するよう近位に更に引き抜かれた、
図5の先端アセンブリの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の特定の実施形態が、これより図面を参照して記載されており、同様の参照番号は、同一又は機能的に類似した要素を示す。「遠位」及び「近位」という用語は、処置を行う臨床医に対する位置又は方向に関して以下の説明で使用される。「遠位」又は「遠位に」は、臨床医から離れた位置又は臨床医から離れた方向である。「近位」及び「近位に」は、臨床医に近い位置又は臨床医に向かう方向である。埋め込まれたステント付き人工心臓弁を参照しながら本明細書において使用される場合、「遠位」及び「流出」という用語は、血流方向の下流を意味すると理解され、「近位」又は「流入」という用語は、血流方向の上流を意味すると理解される。
【0015】
本明細書において参照される場合、本明細書において議論されているさまざまなシステム、デバイス及び方法に、及び/又はそれらの一部として有用なステント付き経カテーテル人工心臓弁(これ以降、「人工弁」)は、組織尖を有するバイオ人工心臓弁、又はポリマー製、金属製若しくは組織操作された尖を有する合成心臓弁などの、幅広いさまざまな構成を担うことができ、ヒト心臓の4つの弁のいずれかを置き換えるよう、特別に構成され得る。本発明のシステム、デバイス及び方法に有用な人工弁は、一般に、生来の心臓弁(僧帽弁)の置き換えのため、又は不具合のある生体補綴物を置き換えるために使用することができる。
【0016】
一般的には、本発明の人工弁は、弁構造(組織又は合成)を維持する内腔を有するステント又はステントフレームを含み、ステントフレームは、通常の拡張状態又は配置を有し、送達デバイス内に装填するための圧縮状態又は配置に折りたたみ可能である。ステントフレームは、送達デバイスから取り外されると、自己留置又は自己拡張するよう、通常、構成されている。例えば、ステント又はステントフレームは、人工弁に所望の圧縮性及び強度をもたらすよう、互いに対して配置された、いくつかのストラット又はワイヤセグメントを含む支持構造体である。ストラット又はワイヤセグメントは、圧縮状態又は折りたたまれた状態から通常の半径方向に拡張した状態に自己移行することが可能であるように配置されている。ストラット又はワイヤセグメントは、ニッケルチタン合金(例えば、Nitinol(登録商標))などの形状記憶材料から形成され得る。ステントフレームは、単一の材料片からレーザ切断され得るか、又はいくつかの個別の構成要素から組み立てられ得る。
【0017】
上記の理解を念頭において、本発明のシステム、デバイス及び方法に有用な人工弁10の1つの単純化された非限定例が、
図1に例示されている。人工弁10は、ステント又はステントフレーム12、及びステントフレーム12内部に置かれた弁構造(図示せず)を含む。参照点として、人工弁10は、
図1の図における通常状態又は拡張状態で示されている。
図1の通常状態又は拡張状態から、ステントフレーム12は、送達の間、強制的又は拘束されて圧縮状態にされ、強制力の解除時に、
図1の自然な状態に自己拡張する。
【0018】
弁構造体(図示せず)は、さまざまな形態を採ることができ、例えば、1つ以上の生体適合性の合成物質、合成ポリマー、自己移植組織、同種移植組織、異種移植組織、又は1つ以上の他の好適な材料から形成され得る。一部の実施形態では、弁構造体は、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ及び/又は他の好適な動物組織から形成され得る。一部の実施形態では、弁構造体は、例えば、心臓弁組織、心膜及び/又は他の好適な組織から形成され得る。一部の実施形態では、弁構造体は、1つ以上の尖を含む、又はこれを形成することができる。例えば、弁構造体は、三尖ウシ心膜弁、二尖弁又は別の好適な弁の形態とすることができる。一部の構成では、弁構造体は、拡大された横方向端部領域で一緒に締め付けられて交連接合部を形成する、2つ又は3つの尖を含むことができ、取り付けられていない縁部は、弁構造体の接合縁部を形成する。尖は、次に、ステントフレーム12に取り付けられたスカートに締め付けられ得る。交連点の上側端部は、人工弁10の流入部14を表すことができ、その反対側の端部は、人工弁10の流出部16を表すことができる。
図1に示されているとおり、クラウン18及び/又は小穴20(又は他の形状)は、場合により、流入部及び流出部14、16の一方又は両方に形成することができる。更に、ステントフレーム12は、場合により、支持アーム22などの、追加の構造的構成要素を含む、又は有することができる。
【0019】
人工弁10を経皮送達するための送達デバイス40の一実施形態が、
図2及び
図3において、単純な形態で示されている。送達デバイス40は、送達シースアセンブリ42、支持シャフト又は支持シャフトアセンブリ44、ハンドルアセンブリ48、及び支持シャフトアセンブリ44に取り外し可能に接続されている先端アセンブリ50を含む。送達デバイス40のさまざまな構成要素に関する詳細は、以下に提示されている。しかし、一般的に、送達デバイス40は、
図1の人工弁10などのステント付き人工心臓弁と組み合わされて、患者の欠陥心臓弁を処置するためのシステムを形成する。送達デバイス40は、人工弁10が支持シャフトアセンブリ44の上に装填され、送達シースアセンブリ42のカプセル52内に圧縮して保持される、装填状態又は送達状態を供給する。支持シャフトアセンブリ44は、人工弁10のフレーム12内に設けられる、対応するフィーチャ部20(例えば、パドル、柱又は小穴)を選択的に収容するように構成されている、保持アセンブリ又は弁固定具46を含むことができる。送達シースアセンブリ42は、ハンドルアセンブリ48の操作によって、人工弁10の上部からカプセル52を近位に引き抜くよう操作することができ、人工弁10を自己拡張させて、支持シャフトアセンブリ44から一部、取り外すことが可能となる。カプセル52が、弁固定具54より上側の近位に撤収されると、人工弁10は、送達デバイス40から完全に取り外されて、留置され得る。
【0020】
一部の実施形態では、送達シースアセンブリ42は、近位端部及び遠位端部70、72を画定し、カプセル52及び外側シース60を含む。送達シースアセンブリ42は、カテーテルと類似し得、カプセル52及び外側シース60の少なくとも一部を介して、遠位端部72から延在する内腔66(一般に、参照される)を画定する。カプセル52は、外側シース60から遠位に延在し、一部の実施形態では、カプセル52内で圧縮されると、人工弁10の予期される拡張可能な力に公然と抵抗するのに十分なほどの剛直性を半径方向すなわち円周方向に示す、(外側シース60の剛性に比べると)一層、剛直な構築体を有する。例えば、外側シース60は、金属を編んだものにより埋包されたポリマー製チューブとすることができる一方、カプセル52は、ポリマー被覆物内に場合により埋包されたレーザカットされた金属製チューブを含む。或いは、カプセル52及び外側シース60は、一層均質な、又は一層均一な構成体(例えば、連続ポリマー製チューブ)を有することができる。それとは無関係に、カプセル52は、カプセル52内部に装填されると、所与の直径の人工弁10を圧縮して保持するよう構築されており、外側シース60は、カプセル52をハンドルアセンブリ48に接続するよう働く。外側シース60及びカプセル52は、患者の血管構造から通過するために十分に可撓性となるよう構築されているが、カプセル52の所望の軸方向の移動をもたらすのに十分な程の長手方向の剛直性を示す。言い換えると、外側シース60の近位での撤収は、カプセル52に直接、移されて、カプセル52の対応する近位での撤収を引き起こす。他の実施形態では、外側シース60は、カプセル52上に回転力又は移動を伝播するように更に構成されている。
【0021】
支持シャフト又は支持シャフトアセンブリ44は、カプセル52に対する支持シャフトアセンブリ44(及び人工弁10がその上に配設されている)を間接的に支持することを含めて、送達シースアセンブリ42を支持するために適切なさまざまな構造体を有することができる。一部の実施形態では、支持シャフトアセンブリ44は、中間シャフト又はチューブ80、及び近位シャフト又はチューブ82を含む。中間チューブ80は、可撓性ポリマー材料(例えば、PEEK)から場合により作製されており、送達シースアセンブリ42内でスライド可能なように収容されるサイズにされている。一部の実施形態では、中チューブ80は、近位チューブ82の直径よりもわずかに小さい直径を有する、可撓性ポリマーチューブ材料(例えば、PEEK)である。近位チューブ82は、金属製ハイポチューブなどのハンドルアセンブリ48を備えた丈夫なアセンブリ用に構成された、より剛直な構造体を有することができる。他の構造体もまた考えられる。例えば、他の実施形態では、中間チューブ及び近位チューブ80、82は、単一の均質チューブ又はシャフトとして一体化して形成される。
【0022】
支持シャフトアセンブリ44は、先端アセンブリ50に接続されている遠位支持シャフト又は遠位領域88を更に含む。遠位支持シャフト88は、送達シースアセンブリ42の内腔66内部にスライド可能となるよう収容されるサイズにされている。遠位支持シャフト88は、金属の編んだものにより埋包されている可撓性ポリマーチューブとすることができる。遠位支持シャフト88が、装填された圧縮済み人工弁10を支持するほど十分に構造的に一体化していることを示すかぎり、他の構造体もやはり許容される。支持シャフトアセンブリ44は、ガイドワイヤ(図示せず)などの補助構成要素をスライド可能に収容するようなサイズにされている連続内腔(図示せず)を画定することができる。
【0023】
ハンドルアセンブリ48は、ハウジング84及び1つ以上のアクチュエータ機構86(一般に参照される)を一般に含む。ハウジング84は、アクチュエータ機構86を維持し、ハンドルアセンブリ48は、他の構成要素(例えば、支持シャフトアセンブリ44)に対して送達シースアセンブリ42のスライド移動を容易にするように構成されている。ハウジング84は、ユーザによる便利な取り扱いに適するよう、任意の形状又はサイズを有することができる。
【0024】
図2及び
図3に示されており、かつ本明細書に記載されている構成要素42、44、48のさまざまな特徴は、さまざまな構造体及び/若しくは機構により変更することができるか、又は置き換えることができる。したがって、本発明は、本明細書に示されて記載されている、送達シースアセンブリ42、支持シャフトアセンブリ44又はハンドルアセンブリ48に決して限定されない。撤収可能な外側シース又はカプセルにより、支持シャフトアセンブリの上にステント付き人工心臓弁を圧縮して装填するのを一般に容易にする任意の構造が許容される。或いは、送達シースアセンブリ42は、人工弁10が特に拡張可能(例えば、拡張可能なバルーン)である場合、送達デバイス40から割愛することができる。更に、送達デバイス40は、フラッシュポートアセンブリ56、リキャプチャシース(recapture sheath)(図示せず)などの追加の構成要素又はフィーチャを場合により含むことができる。送達デバイス40はまた、人工弁10及び先端アセンブリ50の完全な留置を支援する、又は容易にする、又は制御する他の構成要素(図示せず)を場合により含むことができる。
【0025】
欠陥僧帽弁MVを修復するための僧帽弁MVにステント付き人工心臓弁10(カプセル52の下に隠れている)を送達する、装填配置にある送達デバイス40の使用を模式的に示した、
図4をここでもやはり参照する。分かるとおり、僧帽弁MVは、左心房LA及び左心室LVを分離している。送達デバイス40は、経皮進入点(例えば、セルディンガー技法)経由で、血管構造に導入されて、血管構造から左心房LAに進入した後のものが示されている。例えば、経皮進入点は、大腿静脈に形成されてもよい。その後、ガイドワイヤ(図示せず)を循環系から進入させて、最終的に心臓に到着する。このガイドワイヤは右心房RAに向かい、右心房RAを横切り、経中隔ニードル又は既に存在している貫通孔の手助けで、心房隔壁Wに貫通孔Hが空けられるか、そうでない場合、貫通孔Hを作製し、これにより左心房LAに進入する。一旦、ガイドワイヤが位置決めされると、管腔内進入口、及び心房隔壁貫通孔Hが拡張されて、ガイドカテーテル(図示せず)及び/又は送達デバイス40の遠位端部64の左心房LAへの進入が可能になる。人工弁10の送達中に、アーム102は、支持シャフトアセンブリ44に長手方向に配置されて、一般に平行に折りたたまれ、先端アセンブリ50の最大外径D1が縮小される。送達状態において先端アセンブリ50の最大外径D1を最小化することは、先端アセンブリ50が、
図4に一般に図示されているとおり、隔壁Wを通過して人工弁10に送達されることを必要とするので、経中隔送達にとって重要である。
【0026】
構成要素42、44、48の例示的な手技及び実施形態の上記の一般的な説明を考慮すると、先端アセンブリ50の一実施形態の一部が
図5に示されている。
図5は、組み立て後の折りたたまれた第1の送達状態にある、先端アセンブリ50を一般に例示している。先端アセンブリ50は、遠位方向に先端が細い外側表面92を有するハウジング90を含む。ハウジング90は、近位端部及び遠位端部94a、94b、空洞96及び任意選択のシール(例えば、o−リング)114を更に含む。空洞96の内部に、ハウジング90の遠位端部94bから延在して、近位端部94aの近位で終わる、少なくとも1つのガイドレール116が存在する。各ガイドレール116は、以下に更に議論されるとおり、アームアセンブリ98とハウジング90との間の連結を維持するため、ハウジング90の近位端部94aにおいて、一般にT形状、又はそうでない場合、直径の拡大された端部118を有する。
【0027】
図6に最良に示されているとおり、アームアセンブリ98は、少なくとも1つの凹部120を有するリング100、リング100の周囲に空間が設けられて、このリング100から半径方向に延在する複数のアーム102、及び両アーム102の間に延在するスカート106を含む。一部の実施形態では、例示されているものなどの、アーム102はそれぞれ、開口部108であって、これからスカート106が織り込まれて支持されている、開口部108を有する。それぞれのガイドレール116の各々の端部118は、リング100のそれぞれの凹部120内に置かれており、端部118がリング100の遠位部の移動が凹部120を通過するのを防止するようなサイズにされているので、上記の端部118はリング100をガイドレール116上に一般に維持する。ガイドレール116は、アーム102と連絡して、アームアセンブリ98が、回転すること及び遠位支持シャフト88から離れることを防止するように構成されている。アーム102は、形状が設定された記憶を有するリング100に枢動可能に接続されており、その結果、アーム102は、
図5及び
図8の折りたたまれた送達状態から部分的な留置状態(
図9)に、次に、一旦、アーム102を折りたたむ強制力が除かれると、留置状態又は拡張状態(
図10)に、自動的に移行する。
【0028】
図7は、一部が組み立てられた先端アセンブリ50を例示している。送達デバイス40を構成する方法の1つは、リング100内の第1のねじ穴110に対応する、遠位支持シャフト88上に複数のねじ山68を設けることである。遠位シャフトのねじ山68は、第1のねじ穴110にねじ止めされ、アームアセンブリ98を遠位支持シャフト88に固定する。次に、アームアセンブリ98は、リング100の第1のねじ穴110に同軸で一列に並べられているハウジング90の第2のねじ穴112に向かって、ハウジング90内で遠位に押し込まれる(
図7で分かるとおり)。このように、遠位支持シャフト88は、
図8に一般に図示されているとおり、送達状態では、リング100とハウジング90の両方と同時に、ねじ止めして接続され得る(例えば、遠位シャフトのねじ山68の約20%は、リング100の第1のねじ穴110と接続され得、同時に、遠位シャフトのねじ山68の約80%は、ハウジング90の第2のねじ穴112と係合され得る)。先端アセンブリ50を留置するため、遠位支持シャフト88は、リング100から遠ざかる遠位方向に更にねじ止めされ、その結果、遠位シャフトのねじ穴68の全体(すなわち100%)が、
図5に示されているとおり、第2のねじ穴112と係合する。この作用によりアームアセンブリ98は自由になり、その結果、プルワイヤなど(図示せず)が、
図9〜10の位置の近位にアームアセンブリ98を引っ張ることができる一方、遠位支持シャフト88は、ハウジング90の位置を維持する。一旦、先端アセンブリ50が、完全に留置されて、隔壁Wと係合すると、遠位支持シャフト88は近位でねじ止めされて、先端アセンブリ50を通じて、遠位支持シャフト88から先端アセンブリ50が取り外される。送達デバイス40の残りの構成要素が、患者から引き抜かれると、先端アセンブリ50は、隔壁Wに埋め込まれた状態になる。
【0029】
隔壁Wに隣接する先端アセンブリ50に係合させて維持するため、1つ以上のアーム102は、戻り部104を含む。送達状態では、戻り部104はそれぞれ、ハウジング84の空洞96内に配設されており、留置状態では、戻り部104はそれぞれ、隔壁W、又は塞がれることになる貫通孔Hの近位の他の組織を係合するよう、空洞96の外側側面に置かれる。一部の実施形態では、1つ以上の戻り部104は、先端がとがっているか、円錐形状をしている。例示されている実施形態では、アームアセンブリ98は6つのアーム102を有するが、本発明は、アーム102のある数に限定するものではない。
【0030】
先端アセンブリ50は、他の方法で、遠位支持シャフト88に取り外し可能に接続され得ることもやはり想起される。例えば、先端アセンブリ50は、アーム102を留置するため、及び組織又は隔壁Wに戻り部104を引き寄せるために必要な力よりも大きな破壊力を有する接続部材(図示せず)を備えた遠位支持シャフト88に取り外し可能に接続され得る。一旦、戻り部104が、組織と係合して貫通孔を塞ぐと、力は、送達デバイス40の残りの部分から先端アセンブリ50を接続解除する接続部材に連携することができる。或いは、1つ以上の縫合糸(図示せず)が使用されて、先端アセンブリ50を接続する、及び遠位支持シャフト88から先端アセンブリ50を接続解除することができる。縫合糸は、例えば、送達デバイス40の残りの部分から、先端アセンブリ50を取り外すよう、切断され得る。
【0031】
一旦、人工弁10が、標的部位(例えば、僧帽弁MV)に留置されると、
図9に一般に示されているとおり、送達デバイス40は、送達状態にある間、後戻りさせて、貫通孔Hに隣接する左心房LAに、先端アセンブリ50を置く。送達デバイス40が、送達シースアセンブリ42を含む場合、送達シースアセンブリ42を、ハンドルアセンブリ48などを介してわずかに後戻りさせて、弁留置配置に送達デバイス40を置く。装填配置及び弁留置配置のどちらにおいても、先端アセンブリ50は送達状態にある。次に、支持シャフトアセンブリ44は、ハンドルアセンブリ48などにより前に進められ、プルワイヤ(図示せず)が駆動して、空洞96の外側側面のリング100を引っ張る。一旦、空洞96の境界から解放されると、アーム102及びスカート106は、自己復元し、リング100の中心軸Aから遠ざかるように枢動し、外側方向に拡張して部分的な留置状態になる。プルワイヤは、ハンドルアセンブリ48などによって近位に張力で更に引っ張られ、その結果、アーム102上の戻り部104は、
図10に一般に示されているとおり、隔壁Wにおいて、先端アセンブリ50を埋め込むための開口部の近位の隔壁Wと係合する。次に、支持シャフトアセンブリ44(遠位支持シャフト88を含む)は、最終的に撤収するために、ねじ止めした先端68から、及びねじ止めされたリング100に撤収されて、戻り部104が完全に据え付けられたことを確認する。この留置状態では、アーム102は、横方向に配置され、留置状態における先端アセンブリ50の最大外径D2は、隔壁Wにおける貫通孔Hの直径D3よりも大きくなり、その結果、先端アセンブリ50は、貫通孔Hを塞ぐことが可能となる。次に、例えば、上で概略した方法により、支持シャフトアセンブリ44は、リング100から取り外されて、先端アセンブリ50から遠位支持シャフト88を完全に接続解除する。
【0032】
本発明の送達デバイス、システム及び方法は、これまでの設計よりも著しい改善を実現する。人工心臓弁の留置後に、いかなる隔壁貫通孔を閉じるために使用され得る、先端アセンブリを有する送達デバイスを設けることにより、手技時間及び複雑さが低減される。
【0033】
本発明は、好ましい実施形態を参照しながら記載されているが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の変更を行うことができることを認識していよう。例えば、本発明のデバイス及びシステムは、ステント付き人工心臓弁を送達するために有用なものと記載されているが、いくつかの他の埋め込み可能なデバイスを使用することができる。