(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一体形成されたマニホルド要素,流体を二方向に分岐させるための部材である流体流(fluid flow)要素および1個以上のアクチュエータ要素を含む液滴堆積装置であって、
前記1個以上のアクチュエータ要素は、それぞれ圧電アクチュエータ素子およびノズルを有する流体チャンバの第1および第2の配列を提供し、前記圧電アクチュエータ素子が電気信号に応答して前記ノズルを通して流体液滴を堆積方向に放出させるべく動作可能であり、前記流体チャンバの配列が各第1の長手方向端から反対側にある各第2の長手方向端まで配列方向に横並びに延在し、前記配列方向が前記堆積方向に略垂直であり、
前記マニホルド要素は、前記配列方向に細長く、且つ第1のマニホルドチャンバ、第2のマニホルドチャンバおよび第3のマニホルドチャンバを含み、前記第1のマニホルドチャンバ、前記第2のマニホルドチャンバおよび前記第3のマニホルドチャンバが前記配列方向に横並びに延在し、前記第1のマニホルドチャンバが前記第2のマニホルドチャンバおよび前記第3のマニホルドチャンバの間に配置されており、
前記第1のマニホルドチャンバが前記第1の配列内の前記流体チャンバの各々を介して前記第2のマニホルドチャンバに、および前記第2の配列内の前記流体チャンバの各々を介して前記第3のマニホルドチャンバに流体接続されており、
前記マニホルド要素は、更に、第1の導管、第2の導管および第3の導管を含み、前記第1の導管が流体合流部で前記第2の導管および前記第3の導管に分岐し、前記マニホルド要素および前記流体流要素が共に前記流体合流部を形成し、前記第2の導管および前記第3の導管が各々前記第2のマニホルドチャンバおよび前記第3のマニホルドチャンバに接続されており、
前記流体流要素が、前記マニホルド要素によって設けられた対応するソケット内に収容されるように成形されたプラグとして成形され、
前記流体流要素は、前記第2の導管及び前記第3の導管の両方で流体の流れに対して実質的に同量のインピーダンスを生成させるように、前記第2の導管及び前記第3の導管における流れへの調整力を有する形状を有する、
液滴堆積装置。
第1の導管、第2の導管、第3の導管および前記流体合流部が、前記配列方向に関して、前記流体チャンバの第1および第2の配列の長手方向端を略越えて配置され、好ましくは、第1の導管、第2の導管、第3の導管および前記流体合流部が、前記配列方向に垂直な平面内に略存在する、請求項1に記載の装置。
略平坦なカバー部材を更に含み、前記カバー部材が前記1個以上のアクチュエータ要素に取り付けられ、且つ前記ノズルを形成し、前記カバー部材が前記堆積方向に垂直な平面内で延在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
前記1個以上のアクチュエータ要素が、前記堆積方向に垂直な平面内で延在する略平坦な基板を含み、前記圧電アクチュエータ素子が前記基板に載置されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
前記基板が、前記第1のマニホルドチャンバ、前記第2のマニホルドチャンバおよび前記第3のマニホルドチャンバを前記流体チャンバに流体接続するために複数の流体口を含んでいる、請求項10に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
当業者には、液滴堆積装置により各種の代替的な流体を堆積できることが理解されよう。インクジェット印刷用途の場合のように、インクの液滴は例えば紙またはセラミックタイル等の他の基板に向けて移動して画像を形成することができる。代替的に、流体の液滴を用いて、構造物を作成することができ、例えば電気的に活性化された流体を回路基板等の基板上に堆積して電気装置のプロトタイプを作成したり、流体を含むポリマーまたは溶融ポリマーを連続的な層に堆積して物体のプロトタイプモデルを作成したりする(3D印刷におけるように)ことが可能になる。このような代替的な流体に適した液滴堆積装置には、標準的なインクジェットプリントヘッドと構造が類似し、且つ注目する特定の流体を扱うべく若干の適合されたモジュールが備えられていてよい。
【0003】
また、広範な構造物が液滴堆積の従来技術の範囲に存在しており、本出願人により開示された多数のものが含まれる。上述の場合で特に興味があるのは、国際公開第00/38928号パンフレットが提供する例であり、その
図1、2、3、4および7を引用している。
【0004】
国際公開第00/38928号パンフレットは、流体チャンバの配列を有し、各チャンバが液滴吐出用のオリフィス、共通の流体入口マニホルドおよび共通の流体出口マニホルドと連通し、使用中に、流体が配列内の各チャンバを通って入口マニホルド内に流入し、且つ出口マニホルド内に流入する液滴堆積装置の多数の例を提供している。
【0005】
図1に、用紙の幅方向(矢印100で示す方向)に延在し、1回のパスでページの幅全体にインクを堆積させることができる2列のノズル20、30を有する「ページ幅」プリントヘッド10を示す。ノズルからのインクの吐出は、例えば欧州特許出願公開第A−0277703号明細書、欧州特許出願公開第A−0278590号明細書、国際公開第98/52763号パンフレット、および国際公開第99/19147号パンフレットにより公知のように、そのノズルと連通する流体チャンバに関連付けられた起動手段への電気信号の印加により実現される。
【0006】
より具体的には、欧州特許出願公開第A−0277703号明細書および欧州特許出願公開第A−0278590号明細書に開示されているように、連続するチャネル間に圧電アクチュエータ壁を形成して、各壁の両側の電極の間に印加された電場により起動して、剪断モードにおいて横方向に撓ませることができる。その結果、インクまたはその他の流体に生じた圧力波によりノズルから液滴を吐出させる。
【0007】
製造を簡素化して歩留まりを向上させるべく、ノズルの「ページ幅」列は多数のモジュールで構成されていてよく、そのうち1個を40に示す。各モジュールには流体チャンバおよび起動手段が付随しており、例えば可撓回路60により、付随する駆動回路(集積回路(「チップ」)50)に接続されている。プリントヘッドへの、またはプリントヘッドからのインクの供給はエンドキャップ90の各ボア孔(図示せず)を介して行われる。
【0008】
図2は、
図1のプリントヘッドの後部から見た斜視図であり、インク流路が組み込まれたプリントヘッドの支持構造200、またはプリントヘッドの幅方向に延在するマニホルド210、220、230が見えるようにエンドキャップ90を除去している。
【0009】
国際公開第00/38928号パンフレットによれば、インクを入口マニホルド内に供給して、出口マニホルドから出すことができ、これらのマニホルドは各チャネルに共通であり、且つ各チャネルを介して接続されているため、プリントヘッドの動作中に各チャネルを通る(従って各ノズルを通過する)インクの流れが生じる。これにより、塵、乾いたインクまたはその他の異物がノズルに蓄積して、放置すればインク液滴の吐出を阻害するのを防止する役割を果たす。
【0010】
より詳細には、インクがエンドキャップ90(
図1、2では省略)の1個のボア孔を介して、および
図2の215に示すように入口マニホルド220を介して
図1〜4のプリントヘッドに入る。インクが入口マニホルド220に沿って流れるに従い、プリントヘッドのノズル列の延在方向に垂直に切った断面図である
図3に示すように各々のインクチャンバに分けて入れられる。インクは、入口マニホルド220から、構造200(陰影付きで示す)内に形成された開口320を介しインクチャンバ(各々300、310で示す)の第1および第2の平行な列内に流入する。インクチャンバの第1および第2列を通って流れたインクは、235に示すように、開口330、340を介して流れ出て、第1および第2のインク流出路210、230の各々に沿ったインク流に合流する。これらの流れは、エンドキャップに形成されていてプリントヘッドの入口ボア孔が形成された側と反対側または同じ側の終端に位置する共通のインク出口ボア孔(図示せず)で合流する。
【0011】
チャンバ300、310の各列には、各駆動回路360、370が関連付けられている。駆動回路は、導管の役割を果たすと共に回路が動作中に発生する大きい熱量を導管構造を介してインクに伝導させるようにインク流路を画定する構造200のその部分と実質的に熱接触するように載置されている。この目的のため、構造200は良好な熱伝導特性を有する材料で作られている。国際公開第00/38928号パンフレットによれば、押し出しにより容易且つ安価に形成できる理由からアルミニウムが特に好ましい材料である。回路360、370は次いで、構造200の外面に、その構造と熱接触するように配置され、任意選択的に回路と構造との間の伝熱抵抗を下げるべく熱伝導パッドまたは接着剤を用いている。
【0012】
支持構造200を補強すべく、鋼等の強靭な材料で作られた棒材をチャネル550(国際公開第00/2584号パンフレットで知られているように)内に設けてもよい。
【0013】
図1〜3に示す特定のプリントヘッドのチャンバおよびノズルの更なる詳細を、モジュール40の流体チャンバに沿って切った断面図である
図4に示す。
図4に示すように、チャネル11が圧電材料のベース要素860に機械加工または別途形成されて圧電チャネル壁が画定され、その後、圧電チャネル壁が電極でコーティングすることにより、例えば欧州特許出願公開第A−0277703号明細書から知られているようにチャネル壁アクチュエータが形成される。各チャネル半片は、流体マニホルド210、220、230と各々連通するポート630、640、650が同様に形成されたカバー要素620の各区間820、830により、長さ600、610に沿って閉じている。チャネル11の各半片600、610は従って1個の流体チャンバを提供する。
【0014】
810で電極を開くことにより、電気入力端(可撓回路60)を介して印加された電気信号によりチャネルのいずれかの半片のチャネル壁が独立に動作できる。各チャネル半片からのインク吐出は、チャネルと、圧電ベース要素のチャネルが形成された面とは反対側の面とを連通させる開口840、850を介して行われる。インク吐出用のノズル870、880は次いで、圧電要素に取り付けられたノズルプレート890に形成される。
【0015】
図4の大きい矢印は(左から右に)、配列600の左側のチャンバからの左側ポート630を介した出口マニホルド210への流体の流れ、入口マニホルド220からの中央ポート640を介したチャネルへの流体の流れ、および配列610の右側上のチャンバからの右側ポート650を介した他方の出口マニホルド230への流体の流れを示す。
【0016】
その結果、プリントヘッドの使用中に、各チャンバ600、610に沿って流体が流れることが分かる。上述のように、国際公開第00/38928号パンフレットによれば、プリントヘッド動作中に各チャネルを通る(従って各々のノズルを通過する)インク流が、塵、乾いたインクまたはその他の異物がノズルに蓄積してインク液滴吐出を阻害するのを防止する役割を果たす。更に、国際公開第00/38928号パンフレットによれば、循環するインクによりチャンバが効果的に清掃されることを保証すべく、具体的にはインク内の異物、例えば塵埃粒子をノズルに入り込ませずに必ず通過させるべく、チャンバを通るインク流速をチャンバからのインク吐出の最大速度よりも速く、場合により最大速度の10倍にする必要がある。
【0017】
図5、6は、
図1〜4に示すものと同様の特徴を有するプリントヘッドの分解斜視図である(国際公開第01/12442号パンフレットから引用)。従って、国際公開第01/12442号パンフレットは、流体チャンバの配列を有し、各チャンバが液滴吐出用のオリフィス、共通の流体入口マニホルド、および共通の流体出口マニホルドと連通し、使用中に、流体が配列内の各チャンバを通って入口マニホルドに流入し、且つ出口マニホルド内に流入する液滴堆積装置の更なる例を示している。
【0018】
図5、6に、各種の要素が基板86に配置されている様子を、基板86自体の構造の詳細と共に詳細に示す。
【0019】
より詳細には、
図5、6に、媒体供給方向に互いに間隔を空けて配置された2列のチャネルを示す。2列のチャネルは、圧電材料110a、110bの各細片に形成され、基板86の平坦面に接合されている。チャネルの各列は、媒体供給方向に垂直なページの幅方向に延在する。上述のように、チャネル壁に電極が設けられているため、その壁に電気信号を選択的に印加することができる。チャネル壁は従って、液滴吐出を生起可能なアクチュエータ部材としての役割を果たすことができる。
【0020】
基板86には、各チャネル壁電極に(例えば、はんだ接合により)電気的に接続され、且つチャネルの各列の個別駆動回路(集積回路84)が配置された基板の淵まで延在する導電トラック192が形成されている。
【0021】
また
図5、6から分かるように、液滴吐出を可能にする圧力波を含む閉じた「活性な」チャネル長を生成すべくカバー部材420がチャネル壁の上部に接合されている。カバー部材420には、液滴の吐出を可能にすべくチャネルと連通する穴が形成されている。これらの穴は次いで、平坦なカバー部材420に取り付けられたノズルプレート430に形成されたノズル(図示せず)と連通する。しかし、例えば国際公開第2007/113554号パンフレットから、そのようなカバー部材とノズルプレートとの組み合わせの代わりに適切に作られたノズルプレートを用いることも知られている。
【0022】
図1〜4に関して記載されている構造と同様に、基板86は、入口および出口マニホルドと連通するポート88、90および92を備えている。入口マニホルドは2個の出口マニホルドの間に設けられていてよく、従って入口マニホルドはポート90を介してチャネルにインクを供給し、インクは2列のチャネルからポート88、92を介して各出口マニホルドへ移動することができる。
図6に示すように、導電トラック192はポート88、90および92の周囲を迂回していてもよい。
【0023】
国際公開第00/38928号パンフレットから知られているように、マニホルドの断面領域は、配列方向から遠いほど先細る。国際公開第00/38928号パンフレットに示す構成は、液滴流体チャンバの直線的配列が水平方向において非ゼロの角度で配置されたプリントヘッドに適用すべく意図されている。従って、各マニホルドが先細りである結果、配列に沿った長さに応じた粘性圧力の低下が重力に伴う圧力の増加と釣り合う。これは、各箇所で流れを通す断面がその箇所における流れに適しているように構成することで実現される。
【0024】
国際公開第00/38928号パンフレットから引用した
図7に、
図1〜6を参照して述べたものと同様の構造の液滴流体チャンバの直線的配列が水平方向において非ゼロの角度で(すなわち図の矢印Xで示す重力方向に非垂直な角度で)配置された構成を概略的に示す。明快さのため、チャンバの1個の直線的配列のみを矢印1000で示す。しかし、
図1〜4に示すように、国際公開第00/38928号パンフレットに開示された構造は、1個の入口マニホルド1010および2個の出口マニホルド1020を有する構成を用いている。マニホルド1010、1020は、接続部1030、1040の各々でインクが供給および排出される。
【0025】
より具体的には、
図7に示すように、先細形状を有する挿入部材1050、1060が、略一定の矩形断面を有する入口1010および出口1020のマニホルドに各々配置されている。その結果、配列の最上部で入口マニホルド1010に入るインクにとって、先細りの挿入部材1050によりマニホルドの断面の一部のみが塞がれている。インクが入口マニホルド1010の下方へ進むに従い、一部が流体チャンバ1000を介して出口マニホルド1020へ流出し、配列の底に達する時点で、インクは入口マニホルド1010に流入しなくなり、先細りの挿入部材1050にはインクが流れる断面が無い。出口マニホルド1020に達したインクもまた、更に先細りの挿入部材1060により底へ向かって広がる断面を介して下方へ流れる。配列の底に達するまでに、(印刷用に吐出された分を除く)インクの全量が、挿入部材により確保された広い空間に流れ込んでいる。
【0026】
国際公開第00/38928号パンフレットに述べる構成は、配列に沿って重力圧の増大に対する粘性圧力の減少を釣り合わせるべく液滴流体チャンバの直線的配列が水平方向において非ゼロの角度で配置されるプリントヘッドへの適用を意図されているが、マニホルド内に先細部分を設ける多くの理由があり得る。
【0027】
特に、マニホルド内に先細部分を設けることは、装置の起動モードの一部として、流体チャンバ内を空にすることを促進する。例えば、先細部分は、配列の各チャンバを通過する流体の流量が略等しくなることを保証できる。これにより、例えば、マニホルドに入る箇所から最も遠い配列の終端で泡が閉じ込められる可能性を減らすことができる。このような機能を提供すべく、入口および出口マニホルド内での先細部分の方向は、
図7に示すものと概して同様であってよいが、当然のことながら、先細部分の目的が異なれば、配列方向における距離に応じて断面領域が先細る正確な割合に大きく影響を及ぼすことが理解されよう。
【0028】
液滴堆積装置において、配列の長さにわたり堆積される液滴の均一性を向上させることが一般に望ましい。これは特に、インクジェット式プリンタのように流体チャンバの大きい配列を有する液滴堆積装置の場合にあてはまる。基板上に液滴のパターンを生じさせる(例えば、用紙またはセラミックタイル上に画像を形成する)べく流体チャンバの配列に沿って基板に指標付けされている場合、基板の移動方向に延在する略直線的欠陥が生じるため、そのような配列の長さにわたる不均一性は特に目立ち、肉眼はそのような直線的特徴を特に敏感に認識する。
【0029】
しかし、形成されたパターンが肉眼での視認を意図されていない場合(電気機器のプロトタイプ作成を可能にすべく電気的に活性な流体を回路基板等の基板上に堆積させる、またはプロトタイプモデルを作成すべく(いわゆる3D印刷)連続した層に流体または溶融ポリマーを含むポリマーを堆積させる等)、あるいは基板が配列に沿って指標付けされていない場合でも配列の長さにわたる不均一性が懸念点であることが理解されよう。
【0030】
堆積される液滴の不均一性を引き起すと考えられる多数の要因があり、これらの要因間の相互作用は複雑で往々にして予測が困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の実施形態は、流体チャンバの配列を有し、各チャンバが液滴吐出用のオリフィス、共通の流体入口マニホルドおよび共通の流体出口マニホルドと連通し、使用中に、流体が配列内の各チャンバを通って入口マニホルドに流入し、且つ出口マニホルドに流入する、改良された液滴堆積装置の一部を形成する装置を提供することを目的とする。例えば、本発明による装置は、流体チャンバの配列を有し、各チャンバが液滴吐出用のオリフィス、共通の流体入口マニホルドおよび共通の流体出口マニホルドと連通し、使用中に、流体が配列内の各チャンバを通って入口マニホルドに流入し、且つ出口マニホルドに流入する、このような改良された液滴堆積装置用の1個以上の要素を提供することができる。特に、このような液滴堆積装置は、本発明の実施形態による装置を用いることにより、流体チャンバの配列にわたる液滴堆積の均一性を向上させる。しかし、本発明の実施形態から更なるおよび/または他の利点が得られることに注意されたい。
【0032】
従って、本発明の第1の態様によれば、一体形成されたマニホルド要素および1個以上のアクチュエータ要素を含む液滴堆積装置を提供するものであり、前記1個以上のアクチュエータ要素は、それぞれ圧電アクチュエータ素子およびノズルを有する流体チャンバの第1の配列を提供し、前記圧電アクチュエータ素子が電気信号に応答して前記ノズルを通して流体液滴を堆積方向に放出させるべく動作可能であり、前記流体チャンバの第1の配列が第1の長手方向端から反対側にある第2の長手方向端まで配列方向に延在し、前記配列方向が前記堆積方向に略垂直であり、マニホルド要素は、前記配列方向に細長く、且つ第1のマニホルドチャンバおよび第2のマニホルドチャンバを含み、前記第1および第2のマニホルドチャンバが前記配列方向に横並びに延在し、および前記第1のマニホルドチャンバが前記第1の配列内の前記流体チャンバの各々を介して前記第2のマニホルドチャンバに流体接続されており、前記第1のマニホルドチャンバおよび前記第2のマニホルドチャンバのうち少なくとも一方の断面領域は、配列方向における距離に応じて先細り、前記配列方向に垂直な前記マニホルド要素の断面形状は、前記堆積方向における断面の重心が流体チャンバの第1の配列の長さにわたり前記流体チャンバの配列から実質的に一定の距離を保つように、配列方向における距離に応じて変化する。
【0033】
本出願人は、液滴堆積装置内、より具体的には流体チャンバの配列に近い要素における機械的応力が不均一性の重要な要因であることを確認した。特に、
図7に示すものと同様の構造において、入口および/または出口マニホルドの先細りが装置内のそのような機械的応力の主要発生源であることを見出した。このような先細りは、断面に見られるように、マニホルドを囲む材料の量が配列の長さ方向に変化するため、配列の長さにわたる装置の剛性が変化する要因になり得る。この剛性の変化は、配列の長さにわたる装置内の応力の要因になり得るため、堆積される液滴の配列の長さにわたる均一性に影響を及ぼす恐れがある。
【0034】
本発明によれば、マニホルド要素の断面形状は、断面の重心が前記載置面からの実質的に一定の距離を保つように配列方向における距離に応じて変化する。これにより、配列の長さにわたる剛性の変化が減少し、従って配列により堆積される液滴の均一性を向上させることができる。
【0035】
従来技術による構造が、アクチュエータ配列の長さにわたる剛性を増大させるべく若干の努力をしてきた点に注意されたい。例えば、上述のように、国際公開第00/24584号パンフレットによれば、支持構造200を補強すべく鋼のような強度の高い材料で作られた棒が
図1〜4に示す構造のチャネル550内に設けられていてよい。
【0036】
また、国際公開第00/24584号パンフレットによれば、アルミニウム支持構造200が使用中にそれ自体の熱膨張の結果として撓ることについて述べている。このような屈曲を対象にするために、国際公開第00/24584号パンフレットによれば、アルミニウムの膨張を抑制すべくアルミナプレートを支持構造の下側に載置することにより、熱膨張に起因する構造の屈曲が実質的に防止される。
【0037】
更に、国際公開第00/2584号パンフレットによれば、支持構造200の長さ方向に延在するボア孔にタイロッドを挿入して、構造200を圧縮状態に保つべくタイロッドを締め付けてもよい。
【0038】
しかし、このようなアプローチには短所があり、更に、重大な機械的応力が生じ、これに伴い堆積される液滴の配列の長さにわたる均一性が欠如する恐れがあることが分かっている。
【0039】
より具体的には、支持部の剛性を高めるべく異なる材料を用いる(アルミニウム支持構造のチャネル550内に鋼棒を配置する、またはアルミナプレートをアルミニウム支持構造の下側に取り付けられる)アプローチにおいて、これらの材料の異なる熱膨張係数は、異なる元素が異なる膨張率で膨張させ、使用中に構造内に応力を生じさせる傾向があると考えられる。この応力により、堆積される液滴のアクチュエータ配列の長さにわたる均一性が受容できない程度に欠如する恐れがある。
【0040】
使用中に構造を圧縮状態に保つ目的でタイロッドを使用することで支持構造に直接応力が掛かる。この場合も、この応力により、堆積される液滴のアクチュエータ配列の長さにわたる均一性が受容できない程度に欠如する恐れがある。
【0041】
対照的に、本発明による装置は、基本的に自己剛性強化的であると考えられるマニホルド要素を含んでいることが理解されよう。その結果、更なる剛性強化要素の必要が生じないため、そのような要素により生じる追加的な応力等の上述の短所を回避することができる。また、本装置は、そのような追加的な剛性強化要素が無いことから組立て段階ステップが少なくて済むため、より容易且つ安価に製造することができる。マニホルド要素が一体形成される結果として、製造の容易さおよびコストの観点からの更なる利点が得られよう。
【0042】
適切には、マニホルド要素の前記断面の重心と流体チャンバの第1の配列との間の前記堆積方向における距離の変化は、流体チャンバの第1の配列の長さの10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。
【0043】
前記堆積方向および前記堆積方向に垂直なマニホルド幅方向における断面の重心の位置を制御することもまた重要であろう。従って、前記配列方向に垂直なマニホルド要素の断面形状は、前記堆積方向および前記堆積方向に垂直なマニホルド幅方向に関して流体チャンバの第1の配列の長さにわたり断面の重心が実質的に同一の位置に保たれるように、配列方向における距離に応じて変化することができ、好ましくは、前記マニホルド幅方向に関する位置の変化は、流体チャンバの第1の配列の長さにわたりマニホルド要素の幅の10%以下、より好ましくは5%以下、更により好ましくは2%以下である。
【0044】
ここで本出願人が流体チャンバの配列付近の要素内での応力の変化を減少させることにより、または他の方法により、堆積される液滴のアクチュエータ配列の長さにわたる均一性を向上させる更なるアプローチに想到したことに注意されたい。
【0045】
従って、本発明の第2の態様によれば、一体形成されたマニホルド要素および1個以上のアクチュエータ要素を含む液滴堆積装置を提供するものであり、前記1個以上のアクチュエータ要素は、それぞれ圧電アクチュエータ素子およびノズルを有する流体チャンバの第1の配列を提供し、前記圧電アクチュエータ素子が電気信号に応答して前記ノズルを通して流体液滴を堆積方向に放出させるべく動作可能であり、前記流体チャンバの配列が第1の長手方向端から反対側にある第2の長手方向端まで前記配列方向に延在し、前記配列方向が前記堆積方向に略垂直であり、マニホルド要素は、前記配列方向に細長く、且つ第1のマニホルドチャンバおよび第2のマニホルドチャンバを含み、前記第1および第2のマニホルドチャンバが前記配列方向に横並びに延在し、および前記第1のマニホルドチャンバが前記第1の配列内の前記流体チャンバの各々を介して前記第2のマニホルドチャンバに流体接続されており、前記配列方向に関して、前記マニホルドチャンバのうち少なくとも1個は、前記流体チャンバの第1の配列の前記第1および第2の長手方向端の少なくとも一方を越えて延在する。
【0046】
本出願人は、流体チャンバの配列に隣接するマニホルド要素に存在する応力の解析を通じて、マニホルドチャンバの長手方向端に隣接する部分で応力が最も大きく変化することを見出した。本発明の第2の態様による液滴堆積装置において、マニホルドチャンバのうち少なくとも1個が、流体チャンバの第1の配列の第1および第2の長手方向端のなくとも一方を越えて延在するため、この応力変化の少なくとも一部を回避でき、従って流体チャンバの配列の長さにわたる堆積の均一性を向上させることができる。
【0047】
本発明の第3の態様によれば、一体形成されたマニホルド要素および1個以上のアクチュエータ要素を含む液滴堆積装置を提供するものであり、前記1個以上のアクチュエータ要素は、それぞれ圧電アクチュエータ素子およびノズルを有する流体チャンバの第1および第2の配列を提供し、前記圧電アクチュエータ素子が電気信号に応答して前記ノズルを通して流体液滴を堆積方向に放出させるべく動作可能であり、前記流体チャンバの配列が各第1の長手方向端から反対側にある各第2の長手方向端まで配列方向に横並びに延在し、前記配列方向が前記堆積方向に略垂直であり、マニホルド要素は、前記配列方向に細長く、且つ第1、第2および第3のマニホルドチャンバを含み、前記マニホルドチャンバが前記配列方向に横並びに延在し、前記第1のマニホルドチャンバが前記第2および第3のマニホルドチャンバの間に配置されており、前記第1のマニホルドチャンバが前記第1の配列内の前記流体チャンバの各々を介して前記第2のマニホルドチャンバに、および前記第2の配列内の前記流体チャンバの各々を介して前記第3のマニホルドチャンバに流体接続されており、前記マニホルド要素は、更に、第1、第2および第3の導管を含み、前記第1の導管が流体合流部で前記第2および第3の導管に分岐し、前記第2および第3の導管が各々前記第2および第3のマニホルドチャンバに接続されており、前記堆積方向に見て、前記流体合流部の少なくとも一部が前記第1のマニホルドチャンバに重なり合う。
【0048】
一体形成されたマニホルド要素にこのような流体合流部を設けることにより、堆積方向に見て、第1のマニホルドチャンバと重なり合い、使用中における基板上の装置の占有面積が減少して、装置をより容易に製造することができる。また、第1のマニホルドチャンバにより合流部を流体チャンバの配列から間隔を空けて配置できるため、合流部に起因する配列方向におけるマニホルド要素の断面領域の変化が、流体チャンバの配列の近隣に掛かる応力に及ぼす影響を少なくすることができる。その結果、流体チャンバにより合流部の下に堆積される液滴の特性は、流体チャンバにより配列内の他の箇所で堆積される液滴の特性と実質的に異ならないであろう。
【0049】
好ましくは、導管および合流部は、前記配列方向に関して、前記流体チャンバの第1および第2の配列の長手方向端を略越えて配置されている。これにより、合流部が流体チャンバから更に間隔を空けて配置されることが保証され、更に、マニホルド要素内における応力の変化、従って堆積特性内に及ぼす影響が小さくなる。
【0050】
実施形態は更に流体流要素を含んでいてよく、マニホルド要素および流体流要素は共に流体合流部を形成している。この流体流要素は、マニホルド要素に設けられた対応するソケット内に収容すべく成形されたプラグとして略成形され、より具体的には流体流要素が一体形成されていることが好ましくてもよい。このような特徴により更に装置のコストを減らすと共に製造を簡素化することができる。
【0051】
適切には、マニホルド要素は、前記配列および堆積方向により画定される平面に関して略対称であってよい。これにより、1個の配列により堆積される液滴が他の配列により堆積される液滴と実質的に異ならないことが保証される。本発明による一体形成されたマニホルド要素は成形により、好ましくは射出成形により形成されていてよい。従って、または代替的に、マニホルド要素は全体が、実質的に同質および/または実質的に同一の材料で形成されていてよい。追加的または代替的に、マニホルド要素に機械的合流部が無くてもよい。
【0052】
本発明によれば、任意の先行する請求項に記載のマニホルド要素を成形および好ましくは射出成形して、前記マニホルド要素を前記1個以上のアクチュエータ要素と組み立てるステップを含む、液滴堆積装置を製造する方法も提供する。
【0053】
以下に、本発明について添付図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、プリントヘッド、より具体的にはインクジェットプリントヘッドの1個以上の要素において実施できる。
図8に、本発明の一実施形態によるインクジェットプリントヘッド用のマニホルド要素201を示す。マニホルド要素201は、射出成形により、従って一体形成された要素として製造されていてよい。これにより、特に、一体形成されたマニホルド要素201が国際公開第00/38928号パンフレットまたは国際公開第00/24584号パンフレットに開示された構造内に設けられた要素のいくつかの機能を実行することができるため、プリントヘッドの製造が大幅に安価且つ容易になる。
【0056】
マニホルド要素は従って、実質的にポリマー材料および/またはプラスチック材料で形成することができる。適切な材料として射出可能な熱可塑性物質が含まれ、ポリスチレンまたはポリエチレン等、多くの例が知られている。しかし、ある環境では射出可能な熱硬化性材料もまた適当であろう。また、充填ポリマー材料は一般に機械的強度および熱抵抗がより大きいため、場合によりこちらを使用する方が望ましいであろう。
【0057】
図8から分かるように、マニホルド要素201は配列方向(図面の矢印101で示す)に略細長く、それ自体の底面に形成された3個のマニホルドチャンバ210、220、230を含んでいる。マニホルドチャンバ210、220、230もまた配列方向101に細長く、それ自体の長さ方向にマニホルド要素201の底面に対して開いている。底すなわち載置面は、インクジェットプリントヘッドの製造工程でマニホルド要素201に接合または別途取り付けられた多数のアクチュエータ要素を収容すべく成形されている。
【0058】
図9は、ヒートシンク要素204が緩く取り付けられた、
図8のマニホルド要素201の斜視図である。ヒートシンク204は、金属材料で形成されていてよい。また、
図8、9に示す2個の流体供給管280、290用にキャップ285、295が各々設けられている。ヒートシンク204は、マニホルド要素201のマニホルドチャンバ210、220、230とは反対側と係合している。
【0059】
取り付けは、マニホルド要素に設けられた(且つ鋳造工程においてマニホルド要素201の一体部分として形成されてよい)ヒートシンク係合部2014a、2014bをヒートシンク204内の対応する開口(図示せず)に挿入することにより行うことができる。ヒートシンク係合部2014a、2014bは、ヒートシンク204とマニホルド要素201とを全般的に緩く固定すべく、ヒートシンク204のリブまたは隆起部等の一体形成された特徴にスナップ留めされていてよい。2個の流体供給管280、290に対応する更なる開口もまたヒートシンク204に設けられていてよい。係合の正確な構成の詳細について以下に更に述べるが、ここでは使用中に機械的応力をマニホルド要素201に多く伝達しないヒートシンク204が緩くマニホルド要素201に取り付けられていてよい点に注意されたい。
【0060】
図10に、載置面にアクチュエータ要素が取り付けられ、
図9を参照して述べたように、ヒートシンクがマニホルド要素201の載置面とは反対側に緩く取り付けられたマニホルド要素201の斜視図を示す。同図において、アクチュエータ要素の最も外側、すなわちノズルプレート430のみが視認できる。ノズルプレート430内に2個のノズル配列435a、435bが設けられていて、
図10に示すように、配列方向101に略延在する。各ノズル配列435a、435bは、ノズルプレート430の下に配置された流体チャンバの配列に対応し、流体チャンバの各配列もまた配列方向101に延在する。
【0061】
当然のとこながら、ノズルの略直線的配列を示しているが、欧州特許出願公開第A−0376532号明細書から知られているように、例えば流体チャンバが周期的にグループに割り当てられる起動スキームを考慮すべく、同一配列内の中のノズルの位置に若干のずれがあり得ることが当業者には理解されよう。
【0062】
アクチュエータ要素は、プリントヘッド完成品の使用中に、ノズル435a、435bの対応する1個を通って各流体チャンバからインク(または他の適切な流体)の液滴を、配列方向101に略垂直な堆積方向102に排出すべく動作可能である。また
図10から分かるように、ノズルの2個の配列435a、435bは、配列方向101および堆積方向102の両方に略垂直に延在するマニホルド幅方向103に互いにずれている。ノズルプレートは略平坦であって、堆積方向102に垂直な平面内で延在していてよい。
【0063】
図11は、マニホルド要素201(ヒートシンク204なしで)の側面図であり、配列方向101に垂直に切った、マニホルド要素201を通る2個の断面の位置を示す。2個の断面図の第1は、マニホルド要素201に沿って略半分切ったものであり、
図12に示す。第2は、2個の流体供給管280、290が設けられたマニホルド要素201の終端に向けて切ったものであり、
図13に示す。
【0064】
まず、マニホルド要素201内に形成されたマニホルドチャンバ210、220、230の断面形状を示す
図12に示す断面に注目されたい。
【0065】
図12から分かるように、マニホルドチャンバ210、220、230は略横並びに配置され、中央マニホルドチャンバ220が左側マニホルドチャンバ210と右側マニホルドチャンバ230の間に配置されている(または換言すれば、中央マニホルドチャンバ220により左側マニホルドチャンバ210を右側マニホルドチャンバ230から分離している)。配列方向101から見ると(
図12にように)、マニホルドチャンバ210、220、230の各々が堆積方向102に略延在しており、マニホルド幅方向103の各チャンバの幅は堆積方向102の高さよりかなり小さい。このような細長いマニホルドチャンバにより、マニホルド幅方向103のマニホルド要素201の全幅を狭めることができるため、基板上のプリントヘッドの占有面積を減少させることでき、および/または流体チャンバの配列を互いにより近接して載置することができる。
【0066】
また
図12から分かるように、各チャンバ210、220、230の上方に、マニホルド要素内に一体的に形成されたリブ213、223、233が各々設けられている。これらのリブは、マニホルド要素201の長さにわたる剛性を高めることを促進する。より具体的には、リブ213、223、233は、配列方向101における距離に応じて形状が変化することにより、流体チャンバの配列の長さにわたりマニホルド要素の強度が略一定であることを保証する。
【0067】
図11のマニホルド要素201の側面図から明らかなように、マニホルドチャンバ210、220、230の高さが配列方向101における距離に応じて先細り得るため、配列方向に垂直に示す断面領域が配列方向101における距離に応じて変化する。上述のように、断面領域のこのような先細りには、起動モード中にプリントヘッドのプライミング度合を向上させる、水平方向においてある角度で配置された際にプリントヘッドがより効果的に動作できる等、各種の用途がある。しかし、断面領域がこのように先細るため、マニホルドチャンバの断面領域が最大であるマニホルド要素201の終端の剛性が比較的低くなり、且つマニホルドチャンバの断面領域が最小である終端の剛性を比較的高くなる。マニホルド要素の長さにわたる剛性のこのような変化は、流体チャンバの配列により堆積される液滴の均一性に顕著な影響を及ぼすことが分かっている。剛性の特性は堆積される液滴のパターンに「刻印される」傾向がある。
【0068】
国際公開第00/38928号パンフレットまたは国際公開第00/24584号パンフレットに開示されているような従来技術のマニホルド構造において、構造の剛性を全般的に高める金属棒、アルミナ細片、または控え棒等の要素が設けられていてよい。しかし、これらはやはり、補強要素とマニホルド構造の熱熱膨張率が異なる結果、マニホルド構造内で直接的(控え棒の場合)または間接的に応力を生じさせる傾向がある。また、マニホルド構造の剛性を高める追加的な構造的要素を設けることで、プリントヘッドの製造が、特に本発明が提供する一体形成された単一のマニホルド要素201比較した場合、より高価且つ複雑になる。
【0069】
そのような従来技術の構造の目標が、構造の絶対硬度を全般的に高めることであって、流体チャンバの配列の長さにわたり同等の硬度または剛性を保証することではない点に更に注意されたい。従って、本発明による特定の実施形態は必ずしも、追加的な剛性強化要素を含む従来技術の構造と同等の剛性を有しているわけではない。しかし、上述のように剛性の変化のパターンが印刷パターンに「刻印される」ことが分かっているため、マニホルド構造の剛性の絶対値が配列の長さにわたる剛性の変化量よりも重要性が低いと考えられる。例えば、アクチュエータへ送られたパターンデータを適切に処理することでそのような可変パターンを補償することは、マニホルド構造の剛性の全般的に緩やかな低下を補償することよりもはるかに複雑であろう。
【0070】
マニホルドチャンバの先細りにより生じる剛性の変化の影響を緩和すべく、マニホルドを通る断面の重心が流体チャンバの配列の長さ全体にわたる堆積方向102に対して実質的に同一位置に保たれるように、流体チャンバの配列の長さにわたりリブ213、223、233の大きさを変化させてよい。
【0071】
リブ213、223、233が、断面の重心が堆積方向102において配列の長さにわたり流体チャンバの配列から実質的に一定の距離を保つように、配列方向101に垂直なマニホルド要素201の断面形状が配列方向101における距離に応じて変化できるようにマニホルド要素を成形する方法の一例に過ぎないことを理解されたい。このような成形は、マニホルド要素201が流体チャンバの配列の長さにわたり基本的に自己剛性強化的であることを意味している。その結果、異なる材料で作られた剛性強化要素が不必要になる。これにより、そのような要素の異なる熱膨張に起因する応力効果を回避する、および/またはプリントヘッド完成品の製造コストおよび複雑さを減らすことができる。
【0072】
しかし、マニホルドチャンバの先細りの影響を緩和すべくリブ213、223、233を用いることが特定の利点をもたらす点を理解されたい。第1に、リブが略単純な形状であるため、マニホルドの先細りの影響を緩和するためにそれらの形状が配列の長さにわたりどのように変化すべきかを計算することは容易であろう。図に示す実施形態のように、断面の重心を略同一位置に保つことを保証すべく、マニホルド幅方向103におけるリブ213、223、233および/またはマニホルドチャンバ210、220、230の幅を流体チャンバの配列の長さにわたり実質的に同一に保ちながら、堆積方向102に平行な高さのみを変化させることができる。従って、合理的な近似レベルまで、マニホルドチャンバ210、220、230の現在の高さに基づいて、リブの適切な高さを決定するための計算のみを行えばよいであろう。
【0073】
第2に、リブは相対的に狭く、鋳造物内での空洞の発生が少ないため、鋳造技術を用いて相対的に容易に形成される。また、図に示すリブは、(マニホルド幅方向103における)幅が堆積方向102における距離に応じて単調に先細るため、形成された鋳造物を鋳造中に取り外しやすくする。これは、堆積方向102における距離に応じて単調に広がるマニホルドチャンバの形状でも同様にあてはまる。配列方向101におけるリブおよび/またはマニホルドチャンバの長さに関しても同じことが言える。換言すれば、堆積方向102に見て、マニホルドチャンバは、垂れ下がっている部分が無いように成形することができる。同様に、マニホルド要素201の反対側からリブを見て、同様に垂れ下がっている部分が無いであろう。
【0074】
更に、リブ213、223、233は堆積方向102に対してマニホルドチャンバ210、220、230の上方に設けられているため、マニホルドチャンバ210、220、230の断面の変化とのバランスを保つのに特に効果的である。より詳細には、マニホルド要素201の載置面を含む底部の形状は、マニホルド要素201のこの部分がアクチュエータ要素を収容すべく成形されているため、基本的に固定されている(または少なくとも、形状の大幅な変化は困難である)と考えられる。従って、断面の重心を堆積方向102における配列の上方で一定の高さに維持するには、堆積方向102において配列から最も遠い位置でマニホルド要素201に追加的な断面領域を「加える」ことが最も効果的である。この理由により、堆積方向102においてマニホルドチャンバ210、220、230の上方に位置する特徴が特に有利であり、リブ213、223、233がこのアプローチの特定の例である。
【0075】
更に、堆積方向102においてアクチュエータ要素から全般的に離れて延在するリブ213、223、233のような特徴は、アクチュエータ要素用の駆動回路360から熱を逃がすべくヒートシンクに熱的に結合可能な表面積が増大しているであろう。
【0076】
図12から更に分かるように、マニホルド要素201の形状は、マニホルド幅方向103に垂直に延在する平面に関して略対称であるため、左側マニホルドチャンバ210の断面形状は右側マニホルドチャンバ230の形状の鏡像であり、中央マニホルドチャンバ220の形状は中心に関して対称である。マニホルド要素の実質的に全体にこのような対称性を与えることで、流体チャンバの配列の両方における流れ分布が略同一になり、配列間の堆積に顕著な差異が無いことが保証されよう。
【0077】
更に、マニホルド要素201が前記マニホルド幅方向103に垂直な平面(または、換言すれば配列101および堆積102方向において画定される平面)に関して略対称になるようにマニホルド要素201の実質的に全体にこのような対称性を持たせ続けることにより、マニホルド要素の断面の重心を、流体チャンバの配列の長さにわたり前記マニホルド幅方向103において実質的に一定の位置に保つことができる。以下により詳細に述べるように、マニホルド要素の重心をマニホルド幅方向103において実質的に一定の位置に維持することで、圧電材料の左側110aおよび右側110b細片の両方に形成された配列が実質的に同一の応力を受けることを保証することができる。
【0078】
しかし、配列方向101に垂直に切ったマニホルド要素の断面の重心を、マニホルド幅方向103において流体チャンバの配列の長さにわたり実質的に一定の位置に保つようにマニホルド要素を設ける他の設計アプローチがあり得ることも理解されたい。例えば、(前記マニホルド幅方向103において)幅が可変なリブが、マニホルドチャンバ210、220、230の上方に配置されたリブ213、223、233に関するものと同様のアプローチでマニホルド要素201の各側に設けられていてよい。
【0079】
マニホルド要素201の更なる構造上の詳細事項は、
図8〜10から明らかである。特に、マニホルド要素201の各終端に、載置翼部が、対応する載置ピン15a、15bと共に設けられている。載置ピン15a、15bは金属製であって、マニホルド要素に堅牢に取り付けるべくオーバーモールドされていてよいが、接合等の他の取り付け方法も適している。載置ピン15a、15bにより、インクジェットプリントヘッド完成品をプリントバー内に、またはプリンタ内の他の載置箇所に載置することができる。
【0080】
ここで
図12に戻ると、マニホルド要素201に取り付けられた際の特定のアクチュエータ要素およびその相対位置をより詳細に示す。より具体的には、ノズルプレート要素430の基礎をなすアクチュエータ要素をより明快に示すべく(
図10とは異なり)
図12にはノズルプレート要素430を示していない。
【0081】
マニホルド要素201の載置面に略平坦な基板要素86が直接取り付けられている。基板要素は従って、各々が堆積方向102に略垂直な2個の対向面を有し、その一方がマニホルド要素201の載置面に取り付けられていて、他方が更なるアクチュエータ要素110a、110b、410の支持表面として機能する。構造の観点から、基板要素86は、
図5を参照しながら説明した基板要素と若干類似していてよい。基板要素86は、上部に配置された圧電材料の2個の細片110a、110bを固く且つ堅牢に支持すべくアルミナ等のセラミック材料製であってよい。基板要素86の材料は、圧電材料の2個の細片110a、110bと熱的に適合していてよく、この理由により基板86用の材料としてアルミナが好ましくてもよい。
【0082】
図5に示すものと同様に、圧電材料の細片110a、110bは細長いチャネルの各配列に機械加工され、連続するチャネルが圧電材料の細長い壁により分離されている。国際公開第01/12442号パンフレットに、圧電細片110a、110bを基板86に取り付けてそのようなチャネルを機械加工する、圧電細片110a、110bを貫通する鋸切断を含む多くの方法が開示されている。
【0083】
各チャネルは堆積方向102に垂直な方向(図に示すようなマニホルド幅方向103等)に細長いため、堆積はチャネルの長手側から行われる。この理由のため、そのような構成は一般に「サイドシューター」と呼ばれる。
【0084】
図5に示す基板86と同様に、基板86は内部に形成された多数のポート88、90、92を含んでいてよく、これらがマニホルドチャンバ210、220、230を、内に形成された流体チャンバ圧電細片110a、110bに流体接続する。具体的には、配列方向101に延在するポートの各列がマニホルドチャンバ210、220、230の各々について設けられていてよい。
【0085】
ポート88、90、92により、
図3に示すものと同様の流れがマニホルド要素201を通ることができる。より具体的には、ポート88、90、92により、流体が中央マニホルドチャンバ220から、ポート90の中央の列を通って流れることができ、次いで流れは、ポート88の左側の列を通り、左側の圧電細片110aに形成された流体チャンバの配列を通って左側マニホルドチャンバ210に流入する部分と、右側圧電細片110bに形成された流体チャンバの配列を通り、ポート92の右側の列を通って、右側マニホルドチャンバ230に流入する部分に分かれる。マニホルド要素はまた、流体を反対方向に流すべく接続されていてもよく、流れが、左側にポート88の列を介して左側マニホルドチャンバ210および右側のポート90の列を介して右側マニホルドチャンバ230から各々、左側110aおよび右側110bの圧電細片に形成された液体チャンバの配列に流入することを理解されたい。これら2つの流れはポート90の中心列の上方で合流し、次いでポート90を通って流れが進んで中央マニホルドチャンバ220に流入する。
【0086】
また、基板86の表面にはマニホルド要素201から反対向きにスペーサ要素410が配置されている。マニホルド要素201の載置面側から見て、スペーサ要素410は圧電細片110a、110bを囲むように成形されている。スペーサ要素410は、圧電細片110a、110bの周囲に延在する堆積方向101に垂直な取り付け面を提供し、次いでノズルプレート430が、圧電細片110a、110bに形成されたチャネルを包むようにこの取り付け面に接合されることにより、細長い流体チャンバの配列を提供する。代替的に、
図5に示すように、カバー部材420がスペーサ要素410の取り付け面に取り付けられ、ノズルプレート430がカバー部材420全体に接合されていてよい。
【0087】
図8〜10に示すように、2本のインク供給管280、290がマニホルド要素201の載置面と反対側に設けられていてインク供給系への接続を可能にする。載置ピン15a、15bと同様に、インク供給管280、290は金属製であってマニホルド要素に堅牢に取り付けるべくオーバーモールドされていてよいが、接合等の他の取り付け方法もまた適切であろう。プリントヘッドの出荷前に取り付け可能なインク供給管280、290用の各キャップ285、295もまた
図9、10に示されている。同様にこれらの図から分かるように、流体供給管は載置面と略反対方向に延在することで、プリンタに取り付けられた際にプリントヘッド完成品の占有面積が減少する。使用中、2本のインク供給管280、290の一方が流体供給系に接続されて入口管として機能し、2本の管280、290の他方が出口管として接続されている。
【0088】
一般的なレベルで詳述するに、インク管280が、マニホルド要素201のアクチュエータ要素とは反対側に形成された導管を介して、中央マニホルドチャンバ220に接続されているのに対し、インク管290は、同様にマニホルド要素201のアクチュエータ要素とは反対側に形成された回収用導管270を介して、左側および右側マニホルドチャンバ210、230の両方に接続されている。
【0089】
ここで、
図11に示す平面内のマニホルド要素201を切った断面図である
図13に示すマニホルド要素201を切った断面図に注目されたい。この断面は、インク供給管280、290がマニホルドチャンバ210、220、230に流体接続している様子を更に詳細に示している。同図から明らかなように、インク管290は、マニホルド要素201の後部(載置面およびアクチュエータ要素の反対側)に形成された回収用導管270を介して、左側および右側マニホルドチャンバ210、230に接続されている。同じく
図13に示すように、流体合流部260がマニホルド要素201内に設けられていてよく、ここでインク管290に接続された回収用導管270が2本の補助流体導管215、235に分岐する。
【0090】
図13に示す断面では見えないが、インク管280は、同様にマニホルド要素201の後部(同様に載置面およびアクチュエータ要素の反対側)に形成された流体導管を介して、中央マニホルドチャンバ220に接続されている。
【0091】
上述のように、インク管280、290のいずれか一方が入口管として接続され、他方が出口管として接続されていてよい。インク管280が入口管として、およびインク管290が出口管として接続されている場合、流体は、インク管280から導管225を通って中央マニホルドチャンバ220内に流れ込み、その後分岐して、一部が流体チャンバの左側配列を通って左側マニホルドチャンバ210内を進み、一部が流体チャンバの右側配列を通って右側マニホルドチャンバ230内を進む。2個の流れは次いで、各々左側および右側の補助導管215、235(堆積方向102の略反対側且つアクチュエータ要素から遠ざかる方向に)に沿って進み、その後流体合流部260で再合流して回収用導管270に沿ってインク管290まで、従ってインク供給系まで進む。
【0092】
対照的に、インク管290が入口管として、およびインク管280が出口管として接続されている場合、流体は、回収用導管270を介してマニホルド要素201に入り、その後流体合流部260で分岐して、流れの一部が左側および右側の補助導管215、235に沿って(堆積方向102と略平行且つアクチュエータ要素に近づく方向に)進み続ける。左側および右側の補助導管215、235からの流れは次いで、各々入る左側210および右側230のマニホルドチャンバに入り、その後、各々流体チャンバの左側および右側配列を通って流れて再合流し、中央マニホルドチャンバ220を通って進む。最後に、流体は、インク管280に接続された導管225を通って中央マニホルドチャンバ220から出て、インク供給系に戻る。
【0093】
適切には、インク供給系は、プリントヘッドを通る一定の流れを駆動すべく、入口管として接続される管に正の流体圧力を、および出口管として接続される管に負の圧力を加えてよい。使用中にノズルから流体が「浸出」するのを防止する負の圧力(気圧に対して)がノズルで生じるように、負の圧力の強さは、正の圧力の強さよりも若干強くてよい。
【0094】
更なる内部構造の詳細が
図13から明らかであろう。より具体的には、マニホルド要素201内で対応するソケット266に挿入される流体流プラグ265が設けられていてよい。ソケット266の位置および形状を
図8に示している。
【0095】
図13の断面図に示すように、流体流プラグ265はマニホルド要素201と組み合わされて流体合流部260を構成する。これら2個の要素の組み合わせにより流体合流部260を構成することにより、鋳造が容易な要素により合流部260の表面を正確に画定することができ、鋳造技術を用いて内部の表面を画定することがより困難であることを理解されたい。
【0096】
図13に示す実施形態の任意選択的な変更例において、流体流プラグ265は、補助導管215、235を通る流れに対する影響を調整可能なように成形されていてよい。具体的には、流体流プラグ265を用いて、左側と右側の補助導管215、235の両方で流体の流れに対して実質的に同量のインピーダンスを生成させることを保証すべく両者の間の圧力低下を調整できる。追加的または代替的に、流体流プラグ265は、各補助導管215、235に実質的に同一の量が流れる、および/または流体合流部260へ(またはから)各補助導管215、235に沿って流れる流体について同一の圧力低下が生じることを保証すべく調整できる。
【0097】
このような機能は、例えば、流体流プラグ265をマニホルド要素201内の対応するソケット266内で回転可能であるように成形することにより実現される。プラグの回転により、各補助導管215、235に沿って進む流体が通る各流路を変更することができる。例えば、一方向への回転により、プラグ265により左側の補助導管215に生じる開口を小さくし、プラグ265により右側の補助導管235に生じる開口を大きくすることができる。逆方向への回転は逆の効果、すなわち左側の補助導管215に生じる開口を大きくし、右側の補助導管235に生じる開口を小さくすることができる。このような開口は前記合流部260に隣接して設けられ、且つ前記合流部は実質的に前記流体流プラグ265内に設けられていてよい。
【0098】
代替的に、このような機能は、流体流プラグを、対応するソケット266に出入りすべく前進移動可能に成形することにより提供できる。このような移動は同様に、補助導管215、235に生じる開口の大きさを変えることができ、従って、このような開口は合流部260に隣接して適切に設けることができ、合流部は実質的に前記流体流プラグ265内に設けられている。回転と挿入の組み合わせは他の実施形態でも同様に行うことができる。
【0099】
ここで
図14〜16に注目すれば、
図8〜13に関して上で述べた自己剛性強化概念と組み合わせるかまたは独立に実施可能な追加的な発明概念を示す。
図14〜16は全て、下から見た(
図10に示す堆積方向102とは逆方向の)図である。
図14、15に、
図8〜13のマニホルド要素、特に、マニホルドチャンバ210、220、230に対する圧電材料の細片110a、110bの相対的なサイズおよび位置を示す。
【0100】
図14に、実線長方形枠を用いて、単一の圧電細片110により覆われた領域を示し、マニホルド要素201を横断する線により配列方向101における圧電材料の位置を示す。
【0101】
同様に、
図15に、2個の破線長方形枠を用いて、マニホルド要素に載置された際の圧電材料110a、110bの左および右側細片の位置を示す。
図13、14から明らかなように、配列方向101において、各圧電細片110a、110bの長さは、第1の長手方向端210a、230aと、圧電細片の反対側の終端における左側210および右側230のマニホルドチャンバの両方の第2の長手方向端210b、230bとの両方に届かない。換言すれば、マニホルドの両方の長手方向端は、圧電細片110a、110bの両端を越えて延在する。
【0102】
本出願人は、マニホルド要素内の応力解析を通じて、配列方向における距離に関する応力の変化率が、マニホルドの長手方向端に隣接する領域で最大であることを見出した。
図16にこのような解析の結果を示し、
図8〜15に示す配列方向101における距離に対するマニホルド要素内のフォンミーゼス応力をプロットしている。より具体的には、プロット図のy軸上の値は、各圧電細片110a、110bの上面(マニホルド要素201に最も近いもの)の中心線に掛かる応力を表している。同図から分かるように、マニホルドチャンバの長手方向端210a、210b、230a、230bに向かう応力が大幅に低下している。より具体的には、応力の最大の変化が、マニホルドチャンバの最初の約6%に対応するマニホルドチャンバの最初の約5mmで生じることが分かる。しかし、例えばプロット線の右側の考察から明らかなように、基本的な利点が、マニホルドチャンバの長さの約4%に対応する3mm程度に小さい距離内に見出すことができる。
【0103】
また、関連する周縁効果を補償すべく(例えば電気接続を行わない、または対応する圧電アクチュエータに非発生信号を送信することにより)配列の最も端にあるチャンバを停止させることが望ましい場合がある。そのような効果における最も顕著な変化は、配列の長さの約4%に対応する、配列の最初の約2.5mmで生じることが分かっている。これは実際に、印刷スワスの利用可能な幅を狭めるものと考えられる。従って、特定の印刷スワス幅(例えば、A2、A3、A4等の標準的な基板サイズに対応)が必要な場合、各終端で印刷スワスの幅全体(基板の指数付け方向に垂直に測定した幅)を越えて2.5mm延在する圧電アクチュエータが設けられ、終端効果を補償すべく2.5mmの延在部分にある最終端のチャンバが停止される。これにより、印刷スワスの外側の「端欠け」アーチファクトがずらされ、印刷品質の均一性の向上が実現される。
【0104】
図8〜15は2個のマニホルドチャンバの配列を含む構造を示しているが、流体チャンバの配列の長手方向端を越えて延在するマニホルドチャンバ有する利点が1個の流体チャンバの配列、従って2個の流体チャンバのみを有する構造で得られることに注意されたい。
【0105】
更に、左側110aおよび右側110bのチャンバの配列の両方に実質的に同一の応力分布が掛かることに注意されたい。
図12を参照しながら上で述べたように、これは、配列方向101に垂直切ったマニホルド要素の断面の重心が、流体チャンバの配列の長さにわたりマニホルド幅方向103に対して実質的に一定の位置に保たれるようにマニホルド要素201を成形することにより実現できる。
図8〜15に示す構造において、これは、マニホルド要素201の形状を、マニホルド幅方向103に垂直な平面(または還元すれば、配列101および堆積102方向により画定される平面)に関して略対称になるように設計することにより実現される。両方の配列に実質的に同一の応力分布を与えることにより、マニホルド要素201は、2個の配列間における堆積特性の差異を実質的に減らすことができる。
【0106】
また、マニホルドの両方の長手方向端が圧電細片110a、110bの両端を越えて延在するため、
図14に示すように流体導管215、235を流体チャンバの配列の各々の長手方向端を越えて配置することにより、2個の補助流体導管215、235および流体合流部260を長手方向において流体チャンバの配列から分離することができる。その結果、2個の補助流体導管215、235および同様に流体チャンバの配列から間隔を空けられた流体合流部260により生じる配列方向101の距離に関するマニホルド要素201の断面領域の変化、および付随するマニホルド要素内の応力変化は従って、流体チャンバの配列内での液滴堆積の変化にさほど顕著な影響を及ぼさない。
【0107】
同じく
図14、15に示すように、圧電細片110a、110bおよびマニホルドチャンバ210、220、230の中心は、配列方向101に整列していてよい。これにより、配列全体にわたる液滴堆積の均一性を更に向上させることができる。
【0108】
同じく
図14から明らかなように、流体合流部260は中央マニホルドチャンバ220と重なり合うように配置されていてよい。これにより、国際公開第00/38928号パンフレットに開示されたような従来技術の設計と比較して、基板上におけるプリントヘッド完成品の占有面積を有利に減らすことができ、プリントヘッドへの、またはプリントヘッドからのインクの供給はプリントヘッドのエンドキャップ90の各ボア孔を介して行われる。
【0109】
また、中央マニホルドチャンバ220により合流部260を流体チャンバの配列から間隔を空けて配置できるため、合流部260に起因する配列方向におけるマニホルド要素の断面領域の変化が、流体チャンバの配列の近隣に掛かる応力に及ぼす影響を少なくすることができる。その結果、流体チャンバにより合流部の付近に堆積される液滴の特性は、流体チャンバにより配列内の他の箇所で堆積される液滴の特性と実質的に異ならないであろう。
【0110】
補助導管215、235を中央マニホルドチャンバ220の背後の回収用導管270に接続する流体合流部260を設ける有利な効果は、上述のように
図14、15に示すマニホルド要素の解析から得られた
図16に示す応力分布と、
図17に示すマニホルド要素の解析から得られた
図18に示す応力分布との比較から明らかであろう。
【0111】
更に詳細には、
図17に示すマニホルド要素は、左側マニホルドチャンバ210を右側マニホルドチャンバ230に接続する馬蹄形のマニホルドチャンバ部240を含んでいる。これにより、アクチュエータ要素から堆積方向102に略離れて延在する単一の導管250を左側210および右側230のマニホルドチャンバに接続することができる。しかし、
図18に示す応力分布の右端(
図17に示すマニホルド要素の右端に対応する)を考慮すれば明らかなように、このような構造は配列方向における応力の顕著な変化につながる。
図16に示す応力分布と比較すると、
図14、15に示すマニホルド要素の場合、
図14、15のマニホルド要素では配列の長さにわたり応力の変化が少ないことが明らかである。
【0112】
図14、15に示すマニホルド要素を用いるプリントヘッドと、
図17に示すマニホルド要素を用いるプリントヘッドとを比較する印刷テストにより、応力のこのような変化が配列方向における液滴の大きさの変化に顕著な影響を及ぼし得ることが示される。このような比較テストの結果を
図22〜24に示す。
【0113】
より具体的には、
図22〜24は、全てのチャンバが名目的に等しい大きさの液滴を生じるようにプリントヘッドの両方の列(110a、110b)の全てのチャンバが起動された月次印刷テストの結果を示す。テストされた特定のプリントヘッドにおいて、各列は約500個のチャンバを有し、名目的行動からの逸脱が調べられるように、これら各チャンバにより生じた液滴の直径を測定した。
【0114】
10月から2月にかけて、
図17に示すマニホルド要素を用いるプリントヘッドに対してテストが実施され、これらのテスト結果を
図23に示す(
図18に示す応力分布と比較可能)。具体的には、
図23のy軸に特定のチャンバからの液滴の直径(単位:ミクロン)を示し、x軸に配列内にそのチャンバの個数を示す。各々の月次テストをグラフ上の別々の破線で示す。同図から分かるように、2列のプリントヘッドのグラフは明快のため、x方向において互いに分離されている。
【0115】
3月から9月にかけて、
図14、15に示すマニホルド要素を用いるプリントヘッドに月次の印刷テストが実施され、これらのテスト結果を
図23と同じく
図22に示す(
図16に示す応力分布と比較可能)。しかし、
図23とは対照的に、
図22のテストの結果を実線で示している。
【0116】
図24は次いで、全てのテストの結果を同一軸上に重ね合わせて示し、
図17に示すマニホルド要素から
図14、15に示すマニホルド要素に移った場合の液滴直径の変化の好転がより明らかであろう。ここでも、
図14、15に示すマニホルド要素を用いるプリントヘッドに対するテストの結果を実線で示し、
図17に示すマニホルド要素を用いるプリントヘッドに対するテストの結果を破線で示している。同図から分かるように、
図14、15に示すマニホルド要素を用いた場合、配列方向における液滴の大きさの変化が明確かつ定量的に向上している。同様に同図で分かるように、
図14、15に示すマニホルド要素を用いる2列のチャンバ(110a、110b)間での液滴の大きさの差異が、
図17に示すマニホルド要素を用いる2列のチャンバ間の液滴の大きさの差異と比較してかなり小さい。
【0117】
上で利点について述べた
図14、15に示す特定の流体合流部260が、補助導管215、235を中央マニホルドチャンバ220の背後の回収用導管270に接続すべく構成され、且つ、補助導管215、235および流体合流部が流体チャンバの配列の長手方向端を越えて配置されていることに注意されたい。しかし、補助導管215、235および流体合流部260が流体チャンバの配列の長手方向端を越えて配置されていない場合でも、このような流体合流部260の利点が得られることを理解されたい。
【0118】
図19〜21に、
図8〜15に示す実施形態によるマニホルド要素を用いるプリントヘッドのアセンブリを示す。
【0119】
図19に、それ自体の載置面にアクチュエータ要素のあるものが載置されたマニホルド要素201を示す。より具体的には、2個圧電細片110a、110bが載置された基板86を示している。基板には3列のポート88、90、92(各列が配列方向101に延在)が形成され、各々が3個のマニホルドチャンバ210、220、230に対応している。従って、基板86の設計は
図5に示す設計と若干類似していると考えられる。
【0120】
図20に、スペーサ要素410が載置された
図19のアセンブリを示す。
図12を参照しながら上で述べたように、スペーサ要素410は、圧電細片110a、110bの周囲に延在する堆積方向101に垂直な取り付け面がおよび標準を提供し、次いでノズルプレート430が、圧電細片110a、110bに形成されたチャネルを包むようにこの取り付け面に接合されることにより、細長い流体チャンバの配列を提供する。マニホルド要素201の載置面側から見て、スペーサ要素410は圧電細片110a、110bを囲むように成形されている。
【0121】
図21に、マニホルド要素201およびプリントヘッド完成品を構成する他の要素の部分分解斜視図を示す。特に、同図は、マニホルド要素201の各長手側に取り付けられた2個のサイドカバー202(但し
図21を描く角度からは1個のみが見える)を有するマニホルド要素201を示す。
【0122】
図21から明らかなように、ヒートシンク204はマニホルド要素201のアクチュエータ要素とは反対側に載置されている。ヒートシンク204は、マニホルド要素201のこの反対側の周囲、および2個の長手側面の下方で係合すべく成形されている。ヒートシンクは、左側210および右側230のマニホルドチャンバに隣接する外向きの側面、並びに左側213および右側233のリブの外向きの側面を含むマニホルド要素201の長手側面の外向きの側面と熱接触(この用語は物理的接触とは別であり、必ずしもこれを意味するわけではない)している。
【0123】
このような外向きの表面は、基板上の構造全体の占有面積を増やすことなく大きい面積を熱交換に利用できるように配列方向101および堆積方向102の両方に延在していてよい。また、配列方向101に垂直に切ったリブ213、223、233の断面形状が
図12に示すように堆積方向の細長い場合、ヒートシンク204との熱伝導に利用可能な表面積は特に大きくてよい。
【0124】
より具体的には、マニホルド要素201の外向きの側面は、マニホルド幅方向103に略垂直であると言える。「略垂直」とは、側面の傾きが合理的な程度に柔軟であることを示唆するものと理解されたい。基板上の占有面積を大幅に増やすことなく熱交換に利用できる面積をかなりの程度拡張する各種の構成が適しているであろう。例えば、そのような外向きの側面は、前記堆積方向102が最大20度の角度をなすように向けられているが、殆どの場合最大15度または最大10度の角度がより適していよう。
【0125】
更に、
図12に示すように、例えば側面は完全に平坦である必要がない。しかし、側面全体にわたり平均すれば、垂直方向は通常マニホルド幅方向103と20度を超えて異なることはなく、多くの場合差異が15度または10度未満であることがより適している。
【0126】
図12に示すように、左側マニホルドチャンバ210に隣接する側面は、左側マニホルドチャンバ210の対応する内面と略平行に共延在する。同様に、右側マニホルドチャンバ230に隣接する側面は、右側マニホルドチャンバ230の対応する内面と略平行に共延在する。
図12から明らかなように、側面および対応する内面は共にそのマニホルドチャンバの長手側を包む壁の一部を画定することができる。マニホルドチャンバの内面は従って、隣接する側面に略対向していてよい。
【0127】
更に、マニホルド要素201が鋳造されている場合、堆積方向102に対して若干傾いていることが有利であることを理解されたい。このような傾きは、例えば、射出成形等の鋳造工程により形成される場合、マニホルド要素201を金型から取り外しやすくすることができる。
【0128】
ヒートシンク上に回路基板360が載置されていて、2列の流体チャンバの圧電アクチュエータ素子に電気起動信号を供給する駆動回路を含んでいてよい。使用中、ヒートシンク204は駆動回路360を含む回路基板から熱を逃がして、上述のマニホルド要素201の外向きの表面を介してこの熱を左側および右側マニホルドチャンバ210、230内に流体に伝導することができる。特に、これらのチャンバ210、230が出口マニホルドであるようにプリントヘッドが接続されている場合、プリントヘッドを通る流体の流れにより熱を駆動回路から逃がすことができる。
【0129】
ヒートシンク204は、使用中に、機械的応力をマニホルド要素201に実質的に伝達しないようにマニホルド要素201に緩く取り付けられていてよい。従って、ヒートシンク204は、取り付けられた状態で、プリントヘッドの使用中にヒートシンクに生じる熱膨張よりも大きい程度にマニホルド要素201に対して移動可能であってよい。例えば、ヒートシンク204は、マニホルド要素201に対して1mm(または場合により0.1mm)のオーダーで移動可能であってよい。より具体的には、ヒートシンク204とマニホルド要素201との間に小さい空隙があってよく、空隙が小さいほど要素間の熱接触がより効率的であることが理解されよう。上述のように、マニホルド要素に設けられたヒートシンク係合部2014a、2014bをヒートシンク204の対応する開口に挿入して、ヒートシンク係合部2014a、2014bをヒートシンク204に設けられた一体形成リブまたは隆起部にスナップ留めすることにより、ヒートシンク204をマニホルド要素201に取り付けることができる。
【0130】
同じく
図21に示すように、インク供給管280、290が延在する略平坦なガスケット203がヒートシンク204上に載置されている。熱パッド205もまた設けられている。次いで、電子部品を包むように上部カバー207が固定ネジ206により下側の要素に取り付けられている。プリントヘッドにデータ通信機能を提供すべくリボンケーブル365が上部カバー207を通って延在する。
図21では(上述の)2本のインク供給管280、290用の各キャップ285、295を取り外した状態を示している。
【0131】
上述の実施形態はインクジェットプリントヘッドに関するものであるが、上述のように、液滴堆積装置により各種の代替的な流体を堆積することができる。従って、上記の説明でインクジェットプリントヘッドに言及している場合、単に液滴堆積装置の特定の例を挙げているに過ぎないものと理解されたい。