(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る積層装置にて製造される積層体を例示する図である。
【
図2】反りのあるシートを含む積層体を例示する図である。
【
図3】撓みのあるシートを含む積層体を例示する図である。
【
図4】本実施形態に係る積層装置の構成を例示する斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る積層装置の構成を例示するX−Z側面図である。
【
図6】制御器のハードウェア構成を例示する図である。
【
図8】シートの積層プロセスにて実行される、帯電及び除電の電圧設定フローを例示する図である。
【
図9】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(1/10)を説明する図である。
【
図10】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(2/10)を説明する図である。
【
図11】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(3/10)を説明する図である。
【
図12】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(4/10)を説明する図である。
【
図13】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(5/10)を説明する図である。
【
図14】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(6/10)を説明する図である。
【
図15】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(7/10)を説明する図である。
【
図16】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(8/10)を説明する図である。
【
図17】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(9/10)を説明する図である。
【
図18】本実施形態に係る積層装置を用いた、シートの積層プロセス(10/10)を説明する図である。
【
図19】本実施形態の別例に係る積層装置の構成を例示する図である。
【
図20】シートの積層プロセスにて実行される、帯電及び除電の電圧設定フローの別例を示す図である。
【
図21】アライメントステージの別例を示す図である。
【0025】
<積層体>
図1には、本実施形態に係る積層装置にて作成される積層体100Bが例示される。積層体100Bは、最下層のシートL5から最上層のシートL1まで積層された、最終積層体であって、後述する例えば
図5に例示される、積層途中の積層体100Aとは説明上区別される。さらに、積層途中の積層体100Aは、便宜上、最下層のシートL5のみが積層ステージ80(
図4参照)に載置されている状態も含まれる。
【0026】
また、
図1〜
図21にて示される実施形態では、最終積層体100BがシートL1〜L5からなる5層の積層体から構成されるが、本実施形態に係る積層装置にて作成される積層体は、この例に限定されない。例えば本実施形態に係る積層装置は、12層や20層等、5層以外の複数層のシートを積層可能となっている。
【0027】
最終積層体100Bは、例えば通信機器に実装される回路基板であってよい。
図1の例によれば、最終積層体100Bは複数層のシートL1〜L5が積層されて形成される。シートL1〜L5は、それぞれ、例えば絶縁フィルム106に金属層104が積層された、複層シートから構成される。絶縁フィルム106は、例えば熱可塑性液晶ポリマーから構成される。また金属層104は例えば銅から構成される。
【0028】
最下層のシートL5及び最上層のシートL1は、金属層104が露出するように配置される。例えば最下層のシートL5は、他のシートL1〜L4に対して反転配置される。最上層のシートL1及び最下層のシートL5の金属層104は、例えば絶縁フィルム106の一面に金属膜が形成された、いわゆるベタ膜であってよい。
【0029】
最上層のシートL1及び最下層のシートL5の金属層104は、圧着工程において圧着器90の加熱されたプレス面と当接する。絶縁フィルム106より相対的に融点の高い金属層104が、加熱されたプレス面と当接することで、最終積層体100Bの、プレス面との当接面の溶融が抑制される。
【0030】
また、中間層であるシートL2〜L4の金属層104には、シート毎に異なる配線パターンが形成されている。その点から、シートL2〜L4は、パターン付き絶縁フィルムとも呼ばれる。また、シートL2〜L4の金属層104は、絶縁フィルム106の厚さ方向に貫通されたビア102によって接続される。
【0031】
また、各層のシートL1〜L5の絶縁フィルム106は、他の層のシートとは厚さが異なるように形成される場合がある。例えば、積層体の上層ほどシートが厚くなる。または、積層体の上層ほどシートが薄くなる。
【0032】
また、
図2、
図3の上段に例示されるように、シートL1〜L5には、反りや撓みが生じる場合がある。例えば絶縁フィルム106と金属層104との膨張率や収縮率の差に基づいて、シートL1〜L5に反りや撓みが生じる。
【0033】
図2、
図3の下段に例示されるように、圧着工程において、この反りや撓みが解消され、その結果、反りや撓みが生じた層とその下層とで位置ずれが生じる。後述するように、本実施形態に係る積層装置は、各シートL1〜L5の反りや撓みを、積層前に解消可能な構成を備える。
【0034】
なお、
図1では、シートの例として、絶縁フィルム106上に金属層104が形成された、いわゆる貼り合わせシートが示されたが、本実施形態に係る積層装置にて積層されるシートは、この形態に限られない。例えば、絶縁フィルムのみといった、一枚の電気絶縁性フィルムのみが積層対象のシートとなってもよい。また、積層対象のシートは、二枚の電気絶縁性フィルムを貼り合わせた貼り合わせシートであったり、一枚の電気絶縁性フィルムの両面に金属層を形成させた貼り合わせシートであってもよい。また、積層対象のシートは、金属層を一組の電気絶縁性シートで挟んだ貼り合わせシートであってもよい。さらに、積層対象のシートは、片面または両面にPETフィルムや粘着シートが貼られているシートであってもよい。
【0035】
<積層装置の全体構成>
図4、
図5には、本実施形態に係る積層装置10が例示される。以下では、積層装置10のレイアウト等を説明するための方向軸として、X軸、Y軸、及びZ軸が適宜用いられる。X軸は積層用搬送ホルダ60の移動方向に沿った軸である。Y軸はX軸と水平面上で直交する軸である。Z軸はX軸及びY軸と直交する鉛直軸であって、シートL1〜L5の積層方向に等しい。
【0036】
また、積層装置10の各機構の配置を説明する上で、シートストッカ30L1〜30L5側が上流側となり、X軸に沿って積層ステージ80側が下流側となる。
【0037】
積層装置10は、制御器20、シートストッカ30L1〜30L5、ストッカ用搬送ホルダ40、アライメントステージ50、積層用搬送ホルダ60、積層ステージ80、及び圧着器90を備える。さらに荷電粒子の照射機構として、積層装置10は、ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、ステージ用除電器72、及びホルダ用除電器74を備える。
【0038】
シートストッカ30L1〜30L5には、シートL1〜L5がそれぞれ収容される。なお、
図4では、シートL1〜L5がいわゆる枚葉式のシートとして図示され、またシートストッカ30L1〜30L5が枚葉式のシートを収容するカートリッジとして図示されているが、本実施形態に係る積層装置10は、この形態に限らない。例えば複数枚分のシートが連続的に形成されたシートロールが、シートL1〜L5のそれぞれに対して形成されるとともに、当該シートロールをカットするカッターが設けられてもよい。この場合、シートストッカ30L1〜30L5は、シートL1〜L5に対応するシートロールをそれぞれ保持するロールホルダとして構成される。
【0039】
ストッカ用搬送ホルダ40は、シートストッカ30L1〜30L5とアライメントステージ50との間を往復移動する搬送装置である。ストッカ用搬送ホルダ40は、積層用搬送ホルダ60よりも上流側に設けられることから、「前段ホルダ」とも称される。
【0040】
シートストッカ30L1〜30L5が、X軸方向及びY軸方向に点在されていることから、ストッカ用搬送ホルダ40は、X軸方向及びY軸方向に移動可能となっている。ストッカ用搬送ホルダ40は、例えば図示しないX軸ステージ及びY軸ステージに沿って移動可能となっている。
【0041】
図5に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40は、リフト機構42を備える。リフト機構42の下端には吸着板44が設けられる。リフト機構42は吸着板44をZ軸方向(鉛直方向)に移動させる。リフト機構42は例えばZ軸方向の移動機構として、ラック・ピニオン機構と、ステッピングモータまたはサーボモータを含んで構成される。
【0042】
吸着板44は例えばアルミ板等の金属板に、空気孔が複数形成される。空気孔の下端は露出され、上端はエア配管46に接続される。エア配管46には負圧(Vac)及び正圧(Prs)のエアが供給される。シートL1〜L5の吸着時にはエア配管46が真空引きされる。シートL1〜L5の離脱時にはエア配管46から加圧空気が送られる。吸着板44の、シートL1〜L5との当接面に、軟質の多孔質シートが設けられていてもよい。
【0043】
図4に例示されるように、アライメントステージ50は、ストッカ用搬送ホルダ40から搬送されたシートL1〜L5の位置合わせを行う。アライメントステージ50は、移動機構52、載置台であるステージプレート53、及びアライメントカメラ56を備える。
【0044】
移動機構52は、ステージプレート53をX軸及びY軸に移動可能であり、かつ、ステージプレート53をZ軸を回転軸として回転可能となっている。ステージプレート53は、透光性部材である透光板54を備える。透光板54は、シートL1〜L5が載置されるシート載置領域の少なくとも一部に設けられる。例えば
図4に例示されるように、ステージプレート53の、少なくともシートL1〜L5の四隅に相当する箇所は、透光板54から構成される。または、
図4に例示される形態に代えて、シートL1〜L5の四隅に相当する箇所を含めて、一枚の透光板54がステージプレート53に設けられてもよい。
【0045】
アライメントカメラ56は、ステージプレート53の下に複数設けられる。例えばシートL1〜L5の四隅、または対角線上の二隅が撮像可能となるような位置に、アライメントカメラ56が配置される。アライメントカメラ56は、透光板54(透光性部材)を通してステージプレート53上に載置されたシートL1〜L5を撮像可能となっている。載置されたシートL1〜L5のアライメントプロセスは後述される。
【0046】
図4に例示されるように、積層用搬送ホルダ60は、アライメントステージ50にて位置合わせされたシートL1〜L5を真空吸着により保持して、積層ステージ80まで搬送する。例えばアライメントステージ50及び積層ステージ80がX軸上に配置される場合、積層用搬送ホルダ60は、X軸のみに沿って移動可能となる。
【0047】
図5に例示されるように、積層用搬送ホルダ60は、ストッカ用搬送ホルダ40と略同様の構造を備える。すなわち、積層用搬送ホルダ60は、リフト機構62、リフト機構62の下端に設けられた吸着板64、及び吸着板64に接続されたエア配管66を備える。
【0048】
リフト機構62は吸着板64をZ軸方向(鉛直方向)に移動させる。リフト機構62は例えばZ軸方向の移動機構として、ラック・ピニオン機構と、ステッピングモータまたはサーボモータを含んで構成される。
【0049】
吸着板64は例えばアルミ板等の金属板に、空気孔が複数形成される。空気孔の下端は露出され、上端はエア配管66に接続される。エア配管66は負圧(Vac)及び正圧(Prs)のエアが供給される。シートL1〜L5の吸着時にはエア配管66からエアが引き込まれる。シートL1〜L5の離脱時にはエア配管66から加圧空気が送られる。吸着板64の、シートL1〜L5との当接面に、軟質の多孔質シートが設けられていてもよい。
【0050】
図4に例示されるように、積層ステージ80にはシートL1〜L5が積層される。最終積層体100B(
図1参照)が形成される積層ステージ80の載置面には、最下層のシートL5を保持するための吸着孔(図示せず)が形成されてよい。この吸着孔は、
図5に例示されるように、エア配管82に接続される。エア配管82から負圧が引き込まれることで、最下層のシートL5が積層ステージ80に保持される。また、真空吸着に代えて、積層ステージ80の載置面に粘着シートが貼られてもよい。
【0051】
図4に例示されるように、積層装置10には、積層用搬送ホルダ60、当該ホルダによって搬送されるシートL1〜L5、及び、積層ステージにて積層される積層途中の積層体100Aに対して、荷電粒子を照射する帯電器及び除電器が設けられる。
【0052】
具体的には、積層装置10は、ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、ステージ用除電器72、及びホルダ用除電器74を備える。これらの帯電器及び除電器は、例えばイオナイザから構成される。
【0053】
ステージ用帯電器68は、積層ステージ80の載置面に向かって荷電粒子を照射する。また
図5に例示されるように、ステージ用帯電器68は、積層ステージ80上に積層された複数のシートL3〜L5のうち、最上層のシートL3の露出面に向かって荷電粒子を照射する。例えば、ステージ用帯電器68は、積層ステージ80と相対移動可能となっている。具体的には
図4に例示されるように、ステージ用帯電器68は、積層用搬送ホルダ60の下流端(積層ステージ80寄りの位置)に取り付けられ、積層用搬送ホルダ60とともにX軸上を移動可能となっている。
【0054】
例えばステージ用帯電器68は、
図5に例示される最上層のシートL3の露出面よりも小さい領域に、当該露出面上における荷電粒子の照射スポットが定められる。例えば
図5に示されるように、積層ステージ80及びシートL3〜L5のX軸方向長さよりも短い領域が、ステージ用帯電器68の、最上層のシートL3の露出面上の照射スポットとなる。なお、照射スポットのY軸方向長さは、積層ステージ80及びシートL3〜L5のY軸方向長さ以上であってよい。積層ステージ80とステージ用帯電器68とがX軸方向に相対移動することで、積層ステージ80の載置面及び積層途中の積層体100Aの最上面の全面に亘り、荷電粒子を照射可能となる。
【0055】
ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、積層用搬送ホルダ60と、X軸方向、つまり積層用搬送ホルダ60の移動方向に沿って相対移動可能となっている。例えばホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、アライメントステージ50及び積層ステージ80の間に設けられ、その上を積層用搬送ホルダ60が通過する配置となっている。
【0056】
例えばホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、上方(Z軸正方向)に向かって荷電粒子を照射する。上述したように、積層用搬送ホルダ60はその下端にシートL1〜L5を真空吸着する。したがって、積層用搬送ホルダ60がホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74上を移動する際に荷電粒子が照射されると、搬送されているシートL1〜L5の露出面に荷電粒子が入射される。
【0057】
ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74は、積層用搬送ホルダ60に保持されたシートL1〜L5の露出面よりも小さい領域に、当該露出面上の荷電粒子の照射スポットが定められる。例えば、シートL1〜L5のX軸方向長さよりも短い領域が、ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74の、シートL1〜L5の露出面上の照射スポットとなる。なお、照射スポットのY軸方向長さは、シートL1〜L5のY軸方向長さ以上であってよい。積層用搬送ホルダ60とホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74とがX軸方向に相対移動することで、積層用搬送ホルダ60に搬送されるシートL1〜L5の露出面の全面に亘り、荷電粒子を照射可能となる。
【0058】
ステージ用除電器72は、例えば積層ステージ80に対して固定されていてよい。例えばステージ用除電器72は、積層ステージ80の載置面の全面に亘り、荷電粒子を照射可能となっている。つまり、ステージ用除電器72は、ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、及びホルダ用除電器74と比較して、積層ステージ80上における荷電粒子の照射スポットが広くなるように設定される。
【0059】
ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、ステージ用除電器72、及びホルダ用除電器74と、荷電粒子の照射対象であるシートL1〜L5との離隔距離は、10mm以上120mm以下であってよい。さらに、同離隔距離は、50mmが維持されるようにしてもよい。この点において、ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、ステージ用除電器72、及びホルダ用除電器74には、Z軸方向の位置を調整するZリフト機構が設けられていてもよい。
【0060】
また、ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、ステージ用除電器72、及びホルダ用除電器74は、いずれも、−50kV<V<−5kV、5kv<V<50kVの範囲の電圧値V
で荷電粒子を照射可能であってよい。
【0061】
例えば後述するように、ホルダ用帯電器70は、積層用搬送ホルダ60に搬送されるシートL1〜L5の反り、撓みを解消するために荷電粒子を照射する。ここで、−5kVよりも低い電圧値、または5kVを超過する電圧値
で荷電粒子を照射することで、シートL1〜L5の反り、撓みが良好に解消される。また、電圧値を−50kVより高い電圧値、または50kv未満の電圧値とすることで、シートL1〜L5の絶縁破壊等の破損が抑制可能となる。
【0062】
図6に例示される制御器20は、積層装置10の各機器を制御する。制御器20は例えばコンピュータから構成される。すなわち、制御器20は、入出力コントローラ21、CPU22、ROM23、RAM24、及びハードディスクドライブ(HDD)25を備え、これらが内部バス28に接続される。さらに制御器20は、マウスやキーボード等の入力部26と、ディスプレイ等の表示部27を備え、これらが内部バス28に接続される。
【0063】
制御器20の記憶部であるROM23には、
図8に例示される電圧設定フロー及び
図9〜
図18に例示される積層プロセスを実行するためのプログラムが記憶される。また、このプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して実行することも可能である。
【0064】
ROM23に記憶され、または通信手段や記録媒体から提供されたプログラムは、制御器20を構成するコンピュータのCPU22により実行される。このプログラムの実行により、制御器20には、
図7のような機能ブロックが設けられる。
【0065】
すなわち、制御器20は、ストッカ用搬送ホルダ制御部110、アライメントステージ制御部112、積層用搬送ホルダ制御部114、シート情報記憶部116、帯電器制御部118、除電器制御部120、及び圧着器制御部122を備える。
【0066】
図7に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、ストッカ用搬送ホルダ40の動作を制御する。例えば、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、シート未保持のストッカ用搬送ホルダ40の移動先を、
図4に例示されるシートストッカ30L1〜30L5の中から設定する。
【0067】
例えばストッカ用搬送ホルダ制御部110は、シートカウンタ111を備える。シートカウンタ111には、ストッカ用搬送ホルダ40の移動先として指定するシートストッカ30L1〜30L5の順番が記憶されている。
【0068】
例えばストッカ用搬送ホルダ制御部110は、シートストッカ30L5、シートストッカ30L4、シートストッカ30L3、シートストッカ30L2、シートストッカ30L1の順にストッカ用搬送ホルダ40の移動先を指定する。シートストッカ30L1を指定した後には、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、ストッカ用搬送ホルダ40の移動先をシートストッカ30L5に戻す。
【0069】
また例えば、シートカウンタ111には、初期設定として、積層装置10の起動時の、つまり最初のストッカ用搬送ホルダ40の移動先として、シートストッカ30L5が設定される。または、機器管理者等により、積層装置10の起動時のストッカ用搬送ホルダ40の移動先が任意のシートストッカ30L1〜30L5に設定されてもよい。
【0070】
またストッカ用搬送ホルダ制御部110は、シートストッカ30L1〜30L5からシートL1〜L5を保持したストッカ用搬送ホルダ40の搬送先を、アライメントステージ50に設定する。
【0071】
加えて、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、吸着板44の下降及び上昇動作を制御する。例えばストッカ用搬送ホルダ40が、移動先に指定されたシートストッカ30L1〜30L5上に到着すると、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、ストッカ用搬送ホルダ40の吸着板44を下降させる。例えばストッカ用搬送ホルダ40は、リフト機構42を駆動させて、シートストッカ30L1〜30L5の最上層のシートL1〜L5に当接するまで吸着板44を下降させる。また、吸着板44がシートL1〜L5を吸着すると、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、リフト機構42を駆動させて、吸着板44を上昇させる。
【0072】
また、ストッカ用搬送ホルダ40が、シートL1〜L5の搬送先に指定されたアライメントステージ50のステージプレート53上に到着すると、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、リフト機構42を駆動させて、ステージプレート53に当接するまで吸着板44を下降させる。また、吸着板44からシートL1〜L5が離脱されると、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、リフト機構42を駆動させて、吸着板44を上昇させる。
【0073】
上記のシートL1〜L5の吸着及び離脱に関して、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、
図5に例示されるエア配管46の内圧を制御する。例えばシートストッカ30L1〜30L5から、ストッカ用搬送ホルダ40に、シートL1〜L5を吸着させる際には、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、エア配管46を負圧状態にする。例えばストッカ用搬送ホルダ制御部110は、エア配管46から分岐し負圧源(図示せず)と接続される分岐配管に設けられたバルブ(図示せず)に対して開放指令を出力する。
【0074】
また、ストッカ用搬送ホルダ40から、アライメントステージ50のステージプレート53に、搬送中のシートL1〜L5を受け渡す際には、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、エア配管46から分岐し負圧源と接続される分岐配管に設けられたバルブに対して閉止指令を出力する。その後、ストッカ用搬送ホルダ制御部110は、エア配管46から分岐し正圧源(図示せず)と接続される分岐配管に設けられたバルブ(図示せず)に対して開放指令を出力する。
【0075】
図5,7に例示されるように、アライメントステージ制御部112は、アライメントカメラ56から取得した、ステージプレート53上に載置されたシートの画像に基づいて、移動機構52に対する駆動指令を生成する。アライメントステージ制御部112は、例えばアライメントカメラ56による撮像画像と、予め記憶された参照画像とを比較して、参照画像にて定められた目標位置、角度からの、シートの位置ずれ及び角度ずれを求める。さらにアライメントステージ制御部112は、求められたずれを解消するための駆動指令を、移動機構52に対して出力する。
【0076】
積層用搬送ホルダ制御部114は、積層用搬送ホルダ60の動作を制御する。例えば、積層用搬送ホルダ制御部114は、積層用搬送ホルダ60に対して、アライメントステージ50と積層ステージ80との間を往復移動させる。
【0077】
加えて、積層用搬送ホルダ制御部114は、吸着板64の下降及び上昇動作を制御する。例えば積層用搬送ホルダ60が、
図5に例示され移動先に指定されたアライメントステージ50のステージプレート53上に到着すると、積層用搬送ホルダ制御部114は、吸着板64を下降させる。例えば積層用搬送ホルダ制御部114は、リフト機構62を駆動させて、ステージプレート53に当接するまで吸着板64を下降させる。また、吸着板64がシートL1〜L5を吸着すると、積層用搬送ホルダ制御部114は、リフト機構62を駆動させて、吸着板64を上昇させる。
【0078】
また、積層用搬送ホルダ60が、シートL1〜L5の搬送先に指定された積層ステージ80上に到着すると、積層用搬送ホルダ制御部114は、積層用搬送ホルダ60の吸着板64を下降させる。例えば積層用搬送ホルダ制御部114は、リフト機構62を駆動させて、積層ステージ80に当接するまで吸着板64を下降させる。また、吸着板64からシートL1〜L5が離脱されると、積層用搬送ホルダ制御部114は、リフト機構62を駆動させて、吸着板64を上昇させる。
【0079】
上記のシートL1〜L5の吸着及び離脱に関して、積層用搬送ホルダ制御部114は、
図5に例示されるエア配管66の内圧を制御する。例えばステージプレート53から、積層用搬送ホルダ60に、シートL1〜L5を吸着させる際には、積層用搬送ホルダ制御部114は、エア配管66から分岐し負圧源(図示せず)と接続される分岐配管に設けられたバルブ(図示せず)に対して開放指令を出力する。
【0080】
また、積層用搬送ホルダ60から、積層ステージ80に、搬送中のシートL1〜L5を受け渡す際には、積層用搬送ホルダ制御部114は、エア配管66から分岐し負圧源(図示せず)と接続される分岐配管にバルブに対して閉止指令を出力する。その後、積層用搬送ホルダ制御部114は、エア配管66から分岐し正圧源(図示せず)と接続される分岐配管に設けられたバルブ(図示せず)に対して開放指令を出力する。
【0081】
帯電器制御部118は、ステージ用帯電器68及びホルダ用帯電器70の荷電粒子の照射制御を行う。照射制御には、照射タイミングの制御と、荷電粒子の電圧制御とが含まれる。電圧制御は、後述されるように、除電器制御部120の電圧制御とともに実行される。
【0082】
図7に例示されるように、帯電器制御部118には、積層用搬送ホルダ制御部114から積層用搬送ホルダ60の座標情報が送られる。帯電器制御部118は、この座標情報に基づいて、ステージ用帯電器68及びホルダ用帯電器70の荷電粒子の照射タイミングを設定する。なお、帯電器制御部118は、図示しないカメラ等で撮影された積層用搬送ホルダ60の実際の位置を確認し、所定の位置に積層用搬送ホルダ60が到達したタイミングで、荷電粒子を照射するようステージ用帯電器68及びホルダ用帯電器70を制御してもよい。
【0083】
除電器制御部120は、ステージ用除電器72及びホルダ用除電器74の荷電粒子の照射制御を行う。照射制御には、照射タイミングの制御と、荷電粒子の電圧制御とが含まれる。
【0084】
図7に例示されるように、除電器制御部120には、積層用搬送ホルダ制御部114から積層用搬送ホルダ60の座標情報が送られる。除電器制御部120は、この座標情報に基づいて、ステージ用除電器72及びホルダ用除電器74の荷電粒子の照射タイミングを設定する。なお、除電器制御部120は、図示しないカメラ等で撮影された積層用搬送ホルダ60の実際の位置を確認し、所定の位置に積層用搬送ホルダ60が到達したタイミングで、荷電粒子を照射するようホルダ用除電器74を制御してもよい。
【0085】
<電圧設定フロー>
図8には、帯電器制御部118及び除電器制御部120による、ステージ用帯電器68、ホルダ用帯電器70、ステージ用除電器72、及びホルダ用除電器74のそれぞれに対する電圧設定フローが例示される。
【0086】
例えば、
図8の電圧設定フローは、シートストッカ30L1〜30L5に収容されるシートL1〜L5のロットごとに実行される。ロットとは、例えばシートL1〜L5が枚葉別に切離される前の、シートロールの単位を指し、要するに各シートL1〜L5の絶縁フィルム106の厚さが一定とみなすことのできる単位を示す。
【0087】
例えば新規のロットの、それぞれ一枚目のシートL1〜L5の積層時に、
図8の電圧設定フローが実行される。二枚目以降は、シートL1〜L5ごとに設定された電圧V0〜V4が帯電器制御部118及び除電器制御部120に記憶される。さらに、シートカウンタ111から送られる、積層用搬送ホルダ60に搬送されるシートL1〜L5に基づいて、電圧V0〜V4が設定される。
【0088】
図7、
図8に例示されるように、帯電器制御部118は、積層用搬送ホルダ60に搬送されるシート、言い換えると次に積層途中の積層体100Aに積層されるシートを特定する(シートナンバーを取得する)(S10)。
【0089】
帯電器制御部118は、シート情報記憶部116を参照して、搬送対象シートのシート厚情報を取得する(S12)。続いて帯電器制御部118は、シート厚情報に基づいた電圧値V0を求める(S14)。電圧値V0は、積層用搬送ホルダ60においてシートL1〜L5の反りや撓みを解消するのに要する電圧値を指しており、例えば事前の実験やシミュレーション等により求められる。
【0090】
ここで、定性的には、シートL1〜L5の絶縁フィルム106の厚さに応じて、電圧値が定められる。より具体的には、絶縁フィルム106が薄いほど、高い電圧が設定される。ここで、高電圧とは、正高電圧及び負高電圧を含み、要するに電圧値の絶対値が高い電圧を指す。
【0091】
絶縁フィルム106が薄くなるほど、絶縁フィルム106の面弾性率(言い換えると突っ張り度合い)が低下し、金属層104との膨張率差及び収縮率差による反り量及び撓み量が増加する。そこで本実施形態に係る電圧設定フローでは、搬送中のシートL1〜L5の絶縁フィルム106が薄いほど、照射する荷電粒子
照射時の電圧が高電圧に設定される。
【0092】
さらに帯電器制御部118は、ホルダ用帯電器70が照射する荷電粒子
照射時の電圧値V1を電圧値V0に設定する(S16)。さらに除電器制御部120は、ホルダ用除電器74が照射する荷電粒子
照射時の電圧値V3を、V0(=V1)と絶対値が等しく逆極性の電圧値に設定する(S18)。なお、帯電電圧V0と除電電圧V3とを同極性としても、分極により除電効果が得られるため、V3=−V0とする代わりに、V3=V0としてもよい。また、帯電電圧と除電電圧との絶対値を等しくすることに限定されず、除電装置及び除電方法に応じて、除電電圧は適宜設定することができる。
【0093】
また帯電器制御部118は、ステージ用帯電器68が照射する荷電粒子
照射時の電圧値V2を電圧値V0に設定する(S20)。さらに除電器制御部120は、ステージ用除電器72が照射する荷電粒子
照射時の電圧値V4を、V0(=V2)と絶対値が等しく逆極性の電圧値に設定する(S22)。なお、帯電電圧V0と除電電圧V4とを同極性としても、分極により除電効果が得られるため、V4=−V0とする代わりに、V4=V0としてもよい。また、帯電電圧と除電電圧との絶対値を等しくすることに限定されず、除電装置及び除電方法に応じて、除電電圧は適宜設定することができる。
【0094】
上記電圧設定フローによれば、積層用搬送ホルダ60に真空吸着されるシートL1〜L5に対して荷電粒子が照射されることで、シートL1〜L5の反り部分や撓み部分(浮き部分)が、静電吸着により積層用搬送ホルダ60に吸着される。ここで、搬送中のシートL1〜L5の絶縁フィルム106が薄いほど、つまり上述したように反り量及び撓み量が多くなるほど、高電圧
で荷電粒子を照射することで、静電吸着力を増加させて、反り及び撓みを解消させる。
【0095】
さらに積層ステージ80では、
ステージ用帯電器68が上記静電吸着と等電圧
に設定された状態で荷電粒子が、積層途中の積層体100Aの最上面に照射される。つまり、シートL1〜L5を積層用搬送ホルダ60に吸着させる静電吸着力と、シートL1〜L5を積層途中の積層体100Aに吸着させる静電吸着力とが等しくなる。このようにすることで、積層用搬送ホルダ60から正圧エアを噴射してシートL1〜L5を離脱させて積層ステージ80に受け渡す際に、積層用搬送ホルダ60に対して与えられた、反り及び撓み解消用の静電吸着力が、上記離脱を阻害することが抑制される。言い換えると、積層用搬送ホルダ60からのシートL1〜L5の離脱を、静電吸着にて阻害しない範囲での最大電圧にて、シートL1〜L5の反り及び撓みの解消が可能となる。
【0096】
図7に例示されるように、圧着器制御部122は、圧着器90を制御して、最終積層体100Bを圧着する。積層ステージ80にて最上層のシートL1まで積層された最終積層体100Bは、搬送ホルダ91により圧着器90まで搬送される。
【0097】
圧着器90では、最終積層体100Bが加熱されながら上下方向、言い換えると積層方向から圧縮される。この圧着プロセスが圧着器制御部122により制御される。圧着プロセスの結果、
図1下段に示されるように、最終積層体100Bは各層が固定され、回路基板として通信機器等に実装される。
【0098】
<積層プロセス>
図9〜
図18には、本実施形態に係る積層装置10による積層プロセスが例示される。
図7に例示されるストッカ用搬送ホルダ制御部110のシートカウンタ111には、積層装置10の起動時の、つまり最初のストッカ用搬送ホルダ40の移動先として、シートストッカ30L5が設定される。これに従って、
図9に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40の移動先がシートストッカ30L5に指定される。
【0099】
図9、
図10に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40(前段ホルダ)は、シートストッカ30L5からシートL5を真空吸着して、アライメントステージ50まで移動する。
【0100】
図10に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40がアライメントステージ50上に到着すると、リフト機構42により吸着板44及びこれに吸着されたシートL5が下降する。シートL5がアライメントステージ50のステージプレート53上に当接すると、リフト機構42の下降駆動が停止される。例えばトルクセンサによりリフト機構42の下降駆動が停止される。
【0101】
このとき、
図10に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40(前段ホルダ)によって、アライメントステージ50のステージプレート53に、シートL5が押し付けられる。仮にシートL5に反りや撓みが形成されている場合であっても、ストッカ用搬送ホルダ40の押し付けにより、当該反りや撓みが一時的に解消される。この状態(展開状態)のときに、アライメントカメラ56は透光板54(
図1参照)を通してステージプレート53上のシートL5を撮像する。
【0102】
図7に例示されるように、アライメントステージ制御部112は、アライメントカメラ56から取得したシートL5の画像に基づいて、移動機構52に対する駆動指令を生成する。アライメントステージ制御部112は、例えばアライメントカメラ56による撮像画像と、予め記憶された参照画像とを比較して、参照画像にて定められた目標位置、角度からの、シートL5の位置ずれ及び角度ずれを求める。さらにアライメントステージ制御部112は、求められたずれを解消するための駆動指令を、移動機構52に対して出力する。
【0103】
図11に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40の吸着板44がステージプレート53から離隔した後に、移動機構52の駆動に伴ってシートL5が位置合わせされる。位置合わせ後のシートL5は
図12に例示されるように、積層用搬送ホルダ60により真空吸着される。
【0104】
シートL5を真空吸着した積層用搬送ホルダ60は、積層用搬送ホルダ制御部114(
図7参照)の駆動指令に従って、積層ステージ80に向かって、X軸方向に移動する。この移動の過程で、
図13に例示されるように、積層用搬送ホルダ60に真空吸着されたシートL5の露出面に対して、ホルダ用帯電器70から、イオン粒子等の荷電粒子が照射される。
【0105】
またこのとき、
図7に例示されるストッカ用搬送ホルダ制御部110は、シートカウンタ111に記憶された順番に従って、ストッカ用搬送ホルダ40の移動先をシートストッカ30L4に指定する。これに応じて、
図13に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40はシートストッカ30L4に移動して、第二層目のシートL4を吸着(真空吸着)する。
【0106】
例えば
図7に示されるように、積層用搬送ホルダ制御部114から帯電器制御部118に、積層用搬送ホルダ60の現在座標が送信される。これを受けて、帯電器制御部118は、ホルダ用帯電器70を制御して、積層用搬送ホルダ60に搬送されるシートL5がホルダ用帯電器70上を通り過ぎる全過程に亘り、ホルダ用帯電器70から荷電粒子を上方に照射させる。これにより、シートL5の露出面の全面に亘って荷電粒子が入射される。
【0107】
この荷電粒子は、
図14に例示されるように、シートL5の反りや撓みを解消するために照射される。荷電粒子の照射によって、シートL5には、真空による吸着力に加えて、静電引力(クーロン力)による吸着力が生じる。このような静電吸着により、吸着板64の保持面から離隔(剥離)された、シートL5の浮き部分12が吸着板64に引き寄せられる。後述する電圧設定プロセスにて説明されるように、ホルダ用帯電器70から照射される荷電粒子は、正電荷を持っていてもよいし、負電荷を持っていてもよい。
【0108】
なお、上述したように、積層用搬送ホルダ60に吸着されたシートに照射される荷電粒子の
照射時の電圧は、そのシートが薄くなるほど高い電圧に設定される。ここで、高電圧とは、正高電圧及び負高電圧を含み、要するに電圧値の絶対値が高い電圧を指す。
【0109】
図1に例示される絶縁フィルム106が薄くなるほど、絶縁フィルム106の面弾性率(言い換えると突っ張り度合い)が低下し、金属層104との膨張率差及び収縮率差による反り量及び撓み量が増加する。そこで本実施形態に係る積層プロセスでは、搬送中のシートL1〜L5の絶縁フィルム106が薄いほど、照射する荷電粒子
照射時の電圧が高電圧に設定される。
【0110】
図15に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40は第二層目のシートL4をアライメントステージ50に搬送する。また積層用搬送ホルダ60に取り付けられた、ステージ用帯電器68は、積層ステージ80のシート載置面に向かって荷電粒子を照射する。例えば積層ステージ80のX軸上流端から下流端に亘って、ステージ用帯電器68から荷電粒子が照射される。
【0111】
なお、
図15では、積層ステージ80にはシートL1〜L5が載置されていないが、積層ステージ80にこれらのシートL1〜L5が積層されているときには、その積層途中の積層体100Aの最上面に、ステージ用帯電器68から荷電粒子が照射される。言い換えると、積層ステージ80上に積層された複数のシートのうち最上層のシートの露出面に、ステージ用帯電器68から荷電粒子が照射される。なお、積層ステージ80の寸法はシートL1〜L5の寸法よりも大きいため、シートL1〜L5が載置されていない部分(すなわち、積層ステージ80の露出した部分)についても、荷電粒子が照射される。
【0112】
このとき、上述の電圧設定フローにて説明されたように、ステージ用帯電器68から照射される荷電粒子
照射時の電圧と、ホルダ用帯電器70から照射される荷電粒子
照射時の電圧は等電圧に設定される(V1=V2)。荷電粒子が照射されることで、積層ステージ80の載置面や、積層途中の積層体100A(
図5参照)の最上面には静電引力が生じる。
【0113】
積層用搬送ホルダ60が積層ステージ80上に到着すると、
図16に例示されるように、リフト機構62の下降駆動により吸着板64及びその下端に吸着されたシートL5が下降される。シートL5が積層ステージ80の載置面または積層途中の積層体100Aの最上面と当接すると、エア配管66から離脱用の正圧エアが噴出される。
【0114】
このとき、積層用搬送ホルダ60とシートL5との間には静電引力が働く。その一方で積層ステージ80とシートL5との間にも静電引力が働く。上述したように、ステージ用帯電器68から照射される荷電粒子
照射時の電圧と、ホルダ用帯電器70から照射される荷電粒子
照射時の電圧は等電圧に設定される(V1=V2)。したがって、積層用搬送ホルダ60とシートL5との間に働く静電引力と、積層ステージ80とシートL5との間に働く静電引力は理論上等しくなる。その結果、積層用搬送ホルダ60からの、正圧エアによるシートL1〜L5の離脱を、静電吸着にて阻害しない範囲での最大電圧にて、シートL1〜L5の反り及び撓みの解消が可能となる。
【0115】
図17に例示されるように、積層用搬送ホルダ60が積層ステージ80から離れ、アライメントステージ50に向かう際に、ステージ用除電器72から積層ステージ80の載置面に向かって荷電粒子が照射される。この荷電粒子
照射時の電圧値は、例えば、除電器制御部120(
図7参照)によって、ステージ用帯電器68から照射された荷電粒子とは逆極性であって、電圧値の絶対値が等しい値に設定される。
【0116】
積層途中の積層体100A(便宜上、シートL5のみの状態も含められる)にはステージ用帯電器68に荷電粒子が照射されるが、この照射が繰り返され、電荷が蓄積されると、積層体100A内で絶縁破壊等の損傷が発生するおそれがある。そこでステージ用除電器72によって積層途中の積層体100Aが除電される。
【0117】
さらに
図18に例示されるように、積層用搬送ホルダ60の移動中に、吸着板64に向かって、ホルダ用除電器74から荷電粒子が照射される。この荷電粒子
照射時の電圧値は、例えば除電器制御部120(
図7参照)によって、ホルダ用帯電器70から照射された荷電粒子とは逆極性であって、電圧値の絶対値が等しい値に設定される。このような荷電粒子の照射により、吸着板64が除電される。
【0118】
図18に例示されるように、アライメントステージ50には、位置合わせ済みの第二層目のシートL4が載置される。積層用搬送ホルダ60はシートL4を真空吸着し、
図12〜
図18の過程が、最上層のシートL1の積層まで繰り返される。
【0119】
積層ステージ80において最上層のシートL1まで積層された最終積層体100Bは、搬送ホルダ91により、圧着器90に搬送される。圧着器90では、最終積層体100Bが加熱されながら上下方向、言い換えると積層方向から圧縮される。この圧着プロセスの結果、
図1下段に示されるように、最終積層体100Bは各層が固定され、回路基板として通信機器等に実装される。
【0120】
<積層装置の別例>
上述の実施形態では、積層用搬送ホルダ60に搬送されるシートL1〜L5の露出面の全面に亘り、荷電粒子が照射されたが、本実施形態に係る積層装置10は、そのような形態に限らない。荷電粒子を照射する目的は、シートL1〜L5の浮き部分12(
図14参照)の解消にあることから、当該浮き部分12に集中して、荷電粒子を照射してもよい。
【0121】
例えば
図19に例示されるように、積層装置10には、アライメントステージ50とホルダ用除電器74との間に、カメラ130が設けられる。カメラ130はその上方を撮像領域としており、積層用搬送ホルダ60に搬送されカメラ130の上方を通過する、シートL1〜L5の表面形状を撮像可能となっている。なお、積層用搬送ホルダ60は、カメラ130の上方に位置するときに、撮像のために、一時移動を停止してもよい。
【0122】
また、カメラ130を設ける代わりに、アライメントカメラ56が、アライメントステージ50において位置合わせ後のシートL1〜L5の表面形状を撮像してもよい。
【0123】
このような場合に、例えば制御器20の機能ブロックとして、
図7に例示される帯電器制御部118には、カメラ130またはアライメントカメラ56による、シートL1〜L5の撮像画像が送られる。
【0124】
カメラ130またはアライメントカメラ56により取得した、シートL1〜L5の撮像画像は、帯電器制御部118(
図7参照)に送られる。帯電器制御部118は、撮像されたシートL1〜L5の表面形状に基づいて、ホルダ用帯電器70から、積層用搬送ホルダ60に保持されたシートL1〜L5への、荷電粒子の照射タイミング及び電圧を定める。
【0125】
具体的には、帯電器制御部118は、積層用搬送ホルダ60の保持面から離隔するシートL1〜L5の浮き部分12(
図14参照)に対して、当該保持面に密着するシートの密着部分よりも高い電圧
で荷電粒子を照射するように、ホルダ用帯電器70を制御する。
【0126】
例えば、ホルダ用帯電器70は、搬送されるシートL1〜L5の露出面上における、荷電粒子の照射スポットの少なくとも一部が、積層用搬送ホルダ60に保持されたシートL1〜L5の浮き部分12と重なるときに限って荷電粒子を照射する。この照射タイミングは、積層用搬送ホルダ制御部114から送られる積層用搬送ホルダ60の座標と、撮像されたシートL1〜L5の表面形状から求めることが出来る。なお、シートL1〜L5の浮き部分12以外の密着部分については荷電粒子の照射が休止される。
【0127】
図20には、
図8の別例に係る、電圧設定フローが例示される。以下では
図20について、
図8と符号が重複するステップについてはその行程内容に変更が無いため、適宜説明を省略する。
【0128】
図20のステップS14にて、シート厚情報に基づいて電圧値V0が求められる。具体的には上述したように、
図1に例示されるシートL1〜L5の絶縁フィルム106が薄いほど、高い電圧が設定される。
【0129】
次に
図7に例示される帯電器制御部118は、シートL1〜L5の表面形状を解析して、当該シートの少なくとも一部が、積層用搬送ホルダ60の吸着板64から浮いているか否か、言い換えると浮き部分12があるか否かを判定する(S30)。なお、アライメントカメラ56の撮像画像による画像解析では、ステージプレート53上のシートL1〜L5の表面形状に基づいて、浮き部分12の有無が判定される。ここで、画像解析にて浮き部分12を強調させるために、カメラ130やアライメントカメラ56にストロボ機構が設けられてもよい。
【0130】
画像解析により、シートL1〜L5に浮き部分12が無いと判定されると、荷電粒子による浮き部分12の解消はそもそも不要であるため、帯電器制御部118は、ホルダ用帯電器70の設定電圧値V1を0[V]に設定する(S32)。
【0131】
一方ステップS30において、シートL1〜L5の浮き部分12が特定される(S36)と、帯電器制御部118は、ホルダ用帯電器70及びホルダ用除電器74の荷電粒子の照射区間を、浮き部分12のみに設定する(S38)。帯電器制御部118には、積層用搬送ホルダ制御部114から、積層用搬送ホルダ60の座標が送られるので、当該座標の変化と同期して、荷電粒子の照射及び休止が制御される。
【0132】
さらにホルダ用帯電器70が照射する荷電粒子
照射時の電圧値V1が電圧値V0に設定される(S16)。また、ホルダ用除電器74が照射する荷電粒子
照射時の電圧値V3が、V0(=V1)と絶対値が等しく逆極性の電圧値に設定される(S18)。
【0133】
ここで、ステップS32にてホルダ用帯電器70の設定電圧値V1が0[V]に設定された場合であっても、ホルダ用除電器74の電圧V3が電圧値V0に設定され(S18)、積層用搬送ホルダ60に対して除電が行われる。
【0134】
例えば
図16に例示されるように、積層用搬送ホルダ60からシートを積層ステージ80に受け渡す際に、帯電された積層途中の積層体100A(
図16ではシートL5)から積層用搬送ホルダ60に電荷が移動して帯電するおそれがある。したがって、ホルダ用帯電器70により荷電粒子が照射されているか否かを問わず、シートを積層ステージ80に受け渡した後、積層用搬送ホルダ60に対して除電が行われる。
【0135】
以上説明した実施形態に係る積層装置10によれば、シートL1〜L5の浮き部分12に対して相対的に高電圧
で荷電粒子が照射され、その周りの密着部分に対しては、0[V]の場合を含めて、相対的に静電吸着力が抑制される。このようにすることで、シートL1〜L5に過度の静電吸着力が生じることが回避され、積層ステージ80にて、積層用搬送ホルダ60から容易にシートL1〜L5を離脱可能となる。
【0136】
<アライメントステージの別例>
上述した実施形態では、
図10に例示されるように、ストッカ用搬送ホルダ40(前段ホルダ)によって、アライメントステージ50のステージプレート53に、シートL5が押し付けられる。これによりシートL5の反りや撓みが解消され、その状態でアライメントカメラ56による撮像が行われる。
【0137】
本実施形態に係る、アライメントステージ50上での反り及び撓みの解消手段は、上述の手段に限られない。要するに、アライメントステージ50のステージプレート53上に載置されたシートL1〜L5の上に更に載置され、シートL1〜L5の全面を加圧する加圧部材が設けられていれば、シートL1〜L5の反り及び撓みは解消し得る。
【0138】
例えば
図21に示されるように、アライメントステージ50に、加圧部材として加圧プレート55が設けられてもよい。加圧プレート55は、例えばアクリル板から構成されてよい。また加圧プレート55を吸着するために、ステージプレート53には、エアチャック51が設けられてよい。
【0139】
また、加圧部材として、PETフィルム等の膜部材が用いられてもよい。この場合、ステージプレート53上のシートL1〜L5が膜部材に覆われた状態で、エアチャック51が真空引きすることで、膜部材にシートL1〜L5がシールされる。この時、膜部材にシートL1〜L5が加圧され、シートL1〜L5の反り及び撓みが解消される。
【0140】
なお、加圧プレート55及び膜部材は、エアチャック51による保持を可能とするため、シートL1〜L5よりも面積が広く構成されてよい。加圧プレート55または膜部材は、積層装置10による積層プロセスを管理する機器管理者によって、または、図示しない搬送ロボットによって、ステージプレート53上のシートL1〜L5に重ねられる。
【0141】
加圧プレート55または膜部材により、アライメントステージ50のステージプレート53に押し付けられたシートL1〜L5は、アライメントカメラ56に撮像される。この撮像画像に基づいて、ステージプレート53上のシートL1〜L5の位置ずれ及び角度ずれが補正される。