(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主ロープを介して乗りかごに連結されると共に、昇降路内に上下方向に設けられたガイドレールに沿って案内される釣合いおもりを、前記ガイドレールに取り付ける際に載置するエレベーターの釣合いおもり受治具において、
前記ガイドレールに対してボルト付きのレールクリップを介して締結固定される第1ベース体および第2ベース体と、前記第1ベース体に固着される第1補強板と、前記第2ベース体に固着される第2補強板と、前記第1ベース体と前記第2ベース体との間を橋絡可能な連結レバーとを備え、
前記レールクリップは前記第1ベース体と前記第2ベース体に対して水平方向に沿った複数の異なる装着位置に装着可能であると共に、前記第1補強板と前記第2補強板は上下方向に延びるガイド溝を有しており、
前記第2ベース体の所定位置に装着された前記レールクリップの前記ボルトを前記第1ベース体に固着された前記第1補強板の前記ガイド溝に上下方向から挿入することにより、前記第1ベース体と前記第2ベース体が水平方向に位置決めされた状態で前記ガイドレールに取り付けられることを特徴とするエレベーターの釣合いおもり受治具。
主ロープを介して乗りかごに連結される釣合いおもりが昇降路内に設けられたガイドレールに沿って上下方向に案内されるエレベーターに適用され、前記主ロープの交換作業時に、前記釣合いおもりを載置する釣合いおもり受治具を前記ガイドレールに取り付ける釣合いおもり受治具の取り付け方法であって、
上下方向に延びるガイド溝を有している第1補強板が固着された第1ベース体を準備し、この第1ベース体をボルト付きのレールクリップを介して前記ガイドレールに締結固定する工程と、
上下方向に延びるガイド溝を有している第2補強板が固着された第2ベース体を準備し、この第2ベース体を前記第1ベース体の上方位置から下方へ移動することにより、前記第2ベース体に設けられたレールクリップのボルトを前記第1ベース体に固着された前記第1補強板の前記ガイド溝に上下方向から挿入する工程と、
前記ガイドレールの幅寸法に応じて前記第1ベース体に対する前記ボルト付きのレールクリップの水平方向に沿った装着位置を可変調整する工程と、
前記ガイドレールの幅寸法に応じて前記第2ベース体に対する前記ボルト付きのレールクリップの水平方向に沿った装着位置を可変調整する工程と、
前記ガイドレールに締結固定された前記第1ベース体と前記第2ベース体との間に、前記釣合いおもりの通過経路内に位置する連結レバーを架設する工程と、を含むことを特徴とする釣合いおもり受治具の取り付け方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、
図1は本発明の実施形態に係る釣合いおもり受治具が適用されるエレベーターの主要部を示す概略構成図である。
【0015】
図1に示すエレベーターは、一般的な2:1ローピング方式の機械室レスエレベーターである。このエレベーターは、建物に設置された昇降路1内において、主ロープ5を介して接続された乗りかご2と釣合いおもり3が巻上機4の駆動力によって昇降移動するものである。昇降路1内の上部には頂上ビーム6が設置されており、頂上ビーム6には2つの頂部プーリ8,9が取り付けられている。巻上機4は昇降路1内の下部位置に設置されており、その駆動は図示せぬ制御装置によって制御されるようになっている。主ロープ5は、頂上ビーム6に固定された一端部5aから乗りかご2の下部を通り、一方の頂部プーリ8を経由して巻上機4に巻回され、巻上機4から他方の頂部プーリ9を経由して釣合いおもり3の上部を通り、その他端部5bが頂上ビーム6に固定されている。なお、以下の説明において、上下方向とは昇降路1内の鉛直方向のことであり、水平方向とは前記上下方向に直交する方向のことである。
【0016】
図2は、
図1に示す機械室レスエレベーターにおける主ロープ5の交換作業を説明する概念図である。釣合いおもり3は互いに向き合って離間する2本のガイドレール(
図1,2では図示省略)に沿って上下方向に案内されるようになっており、主ロープ5の交換作業を実施する場合、まず、2本のガイドレールの同一高さ位置にそれぞれ釣合いおもり受治具10を取り付けた後、これら釣合いおもり受治具10に釣合いおもり3を載置する。
【0017】
この状態で最上階の乗り場に設置されたハッチドア11を開いて開口部を形成し、その開口部から挿入した一対の滑車12a,12bを昇降路1内の所定位置に取り付けた後、頂上ビーム6から主ロープ5の両端部5a,5bを取り外し、これら主ロープ5の両端部5a,5bを滑車12a,12bを経由させて乗り場に引き出す。そして、主ロープ5の一方の端部(図示の例では端部5a)と新品の主ロープ13とをロープ繋ぎ部14を介して連結した後、主ロープ5の他方の端部5bを引っ張ることで主ロープの交換を行い、最後に交換した主ロープ13の両端部を頂上ビーム6に固定すれば良い。ここで、釣合いおもり3は昇降路壁に近接した配置となる設計が多いため、2本のガイドレールに対する釣合いおもり受治具10の取り付けは狭いスペースに適応する必要がある。以下、釣合いおもり受治具10の具体的な構成と取付手順について、
図3〜
図17を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図3は実施形態に係る釣合いおもり受治具10をガイドレール15に設置した状態を示す斜視図、
図4は釣合いおもり受治具10の設置状態を示す正面図、
図5は釣合いおもり受治具10の設置状態を示す側面図、
図6は釣合いおもり受治具10の設置状態を示す背面図、
図7は
図3のA−A線に沿う断面図、
図8は実施形態に係る釣合いおもり受治具の構成部材を示す正面図、
図9は釣合いおもり受治具の構成部材を正面側から見た分解斜視図、
図10は釣合いおもり受治具の構成部材を背面側から見た分解斜視図、
図11は
図6のB−B線に沿う断面図である。
【0019】
ガイドレール15は、水平方向に沿った断面形状がT字状に形成された鋼材であり、平板状の基部15aと、上下方向に延びるレール部15bとを有している。前述したように、釣合いおもり3は2本のガイドレール15に沿って上下方向に案内されるが、これら両ガイドレール15は同一構成であるため、以下の説明では、一方のガイドレール15に対する釣合いおもり受治具10の取り付け方法について説明し、他方のガイドレール15についての説明は省略する。
【0020】
本実施形態に係る釣合いおもり受治具10は、分離可能な第1ベース体16および第2ベース体17と、第1補強板18および第2補強板19と、連結レバー20等を含んで構成されている。
【0021】
第1ベース体16は金属板をL字状に折曲形成したものであり、互いに直交する支持板16aと背面板16bとを有している。背面板16bの上部は鉤状に切り欠かれており、この切り欠きの底部は受け部16cとなっている。背面板16bには、水平方向に延びる長孔16dが上下方向に所定間隔を存して複数(本実施形態では3つ)設けられており、これら長孔16dにレールクリップ22を貫通するボルト21がそれぞれ挿通されるようになっている。ここで、長孔16dの短軸方向の寸法はボルト21の軸径とほぼ同じであるが、長孔16dの長軸方向の寸法はボルト21の軸径よりも十分に長くなっており、長孔16dに対するボルト21の挿通位置を変更することにより、レールクリップ22を水平方向の異なる複数位置で背面板16bに装着できるようになっている。詳細については後述するが、背面板16bをガイドレール15の基部15aの背面側に配置した状態で、レールクリップ22と背面板16bに挿通したボルト21をナット23に締め付けることにより、第1ベース体16がガイドレール15に締結固定される。
【0022】
第1ベース体16の支持板16aの内側面には、一対の保持ベース40,41が並列配置されており、一方の保持ベース40にはレールクリップ22と同数の第1規制片40aが取り付けられ、他方の保持ベース41にもレールクリップ22と同数の第2規制片41aが取り付けられている。第1規制片40aは保持ベース41を乗り越えて第2規制片41aと上下方向で対向する位置まで延びており、保持ベース40,41には、上下方向で対向する一対の規制片40a,41aを一組とする三組の回り止め部材が設けられている。そして、これら回り止め部材(規制片40a,41a)が対応するレールクリップ22の回転を拘束することにより、ボルト21の締結時にレールクリップ22が供回りしてしまうことを防止している。保持ベース40,41には上下方向に長い調整孔40b,41bが設けられており、スペーサー32を介してボルト31を調整孔40b,41bに挿通して支持板16aに締結することにより、一方の保持ベース40に設けられた規制片40aと他方の保持ベース41に設けられた規制片41aとの上下方向の対向間距離が変更可能となっている。
【0023】
また、支持板16aの上部先端側には凹部16eが形成されており、この凹部16eに連結レバー20の一端部が挿入される。さらに、支持板16aの上部外側面にはL字状の保持板25が締結具を用いて固着されており、この保持板25に連結レバー20の一端部がボルト26を用いて固定されている。連結レバー20はボルト26を支点として回転可能な構造となっており、連結レバー20の他端部は第2ベース体17に形成された後述する凹部17eに挿入可能となっている。これにより連結レバー20は、第1ベース体16の凹部16eと第2ベース体17の凹部17eに水平に設置されて釣合いおもり3を載置可能とする第1の姿勢と、ボルト26を支点として第2ベース体17の凹部17eから引き上げるように回転させ、第1ベース体16の外部側に上下方向に設置されて釣合いおもり3を通過可能とする第2の姿勢とを有する。
【0024】
第1補強板18は第1ベース体16の背面板16bに締結具を用いて固着されており、この第1補強板18にはガイド溝18aと逃げ孔18bが設けられている。ガイド溝18aは上端を開放して上下方向に延びるスリット溝となっており、スリット溝の途中と底部の2箇所に水平方向へ延びる切り欠き部18cが形成されている。逃げ孔18bは水平方向に延びる横孔形状となっており、逃げ孔18bは背面板16bに設けられた3つの長孔16dのうち、下方側2つの長孔16dと重なる位置にそれぞれ形成されている。
【0025】
第1補強板18の下部にL字状に屈曲するブラケット35が締結具を用いて固着されており、このブラケット35には水平方向に離間した2位置に第1挿入孔35aと第2挿入孔35bが設けられている。これら第1挿入孔35aと第2挿入孔35bに対して脱落防止ピン36が挿入・保持されるようになっており、後述するように、第1ベース体16をガイドレール15に取り付ける際に、脱落防止ピン36がレールクリップ22と反対側に位置する基部15aの端部と当接することにより、第1ベース体16の回転が抑止されてガイドレール15からの脱落が防止されるようになっている。なお、第1補強板18の上部はボルト37を用いて第2ベース体17に締結されており、詳細については後述するが、このボルト37には落下防止対策が講じられている。
【0026】
第2ベース体17は金属板をL字状に折曲形成したものであり、互いに直交する支持板17aと背面板17bとを有している。背面板17bの下部は鉤状に切り欠かれており、この切り欠きの上部は受け部17cとなっている。背面板17bには、水平方向に延びる長孔17dが上下方向に所定間隔を存して複数(本実施形態では3つ)設けられており、これら長孔17dにレールクリップ28を貫通するボルト27がそれぞれ挿通されるようになっている。長孔17dの短軸方向の寸法はボルト27の軸径とほぼ同じであるが、長孔17dの長軸方向の寸法はボルト27の軸径よりも十分に長くなっており、長孔17dに対するボルト27の挿通位置を変更することにより、レールクリップ28を水平方向の異なる複数位置で背面板17bに装着できるようになっている。詳細については後述するが、背面板17bをガイドレール15の基部15aの背面側に配置した状態で、レールクリップ28と背面板17bに挿通したボルト27をナット29に締め付けることにより、第2ベース体17がガイドレール15に締結固定される。
【0027】
第2ベース体17の支持板17aの内側面には、一対の保持ベース42,43が並列配置されており、一方の保持ベース42にはレールクリップ28と同数の第1規制片42aが取り付けられ、他方の保持ベース43にはレールクリップ28と同数の第2規制片43aが取り付けられている。第1規制片42aは保持ベース43を乗り越えて第2規制片43aと上下方向で対向する位置まで延びており、保持ベース42,43には、上下方向で対向する一対の規制片42a,43aを一組とする三組の回り止め部材が設けられている。そして、これら回り止め部材(規制片42a,43a)が対応するレールクリップ28の回転を拘束することにより、ボルト27の締結時にレールクリップ28が供回りしてしまうことを防止している。保持ベース42,43には上下方向に長い調整孔42b,43bが設けられており、スペーサー33を介してボルト34を調整孔42b,43bに挿通して支持板17aに締結することにより、一方の保持ベース42に設けられた規制片42aと他方の保持ベース43に設けられた規制片43aとの上下方向の対向間距離を変更可能としている。
【0028】
また、支持板17aの上部先端側には凹部17eが形成されており、前述したように、この凹部17eに連結レバー20の他端部が挿入される。さらに、支持板17aのレールクリップ28と対向する位置に3つの透孔17fが形成されており、各透孔17fを透して対応するレールクリップ28の締結状態を目視可能となっている(
図5参照)。なお、第1ベース体16の支持板16aにも同様の透孔が形成されており、各透孔を透して対応するレールクリップ22の締結状態を目視可能となっている。
【0029】
第2補強板19は第2ベース体17の背面板17bにボルト38を用いて固着されており、この第2補強板19にはガイド溝19aと逃げ溝19bが2つずつ形成されている。これらガイド溝19aと逃げ溝19bは第2補強板19の左右両端側に形成されており、いずれも下端を開放して上下方向に延びるスリット溝となっている。前述したように、ボルト27付のレールクリップ28は水平方向の異なる複数位置で背面板17bに装着できるようになっており、このレールクリップ28の装着位置に応じてガイド溝19aと逃げ溝19bとのいずれか一方を選択することにより、第2補強板19はガイドレール15の幅寸法に応じた2通りの形態で背面板17bに固定されるようになっている。これにより第2補強板19は、ガイド溝19aにレールクリップ22,28のボルト21,27が挿入される第1の形態と、逃げ溝19bにレールクリップ22,28のボルト21,27が挿入される第2の形態と、のいずれか一方の形態で背面板17bに固定することができる。
【0030】
第2補強板19はボルト38を用いて第2ベース体17の背面板17bに固着されており、このボルト38にも落下防止対策が講じられている。すなわち、第1補強板18と第2補強板19を第2ベース体17の背面板17bに締結する作業は、ガイドレール15への組み付け中に実施する必要があり、釣合いおもり受治具10は昇降路1の高所での仕様も想定しているため、締結具であるボルト37とボルト38に対して
図11に示すような落下防止対対策が施されている。
【0031】
図11に示すように、ボルト37とボルト38はねじ部が首下より太い段付き構造となっており、落下防止プレート39に設けられた締結孔の直径をねじ部の直径以下かつ首下の直径以上とすることにより、ボルト37,38が落下防止プレート39から完全に引き抜けない構造となっている。落下防止プレート39はねじ39aを用いて第1補強板18と第2補強板19に支持されており、落下防止プレート39に設けられたねじ挿入孔の直径とねじ39aの直径との差分だけ落下防止プレート39をずらすことが可能となる。これにより、ボルト37,38を背面板17bの対応するねじ孔に挿入する際に微調整が利き、これらねじ孔にスムーズに締結することが可能となっている。
【0032】
次に、上記のごとく構成された釣合いおもり受治具10を、幅寸法の異なる2種類のガイドレール15に設置する手順(取り付け方法)について説明する。
【0033】
まず、
図12〜
図14に基づいて、幅寸法W1が狭いガイドレール15に対する釣合いおもり受治具10の取付手順を説明すると、
図12に示すように、予め第1ベース体16と第1補強板18を締結具を用いて一体化しておくと共に、第2ベース体17と第2補強板19は一体化せずに分離しておく。その際、第2ベース体17側のレールクリップ28については、相対向する第1規制片42aと第2規制片43aとの間隔が最小となるように、一対の保持ベース42,43の上下方向の相対位置を調整してボルト34で固定しておく。これにより、回り止め部材を構成する第1および第2規制片42a,43aが対応するレールクリップ28の一側部(図示右側部)に当接し、背面板17b上でレールクリップ28は支持板17aから離れた装着位置に規制される。
【0034】
また、
図13に示すように、第1ベース体16側のレールクリップ22については、相対向する第1規制片40aと第2規制片41aとの間隔が最小となるように、一対の保持ベース40,41の上下方向の相対位置を調整してボルト31で固定しておく。これにより、回り止め部材を構成する第1および第2規制片40a,41aが対応するレールクリップ22の一側部(図示左側部)に当接し、背面板16b上でレールクリップ22は支持板16aから離れた装着位置に規制される。
【0035】
この状態で、第1ベース体16の背面板16bと第1補強板18をガイドレール15の基部15aの背面側に配置し、レールクリップ22と背面板16bの長孔16dおよび第1補強板18の逃げ孔18bとに挿通したボルト21を基部15aの裏側でナット23に締め付けることにより、第1ベース体16をレールクリップ22によってガイドレール15の所定位置に締結固定する。かかるボルト21の締結時に、回り止め部材(規制片40a,41a)が対応するレールクリップ22の一側部に当接しているため、ボルト21の締結によってレールクリップ22が供回りしてしまうことを防止できる。また、その際に、脱落防止ピン36をブラケット35の挿入孔35aに挿入しておくと、脱落防止ピン36がレールクリップ22と反対側に位置するガイドレール15の基部15a端部に当接するため、脱落防止ピン36を支点とした第1ベース体16の回転モーメントにより、第1ベース体16がガイドレール15から脱落することを防止できる。なお、最上段のレールクリップ22についてはボルト21を緩めにしておき、当該ボルト21とナット23との間に隙間を確保しておく。
【0036】
このように第1ベース体16をガイドレール15の基部15aの一側部(図示左側部)に締結固定した後、第2ベース体17の背面板17bをガイドレール15の基部15aの他側部(図示右側部)から背面側に挿入する。そして、第2ベース体17に装着された最下段に位置するレールクリップ28のボルト27の真下に第1補強板18のガイド溝18aを位置させ、この状態で第2ベース体17を下方へ移動すると、第2ベース体17のボルト27が第1補強板18のガイド溝18a内を下方へスライドしていき、第2ベース体17の受け部17cが第1ベース体16の受け部16cに当接する。このとき、第2ベース体17の重量によってボルト27が変形してしまうことを防止するために、ボルト27がガイド溝18aの下端(底部)に当接しない上方位置で停止するように位置設定されている。
【0037】
これにより、
図14に示すように、ガイドレール15を挟んで同じ高さ位置に第1ベース体16と第2ベース体17が上下方向に位置決めされた状態で組み付けられる。しかる後、両受け部16c,17cをガイド面として第2ベース体17をガイドレール15の基部15a側へ押し込み、ガイド溝18aに挿入したボルト27を切り欠き部18cの端部まで水平方向へスライドさせると、第2ベース体17の背面板17bが第1ベース体16の背面板16bに接触することにより、第1ベース体16と第2ベース体17の水平方向の位置決めを行うことができる。この時点で第1ベース体16側のレールクリップ22と第2ベース体17側のレールクリップ28とが水平方向の最小間隔で対向することになり、レールクリップ22のボルト21とレールクリップ28のボルト27との間隔が第2補強板19に設けられた一対のガイド溝19aの間隔と同じになる。
【0038】
次いで、第2補強板19を第2ベース体17の上方から組み込んで下方へ移動すると、第2補強板19の一方側(図示右側)のガイド溝19aが第2ベース体17に装着された最上段のレールクリップ28のボルト27に沿って下方へスライドすると共に、第2補強板19の他方側(図示左側)のガイド溝19aが第1ベース体16に装着された最上段のレールクリップ22のボルト21に沿って下方へスライドする。これにより第2補強板19は、ガイド溝19aにレールクリップ22,28のボルト21,27が挿入される第1の形態で第2ベース体17に組み込まれる。
【0039】
しかる後、第1補強板18と第2補強板19をそれぞれボルト37,38を用いて第2ベース体17の背面板17bに締結(
図11参照)すると共に、レールクリップ28と背面板17bの長孔17dに挿通したボルト27を基部15aの裏側でナット29に締め付けることで、第2ベース体17を各レールクリップ28によってガイドレール15の基部15aの右側部に強固に締結する。また、これに前後して、緩めておいたボルト21をナット23に締め付けることにより、第1ベース体16をガイドレール15の基部15aの左側部に強固に固定する。
【0040】
最後に、第1ベース体16の凹部16eと第2ベース体17の凹部17eに連結レバー20の両端部を挿入し、この連結レバー20をボルト26を用いて保持板25に固定することにより、釣合いおもり受治具10を幅寸法W1の狭いガイドレール15に設置することができる。その際、第1ベース体16の支持板16aと第2ベース体17の支持板17aとの間に釣合いおもり受治具10の幅寸法よりも大きな幅寸法Wが確保されるため、連結レバー20をボルト26を支点に回転させて釣合いおもり受治具10の外部側に退避させれば、釣合いおもり受治具10をガイドレール15に設置中であっても、釣合いおもり3を上下方向に昇降させることが可能となる。
【0041】
次に、
図15〜
図17に基づいて、幅寸法W2が広いガイドレール15に対する釣合いおもり受治具10の取付手順を説明する。
【0042】
この場合は、
図15に示すように、予め第1ベース体16と第1補強板18を締結具を用いて一体化しておくと共に、第2ベース体17と第2補強板19も締結具(ボルト38)を用いて一体化しておく。その際、第2ベース体17側のレールクリップ28は支持板17aに近接した装着位置に移動しておき、最上段のボルト27を第2補強板19の逃げ溝19bに挿通しておく。また、回り止め部材である第1および第2規制片42a,43aの対向間隔が最大となるように、一対の保持ベース42,43の上下方向の相対位置を調整してボルト34で固定し、第1および第2規制片42a,43aが対応するレールクリップ28を上下方向から挟持するようにしておく。すなわち、第2補強板19は、逃げ溝19bにレールクリップ22,28のボルト21,27を挿入させる第2の形態となるように、第2ベース体17に仮固定しておく。
【0043】
また、
図16に示すように、第1ベース体16側のレールクリップ22も支持板16aに近接した装着位置に移動しておき、回り止め部材である第1および第2規制片40a,41aが対応するレールクリップ22を上下方向から挟持するように、一対の保持ベース40,41の上下方向の相対位置を調整してボルト31で固定しておく。
【0044】
この状態で、第1ベース体16の背面板16bと第1補強板18をガイドレール15の基部15aの背面側に配置し、レールクリップ22と背面板16bの長孔16dおよび第1補強板18の逃げ孔18bに挿通したボルト21を基部15aの裏側でナット23に締め付けることにより、第1ベース体16をレールクリップ22によってガイドレール15の所定位置に締結固定する。かかるボルト21の締結時に、回り止め部材(規制片40a,41a)が対応するレールクリップ22の上下両端部に対向しているため、ボルト21の締結によってレールクリップ22が供回りしてしまうことを防止できる。また、その際に、脱落防止ピン36をブラケット35の挿入孔35bに挿入しておけば、脱落防止ピン36がガイドレール15の基部15a端部に当接して第1ベース体16の回転を抑止するため、第1ベース体16がガイドレール15から脱落することを防止できる。なお、最上段のレールクリップ22についてはボルト21を緩めにしておき、当該ボルト21とナット23との間に隙間を確保しておく。
【0045】
このように第1ベース体16をガイドレール15の基部15aの一側部に固定した後、第2ベース体17の背面板17bと第2補強板19をガイドレール15の基部15aの他側部から背面側に挿入し、第1ベース体16に装着された最上段のレールクリップ22のボルト21の真上に第2補強板19の逃げ溝19bを位置させると共に、第2ベース体17に装着された最下段のレールクリップ28のボルト27の真下に第1補強板18のガイド溝18aを位置させる。
【0046】
この状態で第2ベース体17を下方へ移動すると、第2補強板19の逃げ溝19bがレールクリップ22のボルト21に沿って下方へスライドすると共に、第2ベース体17のボルト27が第1補強板18のガイド溝18a内を下方へスライドしていき、第2ベース体17の受け部17cが第1ベース体16の受け部16cに当接する。このときも、ボルト27がガイド溝18aの下端よりも上方位置にあり、ボルト21がガイド溝19aの上端に当接しない位置設定となっているため、第2ベース体17の重量によってボルト21,27が変形しないように配慮されている。
【0047】
これにより、
図17に示すように、ガイドレール15を挟んで同じ高さ位置に第1ベース体16と第2ベース体17が上下方向に位置決めされると共に、これら第1ベース体16と第2ベース体17が水平方向にも位置決めされた状態で組み付けられる。しかる後、レールクリップ28と背面板17bに挿通したボルト27を基部15aの裏側でナット29に締め付けることで、第2ベース体17を各レールクリップ28によってガイドレール15の基部15aの右側部に強固に締結し、これに前後して、緩めておいたボルト21をナット23に締め付けることにより、第1ベース体16をガイドレール15の基部15aの左側部に強固に固定する。
【0048】
最後に、第1ベース体16の凹部16eと第2ベース体17の凹部17eに連結レバー20の両端部を挿入し、この連結レバー20をボルト26を用いて保持板25に固定することにより、釣合いおもり受治具10を幅寸法W2の広いガイドレール15に設置することができる。この場合も、第1ベース体16の支持板16aと第2ベース体17の支持板17aとの間に釣合いおもり受治具10の幅寸法よりも大きな幅寸法Wが確保されるため、連結レバー20をボルト26を支点に回転させて釣合いおもり受治具10の外部側に退避させれば、釣合いおもり受治具10をガイドレール15に設置中であっても、釣合いおもり3を上下方向に昇降させることが可能となる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10は、ガイドレール15に対してボルト21付きのレールクリップ22を介して締結固定される第1ベース体16と、ガイドレール15に対してボルト27付きのレールクリップ28を介して締結固定される第2ベース体17と、これら第1ベース体16と第2ベース体17との間を橋絡可能な連結レバー20とを備えると共に、第1ベース体16と第2ベース体17にそれぞれ上下方向に延びるガイド溝18a、19aおよび逃げ溝19bが設けられている。そして、第1ベース体16に装着されたレールクリップ22のボルト21を第2ベース体17のガイド溝19aまたは逃げ溝19bに上下方向から挿入し、第2ベース体17に装着されたレールクリップ28のボルト27を第1ベース体16のガイド溝18aに上下方向から挿入することにより、第1ベース体16と第2ベース体17が上下方向と水平方向に位置決めされた状態でガイドレール15に締結固定されるため、スペースの狭いガイドレール15に対しても釣合いおもり受治具10を作業者一人で簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0050】
しかも、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10では、第1ベース体16と第2ベース体17にそれぞれ水平方向に延びる長孔16d,17dが設けられており、これら長孔16d,17dに対するボルト21,27の挿通位置に応じてレールクリップ22,28の装着位置を水平方向に沿った異なる位置に変更可能となっているため、1種類の釣合いおもり受治具10を幅寸法が異なる複数種類のガイドレール15に適用することができ、しかも、適用されるガイドレール15の幅寸法に関わらず第1ベース体16と第2ベース体17との間に一定の幅寸法Wを確保することができる。したがって、第1ベース体16と第2ベース体17との間に架設した連結レバー20によって釣合いおもり受治具10を載置することができると共に、釣合いおもり受治具10をガイドレール15に設置中であっても、連結レバー20を第1ベース体16と第2ベース体17との間から取り除けば、釣合いおもり3を第1ベース体16と第2ベース体17との間で上下方向に昇降させることが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10では、第1ベース体16に固定される第1補強板18のガイド溝18aの途中に水平方向に延びる切り欠き部18cが形成されているため、第2ベース体17に装着されたレールクリップ28のボルト27をガイド溝18aに挿入した後、このボルト27を切り欠き部18cの端部まで水平方向へスライドさせることにより、適用対象となるガイドレール15の幅寸法に応じて、第1ベース体16側のレールクリップ22と第2ベース体17側のレールクリップ28との間隔を最適に調整することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10では、第2ベース体17に固定される第2補強板19にガイド溝19aと逃げ溝19bが形成されているため、ガイドレール15の幅寸法に応じてボルト21,27の装着位置が変化した場合でも、ガイド溝19aと逃げ溝19bのいずれか一方を選択してボルト21,27を挿入させることができる。
【0053】
また、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10では、第1ベース体16と第2ベース体17がそれぞれ受け部16c,17cを有し、ボルト21,27が対応するガイド溝18a,19aおよび逃げ溝19bの途中位置まで挿入された時点で、互いの受け部16c,17cが当接して第1ベース体16と第2ベース体17が上下方向に位置決めされるため、第2ベース体17の重量によってボルト21,27が変形してしまうことを防止できる。
【0054】
また、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10では、第1ベース体16と第2ベース体17にレールクリップ22,28の回転を抑制する回り止め部材(規制片40a,41a,42a,43a)が設けられているため、第1ベース体16と第2ベース体17をガイドレール15に締結する際に、わざわざレールクリップ22,28を手で抑える必要がなくなり、ボルト21,27の締め付け作業を簡単に行うことができる。しかも、対をなす規制片40a,41aと規制片42a,43aの上下方向の対向間距離が変更可能となっているため、レールクリップ22,28が水平方向の異なる複数の位置に装着されていても、これらレールクリップ22,28の回転を確実に拘束することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10では、直交方向に連続する支持板16aと背面板16bが設けられたL字状の第1ベース体16と、同じく直交方向に連続する支持板17aと背面板17bが設けられたL字状の第2ベース体17とを備えており、これら第1ベース体16と第2ベース体17をガイドレール15に取り付ける場合、それぞれのレールクリップ22,28と背面板16b,17bとでガイドレール15の基部15aを前後方向から挟持するように構成されている。これにより第1ベース体16と第2ベース体17が水平方向に位置決めされた状態でガイドレール15に固定されるため、作業者は、2分割により軽量化された第1ベース体16と第2ベース体17とを個別にガイドレール15に取り付けることができ、この点からも作業性が高められている。
【0056】
また、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10では、第1ベース体16と第2ベース体17の支持板16a,17aにレールクリップ22,28を目視可能な透孔17fが形成されているため、レールクリップ22,28がガイドレール15の基部15aを正しく挟み込んでいるか否かを狭いスペースでも確認することができ、取付作業の確実性を高めることができる。
【0057】
また、本実施形態に係るエレベーターの釣合いおもり受治具10では、第1ベース体16と第2ベース体17の支持板16a,17aにそれぞれ凹部16e,17eが設けられており、これら凹部16e,17eに釣合いおもり3を支持する連結レバー20の両端部が挿入・保持されると共に、連結レバー20が支持板16aの外側を支点として回転可能となっているため、釣合いおもり受治具10をガイドレール15に設置中であっても、連結レバー20を回転するという簡単な操作によって釣合いおもり3を上下方向に昇降させることができる。
【0058】
なお、上記した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0059】
例えば、第1補強板18のガイド溝18aの途中に切り欠き部18cを形成する代わりに、上下方向に延びるガイド溝を水平方向に所定間隔を存して複数(例えば2つ)設けたり、第2補強板19にガイド溝19aと逃げ溝19bを設ける代わりに、上下方向に延びるガイド溝の途中に水平方向に延びる切り欠き部を形成しても良い。すなわち、ガイドレール15の幅寸法に応じてレールクリップ22,28のボルト21,27が水平方向の異なる装着位置に変動した場合でも、第1ベース体16と第2ベース体17がそれぞれの装着位置でボルト21,27を挿入できるガイド溝を有していれば良い。